説明

駆動装置及び駆動方法

【課題】電気エネルギーを受けて機械的若しくは電気的な振動を生じる素子を、その固有振動数に近似した周波数で効率良く駆動することができる駆動装置を提供する。
【解決手段】素子5に駆動信号S1を供給する第1動作モード(駆動モード)と、この駆動信号S1の供給を停止した状態で素子5に生じる自由振動の周期を検出する第2動作モード(測定モード)とが交互に繰り返され、第2動作モードにおける素子5の振動周期の検出値Tdに近づくように、第1動作モードにおける駆動信号S1の周期が調節される。これにより、素子5がその固有振動数に近似した周波数で駆動されるため、一定の振幅の駆動信号S1により素子5の振幅を最大化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを受けて機械的若しくは電気的な振動を生じる素子を駆動する駆動装置及び駆動方法に係り、例えば、圧電素子を用いた小型ファンの駆動装置及び駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯機器は高い情報処理能力と美的なデザインの両方を要求されていることから、狭い筐体内に高温となるICを収容せざるを得ない場合が多く、ICから放射される熱を適切に放熱することが課題になっている。羽根を回転させて風を起こす従来のファンは、種々の電子機器の放熱部品として採用されているが、小型化、低消費電力化、低騒音化の点で問題があるため携帯機器への搭載が難しい。このような従来のファンに代わるものとして、圧電素子を用いた小型のファンが研究されている。
【0003】
図7は、圧電素子を用いた小型ファンの外観の一例を示す図である。図7(A)は平面図を示し、図7(B)は側面図を示す。図7に示すファンは、矩形の金属シート101に圧電セラミックスなどの圧電素子102を貼り付けて構成される。金属シート101は、その一端が筐体等に固定され、他方の端が解放状態になっている。圧電素子102に電極103が接合され、金属シートに電極104が接合される。電極103,104には、図8(A)に示すように駆動用の交流電源ACが接続される。圧電素子102に交流電圧が印加されると、圧電素子102が周期的に伸縮し、金属シート101が振り動かされる。金属シート101が団扇のように振られることで風が生じる。
【0004】
圧電素子を用いたファンは、図7に示すように構造が簡易であり、従来のファンに比べて小型化が容易である。また、消費電力が小さく騒音を抑制し易いという利点も備えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図7に示すファンは、形状や大きさ、材質等によって定まる機械的な共振周波数(固有振動数)を持っている。この固有振動数は、例えば金属シート101を自由振動させたときの周波数として観測される。固有振動数と同じ周波数の交流電圧が供給された場合に金属シート101の振幅が最大となり、交流電圧の周波数が固有振動数より僅かにずれると振幅が急激に小さくなる。そのため、効率良くファンを駆動するためには、交流電圧の周波数をファンの固有振動数に合わせる必要がある。
【0006】
例えば、ファンの固有振動数の平均値を予め取得しておき、交流電圧の周波数をその平均値に合わせて調整する方法が考えられる。しかしながらこの方法では、製造上のばらつきによってファンの固有振動数が平均値からずれていると、十分なファンの振幅を得られない場合がある。また、各ファンの固有振動数を測定して、その測定値と一致するように交流電圧の周波数を調整する方法も考えられるが、この方法でも、温度変化や経時変化によって交流電圧の周波数が変動する場合には、振幅の低下が避けられない。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気エネルギーを受けて機械的若しくは電気的な振動を生じる素子を、その固有振動数に近似した周波数で効率良く駆動することができる駆動装置及び駆動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る駆動装置は、電気エネルギーを受けて機械的若しくは電気的な振動を生じる素子を駆動する装置であり、第1動作モードにおいて、設定された周期若しくは周波数を持つ駆動信号を上記素子に供給し、第2動作モードにおいて、上記素子への上記駆動信号の供給を停止する駆動部と、上記第2動作モードにおいて、上記素子に生じる自由振動の周期若しくは周波数を検出する検出部と、動作モードを上記第1動作モードと上記第2動作モードとに交互に切り替えながら、上記第2動作モードにおける上記検出部の検出結果に近づくように、上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を調節する制御部とを有する。
【0009】
上記駆動装置によれば、上記素子に上記駆動信号を供給する上記第1動作モードと、上記駆動信号の供給を停止した状態で上記素子に生じる自由振動の周期を検出する上記第2動作モードとが交互に繰り返され、上記第2動作モードにおける上記素子の自由振動周期の検出結果に近づくように、上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期が調節される。
【0010】
好適には、上記検出部は、上記自由振動時に上記素子が発生する電気信号の周期若しくは周波数を検出してよい。
【0011】
好適には、上記駆動部は、上記第2動作モードにおいて上記駆動信号の出力を高インピーダンス状態としてよく、上記検出部は、上記素子への上記駆動信号の供給ラインを介して上記電気信号を入力してよい。
【0012】
好適には、上記制御部は、上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を、当該第1動作モードの直前の上記第2動作モードにおける上記検出部の検出結果、又は、当該第1動作モードの直前まで反復された一連の複数回の上記第2動作モードにおける上記検出部の検出結果に基づいて設定してよい。
【0013】
好適には、上記制御部は、上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数の設定値と当該第1動作モードの直後の上記第2動作モードにおける上記検出部の検出値との差が第1のしきい値を超える場合、次の上記第1動作モードにおいてNサイクル(Nは1以上の整数を示す)の上記駆動信号が出力された後、動作モードを上記第2動作モードに切り替えてよい。
【0014】
好適には、上記制御部は、上記差が上記第1のしきい値より小さい場合、次の上記第1動作モードにおいて上記Nサイクルより多い所定サイクルの上記駆動信号が出力された後、動作モードを上記第2動作モードに切り替えてもよいし、又は、次の上記第1動作モードにおいて上記駆動信号が上記Nサイクルの期間より長い所定の時間出力された後、動作モードを上記第2動作モードに切り替えてもよいし、又は、動作モードを上記第1動作モードに固定してもよい。
【0015】
好適には、上記制御部は、上記Nサイクルの駆動信号を出力する上記第1動作モードが連続して所定の回数若しくは所定の時間繰り返された場合、上記素子の振動の異常を示す信号を出力してよい。
【0016】
好適には、上記制御部は、上記検出値が所定の範囲から外れる場合、次の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を所定の下限値若しくは上限値に設定し、以降、上記差が上記第1のしきい値より小さくなるまでの間において、上記検出値が上記所定の範囲から外れる場合には、次の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を前回の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数に比べて所定の増分値若しくは減分値だけ変化させてよい。
あるいは、上記制御部は、上記差が上記第1のしきい値より大きい第2のしきい値を超える場合、次の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を所定の下限値若しくは上限値に設定し、以降、上記差が上記第1のしきい値より小さくなるまでの間において、上記差が上記第2のしきい値を超える場合には、次の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を前回の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数に比べて所定の増分値若しくは減分値だけ変化させてもよい。
【0017】
好適には、上記制御部は、上記第1動作モードの開始時における上記駆動信号の位相を、前回の上記第1動作モードにおける上記駆動信号が当該開始時において持ち得る位相に合わせてよい。
【0018】
好適には、上記駆動装置は、上記電気信号を2値信号に変換する2値化部を有してよい。この場合、上記検出部は、上記2値信号において連続する2つのパルスの中心の時間間隔を検出してよい。
【0019】
本発明の第2の観点に係る駆動方法は、電気エネルギーを受けて機械的若しくは電気的な振動を生じる素子を駆動する駆動方法であって、設定された周期又は周波数の駆動信号を所定の期間上記素子に供給する第1のステップと、上記素子の自由振動により発生する電気信号の周期又は周波数を測定する第2のステップと、上記電気信号の周期又は周波数が所定の範囲に含まれるか否かを判定する第3のステップと、上記電気信号の周期又は周波数が上記所定の範囲に含まれないときに上記駆動信号の周期又は周波数に対して所定の値を加算して新たな周期又は周波数を設定すると共に第1のカウント値をカウントアップする第4のステップと、上記第1のカウント値と第1の値とを比較する第5のステップと、上記第1のカウント値が上記第1の値より小さいときに上記第1のステップに戻る第6のステップと、上記電気信号の周期又は周波数が上記所定の範囲に含まれるときに上記駆動信号の周期又は周波数と上記電気信号の周期又は周波数との差と所定の値とを比較する第7のステップと、上記差が上記所定の値よりも小さいときに上記駆動信号を上記所定の期間よりも長い間上記素子に供給する第8のステップとを含む。
【0020】
好適には、上記第8のステップにおいて、上記差が上記所定の値よりも小さいときに上記電気信号の周期又は周波数を上記駆動信号の新たな周期又は周波数として設定すると共に当該駆動信号を上記所定の期間よりも長い間上記素子に供給してよい。
【0021】
好適には、上記第1のカウント値が上記第1の値に一致するときに上記素子の異常を示す信号を出力する第9のステップを更に含んでよい。
更には、上記差が上記所定の値よりも小さくないときに上記電気信号の周期又は周波数を上記駆動信号の新たな周期又は周波数として設定する第10のステップを更に含み、当該第10のステップの後に上記第5のステップが実行されてよい。
【0022】
好適には、上記第8のステップにおいて、上記差が上記所定の値よりも小さい場合が連続して複数回繰り返されるときに上記駆動信号を上記所定の期間よりも長い間上記素子に供給してよい。
更には、上記第8のステップの後に上記第2のステップに移行してよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、駆動信号の供給を停止したときに生じる素子の自由振動の周期若しくは周波数を検出し、その検出結果に応じて駆動信号の周期若しくは周波数を調節することにより、固有振動数に近似した周波数で効率良く素子を駆動できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る駆動装置の構成の一例を示す図である。
図1に示す駆動装置は、電気エネルギーを受けて機械的な振動を生じる素子5を駆動する。例えば素子5は、図7に示すように金属シートと圧電素子を貼り合わせて構成されたファンであり、駆動装置から供給される駆動信号S1に応じて図8(A)に示すように振動する。
【0025】
図1に示す駆動装置は、p型のMOSトランジスタ1と、n型のMOSトランジスタ2と、ゲート駆動回路3と、抵抗4と、n型のMOSトランジスタ6と、ダイオード7,8と、コンパレータ9と、周期検出部10と、制御部11とを有する。
MOSトランジスタ1,2及びゲート駆動回路3を含む回路は、本発明における駆動部の一実施形態である。
周期検出部10は、本発明における検出部の一実施形態である。
制御部11は、本発明における制御部の一実施形態である。
コンパレータ9は、本発明における2値化部の一実施形態である。
【0026】
MOSトランジスタ1,2は、電源ラインVDDと接地ラインGNDとの間に直列に接続される。MOSトランジスタ1のソースが電源ラインVDDに接続され、MOSトランジスタ2のソースが接地ラインGNDに接続される。MOSトランジスタ1及び2のドレインが出力ノードN1に共通に接続されており、その出力ノードN1から駆動信号S1が出力される。
【0027】
ゲート駆動回路3は、制御部11から供給される周期的なパルス信号S5に応じてMOSトランジスタ1及び2のゲートを駆動し、2つのMOSトランジスタを交互にオンさせる。またゲート駆動回路3は、制御部11から供給される制御信号S6に応じてMOSトランジスタ1及び2を両方オフさせ、駆動信号S1の出力ノードN1を高インピーダンス状態とする。
すなわち、ゲート駆動回路3は、制御信号S6がローレベルのとき(第1動作モード:駆動モード)、パルス信号S5に応じた駆動信号S1が出力ノードN1から出力されるようにMOSトランジスタ1及び2を交互にオンさせ、制御信号S6がハイレベルのとき(第2動作モード:測定モード)、出力ノードN1が高インピーダンス状態になるようMOSトランジスタ1及び2を両方オフさせる。
【0028】
出力ノードN1と接地ラインGNDとの間には、抵抗4と素子5が直列に接続される。抵抗4は、素子5の寄生的な静電容量(圧電素子102の静電容量)とともにローパスフィルタを構成する。このローパスフィルタは、素子5の振動に伴う可聴音の発生を抑制する。
【0029】
MOSトランジスタ6は、駆動信号S1の出力ノードN1とコンパレータ9の正入力端子との間の信号経路に挿入されており、制御部11から供給される制御信号S6に応じてオンオフする。MOSトランジスタ6は、制御信号S6がローレベルのとき(第1動作モード)にオフし、制御信号S6がハイレベルのとき(第2動作モード)にオンする。
【0030】
コンパレータ9は、MOSトランジスタ6を介して入力される素子5からの信号S2を接地ラインGNDの電位(グランド電位)と比較し、その比較結果に応じてハイレベル又はローレベルを有する2値化された信号S3を生成する。コンパレータ9の正入力端子がMOSトランジスタ6を介して駆動信号S1の出力ノードN1に接続され、その負入力端子が接地ラインGNDに接続される。コンパレータ9は、制御部11から供給される制御信号S6がローレベルのとき(第1動作モード)、信号S3をローレベルに初期化する。
【0031】
ダイオード7及び8は、コンパレータ9の正入力端子と接地ラインGNDの間に逆の極性で並列に接続される。ダイオード7のカソードとダイオード8のアノードがコンパレータ9の正入力端子に接続され、ダイオード7のアノードとダイオード8のカソードが接地ラインGNDに接続される。コンパレータ9の正入力端子の電位は、グランド電位に対してダイオード8の順電圧だけ高い電位と、グランド電位に対してダイオード7の順電圧だけ低い電位の範囲に制限される。すなわち、コンパレータ9の入力信号の振幅は、ダイオード7,8の順電圧以下に制限される。
【0032】
周期検出部10は、制御部11の制御信号Sc1に従い、駆動信号S1の供給が停止する動作モード(第2動作モード)においてコンパレータ9の出力信号S3の周期を検出し、その検出値Tdを制御部11に出力する。
【0033】
駆動信号S1の供給が停止されて出力ノードN1が高インピーダンス状態になるとき(第2動作モード)、素子5は図8(B)に示すような自由振動を生じる。素子5が自由振動すると、素子5の圧電素子102にはその自由振動と等しい周期を持った電気信号が発生する(図8(C))。その電気信号は、オン状態のMOSトランジスタ6を介してコンパレータ9に入力され、2値の信号S3に変換されて周期検出部10に入力される。従って、周期検出部10は、駆動信号S1の供給が停止する第2動作モードにおいて、素子5に生じる自由振動の周期に応じた検出値Tdを出力する。
【0034】
例えば周期検出部10は、信号S3において連続する2つのパルスの中心の時間間隔を検出する。図2(A)は、パルスの中心の間隔を検出する周期検出部10の構成の一例を示す図である。
図2(A)に示す周期検出部10は、分周部31と、選択部32と、計数部33を有する。
分周部31は、クロック信号CLKを2分周する回路であり、クロック信号CLKに対して2分の1の周波数を持った信号を出力する。選択部32は、信号S3がハイレベル(値「1」)の場合にクロック信号CLKを選択して出力し、信号S3がローレベル(値「0」)の場合に分周部31の出力信号を選択して出力する。計数部33は、制御部11の制御信号Sc1に従って、信号S3の連続する2つのパルスの1番目のパルスが立ち上がる時点から2番目のパルスが立ち下がる時点までの間に選択部32から出力されるパルスを計数する。
【0035】
図2(B)は、計数部33の計数値Tdと信号S3の周期との関係を説明するための図である。図2(B)において、「Ka」「Kb」「Kc」はクロック信号CLKのパルス数(サイクル数)を示す。「Ka」は1番目のパルスがハイレベルになる期間(t11〜t12)のパルス数を示し、「Kc」は2番目のパルスがハイレベルになる期間(t13〜t14)のパルス数を示し、「Kb」は1番目のパルスと2番目のパルスの間におけるローレベルの期間(t12〜t13)のパルス数を示す。この図2(B)より、1番目のパルスの中心(t15)と2番目のパルスの中心(t16)の時間間隔に相当するパルス数は「(Ka/2)+Kb+(Kc/2)」であることが分かる。
一方、計数部33は、1番目のパルスが立ち上がる時点(t11)から2番目のパルスが立ち下がる時点(t14)までの間に選択部32から出力されるパルスを計数する。パルスがハイレベルの期間(t11〜t12,t13〜t14)では、クロック信号CLKを分周部31により2分周した信号が計数部33に入力されるため、このハイレベルの期間において計数部33により計数されるパルス数は、クロック信号CLKを分周せずにそのまま計数する場合の半分になる(Ka/2,Kc/2)。したがって、期間t11〜t14における計数部33の計数値は「(Ka/2)+Kb+(Kc/2)」となり、連続する2つのパルスの中心の時間間隔に対応した値となる。
以上が周期検出部10についての説明である。
【0036】
図1に戻る。
制御部11は、第1動作モードにおいて、制御信号S6をローレベルに設定する。これにより、ゲート駆動回路3がパルス信号S5に応じてMOSトランジスタ1,2を交互にオンオフし、パルス信号S5に応じた駆動信号S1が素子5に供給される。このときMOSトランジスタ6がオフしているため、駆動信号S1の出力ノードN1はコンパレータ9から切り離される。
【0037】
また制御部11は、第2動作モードにおいて、制御信号S6をハイレベルに設定する。これにより、ゲート駆動回路3がMOSトランジスタ1,2を共にオフし、駆動信号S1の供給が停止され、出力ノードN1が高インピーダンス状態となる。このときMOSトランジスタ6がオンしているため、自由振動状態の素子5において発生する電気信号がMOSトランジスタ6を介してコンパレータ9に入力され、2値化された信号S3に変換される。制御部11は、この信号S3の周期を検出するように周期検出部10を制御する。
【0038】
制御部11は、上述した第1動作モードと第2動作モードを交互に切り替えながら、第2動作モードにおいて周期検出部10により検出される信号S3の周期に近づくように、第1動作モードにおける駆動信号S1の周期を調節する。
例えば、制御部11は、第1動作モードにおいてゲート駆動回路3に供給するパルス信号S5の周期を、当該第1動作モードの直前の第2動作モードにおける周期検出部10の検出値Tdに基づいて設定する。具体的には、例えば図2(A)に示すような回路によりクロック信号CLKのパルス数として検出値Tdが得られる場合、制御部11は、その検出値Tdに相当する分周数でクロック信号CLKを分周することにより、信号S3の周期(素子5の自由振動の周期)と同等な周期を持つパルス信号S5を生成する。
【0039】
また、制御部11は、第1動作モードにおける駆動信号S1の周期の設定値(すなわちパルス信号S5の周期の設定値Ts)と第2動作モードにおける周期検出部10の検出値Tdとを比較し、この比較結果に応じて、第1動作モードにおける駆動信号S1の出力期間(サイクル数)を変更する。
【0040】
例えば、制御部11は、第1動作モードにおけるパルス信号S5の周期の設定値Tsと、この第1動作モードの直後の第2動作モードにおける周期検出部10の検出値Tdとの差がしきい値E1を超える場合、次の第1動作モードではパルス信号S5を1サイクルのみ出力する。すなわち制御部11は、次の第1動作モードにおいて1サイクルのパルス信号S5が出力された後、動作モードを第2動作モードに切り替える。この場合、制御部11は、パルス信号S5の出力期間を短くして第1動作モードと第2動作モードとの切り替えを頻繁に行う。
【0041】
他方、制御部11は、パルス信号S5の周期の設定値Tsと周期検出部10の検出値Tdとの上記差がしきい値E1より小さい場合、次の第1動作モードにおけるパルス信号S5の出力期間を例えば100サイクルに設定する。この場合、制御部11は、パルス信号S5の出力期間を長くして第2動作モードの発生頻度を減らす。
【0042】
なお、制御部11は、パルス信号S5を1サイクルのみ出力する第1動作モードが連続して所定の回数繰り返された場合、素子5の振動の異常を示す信号S13を出力する。
【0043】
また、制御部11は、第2動作モードにおいて得られる周期検出部10の検出値Tdが所定の標準範囲Rtypから外れる場合、次の第1動作モードにおけるパルス信号S5の周期を大きく修正する。パルス信号S5の設定値Tsの初期値として、標準範囲Rtypの下限値Tminが設定されており、制御部11は、パルス信号S5の周期の設定値Tsと検出値Tdとの上記差がしきい値E1より小さくなるまでの間において、検出値Tdが標準範囲Rtypから外れる場合には、次の第1動作モードにおけるパルス信号S5の周期を前回の第1動作モードにおけるパルス信号S5の周期に比べて所定の増分値αだけ増加させる。下限値Tmin及び標準範囲Rtyp、並びにしきい値E1は、例えば、素子5の製造仕様(固有振動数の標準値やその誤差範囲など)に応じて設定される。これらの一例を挙げれば、素子5の固有周波数を60Hzとしたとき、標準範囲Rtypは40Hz〜80Hzの範囲に対応する周期の範囲、しきい値E1は60Hzの1%以下の値に対応する数値としてよい。また、値αについては、標準範囲Rtypを後述する計数部20の計数値Mで割った値に対応する数値としてよい。
【0044】
制御部11は、第1動作モードの開始時における駆動信号S1の位相を、前回の第1動作モードにおける駆動信号S1が当該開始時において持ち得る位相に合わせる。
例えば、制御部11は、第1動作モードから第2動作モードへ移行した後もパルス信号S5の周期を同一に維持する。そして、制御部11は、次の第1動作モードにおけるパルス信号S5の設定周期を決定した後、パルス信号S5の所定の位相において(例えばハイレベルからローレベルへ変化するときに)、その前後の位相の連続性を保ちながらパルス信号S5の周期を切り替えるとともに、駆動信号S1の出力を開始する(第1動作モードへ移行する)。
【0045】
図3は、制御部11の構成の一例を示す図である。図3に示す制御部11は、選択部12と、レジスタ13〜15と、加算部16と、分周部17と、エッジ検出部18と、計数部19,20と、比較部21,22と、フリップフロップ23,24と、シーケンス制御部25とを有する。
【0046】
レジスタ13は、パルス信号S5の周期の設定値Tsを格納する。レジスタ13は、選択部12において選択されたデータを、シーケンス制御部25の制御信号Sc3に従って保持する。
【0047】
レジスタ14は、周期検出部10の検出値Tdの標準範囲を示すデータ(標準範囲Rtyp)を格納する。
レジスタ15は、パルス信号S5の周期の下限値Tminを格納する。
【0048】
加算部16は、レジスタ13に格納される設定値Tsに増分値αを加算する。
【0049】
選択部12は、シーケンス制御部25の制御信号Sc2に従って、周期検出部10の検出値Td、レジスタ15に格納される下限値Tmin及び加算部16の加算結果(Ts+α)の何れか1つを選択する。
【0050】
分周部17は、入力される設定値Tsに応じた分周数でクロック信号CLKを分周し、分周した信号をパルス信号S5として出力する。分周部17は、制御信号Sc5に応じて分周数を更新する。
【0051】
エッジ検出部18は、コンパレータ9より出力される信号S3の立ち上がり及び立ち下がりのエッジを検出する。
【0052】
計数部19は、パルス信号S5のパルスを計数し、その計数値が制御信号Sc6により指定された値(以下、指定値と呼ぶ)に達すると、出力信号S11を「0」から「1」に変化させる。また計数部19は、制御信号Sc6に応じて計数値をゼロにリセットする。
【0053】
計数部20は、レジスタ13に格納される設定値Tsの更新回数を計数する。計数部20は、シーケンス制御部25の制御信号Sc4に応じて計数値をゼロにリセットする。
【0054】
比較部21は、周期検出部10の検出値Tdとレジスタ13に格納される設定値Tsとを比較し、両者の差がしきい値E1より大きいか否かを示す信号S8を出力する。
【0055】
比較部22は、周期検出部10の検出値Tdとレジスタ14に格納される標準範囲Rtypとを比較し、検出値Tdが標準範囲Rtypから外れるか否かを示す信号S9を出力する。
【0056】
フリップフロップ23は、シーケンス制御部25から出力される制御信号Sc7をパルス信号S5の立ち下がりに同期して保持し、信号Sc7Aとして出力する。
【0057】
フリップフロップ24は、計数部19の出力信号S11が「0」から「1」に変化すると制御信号S6を「1」(ハイレベル)にセットし、フリップフロップ23の出力信号Sc7Aが「1」になると制御信号S6を「0」(ローレベル)にリセットする。
【0058】
シーケンス制御部25は、制御部11の各構成要素と周期検出部10を所定のシーケンスに沿って動作するように制御する。
【0059】
シーケンス制御部25は、第2動作モードにおけるエッジ検出部18の検出信号S7に基づいて、信号S3のi番目(iは1以上の整数を示す)のパルスと(i+1)番目のパルスの間隔を検出するように周期検出部10を制御する。
例えば図2(A)に示す周期検出部10の場合、シーケンス制御部25は、i番目のパルスの立ち上がり(t11)から(i+1)番目のパルスの立ち下がり(t14)までの間に選択部32から出力される信号のパルスを計数するよう計数部33を制御する。具体的には、例えばi=2の場合において、シーケンス制御部25は、第2動作モードへ移行する前に計数部33の計数値を予めゼロにリセットし、第2動作モードへ移行した後は信号S3の3番目のエッジと6番目のエッジの間で計数部33の計数動作を実行させる。コンパレータ9の信号S3は第2動作モードの開始時にローレベルにリセットされているので、3番目のエッジは2番目のパルスの立ち上がりに対応し、6番目のエッジは3番目のパルスの立ち下がりに対応する。
【0060】
周期検出部10において検出値Tdが得られると、シーケンス制御部25は、比較部21の信号S8及び比較部22の信号S9に応じて選択部12、レジスタ13及び計数部19を制御する。
【0061】
周期検出部10の検出値Tdが標準範囲Rtypから外れていることを示す信号S9が比較部22から出力されている場合、シーケンス制御部25は、設定値Tsを下限値Tminから徐々に増加させて設定値Tsの適正な値を探索するシーケンス(以下、探索シーケンスと呼ぶ)を開始する。探索シーケンスを新たに開始する場合、シーケンス制御部25は、レジスタ15に格納されている下限値Tminを選択してレジスタ13に格納する。また、探索シーケンス中に検出値Tdが標準範囲Rtypから外れた場合、シーケンス制御部25は、加算部16から出力されるデータ(設定値Ts+増分値α)を選択してレジスタ13に格納する。シーケンス制御部25は、探索シーケンスにおいて計数部19の指定値を「1」にセットする。
【0062】
検出値Tdが標準範囲Rtypに含まれている場合、シーケンス制御部25は、比較部21の信号S8を参照する。設定値Tsと検出値Tdとの差がしきい値E1より大きいことを示す信号S8が比較部21において出力されている場合、シーケンス制御部25は、周期検出部10の検出値Tdを選択してレジスタ13に格納するとともに、計数部19の指定値を「1」にセットする。一方、設定値Tsと検出値Tdとの差がしきい値E1より小さいことを示す信号S8が比較部22において出力されている場合、シーケンス制御部25は、周期検出部10の検出値Tdを選択してレジスタ13に格納するとともに、計数部19の指定値を「100」にセットして、探索シーケンスを終了する。
【0063】
シーケンス制御部25は、計数部19の指定値を「100」にセットするとき、計数部20の計数値をゼロにリセットする。計数部20は、計数部19の指定値が「1」のときにレジスタ13の設定値Tsが更新される回数、即ち、第1動作モードと第2動作モートとが連続的に繰り返される回数を計数する。シーケンス制御部25は、計数部20の計数値Mが所定の値に達した場合、素子5の振動の異常を示す信号S13を出力する。
【0064】
パルス信号S5の周期の設定値Tsが確定すると、即ち、探索シーケンスが終了すると、シーケンス制御部25は、制御信号Sc7を「0」から「1」に変化させる。制御信号Sc7が「1」になると、パルス信号S5の立ち下がりにおいてフリップフロップ23の信号Sc7Aが「1」になる。信号Sc7Aが「1」になると、制御信号S6が「0」(ローレベル)にリセットされ、動作モードが第2動作モードから第1動作モードに移行する。シーケンス制御部25は、第1動作モードへ移行するとき、分周部17における分周数をレジスタ13の設定値Tsに更新し、計数部19の計数値をゼロにリセットする。
以上が制御部11の説明である。
【0065】
ここで、上述した構成を有する駆動装置の動作について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0066】
動作を開始する初期状態において、駆動装置の各構成要素が初期化される(ステップST101)。例えば、制御部11においてレジスタ13に下限値Tminが格納され(Ts=Tmin)、計数部20の計数値Mがゼロにリセットされ(M=0)、制御信号S6がハイレベルに設定される。
【0067】
また、初期状態において、探索シーケンスが有効になる。制御部11は、探索シーケンスの状態を示すフラグFが格納される不図示のレジスタを備えており、初期状態においてこのフラグFに「1」がセットされる。
【0068】
初期化の後、駆動装置の動作モードは、駆動信号S1を1サイクルのみ出力する第1動作モードに移行する(ステップST102)。制御部11において、制御信号S6がハイレベルからローレベルにリセットされ、分周部17の分周動作及び計数部19の計数動作が開始される。このとき、計数部19の指定値は「1」に設定されている。
制御信号S6がローレベルになるとゲート駆動回路3がアクティブ状態となり、パルス信号S5に応じてMOSトランジスタ1,2が交互にオンする。出力ノードN1には、パルス信号S5に応じた駆動信号S1が発生する。このとき、MOSトランジスタ6がオフし、コンパレータ9の入力と出力ノードN1が切り離される。また、コンパレータ9の動作が停止され、信号S3がローレベルに保持される。
【0069】
1サイクル(1パルス)の駆動信号S1が出力されると、計数部19の計数値が指定値「1」と等しくなり、信号S11が「1」になる。これにより、フリップフロップ24において制御信号S6が「1」(ハイレベル)にセットされ、動作モードが第1動作モードから第2動作モードに移行する。
【0070】
制御信号S6が「1」(ハイレベル)にセットされると、ゲート駆動回路3によってMOSトランジスタ1,2が共にオフ状態とされ、素子5への駆動信号S1の供給が停止される。ノードN1は高インピーダンス状態になる。また、ハイレベルの制御信号S6を受けてMOSトランジスタ6がオンし、コンパレータ9がイネーブル状態になる。
駆動信号S1の供給が停止されると、素子5はそれまで受けた電気エネルギーによって自由振動する。自由振動により生じた圧力が素子5の圧電素子102に加わると、自由振動と同じ周期を持った電気信号が発生する。この電気信号がMOSトランジスタ6を介してコンパレータ9に入力され、2値化された信号S3に変換される。
【0071】
第2動作モードへ移行すると、周期検出部10において信号S3の周期が検出される(ステップST103)。信号S3の周期は、素子5の自由振動の周期に対応する。周期検出部10では、第2動作モードへ移行した直後の不連続な波形で周期を検出しないようにするため、例えば初めの所定数のパルスが検出対象から除外される。
【0072】
周期検出部10において検出値Tdが得られると、制御部11において検出値Tdが所定の標準範囲Rtypに含まれているか否か判定される(ステップST104)。
【0073】
検出値Tdが標準範囲Rtypから外れている場合、フラグFの値に基づいて探索シーケンス中か否かが判定され(ステップST108)、探索シーケンス中であればステップST111が実行され、探索シーケンス中でなければステップST109が実行される。初期状態においては探索シーケンスが有効になっているため、ここではステップST111が実行される。
【0074】
ステップST111では、駆動信号S1の周期の設定値Tsに所定の増分値αが加算される。すなわち、加算部16において設定値Tsに増分値αが加算され、その加算結果が選択部12により選択されてレジスタ13に格納される。
【0075】
レジスタ13の設定値Tsが更新されると、計数部20の計数値Mが「1」だけインクリメントされる(ステップST113)。計数部20がインクリメントされた後、制御部11において計数部20の計数値Mが最大値Mmaxに達しているか否か判定される(ステップST114)。計数値Mが最大値Mmaxに達していない場合、再びステップST102に戻って1サイクル(1パルス)の駆動信号S1が出力される。
【0076】
他方、検出値Tdが標準範囲Rtypに含まれている場合(ステップST104)、検出値Tdと設定値Tsとの差がしきい値E1を超えているか否かが判定される(ステップST105)。
検出値Tdと設定値Tsとの差がしきい値E1を超えている場合、検出値Tdが新たな設定値Tsとして選択される(ステップST112)。すなわち、周期検出部10の検出値Tdが選択部12により選択されてレジスタ13に格納される。以降は、上述と同様にステップST113,ST114が実行される。計数値Mが最大値Mmaxに達していなければ、再びステップST102に戻って1サイクルの駆動信号S1が出力される。
【0077】
ステップST102以降は、上述と同様の動作が繰り返される。すなわち、第1動作モードにおいて駆動信号S1が1サイクル出力され(ステップST102)、第2動作モードにおいて素子5の自由振動の周期が検出される(ST103)。検出値Tdが標準範囲Rtypを外れる場合、設定値Tsに増分値αが加算される(ステップST104,ST108,ST111)。検出値Tdが標準範囲Rtypに含まれる場合は、検出値Tdと設定値Tsとの差がしきい値E1と比較され、上記差がしきい値E1を超える場合、検出値Tdが新たな設定値Tsとなる(ステップST104,ST105,ST112)。
設定値Tsが更新されると、計数部20の計数値Mが「1」だけインクリメントされ(ステップST113)、その計数値Mが最大値Mmaxに達していなければ(ステップST114)、再びステップST102に戻って1サイクルの駆動信号S1が出力される。
【0078】
このように、検出値Tdと設定値Tsとの差がしきい値E1を超える場合は、第1動作モードにおいて1サイクル(1パルス)のみ駆動信号S1が出力される。この場合、第1動作モードの期間が短いため、駆動信号S1の設定値Tsの更新が頻繁に行われる。駆動信号S1の周期が素子5の自由振動の周期に近づくと、検出値Tdが標準範囲Rtypに含まれるようになるため、検出値Tdが新たな設定値Tsとして使用される。この更新を繰り返すうちに、検出値Tdと設定値Tsとの差が徐々に小さくなる。そして、この差がしきい値E1より小さくなると、設定値Tsが検出値Tdに十分近似すると判定されて、ステップST106に処理が移る。
【0079】
ステップST106では、フラグFが「0」にリセットされて探索シーケンスが終了するとともに、計数部20の計数値M(設定値Tsの更新回数)がゼロにリセットされ、検出値Tdが新たな設定値Tsとしてセットされる。そして、計数部19の指定値が「1」から「100」に変更され、動作モードが第1動作モードに移行する(ステップST107)。そして、第1動作モードにおいて、100サイクル(100パルス)の連続的な駆動信号S1が出力される。
【0080】
このように、設定値Tsが検出値Tdに十分近似する場合は、第1動作モードが第2動作モードに対して相対的に長くなるため、駆動信号S1の出力停止に伴う素子5の平均的な振幅の低下が抑制される。
【0081】
さて、100サイクルの駆動信号S1が出力された後、動作モードは再び第2動作モードに移行する。第2動作モードでは、上述と同様に、素子5の自由振動の周期が検出される(ステップST103)。
【0082】
ここで、検出値Tdが標準範囲Rtypに含まれており(ステップST104)、かつ、検出値Tdと設定値Tsとの差がしきい値E1より小さい場合(ステップST105)、設定値Tsが検出値Tdに近似すると判定されて、上述と同様に100サイクルの駆動信号S1が出力される(ステップST105〜ST107)。その後、再び100サイクルの駆動信号S1が出力された後、動作モードが再び第2動作モードに移行し、ステップST103からの処理が反復される。
【0083】
他方、検出値Tdが標準範囲Rtypに含まれており(ステップST104)、かつ、検出値Tdと設定値Tsとの差がしきい値E1より大きい場合(ステップST105)、検出値Tdが新たな設定値Tsとしてセットされる(ステップST112)。そして、計数部20の計数値Mが「1」だけインクリメントされ(ステップST113)、その計数値Mが最大値Mmaxに達していなければ(ステップST114)、動作モードが第1動作モードに移行する(ステップST102)。第1動作モードにおいて1サイクルの駆動信号S1が出力された後、動作モードが第2動作モードに移行し、ステップST103からの処理が反復される。
【0084】
また、検出値Tdが標準範囲Rtypから外れている場合(ステップST104)、フラグFの値に基づいて探索シーケンス中か否かが判定される(ステップST108)。ここではフラグFが「0」、すなわち探索シーケンスではないため、ステップST109,ST110に処理が移り、探索シーケンスが開始される。すなわち、ステップST109において下限値Tminが新たな設定値Tsとして選択され、ステップST110においてフラグFが「1」に設定される。ステップST110の後、ステップST113において計数部20の計数値Mが「1」だけインクリメントされ、その計数値Mが最大値Mmaxに達していなければ(ステップST114)、動作モードが第1動作モードに移行する(ステップST102)。第1動作モードにおいて1サイクルの駆動信号S1が出力された後、動作モードが第2動作モードに移行し、ステップST103からの処理が反復される。探索シーケンスでの動作は上述と同様である。すなわち、1サイクルの駆動信号S1を出力する第1動作モードと、素子5の自由振動周期を検出する第2動作モードとが交互に切り替えられ、自由振動周期の検出値Tdに応じて駆動信号S1の周期の設定値Tsが更新される。検出値Tdと設定値Tsとの差がしきい値E1より小さくなると、探索シーケンスが終了し(ステップST106)、第1動作モードにおいて100サイクルの駆動信号S1が出力される(ステップST107)。
【0085】
ところで、1サイクルの駆動信号S1を出力する第1動作モード(ステップST102)が連続して繰り返されるとき、計数部20の計数値Mはゼロにリセットされず、その繰り返しの度に「1」ずつ増大する。計数値Mが最大値Mmaxに達するまでステップST102の動作モードが連続して繰り返された場合、ステップST114からステップST115へ処理が移る。ステップST115において、素子5の振動の異常を示す信号S13が制御部11において生成され、例えば図示しない上位装置(システムコントローラなど)に異常の発生が通知される。
【0086】
図5は、図1に示す駆動装置における各部の信号波形の一例を示す図である。
制御信号S6(図5(B))は動作モードに対応している。すなわち、制御信号S6がローレベルのときに第1動作モードとなり、制御信号S6がハイレベルのとき第2動作モードとなる。図に示すように、第1動作モードにおいて駆動信号S1(図5(A))が出力され、第2動作モードにおいて駆動信号S1の出力が停止される。駆動信号S1の出力が停止されると素子5が自由振動し、その振動に応じて発生した信号S2(図5(C))がコンパレータ9に入力される。この信号S2がコンパレータ9において2値化され、信号S3(図5(D))が得られる。信号S3に基づいて、素子5の自由振動の周期が検出される。
【0087】
自由振動の周期の検出値Tdと駆動信号S1の周期の設定値Tsとの差がしきい値E1を超える場合、次の第1動作モードにおいて駆動信号S1(図5(A))が1サイクルのみ出力される。図5の例では、この1サイクルのみの第1動作モードが7回繰り返されており、これと交互に第2動作モードが7回繰り返されている。第2動作モードでは、検出値Tdに応じて設定値Tsが更新される。第2動作モードが繰り返されることにより、設定値Tsと検出値Tdとの差が減少する。この差がしきい値E1より小さくなると、第1動作モードにおいて駆動信号S1が連続的に出力される。
【0088】
図6は、第1動作モードの開始時における駆動信号S1の位相について説明するための図であり、各制御信号のタイミング関係を示す。
制御信号S6(図6(G))がハイレベルになる期間(t1〜t6)が第2動作モードである。この期間において、コンパレータ9の出力信号S3(図6(A))の周期が検出される。図6の例では、第2動作モードにおいて信号S3に3つのパルスが生じており、そのうち後半の2つのパルスが周期の検出対象となる。
【0089】
エッジ検出部18(図4)の検出信号S7(図6(B))は、信号S3のパルスの立ち上がりと立ち下がりを示す。この検出信号S7に基づいて、信号S3における2番目のパルスの立ち上がり(t3)と3番目のパルスの立ち下がり(t6)が特定される。t3からt6の期間において、制御信号Sc1(図6(C))がハイレベルになる。制御信号Sc1がハイレベルのとき、周期検出部10の計数部33(図2)においてクロック信号CLKが計数される。
【0090】
信号S3(図6(A))の3番目のパルスの立ち下がると(t6)、制御信号Sc1(図6(C))がローレベルになって計数部33の計数動作が停止されるとともに、制御信号Sc7(図6(D))がハイレベルになる。制御信号Sc7は、周期検出部10において検出が終了したことを示す。
【0091】
パルス信号S5は、第2動作モードに移行した後も、直前の第1動作モードにおける周期を維持している。周期の検出が終了して制御信号Sc7がハイレベルになっているときにパルス信号S5(図6(E))が立ち下がると、フリップフロップ23(図4)の出力信号Sc7A(図6(F))がハイレベルになる。信号Sc7Aがハイレベルになると、フリップフロップ24において制御信号S6がローレベルにリセットされ、動作モードが第1動作モードに移行する。制御信号S6がローレベルになると、制御信号Sc7はローレベルにリセットされる。
【0092】
第2動作モードから第1動作モードへ移行するとき(制御信号S6が立ち下がるとき)、分周部17(図4)において分周数が更新される。また、パルス信号S5が立ち下がるとき、分周部17におけるクロック信号CLKの計数値がゼロにリセットされる。従って、第1動作モードの開始時においては、分周部17の分周数が更新されるとともにその計数値がリセットされる。そのため、第1動作モードの開始前後において、パルス信号S5の位相が連続に保たれる。パルス信号S5の位相が連続に保たれることにより、第2動作モードによる停止期間を挟んだ2つの第1動作モードにおける駆動信号S1の位相が連続に保たれる。
【0093】
以上説明したように、本実施形態に係る駆動装置によれば、素子5に駆動信号S1を供給する第1動作モードと、この駆動信号S1の供給を停止した状態で素子5に生じる自由振動の周期を検出する第2動作モードとが交互に繰り返され、第2動作モードにおける素子5の振動周期の検出値Tdに近づくように、第1動作モードにおける駆動信号S1の周期が調節される。
これにより、素子5がその固有振動数に近似した周波数で駆動されるため、一定の振幅の駆動信号S1により素子5の振幅を最大化することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る駆動装置によれば、素子5の自由振動周期に合わせて駆動信号S1の周期が調節されるため、素子5や他の構成要素の特性が製造ばらつき、温度変化、経時変化などにより変動する場合でも、駆動信号S1の周期を素子5の固有振動の周期に合わせることができる。これにより、人手による調整が不要になるため、調整作業に係るコストを低減できる。製品出荷後も駆動信号S1の周期を最適に保つことができることから、製品の信頼性を向上できる。
【0095】
更に、本実施形態に係る駆動装置によれば、駆動信号S1の供給を停止したとき素子5に発生する電気信号の周期に基づいて素子5の固有振動の周期が検出されることから、固有振動数を他のセンサで検出する場合に比べて構成を簡易化できる。しかも、駆動信号S1の供給を間欠的に停止させながら素子5の固有振動の周期を検出するため、素子5の振動を完全に止めることなく駆動信号S1の周期を自動調節できる。
【0096】
また、本実施形態に係る駆動装置によれば、第1動作モードにおける駆動信号S1の周期の設定値Tsと、当該第1動作モードの直後の第2動作モードにおける素子5の自由振動周期の検出値Tdとの差がしきい値E1を超える場合、次の第1動作モードにおいては、1サイクルの駆動信号S1が出力された後、動作モードが第2動作モードに切り替えられる。すなわち、設定値Tsが検出値Tdに十分近似していない場合は、第1動作モードにおける駆動信号S1の出力期間が短くなり、第2動作モードにおける設定値Tsの更新が頻繁に行われる。これにより、設定値Tsが検出値Tdに近似した値に調節されるまでの時間を短縮できる。
一方、本実施形態に係る駆動装置によれば、設定値Tsと検出値Tdとの差がしきい値E1より小さくなった場合(すなわち設定値Tsが検出値Tdに近似する場合)、第1動作モードにおける駆動信号S1の出力期間が長くなり(上述の例では100サイクル)、駆動信号S1の出力停止期間が相対的に短くなるので、素子5の振幅の減少を抑制することができる。
【0097】
また、本実施形態に係る駆動装置によれば、自由振動周期の検出値Tdが標準範囲Rtypから外れる場合、次の第1動作モードにおける駆動信号S1の周期が前回の周期に対して値αだけ修正され、以降、再び検出値Tdが標準範囲Rtypから外れる場合、再度、次の第1動作モードにおける駆動信号S1の周期が前回の第1動作モードにおける駆動信号S1の周期に比べて増分値αだけ変化する。すなわち、設定値Tsが最適値から大きくずれている場合や、外乱の影響等により検出値Tdの誤差が大きい場合においては、検出値Tdが設定値Tsとして使用されず、前回の設定値Tsに増分値αを加えた値が次の設定値Tsとして使用される。これにより、設定値Tsが最適値より大きく外れた不適切な値に更新されるケースを減らせるので、設定値Tsが検出値Tdに近似した値に調節されるまでの時間を短縮できる。
【0098】
また、本実施形態に係る駆動装置では、第1動作モードの開始時における駆動信号S1の位相を、その前の第1動作モードにおける駆動信号S1が当該開始時まで維持した場合に持ち得る位相に合わせている。すなわち、第2動作モードによる停止期間を挟んだ2つの第1動作モードにおいて、駆動信号S1の位相の連続性が保持される。これにより、停止期間の前後で駆動信号S1の位相が不連続になることによる駆動信号S1のエネルギーの損失を抑制できるので、特に駆動信号S1が連続的に出力される場合における素子5の振幅の減少を抑制できる。
【0099】
また、本実施形態に係る駆動装置によれば、自由振動状態の素子5の電気信号を2値化して得られる信号S3において、連続する2つのパルスの中心の時間間隔が検出される。
素子5において発生する電気信号の直流レベルが過渡的に変動すると、電気信号がコンパレータ9の基準電位(グランド電位)を横切るタイミングも変動する。そのため、信号S3の立ち上がりや立ち下りを基準にしてパルスの時間間隔を測定する方法では、電気信号の振動成分の周期を正しく検出できない。一方、電気信号において連続する2つのピークの時間間隔(若しくはボトムの時間間隔)は、電気信号の直流レベルが変動する場合でも振動成分の周期を正しく反映している。信号S3において連続する2つのパルスの中心の時間間隔は、この電気信号のピーク間(若しくはボトム間)の時間間隔に近似する。従って、本実施形態によれば、電気信号の直流レベルの変動による周期の検出値の誤差を低減できる。
【0100】
また、本実施形態に係る駆動装置によれば、1サイクルの駆動信号を出力する第1動作モードが連続して所定の回数繰り返された場合、素子5の振動の異常を示す信号S13が出力されるので、例えば素子5に異物が接触している場合などの異常を的確に検出することができる。
【0101】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0102】
上述の実施形態では、第1動作モードにおける駆動信号S1の周期を当該第1動作モードの直前の第2動作モードにおける周期検出部10の検出値Tdに基づいて設定しているが(図4のステップST112)、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、第1動作モードの直前まで反復された一連の複数回の第2動作モードにおける周期検出部10の検出値に基づいて、駆動信号の周期を設定してもよい。例えば、第1動作モードの直前まで反復された一連の複数回の第2動作モードにおける複数の検出値を入力とするデジタルフィルタ(一連の複数の検出値に所定の重み係数を乗じて加算するフィルタなど)を設けて、その出力を駆動信号の周期の設定値としてもよい。
【0103】
上述の実施形態では、1サイクルの駆動信号を出力する第1動作モードが連続して所定の回数繰り返された場合(第1動作モードと第2動作モードとが所定回数連続的に繰り返されたとき)に素子5の振動の異常を示す信号S13が出力されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の他の実施形態では、1サイクルの駆動信号を出力する第1動作モードが所定の時間繰り返された場合(第1動作モードと第2動作モードとが所定時間連続的に繰り返されたとき)に信号S13が出力されるようにしてもよい。
【0104】
上述の実施形態では、第1動作モードにおける駆動信号S1の周期の設定値Tsと第2動作モードにおける素子5の自由振動周期の検出値Tdとの差がしきい値E1より大きい場合、次の第1動作モードにおいて1サイクルの駆動信号S1が出力されるが(図4のステップST105,ST112〜ST102)、このサイクル数(パルス数)は任意であり、2サイクル(2パルス)以上でもよい。
【0105】
上述の実施形態では、第1動作モードにおける駆動信号S1の周期の設定値Tsと第2動作モードにおける素子5の自由振動周期の検出値Tdとの差がしきい値E1より小さい場合、次の第1動作モードにおいて100サイクル(100パルス)の駆動信号S1が出力されるが(図4のステップST105〜ST107)、このサイクル数は、上記差がしきい値E1を超える場合に比べて大きい任意の数でよい。
また、上述の実施形態では、上記差が所定のしきい値より小さい場合において、次の第1動作モードの期間を駆動信号のサイクル数で規定しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の他の実施形態では、第1動作モードの期間を時間で規定してもよい。すなわち、第1動作モードが所定の時間(上記差がしきい値E1を超える場合に比べて長い時間)出力された後、動作モードを第2動作モードに切り替えるようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、上記差が所定のしきい値より小さい場合においても定期的に第2動作モードを実施しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の他の実施形態では、上記差が所定のしきい値より小さくなった場合、動作モードを第1動作モードに固定してもよい。この場合、制御部は、第2動作モードを定期的に実施する替わりに、上位装置等からの指示を受けて第2動作モードを実施してもよい。
上述の実施形態においては、設定値Tsと検出値Tdとの差が所定のしきい値E1より小さい場合に、駆動信号を連続的に100サイクル(100パルス)供給する第1動作モードに移行するが、本発明はこれに限定されない。例えば、設定値Tsと検出値Tdとの差が所定のしきい値E1より小さい場合が連続して所定の回数(例えば、2回又はそれ以上)繰り返されたときに、100サイクル(100パルス)の駆動信号を連続して供給する第1の動作モードに移行するようにしてもよい。
【0106】
上述の実施形態では、検出値Tdが標準範囲Rtypから外れる場合、次の第1動作モードにおける駆動信号S1の周期が所定の下限値min(標準範囲Rtypの下限値)に設定され、以降、上記差がしきい値E1より小さくなるまでの間において、検出値Tdが標準範囲Rtypから外れる場合には、次の第1動作モードにおける駆動信号S1の周期が前回の第1動作モードにおける駆動信号S1の周期に比べて増分値αだけ大きな値に設定されるが(ステップST108,ST109,ST110,ST111)、本発明はこれに限定されない。
例えば、本発明の他の実施形態では、検出値Tdと設定値Tsとの差がしきい値E1より大きいしきい値E2を更に超える場合(すなわち設定値Tsが最適値から大きく外れている場合)、次の第1動作モードにおける駆動信号S1の周期を所定の下限値Tminに設定し、以降、上記差がしきい値E1より小さくなるまでの間において、上記差がしきい値E2を超える場合には、次の第1動作モードにおける駆動信号S1の周期を前回の第1動作モードにおける駆動信号S1の周期に比べて増分値αだけ大きな値に設定してもよい。
また、本発明の他の実施形態では、上記の下限値Tminを上限値Tmax(標準範囲Rtypの上限値)に変更し、上記の増分値αを減分値βに変更してもよい。すなわち、周期の設定値Tsを上限値Tmaxから減分値βずつ減らすようにしてもよい。
また、上述の例では、下限値Tmin及び上限値Tmaxを標準範囲Rtypの下限値及び上限値としているが、本発明はこれに限定されない。例えば、下限値Tmin及び上限値Tmaxを標準範囲Rtyp内の任意の範囲の下限値及び上限値としてもよい。
【0107】
上述の実施形態では、駆動信号S1の周期の設定値Tsが下限値Tminから増分値αずつ増大するが(ステップST111)、本発明はこれに限定されない。例えば図4のステップST111の後などにおいて、設定値Tsが所定の上限値Tmaxに達しているか否かを判定するステップと、設定値Tsが上限値Tmaxに達している場合に設定値Tsを再び下限値Tminに戻すステップを設けてもよい。これにより、下限値Tminから上限値Tmaxの範囲で設定値Tsの最適値を繰り返し探索することが可能になる。
同様に、設定値Tsが上限値Tmaxから減分値βずつ減少する実施形態においては、設定値Tsが所定の下限値Tminに達しているか否かを判定するステップと、設定値Tsが下限値Tminに達している場合に設定値Tsを再び上限値Tmaxに戻すステップを設けてもよい。この場合も、下限値Tminから上限値Tmaxの範囲で設定値Tsの最適値を繰り返し探索することが可能になる。
更には、下限値Tminと上限値Tmaxとの間を探索しても連続的に駆動信号を供給する第1動作モードに移行できない場合、標準範囲Rtypを広げるように、下限値Tmin、上限値Tmax及び標準範囲Rtypを変更するようにしてもよい。また、この場合に、所定のしきい値E1が大きくなるように変更するようにしてもよい。
【0108】
上述の実施形態では、自由振動状態の素子5において発生する電気信号の周期(パルスの時間間隔)を検出しているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、電気信号の周波数(例えば一定時間におけるパルスの数)を検出してもよい。
【0109】
上述の実施形態では、素子5の駆動信号S1の周期を設定しているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、駆動信号の周波数を設定してもよい。
【0110】
上述の実施形態では、自由振動する素子5の電気信号に基づいて当該自由振動の周期を検出しているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、例えば加速度センサなどを使って素子の自由振動の周期(若しくは周波数)を検出してもよい。
【0111】
上述した実施形態では、電気エネルギーを受けて機械的振動を生じる素子の駆動装置を例に挙げているが、本発明はこれに限定されない。本発明は、電気エネルギーを受けて電気的な振動(電圧・電流・電力等の振動)を生じる素子の駆動装置にも適用可能である。
【0112】
図2,図3に示す回路構成は一例であり、同等な機能を有する他の回路に置き換え可能である。例えば、図3に示すハードウェアの構成要素の少なくとも一部を、プログラムに従って処理を実行するコンピュータに置き換えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の構成の一例を示す図である。
【図2】周期検出部の構成の一例を示す図である。
【図3】制御部の構成の一例を示す図である。
【図4】図1に示す駆動装置の動作について説明するためのフローチャートである。
【図5】図1に示す駆動装置における各部の信号波形の一例を示す図である。
【図6】第1動作モードの開始時における駆動信号の位相について説明するための図である。
【図7】圧電素子を用いた小型ファンの外観の一例を示す図である。
【図8】図8に示すファンの動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0114】
1,2,6…MOSトランジスタ1、3…ゲート駆動回路、4…抵抗、5…素子、7,8…ダイオード、9…コンパレータ、10…周期検出部、11…制御部、12,32…選択部、13〜15…レジスタ、16…加算部、17,31…分周部、18…エッジ検出部、19,20,33…計数部、21,22…比較部、23,24…フリップフロップ、25…シーケンス制御部、101…金属シート、102…圧電素子。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを受けて機械的若しくは電気的な振動を生じる素子を駆動する駆動装置であって、
第1動作モードにおいて、設定された周期若しくは周波数を持つ駆動信号を上記素子に供給し、第2動作モードにおいて、上記素子への上記駆動信号の供給を停止する駆動部と、
上記第2動作モードにおいて、上記素子に生じる自由振動の周期若しくは周波数を検出する検出部と、
動作モードを上記第1動作モードと上記第2動作モードとに交互に切り替えながら、上記第2動作モードにおける上記検出部の検出結果に近づくように、上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を調節する制御部と
を有する駆動装置。
【請求項2】
上記検出部は、上記自由振動時に上記素子が発生する電気信号の周期若しくは周波数を検出する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
上記駆動部は、上記第2動作モードにおいて上記駆動信号の出力を高インピーダンス状態とし、
上記検出部は、上記素子への上記駆動信号の供給ラインを介して上記電気信号を入力する、
請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
上記制御部は、上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を、当該第1動作モードの直前の上記第2動作モードにおける上記検出部の検出結果、又は、当該第1動作モードの直前まで反復された一連の複数回の上記第2動作モードにおける上記検出部の検出結果に基づいて設定する、
請求項1、2又は3の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
上記制御部は、上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数の設定値と当該第1動作モードの直後の上記第2動作モードにおける上記検出部の検出値との差が第1のしきい値を超える場合、次の上記第1動作モードにおいてNサイクル(Nは1以上の整数を示す)の上記駆動信号が出力された後、動作モードを上記第2動作モードに切り替える、
請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
上記制御部は、上記差が上記第1のしきい値より小さい場合、
次の上記第1動作モードにおいて上記Nサイクルより多い所定サイクルの上記駆動信号が出力された後、動作モードを上記第2動作モードに切り替える、又は、
次の上記第1動作モードにおいて上記駆動信号が上記Nサイクルの期間より長い所定の時間出力された後、動作モードを上記第2動作モードに切り替える、又は、
動作モードを上記第1動作モードに固定する、
請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
上記制御部は、上記Nサイクルの駆動信号を出力する上記第1動作モードが連続して所定の回数若しくは所定の時間繰り返された場合、上記素子の振動の異常を示す信号を出力する、
請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記検出値が所定の範囲から外れる場合、次の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を所定の下限値若しくは上限値に設定し、以降、上記差が上記第1のしきい値より小さくなるまでの間において、上記検出値が上記所定の範囲から外れる場合には、次の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を前回の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数に比べて所定の増分値若しくは減分値だけ変化させる、
請求項5、6又は7の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
上記制御部は、上記差が上記第1のしきい値より大きい第2のしきい値を超える場合、次の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を所定の下限値若しくは上限値に設定し、以降、上記差が上記第1のしきい値より小さくなるまでの間において、上記差が上記第2のしきい値を超える場合には、次の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数を前回の上記第1動作モードにおける上記駆動信号の周期若しくは周波数に比べて所定の増分値若しくは減分値だけ変化させる、
請求項5、6又は7の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項10】
上記制御部は、上記第1動作モードの開始時における上記駆動信号の位相を、前回の上記第1動作モードにおける上記駆動信号が当該開始時において持ち得る位相に合わせる、
請求項4、5、6、7、8又は9の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
上記電気信号を2値信号に変換する2値化部を有し、
上記検出部は、上記2値信号において連続する2つのパルスの中心の時間間隔を検出する、
請求項1、2又は3の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項12】
電気エネルギーを受けて機械的若しくは電気的な振動を生じる素子を駆動する駆動方法であって、
設定された周期又は周波数の駆動信号を所定の期間上記素子に供給する第1のステップと、
上記素子の自由振動により発生する電気信号の周期又は周波数を測定する第2のステップと、
上記電気信号の周期又は周波数が所定の範囲に含まれるか否かを判定する第3のステップと、
上記電気信号の周期又は周波数が上記所定の範囲に含まれないときに上記駆動信号の周期又は周波数に対して所定の値を加算して新たな周期又は周波数を設定すると共に第1のカウント値をカウントアップする第4のステップと、
上記第1のカウント値と第1の値とを比較する第5のステップと、
上記第1のカウント値が上記第1の値より小さいときに上記第1のステップに戻る第6のステップと、
上記電気信号の周期又は周波数が上記所定の範囲に含まれるときに上記駆動信号の周期又は周波数と上記電気信号の周期又は周波数との差と所定の値とを比較する第7のステップと、
上記差が上記所定の値よりも小さいときに上記駆動信号を上記所定の期間よりも長い間上記素子に供給する第8のステップと、
を含む駆動方法。
【請求項13】
請求項12に記載の駆動方法であって、
上記第8のステップにおいて、上記差が上記所定の値よりも小さいときに上記電気信号の周期又は周波数を上記駆動信号の新たな周期又は周波数として設定すると共に当該駆動信号を上記所定の期間よりも長い間上記素子に供給する、
駆動方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の駆動方法であって、
上記第1のカウント値が上記第1の値に一致するときに上記素子の異常を示す信号を出力する第9のステップを更に含む、
駆動方法。
【請求項15】
請求項12乃至14の何れかに記載の駆動方法であって、
上記差が上記所定の値よりも小さくないときに上記電気信号の周期又は周波数を上記駆動信号の新たな周期又は周波数として設定する第10のステップを更に含み、
当該第10のステップの後に上記第5のステップが実行される、
駆動方法。
【請求項16】
請求項12乃至15の何れかに記載の駆動方法であって、
上記第8のステップにおいて、上記差が上記所定の値よりも小さい場合が連続して複数回繰り返されるときに上記駆動信号を上記所定の期間よりも長い間上記素子に供給する、
駆動方法。
【請求項17】
請求項12乃至15の何れかに記載の駆動方法であって、
上記第8のステップの後に上記第2のステップに移行する、
駆動方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−114976(P2010−114976A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284095(P2008−284095)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】