駆動装置
【課題】装置の大型化を招くことなく、電気機械変換素子により駆動摩擦部材を効率よく振動させることができる駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置20は、電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子1と、電気機械変換素子1の伸縮方向の一端に固定された振動伝達部材4と、振動伝達部材に固定された中空状の駆動摩擦部材3と、駆動摩擦部材3に摩擦力で係合する係合部材9とを備え、電気機械変換素子1を伸縮させて振動伝達部材4に固定した駆動摩擦部材3を振動させることで、駆動摩擦部材3上で係合部材9を移動させるものである。
【解決手段】駆動装置20は、電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子1と、電気機械変換素子1の伸縮方向の一端に固定された振動伝達部材4と、振動伝達部材に固定された中空状の駆動摩擦部材3と、駆動摩擦部材3に摩擦力で係合する係合部材9とを備え、電気機械変換素子1を伸縮させて振動伝達部材4に固定した駆動摩擦部材3を振動させることで、駆動摩擦部材3上で係合部材9を移動させるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換素子を使用した駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子の伸縮を利用して、移動体を移動させる駆動装置が存在している。図12および図13にリニア型駆動装置の例を示す。図12に示した駆動装置100は、圧電素子101の伸縮方向の一端が錘102の端面に接着剤102aで固定され、他端に駆動摩擦部材103が接着剤101aで固定されている。また、圧電素子101には給電部材104が導電性接着剤で接続されており、これにより圧電素子101に所定の駆動電圧が印加されるようになっている。
【0003】
図13に示すように、駆動摩擦部材103上には、係合部材108が所定の摩擦力で係合されており、係合部材108は駆動摩擦部材103に沿って移動可能になっている。係合部材108は、スライダ105と、駆動摩擦部材103との摩擦を起こさせる摩擦部材106と、駆動摩擦部材103を挟んで摩擦部材106をスライダ105に向かって押し付ける押圧部材(例えば板ばね)107とから構成されている。
【0004】
図14に前記駆動装置100の駆動原理を示す。駆動装置100の圧電素子101に、例えば図14(b)に示すような緩やかな立ち上がり部分(A−B間)と急激な立ち下がり部分(B−C間)を有する鋸歯状波形の駆動電圧を印加すると、まず、駆動電圧の緩やかな立ち上がり部分(A−B間)では、図14(a2)に示すように圧電素子101が緩やかにその厚み方向に伸び変位し、圧電素子101に固定されている駆動摩擦部材103が繰り出し方向に移動する。これに伴い、駆動摩擦部材103に摩擦係合した係合部材108が駆動摩擦部材103と共に移動する。
【0005】
一方、駆動電圧の急激な立ち下がり部分(B−C間)では、圧電素子101は急速に厚み方向に縮み変位し、圧電素子101に固定された駆動摩擦部材103も急速に戻り方向に変位する。このとき、図14(a3)に示すように、係合部材108の慣性力が駆動摩擦部材との間の摩擦力に打ち勝って滑りを生じることで、係合部材108は実質的にその位置に留まって移動しない。その結果、図14(a1)に示す初期状態よりも伸びと縮みとの移動量の差の分だけ係合部材108が繰り出し方向へ移動する。このような圧電素子101の伸縮が繰り返されることで、係合部材108は駆動摩擦部材103に沿って繰り出し方向に駆動されることになる。
【0006】
これに対し、上述したのとは逆の原理で係合部材108は戻り方向に駆動される。すなわち、圧電素子101に急激な立ち上がり部分と緩やかな立ち下がり部分とからなる鋸歯状波形の駆動電圧が印加されると、駆動電圧の急激な立ち上がり部分では、圧電素子101が急速に伸び変位して、これに伴って圧電素子101に固定された駆動摩擦部材103も急速に繰り出し方向に変位する。このとき、係合部材108の慣性力が駆動摩擦部材103との間の摩擦力に打ち勝って滑りを生じることで、係合部材108は実質的にその位置に留まって移動しない。
【0007】
一方、駆動電圧の緩やかな立ち下がり部分では、圧電素子101が緩やかに縮み変位し、これに伴って圧電素子101に固定された駆動摩擦部材103も緩やかに戻り方向に変位する。このとき、駆動摩擦部材103と共に係合部材108も戻り方向に変位する。その結果、初期状態よりも伸びと縮みとの移動量の差の分だけ係合部材108が戻り方向へ移動する。このような圧電素子101の伸縮が繰り返されることで、係合部材108は駆動摩擦部材103に沿って戻り方向に駆動されることになる。
【0008】
このような摩擦を介して駆動力を発生する駆動装置100の駆動摩擦部材103は、高い縦弾性率と軽い質量が求められ、従来、炭素繊維を樹脂成分でバインディングしたカーボンロッドが用いられていた。このカーボンロッドは、炭素繊維の配向方向には十分な剛性を有するが、炭素繊維に垂直な方向には剛性があまり高くない。この種の駆動装置で駆動力を大きくするためには、駆動摩擦部材103に係合部材108を押し付ける力を大きくして両者間の摩擦力を大きくしたうえで、圧電素子101への印加電圧を高くするとよい。ところが、カーボンロッドの駆動摩擦部材103に係合部材108を強く押し付けると、駆動摩擦部材103にたわみが生じてしまい、振動エネルギーの伝達ロスを生じる。結果として駆動力はある値で一定となり、所望の駆動力を得ることが困難である。
【0009】
また、下記特許文献1では駆動摩擦部材としてセラミック製の中空軸を使用することが提案されている。しかし、セラミックでは製造上、金属の場合よりも肉厚を大きくする必要があり、駆動摩擦部材の断面形状が大径化してしまう。また、駆動摩擦部材の表面粗さを所望の滑らかさに仕上げるにはコストがかさむという問題点もあった。
【0010】
また、下記特許文献2では、長く延伸した圧電素子を中空の駆動摩擦部材の内部に配置することで、アクチュエータ全体を大型化することなく駆動力の向上を図ることが提案されている。しかし、長い底付き中空の駆動摩擦部材は製造が困難であり、また半中空の駆動摩擦部材では剛性が低いために所望の駆動力が得られない。また、駆動摩擦部材を軽量化するために薄肉にすると円筒の底部の板厚も薄くなり、その底部に圧電素子の振動が伝達されると振動が減衰してしまい駆動効率が低下することになる。さらに、この構成では、被駆動体である係合部材の移動ストロークが長くなると、長い圧電素子が必要になるという問題点もあった。
【0011】
【特許文献1】特開平10−337055号公報
【特許文献2】特開平4−368484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記問題点を解決することを目的として、装置の大型化を招くことなく、電気機械変換素子により駆動摩擦部材を効率よく振動させることができる駆動装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の第1態様の駆動装置は、電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に固定された振動伝達部材と、前記振動伝達部材に固定された中空状の駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦力で係合する係合部材とを備え、
前記電気機械変換素子を伸縮させて前記振動伝達部材に固定した前記駆動摩擦部材を振動させることで、前記駆動摩擦部材上で前記係合部材を移動させるようにしたものである。
【0014】
この構成からなる駆動装置によれば、振動伝達部材と駆動摩擦部材とを別部材として分離することで、両者の材質を変えてそれぞれの形状を最適化することが容易になり、電気機械変換素子からの振動伝達をより良い状態にすることが可能になる。
【0015】
また、電気変換素子を長尺化することなく、適正な長さおよび静電容量の電気機械変換素子を使用することが可能になる。
【0016】
さらに、構造の自由度も増え、中空状の駆動摩擦部材の内部に電気機械変換素子を配置する構成も可能になり、この駆動装置を使用する機器のスペースや出力特性に応じて自由に駆動装置を構成することが可能になる。
【0017】
本発明の第1態様の駆動装置において、前記伸縮方向における前記振動伝達部材の厚みが、前記駆動摩擦部材の肉厚の2倍以上であること、または、前記駆動摩擦部材の中空部の内径の1/3以上であることが好ましい。
【0018】
このようにすることで、電気機械変換素子の振動を振動伝達部材で減衰させてしまうことなく駆動摩擦部材に伝達することができる。
【0019】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記駆動摩擦部材は金属製であることが好ましい。
【0020】
このように、駆動摩擦部材を金属製の中空部材とすることで、駆動摩擦部材の軸方向と軸直角方向の各剛性が高まる。その結果、係合部材の駆動摩擦部材に対する押圧力を高めると共に電気機械変換素子への印加電圧を大きくすることで、係合部材の駆動力向上と高速駆動を図ることができる。
【0021】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記駆動摩擦部材が金属製である場合に、ニッケルめっきにより表面硬化されてもよいし、あるいは、クロムめっきにより表面硬化されてもよい。また、前記駆動摩擦部材が鉄系金属製(例えばマルテンサイト系ステンレス製)である場合には焼入れにより表面硬化されてもよいし、あるいは、鉄系金属製(例えばステンレス製)である場合には窒化により表面硬化されてもよい。さらに、前記駆動摩擦部材がアルミ系金属製である場合にはアルマイト処理により表面硬化されてもよい。
【0022】
このように金属製の駆動摩擦部材を表面硬化処理することにより、駆動摩擦部材の耐摩耗性が高くなり、駆動装置の耐久性が向上する。
【0023】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記振動伝達部材と前記駆動摩擦部材とは異なる材質であってもよく、前記振動伝達部材は前記駆動摩擦部材の材料よりも比重の小さい材料からなることが好ましい。例えば、前記振動伝達部材は、セラミック製であってもよいし、あるいは、樹脂製であってもよい。
【0024】
このように例えば金属製の駆動摩擦部材とは異なる材質であって比重の小さい材料である例えばセラミック等で振動伝達部材を構成すれば、軽量かつ高剛性であるために電気機械変換素子の振動を効率よく伝達できる。
【0025】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記振動伝達部材は非導電性材料からなることが好ましい。
【0026】
これにより、圧電素子から振動伝達部材を介しての漏電を防止できる。
【0027】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記駆動摩擦部材の中空部に、1つ以上の補強部材を設けてもよい。この場合、前記補強部材は、前記駆動摩擦部材とは異なる材質からなることが好ましく、前記駆動摩擦部材の材料よりも比重の小さい材料(例えばセラミック)からなることが好ましい。
【0028】
このように補強部材を駆動摩擦部材の内部に設けることで、中空部材である駆動摩擦部材の剛性を高めることができる。
【0029】
本発明の第2態様の駆動装置は、電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に固定された駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦力で係合する係合部材とを備え、前記電気機械変換素子を伸縮させて前記駆動摩擦部材を振動させることで、前記駆動摩擦部材上で前記係合部材を移動させる駆動装置であって、
前記駆動摩擦部材は中空状で、その内部に1つ以上の補強部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0030】
この第2態様の駆動装置によれば、駆動摩擦部材を中空状にしたことで軽量化による振動効率の向上を図れるとともに、内部に補強部材を設けたことで中空部材である駆動摩擦部材の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0031】
上述したように、本発明の駆動装置によれば、振動伝達部材と駆動摩擦部材とを別部材として分離することで、両者の材質を変えてそれぞれの形状を最適化することが容易になり、電気機械変換素子からの振動伝達をより良い状態にすることが可能になる。
【0032】
また、電気変換素子を長尺化することなく、適正な長さおよび静電容量の電気機械変換素子を使用することが可能になる。
【0033】
さらに、構造の自由度も増え、中空状の駆動摩擦部材の内部に電気機械変換素子を配置する構成も可能になり、この駆動装置を使用する機器のスペースや出力特性に応じて自由に駆動装置を構成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態の駆動装置20の一部断面を含む側面図、図2は駆動装置20の分解斜視図と組立斜視図、図3は係合部材9の分解状態と組立状態を示す斜視図である。
【0036】
駆動装置20では、電気機械変換素子の一例である円柱状の圧電素子1の伸縮方向の一端に例えば円盤状の錘2が接着剤6で固定され、他端に例えば短い円柱状の振動伝達部材4が接着剤7で固定されている。圧電素子1と振動伝達部材4とは例えば円筒形をなす中空状の駆動摩擦部材3の内部に挿入され、振動伝達部材4の外周部が駆動摩擦部材3の上端近傍の内面に接着剤8で固定されている。なお、駆動摩擦部材3の軸直角方向の剛性を高めるため、駆動摩擦部材3の中空部に1つ以上の補強部材が設けられてもよい。
【0037】
圧電素子1はロール型のものであり、その外周面に2つの電極1a,1bが露出して形成されている。これらの電極1a,1bに給電部材5が導電性接着剤5aで接着されており、これにより圧電素子1に所定波形の駆動電圧が印加されるようになっている。
【0038】
駆動摩擦部材3の外周部には係合部材9が摩擦力で係合されており、係合部材9は駆動摩擦部材3に沿って移動可能になっている。係合部材9は、スライダ10と、駆動摩擦部材3との摩擦を起こさせる摩擦部材11と、摩擦部材11を駆動摩擦部材3を介してスライダ10に向かって押し付ける押圧部材(例えば板ばね)12とから構成されている。
【0039】
前記構成からなる駆動装置20の駆動原理は、上述した従来例の駆動装置100と全く同様である。したがって、ここでの重複することになる説明を省略する。
【0040】
このように本実施形態の駆動装置20によれば、振動伝達部材4と駆動摩擦部材3とを別部材として分離することで、両者の材質を変えてそれぞれの形状を最適化することが容易になり、圧電素子1からの振動伝達をより良い状態にすることが可能になる。
【0041】
また、圧電素子1を長尺化することなく、適正な長さおよび静電容量の圧電素子1を使用することが可能になる。
【0042】
さらに、構造の自由度も増え、中空状の駆動摩擦部材3の内部に圧電素子1を配置する構成も可能になり、この駆動装置20を使用する機器のスペースや出力特性に応じて自由に駆動装置20を構成することが可能になる。
【0043】
続いて、前記駆動装置20の各構成要素について詳細に述べる。
【0044】
<駆動摩擦部材>
駆動摩擦部材3の材料に求められる特性は、圧電素子1の伸縮方向に剛性が高い(高い縦弾性係数を持つ)こと、質量が軽いこと、表面硬度が高いこと(耐摩耗性が高いこと)などが挙げられる。これらの特性を有するものとして、従来は駆動摩擦部材3としてカーボンロッドを採用している。これに対し、本実施形態の駆動装置20では、軸直角方向の剛性も高くするため、上記条件を満たすものとして、金属材料の中空軸を駆動摩擦部材3として使用する。前記金属材料には、例えば鉄系金属やアルミ系金属などがあり、鉄系金属としてはマルテンサイト系ステンレスを含むステンレスが好適に用いられる。
【0045】
ただし、駆動摩擦部材3として金属軸を使用する場合、係合部材9を常に所定の圧力で駆動摩擦部材3に押し付けているため、同種の金属材料を使用すると、その親和性から凝着を生じやすくなる。この凝着力は、駆動装置20の駆動力に比べて十分に小さいとは言えず、何らかの対策が必要である。そのため、駆動摩擦部材3と係合部材9とに異種材料を選択するか、あるいは、一方もしくは両方に凝着を生じにくくする表面処理を施すなどの対策を講じる。
【0046】
試作では、駆動摩擦部材3にSUS304の中空軸を用い、係合部材9の材料にはりん青銅を用いた。一般的に鉄系金属に対して銅系金属は凝着が起こりにくいことが分かっている。これ以外にも、駆動摩擦部材3にアルミの中空軸を用い、アルマイト処理を施すことにより表面硬化させることも有効である。
【0047】
なお、駆動摩擦部材3および係合部材9は共に、超音波振動下での摩擦運動にさらされるため、表面硬度が高く、かつ、表面摩擦係数を小さくすることで潤滑性が付与されていることが好ましい。
【0048】
<潤滑剤>
駆動摩擦部材3と係合部材9との間に潤滑剤を使用することも好ましい。潤滑剤としては液体の潤滑剤、例えばシリコンオイル、フッ素オイルなどの潤滑油を使用することが考えられる。また、これらの潤滑油中にテフロン粒子などを混入させたものも有効である。さらに、固体潤滑剤を用いることも可能である。潤滑剤を用いることにより、両者間の摩擦状態が安定し、局所的な表面状態の差異により摩擦係数が変化して駆動特性に影響を与えることを低減させる効果がある。
【0049】
<表面処理>
一般的に、金属製の駆動摩擦部材3の表面硬度を高くする表面硬化方法として、めっき(例えばニッケルめっき、クロムめっきなど)、焼入れ(侵炭処理)、窒化処理が利用される。試作では、駆動摩擦部材3として用いるSUS304中空パイプに対して窒化処理を施して表面硬度を上げた後、ショットブラストなどで表面の酸化層を除去して耐蝕性および摺動性を向上させたものを使用した。窒化処理としては、塩浴軟窒化、ガス軟窒化などが挙げられる。アルミ中空パイプを駆動摩擦部材3に用いる場合には、アルマイト処理にテフロンを含浸させたタフラム処理を施すことも有効である。
【0050】
また、表面処理により表面が荒れてしまうものが存在するので、表面状態が処理前と変わらない処理方法が好ましい。さらに、表面処理後に前記ショットブラストなどにより表面を清掃・調整する工程が入ると性能が安定しやすくなることも分かっている。
【0051】
なお、駆動摩擦部材3の耐摩耗性を向上させる方法として、上述しためっき、焼入れ、窒化処理の他にも、溶射、DLC被膜、セラミックコーティングなど種々の技術が開発されているが、これらに限定されるものではない。
【0052】
<係合部材>
係合部材9の構成は従来例の駆動装置100と同様である。ただし、上述したように凝着への対応が必要となる。試作では、係合部材9にりん青銅、あるいは、りん青銅に無電解ニッケルテフロンめっきを施したものを用いた。これ以外にもニッケルボロンめっき、P−inニッケルめっき、硬質クロムめっきなども有効である。係合部材9にめっきを施す場合にはめっき層が駆動摩擦部材3と接触することになることから、係合部材9の母材には前記めっき処理が可能な金属または樹脂を用いることができ、りん青銅に限定されない。りん青銅よりも比重の軽い亜鉛ダイカスト、アルミダイカスト製の部材に前記めっき処理を施すことも可能である。また、無電解ニッケルめっきは鉄系金属について強固に処理されるため、鉄系金属の薄板に前記めっき処理を施したものを係合部材9の駆動摩擦部材3との接触部に使用することが有効と考えられる。さらに、係合部材9はPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの硬質の樹脂で形成されてもよい。
【0053】
<振動伝達部材>
前記特許文献2(特開平4−368484号公報)に記載される形状のように、本実施形態の駆動装置20の振動伝達部材4に相当する部位(駆動棒の閉じた一端部)が軸方向に薄い板状のものであると、板の面内で振動を起こしてしまうので、圧電素子からの振動を有効に駆動摩擦部材に伝達できない。特に、駆動摩擦部材は、この種のアクチュエータでは要となる部材であり、その摺動特性がアクチュエータの性能および寿命を大きく左右する。前記特許文献2のように駆動摩擦部と振動伝達部とが一体であると、圧電素子の振動が駆動摩擦部へ効率よく伝達できない場合がある。
【0054】
これに対し、本実施形態の駆動装置20では、圧電素子1の伸縮運動を中空の駆動摩擦部材3に伝達するように、圧電素子1の一端に振動伝達部材4を設けている。振動伝達部材4は圧電素子1の振動を確実に駆動摩擦部材3へ伝達する必要があり、この部材4で振動が減衰してしまわないように、剛性が高く、かつ、質量(比重)の小さい材料のものが好ましい。
【0055】
例えば駆動摩擦部材3を金属製とした場合、振動伝達部材4は異なる材質である例えばPPS等の樹脂製、あるいは、アルミナやジルコニア等のセラミック製などがよい。セラミック製の場合、発泡させた多孔質セラミックを使用することで、剛性を高めたまま軽量化を図ることも可能である。
【0056】
また、試作で使用したロール状圧電素子1は、その端面に導電部が露出しているため、振動伝達部材4は非導電性材料からなることが好ましい。これにより、振動伝達部材4を介しての漏電を防止できる。アルミ製などの導電性のある振動伝達部材4を使用する場合は、接着剤7中に絶縁性のガラスビーズや樹脂ビーズなどを混入し、振動伝達部材4と圧電素子1の導電部とが直接接触しないようにする。
【0057】
振動伝達部材4の配置は、図1に示すように駆動摩擦部材3の端部近傍の場合や、図4に示すように駆動摩擦部材3の中間部の場合などがある。その配置は種々考えられるので、ここで記載されるものに限定されるものではなく、圧電素子1の長さや係合部材9の移動ストロークに応じた駆動摩擦部材3の長さなどにより決定される。また、振動伝達部材4を配置することで、薄肉中空の駆動摩擦部材3の軸直角方向の剛性を向上させる効果も得られる。
【0058】
振動伝達部材4と駆動摩擦部材3との結合は、接着に限らず、圧入や熱による締まりばめなども考えられる。接着剤8で結合する場合、特に振動伝達部材4が中空状の駆動摩擦部材3の端部に配置される場合には、接着剤8が駆動摩擦部材3の外周面にはみ出さないように接着剤8の塗布量を管理する必要がある。もしくは図5に示すように、振動伝達部材4につば部4aを設け(図6(g)参照)、接着剤8がはみ出すのを抑制する形状とすることが有効である。
【0059】
また、振動伝達部材4と駆動摩擦部材3との結合部の剛性が低いと、そこで振動が減衰し、駆動摩擦部材3へ振動伝達ができなくなるという問題が発生する。これを回避するためには、圧電素子1の伸縮方向における振動伝達部材4の厚みが所定量以上必要であり、駆動摩擦部材3の肉厚の2倍以上、または、駆動摩擦部材3の中空部の内径の1/3以上であることが好ましい。そうすることで、接着面積あるいは圧入等の接触長さを十分にとることができると共に、振動伝達部材4自体の剛性を確保できるので、駆動摩擦部材3との結合の剛性も十分に高くなり、振動の減衰も発生しない。
【0060】
さらに、振動伝達部材4と駆動摩擦部材3との間の接着をより確実に行うために、図6(e),(f),(h),(i)に示すように振動伝達部材4の接着面に溝状の接着剤溜まり4bを設けることも考えられる。接着剤溜まり4bの形状は、図6(e),(f),(h)に示すように端面まで軸方向に貫通しない直線溝形状または螺旋溝形状であってもよいし、図6(i)に示すように軸方向に貫通する溝形状であってもよい。接着時には、駆動摩擦部材3の内面と振動伝達部材4の外面との間に接着剤8が均一に行き渡るように、軸方向に相対的に往復移動させたり、周方向に回転させたりする作業が必要になる。この作業時に、接着剤8が振動伝達部材4の接着剤溜まり4bに入り込み、かつ駆動摩擦部材3の外側にはみ出さないようにする。さらに、接着剤8は硬化後に剛性が高いものを使用することが好ましい。
【0061】
さらにまた、振動伝達部材4については、図6(a)に示す単純な円柱形状に限らず、質量を軽くしたうえで剛性を高く保つように、図6(b),(c),(d)に示すような軸方向に1つまたは複数の貫通穴が形成された中空形状も考えられ、あるいは、この中空形状と前記溝状接着剤溜まり4bとを組み合わせてもよい。
【0062】
<補強部材>
駆動摩擦部材3の軸直角方向の剛性向上のため、振動伝達部材4とは別に、駆動摩擦部材3の中空部に1つ以上の補強部材を挿入固定することも有効である。この補強部材は、振動伝達部材4と同様に、剛性が高く、かつ質量の小さいものが好ましい。また、補強部材は、駆動摩擦部材3とは異なる材質からなり、駆動摩擦部材3の材料よりも比重が小さい材料からなることが好ましく、例えば駆動摩擦部材3が金属製の場合には、補強部材はセラミックや樹脂などで形成されていることが好ましい。さらに、図示しないが、駆動摩擦部材3がその断面形状に対して十分に長い場合、竹の節の如くに数カ所に補強部材を挿入固定してもよい。なお、振動伝達部材4が1つの補強部材を兼ねているとも考えられる。
【0063】
補強部材の接着面には、振動伝達部材4について説明したような接着剤溜まりを設けることも有効である。図7に示す略ドーナツ状の補強部材13には、中央部に貫通穴が形成されており、駆動摩擦部材3の内部に空気を閉じ込めないようにしている。これは補強部材13を固定するために熱硬化型接着剤を用いる場合に、内部に閉じ込められた空気が膨張して補強部材13を押し出すことがないようにするためである。また、他の接着剤で固定する場合でも、空気を閉じ込める構成では温度変化によって内部圧力が高まる危険性があるため、空気抜き穴を設けることが好ましいからである。
【0064】
また、図8,9に示すように、補強部材13は、駆動摩擦部材3の内面全周にわたって存在している必要はなく、押圧部材12による押し付け力の方向に駆動摩擦部材3が潰れにくくする形状(例えば略小判形)であってもよい。この場合でも、必要な強度が得られ、かつ軽量化に貢献できる。ただし、組立時に補強部材13により駆動摩擦部材3を補強した方向と押圧部材12による押圧方向とを揃えなければならない。
【0065】
<圧電素子>
圧電素子1は、従来からこの種の駆動装置に使用されてきたものを用いることができ、ロール状圧電素子を使用してもよいし、積層型圧電素子を使用してもよい。形状は、円柱でも直方体でも多角柱でもよい。図1に示す駆動装置20では、円柱状の圧電素子1に対して断面形状が中空円形の駆動摩擦部材3を採用しているが、駆動摩擦部材3の断面形状が多角形(正方形、長方形、正五角形など)のものも考えられる。図10に示すように、直方体の圧電素子1が一般的であるが、どのような形状の圧電素子1であってもそれに合わせた断面形状の駆動摩擦部材3および振動伝達部材4を適宜採用すればよい。ここで、駆動摩擦部材3の中空断面形状は、圧電素子1と相似形であればスペース効率がよいが、相似形でなくても圧電素子1を内包する形状であればよい。例えば、円形断面の圧電素子1に対して、これを内包する正方形中空断面の駆動摩擦部材3を用いてもよい。
【0066】
次に、図11を参照して前記駆動装置20の変形例について説明する。
駆動装置20では、圧電素子1が中空状の駆動摩擦部材3の内部に挿入されていたが、図11(c),(d)に示すように、錘2と、圧電素子1と、振動伝達部材4と、中空状の駆動摩擦部材3とを直列連結して駆動装置を構成してもよく、この場合、圧電素子1は中空状の駆動摩擦部材3の端部に固定されているだけでその内部には全く挿入されていない。これによっても、前記駆動装置20と同様の効果を得ることができる。また、駆動摩擦部材3の剛性を高めるために、図11(d)に示すように、中空状の駆動摩擦部材3の内部に1つ以上の補強部材13を設けることが好ましい。
【0067】
また、このように直列連結して駆動装置を構成する場合、図11(a),(b),(e)に示すように、振動伝達部材4を省略することも考えられる。この場合にも、圧電素子1は中空状の駆動摩擦部材3の端部に固定されているだけでその内部には全く挿入されていない。さらに、図11(b),(e)に示すように、中空状の駆動摩擦部材3の内部に1つ以上の補強部材13を設けることが好ましい。このように振動伝達部材を省略した駆動装置によれば、駆動摩擦部材3を中空状にしたことで軽量化による振動効率の向上を図れるとともに、内部に補強部材13を設けることで中空部材である駆動摩擦部材3の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】駆動装置の一部断面を含む側面図。
【図2】駆動装置の分解斜視図と組立斜視図。
【図3】係合部材の分解状態と組立状態を示す斜視図。
【図4】図1の駆動装置の別の形態を示す一部断面を含む側面図。
【図5】図1の駆動装置のさらに別の形態を示す一部断面を含む側面図。
【図6】振動伝達部材の各種形態を示す斜視図。
【図7】補強部材を設けた駆動装置の一部断面を含む側面図。
【図8】略小判形の補強部材を用いた駆動装置の分解斜視図。
【図9】略小判形の補強部材を用いた駆動装置の上面図。
【図10】直方体状の圧電素子を用いた駆動装置の分解斜視図。
【図11】錘、圧電素子および駆動摩擦部材を直列連結した駆動装置の一部断面を含む側面図。
【図12】従来の駆動装置の側面図。
【図13】図12の駆動装置の分解斜視図と組立図。
【図14】駆動装置の駆動原理を説明するための図。
【符号の説明】
【0069】
1…圧電素子(電気機械変換素子)
2…錘
3…駆動摩擦部材
4…振動伝達部材
5…給電部材
5a…導電性接着剤
6…接着剤
7…接着剤
8…接着剤
9…係合部材
10…スライダ
11…摩擦部材
12…押圧部材
13…補強部材
20…駆動装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換素子を使用した駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子の伸縮を利用して、移動体を移動させる駆動装置が存在している。図12および図13にリニア型駆動装置の例を示す。図12に示した駆動装置100は、圧電素子101の伸縮方向の一端が錘102の端面に接着剤102aで固定され、他端に駆動摩擦部材103が接着剤101aで固定されている。また、圧電素子101には給電部材104が導電性接着剤で接続されており、これにより圧電素子101に所定の駆動電圧が印加されるようになっている。
【0003】
図13に示すように、駆動摩擦部材103上には、係合部材108が所定の摩擦力で係合されており、係合部材108は駆動摩擦部材103に沿って移動可能になっている。係合部材108は、スライダ105と、駆動摩擦部材103との摩擦を起こさせる摩擦部材106と、駆動摩擦部材103を挟んで摩擦部材106をスライダ105に向かって押し付ける押圧部材(例えば板ばね)107とから構成されている。
【0004】
図14に前記駆動装置100の駆動原理を示す。駆動装置100の圧電素子101に、例えば図14(b)に示すような緩やかな立ち上がり部分(A−B間)と急激な立ち下がり部分(B−C間)を有する鋸歯状波形の駆動電圧を印加すると、まず、駆動電圧の緩やかな立ち上がり部分(A−B間)では、図14(a2)に示すように圧電素子101が緩やかにその厚み方向に伸び変位し、圧電素子101に固定されている駆動摩擦部材103が繰り出し方向に移動する。これに伴い、駆動摩擦部材103に摩擦係合した係合部材108が駆動摩擦部材103と共に移動する。
【0005】
一方、駆動電圧の急激な立ち下がり部分(B−C間)では、圧電素子101は急速に厚み方向に縮み変位し、圧電素子101に固定された駆動摩擦部材103も急速に戻り方向に変位する。このとき、図14(a3)に示すように、係合部材108の慣性力が駆動摩擦部材との間の摩擦力に打ち勝って滑りを生じることで、係合部材108は実質的にその位置に留まって移動しない。その結果、図14(a1)に示す初期状態よりも伸びと縮みとの移動量の差の分だけ係合部材108が繰り出し方向へ移動する。このような圧電素子101の伸縮が繰り返されることで、係合部材108は駆動摩擦部材103に沿って繰り出し方向に駆動されることになる。
【0006】
これに対し、上述したのとは逆の原理で係合部材108は戻り方向に駆動される。すなわち、圧電素子101に急激な立ち上がり部分と緩やかな立ち下がり部分とからなる鋸歯状波形の駆動電圧が印加されると、駆動電圧の急激な立ち上がり部分では、圧電素子101が急速に伸び変位して、これに伴って圧電素子101に固定された駆動摩擦部材103も急速に繰り出し方向に変位する。このとき、係合部材108の慣性力が駆動摩擦部材103との間の摩擦力に打ち勝って滑りを生じることで、係合部材108は実質的にその位置に留まって移動しない。
【0007】
一方、駆動電圧の緩やかな立ち下がり部分では、圧電素子101が緩やかに縮み変位し、これに伴って圧電素子101に固定された駆動摩擦部材103も緩やかに戻り方向に変位する。このとき、駆動摩擦部材103と共に係合部材108も戻り方向に変位する。その結果、初期状態よりも伸びと縮みとの移動量の差の分だけ係合部材108が戻り方向へ移動する。このような圧電素子101の伸縮が繰り返されることで、係合部材108は駆動摩擦部材103に沿って戻り方向に駆動されることになる。
【0008】
このような摩擦を介して駆動力を発生する駆動装置100の駆動摩擦部材103は、高い縦弾性率と軽い質量が求められ、従来、炭素繊維を樹脂成分でバインディングしたカーボンロッドが用いられていた。このカーボンロッドは、炭素繊維の配向方向には十分な剛性を有するが、炭素繊維に垂直な方向には剛性があまり高くない。この種の駆動装置で駆動力を大きくするためには、駆動摩擦部材103に係合部材108を押し付ける力を大きくして両者間の摩擦力を大きくしたうえで、圧電素子101への印加電圧を高くするとよい。ところが、カーボンロッドの駆動摩擦部材103に係合部材108を強く押し付けると、駆動摩擦部材103にたわみが生じてしまい、振動エネルギーの伝達ロスを生じる。結果として駆動力はある値で一定となり、所望の駆動力を得ることが困難である。
【0009】
また、下記特許文献1では駆動摩擦部材としてセラミック製の中空軸を使用することが提案されている。しかし、セラミックでは製造上、金属の場合よりも肉厚を大きくする必要があり、駆動摩擦部材の断面形状が大径化してしまう。また、駆動摩擦部材の表面粗さを所望の滑らかさに仕上げるにはコストがかさむという問題点もあった。
【0010】
また、下記特許文献2では、長く延伸した圧電素子を中空の駆動摩擦部材の内部に配置することで、アクチュエータ全体を大型化することなく駆動力の向上を図ることが提案されている。しかし、長い底付き中空の駆動摩擦部材は製造が困難であり、また半中空の駆動摩擦部材では剛性が低いために所望の駆動力が得られない。また、駆動摩擦部材を軽量化するために薄肉にすると円筒の底部の板厚も薄くなり、その底部に圧電素子の振動が伝達されると振動が減衰してしまい駆動効率が低下することになる。さらに、この構成では、被駆動体である係合部材の移動ストロークが長くなると、長い圧電素子が必要になるという問題点もあった。
【0011】
【特許文献1】特開平10−337055号公報
【特許文献2】特開平4−368484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記問題点を解決することを目的として、装置の大型化を招くことなく、電気機械変換素子により駆動摩擦部材を効率よく振動させることができる駆動装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明の第1態様の駆動装置は、電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に固定された振動伝達部材と、前記振動伝達部材に固定された中空状の駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦力で係合する係合部材とを備え、
前記電気機械変換素子を伸縮させて前記振動伝達部材に固定した前記駆動摩擦部材を振動させることで、前記駆動摩擦部材上で前記係合部材を移動させるようにしたものである。
【0014】
この構成からなる駆動装置によれば、振動伝達部材と駆動摩擦部材とを別部材として分離することで、両者の材質を変えてそれぞれの形状を最適化することが容易になり、電気機械変換素子からの振動伝達をより良い状態にすることが可能になる。
【0015】
また、電気変換素子を長尺化することなく、適正な長さおよび静電容量の電気機械変換素子を使用することが可能になる。
【0016】
さらに、構造の自由度も増え、中空状の駆動摩擦部材の内部に電気機械変換素子を配置する構成も可能になり、この駆動装置を使用する機器のスペースや出力特性に応じて自由に駆動装置を構成することが可能になる。
【0017】
本発明の第1態様の駆動装置において、前記伸縮方向における前記振動伝達部材の厚みが、前記駆動摩擦部材の肉厚の2倍以上であること、または、前記駆動摩擦部材の中空部の内径の1/3以上であることが好ましい。
【0018】
このようにすることで、電気機械変換素子の振動を振動伝達部材で減衰させてしまうことなく駆動摩擦部材に伝達することができる。
【0019】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記駆動摩擦部材は金属製であることが好ましい。
【0020】
このように、駆動摩擦部材を金属製の中空部材とすることで、駆動摩擦部材の軸方向と軸直角方向の各剛性が高まる。その結果、係合部材の駆動摩擦部材に対する押圧力を高めると共に電気機械変換素子への印加電圧を大きくすることで、係合部材の駆動力向上と高速駆動を図ることができる。
【0021】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記駆動摩擦部材が金属製である場合に、ニッケルめっきにより表面硬化されてもよいし、あるいは、クロムめっきにより表面硬化されてもよい。また、前記駆動摩擦部材が鉄系金属製(例えばマルテンサイト系ステンレス製)である場合には焼入れにより表面硬化されてもよいし、あるいは、鉄系金属製(例えばステンレス製)である場合には窒化により表面硬化されてもよい。さらに、前記駆動摩擦部材がアルミ系金属製である場合にはアルマイト処理により表面硬化されてもよい。
【0022】
このように金属製の駆動摩擦部材を表面硬化処理することにより、駆動摩擦部材の耐摩耗性が高くなり、駆動装置の耐久性が向上する。
【0023】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記振動伝達部材と前記駆動摩擦部材とは異なる材質であってもよく、前記振動伝達部材は前記駆動摩擦部材の材料よりも比重の小さい材料からなることが好ましい。例えば、前記振動伝達部材は、セラミック製であってもよいし、あるいは、樹脂製であってもよい。
【0024】
このように例えば金属製の駆動摩擦部材とは異なる材質であって比重の小さい材料である例えばセラミック等で振動伝達部材を構成すれば、軽量かつ高剛性であるために電気機械変換素子の振動を効率よく伝達できる。
【0025】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記振動伝達部材は非導電性材料からなることが好ましい。
【0026】
これにより、圧電素子から振動伝達部材を介しての漏電を防止できる。
【0027】
また、本発明の第1態様の駆動装置において、前記駆動摩擦部材の中空部に、1つ以上の補強部材を設けてもよい。この場合、前記補強部材は、前記駆動摩擦部材とは異なる材質からなることが好ましく、前記駆動摩擦部材の材料よりも比重の小さい材料(例えばセラミック)からなることが好ましい。
【0028】
このように補強部材を駆動摩擦部材の内部に設けることで、中空部材である駆動摩擦部材の剛性を高めることができる。
【0029】
本発明の第2態様の駆動装置は、電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に固定された駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦力で係合する係合部材とを備え、前記電気機械変換素子を伸縮させて前記駆動摩擦部材を振動させることで、前記駆動摩擦部材上で前記係合部材を移動させる駆動装置であって、
前記駆動摩擦部材は中空状で、その内部に1つ以上の補強部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0030】
この第2態様の駆動装置によれば、駆動摩擦部材を中空状にしたことで軽量化による振動効率の向上を図れるとともに、内部に補強部材を設けたことで中空部材である駆動摩擦部材の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0031】
上述したように、本発明の駆動装置によれば、振動伝達部材と駆動摩擦部材とを別部材として分離することで、両者の材質を変えてそれぞれの形状を最適化することが容易になり、電気機械変換素子からの振動伝達をより良い状態にすることが可能になる。
【0032】
また、電気変換素子を長尺化することなく、適正な長さおよび静電容量の電気機械変換素子を使用することが可能になる。
【0033】
さらに、構造の自由度も増え、中空状の駆動摩擦部材の内部に電気機械変換素子を配置する構成も可能になり、この駆動装置を使用する機器のスペースや出力特性に応じて自由に駆動装置を構成することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態の駆動装置20の一部断面を含む側面図、図2は駆動装置20の分解斜視図と組立斜視図、図3は係合部材9の分解状態と組立状態を示す斜視図である。
【0036】
駆動装置20では、電気機械変換素子の一例である円柱状の圧電素子1の伸縮方向の一端に例えば円盤状の錘2が接着剤6で固定され、他端に例えば短い円柱状の振動伝達部材4が接着剤7で固定されている。圧電素子1と振動伝達部材4とは例えば円筒形をなす中空状の駆動摩擦部材3の内部に挿入され、振動伝達部材4の外周部が駆動摩擦部材3の上端近傍の内面に接着剤8で固定されている。なお、駆動摩擦部材3の軸直角方向の剛性を高めるため、駆動摩擦部材3の中空部に1つ以上の補強部材が設けられてもよい。
【0037】
圧電素子1はロール型のものであり、その外周面に2つの電極1a,1bが露出して形成されている。これらの電極1a,1bに給電部材5が導電性接着剤5aで接着されており、これにより圧電素子1に所定波形の駆動電圧が印加されるようになっている。
【0038】
駆動摩擦部材3の外周部には係合部材9が摩擦力で係合されており、係合部材9は駆動摩擦部材3に沿って移動可能になっている。係合部材9は、スライダ10と、駆動摩擦部材3との摩擦を起こさせる摩擦部材11と、摩擦部材11を駆動摩擦部材3を介してスライダ10に向かって押し付ける押圧部材(例えば板ばね)12とから構成されている。
【0039】
前記構成からなる駆動装置20の駆動原理は、上述した従来例の駆動装置100と全く同様である。したがって、ここでの重複することになる説明を省略する。
【0040】
このように本実施形態の駆動装置20によれば、振動伝達部材4と駆動摩擦部材3とを別部材として分離することで、両者の材質を変えてそれぞれの形状を最適化することが容易になり、圧電素子1からの振動伝達をより良い状態にすることが可能になる。
【0041】
また、圧電素子1を長尺化することなく、適正な長さおよび静電容量の圧電素子1を使用することが可能になる。
【0042】
さらに、構造の自由度も増え、中空状の駆動摩擦部材3の内部に圧電素子1を配置する構成も可能になり、この駆動装置20を使用する機器のスペースや出力特性に応じて自由に駆動装置20を構成することが可能になる。
【0043】
続いて、前記駆動装置20の各構成要素について詳細に述べる。
【0044】
<駆動摩擦部材>
駆動摩擦部材3の材料に求められる特性は、圧電素子1の伸縮方向に剛性が高い(高い縦弾性係数を持つ)こと、質量が軽いこと、表面硬度が高いこと(耐摩耗性が高いこと)などが挙げられる。これらの特性を有するものとして、従来は駆動摩擦部材3としてカーボンロッドを採用している。これに対し、本実施形態の駆動装置20では、軸直角方向の剛性も高くするため、上記条件を満たすものとして、金属材料の中空軸を駆動摩擦部材3として使用する。前記金属材料には、例えば鉄系金属やアルミ系金属などがあり、鉄系金属としてはマルテンサイト系ステンレスを含むステンレスが好適に用いられる。
【0045】
ただし、駆動摩擦部材3として金属軸を使用する場合、係合部材9を常に所定の圧力で駆動摩擦部材3に押し付けているため、同種の金属材料を使用すると、その親和性から凝着を生じやすくなる。この凝着力は、駆動装置20の駆動力に比べて十分に小さいとは言えず、何らかの対策が必要である。そのため、駆動摩擦部材3と係合部材9とに異種材料を選択するか、あるいは、一方もしくは両方に凝着を生じにくくする表面処理を施すなどの対策を講じる。
【0046】
試作では、駆動摩擦部材3にSUS304の中空軸を用い、係合部材9の材料にはりん青銅を用いた。一般的に鉄系金属に対して銅系金属は凝着が起こりにくいことが分かっている。これ以外にも、駆動摩擦部材3にアルミの中空軸を用い、アルマイト処理を施すことにより表面硬化させることも有効である。
【0047】
なお、駆動摩擦部材3および係合部材9は共に、超音波振動下での摩擦運動にさらされるため、表面硬度が高く、かつ、表面摩擦係数を小さくすることで潤滑性が付与されていることが好ましい。
【0048】
<潤滑剤>
駆動摩擦部材3と係合部材9との間に潤滑剤を使用することも好ましい。潤滑剤としては液体の潤滑剤、例えばシリコンオイル、フッ素オイルなどの潤滑油を使用することが考えられる。また、これらの潤滑油中にテフロン粒子などを混入させたものも有効である。さらに、固体潤滑剤を用いることも可能である。潤滑剤を用いることにより、両者間の摩擦状態が安定し、局所的な表面状態の差異により摩擦係数が変化して駆動特性に影響を与えることを低減させる効果がある。
【0049】
<表面処理>
一般的に、金属製の駆動摩擦部材3の表面硬度を高くする表面硬化方法として、めっき(例えばニッケルめっき、クロムめっきなど)、焼入れ(侵炭処理)、窒化処理が利用される。試作では、駆動摩擦部材3として用いるSUS304中空パイプに対して窒化処理を施して表面硬度を上げた後、ショットブラストなどで表面の酸化層を除去して耐蝕性および摺動性を向上させたものを使用した。窒化処理としては、塩浴軟窒化、ガス軟窒化などが挙げられる。アルミ中空パイプを駆動摩擦部材3に用いる場合には、アルマイト処理にテフロンを含浸させたタフラム処理を施すことも有効である。
【0050】
また、表面処理により表面が荒れてしまうものが存在するので、表面状態が処理前と変わらない処理方法が好ましい。さらに、表面処理後に前記ショットブラストなどにより表面を清掃・調整する工程が入ると性能が安定しやすくなることも分かっている。
【0051】
なお、駆動摩擦部材3の耐摩耗性を向上させる方法として、上述しためっき、焼入れ、窒化処理の他にも、溶射、DLC被膜、セラミックコーティングなど種々の技術が開発されているが、これらに限定されるものではない。
【0052】
<係合部材>
係合部材9の構成は従来例の駆動装置100と同様である。ただし、上述したように凝着への対応が必要となる。試作では、係合部材9にりん青銅、あるいは、りん青銅に無電解ニッケルテフロンめっきを施したものを用いた。これ以外にもニッケルボロンめっき、P−inニッケルめっき、硬質クロムめっきなども有効である。係合部材9にめっきを施す場合にはめっき層が駆動摩擦部材3と接触することになることから、係合部材9の母材には前記めっき処理が可能な金属または樹脂を用いることができ、りん青銅に限定されない。りん青銅よりも比重の軽い亜鉛ダイカスト、アルミダイカスト製の部材に前記めっき処理を施すことも可能である。また、無電解ニッケルめっきは鉄系金属について強固に処理されるため、鉄系金属の薄板に前記めっき処理を施したものを係合部材9の駆動摩擦部材3との接触部に使用することが有効と考えられる。さらに、係合部材9はPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの硬質の樹脂で形成されてもよい。
【0053】
<振動伝達部材>
前記特許文献2(特開平4−368484号公報)に記載される形状のように、本実施形態の駆動装置20の振動伝達部材4に相当する部位(駆動棒の閉じた一端部)が軸方向に薄い板状のものであると、板の面内で振動を起こしてしまうので、圧電素子からの振動を有効に駆動摩擦部材に伝達できない。特に、駆動摩擦部材は、この種のアクチュエータでは要となる部材であり、その摺動特性がアクチュエータの性能および寿命を大きく左右する。前記特許文献2のように駆動摩擦部と振動伝達部とが一体であると、圧電素子の振動が駆動摩擦部へ効率よく伝達できない場合がある。
【0054】
これに対し、本実施形態の駆動装置20では、圧電素子1の伸縮運動を中空の駆動摩擦部材3に伝達するように、圧電素子1の一端に振動伝達部材4を設けている。振動伝達部材4は圧電素子1の振動を確実に駆動摩擦部材3へ伝達する必要があり、この部材4で振動が減衰してしまわないように、剛性が高く、かつ、質量(比重)の小さい材料のものが好ましい。
【0055】
例えば駆動摩擦部材3を金属製とした場合、振動伝達部材4は異なる材質である例えばPPS等の樹脂製、あるいは、アルミナやジルコニア等のセラミック製などがよい。セラミック製の場合、発泡させた多孔質セラミックを使用することで、剛性を高めたまま軽量化を図ることも可能である。
【0056】
また、試作で使用したロール状圧電素子1は、その端面に導電部が露出しているため、振動伝達部材4は非導電性材料からなることが好ましい。これにより、振動伝達部材4を介しての漏電を防止できる。アルミ製などの導電性のある振動伝達部材4を使用する場合は、接着剤7中に絶縁性のガラスビーズや樹脂ビーズなどを混入し、振動伝達部材4と圧電素子1の導電部とが直接接触しないようにする。
【0057】
振動伝達部材4の配置は、図1に示すように駆動摩擦部材3の端部近傍の場合や、図4に示すように駆動摩擦部材3の中間部の場合などがある。その配置は種々考えられるので、ここで記載されるものに限定されるものではなく、圧電素子1の長さや係合部材9の移動ストロークに応じた駆動摩擦部材3の長さなどにより決定される。また、振動伝達部材4を配置することで、薄肉中空の駆動摩擦部材3の軸直角方向の剛性を向上させる効果も得られる。
【0058】
振動伝達部材4と駆動摩擦部材3との結合は、接着に限らず、圧入や熱による締まりばめなども考えられる。接着剤8で結合する場合、特に振動伝達部材4が中空状の駆動摩擦部材3の端部に配置される場合には、接着剤8が駆動摩擦部材3の外周面にはみ出さないように接着剤8の塗布量を管理する必要がある。もしくは図5に示すように、振動伝達部材4につば部4aを設け(図6(g)参照)、接着剤8がはみ出すのを抑制する形状とすることが有効である。
【0059】
また、振動伝達部材4と駆動摩擦部材3との結合部の剛性が低いと、そこで振動が減衰し、駆動摩擦部材3へ振動伝達ができなくなるという問題が発生する。これを回避するためには、圧電素子1の伸縮方向における振動伝達部材4の厚みが所定量以上必要であり、駆動摩擦部材3の肉厚の2倍以上、または、駆動摩擦部材3の中空部の内径の1/3以上であることが好ましい。そうすることで、接着面積あるいは圧入等の接触長さを十分にとることができると共に、振動伝達部材4自体の剛性を確保できるので、駆動摩擦部材3との結合の剛性も十分に高くなり、振動の減衰も発生しない。
【0060】
さらに、振動伝達部材4と駆動摩擦部材3との間の接着をより確実に行うために、図6(e),(f),(h),(i)に示すように振動伝達部材4の接着面に溝状の接着剤溜まり4bを設けることも考えられる。接着剤溜まり4bの形状は、図6(e),(f),(h)に示すように端面まで軸方向に貫通しない直線溝形状または螺旋溝形状であってもよいし、図6(i)に示すように軸方向に貫通する溝形状であってもよい。接着時には、駆動摩擦部材3の内面と振動伝達部材4の外面との間に接着剤8が均一に行き渡るように、軸方向に相対的に往復移動させたり、周方向に回転させたりする作業が必要になる。この作業時に、接着剤8が振動伝達部材4の接着剤溜まり4bに入り込み、かつ駆動摩擦部材3の外側にはみ出さないようにする。さらに、接着剤8は硬化後に剛性が高いものを使用することが好ましい。
【0061】
さらにまた、振動伝達部材4については、図6(a)に示す単純な円柱形状に限らず、質量を軽くしたうえで剛性を高く保つように、図6(b),(c),(d)に示すような軸方向に1つまたは複数の貫通穴が形成された中空形状も考えられ、あるいは、この中空形状と前記溝状接着剤溜まり4bとを組み合わせてもよい。
【0062】
<補強部材>
駆動摩擦部材3の軸直角方向の剛性向上のため、振動伝達部材4とは別に、駆動摩擦部材3の中空部に1つ以上の補強部材を挿入固定することも有効である。この補強部材は、振動伝達部材4と同様に、剛性が高く、かつ質量の小さいものが好ましい。また、補強部材は、駆動摩擦部材3とは異なる材質からなり、駆動摩擦部材3の材料よりも比重が小さい材料からなることが好ましく、例えば駆動摩擦部材3が金属製の場合には、補強部材はセラミックや樹脂などで形成されていることが好ましい。さらに、図示しないが、駆動摩擦部材3がその断面形状に対して十分に長い場合、竹の節の如くに数カ所に補強部材を挿入固定してもよい。なお、振動伝達部材4が1つの補強部材を兼ねているとも考えられる。
【0063】
補強部材の接着面には、振動伝達部材4について説明したような接着剤溜まりを設けることも有効である。図7に示す略ドーナツ状の補強部材13には、中央部に貫通穴が形成されており、駆動摩擦部材3の内部に空気を閉じ込めないようにしている。これは補強部材13を固定するために熱硬化型接着剤を用いる場合に、内部に閉じ込められた空気が膨張して補強部材13を押し出すことがないようにするためである。また、他の接着剤で固定する場合でも、空気を閉じ込める構成では温度変化によって内部圧力が高まる危険性があるため、空気抜き穴を設けることが好ましいからである。
【0064】
また、図8,9に示すように、補強部材13は、駆動摩擦部材3の内面全周にわたって存在している必要はなく、押圧部材12による押し付け力の方向に駆動摩擦部材3が潰れにくくする形状(例えば略小判形)であってもよい。この場合でも、必要な強度が得られ、かつ軽量化に貢献できる。ただし、組立時に補強部材13により駆動摩擦部材3を補強した方向と押圧部材12による押圧方向とを揃えなければならない。
【0065】
<圧電素子>
圧電素子1は、従来からこの種の駆動装置に使用されてきたものを用いることができ、ロール状圧電素子を使用してもよいし、積層型圧電素子を使用してもよい。形状は、円柱でも直方体でも多角柱でもよい。図1に示す駆動装置20では、円柱状の圧電素子1に対して断面形状が中空円形の駆動摩擦部材3を採用しているが、駆動摩擦部材3の断面形状が多角形(正方形、長方形、正五角形など)のものも考えられる。図10に示すように、直方体の圧電素子1が一般的であるが、どのような形状の圧電素子1であってもそれに合わせた断面形状の駆動摩擦部材3および振動伝達部材4を適宜採用すればよい。ここで、駆動摩擦部材3の中空断面形状は、圧電素子1と相似形であればスペース効率がよいが、相似形でなくても圧電素子1を内包する形状であればよい。例えば、円形断面の圧電素子1に対して、これを内包する正方形中空断面の駆動摩擦部材3を用いてもよい。
【0066】
次に、図11を参照して前記駆動装置20の変形例について説明する。
駆動装置20では、圧電素子1が中空状の駆動摩擦部材3の内部に挿入されていたが、図11(c),(d)に示すように、錘2と、圧電素子1と、振動伝達部材4と、中空状の駆動摩擦部材3とを直列連結して駆動装置を構成してもよく、この場合、圧電素子1は中空状の駆動摩擦部材3の端部に固定されているだけでその内部には全く挿入されていない。これによっても、前記駆動装置20と同様の効果を得ることができる。また、駆動摩擦部材3の剛性を高めるために、図11(d)に示すように、中空状の駆動摩擦部材3の内部に1つ以上の補強部材13を設けることが好ましい。
【0067】
また、このように直列連結して駆動装置を構成する場合、図11(a),(b),(e)に示すように、振動伝達部材4を省略することも考えられる。この場合にも、圧電素子1は中空状の駆動摩擦部材3の端部に固定されているだけでその内部には全く挿入されていない。さらに、図11(b),(e)に示すように、中空状の駆動摩擦部材3の内部に1つ以上の補強部材13を設けることが好ましい。このように振動伝達部材を省略した駆動装置によれば、駆動摩擦部材3を中空状にしたことで軽量化による振動効率の向上を図れるとともに、内部に補強部材13を設けることで中空部材である駆動摩擦部材3の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】駆動装置の一部断面を含む側面図。
【図2】駆動装置の分解斜視図と組立斜視図。
【図3】係合部材の分解状態と組立状態を示す斜視図。
【図4】図1の駆動装置の別の形態を示す一部断面を含む側面図。
【図5】図1の駆動装置のさらに別の形態を示す一部断面を含む側面図。
【図6】振動伝達部材の各種形態を示す斜視図。
【図7】補強部材を設けた駆動装置の一部断面を含む側面図。
【図8】略小判形の補強部材を用いた駆動装置の分解斜視図。
【図9】略小判形の補強部材を用いた駆動装置の上面図。
【図10】直方体状の圧電素子を用いた駆動装置の分解斜視図。
【図11】錘、圧電素子および駆動摩擦部材を直列連結した駆動装置の一部断面を含む側面図。
【図12】従来の駆動装置の側面図。
【図13】図12の駆動装置の分解斜視図と組立図。
【図14】駆動装置の駆動原理を説明するための図。
【符号の説明】
【0069】
1…圧電素子(電気機械変換素子)
2…錘
3…駆動摩擦部材
4…振動伝達部材
5…給電部材
5a…導電性接着剤
6…接着剤
7…接着剤
8…接着剤
9…係合部材
10…スライダ
11…摩擦部材
12…押圧部材
13…補強部材
20…駆動装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に固定された振動伝達部材と、前記振動伝達部材に固定された中空状の駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦力で係合する係合部材とを備え、
前記電気機械変換素子を伸縮させて前記振動伝達部材に固定した前記駆動摩擦部材を振動させることで、前記駆動摩擦部材上で前記係合部材を移動させる駆動装置。
【請求項2】
前記伸縮方向における前記振動伝達部材の厚みが、前記駆動摩擦部材の肉厚の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記伸縮方向における前記振動伝達部材の厚みが、前記駆動摩擦部材の中空部の内径の1/3以上であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動摩擦部材は、金属製であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動摩擦部材は、ニッケルめっきにより表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動摩擦部材は、クロムめっきにより表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記駆動摩擦部材は、鉄系金属製であって、焼入れにより表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記駆動摩擦部材は、マルテンサイト系ステンレス製であることを特徴とする請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記駆動摩擦部材は、鉄系金属製であって、窒化により表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記駆動摩擦部材は、ステンレス製であることを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記駆動摩擦部材は、アルミ系金属製であって、アルマイト処理により表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記振動伝達部材と前記駆動摩擦部材とは異なる材質であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記振動伝達部材は、前記駆動摩擦部材の材料よりも比重の小さい材料からなることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記振動伝達部材はセラミック製であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記振動伝達部材は樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記振動伝達部材は非導電性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項17】
前記駆動摩擦部材の中空部に、1つ以上の補強部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項18】
前記補強部材は、前記駆動摩擦部材とは異なる材質からなることを特徴とする請求項17に記載の駆動装置。
【請求項19】
前記補強部材は、前記駆動摩擦部材の材料よりも比重の小さい材料からなることを特徴とする請求項17に記載の駆動装置。
【請求項20】
前記補強部材はセラミック製であることを特徴とする請求項17に記載の駆動装置。
【請求項21】
電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に固定された駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦力で係合する係合部材とを備え、前記電気機械変換素子を伸縮させて前記駆動摩擦部材を振動させることで、前記駆動摩擦部材上で前記係合部材を移動させる駆動装置であって、
前記駆動摩擦部材は中空状で、その内部に1つ以上の補強部材が設けられていることを特徴とする駆動装置。
【請求項1】
電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に固定された振動伝達部材と、前記振動伝達部材に固定された中空状の駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦力で係合する係合部材とを備え、
前記電気機械変換素子を伸縮させて前記振動伝達部材に固定した前記駆動摩擦部材を振動させることで、前記駆動摩擦部材上で前記係合部材を移動させる駆動装置。
【請求項2】
前記伸縮方向における前記振動伝達部材の厚みが、前記駆動摩擦部材の肉厚の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記伸縮方向における前記振動伝達部材の厚みが、前記駆動摩擦部材の中空部の内径の1/3以上であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動摩擦部材は、金属製であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動摩擦部材は、ニッケルめっきにより表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記駆動摩擦部材は、クロムめっきにより表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記駆動摩擦部材は、鉄系金属製であって、焼入れにより表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記駆動摩擦部材は、マルテンサイト系ステンレス製であることを特徴とする請求項7に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記駆動摩擦部材は、鉄系金属製であって、窒化により表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記駆動摩擦部材は、ステンレス製であることを特徴とする請求項9に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記駆動摩擦部材は、アルミ系金属製であって、アルマイト処理により表面硬化されていることを特徴とする請求項4に記載の駆動装置。
【請求項12】
前記振動伝達部材と前記駆動摩擦部材とは異なる材質であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項13】
前記振動伝達部材は、前記駆動摩擦部材の材料よりも比重の小さい材料からなることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項14】
前記振動伝達部材はセラミック製であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項15】
前記振動伝達部材は樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項16】
前記振動伝達部材は非導電性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項17】
前記駆動摩擦部材の中空部に、1つ以上の補強部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項18】
前記補強部材は、前記駆動摩擦部材とは異なる材質からなることを特徴とする請求項17に記載の駆動装置。
【請求項19】
前記補強部材は、前記駆動摩擦部材の材料よりも比重の小さい材料からなることを特徴とする請求項17に記載の駆動装置。
【請求項20】
前記補強部材はセラミック製であることを特徴とする請求項17に記載の駆動装置。
【請求項21】
電圧が印加されると伸縮する電気機械変換素子と、前記電気機械変換素子の伸縮方向の一端に固定された駆動摩擦部材と、前記駆動摩擦部材に摩擦力で係合する係合部材とを備え、前記電気機械変換素子を伸縮させて前記駆動摩擦部材を振動させることで、前記駆動摩擦部材上で前記係合部材を移動させる駆動装置であって、
前記駆動摩擦部材は中空状で、その内部に1つ以上の補強部材が設けられていることを特徴とする駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−129625(P2006−129625A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315092(P2004−315092)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】
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