説明

駆動伝達装置

【課題】本発明の目的は、着脱可能な駆動伝達装置において、省スペースでもギア同士が確実に噛み合うことが出来る機構を提供することである。
【解決手段】本体1と、本体1に着脱可能なユニット2を有し、前記本体1及び前記ユニット1が有するギア同士を噛み合わせて駆動を伝達する駆動伝達装置において、前記本体1又は前記ユニット2どちらか一方は、バネ4cによって回転軸方向に付勢されている第一ギア4aと、前記第一ギア4aの駆動伝達部に対し回転軸方向にずれた位置に配置されるガイド5とを有し、他方は第二ギア6aと、前記ガイド5によってガイドされるフランジ6bを持ち、前記フランジ6bは駆動伝達時に第一ギア4a近傍のコロ4bに接触することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体及びこの装置本体に着脱可能なユニットが有するギア同士を噛み合わせて駆動を伝達する駆動伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は従来の駆動伝達装置を示している。
【0003】
従来、隣接するギアのスラストガタを規制する方法として、互いに噛み合うギア(10、11)の片方にフランジ11bを設け、ギア11を軸に対してEリング12で固定することで隣接するギア10のスラストガタを規制する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平09−112660
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の駆動伝達装置では以下のような問題があった。
【0006】
ユニットの取り付け時にユニットをななめに挿入したり、変形させながら挿入したりした場合、駆動ギア、被駆動ギアにはガタがあるため、称呼位置から外れたギア10と称呼位置から外れたフランジ11bとが接触し駆動が伝達されないといった問題がある(図7参照)。
【0007】
そこで本発明の目的は、着脱可能な駆動伝達装置において、省スペースでもギア同士が確実に噛み合うことが出来る機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明にあっては、装置本体と、装置本体に着脱可能なユニットを有し、前記本体及び前記ユニットが有するギア同士を噛み合わせて駆動を伝達する駆動伝達装置において、前記本体又は前記ユニットどちらか一方は、付勢手段によって回転軸方向に付勢されている第一ギアと、前記第一ギアの駆動伝達部に対し回転軸方向にずれた位置に配置されるガイド手段とを有し、他方は、第二ギアと、前記ガイド手段によってガイドされる被ガイド部を持ち、前記被ガイド部は駆動伝達時に第一ギア近傍の突き当て部に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第一ギアは付勢手段により位置が規制され、ガイド手段により被ガイド部がガイドされつつギア同士が噛み合うため、被ガイド部と第一ギアとが接触することがなく、確実な駆動伝達が可能となる。
【0010】
また、本発明によれば、付勢手段により第一ギアの位置を規制するため、第一ギアの端部からガイド内面までの距離を小さくすることが可能となり、駆動伝達装置のサイズを小さくすることが可能となる。
【0011】
以上のように構成することによって、確実な駆動伝達と駆動装置の省スペース化が可能となる。
【0012】
また、ユニット装着時に容易に適切な位置にギアを導くことができるので、ユニット組み立て性、ユニット装着操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の最良な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
ただし、これら実施の形態について適用する構成部材の寸法、材質、形状、及びそれらの相対配置等は、特定的な記載が無い限りはこの発明の範囲をそれら記載事項のみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
以下に本発明に係る駆動伝達装置を画像形成装置に用いた実施の形態について図1から図5を参照して説明する。図1から図4は駆動伝達装置の説明図である。図5は画像形成装置の略断面図である。
【0016】
まず画像形成装置について図5を用いて説明する。図5に示すように、画像形成装置20は、ジャム処理またはユニット交換などでユーザーが着脱するユニットを備えている。装置本体に対して着脱可能なユニットとしては、記録媒体の積載ユニット21、プロセスカートリッジ22、中間転写ユニット(中間転写体)23、定着器24、トナー搬送ユニット25などがある。
【0017】
前記ユニットのいずれかは後述する駆動伝達装置を介して画像形成装置20の駆動源によって駆動される。
【0018】
次に駆動伝達装置について図1から図4を参照して説明する。
【0019】
図1は駆動伝達装置を有する装置本体へユニット挿入時の様子を示した斜視図である。図2は駆動側と被駆動側の噛み合い直前の様子を示した断面図である。図3は駆動側と被駆動側の噛み合い時の様子を示した断面図である。図4は駆動側と被駆動側の噛み合い時の様子を示した側面図である。
【0020】
本体1(不図示)は駆動手段である駆動モーター(不図示)から駆動を伝達し、ユニット側ギア噛み合い部において揺動ギア(第一ギア)4a、コロ(突き当て部)4b、バネ(付勢手段)4c、軸4dからなる揺動ギア一式4を有している。
【0021】
図4に示すように、コロ4bの回転中心は揺動ギア4aと同軸の軸4dであり、コロ4bは揺動ギア4aの近傍(第一ギア近傍)に設けられている。揺動ギア一式4はフレーム3に対して回転中心4eを中心にして矢印T方向に揺動可能に保持され、上流側のギア7より駆動が伝達される。
【0022】
ユニット2は本体1に対して位置決めされる。本実施形態ではユニット2への駆動伝達に回転むらや歯飛びなどを防ぐために、ギア同士の軸間距離が適切に調整される揺動機構を採用している。
【0023】
ユニット2は被駆動ギア一式6を有し、被駆動ギア一式6は被駆動ギア(第二ギア)6aとフランジ(被ガイド部)6bから構成される。
【0024】
また、本体1はユニット2の装着時にフランジ6bをガイドするガイド(ガイド手段)5を有している。ガイド5はユニット2の挿入時にフランジ6bをコロ4bへガイドする機能を有している。ガイド5はフレーム3に直接または部材を介して支持された部材である。ガイド5は、揺動ギア4aの駆動伝達部に対し回転軸方向にずれた位置に配置されている。
【0025】
本体1へユニット2が装着されると、被駆動ギア一式6は矢印S方向に移動し、揺動ギア一式4は矢印T方向に揺動しつつ、揺動ギア4aと被駆動ギア6aとが噛み合い、コロ4bとフランジ6bの外周部とが接触することで、ギア同士の軸間距離を保障している。
【0026】
軸間距離が離れてしまうとギア同士が噛み合わないことで歯飛びが発生しギアの破損の可能性がある。逆に軸間距離が近づいてしまうと、ギアの先端とギアの歯底が接触し、トルクアップによる駆動むらやモーター破損の可能性がある。
【0027】
駆動小型化のためにギアのモジュールを小さくしても、駆動ギアと被駆動ギアの軸間を保障することで問題発生を防いでいる。
【0028】
このように、フランジ6bはガイド5によって誘導されるための機能と、駆動伝達時にコロ4bに接触して揺動ギア4aと被駆動ギア6aの軸間を保障する機能を兼ねている。
【0029】
ユニット2挿入時、揺動ギア4aはバネ4cにより軸4dと平行に付勢され、揺動ギア4aの端部がフレーム3と常に接しており、揺動ギア4aが回転したときに摺動する。これにより、揺動機能を損なわずにフレーム3に対する揺動ギア4の回転軸方向の位置は常に一定になる。
【0030】
ガイド5はフレーム3に対して位置決めされ、ガイド5は揺動ギア4aの端部より軸方向にずれた位置に配置される。
【0031】
この状態でユニット2を本体1に挿入すると、ガイド5によりフランジ6bが確実にコロ4bへとガイドされる。
【0032】
これにより、ユニット2が傾いて挿入された場合などに、フランジ6bとコロ4bとが接することによるギア、コロへの傷や破損を防ぐことができる。その結果、破損による駆動伝達不良、ユニット寿命低減、駆動部からの異音発生などの問題を未然に防ぐことが可能となる。
【0033】
また、ガイド5および揺動ギア4aはフレーム3に対して位置が固定されるため、揺動ギア4aの端部からガイド5の内面までの距離Zを決定する際には揺動ギア4aの遊びを無視し、部品の公差のみを考慮すればよい。
【0034】
すなわち、フレーム3からガイド5の内面までの距離Xとフレーム3からギア4aの端部までの距離YはX≧Yである。
【0035】
これにより距離Zを最小限に収めることが可能となり、駆動伝達装置の厚みを少なくすることが可能となる。
【0036】
本実施形態では、ガイド5をフランジ6bに対して上に配置する例を示したが、フランジに対し下に配置してもよい。
【0037】
この場合、ユニット2の挿入時にフランジ6bにてユニット2の荷重を支えることで、ユニット2の装着性を向上させることも可能である。
【0038】
また、フランジ6bの上下両方に配置してもよく、この場合はユニット2の装着時のガイド性能を向上させることが可能である。
【0039】
上述のように、本実施形態の駆動伝達装置では、確実な駆動伝達を実現する機能とユニット装着時に容易に適切な位置にギアを導く機能をフランジ6bだけのスペースで持たせることができ、駆動伝達装置の省スペース化と操作性の向上を実現することができる。
【0040】
上述したように、図5に示す画像形成装置50に対するユニット装着時にガイドされるフランジ6bの外周部をコロ4bに当接させることで揺動ギア4aと被駆動ギア6aとの軸間距離を保障している。
【0041】
このような構成は、軸間距離を保障し、駆動伝達むらを防ぐ必要がある場合に有効であり、画像形成装置20では駆動むらによる画像不良や駆動伝達部からの異音発生を防ぐために使用される場合が多い。
【0042】
たとえば、カラー画像形成装置の中間転写体に上記構成を用いた場合においては、中間転写体の駆動むらによって、色ずれが発生してしまう。通常色ずれは100〜200μm程度で認識可能となるので、中間転写体の駆動速度の変化もこの量を超えないようにしなければならない。このように高い回転精度を求める場合には、ギアそのものの精度を良くすると同時に、ギア同士を適切に噛み合わせることが求められる。本実施形態の構成はカラー画像形成装置の中間転写体に用いた場合に高い効果を得ることができる。
【0043】
また、特開2005−283733等で知られている記録媒体に各色の画像を直接転写するカラー画像形成装置のような記録媒体を搬送する搬送ユニットに上記構成を用いた場合においても、中間転写体を用いたときと同様、記録媒体の搬送速度の変化を小さくし、色ずれに対し高い効果を得ることができる。中間転写体を用いた装置でも、搬送速度を一定にすることで、転写ムラや異音の発生を抑制する効果が得られる。
【0044】
その他のユーザーが着脱可能なユニットの駆動伝達に本構成を利用することで、ユーザーによるユニット着脱時の駆動伝達不良を防ぎ、駆動むらによる画像不良や異音発生を防ぐことが可能となる。
【0045】
また、前述した本構成と同様、ユーザーによるユニット装着時にユニットが傾いて挿入された場合などに、フランジ6bとコロ4bとが接することによるギア、コロへの傷や破損を防ぐことができる。
【0046】
その結果、破損による駆動伝達不良、ユニット寿命低減、駆動部からの異音発生などの問題を未然に防ぐことが可能となる。
【0047】
さらに、駆動装置の省スペース化によって、画像形成装置本体サイズの削減が可能となる。
【0048】
なお、本実施形態では画像形成装置本体に着脱するユニットに関して説明したが、画像形成装置本体に接続する周辺機器に本発明を適用してもよい。たとえば画像形成装置に接続する大容量給紙装置とその給紙カセットの駆動伝達や、画像形成装置に接続する両面印刷ユニットと画像形成装置本体との駆動伝達に利用しても良い。
【0049】
また、本実施形態では、本体が駆動源を持ち(駆動側)、ユニットが被駆動側である構成を例示したが、これに限定されるものではなく、例えばユニットが駆動源を持ち(駆動側)、本体が被駆動側となる構成であっても良い。
【0050】
また、本実施形態では、本体1が第一ギアであるギア4aとガイド手段であるガイド5を有し、ユニット2が第二ギアであるギア6aと被ガイド手段であるフランジ6bを有する構成を例示したが、これに限定されるものではない。本体1又はユニット2のどちらか一方が、第一ギアとガイド手段を有し、他方が第二ギアと被ガイド部を有する構成であれば、例えばユニットが第一ギアとガイド手段を有し、本体が第二ギアと被ガイド手段を有する構成であっても良い。
【0051】
また、本実施形態では、回転中心が揺動可能に保持された揺動ギアとして、前記第一ギアであるギア4aを例示したが、これに限定されるものではなく、第二ギアの回転中心が揺動可能に保持された構成であっても良い。
【0052】
また、本実施形態では、図2や図4に示すように、ガイド手段としてガイド5を例示し、被ガイド手段としてフランジ形状(フランジ6b)を例示したが、これに限定されるものではなく、同等の機能を有するものであれば他の形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動伝達装置を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係る駆動伝達装置の詳細図である。
【図3】本発明の実施形態に係る駆動伝達装置の詳細図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置の側面詳細図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置の略断面図である。
【図6】従来例を説明する図である。
【図7】従来例を説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・・本体
2・・・・着脱可能ユニット
3・・・・フレーム
4・・・・揺動ギア一式
4a・・・揺動ギア
4b・・・コロ
4c・・・バネ
4d・・・軸
4e・・・回転中心
5・・・・ガイド部
6・・・・被駆動ギア一式
6a・・・被駆動ギア
6b・・・フランジ
7・・・・ギア
10・・・ギア
11・・・ギア
11b・・フランジ
12・・・Eリング
13・・・コロ
20・・・画像形成装置本体
21・・・記録材積載カセット
22・・・プロセスカートリッジ
23・・・中間転写ユニット
24・・・定着器
25・・・トナー搬送ユニット
S・・・・挿入方向
T・・・・揺動方向
X・・・・距離
Y・・・・距離
Z・・・・距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、装置本体に着脱可能なユニットを有し、前記本体及び前記ユニットが有するギア同士を噛み合わせて駆動を伝達する駆動伝達装置において、
前記本体又は前記ユニットどちらか一方は、付勢手段によって回転軸方向に付勢されている第一ギアと、前記第一ギアの駆動伝達部に対し回転軸方向にずれた位置に配置されるガイド手段とを有し、
他方は、第二ギアと、前記ガイド手段によってガイドされる被ガイド部を持ち、前記被ガイド部は駆動伝達時に第一ギア近傍の突き当て部に接触することを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記第一ギア又は前記第二ギアはその回転中心が揺動可能に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記被ガイド部はフランジ形状であり、前記第一ギアの近傍には前記第一ギアと同軸に配置された前記フランジの突き当て部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記装置本体は画像形成装置であり、前記ユニットは中間転写体、プロセスカートリッジ、記録媒体の積載ユニット、記録媒体の搬送ユニット、定着器、トナー搬送ユニットいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
前記装置本体は画像形成装置に関する周辺機器であり、前記ユニットは前記周辺機器に着脱する機器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−282099(P2009−282099A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131672(P2008−131672)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】