説明

骨鉱化作用を増加するための組成物および方法

【課題】骨鉱化作用を増大させるために利用され、従って、骨質量を増大させることが望ましい広範な種々の状態を処置するために利用され得る、組成物および方法の提供。
【解決手段】TGF−β結合タンパク質の新規のクラスまたはファミリー、および、骨鉱化作用を増加するための分子を選択するためのアッセイおよびこのような分子を利用するための方法、これらのTGF−β結合タンパク質と特異的に結合する抗体、これらのTGF−β結合タンパク質をコードする核酸分子、およびこれらの核酸分子と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的に、化学薬品および製薬方法に関し、そして、より具体的には、骨の鉱物含有量の増加に適切な方法および組成物に関する。このような組成物および方法は、例えば、骨減少症、骨粗しょう症、骨折および他の障害(骨の低い鉱物密度がこの疾患の特徴である)を含む多種多様な状態を処置するために利用され得る。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
骨質量に対する変化の2または3の明確なフェーズが、個体の生涯にわたって起こる(Riggs、West J.Med.154:63−77,1991を参照のこと)。第1のフェーズは男性および女性の両方において起こり、そして骨質量のピークに達するまで進行する。この第1のフェーズは、軟骨内の成長板の直線的な成長および骨膜の付着の速度による橈骨の成長を通して達成される。第2のフェーズは、約30歳で海綿質(椎骨および骨盤のように平らな骨)について、そして約40歳で皮質骨(例えば、肢において見出される長骨)について始まり、老齢まで継続する。この期は、ゆっくりとした骨の減少によって特徴付けられ、そして男性および女性の両方において起こる。女性においては、第3の骨減少期もまた起こり、おそらく閉経後のエストロゲンの欠乏による。この期の間だけで、女性は、さらに皮質骨から10%、および小柱画分から25%の骨質量を減少し得る(Riggs、前出、を参照のこと)。
【0003】
骨鉱物含有量の減少は、多種多様な状態によって引き起こされ得、そして有意な医学上の問題となり得る。例えば、骨粗しょう症は、ヒトにおいて身体を衰弱させる疾患であり、骨格の骨質量および鉱物密度の著しい減少、罹患した個体を骨折させる骨の微小構築の分解および対応する骨の脆弱性および感受性の増加を含む骨の構造上の劣化によって特徴付けられる。ヒトにおける骨粗しょう症は、臨床的な骨減少症(標準偏差より大きいが、若年成人の骨の平均値未満である2.5未満の標準偏差の骨の鉱物密度)、米国において約2500万人の人々に見出される状態によって進行する。米国の別の700〜800万人の患者が、臨床的な骨減少症を有すると診断されている(2.5の標準偏差より大きな骨鉱物含有量が、成熟した若年成人の標準偏差を下回るものとして定義される)。骨粗しょう症は、ヘルスケアシステムにおいて最も高価な疾患の1つであり、米国において毎年何百億ドルもの費用となっている。ヘルスケア関連の費用に加えて、長期間の在宅看護および労働日の損失が、この疾患の財政的および社会的な費用に加えられる。世界的に約7500万人が骨粗しょう症の危険にある。
【0004】
人口母集団における骨粗しょう症の頻度は、年齢と共に増加し、そしてコーカサス人の間では、女性において優勢である(米国において80%の骨粗しょう症患者のプールを含む)。老齢において骨格骨を骨折させる脆弱性および感受性の増加は、この集団における偶発的な転倒のより高い危険性によって悪化する。骨粗しょう症に関係する150万を上回る骨折が、毎年米国で報告される。骨折した股関節部、手首、および椎骨は、共通して最も一般的な骨粗しょう症に関連する損傷である。特に、股関節骨折は、患者にとって非常に厄介であり、そして高価であり、そして女性にとっては、高い割合の死亡率および罹患率に関連する。
【0005】
骨粗しょう症は、骨質量の減少による骨折の危険性の増加として定義されているが、実質的に成人の骨密度を増加し得る、現在利用可能な骨格障害のための処置は存在しない。全ての医者の間で、成人の骨密度、特に、骨減少症および骨粗しょう症の危険性にある手首、脊柱および股関節の骨における密度を増加し得る薬物が必要であるという強い認識がある。
【0006】
現在の骨粗しょう症を防止するためのストラテジーは、個体に対していくつかの利点を提供し得るが、この疾患の回復を保証し得ない。これらのストラテジーは、高齢の始まりにおける物理的活性(特に、重量維持活性(weight−bearing activity))を調節すること、食物中の十分なカルシウムを含有すること、およびアルコールまたはタバコを含む製品の消費の回避することを含む。臨床的な骨減少症または骨粗しょう症を有する患者にとって、現在の全ての治療的な薬物およびストラテジーは、骨の吸収のプロセスを阻害することによって、さらなる骨質量の損失を低下させる(定常的に生じる骨の天然の成分の再構築プロセス)ように指向される。
【0007】
例えば、エストロゲンは、現在では骨の減少を遅らせるために処方されている。しかし、患者に対する任意の長期の利点があるか否か、そして75歳を上回る患者において多少なりとも任意の効果があるか否かといういくつかの議論がある。さらに、エストロゲンの使用は、乳癌および子宮内膜癌の危険性が増大すると考えられている。
【0008】
ビタミンDと共に、またはビタミンDなしでの食餌性カルシウムの高い用量もまた、閉経後の女性のために提案された。しかし、カルシウムの高い用量は、しばしば不快な胃腸管系の副作用を有し得、そして血清および尿中のカルシウムレベルが持続的にモニターされなければならない(KhoslaおよびRigss、Mayo Clin.Proc.70:978−982,1995を参照のこと)。
【0009】
示唆されている他の療法としては、カルシトニン、ビホスホネート、タンパク同化ステロイド、およびフッ化ナトリウムが挙げられる。しかし、このような療法は、その使用法を妨げ得る望ましくない副作用(例えば、カルシトニンおよびステロイドは、吐気を引き起こし、かつ免疫反応を引き起こし得、ビスホスホネートおよびフッ化ナトリウムは、骨密度がK浄土に増加したとしても、骨折の修復を阻害し得る)を有する(KhoslaおよびRigss参照のこと、前出)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現状では行われない治療計画としては、新しい骨質量の成長を刺激するかまたは増強する薬物が挙げられる。本発明は、骨鉱化作用を増大させ、るために利用され得、従って、骨質量を増大させるが望ましい広範な種々の状態を処置するために利用され得る、組成物および方法を提供する。さらに、本発明は、他の、関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
上述のように、本発明は、TGF−β結合タンパク質の新規のクラスまたはファミリー、ならびに骨鉱物量および骨鉱物密度量を増大させる化合物を選択するためのアッセイ、骨鉱物量および骨鉱物密度量を増大させる化合物ならびに広範な種々の状態の処置または予防においてこのような化合物を利用するための方法を提供する。
【0012】
本発明の1つの局面において、単離された核酸分子が提供され、ここで上記核酸分子は、以下:(a)配列番号1、5、7、9、11、13、または15を含む単離された核酸分子またはその相補的な配列;(b)高度にストリンジェンシーな条件下で(a)の核酸分子へ特異的にハイブリダイズする単離された核酸分子;および(c)(a)または(b)に従うTGF‐β結合タンパク質をコードする単離された核酸分子、から成る群より選択される。本発明の関連した局面において、単離された核酸分子は、上記の同定された配列の1つの一部のみへのハイブリダイゼーションに基づいて提供される(例えば、(a)に関しては、ハイブリダイゼーションは、配列番号1のヌクレオチド、156〜539、または555〜687より選択される少なくとも20、25、50、または100のヌクレオチドのプローブに対するものであり得る。)。容易に明らかなように、ハイブリダイゼーションに利用される必要なストリンジェンシーは、プローブの大きさに基づいて変化し得る。例えば、25マーのプローブについて高度にストリンジェンシーな条件としては以下が挙げられる:60mM Tris pH8.0.2mM EDTA、5×デンハート液(Denhardt’)、6×SSC、0.1%(w/v)N−ラウリルサルコシン、0.5%(w/v)NP−40(ノニデット(nonidet) p−40)を45℃にて一晩、続いて0.2×SSC/0.1%SDSを用いての45〜50℃での2回の洗浄。低度にストリンジェンシーな条件下の100マーのプローブについては、適切な条件としては、以下が挙げられ得る:5×SSPE、5×デンハート液、および0.5%SDSで42〜50℃一晩、続いて、2×SSPE(または2×SSC)/0.1%SDSを用いる、42〜50℃での2回の洗浄。
【0013】
本発明の関連した局面において、配列番号1、5、7、9、11、13または15に対して、Wilbur−Lipmanアルゴリズムを利用する相同性の50%レベル、60%レベル、75%レベル、80%レベル、90%レベル、95%レベル、または98%レベルで、相同性を有する単離された核酸分子が、提供される。例えば、このような単離された分子の代表的例としては、配列番号2、6、10、12、14、または16を含むタンパク質をコードする核酸分子、あるいはLipman−Pearsonアルゴリズムを利用する相同性の50%レベル、60%レベル、75%レベル、80%レベル、90%レベル、95%レベル、または98%レベルのレベルで、これらの配列に対する相同性を有する核酸分子が挙げられる。
【0014】
単離された核酸分子は、代表的に100kb未満の大きさであり、そして特定の実施形態において、50kb未満、25kb未満、10kb未満、またはさらに5kb未満の大きさである。さらに、他の実施形態において、単離された核酸分子は、他の無関係な核酸分子の「ライブラリー(library)」(例えば、GenBank 登録番号AC003098およびEMB 番号AQ171546において記載されるようなサブクローンBAC)において存在しない。しかし、単離された核酸分子は、関連した分子のライブラリーにおいて見出され得る(例えば、米国特許第5,837,458号;同第5,830,721号;および同第5,811,238号に記載されるようなシャッフリングに関して)。最後に、本明細書中に記載される単離された核酸分子は、Dan、Cerberus、Gremlin、またはSCGFをコードする核酸分子(米国特許第5,780,263号)を含まない。
【0015】
上述の核酸分子を含むクローニングベクターおよび上述の核酸分子の1つに作動可能にに連結されたプロモーター(例えば、制御配列)を含む発現ベクターもまた、本発明によって提供される。適切なプロモーターの代表例としては、組織特異的プロモーター、およびウイルスベースのプロモーター(例えば、CMV I−E、SV40初期プロモーターおよびMuLV LTRのようなCMVベースのプロモーター)が挙げられる。発現ベクターはまた、ウイルスに基づくか、または由来であり得る(例えば、「ウイルスベクター」)。ウイルスベクターの代表的な例としては、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルス関連ウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターが挙げられる。上述のベクターのいずれかを含むか、または含有する宿主細胞(例えば、ヒト、サル、イヌ、ラットまたはマウス起源の宿主細胞を含む)もまた、提供される。
【0016】
本発明の他の局面において、TGF−β結合タンパク質を産生する方法が、提供され、この方法は、TGF−β結合タンパク質を産生するのに十分な条件下または時間でベクターを含む上述の宿主細胞を培養する工程を包含する。さらなる実施形態において、この方法によって産生されるタンパク質は、(例えば、カラムクロマトグラフィー、アフィニティー精製などにより)さらに生成され得る。それ故、上述の核酸分子(例えば、配列番号2,4,6,8,10,12,14,または16)によってコードされる単離されたタンパク質は、本出願の開示を考えれば、容易に産生され得る。
【0017】
上記のタンパク質、またはそれらのフラグメントが、融合タンパク質として産出され得る、ということもまた留意されるべきである。例えば,一つの局面において、第一のポリぺプチドセグメント(上記の核酸分子によりコードされるTGF−β結合タンパク質を含む)、または少なくとも10、20、30、50、もしくは100アミノ酸長である第一のポリぺプチドセグメントの一部、および第二のポリぺプチドセグメント(非−TGF−β結合タンパク質を含む)を含む融合タンパク質が、提供される。特定の実施形態では、この第二のポリぺプチドは、精製または認識に適したタグ(例えば、多重アニオン性アミノ酸残基を含むポリぺプチド(米国特許第4,851,341号を参照のこと))、マーカー(例えば、緑色蛍光タンパク質、またはアルカリホスファターゼ)、または毒性分子(例えば、リシン)、であり得る。
【0018】
本発明の別の局面では、上記のクラスのTGF−β結合タンパク質(例えば、ヒトBEER)に特異的に結合し得る抗体が、提供される。種々の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体(例えば、ヒトまたはマウス起源)であり得る。さらなる実施形態では、抗体は抗体全体の結合特性を保持する抗体のフラグメントである(例えば、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fab、またはFvフラグメント、もしくはCDRさえも)。また上記の抗体を産生または発現する能力がある、ハイブリドーマおよびその他の細胞も提供される。
【0019】
本発明の関連する局面では、TGF−β結合タンパク質を検出する方法が提供され、そしてこの方法は、上記の抗体を、この抗体がTGF−β結合タンパク質に結合することを可能にするために十分な条件下および時間でインキュベートする工程、および結合を検出する工程、を包含する。種々の実施形態では、抗体は、洗浄または分離を容易にするために固体支持体に結合され得、そして/または標識され得る(例えば、酵素、蛍光性タンパク質、および放射性同位体からなる群から選択されるマーカーを用いて)。
【0020】
本発明のその他の局面では、単離されたオリゴヌクレオチドが提供され、このオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、もしくは18による核酸分子、またはそれらの補体に、高ストリンジェントな条件下で、ハイブリダイズする。さらなる実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、または16をコードする配列において見出され得る。特定の実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、少なくとも15、20、30、50、または100ヌクレオチド長である。さらなる実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、別の分子(例えば、酵素、蛍光性分子、または放射性同位体)で標識される。また、TGF−β結合タンパク質をコードする上記の核酸分子の全てまたは一部を特異的に増幅し得るプライマーが提供される。本明細書中で使用される場合、用語「特異的に増幅する」とは、上記のTGF−β結合タンパク質を増幅するプライマーのことをいうと理解されるべきであり、他のTGF−β結合タンパク質(例えばDan、Cerberus、GremlinまたはSCGF(米国特許第5,780.263号)のような)を増幅するプライマーではない。
【0021】
本発明の関連する局面では、TGF−β結合タンパク質をコードする核酸分子を検出するための方法が提供され、この方法は、上記のオリゴヌクレオチドを高ストリンジェントな条件下でインキュベートする工程、およびこのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する工程を包含する。特定の実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、標識され得、そして/または固体支持体に結合し得る。
【0022】
本発明のその他の局面では、上記のTGF−β結合タンパク質の一つをコードするRNA(例えば、配列番号2、6,8,10,12、14、または16)を切断し得るリボザイムが提供される。このようなリボザイムは、DNA、RNA(2’−O−メチル−リボ核酸を含む)、核酸アナログ(例えば、ホスホロチオエート結合を有する核酸)またはそれらの混合物からなり得る。これらのリボザイムをコードする核酸分子(例えば、DNAまたはcDNA)およびそのリボザイムを発現または産生し得るベクターもまた提供される。ベクターの代表的な例としては、プラスミド、レトロトランスポゾン、コスミド、およびウイルスベースのベクター(例えば、少なくとも部分的にレトロウイルス、アデノウイルス、またはアデノ関連ウイルスから生成されるウイルスベクター)、が挙げられる。また、これらのベクターを含む宿主細胞(例えば、ヒト、イヌ、ラット、またはマウス細胞)も提供される。特定の実施形態では、この宿主細胞は、ベクターで安定に形質転換され得る。
【0023】
本発明のさらなる局面において、リボザイムを、合成的にか、またはインビトロもしくはインビボの転写によるいずれかで産生するための方法が提供される。さらなる実施形態において、こうして産生されたリボザイムは、さらに精製され得、そして/または薬学的組成物(例えば、薬学的に受容可能なキャリアーまたは希釈剤を伴う、リボザイムまたはリボザイムをコードする核酸分子)に処方され得る。同様に、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび抗体または本明細書中に記載されたその他の選択された分子は、薬学的組成物に処方され得る。
【0024】
本発明の他の局面において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、もしくは15に従う核酸分子にハイブリダイズする核酸分子、またはそれに対する補体を含んで提供され、そして上記オリゴヌクレオチドは、本明細書中に記載するようなTGF−β結合タンパク質(例えば、ヒトBEER)の発現を阻害する。種々の実施形態において、オリゴヌクレオチドは15、20、25、30、35、40、または50ヌクレオチド長である。好ましくは、オリゴヌクレオチドは100、75、または60ヌクレオチド長未満である。容易に明白であるように、オリゴヌクレオチドは1つ以上の核酸アナログ、リボ核酸、またはデオキシリボ核酸から構成され得る。さらに、オリゴヌクレオチドは、1つ以上の結合(例えば、ホスホロチオエート結合、ホスホトリエステル結合、メチルホスホネート結合、メチレン(メチルイミノ)結合、モルホリノ結合、アミド結合、ポリアミド結合、短鎖アルキル糖間(intersuger)結合、シクロアルキル糖間結合、短鎖ヘテロ原子糖間結合、および複素環式糖間結合のような共有結合を含む)、により改変され得る。キメラオリゴヌクレオチドの1つの代表的な例が、米国特許第5,989,912号において提供される。
【0025】
本発明のさらに別の局面において、骨鉱化作用を増加させるための方法が提供され、その方法は、上述のような有効量のリボザイムを温血性動物に導入する工程を包含する。関連する局面において、このような方法は、本明細書中に記載のような有効量の核酸分子またはベクターを患者内に導入する工程を包含し、その核酸分子またはベクターは、所望のリボザイムを、リボザイムを産生するための核酸分子の転写に好ましい条件下で産生することが可能である。
【0026】
本発明の他の局面において、トランスジェニック非ヒト動物が提供される。1つの実施形態において、動物はヒトではないという条件で、トランスジェニック動物が提供され、その生殖細胞および体細胞は、遺伝子の発現に有効なプロモーターに作動可能に連結される上述のようなTGF−β結合タンパク質をコードする核酸分子を含み、その遺伝子は、動物、またはその動物の祖先に、胚段階で、導入される。他の実施形態において、動物はヒトではないという条件で、トランスジェニックノックアウト動物が提供され、その生殖細胞および体細胞が、核酸分子(本明細書中に記載するようにTGF結合タンパク質をコードする)にハイブリダイズする内因性核酸分子の少なくとも1つの対立遺伝子の破壊を含む動物を含み、ここでその破壊は、破壊のない動物と比較して、上記対立遺伝子からのメッセンジャーRNAの転写を防止する。種々な実施形態において、破壊は核酸の欠失、置換または挿入である。他の実施形態において、トランスジェニック動物は、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、またはイヌである。
【0027】
本発明のさらなる局面において、TGF−β結合タンパク質遺伝子発現の検出のために、キットが提供され、そのキットには核酸分子を含むコンテナを含む。ここで、その核酸分子は以下からなる群から選択される:(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、または15のヌクレオチド配列を含む核酸分子;(b)(a)のヌクレオチド配列の補体を含む核酸分子;(c)少なくとも15、20、30、50、75、または100ヌクレオチド長の(a)または(b)のフラグメントである核酸分子。また、TGF−β結合−タンパク質の検出のためのキットが提供され、そのキットには、本明細書中に記載される1つのTGF−β結合タンパク質抗体を含むコンテナを含む。
【0028】
例えば、本発明の1つの局面において、選択された分子が骨鉱物含有量を増加させることが可能か否かを決定するための方法が提供され、その方法は(a)1つ以上の候補分子を、請求項1に記載の核酸分子によりコードされたTGF−β−結合−タンパク質、およびTGF−βファミリーのタンパク質の選択されたメンバー(例えば、BMP5または6)と混合する工程、(b)その候補分子が、TGF−βファミリーメンバーのシグナル伝達を変えるか否か、またはTGF−β結合−タンパク質のTGF−βファミリーメンバーへの結合を変えるか否かを決定する工程を包含する。特定の実施形態において、その分子は、間葉細胞分化の正の調節因子として機能するようにTGF−βの能力を変える。本発明のこの局面において、候補分子は、シグナル伝達もしくは結合を減少させる(例えば、阻害する)か、または増加させる(例えば、高める)ことにより、シグナル伝達、もしくは結合を変え得る。
【0029】
さらに別の局面において、選択された分子が骨鉱物含有量を増加させることが可能であるか否かを決定するための方法が提供され、その方法は、選択された分子が、TGF−β結合−タンパク質の、骨またはそのアナログへの結合を阻害するか否かを決定する工程を包含する。骨またはそのアナログの代表的な例は、ヒドロキシアパタイトおよび生検から得られた主要な人骨のサンプルを含む。
【0030】
上述に列挙された方法の特定の実施形態において、選択された分子は分子の混合物中に含まれ、そしてその方法はさらに、アッセイにおいて機能的な1つ以上の分子を単離する工程を包含し得る。さらに他の実施形態においては、TGF−βファミリーのタンパク質が固体支持体に結合され、そしてそのTGF−β結合タンパク質の結合が測定されるか、またはTGF−β結合タンパク質が固体支持体に結合され、そしてTGF−βタンパク質の結合が測定される。
【0031】
上記のような方法を利用して、広範に種々の分子が、TGF−β結合タンパク質のTGF−βファミリーのタンパク質への結合を阻害することにより骨鉱物含有量を増加させるその能力についてアッセイされ得る。このような分子の代表的な例は、タンパク質またはペプチド、有機分子、および核酸分子を含む。
【0032】
本発明の他の関連する局面においては、温血動物の骨鉱物含量を増加させるための方法が提供され、その方法は、治療的に有効な量の本明細書中に列挙されるアッセイにより同定される分子を、温血動物に投与する工程を包含する。別の局面においては、温血動物の骨鉱物含量を増加させるための方法が提供され、その方法は、治療的に有効な量の、TGF−β結合タンパク質のTGF−βスーパーファミリータンパク質(骨形態形成タンパク質(BMP)を含む)への結合を阻害する分子を、温血動物に投与する工程を包含する。適切な分子の代表的な例としては、アンチセンス分子、リボザイム、リボザイム遺伝子、および抗体(例えば、ヒト化抗体)が挙げられ、これらは、TGF−β結合タンパク質の活性を特異的に認識し、そして変化させる。
【0033】
本発明の別の局面においては、温血動物の骨鉱物含量を増加させるための方法が提供され、その方法は、(a)骨に移動する(home to)細胞に、TGF−β結合タンパク質のTGF−βファミリータンパク質および骨形態形成タンパク質(BMP)への結合を阻害する分子の発現を指向するベクターを導入する工程、および(b)このベクター含有細胞を温血動物に投与する工程、を包含する。本明細書中で利用される場合、末梢の投与の後、細胞が骨マトリックス中に局在化する場合に、細胞は「骨に移動する(home to bone)」ことが理解されるべきである。1つの実施形態においては、このような方法は、導入する工程の前に、骨に移動する骨の骨髄から細胞を単離する工程をさらに包含する。さらなる実施形態においては、骨に移動する細胞は、CD34+細胞および骨芽細胞からなる群から選択される。
【0034】
本発明の他の局面においては、TGF−β結合タンパク質のTGF−βスーパーファミリータンパク質への結合を阻害する分子が提供される(好ましくは単離される)。
【0035】
さらなる実施形態においては、この分子は、組成物として提供され得、そして骨吸収のインヒビターをさらに含み得る。このようなインヒビターの代表的な例としては、カルシトニン、エストロゲン、ビスホスホネート、抗吸収活性を有する成長因子およびタモキシフェンが挙げられる。
【0036】
上記の治療的状況において利用され得る分子の代表的な例としては、例えば、リボザイム、リボザイム遺伝子、アンチセンス分子、および/または抗体(例えば、ヒト化抗体)が挙げられる。このような分子は、本明細書中に記載されるようなTGF−β結合タンパク質ファミリーメンバーのシグナル伝達または結合を、変化させるため、アンタゴナイズするため、またはアゴナイズするために使用される、これらの選択に依存し得る。
【0037】
本発明の種々の実施形態においては、上記の分子および処置方法または予防方法は、骨粗鬆症、骨軟化症、歯周病、壊血病、クッシング病、骨折などの状態ならびに四肢不動化およびステロイドの使用に起因する状態において利用され得る。
【0038】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面の参照により明らかになる。さらに、特定の手順または構成物(例えば、プラスミドなど)をより詳細に記述する種々の参考文献が本明細書中に記載され、そして従って、それらは、その全体が参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、ヒトDan;ヒトGremlin;ヒトCerberusおよびヒトBeerのアミノ酸配列を比較する略図である。矢印は、システイン骨格を示す。
【図2】図2は、TGF−β結合タンパク質遺伝子(特に、ヒトBeer遺伝子)の発現のための種々のヒト組織の調査により得られた結果の要約である。半定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)手順が、全RNAより合成された第一鎖cDNA由来の遺伝子の一部を増幅させるために、使用された(実施例2Aにおいてより詳細に記載される)。
【図3】図3は、マウスBeer転写物に対して相補的なcRNAプローブを用いる、マウス胚切片のRNAインサイチュハイブリダイゼーションにより得られた結果の要約である(実施例2Bにおいてより詳細に記載される)。パネルAは10.5dpc胚の横断面である。パネルBは、12.5dpc胚の矢状切片であり、そしてパネルCおよびDは、15.5dpc胚の矢状切片である。
【図4】図4は、ウエスタンブロット分析により、3つの異なるポリクロナール抗体のこれらのそれぞれの抗原に対する特異性を図示する(実施例4においてより詳細に記載される)。図4Aは、抗H.Beer抗体の、H.DanまたはH.Gremlinではなく、H.Beer抗原に対する特異的な反応性を示す。図4Bは、抗H.Gremlin抗体の、H.BeerまたはH.Danではなく、H.Gremlin抗原に対する反応性を示す。図4Cは、抗H.Dan抗体の、H.BeerまたはH.GremlinではなくH.Danに対する反応性を示す。
【図5】図5は、ウエスタンブロット分析による、TGF−β結合タンパク質(Beer)の、BMP−4ではなく、BMP−5およびBMP−6に対する選択性を図示する(実施例5においてより詳細に記載される)。
【図6】図6は、TGF−β結合タンパク質(Beer)とBMP−5との間のイオン相互作用が、15〜30nMの範囲の解離定数を有することを示す。
【0040】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本発明を詳細に示す前に、特定の用語の定義を示し、そして列挙すること、および本明細書中以下で用いられる略語を定義することは、本発明を理解するのに役立ち得る。
【0041】
「分子」は、タンパク質またはペプチド(例えば、抗体、組換え結合パートナー、所望の結合親和性を有するペプチド)、核酸(例えば、DNA、RNA、キメラ核酸分子、およびPNAのような核酸アナログ);ならびに有機化合物または無機化合物を含むと理解されるべきである。
【0042】
「TGF−β」は、TGF−βスーパーファミリーの任意の公知あるいは新規なメンバー(これらはまた骨形態形成タンパク質(BMP)を含む)を含むと理解されるべきである。
【0043】
「TGF−βレセプター」は、TGF−βスーパーファミリー(骨形態形成タンパク質(BMP)を含む)の特定のメンバーに特異的なレセプターをいうと理解されるべきである。
【0044】
「TGF−β結合タンパク質」は、TGF−βスーパーファミリー(骨形態形成タンパク質(BMP)を含む)の特定のメンバーまたはメンバーのサブセットに特異的な結合親和性を有するタンパク質をいうと理解されるべきである。TGF−β結合タンパク質の特定の例としては、配列番号1、5、7、9、11、13および15でコードされるタンパク質が挙げられる。
【0045】
「TGF−β結合タンパク質の、TGF−βファミリータンパク質および骨形態形成タンパク質(BMP)への結合」の阻害は、TGF−βをTGF結合タンパク質への結合から取り除くことまたはTGF−βをTGF結合タンパク質への結合から妨げることにより、TGF−βまたは骨形態形成タンパク質(BMP)の活性化を可能にするか、あるいは骨形態形成タンパク質(BMP)を含むTGF−βファミリーメンバーの、それぞれのレセプターへの結合を可能にする、分子をいうと理解されるべきである。例えば、このような阻害は、TGF−βスーパーファミリーの特定のメンバーへのTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する分子により達成され得る。
【0046】
「ベクター」は、所望のタンパク質の発現を指向し得る集合体をいう。ベクターは、目的の遺伝子に作動可能に連結される転写プロモーターエレメントを含まねばならない。ベクターは、デオキシリボ核酸(「DNA」)、リボ核酸(「RNA」)または2つの組み合せ(例えば、DNA−RNAキメラ)のいずれかから構成され得る。必要に応じて、ベクターは、ポリアデニル化配列、1つ以上の制限部位、および1つ以上の選択マーカー(例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼまたはハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)を含み得る。さらに、選択された宿主細胞および使用されたベクターに依存して、他の遺伝的エレメント(例えば、複製起点)、さらなる核酸制限部位、エンハンサー、転移の誘導を与える配列および選択マーカーはまた、本明細書に記載されたベクターに組み込まれ得る。
【0047】
「単離された核酸分子」は、生物のゲノムDNA中に組み込まれない核酸分子である。例えば、真核生物細胞のゲノムDNAから分離されたTGF結合タンパク質をコードするDNA分子は、単離されたDNA分子である。単離された核酸分子の別の例は、生物のゲノム中に組み込まれない、化学合成された核酸分子である。単離された核酸分子はゲノムDNA、cDNA、RNA、または少なくとも核酸アナログの一部を含むものであり得る。
【0048】
「単離されたポリペプチド」は、炭水化物、脂質、または天然にそのポリペプチドと結合した他のタンパク質性不純物のような細胞成分を本質的に夾雑しない、ポリペプチドである。特定の実施形態において、Coomassie Blue染色を用いてSDS−PAGEゲル上の単一バンドとして名目上現れる場合、特定のタンパク質調製物は、単離されたポリペプチドを含む。有機分子に関する場合、「単離された」は、当該分野で周知の方法(例えば、NMR、融点)を利用して、化合物が90%より大きい純度であることを意味する。
【0049】
「硬化狭窄症(sclerosteosis)」硬化狭窄症は、Hansen(1967)(Hansen,H.G.、Sklerosteose.In:Opitz,H.;Schmid,F.,Handbuch der Kinderheilkunde. Berlin:Springer(pub.)6 1967.351−355頁)によって、van Buchem皮膚骨化過剰症(hyperostosis corticalis generalisata)と類似するが、おそらく骨変化の放射線学的外観ならびに多くの場合に示指と中指との非対照皮膚合指症の存在において異なる障害に適用される用語である。この状態において、顎は異常に四角い外観を有する。
【0050】
「ヒト化抗体」は、モノクローナル抗体のマウス相補性決定領域が、マウス免疫グロブリンの可変性の重鎖および可変性の軽鎖からヒト可変ドメインへ転移されている、組換えタンパク質である。
【0051】
本明細書で用いられるように、「抗体フラグメント」は、F(ab’)2、F(ab)2、Fab’、Fabなどのような抗体の一部である。構造に関係なく、抗体フラグメントはインタクト抗体により認識される同じ抗原と結合する。例えば、抗TGF−β結合タンパク質モノクローナル抗体フラグメントは、TGF−β結合タンパク質のエピトープと結合する。
【0052】
用語「抗体フラグメント」はまた、任意の合成タンパク質、または遺伝子的に操作したタンパク質を含み、これは、特異的な抗原に結合し、複合体を形成することにより、抗体のような作用をする。例えば、抗体フラグメントとしては、L鎖可変部分からなる単離されたフラグメント、H鎖およびL鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメント、L可変領域およびH可変領域が、ペプチドリンカーにより連結されている組換え一本鎖ポリペプチド分子(「sFvタンパク質」)、および超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位が挙げられる。
【0053】
「検出可能な標識」は、抗体の部分に結合体化し、診断に有用である分子を産生し得る分子または原子である。検出可能な標識の例としては、キレート剤、光活性剤、放射性同位体、蛍光性剤、常磁性イオン、酵素、および他のマーカー部分が挙げられる。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「免疫複合体」は、抗TGF−β結合タンパク質抗体、または抗体フラグメント、および検出可能な標識を含む分子である。免疫複合体は、結合前と結合後のTGF−β結合タンパク質の結合能が、おおよそ同様であるか、またはわずかにのみ減少する。
【0055】
略語:TGF−β−「トランスフォーミング増殖因子−β」;TGF−βBP−「トランスフォーミング増殖因子−β結合タンパク質」(代表的なTGF−βBPは、「H.Beer」と呼ばれる);BMP−「骨形成タンパク質」;PCR−「ポリメラーゼ連鎖反応」;RT−PCR−RNAをまず逆転写酵素(RT)を用いることで第1段階でDNAに最初に転写するPCRプロセス;cDNA−RNA配列をDNA形態にコピーすることにより作製される任意のDNA。
【0056】
上記したように、本発明は、新規のクラスのTGF−β結合タンパク質、ならびに温血動物における骨鉱物含量を増加するための方法および組成物を提供する。簡潔に、本発明は、TGF−β結合タンパク質ファミリーの新規のメンバーをコードする遺伝子における変異は、正常な個体よりも1〜4倍高い骨鉱物含量により特徴付けられたまれな状態(硬化狭窄症)を生じるという思わぬ発見に基づく。従って、以下でより詳細に議論されるように、この発見は、アッセイの発達をもたらした。このアッセイは、TGF−βファミリーのタンパク質および骨形成タンパク質(BMP)へのTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する分子、ならびに温血動物(例えば、ヒトを含む)の骨鉱物含量を増加するこのような分子を利用する方法を選択するために利用され得る。
【0057】
(硬化狭窄症として知られる疾患の議論)
硬化狭窄症は、Hansen(1967)(Hansen,H.G.,Sklerosteose.In:Opitz,H.;Schmid,F.,Handbuch der Kinderheilkunde.Berlin:Springer(pub.)6 1967.351−355頁)によって汎発性皮質過骨症に類似であるが、骨の変化の放射線学的な外見および多くの場合、指標および中指の非対称性皮膚合指症(asymmetric cutaneous syndactyly)の存在がおそらく異なる傷害に適用された用語である。
【0058】
硬化狭窄症は現在、常染色体半劣性障害として公知であり、これは、成体において広く骨の多発性硬化性病変によって特徴付けられる。この状態は、進行性である。硬化狭窄症はまた、発達的な局面を有し、これは、合指症(2本以上の指がお互いに融合する)に関連する。この硬化狭窄症症候群は、高い身長に関連し、そして多くの罹患した個体は6フィート以上の高さに達する。ホモ接合体の骨鉱物含量は、正常の個体の1〜6倍以上であり得、そして鉱物密度は、正常値(例えば、病気に罹患していない兄弟姉妹から)の1〜4倍以上であり得る。
【0059】
この硬化狭窄症症候群は、南アフリカにおけるオランダ系アフリカ人において主に起こる。アフリカ人集団におけるおおよそ140人に1人の個体が、変異遺伝子(ヘテロ接合体)のキャリアである。この変異は、100%の表現率である。病理学(合指症または頭蓋過成長)に関連しないヘテロ接合体における骨鉱物密度の上昇の事例報告がある。
【0060】
現時点で、硬化狭窄症における下垂体視床下部軸(pitutitary−hypothalamus axis)の異常性はないようである。特に、成長ホルモンおよびコルチゾンの過産生はないようである。さらに、性ホルモンレベルは、罹患した個体において正常である。しかし、骨代謝回転マーカー(骨芽細胞特異的アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、1型プロコラーゲンC’プロペプチド(PICP)、および全アルカリホスファターゼ;(Comier,C.,Curr.Opin.in Rheu.7:243,1995を参照のこと))は、疾患に関連する過剰骨芽細胞活性を示すが、骨再吸収のマーカー(ピリジノリン、デオキシピリジノリン、N−テロペプチド、尿のハイドロキシプロリン、血漿酒石酸耐性ホスファターゼおよびガラクトシルヒドロキシリシン(Comier(前出)を参照のこと))により測定されるわずかに漸増する骨芽細胞活性に対して正常であることを示す。
【0061】
硬化狭窄症は、罹患した個体の寿命の間、骨格の至るところの骨の頻繁な蓄積により特徴付けられる。ホモ接合体において、骨鉱物の頻繁な蓄積は、機械的レセプターの非存在である骨格の領域(頭蓋、下顎、頭蓋)において骨の過成長をもたらす。硬化狭窄症を有するホモ接合体において、頭蓋の骨の過成長は、頭蓋の加圧をもたらし、脳幹での過剰な静水圧のために最終的に死に至る。骨格の全てのほかの部分において、全身性の硬化症および広汎性の硬化症がある。長骨の皮質領域は、骨強度の実質的な増加を生じることで非常に肥厚化する。小柱の結合は厚さが増加し、小柱骨の強度を次々に増加する。硬化性の骨は、X−線で異常に不透明に見える。
【0062】
実施例1において、より詳細に記載されるように、硬化狭窄症症候群の原因となるまれな遺伝的変異は、TGF−β結合タンパク質ファミリーの新規のメンバー(この代表的な例は、「H.Beer」と呼ばれる)をコードするヒト第17染色体の領域に位置している。以下により詳細に記載されるように、この発見に基づき、骨鉱化作用の機構は、より十分に理解され、骨鉱化作用を上昇する分子のアッセイの開発、および骨鉱物含量を上昇するこのような分子の使用、および広範な多くの疾患の処置または予防における使用を可能にする。
【0063】
(TGF−βスーパーファミリー)
形質転換成長因子β(TGF−β)スーパーファミリーは、共通配列エレメントおよび(2次および3次レベルの両方で)構造的なモチーフを共有する種々の成長因子を含む。このタンパク質ファミリーは、多数の種々の細胞型における広い範囲の生物学的応答を発揮することが公知である。これらの多くは、それらが含まれる成体において(例えば、創傷治癒および骨修復ならびに骨再構築において、および免疫系の調節において)パターン形成および組織の特異化における胚の発達の間の重要な機能を有する。3つのTGF−βのものに加えて、スーパーファミリーは、骨形成タンパク質(BMP)、アクチビン、インヒビン、成長および分化因子(GDF)、およびグリア誘導神経栄養性因子(GDNF)を含む。主要な分類は、特定のタンパク質を一般的なサブファミリーに入れる一般的な配列特性を通じて確立される。サブファミリー内のさらなる層別化は、小さいグループのメンバーの間の、より厳密な配列保存のために可能である。BMP−5、BMP−6およびBMP−7に関するような特定の場合において、これは、小さいグループのメンバーの間の75%のアミノ酸相同性程度の高さであり得る。この同一性のレベルは、単一の代表的な配列が、大きなファミリーの他のメンバーから、それを分けるサブグループの鍵となる生化学的なエレメントを例示することを可能にする。
【0064】
TGF‐βは、I型レセプターおよびII型レセプターのヘテロオリゴマーの複合体の形成を誘導することによりシグナル伝達する。TGF−β2の結晶構造は、決定されている。TGF−β2モノマーの一般的な折り畳みは、3つのジスルフィド架橋により形成される安定な、緻密なシステイン節様構造を含む。1つのジスルフィド架橋により安定化される2量体化は、逆平行である。
【0065】
TGF−βファミリーのメンバーは、内因性のセリン/スレオニンキナーゼ活性を有するレセプターに結合することにより、それらの細胞作用を開始する。このレセプターのファミリーは、I型レセプターおよびII型レセプターと示される2つのサブファミリーからなる。TGF−βファミリーの各々のメンバーは、I型レセプターおよびII型レセプター(その両方が、シグナル伝達に必要とされる)の特徴的な組み合わせに結合する。TGF−βレセプターの活性化の現在のモデルにおいて、TGF−βは、活性化されたキナーゼとのオリゴマーの形態における細胞膜に生じるII型レセプター(TbR−II)に初めに結合する。その後、TbR−IIの非存在下ではリガンドに結合できないI型レセプター(TbR−I)は、複合体に補充される。次いでTbR−IIは、膜近傍の領域のグリシンおよびセリン残基の豊富なドメイン(GSドメイン)においてTbR−Iを主にリン酸化し、それによってTbR−Iを活性化する。
【0066】
これまでに、7つのI型レセプターおよび5つのII型レセプターが、同定されている。
【0067】
(骨形成タンパク質(BMP)は、ヒトにおける骨鉱物密度を決定する際の鍵となる調節タンパク質である)
骨形成の理解における主な進歩は、インビボでの軟骨および骨の分化を調節する骨形成タンパク質(BMP)(骨原性タンパク質(OP)としても公知)の同定であった。BMP/OPは、軟骨の形成、軟骨の肥大およびカルシウム沈着、血管の湿潤、骨芽細胞の分化、および骨の形成を含む事象のカスケードを介して軟骨内の骨の分化を誘導する。上記のように、BMP/OP(BMP 2−14および骨原タンパク質1および骨原タンパク質2であるOP−1およびOP−2)は、TGF−βスーパーファミリーのメンバーである。BMP/OPサブファミリーのメンバーの間の著しい進化的保存は、それらが動物の正常な発達および機能に重要であることを示す。さらに、BMP/OPの複数の形態の存在は、この明白な重複性の生物学的な関連性についての重要な疑問を生じる。胎性後(postfetal)の軟骨形成および骨形成に加えて、BMP/OPは、骨格発生(頭蓋顔面組織および歯組織の発達を含む)および胚の発達および腎臓を含む実質の器官の形成の複数の役割を果たす。自然は、特定化した組織および器官の発生を提供するために随行する共通の(およびわずかな)分子機構に依存することが今や理解される。BMP/OPスーパーファミリーは、高度に保存されたカルボキシ末端領域内のアミノ酸モチーフにわずかなバリエーションを有する分子アイソフォームを分散する複数の特定化した機能をプログラムする際の天然の節減の的確な例である。
【0068】
(BMP拮抗作用)
BMPおよびアクチビンサブファミリーは、有意な翻訳後調節に供される。複雑な細胞外制御系が存在し、そのために、高い親和性のアンタゴニストが合成および搬出され、引き続いて混合物の生物学的活性を分裂するためのBMPまたはアクチビンと選択的に複合体化する(W.C.Smith(1999)TIG 15(1)3−6)。多数のこれらの天然のアンタゴニストが同定されており、そして配列の開散性に基づくと、それらは主要な配列保存の欠如のために、独立的に進化したようである。今までのところ、このタンパク質の分類における構造的な研究は、なされていない。これらのアンタゴニストの研究は、BMP−2およびBMP−4を相互作用および中和するための明確な優先度が目立つ。さらに、阻害の機構は、異なるアンタゴニストについて異なるようである(S.lemuraら、(1998)Proc Natl Acad Sci USA 95 9337−9342)。
【0069】
(新規TGF−β結合タンパク質)
(1.TGF−β結合タンパク質についての背景)
上記に記載したように、本発明は、TGF−β結合タンパク質の新規のクラスを提供する。それは、ヒトDAN、ヒトグレムリン(Gremlin)、およびヒトケルベロス(Cerberus)、ならびにSCGF(米国特許第5,780,263号)と比較した場合、ほとんど同一のシステイン(ジスルフィド)骨格を保有するが、ヌクレオチドレベル(背景の情報として、一般的にHsu,D.R.,Economides,A.N.,Wang,X.,Eimon,P.M.,Harland,R.M.,「The Xenopus Dorsalizing Factor Gremlin Identifies a Novel Family of Secreted Proteins that Antagonize BMP Activities」,Molecular Cell 1: 673〜683,1988を参照のこと)においてはほとんど相同性がない。
【0070】
TGF−β結合タンパク質の新規のクラスの1つの代表的な実施例は、配列番号1、5、9、11、13および15に開示される。結合タンパク質のこのクラスの代表的なメンバーはまた、TGF−β結合タンパク質の改変体を含むことを理解されるべきである(例えば、配列番号5および7)。本明細書中で利用されるように、「TGF−β結合タンパク質改変体遺伝子」とは、配列番号2、10、12、14または16の改変であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子をいう。そのような改変体には、天然に存在する多型、またはTGF−β結合タンパク質遺伝子の対立遺伝子改変体、およびこれらアミノ酸配列の保存的なアミノ酸置換を含む合成遺伝子が挙げられる。TGF−β結合タンパク質遺伝子のさらなる改変体の形態は、本明細書中に記載のヌクレオチド配列の挿入または欠失を含む核酸分子である。TGF−β結合タンパク質改変体遺伝子は、その遺伝子が、ストリンジェントな条件下で配列番号1、5、7、9、11、13、または15のヌクレオチド配列を有する核酸分子にハイブリダイズするかどうかを決定することによって同定され得る。さらに、TGF−β結合タンパク質改変体遺伝子は、システイン骨格を有するタンパク質をコードするはずである。
【0071】
代わりとして、TGF−β結合タンパク質改変体遺伝子は、配列の比較によって同定され得る。本明細書中に使用される場合、最大限に一致するように整列したとき、2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基が同じであるならば、2つのアミノ酸配列は、「100%のアミノ酸配列同一性」を有する。同様に、最大限に一致するように整列したとき、2つのヌクレオチド配列のヌクレオチド残基が同じ場合、2つのヌクレオチド配列は、「100%のヌクレオチド配列同一性」を有する。配列の比較は、DNASTAR(Madison,Wisconsin)により生産されるLASERGENEバイオインフォーマティクス計算パッケージソフト(bioinformatics computing suite)に含まれるソフトウェアプログラムような標準的ソフトウェアプログラムを使用して行われ得る。最適な整列を決定することによる2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を比較するための他の方法は、当業者に周知である(例えば、PeruskiおよびPeruski,The Internet and the New Biology:Tools for Genomic and Molecular Research(ASM Press,Inc.1977)、Wuら(編)、「Information Superhighway and Computer Databases of Nucleic Acids and Proteins」,Methods in Gene Biotechnology,123〜151頁(CRC Press,Inc.1997)ならびにBishop(編)、Guide to Human Genome Computing,第2版(Academic Press,Inc.1998)を参照のこと)。
【0072】
改変体TGF−β結合タンパク質は、配列番号2、6、10、12、14、または16と少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有し、そして好ましくは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%を超える同一性を有するはずである。あるいは、TGF−β結合タンパク質改変体は、配列番号1、5、9、11、13または15と少なくとも70%のヌクレオチド配列同一性を有することによって同定され得る。さらに、本発明は、TGF−β結合タンパク質遺伝子改変体が配列番号1と75%、80%、85%、90%または95%を超える同一性を有することを意図する。TGF−β結合タンパク質改変体遺伝子または改変体TGF−β結合タンパク質を同定するために使用される特定の方法に関係なく、改変体TGF−β結合タンパク質遺伝子にコードされる改変体TGF−β結合タンパク質またはポリペプチドは、例えば、TGF−βファミリーのタンパク質の選択されたメンバーに結合する能力、および/またはそのシグナル伝達を阻害する能力、あるいは抗TGF−β結合タンパク質抗体に対して特異的に結合する能力によって、機能的に特徴づけられ得る。
【0073】
本発明は、TGF−β結合タンパク質遺伝子の機能的フラグメントを含む。本発明の文脈内において、TGF−β結合タンパク質遺伝子の「機能的フラグメント」とは、(1)上記の機能的活性を有するか、または(2)抗TGF−β結合タンパク質抗体に特異的に結合する、いずれかのTGF−β結合タンパク質のポリペプチドの一部分をコードする核酸分子をいう。例えば、本明細書中に記載されるTGF−β結合タンパク質遺伝子の機能的フラグメントは、配列番号1、5、9、11、13または15のヌクレオチド配列の一部分を含む。
【0074】
(2.TGF−β結合タンパク質遺伝子の単離)
結合タンパク質遺伝子をコードするDNA分子は、例えば、配列番号1に基づくポリヌクレオチドプローブを用いたヒトのcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーのスクリーニングによって得られ得る。
【0075】
例えば、cDNAライブラリーの調製における第1段階は、当業者に周知の方法を用いてRNAを単離することである。一般的に、RNA単離技術は、細胞を破壊するための方法、RNaseにより指向されるRNAの分解を阻害する手段、ならびにRNAをDNA、タンパク質および多糖雑夾雑物から分離する手段を提供しなければならない。例えば、総RNAは、液体窒素中で組織を凍結すること、細胞を溶解するために乳鉢および乳棒を用いて凍結した組織を砕くこと、タンパク質を除去するためにフェノール/クロロホルムの溶液を用いて砕いた組織を抽出すること、および塩化リチウムを用いた選択的沈降によって残っている不純物からRNAを分離することによって単離され得る(例えば、Ausubelら(編)、Short Protocols in Molecular Biology,第3版、4−1〜4−6頁(John Wiley & Sons 1995)[「Ausubel(1995)」];Wuら、Methods in Gene Biotechnology、33−41頁(CRC Press,Inc.1997)[「Wu(1997)」]を参照のこと)。
【0076】
あるいは、総RNAは、砕いた組織からグアニジニウムイソチオシアネートを用いて抽出すること、有機溶媒を用いて抽出すること、そして分画遠心分離を用いて夾雑物からRNAを分離することによって単離され得る(例えば、Ausubel(1995)4−1〜4−6頁;Wu(1997)33−41頁を参照のこと)。
【0077】
cDNAライブラリーを構築するために、ポリ(A)+RNAは、総RNA調製物から単離されなければならない。ポリ(A)+RNAは、総RNAから、オリゴ(dT)セルロースクロマトグラフィーの標準的技術を用いることによって単離され得る(例えば、Ausubel(1995)4−11〜4−12頁を参照のこと)。
【0078】
2本鎖cDNA分子は、ポリ(A)+RNAから当業者に周知の技術を用いて合成される(例えば、Wu(1997)41−46頁を参照のこと)。さらに、市販されているキットは、2本鎖cDNA分子を合成するために使用され得る。例えば、そのようなキットは、Life Technologies,Inc.(Gaithersburg,Maryland)、CLONTECH Laboratories,Inc.(Palo Alto,California)、Promega Corporation(Madison,Wisconsin)およびStratagene Cloning Systems(La Jolla,California)から入手可能である。
【0079】
TGF−β結合タンパク質cDNAクローンを得るための基礎的なアプローチは、TGF結合タンパク質特異的cDNA分子が富化された差引き(subtracted)cDNAライブラリーを構築することによって改変され得る。差引きライブラリーを構築するための技術は、当業者に周知である(例えば、Sargent、「示差的に発現した遺伝子の単離」、Meth.Enzymol.152:423、1987、およびWuら(編)、「差引きおよび完全な発現cDNAライブラリーの構築およびスクリーニング」、Methods in Gene Biotechnology、29−65頁(CRC Press,Inc.1997)を参照のこと)。
【0080】
種々のクローニングベクターが、cDNAライブラリーの構築に適切である。例えば、cDNAライブラリーは、λgt10ベクター(例えば、Huynhら、「λgt10およびλgt11中のcDNAライブラリーの構築およびスクリーニング」 DNA Cloning:A Practical Approach 第I巻、Glover(編)49頁(IRL Press、1985);Wu(1997)47−52頁を参照のこと)のようなバクテリオファージ由来のベクター中に調製され得る。
【0081】
あるいは、2本鎖cDNA分子は、pBluescriptベクター(Stratagene Cloning Systems;La Jolla,California),LambdaGEM−4(Promega Corp.;Madison,Wisconsin)または他の市販されるベクターのようなプラスミドベクター中に挿入され得る。適切なクローニングベクターはまた、American Type Culture Collection(Rockville,Maryland)から得られ得る。
【0082】
クローン化されたcDNA分子を増幅するために、cDNAライブラリーを、標準の技術を用いて原核生物宿主中に挿入する。例えば、cDNAライブラリーは、Life Technologies,Inc.(Gaithersburg,Maryland)から得られ得るコンピテントE.coli DH5細胞に導入され得る。
【0083】
ヒトゲノムDNAライブラリーは、当該分野で周知の手段によって調製され得る(例えば、Ausubel(1995)5−1〜5−6頁;Wu(1997)307−327頁を参照のこと)。ゲノムDNAは、界面活性剤サルコシルを用いて組織を溶解すること、プロテイナーゼKを用いて溶解物を消化すること、遠心分離によって溶解物から不溶性破片を除去すること、イソプロパノールを用いて溶解物から核酸を沈澱させること、そして塩化セシウム密度勾配において再懸濁したDNAを精製することによって単離され得る。
【0084】
ゲノムライブラリーの産生に適切なDNAフラグメントは、ゲノムDNAのランダム剪断(random shearing)によってかまたは制限エンドヌクレアーゼを用いたゲノムDNAの部分消化によって得られ得る。ゲノムDNAフラグメントは、従来の技術(例えば、適切な末端を提供するための制限酵素消化の使用、DNA分子の所望しない連結を避けるためのアルカリホスファターゼ処理の使用および適切なリガーゼを用いた連結)に従って、バクテリオファージまたはコスミドベクターのようなベクター中に挿入され得る。そのような操作についての技術は、当該分野で周知である(例えば、Ausubel(1995)5−1〜5−6頁;Wu(1997)307−327頁を参照のこと)。
【0085】
TGF−β結合タンパク質遺伝子をコードする核酸分子はまた、本明細書中に記載されるように、ヒトTGF−β結合タンパク質遺伝子のヌクレオチド配列に基づくヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して得られ得る。PCRを用いてライブラリーをスクリーニングするための一般的な方法が、例えば、Yuら、「Use of the Polymerase Chain Reaction to Screen Phage Libraries」、Methods in Molecular Biology、第15巻:PCR Protocols:Curret Methods and Applications、White(編)、211〜215頁(Humana Press,Inc.1993)により提供される。さらに、関連遺伝子を単離するためのPCRの使用についての技術が、例えば、Preston、「Use of Degenerate Oligonucleotide Primers and the Polymerase Chain Reaction to Clone Gene Family Members」、Methods in Molecular Biology、第15巻:PCR Protocols:Current Methods and Applications、White(編)、317〜337頁(Humana Press,Inc.1993)により、記載される。
【0086】
あるいは、ヒトゲノムライブラリーは、Research Genetics(Huntsville,AL)のような商業的供給源およびAmerican Type Culture Collection(Rockville,Maryland)から得られ得る。
【0087】
cDNAまたはゲノムクローンを含むライブラリーは、標準的な方法を使用して、配列番号1に基づく1つ以上のポリヌクレオチドプローブを用いてスクリーニングされ得る(例えば、Ausubel(1995)、6−1〜6−11頁を参照のこと)。
【0088】
以下で記載のように産生される抗TGF−β結合タンパク質抗体もまた、cDNAライブラリー由来のTGF−β結合タンパク質遺伝子をコードするDNA配列を単離するために使用され得る。例えば、この抗体は、λgt11発現ライブラリーをスクリーニングするために使用され得るか、またはこの抗体は、ハイブリッド選択および翻訳に続く免疫スクリーニングのために使用され得る(例えば、Ausubel(1995)、6−12〜6−16頁;Margolisら、「Screening λ expression libraries with antibody and protein probes」DNA Cloning 2:Expression Systems,第2版、Gloverら(編)、1〜14頁(Oxford University Press 1995)を参照のこと)。
【0089】
TGF−β結合タンパク質cDNAまたはTGF−β結合タンパク質ゲノムフラグメントの配列は、標準的方法を使用して決定され得る。さらに、TGF−β結合タンパク質プロモーターまたは調節エレメントを含むゲノムフラグメントの同定は、欠失分析のような十分に確立された技術を使用して達成され得る(一般的に、Ausubel(1995)を参照のこと)。
【0090】
代替として、TGF−β結合タンパク質遺伝子が、相互のプライミング長オリゴヌクレオチド(mutually priming long oligonucleotide)および本明細書中に記載されるヌクレオチド配列を使用してDNA分子を合成することにより得られ得る(例えば、Ausubel(1995)8−8〜8−9頁を参照のこと)。ポリメラーゼ連鎖反応を使用する確立された技術は、少なくとも2キロベースの長さのDNA分子を合成する能力を提供する(Adangら、Plant Molec.Biol.21:1131、1993;Bambotら、PCR Methods and Applications 2:266、1993;Dillonら、「Use of the Polymerase Chain Reaction for the Rapid Construction of Synthetic Genes」、Methods in Molecular Biology、第15巻:PCR Protocols:Current Methods and Applications、White(編)、263〜268頁、(Humana Press,Inc.1993);Holowachukら、PCR Methods Appl.4:299、1995)。
【0091】
(3,TGF−β結合タンパク質遺伝子の産生)
改変体TGF−β結合タンパク質遺伝子をコードする核酸分子は、上記の手順を使用して、配列番号1、5、9、11、13、または15に基づくヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドプローブを用いて、種々のcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、得られ得る。TGF−β結合タンパク質遺伝子改変体もまた、合成的に構築され得る。例えば、配列番号2、6、8、10、12、14、または16のアミノ酸配列と比較して、保存的アミノ酸変化を有するポリペプチドをコードする核酸分子が、考案され得る。すなわち、TGF−β結合タンパク質アミノ酸配列におけるアルキルアミノ酸が、アルキルアミノ酸に置換され、TGF−β結合タンパク質アミノ酸配列における芳香族アミノ酸が、芳香族アミノ酸に置換され、TGF−β結合タンパク質配列における硫黄含有アミノ酸が、硫黄含有アミノ酸に置換され、TGF−β結合タンパク質アミノ酸配列におけるヒドロキシ含有アミノ酸が、ヒドロキシ含有アミノ酸に置換され、TGF−β結合タンパク質アミノ酸配列における酸性アミノ酸が、酸性アミノ酸に置換され、TGF−β結合タンパク質アミノ酸配列における塩基性アミノ酸が、塩基性アミノ酸に置換され、またはTGF−β結合タンパク質アミノ酸配列における二塩基性モノカルボキシアミノ酸が、二塩基性モノカルボキシアミノ酸に置換される、配列番号2、6、8、10、12、14または16の1つ以上のアミノ酸置換を含む改変体が得られ得る。
【0092】
一般的なアミノ酸の中で、例えば、「保存的アミノ酸置換」が、各々の以下の群:(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(3)セリンおよびスレオニン、(4)アスパラギン酸およびグルタミン酸、(5)グルタミンおよびアスパラギン、ならびに(6)リジン、アルギニンおよびヒスチジン内のアミノ酸間の置換により示される。このような置換を作製することにおいて、可能である場合、図1中で概説されるシステイン骨格を維持することは重要である。
【0093】
TGF−β結合タンパク質遺伝子における保存的アミノ酸変化が、配列番号1において列挙されるヌクレオチドをヌクレオチドに置換することにより、導入され得る。このような「保存的アミノ酸」改変体は、例えば、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発、リンカースキャニング(linker−scanning)変異誘発、ポリメラーゼ連鎖反応を用いる変異誘発などにより得られ得る(Ausubel(1995)8−10〜8−22頁;およびMcPherson(編)、Directed Mutagenesis:A Practical Approach(IRL Press 1991)を参照のこと)。このような改変体の機能的能力は、標準的方法(例えば、本明細書中に記載されるアッセイ)を用いて決定され得る。あるいは、改変体TGF−β結合タンパク質ポリペプチドは、抗TGF−β結合タンパク質抗体に特異的に結合する能力により同定され得る。
【0094】
核酸分子の慣習的な、欠失分析は、TGF−β結合タンパク質ポリペプチドをコードする核酸分子の「機能的フラグメント」を得るために、行われ得る。例示のように、配列番号1のヌクレオチド配列を有しているDNA分子は、一連のネステ化された(nested)欠失を得るために、Bal31ヌクレアーゼで消化され得る。次いで、このフラグメントは、発現ベクターの適切なリーディングフレームに挿入され、そしてこの発現されたポリペプチドは、単離され、そして活性についてまたは抗TGF−β結合タンパク質抗体に結合する能力について試験される。エキソヌクレアーゼ消化に対する1つの代替は、オリゴヌクレオチド指向性変異誘発を使用して、欠失または停止コドンを導入し、所望のフラグメントの産生を特定することである。あるいは、TGF−β結合タンパク質遺伝子の特定のフラグメントは、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して合成され得る。
【0095】
タンパク質の機能分析のための標準の技術は、例えば、Treuterら、Molec.Gen.Genet.240:113,1993;Contentら、「Expression and preliminary deletion analysis of the 42 kDa 2−5A synthetase induced by human interferon」Biological Interferon Systems,Proceedings of ISIR−TNO Meeting on Interferon Systems,Cantell(編)65−72頁(Nijhoff 1987);Herschman,「The EGF Receptor」Control of Animal Cell Proliferation,第1巻,Boyntonら、(編)169−199頁(Academic Press 1985);Coumailleauら、J.Biol.Chem.270:29270,1995;Fukunagaら、J.Biol.Chem.270:25291,1995;Yamaguchiら、Biochem.Pharmacol.50:1295,1995;およびMeiselら、Plant Molec.Biol.30:1,1996によって記載される。
【0096】
本発明はまた、保存的なアミノ酸変化を有するTGF−β結合タンパク質遺伝子の機能的フラグメントを意図する。
【0097】
TGF−β結合タンパク質改変体遺伝子は、上記のような配列番号1、5、9、11、13または15、および2、6、10、12、14または16のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列との同一性のレベルを決定することにより、構造に基づいて同定され得る。構造に基づいて改変体遺伝子を同定するための代替的なアプローチは、潜在的な改変体TGF−β結合タンパク質遺伝子をコードしている核酸分子が、配列番号1,5,9,11,13、または15のヌクレオチド配列、あるいは長さが少なくとも15または20ヌクレオチドのそれらの配列の部分を有する核酸分子に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るか否かを決定することである。例示のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のように、改変体TGF−β結合タンパク質配列を有する核酸分子は、配列番号1由来の配列を有する核酸分子のフラグメントと、例えば、55〜60℃で一晩インキュベートされた5×SSRE(1×SSRE=180mM 塩化ナトリウム、10mM リン酸ナトリウム、1mM EDTA(pH7.7)、5×デンハート溶液(100×デンハート=2%(w/v)ウシ血清アルブミン、2%(w/v)フィコール、2%(w/v)ポリビニルピロリドン)および0.5%SDS)を含む緩衝液中で結合し得る。高ストリンジェンシーでのハイブリダイゼーション後の洗浄は、0.5×SSC(1×SSC=150mM 塩化ナトリウム、15mMクエン酸三ナトリウム)中、または0.5×SSPE中で55〜60℃にて代表的に行われる。
【0098】
改変体TGF−β結合タンパク質遺伝子の特定のヌクレオチド配列に関わらず、この遺伝子は、その機能的活性により、またはその抗TGF−β結合タンパク質抗体に対して特異的に結合する能力により特徴付けられ得るポリペプチドをコードする。より具体的には、改変体TGF−β結合タンパク質遺伝子は、少なくとも50%、および好ましくは60%、70%、80%または90%を超える、本明細書中に記載されるヒトTGF−β結合タンパク質遺伝子によりコードされるポリペプチドの活性を示すポリペプチドをコードする。
【0099】
(4.培養細胞におけるTGF−β結合タンパク質の産生)
TGF−β結合タンパク質遺伝子を発現させるために、そのポリペプチドをコードしている核酸分子は、発現ベクター中の転写発現を制御する調節配列に対して作動可能に連結されなければならず、次いで、宿主細胞中へ導入されなければならない。プロモーターおよびエンハンサーのような転写調節配列に加えて、発現ベクターは、この発現ベクターを保有する細胞の選択に関して適切な翻訳調節配列およびマーカー遺伝子を含み得る。
【0100】
真核細胞における外来性タンパク質の産生に対して適切である発現ベクターは、(1)細菌宿主において発現ベクターの増殖および選択を提供する、細胞複製起点および抗生物質耐性マーカーをコードする原核生物のDNAエレメント、(2)転写の開始を制御する真核生物DNAエレメント(例えば、プロモーター)、および(3)転写終結/ポリアデニル化配列のような転写のプロセシングを制御するDNAエレメントを代表的に含む。
【0101】
本発明のTGF−β結合タンパク質は、哺乳細胞動物において好ましくは発現される。哺乳動物宿主細胞の例としては、アフリカミドリザルの腎細胞(Vero;ATCC CRL 1587)、ヒト胎児腎細胞(293−HEK;ATCC CRL 1573)、ベビー(baby)ハムスター腎細胞(BHK−21;ATCC CRL 8544)、イヌ腎細胞(MDCK;ATCC CCL 34)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO−K1;ATCC CCL61)、ラット下垂体細胞(GH1;ATCC CCL82)HeLa S3細胞(ATCC CCL2.2)、ラット肝癌細胞(H−4−II−E;ATCC CRL 1548)、SV40で形質転換されたサル腎細胞(COS−1;ATCC CRL 1650)およびマウス胎仔細胞(NIH−3T3;ATCC CRL 1658)が挙げられる。
【0102】
哺乳動物宿主について、転写調節シグナルおよび翻訳調節シグナルは、ウイルス供給源(例えば、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、シミアンウイルスなど)由来であり得、この調節シグナルは、高レベルの発現を有する特定の遺伝子に関連する。適切な転写調節配列および翻訳調節配列はまた、哺乳動物遺伝子(例えば、アクチン遺伝子、コラーゲン遺伝子、ミオシン遺伝子およびメタロチオネイン遺伝子)から得られ得る。
【0103】
転写調節配列は、RNA合成の開始を指向するに十分なプロモーター領域を含む。適切な真核生物プロモーターとしては、マウスのメタロチオネインI遺伝子のプロモーター(Hamerら、J.Molec.Appl.Genet.1:273、1982)、ヘルペスウイルスのTKプロモーター(McKnight、Cell 31:355、1982)、SV40初期プロモーター(Benoistら、Nature 290:304、1981)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(Gormanら、Proc.Nat’l Acad. Sci. USA 79:6777、1982)、サイトメガロウイルスプロモーター(Foeckingら、Gene 45:101、1980)、およびマウス乳癌ウイルスプロモーター(一般的に、Etcheverry、「Expression of Engineered Proteins in Mammalian Cell Culture」 Protein Engineering:Principles and Practice、Clelandら(編)、163−181頁(John Wiley&Sons,Inc.1996)を参照のこと)が挙げられる。
【0104】
あるいは、原核生物プロモーター(例えば、バクテリオファージT3 RNAポリメラーゼプロモーター)は、原核生物プロモーターが真核生物プロモーターによって調節される場合に、哺乳動物細胞におけるTGFβ結合タンパク質の遺伝子発現を制御するために用いられ得る(Zhouら、Mol.Cell.Biol.10:4529、1990;Kaufmanら、Nucl.Acids Res.19:4485、1991)。
【0105】
TGFβ結合タンパク質の遺伝子はまた、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または植物細胞において、発現され得る。原核生物宿主において、TGFβ結合タンパク質のポリペプチドを発現するために用いられ得る適切なプロモーターは、当業者に周知であり、そしてT4ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ、Sp6ポリメラーゼおよびT7ポリメラーゼ、バクテリオファージλのPRプロモーターおよびPLプロモーター、E.coliのtrpプロモーター、recAプロモーター、熱ショックプロモーター、lacUV5プロモーター、tacプロモーター、lpplacSprプロモーター、phoAプロモーターおよびlacZプロモーター、B.subtilisのプロモーター、Bacillusのバクテリオファージのプロモーター、Streptomycesのプロモーター、バクテリオファージλのintプロモーター、pBR322のblaプロモーター、ならびにクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のCATプロモーターを認識し得るプロモーターを含む。原核生物プロモーターは、Glick、J.Ind.Microbiol.1:277、1987、Watsonら、Molecular Biology of the Gene、第4版(Benjamin Cummins 1987)、およびAusbelら(1995)によって概説されている。
【0106】
好ましい原核生物宿主としては、E.coliおよびBacillus subtilusが挙げられる。E.coliの適切な株としては、BL21(DE3)、BL21(DE3)pLysS、BL21(DE3)pLysE、DH1、DH4I、DH5、DH5I、DH5IF’、DH5IMCR、DH10B、DH10B/p3、DH11S、C600、HB101、JM101、JM105、JM109、JM110、K38、RR1、Y1088、Y1089、CSH18、ER1451およびER1647(例えば、Brown(編)、Molecular Biology Labfax(Academic Press 1991)を参照のこと)が挙げられる。Bacillus subtilusの適切な株としては、BR151、YB886、MI119、MI120およびB170(例えば、Hardy、「Bacillus Cloning Methods」 DNA Cloning:A Practical Approach、Glover(編)(IRL Press 1985)を参照のこと)が挙げられる。
【0107】
原核生物宿主におけるタンパク質の発現のための方法は、当業者に周知である(例えば、Williamsら、「Expression of foreign proteins in E.coli using plasmid vectors and purification of specific polyclonal antibodies」 DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版、Gloverら(編)、15頁(Oxford University Press 1995);Wardら、「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」 Monoclonal Antibodies: Principles and Applications、137頁(Wiley−Liss,Inc. 1995);およびGeorgiou、「Expression of Proteins in Bacteria」 Protein Engineering: Principles and Practice、Clelandら(編)、101頁(John Wiley&Sons,Inc. 1996)を参照のこと)。
【0108】
バキュロウイルス系は、クローニングされたTGFβ結合タンパク質の遺伝子を、昆虫細胞に導入するための効率的な手段を提供する。適切な発現ベクターは、Autographa californica多重(multiple)核多角体病ウイルス(AcMNPV)に基づいており、そしてDrosophila熱ショックタンパク質(hsp)70プロモーター、Autographa californica核多角体病ウイルス極初期遺伝子プロモーター(ie−l)および遅延型(delayed)初期39Kプロモーター、バキュロウイルスp10プロモーター、ならびにDrosophilaメタロチオネインプロモーターのような周知のプロモーターを含む。適切な昆虫宿主細胞としては、IPLB−Sf−21、Spodoptera frugiperdaサナギ卵巣細胞株(例えば、Sf9(ATCC CRL 1711)、Sf21AEおよびSf21(Invitrogen Corporation;San Diego、CA))、ならびにDrosophila Schneider−2細胞由来の細胞株が挙げられる。バキュロウイルス系において組換えタンパク質を産生するための確立された技術は、Baileyら、「Manipulation of Baculovirus Vectors」 Methods in Molecular Biology、第7巻:Gene Transfer and Expression Protocols、Murray(編)、147−168頁(The Humana Press,Inc. 1991)、Patelら、「The baculovirus expression system」 DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版、Gloverら(編)、205−244頁(Oxford University Press 1995)、Ausubel(1995) 16−37から16−57頁、Richardson(編)、Baculovirus Expression Protocols(The Humana Press,Inc.1995)およびLucknow「Insect Cell Expression Technology」 Protein Engineering:Principles and Practice、Clelandら(編)、183−218頁(John Wiley&Sons,Inc.1996)によって提供される。
【0109】
酵母における発現のためのプロモーターとしては、GAL1(ガラクトース)、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)、AOX1(アルコールオキシダーゼ)、HIS4(ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ)など由来のプロモーターが挙げられる。多くの酵母クローニングベクターが設計されており、そして容易に入手可能である。これらのベクターとしては、YIpを基にしたベクター(例えば、YIp5)、YRpベクター(例えば、YRp17)、YEpベクター(例えば、YEp13)およびYCpベクター(例えば、YCp19)が挙げられる。当業者は、酵母細胞における発現のための広範な種々の適切なベクターが存在することを理解する。
【0110】
発現ベクターはまた、植物プロトプラスト、インタクトな植物組織、または単離された植物細胞に導入され得る。植物組織を培養する一般的な方法が、例えば、Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology、Glickら(編)67−88頁(CRC Press 1993)において、Mikiら、「Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants」により提供される。
【0111】
発現ベクターは、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソーム媒介性トランスフェクション、マイクロプロジェクタイル媒介性送達、エレクトロポレーションなどを含む種々の標準的な技術を使用して宿主細胞へ導入され得る。好ましくは、宿主細胞ゲノム内に安定に組み込まれた発現ベクターを含む組換え宿主細胞を提供するために、トランスフェクトされた細胞を選択し、そして増殖する。真核生物細胞にベクターを導入するための技術および優性の選択マーカーを使用してそのような安定な形質転換体を選択するための技術は、例えば、Ausubel(1995)およびMurray(編)により記載される(Gene Transfer and Expression Protocols(Humana Press 1991)。細菌、酵母、昆虫および植物細胞へ発現ベクターを導入するための方法もまた、Ausubel(1995)によって提供される。
【0112】
哺乳動物細胞系により産生される外来のタンパク質を発現させ、そして回収するための一般的な方法は、例えば、Protein Engineering:Principles and Practice、Clelandら(編)163頁(Wiley−Liss,Inc.1996)におけるEtcheverry、「Expression of Engineered Proteins in Mammalian Cell Culture」により提供される。細菌系により産生されたタンパク質を回収するための標準的な技術は、例えば、DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版、Gloverら(編)、59−92頁(Oxford University Press 1995)におけるGrisshammerら、「Purification of over−produced proteins from E.coli cells」により提供される。バキュロウイルス系から組換えタンパク質を単離するための確立された方法は、Richardson(編)、Baculovirus Expression Protocols(The Humana Press,Inc.、1995)により記載される。
【0113】
より一般的には、TGF−β結合タンパク質は、標準的な技術(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、HPLCなど)によって、単離され得る。TGF−β結合タンパク質の単離および精製におけるさらなるバリエーションが、当業者によって考案され得る。例えば、以下に記載されるように得られた抗TGFβ結合タンパク質抗体を使用して、イムノアフィニティー精製によって多量のタンパク質を単離し得る。
【0114】
(5.TGFβ結合タンパク質に対する抗体の産生)
TGF−β結合タンパク質に対する抗体が、例えば抗原として発現ベクターの産物を使用して、得られ得る。特に有用な抗−TGFβ結合タンパク質抗体は、配列番号2、6、10、12、14、または16のTGF−β結合タンパク質と「特異的に結合」するが、他のTGF−β結合タンパク質(例えば、Dan、Cerberus、SCGF、またはGremlin)とは結合しない。本発明の抗体(そのフラグメントおよび誘導体を含む)は、ポリクローナルであり得るか、または特にモノクローナル抗体であり得る。抗体は、任意の免疫グロブリンクラスに属し得、そして例えば、IgG、例えば、IgG1;IgG2;IgG3;IgG4;IgE;IgM;またはIgA抗体であり得る。抗体は、動物(例えば、哺乳動物起源)の抗体であり得、そして例えばマウス、ラット、ヒトまたは他の霊長類の抗体であり得る。所望される場合、その抗体は内部(internalising)抗体であり得る。
【0115】
組換えTGF−β結合タンパク質に対するポリクローナル抗体は、当業者に周知の方法を使用して調製され得る(例えば、Immunochemical protocols(Manson編)1−5頁(Humana Press 1992)におけるGreenら、「Production of Polyclonal Antisera」;DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版、Gloverら(編)、15頁(Oxford University Press 1995)におけるWilliamsら、「Expression of foreign proteins in E.coli using plasmid vectors and purification of specific polyclonal antibodies」を参照のこと)。ポリクローナル抗体は、動物(例えは、ラット、マウス、ウサギ、ヤギまたはヒツジ)内で代表的に惹起されるが、本発明の抗TGFβ結合タンパク質抗体はまた、類人猿抗体に由来し得る。ヒヒにおける診断的および治療的に有用な抗体を惹起するための一般的な技術が、例えば、Goldenbergら、国際特許公開WO91/11465(1991)において、およびLosmanら、Int.J.Cancer 46:310 1990において、見出され得る。
【0116】
この抗体は、少なくとも可変領域ドメインを含むべきである。この可変領域ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であり得、一般的に、フレームワーク配列内に包理され、抗原結合を担う少なくとも一つの超可変アミノ酸配列を含む。大まかに言えば、この可変(V)領域ドメインは、免疫グロブリン重鎖(VH)および/または軽鎖(VL)可変ドメインの任意の適切な配列であり得る。従って、例えば、このV領域ドメインは、モノマーであり得、そして受容可能な親和性を有し、独立して抗原に結合し得るVHまたはVLドメインであり得る。あるいは、このV領域ドメインは、ダイマーであり得、そしてVH−VH、VH−VL、またはVL−VLのダイマーを含み得、ここでVHおよびVL鎖は、非共有結合的に会合される(本明細書中以後FVとして省略される)。しかし、所望される場合、この鎖は、例えば、直接、2つの可変ドメイン間のジスルフィド結合を介してか、またはリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を介してのいずれかで共有結合されて、単鎖ドメインを形成し得る(本明細書中以後scFVとして省略される)。
【0117】
可変性領域ドメインは、任意の天然に存在する可変性ドメインであり得るか、またはその操作されたバージョンであり得る。操作されたバージョンとは、組換えDNA操作技術を使用して作製された可変性領域ドメインを意味する。このような操作されたバージョンとしては、例えば、天然の抗体のアミノ酸配列中の挿入、欠失もしくは変更、または天然の抗体のアミノ酸配列に対する挿入、欠失もしくは変更によって、その天然の抗体の可変性領域から作製されたバージョンが挙げられる。この型の特定の例としては、1つの抗体由来の少なくとも1つのCDR、および必要に応じて、1つ以上のフレームワークアミノ酸、ならびに第2の抗体由来の可変性領域ドメインの残りを含む、操作された可変性領域ドメインが挙げられる。
【0118】
可変性領域ドメインは、C末端アミノ酸で、少なくとも1つの他の抗体ドメインまたはそのフラグメントに共有結合され得る。従って、例えば、VHドメインがこの可変性領域ドメインに存在する場合、これは、免疫グロブリンCH1ドメインまたはそのフラグメントに連結され得る。同様に、VLドメインは、CKドメインまたはそのフラグメントに連結され得る。この点において、例えば、この抗体は、Fabフラグメントであり得、ここで、この抗原結合ドメインは、それぞれ、CH1ドメインおよびCKドメインに対してC末端で共有的に連結する、関連するVHドメインおよびVLドメインを含む。このCH1ドメインは、さらなるアミノ鎖で伸長されて、例えば、Fab’フラグメント中に見出されるようなヒンジ領域ドメインを提供し得るか、またはさらなるドメイン(例えば、抗体CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を提供し得る。
【0119】
抗体フラグメントの別の形態は、単一相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得られ得る。このような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製されて、抗体産生細胞のRNAから可変性領域を合成する(例えば、Larrickら、Methods:A Comparison to Methods in Enzymology 2:106、1991;Courtenay−Luck、「Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies」、Monoclonal Antibodies:Production,Engineering and Clinical Application、Ritterら(編)、166頁(Cambridge University Press 1995);およびWardら、「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」、Monoclonal Antibodes:Principles and Applications、Birthら(編)137頁(Wiley−Liss,Inc.1995)を参照のこと)。
【0120】
本発明における使用のための抗体は、一般に、モノクローナル(従来の免疫法および細胞融合手順により調製される)であり得、そしてフラグメントの場合においては、任意の適切な標準的化学(例えば、還元もしくは酵素的切断および/または消化技術(例えば、ペプシンを用いる処理による))を使用して、それらから誘導され得る。
【0121】
より詳細には、モノクローナル抗TGFβ結合タンパク質抗体は、種々の技術を使用して生成され得る。特定の抗原に対するげっ歯類モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって得られ得る(例えば、Kohlerら、Nature 256:495、1975;およびColiganら(編)、Current Protocols in Immunology、1:2.5.1〜2.6.7(John Wiley & Sons 1991)[「Coligan」];Picksleyら、「Production of monoclonal antibodies against proteins expressed in E.coli」、DNA Cloning 2:Expression Systems、第2版、Gloverら(編)、93頁(Oxford University Press 1995を参照のこと)。
【0122】
簡潔には、モノクローナル抗体は、TGFβ結合タンパク質遺伝子産物を含む組成物を用いてマウスに注射すること、血清サンプルを取り出すことによって抗体生成物の存在を確認すること、脾臓を取り出してBリンパ球を得ること、このBリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを生成すること、このハイブリドーマをクローニングすること、抗原に対して抗体を生成する陽性クローンを選択すること、この抗原に対する抗体を生成するこのクローンを培養すること、およびこのハイブリドーマ培養物からこの抗体を単離することによって、得られ得る。
【0123】
さらに、本発明の抗TGFβ結合タンパク質抗体は、ヒトモノクローナル抗体に由来し得る。ヒトモノクローナル抗体は、抗原性チャレンジに応答して特異的ヒト抗体を生成するように操作されたトランスジェニックマウスから得られる。この技術において、ヒト重鎖位置およびヒト軽鎖位置のエレメントは、内因性重鎖位置および軽鎖位置の標的された破壊を含む胚幹細胞株に由来するマウスの株に導入される。このトランスジェニックマウスは、ヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成し得、そしてこのマウスを使用して、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを生成し得る。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、例えば、Greenら、Nature Genet.7:13,1994;Lonbergら、Nature 368:856,1994;およびTaylorら、Int.Immun.6:579,1994によって記載される。
【0124】
モノクローナル抗体は、種々の十分に確立された技術によってハイブリドーマ培養物から単離および精製され得る。このような単離技術としては、Protein−A Sepharoseを用いるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる(例えば、Coligan、2.7.1〜2.7.12頁および2.9.1〜2.9.3頁;Bainesら、「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」、Methods in Molecular Biology、第10巻、79〜104頁(The Human Press,Inc.、1992)を参照のこと)。
【0125】
特定の用途のために、抗TGF−β結合タンパク質抗体のフラグメントを調製することが、所望され得る。このような抗体フラグメントは、例えば、この抗体のタンパク質分解性加水分解により得られ得る。抗体フラグメントは、従来の方法による抗体全体のペプシン消化またはパパイン消化によって、得られ得る。例示として、抗体フラグメントは、ペプシンによる抗体の酵素切断によって生成され得、F(ab’)2と呼ばれる5Sのフラグメントと提供し得る。このフラグメントは、チオール還元剤を使用してさらに切断され得、3.5Sの一価Fab’フラグメントを提供し得る。必要に応じて、この切断反応は、ジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基についてのブロック基を使用して実施され得る。代替法として、ペプシンを使用する酵素切断は、2つの一価Fabフラグメントおよび1つのFcフラグメントを直接生成する。これらの方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,331,647号;Nisonoffら、Arch Biochem.Biophys.89:230、1960;Porter、Biochem.J.73:119、1959;Edelmanら、Methods in Enzymology 1:422(Academic Press 1967)、ならびにColigan、2.8.1〜2.8.10頁および2.10〜2.10.4によって、記載されている。
【0126】
抗体を切断する他の方法(例えば、重鎖を切断して一価の軽鎖フラグメントおよび重鎖フラグメントを形成すること、フラグメントのさらなる切断、あるいは他の酵素技術、化学技術、または遺伝子技術)もまた、そのフラグメントが、インタクトな抗体により認識される抗原に結合する限り、使用され得る。
【0127】
あるいは、この抗体は、組換えDNA技術(抗体可変領域および/または定常領域をコードするDNAの、操作および再発現を含む)の使用によって得られた、組換え抗体または操作された抗体であり得る。このようなDNAは、公知であり、そして/またはDNAライブラリー(例えば、ファージ−抗体ライブラリー(Chiswell,D.J.およびMcCafferty,J.Tibech.10、80〜84(1992)を参照のこと)を含む)から容易に入手可能であるか、あるいは所望される場合は、合成され得る。標準的な分子生物学手順および/または化学手順が、このDNAを配列決定および操作するために使用され得、例えば、コドンを導入してシステイン残基を作製しても、所望の他のアミノ酸もしくはドメインを、改変しても、付加しても、欠失させてもよい。
【0128】
ここから、このDNAを含む1つ以上の複製可能な発現ベクターが、調製され得、そしてこの抗体の生成が生じる適切な細胞株(例えば、非骨髄腫生成細胞株(例えば、マウスNSO株)または細菌(例えば、E.coli)株)を形質転換するために使用され得る。有効な転写および翻訳を得るために、各ベクター中のこのDNA配列は、その可変ドメインの配列に作動可能に連結された、適切な調節配列(特に、プロモーター配列およびリーダー配列)を含むべきである。この様式で抗体を生成するための好ましい方法は、一般的に周知であり、そして慣用的に使用されている。例えば、基本的分子生物学手順は、Maniatisら(Molecular Cloning、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1989)により記載されている;DNA配列決定は、Sangerら(PNAS 74、5463(1997))およびAmersham International plc sequencing handbookに記載されるように実施され得る;部位特異的変異誘発は、Kramerらの方法(Nucl.Acids Res.12:9441(1984))およびAnglian Biotechnology Ltd handbookに従って実行され得る。さらに、DNAの操作による抗体の調製、発現ベクターの作製、および適切な細胞の形質転換(例えば、Mountain AおよびAdair,J R、Biotechnology and Genetic Engineering Reviews(Tombs,M P編、第10巻、第1章、1992、Intercept、Andover、UK)、ならびに国際特許明細書WO91/09967に概説されるようなもの)に適切な技術を詳述した、多数の刊行物が存在する。
【0129】
所望される場合、本発明に従う抗体は、その抗体に結合した、1つ以上エフェクター分子またはレポーター分子を有し得る。そして本発明は、このような改変型タンパク質まで広がる。このエフェクター分子またはレポーター分子は、この抗体に位置する利用可能な任意のアミノ酸側鎖、末端アミノ酸、または存在する場合は炭化水素官能基を介して、抗体に結合し得るが、ただし、常に、これが、この分子の結合特性および最終的有用性に不利に影響しない場合に限る。特定の官能基としては、例えば、任意の遊離アミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、またはアルデヒド基が挙げられる。この抗体とエフェクター分子および/またはレポーター分子との結合は、このような基およびこのエフェクター分子またはレポーター分子中の適切な官能基を介して達成され得る。この結合は、直接的であっても間接的であっても、間隔を空ける基を介しても架橋基を介してもよい。
【0130】
エフェクター分子としては、例えば、抗腫瘍性因子、毒素(例えば、細菌起源または植物起源の、酵素的に活性な毒素、およびそのフラグメント(例えば、リシンおよびそのフラグメント))、生物学的に活性なタンパク質(例えば、酵素)、核酸およびそれらのフラグメント(例えば、DNA、RNA、およびそれらのフラグメント)、天然に存在するポリマーおよび合成ポリマー(例えば、多糖ポリマーおよびポリアルキレンポリマー(例えば、ポリ(エチレングリコール))ならびにそれらの誘導体、放射性核種(特に、放射性ヨウ化物)、およびキレート金属が、挙げられる。適切なレポーター基としては、キレート金属、蛍光化合物、あるいはNMR分光法またはESR分光法によって検出され得る化合物が、挙げられる。
【0131】
特定の抗腫瘍性因子としては、細胞傷害性因子および細胞分裂抑制因子が挙げられ、例えば、アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、メルファラン、メクロレタミン、シクロホスファミド、またはウラシルマスタード)およびその誘導体、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、ブスルファン、またはシスプラチン);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、フルオロ酢酸またはフルオロクエン酸);抗生物質(例えば、ブレオマイシン(例えば、硫酸ブレオマイシン)、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、アクチノマイシン(例えば、ダクチノマイシン)、プリカマイシン、カリカエマイシン(calichaemycin)およびその誘導体、またはエスペラマイシンおよびその誘導体);有糸分裂インヒビター(例えば、エトポシド、ビンクリスチンまたはビンブラスチン、およびそれらの誘導体);アルカロイド(例えば、エリプチシン);ポリオール(例えば、タキシシン(taxicin)−Iまたはタキシシン−II);ホルモン(例えば、アンドロゲン(例えば、ドロモスタノロンまたはテストラクトン)、プロゲスチン(例えば、酢酸メゲストロールまたは酢酸メドロキシプロゲステロン)、エストロゲン(例えば、ジメチルスチルベストロール二リン酸、ポリエストラジオールリン酸またはエストラムスチンリン酸)または抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン));アントラキノン(例えば、ミトザントロン);尿素(例えば、ヒドロキシ尿素);ヒドラジン(例えば、プロカルバジン);あるいはイミダゾール(例えば、ダカルバジン)である。
【0132】
特に有用なエフェクターグループは、カリーチェミシン(calichaemicin)およびその誘導体である(例えば、南アフリカ特許出願番号第85/8794号、同第88/8127号および同第90/2839号を参照のこと)。
【0133】
キレート化金属としては、2〜8(両端含む)の配位数を有する二陽性(dipositive)または三陽性(tripositive)のキレートが挙げられる。このような金属の特定の例としては、以下が挙げられる:テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、コバルト(Co)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、テルビウム(Tb)、ガドリニウム(Gd)、およびスカンジウム(Sc)。一般的には、金属は、好ましくは、放射性核種である。特定の放射性核種としては、以下が挙げられる:99mTc、186Re、188Re、58Co、60Co、67Cu、195Au、199Au、110Ag、203Pb、206Bi、207Bi、111In、67Ga、68Ga、88Y、90Y、160Tb、153Gd、および47Sc。
【0134】
キレート化金属は、例えば、任意の適切な多座キレート剤(例えば、非環式もしくは環式ポリアミン、ポリエーテル(例えば、クラウンエーテルおよびその誘導体);ポリアミド;ポルフィリン;および炭素環式誘導体)でキレート化された上記の型の金属のうちの1つであり得る。
【0135】
一般的には、キレート剤の型は、使用における金属に依存する。しかし、本発明に従う結合体におけるキレート剤の1つの特に有用な基は、非環式および環式ポリアミン、特に、ポリアミノカルボン酸、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸およびその誘導体、ならびに大環状アミン、例えば、環式トリアザおよびテトラアザ誘導体(例えば、国際特許出願WO92/22583に記載されるような);ならびにポリアミド、特に、デスフェリオキサミンおよびその誘導体である。
【0136】
従って、例えば、接続点として抗体におけるチオール基を使用することが所望される場合、これは、エフェクターまたはレポーター分子に存在するチオール反応性基との反応を通じて達成され得る。このような基の例としては、a−ハロカルボン酸またはエステル(a−halocarboxylic acid or ester)(例えば、ヨードアセトアミド)、イミド(例えば、マレイミド)、ビニルスルホンまたはジスルフィドが挙げられる。これらおよび他の適切な架橋手順は、概略的かつより詳細に、国際特許出願WO93/06231、WO92/22583、WO90/091195およびWO89/01476に記載される。
【0137】
(骨密度を増加する分子を選択するためのアッセイ)
上記のように、本発明は、骨密度を増加し得る化合物を選択し、そして/または単離するための方法を提供する。例えば、本発明の1つの局面において、選択された分子が、骨鉱物含量を増加し得るか否かを決定するための方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:(a)選択された分子を、TGF−β結合タンパク質および選択された数のTGF−βファミリーのタンパク質と混合する工程、(b)選択された分子が、TGF−βファミリーのタンパク質によるシグナル伝達を刺激するか否か、またはTGF−β結合タンパク質のTGF−βファミリーのタンパク質への結合を阻害するか否かを決定する工程。特定の実施形態において、この分子は、TGF−βの、間葉細胞分化の陽性レギュレーターとして機能する能力を増強する。
【0138】
本発明の他の局面において、選択された分子が、骨鉱物含量を増加し得るか否かを決定するための方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:(a)TGF−β結合タンパク質を発現する細胞に、選択された分子を曝露する工程、および(b)この曝露された細胞からのTGF−β結合タンパク質の発現(または活性)が減少するか否かを決定し、そこから、この化合物が、骨鉱物含量を増加し得るか否かを決定する工程。1つの実施形態において、細胞は、骨の生検からの自発的に形質転換されたかまたは形質転換されていない正常なヒトの骨、およびラットの頭頂骨の骨芽細胞からなる群より選択される。このような方法は、広範な種々のアッセイ形式において達成され得、このアッセイ形式としては、例えば、以下が挙げられる:対向免疫電気泳動(Countercurrent Immuno−Electrophoresis)(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降法、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、ドットブロットアッセイ、阻害もしくは競合アッセイ、およびサンドイッチアッセイ(米国特許第4,376,110号および同第4,486,530号を参照のこと;Antibodies:A Laboratory Manual(前出)もまた参照のこと)。
【0139】
このようなアッセイの代表的な実施形態は、以下の実施例5および6に提供される。簡潔には、TGF−βスーパーファミリーのファミリーメンバーまたはTGF−β結合タンパク質は、まず、固相に結合され、続いて、候補分子に添加される。TGF−βスーパーファミリーの標識されたファミリーメンバーまたはTGF−β結合タンパク質は、次いで、このアッセイに添加され、この固相が洗浄され、そして固体支持体上の結合もしくは標識されたTGF−βスーパーファミリーのメンバーまたはTGF−β結合タンパク質の量が決定される。本明細書中に記載されるような骨鉱物含量の増加における使用に適切な分子は、統計学的に有意な様式で、TGF−βスーパーファミリーのメンバー(単数または複数)へのTGF−β結合タンパク質の結合を減少する分子である。明らかに、本発明内の使用に適切なアッセイは、実施例2および3に記載される実施形態に限定されるべきではない。特に、多数のパラメーターが、例えば、TGF−βを固相に結合することによって、または固相の全体的な排除によって、変更され得る。
【0140】
本発明の他の局面において、選択された分子が、骨鉱物含量を増加し得るか否かを決定するための方法が提供され、この方法は、以下の工程を包含する:(a)TGF−βを発現する細胞に選択された分子を曝露する工程、および(b)この曝露された細胞からのTGF−βの活性が変更されるか否かを決定し、そこから、この化合物が、骨鉱物含量を増加し得るか否かを決定する工程。上記の方法と同様に、広範な種々の方法が利用されて、選択された試験化合物に起因する、TGF−β結合タンパク質の発現の変化を評価し得る。
【0141】
例えば、本発明の1つの局面では、選択された分子が、骨鉱物含量を増加させ得るか否かを決定するための方法が提供されて、この方法は、(a)選択された分子を、TGF−β結合タンパク質およびTGF−βファミリーのタンパク質のうちの選択されたメンバーと混合する工程、(b)選択された分子が、TGF−βファミリーのタンパク質のシグナル伝達を上方調節するかまたはTGF−β結合タンパク質がTGF−βファミリーのタンパク質に結合するのを阻害するかを決定する工程を包含する。特定の実施形態では、この分子は、TGF−βが、間葉(mechemchymal)細胞分化の正の調節因子として機能する能力を増強する。
【0142】
上記の方法と同様に、広範な種々の方法を利用して、選択された試験化合物に起因するTGF−βの刺激を評価し得る。1つのこのような代表的方法は、以下の実施例6に提供される(Durhamら,Endo.136:1374−1380もまた参照のこと)。
【0143】
本発明のなお他の局面では、選択された分子が、骨鉱物含量を増加させ得るか否かを決定するための方法が提供され、この方法は、選択された分子が、TGF−β結合タンパク質の骨またはそのアナログへの結合を阻害するか否かを決定する工程を包含する。本明細書中で利用される場合、骨またはそのアナログとは、ヒドロキシアパタイト、または粉末形態の骨、挫滅された骨もしくはインタクトな骨から構成される表面をいうことが理解されるべきである。上記の方法と同様に、広範な種々の方法を利用して、骨マトリックスに対するTGF−β結合タンパク質局在化の阻害を評価し得る。1つのこのような代表的方法は、以下の実施例7に提供される。
【0144】
本明細書中に記載した方法は、個々の試験分子の分析を言及し得るが、本発明は、そのように限定されないべきであることに留意すべきである。特に、選択された分子は、化合物の混合物中に含まれ得る。それゆえ、記載した方法は、TGF−βファミリーのメンバーに対するTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する分子を単離する工程をさらに包含し得る。
【0145】
(候補分子)
広範な種々の分子は、TGF−βファミリーのメンバーに対するTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する能力についてアッセイされ得る。以下でより詳細に考察される代表的例としては、有機分子、タンパク質またはペプチド、および核酸分子が挙げられる。本明細書中に記載の候補分子が、本明細書中に記載のアッセイにおいて利用され得ることは以下の考察から明らかであるべきであるが、このような分子もまた、種々の診断設定および治療設定において利用され得ることもまら容易に明らかであるべきである。
【0146】
(1.有機分子)
多数の有機分子が、TGF−βファミリーのメンバーに対するTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する能力についてアッセイされ得る。
【0147】
例えば、本発明の1つの実施形態では、有機分子は、化学ライブラリー(ここで、化学物質が個々にアッセイされる)またはコンビナトリアル化学ライブラリー(ここで複数の化合物が一度にアッセイされる)のいずれかから選択され得、次いで逆重畳されて、最も活性な化合物を決定および単離し得る。
る。
【0148】
このようなコンビナトリアル化学ライブラリーの代表例としては、以下によって記載されるコンビナトリアル化学ライブラリーが挙げられる:Agrafiotisら,「System and method of automatically generating chemical compounds with desired properties」,米国特許第5,463,564号;Armstrong,R.W.,「Synthesis of combinatorial arrays of organic compounds through the use of multiple component combinatorial array syntheses」,WO 95/02566;Baldwin,J.J.ら,「Sulfonamide derivatives and their use」,WO 95/24186;Baldwin,J.J.ら,「Combinatorial dihydrobenzopyran library」,WO 95/30642;Brenner,S.,「New kit for preparing combinatorial libraries」,WO 95/16918;Chenera,B.ら,「Preparation of library of resin−bound aromatic carbocyclic compounds」,WO 95/16712;Ellman,J.A.,「Solid phase and combinatorial synthesis of benzodiazepine compounds on a solid support」,米国特許第5,288,514号;Felder,E.ら,「Novel combinatorial compound libraries」,WO 95/16209;Lerner,R.ら,「Encoded combinatorial chemical libraries」,WO 93/20242;Pavia,M.R.ら,「A method for preparing and selecting pharmaceutically useful non−peptide compounds from a structurally diverse universal library」,WO 95/04277;Summerton,J.E.およびD.D.Weller,「Morpholino−subunit combinatorial library and method」,米国特許第5,506,337号;Holmes,C.,「Methods for the Solid Phase Synthesis of Thiazolidinones, Metathiazanones, and Derivatives thereof」,WO 96/00148;Phillips,G.B.およびG.P.Wei,「Solid−phase Synthesis of Benzimidazoles」,Tet.Letters 37:4887−90,1996;Ruhland,B.ら,「Solid−supported Combinatorial Synthesis of Structurally Diverse β−Lactams」,J.Amer.Chem.Soc.111:253−4,1996;Look,G.C.ら,「The Indentification of Cyclooxygenase−1 Inhibitors from 4−Thiazolidinone Combinatorial Libraries」,Bioorg and Med.Chem.Letters.6:707−12,1996。
【0149】
(2.タンパク質およびペプチド)
広範な範囲のタンパク質およびペプチドが、同様に、TGF−βファミリーメンバーへのTGF−β結合タンパク質の結合のインヒビターのための候補分子として利用され得る。
【0150】
(a.コンビナトリアルペプチドライブラリー)
TGF−βファミリーメンバーへのTGF−β結合タンパク質の結合の推定インヒビターであるペプチド分子は、コンビナトリアルペプチドライブラリーのスクリーニングを通じて得られ得る。このようなライブラリーは、当業者によって調製され得るか(例えば、米国特許第4,528,266号および同第4,359,535号、ならびに特許協力条約公報番号WO92/15677、WO92/15677、WO90/07862、WO90/02809を参照のこと)、または市販の供給源(例えば、New England Biolabs Ph.D.TMPhage Display Peptide Library Kit)から購入され得るかのいずれかであり得る。
【0151】
(b.抗体)
TGF−βファミリーメンバーへのTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する抗体は、本明細書中に提供される開示を考慮して容易に調製され得る。本発明の状況内では、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、およびF(ab’)、Fv可変領域、または相補決定領域)を含むことが理解される。上記で議論されるように、抗体は、10−1以上、好ましくは10−1以上、のKaにて結合し、そして他のTGF−β結合タンパク質に結合しないか、または10−1以下のKaにて結合する場合に、TGF−β結合タンパク質に対して、または特定のTGF−βファミリメンバーに対して特異的であることが理解される。さらに、本発明の抗体は、TGF−βファミリーメンバーへのTGF−β結合タンパク質の結合をブロックするか、または阻害する。
【0152】
モノクローナル抗体または結合パートナーの親和性、ならびに結合の阻害は、当業者によって容易に決定され得る(Scatchard、Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660〜672、1949)。
【0153】
簡潔には、ポリクローナル抗体は、種々の温血動物(例えば、ウマ、ウシ、種々の家禽、ウサギ、マウスまたはラット)から、当業者によって容易に作製され得る。代表的には、TGF−β結合タンパク質または13〜20アミノ酸のその独特なペプチド(好ましくは、グルタルアルデヒドでの架橋によってキーホールリンペットヘモシアニンに結合体化されている)は、この動物を、腹腔内注射、筋肉内注射、眼内注射、または皮下注射を通じて、アジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバント)とともに、免疫するために利用される。数回のブースター免疫の後に、血清のサンプルが回収され、そしてタンパク質またはペプチドに対する反応性について試験される。特に好ましいポリクローナル抗血清は、バックグランドよりも少なくとも3倍のシグナルを、これらのアッセイのうちの1つにて生じる。一旦、この動物の力価が、タンパク質へのその反応性に関してプラトーに達すると、より多量の抗血清が、週ごとの採血によって、または動物を瀉血させることによって、容易に得られ得る。
【0154】
モノクローナル抗体はまた、従来の技術(米国特許再発行第32,011号、米国特許第4,902,614号、同第4,543,439号、および同第4,411,993号(これらは、本明細書中に参考として援用される;また、Monoclonal Antibodies、Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses、Plenum Press、Kennett,McKearn、およびBechtol(編)、1980、ならびにAntibodies:A Laboratory Manual、HarlowおよびLane(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988(これらもまた、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと)を使用して、容易に生成され得る。
【0155】
簡潔には、1つの実施形態では、被験動物(例えば、ラットまたはマウス)は、上記のように、TGF−β結合タンパク質またはその部分により免疫される。このタンパク質は、得られる免疫応答を増大させるために、アジュバント(例えば、フロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバント)と混合され得る。初回免疫後の1週間と3週間との間に、動物が、別のブースター免疫により再免疫され得、そして上記のアッセイを利用してこのタンパク質に対する反応性について試験され得る。一旦、動物が、注射されたタンパク質に対するその反応性においてプラトーに達した場合に、この動物は屠殺され、そして多数のB細胞を含む器官(例えば、脾臓およびリンパ節)が、収集される。
【0156】
免疫された動物から得られる細胞は、ウイルス(例えば、エプスタイン−バーウイルス(EBV))(GlaskyおよびReading、Hybridoma 8(4):377〜389、1989)による感染によって不死化され得る。あるいは、好ましい実施形態において、収集された脾臓および/またはリンパ節の細胞懸濁液は、モノクローナル抗体を分泌する「ハイブリドーマ」を作製するために、適切な骨髄腫細胞と融合される。適切な骨髄腫細胞株としては、例えば、NS−1(ATCC番号TIB 18)、およびP3X63−Ag8.653(ATCC番号CRL 1580)が挙げられる。
【0157】
融合後、細胞を、適切な培地(例えば、RPMI 1640またはDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)(JRH Biosciences,Lenexa、Kansas))、およびさらなる成分(例えば、ウシ胎仔血清(FBS、すなわち、Hyclone,Logan,UtahまたはJRH,Biosciences))を含む培養プレートに配置し得る。さらに、この培地は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Missouri)のような融合した脾臓細胞および骨髄腫細胞の増殖を選択的に可能にする試薬を含むべきである。約7日後、得られた融合細胞、すなわちハイブリドーマを、TGF−β結合タンパク質(使用した抗原に依存する)に対して反応性であり、そしてTGF−βファミリーメンバーに対するTGF−β結合タンパク質の結合をブロックまたは阻害する抗体の存在を決定するためにスクリーニングし得る。
【0158】
広範に種々のアッセイを利用して、本発明のタンパク質に対して反応性の抗体の存在を決定し得る(例えば、向流免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ、放射性免疫沈降、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ドットブロットアッセイ、ウェスタンブロット、免疫沈降、阻害または競合アッセイ、およびサンドイッチアッセイを含む(米国特許第4,376,110号および同第4,486,530号;Antibodies:A Laboratory Manual,HarlowおよびLane(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988もまた参照のこと))。いくつかのクローン希釈および再アッセイの後、所望のタンパク質に対して反応性の抗体を精製するハイブリドーマを単離し得る。
【0159】
他の技術もまた利用して、モノクローナル抗体を構築し得る(William D.Huseら、「Generation of a Large Combinatorial Library of the Immunoglobulin Repertoire in Phage Lambda」、Science 246:1275−1281、1989年12月を参照のこと;L.Sastryら、「Cloning of the Immunological Repertoire in Escherichia coli for Generation of Monoclonal Catalytic Antibodies:Construction of a Heavy Chain Variable Region−Specific cDNA Library」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5728−5732,1989年8月もまた参照のこと;Michelle Alting−Meesら、「Monoclonal Antibody Expression Libraries:A Rapid Alternative to Hybridomas」、Strategies in Molecular Biology 3:1−9、1990年1月もまた参照のこと)。これらの参考文献は、組換え技術を通じて抗体の生成を可能にするStratagene(La Jolla,California)から入手可能な市販の系を記載する。簡潔には、mRNAは、B細胞集団から単離され、そしてこれを利用して、λImmunoZap(H)ベクターおよびλImmunoZap(L)ベクター中に重鎖および軽鎖の免疫グロブリンcDNA発現ライブラリー作製する。これらのベクターは、個々にスクリーニングされ得るか、または同時発現されて、Fabフラグメントまたは抗体を形成する(Huseら(前出);Sastryら(前出)を参照のこと)。陽性のプラークを、引き続いて、E.coliからモノクローナル抗体フラグメントの高レベル発現を可能にする非溶解性プラスミドに転換し得る。
【0160】
同様に、抗体の一部またはフラグメント(例えば、FabおよびFvフラグメント)もまた、特異的結合抗体をコードする遺伝子の可変領域を組み込むために、従来の酵素消化または組換えDNA技術を利用して構築し得る。1つの実施形態において、目的のモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマに由来する、可変性領域をコードする遺伝子を、可変領域についてのヌクレオチドプライマーを用いて増幅する。これらのプライマーは、当業者により合成され得るか、または市販の供給元から購入し得る。Stratagene(La Jolla,California)は、特に、VHa、VHb、VHc、VHd、CH1、VLおよびCL領域についてのプライマーを含む、マウスおよびヒト可変領域についてのプライマーを販売している。これらのプライマーを利用して、重鎖または軽鎖の可変領域を増幅し得る。次いで、この領域は、それぞれ、ImmunoZAPTMHまたはImmunoZAPTML(Stratagene)のようなベクターに挿入され得る。次いで、これらのベクターは、発現のためにE.coli、酵母、または哺乳動物がベースの系に導入され得る。これらの技術を利用して、大量の単鎖タンパク質(VHおよびVLのドメインの融合物を含む)を生成し得る(Birdら、Science 242:423−426,1988を参照のこと)。さらに、このような技術を利用して、抗体の結合特異性を変化させることなく、「マウス」抗体を「ヒト」抗体に変化させ得る。
【0161】
一旦適切な抗体が得られると、それらは、当業者に周知の多くの技術(Antibodies:A Laboratory Manual,HarlowおよびLane(編)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988を参照のこと)により単離または精製され得る。適切な技術としては、ペプチドまたはタンパク質のアフィニティーカラム、HPLCまたはRP−HPLC、プロテインAまたはプロテインGカラムでの精製、あるいはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0162】
(c.変異TGF−β結合タンパク質)
本明細書中および以下の実施例(例えば、実施例8および9)に記載されるように、特定のTGF−βファミリーメンバーの活性をブロックするネイティブなTGF−β結合タンパク質の能力と競合する、改変バージョンのTGF−β結合タンパク質は、骨密度の増加を導くはずである。従って、TGF−βファミリーメンバーに結合するが、TGF−βファミリーメンバーの機能を阻害しないTGF−β結合タンパク質の変異体が基準を満たす。変異バージョンは、TGF−β結合タンパク質の内因性阻害機能と効率的に競合するに違いない。
【0163】
(d.タンパク質の産生)
種々の遺伝子(または、それらの部分)が本明細書中に提供されるが、本発明の状況下で、これらの遺伝子の1以上に対する言及が、それらの遺伝子に実質的に類似する遺伝子の誘導体(および、適切な場合、それらの遺伝子またはそれらの誘導体によってコードされるタンパク質(ペプチドおよびポリペプチドを含む))を包含することが、理解されるべきである。本明細書中で使用される場合、ヌクレオチド配列は、以下の場合に「実質的に類似」するとみなされる:(a)そのヌクレオチド配列が、上記の遺伝子のコード領域に由来し、そして例えば、上記で議論された配列または配列の対立遺伝子改変の部分を有するか、あるいは、TGF−β結合タンパク質のTGF−βファミリーのメンバーへの結合を阻害する分子をコードする;(b)そのヌクレオチド配列が、中程度、高度または非常に高度なストリンジェンシー(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY,1989を参照のこと)の下で、本発明のヌクレオチド配列にハイブリダイズし得る;あるいは(c)そのDNA配列が、(a)または(b)において定義されたDNA配列に対する遺伝コードの結果として縮重する。さらに、本明細書中で開示される核酸分子は、それらの配列が、他で本明細書中に示される基準を満たす限り、相補的配列または非相補的配列の両方を含む。本発明の状況下で、高いストリンジェンシーは、標準的なハイブリダイゼーション条件(例えば、5×SSPE、0.5% SDS中、65℃、あるいはその等価条件)を意味する。
【0164】
本明細書中に記載される核酸分子によってコードされるタンパク質の構造は、例えば、P/C GeneまたはIntelligenetics Suite(Intelligenetics,Mountain View,California)の疎水性プロット機能を使用して、またはKyteおよびDoolittle(J.Mol.Biol.157:105−132,1982)に記載の方法に従って、一次翻訳産物から予測され得る。
【0165】
本発明のタンパク質は、酸性塩または塩基性塩の形態、あるいは中性形態で調製され得る。さらに、個々のアミノ酸残基は、酸化または還元によって修飾され得る。さらに、種々の置換、欠失または付加が、アミノ酸配列または核酸配列に対して作製され得、これらの正味の効果は、変異体タンパク質または野生型タンパク質の生物学的活性を、維持すること、あるいはさらに増強または減少することである。さらに、例えば、遺伝コードにおける縮重に起因して、同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列において、かなりのバリエーションが存在し得る。
【0166】
本明細書中に開示されるタンパク質の他の誘導体は、そのタンパク質の他のタンパク質またはポリペプチドとの結合体を含む。これは、例えば、タンパク質の精製または同定を容易にするために付加され得る、N末端またはC末端融合タンパク質の合成によって達成され得る(米国特許第4,851,341号を参照のこと。Hoppら、Bio/Technology 6:1204,1988もまた参照のこと)。あるいは、Flag/TGF−β結合タンパク質のような融合タンパク質が、タンパク質の同定、発現および分析において補助するために構築され得る。
【0167】
本発明のタンパク質は、本明細書中に記載される広範に種々の技術を使用して構築され得る。さらに、変異は、変異体配列(これは、ネイティブ配列のフラグメントへの連結を可能にする制限部位によって隣接される)を含むオリゴヌクレオチドの合成によって特定の遺伝子座に導入され得る。連結後、この得られた再構築した配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換または欠失を有する誘導体をコードする。
【0168】
あるいは、オリゴヌクレオチド指向性(directed)部位特異的(またはセグメント特異的)変異誘発手順を使用して、必要とされる置換、欠失または挿入に従って改変された特定のコドンを有する、改変された遺伝子が提供され得る。上記に示される改変を作製する例示的方法は、Walderら(Gene 42:133,1986);Bauerら(Gene 37:73,1985);Craik(BioTechniques,1985年1月、12−19);Smithら(Genetic Engineering:Principles and Methods,Plenum Press,1981);およびSambrookら(前出)によって開示される。タンパク質の欠失誘導体または短縮型誘導体(例えば、可溶性細胞外部分)はまた、その所望の欠失に隣接する好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位を利用することによって構築され得る。制限処理に続いて、突出を充填し得、そしてそのDNAを再連結し得る。上記に示される改変を作製する例示的方法は、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY,1989)によって開示される。
【0169】
本発明の核酸分子において作製される変異は、好ましくは、そのコード配列のリーディングフレームを保存する。さらに、この変異は、好ましくは、ハイブリダイズしてmRNAの翻訳に不利に影響するmRNAの二次構造(例えば、ループまたはヘアピン)を生じ得る、相補的領域を作製しない。変異部位は、予め決定され得るが、変異の性質は、それ自体が予め決定されるべき必要はない。例えば、所定の部位で、変異体の最適な特徴について選択するために、ランダム変異誘発をその標的コドンで実行し得、そしてその発現された変異体を、示される生物学的活性についてスクリーニングし得る。あるいは、変異は、変異体配列(これは、ネイティブ配列のフラグメントへの連結を可能にする制限部位によって隣接される)を含むオリゴヌクレオチドの合成によって特定の遺伝子座に導入され得る。連結後、この得られた再構築した配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換または欠失を有する誘導体をコードする。
【0170】
本発明のタンパク質をコードする核酸分子はまた、PCR変異誘発、化学的変異誘発(DrinkwaterおよびKlinedinst,PNAS 83:3402−3406,1986)の技術を使用して、強制的ヌクレオチド誤組み込み(forced nucleotide misincorporation)(例えば、LiaoおよびWise Gene 88:107−111,1990)によって、またはランダム変異誘発させたオリゴヌクレオチド(Horwitzら、Genome 3:112−117,1989)の使用によって構築され得る。
【0171】
本発明はまた、上記の遺伝子を発現し得るベクターを含む宿主細胞を培養することによって上記の遺伝子の操作および発現を提供する。このようなベクターおよびベクター構築物は、所望のタンパク質をコードする、合成またはcDNA由来であるいずれかの核酸分子を含み、核酸分子は、適切な転写または翻訳調節エレメントに作動可能に連結される。適切な調節エレメントは、種々の供給源に由来し得、これは、細菌遺伝子、真菌遺伝子、ウイルス遺伝子、哺乳動物遺伝子、昆虫遺伝子、または植物遺伝子を含む。適切な調節エレメントの選択は、選択される宿主細胞に依存し、そして容易に当業者によって達成され得る。調節エレメントの例には:転写プロモーターおよび転写エンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、転写ターミネーター、ならびにリボソーム結合配列(翻訳開始シグナルを含む)が挙げられる。
【0172】
上記の任意のタンパク質をコードする核酸分子は、広範な種々の原核生物宿主細胞および真核生物宿主細胞によって容易に発現され得、これらには、細菌細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞もしくは他の真菌細胞、ウイルス細胞、昆虫細胞、または植物細胞が挙げられる。外来性のDNAを発現するためにこのような細胞を形質転換またはトランスフェクトするための方法は、当該分野で周知である(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362号;Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929−1933、1978;Murrayら、米国特許第4,801,542号;Upshallら、米国特許第4,935,349号;Hagenら、米国特許第4,784,950号;Axelら、米国特許第4,399,216号;Goeddelら、米国特許第4,766,075号;およびSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989;植物細胞については、CzakoおよびMarton、Plant Physiol.104:1067−1071、1994;ならびにPaszkowskiら、Biotech.24:387−392、1992を参照のこと)。
【0173】
本発明を実行するために適切な細菌宿主細胞には、E.coli、B.subtilis、Salmonella typhimurium、ならびにPseudomonas属、Streptomyces属、およびStaphylococcus属内の様々な種、ならびに当業者に周知の多くの他の細菌種が挙げられる。細菌宿主細胞の代表的な例には、DH5α(Stratagene,LaJolla,California)が挙げられる。
【0174】
細菌発現ベクターは、好ましくは、宿主細胞中で、1つ以上の選択可能な表現型マーカーおよび細菌の複製起点を機能させるプロモーターを含む。代表的なプロモーターには、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーター系(Changら、Nature 275:615、1978を参照のこと)、T7 RNAポリメラーゼプロモーター(Studierら、Meth.Enzymol.185:60−89、1990)、λプロモーター(Elvinら、Gene 87:123−126、1990)、trpプロモーター(NicholsおよびYanofsky、Meth.in Enzymology 101:155、1983)およびtacプロモーター(Russellら、Gene 20:231、1982)が挙げられる。代表的な選択マーカーには、種々の抗生物質耐性マーカー(例えば、カナマイシン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子)が挙げられる。宿主細胞を形質転換するために適切な多くのプラスミドが当該分野で周知であり、これらには、中でも、pBR322(Bolivarら、Gene 2:95、1977を参照のこと)、pUCプラスミドpUC18、pUC19、pUC118、pUC119(Messing、Meth.in Enzymology 101:20−77、1983、ならびにVieiraおよびMessing、Gene 19:259−268、1982を参照のこと)、およびpNH8A、pNH16a、pNH18a、およびBluescript M13(Stratagene,La Jolla,California)が挙げられる。
【0175】
本発明を実行するために適切な酵母および真菌宿主細胞には、中でも、Saccharomyces pombe、Saccharomyces cerevisiae、Pichia属またはKluyveromyces属およびAspergillus属の様々な種(McKnightら、米国特許第4,935,349号)が挙げられる。酵母および真菌についての適切な発現ベクターには、中でも、YCp50(ATCC番号37419)(酵母について)、amdSクローニングベクターpV3(Turnbull、Bio/Technology 7:169:1989)、YRp7(Struhlら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:1035−1039、1978)、YEp13(Broachら、Gene 8:121−133、1979)、pJDB249およびpJDB219(Beggs、Nature 275:104−108、1978)およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0176】
酵母における使用のための好ましいプロモーターには、酵母の解糖遺伝子由来のプロモーター(Hitzemanら、J.Biol.Chem.255:12073−12080、1980;AlberおよびKawasaki、J.Mol.Appl.Genet.I:419−434、1982)、またはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Youngら、Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals,Hollaenderら(編)、355頁、Plenum、New York、1982;Ammerer、Meth.Enzymol.101:192−201、1983)が挙げられる。真菌ベクターのための有用なプロモーターの例には、Aspergillus nidulans解糖遺伝子由来のプロモーター(例えば、adh3プロモーター(McKnightら、EMBO J.4:2093−2099、1985))が挙げられる。発現ユニットはまた、転写ターミネーターを含み得る。適切なターミネーターの例は、adh3ターミネーター(McKnightら、同書、1985)である。
【0177】
細菌ベクターを用いる場合、酵母ベクターは、一般的に、選択マーカーを含み、これは、優性な表現型を示す任意の数の遺伝子のうちの1つであり得、その表現型は、表現型アッセイがそのために存在して、形質転換体が選択されることを可能にするものである。好ましい選択マーカーは、宿主細胞栄養要求性を相補するか、抗生物質耐性を提供するか、または特定の炭素源を細胞に利用可能にするものであり、そしてleu2(Broachら、同書)、ura3(Botsteinら、Gene 8:17、1979)、またはhis3(Struhlら、同書)を含む。別の適切な選択マーカーは、cat遺伝子であり、これは酵母細胞にクロラムフェニコール耐性を付与する。
【0178】
真菌を形質転換するための技術は、文献において周知であり、そして例えば、Beggs(同書)、Hinnenら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:1929−1933、1978)、Yeltonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1740−1747、1984)、およびRussell(Nature 301:167−169、1983)によって記載されてきた。宿主細胞の遺伝子型は、発現ベクター上に存在する選択マーカーによって相補される遺伝子の欠損を含み得る。特定の宿主および選択マーカーの選択は、十分に当業者のレベル内にある。
【0179】
酵母の形質転換のためのプロトコールもまた、当業者に周知である。例えば、形質転換は、DNAを有する酵母のスフェロプラストの調製(Hinnenら、PNAS USA 75:1929、1978を参照のこと)によるか、またはLiClのようなアルカリ塩での処理(Itohら、J.Bacteriology 153:163、1983を参照のこと)によるかのいずれかで、容易に達成され得る。真菌の形質転換もまた、Cullenら(Bio/Technology 5:369、1987)によって記載のように、ポリエチレングリコールを用いて実施され得る。
【0180】
ウイルス性ベクターとしては、上記のような、所望のタンパク質をコードする単離された核酸分子の発現を指向するプロモーターを含むベクターが含まれる。広範な種々のプロモーターが、本発明の状況において使用され得、これには例えば、以下が挙げられる:MoMLV LTR、RSV LTR、フレンドMuLV LTR、アデノウイルスプロモーター(Ohnoら、Science 265:781−784、1994)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼのプロモーター/エンハンサー、後期パルボウイルスプロモーター(Koeringら、Hum.Gene Therap.5:457−463、1994)、ヘルペスTKプロモーター、SV40プロモーター、メタロチオネインIIa遺伝子のエンハンサー/プロモーター、サイトメガロウイルス極初期プロモーター、およびサイトメガロウイルス極後期プロモーター。本発明の特に好ましい実施形態では、プロモーターは、組織特異的プロモーター(例えば、WO 91/02805;EP 0,415,731;およびWO 90/07936を参照のこと)である。適切な組織特異的プロモーターの代表的な例としては、以下が挙げられる:神経特異的エノラーゼプロモーター、血小板由来増殖因子βプロモーター、骨形成因子プロモーター、ヒトα1−キマエリン(chimaerin)プロモーター、シナプシンIプロモーター、およびシナプシンIIプロモーター。上述のプロモーターに加えて、他のウイルス特異的プロモーター(例えば、レトロウイルスプロモーター(上述のプロモーター、およびHIVプロモーターのような他のプロモーターを含む))、肝炎、ヘルペス(例えば、EBV)、および細菌、真菌、または寄生生物(例えば、マラリア)に特異的なプロモーターが、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物に感染した特定の細胞または組織を標的化するために、利用され得る。
【0181】
本発明を実施するのに適切な哺乳動物細胞としては、特に、COS、CHO、SaOS、骨肉腫、KS483、MG−63、初代骨芽細胞、およびヒトまたは哺乳動物の骨随間質が挙げられる。本発明を実施する際に使用するための哺乳動物発現ベクターとしては、クローン化された遺伝子またはcDNAの転写を指向し得るプロモーターが挙げられる。好ましいプロモーターとしては、ウイルス性プロモーターおよび細胞性プロモーターが挙げられる。骨特異的プロモーターとしては、骨シアロタンパク質およびオステオカルシンのプロモーターが挙げられる。ウイルス性プロモーターとしては、以下が挙げられる:サイトメガロウイルス極初期プロモーター(Boshartら、Cell 41:521−530、1985)、サイトメガロウイルス極後期プロモーター、SV40プロモーター(Subramaniら、Mol.Cell Biol.1:854−864、1981)、MMTV LTR、RSV LTR、メタロチオネイン−1、アデノウイルス E1a。細胞性プロモーターとしては、以下が挙げられる:マウスメタロチオネイン−1プロモーター(Palmiterら、米国特許第4,579,821号)、マウスVκプロモーター(Bergmanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:7041−7045、1983;Grantら、Nucl.Acids.Res.15:5496、1987)、およびマウスVHプロモーター(Lohら、Cell 33:85−93、1983)。プロモーターの選択は、少なくとも一部、所望される発現レベルまたはトランスフェクトされるレシピエント細胞株に依存する。
【0182】
このような発現ベクターはまた、プロモーターから下流、そして目的のペプチドまたはタンパク質をコードするDNA配列から上流に位置付けられたRNAスプライス部位のセットを含み得る。好ましいRNAスプライス部位は、アデノウイルスおよび/または免疫グロブリンの遺伝子から入手され得る。発現ベクターには、目的のコード配列の下流に位置付けられたポリアデニル化シグナルもまた含まれる。適切なポリアデニル化シグナルとしては、以下が挙げられる:SV40由来の初期または後期ポリアデニル化シグナル(KaufmanおよびSharp、同上)、アデノウイルス5 E1B領域由来のポリアデニル化シグナル、およびヒト成長ホルモン遺伝子のターミネーター(DeNotoら、Nuc.Acids Res.9:3719−3730、1981)。発現ベクターは、プロモーターとRNAスプライス部位との間に位置付けられた、非コード性ウイルス性リーダー配列(例えば、アデノウイルス2三連(tripartite)リーダー)を含み得る。好ましいベクターはまた、SV40エンハンサーのようなエンハンサー配列を含み得る。発現ベクターはまた、アデノウイルスVA RNAをコードする配列を含み得る。適切な発現ベクターは、商業的供給業者(例えば、Stratagene、La Jolla、California)から入手され得る。
【0183】
クローン化されたDNA配列を含むベクター構築物は、例えば、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクション(Wiglerら、Cell 14:725、1978:CorsaroおよびPearson、Somatic Cell Genetics 7:603、1981;GrahamおよびVan der Eb、Virology 52:456、1973)、エレクトロポレーション(Neumannら、EMBO J.1:841−845、1982)、またはDEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション(Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons,Inc.、NY、1987)によって、培養哺乳動物細胞に導入され得る。クローン化DNAを安定に組込んだ細胞を同定するために、一般的に、選択マーカーを、目的の遺伝子またはcDNAと共に細胞に導入する。培養哺乳動物細胞における使用に好ましい選択マーカーとしては、薬物(例えば、ネオマイシン、ハイグロマイシン、およびメトトレキサート)に対する耐性を付与する遺伝子が挙げられる。選択マーカーは、増幅可能な選択マーカーであり得る。好ましい増幅可能な選択マーカーは、DHFR遺伝子およびネオマイシン耐性遺伝子である。選択マーカーは、Thilly(Mammalian Cell Technology、Butterworth Publishers、Stoneham、Massachusetts(これを、本明細書中で参考として援用する))によって、概説される。
【0184】
適切なベクターを含む哺乳動物細胞を、目的のDNA配列の発現を開始させるために、一定期間(代表的には、1〜2日間)増殖させる。次いで、薬物選択を適用して、安定な様式で選択マーカーを発現する細胞の増殖を選択する。増幅可能な選択マーカーでトランスフェクトされた細胞に対しては、薬物濃度を段階的な様式で増加させて、増加したコピー数のクローン化配列(それにより、発現レベルを増加させている)を選択し得る。導入された配列を発現する細胞を、所望の形態または所望のレベルでの目的のタンパク質の産生について、選択およびスクリーニングする。次いで、これらの判断基準を満たす細胞を、産生のためにクローン化し得、そしてスケールアップし得る。
【0185】
哺乳動物細胞のトランスフェクションのためのプロトコルは、当業者に周知である。例示的な方法としては、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクチン、レトロウイルス、アデノウイルス、およびプロトプラスト融合媒介トランスフェクションが挙げられる(Sambrookら、前出、を参照のこと)。裸のベクター構築物はまた、哺乳動物(または他の動物)の筋肉への注入後に、筋肉細胞または他の適切な細胞により取込まれる。
【0186】
当該分野で公知の多数の昆虫宿主細胞はまた、この明細書を考慮に入れれば、本発明において有用であり得る。例えば、昆虫細胞において異種DNA配列を発現するためのベクターとして、バキュロウイルスの使用が、Atkinsonら(Pestic.Sci.28:215−224,1990)により総説されている。
【0187】
当該分野で公知の多数の植物宿主細胞はまた、この明細書を考慮に入れれば、本発明において有用であり得る。例えば、植物細胞において遺伝子を発現するためのベクターとして、Agrobacterium rhizogenesの使用が、Sinkarら(J.Biosci.(Bangalore)11:47−58,1987)により総説されている。
【0188】
本発明の関連する局面において、本発明のタンパク質は、トランスジェニック動物(この動物の生殖細胞および体細胞は、所望のタンパク質をコードし、かつ遺伝子の発現に有効なプロモーターに作動可能に連結される遺伝子を含む)において発現される。あるいは、類似の様式において、トランスジェニック動物は、所望の遺伝子を欠損するように調製され得る(例えば、ノックアウトマウス)。このようなトランスジェニック体は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、イヌ、ヤギ、およびブタを含む、種々の非ヒト動物において調製され得る(Hammerら、Nature 315:680−683,1985、Palmiterら、Science,222:809−914,1983、Brinsterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4438−4442,1985、PalmiterおよびBrinster、Cell 41:343−345,1985、および米国特許第5,175,383号、同第5,087,571号、同第4,736,866号、同第5,387,742号、同第5,347,075号、同第5,221,778号、および同第5,175,384号を参照のこと)。簡単には、発現ベクター(適切に位置付けられた発現制御配列と共に発現される核酸を含む)は、受精した卵の前核中に(例えば、マイクロインジェクションにより)導入される。注入されたDNAの組み込みは、組織サンプル由来のDNAのブロット分析により検出される。導入されたDNAが、動物の生殖系列中に組み込まれ、その結果動物の子孫に継代されることが好ましい。組織特異的発現は、組織特異的プロモーターの使用を介してか、または導入遺伝子の制御された発現を可能にする、誘導性プロモーター(例えば、メタロチオネイン遺伝子プロモーター(Palmiterら、1983、同書))の使用を介して達成され得る。
【0189】
タンパク質は、他にも方法はあるが、本発明の組換え翻訳産物を産生する適切な宿主系およびベクター系を培養する工程により単離され得る。このような細胞株由来の上清、またはタンパク質が、上清に分泌されないタンパク質封入体もしくは細胞全体は、次いで、所望のタンパク質を単離するために種々の精製手順により処理され得る。例えば、上清は、最初に、市販のタンパク質濃縮フィルター(例えば、AmiconまたはMillipore Pelicon ultrafiltrationユニット)を用いて濃縮され得る。濃縮後、この濃縮物は、例えば、適切な支持体に結合した抗タンパク質抗体のような適切な精製マトリクスにアプライされ得る。あるいは、アニオン交換樹脂、またはカチオン交換樹脂が、タンパク質を精製するために用いられ得る。さらなる代替法として、1つ以上の逆相高性能液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)工程が、タンパク質をさらに精製するために用いられ得る。本発明のタンパク質を単離する他の方法は、当業者に周知である。
【0190】
他の(所望されない)タンパク質が、SDS−PAGE分析の後のクーマシーブルー染色により検出されない場合、タンパク質は、本発明の状況において「精製されて」いるとみなされる。他の実施形態において、所望のタンパク質は、他の(所望されない)タンパク質が、SDS−PAGE分析の後の銀染色により検出されないように単離される。
【0191】
(3.核酸分子)
本発明の他の局面において、TGF−βファミリーのメンバーに対する、TGF−β結合タンパク質の結合を阻害し得る、核酸分子が提供される。例えば、1つの実施形態において、TGF−β結合タンパク質の核酸配列の発現を特異的に阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド分子が提供される(一般に、Hirashimaら、Molecular Biology of RNA:New Perspectives(M.InouyeおよびB.S.Dudock編、1987 Academic Press,San Diego、401頁);Oligonucleotides:Antisense Inhibitors of Gene Expression(J.S.Cohen編、1989 MacMillan Press,London);SteinおよびCheng、Science 261:1004−1012,1993;WO 95/10607;米国特許第5,359,051号;WO 92/06693;およびEP−A2−612844を参照のこと)。簡単には、このような分子は、それらが、転写されるTGF−β結合タンパク質のmRNA配列の領域に相補的であり、かつこの領域とワトソン−クリック塩基対を形成し得るように、構築され得る。得られた二重鎖核酸は、mRNAの引き続くプロセシングを妨害し、それによりタンパク質合成を防ぐ(実施例10を参照のこと)。
【0192】
本発明の他の局面において、TGF−βファミリーのメンバーに対する、TGF−β結合タンパク質の結合を阻害し得る、リボザイムが提供される。本明細書中で用いられる場合、「リボザイム」は、特定の認識のためのアンチセンス配列、およびRNA切断酵素活性を含むRNA分子を含むことが意図される。触媒鎖は、化学量論的な濃度よりも多く、標的RNA中の特定の部位を切断する。広範な種々のリボザイムは、本発明の状況において利用され得、これらのリボザイムとしては、ハンマーヘッドリボザイム(例えば、ForsterおよびSymons、Cell 48:211−220,1987;HaseloffおよびGerlach、Nature 328:596−600,1988;WalbotおよびBruening,Nature 334:196,1988;HaseloffおよびGerlach、Nature 334:585,1988によって記載される);ヘアピンリボザイム(例えば、Haseloffら、米国特許第5,254,678号(1993年10月19日発行)およびHempelら、欧州特許公開第0 360 257号(1990年3月26日公開)によって記載される);およびTetrahymenaリボゾームRNAベースのリボザイム(Cechら、米国特許第4,987,071号を参照のこと)が挙げられる。本発明のリボザイムは、代表的には、RNAから構成されるが、これはまた、DNA、核酸アナログ(例えば、ホスホロチオエート)、またはそのキメラ(例えば、DNA/RNA/RNA)から構成され得る。
【0193】
(4.標識)
上記および以下に記載の遺伝子産物または任意の候補分子は、種々の化合物(例えば、蛍光分子、毒素および放射性核種)で標識され得る。蛍光分子の代表的な例としては、フルオレセイン、Phycobiliタンパク質(例えば、フィコエリトリン)、ローダミン、Texasレッドおよびルシフェラーゼが挙げられる。毒素の代表的例としてはリシン、アブリンジフテリア毒素、コレラ毒素、ゲロニン(gelonin)、ヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、トリチン、Shigella毒素およびPseudomonas外毒素Aが挙げられる。放射性核種の代表的な例としてはCu−64、Ga−67、Ga−68、Zr−89、Ru−97、Tc−99m、Rh−105、Pd−109、ln−111、I−123、I−125、I−131、Re−186、Re−188、AU−198、Au−199、Pb−203、At−211、Pb−212およびBi−212が挙げられる。さらに、上記の抗体はまた、標識され得るか、またはリガンド結合対の1つのパートナーに結合体化され得る。代表的な例としてはアビジン−ビオチン、およびリボフラビン−リボフラビン結合タンパク質が挙げられる。
【0194】
上記の代表的標識を用いて、本明細書において記載された分子を結合体化または標識化する方法は、当業者により容易に達成され得る(Trichothecene Antibody Conjugate、米国特許第4,744,981号;Antibody Conjugate、米国特許第5,106,951号;Fluorogenic Materials and Labeling Techniques,米国特許第4,018,884号;Metal Radionuclide Labeled Proteins for Diagnosis and Therapy、米国特許第4,897,255号;およびMetal Radionuclide Chelating Compounds for Improved Chelation Kinetics、米国特許第4,988,496号を参照のこと;Inman、Methods In Enzymology、第34巻、Affinity Techniques、Enzyme Purification:Part B、Jakoby and Wilchek(編)、Academic Press、New York、第30頁、1974も参照のこと;またWilchekおよびBayer、「The Avidin−Biotin Complex in Bioanalytical Applications」Anal.Biochem.171:1〜32、1988も参照のこと)。
【0195】
(薬学的組成物)
上記のように、本発明はまた、種々の薬学的組成物を提供する。この薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアもしくは生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに、TGF−βファミリーのメンバーに対するTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する上記の分子の1つを含む。一般に、このようなキャリアは、使用される投与量および濃度でレシピエントに対して毒性であってはならない。普通は、このような組成物の調製物は、以下との治療剤の組み合わせを必要とする:緩衝液、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、炭水化物(グルコース、スクロースまたはデキストリン)、キレート剤(例えば、EDTA)、グルタチオンならびに他の安定化剤および賦形剤。中性の緩衝液化生理食塩水または非特異的血清アルブミンと混合した生理食塩水は、代表的な適切な希釈剤である。
【0196】
さらに、本発明の薬学的組成物は、種々の希釈経路による投与のために調製され得る。さらに、本発明の薬学的組成物は、このような薬学的組成物の使用に関する説明書を提供する包装材料とともに容器内に配置され得る。一般に、このような説明書は、試薬濃度を記載する明白な表現を含み、そして特定の形態内に、薬学的組成物の再構成に必要であり得る、関連する量の賦形剤成分または希釈剤(例えば、水、生理食塩水、またはPBS)を含む。
【0197】
(処理の方法)
本発明はまた、骨の鉱物含量および鉱物密度を増加させるための方法を提供する。手短には、多くの状態が骨鉱物含量の損失を生じる。この状態としては、例えば、疾患、遺伝素因、骨の使用の不足をまねく(例えば、骨折による)事故、骨再吸収に影響するか、または骨形成細胞を殺傷する治療、および正常な加齢が挙げられる。TGF−βファミリーメンバーへのTGF−β結合タンパク質結合の結合を阻害する、本明細書で記載の分子の使用を通じて、このような条件は処置または予防され得る。本明細書において利用されるように、骨鉱物含量が、選択された部位で、統計的に有意な様式で(例えば、1/2標準偏差より大きく)増加された場合、骨鉱物含量が増加されたことが理解されるべきである。
【0198】
骨鉱物含量の損失を生じる広範な種々の状態が、本明細書で記載の分子で処置され得る。このような状態を有する患者は、周知の技術を利用して臨床的診断を通じて同定され得る(例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine、McGraw−Hill,Incを参照のこと)。処置され得る疾患の代表的な例としては、異形成(これには骨の異常な成長または発達が存在する)が挙げられる。このような状態の代表的な例としては、軟骨無形成症、鎖骨頭蓋骨形成不全症、内軟骨腫症、線維性形成異常、ゴーシェ病、低リン酸くる病(hypophosphatemic rickets)、マルファン病、多発性遺伝性エクソトース(exotoses)、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、オステオポイキリー、硬化性病変(sclerotic lesions)、骨折、歯周疾患、偽関節および化膿性骨髄炎が挙げられる。
【0199】
処置または予防され得る他の状態としては、広範な種々の原因のオステオペニア(すなわち、若年期のピークの骨格鉱物含量より骨鉱物含量または骨鉱物密度の1標準偏差より大きく下回る状態)が挙げられる。このような状態の代表的な例としては、貧血状態、ステロイドにより生じる状態、ヘパリンにより生じる状態、骨髄障害、壊血病、栄養失調、カルシウム欠乏、特発性骨粗しょう症、先天性オステオペニアまたは骨粗しょう症、アルコール症、慢性肝疾患、老化、閉経後状態、希発月経、無月経、妊娠、真性糖尿病、甲状腺機能亢進症、クッシング病、先端巨大症、性機能低下症、不動化または非活動性、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、一過性局所性骨粗しょう症および骨軟化症。
【0200】
本発明の1つの局面において、骨鉱物含量または骨鉱物密度は、TGF−βファミリーメンバーへのTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する分子の治療上有効量の、温血動物への投与により増加され得る。処置され得る温血動物の例としては、脊椎動物および哺乳動物(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスを含む)の両方が挙げられる。治療用分子の代表的な例としては、リボザイム、リボザイム遺伝子、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび抗体(例えば、ヒト化抗体)が挙げられる。
【0201】
本発明の他の局面において、骨密度を増加するための方法が提供され、この方法は、TGF−βファミリーのメンバーに対するTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する分子の発現に関するベクターを骨に帰する細胞内に導入する工程、およびベクター含有細胞を温血動物に投与する工程、を包含する。簡略すると、骨に帰する細胞は、患者の骨(例えば、CD34+、骨芽細胞、骨細胞などのような骨髄から得られる細胞)、末梢血液または培養物から直接得られ得る。
【0202】
TGF−βファミリーのメンバーに対するTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する分子の発現に関するベクターは、細胞内に導入される。適切なベクターの代表的な例としては、以下のようなウイルスベクターが挙げられる:ヘルペスウイルスベクター(例えば、米国特許第5,288,641号)、アデノウイルスベクター(例えば、WO94/26914、WO 93/9191;Kollsら、PNAS 91(1):215−219、1994;Kass−Eislerら、PNAS 90(24):11498−502、1993;Guzmanら、Circulation 88(6):2838−48、1993;Guzmanら、Cir.Res.73(6):1202−1207、1993;Zabnerら、Cell 75(2):207−216、1993;Liら、Hum Gene Ther.4(4):403−409、1993;Caillaudら、Eur.J.Neurosci.5(10:1287−1291、1993;Vincentら、Nat.Genet.5(2):130−134、1993;Jaffeら、Nat.Genet.1(5):372−378、1992;およびLevreroら、Gene 101(2):195−202、1991)、アデノ関連ウイルスベクター(WO95/13365;Flotteら、PNAS 90(22):10613−10617、1993)、バキュロウイルスベクター、パルボウィルスベクター(Koeringら、Hum.Gene Therap.5:457−463、1994)、ポックスウイルスベクター(PanicaliおよびPaoletti、PNAS 79:4927−4931、1982;およびOzakiら、Biochem.Biophys.Res.Comm.193(2):653−660、1993)、ならびにレトロウイルス(例えば、EP0,415,731;WO90/07936;WO91/0285、WO94/03622;WO93/25698;WO93/25234;米国特許第5,219,740号;WO93/11230;WO93/10218)。異なるウイルスまたは非ウイルス供給源由来の異なる要素(例えば、プロモーター、エンベロープ配列など)の混合物を含むウイルスベクターも同様に構築され得る。種々の実施形態において、ウイルスベクター自体、またはウイルスベクターを含むウイルス粒子のいずれかは、以下に記載される方法および組成物に利用され得る。
【0203】
本発明の他の実施形態において、TGF−βファミリー自体のメンバーに対するTGF−β結合タンパク質の結合を阻害する分子をコードする核酸分子は、以下に挙げられる種々の技術によって投与され得る:例えば、ポリ−L−リシンDNA複合体で結合されたアシアロオソムコイド(ASOR)の投与(Cristanoら、PNAS 92122−92126、1993)、殺傷されたアデノウイルスに連結されたDNA(Curielら、Hum.Gene Ther.3(2):147−154、1992)、サイトフェクチン−媒介導入(DMRIE−DOPE、Vical、California)、直接DNA注入(Acsadiら、Nature 352:815−818、1991);DNAリガンド(Wuら、J.of Biol.Chem.264:16985−16987、1989);リポフェクション(Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7417、1989);リポソーム(Pickeringら、Circ.89(1):13−21、1994;およびWangら、PNAS 84:7851−7855、1987);微粒子銃(Williamsら、PNAS 88:2726−2730、1991);および単独で(VileおよびHart、Cancer Res.53:3860−3864,1993)またはPEG−核酸複合体を利用して、タンパク質自体をコードする核酸の直接送達。
【0204】
本発明のベクターによって発現され得る分子の代表的な例として、リボザイムおよびアンチセンス分子が挙げられ、これらの各々は上記でより詳細に議論される。
【0205】
増加した骨鉱物含量の決定は、X線(例えば、二重エネルギーX線吸収測定(X−ray Absorptometry)すなわち「DEXA」)の使用によって直接的に、あるいは骨ターンオーバーマーカー(骨芽細胞特異的アルカリホスファターゼ、オステオカルシン、1型プロコラーゲンC’プロペプチド(PICP)、および全アルカリホスファターゼ;Comier,C.,Curr.Opin.in Rheu.7:243,1995)を通した推論、または骨再吸収のマーカー(ピリジノリン、デオキシピリジノリン、N−テロペプチド、尿ヒドロキシプロリン、血漿酒石酸塩耐性酸ホスファターゼおよびガラクトシルヒドロキシリシン;Comier,前出を参照のこと)を通した推論によって、決定され得る。骨質量の量はまた、体重から、または他の方法を利用して計算され得る(Guinness−Hey,Metab.Bone Dis.and Rel.Res.5:177−181,1984を参照のこと)。
【0206】
当業者にとって明らかなように、投与の量および頻度は、当然のことながら、処置される指標の性質および重篤度、所望される応答、患者の状態などの因子に依存する。典型的には、組成物は上記のように種々の技術によって投与され得る。
【0207】
以下の実施例は、例示の目的で提供されるが、限定の目的ではない。
【実施例】
【0208】
(実施例1)
(ヒト第17染色体のロングアームに対する硬化狭窄症マップ)
ヒトの硬化狭窄症に対して重大な欠失の遺伝マッピングは、新規なTGF−β結合タンパク質ファミリーメンバーをコードするヒト第17染色体の領域に、この障害に対して重大な遺伝子を局在化した。硬化狭窄症において、骨格骨は、非羅患の個体の鉱物密度に対して鉱物密度の実質的増加を示す。頭部の骨は同様に過成長を示す。硬化狭窄症患者は、一般に健康であるが、それらは生まれつき合指の可変度および頭蓋骨の頭蓋圧縮および神経圧縮の可変度を示し得る。
【0209】
硬化狭窄症と関連した遺伝子欠失の連結分析は、疾患が生じる24の南アフリカAfrikaaner ファミリーから収集されたDNAサンプルに同型接合性マッピング法を適用することによって行われた。(Sheffieldら、1994、Human Molecular Genetics 3:1331−1335.「Identification of a Bardet−Biedl syndrome locus on chromosome 3 and evaluation of an efficient approach to homozygosity mappinng」)。南アフリカのAfrikaaner集団は、遺伝的に同種である;この集団は数世紀前にその領域に植民した少数の先祖の子孫であり、そしてそれはその創始以来、地理的および社会的障害によって孤立されてきた。硬化狭窄症は、Afrikaaner群集の外側のどの世界においても稀であり、このことは遺伝子の変異がこの先祖集団に存在し、この集団の増加と共に数が増加したことを示唆する。同型接合性マッピングの使用は、劣性変異に隣接したDNAマッピングマーカーが血族ファミリーおよび孤立された集団由来の影響された個体において同型接合性であり得るという仮説に基づく。
【0210】
常染色体由来の371マイクロサテライトマーカーのセット(Research Genetics, Set 6)を、硬化狭窄症の患者サンプル由来のDNAのプールを分類するために選択した。この分析のためのDNAサンプルは、24ファミリー中の29名の硬化狭窄症患者、59の羅患していないファミリーメンバー、および同一の集団由来の無関係のコントロール個体のセットに由来する。プールは、4〜6個の個体(羅患した個体、血縁家族、親および羅患していない兄弟由来の羅患した個体、または無関係のコントロールのいずれか)から構成される。無関係の個体のプール、および羅患した個体またはファミリーメンバーを含むプールのほとんどにおいて、マーカーの分析は、いくつかの対立遺伝子は各マーカーの大きさに合わせて分けられることを示した。1つのマーカー、D17S1299は、ホモ接合性の指標、すなわち羅患した個体のいくつかのプールにおける1つのバンドを示した。
【0211】
24個全ての硬化狭窄症ファミリーを、D17S1299の領域(17q12−q21)において全部で19のマーカーで分類した。全てのファミリー由来の羅患個体は、この領域においてホモ接合性であり、そして29個の個体のうち25個体はコアハプロタイプについてホモ接合性であり;それらは、各々、D17S1787とD17S930との間に同一の対立遺伝子を有することを示した。他の4個体は、このハプロタイプに適合した1つの染色体、およびこのハプロタイプに適合していない第2の染色体を有した。つまり、このデータは、この3メガベース領域は硬化狭窄変異を含むことを示唆した。この3メガベース領域におけるほとんどのエキソンの配列分析は、新規のTGF−データ結合タンパク質コード配列におけるナンセンス変異を同定した(配列番号1の位置117におけるC>T変異は、終止コドンを生じる)。この変異は、硬化狭窄症患者およびアフリカーナーのキャリアに独特であることが示された。この遺伝子の同一性は、そのイントロンにおける変異(そのイントロンの位置+3におけるA>T変異)を同定することによってさらに確認され、この変異は、硬化狭窄症と診断された一人の無関係の患者において、不適切なmRNAプロセシングを生じた。
【0212】
(実施例2)
(TGFβ結合タンパク質遺伝子発現の組織特異性)
(A.RT−PCRによるヒトBeer遺伝子の発現)
第1鎖cDNAを、市販のキット(「Superscript Preamplification System for First−Strand cDNA Synthesis」、Life Technologies,Rockville,MD)を使用して、以下の全RNAサンプルから調製した:ヒト脳、ヒト肝臓、ヒト脾臓、ヒト胸腺、ヒト胎盤、ヒト骨格筋、ヒト甲状腺、ヒト下垂体、ヒト骨芽細胞(Clonetics Corp.,San Diego,CA製のNHOst)、ヒト骨肉腫細胞株(Saos−2,ATCC#HTB−85)、ヒト骨、ヒト骨髄、ヒト軟骨、ベルベットモンキー骨、Saccharomyces cerevisiae、およびヒト末梢血単核細胞。全てのRNAサンプルは、社内で調製した以下のものを除いて、市販の供給源(Clontech,Palo Alto,CA)から購入した:ヒト骨芽細胞、ヒト骨肉腫細胞株、ヒト骨、ヒト軟骨およびベルベットモンキー骨。これらの社内RNAサンプルは、市販のキット(「TRI試薬」、Molecular Research Center,Inc.,Cincinnati,OH)を使用して調製した。
【0213】
これらのサンプル、およびさらにコントロールとしてヒトゲノムサンプルを用いて、PCRを行った。センスBeerオリゴヌクレオチドプライマーは、配列5’−CCGGAGCTGGAGAACAACAAG−3’(配列番号19)を有した。アンチセンスBeerオリゴヌクレオチドプライマーは、配列5’−GCACTGGCCGGAGCACACC−3’(配列番号20)を有した。さらに、ヒトβ−アクチン遺伝子についてのプライマーをコントロールとして使用して、PCRを行った。センスβアクチンオリゴヌクレオチドプライマーは、配列5’−AGGCCAACCGCGAGAAGATGACC−3’(配列番号21)を有した。アンチセンスβ−アクチンオリゴヌクレオチドプライマーは、配列5’−GAAGTCCAGGGCGACGTAGCA−3’(配列番号22)を有した。25μl反応物において、61℃のアニーリング温度の標準的な条件を使用して、PCRを行った。Beerプライマーを用いて32サイクルのPCRを行い、そしてβ−アクチンプライマーを用いて24サイクルを行った。
【0214】
増幅した後、各反応物の12μlを、アガロースゲル電気泳動およびエチジウムブロミド染色によって、分析した。図2Aを参照のこと。
【0215】
(B.マウス胚切片のRNAインサイチュハイブリダイゼーション)
全長マウスBeer cDNA(配列番号11)を、製造業者のプロトコルを使用して、アンチセンスおよびセンス方向で、pCR2.1ベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローン化した。35S−α−GTP−標識cRNAセンスおよびアンチセンス転写物を、Ambion,Inc(Austin,TX)により供給されるインビトロ転写試薬を使用して合成した。Lyonsら(J.Cell Biol.111:2427〜2436,1990)のプロトコルに従って、インサイチュハイブリダイザーションを行った。
【0216】
マウスBeer cRNAプローブは、発生中のマウス胚の神経管、肢芽、血管および骨化軟骨において発現した特異的なメッセージを検出した。図3のパネルAは、肢芽(l)、血管(bv)および神経管(nt)の外胚葉隆線(aer)における発現を示す。パネルBは、下顎骨(ma)、頸椎(cv)、後頭骨(oc)、口蓋(pa)および血管(bv)における発現を示す。パネルDは、肋骨(r)および心臓弁(va)における発現を示す。パネルAは、10.5dpcの胚の横断面である。パネルBは、12.5dpcの胚の矢状切片であり、そしてパネルCおよびDは、15.5dpcの胚の矢状切片である。
ba=鰓弓、h=心臓、te=終脳(前脳)、b=脳、f=前頭鼻骨塊、g=腸、h=心臓、j=顎、li=肝臓、lu=肺、ot=耳胞、ao=、sc=脊髄、skm=骨格筋、ns=鼻洞、th=胸腺、to=舌、fl=前肢、di=横隔膜。
【0217】
(実施例3)
(組換えBEERタンパク質の発現および精製)
(A.COS−1細胞中での発現:)
全長ヒトBeerタンパク質をコードするDNA配列を、以下のPCRオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅した:5’オリゴヌクレオチドプライマーは、配列
【化1】

を有し、HindIII制限酵素部位(ボールド)を含み、推定アミノ末端開始コドン(ATG)の前の6塩基対で開始する19ヌクレオチドのBeer遺伝子が続く。3’オリゴヌクレオチドプライマーは、配列
【化2】

を有し、HindIII制限酵素部位(ボールド)を含み、逆相補性停止コドン(CTA)が続き、Beerのカルボキシ末端5アミノ酸をコードするヌクレオチドの逆相補性によって隣接されるFLAGエピトープの逆相補性(下線、Sigma−Aldrich Co.,St Louis,MO)が続く。PCR産物を、TAクローニングし(「Original TA Cloning Kit」、Invittrogen,Carlsbad,CA)、個々のクローンをDNA配列決定によってスクリーニングした。次いで、配列確定クローンを、HindIIIによって消化し、市販の試薬(「QIAquick Gel Extraction Kit」、Qiagen Inc.,Valencia,CA)を使用して1.5%アガロースゲルで精製した。次いで、このフラグメントを、T4 DNAリガーゼを有する、HindIII消化され、ホスファターゼ処理されたpcDNA3.1(Invitrogen,Carlsbad,CA)プラスミドに連結した。DH10B E.coliを、形質転換し、LB、100μg/mlアンピシリンプレート上にプレートした。適切な配向の所望の組換え体を有するコロニーを、pcDNA3.1のT7プロモーター/プライミング部位に対応する5’プライマーおよび内部BEER配列の逆相補体に対応する配列5’−GCACTGGCCGGAGCACACC−3’(配列番号25)を有する3'プライマーを使用するPCRベースのスクリーニングによって同定した。クローニングされたフラグメントの配列を、DNA配列決定によって確認した。
【0218】
COS−1細胞(ATCC番号CRL−1650)をトランスフェクションのために使用した。50μgの発現プラスミドpcDNA−Beer−Flagを、製造業者によって提供されるプロトコールに従って市販のキット(「DEAE−Dextran Transfection Kit」、Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を使用してトランスフェクトした。トランスフェクションに続く最終培地は、0.1%ウシ胎仔血清を含むDMEM(Life Technologies,Rockville,MD)であった。培養の4日後、培地を除去した。組換えBEERの発現は、抗FLAG M2モノクローナル抗体(Sigma−Aldrich Co.,St.Louis,MO)を使用して、SDS−PAGEおよびウェスタンブロットによって分析した。組換えBEERタンパク質の精製を、抗FLAG M2アフィニティーカラム(「Mammalian Transient Expression System」,Sigma−Aldrich Co.,St.Louis,MO)を使用して実施した。カラムプロフィールを、抗FLAG M2モノクローナル抗体を使用してSDS−PAGEおよびウェスタンブロットによって分析した。
【0219】
B.SF9昆虫細胞での発現: ヒトBeer遺伝子配列を、標準的な条件下で以下のプライマーを使用してPCRを用いて増幅した:
【0220】
【化3】

得られたcDNAは、2つの改変を有するBeerのコード領域を含んだ。N末端分泌シグナルを除去し、そしてFLAGエピトープタグ(Sigma)を挿入物のC末端へインフレームで融合した。BamH1およびHindIIIクローニング部位を付加し、この遺伝子を、標準的な方法を使用して、バキュロウイルス発現ベクターに移すためにpMelBacベクター(Invitrongen)にサブクローニングした。
【0221】
組換えバキュロウイルス発現Beerタンパク質を、Bac−N−Blueトランスフェクションキット(Invitrogen)を使用して行い、製造業者に指示に従って精製した。
【0222】
SF9細胞(Invitogen)を、10%ウシ胎仔血清を含むTNF FH培地(Invitogen)で維持した。タンパク質発現について、スピナー(spinner)フラスコ中のSF9培養物を、10より大きいMOIで感染させた。培地および細胞のサンプルを、5日間毎日取り、そしてBeer発現を抗FlAG M2モノクローナル抗体(Sigma)または抗Beerウサギポリクローナル抗血清を使用するウェスタンブロットによってモニターした。
【0223】
五日後、バキュロウイルス感染SF9細胞を遠心分離によって収穫し、そして細胞関連タンパク質を高塩(hight salt)抽出緩衝液(1.5M NaCl、50mM Tris pH 7.5)を使用して細胞ペレットから抽出した。抽出物(300ml培養物当たり20ml)を、遠心分離によって清澄化し、4lのTris緩衝化生理食塩水(150mM NaCl、50mM Tris pH 7.5)に対して3回透析し、再び遠心分離によって清澄化した。この高塩画分を、Hitrap Heparin(Pharmacia;5mlベッド体積に適用し、HEPES緩衝化生理食塩水(25mM HEPES 7.5、150mM NaCl)で広範に洗浄し、結合したタンパク質を、150mM NaCl〜1200mM NaClの勾配で溶出した。Beer溶出は、約800mM NaClで観察された。Beer含有画分を、10%グリセロールおよび1 mM DTTに追加し、−80℃で凍結させた。
【0224】
(実施例4)
(BEER、GREMLINおよびDANに対するポリクローナル抗体の調製および試験)
(A.抗原の調製:)
ヒトBeer、ヒトGremlin、およびヒトDanのDNA配列を、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いる標準的なPCR方法を使用して増幅した:
【0225】
【化4】

各場合において、列挙したプライマーは、コード領域の分泌シグナル配列を除いた全体を増幅した。これらは、BeerおよびGremlinについてはBamHI/HindIIIの部位に、そしてDanについてはSacI/HindIIIの部位に、細菌発現ベクターpQE−30(Qiagen Inc.、Valencia、CA)へのサブクローニングのための制限部位を含む。pQE30は、6xHisタグのコード配列を、このクローニング領域の5’末端に含む。完成した構築物を、E.coli菌株M−15/pRep(Qiagen Inc)に形質転換し、そして個々のクローンを配列決定により検証した。M−15/pRepにおけるタンパク質発現および精製(Sepharoseに結合されたNi−NTAに結合する6xHisアフィニティータグ)を、製造業者(Qiagen、The QIAexpressionist)により記載されるように実施した。
【0226】
E.coli誘導Beerタンパク質を、6Mグアニジンへの可溶化を使用して有意な量で回収し、そして2〜4Mに透析して、貯蔵中の沈殿を防止した。GremlinおよびDanタンパク質を、6Mグアニジンへの可溶化によってより高い量で回収し、そして精製後、グアニジン濃度を0.5Mにした。
【0227】
(B.ポリクローナル抗体の産生および試験:)
これら3つの抗原の各々に対するポリクローナル抗体を、ウサギおよびニワトリの宿主において、標準的なプロトコル(R&R Antibody、Stanwood、WA;standard protocol for rabbit immunization and antisera recovery;Short Protocols in Molicular Biology.第2版.1992.11.37〜11.41.Helen M.CooperおよびYvonne Paterson寄稿;ニワトリ抗血清は、Strategic Biosolutions、Ranoma、CAを用いて生成した)を使用して産生した。
【0228】
ウサギ抗血清および鶏卵Igy画分を、ウェスタンブロットによって活性に関してスクリーニングした。これら3つの抗原の各々をPAGEにより分離し、そして0.45μmのニトロセルロース(Novex、San Diego、CA)に移した。この膜を各小片が約75ngの抗原を含むように小片に切断した。これらの小片を3%Blotting Grade Block(Bio−Red Laboratories、Hercules、CA)中でブロックし、そして1×Tris緩衝化生理食塩水(TBS)/0.02%TWEEN緩衝液中で3回洗浄した。一次抗体(ブロッキング緩衝液中1:100〜1:10,000の範囲の希釈物中の予備免疫出血、ウサギ抗血清または鶏卵IgY)を、その小片と共に、穏やかに振動させながら1時間インキュベートした。1×TBS/0.02%TWEENでの3回の洗浄のうちの第2回目に続いて、二次抗体(ペルオキシダーゼ結合体化ロバ抗ウサギ、Amersham Life Science、Piscataway、NJ;またはペルオキシダーゼ結合体化ロバ抗ニワトリ、Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)と1時間インキュベートした。1×TBS/0.02%TWEENでの3回の洗浄のうちの最終サイクルを実施し、そして小片をLumi−Light Western Blotting Substrate(Roche Molecular Biochemicals、Mannheim、Germany)を用いて現像した。
【0229】
(C.抗体交叉反応性試験:)
上記節に記載のプロトコルに続いて、Beer、GremlinまたはDanのニトロセルロース小片を、それらのそれぞれのウサギ抗血清または鶏卵IgYの希釈物(1:5000および1:10,000)ならびに残り2つの抗原に対して作製した抗血清または鶏卵Igy(1:1000および1:5000の希釈物)と共にインキュベートした。増加した濃度においてのみ見られ得る、対応しない抗体による低親和性の結合を検出するために、それらの対応しない抗体のレベルを増加して行った。現像のプロトコルおよび持続時間は、上に記載したプロトコルを使用する3つ全ての結合事象に対して同一である。試験したいずれの抗原についても、抗原交叉反応性は観察されなかった。
【0230】
(実施例5)
(BeerとTGF−βスーパーファミリータンパク質との相互作用)
Beerの、TGF−βスーパーファミリーの異なる系統発生的アーム由来のタンパク質との相互作用を、免疫沈降法を使用して研究した。精製したTGFβ−1、TGFβ−2、TGFβ−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6およびGDNFを、販売源(R&D systems;Minneapolis、MN)から入手した。代表的なプロトコルは、以下の通りである。部分的に精製したBeerを、HEPES緩衝化生理食塩水(25mM HEPES 7.5、150mM NaCl)中に透析した。免疫沈降を、300μlのIP緩衝液(150mM NaCl、25mM Tris pH7.5、1mM EDTA、1.4mM β−メルカプトエタノール、0.5% tritonX100、および10%グリセロール)中で行った。30ngの組換えヒトBMP−5タンパク質(R&D systems)を、500ngのFLAGエピトープタグ化Beerの存在下および非存在下で、15μlのFLAGアフィニティーマトリックス(Sigma;St Louis MO)にアプライした。これらのタンパク質を4℃で4時間インキュベートし、次いでアフィニティーマトリックス会合タンパク質をIP緩衝液(1回の洗浄あたり1ml)中で5回で洗浄した。結合したタンパク質を、60μlの1×SDS PAGEサンプル緩衝液中でアフィニティーマトリックスから溶出した。これらのタンパク質をSDS PAGEにより分離し、そしてBeer会合BMP−5を、抗BMP−5抗血清(Research Diagnostics、Inc)を使用してウェスタンブロットにより検出した(図5を参照のこと)。
【0231】
(Beerリガンド結合アッセイ:)
FLAG−Beerタンパク質(20ng)を100μl PBS/0.2% BSAに添加し、そして予め抗FLAGモノクローナル抗体(Sigma;St Louis MO)でコーティングした96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに吸着させ、そしてPBS中10%BSAでブロックする。これを、室温で60分間行う。このタンパク質溶液を除去し、そしてウェルを洗浄して、結合していないタンパク質を除去する。BMP−5を、PBS/0.2%BSA中10pM〜500nMの範囲の濃度で各ウェルに添加し、そして室温で2時間インキュベートする。この結合溶液を除去し、そしてプレートを200μl容量のPBS/0.2%BSAで3回洗浄する。次いで、BMP−5抗血清を使用してELISA(F.M.Ausubelら(1998)Current Protocols in Mol Biol.第2巻、11.2.1〜11.2.22)によりBMP−5レベルを検出する。特異的な結合を、全結合から非特異的結合を減算することにより算出し、そしてLIGANDプログラムにより分析する(MunsonおよびPodbard、Anal.Biochem.、107、220〜239頁、(1980))。
【0232】
この方法の改変において、Beerを操作してヒトFc融合タンパク質として発現させる。同様に、リガンドBMPを操作してマウスFc融合物として発現させる。これらのタンパク質を一緒にインキュベートし、そしてアッセイを、Mellorらにより記載されたように、均一な時間分解蛍光検出(homogeneous time resolved fluorescence detection)(G.W.Mellorら、J of Biomol Screening、3(2)91〜99、1998)を使用して、行う。
【0233】
(実施例6)
(TGF−βファミリーメンバーに対するTGF−β結合−タンパク質結合の阻害についてのスクリーニングアッセイ)
上記のアッセイは、2つの例外を伴い繰り返す。第1に、BMPの濃度を、以前に決定したKdに固定したままにする。第2に、アンタゴニスト候補の収集物を、一定の濃度で添加する(低有機分子収集物の場合20μM、および抗体の研究の場合1μM)。TGF−β結合−タンパク質結合のこれらの候補分子(アンタゴニスト)は、多様な化学構造を示す市販の収集物または内部の収集物由来の有機化合物を含む。これらの化合物を、DMSO中のストック溶液として調製し、そして標準アッセイ条件下の最終体積の1%以下で、アッセイウェルに添加する。これらを、BMPおよびBeerと共に室温で2時間インキュベートし、この溶液を取り除き、そして結合したBMPを記載のように定量化する。化合物または抗体の非存在下、観察されるBMP結合の40%を阻害する薬剤を、この相互作用のアンタゴニストとみなす。これらを、さらに、それらの阻害定数およびTGF−β結合−タンパク質結合親和性に対するそれらの影響を決定するための滴定研究に基づいて、潜在的なインヒビターとして評価する。比較可能な特異性コントロールアッセイをまた、BMPリガンド作用に依存するアッセイを使用する研究を通じて、同定したアンタゴニストについての選択性プロフィールを確立するために実施し得る(例えば、BMP/BMPレセプター競争研究)。
【0234】
(実施例7)
(骨基質へのTGF−β結合−タンパク質局在化の阻害)
骨基質へ(ヒドロキシアパタイト)の局在化の阻害の評価は、Nicolasの方法(Nicolas,V.Calcif Tissue Int 57:206,1995)の改良を使用して実施される。簡単に、125I−標識TGF−β結合タンパク質を、Nicolas(前出)によって記載されるようにして調製する。ヒドロキシアパタイトを、ポリプロピレン濾過膜(Polyfiltroninc,Weymouth MA)を備えた96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに添加する。TGF−β結合タンパク質を、PBS緩衝液中の0.2%アルブミンに添加した。基質を含むウェルを、この緩衝液で3回洗浄した。吸着されたTGF−β結合−タンパク質を、0.3MのNaOHを使用して溶出し、そして定量化した。
【0235】
インヒビターの同定を、試験分子と共にTGF−β結合−タンパク質をインキュベートし、そしてこの混合物を、上記の基質にアプライすることによって実施した。この基質を、PBS緩衝液中の0.2%アルブミンで3回洗浄する。吸着されたTGF−β結合−タンパク質を、0.3MのNaOHを使用して溶出し、そして定量化した。化合物または抗体の非存在下で観察されるTGF−β結合−タンパク質結合の40%を阻害する薬剤を、骨局在化インヒビターとみなす。これらのインヒビターを、さらに、それらの阻害定数およびTGF−β結合−タンパク質結合親和性に対するそれらの影響を決定するための用量応答研究を介して、特徴づける。
【0236】
(実施例8)
(TGF−β結合−タンパク質変異体の構造)
(A.変異誘発)
pBluescript SK中の完全長のTGF−β結合−タンパク質cDNAは、変異誘発のテンプレートとして有用である。簡単には、適切なプライマー(上に提供された議論を参照のこと)を利用して、Vent DNAポリメラーゼを使用するポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)連鎖反応により、DNAフラグメントを生成する。ポリメラーゼ連鎖反応は、57℃のアニーリング温度を使用して、製造者により提供される緩衝液中で23サイクルで実施する。次いで、この産物を、2種の制限酵素に曝露し、そしてアガロースゲル電気泳動を使用して単離した後に、その整合する配列を酵素的消化により取り除いた、pRBP4−503に連結した。この変異体の完全性を、DNA配列決定によって確認する。
【0237】
(B.変異体TGF−β結合−タンパク質の哺乳動物細胞発現および単離)
変異体TGF−β結合−タンパク質cDNAを、実施例3に記載のpcDNA3.1哺乳動物発現ベクター内に転移する。この配列を確認した後に、生じる構築物を、COS−1細胞中にトランスフェクトし、そして分泌タンパク質を、実施例3に記載されるように精製する。
【0238】
(実施例9)
(動物モデル−I)
(Beer遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスの作製)
CIBTマウスゲノムDNAライブラリ−(Reserch Genetics,Huntsville,ALによって分配された)から単離された約200キロベース(kb)のBACクローン15G5を使用して、マウスBeer遺伝子ならびにその5’および3’隣接領域の完全配列を決定した。遺伝子全体、ならびに約17kbの5’隣接配列および約20kbの3’隣接配列を含む41kb SalIフラグメントを、SuperCosIコスミドベクター(Stratagene,La Jolla,CA)のBamHI部位にサブクローニングし、そしてE.coli株DH10B中で増殖させた。次いで、このコスミド構築物から、マウスBeer遺伝子全体、ならびにそれぞれ17kbおよび14kbの5’および3’隣接配列を含む35kb MluI−AviII制限フラグメント(配列番号6)を、従来の手段を使用してゲル精製し、そしてマウス接合体の微量注入に使用した(DNX Transgenics;米国特許第4,873,191号)。クローン化したDNAフラグメントがランダムにゲノムに組み込まれた創始動物(founder animal)を、生存新生児の5〜30%の頻度で得た。トランスジーンの存在を、少量のマウス組織(例えば、尾部の先端)から抽出されたゲノムDNAのサザンブロット分析を実施することにより確認した。DNAを、以下のプロトコールを使用して抽出した:組織を200mMのNaCl、100mMのTris(pH8.5)、5mMのEDTA、0.2%のSDS、および0.5mg/mlのプロテイナーゼKを含む溶解緩衝液中、55℃で一晩消化した。翌日、このDNAをフェノール/クロロホルム(50:50)で一回、クロロホルム/イソアミルアルコール(24:1)で一回抽出し、そしてエタノールで沈殿させた。TE(10mMのTris(pH7.5)、1mMのEDTA)中での再懸濁して、8〜10μgの各DNAサンプルを、制限エンドヌクレアーゼ(例えば、EcoRI)で消化し、ゲル電気泳動に供し、そしてHyBondN+(Amersham,Arlington Heights,IL)のような荷電したナイロン膜に転移させた。次いで、この得られるフィルターに、マウスBeer遺伝子座由来のDNAの放射活性標識フラグメントをハイブリダイズさせ、そして、内因性遺伝子座由来のフラグメントとトランスジーン由来の異なるサイズのフラグメントの両方を認識し得る。創始動物を、Beer遺伝子の過剰発現の効果を決定するのに、十分な数のトランスジェニック子孫および非トランスジェニック子孫を生じるために、正常の非トランスジェニックマウスに交配した。これらの研究のために、種々の年齢(例えば、1日、3週間、6週間、4ヶ月)の動物を、全体の骨格形成、骨鉱物密度(bone mineral density)、骨鉱物含量(bone mineral content)、破骨細胞および骨芽細胞の活性、軟骨内骨化の程度、軟骨形成などを確認するために設計された多数の異なるアッセイに供する。トランスジーン由来の転写活性は、種々の組織由来のRNAを抽出し、そしてトランスジーンが由来するマウス株(129Sv/J)とDNA微量注入のために使用されるマウス株[(C57BL5/J×SJL/J)F2]との間の一ヌクレオチド多型を利用するRT−PCRアッセイを使用することによって決定され得る。
【0239】
(動物モデル−II)
(相同組換えによるマウスBEER遺伝子の破壊)
胚性幹(ES)細胞における相同組換えが、内因性マウスBeer遺伝子を不活性化し、そして引き続いて機能喪失変異(loss−function mutation)を保有する動物を産生するために、使用され得る。E.coli β−ガラクトシダーゼ遺伝子のようなレポーター遺伝子が、標的ベクターへ操作され、その結果、その発現が、内因性Beer遺伝子のプロモーターおよび翻訳開始シグナルによって制御される。この様式で、Beer遺伝子発現の空間的パターンおよび時間的パターンが、標的化対立遺伝子を保有する動物において、決定され得る。
【0240】
標的ベクターを、薬物選択的ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター駆動ネオマイシン耐性遺伝子(neo)カセットをpGT−N29(New England Biolabs,Beverly,MA)からクローニングベクターpSP72(Promega,Madson,Wl)へまずクローニングすることによって構築した。PCRを、このPGKneoカセットをバクテリファージP1 loxP部位の側面に位置させるために使用した。これらの部位は、P1 Creリコンビナーゼについての認識部位である(Hoessら、PNAS USA,79:3398,1982)。このことによって、標的化ES細胞またはES細胞誘導動物におけるneo耐性マーカーを引き続いて除去することが可能となる(米国特許第4,959,317号)。これらのPCRプライマーは、34個のヌクレオチド(ntd)loxP配列、このPGKneoカセットの5’および3’末端に対して相補的な15〜25ntd、ならびにpSP72へのクローニングのための制限酵素認識部位(センスプライマーにおけるBamHIおよびアンチセンスプライマーにおけるEcoRI)から構成された。このセンスプライマーの配列は、5’−AATCTGGATCCATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTATCTGCAGGATTCGAGGGCCCCT−3’(配列番号34)であり;このアンチセンスプライマーの配列は、5’−AATCTGAATTCCACCGGTGTTAATTAAATAACTTCGTATAATGTATGCTATACGAAGTTATAGATCTAGAG TCAGCTTCTGA−3’(配列番号35)であった。
【0241】
次の工程は、3.6kbのXhol−HindIIIフラグメント(E.coli β−ガラクトシダーゼ遺伝子およびSV40ポリアデニル化シグナルを含む)を、pSVβ(Clontech,Palo Alto,CA)から、pSP72−PGKneoプラスミドへクローニングすることであった。マウスBeer遺伝子座由来の相同性の「ショートアーム」を、BACクローン15G5由来の2.4kbのフラグメントを増幅することによって産生した。このフラグメントの3’末端は、Beer遺伝子の翻訳開始部位と一致し、そしてPCRにおいて使用したアンチセンスプライマーもまた、β−ガラクトシターゼ遺伝子の5’末端と30ntd相補性を含み、その結果、そのコード領域は、Beer開始部位にインフレームで融合され得た。「ショートアーム」をpSP72−βgal−PGKneoプラスミドへ導入するために採るアプローチは、β−gal遺伝子の上流の部位でこのプラスミドを線状化し、次いでこの「ショートアーム」PCR産物でこのフラグメントを同時形質転換し、そしてPCR産物が相同組換えによって組み込まれたプラスミドについて選択することであった。「ショートアーム」増幅のためのセンスプライマーは、この組換え現象を可能にするためのpSP72ベクターに対して相補的な30ntdを含んだ。このセンスプライマーの配列は、5’−ATTTAGGTGACACTATAGAACTCGAGCAGCTGAAGCTTAACCACATGGTGGCTCACAACCAT−3’(配列番号36)であり、そしてアンチセンスプライマーの配列は、5’−AACGACGGCCAGTGAATCCGTA ATCATGGTCATGCTGCCAGGTGGAGGAGGGCA−3’(配列番号37)であった。
【0242】
Beer遺伝子座位由来の「ロングアーム」は、BACクローン15G5由来の6.1kbのフラグメントを、稀な切断(rare−cutting)制限酵素部位SgrAI、FseI、AsclおよびPaclもまた導入するプライマーで増幅することによって、産生した。具体的には、このセンスプライマーの配列は、5’−ATTACCACCGGTGACACCCGCTTCCTGACAG−3’(配列番号38)であり;このアンチセンスプライマーの配列は、5’−ATTACTTAATTAAACATGGCGCGCCAT ATGGCCGGCCCCTAATTGCGGCGCATCGTTAATT−3’(配列番号39)であった。得られたPCR産物を、中間工程として、TAベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)へクローニングした。
【0243】
このマウスBeer遺伝子標的構築物はまた、ラウス肉腫ウイルスの長い末端反復エレメント(RSV LTR)の制御下で、第2の選択マーカー(I型単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSVTK))を含んだ。この遺伝子の発現は、哺乳動物細胞を、ガンシクロビルに対して感受性(および生存不能)にする;したがって、それは、この構築物が非相同現象によって組み込まれたネオマイシン耐性細胞に対して選択するための簡便な様式である(米国特許第5,464,764号)。このRSVLTR−HSVTKカセットを、「ロングアーム」−TAベクタープラスミドのFseI部位およびAscI部位へ引き続いてクローニングすることを可能にするプライマーを使用して、pPS1337から増幅した。このPCRについて、このセンスプライマーの配列は、5’−ATTACGGCCGGCCGCAAAGGAATTCAAGA TCTGA−3’(配列番号40)であり;このアンチセンスプライマーの配列は、5’−ATTACGGCGCGCCCCTCACAGGCCGCACCCAGCT−3’(配列番号41)であった。
【0244】
標的ベクターの構築における最終工程は、「ロングアーム」およびRSVLTR−HSVTK遺伝子を含む8.8kbのSGRAl−AscIフラグメントを、pSP72−「ショートアーム」−βgal−PGKneoプラスミドのSgrAI部位およびAscI部位へクローニングすることを包含する。この標的ベクターを、ES細胞へのエレクトロポレーションの前に、AscIまたはPaclのいずれかでの消化によって直線化した。
【0245】
(実施例10)
(アンチセンス−媒介BEER不活性化)
17−ヌクレオチドアンチセンスオリゴヌクレオチドを、第1のオリゴヌクレオチドの5’末端がBeer転写の翻訳開始AUGと重複し、そして連続するオリゴヌクレオチドの5’末端が、BeerAUGに対して5’方向へ(50ヌクレオチド隔てるまで)5ヌクレオチド増加移動が生じるような様式で、重複形式で調製する。対応するコントロールオリゴヌクレオチドは、等価な塩基組成物を使用して設計および調製されるが、コードmRNAへのいずれの有意なハイブリダイゼーションをも阻害するために配列において再分配される。試験細胞系への薬剤送達が、カチオン性脂質送達を通して実施される(P.L.Felgner,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413,1987)。2ugのアンチセンスオリゴヌクレオチドを、100ulの還元血清媒体(Opti−MeM I 還元血清媒体;Life Technologies,Gaithersburg MD)へ添加し、そしてこれを、100ulの還元血清媒体中でリポフェクション薬剤(6ul)(Life Technologies,Gaithersburg MD)と混合する。これらを混合し、30分間、室温で複合体化させ、そしてこの混合物を、予め播種したMC3T3E21細胞またはKS483細胞へ添加する。これらの細胞を培養し、そしてこのmRNAを回収する。Beer mRNAを、Beer特異的プライマーと組み合わせたRT−PCRを使用してモニタリングする。さらに、個々の実験ウエルを収集し、そしてタンパク質レベルを、実施例4に記載されるウエスタンブロット方法によって特徴付ける。これらの細胞を収穫し、溶解緩衝液(50mM Tris pH7.5、20mM NaCl、1mM EDTA、1%SDS)中に再懸濁させ、そしてこの可溶性タンパク質を収集する。この物質を、10〜20%勾配変性SDS PAGEへ適用する。これらの単離されたタンパク質をニトロセルロースへ移し、そしてウエスタンブロットを記載した抗体薬剤を使用して上記のように行う。並行して、コントロールオリゴヌクレオチドを、同一のクラスターへ添加し、そして実験操作を繰り返す。Beer mRNAまたはタンパク質レベルの減少は、このアンチセンスオリゴヌクレオチドでの処置が、このコントロールスクランブル化(scrambled)オリゴヌクレオチドと比較する場合のいずれかで50%の変化が生じる場合、有意であると考えられる。この方法は、この組織培養モデルにおける鉱化ノジュール(nodule)の選択的遺伝子不活性化および引き続く表現型特徴付けを可能にする。
【0246】
【化5】





























上述から、本発明の特定の実施形態が、本明細書中で例示の目的のために記載されてきたが、種々の改変が、本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による場合を除いて、制限されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された核酸分子であって、該核酸分子は、以下:
a)配列番号1、5、9、11、13、もしくは15、またはそれらの相補的配列を含む、単離された核酸分子;
b)高度にストリンジェンシーの条件下で(a)の核酸分子と特異的にハイブリダイズする、単離された核酸分子;および
c)a)またはb)によるTGF−β結合タンパク質をコードする、単離された核酸、からなる群より選択される、単離された核酸分子。
【請求項2】
前記核酸分子が、配列番号2のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
前記核酸分子が、配列番号6のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
前記核酸分子が、配列番号10のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
前記核酸分子が、配列番号12のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
前記核酸分子が、配列番号14のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
前記核酸分子が、配列番号16のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸分子に作動可能に連結されるプロモーターを含む、発現ベクター。
【請求項9】
前記プロモーターが、CMV I−Eプロモーター、SV40初期プロモーターおよびMuLV LTRからなる群より選択される、請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項10】
前記プロモーターが組織特異的プロモーターである、請求項8に記載の発現ベクター。
【請求項11】
TGF−β結合タンパク質を産生する方法であって、該方法は、請求項8に記載のベクターを含む細胞を、該タンパク質を産生するために十分な条件下および時間にわたって培養する工程を包含する、方法。
【請求項12】
前記タンパク質を精製する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸分子の発現を指向し得る、ウイルスベクター。
【請求項14】
前記ベクターが、単純疱疹ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルス関連ウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターからなる群より選択される、請求項13に記載のウイルスベクター。
【請求項15】
請求項8〜14のいずれか一項に記載のベクターを保有する、宿主細胞。
【請求項16】
前記宿主細胞が、ヒト細胞、イヌ細胞、サル細胞、ラット細胞およびマウス細胞からなる群より選択される、請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸分子によってコードされるTGF−β結合タンパク質を含む、単離されたタンパク質。
【請求項18】
請求項17に記載のタンパク質と特異的に結合する、抗体。
【請求項19】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項18に記載の抗体。
【請求項20】
前記モノクローナル抗体がマウス抗体またはヒト抗体である、請求項19に記載の抗体。
【請求項21】
前記抗体がF(ab’)2、F(ab)2、Fab’、FabおよびFvからなる群より選択される、請求項18に記載の抗体。
【請求項22】
請求項19に記載の抗体を産生する、ハイブリドーマ。
【請求項23】
融合タンパク質であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸分子によってコードされるTGF−β結合タンパク質を含む第一のポリペプチドセグメント、または少なくとも10アミノ酸長の該ポリペプチドセグメントの部分、および非TGF−β結合タンパク質を含む第二のポリペプチドセグメントを包含する、融合タンパク質。
【請求項24】
前記第一のポリペプチドセグメントが、少なくとも20アミノ酸長である、請求項23に記載の融合タンパク質。
【請求項25】
前記第一のポリペプチドセグメントが、少なくとも50アミノ酸長である、請求項23に記載の融合タンパク質。
【請求項26】
前記第二のポリペプチドセグメントが、複数のアニオン性アミノ酸残基を含む、請求項23に記載の融合タンパク質。
【請求項27】
配列番号1、3、5、7、9、11、13、もしくは15に記載の核酸分子、またはその相補体と高度にストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする、単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項28】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも20ヌクレオチド長である、請求項27に記載の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項29】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも30ヌクレオチド長である、請求項27に記載の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項30】
前記オリゴヌクレオチドが、少なくとも50ヌクレオチド長である、請求項27に記載の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項31】
前記オリゴヌクレオチドが、50と100との間のヌクレオチド長である、請求項27に記載の単離されたオリゴヌクレオチド。
【請求項32】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸分子の全てまたは一部を特異的に増幅する、プライマー対。
【請求項33】
請求項17に記載のタンパク質をコードするRNAを切断する、リボザイム。
【請求項34】
前記タンパク質が配列番号2のタンパク質を含む、請求項33に記載のリボザイム。
【請求項35】
前記タンパク質が配列番号6のタンパク質を含む、請求項33に記載のリボザイム。
【請求項36】
前記RNAが配列番号10のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項33に記載のリボザイム。
【請求項37】
前記RNAが配列番号12のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項33に記載のリボザイム。
【請求項38】
前記RNAが配列番号14のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項33に記載のリボザイム。
【請求項39】
前記RNAが配列番号16のタンパク質を含むタンパク質をコードする、請求項33に記載のリボザイム。
【請求項40】
前記リボザイムがリボ核酸からなる、請求項33に記載のリボザイム。
【請求項41】
1つ以上の前記リボ核酸が2’−O−メチルリボ核酸である、請求項40に記載のリボザイム。
【請求項42】
前記リボザイムが、デオキシリボ核酸およびリボ核酸の混合物からなる、請求項33に記載のリボザイム。
【請求項43】
前記リボザイムが、ホスホチオエート結合を有する核酸からなる、請求項33に記載のリボザイム。
【請求項44】
請求項33に記載のリボザイムをコードする核酸配列を含む、核酸分子。
【請求項45】
前記核酸がDNAまたはcDNAである、請求項44に記載の核酸分子。
【請求項46】
前記核酸を転写するプロモーターの制御下にある、請求項44に記載の核酸分子。
【請求項47】
請求項33のリボザイムを含む、宿主細胞。
【請求項48】
請求項44に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項49】
前記ベクターが、プラスミド、ウイルス、レトロトランスポゾンまたはコスミドである、請求項48に記載のベクター。
【請求項50】
前記ウイルスがレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルスからなる群より選択される、請求項49に記載のベクター。
【請求項51】
請求項48〜50のいずれか一項に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項52】
前記宿主細胞が、前記ベクターを用いて安定的に形質転換される、請求項51に記載の宿主細胞。
【請求項53】
前記宿主細胞がヒト細胞である、請求項51に記載の宿主細胞。
【請求項54】
プロモーターの転写制御下で請求項33に記載のリボザイムをコードするDNAを提供する工程、および該リボザイムを産生するために該DNAを転写する工程を包含する、リボザイムを産生するための、方法。
【請求項55】
前記リボザイムがインビトロで産生される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記リボザイムを精製する工程をさらに包含する、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
請求項33〜43のいずれか一項に記載の有効量のリボザイムを、温血動物に導入する工程を包含する、骨鉱化作用を増加するための、方法。
【請求項58】
請求項44に記載の有効量の核酸分子を、リボザイムを産生するための該核酸分子の転写を支持する条件下で、患者に導入する工程を包含する、骨鉱化作用を増加するための、方法。
【請求項59】
請求項33〜43のいずれか一項に記載のリボザイム、および薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項60】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸分子の全てまたは一部を特異的に増幅し得る、プライマー対。
【請求項61】
請求項27〜31のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを、高度にストリンジェンシーの条件下でインキュベートする工程、および該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出する工程を包含する、TGF−β結合タンパク質をコードする核酸分子を検出するための、方法。
【請求項62】
前記オリゴヌクレオチドが標識される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記オリゴヌクレオチドが固体支持体に結合される、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
TGF−β結合タンパク質を検出するための方法であって、該方法は、請求項18〜21のいずれか一項に記載の抗体を、該抗体がTGF−β結合タンパク質と結合し得るために十分な条件下および時間にわたってインキュベートする工程、および該結合を検出する工程を包含する、方法。
【請求項65】
前記抗体が固体支持体に結合される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記抗体が標識される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記抗体が、酵素、蛍光タンパク質、および放射性同位体からなる群より選択されるマーカーを用いて標識される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
トランスジェニック動物であって、該動物の生殖細胞および体細胞は、前記遺伝子の発現に効果的なプロモーターに作動可能に連結される、請求項1に記載のTGF−β結合タンパク質をコードする核酸分子を含み、該遺伝子は、胚性段階において、該動物、または該動物の祖先に導入されており、ただし、該動物はヒトではない、トランスジェニック動物。
【請求項69】
TGF−β結合タンパク質が、請求項8〜10のいずれか一項に記載のベクターから発現される、請求項68に記載のトランスジェニック動物。
【請求項70】
トランスジェニックノックアウト動物であって、該動物の生殖細胞および体細胞が、請求項1に記載の核酸分子とハイブリダイズする内因性の核酸分子の少なくとも1つの対立遺伝子の破壊を含む動物を包み、該破壊が、該破壊を伴わない動物と比較して、該対立遺伝子からのメッセンジャーRNAの転写を防ぎ、ただし、該動物がヒトではない、トランスジェニックノックアウト動物。
【請求項71】
前記破壊が核酸欠失、核酸置換、または核酸挿入である、請求項70に記載のトランスジェニック動物。
【請求項72】
前記動物がマウス、ラットおよびイヌからなる群より選択される、請求項68または70に記載のトランスジェニック動物。
【請求項73】
候補分子が、骨鉱物量を増加し得るか否かを決定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)1つ以上の候補分子を、請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸分子によってコードされるTGF−β結合タンパク質およびTGF−βファミリーのタンパク質の選択されたメンバーと混合する工程;
(b)該候補分子が、該TGF−βファミリーメンバーのシグナル伝達を変化するか否か、また該TGF−β結合タンパク質の該TGF−βファミリーメンバーとの結合を変化するか否かを決定する工程を包含する、方法。
【請求項74】
前記TGF−βファミリーのタンパク質のメンバーがBMP6である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
候補分子が、骨鉱物量を増加し得るか否かを決定する方法であって、該方法は、候補分子がTGF−β結合タンパク質の骨、またはそのアナログとの結合を阻害するか否かを決定する工程を包含する、方法。
【請求項76】
前記骨のアナログがヒドロキシアパタイトである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
TGF−β結合タンパク質遺伝子発現の検出のためのキットであって、該キットは、核酸分子を含む容器を備え、ここで、該核酸分子が、
(a)配列番号1、5、7、9、11、13、または15のヌクレオチド配列を含む核酸分子;
(b)(a)のヌクレオチド配列の相補体を含む核酸分子;
(c)少なくとも20ヌクレオチド長の(a)または(b)のフラグメントである核酸分子、からなる群より選択される、キット。
【請求項78】
請求項18〜21のいずれか一項に記載の抗体を含む容器を備える、TGF−β結合タンパク質の検出のための、キット。
【請求項79】
アンチセンスオリゴヌクレオチドであって、該オリゴヌクレオチドが、配列番号1、3、5、7、9、11、13、もしくは15に記載の核酸分子、またはその相補体とハイブリダイズする核酸分子を含み、ここで、該オリゴヌクレオチドが、請求項17に記載のTGF−β結合タンパク質の発現を阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項80】
前記オリゴヌクレオチドが15ヌクレオチド長である、請求項79に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項81】
前記オリゴヌクレオチドが20ヌクレオチド長である、請求項79に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項82】
前記オリゴヌクレオチドが50ヌクレオチド長である、請求項79に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項83】
前記オリゴヌクレオチドが1つ以上の核酸アナログからなる、請求項79に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項84】
前記オリゴヌクレオチドが1つ以上のリボ核酸からなる、請求項79に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項85】
前記オリゴヌクレオチドが1つ以上のデオキシリボ核酸からなる、請求項79に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項86】
前記オリゴヌクレオチド配列が1つ以上の修飾された共有結合を含む、請求項79に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項87】
前記修飾された共有結合が、ホスホロチオエート結合、ホスホトリエステル結合、メチルホスホネート結合、メチレン(メチルイミノ)結合、モルホリノ結合、アミド結合、ポリアミド結合、短鎖アルキル糖間結合、シクロアルキル糖間結合、短鎖ヘテロ原子糖間結合および複素環式糖間結合、からなる群より選択される、請求項86に記載のオリゴヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−254818(P2011−254818A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145326(P2011−145326)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【分割の表示】特願2000−585404(P2000−585404)の分割
【原出願日】平成11年11月24日(1999.11.24)
【出願人】(501207319)ダーウィン ディスカバリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】