説明

駆動力配分制御装置

【課題】安全に小回り制御を実行することができる駆動力配分制御装置を提供する。
【解決手段】車両1の各輪21〜24の空気圧に関する情報を取得する空気圧情報取得手段41〜44を備え、車両1の旋回時に内輪の駆動力を小さくし、車両1の機械的特性で決まる最小回転半径よりもさらに回転半径を小さくする小回り制御を行う際、旋回内輪の空気圧情報に基づいて、駆動力変更手段55により車両1前後の内輪に対する駆動力の配分を変更することで、空気圧が低下している内輪が小さい駆動力で旋回することを回避し、これによって、リム外れを回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動力を配分する駆動力配分制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の旋回時に、特定の車輪に制動力を付与し、車両の機械的特性で決まる最小回転半径よりもさらに回転半径を小さくし、小回り性を向上させる装置として、旋回内輪の後輪又は前輪に制動力を付与し、運転者の意思に反して車両が減速又は停止するのを防止する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−103517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の発明は、車両走行時において、車輪の駆動力を、車輪に付与する制動力で制御して小回り制御する装置である。ここで、車両走行時において、車輪に付与する制動力と車輪の駆動力との関係は、車輪に付与する制動力を大きくすると車輪の駆動力が小さくなり、反対に、車輪に付与する制動力を小さくすると車輪の駆動力が大きくなる。
【0004】
このような装置にあっては、旋回内輪の空気圧が低下している時に、旋回外輪の駆動力よりも旋回内輪の駆動力を小さくする小回り制御、例えば、旋回内輪に制動力を加える小回り制御が実行されると、タイヤの変形量が大きくなり、ホイール外縁のリムから外れるリム外れが起こりやすい。
【0005】
そこで本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、安全に小回り制御を実行することができる駆動力配分制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る駆動力配分制御装置は、車両の旋回時に、内輪の駆動力を外輪の駆動力より小さくする駆動力配分制御装置であって、車両の各輪の空気圧に関する情報を取得する空気圧情報取得手段と、旋回内輪の空気圧情報に基づいて、車両前後の内輪の駆動力の配分を変更する駆動力変更手段と、を備えて構成される。
【0007】
このように構成することによって、車両の旋回時に、車両の機械的特性で決まる最小回転半径よりもさらに回転半径を小さくする小回り制御を行う際、空気圧が低下している内輪が小さな駆動力で旋回することを回避することができる。これによって、リム外れを回避することができるため、安全に小回り制御を実行することができる。
【0008】
ここで、上記効果を一層奏する構成として、駆動力配分制御装置における駆動力変更手段は、車両進行方向に対して後側の内輪の空気圧情報が第1の所定値より低下していない場合には、車両進行方向に対して後側の内輪を第1の制動力で制動し、車両進行方向に対して後側の内輪の空気圧情報が第1の所定値より低下している場合には、車両進行方向に対して後側の内輪に対する制動力を第1の制動力より低い第2の制動力で制動すると共に車両進行方向に対して前側の内輪にも制動力を付与する構成とすることが好適である。
【0009】
さらに、上記構成において、駆動力変更手段は、車両進行方向に対して後側の内輪の空気圧情報が、第1の所定値より小さい第2の所定値より低下している場合には、車両進行方向に対して後側の内輪には制動力を付与しないと共に車両進行方向に対して前側の内輪にのみ制動力を付与する構成とすることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安全に小回り制御を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る駆動力配分制御装置を含む車両の構成図である。本実施形態に係る駆動力配分制御装置は、内輪の駆動力を外輪の駆動力より小さく制御する小回り制御機能を備えた車両に好適に用いられるものであり、車輪の駆動力を、車輪に付与する制動力で制御するものである。
【0013】
図1に示す車両1は、前後左右に備わる4つの車輪21〜24、エンジン6及びブレーキアクチュエータ31〜34を備えている。エンジン6は車両1の駆動源で、駆動輪に回転力、すなわち駆動力を付与するものであり、その出力はスロットルバルブの開閉で制御される。車輪21〜24は、車両1の走行手段であり、タイヤおよびホイールによって構成される。ブレーキアクチュエータ31〜34は、各車輪21〜24に対応して設けられ、各車輪21〜24を各々独立して制動するものであり、ここでは油圧式ブレーキが用いられる。
【0014】
また、車両1は、ECU5、シフトレバー7および舵角センサ8を備えている。ここで、ECU(Electronic Control Unit)とは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されるものである。
【0015】
このECU5は、前後旋回方向検出部51、小回り制御部54を備えている。前後旋回方向検出部51は、シフトレバー7の位置に基づいて車両1の進行方向(前進または後進)を判断すると共に、舵角センサ8から得られたハンドル舵角に基づいて車両1の旋回方向を判断し、これにより、車両進行方向に対して前後となる車輪および旋回方向に対して内輪となる車輪を決定する機能を備えている。また、小回り制御部54は、旋回方向内輪に対する制動力を外輪に対する制動力より大きく制御する小回り制御機能を備えている。この小回り制御部54は、アクセル踏み込み量に対応したスロットルバルブ開閉の信号をエンジン6に送信することで、車両1をシフトレバー7および舵角センサ8で決定される方向に旋回させる一方で、旋回方向内輪に対する制動力制御の信号を、旋回方向内輪に対応するブレーキアクチュエータに送信し、所定の制動力を旋回方向内輪に付与する(旋回方向内輪の制御に関しては後述)。
【0016】
ここで、特に本実施形態の車両1は、より一層安全に小回り制御を実行するための駆動力配分制御装置を備えている。この駆動力配分制御装置は、空気圧情報取得手段41〜44と、駆動力変更手段55とにより構成されている。
【0017】
空気圧情報取得手段41〜44は、ここではタイヤ空気圧センサであり、これらのタイヤ空気圧センサ41〜44は、各車輪21〜24にそれぞれ配置され、直接タイヤの空気圧を測定するものである。そして、タイヤ空気圧センサ41〜44は、取得したタイヤ空気圧を駆動力変更手段55へ出力する機能を備えており、例えば無線電波によって出力する。
【0018】
駆動力変更手段55は、ECU5に備わるもので、空気圧判定部52および制動力変更部53を有している。空気圧判定部52は、タイヤ空気圧センサ41〜44から得られたタイヤ空気圧を入力し、このタイヤ空気圧と予め定められた所定値とを比較し、大小関係を判定する機能を備えている。この空気圧判定部52は、判定結果を制動力変更部53へ出力する機能を備えている。
【0019】
制動力変更部53は、空気圧判定部52から得られた判定結果を入力すると共に、上記前後旋回方向検出部51から、車両進行方向に対して前後となる車輪および旋回方向に対して内輪となる車輪の情報を入力し、これらの入力に基づいて、旋回方向内輪であって車両の進行方向前輪(車両進行方向前側の車輪)および後輪(車両進行方向後側の車輪)に対する制動力を変更する値を決定し、この変更値を小回り制御部54へ出力する機能を備えている。そして、上記小回り制御部54は、制動力変更部53において変更した制動力を入力し、これに基づいて車両1の小回り制御を行う。
【0020】
次に本実施形態に係る駆動力配分制御装置の動作について説明する。以下では、車輪21はフロント右輪21、車輪22はリア右輪22、車輪23はフロント左輪23、車輪24はリア左輪24とする。
【0021】
図2及び図3は、本実施形態に係る駆動力配分制御装置の動作を示すフロー図である。図2及び図3に示す制御処理は、ECU5で実行し、例えば舵角センサ8から得られた舵角(右旋回、左旋回)の絶対値が所定値以上の大きさになった場合に実行する。
【0022】
まず、図2の処理が開始されると、前後旋回方向検出部51において、S10の制御対象車輪決定処理を開始する。S10の処理は、シフトレバー7の位置および舵角センサ8から得られたハンドル舵角から車両進行方向に対して前後となる車輪および旋回方向に対して内輪となる車輪を決定する処理である。例えば、シフトレバー7が前進の位置にあり、ハンドルが時計回りに切られた場合、車両1は前進しながら時計回りに旋回していると判断し、フロント右輪21およびリア右輪22が旋回方向の内輪であると共に、フロント右輪21が車両進行方向前輪、リア右輪が車両進行方向後輪であり、小回り制御をする際の制御対象車輪であると決定する。以下では、説明理解の容易性を考慮して、車両1が前進し時計回りに旋回している場合を例にして説明する。S10の処理が終了すると、S12のタイヤ空気圧の入力処理へ移行する。
【0023】
S12の処理は、S10で判断した旋回方向の内輪、すなわちフロント右輪21およびリア右輪22のタイヤ空気圧を検出する処理であり、具体的には、タイヤ空気圧センサ41〜44によって取得された全ての車輪のタイヤ空気圧のうち、フロント右輪21およびリア右輪22のタイヤ空気圧を入力する処理である。S12の処理が終了すると、S14のリア右輪22の空気圧判定処理に移行する。
【0024】
S14の処理は、空気圧判定部52で実行し、S12の処理で得られたリア右輪22のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A(第2の所定値)未満であるか否かを判定する処理である。
【0025】
ここで、図4を用い空気圧閾値に基づく油圧ブレーキ制御について説明する。図4は、制御対象車輪のタイヤ空気圧に対応するブレーキ油圧制御パターンである。このブレーキ油圧制御パターンは、制御対象車輪のタイヤ空気圧が、例えば標準のタイヤ空気圧である第1空気圧閾値A(第1の所定値)以上である場合は、制御対象車輪に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧を通常の小回り制御で使用される一定値Bとし、他方、第1空気圧閾値A未満である場合は、制御対象車輪に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧を小さく制御するものである。
【0026】
具体的には、第1空気圧閾値Aよりもタイヤ空気圧が小さい所定のタイヤ空気圧を第2空気圧閾値Aとし、これらの閾値A,Aに基づいて、制御対象車輪に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧を決定する。制御対象車輪のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満の場合は、空気圧が低下しているため安全に小回り制御が実行できないとして制御対象車輪に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧を0とする。また、制御対象車輪のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上で第1空気圧閾値A未満の場合は、制御対象車輪に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧を、第2空気圧閾値Aに対応し、ブレーキ油圧B(第1油圧)より小さいブレーキ油圧B(第2油圧)とする。
【0027】
図2のS14の処理に戻り、リア右輪22のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満の場合は、S16のフロント右輪21のタイヤ空気圧と第2空気圧閾値Aとを比較する処理に移行する。他方、リア右輪22のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上の場合は、S28のリア右輪22のタイヤ空気圧と第1空気圧閾値Aとを比較する処理に移行する。
【0028】
S16の処理は、空気圧判定部52で実行し、リア右輪22のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満の場合において、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満であるか否かを判定する処理である。S16の処理において、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満の場合は、S18の制動力変更処理へ移行する。他方、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上の場合は、S20のフロント右輪21のタイヤ空気圧と第1空気圧閾値Aとを比較する処理に移行する。
【0029】
S18の処理は、制動力変更部53で実行し、旋回方向内輪すなわちリア右輪22およびフロント右輪21の制動力を変更する処理である。S18の処理では、車両1の旋回内輪であるフロント右輪21およびリア右輪22のタイヤ空気圧が低下しているため、小回り制御を実行するとリム外れが起こる可能性があると判断し、フロント右輪21およびリア右輪21のブレーキ油圧を0に設定して制御処理を終了する。
【0030】
S20の処理は、空気圧判定部52で実行し、リア右輪22のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満で、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上の場合において、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A未満であるか否かを判定する処理である。S20の処理において、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A未満の場合は、S22の制動力変更処理へ移行する。他方、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A以上の場合は、S26の制動力変更処理へ移行する。
【0031】
S22の処理は、制動力変更部53で実行し、リア右輪22およびフロント右輪21の制動力を変更する処理である。S22の処理では、リア右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満のため、小回り制御を実行するとリム外れが起こる可能性があると判断し、リア右輪22に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧を0に設定すると共に、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上で第1空気圧閾値A未満のため、フロント右輪21に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧をBに設定する。S22の処理が終了すると、S24の小回り制御処理へ移行する。この小回り制御処理は、小回り制御部54で実行し、前述したように、決定された制動対象内輪に、決定された制動力を付与しながら旋回を行うものである。そして、小回り制御処理が終了すると、制御処理を終了する。
【0032】
S26の処理は、制動力変更部53で実行し、リア右輪22およびフロント右輪21の制動力を変更する処理である。S26の処理では、リア右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満のため、小回り制御を実行するとリム外れが起こる可能性があると判断し、リア右輪22に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧を0に設定すると共に、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A以上のため、フロント右輪21に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧をBに設定する。S26の処理が終了すると、S24の小回り制御処理へ移行する。
【0033】
一方、図3に示すS28の処理は、空気圧判定部52で実行し、S14の処理でリア右輪22のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上の場合で、第1空気圧閾値A未満であるか否かを判定する処理である。S28の処理では、リア右輪22のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A未満の場合はS30のフロント右輪21のタイヤ空気圧と第2空気圧閾値Aとを比較する処理に移行する。他方、リア右輪22のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A以上の場合は、S40の制動力変更処理へ移行する。
【0034】
S40の処理は、制動力変更部53で実行し、リア右輪22およびフロント右輪21の制動力を変更する処理である。S40の処理では、リア右輪22のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A以上のため、旋回方向内輪の後輪すなわちリア右輪22のタイヤ空気圧は標準のタイヤ空気圧であると判断し、リア右輪22に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧をBに設定すると共に、通常の小回り制御が可能なため、フロント右輪21には制動力は配分せず、フロント右輪21に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧を0に設定する。S40の処理が終了すると、S24の小回り制御処理へ移行する。
【0035】
S30の処理は、空気圧判定部52で実行し、リア右輪22のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上且つ第1空気圧閾値A未満の場合で、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満であるか否かを判定する処理である。S30の処理では、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満の場合は、S32の制動力変更処理へ移行する。他方、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上の場合は、S34のフロント右輪21のタイヤ空気圧と第1空気圧閾値Aとを比較する処理に移行する。
【0036】
S32の処理は、制動力変更部53で実行し、リア右輪22およびフロント右輪21の制動力を変更する処理である。S32の処理では、リア右輪22のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上で、第1空気圧閾値A未満のため、リア右輪22に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧をBに設定すると共に、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A未満のため、小回り制御を実行するとリム外れが起こる可能性があると判断し、フロント右輪21に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧を0に設定する。S32の処理が終了すると、S24の小回り制御処理へ移行する。
【0037】
S34の処理は、空気圧判定部52で実行し、リア右輪22のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上且つ第1空気圧閾値A未満の場合、且つフロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値A以上の場合で、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A未満であるか否かを判定する処理である。S34の処理では、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A未満の場合は、S36の制動力変更処理へ移行する。他方、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A以上の場合は、S38の制動力変更処理へ移行する。
【0038】
S36の処理は、制動力変更部53で実行し、リア右輪22およびフロント右輪21の制動力を変更する処理である。S36の処理では、リア右輪22は第2空気圧閾値A以上で第1空気圧閾値A未満のため、リア右輪22に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧をBに設定すると共に、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第2空気圧閾値Aより大きく第1空気圧閾値A未満のため、フロント右輪21に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧をBに設定する。S36の処理が終了すると、S24の小回り制御処理へ移行する。
【0039】
S38の処理は、制動力変更部53で実行し、リア右輪22およびフロント右輪21の制動力を変更する処理である。S38の処理では、リア右輪22は第2空気圧閾値A以上で第1空気圧閾値A未満のため、リア右輪22に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧をBに設定すると共に、フロント右輪21のタイヤ空気圧が第1空気圧閾値A以上のため、フロント右輪21に対応する油圧ブレーキのブレーキ油圧をBに設定する。S38の処理が終了すると、S24の小回り制御処理へ移行する。
【0040】
このように、本実施形態に係る駆動力配分制御装置によれば、車両1が小回り制御を行う際、旋回方向内輪のタイヤ空気圧に基づいて車両1前後の内輪に対する制動力の配分を変更するため、空気圧が低下している内輪に対して大きな制動力を付与することを回避することができる。これによって、リム外れを回避することができるため、安全に小回り制御を実行することができる。
【0041】
なお、車両1が反時計回りに旋回する場合には処理手順の右輪を左輪に代えれば良く、また、車両1が後進する場合には、処理手順のフロント輪、リア輪を逆にすれば良い。
【0042】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、ブレーキアクチュエータとして油圧ブレーキを用いた場合を説明したが、例えばディスクブレーキを用いた場合にも同様に適用できる。
【0043】
また、空気圧情報取得手段として直接測定方式の空気圧センサを用いた場合を説明したが、例えば車速センサ等に基づいて空気圧を計算から求めても良く、要は、各輪の空気圧に関する情報を取得できれば良い。
【0044】
また、油圧ブレーキを2つの閾値を用いて段階的に制御する方法を説明したが、1つの閾値や3つ以上の閾値を用いて段階的に制御しても良い。また、ブレーキ油圧制御パターンに基づいて連続的に制御するようにしても良い。
【0045】
また、一つのブレーキ油圧制御パターンを用いて制御する方法を説明したが、タイヤごとにブレーキ油圧制御パターンを用意し、それぞれのブレーキ油圧制御パターンを用いて制御しても良い。
【0046】
さらに、上記実施形態では、車輪の駆動力を、車輪に付与する制動力で制御して小回り制御する例を示したが、車輪の駆動力は、車輪に付与する制動力のみならず、例えばエンジン6の出力の大きさで制御することも可能である。この場合、上記実施形態に記載した制動力を用いた小回り制御方法に対して、車輪に付与する制動力が大きいと車輪の駆動力が小さくなり、車輪に付与する制動力が小さいと車輪の駆動力が大きくなるという関係を適用することによって、小回り制御を駆動力で実現できる。例えば、車両が旋回する際、旋回方向内輪で進行方向に対して後輪の空気圧が小さい場合は、当該車輪の駆動力を大きくすると共に、旋回方向内輪で進行方向に対して前輪の駆動力を小さくすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態に係る駆動力配分制御装置を搭載した車両の構成図である。
【図2】図1中の駆動力配分制御装置の動作を示すフロー図である。
【図3】図1中の駆動力配分制御装置の動作を示すフロー図である。
【図4】制御対象車輪の空気圧に対応するブレーキ油圧制御パターンである。
【符号の説明】
【0048】
1…車両、21〜24…車輪、41〜44…空気圧センサ(空気圧情報取得手段)、52…空気圧判定部(駆動力変更手段)、53…制動力変更部(駆動力変更手段)、54…小回り制御部、55…駆動力変更手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の旋回時に、内輪の駆動力を外輪の駆動力より小さくする駆動力配分制御装置であって、
前記車両の各輪の空気圧に関する情報を取得する空気圧情報取得手段と、
旋回内輪の空気圧情報に基づいて、前記車両前後の内輪の駆動力の配分を変更する駆動力変更手段と、
を備えることを特徴とする駆動力配分制御装置。
【請求項2】
前記駆動力変更手段は、車両進行方向に対して後側の内輪の空気圧情報が第1の所定値より低下していない場合には、車両進行方向に対して後側の内輪を第1の制動力で制動し、車両進行方向に対して後側の内輪の空気圧情報が第1の所定値より低下している場合には、車両進行方向に対して後側の内輪に対する制動力を前記第1の制動力より低い第2の制動力で制動すると共に車両進行方向に対して前側の内輪にも制動力を付与すること、
を特徴とする請求項1に記載の駆動力配分制御装置。
【請求項3】
前記駆動力変更手段は、車両進行方向に対して後側の内輪の空気圧情報が、前記第1の所定値より小さい第2の所定値より低下している場合には、車両進行方向に対して後側の内輪には制動力を付与しないと共に車両進行方向に対して前側の内輪にのみ制動力を付与すること、
を特徴とする請求項2に記載の駆動力配分制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate