説明

骨量増加誘導剤

骨粗鬆症等の代謝性骨疾患では、骨量の減少から骨強度が低下し、腰痛等の疼痛及び骨折を生じる頻度が高い。そのため、骨代謝全体をコントロールして骨量及び骨強度を増加させることができる薬剤の創製が強く求められている。 本発明の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物と骨吸収抑制作用を有するビスホスホネートを含有する医薬組成物もしくは組合せ物は、骨代謝をコントロールして骨量及び/又は骨強度を増加させることができる骨量増加誘導剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物、殊に後記一般式(I)で示される含窒素複素環化合物又はその塩と、ビスホスホネートとを組合せてなる、骨代謝性疾患等の骨疾患の予防並びに治療に有用な医薬組成物若しくは組合せ物に関する。
【背景技術】
正常な骨代謝は、破骨細胞による骨吸収量と骨芽細胞による骨形成量が平衡状態にあり、恒常性が維持されている。この骨吸収と骨形成のバランスに破綻が生じた場合代謝性骨疾患になると考えられている。この疾患には、骨粗鬆症、線維性骨炎(副甲状腺機能亢進症)、骨軟化症、更に全身性の骨代謝パラメーターに影響を与えるページェット病などが含まれる。腰痛等の疼痛及び骨折などの原因になる骨粗鬆症としては、閉経後の女性に多い骨代謝回転亢進型(I型)及び老人性の骨代謝回転低下型(II型)の原発性骨粗鬆症と、ステロイド投与等によって誘発される続発性(二次性)骨粗鬆症が知られている。中でも、老人性の骨粗鬆症においては、骨形成能が低下し、海綿骨に加えて皮質骨の骨量も減少するため、椎体の変形や大腿骨頸部の骨折が多いことが報告されている(Riggs BL st.al.,New Eng.J.Med.,314,1676,(1986))。老人における骨折は全身の衰弱や痴呆につながるため重篤である。
この骨吸収と骨形成からなる骨リモデリングには、様々な生体由来生理活性物質が関与していることが分かっており、例えば、骨吸収促進あるいは破骨細胞分化促進に関与する因子として、副甲状腺ホルモン(PTH:parathyroid hormone)、PTHrP(PTH−related protein)、TNFα、M−CSF、活性型ビタミンD3(1α,25(OH))、プロスタグランジン(prostaglandin)、RANKL(receptor activator of NF−κB ligand)等が、骨吸収抑制に関与する因子として、カルシトニン(calcitonin)、エストロゲン(estrogen)、OPG(osteoprotegerin)等が、骨形成に関与する因子として、PTH、BMP(bone morphogenetic protein)、TGFβ(transforming growth factor β)、プロスタグランジン等が、また全身のカルシウム代謝に関与する因子として、活性型ビタミンD3(1α,25(OH))、PTH等が知られる。中でも、エストロゲン、カルシトニン、活性型ビタミンD3等は、骨粗鬆症をはじめとする代謝性骨疾患の治療及び予防剤として臨床に用いられている。しかしながら、これらの薬剤は、主として骨吸収あるいはカルシウム代謝をコントロールして骨密度を増加させるメカニズムを有するため、骨形成能が低下した老人性骨粗鬆症等ではその効果が十分なものではないと言われている。最近になって、骨形成促進作用を有するPTHの良好な骨密度改善作用が報告され(J.Clin.Endocrinol.Metab.82,62−628,(1997))、新しい骨粗鬆症薬として期待されている。
一方、ビスホスホネートは石灰化抑制物質であるピロリン酸と類似の構造を有する化合物であって、破骨細胞の機能を抑制し骨吸収抑制作用を有することから、骨粗鬆症等の代謝性骨疾患の治療に用いられている薬剤である。例えば、代表的なビスホスホネートであるアレンドロネート或いはリセドロネートが閉経後の女性骨粗鬆症患者を対象とした大規模臨床試験において大腿骨頸部骨折の発生頻度を減少させた報告がある(非特許文献1:New England Journal of Medicine.333(22),p.1437−1443,(1995)及び非特許文献2:New England Journal of Medicine.344(5),p.333−340,(2001))。しかしながら、80歳以上の高齢患者ではその効果は有意ではなかったとの結果が開示されており(非特許文献2)、老人性骨粗鬆症では十分な効果が期待できないことが示唆されている。
従来、骨形成促進作用を有する生体由来生理活性物質と骨吸収抑制作用を有するビスホスホネートを併用する試みがいくつかなされている。例えば、ビスホスホネートの長期投与後にPTHを長期投与する骨代謝障害の治療方法が開示される(特許文献1:国際公開第96/07417号パンフレット)。しかしながら、両剤の同時併用投与による効果は必ずしも明確ではないとの報告(非特許文献3:R.Neerら、Bone,32(5),S69,(2003))がある。また、血管拡張剤や分娩誘発剤として臨床的に実用化されている生理活性物質、プロスタグランジンE2(PGE2)は、その多くの活性のひとつとして骨形成作用と骨吸収作用を併せ持つことが知られており、このPGE2とビスホスホネートであるアレンドロネートを併用すると骨量が増加したとの報告がある(非特許文献4:Journal of Bone and Mineral Research,8(7),(1993))。
しかし、既知の生体由来生理活性物質は、効果が十分でない、ペプチドであることからその投与方法が限定される、或いは生体内で多様な活性を有するため好ましくない作用を伴う等の理由から、生体由来生理活性物質ではなく、非ペプチド性の、そして骨形成能が低下した老人性骨粗鬆症にも優れた骨折抑制活性が期待される、新しいタイプの骨量増加誘導剤の創製が望まれている。
最近になって、アルカリフォスファターゼ(ALP)誘導活性を示し骨芽細胞分化促進作用を有する非ペプチド性化合物が報告されている。例えば、ベンゾチエピン誘導体(特許文献2〜4:特開平8−231569号公報、特開2000−109480号公報及び特開平9−263545号公報=WO9639134)、クロモン誘導体(特許文献5:特開2001−139571号公報=WO0116127)、チオフェン誘導体(特許文献6〜11:特開2002−47184号公報、特開2002−255971号公報=WO01174823、特開2000−309591号公報、特開平10−130271号公報=WO9809958、特開2001−151775号公報及び特開2001−151774号公報)、プリン誘導体(非特許文献5:J.Am.Chem.Soc.,2002,124,14520−14521)、N−キノリルアントラニル酸誘導体(特許文献12:特開平9−188622号公報)等の報告がある。これらの骨芽細胞分化促進作用を示す化合物は骨形成促進作用を呈し、代謝性骨疾患や骨折等の治療に有用であると開示されるが、その臨床上の有用性については未だ不明である。また、これらの化合物を開示する特許公報の中には、これらの骨芽細胞分化促進化合物を他の骨量増加誘導剤又は骨吸収抑制剤と併用することができる旨記載され、併用剤の例示にビスホスホネートが包含される(例えば、前記特許文献2,3,5及び7)。しかしながら、具体的に骨芽細胞分化促進化合物とビスホスホネートを併用した例、若しくは併用の効果についての開示は全くない。
なお、本願の後記一般式(I)で示される含窒素複素環化合物に構造の類似する化合物として、トリアゾロピリダジン誘導体に関する以下の報告がある(文中の記号は、後記一般式(I)における記号を示す)。しかしながら、これらの文献並びに特許には、骨芽細胞分化促進作用若しくは骨形成促進作用の開示も示唆も無い。
(1)RaとRbが隣接するN原子と一体となってピペリジノを形成し、Eが単結合である化合物であって、Rがピペリジノである抗菌化合物(特許文献13:米国特許3,957,766号公報);Rが未置換フェニルである化合物の合成(非特許文献6:Tetrahedron,22(7),2073−9(1966));Rがp−(トリフルオロメチル)フェニル又はp−クロロフェニルである化合物の構造(非特許文献7:CAS Registry File、RN=289651−67−8又は202820−26−6);並びにRがo−ニトロフェニルである化合物(非特許文献8:オランダのSPECS社のカタログ(Refcode:AG−690/3073051))がそれぞれ開示される。
(2)RaとRbが隣接するN原子と一体となって、4−メチル−1−ピペラジニルを形成し、Eが単結合、かつRが未置換フェニル、p−メチルフェニル、m−メチルフェニル、p−メトキシフェニル、m−クロロフェニル、p−クロロフェニル又はm−ニトロフェニルである気管支拡張作用を有するトリアゾロピリダジン誘導体(特許文献14:ドイツ特許2,444,322号公報並びに特許文献15:特開昭50−58092号公報)が開示される。
(3)Rが置換基を有していてもよいイミダゾリルである抗菌化合物(特許文献16、17並びに18:ドイツ公開特許2,261,693号、2,254,873号及び2,215,999号公報);並びに、Rが5−ニトロ−2−フリル又は5−ニトロ−2−チエニルである抗菌化合物(特許文献19、20並びに21:ドイツ公開特許2,161,586号、2,161,587号及び2,113,438号公報)が開示される。
(4)RaがH、Rbがシクロプロピル、Eが単結合、かつRがp−(トリフルオロメチル)フェニルである化合物の構造(非特許文献9:CAS Registry File、RN=289651−68−9)が開示される。
(5)Raがメチル、Rbが2−ヒドロキシ−プロピル、Eが単結合、かつRが3−ピリジルである高血圧作用を有する化合物(非特許文献10:Farmaco.Ed.Sci.,34(4),299−310,(1979))が開示される。
骨粗鬆症等の代謝性骨疾患では、骨量の減少から骨強度が低下し、腰痛等の疼痛及び骨折を生じる頻度が高く、特に骨形成能の低下した老齢患者においては、大腿骨頸部骨折を起こしてしまうと予後は極めて不良である。そのため、骨代謝全体をコントロールして骨量及び/又は骨強度を増加させることができる薬剤の創製が強く求められている。殊に、非生体由来且つ非ペプチド性であり、骨代謝回転低下型(II型)の老人性骨粗鬆症においても優れた骨折抑制活性が期待される、新しいタイプの骨量増加誘導剤の創製が望まれている。
【発明の開示】
本発明者等は、骨芽細胞の機能を促進させることによる骨形成促進作用を有する治療薬の開発を目的に鋭意研究した結果、後記一般式(I)に示す新規含窒素複素環化合物が優れた骨芽細胞分化促進活性を示し、既知の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物と同様に、骨形成促進剤として代謝性骨疾患の予防若しくは治療薬になり得ることを見出し、先に特許出願を行った(国際公開第03/074525号パンフレット)。
更に、骨代謝をコントロールして骨量及び/又は骨強度を増加させることができる薬剤を鋭意研究した結果、上記良好な骨芽細胞分化促進化合物である含窒素複素環化合物(I)と骨吸収抑制作用を有するビスホスホネートを併用することにより、大腿骨の皮質骨の骨量及び/又は骨強度が相乗的あるいは相加的作用以上に増強され、例えば後記骨粗鬆症モデル(ラットOVX)を用いた試験において、偽手術(sham)群を凌ぐ優れた骨量増加誘導作用が達成されることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は、
(1)a)第一成分として非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物、b)第二成分としてビスホスホネートを含有して成る骨量増加誘導剤である医薬組成物、
(2)a)第一成分として新規な非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物である下記一般式(I)で示される含窒素複素環化合物又はその塩、b)第二成分としてビスホスホネートを含有して成る骨量増加誘導剤である医薬組成物、
(3)骨量増加誘導剤が代謝性骨疾患の予防若しくは治療剤である前記医薬組成物、
(4)骨量増加誘導剤が骨代謝回転低下型(II型)骨粗鬆症の予防若しくは治療剤である前記医薬組成物、
(5)第一製剤として非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を含有する製剤、及び第二製剤としてビスホスホネートを含有する製剤の2種の製剤からなる骨量増加誘導剤である組み合わせ物であって、該第一及び第二製剤は同時にもしくは別々に投与されるものである組み合わせ物、
(6)第一製剤が下記一般式(I)で示される含窒素複素環化合物又はその塩を含有する製剤である前記組み合わせ物、
(7)第一製剤として非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を含有する製剤、及び第二製剤としてビスホスホネートを含有する製剤の少なくとも2種の製剤を含むキットである前記組み合わせ物、
(8)ビスホスホネートを有効成分とする、非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物の骨量増加作用増強剤、
(9)非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を有効成分とする、ビスホスホネートの骨量増加作用増強剤、
(10)非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物及びビスホスホネートの、骨量増加誘導剤である医薬を製造するための使用、
(11)非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物の、ビスホスホネートの骨量増加作用を増強する医薬を製造するための使用、
(12)ビスホスホネートの、非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物の骨量増加作用を増強する医薬を製造するための使用、
(13)患者の骨量及び/又は骨強度の減少を伴う代謝性骨疾患の予防若しくは治療方法であって、有効量の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物と、有効量のビスホスホネートを、同時に若しくは別々に投与することからなる方法、
(14)患者の骨量及び/又は骨強度の減少を伴う代謝性骨疾患が骨代謝回転低下型(II型)骨粗鬆症である前記方法、並びに
(15)骨量及び/又は骨強度の増加を必要とする患者に、有効量の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物及び有効量のビスホスホネートを、同時に若しくは別々に投与することからなる、患者の骨量増加誘導方法。

(式中の記号は以下の意味を有する。
Ra及びRb:同一又は異なって、H;CO−低級アルキル;SO−低級アルキル;置換基を有していてもよいシクロアルキル;置換基を有していてもよいアリール;又は、置換基を有していてもよいシクロアルキル、置換基を有していてもよいアリール、置換基を有していてもよい4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環、CO−低級アルキル、SO−低級アルキル、OR、SR、NR、ハロゲン、NO、CN、及びCOORからなる群から選択される1〜3個の置換基を有していてもよい低級アルキル;但し、Ra及びRbの少なくとも一方はH以外の基を示す、
又は、RaとRbは隣接するN原子と一体となって、ヘテロ原子としてN原子を1〜2個含有する4乃至8員飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環を形成し、該ヘテロ環は、ベンゼン環若しくはシクロアルキル環と縮合していてもよく、架橋を有していてもよく又はスピロ環を形成してもよい、更に、該ヘテロ環は1〜5個の置換基を有していてもよい、
E:単結合、C1−3アルキレン、ビニレン(−CH=CH−)、エチニレン(−C≡C−)、CO、NR、CH−J、CONR又はNRCO、
J:O、S、NR、CO、SO又はSO
R:置換基を有していてもよいアリール、置換基を有していてもよいヘテロアリール、置換基を有していてもよいシクロアルキル、置換基を有していてもよいシクロアルケニル又は置換基を有していてもよい4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環、
〜R:同一又は異なって、H又は低級アルキル、
但し、以下の化合物を除く。
(1)RaとRbが隣接するN原子と一体となってピペリジノを形成し、Eが単結合、且つ、Rがピペリジノ、未置換フェニル、p−(トリフルオロメチル)フェニル、p−クロロフェニル又はo−ニトロフェニルである化合物、
(2)RaとRbが隣接するN原子と一体となって、4−メチル−1−ピペラジニルを形成し、Eが単結合、且つ、Rが未置換フェニル、p−メチルフェニル、m−メチルフェニル、p−メトキシフェニル、m−クロロフェニル、p−クロロフェニル又はm−ニトロフェニルである化合物、
(3)Rが置換基を有していてもよいイミダゾリル、5−ニトロ−2−フリル又は5−ニトロ−2−チエニルである化合物、
(4)RaがH、Rbがシクロプロピル、Eが単結合、且つ、Rがp−(トリフルオロメチル)フェニルである化合物、及び
(5)Raがメチル、Rbが2−ヒドロキシ−プロピル、Eが単結合、且つ、Rが3−ピリジルである化合物)。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例2の試験1における大腿骨骨強度(3点曲げ試験)の結果を示すグラフである。なお、***,**及び*は、対照群1に対するStudent’s t−testの結果がそれぞれP<0.005,P<0.01及びP<0.05であることを示す。
図2は、実施例2の試験1における大腿骨皮質骨密度(pQCT)の結果を示すグラフである。なお、***,**及び*は、対照群1に対するStudent’s t−testの結果がそれぞれP<0.005,P<0.01及びP<0.05であることを示す。
図3は、実施例2の試験1における大腿骨皮質骨幅(pQCT)の結果を示すグラフである。なお、***,**及び*は、対照群1に対するStudent’s t−testの結果がそれぞれP<0.005,P<0.01及びP<0.05であることを示す。
図4は、実施例2の試験1における尿中のデオキシピリジノリン値(尿量補正)を示すグラフである。
図5は、実施例2の試験2における脛骨皮質骨幅(pQCT)の結果を示すグラフである。なお、*は、対照群1に対するStudent’s t−testの結果がP<0.05であることを示す。
図6は、実施例2の試験2における脛骨皮質骨密度(pQCT)の結果を示すグラフである。
図7は、実施例2の試験2における尿中のデオキシピリジノリン値(尿量補正)を示すグラフである。なお、***,**及び*は、対照群1に対するStudent’s t−testの結果がそれぞれP<0.005,P<0.01及びP<0.05であることを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、「非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物」とは、骨芽細胞への或いは骨芽細胞自体の分化誘導を促進して骨芽細胞の機能を促進し、その指標である骨芽細胞のALP活性促進作用を明確に示す低分子有機化合物を意味し、生体由来の既存の生理活性物質あるいはそのアナログを含まず、且つペプチド化合物をも含まない。ここに、ALPは骨芽細胞の機能発現初期より上昇し(ジャーナル・オブ・セルラー・フィジオロジー、143巻、420(1990))、骨芽細胞による骨形成に関与することが報告される(細胞工学、13巻、12号、1062(1994)、及びJ.Clin.Invest.,89,1974(1992))ことから、ALP活性上昇は骨芽細胞分化誘導促進による骨形成促進の指標として評価されるものである。
具体的には、本発明の「骨芽細胞分化促進化合物」は、骨芽細胞を用いたLowryらの方法(Journal of Biological Chemistry、207巻、19頁(1954年))と同様の測定法を用いたALP活性測定試験において、ALP促進活性を有することが確認された化合物である。少なくとも1つの骨芽細胞あるいは骨芽細胞への分化能を持つ細胞に対するALP活性測定試験において、10μM以下の濃度でコントロール比150%以上の促進作用を呈するものが好ましく、より好ましくは200%以上の促進作用を呈するものである。特に好ましくは、300nMの濃度で300%以上の促進作用を呈する化合物である。ここにALP活性測定試験に用いることのできる細胞としては、マウス頭蓋骨由来骨芽細胞株MC3T3−E1、ラット新生頭蓋骨由来細胞株ROB−C26、C8a、C11、C20、C23、ラット骨肉腫細胞株ROS17/2.8、ヒト骨芽細胞NHOst、マウス未分化間葉系細胞株C3H10T1/2、ヒト間葉系幹細胞hMSC,その他各種(マウス、ラット、ヒト等)の骨芽細胞、骨細胞、未分化間葉系幹細胞、骨髄細胞等が挙げられ、これらの細胞において上記ALP促進活性が確認される。
現在までいくつかの非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物が報告されており、例えば、ベンゾチエピン誘導体(特許文献2〜4)、クロモン誘導体(特許文献5)、チオフェン誘導体(特許文献6〜11)、プリン誘導体(非特許文献5)、N−キノリルアントラニル酸誘導体(特許文献12)等が本発明の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物として好適である。これらの化合物は、当該特許文献若しくは非特許文献に記載の方法により容易に入手できる。なお、これらの化合物のALP促進活性については、当該特許文献若しくは非特許文献に記載される通りである。
又、新規合成化合物、市販品又はケミカルファイルに登録されている種々の化合物、或いはコンビナトリアル・ケミストリー技術によって得られた化合物群を、後記実施例1に記載されたALP活性測定試験に付して、本発明の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物として用いることができるALP促進活性を示す化合物を見出すことができる。さらに、前記見出された化合物を化学的に修飾し、より活性の良好な非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を得ることもできる。
更に、本発明者等が見出した前記一般式(I)で示される含窒素複素環化合物(以下化合物(I)と略記する)又はその塩は良好な骨芽細胞分化促進作用を有することから、本発明の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物として特に好ましい。
以下化合物(I)について詳述する。
本明細書中「低級」とは、特に断らない限り、炭素数1乃至6個を有する直鎖又は分岐状の炭素鎖を意味する。「低級アルキル」としては特にメチル、エチル及びプロピル基が好ましい。なお、本願明細書中において、「低級アルキル」を「Alk」と略記する。
「アリール」は、好ましくはC6−14単環乃至3環式アリール基である。より好ましくは、フェニル及びナフチル基であり、更に好ましくは、フェニル基である。また、フェニル基にC5−8シクロアルキル環が縮環し、例えば、インダニル又はテトラヒドロナフチル基等を形成していてもよい。
「シクロアルキル」は、好ましくはC3−14シクロアルキル基であり、架橋を有していてもよい。より好ましくはC3−10シクロアルキル基であり、更に好ましくはシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル基である。「シクロアルケニル」は、上記「シクロアルキル」の環に、1又は2個の二重結合を有する基である。
「4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環」は、N,S,Oから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する4乃至8員単環飽和複素環であり、架橋を有していてもよく、一部不飽和結合を有していてもよい。好ましくは、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピペリジル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル、ホモピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、キヌクリジニル及びモルホリニル基である。
「ヘテロアリール」としては、N,S,Oから選択されるヘテロ原子を1乃至4個含有する5乃至6員単環ヘテロアリール基、並びにこれらがベンゼン環若しくは5乃至6員単環ヘテロアリールと縮合した2乃至3環式ヘテロアリール基であり、部分的に飽和されていてもよい。ここに、5乃至6員単環ヘテロアリールとしては、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル及びトリアジニル基が好ましく、2乃至3環式ヘテロアリールとしては、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、ピラジノピリジル、トリアゾロピリジル、ナフチリジニル及びイミダゾピリジル基が好ましい。部分飽和ヘテロアリールとしては、1,2,3,4−テトラヒドロキノリル基等が挙げられる。ヘテロアリールとして、更に好ましくは、ピリジル、ピリミジニル、フリル、チエニル、チアゾリル、キノリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、イミダゾピリジル及びナフチリジニル基であり、特に好ましくは、ピリジル基である。
「置換基を有していてもよいアリール」及び「置換基を有していてもよいヘテロアリール」、「置換基を有していてもよいシクロアルキル」、「置換基を有していてもよいシクロアルケニル」、「置換基を有していてもよい4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環」における置換基としては、好ましくは、下記B群から選択される同一又は異なる1〜5個の置換基であり、更に好ましくはB1群から選択される基であり、特に好ましくは、ハロゲン、OAlk及びSAlkである。
B群:G群から選択される置換基を1〜4個有していてもよいAlk、ハロゲン、NR、NRCO−Alk、NO、CN、OR、−O−(G群から選択される置換基を1〜4個有するAlk)、SR、−S−ハロゲノAlk、−O−COAlk、COOR、COR、CONR、SOAlk、SOAlk、SONR、P(=O)(OR、−O−CH−O−、−O−(CH−O−、D群から選択される置換基を1〜4個有していてもよいアリール、D群から選択される置換基を1〜4個有していてもよいヘテロアリール、−O−(D群から選択される置換基を1〜4個有していてもよいアリール)、D群から選択される置換基を1〜4個有していてもよい4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環、シクロアルキル及び−O−シクロアルキル。ここに、R及びRは前記の通り;「D群」は、Alk、ハロゲン、ハロゲノAlk、NR、NO、CN、OR及びSR;「G群」は、ハロゲン、NR、CN、COOR、OR、SR、D群から選択される置換基を1〜4個有していてもよい4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環、D群から選択される置換基を1〜4個有していてもよいアリール及びD群から選択される置換基を1〜4個有していてもよいヘテロアリール;「ハロゲン」は、I、Br、F及びCl;及び、「ハロゲノAlk」は、1以上のハロゲン原子で置換された低級アルキル(特に好ましくはCF)を、それぞれ示す。以下同様。
B1群:Alk、ハロゲン、ハロゲノAlk、NR、NO、CN、OR、−O−ハロゲノAlk、SR、COOR、CONR、SOAlk、4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環、フェニル及びフェノキシ基。
RaとRbが隣接するN原子と一体となって形成する、「ヘテロ原子としてN原子を1〜2個含有する4乃至8員飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環」としては、環原子としてN原子を1〜2個有し、残る環原子はC原子である4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環基である。該ヘテロ環は、ベンゼン環若しくはC5−8シクロアルキル環と縮合環を形成してもよく、架橋を有していてもよく、スピロ環を形成していてもよい。好ましくは、ピロリジニル、ピペリジル、ホモピペリジニル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、ホモピペラジニル、ペルヒドロアゾシニル、ピロリニル、イミダゾリニル、ピラゾリニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル、1,2−ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリダジニル、テトラヒドロピラジニル、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニル、インドリニル、イソインドリニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリル、3−アザビシクロ[3.2.1]オクチル、8−アザビシクロ[3.2.1]オクチル、3−アザビシクロ[3.2.2]ノニル、3−アザビシクロ[3.3.1]ノニル、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、イソキヌクリジニル、3−アザビシクロ[3.3.2]デカニル、3−アザスピロ[5.5]ウンデカニル、2−アザスピロ[4.5]デカニル、2−アザスピロ[4.4]ノニル及び8−アザスピロ[4.5]デカニル基等が挙げられる。更に好ましくは、架橋を有していてもよい4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環であり、中でも、ピロリジニル、ピペリジル、ホモピペリジニル、ペルヒドロアゾシニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジル、3−アザビシクロ[3.2.1]オクチル、8−アザビシクロ[3.2.1]オクチル、3−アザビシクロ[3.2.2]ノニル及び3−アザビシクロ[3.3.1]ノニル基である。ピペリジル基が特に好ましい。
また、該ヘテロ環は、置換基を有していてもよく、この置換基としては前記B群から選択される1〜5個の置換基が好ましい。更に好ましくは、(COOR、OR及びフェニルから選択される置換基を有していてもよいAlk)、ハロゲン、NR、CN、OR、−O−(COOR、OR及びフェニルから選択される置換基を有するAlk)、SR、COOR、CONR及びフェニルから選択される1〜5個の置換基であり、特に好ましくはAlk、ハロゲン、OR及びCOORから選択される1〜2個の置換基である。
化合物(I)中、好ましい化合物を以下に示す。
(1) −NRaRbが、ベンゼン環若しくはシクロアルキル環と縮合していてもよく、架橋を有していてもよく又はスピロ環を形成してもよく、B群から選択される1〜5個の置換基を有していてもよい、ヘテロ原子としてN原子を1〜2個含有する4乃至8員飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環を形成し;Eが、単結合、C1−3アルキレン、ビニレン、エチニレン、CONH、CHNH、CHO又はCHSであり;Rが、B群から選択される1〜5個の置換基を有していてもよいアリール又はB群から選択される1〜5個の置換基を有していてもよいヘテロアリールである化合物。
(2) Eが単結合、C1−3アルキレン、ビニレン又はエチニレンであり;Rが、B1群から選択される1〜5個の置換基を有するアリール又はB1群から選択される群1〜5個の置換基を有するヘテロアリールである化合物。
(3) −NRaRbが、環ヘテロ原子としてN原子を1個有し架橋を有していてもよく、Alk、ハロゲン、OR及びCOORから選択される1〜2個の置換基を有していてもよい4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環であり;Eが単結合であり;Rが、m位にハロゲン、OAlk及びSAlkから選択される置換基を有するフェニル、又は6位にハロゲン、OAlk及びSAlkから選択される置換基を有するピリジルである化合物。
特に好ましい化合物は、以下に列記する含窒素複素環化合物又はその塩である。
6−アゾカン−1−イル−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−アゼパン−1−イル−3−(6−ブロモピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、3−(3−メトキシフェニル)−6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、3−(3−ブロモフェニル)−6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−アゼパン−1−イル−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−(4−フルオロピペリジン−1−イル)−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−(3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−イル)−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−(3,3−ジフルオロピペリジン−1−イル)−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−アゾカン−1−イル−3−(6−ブロモピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、及び6−(8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−イル)−3−(6−ブロモピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン。
化合物(I)の置換基の種類によっては、幾何異性体や互変異性体が存在する場合があるが、本発明にはこれらの異性体の分離したもの、あるいは混合物が包含される。また、化合物(I)は、不斉炭素原子を有する場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明はこれらの光学異性体の混合物や単離されたものを全て包含する。
化合物(I)は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もある。かかる塩としては、製薬学的に許容される塩であり、好ましくは、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の金属を含む無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
さらに、本発明の化合物(I)は、その塩の各種の水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質をも包含する。
本発明の化合物(I)は後記実施例1に示すように良好なALP促進活性を有し、それ自体で骨芽細胞分化誘導促進による骨形成促進作用を有する。
本発明において、「ビスホスホネート」とは、骨吸収抑制作用を有するビスホスホン酸若しくはその製薬学的に許容される塩又はエステルであって、好ましくは、エチドロネート(etidronate)、アレンドロネート(alendronate;特公平2−13645号公報、特公平6−62651号公報、米国特許4705651号公報)、リセドロネート(risedronate;日本特許第2702419号公報、日本特許第2568999号公報、ヨーロッパ特許186405号公報)、パミドロネート(pamidronate;特公平5−8717号公報、米国特許4327039号公報)、インカドロネート(incadronate;特公平7−629号公報)、クロドロネート(clodronate)、ミノドロネート(minodronate;特公平6−99457号公報)、イバンドロネート(ibandronate;特公平8−2913号公報、ヨーロッパ特許252504号公報)、ゾレドロネート(zoledronate;日本特許第2744238号公報、ヨーロッパ特許275821号公報)、チルドロネート(tiludronate;特公平4−29676号公報、日本特許第2735462号公報、米国特許5739381号公報)、ネリドロネート(neridronate;特公昭63−7526号公報、米国特許4578376号公報)等である。更に好ましくは、アレンドロネート、リセドロネート、パミドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、イバンドロネート及びゾレドロネート、特に好ましくは、アレンドロネート、リセドロネート、インカドロネート、ミノドロネート及びゾレドロネートである。
ビスホスホン酸の製薬学的に許容される塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の金属を含む無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩が挙げられる。エステルとしては、好ましくはメチルエステル、エチルエステル等の低級アルキルエステルである。
これらのビスホスホネートは市販されているものを用いてもよく、上記文献記載の方法で製造してもよい。
また、本発明において、「骨量増加誘導剤」とは、骨量及び/又は骨強度を増加させる薬剤を意味し、好ましくは骨量と骨強度の両者を増加させる薬剤である。従って、本発明の「骨量増加誘導剤」には、骨量及び/又は骨強度の減少を伴う、骨粗鬆症、線維性骨炎(副甲状腺機能亢進症)、骨軟化症、ページェット病等の代謝性骨疾患の予防若しくは治療剤;骨折、再骨折、骨欠損、変形性骨関節症、多発性骨髄腫、癌の骨転移等の骨組織損傷における骨組織修復剤;更に、歯科領域における歯周病治療剤、歯周組織欠損の修復剤、人工歯根の安定化剤、顎堤形成促進剤等が包含される。本発明の「骨量増加誘導剤」としては、好ましくは、骨粗鬆症等の代謝性骨疾患の予防若しくは治療剤であり、特に好ましくは骨形成能が低下した、骨代謝回転低下型(II型)骨粗鬆症、殊に老人性骨粗鬆症の予防若しくは治療剤である。
本発明の「骨量増加誘導剤である組合せ物」において、「組合せ物」とは、それぞれの成分が独立した製剤であって、併用療法に用いることができるものを意味し、それぞれを組合せて包装したもの(例えばキット等の形態)、又は併用投与用にそれぞれが独立して販売されるものであってもよい。ここに、「同時に」とは、第一製剤と第二製剤を一緒に投与することを意味し、「別々に」とは、第一製剤と第二製剤を同一若しくは異なる投与経路で、同一若しくは異なる投与頻度若しくは投与間隔で、別々に投与することを意味する。好ましくは、各製剤のバイオアベイラビリティー、安定性等を考慮し、それぞれの製剤に適した製剤処方、投与経路、投与頻度等の投与条件下にて、同時に若しくは別々に投与される。
キットとしては、非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を含有する第一製剤とビスホスホネートを含有する第二製剤を含み、所望によりプラセボ剤等のそれぞれの投与時期に合わせた投与を容易にする追加的な製剤や表示部材を含んでいてもよい包装品が挙げられる。
本発明において、「骨量増加作用増強剤」とは、他の薬剤が結果として骨量増加を誘導する作用を有するとき、その作用と協調して、より骨量を増加させる薬剤を意味し、具体的には、
(a)ビスホスホネートに関しては、骨芽細胞分化促進化合物の骨量増加作用がビスホスホネートの併用によって増強されることから、骨芽細胞分化促進化合物の骨量増加作用を増強する薬剤を意味し、一方
(b)骨芽細胞分化促進化合物に関しては、ビスホスホネートの骨量増加作用が骨芽細胞分化促進化合物の併用によって増強されることから、ビスホスホネートの骨量増加作用を増強する薬剤を意味する。
本発明の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物とビスホスホネートを含有する医薬組成物、並びに、本発明の組合せ物を構成する前記第一製剤若しくは第二製剤は、それぞれ当業者に周知の技術を用いて製剤化することができる。即ち、通常製剤化に用いられる、薬剤用担体、賦形剤、その他添加剤を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、吸入剤等による経口投与、又は、静注、筋注等の注射剤、坐剤経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、ひとつ又はそれ以上の活性物質が、少なくともひとつの不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと混合される。組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤や繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、安定化剤、グルタミン酸又はアスパラギン酸のような溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等であって、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤としては、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を含有する。水性の溶液剤、懸濁剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩液が含まれる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80(商品名)等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
また、国際公開第94/05297号パンフレット、国際公開第99/04773号パンフレット、米国特許5358941号公報、国際公開第99/18972号パンフレット、国際公開第97/44017号パンフレット、国際公開第2000/21541号パンフレット、国際公開第2001/82903号パンフレット、国際公開第2001/76577号パンフレット等には、ビスホスホネート含有製剤に関する各種技術が開示されており、これらの既知技術を適宜応用して所望のビスホスホネート含有製剤を製造することもできる。
本発明の医薬組成物若しくは組合せ物における、非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物は骨芽細胞分化促進活性を呈する投与量で経口若しくは非経口的に投与される。前記文献で既知の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を用いる場合は、当該文献記載の好適な投与量・投与形態を採用できる。例えば、本発明の化合物(I)を用いる場合、その1日当たりの投与量は、経口投与の場合、体重当たり約0.001から100mg/kg、好ましくは0.01〜60mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2乃至4回に分けて投与する。或いは、数日〜数ヶ月分を併せて、例えば週1回、週2回、月2回、月1回等の頻度で投与してもよい。静脈投与される場合は、体重当たり約0.0001から20mg/kg、好ましくは約0.001から5mg/kgが適当で、1日1回乃至複数に分けて投与する。或いは、数日〜数ヶ月分を併せて、例えば週1回、週2回、月2回、月1回等の頻度で投与してもよい。本発明の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物は、骨形成の所望される部位に局所注射剤やデポ剤として局所投与されてもよい。
一方、本発明の医薬組成物若しくは組合せ物における、ビスホスホネートはその骨吸収抑制活性を呈する投与量で経口若しくは非経口的に投与される。ビスホスホネートの1日当たりの投与量は、用いるビスホスホネートの活性に応じて決定される。臨床に適した投与量・投与頻度が既知のビスホスホネートにおいては、当該臨床投与量・投与頻度で投与することが好ましい。或いは、骨芽細胞分化促進化合物との相乗効果を考慮してそれより少ない量が投与されてもよい。例えば、アレンドロネート、リセドロネート、パミドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、イバンドロネート及びゾレドロネートにおける経口投与の場合、1日当たり約0.001から30mg、好ましくは0.01〜10mgが適当であり、これを1日1回、若しくは数日〜数ヶ月分を併せて、例えば週1回、週2回、月2回、月1回等の頻度で投与する。静脈投与される場合は、体重当たり約0.0001から1mg/kg、好ましくは約0.001から0.5mg/kgが適当で、これを1日1回、若しくは数日〜数ヶ月分を併せて、週1回、2週に1回、月1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、年1回等の頻度で投与する。
本発明の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物とビスホスホネートを含有する医薬組成物において、両成分は各々上記投与量に相当する量を包含するように調製され製造される。
本発明に用いられる化合物(I)は新規物であるから、以下にその代表的な製造方法を説明する。
化合物(I)及びその塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料ないし中間体の段階で適当な保護基、すなわち容易に当該官能基に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。しかるのち、必要に応じて保護基を除去し、所望の化合物を得ることができる。このような官能基としては例えば水酸基やカルボキシル基等を挙げることができ、それらの保護基としては例えばグリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜用いればよい。
以下に代表的な製造法について説明する。
第1製法

(式中、Lはハロゲン原子又は有機スルホネート等の常用の脱離基を示す。以下同様。)
化合物(I)は、常法のN−アルキル化、例えば、アミン誘導体(III)と、ハロゲン原子又は有機スルホネート等の常用の脱離基を有する化合物(II)とを、炭酸カリウム、トリエチルアミン、水素化ナトリウム等の塩基の存在下、又は非存在下で、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル等の不活性溶媒中、又は無溶媒で、冷却下乃至還流下で反応させることによって行うことができる。
その他の製法
前記第1製法で得られた化合物を、更に、常法の置換基の修飾反応、例えばニトロ基のアミノ基への還元反応、アミド化、スルホンアミド化、N−アルキル化、エステル化、エステルの加水分解、水酸基のエーテル化、チオエーテルのスルホン化、ハロゲン化、オレフィン化等に付して、所望の置換基を有する本発明化合物を得ることができる。これらの反応は例えば、ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS Second Edition(Sandler,Karo著)等に記載の方法に準じて容易に行うことができる。
(化合物(I)の原料化合物の製法)
製法a

原料化合物(II)は、ヒドラジン化合物(IV)とカルボン酸化合物(V)とを脱水縮合反応に付しヒドラジド化合物(VI)とした後、環化することによって製造することができる。
第一工程の脱水縮合反応は常法により行うことができ、例えば、遊離カルボン酸と、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(WSCD)等の縮合剤あるいは1,1′−カルボニルジイミダゾール等のカルボン酸の活性化剤を用いて、又は、カルボン酸の反応性誘導体(例えば、酸クロリド、酸ブロミド等の酸ハライド;酸アジド;メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、置換していてもよいフェノール、N−ヒドロキシスクシンイミド等を用いて調製できる活性エステル;対称酸無水物;アルキル炭酸、p−トルエンスルホン酸等との混合酸無水物等)を用いて容易に行うことができる。
反応は等モルあるいは一方を過剰量用いて、反応に不活性な有機溶媒、例えばピリジン、THF、塩化メチレン、DMF、アセトニトリル等の溶媒中にて行われる。反応温度は反応性誘導体の種類によって適宜選択される。反応性誘導体の種類によっては、4−ジメチルアミノピリジン等の塩基を添加することが、反応を促進させる上で有利な場合がある。
第2工程の環化反応は、酢酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸等の酸の存在下、又は非存在下で、キシレン、エチレングリコール等の溶媒中、或いは無溶媒で反応させることにより行うことができる。この反応は室温乃至加熱還流下で行うことができる。
製法b

原料化合物(IX)は、化合物(IV)とイソシアネート化合物(VII)とをアセトニトリル等の反応に不活性な溶媒中で縮合させ化合物(VIII)を得た後、トリエチルアミン等の塩基の存在下、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタン及びトリフェニルフォスフィンを加えて環化することにより製造することができる。反応は、常法により、室温乃至加熱還流下で適宜実施できる。
上記各製法により得られた反応生成物は、遊離化合物、その塩、水和物あるいは各種の溶媒和物として単離され精製される。塩は通常の造塩反応に付すことにより製造できる。単離、精製は、抽出、濃縮、留去、結晶化、濾過、再結晶、各種クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行われる。各種異性体は異性体間の物理化学的な差を利用して常法により単離できる。例えば、光学異性体は一般的な光学分割法、例えば分別結晶化又はクロマトグラフィー等により分離できる。また、光学異性体は、適当な光学活性な原料化合物より合成することもできる。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:化合物(I)のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性
マウス由来骨芽細胞株MC3T3−E1を5%ウシ胎仔血清(FBS:fetal bovine serum)含有α−最小必須培地(MEM:minimum essential medium)中で96穴プレートに3000cells/wellの濃度で播種し、4〜6時間培養した。接着した細胞に、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した試験化合物を添加し(DMSO終濃度0.5%)、さらに3日間培養した。細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄後、基質を添加し、37℃で10−15分間インキュベートした。0.5Mの水酸化ナトリウムを加えて反応を停止させ、405nm(参照波長492nm)の吸光度を測定し、対照群を100%として、これに対する%値として、ALP活性を算出した。なお、上記測定法はLowryらの方法(Journal of Biological Chemistry、207巻、19頁(1954年))を参考にして行った。
(結果)後記製造例2,6,10,19,21,22,25,26,31,32,33,36,37,40,43,52,63,65,70,73,74,79,82,83,84,85,90,91,92,93,94,98,101,105,112,114,115,及び116に示す、化合物(I)に包含される多くの化合物が、300nMの濃度において対照群に対して300%以上のALP活性を有していた。よって、本発明の化合物(I)はALP活性を促進し良好な骨芽細胞分化促進活性を有することが確認された。
実施例2:骨粗鬆症モデル(ラットOVX)を用いた試験
<骨粗鬆症モデルの作製>
実験には16週令の雌性SD系ラット(日本チャールスリバー)を用いた。麻酔下で両側の卵巣を露出し、偽手術(sham)群を除く全ての群の卵巣を、結紮し摘出した。偽手術(sham)群は卵巣を腹腔外へ露出する操作のみ行った。
上記モデルの作製はKaluらの方法(Bone Miner.,15巻,175頁(1991年)),Frostらの方法(Bone Miner.,18巻,227頁(1992年))を参考にした。
<試験1>
1)試験方法
卵巣摘除術(OVX)前に、pQCTにて脛骨近位端より5mmの骨密度を測定した。OVX後8週間放置し、骨密度が有意に減少したことを確認した。各群の骨密度に有意差がないように群分け後、被験化合物を12週間反復投与した。投与4週毎に骨密度を測定し、観察期間終了前日より24時間尿を採取した。採尿終了後、エーテル麻酔下で失血死させ、検体を採取した。
(a) 大腿骨骨強度(3点曲げ試験)測定方法
骨幹部の骨強度を3点曲げ試験により測定した(TK−252c,室町機械)。支点間距離20mmの支持台に大腿骨を静置し、骨幹中央部に10mm/minの速度で曲げ負荷を加え、破断に至るまでの荷重−変位曲線を記録した。荷重歪み曲線の最大値を最大破断強度(failure load)、その曲線の降伏点前の最大傾斜区間の傾きを曲げ剛性(stiffness)とした。
(b)骨密度等,各種パラメーターの非侵襲的測定方法(pQCT)
末梢骨用定量的X線CT(peripheral quantitative computed tomography,pQCT)装置(XCT960A,Norland−Stratec)を用いて骨の断面形状を測定し、画像を解析することにより、骨密度等、各種パラメーターを算出した。
(c)尿中デオキシピリジノリン値測定方法
骨代謝マーカーとしてリジルピリジノリン(以下デオキシピリジノリン)値の測定をHPLC法(Uebelhart,Dら、Bone Miner.8巻,87頁(1990年))により、エスアールエル・メディサーチで測定した。尿量による影響を排除するため、得られた尿中デオキシピリジノリン値を尿中クレアチニン濃度で除すか、24時間尿量を乗ずることにより補正した。
2)被験化合物
本発明の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進剤として、化合物(I)の代表的化合物である製造例93の化合物(6−(4−フルオロピペリジン−1−イル)−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン:以下化合物Aと略記する)を、ビスホスホネートとしてインカドロネート(ビスフォナール(登録商標)、山之内製薬製)をそれぞれ用いた。化合物A若しくはインカドロネートの単独並びに副甲状腺ホルモンhPTH(1−34)を投与する群を比較群とした。また、薬剤非投与のOVX群と偽手術群(sham)を対照群とした。化合物Aは30mg/5ml/kgの0.5%メチルセルロース懸濁液として1日2回経口投与し、インカドロネートは1mg/2.5ml/kgの水溶液として1日1回経口投与した。hPTH(1−34)は3μg/1ml/kgの生理食塩水溶液として1日1回皮下投与した。対照群は0.5%メチルセルロースを1日2回経口投与した。
各投与群の詳細を下表に示す。

3)結果
大腿骨骨強度(3点曲げ試験)の結果を図1,大腿骨皮質骨密度(pQCT)の結果を図2,大腿骨皮質骨幅(pQCT)の結果を図3に示す。更に,尿中のデオキシピリジノリン値(尿量補正)を図4に示す。
4)考察
骨芽細胞分化促進化合物である化合物A、又はビスホスホネートであるインカドロネートの単独投与群(比較群1及び比較群2)の大腿骨の皮質骨密度・幅・強度に対する効果は、対照群1に比して骨密度・幅・強度を増加する傾向が見られるものの、その程度は十分なものでは無かった。一方、本発明の併用群は、大腿骨の皮質骨密度・幅・強度を、顕著に増加させ、その作用はPTH(比較群3)や偽手術(対照群2)に優るものであった(後記図1、図2及び図3参照)。
<試験2>
1)試験方法
卵巣摘除術(OVX)前に、pQCTにて脛骨近位端5mmの骨幹端部の骨密度を測定した。OVX8週間放置後、再測定により,骨密度が有意に減少したことを確認した。さらにpQCTにて脛骨近位端15mmの骨幹部の皮質骨幅を測定し,各群の骨密度・皮質骨幅に有意差がないように群分け後、被験化合物を4週間反復投与した。4週間投与後、前記と同様にして、脛骨骨幹部の皮質骨幅と密度を測定した。また、投与5週間後に,24時間尿を採取し、EIA法(オステオリンクス「DPD」,住友製薬バイオメディカル(株))にて尿中デオキシピリジノリン値を測定した。
2)被験化合物
化合物Aは30mg/5ml/kgの0.5%メチルセルロース懸濁液として1日2回経口投与し、アレンドロネートは3mg/2.5ml/kgの水溶液として1日1回経口投与した。対照群は0.5%メチルセルロースを1日2回,水を1日1回経口投与した。
各投与群の詳細を下表に示す。

3)結果
脛骨皮質骨幅(pQCT)を図5に,脛骨皮質骨密度(pQCT)を図6に,及び尿中のデオキシピリジノリン値(尿量補正)を図7に示す。
4)考察
本発明の併用群は、わずか4週間の投与において、脛骨の皮質骨幅を有意に増加させ、比較群1及び2に比して良好に骨量を増大させることが示された。
本発明の併用投与群における、大腿骨若しくは脛骨の皮質骨密度・幅・強度に対する顕著な効果は、各単独投与群(比較群1及び比較群2)の相加的効果をはるかに超えたものであった。これは、非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物の骨代謝回転亢進作用と、ビスホスホネートの骨吸収抑制作用が相乗的に働くことによって、骨代謝全体が良好にコントロールされ、骨量及び骨強度が相乗的あるいは相加以上に増大したものと推察された。ビスホスホネートやPTHを用いた現行治療法では、臨床上重篤な大腿骨頸部(皮質骨)骨折に対する予防効果は十分ではないと言われており、特に皮質骨の強度を顕著に増加できる本発明併用剤は臨床上非常に有用と考えられる。
in vitroで良好な骨芽細胞分化促進作用を有する化合物Aは,その単独投与において、骨吸収の指標である尿中デオキシピリジノリン値を上昇させたこと(図4並びに図7参照)から、骨吸収活性をも増加させたと推察される。即ち、骨芽細胞分化促進化合物は骨形成を亢進させると同時に、骨吸収も亢進させ、骨代謝回転全体を亢進させるため、結果として骨量及び/又は骨強度の増強作用は十分ではなかったと推察された。一方、本発明の併用投与群では、その尿中デオキシピリジノリン値の低下(図4並びに図7参照)より骨吸収の亢進が抑えられていると推察され、ビスホスホネートが骨芽細胞分化促進化合物の骨形成亢進作用を阻害することなく、その骨吸収亢進のみ抑制した結果、上記の顕著な相乗効果がもたらされたものと考えられた。
実施例3:化合物(I)の製造例
以下、化合物(I)の具体的な製造例と原料化合物の製造例である参考例を以下に示す。なお、文中の略号は、Dat:物理化学的性状、F:FAB−MS(M+H)を示し、その他の略号は前記の通りである。
参考例1:(6−クロロピリダジン−3−イル)ヒドラジン、4−ニトロ安息香酸、WSCD塩酸塩及びTHFの混合物を室温で2時間攪拌した。反応液に水を加え、析出した沈殿物を濾取し、水及びジエチルエーテルで洗浄し、N’−(6−クロロピリダジン−3−イル)−4−ニトロベンゾヒドラジドを得た。これに酢酸を加え、110℃で2時間攪拌した後、反応液を減圧下で濃縮し、得られた粗結晶をエタノールで洗浄し、6−クロロ−3−(4−ニトロフェニル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジンを得た。Dat(F:276)
参考例2:(6−クロロピリダジン−3−イル)ヒドラジンとトリエチルアミンのTHF溶液に、氷冷下で3−シアノベンゾイルクロリドを加え、室温で1時間攪拌した。反応液に水を加え、析出した沈殿物を濾取し、水及びジエチルエーテルで洗浄し、N’−(6−クロロピリダジン−3−イル)−3−シアノベンゾヒドラジドを得た。これに酢酸を加え、110℃で2時間攪拌した後、反応液を減圧下濃縮し、得られた粗結晶をエタノールで洗浄し、3−(6−クロロ−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)ベンゾニトリルを得た。Dat(F:256)
参考例3:(6−クロロピリダジン−3−イル)ヒドラジン、3−ジメチルアミノ安息香酸、WSCD塩酸塩及びTHFの混合物を室温で2時間攪拌した。反応液に水を加え、析出した沈殿物を濾取し、水及びジイソプロピルエーテルで洗浄し、N’−(6−クロロピリダジン−3−イル)−3−ジメチルアミノベンゾヒドラジドを得た。これにエチレングリコールを加え、160℃で4時間攪拌した。室温にまで放冷した後、常法により精製して、6−クロロ−3−(3−ジメチルアミノフェニル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジンを得た。Dat(F:274)
参考例4:3−メトキシフェニルイソシアネートと3−クロロ−6−ヒドラジノピリダジンのアセトニトリル溶液を室温で30分間攪拌した後、1,2−ジブロモ−1,1,2,2−テトラクロロエタンを加え、更に室温で2時間攪拌した。この反応溶液に氷冷下トリエチルアミンとトリフェニルホスフィンを加え、室温で3日間攪拌した後、反応溶液を減圧下濃縮し、常法により精製して、6−クロロ−N−(3−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−アミンを得た。Dat(F:276)
参考例1と同様にして、後記表3〜4に示される参考例5〜50の化合物を得た。
製造例1:3−(6−クロロ−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)ベンゾニトリル(450mg)及びピペリジン(5ml)の混合物を、加熱還流下2時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をクロロホルムで抽出した。抽出液を飽和塩化アンモニウム水溶液と飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた粗結晶をエタノールから再結晶し、3−[6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル]ベンゾニトリル(435mg)を微黄色結晶として得た。
製造例2:N−シクロペンチル−3−(3−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−6−アミン(300mg)のDMF(5ml)溶液に氷冷下60%水素化ナトリウム(44mg)を加え、氷冷から室温で1時間攪拌した後、ヨウ化メチル(68μl)を加え、さらに2時間攪拌した。反応混合物に水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=20:1)で精製した後、酢酸エチルから再結晶し、N−シクロペンチル−3−(3−メトキシフェニル)−N−メチル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−6−イルアミン(145mg)を淡黄色結晶として得た。
製造例3:水酸化カリウム(98mg)とDMSO(5ml)の混合物に6−アゼパン−1−イル−3−(1H−インドール−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(501mg)を加え、室温にて30分攪拌した後、ヨウ化メチル(0.15ml)を加え、さらに2時間室温にて攪拌した。反応液に水を加え、析出した固体を濾取し、水−メタノール混合溶媒で洗浄後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=99:1)で精製した。得られた粗結晶をエタノールから再結晶し、6−アゼパン−1−イル−3−(1−メチルインドール−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(40mg)を無色結晶として得た。
製造例4:3−[6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル]アニリン(180mg)と無水酢酸(3ml)の混合物を室温で6時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮し、得られた粗結晶をジエチルエーテルで洗浄することにより、3’−[6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル]アセトアニリド(190mg)を無色結晶として得た。
製造例5:6−ピペリジン−1−イル−3−ピペリジン−3−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(670mg)、トリエチルアミン(360mg)及び塩化メチレン(15ml)の混合溶液にメタンスルホニルクロリド(320mg)を加え、室温で8時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を酢酸エチルで抽出した。抽出液を水と飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた粗結晶をエタノールから再結晶し、3−(1−メタンスルホニルピペリジン−3−イル)−6−ピペリジン−1−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(230mg)を無色結晶として得た。
製造例6:6−アゾカン−1−イル−3−(6−クロロピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(360mg)、ナトリウムメトキシド(570mg)及びトルエン(20ml)の混合物を加熱還流下3時間攪拌した。室温にまで放冷後、反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を酢酸エチルで抽出した。抽出液を水及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた粗結晶をジエチルエーテルで洗浄し、6−アゾカン−1−イル−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(290mg)を淡黄色結晶として得た。
製造例7:3−[6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル]安息香酸(430mg)、触媒量のDMF及びTHF(10ml)の混合溶液に、氷冷下で塩化オキザリル(0.44ml)を加え、室温で2時間攪拌した後、氷冷下でアンモニアガスを15分間通じた。反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣にクロロホルム−メタノール(10:1)を加え、不溶物を濾去した。濾液を減圧下濃縮し、得られた粗結晶をエタノールから再結晶し、3−[6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル]ベンズアミド(242mg)を微褐色結晶として得た。
製造例8:3−[3−(メチルスルファニル)フェニル]−6−ピペリジン−1−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(550mg)の塩化メチレン(30ml)溶液に、室温で3−クロロ過安息香酸(1.25g)を加えて13時間攪拌した。反応液に水を加え、塩化メチレンで希釈した。有機層を水、1M水酸化ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=98:2)で精製した後、エタノールで洗浄し、3−[3−(メチルスルホニル)フェニル]−6−ピペリジン−1−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(250mg)を無色結晶として得た。
製造例9:濃硫酸(1.5ml)及び水(3ml)の混合液を−5℃に冷却し、4−(6−ピペリジン−1−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)−1,3−チアゾール−2−アミン(0.90g)、硫酸銅(II)(1.50g)臭化ナトリウム(0.62g)を順次加え0℃にて5分間攪拌した後、亜硝酸ナトリウム(0.25g)の水溶液(1.6ml)を滴下し、室温にて終夜攪拌した。反応液に水、クロロホルム及び2−プロパノールを加え、不溶物を濾去した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=20:1)で精製し、得られた粗結晶をエタノール−ジエチルエーテルから再結晶することにより、3−(2−ブロモ−1,3−チアゾール−4−イル)−6−ピペリジン−1−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(75mg)を淡黄色結晶として得た。
製造例10:6−(6−アゼパン−1−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)ピリジン−2−オール(700mg)及び三臭化リン(7ml)の混合物を130℃で6時間攪拌した。室温にまで放冷し、氷水を加え、飽和炭酸カリウム水溶液で中和した後、クロロホルムで抽出した。抽出液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=98:2)で精製した後、エタノールから再結晶し、6−アゼパン−1−イル−3−(6−ブロモピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(240mg)を無色結晶として得た。
製造例11:ジエチル[(6−アゼパン−1−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)メチル]ホスホネート(367mg)のTHF(10ml)溶液に、氷冷下カリウムtert−ブトキシド(127mg)を加え、室温にて40分間攪拌した。得られた赤色溶液に2−ブロモベンズアルデヒド(0.128ml)を加え、室温にて更に1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた白色固体をメタノールから再結晶し、6−アゼパン−1−イル−3−[(E)−2−(2−ブロモフェニル)ビニル]−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(152mg)を無色結晶として得た。
製造例12:エチル 6−クロロ−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−カルボキシレート(3.00g)及びヘキサメチレンイミン(10ml)の混合物を100℃にて2時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=30:1)で精製し、得られた粗結晶をエタノール及びジエチルエーテルから再結晶することにより、3−(アゼパン−1−イルカルボニル)−6−アゼパン−1−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(0.23g)を無色結晶として得た。
製造例13:1−[(ベンジルオキシ)カルボニル]ピペリジン−3−カルボン酸(2.44g)、3−クロロ−6−ヒドラジノピリダジン(1.34g)、WSCD塩酸塩(2.13g)及び塩化メチレン(60ml)の混合物を室温で16時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水と飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣に酢酸(80ml)を加え、110℃で2日間攪拌後、溶媒を減圧下留去した。得られた粗結晶をエタノールで洗浄し、ピペリジン(10ml)中、加熱還流下で3時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム:メタノール=97:3)で精製した。得られた無色固体にエタノール(40ml)と10%パラジウム−炭素(150mg)を加え、水素雰囲気下室温で6時間攪拌した後、触媒を濾去した。得られた濾液を減圧下濃縮することにより、6−ピペリジン−1−イル−3−ピペリジン−3−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(1.18g)を無色非晶性物質として得た。
製造例14:エチル 2−アミノチアゾール−4−カルボキシレート(4.56g)のTHF溶液(200ml)に1M水酸化ナトリウム水溶液(30ml)を加え、室温で3時間攪拌した。反応液に1M塩酸(30ml)を加え、濃縮した後、得られた残渣をDMF(50ml)に溶解し、これに6−クロロピリダジン−3−イルヒドラジン(3.83g)及びWSCD塩酸塩(6.09g)を加え、室温にて攪拌した。反応液に水を加え、析出した沈殿物を濾取し、水及びジエチルエーテルで洗浄し、これに酢酸(30ml)を加え、加熱還流した後、反応液を減圧下濃縮した。残さに飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、及び飽和食塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下濃縮した。これにピペリジン(10ml)を加え、100℃で加熱し、反応液を減圧下濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム:メタノール=30:1)により精製し、3−(2−アミノチアゾール−4−イル)−6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(0.92g)を黄色固体として得た。
製造例15:6−ヒドラジノ−N−メチル−N−フェニルピリダジン−3−アミン(1.14g)の塩化メチレン溶液(10ml)に6−クロロピコリン酸(0.83g)及びWSCD塩酸塩(1.22g)を加え、室温にて終夜攪拌した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;クロロホルム)により精製し、6−クロロ−N’−{6−[メチル(フェニル)アミノ]ピリダジン−3−イル}ピリジン−2−カルボヒドラジド(0.57g)を得た。本化合物(0.56g)をキシレン(20ml)中、150℃で終夜攪拌し、反応液を濃縮し、3−(6−クロロピリジン−2−イル)−N−メチル−N−フェニル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−6−アミン(0.54g)を無色固体として得た。
製造例16:6−クロロ−3−(6−クロロピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(620mg)、ヘプタメチレンイミン(1.32g)及び1,4−ジオキサン(20ml)の混合物を100℃で9時間攪拌した。室温にまで放冷後、反応溶液を減圧下濃縮し、得られた残渣を酢酸エチルで抽出した。抽出液を5%クエン酸水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた粗結晶をエタノールから再結晶し、6−アゾカン−1−イル−3−(6−クロロピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(370mg)を灰白色結晶として得た。
製造例17:6−(6−クロロ−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)ピリジン−2−オール(960mg)とピペリジン(10ml)の混合物を100℃で3時間攪拌した。室温にまで放冷後、反応溶液を減圧下濃縮し、得られた結晶性残渣をエタノールで再結晶することにより、6−(6−ピペリジン−1−イル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン−3−イル)ピリジン−2−オール(820mg)を灰白色結晶として得た。
製造例1と同様に処理し、所望により4M塩化水素−酢酸エチルを用いた常法の造塩反応に付して、後記表6〜12に示される製造例18〜105の化合物を得た。また、製造例2と同様にして後記表12の製造例106の化合物を、製造例3と同様にして107の化合物を、製造例4と同様にして製造例108及び109の化合物を、製造例6と同様にして後記表12〜13の製造例110〜112の化合物を、製造例8と同様にして製造例113の化合物を、製造例10と同様にして製造例114〜116の化合物を、製造例11と同様にして製造例117及び118の化合物を、製造例16と同様にして製造例119の化合物を、及び製造例17と同様にして製造例120〜121の化合物を、それぞれ得た。
後記表3〜4に参考例化合物の構造式と物理化学的性状を、表5〜13に製造例化合物の構造式と物理化学的性状をそれぞれ示す。また、表14に示される化合物は、適当な原料化合物を用いて、前記製造例若しくは製造法に記載の方法とほぼ同様にして、又は、それらに当業者に自明の若干の変法を適用して、容易に製造される化合物(I)の例である。
表中の略号は、Rex:参考例番号; Ex:製造例番号; Dat:物理化学的性状(F:FAB−MS(M+H); M:融点[℃]; (d):分解; N1:NMR(DMSO−d,TMS内部標準)の特徴的ピークδppm);Sal:塩(空欄:フリー体; HCl:塩酸塩; 2HCl:二塩酸塩); Me:メチル; Et:エチル;及び Ac:アセチルを、それぞれ示す。












実施例4:処方例
(カプセル剤) 1000カプセル
アレンドロネート 5.0g
化合物A 30.0g
乳糖 115.0g
トウモロコシデンプン 40.0g
ポリビニルピロリドンK30 4.0g
タルク 5.4g
ステアリン酸マグネシウム 0.6g
200.0g
アレンドロネートを乳糖35.0g及びトウモロコシデンプン5gと混合し、ポリビニルピロリドンK30(1.0g)糊液を用いて練合後、20メッシュの篩を通して造粒し、50℃で2時間乾燥した後、24メッシュの篩を通す。化合物Aを残りの乳糖、トウモロコシデンプン及びポリビニルピロリドンK30糊液を用いて同様に造粒する。両粒子とタルクおよびステアリン酸マグネシウムを混合し、硬カプセルに200mgずつ充填してカプセル剤を製する。
実施例5:キット
(1)週1回投与用のアレンドロネート35mg錠 1錠と、1日1回投与用の化合物A100mg錠 7錠を収納したPTP包装を含むキット
(2)1日1回投与用のミノドロネート1mg錠 1錠と、1日2回投与用の化合物A30mg錠 2錠を収納し、各錠剤収納箇所に近い部分にそれぞれの服用時間を示す表示を有するPTP包装を含むキット
【産業上の利用可能性】
本発明の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物と骨吸収抑制作用を有するビスホスホネートを含有する医薬組成物若しくは組合せ物は、骨代謝をコントロールして骨量及び/又は骨強度を増加させる骨量増加誘導剤として有用である。
具体的には、骨量及び/又は骨強度の減少を伴う、骨粗鬆症、線維性骨炎(副甲状腺機能亢進症)、骨軟化症、ページェット病等の代謝性骨疾患の予防若しくは治療剤;骨折、再骨折、骨欠損、変形性骨関節症、多発性骨髄腫、癌の骨転移等の骨組織損傷における骨組織修復剤;更に歯科領域における歯周病治療剤、歯周組織欠損の修復剤、人工歯根の安定化剤、顎堤形成促進剤等として有用である。特に、骨粗鬆症等の代謝性骨疾患の予防若しくは治療剤、中でも骨形成能が低下した老人性骨粗鬆症の予防若しくは治療剤として期待される。
ビスホスホネートやPTHを用いた現行治療法では、臨床上重篤な大腿骨頸部(皮質骨)骨折に対する予防効果は十分ではないと言われており、前記実施例2に示すように、特に皮質骨の骨量及び/又は強度を顕著に増加できる本発明の医薬組成物若しくは組合せ物は、臨床上非常に有用である。
また、本発明の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を有効成分とするビスホスホネートの骨量増加作用増強剤は、ビスホスホネートの長期投与による低骨代謝回転状態において懸念される、old bone蓄積による微細骨構造の脆弱化や過度のミネラル化、骨折治癒(修復)過程の遅延の予防剤としても有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物、及び第二成分としてビスホスホネートを含有して成る骨量増加誘導剤である医薬組成物。
【請求項2】
第一成分が下記一般式(I)で示される含窒素複素環化合物又はその塩である請求の範囲1記載の医薬組成物。

(式中の記号は以下の意味を有する。
Ra及びRb:同一又は異なって、H;CO−低級アルキル;SO−低級アルキル;置換基を有していてもよいシクロアルキル;置換基を有していてもよいアリール;又は、置換基を有していてもよいシクロアルキル、置換基を有していてもよいアリール、置換基を有していてもよい4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環、CO−低級アルキル、SO−低級アルキル、OR、SR、NR、ハロゲン、NO、CN、及びCOORからなる群から選択される1〜3個の置換基を有していてもよい低級アルキル;但し、Ra及びRbの少なくとも一方はH以外の基を示す、
又は、RaとRbは隣接するN原子と一体となって、ヘテロ原子としてN原子を1〜2個含有する4乃至8員飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環を形成し、該ヘテロ環は、ベンゼン環若しくはシクロアルキル環と縮合していてもよく、架橋を有していてもよく又はスピロ環を形成してもよい、更に、該ヘテロ環は1〜5個の置換基を有していてもよい、
E:単結合、C1−3アルキレン、ビニレン(−CH=CH−)、エチニレン(−C≡C−)、CO、NR、CH−J、CONR又はNRCO、
J:O、S、NR、CO、SO又はSO
R:置換基を有していてもよいアリール、置換基を有していてもよいヘテロアリール、置換基を有していてもよいシクロアルキル、置換基を有していてもよいシクロアルケニル又は置換基を有していてもよい4乃至8員の単環飽和若しくは一部不飽和ヘテロ環、
〜R:同一又は異なって、H又は低級アルキル
但し、以下の化合物を除く。
(1)RaとRbが隣接するN原子と一体となってピペリジノを形成し、Eが単結合、且つ、Rがピペリジノ、未置換フェニル、p−(トリフルオロメチル)フェニル、p−クロロフェニル又はo−ニトロフェニルである化合物、
(2)RaとRbが隣接するN原子と一体となって、4−メチル−1−ピペラジニルを形成し、Eが単結合、且つ、Rが未置換フェニル、p−メチルフェニル、m−メチルフェニル、p−メトキシフェニル、m−クロロフェニル、p−クロロフェニル又はm−ニトロフェニルである化合物、
(3)Rが置換基を有していてもよいイミダゾリル、5−ニトロ−2−フリル又は5−ニトロ−2−チエニルである化合物、
(4)RaがH、Rbがシクロプロピル、Eが単結合、且つ、Rがp−(トリフルオロメチル)フェニルである化合物、及び
(5)Raがメチル、Rbが2−ヒドロキシ−プロピル、Eが単結合、且つ、Rが3−ピリジルである化合物。)
【請求項3】
第一成分が6−アゾカン−1−イル−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−アゼパン−1−イル−3−(6−ブロモピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、3−(3−メトキシフェニル)−6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、3−(3−ブロモフェニル)−6−(ピペリジン−1−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−アゼパン−1−イル−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−(4−フルオロピペリジン−1−イル)−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−(3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−イル)−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−(4,4−ジフルオロピペリジン−1−イル)−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−(3,3−ジフルオロピペリジン−1−イル)−3−(6−メトキシピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、6−アゾカン−1−イル−3−(6−ブロモピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、及び6−(8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−イル)−3−(6−ブロモピリジン−2−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジンから選択される含窒素複素環化合物又はその塩である請求の範囲2記載の医薬組成物。
【請求項4】
第二成分が、アレンドロネート、リセドロネート、パミドロネート、インカドロネート、ミノドロネート、イバンドロネート及びゾレドロネートから選択されるビスホスホネートである請求の範囲2記載の医薬組成物。
【請求項5】
骨量増加誘導剤が代謝性骨疾患の予防若しくは治療剤である請求の範囲1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
骨量増加誘導剤が骨代謝回転低下型(II型)骨粗鬆症の予防若しくは治療剤である請求の範囲1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
第一製剤として非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を含有する製剤、及び第二製剤としてビスホスホネートを含有する製剤の2種の製剤からなる骨量増加誘導剤である組み合わせ物であって、該第一及び第二製剤は同時にもしくは別々に投与されるものである組み合わせ物。
【請求項8】
第一製剤が請求の範囲2の一般式(I)で示される含窒素複素環化合物又はその塩を含有する製剤である請求の範囲5記載の組み合わせ物。
【請求項9】
第一製剤として非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を含有する製剤、及び第二製剤としてビスホスホネートを含有する製剤の少なくとも2種の製剤を含むキットである請求の範囲7若しくは8記載の組み合わせ物。
【請求項10】
ビスホスホネートを有効成分とする、非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物の骨量増加作用増強剤。
【請求項11】
請求の範囲2の一般式(I)で示される含窒素複素環化合物又はその塩の骨量増加作用増強剤である請求の範囲10記載の剤。
【請求項12】
非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物を有効成分とする、ビスホスホネートの骨量増加作用増強剤。
【請求項13】
請求の範囲2の一般式(I)で示される含窒素複素環化合物又はその塩を有効成分とするビスホスホネートの骨量増加作用増強剤である請求の範囲12記載の剤。
【請求項14】
非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物及びビスホスホネートの、骨量増加誘導剤である医薬を製造するための使用。
【請求項15】
非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物の、ビスホスホネートと併用して骨量の増加を誘導する医薬を製造するための使用。
【請求項16】
ビスホスホネートの、非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物の骨量増加作用を増強する医薬を製造するための使用。
【請求項17】
患者の骨量及び/又は骨強度の減少を伴う代謝性骨疾患の予防若しくは治療方法であって、有効量の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物と、有効量のビスホスホネートを、同時に若しくは別々に投与することからなる方法。
【請求項18】
患者の骨量及び/又は骨強度の減少を伴う代謝性骨疾患が骨代謝回転低下型(II型)骨粗鬆症である請求の範囲17記載の方法。
【請求項19】
骨量及び/又は骨強度の増加を必要とする患者に、有効量の非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物及び有効量のビスホスホネートを、同時に若しくは別々に投与することからなる、患者の骨量増加誘導方法。
【請求項20】
非生体由来の非ペプチド性骨芽細胞分化促進化合物が請求の範囲2の一般式(I)で示される含窒素複素環化合物又はその塩である請求の範囲17〜19のいずれか1項記載の方法。

【国際公開番号】WO2005/002590
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【発行日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511387(P2005−511387)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009604
【国際出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】