駆動装置、これを備えたテープ印刷装置およびステッピングモーターの制御方法
【課題】2つの駆動部に対する駆動部毎のトルク制御を、簡単且つ適切に行うことができる。
【解決手段】動力源を構成するステッピングモーターであるカッターモーター63と、カッターモーター63の正回転が入力されて駆動するフルカッター61と、カッターモーター63の逆回転が入力されて駆動するハーフカッター62と、カッターモーター63を制御する制御部200と、を備え、制御部200は、フルカッター61の負荷およびハーフカッター62の負荷に応じて、カッターモーター63に印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変する変調手段を有している。
【解決手段】動力源を構成するステッピングモーターであるカッターモーター63と、カッターモーター63の正回転が入力されて駆動するフルカッター61と、カッターモーター63の逆回転が入力されて駆動するハーフカッター62と、カッターモーター63を制御する制御部200と、を備え、制御部200は、フルカッター61の負荷およびハーフカッター62の負荷に応じて、カッターモーター63に印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変する変調手段を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモーターを用いて2つの駆動部を駆動する駆動装置、これを備えたテープ印刷装置およびステッピングモーターの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステッピングモーターではないが、DCモーターを駆動源とする駆動装置として、処理テープの切断装置が知られている(特許文献1参照)。この切断装置は、フルカット機能を有した第1の切断機構と、ハーフカット機能を有した第2の切断機構と、これらを駆動する単一のカッターモーターと、カッターモーターの駆動に基づいて第1の切断機構および第2の切断機構を駆動する駆動機構と、を備えている。カッターモーターは、DCモーターで構成され、駆動機構は、カム機構によりカッターモーターの正逆両方向の回転動力を、それぞれ第1の切断機構および第2の切断機構に伝達する。すなわち、カッターモーターが正方向に回転駆動されたときに第1の切断機構が切断動作し、カッターモーターが逆方向に回転駆動されたときに第2の切断機構が切断動作する。また、カッターモーターに一定以上の負荷(過負荷)がかかることを防ぐために、駆動機構の伝達機構中に、単一のトルクリミッターが介挿されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4539620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の切断装置では、単一のトルクリミッターを用いて、カッターモーターが過負荷となるのを防止することはできるが、第1の切断機構を駆動する時の回転速度およびトルクの制御値と、第2の切断機構を駆動する時の回転速度およびトルクの制御値とが同一にならざるを得ない。このため、両切断機構における駆動時の負荷(負荷トルク)が異なる場合、これに適切に対応させることができない。すなわち、2つの切断機構に対し動力伝達機構によりテコの原理を応用して対応させることはできるが、動力伝達機構が大型化および複雑化し、適切・安定なトルク制御を行うことができないという問題があった。これに対し、切断機構毎にトルクリミッターを取り付けることも考えられるが、これでは、装置が複雑になってしまい、装置が大型化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、2つの駆動部に対する駆動部毎のトルク制御を、簡単且つ適切に行うことができる駆動装置、これを備えたテープ印刷装置およびステッピングモーターの制御方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置は、動力源を構成するステッピングモーターと、ステッピングモーターの正回転が入力されて駆動する第1駆動部と、ステッピングモーターの逆回転が入力されて駆動する第2駆動部と、ステッピングモーターを制御するモーター制御手段と、を備え、モーター制御手段は、第1駆動部の負荷および第2駆動部の負荷に応じて、ステッピングモーターに印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変する変調手段を有していることを特徴とする。
【0007】
この場合、ステッピングモーターの正回転を第1駆動部に入力する第1入力部と、ステッピングモーターの逆回転を第2駆動部に入力する第2入力部とを有する動力伝達手段を、更に備えたことが好ましい。
【0008】
本発明のステッピングモーターの制御方法は、正回転が入力されて駆動する第1駆動部および逆回転が入力されて駆動する第2駆動部に対し、単一の動力源を構成するステッピングモーターの制御方法であって、第1駆動部の負荷および第2駆動部の負荷に応じて、ステッピングモーターに印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、第1駆動部を駆動する正回転と、第2駆動部を駆動する逆回転とで、ステッピングモーターの駆動パルスの周期を変調させることで、第1駆動部の駆動時における回転速度およびトルクと、第2駆動部の駆動時における回転速度およびトルクと、を相違させることができる。すなわち、各駆動部の負荷に応じて駆動パルスの周期を変調させることで、駆動部毎の適切なトルク制御を、また適切な動作速度を実現することができる。このように、トルクリミッターや複雑な動力伝達機構等を用いる必要がなく、駆動部毎のトルク制御を簡単な構成で且つ適切に行うことができる。
【0010】
上記の駆動装置において、第1駆動部および第2駆動部のいずれか一方が、本体テープに剥離テープを貼着した処理テープを切断するフルカッターであり、他方が、本体テープまたは剥離テープを切断するハーフカッターであることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、フルカッターおよびハーフカッターをそれぞれ適切なトルクおよび動作速度で駆動することができ、フルカットおよびハーフカットをそれぞれ精度良く且つ円滑に行うことができる。
【0012】
本発明のテープ印刷装置は、上記の駆動装置と、第1駆動部および第2駆動部に送り込まれる処理テープに印刷を行う印刷手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、上記駆動装置を用いることで、ラベルを簡単な構成で安定に且つ精度良く作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態にかかる閉蓋状態のテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図2】開蓋状態のテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図3】テープ送り動力系を示した斜視図(a)および平面図(b)である。
【図4】テープ排出機構を示した斜視図である。
【図5】テープ切断機構を示した斜視図(a)および分解斜視図(b)である。
【図6】(a)は、テープ切断機構を示した右側面図である。(b)は、テープ切断機構を示した左側面図である。(c)は、クランク円板廻りを示した右側面図である。(d)は、クランク円板廻りを示した左側面図である。
【図7】クランク円板の正逆回転によるフルカットおよびハーフカットの挙動を示した図である。
【図8】テープ印刷装置の制御ブロック図である。
【図9】フルカット動作のフローチャートである。
【図10】ハーフカット動作のフローチャートである。
【図11】(a)は、フルカット動作の動作シーケンスを示した図である。(b)は、テープ幅「24mm」の印刷テープに対するハーフカット動作の動作シーケンスを示した図である。(c)は、テープ幅「12mm」の印刷テープに対するハーフカット動作の動作シーケンスを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る駆動装置、これを備えたテープ印刷装置およびステッピングモーターの制御方法について説明する。実施形態では、ハーフカット機能を備えたテープ印刷装置を例示する。このテープ印刷装置は、印刷対象物となる印刷テープ(処理テープ)に対し、これを送りながら印刷を行った後、印刷テープを適宜ハーフカットしつつ、印刷テープの印刷済み部分を切断して、ラベルを作成するものである。なお、本実施形態において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、テープ印刷装置を使用するユーザーから見た方向(正面視)に従う。
【0016】
図1および図2に示すように、テープ印刷装置1は、印刷テープTに対して印刷処理を行う装置本体2と、印刷テープTおよびインクリボンRを収容し、装置本体2に着脱自在に装着されるテープカートリッジCと、を備えている。テープカートリッジC内には、印刷対象物となる剥離テープTb付きの印刷テープTが繰出し自在に収容されている。
【0017】
装置本体2は、装置ケース3により外殻が形成され、装置ケース3の前半部上面には、各種キー4を備えたキーボード5が配設されている。一方、装置ケース3の後半部左上面には、開閉蓋6が広く設けられ、開閉蓋6の前側にはこれを開放する蓋体開放ボタン8が設けられている。さらに、装置ケース3の後半部右上面には、キーボード5からの入力結果等を表示する長方形のディスプレイ9が配設されている。
【0018】
蓋体開放ボタン8を押して開閉蓋6を開放すると、その内部には、テープカートリッジCが装着されるカートリッジ装着部10が窪入形成されており、テープカートリッジCは、開閉蓋6を開放した状態でカートリッジ装着部10に着脱可能に装着される。また、開閉蓋6には、これを閉塞した状態でテープカートリッジCの装着/非装着を視認するための覗き窓13が形成されている。
【0019】
装置ケース3の左側部には、カートリッジ装着部10に連なるテープ排出口17が形成されており、カートリッジ装着部10とテープ排出口17との間には、テープ排出経路18が構成されている。そして、装置ケース3内部には、テープ排出経路18に臨むように、上流側から、印刷テープTを切断するテープ切断機構11と、切断後の印刷テープTのテープ片をテープ排出口17から排出するテープ排出機構12と、がアッセンブリ化されて内蔵されている(詳細は後述する)。なお、テープ切断機構11は、フルカッター61とハーフカッター62とを有し、印刷テープT全体を切断するフルカットと、記録テープ(本体テープ)Taのみを切断するハーフカットとが行えるように構成されている。
【0020】
一方、カートリッジ装着部10には、ヘッドカバー20内に複数の発熱素子を有するサーマルタイプの印刷ヘッド21と、印刷ヘッド21に対峙するプラテン駆動軸23と、後述のインクリボンRを巻き取る巻き取り駆動軸24と、後述のテープリール32の位置決め突起25と、が配設されている。プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24は、カートリッジ装着部10の底板27を貫通しており、底板27下部空間には、プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24を駆動する動力系であるテープ送り動力系26(図3参照)が配設されている。
【0021】
テープカートリッジCは、カートリッジケース31内部の上中央部に、印刷テープTを巻回したテープリール32と、右下部にインクリボンRを巻回したリボンリール33とを回転自在に収容して構成されており(図2参照)、印刷テープTとインクリボンRは同じ幅で構成されている。また、テープリール32の左下部には上記印刷ヘッド21を覆うヘッドカバー20に差し込まれるための貫通孔34が形成されている。さらに、貫通孔34の近傍において、印刷テープTとインクリボンRが重なる部分に対応して、上記プラテン駆動軸23に嵌合されて回転駆動するプラテンローラー35が配置されている。一方、上記リボンリール33に近接して、巻き取り駆動軸24が嵌合されて回転駆動するリボン巻取りリール36が配置されている。
【0022】
テープカートリッジCがカートリッジ装着部10に装着されると、ヘッドカバー20に貫通孔34が、位置決め突起25にテープリール32の中心孔が、プラテン駆動軸23にプラテンローラー35の中心孔が、巻き取り駆動軸24にリボン巻取りリール36の中心孔がそれぞれ差し込まれる。プラテン駆動軸23と巻き取り駆動軸24の回転駆動により、印刷テープTは、テープリール32から繰り出され、インクリボンRは、リボンリール33から繰り出されて、貫通孔34の部分で印刷テープTと重なって併走した後、印刷テープTはカートリッジケース31の外部に送り出され、インクリボンRはリボン巻取りリール36に巻き取られる。また、印刷テープTとインクリボンRとが併走する部分では、プラテンローラー35と印刷ヘッド21とがこれらを挟み込むように臨み、いわゆる印刷送りが行われる。
【0023】
印刷テープTは、裏面に粘着剤層が形成された記録テープ(本体テープ)Taと、この粘着剤層により記録テープTaに貼着した剥離テープTbとから構成されている。そして、印刷テープTは、記録テープTaを外側にし、かつ剥離テープTbを内側にしてテープリール32に巻回されて収容されている。また、印刷テープTは、テープ種別(テープ幅、印刷テープTの地色、地模様、素材(質感)など)が異なる複数種のものが用意されており、テープ幅対応のカートリッジケース31に、インクリボンRと共に収容されている。
【0024】
また、カートリッジケース31の裏面には印刷テープTの種別を特定するための複数の孔(図示省略)が設けられている。一方、複数の孔に対応してカートリッジ装着部10には、これらビットパターンを検出するマイクロスイッチ等のテープ識別センサー37(図8参照)が、複数設けられており、このテープ識別センサー37により複数の孔の状態を検出することで、テープ種別(特にテープ幅)を判別できるようになっている。
【0025】
テープカートリッジCをカートリッジ装着部10に装着して、開閉蓋6を閉塞すると、図外のヘッドリリース機構を介して印刷ヘッド21が回動して、印刷ヘッド21とプラテンローラー35との間に、印刷テープTおよびインクリボンRを挟み込み、テープ印刷装置1は印刷待機状態となる。印刷データの入力・編集の後、印刷動作が指令されると、プラテンローラー35を回転駆動して、テープカートリッジCから印刷テープTを繰り出すと共に、印刷ヘッド21が駆動して印刷テープTに所望の印刷を行う。この印刷動作と共に、インクリボンRはテープカートリッジC内で巻き取られるが、印刷テープTの印刷済み部分は、テープ排出口17から装置外部に送り出されてゆく。印刷が完了すると、余白部分用の送りが行われた後、印刷テープTおよびインクリボンRの走行が停止する。続いて、テープ切断機構11により印刷テープTがハーフカットされつつ、印刷テープTの印刷済み部分が切断(フルカット)される。これにより、所望の文字等が印刷されたラベルが作成される。切断後のテープ片は、テープ排出機構12の作動により、テープ排出口17から排出される。
【0026】
ここで図3ないし図7を参照して、テープ送り動力系26、テープ切断機構11およびテープ排出機構12についてそれぞれ説明する。テープ送り動力系26は、動力源であるテープ送りモーター41と、テープ送りモーター41の動力をプラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24に伝達する送り動力伝達機構42と、を備えている。すなわち、テープ送りモーター41を、プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24の動力源として兼用している。なお、詳細は後述するが、テープ排出機構12の排出駆動ローラー111についても、このテープ送りモーター41を動力源としている。
【0027】
図3に示すように、送り動力伝達機構42は、テープ送りモーター41の主軸に形成されたギアに噛み合う入力ギア51と、入力ギア51に噛み合うと共に、プラテン駆動軸23側と巻き取り駆動軸24側との二方に動力を分岐する分岐ギア52と、分岐ギア52に噛み合うと共に巻き取り駆動軸24を軸着して回転させる第1出力ギア53と、分岐ギア52に噛み合う中継ギア54と、中継ギア54に噛み合うと共に、プラテンローラー35を軸着して回転させる第2出力ギア55と、を備えている。テープ送りモーター41を駆動すると、各ギアを介して、プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24が回転する。これによって、印刷テープTのテープ送りに同期して、インクリボンRの搬送が行われる。
【0028】
図3および図4に示すように、テープ排出機構12は、排出駆動ローラー111を有した駆動ローラーユニット101と、排出駆動ローラー111に対峙する排出従動ローラー113を有した従動ローラーユニット102と、排出駆動ローラー111にテープ送りモーター41の動力を伝達する排出動力伝達機構103と、開閉蓋6の開閉に伴って、排出従動ローラー113を挟持位置と退避位置との間で移動する回動レバー104と、を備えている。すなわち、排出駆動ローラー111と排出従動ローラー113とから成るニップローラーにより、印刷テープTを排出する排出ローラーを構成している。
【0029】
駆動ローラーユニット101は、印刷テープTの剥離テープTb側に転接する排出駆動ローラー111と、排出駆動ローラー111を回転自在に支持する駆動ローラーホルダー112と、を備えている。排出動力伝達機構103は、5つのギアから成るギア列で構成されており、上流端が第2出力ギア55に噛み合うと共に、下流端が排出駆動ローラー111のギア部111aに噛み合っている(図3参照)。すなわち、テープ送りモーター41を駆動すると、プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24と一緒に、排出駆動ローラー111が回転する。これによって、印刷テープTのテープ送り(プラテンローラー35の回転)に同期して、テープ排出機構12が駆動する。なお、排出駆動ローラー111には、排出駆動ローラー111および排出従動ローラー113の間に、印刷テープTがあるか否かを検出するテープ有無検出回路118(図8参照)が電気的に接続されている。これにより、テープ送りの異常判定を行う。
【0030】
従動ローラーユニット102は、印刷テープTの記録テープTa側に転接する排出従動ローラー113と、排出従動ローラー113を回転自在に支持する従動ローラーホルダー114と、を備えている。従動ローラーホルダー114は、ベースフレームに固定された固定ホルダー115と、固定ホルダー115にスライド自在に支持されると共に、排出従動ローラー113を支持する可動ホルダー116と、可動ホルダー116を退避位置に付勢する戻しばね(図示省略)と、を有している。
【0031】
回動レバー104は、中間部で従動ローラーホルダー114に回動自在に支持されており、その先端には、可動ホルダー116に当接する当接部104aが形成され、その後端には、開閉蓋6に設けられた作動突起117(図2参照)に係合する突起受け部104bが形成されている。開閉蓋6が閉塞されると、作動突起117が突起受け部104bに作用し、回動レバー104を回動させる。回動レバー104の回動に伴って、当接部104aが可動ホルダー116に作用し、可動ホルダー116を介して排出従動ローラー113を挟持位置に移動させる。挟持位置に位置した状態では、排出従動ローラー113が、排出駆動ローラー111と供して、印刷テープTを挟持する。一方、開閉蓋6を開放すると、作動突起117が突起受け部104bに作用しなくなるので、戻しばねによって、可動ホルダー116が押され、排出従動ローラー113が挟持位置から退避位置に退避する。このように、回動レバー104は、開閉蓋6の開閉に伴って、排出従動ローラー113を挟持位置と退避位置との間で移動する。
【0032】
図5および図6に示すように、テープ切断機構11は、印刷テープTをフルカットするハサミ式のフルカッター(第1駆動部)61と、印刷テープTをハーフカットする押切り式のハーフカッター(第2駆動部)62と、動力源となるカッターモーター63と、カッターモーター63の動力をフルカッター61およびハーフカッター62に伝達するカッター動力伝達機構(動力伝達手段)64と、これらを支持するカッターフレーム65およびギアフレーム66と、を備えている。すなわち、単一のカッターモーター63を、フルカッター61およびハーフカッター62の動力源として、兼用している。また、ここにいう「フルカット」とは、印刷テープT全体、すなわち記録テープTaおよび剥離テープTbを一体に切断する切断処理であり、「ハーフカット」とは、剥離テープTbを切断せずに、記録テープTaのみを切断する切断処理である。
【0033】
カッターモーター63は、ステッピングモーターであり、フルカッター61およびハーフカッター62に切込み動作をさせる。詳細は後述するが、フルカッター61は、初期位置からカッターモーター63の正転−逆転で動作し、ハーフカッター62は、初期位置からカッターモーター63の逆転−正転で動作する。また、ハーフカット時には、ステッピングモーターの脱調現象を利用して、印刷テープTへの切断トルクを制御する。なお、DCモーターと異なりステッピングモーターでは、脱調状態でコイルの焼き付きは生じない。
【0034】
カッター動力伝達機構64は、カッターモーター63(の主軸)に軸着した入力歯車に噛み合わされる大形の第1歯車71と、第1歯車71に噛み合わされる第2歯車72と、第2歯車72に噛み合わされる小形の第3歯車73と、第3歯車73に噛み合わされるクランク円板74と、を備えている。クランク円板74の右端面(フルカッター61側)には、偏心のクランクピン(第1入力部)75が設けられており、これがフルカッター61の可動刃82の基部に係合している。一方、クランク円板74の左端面(ハーフカッター62側)には、カム溝(第2入力部)76が形成されており、これにハーフカッター62における切断刃91の基部が係合している。また、カッター動力伝達機構64は、クランク円板74の周面の1の位置に面して配設されたカッター位置検出センサー77を備えている。カッター位置検出センサー77は、クランク円板74の回転位置が初期位置であるか(ON)、初期位置から正回転した位置にあるか(OFF:フルカット)、初期位置から逆回転した位置であるか(OFF:ハーフカット)を検出し(図7参照)、これに基づいて、フルカッター61の可動刃82およびハーフカッター62の切断刃91の位置(以下、カッター位置)を検出する。
【0035】
フルカッター61は、固定刃81と可動刃82とを支軸83により回動自在に連結したハサミ形式のものである。また、固定刃81および可動刃82は、「L」字状に形成され、可動刃82の基部には、クランク円板74のクランクピン75に係合して、クランクピン75の回動動作を往復の切断動作に変換する長孔84が設けられている。なお、固定刃81は、ブレード81aとブレード81aを取り付けたブレードホルダー81bとを有し、ブレードホルダー81bの基部に、支軸83が固定されている。
【0036】
フルカッター61の長孔84の形状は、クランクピン75と協働して、クランク円板74の正回転を、フルカッター61に作用(入力)させ、クランク円板74の逆回転を、フルカッター61に作用させない(フルカッター61が空転する)ように形成されている。具体的には、長孔84は、正回転に対応すると共に直線状に形成された直孔部85と、逆回転に対応すると共に円弧状に形成された円弧孔部86とを連ねて形成されている。初期位置からの正回転時には、クランクピン75が直孔部85上を移動しつつその側面に当接し、可動刃82に回動負荷を与えて可動刃82を回動させる。一方、初期位置からの逆回転時には、クランクピン75が円弧孔部86上を移動し、可動刃82に回動負荷を与えない(図7参照)。
【0037】
ハーフカッター62は、印刷テープTに切込む切断刃91と切込まれた切断刃91を受ける刃受け部材92とを有した押切り式のものである。切断刃91は、刃受け部材92に対し回動自在に取り付けられており、ハーフカット時には、切断刃91が記録テープTa全域に接触した状態で、押切りで記録テープTaを切断する。また、切断刃91の基部には、クランク円板74のカム溝76に係合する係合突起93が形成されている。
【0038】
クランク円板74のカム溝76の形状は、係合突起93と協働して、クランク円板74の正回転を、ハーフカッター62に作用せず(ハーフカッター62が空転し)、クランク円板74の逆回転を、ハーフカッター62に作用(入力)するように形成されている。具体的には、カム溝76は、正回転に対応すると共に円周に沿った円弧状の円弧溝部94と、円弧溝部94から中心側に延在した内延在溝部95とを連ねて形成されている。初期位置からの正回転時には、係合突起93が、相対的に円弧溝部94上を移動し、切断刃91に回動負荷を与えない。一方、初期位置からの逆回転時には、係合突起93が、相対的に内延在溝部95上を移動しつつその側面に当接し、切断刃91に回動負荷を与えて、切断刃91を回動させる(図7参照)。
【0039】
すなわち、カッター動力伝達機構64は、初期位置からのカッターモーター63の正回転の回転動力をフルカッター61に伝達(入力)し、逆回転の回転動力をハーフカッター62に伝達(入力)するように構成されている。更に言えば、初期位置から正回転側の回転位置での往復回転動を、可動刃82の往復動に変換し、初期位置から逆回転側の回転位置での往復回転動を、切断刃91の往復動に変換する。
【0040】
次に図8を参照して、テープ印刷装置1の制御系について説明する。テープ印刷装置1は、操作部201と、印刷部(印刷手段)202と、切断部(駆動装置)203と、検出部204と、を備えている。また、テープ印刷装置1は、ディスプレイ9を駆動させるディスプレドライバー211と、印刷ヘッド21を駆動させるヘッドドライバー212と、テープ送りモーター41を駆動させる印刷送りモータードライバー213と、カッターモーター63を駆動させるカッターモータードライバー214と、から成る駆動部205を更に備えている。そして、これら各部と接続され、テープ印刷装置1全体を制御する制御部(モーター制御手段および変調手段)200を有している。
【0041】
操作部201は、キーボード5およびディスプレイ9を有し、キーボード5からの文字情報の入力や、各種情報のディスプレイ9への表示など、ユーザーとのインタフェースとして機能している。印刷部202は、プラテンローラー35および排出駆動ローラー111を回転させるためのテープ送りモーター41と印刷ヘッド21とを有し、テープ送りモーター41の駆動により、プラテンローラー35が回転して印刷テープTを送る。さらに、入力された文字情報に基づいて印刷ヘッド21が駆動されることにより、送られていく印刷テープTに印刷を行う。また、印刷部202は、テープ送りモーター41の駆動により、排出駆動ローラー111が回転し、印刷テープTの排出を行う。切断部203は、フルカッター61およびハーフカッター62を動作させるカッターモーター63を有し、カッターモーター63の駆動により、フルカッター61およびハーフカッター62が、印刷後の印刷テープTに対し、ハーフカットやフルカットを行う。検出部204は、テープ識別センサー37、テープ有無検出回路118およびカッター位置検出センサー77を有し、テープ種別(特にテープ幅)の検出、カッター位置の検出、および印刷テープTの有無検出を行うと共に、各検出結果を制御部200へ出力する。
【0042】
制御部200は、CPU(Contral Processing Unit)215、ROM(Read Only Memory)216、RAM(Random Access Memory)217およびコントローラー(IOC:Input Output Controller)218を備え、互いに内部バス219により接続されている。そして、CPU215はROM216内の制御プログラムにしたがって、コントローラー218を介してテープ印刷装置1内の各部から各種信号・データを入力する。また、入力した各種信号・データに基づいて、RAM217内の各種データを処理し、コントローラー218を介してテープ印刷装置1内の各部に各種信号データを出力する。これにより、例えば、検出部204の検出結果に基づいて、制御部200が、印刷処理や切断処理の制御を行う。
【0043】
ところで、印刷テープTの一方の端から切り込んでいくフルカットに比して、印刷テープTを幅方向に押し切りするハーフカットは、その切断負荷が大きくなる。また、フルカットでは、切込み開始から切込み終了まで切断負荷が徐々に大きくなる。本実施形態では、これらの切断負荷の相違を考慮して、ハーフカット動作およびフルカット動作を制御するようにしている。図9ないし図11を参照して、ハーフカット動作およびフルカット動作について説明する。図9は、フルカット動作を示したフローチャートである。図10は、ハーフカット動作を示したフローチャートである。図11は、フルカット動作およびハーフカット動作の動作シーケンスを示した図である。なお、これらの動作の前に、予め検出部204により、印刷テープTのテープ幅を検出しておき、検出したテープ幅を制御部200に記憶しておくものとする。また、カッター位置検出センサー77によりカッター位置を検出し、カッター位置の異常判定を行うものとする。さらに、以下、可動刃82が完全に開いた位置を開放位置と呼称し、可動刃82が完全に閉じた位置を閉塞位置と呼称する。
【0044】
図9および図11(a)に示すように、フルカット動作では、まず、可動刃82を開放位置から閉塞位置近傍まで移動する。具体的には、制御部200は、正回転駆動の駆動パルスをカッターモーター63に印加し、移動用の所定回転数(例えば、2000pps)まで加速制御した後(S1)、この回転数で定速制御する(S2)。そして、閉塞位置近傍まで移動する分のステップ数、定速制御を継続する。
【0045】
可動刃82が閉塞位置近傍まで移動したら、フルカットの切込み処理を行う。具体的には、カッターモーター63に印加する駆動パルスの周期を変調させて(変調手段)、減速制御する(S3)。そして、可動刃82が閉塞位置に達するまで、減速制御(2000ppsから800ppsへ)を継続して、印刷テープTの記録テープTaおよび剥離テープTbを切断する。すなわち、可動刃82の移動を減速しつつ、印刷テープTを切り込んでいく。
【0046】
フルカット処理を終了したら、カッターモーター63を停止する(S4)。そして、一定時間(例えば、0.1秒)経過した後、可動刃82を閉塞位置から開放位置まで移動する。具体的には、逆回転駆動の駆動パルスをカッターモーター63に印加し、移動用の所定回転数(例えば、2000pps)まで加速制御した後(S5)、この回転数で定速制御する(S6)。そして、開放位置近傍まで移動する分のステップ数、定速制御を継続したら、カッターモーター63を減速制御し(S7)、開放位置まで移動したらカッターモーター63を停止する(S8)。これによりフルカット動作を終了する。
【0047】
次に図10および図11(b)、(c)を参照して、ハーフカット動作について説明する。以下、切断刃91が完全に開いた位置を開放位置と呼称し、切断刃91が完全に閉じた位置を閉塞位置と呼称し、さらに、切断刃91が記録テープTaの表面に接触する位置を切断位置と呼称する。図10および図11(b)、(c)に示すように、ハーフカット動作では、まず、切断刃91を開放位置から切断位置近傍まで移動する。具体的には、制御部200は、逆回転駆動の駆動パルスをカッターモーター63に印加し、移動用の所定回転数(例えば、2000pps)まで加速制御した後(S11)、この回転数で定速制御する(S12)。そして、切断位置近傍まで移動する分のステップ数、定速制御を継続する。
【0048】
切断刃91が切断位置近傍まで移動したら、ハーフカットの切込み処理に行う。ハーフカットの切込み処理は、駆動パルスの周期を変調して脱調トルクを調整しつつ、ステッピングモーターであるカッターモーター63が脱調状態となるまで(脱調するまで)切込み動作を継続させることによって行われる。すなわち、切込み動作を続けると、切断刃91が印刷テープTに突き当たりステッピングモーターのトルクが徐々に上昇していき、ついには脱調トルクに達する(脱調状態となる)。ステッピングモーターが脱調状態となると、トルクがこれ以上上昇しないため、切込み動作を続けるかぎり、トルクが脱調トルクに安定する。一方、脱調トルクは、ステッピングモーターのトルク特性から駆動パルスの周期によって調整することができる。すなわち、ステッピングモーターを用い、ステッピングモーターが脱調状態となるまで切込み動作を継続させることで、ステッピングモーターのトルクが、予め調整した所定の脱調トルクに制御される。このように、ステッピングモーター(カッターモーター63)の制御のみで、切込み力となるトルクを所定値に制御することができる。
【0049】
具体的には、まず、駆動パルスの周期を変調して(変調手段)、切断刃91が切断位置に移動するまでに、所望の回転数になるようにカッターモーター63を減速制御する(S13)。この所望の回転数は、ハーフカッター62の切込み動作に必要な切断負荷に応じた回転数である。また、検出部204により検出したテープ幅に応じて回転数を設定する。すなわち、印刷テープTのテープ幅によって、ハーフカット時に必要な切込み力(切断負荷)が異なるため、これに応じた脱調トルクとなるように、駆動パルスの周期を変調して、上記回転数を得る。具体的には、図11に示すように、テープ幅「24mm」の場合(図11(b))には、回転数が1000ppsになるように、周期を変調し、テープ幅「12mm」の場合(図11(c))には、回転数が1500ppsになるように、周期を変調する。
【0050】
切断刃91が切断位置に達したら、カッターモーター63が脱調状態となるまで上記駆動パルスを印加し続け、切込み動作を継続させる(S14)。そして、脱調状態を、駆動パルスの100ステップ分、維持する(S15)。これによって、印刷テープTにハーフカットがなされ、ハーフカットの切込み処理を終了する。
【0051】
切込み処理を終了したら、カッターモーター63を停止する(S16)。そして、一定時間(例えば、0.1秒)経過した後、切断刃91を閉塞位置から開放位置まで移動する。具体的には、正回転駆動の駆動パルスをカッターモーター63に印加し、移動用の所定回転数(例えば、2000pps)まで加速制御した後(S17)、この回転数で定速制御する(S18)。そして、開放位置近傍まで移動する分のステップ数、定速制御を継続したら、カッターモーター63を減速制御し(S19)、開放位置まで移動したらカッターモーター63を停止する(S20)。これによりハーフカット動作を終了する。
【0052】
以上のような構成によれば、フルカッター61を駆動する正回転と、ハーフカッター62の駆動する逆回転とで、ステッピングモーターの駆動パルスの周期を変調させることで、フルカッター61の駆動時におけるトルクと、ハーフカッター62の駆動時におけるトルク(脱調トルク)と、を相違させることができる。すなわち、各カッターの切断負荷に応じて駆動パルスの周期を変調させることで、カッター毎のトルク制御を実現することができる。このように、トルクリミッターや複雑な動力伝達機構等を用いる必要がなく、駆動部毎のトルク制御を簡単且つ適切に行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、ハーフカットとして、記録テープTaのみを切断するものを採用したが、ハーフカットとして、剥離テープTbのみを切断するものを採用しても良い。
【0054】
また、本実施形態においては、カッターモーター63の正回転をフルカッター61に入力し、カッターモーター63の逆回転をハーフカッター62に入力する構成としたが、逆に、カッターモーター63の正回転をハーフカッター62に入力し、カッターモーター63の逆回転をフルカッター61に入力する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1;テープ印刷装置、 61:フルカッター、 62:ハーフカッター、 63:カッターモーター、 64:カッター動力伝達機構、 75:クランクピン、 76:カム溝、 200:制御部、 202:印刷部、 203:切断部、 T:印刷テープ、 Ta:記録テープ、 Tb:剥離テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモーターを用いて2つの駆動部を駆動する駆動装置、これを備えたテープ印刷装置およびステッピングモーターの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステッピングモーターではないが、DCモーターを駆動源とする駆動装置として、処理テープの切断装置が知られている(特許文献1参照)。この切断装置は、フルカット機能を有した第1の切断機構と、ハーフカット機能を有した第2の切断機構と、これらを駆動する単一のカッターモーターと、カッターモーターの駆動に基づいて第1の切断機構および第2の切断機構を駆動する駆動機構と、を備えている。カッターモーターは、DCモーターで構成され、駆動機構は、カム機構によりカッターモーターの正逆両方向の回転動力を、それぞれ第1の切断機構および第2の切断機構に伝達する。すなわち、カッターモーターが正方向に回転駆動されたときに第1の切断機構が切断動作し、カッターモーターが逆方向に回転駆動されたときに第2の切断機構が切断動作する。また、カッターモーターに一定以上の負荷(過負荷)がかかることを防ぐために、駆動機構の伝達機構中に、単一のトルクリミッターが介挿されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4539620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の切断装置では、単一のトルクリミッターを用いて、カッターモーターが過負荷となるのを防止することはできるが、第1の切断機構を駆動する時の回転速度およびトルクの制御値と、第2の切断機構を駆動する時の回転速度およびトルクの制御値とが同一にならざるを得ない。このため、両切断機構における駆動時の負荷(負荷トルク)が異なる場合、これに適切に対応させることができない。すなわち、2つの切断機構に対し動力伝達機構によりテコの原理を応用して対応させることはできるが、動力伝達機構が大型化および複雑化し、適切・安定なトルク制御を行うことができないという問題があった。これに対し、切断機構毎にトルクリミッターを取り付けることも考えられるが、これでは、装置が複雑になってしまい、装置が大型化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、2つの駆動部に対する駆動部毎のトルク制御を、簡単且つ適切に行うことができる駆動装置、これを備えたテープ印刷装置およびステッピングモーターの制御方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置は、動力源を構成するステッピングモーターと、ステッピングモーターの正回転が入力されて駆動する第1駆動部と、ステッピングモーターの逆回転が入力されて駆動する第2駆動部と、ステッピングモーターを制御するモーター制御手段と、を備え、モーター制御手段は、第1駆動部の負荷および第2駆動部の負荷に応じて、ステッピングモーターに印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変する変調手段を有していることを特徴とする。
【0007】
この場合、ステッピングモーターの正回転を第1駆動部に入力する第1入力部と、ステッピングモーターの逆回転を第2駆動部に入力する第2入力部とを有する動力伝達手段を、更に備えたことが好ましい。
【0008】
本発明のステッピングモーターの制御方法は、正回転が入力されて駆動する第1駆動部および逆回転が入力されて駆動する第2駆動部に対し、単一の動力源を構成するステッピングモーターの制御方法であって、第1駆動部の負荷および第2駆動部の負荷に応じて、ステッピングモーターに印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、第1駆動部を駆動する正回転と、第2駆動部を駆動する逆回転とで、ステッピングモーターの駆動パルスの周期を変調させることで、第1駆動部の駆動時における回転速度およびトルクと、第2駆動部の駆動時における回転速度およびトルクと、を相違させることができる。すなわち、各駆動部の負荷に応じて駆動パルスの周期を変調させることで、駆動部毎の適切なトルク制御を、また適切な動作速度を実現することができる。このように、トルクリミッターや複雑な動力伝達機構等を用いる必要がなく、駆動部毎のトルク制御を簡単な構成で且つ適切に行うことができる。
【0010】
上記の駆動装置において、第1駆動部および第2駆動部のいずれか一方が、本体テープに剥離テープを貼着した処理テープを切断するフルカッターであり、他方が、本体テープまたは剥離テープを切断するハーフカッターであることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、フルカッターおよびハーフカッターをそれぞれ適切なトルクおよび動作速度で駆動することができ、フルカットおよびハーフカットをそれぞれ精度良く且つ円滑に行うことができる。
【0012】
本発明のテープ印刷装置は、上記の駆動装置と、第1駆動部および第2駆動部に送り込まれる処理テープに印刷を行う印刷手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、上記駆動装置を用いることで、ラベルを簡単な構成で安定に且つ精度良く作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態にかかる閉蓋状態のテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図2】開蓋状態のテープ印刷装置の外観斜視図である。
【図3】テープ送り動力系を示した斜視図(a)および平面図(b)である。
【図4】テープ排出機構を示した斜視図である。
【図5】テープ切断機構を示した斜視図(a)および分解斜視図(b)である。
【図6】(a)は、テープ切断機構を示した右側面図である。(b)は、テープ切断機構を示した左側面図である。(c)は、クランク円板廻りを示した右側面図である。(d)は、クランク円板廻りを示した左側面図である。
【図7】クランク円板の正逆回転によるフルカットおよびハーフカットの挙動を示した図である。
【図8】テープ印刷装置の制御ブロック図である。
【図9】フルカット動作のフローチャートである。
【図10】ハーフカット動作のフローチャートである。
【図11】(a)は、フルカット動作の動作シーケンスを示した図である。(b)は、テープ幅「24mm」の印刷テープに対するハーフカット動作の動作シーケンスを示した図である。(c)は、テープ幅「12mm」の印刷テープに対するハーフカット動作の動作シーケンスを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る駆動装置、これを備えたテープ印刷装置およびステッピングモーターの制御方法について説明する。実施形態では、ハーフカット機能を備えたテープ印刷装置を例示する。このテープ印刷装置は、印刷対象物となる印刷テープ(処理テープ)に対し、これを送りながら印刷を行った後、印刷テープを適宜ハーフカットしつつ、印刷テープの印刷済み部分を切断して、ラベルを作成するものである。なお、本実施形態において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、テープ印刷装置を使用するユーザーから見た方向(正面視)に従う。
【0016】
図1および図2に示すように、テープ印刷装置1は、印刷テープTに対して印刷処理を行う装置本体2と、印刷テープTおよびインクリボンRを収容し、装置本体2に着脱自在に装着されるテープカートリッジCと、を備えている。テープカートリッジC内には、印刷対象物となる剥離テープTb付きの印刷テープTが繰出し自在に収容されている。
【0017】
装置本体2は、装置ケース3により外殻が形成され、装置ケース3の前半部上面には、各種キー4を備えたキーボード5が配設されている。一方、装置ケース3の後半部左上面には、開閉蓋6が広く設けられ、開閉蓋6の前側にはこれを開放する蓋体開放ボタン8が設けられている。さらに、装置ケース3の後半部右上面には、キーボード5からの入力結果等を表示する長方形のディスプレイ9が配設されている。
【0018】
蓋体開放ボタン8を押して開閉蓋6を開放すると、その内部には、テープカートリッジCが装着されるカートリッジ装着部10が窪入形成されており、テープカートリッジCは、開閉蓋6を開放した状態でカートリッジ装着部10に着脱可能に装着される。また、開閉蓋6には、これを閉塞した状態でテープカートリッジCの装着/非装着を視認するための覗き窓13が形成されている。
【0019】
装置ケース3の左側部には、カートリッジ装着部10に連なるテープ排出口17が形成されており、カートリッジ装着部10とテープ排出口17との間には、テープ排出経路18が構成されている。そして、装置ケース3内部には、テープ排出経路18に臨むように、上流側から、印刷テープTを切断するテープ切断機構11と、切断後の印刷テープTのテープ片をテープ排出口17から排出するテープ排出機構12と、がアッセンブリ化されて内蔵されている(詳細は後述する)。なお、テープ切断機構11は、フルカッター61とハーフカッター62とを有し、印刷テープT全体を切断するフルカットと、記録テープ(本体テープ)Taのみを切断するハーフカットとが行えるように構成されている。
【0020】
一方、カートリッジ装着部10には、ヘッドカバー20内に複数の発熱素子を有するサーマルタイプの印刷ヘッド21と、印刷ヘッド21に対峙するプラテン駆動軸23と、後述のインクリボンRを巻き取る巻き取り駆動軸24と、後述のテープリール32の位置決め突起25と、が配設されている。プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24は、カートリッジ装着部10の底板27を貫通しており、底板27下部空間には、プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24を駆動する動力系であるテープ送り動力系26(図3参照)が配設されている。
【0021】
テープカートリッジCは、カートリッジケース31内部の上中央部に、印刷テープTを巻回したテープリール32と、右下部にインクリボンRを巻回したリボンリール33とを回転自在に収容して構成されており(図2参照)、印刷テープTとインクリボンRは同じ幅で構成されている。また、テープリール32の左下部には上記印刷ヘッド21を覆うヘッドカバー20に差し込まれるための貫通孔34が形成されている。さらに、貫通孔34の近傍において、印刷テープTとインクリボンRが重なる部分に対応して、上記プラテン駆動軸23に嵌合されて回転駆動するプラテンローラー35が配置されている。一方、上記リボンリール33に近接して、巻き取り駆動軸24が嵌合されて回転駆動するリボン巻取りリール36が配置されている。
【0022】
テープカートリッジCがカートリッジ装着部10に装着されると、ヘッドカバー20に貫通孔34が、位置決め突起25にテープリール32の中心孔が、プラテン駆動軸23にプラテンローラー35の中心孔が、巻き取り駆動軸24にリボン巻取りリール36の中心孔がそれぞれ差し込まれる。プラテン駆動軸23と巻き取り駆動軸24の回転駆動により、印刷テープTは、テープリール32から繰り出され、インクリボンRは、リボンリール33から繰り出されて、貫通孔34の部分で印刷テープTと重なって併走した後、印刷テープTはカートリッジケース31の外部に送り出され、インクリボンRはリボン巻取りリール36に巻き取られる。また、印刷テープTとインクリボンRとが併走する部分では、プラテンローラー35と印刷ヘッド21とがこれらを挟み込むように臨み、いわゆる印刷送りが行われる。
【0023】
印刷テープTは、裏面に粘着剤層が形成された記録テープ(本体テープ)Taと、この粘着剤層により記録テープTaに貼着した剥離テープTbとから構成されている。そして、印刷テープTは、記録テープTaを外側にし、かつ剥離テープTbを内側にしてテープリール32に巻回されて収容されている。また、印刷テープTは、テープ種別(テープ幅、印刷テープTの地色、地模様、素材(質感)など)が異なる複数種のものが用意されており、テープ幅対応のカートリッジケース31に、インクリボンRと共に収容されている。
【0024】
また、カートリッジケース31の裏面には印刷テープTの種別を特定するための複数の孔(図示省略)が設けられている。一方、複数の孔に対応してカートリッジ装着部10には、これらビットパターンを検出するマイクロスイッチ等のテープ識別センサー37(図8参照)が、複数設けられており、このテープ識別センサー37により複数の孔の状態を検出することで、テープ種別(特にテープ幅)を判別できるようになっている。
【0025】
テープカートリッジCをカートリッジ装着部10に装着して、開閉蓋6を閉塞すると、図外のヘッドリリース機構を介して印刷ヘッド21が回動して、印刷ヘッド21とプラテンローラー35との間に、印刷テープTおよびインクリボンRを挟み込み、テープ印刷装置1は印刷待機状態となる。印刷データの入力・編集の後、印刷動作が指令されると、プラテンローラー35を回転駆動して、テープカートリッジCから印刷テープTを繰り出すと共に、印刷ヘッド21が駆動して印刷テープTに所望の印刷を行う。この印刷動作と共に、インクリボンRはテープカートリッジC内で巻き取られるが、印刷テープTの印刷済み部分は、テープ排出口17から装置外部に送り出されてゆく。印刷が完了すると、余白部分用の送りが行われた後、印刷テープTおよびインクリボンRの走行が停止する。続いて、テープ切断機構11により印刷テープTがハーフカットされつつ、印刷テープTの印刷済み部分が切断(フルカット)される。これにより、所望の文字等が印刷されたラベルが作成される。切断後のテープ片は、テープ排出機構12の作動により、テープ排出口17から排出される。
【0026】
ここで図3ないし図7を参照して、テープ送り動力系26、テープ切断機構11およびテープ排出機構12についてそれぞれ説明する。テープ送り動力系26は、動力源であるテープ送りモーター41と、テープ送りモーター41の動力をプラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24に伝達する送り動力伝達機構42と、を備えている。すなわち、テープ送りモーター41を、プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24の動力源として兼用している。なお、詳細は後述するが、テープ排出機構12の排出駆動ローラー111についても、このテープ送りモーター41を動力源としている。
【0027】
図3に示すように、送り動力伝達機構42は、テープ送りモーター41の主軸に形成されたギアに噛み合う入力ギア51と、入力ギア51に噛み合うと共に、プラテン駆動軸23側と巻き取り駆動軸24側との二方に動力を分岐する分岐ギア52と、分岐ギア52に噛み合うと共に巻き取り駆動軸24を軸着して回転させる第1出力ギア53と、分岐ギア52に噛み合う中継ギア54と、中継ギア54に噛み合うと共に、プラテンローラー35を軸着して回転させる第2出力ギア55と、を備えている。テープ送りモーター41を駆動すると、各ギアを介して、プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24が回転する。これによって、印刷テープTのテープ送りに同期して、インクリボンRの搬送が行われる。
【0028】
図3および図4に示すように、テープ排出機構12は、排出駆動ローラー111を有した駆動ローラーユニット101と、排出駆動ローラー111に対峙する排出従動ローラー113を有した従動ローラーユニット102と、排出駆動ローラー111にテープ送りモーター41の動力を伝達する排出動力伝達機構103と、開閉蓋6の開閉に伴って、排出従動ローラー113を挟持位置と退避位置との間で移動する回動レバー104と、を備えている。すなわち、排出駆動ローラー111と排出従動ローラー113とから成るニップローラーにより、印刷テープTを排出する排出ローラーを構成している。
【0029】
駆動ローラーユニット101は、印刷テープTの剥離テープTb側に転接する排出駆動ローラー111と、排出駆動ローラー111を回転自在に支持する駆動ローラーホルダー112と、を備えている。排出動力伝達機構103は、5つのギアから成るギア列で構成されており、上流端が第2出力ギア55に噛み合うと共に、下流端が排出駆動ローラー111のギア部111aに噛み合っている(図3参照)。すなわち、テープ送りモーター41を駆動すると、プラテン駆動軸23および巻き取り駆動軸24と一緒に、排出駆動ローラー111が回転する。これによって、印刷テープTのテープ送り(プラテンローラー35の回転)に同期して、テープ排出機構12が駆動する。なお、排出駆動ローラー111には、排出駆動ローラー111および排出従動ローラー113の間に、印刷テープTがあるか否かを検出するテープ有無検出回路118(図8参照)が電気的に接続されている。これにより、テープ送りの異常判定を行う。
【0030】
従動ローラーユニット102は、印刷テープTの記録テープTa側に転接する排出従動ローラー113と、排出従動ローラー113を回転自在に支持する従動ローラーホルダー114と、を備えている。従動ローラーホルダー114は、ベースフレームに固定された固定ホルダー115と、固定ホルダー115にスライド自在に支持されると共に、排出従動ローラー113を支持する可動ホルダー116と、可動ホルダー116を退避位置に付勢する戻しばね(図示省略)と、を有している。
【0031】
回動レバー104は、中間部で従動ローラーホルダー114に回動自在に支持されており、その先端には、可動ホルダー116に当接する当接部104aが形成され、その後端には、開閉蓋6に設けられた作動突起117(図2参照)に係合する突起受け部104bが形成されている。開閉蓋6が閉塞されると、作動突起117が突起受け部104bに作用し、回動レバー104を回動させる。回動レバー104の回動に伴って、当接部104aが可動ホルダー116に作用し、可動ホルダー116を介して排出従動ローラー113を挟持位置に移動させる。挟持位置に位置した状態では、排出従動ローラー113が、排出駆動ローラー111と供して、印刷テープTを挟持する。一方、開閉蓋6を開放すると、作動突起117が突起受け部104bに作用しなくなるので、戻しばねによって、可動ホルダー116が押され、排出従動ローラー113が挟持位置から退避位置に退避する。このように、回動レバー104は、開閉蓋6の開閉に伴って、排出従動ローラー113を挟持位置と退避位置との間で移動する。
【0032】
図5および図6に示すように、テープ切断機構11は、印刷テープTをフルカットするハサミ式のフルカッター(第1駆動部)61と、印刷テープTをハーフカットする押切り式のハーフカッター(第2駆動部)62と、動力源となるカッターモーター63と、カッターモーター63の動力をフルカッター61およびハーフカッター62に伝達するカッター動力伝達機構(動力伝達手段)64と、これらを支持するカッターフレーム65およびギアフレーム66と、を備えている。すなわち、単一のカッターモーター63を、フルカッター61およびハーフカッター62の動力源として、兼用している。また、ここにいう「フルカット」とは、印刷テープT全体、すなわち記録テープTaおよび剥離テープTbを一体に切断する切断処理であり、「ハーフカット」とは、剥離テープTbを切断せずに、記録テープTaのみを切断する切断処理である。
【0033】
カッターモーター63は、ステッピングモーターであり、フルカッター61およびハーフカッター62に切込み動作をさせる。詳細は後述するが、フルカッター61は、初期位置からカッターモーター63の正転−逆転で動作し、ハーフカッター62は、初期位置からカッターモーター63の逆転−正転で動作する。また、ハーフカット時には、ステッピングモーターの脱調現象を利用して、印刷テープTへの切断トルクを制御する。なお、DCモーターと異なりステッピングモーターでは、脱調状態でコイルの焼き付きは生じない。
【0034】
カッター動力伝達機構64は、カッターモーター63(の主軸)に軸着した入力歯車に噛み合わされる大形の第1歯車71と、第1歯車71に噛み合わされる第2歯車72と、第2歯車72に噛み合わされる小形の第3歯車73と、第3歯車73に噛み合わされるクランク円板74と、を備えている。クランク円板74の右端面(フルカッター61側)には、偏心のクランクピン(第1入力部)75が設けられており、これがフルカッター61の可動刃82の基部に係合している。一方、クランク円板74の左端面(ハーフカッター62側)には、カム溝(第2入力部)76が形成されており、これにハーフカッター62における切断刃91の基部が係合している。また、カッター動力伝達機構64は、クランク円板74の周面の1の位置に面して配設されたカッター位置検出センサー77を備えている。カッター位置検出センサー77は、クランク円板74の回転位置が初期位置であるか(ON)、初期位置から正回転した位置にあるか(OFF:フルカット)、初期位置から逆回転した位置であるか(OFF:ハーフカット)を検出し(図7参照)、これに基づいて、フルカッター61の可動刃82およびハーフカッター62の切断刃91の位置(以下、カッター位置)を検出する。
【0035】
フルカッター61は、固定刃81と可動刃82とを支軸83により回動自在に連結したハサミ形式のものである。また、固定刃81および可動刃82は、「L」字状に形成され、可動刃82の基部には、クランク円板74のクランクピン75に係合して、クランクピン75の回動動作を往復の切断動作に変換する長孔84が設けられている。なお、固定刃81は、ブレード81aとブレード81aを取り付けたブレードホルダー81bとを有し、ブレードホルダー81bの基部に、支軸83が固定されている。
【0036】
フルカッター61の長孔84の形状は、クランクピン75と協働して、クランク円板74の正回転を、フルカッター61に作用(入力)させ、クランク円板74の逆回転を、フルカッター61に作用させない(フルカッター61が空転する)ように形成されている。具体的には、長孔84は、正回転に対応すると共に直線状に形成された直孔部85と、逆回転に対応すると共に円弧状に形成された円弧孔部86とを連ねて形成されている。初期位置からの正回転時には、クランクピン75が直孔部85上を移動しつつその側面に当接し、可動刃82に回動負荷を与えて可動刃82を回動させる。一方、初期位置からの逆回転時には、クランクピン75が円弧孔部86上を移動し、可動刃82に回動負荷を与えない(図7参照)。
【0037】
ハーフカッター62は、印刷テープTに切込む切断刃91と切込まれた切断刃91を受ける刃受け部材92とを有した押切り式のものである。切断刃91は、刃受け部材92に対し回動自在に取り付けられており、ハーフカット時には、切断刃91が記録テープTa全域に接触した状態で、押切りで記録テープTaを切断する。また、切断刃91の基部には、クランク円板74のカム溝76に係合する係合突起93が形成されている。
【0038】
クランク円板74のカム溝76の形状は、係合突起93と協働して、クランク円板74の正回転を、ハーフカッター62に作用せず(ハーフカッター62が空転し)、クランク円板74の逆回転を、ハーフカッター62に作用(入力)するように形成されている。具体的には、カム溝76は、正回転に対応すると共に円周に沿った円弧状の円弧溝部94と、円弧溝部94から中心側に延在した内延在溝部95とを連ねて形成されている。初期位置からの正回転時には、係合突起93が、相対的に円弧溝部94上を移動し、切断刃91に回動負荷を与えない。一方、初期位置からの逆回転時には、係合突起93が、相対的に内延在溝部95上を移動しつつその側面に当接し、切断刃91に回動負荷を与えて、切断刃91を回動させる(図7参照)。
【0039】
すなわち、カッター動力伝達機構64は、初期位置からのカッターモーター63の正回転の回転動力をフルカッター61に伝達(入力)し、逆回転の回転動力をハーフカッター62に伝達(入力)するように構成されている。更に言えば、初期位置から正回転側の回転位置での往復回転動を、可動刃82の往復動に変換し、初期位置から逆回転側の回転位置での往復回転動を、切断刃91の往復動に変換する。
【0040】
次に図8を参照して、テープ印刷装置1の制御系について説明する。テープ印刷装置1は、操作部201と、印刷部(印刷手段)202と、切断部(駆動装置)203と、検出部204と、を備えている。また、テープ印刷装置1は、ディスプレイ9を駆動させるディスプレドライバー211と、印刷ヘッド21を駆動させるヘッドドライバー212と、テープ送りモーター41を駆動させる印刷送りモータードライバー213と、カッターモーター63を駆動させるカッターモータードライバー214と、から成る駆動部205を更に備えている。そして、これら各部と接続され、テープ印刷装置1全体を制御する制御部(モーター制御手段および変調手段)200を有している。
【0041】
操作部201は、キーボード5およびディスプレイ9を有し、キーボード5からの文字情報の入力や、各種情報のディスプレイ9への表示など、ユーザーとのインタフェースとして機能している。印刷部202は、プラテンローラー35および排出駆動ローラー111を回転させるためのテープ送りモーター41と印刷ヘッド21とを有し、テープ送りモーター41の駆動により、プラテンローラー35が回転して印刷テープTを送る。さらに、入力された文字情報に基づいて印刷ヘッド21が駆動されることにより、送られていく印刷テープTに印刷を行う。また、印刷部202は、テープ送りモーター41の駆動により、排出駆動ローラー111が回転し、印刷テープTの排出を行う。切断部203は、フルカッター61およびハーフカッター62を動作させるカッターモーター63を有し、カッターモーター63の駆動により、フルカッター61およびハーフカッター62が、印刷後の印刷テープTに対し、ハーフカットやフルカットを行う。検出部204は、テープ識別センサー37、テープ有無検出回路118およびカッター位置検出センサー77を有し、テープ種別(特にテープ幅)の検出、カッター位置の検出、および印刷テープTの有無検出を行うと共に、各検出結果を制御部200へ出力する。
【0042】
制御部200は、CPU(Contral Processing Unit)215、ROM(Read Only Memory)216、RAM(Random Access Memory)217およびコントローラー(IOC:Input Output Controller)218を備え、互いに内部バス219により接続されている。そして、CPU215はROM216内の制御プログラムにしたがって、コントローラー218を介してテープ印刷装置1内の各部から各種信号・データを入力する。また、入力した各種信号・データに基づいて、RAM217内の各種データを処理し、コントローラー218を介してテープ印刷装置1内の各部に各種信号データを出力する。これにより、例えば、検出部204の検出結果に基づいて、制御部200が、印刷処理や切断処理の制御を行う。
【0043】
ところで、印刷テープTの一方の端から切り込んでいくフルカットに比して、印刷テープTを幅方向に押し切りするハーフカットは、その切断負荷が大きくなる。また、フルカットでは、切込み開始から切込み終了まで切断負荷が徐々に大きくなる。本実施形態では、これらの切断負荷の相違を考慮して、ハーフカット動作およびフルカット動作を制御するようにしている。図9ないし図11を参照して、ハーフカット動作およびフルカット動作について説明する。図9は、フルカット動作を示したフローチャートである。図10は、ハーフカット動作を示したフローチャートである。図11は、フルカット動作およびハーフカット動作の動作シーケンスを示した図である。なお、これらの動作の前に、予め検出部204により、印刷テープTのテープ幅を検出しておき、検出したテープ幅を制御部200に記憶しておくものとする。また、カッター位置検出センサー77によりカッター位置を検出し、カッター位置の異常判定を行うものとする。さらに、以下、可動刃82が完全に開いた位置を開放位置と呼称し、可動刃82が完全に閉じた位置を閉塞位置と呼称する。
【0044】
図9および図11(a)に示すように、フルカット動作では、まず、可動刃82を開放位置から閉塞位置近傍まで移動する。具体的には、制御部200は、正回転駆動の駆動パルスをカッターモーター63に印加し、移動用の所定回転数(例えば、2000pps)まで加速制御した後(S1)、この回転数で定速制御する(S2)。そして、閉塞位置近傍まで移動する分のステップ数、定速制御を継続する。
【0045】
可動刃82が閉塞位置近傍まで移動したら、フルカットの切込み処理を行う。具体的には、カッターモーター63に印加する駆動パルスの周期を変調させて(変調手段)、減速制御する(S3)。そして、可動刃82が閉塞位置に達するまで、減速制御(2000ppsから800ppsへ)を継続して、印刷テープTの記録テープTaおよび剥離テープTbを切断する。すなわち、可動刃82の移動を減速しつつ、印刷テープTを切り込んでいく。
【0046】
フルカット処理を終了したら、カッターモーター63を停止する(S4)。そして、一定時間(例えば、0.1秒)経過した後、可動刃82を閉塞位置から開放位置まで移動する。具体的には、逆回転駆動の駆動パルスをカッターモーター63に印加し、移動用の所定回転数(例えば、2000pps)まで加速制御した後(S5)、この回転数で定速制御する(S6)。そして、開放位置近傍まで移動する分のステップ数、定速制御を継続したら、カッターモーター63を減速制御し(S7)、開放位置まで移動したらカッターモーター63を停止する(S8)。これによりフルカット動作を終了する。
【0047】
次に図10および図11(b)、(c)を参照して、ハーフカット動作について説明する。以下、切断刃91が完全に開いた位置を開放位置と呼称し、切断刃91が完全に閉じた位置を閉塞位置と呼称し、さらに、切断刃91が記録テープTaの表面に接触する位置を切断位置と呼称する。図10および図11(b)、(c)に示すように、ハーフカット動作では、まず、切断刃91を開放位置から切断位置近傍まで移動する。具体的には、制御部200は、逆回転駆動の駆動パルスをカッターモーター63に印加し、移動用の所定回転数(例えば、2000pps)まで加速制御した後(S11)、この回転数で定速制御する(S12)。そして、切断位置近傍まで移動する分のステップ数、定速制御を継続する。
【0048】
切断刃91が切断位置近傍まで移動したら、ハーフカットの切込み処理に行う。ハーフカットの切込み処理は、駆動パルスの周期を変調して脱調トルクを調整しつつ、ステッピングモーターであるカッターモーター63が脱調状態となるまで(脱調するまで)切込み動作を継続させることによって行われる。すなわち、切込み動作を続けると、切断刃91が印刷テープTに突き当たりステッピングモーターのトルクが徐々に上昇していき、ついには脱調トルクに達する(脱調状態となる)。ステッピングモーターが脱調状態となると、トルクがこれ以上上昇しないため、切込み動作を続けるかぎり、トルクが脱調トルクに安定する。一方、脱調トルクは、ステッピングモーターのトルク特性から駆動パルスの周期によって調整することができる。すなわち、ステッピングモーターを用い、ステッピングモーターが脱調状態となるまで切込み動作を継続させることで、ステッピングモーターのトルクが、予め調整した所定の脱調トルクに制御される。このように、ステッピングモーター(カッターモーター63)の制御のみで、切込み力となるトルクを所定値に制御することができる。
【0049】
具体的には、まず、駆動パルスの周期を変調して(変調手段)、切断刃91が切断位置に移動するまでに、所望の回転数になるようにカッターモーター63を減速制御する(S13)。この所望の回転数は、ハーフカッター62の切込み動作に必要な切断負荷に応じた回転数である。また、検出部204により検出したテープ幅に応じて回転数を設定する。すなわち、印刷テープTのテープ幅によって、ハーフカット時に必要な切込み力(切断負荷)が異なるため、これに応じた脱調トルクとなるように、駆動パルスの周期を変調して、上記回転数を得る。具体的には、図11に示すように、テープ幅「24mm」の場合(図11(b))には、回転数が1000ppsになるように、周期を変調し、テープ幅「12mm」の場合(図11(c))には、回転数が1500ppsになるように、周期を変調する。
【0050】
切断刃91が切断位置に達したら、カッターモーター63が脱調状態となるまで上記駆動パルスを印加し続け、切込み動作を継続させる(S14)。そして、脱調状態を、駆動パルスの100ステップ分、維持する(S15)。これによって、印刷テープTにハーフカットがなされ、ハーフカットの切込み処理を終了する。
【0051】
切込み処理を終了したら、カッターモーター63を停止する(S16)。そして、一定時間(例えば、0.1秒)経過した後、切断刃91を閉塞位置から開放位置まで移動する。具体的には、正回転駆動の駆動パルスをカッターモーター63に印加し、移動用の所定回転数(例えば、2000pps)まで加速制御した後(S17)、この回転数で定速制御する(S18)。そして、開放位置近傍まで移動する分のステップ数、定速制御を継続したら、カッターモーター63を減速制御し(S19)、開放位置まで移動したらカッターモーター63を停止する(S20)。これによりハーフカット動作を終了する。
【0052】
以上のような構成によれば、フルカッター61を駆動する正回転と、ハーフカッター62の駆動する逆回転とで、ステッピングモーターの駆動パルスの周期を変調させることで、フルカッター61の駆動時におけるトルクと、ハーフカッター62の駆動時におけるトルク(脱調トルク)と、を相違させることができる。すなわち、各カッターの切断負荷に応じて駆動パルスの周期を変調させることで、カッター毎のトルク制御を実現することができる。このように、トルクリミッターや複雑な動力伝達機構等を用いる必要がなく、駆動部毎のトルク制御を簡単且つ適切に行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、ハーフカットとして、記録テープTaのみを切断するものを採用したが、ハーフカットとして、剥離テープTbのみを切断するものを採用しても良い。
【0054】
また、本実施形態においては、カッターモーター63の正回転をフルカッター61に入力し、カッターモーター63の逆回転をハーフカッター62に入力する構成としたが、逆に、カッターモーター63の正回転をハーフカッター62に入力し、カッターモーター63の逆回転をフルカッター61に入力する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1;テープ印刷装置、 61:フルカッター、 62:ハーフカッター、 63:カッターモーター、 64:カッター動力伝達機構、 75:クランクピン、 76:カム溝、 200:制御部、 202:印刷部、 203:切断部、 T:印刷テープ、 Ta:記録テープ、 Tb:剥離テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源を構成するステッピングモーターと、
前記ステッピングモーターの正回転が入力されて駆動する第1駆動部と、
前記ステッピングモーターの逆回転が入力されて駆動する第2駆動部と、
前記ステッピングモーターを制御するモーター制御手段と、を備え、
前記モーター制御手段は、前記第1駆動部の負荷および前記第2駆動部の負荷に応じて、前記ステッピングモーターに印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変する変調手段を有していることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記ステッピングモーターの正回転を前記第1駆動部に入力する第1入力部と、前記ステッピングモーターの逆回転を前記第2駆動部に入力する第2入力部と、を有する動力伝達手段を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1駆動部および前記第2駆動部のいずれか一方が、本体テープに剥離テープを貼着した処理テープを切断するフルカッターであり、他方が、前記前記本体テープまたは前記剥離テープを切断するハーフカッターであることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置と、
前記第1駆動部および前記第2駆動部に送り込まれる前記処理テープに印刷を行う印刷手段と、を備えたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項5】
正回転が入力されて駆動する第1駆動部および逆回転が入力されて駆動する第2駆動部に対し、単一の動力源を構成するステッピングモーターの制御方法であって、
前記第1駆動部の負荷および前記第2駆動部の負荷に応じて、前記ステッピングモーターに印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変することを特徴とするステッピングモーターの制御方法。
【請求項1】
動力源を構成するステッピングモーターと、
前記ステッピングモーターの正回転が入力されて駆動する第1駆動部と、
前記ステッピングモーターの逆回転が入力されて駆動する第2駆動部と、
前記ステッピングモーターを制御するモーター制御手段と、を備え、
前記モーター制御手段は、前記第1駆動部の負荷および前記第2駆動部の負荷に応じて、前記ステッピングモーターに印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変する変調手段を有していることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記ステッピングモーターの正回転を前記第1駆動部に入力する第1入力部と、前記ステッピングモーターの逆回転を前記第2駆動部に入力する第2入力部と、を有する動力伝達手段を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1駆動部および前記第2駆動部のいずれか一方が、本体テープに剥離テープを貼着した処理テープを切断するフルカッターであり、他方が、前記前記本体テープまたは前記剥離テープを切断するハーフカッターであることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動装置と、
前記第1駆動部および前記第2駆動部に送り込まれる前記処理テープに印刷を行う印刷手段と、を備えたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項5】
正回転が入力されて駆動する第1駆動部および逆回転が入力されて駆動する第2駆動部に対し、単一の動力源を構成するステッピングモーターの制御方法であって、
前記第1駆動部の負荷および前記第2駆動部の負荷に応じて、前記ステッピングモーターに印加する正回転および逆回転における駆動パルスの周期をそれぞれ可変することを特徴とするステッピングモーターの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−250325(P2012−250325A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125427(P2011−125427)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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