説明

駆動伝達系、後処理装置および画像形成装置

【課題】入力信号の入力に応じて駆動する駆動源の駆動時に発生する騒音を低減すること。
【解決手段】回転軸(108)に支持された磁石(131)を囲んだ状態で配置された複数の電磁石(141〜148)を有し、複数の電磁石(141〜148)のうちの少なくともいずれか1つを励磁して、入力信号ごとに複数の電磁石(141〜148)に励磁される磁極を周期的に変化させて回転軸(108)を回転角度(θ1)ずつ回転駆動させる駆動源(98,MA2)と、回転軸に支持された歯車(99,109)とを備え、単位時間当たりの回転数(r1)と歯車の歯数(g1)とを積算した第2の周波数(f2)と一巡数(s1)で第1の周波数(f1)を除算した第3の周波数(f3)との最小公倍数(f23)が人間の可聴域に基づいて予め設定された閾値(fs)を超えることを特徴とする駆動伝達系(101〜113)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達系、後処理装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の使用時に発生する騒音の対策に関し、以下の特許文献1〜4に記載の技術が知られている。
特許文献1としての特開平05−127441号公報には、モータ(23)と取付ブラケット(20)との間に、弾性部材によって構成された防振部材(22)を配置して、モータ(23)の振動を弾性変形によって吸収して騒音を低減する技術が記載されている。
【0003】
特許文献2としての特開平05−323684号公報には、モータとフレーム構造体との間に、制振材と発泡材とを重ね合わせた積層材を挟んでネジ止めすることにより、フレーム構造体に対するモータの振動の伝達を低減して騒音を低減する技術が記載されている。
また、特許文献2には、モータ(43)を取り付けるフレーム構造体を制振鋼板によって構成することにより、モータ(43)とフレーム構造体との共振を低減して騒音を低減する技術も記載されている。
特許文献3としての特開2000−310893号公報には、駆動モータやギア列等を支持する駆動フレーム(601)に複数のエンボス(102)を形成し、駆動モータの回転数に応じて各エンボス(102)に錘部品(101)を取り付けることにより、駆動フレーム(601)全体の固有振動数を調整して駆動モータと駆動フレーム(601)との共振を低減し、騒音を低減する技術が記載されている。
すなわち、特許文献2、3には、モータを支持するフレームの固有振動数をモータの振動数や、その整数倍の値、それらの近似値等と異なる値にして共振を低減することによって騒音を低減する技術が記載されている。
【0004】
特許文献4としての特開2007−3964号公報には、ギヤ(61,62,44)からの300〜800[Hz]の噛合い音で、ステッピングモータ(41,42,83)からの1000[Hz]以上の耳障りな音を使用者に聞こえ難くする、いわゆる、マスキング効果に関する技術が記載されている。ここで、マスキング効果とは、高周波音の発生時に低周波音をマスク音として発生させると高周波音が聞こえ難くなる人間の聴覚特性をいい、低周波音の音圧(レベル)[dB]が大きくなるに連れて、聞こえ難い周波数帯が広くなる特性がある。このため、特許文献4では、ギヤ(61,62,44)を支持するモータブラケット(59)の固有振動数を、噛合い音の周波数に近づけて共振する値に設定することにより、噛合い音の音圧を増幅させてマスキング効果が得られる周波数帯を広くする技術が記載されている。
また、特許文献4には、2相励磁時の駆動音が1132[Hz]となる給紙ステッピングモータ(83)を1−2相励磁で駆動し、ステップ角(θ)を1/2倍にして動きを滑らかにすることにより、耳障りな音の発生自体を低減する技術も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−127441号公報(「0011」〜「0016」、図2〜図4)
【特許文献2】特開平05−323684号公報(「0002」、「0029」、「0030」、図4)
【特許文献3】特開2000−310893号公報(要約書、「0023」〜「0037」、図1〜図6)
【特許文献4】特開2007−3964号公報(「0009」、「0026」、「0027」、「0032」、「0039」、「0040」、「0048」、図9、図15、図16)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、入力信号の入力に応じて駆動する駆動源の駆動時に発生する騒音を低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の駆動伝達系は、
回転軸と、前記回転軸に支持された磁石と、前記磁石を前記回転軸の周方向に囲んだ状態で配置された複数の電磁石と、を有し、入力信号の入力に応じて前記複数の電磁石のうちの少なくともいずれか1つを励磁して、入力された前記入力信号ごとに前記複数の電磁石に励磁される磁極を周期的に変化させて前記回転軸を予め設定された回転角度ずつ回転駆動させる駆動源と、
前記回転軸に支持された歯車と、
を備え、
前記駆動源に対する単位時間当たりの前記入力信号の入力数である第1の周波数を前記回転軸が1回転する前記入力信号の総数で除算した値としての単位時間当たりの回転数と、前記歯車の歯数と、を積算した値を第2の周波数とし、
前記周期的な磁極の変化が一周期分一巡する際の前記入力信号の総数である一巡数で前記第1の周波数を除算した値を第3の周波数とした場合に、
前記第2の周波数と前記第3の周波数との最小公倍数が、人間の可聴域に基づいて予め設定された閾値を超える
ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の駆動伝達系において、
予め設定された前記歯数の歯を有する前記歯車、
を備え、
前記回転角度と前記一巡数とを積算した角度を一巡角度とし、
前記回転軸の一回転を前記一巡角度で除算した値を分割数とし、
前記第2の周波数および前記第3の周波数がそれぞれ前記閾値以下の場合に、前記分割数と前記歯数とのいずれか一方が他方の約数と異なる
ことを特徴とする。
【0009】
前記技術的課題を解決するために、請求項3に記載の発明の後処理装置は、
媒体に画像を形成する画像形成装置の装置本体から搬出された前記媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を回転駆動する請求項1または2に記載の駆動伝達系と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記技術的課題を解決するために、請求項4に記載の発明の画像形成装置は、
媒体に画像を形成する装置本体と、
前記装置本体から搬出された前記媒体に後処理を実行する請求項3に記載の後処理装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記技術的課題を解決するために、請求項5に記載の発明の画像形成装置は、
媒体に画像を記録する画像記録部と、
前記画像記録部に媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を回転駆動する請求項1または2に記載の駆動伝達系と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、3〜5に記載の発明によれば、第2の周波数と第3の周波数との最小公倍数が閾値を超える構成を有しない場合に比べて、入力信号の入力に応じて駆動する駆動源の駆動時に発生する騒音を低減することができる。
請求項2に記載の発明によれば、分割数と歯数とのいずれか一方の約数が他方と異なる構成を有しない場合に比べて、第2の周波数と第3の周波数との最小公倍数を閾値より大きくし易くすることができ、駆動源の駆動時に、第2の周波数の振動と第3の周波数の振動との共振に伴う発生する騒音を低減し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
【図2】図2は実施例1の画像形成装置の要部拡大図である。
【図3】図3は実施例1の後処理装置の拡大図であり、排出用クランプローラの上下動を示す説明図である。
【図4】図4は実施例1の後処理装置の拡大図であり、サブパドルの上下動を示す説明図である。
【図5】図5は実施例1の後処理装置の要部拡大図である。
【図6】図6は実施例1のコンパイルトレイの後端部の要部説明図である。
【図7】図7は図6のVII−VII線断面図である。
【図8】図8は実施例1のタンパの説明図であり、図8Aは上方から見た図、図8Bは下方から見た図である。
【図9】図9は実施例1の駆動伝達系の説明図であり、図9Aは後処理装置を後方から前方に視た際の駆動伝達系の要部説明図、図9Bは実施例1のスタッカ用の排出モータとギアとタイミングベルトとの要部説明図である。
【図10】図10は実施例1のスタッカ用の排出モータの説明図であり、図10Aはモータ本体の断面図、図10Bはロータの歯の斜視拡大図、図10Cは図10AのXC−XC線断面図、図10Bは図10AのXB−XB線断面図であり、図10Dは図10Cからコイルや電源を省略したステータ部の要部説明図である。
【図11】図11は右方向を回転方向とした場合のロータの歯とステータの歯との関係説明図であり、図11AはA相のコイルにのみ通電された場合のロータの歯とステータの歯との関係説明図、図11Bは図11Aの状態からA相のコイルの通電が切断されてB相のコイルに通電された場合のロータの歯とステータの歯との関係説明図、図11Cは図11Aの状態からB相のコイルに通電された場合のロータの歯とステータの歯との関係説明図である。
【図12】図12は実施例1のスタッカ用の排出モータを1−2相励磁方式で電磁石が励磁される場合の各ステップごとの各導線の通電のオンオフに関する説明図である。
【図13】図13は図12の各ステップに応じた磁極の状態の変化を示す説明図である。
【図14】図14は従来のプリンタでステッピングモータを駆動して発生した騒音を周波数分析した結果を示す説明図であり、縦軸を騒音レベル[dB]とし横軸を周波数[Hz]とした場合の騒音のレベルを周波数ごとに表示した説明図である。
【図15】図15は実験例で測定されるピークレベルの説明図である。
【図16】図16は実施例1の作用説明図であり、縦軸をピークレベル[dB]とし横軸を駆動周波数[pps(Hz)]とした場合の実験例1と比較例1、2とのピークレベルの関係を示すグラフの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0015】
図1は実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図1において、本発明の実施例1の画像形成装置の一例であるプリンタUは、装置本体の一例としてのプリンタ本体U1を備えている。前記プリンタUに電気的に接続された画像情報の送信装置の一例としての情報処理装置PCから送信された画像情報は、制御部Cに入力される。前記制御部Cに入力された画像情報は、予め設定された時期に潜像形成用のイエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、黒:Kの画像情報に変換され、潜像形成回路DLに出力される。
なお、原稿画像が単色画像、いわゆる、モノクロの場合は、黒:Kのみの画像情報が潜像形成回路DLに入力される。
前記潜像形成回路DLは、図示しない各色Y,M,C,Kの各駆動回路を有し、入力された画像情報に応じた信号を、予め設定された時期に、各色毎に配置された潜像形成装置LHy,LHm,LHc,LHkに出力する。
【0016】
図2は実施例1の画像形成装置の要部拡大図である。
図1、図2において、潜像形成装置LHy,LHm,LHc,LHkの各潜像書込光源から出射したY,M,C,Kの潜像書込光は、それぞれ、像保持体の一例としての回転する感光体PRy,PRm,PRc,PRkに入射される。なお、実施例1では、前記潜像形成装置LHy〜LHkは、いわゆる、発光素子の一例としてのLEDが画像の幅方向に沿って線状に配列されたLEDアレイにより構成されている。
各感光体PRy,PRm,PRc,PRkの周囲には、回転方向に沿って、帯電器CRy,CRm,CRc,CRk、潜像形成装置LHy,LHm,LHc,LHk、現像装置Gy,Gm,Gc,Gk、1次転写器T1y,T1m,T1c,T1k、清掃器の一例としての感光体クリーナCLy,CLm,CLc,CLkが配置されている。
【0017】
図1,図2において、前記各感光体PRy,PRm,PRc,PRkはそれぞれの帯電器CRy,CRm,CRc,CRkにより帯電された後、画像書込位置Q1y,Q1m,Q1c,Q1kにおいて、前記潜像書込光により、その表面に静電潜像が形成される。前記感光体PRy,PRm,PRc,PRk表面の静電潜像は、現像領域Q2y,Q2m,Q2c,Q2kにおいて、現像装置Gy,Gm,Gc,Gkの現像剤保持体の一例としての現像ロールGRy,GRm,GRc,GRkに保持された現像剤により可視像の一例としてのトナー像に現像される。
その現像されたトナー像は、中間転写体の一例としての中間転写ベルトBに接触する1次転写領域Q3y,Q3m,Q3c,Q3kに搬送される。前記1次転写領域Q3y〜Q3kにおいて中間転写ベルトBの裏面側に配置された1次転写器T1y〜T1kには、制御部Cにより制御される電源回路Eから予め設定された時期にトナーの帯電極性と逆極性の1次転写電圧が印加される。
【0018】
前記各感光体PRy〜PRk上のトナー像は前記1次転写1次転写器T1y〜T1kにより中間転写ベルトBに1次転写される。1次転写後の感光体PRy〜PRk表面の残留物、付着物は、感光体クリーナCLy〜CLkにより清掃される。清掃された前記感光体PRy〜PRk表面は、帯電器CRy〜CRkにより再帯電される。
前記Y色の感光体PRy、帯電器CRy、潜像形成装置LHy、現像装置Gy、1次転写器T1y、感光体クリーナCLyにより、可視像の一例としてのトナー像を形成する実施例1のY色の可視像形成装置Uyが構成されている。同様に、各感光体PRm,PRc,PRk、帯電器CRm,CRc,CRk、潜像形成装置LHm,LHc,LHk、現像装置Gm,Gc,Gk、1次転写器T1m,T1c,T1k、感光体クリーナCLm,CLc,CLkにより、前記M,C,K色の可視像形成装置Um,Uc,Ukが構成されている。
【0019】
前記感光体PRy〜PRkの上方には、上下移動可能且つ前方に引き出し可能な中間転写装置の一例としてのベルトモジュールBMが配置されている。前記ベルトモジュールBMは、前記中間転写ベルトBと、駆動部材の一例としてのベルト駆動ロールRd、張架部材の一例としてのテンションロールRt、蛇行防止部材の一例としてのウォーキングロールRw、従動部材の一例としてのアイドラロールRfおよび2次転写対向部材の一例としてのバックアップロールT2aと、前記1次転写器T1y〜T1kとを有している。そして、前記中間転写ベルトBは、前記各ロールRd,Rt,Rw,Rf,T2aにより回転移動可能に支持されている。
【0020】
前記中間転写ベルトBを挟んでバックアップロールT2aに対向する位置には、2次転写部材の一例としての2次転写ロールT2bが配置されており、バックアップロールT2aおよび2次転写ロールT2bにより実施例1の2次転写器T2が構成されている。また、2次転写ロールT2bと中間転写ベルトBとが接触する領域により2次転写領域Q4が形成される。
前記1次転写領域Q3y〜Q3kで1次転写器T1y〜T1kにより中間転写ベルトB上に転写された単色または順次重ねて転写された多色のトナー像は、前記2次転写領域Q4に搬送される。
前記1次転写器T1y〜T1k、中間転写ベルトBおよび2次転写器T2等により、実施例1の転写装置T1+T2+Bが構成されている。また、前記可視像形成装置Uy〜Ukおよび転写装置T1+T2+Bとにより、実施例1の画像記録部Uy〜Uk+T1+T2+Bが構成されている。
【0021】
図1において、前記可視像形成装置Uy〜Ukの下方には、ガイド部材の一例としての左右一対のガイドレールGRが4段設けられており、前記ガイドレールGRには、給紙容器の一例としての給紙トレイTR1〜TR4が前後方向に出入可能に支持されている。給紙トレイTR1〜TR4に収容された媒体の一例としてのシートSは、搬送部材の一例であって、取出部材の一例としてのピックアップロールRpにより取り出され、捌き部材の一例としてのさばきロールRsにより1枚ずつ分離される。そして、シートSは、媒体搬送路の一例である給紙路SH1に沿って、搬送部材の一例としての複数の搬送ロールRaにより搬送され、2次転写領域Q4のシート搬送方向上流側に配置された媒体搬送時期の調節部材の一例としてのレジロールRrに送られる。
前記ピックアップロールRp、さばきロールRs等により、実施例1の給紙装置Rp+Rsが構成されている。
また、前記最上段の給紙トレイTR1の右方には、手差し給紙部の一例としての手差しトレイTR0が設置されている。前記手差しトレイTR0に支持されたシートSは、手差し給紙部材の一例としての手差し給紙ロールRp0により給紙され、手差し搬送路SH0を搬送され、レジロールRrに送られる。
【0022】
レジロールRrは、中間転写ベルトBに形成されたトナー像が2次転写領域Q4に搬送されるのに時期を合わせて、前記シートSを前記給紙路SH1の下流側の搬送路の一例としての主搬送路SH2に搬送し、シートSを2次転写領域Q4に搬送する。シートSが前記2次転写領域Q4を通過する際、前記バックアップロールT2aは接地され、2次転写器T2bには前記制御部Cにより制御される電源回路Eからトナーの帯電極性と逆極性の2次転写電圧が印加され、前記中間転写ベルトB上のトナー像は、中間転写ベルトBからシートSに転写される。
2次転写後の前記中間転写ベルトBは、中間転写体清掃器の一例としてのベルトクリーナCLbにより清掃される。
【0023】
前記トナー像が2次転写されたシートSは、定着装置Fの加熱定着部材の一例としての加熱ロールFhおよび加圧定着部材の一例としての加圧ロールFpの接触領域である定着領域Q5に搬送され、定着領域Q5を通過する際に加熱定着される。なお、前記加熱ロールFh表面には、シートSの前記加熱ロールからの離型性を良くするための離型剤が離型剤塗布装置Faにより塗布されている。
前記定着装置Fの搬送方向下流側である上方には、シートSを、プリンタ本体U1の排出媒体積載部の一例としての排紙トレイTRhに向けて搬送する搬送路の一例としての排紙路SH3が配置されている。したがって、シートSが排紙トレイTRhに向けて搬送される場合には、定着されたシートSは、排紙路SH3を搬送され、媒体排出口の一例としてのシート排出口SH3aから、プリンタ本体U1の排出部材の一例としての排紙ロールRhにより排出される。
【0024】
図1において、実施例1では、下側の3段分の給紙トレイTR2〜TR4の右方には、上流側開放部材の一例としての下カバーU1aが、図1の実線で示す通常位置と、図1の破線で示す開放位置との間で開閉可能に支持されている。前記下カバーU1aには、給紙トレイTR2〜TR4の右方の給紙路SH1の右側の案内、いわゆるガイドや、一対の搬送ロールRaの外側が支持されている。したがって、下カバーU1aを開放位置に移動させることで、給紙路SH1の下部、すなわち、搬送方向上流側の上流側給紙路SH1aが開放され、詰まった媒体を除去することができる。
前記各搬送路SH0〜SH3により実施例1の搬送路SHが構成されており、前記搬送路SH、給紙装置Rp+Rs、シート搬送ロールRa、レジロールRr、排紙ロールRh等により媒体搬送系SH+Ra〜Rhが構成されている。
【0025】
(実施例1のシート搬送ユニットU2の説明)
図1において、実施例1の前記プリンタUは、排紙トレイTRhに着脱可能に装着された媒体搬送ユニットの一例としてのシート搬送ユニットU2を有する。前記シート搬送ユニットU2は、前記プリンタ本体U1のシート排出口SH3aに接続する一側面に、前記排紙ロールRhから排出されたシートSが搬入される搬入口1が設けられている。前記搬入口1から搬入されたシートSは、シート搬送ユニットU2内部に配置された搬送部材の一例としての連絡搬送ロールRa2により、搬送路の一例としての連絡搬送路SH5を搬送される。前記連絡搬送路SH5を搬送されたシートSは、シート搬送ユニットU2の他側面に形成された後処理装置向けの排出口2から排出される。
【0026】
(実施例1の後処理装置U3の説明)
図3は実施例1の後処理装置の拡大図であり、排出用クランプローラの上下動を示す説明図である。
図4は実施例1の後処理装置の拡大図であり、サブパドルの上下動を示す説明図である。
図5は実施例1の後処理装置の要部拡大図である。
図1、図3、図4において、実施例1のプリンタUは、プリンタ本体U1の側面に着脱可能に支持され、且つ、シート搬送ユニットU2に接続され、前記シート排出口2から排出されたシートSに、端綴じの一例としてのステープルや整合等の後処理を行う後処理装置U3を有する。
【0027】
図1、図3〜図5において、実施例1の後処理装置U3は、プリンタ本体U1の左側壁U1bに対向して配置される画像形成装置本体側壁面の一例としての右側壁U3aを有する。前記右側壁U3aの上部には、シート排出口2に接続される後処理装置搬入口の一例としてのシート搬入口3が形成されている。また、前記右側壁U3aの上下方向中央部には、右方に突出して下方に延びる引掛け部U3a1が前後一対形成されている。前記引掛け部U3a1は、プリンタ本体U1の左側壁U1bに形成された支持孔U1b1に嵌められて、プリンタ本体U1に引っ掛けられる。これにより、後処理装置U3はプリンタ本体U1に支持され、後処理装置U3の右側壁U3aが、プリンタ本体U1の左側壁U1bに沿った状態で保持されて、シート搬入口3は、シート搬送ユニットU2のシート排出口2に接続された状態で保持される。
したがって、シートSが、シート搬送ユニットU2のシート排出口2から排出されると、後処理装置U3のシート搬入口3に搬入される。
【0028】
(実施例1のコンパイル排出ロール4の説明)
図1において、シート搬入口3に搬入されたシートSは、シート搬入口3の下流側に設けられた後処理装置U3の搬送部材の一例としての後処理搬入ロールRa3によって、後処理装置U3内の後処理搬送路SH6を搬送される。前記後処理搬送路SH6を搬送されたシートSは、後処理搬送路SH6の下流端に設けられた第1の排出部材の一例としてのコンパイル排出ロール4によって、第1の積載部の一例としてのコンパイルトレイ6に排出される。なお、実施例1のコンパイル排出ロール4は、排出駆動源の一例としてのロール駆動モータMA1からの駆動が伝達されて回転、停止される。
前記コンパイル排出ロール4の上流近傍には、媒体検知部材の一例としてのコンパイル排出センサSN1が配置されており、後処理搬送路SH6内のシートSが検知される。
【0029】
(実施例1のコンパイルトレイ6の説明)
図1、図3〜図5において、前記コンパイルトレイ6は、第1の積載部本体の一例としてのコンパイルトレイ本体7を有する。図1において、前記コンパイルトレイ本体7は、水平に対し傾斜し且つ左部が右部に比べて高くなるように配置されている。
図3〜図5において、前記コンパイルトレイ本体7の右端には、一端揃え部材の一例として、上方に延びるエンドウォール8が支持されている。したがって、コンパイル排出ロール4から排出されてコンパイルトレイ本体7に積載されるシートSの一端である右端がエンドウォール8に突き当てられることで、シートSの束の右端が揃えられる。
前記エンドウォール8の上端には、案内部の一例として、エンドウォール8から離れるに連れてコンパイルトレイ7の積載面7aとの間隔が広くなるガイド壁9が形成されている。前記ガイド壁9は、エンドウォール8に向かって移動するシートSの右端、すなわち、媒体が排出される方向である媒体排出方向の上流端が、湾曲、いわゆる、カールした状態の場合に、シートSの前記上流端をエンドウォール8に案内する。
【0030】
(実施例1のメインパドル11の説明)
前記ガイド壁9の左斜め上方には、第2の揃え搬送部材の一例としてのメインパドル11が回転可能に支持されている。前記メインパドル11は、揃え駆動源の一例としてのパドル駆動モータMA6から駆動が伝達される回転軸11aと、回転軸11aに沿って予め設定された間隔をあけて複数配置された回転体の一例としての円筒状のロール部11bと、を有する。
ロール部11bの外周面には、搬送部材本体の一例として、可撓性を有する板状のパドル本体11cが、予め設定された位相間隔をあけて3つ支持されている。実施例1のパドル本体11cは、シートSがエンドウォール8に向けて移動する方向に対して、ロール部11bの外周面から上流側に向かう接線方向に延びており、パドル本体11cの外端がコンパイルトレイ本体7の積載面7aに接触可能な長さに形成されている。
したがって、メインパドル11が回転することで、コンパイルトレイ6に積載されたシートSの最上面にパドル本体11cが接触可能である。よって、積載されたシートSは、メインパドル11によりエンドウォール8に向けて搬送され、シートSの右端がエンドウォール8に突き当てられて、揃えられる。
【0031】
(実施例1のタンパ12の説明)
前記コンパイルトレイ6の左部には、幅端揃え部材の一例として、コンパイルトレイ6に積載されたシートSの幅方向の端に接触してシートSの幅方向の端を揃えるタンパ12が前後一対配置されている。
タンパ12の詳細な構成については、後述する。
【0032】
(実施例1のステープラ13の説明)
図3〜図5において、前記コンパイルトレイ6の右斜め下方には、綴じ部材の一例としてのステープラ13が設置されている。ステープラ13は、コンパイルトレイ6に積載されて整合されたシートSの束を、綴じ針の一例としてのステープル針により綴じる。
なお、ステープラ13の詳細な構成については後述する。
【0033】
(実施例1のスタッカ排出ロール16の説明)
図3〜図5において、前記コンパイルトレイ本体7の媒体排出方向下流側、すなわち、左方には、搬送部材の一例であって、第2の排出部材の一例としてのスタッカ用の排出ロール16が配置されている。前記スタッカ用の排出ロール16は、駆動源の一例としての正逆回転可能なスタッカ用の排出モータMA2からの駆動が伝達される回転軸16aと、回転軸16aに沿って予め設定された間隔をあけて支持された回転部の一例としてのロール本体16bとを有し、スタッカ用の排出モータMA2の正逆回転に伴って、正逆回転する。なお、実施例1のスタッカ用の排出ロール16を駆動するスタッカ用の排出モータMA2として、予め設定された入力信号の一例としてのパルス信号が入力されるたびに予め設定された回転角度だけ回転するステッピングモータが使用されている。
したがって、実施例1のスタッカ用の排出ロール16は、逆回転時に、コンパイルトレイ6に積載されて整合やステープル等の後処理がされたシートSを、第2の積載部の一例としてのスタッカトレイTH1に排出させると共に、正回転時に、コンパイルトレイ6に排出されたシートSをエンドウォール8に向けて移動させる。
【0034】
(実施例1のシェルフ17の説明)
図5において、スタッカ用の排出ロール16の近傍には、スタッカ用の排出ロール16の回転軸16aとコンパイルトレイ本体7の下面との間に、延長部材の一例としてのシェルフ17が配置されている。
図5において、前記シェルフ17は、延長部本体の一例として、円弧状に湾曲した板状のシェルフ本体17aを有し、シェルフ本体17aの下面には、被伝達部の一例としての円弧状のラックギア17bが形成されている。前記ラックギア17bには、スタッカ用の排出ロール16の回転軸16aの下方に配置されたシェルフ駆動ギア18に噛み合っている。前記シェルフ駆動ギア18には、延長駆動源の一例としての正逆回転可能なシェルフ駆動モータMA3から駆動が伝達されており、モータの正逆回転に伴って、図5の実線で示すシートSの下面を支持可能な延長位置と、図5の破線で示す後処理装置U3内部に収納された収納位置との間でシェルフ17が移動する。
なお、前記排出ロール16やシェルフ17は、従来公知であり、例えば、特開2006−69746号公報や特開2006−69749号公報、特開2011−88682号公報や特開2011−88683号公報等に記載された従来公知の種々の構成を採用可能であるため詳細な説明は省略する。
【0035】
(実施例1のクランプロール21の説明)
図3において、コンパイルトレイ本体7の上方には、排出従動部材の一例として、スタッカ用の排出ロール16に対応してクランプロール21が配置されている。前記クランプロール21は、腕部材の一例として、回転軸22aを中心として回転可能に支持されたクランプアーム22の先端部に支持されており、クランプアーム22の回転に伴って、クランプロール21がスタッカ用の排出ロール16から離間する図3の実線で示す離間位置の一例としての上昇位置と、クランプロール21がスタッカ用の排出ロール16に接近してシートSに接触してシートSを挟む図3の破線で示す接触位置の一例としての下降位置との間で移動可能に支持されている。
【0036】
(実施例1のサブパドル23の説明)
図4において、クランプロール21の前後方向にずれた位置には、第1の揃え搬送部材の一例としてのサブパドル23が配置されている。なお、実施例1のサブパドル23は、前後方向に対して予め設定された間隔をあけて複数配置されており、メインパドル11と同様の構成となっているため、詳細な説明は省略する。サブパドル23は、腕部材の一例として、回転軸24aを中心として回転可能に支持されたパドルアーム24の先端部に支持されており、パドルアーム24の回転に伴って、コンパイルトレイ6の積載面7aからサブパドル23が上昇して離れた図4の実線で示す待機位置と、コンパイルトレイ6の積載面7aにサブパドル23が下降して接近し、コンパイルトレイ6上のシートSをエンドウォール8側に引き込む図4の破線で示す引込位置と、の間で移動可能に支持されている。
なお、前記クランプロール21やサブパドル23の昇降機構や、サブパドル23の駆動機構に関しては、従来公知であり、例えば、特開2006−69727号公報や特開2006−69746号公報、特開2006−69749号公報等に記載されているような種々の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。また、実施例1では、サブパドル23の駆動源は、メインパドル11の駆動源であるパドル駆動モータMA6と共通化されているが、独立して設けることも可能である。
【0037】
(実施例1のスタッカトレイTH1の説明)
図1、図3〜図5において、前記後処理装置U3の左側壁U3bには、第2の積載部の一例として、コンパイルトレイ6に積載されたシートSが排出されるスタッカトレイTH1が支持されている。前記スタッカトレイTH1は、昇降案内部の一例として、前記後処理装置U3の左側壁U3bに沿って上下方向に延びるトレイガイド26を有する。前記トレイガイド26には、排出移動部の一例としてのスライダ27が、トレイガイド26に沿って昇降可能に支持されている。前記スライダ27には、第2の積載部本体の一例としてのスタッカトレイ本体28が、固定支持されている。
前記スタッカトレイTH1は、スタッカトレイ本体28の上面に積載されたシートSの束の最上面の高さに応じて、下降するように構成されている。なお、このような昇降機構は、従来公知であり、例えば、特開平7−300270号公報、特開2003−089463号公報等に記載の昇降機構等、種々の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0038】
(実施例1のステープラ13の詳細な説明)
図6は実施例1のコンパイルトレイの後端部の要部説明図である。
図5、図6において、実施例1のエンドウォール8の右下方には、綴じ装置の支持部材の一例としてのステープラ支持部材61が支持されている。実施例1のステープラ支持部材61は、エンドウォール8に沿ってシートSの幅方向である前後方向に延びていると共に、コンパイルトレイ本体7と同様に右方に行くほど下方に傾斜した板状に形成されている。
前記ステープラ支持部材61には、綴じ装置の案内部材の一例として、前後方向に延び且つ前後両端部では前後方向の内側に円弧状に湾曲するステープラガイド62が上方に突出して形成されている。ステープラガイド62の左右方向中央部には、綴じ装置の案内部材本体の一例として、ステープラガイド62に沿って延び且つステープラガイド62を上下方向に貫通するステープラガイド溝62aが形成されている。前記ステープラガイド溝62aの右側の内面には、平板状の歯車の一例としてのラック歯62bが形成されている。
【0039】
図5、図6において、前記ステープラ支持部材61には、被検知部の一例として、ステープラガイド62の右方に配置された上方に延びる板状の遮光リブ63が配置されている。図6において、実施例1の遮光リブ63は、ステープラ13が停止する位置に応じて配置されており、実施例1のステープラ13がシートSの束の綴じ処理を行う前端角部、中央前部、中央後部、後端角部の4箇所に対応して配置されている。すなわち、実施例1のステープラ13は、前端角部を綴じる「前端コーナ綴じ」と、中央前部及び中央後部を綴じる「側端綴じ」と、後端角部を綴じる「後端コーナ綴じ」と、が可能になっている。
なお、図6に示すように、エンドウォール8およびコンパイルトレイ本体7右端の前端部、中央部、及び後部には、ステープラ13で綴じ処理、いわゆるステープル処理が行われる位置に対応して、綴じ用の切欠部6a,6b,6cが形成されている。
【0040】
(実施例1の移動ステープルユニット66の説明)
図5、図6において、前記ステープラ支持部材61には、移動綴じ装置の一例としての移動ステープルユニット66が支持されている。図5において、実施例1の移動ステープルユニット66は、移動体の一例として、ステープラガイド62を跨ぐように上方に配置された板状の台車67を有する。前記台車67の左右両端部には、被案内部材の支持部の一例として、下方に延びるコロ支持部68,69が形成されている。左側のコロ支持部68の下端には、左方に延びる駆動連結部68aが形成されている。
前記コロ支持部68,69には、被案内部材の一例として、ステープラ支持部材61の上面に接触するコロ71が回転可能に支持されている。図6において、実施例1のコロ71は、左側のコロ支持部68に1つ支持され、右側のコロ支持部69に、前後方向に対して間隔をあけて一対支持されている。
【0041】
図5において、台車67には、ステープラガイド溝62aに対応して、駆動軸の一例として、下方に延びるシャフト72の上端が回転可能に支持されている。前記シャフト72には、綴じ装置の駆動部材の一例として、ラック歯62bに噛み合うステープラ移動ギア73が支持されている。
前記シャフト72の下端には、綴じ駆動源の一例としてのステープラ移動モータ74から駆動が伝達される。
前記ステープラ移動モータ74は、駆動源支持部材の一例としての板状のモータ支持プレート76に支持されており、モータ支持プレート76は、左端部に支持された連結部材の一例としての連結シャフト77を介して、前記駆動連結部68aに支持されている。したがって、ステープラ移動モータ74は、モータ支持プレート76や連結シャフト77を介して、台車67と一体的に移動可能に支持されている。そして、ステープラ移動モータ74が正逆回転駆動されると、ラック歯62bに噛み合うステープラ移動ギア73が正逆回転して、台車67がステープラガイド溝62aに沿って移動する。
【0042】
図5において、前記台車67の下面には、遮光リブ63の位置に対応して、検知部材の一例としての光センサ78が支持されている。実施例1の光センサ78は、光を出力する発光部78aと、光を受光する受光部78bとが対向して配置されており、遮光リブ63が、発光部78aと受光部78bとの間に進入可能に配置されている。したがって、台車67の移動に伴って、遮光リブ63が発光部78aと受光部78bとの間に進入して、光が遮光されると、移動ステープルユニット66が綴じる位置に移動したことが検出可能に構成されている。
【0043】
前記台車67の上面には、綴じ作動装置の一例としてのステープラモータユニット81が支持されており、ステープラモータユニット81の上面にステープラ13が支持されている。
実施例1のステープラ13は、綴じ針の一例としてのステープル針を打ち出す針打ち出し部82aと、針打ち出し部82aに対向して配置されて打ち出されてシートSの束を貫通したステープル針の先端を折り曲げる針折り曲げ部82bと、を有する。前記針打ち出し部82aは、針折り曲げ部82bに対して、回転中心82cを中心として回転可能に支持されている。
針打ち出し部82aと針折り曲げ部82bとの間には、綴じ作動部材の一例としてのステープラ作動部材83が支持されている。前記ステープラ作動部材83は、一端83aが針打ち出し部82aに連結されると共に、他端に円環状の被作動部83bが形成されている。
【0044】
被作動部83bには、偏心部材の一例としての偏心カム84が回転可能に支持されている。前記偏心カム84の回転軸84aには、歯車の一例として、図示しない被駆動ギア86が支持されており、被駆動ギア86には、中間歯車の一例としての中間ギア87を介して、ステープラモータユニット81の出力軸81aに支持された出力歯車の一例としての出力ギア88から駆動が伝達される。
したがって、ステープラモータユニット81が作動すると、ギア86〜88を介して偏心カム84が回転し、ステープラ作動部材83の一端83aが上下方向に移動する。したがって、針打ち出し部82aが針折り曲げ部82bに接近して、シートSの束が挟まれ、ステープル針が打ち出されて、綴じられる。
【0045】
前記ステープラ13および符号67〜88を付した部材等により、実施例1の移動ステープルユニット66が構成されている。
なお、実施例1の移動ステープルユニット66では、ステープラ支持部材66の上方に配置された台車67上にステープラ13やステープラモータユニット81等が配置されており、全体の重心は、ステープラ支持部材66よりも重力方向で上方になっている。
【0046】
(実施例1のタンパ12の詳細な説明)
図7は図6のVII−VII線断面図である。
図8は実施例1のタンパの説明図であり、図8Aは上方から見た図、図8Bは下方から見た図である。
図6、図7において、実施例1のタンパ12は、整合部材の案内部の一例として、コンパイルトレイ本体7に形成された前後方向に延びるタンパのガイド溝91に沿って移動可能に支持されている。図6〜図8において、実施例1のタンパ12は、コンパイルトレイ本体7の積載面7aに沿って延びる板状の底板部92を有する。底板部92の前後方向外端には、整合部材本体の一例として、上方に延びる板状のタンパ本体93が形成されている。
【0047】
底板部92の底部には、整合部材の被案内体の一例として、前後方向に延びる板状に形成され且つ前記タンパのガイド溝91内に収容される被ガイドロッド94が支持されている。図8Bにおいて、前記被ガイドロッド94の前後方向両端部には、被案内部の一例として、タンパのガイド溝91の内面に接触して支持されるコロ状の被ガイドコロ96が一対回転可能に支持されている。また、被ガイドロッド94には、被ガイドコロ96とは反対側の側面に、被伝達部の一例として、被ガイドロッド94の側面に沿ってタンパのラック歯97が形成されている。
【0048】
図6、図7において、コンパイルトレイ本体7の下面の前後方向中央部には、整合部材の駆動源の一例としてのタンパの駆動モータ98が、各タンパ12に対応して前後一対配置されている。なお、実施例1のタンパの駆動モータ98は、スタッカ用の排出モータMA2と同様に、ステッピングモータにより構成されており、正逆回転可能に構成されている。
前記タンパの駆動モータ98の回転軸98aには、駆動伝達部材の一例として、タンパのラック歯97に噛み合うタンパの駆動ギア99が支持されている。したがって、タンパの駆動モータ98が正逆回転すると、タンパの駆動ギア99およびタンパのラック歯97を介して、タンパ12がシート幅方向に移動し、タンパ本体93が積載されたシートSの幅方向の端に接触して、整合が行われる。
前記符号7,93〜99で示す各部材によって実施例1のタンパの駆動伝達系7+93〜99が構成されている。
【0049】
(実施例1の駆動伝達系101〜113の説明)
図9は実施例1の駆動伝達系の説明図であり、図9Aは後処理装置を後方から前方に視た際の駆動伝達系の要部説明図、図9Bは実施例1のスタッカ用の排出モータとギアとタイミングベルトとの要部説明図である。
図9Aにおいて、実施例1の前記後処理装置U3は、前記スタッカ用の排出ロール16の回転軸16aの後端部を回転可能に支持する支持部材の一例としての後側フレーム101を有する。前記回転軸16aの後端部には、第1の歯車部材の一例であって、第1の従動部材の一例としての第1従動タイミングプーリ102が固定支持されている。また、前記第1従動タイミングプーリ102の右斜め下方、すなわち、図9Aの左斜め下方には、コンパイルトレイ6や移動ステープルユニット66を避けた位置に、第2の歯車部材の一例であって、第2の従動部材の一例として、後側フレーム101から後方に延びて回転可能に支持された第2従動タイミングプーリ103が配置されている。
【0050】
また、前記第2従動タイミングプーリ103の左斜め下方、すなわち、図9Aの右斜め下方、且つ、前記第1従動タイミングプーリ102の右斜め下方には、後側フレーム101から後方に延びて回転可能に支持された第3、第4の従動部材の一例としての第3従動プーリ104と第4従動プーリ106とが配置されている。また、前記各プーリ103〜106の下方には、前記スタッカ用の排出モータMA2が配置されている。
図9Bにおいて、前記スタッカ用の排出モータMA2は、駆動源本体の一例としてのモータ本体107と、前記モータ本体107から後方に延びて回転可能に支持された回転軸の一例としてのシャフト108を有する。前記シャフト108の後端部には、歯車の一例としてのピニオンギア109が固定支持されている。なお、実施例1の前記ピニオンギア109の歯数g1は、素数の歯数一例として、23歯がそれぞれ約15.7°の間隔で配置されている。
また、前記モータ本体107の前面には、取付部材の一例としてのモータブラケット111が支持されており、前記モータブラケット111の後端部は、弾性部材の一例としてのウレタンによって構成された振動吸収部材112を介して、前記後側フレーム101に支持されている。
【0051】
そして、前記各プーリ102〜106および前記ピニオンギア109には、噛合部材の一例としてのタイミングベルト113が張架されている。実施例1の前記タイミングベルト113は、図示しない内側の歯が各タイミングプーリ102,103およびピニオンギア109の歯と噛合っており、外側のベルト表面が各プーリ104,106の外周面に接触した状態で張架されている。よって、前記タイミングベルト113は、各プーリ104,106を有しない構成に比べ、各タイミングプーリ102,103やピニオンギア111への巻き付き角度が大きくなり、歯が噛合う範囲が大きくなっており、ピニオンギア111からの回転駆動の駆動伝達が安定し易くなっている。
前記符号101〜113で示す各部材によって実施例1の駆動伝達系101〜113が構成されている。
【0052】
(実施例1のスタッカ用の排出モータMA2の詳細な説明)
図10は実施例1のスタッカ用の排出モータの説明図であり、図10Aはモータ本体の断面図、図10Bはロータの歯の斜視拡大図、図10Cは図10AのXC−XC線断面図、図10Dは図10Cからコイルや電源を省略したステータ部の要部説明図である。
なお、以下の説明では、後処理装置U3に設けられたスタッカ用の排出モータMA2およびタンパの駆動モータ98はステッピングモータの構成が同様であるため、スタッカ用の排出モータMA2についてのみ説明する。
図10において、実施例1のスタッカ用の排出モータMA2は、パルス信号の入力に応じて駆動する駆動源の一例として、いわゆる、2相HB型:2相ハイブリッド型のステッピングモータによって構成されている。前記モータ本体107は、シャフト108の前端部に配置された回転子の一例としてのロータ部121と、前記ロータ部121の外周を囲む固定子の一例としてのステータ部122と、前記ステータ部122を固定支持し且つ前記ロータ部121を回転可能に支持する枠体の一例としてのハウジング123とを有する。
【0053】
実施例1の前記ロータ部121は、磁石の一例として、シャフト108の外周面に支持されて前後方向に延びる円柱状の永久磁石、いわゆる、マグネット131を有する。実施例1の前記マグネット131は、図10Aに示すように、後部がN極となり、前部がS極となるように配置されている。また、前記マグネット131には、第1、第2の回転子の一例として、後部のN極部分を囲み且つN極に磁化された円筒状の第1ロータ132と、前部のS極部分を囲み且つS極に磁化された円筒状の第2ロータ133とが支持されている。実施例1の前記各ロータ132,133の外周面は、歯132a,133aが形成されている。実施例1では、各ロータ132,133において、互いに隣接する隣接する歯132a,133aの中央どうしの間隔を1ピッチとした場合、第1ロータ132の歯132aと、第2ロータ133の歯132aとは、図10Cに示すように、互いに1/2ピッチだけズレた状態で配置されている。なお、実施例1の各歯132a,133aは、それぞれ7.2°の間隔で50歯ずつ形成されている。
【0054】
また、実施例1の前記ステータ部122は、8個の電磁石141,142,143,144,145,146,147,148が45°の間隔で前記シャフト108を中心とする放射状に配置されている。図10Aにおいて、前記各電磁石141〜148は、基端部がハウジング123に支持され且つ自由端部がロータ部121に向けて径方向に延びて形成された芯141a〜148aを有する。実施例1の前記芯141a〜148aの自由端部には、各ロータ132,133の外周面に対向し且つ周方向に延びて形成された対向壁141b〜148bが形成されている。また、前記対向壁141b〜148bには、各ロータ132,133の歯132a,133aと間隔を空けて配置された歯141c〜148cが形成されている。なお、実施例1の各歯141c〜148cは、それぞれ7.2°の間隔で5歯ずつ形成されている。
【0055】
また、図10Cにおいて、第1、第3、第5、第7の芯141a,143a,145a,147aには、第1相の正の導線の一例としてのA相の導線151と、第1相の負の導線の一例としてのA相の導線152とが巻かれている。すなわち、第1、第3、第5、第7の電磁石141,143,145,147は、第1相の正の巻線の一例としてのA相のコイル141d,143d,145d,147dと、第1相の負の巻線の一例としてのA相のコイル141e,143e,145e,147eとを有する。実施例1では、A相のコイル141d,143d,145d,147dどうしは、A相の導線151で接続され、A相のコイル141e,143e,145e,147eどうしは、A相の導線152で接続されている。
【0056】
実施例1の第1、第5の電磁石141,145では、各芯141a,145aに対する各コイル141d+141e,145d+145eの巻き方向が予め設定された第1の巻き方向に巻かれている。また、第3、第7の電磁石143,147では、各芯143a,147aに対する各コイル143d+143e,147d+147eの巻き方向が第1の巻き方向の逆方向となる第2の巻き方向に巻かれている。
また、実施例1では、A相の導線151は、第1、第3、第5、第7の芯141a,143a,145a,147aの順に予め設定された巻き数N1ずつ巻かれており、A相の導線152は、第3、第5、第7、第1の芯143a,145a,147a,141aの順にA相と同様の巻き数N1ずつ巻かれている。
【0057】
また、各導線151,152は、第1の切替部材の一例としての第1のスイッチ153を介して第1の電源154に接続可能に構成されている。実施例1では、一方の接続部の一例として、A相の導線151の第1の電磁石141側の一端151aとA相の導線152の第3の電磁石143側の一端152aとが第1の電源154のプラス側に接続されている。また、他方の接続部の一例として、A相の導線151の第7の電磁石147側の他端151bとA相の導線152の第1の電磁石141側の他端152bとは、第1のスイッチ153を介して第1の電源154のマイナス側と接続可能に構成されている。
実施例1の前記第1のスイッチ153は、A相のコイル151に接続する第1の位置と、A相のコイル152に接続する第2の位置と、両コイル151,152への接続を切断する第3の位置との間を移動可能に構成されている。よって、実施例1では、第1のスイッチ153を制御して、各導線151,152のうちのいずれか一方を通電したり、両方を通電しないようにしたりすることが可能となっている。
【0058】
ここで、実施例1では、各電磁石141,143,145,147において、第1のスイッチ153の接続時にA相の導線152に流れる電流は、巻き順が逆に設定されているため、第1のスイッチ153の接続時にA相の導線151に流れる電流とは逆方向の電流となっている。よって、A相の導線152によって各歯141c〜148cに励磁される磁極は、A相の導線151によって各歯141c〜148cに励磁される磁極に対して逆極の関係となっている。
なお、実施例1では、A相の導線151が通電された場合、第1、第5の電磁石141,145の歯141c,145cにN極が励磁され、第3、第7の電磁石143,147の歯143c,147cにS極が励磁されるように構成されている。また、A相の導線が通電された場合、第1、第5の電磁石141,145の歯141c,145cにS極が励磁され、第3、第7の電磁石143,147の歯143c,147cにN極が励磁されるように構成されている。
【0059】
また、第2、第4、第6、第8の電磁石142,144,146,148は、第1、第3、第5、第7の電磁石141,143,145,147と同様に構成された第2相の正の巻線の一例としてのB相のコイル142d,144d,146d,148dと第2相の負の巻線の一例としてのB相のコイル142e,144e,146e,148eとを有する。また、実施例1では、B相のコイル142d,144d,146d,148dを構成する第2相の正の導線の一例としてのB相の導線161は、第6、第8、第2、第4の芯146a,148a,142a,144aの順にA相やA相と同様の巻き数N1ずつ巻かれている。また、B相のコイル142e,144e,146e,148eを構成する第2相の負の導線の一例としてのB相の導線162は、第4、第6、第8、第2の芯144a,146a,148a,142aの順にB相と同様の巻き数N1ずつ巻かれている。
【0060】
また、各導線161,162は、第2の切替部材の一例としての第2のスイッチ163を介して第2の電源164に接続可能に構成されている。実施例1では、一方の接続部の一例として、B相の導線161の第6の電磁石146側の一端161aとB相の導線162の第4の電磁石144側の一端162aとが第2の電源164のプラス側に接続されている。また、他方の接続部の一例として、B相の導線161の第4の電磁石144側の他端161bと、B相の導線162の第2の電磁石142側の他端162bとは、第2のスイッチ163を介して第2の電源164のマイナス側と接続可能に構成されている。
【0061】
また、実施例1の前記第2のスイッチ163は、第1のスイッチ153と同様に構成されており、第1、第2、第3の位置の間を移動して、各導線161,162のうちのいずれか一方を通電したり、両方に通電しないようにしたりすることが可能となっている。
よって、実施例1では、B相の導線161が通電された場合、第2、第6の電磁石142,146の歯142c,146cにN極が励磁され、第4、第8の電磁石144,148の歯144c,148cにS極が励磁されるように構成されている。また、B相の導線162が通電された場合、第2、第6の電磁石142,146の歯142c,146cにS極が励磁され、第4、第8の電磁石144,148の歯144c,148cにN極が励磁されるように構成されている。
また、実施例1の前記ハウジング123は、各電磁石141〜148の外方を囲んだ状態でステータ部122を支持するステータ支持部171を有し、前記ハウジング123の前後両端部には、前記シャフト108を回転可能に支持する軸受の一例としてのボールベアリング172が支持されている。
【0062】
図11は右方向を回転方向とした場合のロータの歯とステータの歯との関係説明図であり、図11AはA相のコイルにのみ通電された場合のロータの歯とステータの歯との関係説明図、図11Bは図11Aの状態からA相のコイルの通電が切断されてB相のコイルに通電された場合のロータの歯とステータの歯との関係説明図、図11Cは図11Aの状態からB相のコイルに通電された場合のロータの歯とステータの歯との関係説明図である。
ここで、実施例1の前記各電磁石141〜148では、隣接する対向壁141b〜148bどうしの角度が、45−(7.2×5)=9.0[°]となる。
よって、例えば、図11の右方向をシャフト108の回転方向とした場合に、第1の歯141cの回転方向下流端の歯181と、第2の歯142cの回転方向上流端の第2上流歯182との間の角度は、9.0°となる。
【0063】
このため、隣接する電磁石141〜148間において、下流側の電磁石142〜148,141の歯142c〜148c,141cは、ロータ132,133の歯132a,133aに対して、上流側に隣接する電磁石141〜148の歯141c〜148cより、9.0−7.2=1.8[°]、すなわち、1/4ピッチだけズレた状態で配置されている。よって、例えば、第3の電磁石143の歯143cは、ロータ132,133の歯132a,133aに対して、2つ上流側の第1の電磁石141の歯141cより、1.8×2=3.6[°]、すなわち、1/2ピッチだけ下流側にズレた状態で配置されている。
なお、実施例1の電磁石142〜148は、各芯141a〜148aに同一のコイル巻数で各コイル141d+141e〜148d+148eが巻かれており、各導線151〜162がそれぞれ通電されると同一の磁力のN極またはS極が発生する。
【0064】
この結果、A相の導線151が通電された場合には、第2ロータ133のS極の歯133aは、N極が励磁された第1、第5の歯141c,145cに磁力で引き寄せられて対向する。このとき、第1ロータ132のN極の歯132aは、S極が励磁された第3、第7の歯143c,147cに磁力で引き寄せられる。よって、ロータ132,133の歯132a,133aは、磁極が励磁された歯143c+147c,141c+145cに対向した図11Aの状態で安定する。このとき、図11Aに示すように、第2ロータ133のS極の歯133aは、磁極を有していない第2、第6の歯142c,146cに対して1/4ピッチ上流側且つ3/4ピッチ下流側にズレて配置される。また、このとき、第1ロータ132のN極の歯132aは、磁極を有していない第4、第8の歯144c,148cに対して1/4ピッチ上流側且つ3/4ピッチ下流側にズレて配置されている。
【0065】
次に、図11Aに示す状態からA相の導線151の通電を切断してB相の導線161が通電された場合、N極に励磁された第2、第6の歯142c,146cに対して、第2ロータ133のS極の歯133aは、上流側が下流側より1/2ピッチだけ近くに配置されている。このため、上流側のS極の歯133aが下流側のN極の歯142c,146cに引き寄せられることなく、下流側のS極の歯133aが上流側のN極の歯142c,146cに磁力で引き寄せられて対向する。また、第1ロータ132のN極の歯132aも前記S極の歯133aと同様に、S極に励磁された第4、第8の歯144c,148cに対して、上流側が下流側より1/2ピッチだけ近くに配置されている。このため、下流側のN極の歯132aが上流側のN極の歯144c,148cに磁力で引き寄せられて対向する。この結果、ロータ132,133は、逆回転することなく、1/4ピッチだけ回転方向下流側に移動した図11Bの状態で安定する。
【0066】
なお、図11Aに示す状態からA相の導線151の通電を切断せずにB相の導線161が通電された場合、第2ロータ133のS極の歯133aは、N極の歯141c,145cと同一の磁力で新たにN極に励磁された第2、第6の歯142c,146cにも引き寄せられる。このため、S極の歯133aが、N極の歯142c,146cの磁力によって、N極の歯142c,146cに対して1/4ピッチ上流側にズレて配置された位置と、N極の歯142c,146cに対向する位置との中間の中間位置まで引き寄せられる。
また、第1ロータ132のN極の歯132aもS極の歯133aと同様に、S極の歯143c,147cと同一の磁力で新たにS極に励磁された第4、第8の歯144c,148cにも引き寄せられる。このため、N極の歯132aが、S極の歯144c,148cの磁力によって、S極の歯144c,148cに対して1/4ピッチ上流側にズレて配置された位置と、S極の歯144c,148cに対向する位置との間の中間位置まで引き寄せられる。
この結果、ロータ132,133は、図11Bの状態よりも半分しか回転移動できず、1/8ピッチ回転方向下流側に移動した図11Cの状態で安定する。
また、図11Cに示す状態から、A相の導線151の通電を切断してB相の導線161のみが通電された場合、ロータ132,133は、逆回転することなく、1/8ピッチだけ回転方向下流側に移動した図11Bの状態で安定する。
【0067】
また、図11Bに示す状態から、B相の導線161の通電を切断してA相の導線162のみが通電された場合、図11Aの状態から図11Bの状態に変化する場合と同様に、ロータ132,133は、逆回転することなく、1/4ピッチだけ回転方向下流側に移動した状態で安定する。また、図11Bに示す状態から、B相の導線161の通電を切断せずにA相の導線162が通電された場合、図11Aの状態から図11Cの状態に変化する場合と同様に、ロータ132,133は、逆回転することなく、1/8ピッチだけ回転方向下流側に移動した状態で安定する。
なお、図11Cに示す状態から、B相の導線161を通電しつつA相の導線151の通電を切断してA相の導線152を通電された場合には、ロータ132,133は、逆回転することなく、1/4ピッチだけ回転方向下流側に移動した状態で安定する。
【0068】
したがって、実施例1では、パルス信号に応じて、A相のみ、B相のみ、A相のみ、B相のみの順に各導線151〜161を周期的に通電させる方式である1相励磁の場合には、1パルスごとにシャフト108が回転方向に1/4ピッチずつ回転する。また、A相およびB相、B相およびA相、A相およびB相の順に各導線151〜161を周期的に通電させる方式である2相励磁の場合も同様に、1パルスごとにシャフト108が回転方向に1/4ピッチずつ回転する。
すなわち、1相励磁や2相励磁の場合、1パルスごとに4種類のステップの通電制御を実行して、各歯141c〜148cの磁極を1ステップで45°ずつ回転方向にズラしながらシャフト108が1/4ピッチずつ回転する。
【0069】
図12は実施例1のスタッカ用の排出モータを1−2相励磁方式で電磁石が励磁される場合の各ステップごとの各導線の通電のオンオフに関する説明図である。
図13は図12の各ステップに応じた磁極の状態の変化を示す説明図である。
そして、A相のみ、A相およびB相、B相のみ、B相およびA相、A相のみ、A相およびB相、B相のみ、B相およびA相の順に各導線151〜161を周期的に通電させる方式である1−2相励磁の場合には、1パルスごとにシャフト108が回転方向に1/8ピッチずつ回転する。
すなわち、図12、図13に示すように、1パルスごとの8種類のステップST1〜ST8に応じて各磁極の数を、それぞれ、2個、4個、…、と交互に変化させつつ、各磁極を2ステップで45°ずつ回転方向にズラしながらシャフト108が1/8ピッチずつ回転する。
【0070】
なお、実施例1では、前記後処理装置U3の制御部は、スタッカ用の排出モータMA2の駆動を1−2相励磁で制御し、シャフト108が回転方向に1/8ピッチずつ回転するように予め設定されている。
このため、実施例1では、磁極の変化が1周期分一巡するステップ数としての一巡数s1が8[step]、1ステップ当たりのシャフト108の回転角度θ1が0.9[°]に予め設定されている。すなわち、回転角度θ1と一巡数s1とを積算した角度である一巡角度θsが、θs=θ1×s1=0.9×8=7.2[°]に予め設定されている。
また、実施例1では、シャフト108の1回転に要するパルスの総数p1が、p1=360/θ1=360/0.9=400[step/回転]に予め設定されており、シャフト108の1回転を一巡角度θsで分割した分割数d1が、d1=360/θs=360/7.2=50[8step/回転]に予め設定されている。
【0071】
また、実施例1では、スタッカ用の排出モータMA2に対する単位時間当たりのパルス信号の入力数である第1の周波数の一例としての駆動周波数f1が2424[pps]に予め設定されている。よって、駆動周波数f1を総数p1で除算した値としての単位時間当たりの回転数r1が、r1=f1/p1=2424/400=6.06[回転/sec(Hz)]に予め設定されている。
また、単位時間当たりの回転数r1とピニオンギア109の歯数g1とを積算した値をピニオンギア109の第2の周波数の一例としての噛合周波数f2とした場合に、噛合周波数f2が、f2=r1×g1=6.06×23=139.38≒139[Hz]に予め設定されている。また、駆動周波数f1を一巡数s1で除算した値をスタッカ用の排出モータMA2の第3の周波数の一例としての励磁基本周波数f3とした場合に、励磁基本周波数f3が、f3=f1/s1=2424/8=303[Hz]に予め設定されている。
【0072】
よって、実施例1では、噛合周波数f2と励磁基本周波数f3との最小公倍数f23が、f23=LCM(f2,f3)=f2×f3≒139×303=41978[Hz]となり、閾値fsの一例として、人間の可聴域のうちで特に良く聞こえる周波数帯の最大値である4000[Hz]を大きく超えるように予め設定されている。
また、実施例1では、タイミングベルト113、モータブラケット111、後側フレーム101の各固有振動数fa,fb,fcは、噛合周波数f2との最小公倍数f2a,f2b,f2cや、励磁基本周波数f3との最小公倍数f3a,f3b,f3cが閾値fsを超えるように予め設定されている。例えば、各固有振動数fa,fb,fcが、各周波数f2,f3と異なる値の素数の周波数の一例として、fa=151[Hz],fb=401[Hz],fc=503[Hz]に設定すれば、各最小公倍数f2a〜f2c,f3a〜f3cが閾値fsを超えるように設定できる。
【0073】
なお、実施例1のタンパの駆動モータ98やタンパの駆動ギア99についても、スタッカ用の排出モータMA2やピニオンギア109と同様に構成されており、g1=23[歯],s1=8[step],θ1=0.9[°],θs=7.2[°],p1=400[step/回転],d1=50[8step/回転],f1=2424[pps],r1=6.06[回転/sec],f2≒139[Hz],f3=303[Hz],f23=41978[Hz]に予め設定されている。
また、タンパのラック歯97を有する被ガイドロッド94、タンパ本体93、コンパイルトレイ本体7、タンパの駆動モータ98のブラケットや支持部材の各固有振動数についても、前記各固有振動数fa,fbと同様に、最小公倍数f23の約数と異なるように予め設定されている。
【0074】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1のプリンタUは、後処理装置U3の制御部がステッピングモータによって構成されたスタッカ用の排出モータMA2を制御して、駆動伝達系101〜113を介して、スタッカ用の排出ロール16が正逆回転される。前記スタッカ用の排出ロール16が正回転された場合、シートS後端がエンドウォール8に突き当てられて整合され、逆回転された場合、コンパイルトレイ6上のシートSがスタッカトレイTH1に排出される。実施例1の前記スタッカ用の排出モータMA2は、特許文献3の構成と同様に、1−2相励磁の2相HBステッピングモータによって構成されており、ステッピングモータから発生する騒音が低減されている。
【0075】
ここで、特許文献1〜3等に記載されているように、ステッピングモータを駆動する場合、1秒間当たりのパルスの総数、すなわち、ステッピングモータの駆動周波数f1や、ブラケットや、フレーム、駆動伝達系の各固有振動数fa〜fc等の条件によって、ステッピングモータの振動にブラケットやフレームや駆動伝達系が共振し、騒音が発生することがある。特に、1[kHz]から4[kHz]までの高周波の騒音は、人間の耳の感度が良く、使用者に耳障りな騒音として認識されるという問題がある。
【0076】
図14は従来のプリンタでステッピングモータを駆動して発生した騒音を周波数分析した結果を示す説明図であり、縦軸を騒音レベル[dB]とし横軸を周波数[Hz]とした場合の騒音のレベルを周波数ごとに表示した説明図である。
例えば、従来のプリンタの一例として、2相HBステッピングモータが駆動周波数f1が2230[Hz]で1−2相励磁されており、ピニオンギアの歯数g1として最も使用される25[歯]が設定されている場合がある。この場合、プリンタからの騒音を周波数分析すると、図14に示すように、特に1115[Hz]の騒音レベルpnが約34[dB]と突出して大きくなり、使用者にとって耳障りな騒音となっていた。
【0077】
なお、発生した騒音レベルpnがピークとなる周波数であるピーク周波数fnの1115[Hz]と、駆動周波数f1の2230[Hz]とは、fn:f1=1:2の関係にあり、騒音のピーク周波数fnと駆動周波数f1との間には、密接な関係があると考えられる。
ここで、ステッピングモータの製造誤差や組立誤差等の個体差によって、回転軸の中心が実際の回転中心から偏心している場合、回転軸の回転に伴って周期的な振動が発生し、ステッピングモータ全体が振動する。
【0078】
回転軸の振動は、ベアリングの中心と回転軸の中心との偏心だけでなく、ロータの共振周波数や、電磁石の芯やコイルの個体差や1−2相励磁の励磁パターンに基づく磁極数の変化等に応じた磁力の向きや大きさの変化等によって発生することがある。
また、ステッピングモータの回転は、元々細かい「起動」と「停止」との繰り返しであり、ロータに振動が発生したり、ステータの歯の剛性が磁力の脈動に負けてステータに振動が発生したりする場合がある。この場合、各励磁パターンにおける磁力や位置のバラツキにより、励磁パターンの周期に応じた振動が発生し、ステッピングモータ全体の振動の波形は、励磁パターンが一巡する時間が1周期の波形となっている。よって、励磁パターンに基づく振動の基本波成分の周波数は、駆動周波数f1を一巡数s1で除算した値に依存するものと考えられ、本願では前記周波数を励磁基本周波数f3と定義している。このため、1−2相励磁の2相HBステッピングモータでは、励磁基本周波数f3が、f3=f1/s1=2230/8=278.75[Hz]となる。
【0079】
また、回転軸の振動は、回転軸に支持されたピニオンギアの歯が駆動伝達系のギア等の歯に噛合う際に、歯1つ1つの形状等の個体差によって噛合いの深さや各歯が接触する時間等のバラツキによっても発生することがある。この場合、前記振動の波形は、ピニオンギアが1回転する時間、すなわち、回転軸が1回転する時間が1周期の波形となっている。よって、噛合いパターンに基づく振動の基本波成分の周波数は、ピニオンギアの歯数g1と1秒間当たりの回転軸の回転数r1とを積算した値に依存するものと考えられ、本願では前記周波数を噛合周波数f2と定義している。このため、1−2相励磁の2相HBステッピングモータでは、噛合周波数f2が、f2=g1×r1=25×(2230/400)=25×5.575=139.375[Hz]となる。
【0080】
よって、騒音のピーク周波数fn=1115[Hz]と、励磁基本周波数f3=278.75[Hz]と、噛合周波数f2=139.375[Hz]との間には、fn:f3:f2=1115:278.75:139.375=8:2:1の関係がある。すなわち、1−2相励磁の2相HBステッピングモータでは、fn=4×f3=8×f2の関係が成立し、励磁基本周波数f3の振動の第4次高調波成分の周波数(4×f3)や噛合周波数f2の振動の第8次高調波成分の周波数(8×f2)が騒音のピーク周波数fnと一致する。
この結果、前記騒音は、励磁基本周波数f3の振動の第4次高調波成分と噛合周波数f2の振動の第8次高調波成分とが重畳されてブラケットや、ギア、タイミングベルト等が共振したため、騒音レベルpnが高くなったものと考えられる。すなわち、前記騒音のピーク周波数fnは、ブラケット等の固有振動数fa〜fcの整数α,β,γ倍の値である共振周波数fa′〜fc′、すなわち、fa′=α×fa[Hz],fb′=β×fb[Hz],fc′=γ×fc[Hz]のいずれかであると考えられる。
【0081】
これに対して、実施例1の前記スタッカ用の排出モータMA2は、噛合周波数f2と励磁基本周波数f3との関係が、f2:f3=139.375:303≒139:303となる。また、噛合周波数f2と励磁基本周波数f3との最小公倍数f23について、f23=f2×f3が成立し、最小公倍数f23が耳障りな騒音として認識される閾値fs=4[kHz]を超えるように設定されている。
この結果、実施例1では、自然数をn,mとした場合に、励磁基本周波数f3の振動の第n次高調波成分と噛合周波数f2の振動の第m次高調波成分との共振に伴って、タイミングベルト113や、モータブラケット111、後側フレーム101等が共振したとしても、fn=n×f3=m×f2,fn>fsが成立し、ピーク周波数fnとなる共振周波数fa′〜fc′が閾値fsを超えており、人間の耳の感度がやや落ちてくる周波数帯の騒音レベルpnを大きくすることになる。
【0082】
よって、実施例1の前記プリンタUは、両方の周波数f2,f3の振動の高調波成分が重畳されて騒音レベルpnが大きくなるピーク周波数fnが閾値fsを超えるため、使用者に聞こえ難くすることが可能になっている。
この結果、実施例1の前記プリンタUは、ピーク周波数fnとなる最小公倍数f23が閾値fsを超えない構成に比べ、使用者にとって耳障りな騒音が低減される。
また、例えば、8×139.375=1115が成立し、噛合周波数f2の振動の第8次高調波成分が、ブラケット等の共振周波数1115[Hz]になった場合でも、励磁基本周波数f3の振動の第n次高調波成分が1115[Hz]にはならない。よって、実施例1の前記プリンタUは、両方の周波数f2,f3の振動の高調波成分の共振に伴ってモータブラケット111等が共振することが防止される。この結果、実施例1の前記プリンタUは、ピーク周波数fnとなる最小公倍数f23が閾値fsを超えない構成に比べ、人間の耳には聞こえ易い高周波の騒音レベルが高くなることが低減される。
【0083】
(実験例)
図15は実験例で測定されるピークレベルの説明図である。
ここで、ピーク周波数fnとなる最小公倍数f23が閾値fsを超える場合に、スタッカ排出モータMA2の騒音が低減可能であるか否かを確認するために、以下の実験を行った。
(実験条件)
実験例では、噛合周波数f2の振動の第n次高調波成分(n×f2)がブラケット等を閾値fs以下で共振させる構成で、最小公倍数f23が、閾値fsを超える場合と、閾値fs以下の場合とにおけるプリンタUの騒音レベルpn[dB]をそれぞれ測定した。
具体的には、歯数g1と駆動周波数f1とを調節して、f23=f2×f3>fsとなる場合と、f23=f3=2×f2≦fsとなる場合とにおいて、図15に示すように、周波数ごとの騒音レベルpnを測定し、1kHz以上4kHz以下の範囲の騒音レベルpnの極大値であるピークレベルpn1をそれぞれ検出した。
【0084】
(実験例1)
実験例1では、ピニオンギア109の歯数g1が、27,26,24〜22[歯]の場合に、噛合周波数f2が139.375[Hz]となるように駆動周波数f1[pps(Hz)]を調整し、f23=f2×f3>fsが成立する場合のピークレベルpn1を検出した。
実験例1−1では、g1=27[歯],f1=2065[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=139.3875[Hz],f3=258.125[Hz],f3≠2×f2,f23>fsが成立する。
また、実験例1−2では、g1=26[歯],f1=2144[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=139.36[Hz],f3=268[Hz],f3≠2×f2,f23>fsが成立する。
【0085】
また、実験例1−3では、g1=24[歯],f1=2323[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=139.38[Hz],f3=290.375[Hz],f3≠2×f2,f23>fsが成立する。
また、実験例1−4では、g1=23[歯],f1=2424[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=139.38[Hz],f3=303[Hz],f3≠2×f2,f23>fsが成立する。
また、実験例1−5では、g1=22[歯],f1=2534[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=139.37[Hz],f3=316.75[Hz],f3≠2×f2,f23>fsが成立する。
【0086】
(比較例1)
比較例1では、ピニオンギア109の歯数g1を25[歯]としてf3=2×f2≦fsが常に成立する場合に、実験例1−1〜1−5の各駆動周波数f1でスタッカ排出モータMA2を駆動した際のピークレベルpn1を検出した。
実験例1−1に対応する比較例1−1では、g1=25[歯],f1=2065[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=129.0625[Hz],f3=2×f2≦fsが成立する。
また、実験例1−2に対応する比較例1−2では、g1=25[歯],f1=2144[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=134[Hz],f3=2×f2≦fsが成立する。
【0087】
また、実験例1−3に対応する比較例1−3では、g1=25[歯],f1=2323[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=145.1875[Hz],f3=2×f2≦fsが成立する。
また、実験例1−4に対応する比較例1−4では、g1=25[歯],f1=2424[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=151.5[Hz],f3=2×f2≦fsが成立する。
また、実験例1−5に対応する比較例1−5では、g1=25[歯],f1=2534[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=158.375[Hz],f3=2×f2≦fsが成立する。
(比較例2)
比較例2では、g1=25[歯],f1=2230[pps]に設定して、ピークレベルpn1を検出した。このとき、f2=139.375[Hz],f3=278.75[Hz],f23=f3=2×f2≦fsが成立する。
【0088】
(実験結果)
図16は実施例1の作用説明図であり、縦軸をピークレベル[dB]とし横軸を駆動周波数[pps(Hz)]とした場合の実験例1と比較例1、2とのピークレベルの関係を示すグラフの説明図である。
この結果、実験例1のピークレベルpn1については、図16の実線に示すように、実験例1−1が約41[dB]、実験例1−2が約37[dB]、実験例1−3が約26[dB]、実験例1−4が約26[dB]、実験例1−5が約30[dB]であった。また、比較例1のピークレベルpn1については、図16の点線に示すように、比較例1−1が約44[dB]、比較例1−2が約48[dB]、比較例1−3が約28[dB]、比較例1−4が約33[dB]、比較例1−5が約34[dB]であり、比較例2のピークレベルpn1については、約34[db]であった。
【0089】
よって、実験例1−1は比較例1−1に対して約3[dB]、実験例1−2は比較例1−2に対して約11[dB]、実験例1−3は比較例1−3に対して約2[dB]、実験例1−4は比較例1−4に対して約7[dB]、実験例1−3は比較例1−3に対して約4[dB]だけピークレベルpn1が低減されたことがわかる。
したがって、最小公倍数f23が閾値fsを超える実験例1は、最小公倍数f23が閾値fs以下の比較例1に比べ、駆動周波数f1ごとのピークレベルpn1が低減されたことがわかる。
この結果、実施例1の前記プリンタUは、最小公倍数f23が閾値fs以下の構成に比べ、スタッカ排出モータMA2の耳障りな騒音のピークレベルpn1が低減されることがわかる。
【0090】
ここで、前記実験例1におけるピークレベルpn1については、図16の破線に示す近似関数F(g1,f1)が設定可能である。すなわち、ピニオンギア109の歯数g1および駆動周波数f1に応じた噛合周波数f2が予め設定されている場合には、pn1=F(g1,f1)が成立するピークレベルpn1の近似関数F(g1,f1)が設定可能である。なお、前記近似関数F(g1,f1)は、励磁基本周波数f3やブラケット等の共振周波数fa′〜fc′等の関係に基づいて設定される駆動伝達系の振動の伝達関数であると考えられる。
よって、実施例1の前記プリンタUは、噛合周波数f2が予め設定されている場合には、実験に基づいて近似関数F(g1,f1)を設定し、ピークレベルpn1が最小となるピニオンギア109の歯数g1を設定することが可能である。
【0091】
ここで、プリンタの設計時において、ピニオンギアの歯数g1の整数倍が、ステッピングモータの1回転に要するパルスの総数p1[step/回転]である場合、すなわち、総数p1が歯数g1で割り切れる場合、設計者がピニオンギアの位置制御を設計し易い。
なお、市販のステッピングモータは、必要な回転数に応じたパルス数を設計者が計算し易いように、1回転に要するパルスの総数p1が5の倍数になっていることが多くなっている。例えば、実施例1と同様の一般的な2相ステッピングモータでは、1−2相励磁の場合にp1=400[8step/回転]、1相励磁または2相励磁の場合にp1=200[8step/回転]になっている。
このため、ステッピングモータに装着されるピニオンギアの歯数g1は、総数p1である400や200を割り切れる、g1=10[歯],20[歯],25[歯],…となるものが一般的に使用されることが多くなっている。
【0092】
このため、特許文献1〜3等の従来のプリンタでは、市販のステッピングモータやピニオンギアのうち、最も流通量が多く一般的な2相ステッピングモータと、21〜24歯や26〜29歯に比べて位置が計算し易い25歯のピニオンギアとの組み合わせが広く採用されている。
この場合、1パルスごとの総数p1だけでなく、励磁パターンの一巡数s1ごとの分割数d1についても、歯数g1で割り切れる。すなわち、分割数d1について、1−2相励磁の場合にd1=50[8step/回転]、1相励磁または2相励磁の場合にd1=25[8step/回転]が成立し、歯数g1と分割数d1とが共に25の倍数になり、分割数d1が歯数g1で割り切れる。
【0093】
ここで、ピニオンギアの歯数g1、ステッピングモータの駆動周波数f1、一巡数s1、分割数d1の各値を用いると、噛合周波数f2および励磁基本周波数f3は、以下の式(1),(2)で表現される。
f2=g1×f1/(s1×d1) …式(1)
f3=f1/s1 …式(2)
よって、f3/f2は、以下の式(3)で表現される。
f3/f2=(f1/s1)
/{g1×f1/(s1×d1)}=d1/g1 …式(3)
したがって、分割数d1が歯数g1で割り切れる場合、すなわち、歯数g1が分割数d1の約数の場合には、比較例1、2と同様に、最小公倍数f23が励磁基本周波数f3となる。また、歯数g1が分割数d1で割り切れる場合、すなわち、分割数d1が歯数g1の約数の場合最小公倍数f23が噛合周波数f2となる。よって、最小公倍数f23となる周波数f2,f3が4kHzを超えない場合、両方の周波数f2,f3の振動によってピークレベルpn1が大きくなる問題がある。
【0094】
なお、最小公倍数f23となる各周波数f2,f3が4kHzを超えるには、例えば、1相励磁方式で一巡数s1が4[step]の場合、f1>16000とする必要がある。この場合、駆動周波数f1が高すぎて、被駆動部材に対して駆動力を伝達するトルクが足りなくなって脱調し易かったり、モータが高価になったりする等の問題がある。このため、駆動周波数f1を大きくして最小公倍数f23である各周波数f2,f3を4kHzより大きくすることは現実的には困難である。
この結果、歯数g1と分割数d1とが25の倍数となる従来のプリンタでは、最小公倍数f23が4kHz以下の励磁基本周波数f3となり易く、両方の周波数f2,f3の振動によってピークレベルpn1が大きくなり易いという問題があった。
【0095】
これに対して、実施例1では、分割数d1の値である50[8step/回転]を割り切れない25歯以外の歯数g1となるピニオンギア109が採用される。
この結果、実施例1のプリンタUでは、歯数g1の整数倍が回転軸の分割数d1になり且つ最小公倍数f23が閾値fs以下になる構成に比べ、耳障りな騒音のピークレベルpn1を低減することが可能となっている。
また、実施例1では、予め設定された噛合周波数f2に応じた前記近似関数F(g1,f1)からピークレベルpn1が最小になると推察される歯数g1が23[歯]、駆動周波数f1が2424[pps]の組み合わせが設定されている。
この結果、実施例1のプリンタUでは、近似関数F(g1,f1)から歯数g1と駆動周波数f1との組み合わせを設定しない構成に比べ、耳障りな騒音のピークレベルpn1を低減することが可能となっている。
【0096】
また、前記構成を備えた実施例1のプリンタUでは、タイミングベルト113等の各固有振動数fa〜fcが、噛合周波数f2や励磁基本周波数f3と異なる素数に設定され、各周波数f2,f3との最小公倍数f2a〜f2c,f3a〜f3cが閾値fsを超える値に設定されている。すなわち、実施例1では、各固有振動数fa〜fcの整数倍で4kHz以下となる共振周波数fa′〜fc′が、スタッカ用の排出モータMA2の振動の基本波成分の周波数f2,f3や、2次以上の高調波成分の周波数(2×f2,3×f2,…),(2×f3,3×f3,…)と異なるように設定されている。
この結果、実施例1のプリンタUは、各周波数f2,f3の振動によってタイミングベルト113等が共振することが防止され、各最小公倍数f2a〜f2c,f3a〜f3cが閾値fs以下となる構成に比べ、耳障りな騒音のピークレベルpn1が低減される。
なお、実施例1のプリンタUでは、タンパの駆動モータ98の駆動伝達系7+93〜99についても、スタッカ用の排出モータMA2の駆動伝達系101〜113と同様の作用効果を奏する。
【0097】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H07)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置の一例としてプリンタUを例示したが、これに限定されず、複写機、FAX、あるいはこれら複数の機能を備えた複合機等に適用可能である。
(H02)前記実施例では、後処理装置のタンパの駆動モータ98およびスタッカ用の排出モータMA2の駆動伝達系7+93〜99,101〜113に本発明の構成を適用したが、これに限定されず、例えば、後処理装置のその他のロール駆動モータMA1や、シェルフ駆動モータMA3、パドル駆動モータMA6、ステープラ移動モータ74をステッピングモータによって構成した場合に、各モータMA1〜MA6,74の駆動伝達系に本発明を適用することも可能である。また、例えば、プリンタ本体U1のメインモータをステッピングモータによって構成した場合に、メインモータの駆動伝達系に本発明を適用することも可能である。
【0098】
(H03)前記実施例では、スタッカ用の排出モータMA2やタンパの駆動モータ98を、2相HB型モータによって構成したが、型についてはHB型に限定されず、その他のPM:Permanent Magnet型としての永久磁石型モータや、VR型:Variable Reluctance型としての歯車状鉄心型モータによって構成することも可能である。また、相の数についても2相に限定されず、例えば、3相や5相等のモータによって構成することも可能である。
(H04)実施例1のように、スタッカ排出モータMA2やタンパの駆動モータ98を、2本のコイルにそれぞれ単一方向の電流を流す方式、いわゆる、ユニポーラ方式のステッピングモータによって構成することが好ましいが、これに限定されず、電流ショート防止機構等を追加するため、駆動装置の構造が複雑化するが、1本のコイルに双方向の電流を流す方式、いわゆる、バイポーラ方式のステッピングモータによって構成することも可能である。
【0099】
(H05)前記実施例のように、スタッカ用の排出モータMA2やタンパの駆動モータ98の騒音を低減するために、1−2相励磁方式で電磁石141〜148を励磁することが好ましいが、これに限定されず、1相励磁方式や2相励磁方式で電磁石141〜148を励磁することも可能である。なお、1相励磁や2相励磁に変更された場合、一巡数s1が(1/2)倍、噛合周波数f2と励磁基本周波数f3とがそれぞれ2倍になる。この場合、歯数g1および分割数d1のいずれか一方が他方で割り切れる場合、例えば、d1=g1=25の場合には、最小公倍数f23が変化せずに閾値fs以下となるが、割り切れない場合、例えば、d1=25,g1=23の場合には、最小公倍数f23が2倍となって閾値fsをさらに超え易くなる。
【0100】
(H06)前記実施例では、後側フレーム101とモータブラケット111との間に振動吸収部材112が支持されているが、例えば、スタッカ用の排出モータMA2とモータブラケット111との間にも振動吸収部材112と同様のウレタン等を設けて、スタッカ用の排出モータMA2の振動を弾性変形で吸収してモータブラケット111の振動を低減することも可能である。
(H07)前記実施例における具体的な数値(g1=23,s1=8,d1=50,f1=2424,p1=400,r1=6.06,f2≒139,f3=303,f23≒41978,fs=4000,fa=151,fb=401,fc=503等)は、例示した数値に限定されず、本願の発明の要旨の範囲において任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0101】
θ1…回転角度、θs…一巡角度、16,Rp,Ra,Ra2,Ra3…搬送部材、98,MA2…駆動源、7+93〜99,101〜113…駆動伝達系、101…支持部材、108…回転軸、109…歯車、111…取付部材、113…噛合部材、131…磁石、141〜148…複数の電磁石、d1…分割数、f1…第1の周波数、r1…単位時間当たりの回転数、f2…第2の周波数、f3…第3の周波数、f23…最小公倍数、fs…閾値、g1…歯車の歯数、p1…回転軸が1回転する入力信号の総数、S…媒体、s1…一巡数、U…画像形成装置、U1…装置本体、Uy〜Uk+T1+T2+B…画像記録部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸に支持された磁石と、前記磁石を前記回転軸の周方向に囲んだ状態で配置された複数の電磁石と、を有し、入力信号の入力に応じて前記複数の電磁石のうちの少なくともいずれか1つを励磁して、入力された前記入力信号ごとに前記複数の電磁石に励磁される磁極を周期的に変化させて前記回転軸を予め設定された回転角度ずつ回転駆動させる駆動源と、
前記回転軸に支持された歯車と、
を備え、
前記駆動源に対する単位時間当たりの前記入力信号の入力数である第1の周波数を前記回転軸が1回転する前記入力信号の総数で除算した値としての単位時間当たりの回転数と、前記歯車の歯数と、を積算した値を第2の周波数とし、
前記周期的な磁極の変化が一周期分一巡する際の前記入力信号の総数である一巡数で前記第1の周波数を除算した値を第3の周波数とした場合に、
前記第2の周波数と前記第3の周波数との最小公倍数が、人間の可聴域に基づいて予め設定された閾値を超える
ことを特徴とする駆動伝達系。
【請求項2】
予め設定された前記歯数の歯を有する前記歯車、
を備え、
前記回転角度と前記一巡数とを積算した角度を一巡角度とし、
前記回転軸の一回転を前記一巡角度で除算した値を分割数とし、
前記第2の周波数および前記第3の周波数がそれぞれ前記閾値以下の場合に、前記分割数と前記歯数とのいずれか一方が他方の約数と異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達系。
【請求項3】
媒体に画像を形成する画像形成装置の装置本体から搬出された前記媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を回転駆動する請求項1または2に記載の駆動伝達系と、
を備えたことを特徴とする後処理装置。
【請求項4】
媒体に画像を形成する装置本体と、
前記装置本体から搬出された前記媒体に後処理を実行する請求項3に記載の後処理装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
媒体に画像を記録する画像記録部と、
前記画像記録部に媒体を搬送する搬送部材と、
前記搬送部材を回転駆動する請求項1または2に記載の駆動伝達系と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−116023(P2013−116023A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263253(P2011−263253)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】