駐車支援システム
【課題】駐車場マップを予め用意せずに、走行路と駐車空きスペースとの区別を行うことで、駐車しようとする車両を駐車空きスペースに導く駐車支援システムを提供する。
【解決手段】 駐車場を走行中の車両における車両側方の外部物体までの計測距離を示す側方距離情報に基づいて、走行中の車両によって規定される車両走行路を含む駐車場の空間マップを作成する空間マップ作成部32と、空間マップに基づいて車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報を作成する駐車状態情報作成部33と、駐車しようとする車両に駐車状態情報を提供する駐車状態情報提供部34とを備える駐車支援システム。
【解決手段】 駐車場を走行中の車両における車両側方の外部物体までの計測距離を示す側方距離情報に基づいて、走行中の車両によって規定される車両走行路を含む駐車場の空間マップを作成する空間マップ作成部32と、空間マップに基づいて車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報を作成する駐車状態情報作成部33と、駐車しようとする車両に駐車状態情報を提供する駐車状態情報提供部34とを備える駐車支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場の駐車空きスペースを探し出し、その駐車空きスペースに車両を案内する駐車支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パーキングメータなどの駐車施設や道路幅を含む道路情報を予め用意し、道路を通行する車両の側方の物体までの側方距離を計測させ、車両の現在位置を検出し、予め記憶された車両の幅と計測された前記側方距離と検出された現在位置とに基づいて、道路の場所ごとの環境の形状を含む新たな道路情報を取得し、そのような道路情報を各車両間で情報交換することで駐車施設の空き状況を判断する技術が知られている(特許文献1参照)。この技術では、どこにどのような駐車施設があるかといった情報や道路幅などを含む道路情報を各車両で予め用意する必要がある。このような道路情報の収集には多大な費用がかかる。また、駐車施設などでは、そのレイアウトなどが頻繁に改変されがちなので、予め用意された情報がすぐに陳腐化してしまう。このような問題点のために、この技術の実用化はかなりのコスト的かつ技術的な負担を伴う。
【0003】
また、自車両が駐車しようとする駐車場内に駐停車されている他車両が取得した周辺画像や位置、向きを示す車両情報を車々間通信により取得して、取得した車両情報に基づいて自車両の上方の仮想視点から見たトップビュー画像を生成し、トップビュー画像により空きスペースを提示する技術も知られている(特許文献2参照)。この技術では、車両を誘導するための人員を持たない駐車場であっても、車両のモニタ画面に表示されるトップビュー画像を見ることで、運転者は、自車両を駐車するための空きスペースを容易に把握することができる。しかしながら、この技術は、多数の駐車中車両と駐車しようとする車両との間の画像データ伝送と画像データ処理とに基づいており、大容量データ伝送技術と高い演算能力を有するコンピュータとを必要とする。特に、駐車中車両にそのような高負荷な処理をさせることは消費電力の点から実用上の難点がある。
【0004】
さらに、駐車場の駐車空きスペースを案内するシステムとして、各車両に、他車両との間で通信を行う通信手段と、ユーザに案内情報を提供する表示手段と、ユーザが指示した情報を入力する情報入力手段と、当該車両の位置を検出する位置検出手段と、当該車両の向きを基準として左右各方向にある障害物までの距離をそれぞれ検出する距離検出手段と、他車両から受信したデータに基づいて当該他車両の駐車場内での位置と空きスペースの配置についてのマッピング処理を行うマッピング手段とが搭載されたものが知られている(特許文献3参照)。このシステムでは、駐車場において駐車目的で停車状態にある自車両から既に駐車中の複数の他車両に対し、自車両の車体幅のデータを送信する。このデータに応答して他車両から自車両に対して送られてきた、それぞれ位置検出手段により検出された当該他車両の位置のデータと距離検出手段により検出された当該他車両の左右各方向の距離のデータとに基づいてマッピング手段処理を行う。さらにマッピング結果から駐車可能な空きスペースを検索し、該検索した空きスペースの情報を前記表示手段の画面上に表示する。これにより、ユーザは駐車場のどこに駐車スペースがあるのかを認識することができ、当該駐車スペースまで自車両を誘導することが可能となる。しかしながら、このシステムでは、混んでいる駐車場で駐車空きスペースを見つけ出すためには、かなり多くの駐車済み車両からの距離データが必要となる可能性が高く、通信負荷が大きくなる。このことは、駐車済み車両に対して問題となる消費電力の負担を強いることになる。また、駐車済み車両1台からはその車両に隣接する領域の距離データが得られるだけなので、この駐車支援システムを搭載している駐車済み車両が少ないと広範囲での駐車空きスペースの探索が不能となる。さらに、その距離データから駐車可能な空きスペースを抽出する際に、走行路との区別が難しく、その演算処理の負担が大きい。
【0005】
【特許文献1】特開2002−288795号公報(段落番号0012−0037、図11)
【特許文献2】特開2005−326956号公報(段落番号0048−0058、図6)
【特許文献3】特開2004−240805号公報(段落番号0013−0015、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実状に鑑み、本発明の課題は、駐車場マップを予め用意せずとも、走行路と駐車空きスペースとの区別を行うことで、駐車場のどこに駐車可能な駐車空きスペースがあるのかを判定し、駐車しようとする車両を駐車空きスペースに導くことができる駐車支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明による駐車支援システムは、駐車場を走行中の車両における車両側方の外部物体までの計測距離を示す側方距離情報を順次取得する側方距離情報取得部と、前記側方距離情報に基づいて、前記走行中の車両によって規定される車両走行路を含む前記駐車場の空間マップを作成する空間マップ作成部と、前記空間マップに基づいて前記車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報を作成する駐車状態情報作成部と、駐車しようとする車両に前記駐車状態情報を提供する駐車状態情報提供部とを備える。
【0008】
この構成によれば、駐車場内の走行路を走行する車両おける車両側方に存在する外部物体までの計測距離を示す計測距離情報が順次取得されるので、この計測距離情報を二次元平面に展開すると、車両の走行軌跡を基準としてレーザ探索画面のようなスキャンイメージが得られる。従って、このスキャンイメージから車両の走行軌跡に基づいて車両走行路を取り除き、駐車に必要な面積を割り当てると、駐車空きスペースと駐車済みペースを把握することができる駐車状態情報を作成することができる。つまり、本発明による駐車支援システムでは、駐車場内の走行路を走行する車両の側方エリアにおける障害物ないしは反射物などの外部物体までの距離が計測されるので、車両走行路を確定するとともに、その周辺の物体探索イメージを作成することができる。これにより、駐車場マップを予め用意せずとも、走行路と駐車空きスペースとの区別が行われ、駐車場のどこに駐車可能な駐車空きスペースがあるのかを判定して、駐車しようとする車両を駐車空きスペースに導くことができる。
【0009】
また、本発明に係る駐車支援システムは、さらに、前記駐車状態情報作成部が複数の異なる走行中の車両からの前記側方距離情報による空間マップに基づいて駐車状態情報を作成し、その際同一区域でその情報に差違が生じている場合、前記側方距離情報の計測時点が遅い方の情報を優先することを特徴とする。この特徴によれば、異なる車両走行路に沿って得られた側方距離情報に基づいて作成された空間マップを重ね合わせていくことにより、1台の走行車両からでは不可能である広範囲の空間マップを作成する可能性が広がる。また、そのような空間マップの重ね合わせ時に、同一区域(単位区画)で異なる探索結果が示されている場合、計測時点の遅い方を優先することで、最新の駐車状態を作り出すことができる。
【0010】
さらに、本発明に係る駐車支援システムは、前記駐車状態情報提供部が前記駐車状態情報に基づいて駐車支援情報を作成し、前記駐車しようとする車両の長さ情報及び幅情報に基づいて前記駐車支援情報を報知することを特徴とする。この特徴によれば、車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報に基づいて、駐車しようとする車両の駐車に適した駐車空きスペースを抽出して、報知することができる。その際、前記駐車状態情報提供部が自車位置情報を利用することができるように構成されている場合、自車から最短距離にある駐車空きスペースを報知することもでき、予め用意された駐車場マップが無くとも、最適な駐車案内が実現となる。
【0011】
さらに、本発明に係る駐車支援システムは、前記駐車しようとする車両の空間マップ作成部が他の車両から送られてきた前記側方距離情報に基づいて前記空間マップを作成し、当該空間マップに基づいて前記駐車しようとする車両の駐車状態情報作成部が前記駐車状態情報を作成することを特徴とする。この特徴によれば、駐車しようとする車両が側方距離情報を作成する処理以外の処理を行うことになるので、駐車支援を必要とせずに駐車場を走行する車両、例えば駐車場を退出するために走行する車両での処理負担を最小にすることができる。もちろん、車両は駐車場に入る時に側方距離情報を受け取り、駐車場から出る時に側方距離情報を作成して他の車両に与えることになる。従って、演算負担を車両同士が分散し合うという観点からは、前記駐車しようとする車両の駐車状態情報作成部が他の車両から送られてきた空間マップに基づいて前記駐車状態情報を作成する実施形態も好ましい。その際、駐車場を出て行く車両によって作成された空間マップを、何らかの中継ステーションで受け取り、蓄積しておき、次に駐車場に入ってくる車両にその蓄積された空間マップを送信することも好都合である。この場合、駐車場を出て行く車両と駐車場に入ってくる車両との時間差を中継ステーションが吸収するので、この駐車支援システムがさらに効果的に運用されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に本発明による1つの実施形態に係わる駐車支援システムを採用した車両の模式図が示され、図2にその駐車支援システムの概略構成が示されている。駐車支援システムは、各種センサからなるセンサ系1と、センサ系1からの信号に基づいて各種計測を行う計測系2と、計測系2の計測結果に基づいて所望のデータ評価を行う評価系3と、データ伝送を行う通信系4とから構成されている。この実施の形態では、各車両(自動車)はこの駐車支援システム一式を搭載している。後で詳しく説明されるが、駐車場から退出する車両は、センサ系1と計測系2の機能を用いて、駐車位置から駐車場出口までの走行過程における車両側方周辺の障害物探索情報である側方距離情報を生成する。通信系4を用いることでこの側方距離情報は駐車場に進入してきた車両の要求に応じてこの進入車両に与えられる。進入車両は、与えられた側方距離情報を評価系3の機能を用いて処理し、どこに駐車空きスペースがあるかを示す駐車状態情報を作成する。進入車両は、駐車状態情報に基づいて駐車空きスペースまで走行し、そこに駐車することができる。
【0013】
走行中の車両周辺の障害物などの外部物体、例えば駐車場の壁体や駐車車両の探索は、測距センサ10によって行われる。測距センサ10は、超音波を用いたものでも、レーザを用いたものでもよく、その形式は限定されない。図1から明らかなように、測距センサ1として、左測距センサ10aと右測距センサ10bが用いられている。左測距センサ10aは車両の長手方向に直交する車両左側方向が伝播中心軸となるように車体の左側面に取り付けられている。同様に、右測距センサ10bは車両の長手方向に直交する車両右側方向が伝播中心軸となるように車体の右側面に取り付けられている。
【0014】
図2に示すように、センサ系1には、ほかに、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)11、車速パルスを出力する車速センサ12、加速度情報を出力する加速度センサ13、車両の向きを示す方位情報を出力するジャイロセンサ14が含まれている。
【0015】
計測系2には、自車位置データ生成部21、自車方位データ生成部22、側方計測距離データ生成部23、側方距離情報作成部24が含まれている。自車位置データ生成部21は、GPS11、車速センサ12、加速度センサ13、ジャイロセンサ14からの信号入力に応じて、経度値と緯度値からなる自車位置データを生成する。この自車位置データはカーナビゲーションシステムで利用されるものなので、この自車位置データ生成部21は、ナビゲーションシステムと兼用することができる。自車方位データ生成部22は、GPS11及びジャイロセンサ14からの信号入力に基づいて、車両の進行方向の向きを計測し、その方位値を生成する。
【0016】
側方計測距離データ生成部23は、左測距センサ10aと右測距センサ10bからの信号入力に応じて、車両中心から車両左側方に存在する障害物までの距離と車両右側方に存在する障害物までの距離をそれぞれ計測する。各計測値はそれぞれ左距離値と右距離値として出力される。例えば、超音波方式の場合、測距センサ10から送信された超音波パルスが障害物に衝突し、反射されてくる反射パルスの戻り時間が計測される。この計測時間と音速、及び各測距センサ10から車体中心までの距離に基づいて、車体中心から左方障害物(反射物)までの左距離値と、車体中心から左方障害物(反射物)までの右距離値が算出される。
【0017】
側方計測距離データ生成部23から出力される左距離値と右距離値とは、計測された時点の車両位置と関係づけられながら車両の走行とともに順次生成されていくことで、平面的な広がりを有する障害物探索データとして利用することになる。このため、側方距離情報作成部24は、図3で模式的に示されているように、左距離値と右距離値とからなる側方距離データを、タイムスタンプ、自車位置データ、さらには自車方位データと関係(リンク)づけて、側方距離情報として出力する。タイムスタンプは、側方距離情報の経時的な順番を示す指標として用いられるが、他のデータで兼用できる場合には省略してもよい。側方距離情報作成部24から順次出力される側方距離情報は、メモリに一時格納される。
【0018】
評価系3には、側方距離情報取得部31、空間マップ作成部32、駐車状態情報作成部33、駐車状態情報提供部34が含まれている。側方距離情報取得部31は、側方距離情報作成部24によって順次生成された側方距離情報を受け取り、後の処理に好都合な形態でメモリ上に展開する。
【0019】
空間マップ作成部32は、メモリ上に展開されている側方距離情報の内容を読み取り、この側方距離情報を生成した車両が駐車場内を走行した走行路を含む駐車場の空間マップを作成する。図4に、退出車両の退出走行に伴って順次生成された側方距離情報が空間マップの作成のために二次元平面に展開された形態が模式的に示されている。この図4から理解できるように、車両位置において進行方向に対して直交する方向で右距離値と左距離値で示される線分を描画することを車両走行に伴って繰り返していくと、レーダ画面のような障害物探索イメージが得られる。この障害物探索イメージにおいて、線分が通過しているエリアが障害物なしのエリアであると見なすことができる。また、経時的な車両位置の変動から車両の走行軌跡が得られるが、この走行軌跡を基準として、左右の所定距離を通路幅と見なすと、車両の走行路のエリアを規定することができる。例えば、走行している車両の走行路に面して駐車している駐車車両からはほぼ一定の値をもった距離値が得られるので、この距離値を利用して車両中心から走行路側端までの距離と見なして、前記所定距離とすることができる。ある程度混んだ駐車場内を走行した場合には、側方左右の距離値として頻繁に生じる最小距離値が上記所定距離となる。このような所定距離を用いて規定される走行路のエリアを、障害物なしのエリアから取り除くと、駐車場における走行路を除いた障害物なしのエリアだけが区分けされた空間マップが作り出される。なお、このように、側方距離情報から障害物探索イメージをコンピュータ処理する場合には、図5に示すように、例えば経度及び緯度を縦軸と横軸とする座標系を作成し、その座標面に所定の単位区画を定義しておく。まず、経時的に変動する車両位置に対応する単位区画をラベリングする(図5(a)では黒三角で示されている)。さらに、左距離値に基づいて規定される線分が通過する単位区画をラベリングする(図5(a)ではペケで示されている)。同様に、右距離値に基づいて規定される線分が通過する単位区画をラベリングする(図5では白丸で示されている)。さらに、上述したように、走行路のエリアが規定されると、そのエリアの単位区画を別な符号、図5(b)では白四角で書き換えるとよい。これにより、空間マップを、データ容量が極めて小さい行列データで作成することができる。
【0020】
駐車状態情報作成部33は、空間マップ作成部32によって作成された空間マップに基づいて車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報を作成する。空間マップには、走行路以外の障害物なしのエリアを把握できるので、その障害物なしのエリアのうち、走行路に面しているとともにこの進入車両が駐車可能な面積を持つ領域を駐車空きスペースと見なすことができる。また、障害物エリアの中で、ほぼ車両の外形輪郭に類似する領域を駐車済みスペースと見なすことができる。このようにして作成された駐車状態情報から、駐車場における特定退出車両の走行軌跡に沿った車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを把握することができる。
【0021】
なお、側方距離情報を複数の退出車両から受け取った場合、複数の空間マップ、結果的には複数の駐車状態情報を作成することができる。これらの複数の空間マップ又は駐車状態情報を重ね合わせることで、駐車場のより多くのエリアをカバーする空間マップ又は駐車状態情報を作成することも可能となる。
【0022】
駐車状態情報提供部34は、駐車状態情報作成部33で作成された駐車状態情報をこれから駐車しようとする車両ないしはその車両に運転者に提供するものである。この実施形態では、駐車状態情報提供部34は、駐車支援情報作成部34aと報知部35bを備えている。駐車支援情報作成部34aは、駐車状態情報作成部33で作成された駐車状態情報と、この進入車両の自車位置データとから最も近い駐車空きスペースを推薦駐車位置として車両を案内する情報とを作成する。報知部34bは、駐車支援情報に基づいて、推薦される駐車位置を運転者にモニタ8を通じて画像情報の形態で、又はスピーカ9を通じて音声情報の形態で報知する。
【0023】
複数の退出車両から受け取った側方距離情報に基づいて最終的な駐車支援情報を作成するまでの、上述した評価系3による処理が図6に図解されている。ここでは、まず退出車両Aから受け取った側方距離情報から空間マップAが作成される。さらに、退出車両Bから受け取った側方距離情報から空間マップBが作成される。次に、空間マップAと空間マップBとを統合して空間マップA+Bを作成する。なお、図6では、2台の退出車両AとBとから側方距離情報を受け取っているだけであるが、さらに多くの退出車両から側方距離情報を受け取った場合、より広範囲の空間マップが作成される可能性が高くなる。なお、異なる複数の空間マップを統合する際に、同じ単位区画で異なる符号が記されている場合、つまり一方では障害物有りのエリアで他方では障害物なしのエリアとなっている場合、絶対時間を用いたタイムスタンプに基づいて計測時点の遅い方を優先するような構成にすることが好ましい。これは、計測時点の遅い情報が現時点の状態を表している可能性が高いからである。
【0024】
上述したように構成された駐車支援システムにおける処理の流れを、図7〜10に示されたフローチャートを用いて、以下に説明する。
まず、車両が駐車場(駐車場へのアクセス道路を含む)内に入っているかどうかがチェックされる。このチェックは、カーナビゲーションなどによる自動判定の結果に基づいてもよいし、駐車場内であることを指示する運転者によるマニュアル操作に基づいてもよい。このチェックで、車両が駐車場外であると判定された場合(#01No分岐)、この駐車支援制御は行わないとして終了する。車両が駐車場内であると判定された場合(#01Yes分岐)、さらにこの車両が駐車場に進入する進入モードであるか、又は駐車場から退出する退出モードであるがチェックされる。このチェックも、操作ボタンなどを通じた運転者によるマニュアル操作に基づいてもよいし、車両運転状況から自動判定された結果に基づいてもよい。退出モードの場合には、図8で示すような退出ルーチン(#10)が実行され、進入モードの場合には、図9で示すような進入ルーチン(#20)が実行される。
【0025】
退出ルーチンでは、まず、既にこの退出車両が駐車場から出たかどうかがチェックされる(#11)。駐車場内の場合(#11No分岐)、左右の測距センサ10を用いた車両側方の距離計測が行われ、側方距離データ生成部23から側方距離データが出力される(#13)。さらに、この側方距離データの計測時点で、自車位置データ生成部21から自車位置データを出力させ、自車方位データ生成部22から自車方位データを出力させる(#14)。出力された側方距離データ、自車位置データ、自車方位データは、図3で示すように、タイムスタンプとともに相互リンクされ、側方距離情報として作成される(#15)。作成された側方距離情報はメモリに一時的に格納される(#16)。このステップ#13〜ステップ#16までの側方距離情報を作成してメモリに格納する処理は、所定時間間隔毎に又は所定走行距離毎に行われる。
【0026】
但し、これからこの駐車場に駐車しようとする進入車両から、側方距離情報の送信を要求されると、メモリに格納されている側方距離情報をその進入車両に送信することになる。従って、側方距離情報を作成してメモリに格納する処理の間において、定期的又は所定の間隔で、進入車両からの側方距離情報送信要求が発生していないかどうかがチェックされる(#17)。要求がなければ(#17No分岐)、再びステップ#11に戻って、上述した処理が繰り返される。要求があれば(#17Yes分岐)、要求元別に側方距離情報の送信内容を管理する要求元別管理リストを更新し(#18)、要求元に対して必要な側方距離情報を送信する(#19)。側方距離情報の送信が完了すると再びステップ#11に戻る。
【0027】
この退出車両が駐車場の外に出てしまった場合(#11Yes分岐)、進入車両に対する側方距離情報の送信の必要性がなくなるので、要求元別管理リストの内容を消去して(#12)、この退出ルーチンを終了する。
【0028】
進入ルーチンでは、進入車両がこの駐車支援システムによる駐車支援の実行を要求しているかどうかが、例えば、運転者によるボタン操作などによってチェックされる(#21)。この駐車支援を望まない場合(#21No分岐)、この進入ルーチンは終了する。この駐車支援の実行が要求された場合(#21Yes分岐)、退出車両によって作成され送られてきた側方距離情報を用いた駐車支援が以下のように実行される。まず、通信系4を介しての車車間通信によって、退出車両に対する側方距離情報要求を行い、側方距離情報取得処理を行う(#22)。少なくとも1台の退出車両から側方距離情報を受け取ると、続いて、空間マップ作成部32による空間マップ作成処理が行われる(#23)。さらに、駐車状態情報作成部33による駐車状態情報作成処理が行われる(#24)。駐車状態情報が作成されると、この駐車状態情報から、利用しようとする駐車場の一定領域内における、走行路、駐車空きスペース、駐車済みスペースの配置を把握することができる。従って、駐車支援情報作成部34aは、自車の自車位置データ生成部21から得られる自車位置を用いて、最短駐車空きスペース、あるいは十分にスペース的に余裕のある駐車空きスペースまでの案内情報を駐車支援情報として作成する(#25)。駐車支援情報作成部34aで作成された駐車支援情報は報知部34bによって取り扱われ、音声での案内又は視覚的な案内を通じて進入車両を適正な駐車空きスペースに導く報知処理が行われる(#26)。なお、退出車両から受け取る側方距離情報の情報量が不十分な場合、局地的な空間マップしか作成されず、十分な駐車支援ができないので、ステップ#21に戻り、駐車支援実行が中止されるまで、上記処理が繰り返される。
【0029】
受け取った側方距離情報に基づいて実行される、空間マップ処理、駐車状態情報作成処理、駐車支援情報作成処理は、その処理過程を図解した図6を用いて説明した通りである。ここでは、本発明の重要な特徴でもある空間マップ処理の一例を図10のフローチャートを用いてさらに詳しく説明する。
【0030】
退出車両から受け取った側方距離情報を時系列の早い順番で取り込んで、まず自車位置データと方位データを読み取る(#31)。経度と緯度を縦軸と横軸とする座標系をもつマップに自車位置をラベリングする(#32)。さらに、左距離値を読み取る(#33)。読み取った左距離値を予め設定されている最大値と比較し(#34)、最大値を超えている左距離値に対しては(#34Yes分岐)、その左距離値を最大値に限定する調整を行う(#35)。これは、限定されたサイズで定義されている空間マップが大きすぎる距離値を取り扱うことを避けるためである。次に、この左距離値を用いて、その測距時の自車位置を起点として車両走行の向きに直交する左側方向の障害物(反射物)なしの領域をラベリングする(#36)。このラベリング処理は図5(a)で模式的に説明されている。左側方向の障害物なし領域のラベリングが終わると右側方向の障害物なし領域のラベリングを行う。右距離値を読み取り(#37)、読み取った右距離値を予め設定されている最大値と比較し(#38)、最大値を超えている右距離値に対しては(#38Yes分岐)、その右距離値を最大値に限定する調整を行う(#39)。この右距離値を用いて、今度は車両走行の向きに直交する右側方向の障害物(反射物)なしの領域をラベリングする(#40)。このステップ#31〜#40までの処理が、受け取った側方距離情報を全て処理してしまうまで行われる(#41)。但し、側方距離情報が複数の退出車両から受け取っていた場合や、同一の退出車両が同じ走行路を重複走行した場合には、同一の自車位置において複数種類の側方距離情報が得られる。そのため、予め、タイムスタンプを参照して、最新の情報を優先して取り込むような構成を採用してもよい。
【0031】
車両軌跡(自車位置の軌跡)に沿っての、自車位置のラベリング及びその左右方向の障害物なし領域のラベリングが終了すると、その車両軌跡から走行路の幅を算定する(#42)。走行路の幅として前設定された値を用いてもよいが、より正確な値が要求される場合には、ステップ#31〜#40までの処理で作成された空間マップの左右の距離値から推定するとよい。つまり、一般的な駐車場の走行路の1/2幅を基準値として、その基準値に近似する頻繁に生じている左右の距離値を抽出すると、その抽出した左右の距離値が自車位置から駐車中車両までの距離、つまり走行路は幅であるとみなせる。走行路の幅が決定されると、空間マップに対してこの走行路の幅を用いて車両軌跡に沿って車両走行路のエリアをラベリングする(#43)。これにより、図5(b)で模式的に示されたような空間マップが作成される。
〔別実施形態〕
【0032】
(1)
上述した実施形態では、図3に示すように側方距離情報には、自車位置と自車方位と側方距離の各データがそれぞれリンクされた形態で含まれていた。しかしながら、自車位置が経緯度で提示されている場合、経時的な自車位置から車両走行軌跡をプロットすることで、車両走行の向きを算定することが可能である。このため、本発明の別実施形態として側方距離情報から自車方位を省略することができる。
【0033】
(2)
図4や図5を用いた空間マップの作成手順では、退出車両が方向転換のために曲線走行している際に計測された側方距離データも利用していたが、そのような側方距離データを取り扱うためには走行中車体方位の正確な計測値が要求される。複数の退出車両からの側方距離データが期待できるなら、直線走行時に計測された側方距離データだけを取り扱っても、満足できる空間マップを作成すること可能である。このため、本発明の別実施形態として、直線走行時に計測された側方距離データだけを用いて空間マップの作成を行う構成を採用することができる。
【0034】
(3)
上述した実施形態では、各車両に駐車支援システムが搭載されており、退出車両と進入車両とによって動作させる機能要素が区分けされていた。つまり、駐車場から退出する退出車両は、駐車支援システムのうちのセンサ系1と計測系2との各構成要素を動作させ、通信系4を介して、進入車両に側方距離情報を送信していた。また、これから駐車しようとする進入車両は、退出車両から側方距離情報を受信して、評価系3の各構成要素を動作させ、駐車を支援していた。しかしながら、この退出車両と進入車両とによって動作させる機能要素の区分けは、上記以外も考えられる。例えば、退出車両がセンサ系1と計測系2とだけでなく、評価系3の側方距離情報取得部31と、空間マップ作成部32の機能も動作させ、作成された空間マップを進入車両に通信系4を介して送信してもよい。さらには、退出車両が空間マップから駐車状態情報作成部33の機能までも動作させ、作成された駐車状態情報を進入車両に通信系4を介して送信してもよい。いずれの場合も、進入車両は、残された処理だけを行うことで駐車支援のための情報を作り出すことになる。
【0035】
(4)
これまでの説明では、退出車両のみが側方距離情報などを作成し、駐車しようとする進入車両に送っていたが、もちろん、進入車両自体もその駐車場内を走行中に側方距離情報などを作成し、その情報を自車又は他の駐車しようとする進入車両に使わせるような構成を採用してもよい。
【0036】
(5)
これまでの説明では、本発明による駐車支援システムは、車両に搭載されていたが、この駐車支援システムの一部の構成要素を、例えば駐車場に設置された駐車場コントローラ100に備えることができる。そのような別実施形態が図11に示されている。この別実施形態では、車両はセンサ系1と計測系2と報知部34bと通信系だけを備えている。その代わりに、駐車場コントローラ100が、側方距離情報取得部31、空間マップ作成部32、駐車状態情報作成部3、駐車支援情報作成部34a、通信系4を備えている。駐車場から退出する退出車両は、センサ系1と計測系2との各構成要素を動作させ、通信系4を介して、駐車場コントローラ100に側方距離情報を送信する。駐車場コントローラ100は、受け取った側方距離情報に基づいて、空間マップ、駐車状態情報、駐車支援情報を作成する。これから駐車しようとする進入車両は、駐車場コントローラ100によって作成された駐車支援情報を報知部34bで処理して、モニタ8又はスピーカ9を通じて報知する。これにより、進入車両は駐車支援される。この別実施形態では、いくつかの構成要素、つまり側方距離情報取得部31、空間マップ作成部32、駐車状態情報作成部3、駐車支援情報作成部34aが共通化され、駐車場コントローラ100に備えられるので、車両がこれらの構成要素を搭載する必要がなくなるという利点がある。
【0037】
(6)
また、車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした情報である駐車状態情報は、そのまま画像表示するだけでも、これから駐車しようとする車両のための駐車支援となる。その場合は、駐車支援情報作成部34aを省略することができる。このことは、図11で示した別実施形態において、特別な利点を持つことができる。つまり、駐車場コントローラ100に大型ディスプレイユニット110を接続しておき、駐車状態情報を表示することで、これから駐車しようとする車両の駐車支援を一括的に行うことができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による駐車支援システムを搭載した車両を説明するための模式図
【図2】駐車支援システムの概略構成を示すブロック図
【図3】側方距離情報のデータ構造を説明するための模式図
【図4】側方距離情報を二次元平面に展開する様子を説明する模式図
【図5】空間マップの作成手順を説明する模式図
【図6】側方距離情報に基づいて駐車支援情報が作成するまでを図解している模式図
【図7】駐車支援システムにおける処理の流れを示すフローチャート
【図8】退出ルーチンを示すフローチャート
【図9】進入ルーチンを示すフローチャート
【図10】空間マップ作成処理を示すフローチャート
【図11】駐車支援システムの概略構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0039】
1:センサ系
2:計測系
3:評価系
4:通信系
10:測距センサ
21:自車位置データ生成部
22:自車方位データ生成部
23:側方距離データ生成部
24:側方距離情報作成部
31:側方距離情報取得部
32:空間マップ作成部
33:駐車状態情報作成部
34:駐車状態情報提供部
34a:駐車支援情報作成部
34b:報知部
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場の駐車空きスペースを探し出し、その駐車空きスペースに車両を案内する駐車支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パーキングメータなどの駐車施設や道路幅を含む道路情報を予め用意し、道路を通行する車両の側方の物体までの側方距離を計測させ、車両の現在位置を検出し、予め記憶された車両の幅と計測された前記側方距離と検出された現在位置とに基づいて、道路の場所ごとの環境の形状を含む新たな道路情報を取得し、そのような道路情報を各車両間で情報交換することで駐車施設の空き状況を判断する技術が知られている(特許文献1参照)。この技術では、どこにどのような駐車施設があるかといった情報や道路幅などを含む道路情報を各車両で予め用意する必要がある。このような道路情報の収集には多大な費用がかかる。また、駐車施設などでは、そのレイアウトなどが頻繁に改変されがちなので、予め用意された情報がすぐに陳腐化してしまう。このような問題点のために、この技術の実用化はかなりのコスト的かつ技術的な負担を伴う。
【0003】
また、自車両が駐車しようとする駐車場内に駐停車されている他車両が取得した周辺画像や位置、向きを示す車両情報を車々間通信により取得して、取得した車両情報に基づいて自車両の上方の仮想視点から見たトップビュー画像を生成し、トップビュー画像により空きスペースを提示する技術も知られている(特許文献2参照)。この技術では、車両を誘導するための人員を持たない駐車場であっても、車両のモニタ画面に表示されるトップビュー画像を見ることで、運転者は、自車両を駐車するための空きスペースを容易に把握することができる。しかしながら、この技術は、多数の駐車中車両と駐車しようとする車両との間の画像データ伝送と画像データ処理とに基づいており、大容量データ伝送技術と高い演算能力を有するコンピュータとを必要とする。特に、駐車中車両にそのような高負荷な処理をさせることは消費電力の点から実用上の難点がある。
【0004】
さらに、駐車場の駐車空きスペースを案内するシステムとして、各車両に、他車両との間で通信を行う通信手段と、ユーザに案内情報を提供する表示手段と、ユーザが指示した情報を入力する情報入力手段と、当該車両の位置を検出する位置検出手段と、当該車両の向きを基準として左右各方向にある障害物までの距離をそれぞれ検出する距離検出手段と、他車両から受信したデータに基づいて当該他車両の駐車場内での位置と空きスペースの配置についてのマッピング処理を行うマッピング手段とが搭載されたものが知られている(特許文献3参照)。このシステムでは、駐車場において駐車目的で停車状態にある自車両から既に駐車中の複数の他車両に対し、自車両の車体幅のデータを送信する。このデータに応答して他車両から自車両に対して送られてきた、それぞれ位置検出手段により検出された当該他車両の位置のデータと距離検出手段により検出された当該他車両の左右各方向の距離のデータとに基づいてマッピング手段処理を行う。さらにマッピング結果から駐車可能な空きスペースを検索し、該検索した空きスペースの情報を前記表示手段の画面上に表示する。これにより、ユーザは駐車場のどこに駐車スペースがあるのかを認識することができ、当該駐車スペースまで自車両を誘導することが可能となる。しかしながら、このシステムでは、混んでいる駐車場で駐車空きスペースを見つけ出すためには、かなり多くの駐車済み車両からの距離データが必要となる可能性が高く、通信負荷が大きくなる。このことは、駐車済み車両に対して問題となる消費電力の負担を強いることになる。また、駐車済み車両1台からはその車両に隣接する領域の距離データが得られるだけなので、この駐車支援システムを搭載している駐車済み車両が少ないと広範囲での駐車空きスペースの探索が不能となる。さらに、その距離データから駐車可能な空きスペースを抽出する際に、走行路との区別が難しく、その演算処理の負担が大きい。
【0005】
【特許文献1】特開2002−288795号公報(段落番号0012−0037、図11)
【特許文献2】特開2005−326956号公報(段落番号0048−0058、図6)
【特許文献3】特開2004−240805号公報(段落番号0013−0015、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実状に鑑み、本発明の課題は、駐車場マップを予め用意せずとも、走行路と駐車空きスペースとの区別を行うことで、駐車場のどこに駐車可能な駐車空きスペースがあるのかを判定し、駐車しようとする車両を駐車空きスペースに導くことができる駐車支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明による駐車支援システムは、駐車場を走行中の車両における車両側方の外部物体までの計測距離を示す側方距離情報を順次取得する側方距離情報取得部と、前記側方距離情報に基づいて、前記走行中の車両によって規定される車両走行路を含む前記駐車場の空間マップを作成する空間マップ作成部と、前記空間マップに基づいて前記車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報を作成する駐車状態情報作成部と、駐車しようとする車両に前記駐車状態情報を提供する駐車状態情報提供部とを備える。
【0008】
この構成によれば、駐車場内の走行路を走行する車両おける車両側方に存在する外部物体までの計測距離を示す計測距離情報が順次取得されるので、この計測距離情報を二次元平面に展開すると、車両の走行軌跡を基準としてレーザ探索画面のようなスキャンイメージが得られる。従って、このスキャンイメージから車両の走行軌跡に基づいて車両走行路を取り除き、駐車に必要な面積を割り当てると、駐車空きスペースと駐車済みペースを把握することができる駐車状態情報を作成することができる。つまり、本発明による駐車支援システムでは、駐車場内の走行路を走行する車両の側方エリアにおける障害物ないしは反射物などの外部物体までの距離が計測されるので、車両走行路を確定するとともに、その周辺の物体探索イメージを作成することができる。これにより、駐車場マップを予め用意せずとも、走行路と駐車空きスペースとの区別が行われ、駐車場のどこに駐車可能な駐車空きスペースがあるのかを判定して、駐車しようとする車両を駐車空きスペースに導くことができる。
【0009】
また、本発明に係る駐車支援システムは、さらに、前記駐車状態情報作成部が複数の異なる走行中の車両からの前記側方距離情報による空間マップに基づいて駐車状態情報を作成し、その際同一区域でその情報に差違が生じている場合、前記側方距離情報の計測時点が遅い方の情報を優先することを特徴とする。この特徴によれば、異なる車両走行路に沿って得られた側方距離情報に基づいて作成された空間マップを重ね合わせていくことにより、1台の走行車両からでは不可能である広範囲の空間マップを作成する可能性が広がる。また、そのような空間マップの重ね合わせ時に、同一区域(単位区画)で異なる探索結果が示されている場合、計測時点の遅い方を優先することで、最新の駐車状態を作り出すことができる。
【0010】
さらに、本発明に係る駐車支援システムは、前記駐車状態情報提供部が前記駐車状態情報に基づいて駐車支援情報を作成し、前記駐車しようとする車両の長さ情報及び幅情報に基づいて前記駐車支援情報を報知することを特徴とする。この特徴によれば、車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報に基づいて、駐車しようとする車両の駐車に適した駐車空きスペースを抽出して、報知することができる。その際、前記駐車状態情報提供部が自車位置情報を利用することができるように構成されている場合、自車から最短距離にある駐車空きスペースを報知することもでき、予め用意された駐車場マップが無くとも、最適な駐車案内が実現となる。
【0011】
さらに、本発明に係る駐車支援システムは、前記駐車しようとする車両の空間マップ作成部が他の車両から送られてきた前記側方距離情報に基づいて前記空間マップを作成し、当該空間マップに基づいて前記駐車しようとする車両の駐車状態情報作成部が前記駐車状態情報を作成することを特徴とする。この特徴によれば、駐車しようとする車両が側方距離情報を作成する処理以外の処理を行うことになるので、駐車支援を必要とせずに駐車場を走行する車両、例えば駐車場を退出するために走行する車両での処理負担を最小にすることができる。もちろん、車両は駐車場に入る時に側方距離情報を受け取り、駐車場から出る時に側方距離情報を作成して他の車両に与えることになる。従って、演算負担を車両同士が分散し合うという観点からは、前記駐車しようとする車両の駐車状態情報作成部が他の車両から送られてきた空間マップに基づいて前記駐車状態情報を作成する実施形態も好ましい。その際、駐車場を出て行く車両によって作成された空間マップを、何らかの中継ステーションで受け取り、蓄積しておき、次に駐車場に入ってくる車両にその蓄積された空間マップを送信することも好都合である。この場合、駐車場を出て行く車両と駐車場に入ってくる車両との時間差を中継ステーションが吸収するので、この駐車支援システムがさらに効果的に運用されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に本発明による1つの実施形態に係わる駐車支援システムを採用した車両の模式図が示され、図2にその駐車支援システムの概略構成が示されている。駐車支援システムは、各種センサからなるセンサ系1と、センサ系1からの信号に基づいて各種計測を行う計測系2と、計測系2の計測結果に基づいて所望のデータ評価を行う評価系3と、データ伝送を行う通信系4とから構成されている。この実施の形態では、各車両(自動車)はこの駐車支援システム一式を搭載している。後で詳しく説明されるが、駐車場から退出する車両は、センサ系1と計測系2の機能を用いて、駐車位置から駐車場出口までの走行過程における車両側方周辺の障害物探索情報である側方距離情報を生成する。通信系4を用いることでこの側方距離情報は駐車場に進入してきた車両の要求に応じてこの進入車両に与えられる。進入車両は、与えられた側方距離情報を評価系3の機能を用いて処理し、どこに駐車空きスペースがあるかを示す駐車状態情報を作成する。進入車両は、駐車状態情報に基づいて駐車空きスペースまで走行し、そこに駐車することができる。
【0013】
走行中の車両周辺の障害物などの外部物体、例えば駐車場の壁体や駐車車両の探索は、測距センサ10によって行われる。測距センサ10は、超音波を用いたものでも、レーザを用いたものでもよく、その形式は限定されない。図1から明らかなように、測距センサ1として、左測距センサ10aと右測距センサ10bが用いられている。左測距センサ10aは車両の長手方向に直交する車両左側方向が伝播中心軸となるように車体の左側面に取り付けられている。同様に、右測距センサ10bは車両の長手方向に直交する車両右側方向が伝播中心軸となるように車体の右側面に取り付けられている。
【0014】
図2に示すように、センサ系1には、ほかに、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)11、車速パルスを出力する車速センサ12、加速度情報を出力する加速度センサ13、車両の向きを示す方位情報を出力するジャイロセンサ14が含まれている。
【0015】
計測系2には、自車位置データ生成部21、自車方位データ生成部22、側方計測距離データ生成部23、側方距離情報作成部24が含まれている。自車位置データ生成部21は、GPS11、車速センサ12、加速度センサ13、ジャイロセンサ14からの信号入力に応じて、経度値と緯度値からなる自車位置データを生成する。この自車位置データはカーナビゲーションシステムで利用されるものなので、この自車位置データ生成部21は、ナビゲーションシステムと兼用することができる。自車方位データ生成部22は、GPS11及びジャイロセンサ14からの信号入力に基づいて、車両の進行方向の向きを計測し、その方位値を生成する。
【0016】
側方計測距離データ生成部23は、左測距センサ10aと右測距センサ10bからの信号入力に応じて、車両中心から車両左側方に存在する障害物までの距離と車両右側方に存在する障害物までの距離をそれぞれ計測する。各計測値はそれぞれ左距離値と右距離値として出力される。例えば、超音波方式の場合、測距センサ10から送信された超音波パルスが障害物に衝突し、反射されてくる反射パルスの戻り時間が計測される。この計測時間と音速、及び各測距センサ10から車体中心までの距離に基づいて、車体中心から左方障害物(反射物)までの左距離値と、車体中心から左方障害物(反射物)までの右距離値が算出される。
【0017】
側方計測距離データ生成部23から出力される左距離値と右距離値とは、計測された時点の車両位置と関係づけられながら車両の走行とともに順次生成されていくことで、平面的な広がりを有する障害物探索データとして利用することになる。このため、側方距離情報作成部24は、図3で模式的に示されているように、左距離値と右距離値とからなる側方距離データを、タイムスタンプ、自車位置データ、さらには自車方位データと関係(リンク)づけて、側方距離情報として出力する。タイムスタンプは、側方距離情報の経時的な順番を示す指標として用いられるが、他のデータで兼用できる場合には省略してもよい。側方距離情報作成部24から順次出力される側方距離情報は、メモリに一時格納される。
【0018】
評価系3には、側方距離情報取得部31、空間マップ作成部32、駐車状態情報作成部33、駐車状態情報提供部34が含まれている。側方距離情報取得部31は、側方距離情報作成部24によって順次生成された側方距離情報を受け取り、後の処理に好都合な形態でメモリ上に展開する。
【0019】
空間マップ作成部32は、メモリ上に展開されている側方距離情報の内容を読み取り、この側方距離情報を生成した車両が駐車場内を走行した走行路を含む駐車場の空間マップを作成する。図4に、退出車両の退出走行に伴って順次生成された側方距離情報が空間マップの作成のために二次元平面に展開された形態が模式的に示されている。この図4から理解できるように、車両位置において進行方向に対して直交する方向で右距離値と左距離値で示される線分を描画することを車両走行に伴って繰り返していくと、レーダ画面のような障害物探索イメージが得られる。この障害物探索イメージにおいて、線分が通過しているエリアが障害物なしのエリアであると見なすことができる。また、経時的な車両位置の変動から車両の走行軌跡が得られるが、この走行軌跡を基準として、左右の所定距離を通路幅と見なすと、車両の走行路のエリアを規定することができる。例えば、走行している車両の走行路に面して駐車している駐車車両からはほぼ一定の値をもった距離値が得られるので、この距離値を利用して車両中心から走行路側端までの距離と見なして、前記所定距離とすることができる。ある程度混んだ駐車場内を走行した場合には、側方左右の距離値として頻繁に生じる最小距離値が上記所定距離となる。このような所定距離を用いて規定される走行路のエリアを、障害物なしのエリアから取り除くと、駐車場における走行路を除いた障害物なしのエリアだけが区分けされた空間マップが作り出される。なお、このように、側方距離情報から障害物探索イメージをコンピュータ処理する場合には、図5に示すように、例えば経度及び緯度を縦軸と横軸とする座標系を作成し、その座標面に所定の単位区画を定義しておく。まず、経時的に変動する車両位置に対応する単位区画をラベリングする(図5(a)では黒三角で示されている)。さらに、左距離値に基づいて規定される線分が通過する単位区画をラベリングする(図5(a)ではペケで示されている)。同様に、右距離値に基づいて規定される線分が通過する単位区画をラベリングする(図5では白丸で示されている)。さらに、上述したように、走行路のエリアが規定されると、そのエリアの単位区画を別な符号、図5(b)では白四角で書き換えるとよい。これにより、空間マップを、データ容量が極めて小さい行列データで作成することができる。
【0020】
駐車状態情報作成部33は、空間マップ作成部32によって作成された空間マップに基づいて車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報を作成する。空間マップには、走行路以外の障害物なしのエリアを把握できるので、その障害物なしのエリアのうち、走行路に面しているとともにこの進入車両が駐車可能な面積を持つ領域を駐車空きスペースと見なすことができる。また、障害物エリアの中で、ほぼ車両の外形輪郭に類似する領域を駐車済みスペースと見なすことができる。このようにして作成された駐車状態情報から、駐車場における特定退出車両の走行軌跡に沿った車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを把握することができる。
【0021】
なお、側方距離情報を複数の退出車両から受け取った場合、複数の空間マップ、結果的には複数の駐車状態情報を作成することができる。これらの複数の空間マップ又は駐車状態情報を重ね合わせることで、駐車場のより多くのエリアをカバーする空間マップ又は駐車状態情報を作成することも可能となる。
【0022】
駐車状態情報提供部34は、駐車状態情報作成部33で作成された駐車状態情報をこれから駐車しようとする車両ないしはその車両に運転者に提供するものである。この実施形態では、駐車状態情報提供部34は、駐車支援情報作成部34aと報知部35bを備えている。駐車支援情報作成部34aは、駐車状態情報作成部33で作成された駐車状態情報と、この進入車両の自車位置データとから最も近い駐車空きスペースを推薦駐車位置として車両を案内する情報とを作成する。報知部34bは、駐車支援情報に基づいて、推薦される駐車位置を運転者にモニタ8を通じて画像情報の形態で、又はスピーカ9を通じて音声情報の形態で報知する。
【0023】
複数の退出車両から受け取った側方距離情報に基づいて最終的な駐車支援情報を作成するまでの、上述した評価系3による処理が図6に図解されている。ここでは、まず退出車両Aから受け取った側方距離情報から空間マップAが作成される。さらに、退出車両Bから受け取った側方距離情報から空間マップBが作成される。次に、空間マップAと空間マップBとを統合して空間マップA+Bを作成する。なお、図6では、2台の退出車両AとBとから側方距離情報を受け取っているだけであるが、さらに多くの退出車両から側方距離情報を受け取った場合、より広範囲の空間マップが作成される可能性が高くなる。なお、異なる複数の空間マップを統合する際に、同じ単位区画で異なる符号が記されている場合、つまり一方では障害物有りのエリアで他方では障害物なしのエリアとなっている場合、絶対時間を用いたタイムスタンプに基づいて計測時点の遅い方を優先するような構成にすることが好ましい。これは、計測時点の遅い情報が現時点の状態を表している可能性が高いからである。
【0024】
上述したように構成された駐車支援システムにおける処理の流れを、図7〜10に示されたフローチャートを用いて、以下に説明する。
まず、車両が駐車場(駐車場へのアクセス道路を含む)内に入っているかどうかがチェックされる。このチェックは、カーナビゲーションなどによる自動判定の結果に基づいてもよいし、駐車場内であることを指示する運転者によるマニュアル操作に基づいてもよい。このチェックで、車両が駐車場外であると判定された場合(#01No分岐)、この駐車支援制御は行わないとして終了する。車両が駐車場内であると判定された場合(#01Yes分岐)、さらにこの車両が駐車場に進入する進入モードであるか、又は駐車場から退出する退出モードであるがチェックされる。このチェックも、操作ボタンなどを通じた運転者によるマニュアル操作に基づいてもよいし、車両運転状況から自動判定された結果に基づいてもよい。退出モードの場合には、図8で示すような退出ルーチン(#10)が実行され、進入モードの場合には、図9で示すような進入ルーチン(#20)が実行される。
【0025】
退出ルーチンでは、まず、既にこの退出車両が駐車場から出たかどうかがチェックされる(#11)。駐車場内の場合(#11No分岐)、左右の測距センサ10を用いた車両側方の距離計測が行われ、側方距離データ生成部23から側方距離データが出力される(#13)。さらに、この側方距離データの計測時点で、自車位置データ生成部21から自車位置データを出力させ、自車方位データ生成部22から自車方位データを出力させる(#14)。出力された側方距離データ、自車位置データ、自車方位データは、図3で示すように、タイムスタンプとともに相互リンクされ、側方距離情報として作成される(#15)。作成された側方距離情報はメモリに一時的に格納される(#16)。このステップ#13〜ステップ#16までの側方距離情報を作成してメモリに格納する処理は、所定時間間隔毎に又は所定走行距離毎に行われる。
【0026】
但し、これからこの駐車場に駐車しようとする進入車両から、側方距離情報の送信を要求されると、メモリに格納されている側方距離情報をその進入車両に送信することになる。従って、側方距離情報を作成してメモリに格納する処理の間において、定期的又は所定の間隔で、進入車両からの側方距離情報送信要求が発生していないかどうかがチェックされる(#17)。要求がなければ(#17No分岐)、再びステップ#11に戻って、上述した処理が繰り返される。要求があれば(#17Yes分岐)、要求元別に側方距離情報の送信内容を管理する要求元別管理リストを更新し(#18)、要求元に対して必要な側方距離情報を送信する(#19)。側方距離情報の送信が完了すると再びステップ#11に戻る。
【0027】
この退出車両が駐車場の外に出てしまった場合(#11Yes分岐)、進入車両に対する側方距離情報の送信の必要性がなくなるので、要求元別管理リストの内容を消去して(#12)、この退出ルーチンを終了する。
【0028】
進入ルーチンでは、進入車両がこの駐車支援システムによる駐車支援の実行を要求しているかどうかが、例えば、運転者によるボタン操作などによってチェックされる(#21)。この駐車支援を望まない場合(#21No分岐)、この進入ルーチンは終了する。この駐車支援の実行が要求された場合(#21Yes分岐)、退出車両によって作成され送られてきた側方距離情報を用いた駐車支援が以下のように実行される。まず、通信系4を介しての車車間通信によって、退出車両に対する側方距離情報要求を行い、側方距離情報取得処理を行う(#22)。少なくとも1台の退出車両から側方距離情報を受け取ると、続いて、空間マップ作成部32による空間マップ作成処理が行われる(#23)。さらに、駐車状態情報作成部33による駐車状態情報作成処理が行われる(#24)。駐車状態情報が作成されると、この駐車状態情報から、利用しようとする駐車場の一定領域内における、走行路、駐車空きスペース、駐車済みスペースの配置を把握することができる。従って、駐車支援情報作成部34aは、自車の自車位置データ生成部21から得られる自車位置を用いて、最短駐車空きスペース、あるいは十分にスペース的に余裕のある駐車空きスペースまでの案内情報を駐車支援情報として作成する(#25)。駐車支援情報作成部34aで作成された駐車支援情報は報知部34bによって取り扱われ、音声での案内又は視覚的な案内を通じて進入車両を適正な駐車空きスペースに導く報知処理が行われる(#26)。なお、退出車両から受け取る側方距離情報の情報量が不十分な場合、局地的な空間マップしか作成されず、十分な駐車支援ができないので、ステップ#21に戻り、駐車支援実行が中止されるまで、上記処理が繰り返される。
【0029】
受け取った側方距離情報に基づいて実行される、空間マップ処理、駐車状態情報作成処理、駐車支援情報作成処理は、その処理過程を図解した図6を用いて説明した通りである。ここでは、本発明の重要な特徴でもある空間マップ処理の一例を図10のフローチャートを用いてさらに詳しく説明する。
【0030】
退出車両から受け取った側方距離情報を時系列の早い順番で取り込んで、まず自車位置データと方位データを読み取る(#31)。経度と緯度を縦軸と横軸とする座標系をもつマップに自車位置をラベリングする(#32)。さらに、左距離値を読み取る(#33)。読み取った左距離値を予め設定されている最大値と比較し(#34)、最大値を超えている左距離値に対しては(#34Yes分岐)、その左距離値を最大値に限定する調整を行う(#35)。これは、限定されたサイズで定義されている空間マップが大きすぎる距離値を取り扱うことを避けるためである。次に、この左距離値を用いて、その測距時の自車位置を起点として車両走行の向きに直交する左側方向の障害物(反射物)なしの領域をラベリングする(#36)。このラベリング処理は図5(a)で模式的に説明されている。左側方向の障害物なし領域のラベリングが終わると右側方向の障害物なし領域のラベリングを行う。右距離値を読み取り(#37)、読み取った右距離値を予め設定されている最大値と比較し(#38)、最大値を超えている右距離値に対しては(#38Yes分岐)、その右距離値を最大値に限定する調整を行う(#39)。この右距離値を用いて、今度は車両走行の向きに直交する右側方向の障害物(反射物)なしの領域をラベリングする(#40)。このステップ#31〜#40までの処理が、受け取った側方距離情報を全て処理してしまうまで行われる(#41)。但し、側方距離情報が複数の退出車両から受け取っていた場合や、同一の退出車両が同じ走行路を重複走行した場合には、同一の自車位置において複数種類の側方距離情報が得られる。そのため、予め、タイムスタンプを参照して、最新の情報を優先して取り込むような構成を採用してもよい。
【0031】
車両軌跡(自車位置の軌跡)に沿っての、自車位置のラベリング及びその左右方向の障害物なし領域のラベリングが終了すると、その車両軌跡から走行路の幅を算定する(#42)。走行路の幅として前設定された値を用いてもよいが、より正確な値が要求される場合には、ステップ#31〜#40までの処理で作成された空間マップの左右の距離値から推定するとよい。つまり、一般的な駐車場の走行路の1/2幅を基準値として、その基準値に近似する頻繁に生じている左右の距離値を抽出すると、その抽出した左右の距離値が自車位置から駐車中車両までの距離、つまり走行路は幅であるとみなせる。走行路の幅が決定されると、空間マップに対してこの走行路の幅を用いて車両軌跡に沿って車両走行路のエリアをラベリングする(#43)。これにより、図5(b)で模式的に示されたような空間マップが作成される。
〔別実施形態〕
【0032】
(1)
上述した実施形態では、図3に示すように側方距離情報には、自車位置と自車方位と側方距離の各データがそれぞれリンクされた形態で含まれていた。しかしながら、自車位置が経緯度で提示されている場合、経時的な自車位置から車両走行軌跡をプロットすることで、車両走行の向きを算定することが可能である。このため、本発明の別実施形態として側方距離情報から自車方位を省略することができる。
【0033】
(2)
図4や図5を用いた空間マップの作成手順では、退出車両が方向転換のために曲線走行している際に計測された側方距離データも利用していたが、そのような側方距離データを取り扱うためには走行中車体方位の正確な計測値が要求される。複数の退出車両からの側方距離データが期待できるなら、直線走行時に計測された側方距離データだけを取り扱っても、満足できる空間マップを作成すること可能である。このため、本発明の別実施形態として、直線走行時に計測された側方距離データだけを用いて空間マップの作成を行う構成を採用することができる。
【0034】
(3)
上述した実施形態では、各車両に駐車支援システムが搭載されており、退出車両と進入車両とによって動作させる機能要素が区分けされていた。つまり、駐車場から退出する退出車両は、駐車支援システムのうちのセンサ系1と計測系2との各構成要素を動作させ、通信系4を介して、進入車両に側方距離情報を送信していた。また、これから駐車しようとする進入車両は、退出車両から側方距離情報を受信して、評価系3の各構成要素を動作させ、駐車を支援していた。しかしながら、この退出車両と進入車両とによって動作させる機能要素の区分けは、上記以外も考えられる。例えば、退出車両がセンサ系1と計測系2とだけでなく、評価系3の側方距離情報取得部31と、空間マップ作成部32の機能も動作させ、作成された空間マップを進入車両に通信系4を介して送信してもよい。さらには、退出車両が空間マップから駐車状態情報作成部33の機能までも動作させ、作成された駐車状態情報を進入車両に通信系4を介して送信してもよい。いずれの場合も、進入車両は、残された処理だけを行うことで駐車支援のための情報を作り出すことになる。
【0035】
(4)
これまでの説明では、退出車両のみが側方距離情報などを作成し、駐車しようとする進入車両に送っていたが、もちろん、進入車両自体もその駐車場内を走行中に側方距離情報などを作成し、その情報を自車又は他の駐車しようとする進入車両に使わせるような構成を採用してもよい。
【0036】
(5)
これまでの説明では、本発明による駐車支援システムは、車両に搭載されていたが、この駐車支援システムの一部の構成要素を、例えば駐車場に設置された駐車場コントローラ100に備えることができる。そのような別実施形態が図11に示されている。この別実施形態では、車両はセンサ系1と計測系2と報知部34bと通信系だけを備えている。その代わりに、駐車場コントローラ100が、側方距離情報取得部31、空間マップ作成部32、駐車状態情報作成部3、駐車支援情報作成部34a、通信系4を備えている。駐車場から退出する退出車両は、センサ系1と計測系2との各構成要素を動作させ、通信系4を介して、駐車場コントローラ100に側方距離情報を送信する。駐車場コントローラ100は、受け取った側方距離情報に基づいて、空間マップ、駐車状態情報、駐車支援情報を作成する。これから駐車しようとする進入車両は、駐車場コントローラ100によって作成された駐車支援情報を報知部34bで処理して、モニタ8又はスピーカ9を通じて報知する。これにより、進入車両は駐車支援される。この別実施形態では、いくつかの構成要素、つまり側方距離情報取得部31、空間マップ作成部32、駐車状態情報作成部3、駐車支援情報作成部34aが共通化され、駐車場コントローラ100に備えられるので、車両がこれらの構成要素を搭載する必要がなくなるという利点がある。
【0037】
(6)
また、車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした情報である駐車状態情報は、そのまま画像表示するだけでも、これから駐車しようとする車両のための駐車支援となる。その場合は、駐車支援情報作成部34aを省略することができる。このことは、図11で示した別実施形態において、特別な利点を持つことができる。つまり、駐車場コントローラ100に大型ディスプレイユニット110を接続しておき、駐車状態情報を表示することで、これから駐車しようとする車両の駐車支援を一括的に行うことができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による駐車支援システムを搭載した車両を説明するための模式図
【図2】駐車支援システムの概略構成を示すブロック図
【図3】側方距離情報のデータ構造を説明するための模式図
【図4】側方距離情報を二次元平面に展開する様子を説明する模式図
【図5】空間マップの作成手順を説明する模式図
【図6】側方距離情報に基づいて駐車支援情報が作成するまでを図解している模式図
【図7】駐車支援システムにおける処理の流れを示すフローチャート
【図8】退出ルーチンを示すフローチャート
【図9】進入ルーチンを示すフローチャート
【図10】空間マップ作成処理を示すフローチャート
【図11】駐車支援システムの概略構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0039】
1:センサ系
2:計測系
3:評価系
4:通信系
10:測距センサ
21:自車位置データ生成部
22:自車方位データ生成部
23:側方距離データ生成部
24:側方距離情報作成部
31:側方距離情報取得部
32:空間マップ作成部
33:駐車状態情報作成部
34:駐車状態情報提供部
34a:駐車支援情報作成部
34b:報知部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場を走行中の車両における車両側方の外部物体までの計測距離を示す側方距離情報を順次取得する側方距離情報取得部と、
前記側方距離情報に基づいて、前記走行中の車両によって規定される車両走行路を含む前記駐車場の空間マップを作成する空間マップ作成部と、
前記空間マップに基づいて前記車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報を作成する駐車状態情報作成部と、
駐車しようとする車両に前記駐車状態情報を提供する駐車状態情報提供部と、
を備える駐車支援システム。
【請求項2】
前記駐車状態情報作成部は複数の異なる走行中の車両からの前記側方距離情報による空間マップに基づいて駐車状態情報を作成し、その際同一区域でその情報に差違が生じている場合、前記側方距離情報の計測時点が遅い方の情報を優先する請求項1による駐車支援システム。
【請求項3】
前記駐車状態情報提供部は前記駐車状態情報に基づいて駐車支援情報を作成し、前記駐車しようとする車両の長さ情報及び幅情報に基づいて前記駐車支援情報を報知する請求項1又は2による駐車支援システム。
【請求項4】
前記駐車状態情報提供部は前記駐車状態情報に基づいて駐車支援情報を作成し、前記駐車状態情報と前記駐車しようとする車両の位置情報とに基づいて駐車空きスペースへの案内情報を前記駐車支援情報として報知する請求項1から3のいずれか一項による駐車支援システム。
【請求項5】
前記駐車しようとする車両の空間マップ作成部が他の車両から送られてきた前記側方距離情報に基づいて前記空間マップを作成し、当該空間マップに基づいて前記駐車しようとする車両の駐車状態情報作成部が前記駐車状態情報を作成する請求項1か4のいずれか一項による駐車支援システム。
【請求項6】
前記駐車しようとする車両の駐車状態情報作成部が他の車両から送られてきた空間マップに基づいて前記駐車状態情報を作成する請求項1から4のいずれか一項による駐車支援システム。
【請求項1】
駐車場を走行中の車両における車両側方の外部物体までの計測距離を示す側方距離情報を順次取得する側方距離情報取得部と、
前記側方距離情報に基づいて、前記走行中の車両によって規定される車両走行路を含む前記駐車場の空間マップを作成する空間マップ作成部と、
前記空間マップに基づいて前記車両走行路と駐車空きスペースと駐車済みスペースとを区分けした駐車状態情報を作成する駐車状態情報作成部と、
駐車しようとする車両に前記駐車状態情報を提供する駐車状態情報提供部と、
を備える駐車支援システム。
【請求項2】
前記駐車状態情報作成部は複数の異なる走行中の車両からの前記側方距離情報による空間マップに基づいて駐車状態情報を作成し、その際同一区域でその情報に差違が生じている場合、前記側方距離情報の計測時点が遅い方の情報を優先する請求項1による駐車支援システム。
【請求項3】
前記駐車状態情報提供部は前記駐車状態情報に基づいて駐車支援情報を作成し、前記駐車しようとする車両の長さ情報及び幅情報に基づいて前記駐車支援情報を報知する請求項1又は2による駐車支援システム。
【請求項4】
前記駐車状態情報提供部は前記駐車状態情報に基づいて駐車支援情報を作成し、前記駐車状態情報と前記駐車しようとする車両の位置情報とに基づいて駐車空きスペースへの案内情報を前記駐車支援情報として報知する請求項1から3のいずれか一項による駐車支援システム。
【請求項5】
前記駐車しようとする車両の空間マップ作成部が他の車両から送られてきた前記側方距離情報に基づいて前記空間マップを作成し、当該空間マップに基づいて前記駐車しようとする車両の駐車状態情報作成部が前記駐車状態情報を作成する請求項1か4のいずれか一項による駐車支援システム。
【請求項6】
前記駐車しようとする車両の駐車状態情報作成部が他の車両から送られてきた空間マップに基づいて前記駐車状態情報を作成する請求項1から4のいずれか一項による駐車支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−175962(P2009−175962A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12826(P2008−12826)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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