説明

骨伝導式音声出力装置

【課題】ユーザにとって、特別な構造設計を必要とせずに好みの音量を容易に得ることの出来る骨伝導式音声出力装置を提供する。
【解決手段】操作部と、骨伝導スピーカ部と、当該骨伝導スピーカ部の振動強度情報を記憶するメモリ部と、当該メモリ部に記憶されている振動強度情報に基づいて前記骨伝導スピーカ部の駆動を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記操作部による所定の操作が行われると、前記骨伝導スピーカ部を前記メモリ部に記憶する振動強度情報に基づいて試験振動させると共に、当該試験振動中に、前記操作部による試験振動強度の変更を可能とし、かつ、当該試験振動強度の変更が行われると、前記メモリ部の振動強度情報を変更された振動強度情報へ更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨伝導スピーカを備えている携帯電話機等の骨伝導式音声出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、骨伝導スピーカと呼ばれるスピーカが知られている。骨伝導スピーカは、音声を空気振動により伝播させて伝えるスピーカとは異なり、ユーザの身体に接触させ、当該ユーザの人骨を媒体にして、聴覚器官の蝸牛へ音を伝えるスピーカのことである。
【0003】
そして、このような骨伝導スピーカは、例えば、高齢者などの聴覚の弱い人のために電話機の受話スピーカとして用いられたりしている。
【0004】
ところで、現在このような骨伝導スピーカは、従来の使用用途とは異なった使われ方をされることがある。例えば、空気を媒体とした気導音と骨導音が混合しないという特性を利用し、騒音下においてもクリアに聞こえるスピーカとして、聴覚の弱い人向け以外のものにも利用されるようになってきている。具体的には、特許文献1及び特許文献2に示されるように、騒音下で使用されることの多い携帯電話機に搭載されることも増えてきている。
【特許文献1】特開2003―348208号公報
【特許文献2】特開2004―187031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで骨伝導スピーカから出力される音はユーザの頭部に対する接触のさせ方によって聞こえ方が異なる。即ち、頬骨などの頭蓋骨に当接させて骨振動を生成する際に、個人の頭蓋骨への当接の具合が異なるため、出力される音声に変動がないにもかかわらず、各人ごとに聞こえる音声がまったく異なった音量になってしまうといった問題が生じることとなる。そのため、ユーザ毎の聞こえ方に応じた構造設計がなされる事が望ましいが、高価なものとなってしまうため、個人個人のために専用で一つずつ構造設計を行うことは難しいものであった。
【0006】
本発明の目的は、ユーザにとって、特別な構造設計を必要とせずに好みの音量を容易に得ることの出来る骨伝導式音声出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、骨伝導式音声出力装置に係る解決手段として、操作部と、骨伝導スピーカ部と、当該骨伝導スピーカ部の振動強度情報を記憶するメモリ部と、当該メモリ部に記憶されている振動強度情報に基づいて前記骨伝導スピーカ部の駆動を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記操作部による所定の操作が行われると、前記骨伝導スピーカ部を前記メモリ部に記憶する振動強度情報に基づいて試験振動させると共に、当該試験振動中に、前記操作部による試験振動強度の変更を可能とし、かつ、当該試験振動強度の変更が行われると、前記メモリ部の振動強度情報を変更された振動強度情報へ更新する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、前記振動強度情報は、周波数帯毎に区分された複数の帯域別振動強度情報を含み、前記試験振動中に、前記操作部により前記複数の各帯域別振動強度情報をそれぞれ変更可能である、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、前記制御部は、前記試験振動以外での前記骨伝導スピーカ部による振動中に、前記操作部による振動強度情報の変更が行われると、前記複数の各帯域別振動強度情報を均等に増減するように変更する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明では、操作部と、骨伝導スピーカ部と、気体を介して音を伝播させるスピーカ部と、当該スピーカ部の音量情報と、当該音量情報に対応付けられた前記骨伝導スピーカ部の試験振動強度情報を記憶するメモリ部と、前記制御部と、を有し、前記制御部は、前記骨伝導スピーカ部の試験振動を行う際、前記メモリ部に保存される前記音量情報を参照し、当該音量情報に対応づけられた試験振動強度情報に基づいて試験振動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザにとって、特別な構造設計を施さずとも好みの音量を容易に得ることが可能な骨伝導式音声出力装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る骨伝導式音声出力装置の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。図1は、本発明の骨伝導式音声出力装置の一例である携帯電話機を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、携帯電話機1は、制御部2と、操作部3と、骨伝導スピーカ部4と、スピーカ部5と、メモリ部6と、マイク7と、通信部8と、表示部9と、を有している。
【0014】
操作部3は複数の入力キーを含んで構成される。複数の入力キーとは、例えば4方向に指示の出せる方向キー(少なくとも上下などの2方向を指示可能なキー:指示手段)3a、方向キー3aに隣接配置されるとともに方向キー3aにて選択した項目を決定指示する決定キー3b、その他電話をかけるときに使用するテンキー(図示略)や、発信キー(図示略)を含んで構成される。
【0015】
表示部9は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro luminescence)ディスプレイなどから構成され、後述する制御部2からの描画要求の信号を受けて各種表示を行う。例えば、方向キー3aにて選択される複数の選択項目を表示することが可能である。選択項目をリスト表示している場合は、方向キー3aを操作することで、ユーザは、複数の選択項目の中から1つの選択項目を指定することができる。このようにして項目が選択された状態で決定キー3bが押下されることで、制御部2に対して、項目の選択・実行が指示される。
【0016】
骨伝導スピーカ部4は、骨伝導用の振動子と、振動を生成するアクチュエータから成るスピーカの一種である。当該骨伝導スピーカ部4は、ユーザの頭蓋骨の一部に当接させた状態で制御部2などから供給される信号によって、振動子を振動させ、ユーザの骨を伝播することによって、当該ユーザへ音声伝達を行うものである。
【0017】
スピーカ部5は、振動板およびボイスコイルなどから構成され、音声を空気振動により出力するスピーカで、一般に広くスピーカとして認知されているものである。骨伝導スピーカ部4同様、制御部2などから供給される信号によって、振動板等を振動させ、ユーザへの音声伝達を行うものである。
【0018】
メモリ部6は、制御部2にて実行する各種処理のプログラムを格納しておくほか、音声出力のための音声データや、音声出力する際の出力すべき音量情報を特定するための音量情報や、骨伝導スピーカ部4内の振動子の振動の強弱を特定するための振動強度のほか、電話をかける際のアドレス帳なども記録する。
【0019】
マイク7は、ユーザの発した音声を集音し、集音した音声を電気的な音声信号に変換する。そして、この音声信号を制御部2へ出力するものである。
【0020】
通信部8は、制御部2の制御により、基地局を介した無線通信動作、たとえば、電話番号が入力されて操作部3に含まれる発信キーの押下に伴う発呼動作や、これに伴う音声信号の送受信、電子メールの送受信動作などにおける基地局とのデータの無線による送受信を行うものである。
【0021】
制御部2は、マイクロコンピュータを主体として構成され、携帯電話機1の全体の制御を行う。たとえば、制御部2は、通信部8における各種情報の無線によるデータの送受信の制御、表示部9への情報の表示制御、操作部3の入力情報に応じた処理、メモリ部6に対するアクセス制御を行う。
【0022】
制御部2は、さらに音声出力コントロール部2aと、骨伝導コントロール部2bと、試験信号生成部2cと、音声処理部(図示略)を有している。
【0023】
音声処理部は、通信部8から変調された音声信号、メモリ部6に格納された音声信号情報、マイク7からユーザの発する音声のいずれかを受け取り、それらを音声信号へと変換することが可能である。
【0024】
音声出力コントロール部2aは、前記音声処理部からの音声信号とメモリ部6等から音量の値を参照し、信号の増幅率を決定してスピーカ部5へ出力することが可能である。
【0025】
骨伝導コントロール部2bは、前記音声処理部からの音声信号とメモリ部6等から振動情報を参照し、信号の増幅率を決定して骨伝導スピーカ部4へ出力することが可能である。
【0026】
試験信号生成部2cは、操作部3から出力された所定の操作による指示を受けて、骨伝導コントロール部2bへ試験用の複数の帯域毎に試験信号である狭帯域ノイズを生成する。
【0027】
次に、本発明の実施の形態における携帯電話機1の動作について図2を用いて説明する。図2は、スピーカ部5の出力をメモリ部6へ保存する動作を説明するためのフローチャートである。
【0028】
最初に、制御部2がメモリ部6に格納されている音量の値を参照(全くの新規の設定の場合は、デフォルト値を用いる)する(ステップS201)。次に、音量の値の設定値を音声出力コントロール部2aへ設定し、前記音量の値の設定値を受けて、音声出力コントロール部2aはスピーカ部5を設定値に相当する強度で音声出力するように増幅率を調節する(ステップS202)。それと同時に、制御部2は表示部9へ図5に示した画像表示のように具体的数値の中から音量の値を表示させる。
【0029】
このとき、ユーザが音量を大きくしたいときは、方向キー3aの「上」を押下することにより、現在選択状態になっているボックス(この例では斜線で示した“3”のボックス)の1つ上のボックス(すなわち“4”)が選択状態となり、ユーザが音量を小さくしたいときは、方向キー3bの「下」を押下することにより、現在選択状態になっているボックス(“3”)の1つ下のボックス(すなわち“2”)が選択状態となる(ステップS203)。
【0030】
ステップS203の動作がなされる際、すなわち方向キー3aの「上」が押下された際には音声コントロール部2aは音量の値が一段階大きい音量を出力するようにスピーカ部5へ信号を出し、前記信号を受けてスピーカ部5は音量が1段階増幅された音を出力する。同様にして、方向キー3bの「下」が押下された際には音声コントロール部2aは音量の値が一段階小さい音量を出力するようにスピーカ部5へ信号を出し、前記信号を受けてスピーカ部5は音量が1段階減衰された音を出力する。
【0031】
上述した方法で選択された音量の値は、決定キー3bが押下されたことを契機に、音声コントロール部2aによってメモリ部6へ格納される(ステップS204)。
【0032】
次に骨伝導スピーカ部4の振動強度の調整動作について説明する。図3は骨伝導スピーカ部4の振動強度の調整動作を説明するためのフローチャートである。
【0033】
最初、ユーザは所定の操作として、操作部3を用いて制御部2へ振動強度の調整動作を行うためのプログラムを起動させる。
【0034】
試験が開始されると、制御部2は図2で設定されたスピーカ部5の音量の値をメモリ部6より参照する(ステップS301)。このときの音量の値がメモリ部6より参照されるときのプロセスを、具体的に図8(a)と図8(b)を用いて説明する。
【0035】
図8(a)はステップS201からS204において設定された、スピーカ部5から出力される音量の値を模式的に表したものである。この音量情報に対応付けられた振動強度情報を、「低」、「中」、「高」それぞれの周波数帯域の補正を行う際の初期値として設定し、図8(b)のように設定してメモリ部6へ格納する。
【0036】
なお、この設定にあたっては予めメモリ部6に、スピーカ部5の各音量に対応した振動値をテーブルとして記憶させており、このテーブルを参照して振動値を決定するようになっている。
【0037】
次に、メモリ部6に格納されている試験に用いる試験信号を試験信号生成部2cに設定する。試験信号(帯域別振動強度情報)の「低」としては、例えば中心周波数を500Hzとする周波数領域1/3オクターブバンドのホワイトノイズを、「中」としては、中心周波数を1000Hzとする周波数領域1/3オクターブバンドのホワイトノイズを、「高」としては、中心周波数を2000Hzとする周波数領域1/3オクターブバンドのホワイトノイズを用いる。
【0038】
試験に用いる周波数帯域がそれぞれ決定されたら、制御部2はその強度の値で試験信号生成部2cより出力される試験用の信号を試験振動させる(ステップS303)。
【0039】
その際、制御部2は表示部9へ図6に示すような、「大きくする」、「ちょうどいい」、「小さくする」という選択項目を示した低音設定用の画面を表示する。そしてユーザは方向キー3aを用いることによって、「大きくする」「ちょうどいい」「小さくする」を視認しながらユーザ当人にとって最適な振動強度を選択する(ステップS304、S306、S308)。以下に詳細を説明する。
【0040】
もし、ユーザにとって出力された試験振動の強度が大き過ぎたら、試験振動出力中に前記方向キー3aを用いて図6に表示された「小さくする」がユーザにより選択され、決定キー3bが一回押下される。すると先述した操作を契機に前記骨伝導コントロール部2bは骨伝導スピーカ部4への出力を一段階弱めた増幅率の情報を伝達、この情報をもとに前記骨伝導スピーカ部4は試験振動を出力する(ステップS305)。
【0041】
もし、ユーザにとって出力された試験振動の強度が小さ過ぎたら、試験振動出力中に前記方向キー3aを用いて図6に表示された「大きくする」がユーザにより選択され、決定キー3bが一回押下される。すると先述した操作を契機に前記骨伝導コントロール部2bは骨伝導スピーカ部4への出力を一段階強めた増幅率の情報を伝達、この情報をもとに前記骨伝導スピーカ部4は試験振動を出力する(ステップS307)。
【0042】
そして、試験振動の強度がユーザにとって丁度良い強度で設定されたら、ユーザは図6の「ちょうどいい」を方向キー3aで選択し(ステップS308)、更に決定キー3bがユーザによって押下されると、メモリ部6に現在出力中の試験振動の強度が振動強度として記録される(帯域別振動強度情報)(ステップS309)。
【0043】
ここでステップS301からS310まで行われたプロセスにおいて、メモリ部6へ振動強度がどのように格納されたかを図8を用いて説明する。
【0044】
図8(b)は、ステップS201からS204を用いて説明した音量の値を、メモリ部6のテーブルに基づいて設定された振動強度で、周波数帯域「低」、「中」、「高」それぞれへ割り振ったものを模式的に表したものである。この状態でメモリ部6に格納されていた値は、ステップS301からS310のプロセスを経ることによって、周波数帯域毎に補正が行われ、図8(c)に示すような状態でメモリ部6に情報が格納される。図8(c)の場合、具体的には、「低」においてユーザは振動強度を1段階上昇させたことを示し、同様に「中」においては2段階上昇、「高」においては1段階減少させた場合を示している。
【0045】
前記のように、ユーザにとって最適な振動強度がメモリ部6へ格納された後、制御部2は残りの周波数帯「中」及び「高」に対しても、図3に示したフローチャートに基づいて試験振動を継続させてそれぞれの強度を設定する。この際、指定される周波数帯域の順番は、「高」→「中」→「低」としてもよいし、また「中」→「高」→「低」又は、「高」→「中」→「低」という順番でも良い。
【0046】
最後に周波数帯域「低」、「中」、「高」が全て終了したことを確認すると、振動の強度の調整は終了する(ステップS310/Y)。
【0047】
次に、実際の通話などで骨伝導スピーカ部4を用いる際のプロセスを図4に示したフローチャートを用いて説明する。つまり、試験信号出力を開始する操作に伴う出力ではなく、通信部8より得た通話相手などからの音声を骨伝導スピーカ部4にて出力する際などの処理について述べる。
【0048】
最初に、骨伝導コントロール部2bはステップS309においてメモリ部6に格納された周波数帯域「低」、「中」、「高」各々の振動強度(帯域別振動強度情報)を参照する(ステップS401)。
【0049】
次に、骨伝導コントロール部2bは、ステップS401で参照された3種類の振動強度(帯域別振動強度情報)と、制御部2の音声処理部からの音声信号を、骨伝導スピーカ部4へ伝達させる(ステップS402)。
【0050】
骨伝導スピーカ部4は、前記3種類の振動強度(帯域別振動強度情報)と音声信号を受け取ると、当該音声信号の「高」、「中」、「低」各帯域の増幅率を調整する。すなわち、高域に該当する周波数帯の中心を指定された増幅率で増幅し、中域、低域についても同様にそれぞれで増幅率を設定する。なお、骨伝導スピーカ部4、または骨伝導コントロール部2bに複数の段で構成されたフィルタやイコライザを備え、骨伝導スピーカ部4に至る前の音声信号で各帯域の増幅比率に基づいて音声信号自体の周波数特性を変更し、その上で全体域について増幅を行っても良い。このようにして、全体域の音声信号の指定が行われる。
【0051】
そして、前記増幅率が指定された音声信号は骨伝導スピーカ部4に内蔵されている振動子によって骨振動を生成され、ユーザへ伝えられる(ステップS403)。
【0052】
このようにして、骨伝導スピーカ部4はユーザに最適な振動強度で音声を伝導させるが、場合によっては設定された振動強度が、必ずしもユーザにとって最適な振動強度ではないこともある。
【0053】
このような場合には、骨伝導スピーカ部4を用いて音声を出力している最中に、ステップS301からS310で設定した「高」、「中」、「低」各々のバランスを変えることなく、ユーザが振動強度を全域にわたって均一に変更できるようにしてある。
【0054】
具体的には、制御部2は図7に示されるような「大」、「小」といった選択項目が表示された画面を表示部9へ表示する。そして、ユーザは図7に示す画面を視認しながら、方向キー3aの上下を用いて全周波数帯域における音量の増減を均等に選択することが出来る。そして、この選択された結果をメモリ部6へ更新することが可能である(ステップS404、S405)。
【0055】
この時の振動強度の更新方法の具体例を、図8を用いて説明する。
【0056】
図3のステップS310が終了した時点で、図8(c)に示したとおり「低」は3、「中」は4、「高」は1の振動強度でメモリ部6へ格納されているが、この状況下でユーザが振動強度を1段階増加させると、図8(d)に描かれているように「低」は4、「中」は5、「高」は2の振動強度に変更され、メモリ部6へ更新される(ステップS406)。
【0057】
すなわち、制御部2はステップS310にてメモリ部6へ周波数帯域「低」、「中」、「高」毎に設定された値を、ステップS405にて「低」、「中」、「高」それぞれの振動強度を均等に増減させるようになっている。
【0058】
このように実際に骨伝導スピーカ部4より出力する振動強度を調整することにより、ユーザの補正した周波数帯域毎の振動強度のバランスを崩すことなく全周波数帯域での振動強度を調整することが出来る。
【0059】
ところで、出力される音声信号のソース(電話における受話音声や音楽プレーヤからの出力音声など)ごとに異なる絶対的な音量の違いに基づいて、出力音量を変えたい、というニーズにこたえるのが図4の全帯域の出力量調整である。対して、各帯域の聞こえ方が人によって異なるという点に対処するために各帯域の増幅の比率を異ならせるように調整を行うのが図3の試験振動出力処理である。すなわち、図3に示す調整と、図4に示す調整では、調整の目的が異なる。また、調整する対象も異なる。よって、ソースを変更したことによる音量の変動など、絶対的な出力音量自体が異なる場合には、各帯域に対する調整よりも、むしろ全体の出力自体を増減させる必要があるため、帯域ごとの増幅の状況よりも、むしろ全帯域に対する増減指示を要求する画面を表示させる方がユーザにとっては、どの値を調整するのか等を考える必要がなく、自然に対応することが出来る。
【0060】
また、本発明では、各帯域に設定しているパラメータを敢えて不可視としている。各帯域のパラメータを見せるようにした場合、パラメータ数が多くなってしまうため、たとえば高齢者などの電子機器の操作自体に不慣れな人にとっては、結局どの程度の音量が設定されているのかが分からないという問題が生じてしまうことを防止するためである。つまり、各帯域に設定しているパラメータをユーザに見せるならば、ユーザにとっては全体の音量を調整したいにもかかわらず、「高域で3」、「低域で5」というように表示することとなり、どのようにすれば良いのかわからないという混乱を招いてしまう虞がある。そこで、本実施例によれば、図8に示したようなパラメータの遷移はあるものの、これを実際に画面上に表示することなく、全帯域の音量調整時には単純に大小を選択するよう構成している。これにより、帯域ごとのパラメータがどうであれ、頻繁に発生するソースの変更など、出力音量自体の調整を行うべき機会において、不慣れな人でも容易にかつ即座に対応することが出来る。
【0061】
以上のようにして、出力される音声に変動がないにもかかわらず、頬骨などの頭蓋骨に当接させて骨振動を生成する場合には、個人ごとの頭蓋骨への当接の強さに応じて、各人ごとに聞こえる音声がまったく異なった大きさになってしまうという問題が解消される。
【0062】
なお、本実施の形態において、操作部3の有する指示手段の例として上下などの方向を指示できる方向キー3aを示したが左右方向に配置されても良い。また、例えば音量調整あるいはパラメータの補正の際に、1度押下すると1つ値が増加するような単一のボタンが指示手段としてあてがわれていてもよい。この場合には調整した値が最大値にまで達した場合には、さらなる押下が生じると、最小値に戻るように制御部2が制御するといったことは、本発明により実現可能である。
【0063】
また、本発明の実施の形態において、骨伝導式音声出力装置として携帯電話機を例に説明を行ったがこれに限定されるものではない。骨伝導スピーカおよび操作する手段を備えてさえいれば、例えばカーナビゲーションシステムや電子手帳やゲーム機などにおいても実施可能であることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の骨伝導式音声出力装置の一例である携帯電話機を示すブロック図である。
【図2】スピーカ部からの出力音量を調整する処理を示すフローチャートである。
【図3】試験用振動を用いて骨伝導スピーカ部から出力される振動強度を調整する処理を示すフローチャートである。
【図4】図3にて設定した振動強度を用いた骨伝導スピーカ部による音声出力処理を示すフローチャートである。
【図5】スピーカ部を用いて音量を選択する画面の一例を示す図である。
【図6】試験振動を出力する際の画面の一例を示す図である。
【図7】骨伝導スピーカ部にて音量を選択する際の画面の一例を示す図である。
【図8】実施形態に係る振動強度の変遷の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0065】
1…携帯電話機
2…制御部
2a…音声出力コントロール部
2b…骨伝導コントロール部
2c…試験信号生成部
3…操作部
3a…方向キー
3b…決定キー
4…骨伝導スピーカ部
5…スピーカ部
6…メモリ部
9…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、
骨伝導スピーカ部と、
当該骨伝導スピーカ部の振動強度情報を記憶するメモリ部と、
当該メモリ部に記憶されている振動強度情報に基づいて前記骨伝導スピーカ部の駆動を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記操作部による所定の操作が行われると、前記骨伝導スピーカ部を前記メモリ部に記憶する振動強度情報に基づいて試験振動させると共に、当該試験振動中に、前記操作部による試験振動強度の変更を可能とし、かつ、当該試験振動強度の変更が行われると、前記メモリ部の振動強度情報を変更された振動強度情報へ更新する、
ことを特徴とする骨伝導式音声出力装置。
【請求項2】
前記振動強度情報は、周波数帯毎に区分された複数の帯域別振動強度情報を含み、
前記試験振動中に、前記操作部により前記複数の各帯域別振動強度情報をそれぞれ変更可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の骨伝導式音声出力装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記試験振動以外での前記骨伝導スピーカ部による振動中に、前記操作部による振動強度情報の変更が行われると、前記複数の各帯域別振動強度情報を均等に増減するように変更する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の骨伝導式音声出力装置。
【請求項4】
操作部と、
骨伝導スピーカ部と、
気体を介して音を伝播させるスピーカ部と、
当該スピーカ部の音量情報と、当該音量情報に対応付けられた前記骨伝導スピーカ部の試験振動強度情報を記憶するメモリ部と、
前記制御部と、を有し、
前記制御部は、前記骨伝導スピーカ部の試験振動を行う際、前記メモリ部に保存される前記音量情報を参照し、当該音量情報に対応づけられた試験振動強度情報に基づいて試験振動させる、
ことを特徴とする骨伝導式音声出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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