説明

駐車場

【課題】 本発明は、自走式立体駐車場、エレベータ式立体駐車場等の駐車場において、床スラブを改善して階高を低減する駐車場の提供を目的にしている。

【解決手段】 本発明による駐車場は、基準階の床スラブにおいて外周と車室グリッドを支えて一方向に配置されている支柱間に扁平なポストテンション方式のプレストレスト・コンクリート梁を設け、この扁平梁と直交方向にポストテンション方式のプレストレスト・コンクリートから成る床スラブを扁平な梁間に構成し、耐震壁を車室グリッドに配置された支柱間の床スラブ上に設けたり、車輌転落防止用の壁梁を外周部の床スラブ上に立ち上げたりしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式立体駐車場、エレベータ式立体駐車場等の駐車場において床構造を改善して階高を低減する駐車場に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駐車場においては、床構造を鉄筋コンクリート造にして一対のUターン状のカーブを有する車路を形成して、この車路の両側には多数の車室グリッドが形成されている。
駐車場の一般的な床構造は、図4に見られるようにその周囲は立設された支柱15と支柱間に架設される外梁16で構成され、支柱15と外梁16で取り囲まれる中央部に立設される多くの中柱17及び支柱15と中柱17間もしくは中柱17の相互間に架設される多くの大梁18によって格子箱状に構成されている。
(特許文献1参照)
外梁16や大梁18は、図5に示すように夫々に要求される最大の応力に耐えられるように梁用PC鋼材19で張設されているために、各梁は、800〜1000mmの梁成が必要になっているので、階高は結果的に3100〜3300mmと大きくなっていた。
【0003】
これらの階高を低くするために、従来からプレストレスト・コンクリート梁工法やフラットスラブ工法も検討されてきた。
しかしながら、駐車場の機能として車路が車室グリッドに較べて広い空間を必要とするために中柱17の配置が均等に成らない点や方向性があるために中柱17の配置を図示のように直線上に配置することが必須である点等から、プレストレスト・コンクリート梁工法では、各支柱間の梁を長大にして大きな応力に対処させるためにPC鋼材19を配置するには高低差を確保するための梁成を減少させることが出来ないこと、フラットスラブ工法では、柱の間隔が均等な場合には効率的であっても現実には不均等であるために梁の断面は大きな応力に対処させて決める必要があり、薄いスラブ20の中でPC鋼材を交差して配置するためには梁の部分において鉄筋の上下端と合わせると6段になることからPC鋼材の高低差が確保できなくなるので梁成を高くすると同時にスラブ20を厚く構成しな
ければ成らなかった。
従って、検討されてきたところのプレストレスト・コンクリート梁工法、フラットスラブ工法の何れの工法においても不経済になってしまうことから採用に至っていなかった。
【特許文献1】特許第3119635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、自走式立体駐車場、エレベータ式立体駐車場等の駐車場において床スラブを改善して階高を低減する駐車場の提供を目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による第1の駐車場は、車路及び車室グリッドが形成される床スラブを駐車場の外周と車室グリッドに配置された支柱によって支持して構成する駐車場であって、基準階の床スラブにおいて外周と車室グリッドを支えて一方向に配置されている支柱との間に扁平なポストテンション方式のプレストレスト・コンクリート梁を設け、この扁平梁と直交方向にポストテンション方式のプレストレスト・コンクリートから成る床スラブを扁平梁間に構成することを特徴としている。
本発明による第2の駐車場は、第1の駐車場において車室グリッドに配置された支柱間の床スラブ上に耐震壁を設けることを特徴としている。
本発明による第3の駐車場は、第1、2の駐車場において外周部の床スラブ上に車輌転落防止用の壁梁を立ち上げることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明による第1の駐車場は、基準階の床スラブにおいて外周と車室グリッドを支えて一方向に配置されている支柱間に扁平なポストテンション方式のプレスレスト・コンクリート梁を設け、この扁平梁と直交方向にポストテンション方式のプレストレスト・コンクリートから成る床スラブを扁平梁間に構成しているので、梁成と床スラブ厚を減少させて床スラブの軽量化を図りながら床スラブの階高を低くすると共に建物全体の高さも低くして上下階間の車の移動を効率的にすると共に建物の高さ制限にも応える効果を奏している。
【0007】
本発明による第2の駐車場は、上記第1の駐車場に加えて車室グリッドに配置された支柱間の床スラブ上に耐震壁を設けて、耐震壁を内部空間のみに設置しているので、上述した効果の他に、駐車場の外周部を開口して明るい空間を確保すると共に自然換気による省エネも図れる効果を奏している。
【0008】
本発明による第3の駐車場は、上記第1、2の駐車場に加えて外周部の床スラブ上に車輌転落防止用の壁梁を立ち上げているので、上述した効果の他に、駐車場の外周部を開放することになって駐車場における閉鎖状態を解消して乗車人に開放感を与える効果を奏している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による駐車場は、基本的に、車路及び車室グリッドが形成される床スラブを駐車場の外周と車室グリッドに配置された支柱によって支持して構成する駐車場であって、基準階の床スラブにおいて外周と車室グリッドを支えて一方向に配置されている支柱間に扁平なポストテンション方式のプレストレスト・コンクリート梁を設け、この扁平梁と直交方向にポストテンション方式のプレストレスト・コンクリートから成る床スラブを扁平梁間に構成している。
【実施例1】
【0010】
本発明による駐車場を図1〜3に基づいて説明する。
駐車場1の基準階は、図1に示すように車路2とこの車路2の両側に配置されている外側車室グリッド3及び内側車室グリッド4が床スラブ5の上に形成されており、床スラブ5は駐車場の外周6に配置されている支柱7群と外側車室グリッド3に配置されている支柱8群及び内側車室グリッド4に配置されている支柱9群によって支持されている。
【0011】
床スラブ5は、外周6に配置されている支柱7と外側車室グリッド3に配置されている支柱8及び内側車室グリッド4に配置されている支柱9とを図示の左右方向に直線状に形成されている梁10群と、この梁10と交差した状態で図示の上下方向に各梁10の間に形成されているスラブ11とによって構成されている。
各梁10は、図1及び図1を矢印I−I方向に断面図として示す図2に示されるように、外周6に配置の支柱7、外側車室グリッド3に配置の支柱8及び内側車室グリッド4に配置の支柱9を不均等ではあっても直線状に狭い間隔で配置する形態で支持されている。この配置状態によって支柱間で負担する梁10の応力は減少されることになるので、梁10は梁成の減少された扁平梁として薄い断面厚で済むことから図1のように上下方向に幅広い形態で構成されている。
スラブ11は、各梁10の間に形成されて床スラブ5を構成しているものである。スラブ11は、梁10を扁平梁として幅広く形成することによって図1の上下方向において規制されてくる支持点間の距離が減少されることになることから負担する必要がある応力の値は少なくて済むので、その断面厚を薄く形成できる形態で構成されている。
【0012】
以上のような扁平形状の梁10とスラブ11との関連は、図1において矢印II−IIで表示されている断面図である図3で示しているように構成されている。
梁10は、図示のように中央にPC鋼材12を配置してプレストレスト・コンクリート梁として構成されるものであり、支持される外周6に配置の支柱7、外側車室グリッド3に配置の支柱8及び内側車室グリッド4に配置の支柱9とが直線状に配置されていることから、各支柱間の間隔が不均等であっても負担する支持応力を減少させても可能なように梁成の小さい扁平形態に構成されている。一方、スラブ11は、梁10の支持される方向と直交される一方向において一方向スラブによって構成されているものであるが、梁10が梁成を小さくして梁巾を広くした扁平梁として構成されていることから、スラブ11の支持支点になる梁10の配置される間隔Kが狭く構成されている。
【0013】
従って、スラブ11の負担する応力も減少させた状態で構成できることから、スラブ11の厚さを小さくして自重を軽減させても済むことによって、スラブ11中に配線されるPC鋼材も従来の場合よりも減少させた形態で導入できるものであり、梁10との交差状態においても、スラブ11中に配線されるPC鋼材は常に梁10に配置されているPC鋼材12の上段に配置することが可能になっている。
これによって、梁10とスラブ11とではPC鋼材の配置が分離された状態に構成されるものであって、従来のフラットスラブ工法のように薄いスラブの中でPC鋼材を交差させることも解消しているのでスラブ11の厚さはこの点において薄くできることからスラブ11の軽量化はさらに促進されるものであって上述したPC鋼材を減少させる効能は更に加速されることになる。
【0014】
上述したように、外周6に配置されている支柱7と外側車室グリッド3に配置されている支柱8及び内側車室グリッド4に配置されている支柱9を可能な限り直線状態に配置することで、支柱の配置間隔が不均等であっても負担する応力分担をほぼ均等になるようにしながら全体としては軽減することによって梁10の梁成を低減して梁巾を拡大させることで梁を扁平にすると共に、梁間の間隔を小さく配分し、内部に導入するPC鋼材と梁10に配線するPC鋼材と分離させることで梁間に構成されるスラブ11を薄く形成して自重を軽減することによって床スラブ5の階高を低減させることは、駐車場における上下階間の移動勾配を緩やかにして車の運転を容易にして、上下階間の移動通路を短くするので、駐車場は使い易くなると共に建物の高さ制限にも容易に対応できる。
【実施例2】
【0015】
本発明による駐車場は、車室グリッドに配置された支柱間の床スラブ上に耐震壁を設けることで耐震壁を内部空間のみに設置している。
図1、2に示すように駐車場1は、外周6に配置の支柱7と外側車室グリッド3に配置の支柱8との間に耐震壁13が設けられると共に内側車室グリッド4に配置されている支柱9、9間にも耐震壁13、14が設けられている。
これによって、駐車場1の外周6は開口状態に形成することになるので駐車場の内部は明るい空間を確保できる状態になると共に、自然換気による通風状態が形成されるので駐車場における省エネ対策も向上するものである。
【実施例3】
【0016】
本発明による駐車場は、外周部の床スラブ上に車輌転落防止用の壁梁を立ち上げており、駐車場の外周部を開放することで駐車場における閉鎖状態を解消している。
図2の断面図が示すように駐車場1は、外周6において床スラブ5上に壁梁15を設けることによって車輌の転落を防止すると共に壁梁15の上方を開放しており、駐車場1における閉鎖感を無くして駐車場1に駐車する人に開放感を与えるように構成している。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、自走式立体駐車場、エレベータ式立体駐車場等の駐車場において床構造を改善することで階高を低減することで、上下階の移動路の勾配を緩やかにしたり、移動距離を短縮して車の移動を容易にすると共に建物の高さ制限にも対応できる駐車場に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による駐車場の基準階図
【図2】本発明による駐車場の横断面図
【図3】扁平な梁とスラブとの断面図
【図4】従来の駐車場における基準階図
【図5】従来の駐車場における梁とスラブとの断面図
【符号の説明】
【0019】
1…駐車場、2…車路、3…外側車室グリッド、4…内側車室グリッド、5…床スラブ、6…駐車場の外周、7…外周に配置の支柱、8…外側車室グリッドに配置の支柱、9…内側車室グリッドに配置の支柱、…10…梁、11…スラブ、12…PC鋼材、 13、14…耐震壁、15…支柱、16…外梁、17…中柱、18…大梁、19…梁用PC鋼材、20…スラブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車路及び車室グリッドが形成される床スラブを駐車場の外周と車室グリッドに配置された支柱によって支持して構成する駐車場であって、基準階の床スラブにおいて外周と車室グリッドを支えて一方向に配置されている支柱間に扁平なポストテンション方式のプレストレスト・コンクリート梁を設け、該扁平な梁と直交方向にポストテンション方式のプレストレスト・コンクリートから成る床スラブを扁平な梁間に構成することを特徴とする駐車場。
【請求項2】
車室グリッドに配置された支柱間の床スラブ上に耐震壁を設けることを特徴とする請求項1に記載の駐車場。
【請求項3】
外周部の床スラブ上に車輌転落防止用の壁梁を立ち上げることを特徴とする請求項1、2に記載の駐車場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−7954(P2008−7954A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176413(P2006−176413)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(390003964)株式会社総合駐車場コンサルタント (2)
【Fターム(参考)】