説明

駆動機構の連結解除

本発明は、車両の車軸駆動機構を連結解除する装置(10)に関するものである。この装置は、ドライブシャフト(11)の近傍に配置されて、ドライブシャフト(11)の連結先である被駆動ユニットとの連結解除/連結を行なうものである。装置(10)は、−ドライブシャフト(11)の端部(13)の周りに装着される少なくとも1つのベアリング(12)と、−ユニット、又はドライブシャフトに連結されるキャリア(14)であって、ドライブシャフトの端部(13)及びベアリング(12)を取り囲むために十分大きい内部キャビティを有し、かつベアリング(12)に固定されて、ドライブシャフト(11)に対して回転自在であるキャリア(14)と、−ドライブシャフト(11)に回転可能に連結されて、ドライブシャフト(11)に対して軸方向に移動可能な連結リング(15)と、−連結リング(15)を少なくとも部分的に取り囲み、かつドライブシャフト(11)に対して軸方向に移動可能な連結フォーク(17)と、−連結フォーク(17)に作用して、ドライブシャフト(11)に沿って軸方向に連結フォーク(17)を移動させる作動装置(20)とを備えており、このような構成により、ドライブシャフト(11)をユニットに連結する際に、作動装置(20)によって連結フォーク(17)及び連結リング(15)が軸方向にキャリア(14)に向かって移動することにより、ドライブシャフト(11)がキャリア(14)及びユニットに連結リング(15)を介して回転可能に連結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文に記載の車両の車軸駆動機構を連結解除する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の車軸を有し、かつ険しい地形における重量物輸送及び/又は重量物運搬に用いられる大型車両には、多くの場合、車軸のうちの2つ以上に駆動機構が設けられている。
【0003】
しかしながら、もっと多数の車軸に駆動機構が設けられている車両は、駆動される余分なシャフトが車両の推進のためには必要ではない状況において使用される場合においても、もっと少数の車軸に駆動機構が設けられている車両よりも燃料消費量が多くなる傾向を有する。燃料消費量がこのように多くなるのは、主として、動力伝達を行なうギア装置を種々のドライブシャフトに連結する際の摩擦損失が大きくなることに起因する。
【0004】
したがって、市場には、不要な1つ以上の車軸の駆動機構を連結解除して、車両の燃料消費量を減らそうとする種々のシステムが存在する。
【0005】
特許文献1に記載される車軸駆動機構を連結解除するシステムは、ドライブシャフトギア内部に配置された連結解除装置を備える。しかしながら、ドライブシャフトギア内部の利用可能なスペースは、多くの異なる構成要素をその内部に収容する必要があるという点で極めて限定されている。大きな力が加わるドライブシャフト及び連結解除装置を有する重量車両にこのような解決策を適用することは、利用可能なスペースに、このような大きな荷重を伝達する機能を備える連結解除装置を収容することが極めて複雑であることを意味する。
【0006】
特許文献2に記載される車軸駆動機構を連結解除する別のシステムは、ドライブシャフトギアから出力シャフトに向かって近い位置に配置される連結解除装置を有する。この装置は、従来型ドライブシャフトとドライブシャフトに連結されるパワートレーン部品群との間に配置される余分なシャフトを備えている。しかしながら、余分なドライブシャフトを用いるこの解決策は、連結解除装置が相当大きな軸方向スペースを占有して、ドライブシャフトギアの軸方向長さが長くなることを意味する。
【0007】
したがって、小さなスペースしか占有せず、かつ大きなトルクを伝達することができる車両の車軸駆動機構を連結解除する装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4046210号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0272866号
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、上述の必要性を満たす連結解除装置を提案することである。
【0010】
この目的は、独立請求項に記載の装置により達成される。車両の車軸駆動機構を連結解除する装置は、ドライブシャフトの近傍に配置されて、ドライブシャフトの連結先である被駆動ユニットとの連結解除/連結を行なうように意図されて、
−ドライブシャフトの端部の周りに装着される少なくとも1つのベアリングと、
−ユニット、又はドライブシャフトに連結されるキャリアであって、ドライブシャフトの端部、及びベアリングを取り囲むために十分大きい内部キャビティを有し、かつベアリングに固定されて、ドライブシャフトに対して回転自在であるキャリアと、
−ドライブシャフトに回転可能に連結されて、ドライブシャフトに対して軸方向に移動可能な連結リングと、
−連結リングを少なくとも部分的に取り囲み、ドライブシャフトに対して軸方向に移動可能な連結フォークと、
−連結フォークに作用して、ドライブシャフトに沿って軸方向に連結フォークを移動させる作動装置と
を備えており、
ドライブシャフトをユニットに連結する際に、作動装置によって連結フォーク及び連結リングが軸方向にキャリアに向かって移動することにより、ドライブシャフトがキャリア及びユニットに連結リングを介して回転可能に連結される。
【0011】
本装置は、装置をギアボックスの出力ドライブシャフトの近傍に配置することができるが、ギアボックスとは別体とすることができるという利点を有する。これは、既存のギアボックスに長時間及び多額の費用を要する変更を加える必要なく、装置をこれらのギアボックスと容易に組み合わせることができるという点で大きな利点となる。
【0012】
装置をギアボックスとは別体とすることができるということは、更に、装置の構成部品のために極めて大きなスペースを利用することができるので、これらの部品の寸法を、大型車両のドライブシャフトを介して伝達される大きな力に耐えるように決定することができることを意味する。
【0013】
装置はまた、装置を満足に機能させるために、ギアボックス又はドライブシャフトギアに一体化する必要がないことから、既存の車両に容易に装着することができる。
【0014】
本発明による装置の別の大きな利点は、ドライブシャフトの軸方向長さを変更せずに既存の構成に組み込むことができることであり、キャリアが被駆動ユニットに連結されることによるほぼ唯一の結果は、トルクをキャリアからユニットに伝達するためのドライブシャフトがやや短くなることである。これは、とくに、連結解除装置をドライブシャフトの端部の周りに配置することにより可能になる。
【0015】
本発明による装置がギアボックスとは別体であるということはまた、例えば保守又は修理の際に、装置へのアクセスが非常に容易であることを意味する。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、キャリアはユニバーサルジョイントの一部に隣接する。装置、及び装置の部品の占めるこの位置によって、この連結/連結解除機構を持たない既存のシステムに加える変更を最小限に抑えることができる。これはまた、装置がギアボックス又は駆動機構とは、ドライブシャフトの反対側端部において完全に別体であることを意味する。
【0017】
装置の1つの実施形態では、キャリア及び連結リングの相互対向側面に噛合歯が設けられる。これは、キャリアと連結リングとの連結が確実に行われるという結果をもたらし、かつ動力伝達を満足できる方法で可能にする実施形態である。
【0018】
装置の1つの実施形態では、シャフトに中間要素を介してスプライン結合により連結リングを回転可能に連結することにより、連結リングをシャフトに対して軸方向に移動させることができる。この実施形態によって、装置の機能にとって重要となる特徴が締結位置で得られると同時に、トルク伝達時の噛み合い力が妥当な値に保持される。
【0019】
装置の1つの実施形態では、連結フォークが連結リング及びシャフトと一緒に回転することが阻止される。この実施形態によって、簡単かつ機能的な製品が得られる。
【0020】
装置の1つの実施形態では、作動装置は、圧縮空気又は電動モータにより駆動されて、連結リングをキャリアに連結する/キャリアから連結解除する場合に、連結フォークに対して軸方向に作用する。圧縮空気は、多くの車両において、例えばブレーキシステムなどに使用されるので、既存のシステムに良好に使用できる。
【0021】
装置の1つの実施形態では、連結フォークは連結リングの外周の溝に沿って係合する。これらの部品のこのような構成により、簡単かつ確実な解決策が得られ、これにより、連結フォークが連結リングの外周の溝の中を摺動する。
【0022】
本発明はまた、少なくとも1つのギアボックスと、ギアボックスから延びる出力ドライブシャフトと、本発明の実施形態のいずれかによる装置とを備える車両に関するものである。本発明は、例えばタンデム駆動を行なうトラックに装着される場合に、必要でない全てのドライブシャフトを連結解除することにより、車両の燃料消費量を少なくすることができるので、極めて大きな利点をもたらすことができる。
【0023】
車両の1つの実施形態では、装置は、ユニバーサルジョイントの近傍に配置される。このような配置及び構成は、既に組み立てられている車両に装置を、組み込むために車両の他の構成要素のほとんどを変更する必要がないことを意味する。
【0024】
本発明は、図1を参照しながら以下に更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、ドライブシャフト11を、ユニット(図示しない)に連結する/ユニット(図示しない)から連結解除する装置10の第1の実施形態を示している。図示された装置10の実施形態は、ドライブシャフト11の周りで、ドライブシャフト11の端部13の近傍に装着されてキャリア14を支持する2つのベアリング12を備える。
【0027】
キャリア14は、ドライブシャフト11よりも大きい外径を有し、キャリア内部のキャビティの直径が2つのベアリング12の外径よりも大きいことにより、キャリアをドライブシャフト11の端部13及び端部ナットを取り囲んで配置することができる。キャリア14は、ベアリング12に固定されており、したがってドライブシャフト11に対して回転自在である。キャリア14の端部の外周全体には歯車の軌道18が設けられており、キャリア14の、ドライブシャフト11とは反対方向の反対側端部は、この実施形態では、駆動力を伝達し、動力伝達システムにおける角度補正を行なうために使用されるユニバーサルジョイントの一部を構成する。
【0028】
装置は更に、ドライブシャフト11に対して、回転可能に、かつ軸方向に移動可能な連結リング15を備える。これは、連結リング15をドライブシャフト11に回転可能に連結するスプライン結合により可能になると同時に、リングはスプライン結合部に沿って摺動することができる。この結合部は、ドライブシャフト11と連結リング15との互いに対向する面に形成された、スプラインと通称される複数の突起又は溝の形態を採る。それぞれの表面に形成されるこれらのスプラインが互いに係合することにより、リング15とシャフト11とが互いに対して軸方向に移動可能であるとともに、互いに対して回転することが阻止される。連結リング15は、ドライブシャフト11の周りにじかに配置されるか、又は中間要素16がドライブシャフト11と連結リング15との間に更に配設されているこの図のように配置される。要素16の軸方向外側端部には、キャリア14のベアリング12用のベアリングシートが設けられ、要素の半径方向外側部分にはスプラインが設けられて、これらのスプラインが連結リング15上の対応するスプラインに係合することにより、リング15は要素16に対し、リング15と要素16との間のスプライン結合部に沿って軸方向に移動可能である。要素16と連結リング15との間のスプライン結合部の半径方向位置は、スプライン結合部の軸方向の範囲において噛み合い力を管理することができるように適合される。
【0029】
連結リング15の周りに配置される連結フォーク17は、連結リング15を少なくとも部分的に取り囲むように構成される。連結リング15と同じように、連結フォーク17は、ドライブシャフト11に対して軸方向に移動可能である。連結フォーク17は、連結リング15の外側表面の溝を介して連結リングに係合し、連結/連結解除のための連結フォークの機能は、連結リング15を、キャリアとの係合状態とキャリアとの係合解除状態との間で移動させることである。連結フォーク17は、周囲の構造に固く固定される。
【0030】
装置は更に作動装置20を備え、この作動装置20は、連結フォーク17に作用することにより、連結フォーク17と、従って連結フォーク17に固く固定された連結リング15とを、ドライブシャフト11に沿って軸方向に移動させる。作動装置20は、連結フォーク17と、関連する連結リングとを、所望の方向へと必要に応じて動かす限り、種々の態様に構成することができる。
【0031】
被駆動ユニットの駆動機構が連結されていないとき、連結リング15の歯19とキャリア14の歯車の軌道18との噛合は生じない。したがって、ドライブシャフトの回転はキャリア14に伝達されない。駆動されるユニット(図示しない)にドライブシャフト11を連結する場合、作動装置20から遠ざかるように連結フォーク17を軸方向に移動させるように、制御装置(図示しない)を介して作動装置20を作動させる。次に、連結フォーク17が移動すると、連結フォーク17と連結リング15との係合により、連結リング15もキャリア14に向って軸方向に移動する。連結リング15がキャリアに達すると、キャリア上の歯車の軌道18と連結リング15上の歯19が噛合することにより、キャリア14がドライブシャフト11に回転可能に係止されて、必要なトルクをドライブシャフト11から被駆動ユニット(図示しない)に連結リング15及びキャリア14を介して伝達することができる。
【0032】
図には、ドライブシャフト11を安定させるベアリング21、装置10の構成部品を保護する周囲スリーブ22、及び構造体23も示されており、この構造体23に装置が固く固定されている。キャリア14と、連結リング15を介してキャリア14が連結解除/連結する際に連動するキャリア14の部品とは、共に、ベアリング21を軸方向に超えた位置でドライブシャフト11の端部に配置される。キャリア14は、キャリア14の半径方向外側表面に位置するシール要素に対して回転することができ、これらのシール要素はスリーブ22の密封性を確保する。
【0033】
本発明は、1つの実施形態に基づいて説明されているが、装置、及びこれらの構成部品の構成は、本発明の概念から逸脱することなく変更することができる。例えば、
−これらの部品の構成を変更することができる。
−更に別の部品又は構成要素を追加して、装置を特定用途向けに最適化することができる。
−既存のシステム内の装置の特定の位置を、背景にある要求、例えば利用可能なスペースを考慮に入れて変更することができる。
【0034】
本発明について、幾つかの例示的な実施形態に基づいて上に説明しているが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に基づいて定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸駆動機構を連結解除する装置(10)であって、ドライブシャフト(11)の近傍に配置されて、ドライブシャフト(11)の連結先である被駆動ユニットとの連結解除/連結を行なうように意図されており、
−ドライブシャフト(11)の端部(13)の周りに装着される少なくとも1つのベアリング(12)と、
−ユニット又はドライブシャフトに連結されるキャリア(14)であって、ドライブシャフトの端部(13)及びベアリング(12)を取り囲むために十分に大きい内部キャビティを有し、かつドライブシャフト(11)に対して回転自在にベアリング(12)に固定されるキャリア(14)と、
−ドライブシャフト(11)に回転可能に連結され、かつドライブシャフト(11)に対して軸方向に移動可能な連結リング(15)と、
−連結リング(15)を少なくとも部分的に取り囲み、かつドライブシャフト(11)に対して軸方向に移動可能な連結フォーク(17)と、
−連結フォーク(17)に作用して、ドライブシャフト(11)に沿って軸方向に連結フォーク(17)を移動させる作動装置(20)と
を備えており、
このような構成により、ドライブシャフト(11)をユニットに連結する際に、連結フォーク(17)及び連結リング(15)が作動装置(20)によって軸方向にキャリア(14)に向かって移動して、ドライブシャフト(11)がキャリア(14)及びユニットに連結リング(15)を介して回転可能に連結される、装置(10)。
【請求項2】
キャリア(14)がユニバーサルジョイントの一部に隣接することを特徴とする、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
キャリア(14)及び連結リング(15)の互いに対向する側面に噛合歯が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(10)。
【請求項4】
連結リング(15)をドライブシャフト(11)に対して軸方向に移動させることができるスプライン結合により、連結リング(15)がドライブシャフト(11)に回転可能に連結されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項5】
スプライン結合が、連結リング(15)とドライブシャフト(11)に対して中間に位置する要素(16)との間に構成され、要素(16)が、ドライブシャフト(11)上にトルクを伝達可能に配置され、かつキャリア(14)のベアリング(12)を支持していることを特徴とする、請求項4に装置(10)。
【請求項6】
連結フォーク(17)が、連結リング(15)及びドライブシャフト(11)と一緒に回転することが阻止されることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項7】
作動装置(20)が、圧縮空気又は電動モータにより駆動され、連結リング(15)をキャリア(14)に連結する/キャリア(14)から連結解除する場合に、連結フォーク(17)に対して軸方向に作用することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項8】
連結フォーク(17)が連結リング(15)の外周の溝に沿って係合することを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項9】
少なくとも1つのギアボックス又はシャフトギアと、ギアボックス又はシャフトギアから延びる出力ドライブシャフトと、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の装置(10)であって、ギアボックス又はシャフトギアとは別体である装置(10)とを備える車両。
【請求項10】
装置(10)が、第1駆動輪シャフトと第2駆動輪シャフトとの間で駆動力を伝達するユニバーサルジョイントの近傍に配置される、請求項9に記載の車両。

【図1】
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【公表番号】特表2013−505164(P2013−505164A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529712(P2012−529712)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050977
【国際公開番号】WO2011/034489
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(500190915)スカニア シーブイ アクチボラグ(パブル) (64)
【Fターム(参考)】