説明

駆動力伝達機構

【課題】駆動力の伝達時に駆動軸が偏心することを抑制できる駆動力伝達機構を提供する。
【解決手段】駆動モーターから伝達される駆動力に基づいて回転駆動可能に片持ち支持され、その自由端側に駆動ギア48が一体回転可能に設けられた駆動軸42aと、駆動軸42aと間隔を置いて支持され、駆動ギア48に対して噛合する従動ギア49が一体回転可能に設けられた第1の従動軸49aと、第1の従動軸49aと駆動軸42aとを結ぶ方向において駆動軸42aよりも第1の従動軸49aから遠く離れた位置に駆動軸42aと間隔を置いて支持され、駆動ギア48に対して駆動軸42aから見て従動ギア49が噛合する側とは反対側から噛合するエンコーダーギア50が一体回転可能に設けられた第2の従動軸50aとを備え、第1の従動軸49a及び第2の従動軸50aのうち少なくとも一方は、両持ち支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源から出力される駆動力を伝達する駆動力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、駆動源から出力される駆動力を伝達する駆動力伝達機構として種々の構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の駆動力伝達機構は、モーター(駆動源)の回転軸(駆動軸)の自由端側の端部に形成された入力側初段小歯車と、モーターの回転軸と平行に延びる回転自在な平行軸の一端側に形成されて入力側初段歯車に噛合する初段大歯車と、平行軸の他端側に形成された最終段小歯車と、モーターの回転軸の軸芯延長線上に配置された出力軸の端部に嵌合されて平行軸の最終段小歯車に噛合する最終段大歯車とを備えている。そして、モーターの駆動力は、回転軸が駆動回転することにより、入力側初段歯車から平行軸の初段大歯車に伝達された後、平行軸が従動回転することにより、最終段小歯車及び最終段大歯車を介して出力軸に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−187236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の駆動力伝達機構において、駆動軸となるモーターの回転軸は、入力側初段歯車が形成された端部を自由端として片持ち支持されている。そして、入力側初段歯車における軸方向と直交する方向の片側に平行軸の初段大歯車が噛み合っている。そのため、例えば従動軸となる平行軸に掛かっている負荷が大きい場合などには、モーターの駆動力の伝達時に、入力側初段歯車がモーターの回転軸と交差する方向において初段大歯車から遠ざかる方向に向けた反力を受けて同方向に変位し、その結果、モーターの回転軸が偏心してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動力の伝達時に駆動軸が偏心することを抑制できる駆動力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の駆動力伝達機構は、駆動源から伝達される駆動力に基づいて回転駆動可能に片持ち支持され、その自由端側に駆動歯車が一体回転可能に設けられた駆動軸と、該駆動軸と間隔を置いて支持され、前記駆動歯車に対して噛合する第1の従動歯車が一体回転可能に設けられた第1の従動軸と、該第1の従動軸と前記駆動軸とを結ぶ方向において該駆動軸よりも前記第1の従動軸から遠く離れた位置に前記駆動軸と間隔を置いて支持され、前記駆動歯車に対して前記駆動軸から見て前記第1の従動歯車が噛合する側とは反対側から噛合する第2の従動歯車が一体回転可能に設けられた第2の従動軸とを備え、前記第1の従動軸及び前記第2の従動軸のうち少なくとも一方は、両持ち支持される。
【0007】
上記構成によれば、駆動歯車に対して第1の従動歯車及び第2の従動歯車が駆動力の伝達時に駆動歯車が相手側の従動歯車から受ける反力に抗する方向から噛合しているため、駆動歯車は、一方の従動歯車から遠ざかる方向に反力を受けたとしても、他方の従動歯車により同方向への変位が規制される。特に、両持ち支持された従動軸に設けられた従動歯車は、他の従動歯車からの反力を受けて駆動歯車が駆動軸の軸方向と交差する方向に向けて変位することを確実に規制する。したがって、駆動源からの駆動力の伝達時に駆動軸が偏心することを抑制できる。
【0008】
また、本発明の駆動力伝達機構において、前記第1の従動軸及び前記第2の従動軸は、両従動軸のうち少なくとも駆動負荷が小さい方の従動軸が両持ち支持される。
一般に、駆動歯車は、駆動負荷の大きい従動軸に設けられた従動歯車から反力を受けた場合の方が、駆動負荷の小さい従動軸に設けられた従動歯車から反力を受けた場合よりも、駆動軸の軸方向と交差する方向に変位し易い。この点、上記構成によれば、駆動軸が両従動軸のうち駆動負荷が大きい方の従動軸に設けられた従動歯車から反力を受けた場合でも、その従動歯車とは反対側から駆動歯車に噛合する従動歯車が設けられた駆動負荷が小さい方の従動軸が両持ち支持されているため、その両持ち支持された従動軸により駆動歯車が設けられた駆動軸の変位を抑制できる。
【0009】
また、本発明の駆動力伝達機構において、前記第1の従動軸及び前記第2の従動軸は、前記駆動軸の軸方向と交差する方向において前記両従動軸の間に前記駆動軸を挟んで正反対の位置に配置される。
【0010】
上記構成によれば、両従動歯車のうち一方の従動歯車は、駆動力の伝達時に他方の従動歯車から駆動歯車に作用する反力の作用方向とは正反対の方向から駆動歯車に反力を作用させるため、駆動歯車が他方の従動歯車から遠ざかる方向に向けて変位することを効果的に抑制する。したがって、駆動源からの駆動力の伝達時に駆動軸が偏心することをより確実に抑制できる。
【0011】
また、本発明の駆動力伝達機構において、前記第1の従動軸及び前記第2の従動軸は、両従動軸のうち一方の従動軸が搬送経路に沿って搬送されるターゲットを前記駆動源から伝達される駆動力に基づき前記ターゲットの搬送方向と交差する方向に移動することにより切断する切断部材に対して動力伝達可能に連結された状態で前記切断部材と共にユニット単位で着脱自在とされると共に、他方の従動軸が両持ち支持されている。
【0012】
上記構成によれば、切断部材がターゲットを切断する際の駆動負荷による反力を前記切断部材に対して動力伝達可能に連結された一方の従動歯車から駆動歯車が受けた場合にも、その従動歯車とは反対側から駆動歯車に対して噛合する他方の従動歯車を設けた従動軸が両持ち支持されているので、駆動歯車の変位及び駆動軸の偏心を抑制できると共に、消耗しやすい切断部材の交換をユニット単位の着脱により簡便に行うことができる。
【0013】
また、本発明の駆動力伝達機構は、前記各歯車の配設領域と前記切断部材の移動領域とを仕切る仕切り壁を更に備えた。
上記構成によれば、切断部材が移動してターゲットを切断する際に生じる切り屑が駆動力伝達機構の各歯車に到達することが仕切り壁によって規制される。そのため、ターゲットの切り屑が駆動力伝達機構の各歯車の噛合部位に挟み込まれることにより、駆動力伝達機構における各歯車を通じた駆動力の伝達動作が阻害されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット式プリンターの概略側断面図。
【図2】カッター機構の斜視図。
【図3】(a)はカッター機構の要部を左前方斜め上方から見た斜視図、(b)はカッター機構の要部を左後方斜め上方から見た斜視図。
【図4】図3(b)に示す状態からカッターユニットのフレーム体を省略した斜視図。
【図5】図3(a)に示す状態から駆動モーター、固定フレーム、及び取付フレームの一部を省略した斜視図。
【図6】カッターユニットを右斜め前方から見た場合の部分断面図。
【図7】比較例の歯車機構を模式的に示す図面であって、(a)は要部正面図、(b)は要部側面図、(c)は駆動軸が偏心した場合の要部側面図。
【図8】本発明の実施形態における歯車機構を模式的に示す図面であって、(a)は要部正面図、(b)は要部側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式のプリンターに具体化した一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
図1に示すように、プリンター11における筐体状をなす装置本体12は、その上面12aが水平方向に沿った略矩形の平面状に形成されている。装置本体12の後方側には、ロール体収容部15が左右方向に延びる回動軸16を介して回動自在に取り付けられている。ロール体収容部15の内部には、連続紙など長尺状のターゲットとしてのシートS1をロール状に巻き重ねたロール体R1を収容可能な収容空間が形成されている。そして、収容空間に収容されたロール体R1が巻き軸15aを中心に回転することにより、ロール体R1からシートS1が巻き解かれてロール体収容部15から搬送方向の下流側に向かって搬送される。
【0016】
また、装置本体12の後方下部には、矩形板状に形成された扉17が開閉可能に設けられている。また、装置本体12の内部における下方の位置であって且つ扉17の内側の位置には、ロール体収容部15と同様に、長尺状のターゲットとしてのシートS2をロール状に巻き重ねたロール体R2を収容したトレイ18が配置されている。このトレイ18は鉛直方向(上下方向)と交差する方向(前後方向)に移動することによって装置本体12外に取り出し可能とされている。そして、トレイ18に収容されたロール体R2が巻き軸18aを中心に回転することにより、ロール体R2からシートS2が巻き解かれてトレイ18から搬送方向の下流側に向かって搬送される。
【0017】
装置本体12内におけるトレイ18の上方の位置には、ロール体R1,R2から巻き解かれて搬送されるシートS1,S2を支持可能な平板状の支持板19が配置されている。また、支持板19の上方であって支持板19と対向する位置には、駆動手段(図示略)によってシートS1,S2の搬送方向と交差する左右方向に往復移動可能なキャリッジ20が設けられている。このキャリッジ20の下面には、記録ヘッド21が支持されている。記録ヘッド21の下面は、インクを噴射する複数のノズル(図示略)が開口する水平なノズル形成面になっている。そして、記録ヘッド21は、支持板19との間を通って搬送されるシートS1,S2に対してインクを噴射することにより記録を施す。
【0018】
また、装置本体12内には、ロール体収容部15及びトレイ18に収容された各ロール体R1,R2から巻き解かれたシートS1,S2を搬送経路に沿って支持板19上に搬送する搬送機構22が設けられている。搬送機構22は、ロール体収容部15のロール体R1から巻き解かれたシートS1をその搬送経路に沿って受ける第1受板23と、トレイ18のロール体R2から巻き解かれたシートS2をその搬送経路に沿って受ける第2受板24とを備えている。また、搬送機構22は、シートS1及びシートS2の搬送経路に沿って配設される複数の搬送ローラー25〜30と搬送ローラー対31,32とを備えている。そして、搬送機構22は、シートS1の搬送経路及びシートS2の搬送経路を切り替えて、どちらか一方のシートを支持板19側に搬送する。
【0019】
さらに、装置本体12内には、記録ヘッド21によって記録が施されたシートS1,S2を装置本体12外に排出する排出搬送機構33が設けられている。排出搬送機構33は、記録ヘッド21により記録が施されたシートS1,S2を反転させる反転部34と、シートS1,S2を搬送する搬送ローラー対35,36とを備えている。反転部34は、断面略円弧状をなす2枚の案内板34a,34bによって構成されている。両案内板34a,34bは前後方向に間隔をあけて平行に配置されている。すなわち、両案内板34a,34bの間には、湾曲した反転経路が形成されている。また、両案内板34a,34bは、その両案内板34a,34bの上端部分が装置本体12の上面12aよりも上方に位置している。搬送ローラー対35は反転部34における反転経路の上流端に対応する位置に配置されている。また、搬送ローラー対36は反転部34における反転経路の下流端に対応する位置に配置されている。
【0020】
そして、記録ヘッド21により記録が施されたシートS1,S2は、下流側に搬送されるとともに反転部34の反転経路を通過することによって表裏両面が反転される。また、反転されたシートS1,S2は、装置本体12の前側に位置する排出口37から装置本体12の上面12aに排出される。
【0021】
また、シートS1,S2の搬送経路における搬送ローラー対32よりも下流側であって且つ搬送ローラー対35よりも上流側となる位置には、シートS1,S2を搬送方向と交差する幅方向(左右方向)に切断可能なカッター機構38が設けられている。すなわち、シートS1,S2は、カッター機構38により、連続紙の状態から単票の状態に切断された場合には、切断される毎に一枚ずつ排出搬送機構33により下流側へ搬送され、装置本体12の上面12aに排出される。
【0022】
次に、カッター機構38の具体的構成について説明する。
図2に示すように、カッター機構38は、左右方向に長く延びる直方体状の本体部39を備えている。本体部39の左右両端には左右で一対の脚部39a,39bが形成され、カッター機構38は、本体部39の各脚部39a,39bが装置本体12内の図示しないブラケット上にねじ止めされることにより、装置本体12における所定位置に取り付けられる。なお、各脚部39a,39bは、その平断面形状が本体部39の長手方向の端部側(左右両側)が開口した略U字状をなしているため、本体部39の前面側及び後面側には平面視で略L字状をなす屈曲壁部が形成される。
【0023】
図2〜図4に示すように、本体部39の左側脚部39aにおける前側の屈曲壁部の前面には、平面視で左端側が後方へ屈曲された略L字状をなす取付フレーム40が止めねじ40aにより固定されている。また、取付フレーム40の前面には、平面視で後方側が開口した略U字状をなす固定フレーム41が止めねじ41aにより固定され、その固定フレーム41を介して駆動源としての駆動モーター42が支持されている。なお、取付フレーム40における左端側で前後方向に沿う側壁部の上端面からは切り欠き溝43が下方に向けて形成されており、この切り欠き溝43に対してカッターユニット44における外装の一部を構成する板状のフレーム体45が鉛直上方から挿入されている。
【0024】
図4に示すように、取付フレーム40において左右方向に沿う前壁部の上端面からは凹溝46が下方に向けて形成されると共に、固定フレーム41において左右方向に沿う前壁部の上端面からは取付フレーム40の凹溝46と前後方向で対応する凹溝47が下方に向けて形成されている。そして、これらの凹溝46及び凹溝47を通じて駆動モーター42における片持ち支持状態の駆動軸42aの先端が取付フレーム40の前壁部よりも後方側に挿入されている。そのため、駆動モーター42の駆動軸42aの自由端となる先端に該駆動軸42aと一体回転可能に設けられた駆動ギア48(駆動歯車)は、左側脚部39aにおける前側の屈曲壁部及びこれに取り付けられた取付フレーム40によって該取付フレーム40よりも後方側に区画された配設領域に位置している。
【0025】
図3(b)、図4及び図5に示すように、駆動軸42aの鉛直上方には、第1の従動軸49aが、その基端側をカッターユニット44のフレーム体45に対して回転自在に支持された状態で、駆動モーター42の駆動軸42aと平行をなすように片持ち支持されている。そして、第1の従動軸49aの先端には、第1の従動歯車としての従動ギア49が第1の従動軸49aと一体回転可能に設けられ、その下方に位置する駆動ギア48に対して鉛直上方から動力伝達可能に噛合している。
【0026】
また、図5に示すように、駆動軸42aの鉛直下方(すなわち、第1の従動軸49aと駆動軸42aとを結ぶ方向において駆動軸42aよりも第1の従動軸49aから遠く離れた位置)には、第2の従動軸50aが駆動モーター42の駆動軸42aと平行をなすように支持されている。この第2の従動軸50aは、その一端(図5では後端)がスリット円板51を支持したロータリーエンコーダー52の回転軸52aに同芯配置で連結されると共に、その他端(図5では前端)が取付フレーム40の前壁部において凹溝46の下方に貫通形成された軸受け孔40b(図8参照)に対して回転自在に支持されている。
【0027】
そして、第2の従動軸50aの中央部には、第2の従動歯車としてのエンコーダーギア50が第2の従動軸50aと一体回転可能に設けられ、その上方に位置する駆動ギア48に対して鉛直下方から動力伝達可能に噛合している。すなわち、エンコーダーギア50は、駆動ギア48に対して、駆動軸42aから見て、従動ギア49が噛合する側とは反対側から噛合している。具体的には、各軸49a,42a,50aが第1の従動軸49aと第2の従動軸50aとの間に駆動軸42aを挟んで鉛直方向に延びる同一の直線上に位置しているため、従動ギア49及びエンコーダーギア50は駆動ギア48を上下両側から挟む正反対の位置に配置されている。
【0028】
なお、ロータリーエンコーダー52は、取付フレーム40よりも後方側の配設領域に設けられた図示しない支持フレームに固定されている。したがって、エンコーダーギア50が一体回転可能に設けられた第2の従動軸50aは、一端のみが片持ち支持された形態の駆動軸42a及び第1の従動軸49aとは異なり、その支持形態が軸方向の両端を回転自在に支持された両持ち支持形態とされている。
【0029】
図6はカッター機構38から本体部39を省略した部分断面図であるが、この図6に示すように、カッターユニット44のフレーム体45の前面には、切断部材としての丸刃53を回動自在に搭載したカッターキャリッジ54がシートS1,S2の搬送方向と交差する左右方向に往復移動可能に支持されている。丸刃53は、カッターキャリッジ54の下面の略中央部に設けられており、カッターキャリッジ54の下面から下方に突出している。また、図2に示すように、フレーム体45において丸刃53と上下に対向する位置には、下刃55が設けられている。下刃55は、フレーム体45の左右方向の略全域に亘って延びている。
【0030】
また、フレーム体45においてカッターキャリッジ54の移動領域(丸刃53の移動領域でもある)を挟んで従動ギア49の配設位置とは反対側となる右端部には、図示しない従動ギアが回転自在に設けられている。これらの従動ギア49は段付ギアであって、その軸方向先端側の大径部に駆動ギア48と噛合可能な歯部が形成されると共に、その大径部の基端側に連なる小径部は周面が円弧面のプーリー部49bとされている。そして、こうした左右一対の従動ギア49における両プーリー部49bの間には、カッターキャリッジ54に一部が連結された無端状のベルト56が掛装されている。
【0031】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について、特に、駆動モーター42の駆動ギア48がカッターキャリッジ54に対して駆動力を伝達する際の作用に着目して以下説明する。
【0032】
さて、本実施形態のプリンター11において、駆動モーター42の駆動軸42aが回転駆動すると、駆動軸42aの先端に設けられた駆動ギア48が回転する。すると、駆動ギア48に噛合している従動ギア49及びエンコーダーギア50が駆動ギア48に連れ回るように従動回転する。そして、従動ギア49及びエンコーダーギア50は、それらが動力伝達可能に各々連結されている負荷(カッターキャリッジ54及びスリット円板51)を駆動させると共に、その駆動負荷に応じた反力を駆動ギア48に対して作用させる。
【0033】
まず、従動ギア49の場合は、駆動ギア48から伝達される駆動力に基づき従動回転すると、プーリー部49bに掛装されているベルト56が周回移動する結果、ベルト56に連結されたカッターキャリッジ54を左右方向に移動させる。すると、カッターキャリッジ54に搭載された丸刃53が下刃55の刃先に対して左右方向に転動し、丸刃53及び下刃55に挟持されたシートS1,S2が丸刃53の移動方向となる左右方向に切断される。したがって、従動ギア49及びこれを支持した第1の従動軸49aには、丸刃53を搭載したカッターキャリッジ54及びこれを連結したベルト56を移動させるのに必要となる動力が負荷として加わり、その負荷に応じた反力が駆動ギア48及びこれを支持した駆動軸42aに作用する。
【0034】
一方、エンコーダーギア50の場合は、駆動ギア48から伝達される駆動力に基づき従動回転すると、第2の従動軸50a及び回転軸52aを介して連結されたスリット円板51が回転し、丸刃53の移動量を特定する従動ギア49の回転量に対応したエンコーダーギア50の回転量がロータリーエンコーダー52によって計測される。そして、エンコーダーギア50及びこれを支持した第2の従動軸50aには、スリット円板51を回転させるのに必要となる動力が負荷として加わり、その負荷に応じた反力が駆動ギア48及びこれを支持した駆動軸42aに作用する。
【0035】
なお、従動ギア49及び第1の従動軸49aにおけるカッターキャリッジ54等を移動させる際の駆動負荷は、エンコーダーギア50及び第2の従動軸50aにおけるスリット円板51を回転させる際の駆動負荷よりも大きい。そのため、駆動ギア48の駆動回転に伴い上側の従動ギア49及び下側のエンコーダーギア50の双方が従動回転した場合には、相対的に駆動負荷の大きい従動ギア49からの反力の方が相対的に駆動負荷の小さいエンコーダーギア50からの反力に勝るため、駆動ギア48に対しては従動ギア49から遠ざかる鉛直下方に向けて反力が作用する。なお、駆動ギア48の駆動軸42aは、その軸方向の一方側となる前方側のみが回転可能に片持ち支持されている。そのため、駆動ギア48及び駆動軸42aは、従動ギア49から鉛直下方に反力が作用すると、同方向に変位し易くなる。
【0036】
ここで、図7(a)〜図7(c)に示す比較例の歯車機構のように、駆動ギア48を挟んで従動ギア49とは反対側に設けられたエンコーダーギア50の第2の従動軸50aがその軸方向の一方側のみ(図7(b)では前方側のみ)を回転可能に片持ち支持されているとする。このような片持ち支持形態の場合、エンコーダーギア50及びこれを支持した第2の従動軸50aは、その軸方向と交差する方向に力が作用すると同方向に変位し易い。その結果、駆動ギア48が従動ギア49から作用する反力によって鉛直下方に押圧された場合、エンコーダーギア50は、駆動ギア48が鉛直下方に変位することを規制できない。そのため、駆動ギア48から従動ギア49への駆動力の伝達時には、図7(c)に示すように、駆動ギア48は、エンコーダーギア50と共に鉛直下方に変位して従動ギア49から位置ずれしつつ遠ざかる。そして、駆動モーター42の駆動軸42aは、駆動ギア48の変位に伴って偏心してしまう。
【0037】
この点、図8(a)及び図8(b)に示すように、本実施形態では、駆動ギア48を挟んで従動ギア49とは反対側に設けられたエンコーダーギア50の第2の従動軸50aが、その軸方向の両側を回転可能に両持ち支持されている。この場合、エンコーダーギア50は、その軸方向と交差する方向に力が作用したとしても同方向に変位し難い。その結果、駆動ギア48が従動ギア49から作用する反力によって鉛直下方に押圧された場合、エンコーダーギア50は、駆動ギア48が鉛直下方に変位することを規制する。そのため、駆動ギア48から従動ギア49への駆動力の伝達時に、駆動ギア48は、従動ギア49から遠ざかるように鉛直下方に変位することはほとんどなく、駆動モーター42の駆動軸42aが偏心することが抑制される。
【0038】
特に、本実施形態では、エンコーダーギア50は、駆動ギア48を挟んで従動ギア49とは正反対の位置に配置されている。そして、駆動ギア48から従動ギア49への駆動力の伝達時には、従動ギア49から駆動ギア48に作用する反力の作用方向とは正反対の方向から駆動ギア48に対して噛合する。そのため、エンコーダーギア50は、駆動ギア48が従動ギア49から遠ざかる方向に向けて変位することをより確実に抑制する。したがって、駆動モーター42からの駆動力の伝達時に駆動軸42aが偏心することがより確実に抑制される。
【0039】
また、本実施形態では、駆動ギア48、従動ギア49、及びエンコーダーギア50は、カッター機構38によるシートS1,S2の切断領域に対して屈曲状の脚部39a及び取付フレーム40によって仕切られた空間域に配置されている。この点で、屈曲状の壁部を有する脚部39a及び取付フレーム40は各ギア48〜50の配設領域と丸刃53の移動領域とを仕切る仕切り壁として機能する。そのため、カッター機構38がシートS1,S2を切断する際に生じる切り屑が駆動ギア48、従動ギア49、及びエンコーダーギア50に到達することが脚部39a及び取付フレーム40によって規制される。そのため、シートS1,S2の切り屑が駆動ギア48、従動ギア49、及びエンコーダーギア50の噛合部位に挟み込まれることにより、駆動ギア48を通じた駆動力の伝達動作が阻害されることが抑制される。
【0040】
なお、本実施形態では、丸刃53を有するカッターユニット44が取付フレーム40に対して鉛直上方から着脱自在に挿入される。そのため、消耗し易い丸刃53の交換は、カッターユニット44のユニット単位の着脱により簡便に行われる。
【0041】
上記実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)駆動ギア48に対してエンコーダーギア50が駆動力の伝達時に駆動ギア48が従動ギア49から受ける反力に抗する方向から噛合しているため、駆動ギア48は、従動ギア49から遠ざかる方向に反力を受けたとしても、エンコーダーギア50により同方向への変位が規制される。特に、両持ち支持された第2の従動軸50aに設けられたエンコーダーギア50は、従動ギア49からの反力を受けて駆動ギア48が駆動軸42aの軸方向と交差する方向に向けて変位することを確実に規制する。したがって、駆動モーター42からの駆動力の伝達時に駆動軸42aが偏心することを抑制できる。
【0042】
(2)駆動軸42aが両従動軸49a,50aのうち駆動負荷が大きい方の第1の従動軸49aに設けられた従動ギア49から反力を受けた場合でも、その従動ギア49とは反対側から駆動ギア48に噛合するエンコーダーギア50が設けられた駆動負荷が小さい方の第2の従動軸50aが両持ち支持されているため、その両持ち支持された第2の従動軸50aにより駆動ギア48が設けられた駆動軸42aの変位を抑制できる。
【0043】
(3)エンコーダーギア50は、駆動力の伝達時に従動ギア49から駆動ギア48に作用する反力の作用方向とは正反対の方向から駆動ギア48に反力を作用させるため、駆動ギア48が従動ギア49から遠ざかる方向に向けて変位することを効果的に抑制する。したがって、駆動モーター42からの駆動力の伝達時に駆動軸42aが偏心することをより確実に抑制できる。
【0044】
(4)丸刃53がシートS1,S2を切断する際の駆動負荷による反力を丸刃53に対して動力伝達可能に連結された従動ギア49から駆動ギア48が受けた場合にも、その従動ギア49とは反対側から駆動ギア48に対して噛合するエンコーダーギア50を設けた第2の従動軸50aが両持ち支持されているので、駆動ギア48の変位及び駆動軸42aの偏心を抑制できると共に、消耗しやすい丸刃53の交換をカッターユニット44のユニット単位の着脱により簡便に行うことができる。
【0045】
(5)丸刃53が移動してシートS1,S2を切断する際に生じる切り屑が各ギア48,49,50に到達することが取付フレーム40によって規制される。そのため、シートS1,S2の切り屑が各ギア48,49,50の噛合部位に挟み込まれることにより、各ギア48,49,50を通じた駆動力の伝達動作が阻害されることを抑制できる。
【0046】
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、駆動ギア48、従動ギア49、及びエンコーダーギア50の配設領域と、カッター機構38によるシートS1,S2の切断領域とを左側脚部39a及び取付フレーム40等によって構成される仕切り壁によって仕切らない構成としてもよい。
【0047】
・上記実施形態において、従動ギア49は、駆動ギア48に対して鉛直斜め上方から噛合するようにしてもよい。また、エンコーダーギア50は、駆動ギア48に対して鉛直斜め下方から噛合するようにしてもよい。すなわち、従動ギア49及びエンコーダーギア50は、駆動ギア48に対して反対側から噛合する構成であれば、必ずしも駆動ギア48を挟んで正反対の位置に配置される必要はない。
【0048】
・上記実施形態において、カッターユニット44は、本体部39に対して鉛直下方から装着されるようにしてもよい。この場合、エンコーダーギア50は、駆動ギア48を挟んで従動ギア49とは反対側となる上方側から駆動ギア48に対して噛合することが望ましい。
【0049】
・上記実施形態において、従動ギア49を有する第1の従動軸49aの軸線方向の両側を回転可能に両持ち支持する構成としてもよい。
・上記実施形態において、駆動力伝達機構は、駆動歯車を含む4つ以上の歯車によって構成してもよい。この場合、駆動歯車を挟んだ両側から駆動歯車に対して噛合する歯車のうち、少なくとも一方の歯車の回動軸が回転可能に両持ち支持されることが望ましい。
【0050】
・上記実施形態において、搬送対象となるターゲットはシートS1,S2に限定されず、任意の搬送媒体を採用してもよい。また、搬送媒体は、ロール状に巻かれた長尺状の搬送媒体に限定されず、単票状の搬送媒体を採用してもよい。
【0051】
・上記実施形態において、駆動ギア48を挟んで従動ギア49とは反対側から噛合する従動歯車はエンコーダーギア50に限定されず、駆動ギア48に対して噛合可能な従動歯車であれば任意の従動歯車を採用してもよい。
【0052】
・上記実施形態において、従動ギア49が駆動モーター42からの駆動力を伝達する駆動対象はカッターキャリッジ54に限定されず、駆動モーター42からの駆動力を伝達する駆動対象として任意の対象物を採用してもよい。
【0053】
・上記実施形態において、駆動源は、駆動モーター42に限定されず、任意の駆動方式の駆動源を採用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
39a…仕切り壁を構成する左側脚部、40…仕切り壁を構成する取付フレーム、42…駆動源としての駆動モーター、42a…駆動軸、48…駆動歯車としての駆動ギア、49…第1の従動歯車としての従動ギア、49a…第1の従動軸、50…第2の従動歯車としてのエンコーダーギア、50a…第2の従動軸、53…切断部材としての丸刃、S1,S2…ターゲットとしてのシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から伝達される駆動力に基づいて回転駆動可能に片持ち支持され、その自由端側に駆動歯車が一体回転可能に設けられた駆動軸と、
該駆動軸と間隔を置いて支持され、前記駆動歯車に対して噛合する第1の従動歯車が一体回転可能に設けられた第1の従動軸と、
該第1の従動軸と前記駆動軸とを結ぶ方向において該駆動軸よりも前記第1の従動軸から遠く離れた位置に前記駆動軸と間隔を置いて支持され、前記駆動歯車に対して前記駆動軸から見て前記第1の従動歯車が噛合する側とは反対側から噛合する第2の従動歯車が一体回転可能に設けられた第2の従動軸と
を備え、
前記第1の従動軸及び前記第2の従動軸のうち少なくとも一方は、両持ち支持されることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動力伝達機構において、
前記第1の従動軸及び前記第2の従動軸は、両従動軸のうち少なくとも駆動負荷が小さい方の従動軸が両持ち支持されることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の駆動力伝達機構において、
前記第1の従動軸及び前記第2の従動軸は、前記駆動軸の軸方向と交差する方向において前記両従動軸の間に前記駆動軸を挟んで正反対の位置に配置されることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の駆動力伝達機構において、
前記第1の従動軸及び前記第2の従動軸は、両従動軸のうち一方の従動軸が、搬送経路に沿って搬送されるターゲットを前記駆動源から伝達される駆動力に基づき前記ターゲットの搬送方向と交差する方向に移動することにより切断する切断部材に対して動力伝達可能に連結された状態で前記切断部材と共にユニット単位で着脱自在とされると共に、他方の従動軸が両持ち支持されていることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項5】
請求項4に記載の駆動力伝達機構において、
前記各歯車の配設領域と前記切断部材の移動領域とを仕切る仕切り壁を更に備えたことを特徴とする駆動力伝達機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50156(P2013−50156A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187904(P2011−187904)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】