説明

骨格部材および骨格部材の製造方法

【課題】 骨格部材全体の軽量化を妨げることなく、補強が必要となる骨格部材の所定位置を補強することができる骨格部材および骨格部材の製造方法を提供する。
【解決手段】 ピラー1における背面板11には、補強部15が形成されている。補強部15は、ピラー素材2における成形後に背面板11となる部位に形成されたマイクロビードから形成される。ここで、ピラー1を製造する際、ピラー素材をホットプレス加工する。このホットプレス工程において、ピラー素材における成形後に背面板11となる部位を圧縮することにより、マイクロビードの板厚が増大させられる。こうして、補強部15が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に用いられるピラーなどの骨格部材および骨格部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における骨格部材、たとえばピラーでは、衝突時などの変形を防止するため、ピラーリインホースが配設されたピラー補強構造を備えるものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このピラー補強構造では、補強が必要となるピラーアウタの内側にピラーリインホースを配設し、ピラーの変形を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−347655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示されたピラー補強構造では、ピラーにおける補強が必要となる部位にピラーリインホースを配設することによってピラーを補強してその強度を高めている。このため、ピラーリインホースの重量がピラーの重量の一部となってしまい、ピラー全体の軽量化の妨げとなることがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、骨格部材全体の軽量化を妨げることなく、補強が必要となる骨格部材の所定位置を補強することができる骨格部材および骨格部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明に係る骨格部材は、補強部を備え、骨格部材素材にプレス加工を施して形成される骨格部材であって、骨格部材骨格部材素材における補強対象箇所に凹凸部を形成しておき、骨格部材骨格部材素材がプレス加工される際、骨格部材凹凸部が圧縮されることによって骨格部材補強部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決した本発明に係る骨格部材は、補強部を備え、骨格部材素材にプレス加工を施して形成される骨格部材であって、骨格部材素材における補強対象箇所にマイクロビードを形成しておき、骨格部材素材がプレス加工される際、マイクロビードが潰されて板厚が増大させられて補強部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、マイクロビードは、複数の突条が互いに平行に配設されて形成されている態様とすることができる。
【0009】
また、マイクロビードは、骨格部材素材の長手方向に交差する方向に沿って離間して形成されている態様とすることができる。
【0010】
他方、上記課題を解決した本発明に係る骨格部材の製造方法は、補強部を備え、骨格部材素材にプレス加工を施して形成される骨格部材の製造方法であって、骨格部材素材における補強対象箇所に凹凸部を形成しておき、骨格部材素材をプレス加工することにより、凹凸部を圧縮することによって補強部を形成することを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決した本発明に係る骨格部材の製造方法は、補強部を備え、骨格部材素材にプレス加工を施して形成される骨格部材の製造方法であって、骨格部材素材における補強対象箇所にマイクロビードを形成しておき、骨格部材素材をプレス加工することにより、マイクロビードを潰して板厚を増大させることによって補強部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る骨格部材および骨格部材の製造方法によれば、骨格部材全体の軽量化を妨げることなく、補強が必要となる骨格部材の所定位置を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明に係るピラーの斜視図、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図2】(a)は、本発明に係るピラーを製造する際に用いられるピラー素材の斜視図、(b)は、(b)のB−B線断面図である。
【図3】ピラー素材をプレス加工してピラーを製造する工程を示す工程図である。
【図4】(a)は、ピラー素材におけるマイクロビードの拡大側断面図、(b)は、ピラーにおけるマイクロビードの拡大側断面図である。
【図5】(a)(b)とも、本発明に係るピラーの他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0015】
図1(a)は、本発明に係るピラーの斜視図、(b)は、(a)のA−A線断面図である。また、図2(a)は、本発明に係るピラーを製造する際に用いられるピラー素材の斜視図、(b)は、(b)のB−B線断面図である。
【0016】
図1(a)に示すように、骨格部材であるピラー1は、上下方向に延在するピラー本体10を備えている。ピラー本体10の上端部には、ルーフサイドレールと接合される上端側ブラケット20が形成されている。さらに、ピラー本体10の下端部には、ロッカと接合される下端側ブラケット30が形成されている。このピラー1は、車両におけるセンターピラーに用いられるものである。
【0017】
ピラー1におけるピラー本体10は、背面板11、右側面板12、および左側面板13を備えている。右側面板12と左側面板13とは、背面板11を介して連結されており、ピラー本体10は、断面略コ字形状をなしている。また、右側面板12および左側面板13には、それぞれフランジ14および15が形成されている。また、背面板11における上部は、背面板11における下部よりも幅狭に形成されている。
【0018】
さらに、背面板11は、高さ方向略中央部が外側に突出した湾曲形状をなしており、この突出した部分の上方位置に補強部15が形成されている。補強部15は、背面板11の長手方向に沿って形成されている。補強部15は、センターピラーにおける最大荷重入力部である背面板11における長手方向中央位置からいわゆるベルトライン近傍に形成されており、背面板11の略全幅を含んで形成されている。また、補強部15を正面視した際の形状は、略長円形とされている。
【0019】
補強部15は、複数の突条が交互に形成された形状をなしている。これらの突条は、背面板11の長手方向に沿って形成されている。このため、補強部15の断面は、図1(b)に示すように、複数の凹凸部が交互に形成された形状をなしている。また、背面板11における補強部15の板厚は、背面板11における他の部分よりも厚肉となるように形成されている。
【0020】
図1(a)に示すピラー1は、図2(a)に示す本発明の骨格部材素材であるピラー素材2にプレス加工を施して形成されるものである。図2(a)に示すように、ピラー素材2は、平面状の板材であり、ピラー本体10、上端側ブラケット20、および下端側ブラケット30を展開した形状に近い形状をなしている。
【0021】
さらに、ピラー素材2における長さ方向略中央部には、凹凸部となるマイクロビード3が形成されている。マイクロビード3は、図2(b)に示すように、複数の凹凸部が交互に形成された波状の形状をなしており、複数の突条が互いに平行に配置されて形成されている。このように、マイクロビード3は、ピラー素材2の長手方向に交差する方向である直交する方向に沿って離間して形成されている。
【0022】
ここで、マイクロビード3における凹凸部の深さは、ピラー素材2の板厚と同程度のとされている。また、凹凸形状における隣接する凹部と凸部との間の幅は、図1(b)に示す補強部の幅よりも広くなっている。ピラー素材2における成形後に背面板11となる部位を圧縮することにより、マイクロビード3の板厚が増大させられる。
【0023】
ピラー1を製造する際には、ブランキング(打ち抜き)工程およびホットプレス工程が行われる。ピラー素材2は、ホットプレス工程の前工程として行われるブランキング工程において、外形切断によって形成される。このブランキング工程において、ピラー素材2における所定の位置にマイクロビード3を形成する。
【0024】
次に、本実施形態に係るピラーの製造手順について説明する、図3は、本実施形態に係るピラーを製造する工程を説明する工程図である。ピラーを製造する際には、ブランキング工程において、母材板からピラー素材となる形状を打ち抜き、図3(a)に示すように、ピラー素材2を取得する。ピラー素材2を打ち抜いた後、補強部を形成する位置に対してプレス加工を行い、補強部を形成する。このピラー素材2に対してホットプレス工程においてホットプレス加工を施すことによってピラー1を製造する。
【0025】
ピラー素材2に対してホットプレス加工を施す際には、図3(b)に示すように、雄型51と雌型52とを備える金型を使用したホットスタンプ成形が行われる。ここで、雄型51と雌型52との間にピラー素材2を配置し、雄型51を雌型52に押し込んで成型を行う。このとき、ピラー素材2における成形後に背面板11となる部位には、ピラー素材2における成形後に背面板11となる部分の上方から圧縮する力を付与する。ここで、背面板11となる部分を圧縮する際の圧縮方向は、背面板11となる部分に直交する軸と直交するなど、交差する方向とされている。また、凹凸が形成されるときの凸部の突出方向となる。また、背面板11となる部分の幅方向に対しては、金型によって拘束された状態となっている。
【0026】
いま、図4(a)にピラー素材におけるマイクロビードの拡大側断面図を示す。この状態では、マイクロビード3の厚さは、ピラー素材2の厚さとほぼ同程度とされている。この状態でピラー素材2における成形後に背面板11となる部分を圧縮する力を付与すると、マイクロビード3は、背面板11となる部分の幅方向に延びようとする。ところが、マイクロビード3は、背面板11となる部分の幅方向に対して拘束されているので、図4(b)に実線で示すように、背面板11となる部分の幅方向に対して逃げ場を失い、マイクロビード3の板厚が厚くなる。なお、図4(b)に圧縮する力を付与する前のマイクロビード3の形状を破線で示している。
【0027】
このように、プレス加工を行う際、ピラー素材2における成形後に背面板11となる部分に圧縮する力を付与することにより、マイクロビードの板厚を増大させて補強部15を形成することができる。また、補強部15の板厚を増大させることにより、補強部15が背面板11における他の部分より板厚が増大させられ、その分補強部15の曲げ座屈強度を向上させることができる。
【0028】
さらに、ピラー素材2にマイクロビード3を形成することによって補強部15の曲げ座屈強度を向上させている。このため、補強部材を別途設ける必要もない。よって、骨格部材全体の軽量化を妨げることなく、補強部15を補強することができる。しかも、マイクロビード3は、ピラー素材2の長手方向に直交する方向に沿って離間して形成されている。このため、ピラー素材2を圧縮する際における強度と剛性のバランスを最適化することができる。したがって、プレス加工を行う際の変形をピラー素材2の全体にバランスよく分散することができる。したがって、ピラー素材2の変更量を低減させることができる。
【0029】
こうしてプレス加工が済んだら、図3(c)に示すように、ピラー1の製造が終了する。ここで、ピラー1における背面板11には、補強部15が形成された状態とすることができる。
【0030】
このように、本実施形態に係るピラー1およびピラー1の製造方法によれば、ピラー素材2にマイクロビード3が形成され。ピラー素材2をプレス加工してピラー1を製造している。さらには、本実施形態に係るピラー1およびピラー1の製造方法では、ピラー素材2がプレス加工される際、マイクロビード3が潰されて板厚が増大させられている。このため、補強部材を別途設ける必要がなく、ピラー全体の軽量化を妨げることなく、補強部15を補強することができる。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態においては、骨格部材としてセンターピラーを挙げているが、他の位置に配置されるピラーであってもよいし、さらには、ピラー以外の骨格部材、たとえばロッカやサイドメンバなどであってもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、補強部15を正面視した形状は略矩形とされているが、その他の形状、たとえば楕円形などとすることもできる。あるいは、図5(a)に示すように、補強部15が略H形状とされている態様とすることもできるし、図5(b)に示すように、補強部15の内側に非補強部が形成されている態様とすることもできる。
【0033】
さらに、上記実施形態では、凹凸部としてマイクロビード3を挙げているが、その他の凹凸形状、たとえばディンプル形状などとすることもできる。また、上記実施形態では、マイクロビード3を形成する際に、ピラー素材2の長手方向に直交する方向に沿って離間してマイクロビード3を形成しているが、その他の方向を向けてマイクロビードを形成する態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1…ピラー、10…ピラー本体、20…上端側ブラケット、30…下端側ブラケット、2…ピラー素材、3…マイクロビード、10…ピラー本体、11…背面板、12…右側面板、13…左側面板、14…フランジ、15…補強部、20…右側面板、30…左側面板、51…雄型、52…雌型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強部を備え、骨格部材素材にプレス加工を施して形成される骨格部材であって、
前記骨格部材素材における補強対象箇所に凹凸部を形成しておき、
前記骨格部材素材がプレス加工される際、前記凹凸部が圧縮されることによって前記補強部が形成されていることを特徴とする骨格部材。
【請求項2】
補強部を備え、骨格部材素材にプレス加工を施して形成される骨格部材であって、
前記骨格部材素材における補強対象箇所にマイクロビードを形成しておき、
前記骨格部材素材がプレス加工される際、前記マイクロビードが潰されて板厚が増大させられて前記補強部が形成されていることを特徴とする骨格部材。
【請求項3】
前記マイクロビードは、複数の突条が互いに平行に配設されて形成されている請求項2に記載の骨格部材。
【請求項4】
前記マイクロビードは、前記骨格部材素材の長手方向に交差する方向に沿って離間して形成されている請求項3に記載の骨格部材。
【請求項5】
補強部を備え、骨格部材素材にプレス加工を施して形成される骨格部材の製造方法であって、
前記骨格部材素材における補強対象箇所に凹凸部を形成しておき、
前記骨格部材素材をプレス加工することにより、前記凹凸部を圧縮することによって前記補強部を形成することを特徴とする骨格部材の製造方法。
【請求項6】
補強部を備え、骨格部材素材にプレス加工を施して形成される骨格部材の製造方法であって、
前記骨格部材素材における補強対象箇所にマイクロビードを形成しておき、
前記骨格部材素材をプレス加工することにより、前記マイクロビードを潰して板厚を増大させることによって前記補強部を形成することを特徴とする骨格部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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