説明

骨強化剤

【課題】効率的に骨形成を促進し、骨吸収を抑制し、又は、骨強度を増大し得る剤、及び、骨形成促進作用、骨吸収抑制作用又は骨強度増大作用に基づく骨粗鬆症の予防及び/又は改善剤を開発し、これを産業上有効に活用できる態様の組成物を提供すること。
【解決手段】チオクト酸類とクレアチン類、より望ましくはチオクト酸類とクレアチン類と牡蠣肉類とを含有してなる骨形成促進剤、骨吸収抑制剤又は骨強度増大剤、及び、骨形成促進作用、骨吸収抑制作用及び骨強度増大作用のうち少なくとも1種の作用に基づく骨粗鬆症予防改善剤が提供され、該剤のうち少なくとも1種を配合してなる飲食品等の経口組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオクト酸及びクレアチンを含有してなることを特徴とする骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤、及び、骨形成促進作用、骨吸収抑制作用及び骨強度増大作用のうち少なくとも1種の作用に基づく骨粗鬆症予防改善剤に関し、又、前記各剤の少なくとも1種を配合することを特徴とする経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は生体の支持体であるとともに、カルシウムやリンなどのミネラルの貯蔵庫であり、体液のイオン調節機構に重要な役割を果たしている。骨組織は、一見静的にみえるが、そこでは活発な代謝が行われており、骨吸収と骨形成が連続的に起こる骨改造(リモデリング)が常に行われている。骨吸収には造血幹細胞に由来する破骨細胞が関与し、又、骨形成には未分化間葉系細胞に由来する骨芽細胞が関与している。正常な骨組織においては、骨形成と骨吸収のバランスが保たれている。ところが、何らかの原因によって、そのバランスが崩れて相対的に骨吸収が増加すると、骨量が著しく低下し、種々の骨関節疾患、骨粗鬆症等の疾患を誘発する。
【0003】
骨粗鬆症とは、骨量の低下、骨組織の微細構造の変化を特徴とし、骨の脆弱化とその結果骨折の危険の増大を来した疾患であると定義されている。特に閉経後や卵巣を摘出した女性においては、女性ホルモンの分泌低下に伴い、骨吸収が亢進するため骨粗鬆症を発症しやすい。又、高齢者においては、骨の代謝回転の低下により相対的に骨吸収が骨形成を上回り、骨粗鬆症を発症しやすくなっている。
【0004】
骨粗鬆症が重症化すると、軽い衝撃でも骨折しやすくなり、結果として寝たきり状態を引き起こす。わが国における寝たきりの原因は、脳卒中や老衰と並んで転倒骨折によるものが上位となっている。現代のような高齢化社会が進行している状況では、生活の質を維持するためにも骨粗鬆症を予防・改善することは非常に重要な課題である。
【0005】
骨粗鬆症を予防するには、若年期から骨量を十分に高めておくことが不可欠で、カルシウムやマグネシウム等のミネラルやビタミンD等を積極的に摂取することが推奨されている。又、骨粗鬆症の治療には、ビスホスフォネート、エストロゲン、カルシトニン等の骨吸収抑制剤が主に使われている。しかし、ビスホスフォネートは生体吸収効率が低く、食事の摂取タイミングによっては吸収が著明に低下することが知られている。又、消化器官症状の副作用も報告されている。エストロゲンについては、乳癌や心血管障害のリスクが高まるといった副作用が報告されている。このため、副作用がより少なく、骨粗鬆症を効果的に予防・改善するための簡便な経口組成物の開発が望まれていた。
【0006】
チオクト酸は、α−リポ酸、1,2−ジエチレン−3−ペンタン酸、1,2−ジエチレン−3−吉草酸、1,2−ジチオラン−6−ペンタン酸又は1,2−ジチアシクロペンタン−3−吉草酸等とも称せられ、動植物や微生物の生体内で合成され、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体や2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体の種々ある補酵素のひとつとして生物利用され、又、アシル基転移反応を触媒することが知られている。
【0007】
チオクト酸及びその還元型であるジヒドロチオクト酸(6,8−ジメルカプト−オクタン酸)の機能として、強力な抗酸化力が近年注目されており、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシラジカル、ペルオキシラジカル、一重項酸素等の活性酸素種と親和性が高く容易に反応して該活性酸素種の作用を失わしめ、生体組織へのダメージを低減させ、ビタミンCやグルタチオンとの相互作用により細胞膜を保護し、又、ビタミンEを再生する効力を有するといわれている。チオクト酸の薬理作用については、虚血性再灌流時の組織損傷、糖尿病、白内障、神経変性、放射線障害、炎症性疾患等の酸化ストレスの病態モデルに対して有効であることが公知である。
【0008】
クレアチンは、1−メチルグアニジノ酢酸、メチルグリコシアミンの別名をもつアミノ酸の一種である。生体内でオルニチンとアルギニンから生合成され、又、クレアチンリン酸に可逆的に変換され、ATP産生に深く関係し、クレアチンの摂取により筋肉内のクレアチンリン酸含量が高まり、運動パフォーマンスの向上や疲労を軽減することが知られている。骨代謝に及ぼす影響については、レジスタンス運動を実施しながらクレアチンを摂取することで、筋肉量が増加した結果、骨形成が促進されることが報告されている(非特許文献2)。又、ラットに運動下でクレアチンを摂取させた場合、大腿骨の骨塩量、骨密度及び骨強度が増加する傾向が認められている(特許文献1)。
【0009】
又、牡蠣は、従来より日常的に食用に供せられてきた食経験があり、その栄養素としてグリコーゲン、タウリン、アミノ酸、ビタミン群(A、B、B、B、E等)、ミネラル類(亜鉛、カルシウム、鉄、マグネシウム、ヨウ素等)を含むため、牡蠣を原料とした抽出エキス、牡蠣油、オイスターソース等の調味料として市販され、又、散剤、錠剤、カプセル剤、アンプル剤等の剤形に加工されて、滋養強壮、健康維持増進、疾病予防のための飲食品として利用されている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−120226号公報
【非特許文献1】P.D.Chilibeck等、The Journal of Nutrition,Health & Aging、第9巻、第5号、第352頁〜第355頁、2005年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
かかる現状に鑑み、本発明者らは、効率的に骨形成を促進し、骨吸収を抑制し、又は、骨強度を増大し得る剤、及び、骨形成促進作用、骨吸収抑制作用又は骨強度増大作用に基づく骨粗鬆症の予防及び/又は改善剤を開発し、これを産業上有効に活用できる態様の組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明者らは、各種多様な原料素材と骨形成促進能、骨吸収抑制能、骨強度増大能及び骨粗鬆症予防改善能との関連性について鋭意検討を重ねた結果、チオクト酸類とクレアチン類とを併用すると極めて顕著な前記作用を発現すること、又、これを飲食品、飼料、化粧品、医薬品等の分野に有効利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の第1の特徴は、チオクト酸類とクレアチン類とを有効成分として含有してなる骨形成促進剤にあり、第2の特徴は、チオクト酸類とクレアチン類とを有効成分として含有してなる骨吸収抑制剤にあり、第3の特徴は、チオクト酸類とクレアチン類とを有効成分として含有してなる骨強度増大剤にあり、第4の特徴は、チオクト酸類とクレアチン類とを有効成分として含有してなり、骨形成促進作用、骨吸収抑制作用及び骨強度増大作用のうち少なくとも1種の作用に基づく骨粗鬆症予防改善剤にある。
【0015】
前記の各剤において、チオクト酸類はチオクト酸、ジヒドロチオクト酸、これらの光学異性体、塩、エステル、アミド、これらのシクロデキストリン包接物及び脂質被覆物からなる群から選択される1種又は2種以上であることが望ましい。又、クレアチン類はクレアチン塩、クレアチン水和塩、クエン酸クレアチン、リンゴ酸トリクレアチン、ピルビン酸クレアチン及びホスホクレアチンからなる群から選択される1種又は2種以上であることが望ましい。
【0016】
本発明の第4の特徴は、前記の各剤が牡蠣肉又は牡蠣肉エキスを更に併用してなる点にある。
【0017】
本発明の第5の特徴は、前記の各剤のうち少なくとも1種を配合してなる経口組成物にあり、この経口組成物は飲食物であることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤及び骨粗鬆症予防改善剤は、品質の安定性に優れ、これを経口的に摂取することにより、有効成分が体内で消化分解されることなく効率的に吸収され、骨形成の促進、骨吸収の抑制、及び/又は、骨強度の増大に顕著な効果を奏し、これらの少なくとも1の作用に基づく骨粗鬆症の予防改善に極めて有効であり、生活の質の維持改善にとって有益である。このため、本発明の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤及び骨粗鬆症予防改善剤は、飲食品、飼料、医薬品等の分野において、前記各剤の形態で、又は、従来の前記分野の各種製品に前記各剤を含有せしめた形態で有効活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。まず、本発明の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤及び骨粗鬆症予防改善剤は、チオクト酸類及びクレアチン類を有効成分として含有してなることを特徴とする。
【0020】
ここで、チオクト酸類の起源や種類は特に限定されるものではなく、牛や豚の肝臓等臓器の天然物抽出物や、例えば、エチレン及びアジピン酸エステルを出発原料とする化学的合成品等公知の方法で採取、製造されたものでよい。尚、チオクト酸は不斉炭素を有するため光学的に鏡像異性体(R−エナンチオマー及びS−エナンチオマー)が存在するが、本発明に係るチオクト酸はこれらのいずれか単独でも任意割合の混合物でもよく、又、ラセミ混合物やラセミ体でも差し支えない。工業生産レベルの実施においては、安価で容易に入手できる市販のラセミ体を利用するのが簡便であり、ラセミ体を用いると本発明の所望の効果をより強力に発現する傾向が大きいので望ましい。
【0021】
チオクト酸類は、前記のチオクト酸のほか各種誘導体を適宜に利用することができるが、ジヒドロチオクト酸等の還元体、ラセミ体を含む光学異性体、これらの塩、エステル並びにアミド、及び、これらのシクロデキストリン包接物並びに脂質被覆物からなる群から適宜に選択される1種又は2種以上のものであることが望ましい。チオクト酸の還元体の具体例としてジヒドロチオクト酸、ジヒドロリポ酸、6,8−ジメルカプト−オクタン酸等を挙げることができ、同様に光学ラセミ体としてはR,S−チオクト酸、R,S−ジヒドロチオクト酸等、塩としてはR−チオクト酸、S−チオクト酸、R,S−チオクト酸、R−ジヒドロチオクト酸、S−ジヒドロチオクト酸、R,S−ジヒドロチオクト酸等のカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等、エステルとしてはR−チオクト酸、S−チオクト酸、R,S−チオクト酸、R−ジヒドロチオクト酸、S−ジヒドロチオクト酸、R,S−ジヒドロチオクト酸等と多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、エリスリトール、ポリグリセリン等のモノマーないしポリマー等)との部分エステル若しくは完全エステル又はグリセリド類(モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド)、あるいは炭素数10〜22の高級アルコール類(デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)とのモノエステル等、アミドとしてはR−チオクト酸、S−チオクト酸、R,S−チオクト酸、R−ジヒドロチオクト酸、S−ジヒドロチオクト酸、R,S−ジヒドロチオクト酸等とモノ−、ジ−あるいはトリ−アルキルアミン類(アルキル残基はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等)、モノ−、ジ−あるいはトリ−アルカノールアミン類(アルカノール残基はメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等由来)との各種アミドを例示することができる。尚、本発明はこれらの例示によって何ら限定されるものではない。
【0022】
シクロデキストリン包接物はα−、β−、γ−又はδ−シクロデキストリン、これらのメチル化物、ヒドロキシアルキル化物等のシクロデキストリン類と前記の各種チオクト酸又はその誘導体との包接物を例示することができる。又、脂質被覆物は前記の各種チオクト酸又はその誘導体、これらのシクロデキストリン包接物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の結晶、粉末及び/又は粒子の外表面を脂質類で被覆してなるものをいう。シクロデキストリン包接物及び脂質被覆物の態様はチオクト酸類の熱的変質(分解、重合、変色等)、吸湿あるいは酸化的変性を抑制するため、本発明の所望効果を奏する上で更に望ましいものである。
【0023】
尚、前記の脂質被覆物における脂質類は、本発明品が利用される産業分野において許容されるものであればよく、一般の食用油脂類又は工業用油脂類、脂肪酸グリセリド類、脂肪酸類、脂肪酸エステル類、脂肪酸アミド類、高級アルコール類、ワックス類、ステロール類、糖脂質類、リン脂質類等を単独で又は組合せて利用できる。これらのうち、被覆作業性及び被覆物の物性(安定性、固化性、流動性、溶融性、溶解性等)を考慮すると、融点が約30℃以上の脂質類がよい。より好ましい形態は融点が約40℃〜約70℃の脂質類であり、更に好ましい形態は融点が約40℃〜約60℃の脂質類である。融点が約30℃を下回ると、被覆物がその使用時に固形状態を維持できない場合があり、塊状物を形成することがあり、あるいは流動性を損なう場合がある。逆に、約70℃を上回ると、本発明の剤や組成物を製造する際の加熱処理や機械的エネルギーの影響でチオクト酸類自体が劣化するおそれがある。
【0024】
チオクト酸類を脂質類で被膜するには、公知の方法を利用できる。すなわち、ボールミル、フラッシュブレンダー(粉粒体混合機)、V型混合機、高速ミキサー、高速パドルミキサー、加熱溶融混合機、超音波過湿加液型混合機、タンブラー混合機、加圧押出機等を用い、チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子と加熱溶融した脂質類とを均一に混合し、冷却して固化させた後これを粉砕する方法、前記形態のチオクト酸類に適宜加熱して液状化した脂質類を噴霧あるいは滴下して被覆する方法、前記形態のチオクト酸類と粒子状の脂質類とを高速攪拌して混合し、両者を接触又は衝突させることによってチオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子の表面全体に粒子状の脂質類を均一に付着させて被覆する方法等が可能である。本発明では、これらのうち、チオクト酸類の結晶、粉末及び/又は粒子と前述の特定融点以上の粒子状脂質類とを高速攪拌して混合し、両者を接触又は衝突させて、前記形態のチオクト酸類の表面全体に粒子状の脂質類を均一に被覆させる方法がよい。
【0025】
チオクト酸類と脂質類との比率は、概ね、チオクト酸類1重量部に対して脂質類約0.05重量部〜約10重量部、より好ましくは約0.1重量部〜約5重量部である。脂質類が約0.05重量部未満であると被覆状態が十分でなく所望の効果を発現し難くなり、逆に約10重量部を超えると被覆物中のチオクト酸含量が少なく、被覆物を利用する場面において配合率等が制限され実用的価値を損なう場合がある。
【0026】
又、前記脂質被覆物は、これを飲料等の水系組成物に適用する場合には、更にその外表面を親水系物質で被覆してなる態様のものがより一層望ましい。ここで、親水系物質とは、脂質類による被覆物の外表面を更に被覆し、水性物質と親和性を有する被覆膜形成能のあるものをいい、具体例として多糖類(キサンタンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム等)、澱粉及び化工澱粉、酵母細胞壁成分、グルカン、マンナン、シェラック、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カラギーナン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、大豆たん白、ホエーたん白、ツェイン等を挙げることができる。より好適には多糖類、澱粉、酵母細胞壁成分、シェラック、ゼラチン、大豆たん白、ツェイン及びマンナンからなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくは酵母細胞壁成分、シェラック及びゼラチンである。
【0027】
かかる親水系物質を被覆するには、前記の脂質類の被覆方法に準じた方法を採用すればよい。すなわち、前記親水系物質を適宜に水、エタノール、その他の溶媒に溶解させた液状物となし、これを予め脂質類で被覆したチオクト酸類の外表面に付着、乾燥して親水系物質の被覆膜を形成させることができる。かくして得られる被覆物は親水系物質を最外層とする二重被覆構造体となり、これを飲食品、飼料、化粧品、医薬品等に利用する場合、水性の原料や成分との親和性が高まり、これらと水溶解性の低いチオクト酸類との均質な組成物を調製することが容易になる。
【0028】
次に、クレアチン類は、その起源が天然物であるか化学的合成品であるかを問わず本発明の前記各剤に使用することができ、具体例としてクレアチン塩(カルシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩等)、クレアチン水和塩(モノハイドレート等)、クエン酸クレアチン、リンゴ酸トリクレアチン、ピルビン酸クレアチン及びホスホクレアチン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を適宜に選択して用いることができる。このうち、クレアチンカルシウム塩、クレアチンモノハイドレート及びリンゴ酸トリクレアチンがより好ましく、クレアチンモノハイドレートが最も好適である。尚、これらのクレアチン類は、前記各剤を適用する産業分野の製品、例えば、飲食物や薬剤の特性、嗜好性、摂取量等を考慮すると高純度品であることが望ましい。
【0029】
本発明の前記各剤、すなわち、骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤及び骨粗鬆症予防改善剤はチオクト酸類及びクレアチン類を含有してなるものであり、この両者の比率は、これらの種類や形態、所定成分の含有量等によって一律に規定し難いが、概ねチオクト酸類:クレアチン類=9〜1:1〜9(重量比)が好ましく、3〜5:7〜5がより好ましい。
【0030】
本発明の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤及び骨粗鬆症予防改善剤の他の特徴は、チオクト酸類及びクレアチン類のほかに牡蠣肉又は牡蠣肉エキスを併用して含有せしめる点にある。
【0031】
ここで、牡蠣肉は、原料の牡蠣が食用に供されているものであれば差し支えなく、毒性物質や有害物質を含んでいなければ食用でなくてもよく、又、その種類、産地、収穫時期等によって制限を受けるものではない。牡蠣の具体例としてマガキ、アメリカガキ、ヨーロッパガキ、ケガキ、イタボガキ、ポルトガルガキ等が挙げられる。本発明の前記各剤に用いる牡蠣肉の態様は、保存性、取り扱い性の点から生の牡蠣肉を常法により乾燥したものやその粉末が望ましい。乾燥牡蠣肉は、概して、グリコーゲン:30〜40重量%、タウリン:3〜5重量%、ビタミンE:50〜75ppm、ビタミンB:2〜5ppm、ビタミンB:5〜10ppm、ビタミンB:3〜5ppm、ナイアシン:60〜90ppm、パントテン酸:20〜40ppm、ビタミンC:150〜200ppm、カルシウム:4,000〜5,500ppm、マグネシウム:3,500〜4,500ppm、鉄:75〜130ppm、亜鉛:500〜900ppm、銅:30〜70ppm、マンガン:15〜25ppm等を含む。
【0032】
又、牡蠣肉エキスは、生あるいは乾燥した牡蠣肉を水及び/又は食用アルコール等の溶剤とともに常温あるいは加熱下、常圧又は加圧の状態で抽出し、残渣を除去して得られる液体状ないしは固体状の抽出物をいう。かかる牡蠣肉エキスには生牡蠣肉の栄養素の一部が抽出される。尚、本発明においては、例えば、牡蠣肉を酸性水溶液で抽出したり、牡蠣肉の水抽出残渣をエタノール抽出してミネラル成分濃度を高めた牡蠣肉エキスを用いることもできる。
【0033】
本発明の前記各剤に含有せしめるチオクト酸類及びクレアチン類と牡蠣肉又は牡蠣肉エキスとの割合は、固体重量ベースで、概ね、チオクト酸類及びクレアチン類:牡蠣肉又は牡蠣肉エキス=1:0.001〜1、より好ましくは1:0.01〜0.5である。この範囲を下回ると本発明の所望効果に影響を及ぼさず、逆に上回っても前記所定量の場合を超える所望効果は認められない。
【0034】
本発明の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤及び骨粗鬆症予防改善剤は、前述のチオクト酸類及びクレアチン類を、より望ましくはこれに更に牡蠣肉又は牡蠣肉エキスを併用して、必要に応じて製剤上使用可能な各種賦形剤、安定剤、着色剤、香料剤等を用いて、常法により混合、分散、乳化、溶解等の処理を施して粉末、顆粒、ペレット、錠剤、カプセル、液体等の任意の形態に加工して調製することができる。本発明の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤及び骨粗鬆症予防改善剤は、ヒト(体重50Kg)の場合、1日あたりのチオクト酸摂取量の目安を約10mg〜約1000mg、望ましくは約30mg〜約500mg、さらに望ましくは約50mg〜約200mgとして任意の方法、例えば、経口摂取、経管投与等の方法で体内に取り込むことができる。
【0035】
本発明の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤及び骨粗鬆症予防改善剤は、これ自体を飲食物、医薬品、飼料、化粧料、その他産業分野の様々な製品とすることができ、あるいは該各種製品の配合原料の一部として使用する態様でも利用できる。とりわけ経口用組成物の形態で利用することがよく、飲食物用途が好適である。これらの例を以下に述べるが、本発明はこれによって何ら制限を受けるものではない。
【0036】
飲食物の具体例として、野菜ジュース、果汁飲料、清涼飲料、茶等の飲料類、スープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、ケーキプレミックス製品、菓子類、ふりかけ、味噌、醤油、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、植物性クリーム、焼肉用たれや麺つゆ等の調味料、麺類、うどん、蕎麦、スパゲッティ、ハムやソーセージ等の畜肉魚肉加工食品、ハンバーグ、コロッケ、佃煮、ジャム、牛乳、クリーム、バター、スプレッドやチーズ等の粉末状、固形状又は液状の乳製品、マーガリン、パン、ケーキ、クッキー、チョコレート、キャンディー、グミ、ガム等の各種一般加工食品のほか、粉末状、顆粒状、丸剤状、錠剤状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、ペースト状又は液体状の栄養補助食品、特定保健用食品、機能性食品、健康食品、濃厚流動食や嚥下障害用食品の治療食等を挙げることができる。
【0037】
これらの飲食物を製造するには、公知の原材料及び本発明の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤及び骨粗鬆症予防改善剤のうちから適宜に選択される1種又は2種以上を用い、あるいは公知の原材料の一部を本発明の前記剤の少なくとも1種で置き換え、公知の方法によって製造すればよい。例えば、本発明のヒアルロン酸産生増強剤と、必要に応じてグルコース(ブドウ糖)、デキストリン、乳糖、澱粉又はその加工物、セルロース粉末等の賦形剤、ビタミン、ミネラル、動植物や魚介類の油脂、たん白(動植物や酵母由来の蛋白質、その加水分解物等)、糖質、色素、香料、酸化防止剤、界面活性剤、その他の食用添加物、各種栄養機能成分を含む粉末やエキス類等の食用素材とともに混合して粉末、顆粒、ペレット、錠剤等の形状に加工したり、常法により前記例の一般食品に加工処理したり、これらを混合した液状物をゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の被覆剤で被覆してカプセルを成形したり、飲料(ドリンク類)の形態に加工して、栄養補助食品や健康食品として利用することは好適である。とりわけ錠剤、カプセル剤やドリンク剤が望ましい。
【0038】
かかる飲食品に配合する本発明の前記剤の比率は、飲食品の形態、利用目的、本発明の前記剤中のチオクト酸類やクレアチン類の含量、他の配合原料の種類や成分等のちがいにより一律に規定しがたいが、飲食品中のチオクト酸含量が約0.01重量%〜約50重量%、より望ましくは約1重量%〜約30重量%となるように、チオクト酸類、クレアチン類、牡蠣肉又は牡蠣肉エキス、及び、その他の飲食品製造用原料を適宜に組み合わせて処方を設計し、常法に従い目的とする飲食品を調製すればよい。チオクト酸含量が約0.01重量%を下回るとチオクト酸類による所望効果を期待するために多量の飲食品を摂取しなければならず、一方、約50重量%が飲食品設計の点で最大チオクト酸含量である。
【実施例】
【0039】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。各例において、%、部及び比率はとくに断わらない限り重量基準である。
【0040】
製造例1
(1)チオクト酸のシクロデキストリン包接物
結晶粉末のチオクト酸(米国・カーギル社製、商品名:ALIPURE(登録商標)、ラセミ体)10gを、α−シクロデキストリン(ドイツ・ワッカーヘミー社製、商品名:CAVAMAX(R)W6)100gをイオン交換水1Lに溶解させた水溶液に懸濁させ、30〜35℃にて8時間撹拌して溶解させた。次いで、これを5℃にて12時間静置し、生じた沈殿物を回収し、室温下で減圧乾燥してチオクト酸シクロデキストリン包接物(チオクト酸含量:19重量%)を得た。
【0041】
製造例2
(2)チオクト酸の脂質被覆物
結晶粉末のチオクト酸(米国・カーギル社製、商品名:ALIPURE(登録商標)、ラセミ体)200gと粉末状ナタネ硬化油(川研ファインケミカル(株)製、融点:60℃、平均粒子径が約20μm)190gとを微粒子コーティング造粒装置((株)パウレック製、型式:MP−25SFP)に仕込み、攪拌混合ファンブレードの回転数1000rpmで30分間流動、混合して前記両原料を接触、衝突させて平均粒径が約100μmのチオクト酸脂質被覆物を得た。
【0042】
製造例3
(3)チオクト酸の二重被覆物
製造例2に記載のチオクト酸脂質被覆物の一部を微粒子コーティング造粒装置((株)パウレック製、型式:MP−01SFP)に仕込み、攪拌流動させながら、酵母細胞壁7.7%を含む分散液(キリンビール(株)製、商品名:イーストラップ(登録商標))を噴霧させてチオクト酸脂質被覆物粒子の表面を被覆し、チオクト酸二重被覆物を得た。
【0043】
製造例4
広島県産生食用牡蠣肉300gをミキサーで細断し、これに水5Lを加えて80〜90℃で2時間撹拌した後、残渣を濾別して抽出液を採取し、次いで減圧乾燥して牡蠣肉エキス末65.7gを得た。この牡蠣肉エキスは、グリコーゲン:41.2%、タウリン:4.3%、カルシウム:870ppm、マグネシウム:6,050ppm、亜鉛:570ppm、マンガン:25ppmを含んでいた。
【0044】
試験例1
本発明に係る成分を用いて、骨形成、骨吸収及び骨強度に及ぼす影響を以下の方法で調べた。尚、本発明に係る成分である試験物質は、(1)チオクト酸(試料1とする)、(2)製造例1で得たチオクト酸シクロデキストリン包接物(試料2とする)、(3)製造例2で得たチオクト酸脂質被覆物(試料3とする)、(4)製造例3で得たチオクト酸二重被覆物(試料4とする)、(5)クレアチン(試料5とする)、(6)製造例4で得た牡蠣肉エキス末(試料6とする)、(7)試料1と試料5との1:2混合物(試料7とする)、(8)試料2と試料5との1:1混合物(試料8とする)、(9)試料3と試料5との1:1混合物(試料9とする)、(10)試料4と試料5との1:1混合物(試料10とする)、(11)試料1と試料5と試料6との1:2:0.05混合物(試料11とする)、(12)試料2と試料5と試料6との1:1:0.2混合物(試料12とする)、(13)試料3と試料5と試料6との1:1:0.2混合物(試料13とする)、(14)試料4と試料5と試料6との1:1:0,5混合物(試料14とする)とした。ここに、チオクト酸は米国・カーギル社製、商品名:ALIPURE(登録商標)、ラセミ体、クレアチンはドイツ・デグサ社製、商品名:CREAPURE(登録商標)、クレアチンモノハイドレートである。
【0045】
4週齢のウィスター系雄性ラット(日本エスエルシー(株)から購入。平均体重:110g)を1週間予備飼育後、1種類の試験物質につき6匹とし、対照群、試験物質(試料7〜試料14)投与群及び比較試験物質(試料1〜試料6)投与群に分けた。各群のラットに、表1に示した標準餌料(AIN−76A)を1日2回所定時間に与え、対照群には生理食塩水を、試験物質投与群には試験物質(チオクト酸投与量として100mg/kg体重)を、又、比較試験物質投与群には比較試験物質(チオクト酸投与量として100mg/kg体重、クレアチン投与量として200mg/kg体重、又は、牡蠣肉エキス末投与量として100mg/kg体重)を生理食塩水に溶解ないし分散させた水溶液をそれぞれ1日1回経口投与し、2週間飼育した。
【0046】
【表1】

【0047】
前記飼育2週間後にラットを断頭屠殺して採血し、該血清を用いて代表的な骨形成マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP)活性、及び、代表的な骨吸収マーカーである酒石酸抵抗性ホスファターゼ(TRAP)活性を測定した。尚、ALP活性はラボアッセイALPキット(和光純薬工業(株)製)を用いて常法により測定し、p−ニトロフェノール換算量(nmol/L)として求め、TRAP活性はALP&TRAPアッセイキット(タカラバイオ(株)製)を用いて常法により測定し、p−ニトロフェノール換算量(nmol/L)として求めた。又、前記ラットの右大腿骨を摘出し、骨に付着した筋肉を取り除き、骨強度試験機(室町機械(株)製、TK−252C)を用いて折り曲げ試験を行い最大荷重(N)を測定し、屠殺前の体重100g当りの骨強度(N/100g体重)を算出した。これらの結果について、各試験物質の骨形成に及ぼす影響を表2に、骨吸収に及ぼす影響を表3に、又、骨強度に及ぼす影響を表4にそれぞれ示した。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
表2から、血清ALP活性は、チオクト酸、チオクト酸のシクロデキストリン包接物、クレアチン及び牡蠣肉エキスをそれぞれ単独で投与した場合には対照群との間に有意な差が認められなかったが、チオクト酸とクレアチンとを併用した場合(試料7)、チオクト酸のシクロデキストリン包接物とクレアチンとを併用した場合(試料8)、チオクト酸とクレアチンと牡蠣肉エキス末とを併用した場合(試料11)、及び、チオクト酸のシクロデキストリン包接物とクレアチンとを併用した場合(試料12)においては、対照群及び各単独投与群と比較して、血清ALP活性が有意に高値となることが確認された。このことから、チオクト酸類とクレアチンとの併用、及び、チオクト酸類とクレアチンと牡蠣肉エキス末の併用は相乗的に骨形成を促進することが明らかとなった。
【0052】
表3から、血清TRAP活性は、チオクト酸、チオクト酸の脂質被覆物、クレアチン及び牡蠣肉エキスをそれぞれ単独で投与した場合には対照群との間に有意な差が認められなかったが、チオクト酸とクレアチンとを併用した場合(試料7)、チオクト酸の脂質被覆物とクレアチンとを併用した場合(試料9)、チオクト酸とクレアチンと牡蠣肉エキス末とを併用した場合(試料11)、及び、チオクト酸の脂質被覆物とクレアチンとを併用した場合(試料13)においては、対照群及び各単独投与群と比較して、血清TRAP活性が有意に低値となることが確認された。このことから、チオクト酸類とクレアチンとの併用、及び、チオクト酸類とクレアチンと牡蠣肉エキス末の併用は相乗的に骨吸収を抑制することが明らかとなった。
【0053】
表4から、大腿骨の骨強度は、チオクト酸、チオクト酸の二重被覆物、クレアチン及び牡蠣肉エキスをそれぞれ単独で投与した場合には対照群との間に有意な差が認められなかったが、チオクト酸とクレアチンとを併用した場合(試料7)、チオクト酸の二重被覆物とクレアチンとを併用した場合(試料10)、チオクト酸とクレアチンと牡蠣肉エキス末とを併用した場合(試料11)、及び、チオクト酸の二重被覆物とクレアチンとを併用した場合(試料14)においては、対照群及び各単独投与群と比較して、骨強度が有意に高値となることが確認された。このことから、チオクト酸類とクレアチンとの併用、及び、チオクト酸類とクレアチンと牡蠣肉エキス末の併用は相乗的に骨強度を増大することが明らかとなった。
【0054】
試作例1
(1−1)カプセル剤タイプの骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤又は骨粗鬆症予防改善剤(その1)
チオクト酸(米国・カーギル社製、商品名:ALIPURE(登録商標)、ラセミ体)50部、クレアチン一水和物(ドイツ・デグサ社製、商品名:CREAPURE(登録商標))100部、ミツロウ30部及び精製魚油50部を混合して均質にした後、カプセル充填機に供して、常法により1粒あたり内容量が300mgのゼラチン被覆ソフトカプセル製剤を試作した。このカプセル製剤は経口摂取できる食品用途あるいは医薬品用途の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤、又は、骨形成促進作用、骨吸収抑制作用及び骨強度増大作用のうち少なくとも1の作用に基づく骨粗鬆症予防改善剤として利用し得る。
【0055】
試作例2
(1−2)カプセル剤タイプの骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤又は骨粗鬆症予防改善剤(その2)
試作例1において、チオクト酸50部を製造例1で得たチオクト酸シクロデキストリン包接物75部に置きかえること以外は同様にして1粒あたり内容量が300mgのゼラチン被覆ソフトカプセル製剤を試作した。
【0056】
試作例3
(1−3)カプセル剤タイプの骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤又は骨粗鬆症予防改善剤(その3)
試作例1において、チオクト酸50部を製造例2で得たチオクト酸脂質被覆物50部に置きかえ、更に製造例4で得た牡蠣肉エキス末10部を併用することを除いて同様に処理して1粒あたり内容量が250mgのゼラチン被覆ソフトカプセル製剤を試作した。
【0057】
試作例4
(2−1)錠剤タイプの骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤又は骨粗鬆症予防改善剤(その1)
チオクト酸(米国・カーギル社製、商品名:ALIPURE(登録商標)、ラセミ体)50部、クレアチン一水和物(ドイツ・デグサ社製、商品名:CREAPURE(登録商標))100部、結晶セルロース25部、コーンスターチ20部及びステアリン酸マグネシウム1部を均一に混合した後、この混合物を直打式打錠機に供して直径7mm、高さ4mm、重量150mg/個の素錠を作成し、ついでコーティング機でシェラック被膜を形成させて錠剤を試作した。この錠剤は経口摂取できる食品用途あるいは医薬品用途の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤、又は、骨形成促進作用、骨吸収抑制作用及び骨強度増大作用のうち少なくとも1の作用に基づく骨粗鬆症予防改善剤として利用し得る。
【0058】
試作例5
(2−2)錠剤タイプの骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤又は骨粗鬆症予防改善剤(その2)
試作例4において、チオクト酸50部を製造例2で得たチオクト酸脂質被覆物100部に置きかえること以外は同様にして1錠が直径8mm、重量150mgの錠剤を試作した。
【0059】
試作例6
(2−3)錠剤タイプの骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤又は骨粗鬆症予防改善剤(その3)
試作例4において、チオクト酸50部を製造例3で得たチオクト酸二重被覆物50部に置きかえ、更に製造例4で得た牡蠣肉エキス末20部を併用することを除いて同様に処理して1錠が直径8mm、重量150mgの錠剤を試作した。
【0060】
試作例7
(3−1)飲料用粉末タイプの骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤又は骨粗鬆症予防改善剤(その1)
製造例1で得たチオクト酸シクロデキストリン包接物100部、クレアチン一水和物(ドイツ・デグサ社製、商品名:CREAPURE(登録商標))100部、無水結晶ブドウ糖700部、クエン酸60部、リンゴ酸40部、重曹50部及びレモン香料20部を常法により混合して飲料用粉末を試作した。これは適量の飲用水に分散ないし溶解させて摂取できる食品用途の骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤、又は、骨形成促進作用、骨吸収抑制作用及び骨強度増大作用のうち少なくとも1の作用に基づく骨粗鬆症予防改善剤として利用し得る。
【0061】
試作例8
(3−2)飲料用粉末タイプの骨形成促進剤、骨吸収抑制剤、骨強度増大剤又は骨粗鬆症予防改善剤(その2)
試作例7において、チオクト酸シクロデキストリン包接物100部を試作例1で用いたチオクト酸70部に置きかえ、更に製造例4で得た牡蠣肉エキス末20部を併用することを除いて同様に処理して飲料用粉末を試作した。
【0062】
試作例9
(4)ヨーグルト様食品
市販の牛乳500部にケフィアグレイン(日本ケフィア(株)製)2部を加えて26℃で24時間発酵させて乳発酵物を作成し、この100部に試作例1で用いたチオクト酸5部及びクレアチン一水和物20部とオレンジ香料0.5部を添加して十分に混合してヨーグルト様食品を試作した。このものは風味や食感で何ら違和感なく、市販ヨーグルトと同様に食することができるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
チオクト酸類とクレアチン類との併用、より望ましくはチオクト酸類とクレアチン類と牡蠣肉類との併用は骨形成促進作用、骨吸収抑制作用又は骨強度増大作用を有するため、飲食品、医薬品、飼料等の産業分野において、骨の形成を促進するための、骨の吸収を抑制するための、骨の強度を増大するための、又は、前記作用のいずれかに基づく骨粗鬆症予防改善のための手段として有効利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオクト酸類とクレアチン類とを有効成分として含有してなることを特徴とする骨形成促進剤。
【請求項2】
チオクト酸類とクレアチン類とを有効成分として含有してなることを特徴とする骨吸収抑制剤。
【請求項3】
チオクト酸類とクレアチン類とを有効成分として含有してなることを特徴とする骨強度増大剤。
【請求項4】
チオクト酸類とクレアチン類とを有効成分として含有してなり、骨形成促進作用、骨吸収抑制作用及び骨強度増大作用からなる群から選ばれる1種又は2種以上の作用に基づくことを特徴とする骨粗鬆症予防改善剤。
【請求項5】
チオクト酸類がチオクト酸、ジヒドロチオクト酸、これらの光学異性体、塩、エステル、アミド、これらのシクロデキストリン包接物及び脂質被覆物からなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の骨形成促進剤、請求項2に記載の骨吸収抑制剤、請求項3に記載の骨強度増大剤、又は、請求項4に記載の骨粗鬆症予防改善剤。
【請求項6】
クレアチン類がクレアチン塩、クレアチン水和塩、クエン酸クレアチン、リンゴ酸トリクレアチン、ピルビン酸クレアチン及びホスホクレアチンからなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の骨形成促進剤、請求項2に記載の骨吸収抑制剤、請求項3に記載の骨強度増大剤、又は、請求項4に記載の骨粗鬆症予防改善剤。
【請求項7】
牡蠣肉又は牡蠣肉エキスを更に併用してなることを特徴とする請求項1、請求項5若しくは請求項6のいずれか1項に記載の骨形成促進剤、請求項2、請求項5若しくは請求項6のいずれか1項に記載の骨吸収抑制剤、請求項3、請求項5若しくは請求項6のいずれか1項に記載の骨強度増大剤、又は、請求項4、請求項5若しくは請求項6のいずれか1項に記載の骨粗鬆症予防改善剤。
【請求項8】
請求項1、請求項5、請求項6若しくは請求項7のいずれか1項に記載の骨形成促進剤、請求項2、請求項5、請求項6若しくは請求項7のいずれか1項に記載の骨吸収抑制剤、請求項3、請求項5、請求項6若しくは請求項7のいずれか1項に記載の骨強度増大剤、又は、請求項4、請求項5、請求項6若しくは請求項7のいずれか1項に記載の骨粗鬆症予防改善剤を配合してなることを特徴とする経口組成物。
【請求項9】
飲食物である請求項8に記載の経口組成物。

【公開番号】特開2008−280322(P2008−280322A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−152098(P2007−152098)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(500081990)ビーエイチエヌ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】