説明

髄鞘形成およびオリゴデンドロサイト分化を促進するためのセマフォリン6Aの使用

本発明は、Sema6Aポリペプチドの投与によって、多発性硬化症を含む、脱髄および髄鞘形成不全を伴う疾病、疾患、または損傷を治療する方法を提供する。一つの実施形態においては、本発明は、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進するための方法を含み、オリゴデンドロサイトを、単離Sema6Aポリペプチドを含む有効量の組成物と接触させるステップを含む。他の実施形態においては、本発明は、ニューロンのオリゴデンドロサイト媒介髄鞘形成を促進するための方法を含み、ニューロンおよびオリゴデンドロサイトの混合物を、Sema6Aポリペプチドを含む有効量の組成物と接触させるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、神経生物学、神経学および薬理学に関する。より具体的には、セマフォリン6A(「Sema6A」)ポリペプチドの投与によって、中枢神経系髄鞘形成に関する疾病を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
神経系の多くの疾病は、多発性硬化症(MS)、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中心髄鞘崩壊症(CPM)、ウォラー変性、ならびに副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、およびペリツェウス・メルツバッヘル病(PMZ)等のある種の遺伝病を含む脱髄および髄鞘形成不全と関係する。かかる疾病の中で、MSは最も広まっており、世界中で約250万人が罹患している。
【0003】
MSは、概して、再発−軽減パターンの神経障害から開始し、次いで、神経損傷の増大をともなう慢性期に進行する。MSは、慢性病巣に局在するミエリン、オリゴデンドロサイト、および軸索の破壊と関連する。MSにおいて観察される脱髄は、必ずしも永久的ではなく、疾病の初期段階における再髄鞘形成が記録されている。中枢神経系(「CNS」)ニューロンの再髄鞘形成は、オリゴデンドロサイトを必要とする。
【0004】
MSに対して様々な疾病改変治療が使用可能であり、副腎皮質ステロイドおよびインターフェロンベータ等の免疫賦活剤の使用を含む。加えて、MSにおけるオリゴデンドロサイトおよび髄鞘形成の中心的役割のために、オリゴデンドロサイト数を増加させる、または髄鞘形成を強化するための治療法を開発する努力が為されている。例えば、Cohen et al.,特許文献1、非特許文献1を参照されたい。しかしながら、MSに対する付加療法を考案することが依然として急務である。
【0005】
セマフォリンは、分泌または膜結合性タンパク質であり、軸索ガイダンスおよび細胞移動を制御することが知られている。非特許文献2を参照されたい。多くの膜貫通セマフォリンは、発達中のCNSにおいて発現するが、それらの生体内機能についてはほとんど知られていない。同上を参照されたい。クラス6セマフォリンは、Sema6A〜Sema6Dの、4つのタンパク質を含み、それらは無脊椎動物の膜貫通セマフォリンと密接に関連する。非特許文献3を参照されたい。すべてのセマフォリンは、N末端細胞外部分にセマフォリン(Sema)ドメインおよびプレキシン−セマフォリン−インテグリン(PSI)ドメイン(プレキシン、セマフォリン、およびインテグリンにおいて見出される)を有する。
【0006】
プレキシンは、一群の分子(プレキシンファミリー)であり、様々な動物種に分布している。非特許文献4を参照されたい。プレキシンは、4つのサブファミリー、すなわちプレキシン−A、B、CおよびDに分類される。同上を参照されたい。マウスおよびヒトにおいて、プレキシンA−サブファミリーの4つのメンバー(プレキシン−A1、A2、A3、およびA4)が、単離されている。非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、および非特許文献9を参照されたい。プレキシン−Aサブファミリーの外部ドメインは、セマフォリンによって共有されるSemaドメインに対して著しい相同性を呈する、約500の一連のアミノ酸(aa)残基を有する。非特許文献10を参照されたい。A型プレキシンは、クラス6セマフォリンと相互作用することが知られている。非特許文献11を参照されたい。例えば、Sutoらは、プレキシン−A4がSema6Aの直接受容体であることを示した。非特許文献12を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,574,009号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chang et al.,N.Engl.J.Med.346:165−73(2002)
【非特許文献2】Kerjan et al.,Nat.Neursci.8(11):1516−1524(2005)
【非特許文献3】Fiore&Puschel.Front.Biosci.8:2484−2499(2003)
【非特許文献4】Murakami et al.,Dev.Dynam.220:246−258(2001)
【非特許文献5】Kameyama et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.226:396−402(1996)
【非特許文献6】Kameyama et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.226:524−529(1996)
【非特許文献7】Maestrini et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:674−678(1996)
【非特許文献8】Tamagnone et al.,Cell 99:71−80(1999)
【非特許文献9】Suto et al.,Mech.Dev.120:385−396(2003)
【非特許文献10】Murakami et al.,Develop.Dyn.220:246−258(2001)
【非特許文献11】Toyofuku et al.,Genes Develop.18:435−447(2004)
【非特許文献12】J.Neurosci.25(14):3628−3637(2005)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、セマフォリン6A(Sema6A)がオリゴデンドロサイトにおいて発現し、オリゴデンドロサイト分化、生存、および/または軸索髄鞘形成を調整するという発見に基づく。さらに、ある種のSema6Aポリペプチドは、オリゴデンドロサイトの生存、増殖、および/または分化、ならびにニューロンの髄鞘形成を促進する。かかる発見に基づいて、本発明は、概して、Sema6Aポリペプチドの投与によって、脱髄および/または髄鞘形成不全(例えば、多発性硬化症)に関連する状態を治療する方法に関する。
【0010】
ある実施形態においては、本発明は、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進するための方法を含み、オリゴデンドロサイトを、単離Sema6Aポリペプチドを含む有効量の組成物と接触させるステップを含む。他の実施形態においては、本発明は、ニューロンのオリゴデンドロサイト媒介髄鞘形成を促進するための方法を含み、ニューロンおよびオリゴデンドロサイトの混合物を、Sema6Aポリペプチドを含む有効量の組成物と接触させるステップを含む。
【0011】
本発明は、哺乳動物においてオリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進するための方法、またはニューロンの髄鞘形成を促進するための方法を対象とし、Sema6Aポリペプチドを含む有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む。
【0012】
また哺乳動物において、髄鞘形成不全または脱髄に関する、あるいはオリゴデンドロサイト細胞死または分化の欠失に関する疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、Sema6Aポリペプチドを含む治療有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む方法が含まれる。
【0013】
さらに、哺乳動物においてミエリンの破壊を伴う疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、Sema6Aポリペプチドを含む治療有効量の組成物を投与するステップを含む方法が含まれる。
【0014】
追加として、Sema6Aポリペプチドは、プレキシン−A2ポリペプチドまたはプレキシン−A4ポリペプチドに結合する、本明細書に記載される本発明の方法が含まれる。他の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドが単離される。
【0015】
さらに、本発明の実施形態は、生体内遺伝子治療法によって、オリゴデンドロサイトまたはミエリンの破壊を伴う疾病、疾患、または損傷を治療する方法であって、疾患、疾病、または損傷の部位あるいはその付近において、哺乳動物にて、Sema6Aポリペプチドが、損傷の部位またはその付近において、ニューロンによる軸索伸長を促進するために十分な量でヌクレオチド配列から発現するように、Sema6Aポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含むベクターを、哺乳動物に投与するステップを含む。ある実施形態においては、本発明は、哺乳動物において、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進するため、あるいはニューロンの髄鞘形成を促進するための方法であって、Sema6Aポリペプチドをコード化する、ポリヌクレオチドを含む有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む方法を含む。
【0016】
追加として、本発明は、哺乳動物において、髄鞘形成不全または脱髄に関連した、あるいはオリゴデンドロサイト細胞死または分化の欠失に関連した疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、Sema6Aポリペプチドをコード化する、ポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む方法を含む。本発明は、哺乳動物において、ミエリンの破壊を伴う疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、Sema6Aポリペプチドをコード化する、ポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与するステップを含む方法をさらに含む。ある実施形態においては、本発明のSema6Aポリペプチドは、プレキシン−A2ポリペプチドまたはプレキシン−A4ポリペプチドに結合する。本発明の方法で使用されるポリヌクレオチドは、単離され得る。
【0017】
ある実施形態においては、ベクターは、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、エンテロウイルスベクター、ペスチウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、EBウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターから成る群より選択される、ウイルスベクターである。
【0018】
一部の実施形態においては、疾病、疾患、損傷、または状態は、多発性硬化症(MS)、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中心髄鞘崩壊症(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、ペリツェウス・メルツバッヘル病(PMZ)、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、ウォラー変性、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、放射線照射後の損傷、化学療法の神経学的合併症、脳梗塞、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠損、ビタミンE単独欠損症、AR、バッセン・コルンツヴァイク症候群、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、異染性白質ジストロフィー、三叉神経痛、およびベル麻痺から成る群より選択される。一部の実施形態においては、培養宿主細胞は、治療対象の哺乳動物に由来する。
【0019】
特定のSema6Aポリペプチドは、膜貫通領域および細胞質ドメインを欠失する、Sema6Aポリペプチドのフラグメント、変異体、またはその誘導体を含むが、これらに限定されない。Sema6Aポリペプチドは、(i)シグナル配列、(ii)Semaドメイン、(iii)PSIドメイン、(iv)細胞外ドメイン、(v)膜貫通領域、(vi)細胞質ドメイン、および(vii)2つ以上のドメインの組み合わせを含むポリペプチドを含む。一部の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、シグナル配列、Semaドメイン、PSIドメイン、膜貫通領域、細胞質ドメイン、または2つ以上のドメインの組み合わせを欠失する。一部の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、Semaドメインを含み、シグナル配列、PSI配列、膜貫通領域、および細胞質ドメインを欠失する。一部の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸残基1〜649を含む。
【0020】
一部の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、ボーラス注入法または長期注入によって投与される。一部の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、中枢神経系に直接投与される。一部の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、MSの慢性病巣に直接投与される。
【0021】
一部の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、非Sema6A部分を含む融合ポリペプチドである。一部の実施形態においては、非Sema6A部分は、抗体Ig部分、血清アルブミン部分、標的部分、レポーター部分、および精製促進部分から成る群より選択される。一部の実施形態においては、抗体Ig部分はヒンジおよびFc部分である。
【0022】
一部の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、ポリマーに共役される。一部の実施形態においては、ポリマーは、ポリアルキレングリコール、糖ポリマー、およびポリペプチドから成る群より選択される。一部の実施形態においては、ポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール(PEG)である。一部の実施形態においては、本発明のポリペプチドは、1、2、3、または4つのポリマーに共役される。一部の実施形態においては、ポリマーの総分子量は、5,000Daから100,000Daである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ヒトSema6Aポリペプチドイソ型、すなわち、イソ型A〜D間の配列比較である。
【図2】マウスSema6Aポリペプチドイソ型、すなわち、イソ型1〜3間の配列比較である。
【図3】マウス神経系におけるSema6A発現。P15マウスの神経系におけるSema6A発現を、原位置ハイブリダイゼーションによって分析した。最もSema6Aを発現する細胞のほとんどは、白質において認められる。白質におけるSema6A発現細胞はオリゴデンドロサイトである。
【図4】P16における前交連(AC)中のミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)発現Sema6A+/−(A)またはSema6A−/−(B)オリゴデンドロサイトの免疫染色分析。(C)異なる段階、すなわちP16、P30、およびP45におけるAC中のPLP発現細胞の定量。
【図5】(A)Sema6A−/−オリゴデンドロサイトの生体外成熟。オリゴデンドロサイトのフラクタル次元(FD)を48時間後に測定した。左表示棒は、Sema6A−/−オリゴデンドロサイトのFDであり、右表示棒は、Sema6A+/−オリゴデンドロサイトのFDである。(B)48時間後、位相差顕微鏡法および抗O4抗体を用いる免疫染色によって可視化したSema6A−/−のオリゴデンドロサイト。(C)24時間および48時間後のSema6A−/−オリゴデンドロサイトの生体外成熟。左表示棒は24時間を示し、右表示棒は48時間を示す。(D)48時間後、位相差顕微鏡法および抗O4抗体を用いる免疫染色によって可視化したSema6A+/−のオリゴデンドロサイト。
【図6】様々な投与量のSema6A−Fcの添加を伴う、後根神経節細胞(DRG)およびオリゴデンドロサイトの共培養における髄鞘形成、(A)負の対照、(B)0.1μg/ml、および(C)0.3μg/ml。髄鞘形成の程度は、抗MBP抗体を用いる免疫染色によって示される。
【図7】マウスをクプリゾンで処理し、脱髄および再髄鞘形成中のSema6A発現を試験した。Sema6A発現細胞の数を異なる段階、すなわち3から6週間で測定した。
【図8】(A)〜(B)倍率1倍(A)および倍率1倍(B)で、ヒトMS病巣組織および非病巣組織において、Sema6Aリボプローブを使用する原位置ハイブリダイゼーション、(C)倍率10倍で、ヒトSema6A抗体を使用するヒトMS病巣組織の免疫染色。
【図9】(A)プレキシン−A2+/+(野生型)、プレキシン−A2タンパク質ヌルノックアウト(プレキシン−A2−/−)マウス、およびセマフォリンドメイン(NMF454)において単一アミノ酸置換(A396E)を担持するプレキシン−A2突然変異体におけるプレキシン−A2ポリペプチド発現のウェスタンブロット解析、(B)アラニン(396)を同定するためのプレキシン−A2、プレキシン−A4、プレキシン−A1、およびプレキシン−A3の配列調整、(C)COS細胞において発現した野生型プレキシン−A2タンパク質に対するSema6A結合アッセイ、および(D)COS細胞において発現した突然変異プレキシン−A2A396Eに対するSema6A結合アッセイ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当該技術分野において従来技術を有する者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。矛盾する場合は、該定義を含む本適用を採用する。文脈によって別段の必要がない限り、単数の用語は複数を含み、複数の用語は単数を含み得る。本明細書で言及されるすべての発行物、特許、および他の参照物は、それぞれ個別の発行物または特許出願が、参照によって組み込まれるものとして具体的および個別に示されるかのように、あらゆる目的のために、それら全体を参照することによって組み込まれる。
【0025】
本明細書に記載されるものに類似または同等の方法および材料を、本発明の実践または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に説明する。材料、方法、および実施例は単なる例証であり、限定することを意図しない。本発明の他の特徴および利点は、発明を実施するための形態および請求項から明らかになるだろう。
【0026】
本発明をさらに定義するために、以下の用語および定義を提供する。
【0027】
「1つ(aまたはan)の」実体という用語は、1つ以上のその実体を意味し、例えば、「1つのポリペプチド」は、1つ、または以上のポリペプチドを表すことが理解されることに留意されたい。したがって、「1つ(aまたはan)」、「1つ以上の(one or more)」および「少なくとも1つの(at least one)」という用語は、本明細書において同義的に使用することができる。
【0028】
本明細書および請求項を通して、「含む(comprise)」という用語、または「comprises」もしくは「comprising」等の変型例は、任意の列挙される整数または整数群を含むことを示すが、いかなる他の整数または整数群の除外も示すことはない。
【0029】
本明細書および請求項を通して、「〜から成る(consists of)」という用語、および「consist of」または「connsisting of」等の変型例は、任意の列挙される整数または整数群を含むことを示すが、追加の整数または整数群は、特定の方法、構造、または組成物に追加され得ないことを示す。
【0030】
本明細書および請求項を通して、「本質的に〜から成る(connsists essentially of)」という用語、および「consist essentially of」または「consisting essentially of」等の変型例は、任意の列挙される整数または整数群を含むこと、および特定の方法、構造、または組成物の基本的または新規特性を実質的に変化させない、任意の列挙される整数または整数群を任意に含むことを示す。
【0031】
本明細書で使用される「抗体」は、正常な免疫グロブリン、またはその抗原結合フラグメントを意味する。本発明の抗体は、任意のイソ型またはクラス(例えば、M、D、G、E、およびA)または任意のサブクラス(例えば、G1−4、A1−2)であり得、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかを有し得る。
【0032】
本明細書で使用される「Fc」は、1つ以上の重鎖定常領域ドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む、免疫グロブリン重鎖の部分、例えば、パパイン消化によって取得可能な抗体の重鎖定常領域の部分を意味する。
【0033】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」は、非ヒト配列の少なくとも一部が、ヒト配列と置換される抗体を意味する。ヒト化抗体の形成方法の実施例は、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号、および第5,877,293号において見出され得る。
【0034】
本明細書で使用される「キメラ抗体」は、第1の抗体からの1つ以上の領域、および少なくとも1つの他の抗体からの1つ以上の領域を含む抗体を意味する。第1の抗体および追加の抗体は、同一または異なる種に由来し得る。
【0035】
本明細書で使用される「治療有効量」は、望ましい治療結果を達成するために必要な投与量および時間において有効な量を意味する。治療結果は、例えば、症状の緩和、長期生存、運動性の改善等であり得る。治療結果は「治癒」である必要はない。
【0036】
本明細書で使用される「予防的有効量」は、望ましい予防的結果を達成するために必要な投与量および時間において有効な量を意味する。典型的には、予防的用量は、疾病前、または疾病の初期段階において対象に使用されるので、予防的有効量は、治療有効量よりも少なくなる。
【0037】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」は、非翻訳5’および3’配列、コーディング配列、ならびに核酸配列のフラグメント、エピトープ、ドメイン、および変異体を含む、全長cDNA配列のヌクレオチド配列を含有し得る。ポリヌクレオチドは、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドで構成することができ、非修飾RNAまたはDNA、あるいは修飾RNAまたはDNAであり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、および一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖またはより典型的には、二本鎖であり得るか、あるいは一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得る、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子で構成することができる。加えて、ポリヌクレオチドは、RNAまたはDNA、あるいはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖で構成することができる。ポリヌクレオチドは、1つ以上の修飾塩基、あるいは安定性または他の理由のために修飾されたDNAまたはRNA骨格も含有し得る。「修飾」塩基は、例えば、トリチル化塩基およびイノシン等の異常塩基を含む。多様な修飾をDNAおよびRNAに行うことができ、したがって、「ポリヌクレオチド」は化学的、酵素的、または代謝的に修飾された形態を包含する。
【0038】
本発明において、ポリペプチドは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわちペプチド等量式によって互いに結合したアミノ酸で構成することができ、遺伝子によってコード化した20のアミノ酸以外のアミノ酸(例えば、自然には発生しないアミノ酸)を含有し得る。本発明のポリペプチドは、翻訳後処理等の自然過程、または当該技術分野において公知の化学的修飾技術のいずれかによって修飾され得る。かかる修飾は、基本の教科書、およびより詳細な論文、ならびに膨大な研究文献において十分に説明されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端を含む、ポリペプチドの任意の場所で生じ得る。当然のことながら、同一タイプの修飾は、同一または異なる程度で、所与のポリペプチドにおける複数の部位において存在し得る。また所与のポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含有し得る。ポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として分岐され得、また分岐を伴い、または伴わず、環状であり得る。環状、分岐、および分岐環状ポリペプチドは、翻訳後の自然過程から生じ得るか、または合成方法によって形成され得る。修飾は、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジリノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル反応、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG付加、タンパク質分解処理、リン酸化反応、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化等のタンパク質に対するトランスファーRNA媒介アミノ酸付加、およびユビキチン化を含む。(例えば、Proteins−Structure And Molecular Properties,2nd Ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993)、Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pgs.1−12(1983)、Seifter et al.,Meth Enzymol 182:626−646(1990)、Rattan et al.,Ann NY Acad Sci 663:48−62(1992)を参照されたい)。
【0039】
「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」、および「類似体」という用語は、本発明のSema6Aポリペプチドを参照する場合、少なくともある程度の免疫原性、すなわち、Sema6Aに対する免疫反応を誘発する能力、またはSema6Aの任意の自然発生的機能、例えば、プレキシン−Aサブファミリーポリペプチド、すなわち、プレキシン−A1、プレキシン−A2、プレキシン−A3、またはプレキシン−A4のうちの任意の1つに結合する能力を保持する、任意のポリペプチドを含む。自然発生的なSema6A機能の例は、プレキシン−A2またはプレキシン−A4ポリペプチドに結合するその能力である。本明細書で説明されるようなSema6Aポリペプチドは、Sema6Aポリペプチドが、免疫原性または自然発生的機能の任意の1つを依然として保持する限りにおいて、フラグメント、変異体、または誘導体分子を制限なく含み得る。本発明のSema6Aポリペプチドは、Sema6Aタンパク質分解フラグメント、欠損フラグメント、特に、動物に送達されると、より簡単に作用部位に到達するフラグメントを含み得る。ポリペプチドフラグメントは、線形ならびに三次元エピトープを含む、天然ポリペプチドの抗原または免疫原性エピトープを含む、ポリペプチドの任意の部分をさらに含む。本発明のSema6Aポリペプチドは、上述のようなフラグメントを含む、変異体Sema6A領域を含み、アミノ酸置換、欠損、または挿入による改変アミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。変異体は、自然発生し得、それには対立遺伝子変異体等がある。「対立遺伝子変異体」とは、有機体の染色体上の特定位置を占有する遺伝子の代替型を意図する。Genes II,Lewin,B.,ed.,John Wiley&Sons,New York(1985)。自然発生しない変異体は、当該技術分野において既知の突然変異誘発法を使用して産生され得る。Sema6Aポリペプチドは、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠損、または追加を含み得る。本発明のSema6Aポリペプチドは、誘導体分子も含み得る。例えば、本発明のSema6Aポリペプチドは、天然のポリペプチドでは認められない追加機能を呈するように改変されたSema6A領域を含み得る。その例には、融合タンパク質およびタンパク質共役が含まれる。
【0040】
本発明において、「ポリペプチドフラグメント」または「タンパク質フラグメント」は、Sema6Aポリペプチドの短いアミノ酸配列を意味する。タンパク質またはポリペプチドフラグメントは、「独立している」か、または該フラグメントが領域の一部を形成するより大きいポリペプチド内に包含され得る。本発明のポリペプチドフラグメントの代表的な例は、例えば、約5アミノ酸、約10アミノ酸、約15アミノ酸、約20アミノ酸、約30アミノ酸、約40アミノ酸、約50アミノ酸、約60アミノ酸、約70アミノ酸、約80アミノ酸、約90アミノ酸、および約100アミノ酸を含むフラグメントである。
【0041】
本明細書で使用される「結合した」、「融合した」、または「融合」という用語は同義的に使用される。かかる用語は、化学共役または組み換え手段を含む何らかの手段によって、2つ以上の要素または構成要素を結合することを意味する。「インフレーム融合(in−frame fusion)」は、2つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)を結合し、オリジナルORFの正しいリーディングフレームを維持する方法で、連続する、より長いORFを形成することを意味する。したがって、結果として生じる組み換え融合タンパク質は、オリジナルORFによってコード化されるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメント(かかるセグメントは、通常、自然では、結合されない)を含有する単一のタンパク質である。リーディングフレームは、そのようにして、融合セグメント全体で連続的に形成されるが、セグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的または空間的に分離され得る。
【0042】
ポリペプチドの文脈において、「直鎖状配列」または「配列」は、ポリペプチドにおけるアミノ酸の、アミノからカルボキシル末端への方向での順序であり、配列内で互いに隣接する残基は、ポリペプチドの一次構造において隣接する。
【0043】
本明細書で使用される「発現」という用語は、遺伝子が生化学物質、例えばRNAまたはポリペプチドを産生する過程を意味する。該過程は、細胞内での遺伝子のいかなる機能的存在の発現をも含み、遺伝子ノックダウンならびに一時的発現および安定発現の両方を含むむが、これらに限定されない。これには、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、または任意の他のRNA産生物への遺伝子の転写、およびポリペプチドへのかかるmRNAの翻訳が含まれるが、これらに限定されない。最終的に望ましい産生物は生化学物質である場合、発現は、該生化学物質および任意の前駆体の形成を含む。
【0044】
「対象」、「個別の」、「動物」、「患者」、または「哺乳動物」とは、診断、予後、または治療法が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象は、ヒト、家畜、農場動物、動物園動物、競技用動物、愛玩動物(イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、肉牛、乳牛等)、霊長類(類人猿、サル、オランウータン、およびチンパンジー等)、イヌ科動物(イヌおよびオオカミ等)、ネコ科動物(ネコ、ライオン、およびトラ等)、ウマ科動物(ウマ、ロバ、およびシマウマ等)、クマ、食用動物(ウシ、ブタ、およびヒツジ等)、有蹄動物(シカおよびキリン等)、齧歯動物(マウス、ラット、ハムスター、およびモルモット等)等を含むが、これらに限定されない。ある実施形態においては、哺乳動物はヒト被験者である。
【0045】
Sema6A
本発明は、Sema6Aポリペプチドが、それらの生存、増殖および/または分化を促進することによって、オリゴデンドロサイト数を増加させるという発見に基づく。加えて、本発明者は、Sema6Aポリペプチドがニューロンの髄鞘形成を促進することを発見した。
【0046】
自然発生するヒトSema6Aポリペプチドは、発達中の脳、腎臓、肺、および肝臓で発現することが知られている。Sema6Aは、皮膚(樹状細胞)等のヒト成人組織、および極めて再生力のある胎盤組織においても検出される。ヒトSema6A遺伝子は、2つの非翻訳エクソンを含む20エクソンから成り、染色体5上の約60kbのゲノム配列を占める。
【0047】
全長ヒトSema6Aポリペプチドは、シグナル配列、細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞質ドメインから成る。細胞外ドメインは、Semaドメインおよびプレキシン−セマフォリン−インテグリン(PSI)ドメインを含む。全長ヒトSema6Aポリペプチドは、変異体によって、長さが約971アミノ酸から約1049アミノ酸まで異なる。図1を参照されたい。同様の変異体は、マウスSema6Aにおいて生じる。例えば、図2を参照されたい。
【0048】
1030aaのポリペプチド配列は、ヒトSema6Aポリペプチド配列として報告されており、ジェンバンクの受入番号はNP−065847である。ヒトSema6Aポリペプチド配列は、本明細書において、イソ型Aおよび配列番号2として指定される。配列番号1は、配列番号2をコード化するヌクレオチド配列である。1047aaのポリペプチド配列は、ヒトSema6Aポリペプチド配列の変異体として報告されており、ジェンバンクの受入番号はEAW48937である。1047aaポリペプチドは、本明細書において、イソ型Bおよび配列番号4として指定される。配列番号4をコード化するヌクレオチド配列は配列番号3である。971aaを有するヒトSema6Aポリペプチドの別の変異体は、ジェンバンクの受入番号はEAW48935である。971aaポリペプチドは、本明細書において、イソ型Cおよび配列番号6として指定される。975aaのポリペプチド配列は、ヒトSema6Aポリペプチド変異体として報告されており、ジェンバンクの受入番号はEAW48934である。975aaポリペプチド配列は、本明細書において、イソ型Dおよび配列番号8として指定される。ヒトSema6Aの変異体は、アミノ酸1001以降が欠損して、1000アミノ酸を有するポリペプチドになる、Sema6Aポリペプチドのイソ型Aを含むが、これに限定されない。Nakayama et al.,Genome Res.12(11):1773-1784(2002)、Strausberg et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99(26):16899−16903(2002)を参照されたい。他のSema6A変異体も、例えば、Prislei et al.,Mol Cancer Ther.7(1):233−241(2007)において知られている。
【0049】
マウスSema6Aポリペプチド配列およびその変異体も報告されている。1031aaマウスSema6AポリペプチドのUniProtKB/Swiss−Protエントリにおける受入番号は、O35464である。ポリペプチドは、本明細書において、イソ型1および配列番号10として指定される。配列番号10をコード化するヌクレオチド配列は、配列番号9として指定される。1005aaの別のポリペプチド配列は、マウスSema6Aポリペプチド配列として報告されており、ジェンバンクの受入番号はAF288666である。ポリペプチド配列は、イソ型2および配列番号12として指定される。配列番号12をコード化するヌクレオチド配列は、本明細書において、配列番号11として指定される。マウスSema6Aポリペプチド配列の別の変異体のUniProtKB/Swiss−Protエントリにおける受入番号は、O35464と報告されている。ポリペプチド配列は、本明細書において、イソ型3および配列番号14として指定される。配列番号14をコード化するヌクレオチド配列は、配列番号13である。マウスSema6Aの変異体は、以下の突然変異を有するポリペプチドを含むが、これらに限定されない。A172V、L201P、N337D、S585N、Q685R、TK703−704SE、P735S、Q766E、I856T,またはKSPNHGVNLVENLDSLPPKVPQREAS863−888ESSPYVLKQFSEAFNRQGIILSVAVE。
【0050】
他の動物において知られるSema6Aポリペプチドは、チンパンジー、イヌ、およびゼブラフィッシュを含むが、これらに限定されない。チンパンジーSema6Aポリペプチド、例えば、ジェンバンク受入番号XP_001150634、XP_001150901、XP_001150706、XP_001151177、XP_001151109、XP_001151041、XP_001150971、およびXP_517889が存在する。イヌSema6Aポリペプチド変異体の限定されない実施例は、ジェンバンク受入番号XP_538552、XP_859002、XP_858964、XP_858921、XP_858886、およびXP_858843である。Sema6Aポリペプチドおよび変異体は、他の動物において見出され得る。
【0051】
Sema6A機能ドメイン指定は、以下のように定義され得る。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

当業者が理解するように、上に列挙したドメインの開始および終了残基は、ドメインの決定に使用されるコンピュータモデリングプログラム、または方法に応じて異なり得る。したがって、Sema6Aの様々な機能ドメインは、上で定義したものとは異なり得る。例えば、ヒトSema6Aポリペプチドイソ型A、すなわち、配列番号2の機能ドメインは、以下のように異なり得る。
【0054】
【表3】

配列番号2における配列変異に基づいて、当業者は、配列番号4、6、および8における配列変異を確認することができる。
【0055】
配列番号10における機能ドメインの配列、すなわち、マウスSema6Aポリペプチド配列のイソ型1は、以下のように異なる。
【0056】
【表4】

加えて、マウスまたは他の動物における配列番号12または14の配列変異、あるいは任意の他の変異体は、表2〜4に基づいて容易に確認することができる。
【0057】
プレキシン−A2
プレキシン−A2ポリペプチドは、Sema6Aポリペプチドに結合することが知られている。Suto et al.Neuron 53:535(2007)を参照されたい。全長ヒトプレキシン−A2ポリペプチド(配列番号15)は、シグナル配列、細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞質ドメインから成る。細胞外ドメインは、Semaドメインおよび4つのIPT/TIGドメイン、すなわち、IPT/TIG1〜4を含む。Semaドメインは、配列番号15のアミノ酸0〜523である。IPT/TIGドメイン1〜4は、それぞれ配列番号15のアミノ酸873〜967、967〜1053、1056〜1155、および1158〜1251である。当業者が理解するように、上で列挙したドメインの開始および終了残基は、ドメインの決定に使用されるコンピュータモデリングプログラム、または方法に応じて異なり得る。
【0058】
全長ヒトプレキシン−A2ポリペプチドの配列は多様である。プレキシン−A2ポリペプチド変異体の一例は、1894aa配列を有し、ジェンバンクの受入番号はNP079455である。また他の動物からのプレキシン−A2配列も、当該技術分野において公知である。例えば、マウスプレキシン−A2ポリペプチドは、当該技術分野において周知であり、ジェンバンクにおいて、NP_032908、AAH68155、EDL12938、EDL12937、およびNP_786926として報告されている。
【0059】
プレキシン−A4
プレキシン−A4は、Sema6Aポリペプチドの受容体であることも知られている。Suto et al.Neuron 53:535(2007)を参照されたい。全長ヒトプレキシン−A4ポリペプチド(配列番号16)は、シグナル配列、細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞質ドメインから成る。細胞外ドメインは、Semaドメイン、3つのPSIドメイン、すなわち、PSI1〜3、および4つのIPT/TIGドメイン、すなわち、IPT/TIG1〜4を含む。Semaドメインは、配列番号16のアミノ酸24〜507である。PSIドメイン1〜3は、それぞれ配列番号16のアミノ酸509〜559、655〜702、および803〜856である。プレキシン−A4ポリペプチドのIPT/TIGドメイン1〜4は、それぞれ配列番号16のアミノ酸858〜952、954〜1037、1040〜1139、および1142〜1230である。熟練者であれば、上で列挙したドメインの開始および終了残基が、ドメインを決定するために使用されるコンピュータモデリングプログラム、または方法に応じて異なり得ることを理解する。
【0060】
全長ヒトプレキシン−A4ポリペプチドの配列は多様である。例えば、プレキシン−A4の複数の変異体は、ジェンバンクにおいて、EAW83796、NP_001099013、EAW83795、AAH28744、およびEAL24077として報告されている。さらに、他の動物からのプレキシン−A4配列も報告されている。例えば、マウスプレキシン−A4ポリペプチドは、ジェンバンクにおいて、NP_786926、BAC56599、EDL13705、およびEDL13704として報告されている。
【0061】
本発明の一部の実施形態は、全長または成熟Sema6Aポリペプチド、あるいは可溶性Sema6Aポリペプチドを提供する。具体的には、本発明の可溶性Sema6Aポリペプチドは、全長または成熟Sema6Aポリペプチドのフラグメント、変異体、またはその誘導体を含む。上記の表1〜4は、Sema6Aポリペプチドの様々な機能ドメインを説明する。本発明の可溶性Sema6Aポリペプチドは、概して、ポリペプチドの細胞外ドメインの一部またはすべてを含む。可溶性Sema6Aポリペプチドは、概して、膜貫通領域および/または細胞質ドメインを欠失する。当業者が理解するように、Sema6Aの細胞外ドメイン全体は、細胞外ドメインポリペプチドのC末端またはN末端のいずれかに追加またはより少ないアミノ酸を含んでもよく、内部欠損を含み得る。
【0062】
本発明の方法において使用するためのヒトSema6Aポリペプチドは、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドを含むが、これらに限定されず、当該参照アミノ酸配列は、配列番号2の56〜417、配列番号2のa〜417、配列番号2のb〜417、配列番号2の1〜417、配列番号2の56〜c、配列番号2のa〜c、配列番号2のb〜c、配列番号2の1〜c、配列番号6の56〜c’、配列番号6のa〜c’、配列番号6のb〜c’、配列番号6の1〜c’、配列番号2の56〜d、配列番号2のa〜d、配列番号2のb〜d、配列番号2の1〜d、配列番号6の56〜d’、配列番号6のa〜d’、配列番号6のb〜d’、配列番号6の1〜d’、配列番号2の56〜e、配列番号2のa〜e、配列番号2のb〜e、配列番号2の1〜e、配列番号6の56〜e’、配列番号6のa〜e’、配列番号6のb〜e’、配列番号6の1〜e’、配列番号8の56〜e’’、配列番号8のa〜e’’、配列番号8のb〜e’’、配列番号8の1〜e’’、配列番号4の56〜e’’’、配列番号4のa〜e’’’、配列番号6のb〜e’’’、配列番号8の1〜e’’’、配列番号2の56〜f、配列番号2のa〜f、配列番号2のb〜f、配列番号2の1〜f、配列番号6の56〜f’、配列番号6のa〜f’、配列番号6のb〜f’、配列番号6の1〜f’、配列番号8の56〜f’’、配列番号8のa〜f’’、配列番号8のb〜f’’、配列番号8の1〜f’’、配列番号4の56〜f’’’、配列番号4のa〜f’’’、配列番号4のb〜f’’’、配列番号4の1〜f’’’、のアミノ酸、および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択され、aは24から56までの間の任意の整数であり、bは19から21までの間の任意の整数であり、cは472から512までの間の任意の整数であり、c’は418から453までの間の任意の整数であり、dは514から569までの間の任意の整数であり、d’は455から510までの間の任意の整数であり、eは570から650までの間の任意の整数であり、e’は511から591までの間の任意の整数であり、e’’は570から595までの間の任意の整数であり、e’’’は570から667までの間の任意の整数であり、fは647から671までの間の任意の整数であり、f’は588から612までの間の任意の整数であり、f’’は592から616までの間の任意の整数であり、f’’’は664から688までの間の任意の整数である。ある実施形態においては、本発明の方法において使用するためのSema6Aポリペプチドは、プレキシン−A2またはプレキシン−A4ポリペプチドに結合する。
【0063】
ある実施形態においては、本発明の方法において使用するためのヒトSema6Aポリペプチドは、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドを含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号8の1〜975、配列番号2の19〜417、配列番号2の19〜472、配列番号2の19〜551、配列番号6の19〜492、配列番号2の19〜647、配列番号6の19〜588、配列番号8の19〜592、配列番号4の19〜664、配列番号2の56〜472、配列番号2の56〜551、配列番号6の56〜492、配列番号2の56〜647、配列番号6の56〜588、配列番号8の56〜592、配列番号4の56〜664、配列番号2の1〜649[R&Dからの、ヒトSema6A−Fc]、配列番号6の1〜590、配列番号8の1〜594、配列番号4の1〜666、配列番号2の18〜703、配列番号6の18〜644、配列番号8の18〜648、配列番号4の18〜720、配列番号2の1〜648、配列番号6の1〜589、配列番号8の1〜593、配列番号4の1〜665、のアミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。別の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、プレキシン−A2またはプレキシン−A4ポリペプチドに結合する。
【0064】
別の実施形態においては、本発明の方法において使用するためのヒトSema6Aポリペプチドは、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドを含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号2の56〜417、配列番号2の55〜417、配列番号2の54〜417、配列番号2の53〜417、配列番号2の52〜417、配列番号2の51〜417、配列番号2の50〜417、配列番号2の49〜417、配列番号2の48〜417、配列番号2の47〜417、配列番号2の46〜417、配列番号2の45〜417、配列番号2の44〜417、配列番号2の43〜417、配列番号2の42〜417、配列番号2の41〜417、配列番号2の40〜417、配列番号2の39〜417、配列番号2の38〜417、配列番号2の37〜417、配列番号2の36〜417、配列番号2の35〜417、配列番号2の34〜417、配列番号2の33〜417、配列番号2の32〜417、配列番号2の31〜417、配列番号2の30〜417、配列番号2の29〜417、配列番号2の28〜417、配列番号2の27〜417、配列番号2の26〜417、配列番号2の25〜417、配列番号2の24〜417、配列番号2の23〜417、配列番号2の22〜417、配列番号2の21〜417、配列番号2の20〜417、配列番号2の19〜417、配列番号2の18〜417、配列番号2の17〜417、配列番号2の16〜417、配列番号2の15〜417、配列番号2の14〜417、配列番号2の13〜417、配列番号2の12〜417、配列番号2の11〜417、配列番号2の10〜417、配列番号2の9〜417、配列番号2の8〜417、配列番号2の7〜417、配列番号2の6〜417、配列番号2の5〜417、配列番号2の4〜417、配列番号2の3〜417、配列番号2の2〜417、配列番号2の1〜417の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択され、当該Sema6Aポリペプチドは、プレキシン−A2ポリペプチドを結合する。
【0065】
本発明の方法において使用するためのヒトSema6Aポリペプチドを含むさらなる実施形態は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドを含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号2の40〜472、配列番号2の41〜472、配列番号2の42〜472、配列番号2の43〜472、配列番号2の44〜472、配列番号2の45〜472、配列番号2の46〜472、配列番号2の47〜472、配列番号2の48〜472、配列番号2の49〜472、配列番号2の50〜472、配列番号2の51〜472、配列番号2の52〜472、配列番号2の53〜472、配列番号2の54〜472、配列番号2の55〜472、配列番号2の56〜472、配列番号2の57〜472、配列番号2の58〜472、配列番号2の59〜472、配列番号2の60〜472、配列番号2の56〜465、配列番号2の56〜466、配列番号2の56〜467、配列番号2の56〜468、配列番号2の56〜469、配列番号2の56〜470、配列番号2の56〜471、配列番号2の56〜472、配列番号2の56〜473、配列番号2の56〜474、配列番号2の56〜475、配列番号2の56〜476、配列番号2の56〜477、配列番号2の56〜478、配列番号2の56〜479、配列番号2の56〜480の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0066】
本発明の方法において使用するためのヒトSema6Aポリペプチドを含むさらなる実施形態は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドを含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号2の1〜551、配列番号2の1〜552、配列番号2の1〜553、配列番号2の1〜554、配列番号2の1〜555、配列番号2の1〜556、配列番号2の1〜557、配列番号2の1〜558、配列番号2の1〜559、配列番号2の1〜560、配列番号2の1〜561、配列番号2の1〜562、配列番号2の1〜563、配列番号2の1〜564、配列番号2の1〜565、配列番号2の1〜566、配列番号2の1〜567、配列番号2の1〜568、配列番号2の1〜569、配列番号2の1〜570、配列番号2の1〜571、配列番号2の1〜571、配列番号2の1〜572、配列番号2の1〜573、配列番号2の1〜574、配列番号2の1〜575、配列番号2の1〜576、配列番号2の1〜577、配列番号2の1〜578、配列番号2の1〜579、配列番号2の1〜580、配列番号2の1〜581、配列番号2の1〜582、配列番号2の1〜583、配列番号2の1〜584、配列番号2の1〜585、配列番号2の1〜586、配列番号2の1〜587、配列番号2の1〜588、配列番号2の1〜589、配列番号2の1〜590、配列番号2の1〜591、配列番号2の1〜592、配列番号2の1〜593、配列番号2の1〜594、配列番号2の1〜596、配列番号2の1〜597、配列番号2の1〜598、配列番号2の1〜599、配列番号2の1〜600の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0067】
他の実施形態においては、本発明の方法において使用するためのヒトSema6Aポリペプチドのさらなる実施形態は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドを含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号2の1〜649、配列番号2の2〜649、配列番号2の3〜649、配列番号2の4〜649、配列番号2の5〜649、配列番号2の6〜649、配列番号2の7〜649、配列番号2の8〜649、配列番号2の9〜649、配列番号2の10〜649、配列番号2の11〜649、配列番号2の12〜649、配列番号2の13〜649、配列番号2の14〜649、配列番号2の15〜649、配列番号2の16〜649、配列番号2の17〜649、配列番号2の18〜649、配列番号2の19〜649、配列番号2の20〜649、配列番号2の21〜649、配列番号2の22〜649、配列番号2の23〜649、配列番号2の24〜649、配列番号2の25〜649、配列番号2の26〜649の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0068】
本発明の方法は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドをさらに含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号2の1〜640、配列番号2の1〜641、配列番号2の1〜642、配列番号2の1〜643、配列番号2の1〜644、配列番号2の1〜645、配列番号2の1〜646、配列番号2の1〜647、配列番号2の1〜648、配列番号2の1〜649、配列番号2の1〜650、配列番号2の1〜651、配列番号2の1〜652、配列番号2の1〜653、配列番号2の1〜654、配列番号2の1〜655、配列番号2の1〜656、配列番号2の1〜657、配列番号2の1〜658、配列番号2の1〜659、配列番号2の1〜660、配列番号2の1〜661、配列番号2の1〜662、配列番号2の1〜663、配列番号2の1〜664、配列番号2の1〜665、配列番号2の1〜666、配列番号2の、配列番号2の1〜668、配列番号2の1〜669、配列番号2の1〜670の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0069】
本発明の方法は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドをさらに含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号4の1〜570、配列番号4の1〜571、配列番号4の1〜572、配列番号4の1〜573、配列番号4の1〜574、配列番号4の1〜575、配列番号4の1〜576、配列番号4の1〜577、配列番号4の1〜578、配列番号4の1〜579、配列番号4の1〜580、配列番号4の1〜581、配列番号4の1〜582、配列番号4の1〜583、配列番号4の1〜584、配列番号4の1〜585、配列番号4の1〜586、配列番号4の1〜587、配列番号4の1〜588、配列番号4の1〜589、配列番号4の1〜590の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0070】
本発明の方法は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドをさらに含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号4の1〜630、配列番号4の1〜631、配列番号4の1〜632、配列番号4の1〜634、配列番号4の1〜635、配列番号4の1〜636、配列番号4の1〜637、配列番号4の1〜633、配列番号4の1〜638、配列番号4の1〜639、配列番号4の1〜640、配列番号4の1〜641、配列番号4の1〜642、配列番号4の1〜643、配列番号4の1〜644、配列番号4の1〜645、配列番号4の1〜646、配列番号4の1〜647、配列番号4の1〜648、配列番号4の1〜649、配列番号4の1〜650、配列番号4の1〜651、配列番号4の1〜652、配列番号4の1〜653、配列番号4の1〜654、配列番号4の1〜655、配列番号4の1〜656、配列番号4の1〜657、配列番号4の1〜658、配列番号4の1〜659、配列番号4の1〜660、配列番号4の1〜661、配列番号4の1〜662、配列番号4の1〜663、配列番号4の1〜664、配列番号4の1〜665、配列番号4の1〜666の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0071】
本発明の方法は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドをさらに含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号6の45〜492、配列番号6の46〜492、配列番号6の47〜492、配列番号6の48〜492、配列番号6の49〜492、配列番号6の50〜492、配列番号6の51〜492、配列番号6の52〜492、配列番号6の53〜492、配列番号6の54〜492、配列番号6の55〜492、配列番号6の56〜492、配列番号6の57〜492、配列番号6の58〜492、配列番号6の59〜492、配列番号6の60〜492、配列番号6の61〜492、配列番号6の56〜485、配列番号6の56〜486、配列番号6の56〜487、配列番号6の56〜488、配列番号6の56〜489、配列番号6の56〜490、配列番号6の56〜491、配列番号6の56〜492、配列番号6の56〜493、配列番号6の56〜494、配列番号6の56〜495、配列番号6の56〜496、配列番号6の56〜497、配列番号6の56〜498、配列番号6の56〜599の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0072】
本発明の方法は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドをさらに含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号6の1〜580、配列番号6の1〜581、配列番号6の1〜583、配列番号6の1〜584、配列番号6の1〜585、配列番号6の1〜586、配列番号6の1〜587、配列番号6の1〜588、配列番号6の1〜589、配列番号6の1〜590、配列番号6の1〜591、配列番号6の1〜592、配列番号6の1〜593、配列番号6の1〜594、配列番号6の1〜595、配列番号6の1〜596、配列番号6の1〜597、配列番号6の1〜598、配列番号6の1〜599、配列番号6の1〜600、配列番号6の2〜590、配列番号6の3〜590、配列番号6の4〜590、配列番号6の5〜590、配列番号6の6〜590、配列番号6の7〜590、配列番号6の8〜590、配列番号6の9〜590、配列番号6の10〜590、配列番号6の11〜590、配列番号6の12〜590、配列番号6の13〜590、配列番号6の14〜590、配列番号6の15〜590、配列番号6の16〜590、配列番号6の17〜590、配列番号6の18〜590、配列番号6の19〜590の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0073】
本発明の方法は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドをさらに含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号8の56〜580、配列番号8の56〜581、配列番号8の56〜583、配列番号8の56〜584、配列番号8の56〜585、配列番号8の56〜586、配列番号8の56〜587、配列番号8の56〜588、配列番号8の56〜589、配列番号8の56〜590、配列番号8の56〜591、配列番号8の56〜592、配列番号8の56〜593、配列番号8の56〜594、配列番号8の56〜595、配列番号8の56〜596、配列番号8の56〜597、配列番号8の56〜598、配列番号8の56〜599、配列番号8の56〜600、配列番号8の56〜601、配列番号8の56〜602、配列番号8の56〜603、配列番号8の56〜604、配列番号8の56〜605、配列番号8の45〜595、配列番号8の46〜595、配列番号8の47〜595、配列番号8の48〜595、配列番号8の49〜595、配列番号8の50〜595、配列番号8の51〜595、配列番号8の52〜595、配列番号8の53〜595、配列番号8の54〜595、配列番号8の55〜595の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0074】
本発明の方法は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、本質的に当該アミノ酸配列から成る、または当該アミノ酸配列から成るSema6Aポリペプチドをさらに含み、当該参照アミノ酸配列は、配列番号8の1〜580、配列番号8の1〜581、配列番号8の1〜583、配列番号8の1〜584、配列番号8の1〜585、配列番号8の1〜586、配列番号8の1〜587、配列番号8の1〜588、配列番号8の1〜589、配列番号8の1〜590、配列番号8の1〜591、配列番号8の1〜592、配列番号8の1〜593、配列番号8の1〜594、配列番号8の1〜595、配列番号8の1〜596、配列番号8の1〜597、配列番号8の1〜598、配列番号8の1〜599、配列番号8の1〜600、配列番号8の1〜601、配列番号8の1〜602、配列番号8の1〜603、配列番号8の1〜604、配列番号8の1〜605、配列番号8の2〜595、配列番号8の3〜595、配列番号8の4〜595、配列番号8の5〜595、配列番号8の6〜595、配列番号8の7〜595、配列番号8の8〜595、配列番号8の9〜595、配列番号8の10〜595、配列番号8の11〜595、配列番号8の12〜595、配列番号8の13〜595、配列番号8の14〜595、配列番号8の15〜595、配列番号8の16〜595、配列番号8の17〜595、配列番号8の18〜595、配列番号8の19〜595の、アミノ酸および2つ以上の当該アミノ酸配列の組み合わせから成る群より選択される。
【0075】
ある実施形態においては、本発明のSema6Aポリペプチドは、プレキシン−Aサブファミリーポリペプチドに結合する。例えば、Sema6Aポリペプチドは、プレキシン−A1ポリペプチド、プレキシン−A2ポリペプチド、プレキシン−A3ポリペプチド、またはプレキシン−A4ポリペプチドに結合する。他の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは単離され得る。
【0076】
「参照アミノ酸配列」とは、任意のアミノ酸置換の導入がない特定の配列を意味する。当業者が理解するように、置換がない場合、本発明の「単離ポリペプチド」は、参照アミノ酸配列に同一のアミノ酸配列を含む。
【0077】
本明細書に記載のSema6Aポリペプチドは、置換、挿入、または欠損等の様々な改変を有し得る。ポリペプチドにおいて置換され得る例示的なアミノ酸は、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香性側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。
【0078】
本明細書に記載のポリペプチドおよび参照ポリペプチドに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一である、Sema6Aポリペプチドの対応するフラグメントも考慮される。
【0079】
当該技術分野で既知のとおり、2つのポリペプチド間の「配列同一性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列を第2のポリペプチドの配列と比較することによって決定される。本明細書で説明される際、任意の特定のポリペプチドが、別のポリペプチドに対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%同一であるかどうかは、限定されないが、BESTFITプログラム(Unix(登録商標)用ウィスコンシン配列解析パッケージバージョン8,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI53711)等の当該技術分野において既知の方法およびコンピュータプログラム/ソフトウェアを使用して、決定することができる。BESTFITは、SmithおよびWatermanのAdvances in Applied Mathematics2:482−49(1981)の局所相同性アルゴリズムを使用して、2つの配列間相同性の最適なセグメントを見出す。BESTFITまたは任意の他の配列調整プログラムを使用して、特定の配列が、例えば、本発明に従う参照配列に対して95%同一であるかどうかを決定する場合、パラメータは、当然のことながら、同一性の割合(%)が、参照ポリペプチド配列の全長にわたって計算され、相同性の差が参照配列におけるアミノ酸の総数の最大5%まで許容されるように設定される。
【0080】
本発明の方法において、本発明のSema6Aポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントは、事前に形成したポリペプチドとして直接投与され得る。本明細書の他所で論じられるように、Sema6Aポリペプチドは、細胞によって取り込まれ、そこで発現するポリヌクレオチドとして投与することもできる。例えば、Sema6Aをコード化するポリヌクレオチドは、ウイルスベクターとして投与され得る。
【0081】
Sema6Aポリペプチドを使用する治療方法
本発明の一実施形態は、多発性硬化症等の髄鞘形成不全または脱髄に関連した疾病、疾患、または損傷を、かかる疾病に罹患する動物において治療するための方法であって、有効量のSema6Aポリペプチドまたはそのフラグメント、溶解Sema6Aポリペプチド、またはその変異体、誘導体、または類似体を、動物に投与するステップを含む、本質的に当該ステップから成る、または当該ステップから成る方法を提供する。
【0082】
加えて、本発明は、哺乳動物において、ニューロンの髄鞘形成を促進するための方法であって、治療有効量のSema6Aポリペプチドまたはそのフラグメント、可溶性Sema6Aポリペプチド、およびその変異体、誘導体、または類似体を投与するステップを含む、本質的に当該ステップから成る、または当該ステップから成る方法を対象とする。
【0083】
本発明の追加の態様は、多発性硬化症、ペリツェウス・メルツバッヘル病、またはグロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)等のオリゴデンドロサイト細胞死または分化の欠失に関連した疾病、疾患、または損傷を、かかる疾病に罹患する動物において治療するための方法であって、有効量のSema6Aポリペプチドまたはそのフラグメント、可溶性Sema6Aポリペプチド、およびその変異体、誘導体、または類似体を、投与するステップを含む、本質的に当該ステップから成る、または当該ステップから成る方法を提供する。
【0084】
本発明の別の態様は、哺乳動物において、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、および生存を促進するための方法であって、治療有効量のSema6Aポリペプチドまたはそのフラグメント、可溶性Sema6Aポリペプチド、およびその変異体、誘導体、または類似体を投与するステップを含む、本質的に当該ステップから成る、または当該ステップから成る方法を含む。
【0085】
本発明は、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、および生存を促進するための方法であって、オリゴデンドロサイトを、Sema6Aポリペプチドを含む有効量の組成物と接触させるステップを含む方法を対象とする。本発明は、ニューロンのオリゴデンドロサイト媒介髄鞘形成を促進するための方法であって、ニューロンおよびオリゴデンドロサイトの混合物を、単離Sema6Aポリペプチドを含む有効量の組成物と接触させるステップを含む方法をさらに対象とする。
【0086】
本明細書で開示する治療方法において使用されるSema6Aポリペプチドは、Sema6Aの能力を誘発、促進、活性化、または刺激する治療薬として調製および使用して、オリゴデンドロサイトによるニューロンの髄鞘形成を調節することができる。加えて、本明細書で開示する治療方法において使用されるSema6Aポリペプチドは、Sema6Aの能力を誘発、促進、活性化、または刺激する治療薬として調製および使用して、オリゴデンドロサイト分化、増殖、および生存を調節することができる。
【0087】
本発明のさらなる実施形態は、オリゴデンドロサイトの増殖または生存を誘発して、オリゴデンドロサイトまたはミエリンの破壊を伴う疾病、疾患、または損傷を治療する方法であって、疾病、疾患、または損傷の部位、またはその付近において、軸策伸長の阻害を低減し、髄鞘形成を促進するために十分な量を哺乳動物に投与する方法を含む。
【0088】
別の実施形態においては、本発明は、哺乳動物において、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進するための方法であって、本明細書で開示するSema6Aポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドを含む有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与する方法、または哺乳動物において、ニューロンの髄鞘形成を促進するための方法であって、本明細書で開示するSema6Aポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドを含む有効量の組成物を、その哺乳動物に投与する方法を対象とする。
【0089】
本発明は、哺乳動物において、ミエリンの破壊、あるいは髄鞘形成不全または脱髄に関連した疾病、疾患、または損傷、あるいはオリゴデンドロサイト細胞死または分化の欠失に関連した疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、Sema6Aポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む方法を含む。
【0090】
本発明の方法において、Sema6Aポリペプチドは、患者に対してSema6Aポリペプチドの直接投与によって投与することができる。代替として、Sema6Aポリペプチドは、特定のSema6Aポリペプチドを産生する発現ベクターを介して投与することができる。本発明のある実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、(1)Sema6Aポリペプチドを発現する、核酸、例えばベクターを有する移植可能な宿主細胞を形質転換または遺伝子導入するステップと、(2)形質転換した宿主細胞を、疾病、疾患、または損傷の部位において、哺乳動物に移植するステップと、を含む、治療方法において投与される。例えば、形質転換した宿主細胞は、MSの慢性病巣の部位に移植することができる。本発明の一部の実施形態においては、移植可能な宿主細胞は、哺乳動物から摂取し、Sema6Aポリペプチドをコード化する単離核酸を用いて一時的に培養、形質転換、または遺伝子導入し、それを採取した同一の哺乳動物に移植し戻す。細胞は、それが移植される同一部位から摂取することができるが、そうである必要はない。かかる実施形態は、生体外遺伝子治療法として知られる場合があり、限定された時間で、作用の部位に局在するSema6Aポリペプチドの連続供給を提供することができる。
【0091】
本発明の方法によって治療または緩和され得る疾病または疾患は、哺乳動物ニューロンの髄鞘形成不全または脱髄に関連する疾病、疾患、または損傷を含む。具体的には、ニューロンを取り囲むミエリンが、欠失している、不完全である、適切に形成されていない、または悪化している疾病および疾患を含む。かかる疾病は、多発性硬化症(MS)の再発、緩和、二次進行性、および一次進行性形態を含むMS、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中心髄鞘崩壊症(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、ペリツェウス・メルツバッヘル病(PMZ)、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、ウォラー変性、視神経炎、および横断脊髄炎を含むが、これらに限定されない。
【0092】
本発明の方法によって治療または緩和され得る疾病または疾患は、神経変性疾病または疾患を含む。かかる疾病は、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病、およびパーキンソン病を含むが、これらに限定されない。
【0093】
本発明の方法によって治療または緩和され得る追加の疾病、疾患、または損傷の例は、脊髄損傷、慢性脊髄症または神経根障害、外傷性脳損傷、運動ニューロン疾患、軸索せん断、打撲傷、麻痺、放射線照射後の傷害または化学療法の他の神経学的合併症、脳梗塞、大ラクナ、中規模から大規模の血管閉塞、びまん性白質病変、脳梗塞、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠乏(単独欠損症、AR、バッセン・コーンツヴァイク症候群)、B12、B6(ピリドキシン−ペラグラ)、チアミン、葉酸、ニコチン酸欠乏、マルキアファーヴァ・ビニャミ症候群、異染性白質萎縮症、三叉神経痛、ベル麻痺、または軸索再生、再ミエリン形成、またはオリゴデンドロサイト生存または分化/増殖必要とする任意の神経損傷を含むが、これらに限定されない。
【0094】
融合タンパク質および共役ポリペプチド
本発明の一部の実施形態は、非相同ポリペプチド部分に対して融合されたSema6Aポリペプチドを使用して、融合タンパク質を形成することを伴う。かかる融合タンパク質を使用して、様々な目的、例えば、血中半減期の増加、バイオアベイラビリティの改善、特定の臓器または組織タイプへの生体内標的、組み換え発現効率の改善、宿主細胞分泌の改善、精製の容易化、およびより高い親和力を達成することができる。達成すべき目的に応じて、非相同部分は、不活性であるか、または生物活性であり得る。また生体外または生体内で、本発明のSema6Aポリペプチド部分に対して安定に融合されるか、または切断可能であるかを選択することができる。これらの他の目的を達成するための非相同部分は、当該技術分野において既知である。
【0095】
融合タンパク質の発現に対する代替として、選択した非相同部分を事前に形成し、本発明のSema6Aポリペプチド部分に対して化学的に共役することができる。大部分の場合において、選択した非相同部分は、Sema6Aポリペプチド部分に対して融合されるか、または共役されるかにかかわらず、同様に機能する。したがって、非相同アミノ酸配列に関する以下の論考において、別段の記載がない限り、非相同配列は、ポリペプチドまたは他の組成物に対する融合タンパク質の形態で、または化学共役(共有および非共有結合を含む)としてSema6Aポリペプチド部分と結合できることを理解されたい。例えば、Sema6Aポリペプチドは、検出アッセイにおいて標識として有用な分子、および非相同ポリペプチド、薬剤、放射性核種、または毒素等のエフェクタ分子に対して、組み換えによって融合または共役され得る。例えば、国際公開第WO92/08495号、第WO91/14438号、第WO89/12624号、米国特許第5,314,995号、および欧州特許第396,387号を参照されたい。
【0096】
本明細書に記載の治療方法において使用するためのSema6Aポリペプチドは、共有結合によってSema6AポリペプチドがSema6Aの生物学的機能を阻害することがないようにするために、すなわち、任意の種類の分子の共有結合によって修飾される誘導体を含む。例えば、限定されないが、本発明のSema6Aポリペプチドは、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG付加、ホスフィル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/封鎖基による誘導体化、タンパク分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合等によって修飾され得る。多数の化学修飾のいずれも、限定されないが、特定の化学分解、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成等を含む既知の手技によって実行され得る。加えて、誘導体は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含み得る。
【0097】
本明細書に記載の治療方法において使用するためのSema6Aポリペプチドは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわちペプチド等量式によって、互いに結合したアミノ酸で構成することができ、20遺伝子コード化アミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。Sema6Aポリペプチドは、翻訳後過程等の自然過程によって、または当該技術分野において公知の化学修飾手技によって修飾され得る。かかる修飾は、基本の教科書、およびより詳細な論文、ならびに膨大な研究文献において、十分に説明されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノ酸またはカルボキシル末端、または炭水化物等の部分上を含む、Sema6Aポリペプチドの任意の位置で起こり得る。同一タイプの修飾が、特定のSema6Aポリペプチド内の複数部位において、同一または異なる程度で存在し得ることを理解されたい。また所与のSema6Aポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含有し得る。Sema6Aポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として分岐され得、また分岐を伴ない、また、分岐を伴なわずに環状であり得る。環状、分岐、および分岐環状Sema6Aポリペプチドは、翻訳後自然過程の結果として生じ得るか、または合成方法によって形成され得る。修飾は、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジリノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG付加、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化等のタンパク質に対するアミノ酸のトランスファーRNA媒介性付加、およびユビキチン化を含む(例えば、Proteins−Structure And Molecular Properties,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York 2nd Ed.(1993)、Posttranslational Covalent Modification Of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,New York,pgs.1−12(1983)、Seifter et al.,Meth Enzymol 182:626−646(1990)、Rattan et al.,Ann NY Acad Sci 663:48−62(1992)を参照されたい)。
【0098】
本発明は、Sema6Aポリペプチド融合を含む、本質的に当該融合から成る、または当該融合から成る融合タンパク質も提供する。ある実施形態においては、Sema6A融合ポリペプチドは、プレキシン−A2またはプレキシン−A4に結合する。本発明のある実施形態においては、Sema6Aポリペプチド、例えば、SemaドメインおよびPSIドメインを含むSema6Aポリペプチド、または全体細胞外ドメイン(配列番号2のアミノ酸1〜649に対応する)は、非相同ポリペプチド部分に融合され、Sema6A融合ポリペプチドを形成する。
【0099】
薬理活性のポリペプチドは、急速な生体内クリアランスを呈し得、体内で治療上有効な濃度を達成するために大量摂取を必要とする結果となる。加えて、約60kDaより小さいポリペプチドは、糸球体ろ過を経る可能性があり、腎臓毒性に至る場合がある。ポリペプチドフラグメントの融合または共役を採用して、かかる腎臓毒性のリスクを低減または回避することができる。様々な非相同アミノ酸配列、すなわち、治療ポリペプチドの生体内安定性、すなわち、血清半減期を増加させるためのポリペプチド部分または「担体」が知られている。
【0100】
その長い半減期、広範な生体内分散、および酵素または免疫機能の欠失のために、本質的に全長のヒト血清アルブミン(HSA)、またはHSAフラグメントが、非相同部分として一般に使用される。Yeh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1904−08(1992)およびSyed et al.,Blood 89:3243−52(1997)において教示される方法および材料の適用により、HSAを使用して、Sema6A部分に基づいて薬理活性を表示する一方で、有意に高い、例えば、10倍から100倍高い生体内安定性を示すSema6A融合ポリペプチドを形成することができる。HSAのC末端は、Sema6A部分のN末端に融合することができる。HSAは自然に分泌されるタンパク質であるため、融合タンパク質が真核、例えば、哺乳動物の発現系において産生される場合、HSAシグナル配列を利用して、細胞培地へのSema6A融合タンパク質の分泌を得ることができる。
【0101】
シグナル配列は、小胞体の膜を越えてタンパク質の輸送を開始するアミノ酸配列をコード化するポリヌクレオチドである。免疫融合を構成するために有用なシグナル配列は、抗体軽鎖シグナル配列、例えば、抗体14.18(Gillies et al.,J.Immunol.Meth.125:191−202(1989))、および抗体重鎖シグナル配列、例えば、MOPC141抗体重鎖シグナル配列(Sakano et al.,Nature 286:5774(1980))を含む。代替として、他のシグナル配列を使用することができる。例えば、WatsonのNucl.Acid Res.12:5145(1984)を参照されたい。シグナルペプチドは、通常、シグナルペプチダーゼによって、小胞体のルーメンにおいて切断する。これは、Fc領域およびSema6A部分を含有する免疫融合の分泌を生じる。
【0102】
一部の実施形態においては、DNA配列は、分泌カセットとSema6Aポリペプチドとの間のタンパク質分解的切断部位をコード化し得る。かかる切断部位は、例えば、コード化した融合タンパク質のタンパク質分解的切断部位を提供し得、したがって、Fcドメインを標的タンパク質から分離する。有用なタンパク質分解的切断部位は、トリプシン、プラスミン、トロンビン、Xa因子、またはエンテロキナーゼK等のタンパク質分解酵素によって認識されるアミノ酸配列を含む。
【0103】
分泌カセットは、複製可能な発現ベクターに組み込むことができる。有用なベクターは、直鎖核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド等を含む。例示的な発現ベクターはpdCであり、そこでは、免疫融合DNAの転写が、ヒトサイトメガロウイルスのエンハンサおよびプロモータの制御下で配置される。例えば、Lo et al.,Biochim.Biophys.Acta 1088:712(1991)、およびLo et al.,Protein Engineering 11:495−500(1998)を参照されたい。適切な宿主細胞は、Sema6Aポリペプチドをコード化するDNAで形質転換または遺伝子導入することができ、Sema6Aポリペプチドの発現および分泌に使用することができる。使用される宿主細胞は、典型的には、不死のハイブリドーマ細胞、ミエローマ細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、Hela細胞、およびCOS細胞を含む。
【0104】
一実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、ヒンジおよびFc領域、すなわち、Ig重鎖定常領域のC末端部分に融合される。Sema6A−Fc融合の潜在的な利点は、溶解性、生体内安定性、および多価性、例えば、二量化を含む。使用されるFc領域は、IgA、IgD、またはIgG Fc領域であり得る(ヒンジ−C2−C3)。代替として、IgEまたはIgM Fc領域であり得る(ヒンジ−C2−C3−C4)。例えば、IgG Fc領域またはIgG Fc領域等のIgG Fc領域が一般に使用される。一実施形態においては、IgG Fcを化学的に定義するパパイン切断部位の上流でヒンジ領域において開始する配列(すなわち、残基216であり、Kabatシステムに従って、重鎖定常領域の第1の残基を114とする)、または他の免疫グロブリンの類似部位を融合に使用する。融合を行う正確な部位は重要ではない。特定の部位がよく知られており、分子の生物活性、分泌、または結合特性を最適化するために選択することができる。Fc融合をコード化するDNAを構成および発現するための材料および方法は、当該技術分野において周知であり、過度の実験を行わずにSema6A融合を得るために適用することができる。本発明の一部の実施形態は、Caponらの米国特許第5,428,130号および第5,565,335号に記載されるような融合タンパク質を採用する。
【0105】
完全に正常な野生型Fc領域は、本発明の方法において使用されるFc融合タンパク質に不要かつ望ましくない場合があるエフェクタ機能を示す。したがって、特定の結合部位は、典型的には、分泌カセットの構成中に、Fc領域から削除される。例えば、軽鎖との同時発現は不要であるため、重鎖結合タンパク質、Bip(Hendershot et al.,Immunol.Today 8:111−14(1987))の結合部位は、IgEのFc領域のCH2ドメインから削除され、この部位が免疫融合の効率的な分泌を干渉しないようにする。IgMにおいて存在するような膜貫通領域配列も一般的に削除される。
【0106】
IgG Fc領域が最も頻繁に使用される。代替として、免疫グロブリンγの他のサブクラス(γ−2、γ−3、およびγ−4)のFc領域を分泌カセットにおいて使用することができる。免疫グロブリンγ−1のIgG Fc領域は、概して、分泌カセットにおいて使用され、ヒンジ領域、C2領域、およびC3領域の少なくとも一部を含む。一部の実施形態においては、免疫グロブリンγ−1のFc領域は、C2削除したFcであり、ヒンジ領域およびC3領域の一部を含むが、C2領域は含まない。C2削除したFcは、Gillies et al.,Hum.Antibod.Hybridomas 1:47(1990)によって説明されている。一部の実施形態においては、IgA、IgD、IgE、またはIgMのうちの1つのFc領域を使用する。
【0107】
Sema6A−Fc融合タンパク質は、幾つかの異なる構成で構築することができる。1つの構成において、Sema6A部分のC末端は、Fcヒンジ部分のN末端に直接融合される。わずかに異なる構成において、短鎖ポリペプチド、例えば、2〜10アミノ酸は、Sema6A部分のN末端とFc部分のC末端との間の融合に組み込まれる。かかるリンカーは、立体配座の柔軟性を提供し、一部の状況において、生物活性を改善し得る。ヒンジ領域の十分な部分がFc部分に維持される場合、Sema6A−Fc融合は二量化し、したがって、二価分子を形成する。モノマーFc融合の相同集団は、単一特異的な二価二量体を産出する。それぞれ異なる特異性を有する2つのモノマーFc融合の混合物は、二重特異性二価二量体を産出する。
【0108】
対応するアミノ反応基およびチオール反応基の多数の架橋剤のいずれをも使用して、Sema6Aポリペプチドを血清アルブミンまたは他の異種ポリペプチドに結合させることができる。適切なリンカーの例は、チオール反応マレイミドを挿入するアミン反応架橋剤、例えば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS、およびGMBSを含む。他の適切なリンカーは、チオール反応ハロ酢酸基、例えば、SBAP、SIA、SIABを挿入する。メルカプト基と反応させて縮小可能な結合を産生するための保護または非保護チオールを提供するリンカーは、SPDP、SMPT、SATA、およびSATPを含む。かかる試薬は市販されている(例えば、Pierce Chemicals)。
【0109】
共役は、Sema6ポリペプチドのN末端または血清アルブミン上のチオール部分を伴う必要はない。例えば、Sema6A−アルブミン融合は、遺伝子工学技術を使用して得ることができ、Sema6A部分は、そのN末端、C末端、または両方において血清アルブミン遺伝子に融合される。
【0110】
Sema6Aポリペプチドは、非相同ペプチドに融合して、Sema6A部分の精製または確認を促進することができる。例えば、ヒスチジン標識をSema6Aポリペプチドに融合し、市販のクロマトグラフ培地を使用して、精製を促進することができる。
【0111】
本発明の一部の実施形態においては、Sema6A融合構成を使用して、細菌中のSema6A部分の産生を強化する。かかる構成において、通常、高レベルで発現および/または分泌される細菌タンパク質を、Sema6AポリペプチドのN末端融合パートナーとして採用する。例えば、Smith et al.,Gene 67:31(1988)、Hopp et al.,Biotechnology 6:1204(1988)、La Vallie et al.,Biotechnology 11:187(1993)を参照されたい。
【0112】
適切な融合パートナーのアミノおよびカルボキシ末端において、Sema6A部分を融合することにより、Sema6Aポリペプチドの二価または四価形態を得ることができる。例えば、Sema6A部分をIg部分のアミノおよびカルボキシ末端と融合し、2つのSema6A部分を含有する二価モノマーポリペプチドを産生することができる。かかる2つのモノマーを二量化する際に、Ig部分によって、四価形態のSema6Aタンパク質が得られる。かかる多価形態を使用して、標的に対する高い結合親和性を達成することができる。Sema6Aの多価形態は、Sema6A部分を縦一列に配置することによって取得し、コンカテマーを形成することもでき、それは、単独で採用するか、IgまたはHSA等の融合パートナーに融合することができる。
【0113】
ある実施形態においては、本発明の方法において使用するためのSema6Aポリペプチドは、標的部分をさらに含む。標的部分は、体の特定の部分、例えば、脳またはその分室に局在性を導くタンパク質またはペプチドを含む。ある実施形態においては、本発明の方法において使用するためのSema6Aポリペプチドは、脳標的部分に付着する、または融合される。脳標的部分は、共有結合されるか(例えば、直接翻訳融合、または任意で切断可能な直接またはスペーサ分子を通じた化学結合)、または非共有結合される(例えば、アビジン、ビオチン、タンパク質A、IgG等の逆相互作用を通して)。他の実施形態においては、その本発明の方法において使用するためのSema6Aポリペプチドは、もう1つの脳標的部分に取り付けられる。追加の実施形態においては、脳標的部分は、本発明の方法において使用するための複数のSema6Aポリペプチドに取り付けられる。
【0114】
Sema6Aポリペプチドに関連する脳標的部分は、かかるSema6Aポリペプチドの脳送達を強化する。タンパク質または治療薬に融合される場合に、血液脳障壁(BBB)を通してタンパク質または治療薬を送達する、多数のポリペプチドが説明されている。非限定例は、単一ドメイン抗体FC5(Abulrob et al.,J.Neurochem.95,1201−1214(2005))、mAB 83−14、ヒトインスリン受容体に対する単クローン抗体(Pardridge et al.,Pharmacol.Res.12,807−816(1995))、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に対するB2、B6およびB8ペプチド結合(Xia et al.,J.Virol.74,11359−11366(2000))、トランスフェリン受容体に対するOX26単クローン抗体(Pardridge et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.259,66−70(1991))、および米国特許第6,306,365号の配列番号1〜18を含む。上記参照文献の内容は、それら全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0115】
強化されたSema6A組成物の脳送達は、当該技術分野において十分に確立された多数の手段によって測定される。例えば、脳標的部分に結合した放射活性物質で標識したSema6Aポリペプチドを動物に投与する、脳局在化を決定する、および局在化を脳標的部分に関連しない等量の放射活性物質で標識したSema6Aポリペプチドと比較する。強化した標的を決定する他の手段は、上記の参照文献において説明される。
【0116】
共役ポリマー(ポリペプチド以外)
本発明の一部の実施形態は、Sema6Aポリペプチドを伴い、1つ以上のポリマーがSema6Aポリペプチドに共役(共有結合)される。かかる共役に適切なポリマーの例は、ポリペプチド(上述)、糖ポリマー、およびポリアルキレングリコール鎖を含む。典型的には(必ずしもそうではないが)、溶解性、安定性、またはバイオアベイラビリティのうちの1つ以上を改善する目的で、ポリマーをSema6Aポリペプチドに共役する。
【0117】
Sema6Aポリペプチドに対する共役に一般に使用されるポリマーのクラスは、ポリアルキレングリコールである。ポリエチレングリコール(PEG)は、最も頻繁に使用される。PEG部分、例えば、1、2、3、4、または5PEGポリマーは、それぞれSema6Aポリペプチドに共役され、Sema6Aポリペプチド単独と比較して、血清半減期を増大させることができる。PEG部分は、非抗原的であり本質的に生物不活性である。本発明の実践において使用されるPEG部分は、分岐または非分岐であり得る。
【0118】
Sema6Aポリペプチドに付着したPEG部分の数および個別のPEG鎖の分子量は異なり得る。一般に、ポリマーの分子量が高いほど、ポリペプチドに付着したポリマー鎖が少ない。通常、Sema6Aポリペプチドに付着した総ポリマー質量は、20kDaから40kDaである。したがって、1つのポリマー鎖が付着する場合、鎖の分子量は、概して20〜40kDaである。2つの鎖が付着する場合、各鎖の分子量は、概して10〜20kDaである。3つの鎖が付着する場合、分子量は、概して7〜14kDaである。
【0119】
例えば、PEG等のポリマーは、ポリペプチド上の任意の適切な露出反応基を通して、Sema6Aポリペプチドに結合することができる。露出反応基は、例えば、内部リジン残基のN末端アミノ基またはエプシロンアミノ基、または両方であり得る。活性ポリマーは、Sema6Aポリペプチド上の任意の遊離アミノ基において反応および共有結合することができる。Sema6Aポリペプチドの遊離カルボキシル基、適切に活性したカルボニル基、ヒドロキシル、グアニジル、イミダゾール、酸化カーボハイドレート部分、およびメルカプト基(入手可能な場合)を、ポリマー付着のための反応基として使用することもできる。
【0120】
共役反応において、典型的には、ポリペプチドのモル当たり約1.0から約10モルの活性ポリマーが、ポリペプチド濃度に応じて採用される。通常、選択した比率は、反応を最大にする一方で、Sema6Aポリペプチドの望ましい薬理活性を損ない得る副作用(非特異性である場合が多い)を最小にするバランスを示す。好ましくは、Sema6Aポリペプチドの少なくとも50%の生物活性(証明されるように、例えば、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において既知のアッセイのうちのいずれかにおいて)が維持され、最も好ましくは、約100%が維持される。
【0121】
ポリマーは、従来の化学反応を使用して、Sema6Aポリペプチドに共役することができる。例えば、ポリアルキレングリコール部分は、Sema6Aポリペプチドのリジンエプシロンアミノ基に結合することができる。リジン側鎖への結合は、PEGコハク酸スクシニミジル(SS−PEG)およびプロピオン酸スクシニミジル(SPA−PEG)等のNヒドロキシルスクシニミド(NHS)活性エステルを用いて行うことができる。適切なポリアルキレングリコール部分は、例えば、カルボキシメチル−NHSおよびノルロイシン−NHS、SCを含む。これらの試薬は、商業的に入手可能である。追加のアミン反応PEGリンカーは、スクシニミジル部分と置換することができる。これらは、例えば、イソチオシアン酸、ニトロフェニルカーボネート(PNP)、エポキシド、炭酸ベンゾトリアゾール、SC−PEG、トレシレート、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾール、および炭酸PNPを含む。通常、条件を最適化して、反応の選択性および程度を最大化する。反応条件のかかる最適化は、当該技術分野における通常技術の範囲内である。
【0122】
PEG付加は、当該技術分野において既知のPEG付加反応のいずれかによって実行することができる。例えば、Focus on Growth Factors 3:4−10(1992)、および欧州特許出願第0154316号および第0401384号を参照されたい。PEG付加は、反応性ポリエチレングリコール分子(または類似する反応水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を使用して実行することもできる。
【0123】
アシル化によるPEG付加は、概して、ポリエチレングリコールの活性エステル誘導体を反応させるステップを含む。任意の反応性PEG分子は、PEG付加に採用することができる。N−ヒドロキシスクシニミド(NHS)にエステル化したPEGは、頻繁に使用される活性PEGエステルである。本明細書で使用される「アシル化」は、限定されないが、治療タンパク質とPEG等の水溶性ポリマーとの間の以下の種類の結合を含む:アミド、カルバミン酸、ウレタン等。例えば、Bioconjugate Chem.5:133−140,1994を参照されたい。反応パラメータは、概して、Sema6Aポリペプチドを損傷または不活性化する温度、溶媒、およびpH状態を回避するように選択される。
【0124】
一般に、接続結合は、アミドであり、および典型的には、結果として生じる産物の少なくとも95%は、モノ−、ジ−、またはトリ−PEG付加される。しかしながら、より高い段階のPEG付加を有する一部の種は、使用される特異的反応条件に基づいた量で形成され得る。任意で、精製したPEG付加種は、例えば、透析、塩析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、疎水性交換クロマトグラフィ、および電気泳動法を含む従来の精製方法によって、混合物、特に未反応の種から分離される。
【0125】
アルキル化によるPEG付加は、一般に、還元剤の存在下で、PEGの末端アルデヒド誘導体をSema6Aポリペプチドと反応させるステップを含む。加えて、反応条件を操作して、実質的にSema6AポリペプチドのN末端アミノ基のみにおけるPEG付加、すなわちモノ−PEG付加タンパク質のみに対する好適な条件を提供する。モノ−PEG付加またはポリ−PEG付加のいずれかの場合において、PEG基は、典型的には、−C2−NH−基を介してタンパク質に付着する。特に−C2−基を参照して、この種類の結合は、「アルキル」結合として知られる。
【0126】
N末端標的モノ−PEG付加産生物を産生するための還元アルキル化による誘導体化は、誘導体化に使用可能な異なるタイプの一次アミノ基(リジン対N末端)を利用する。反応は、リジン残基のエプシロン−アミノ基とタンパク質のN末端アミノ基とのpKa差の利用を可能にするpHで行う。かかる選択的誘導体化によって、アルデヒド等の反応基を含有する水溶性ポリマーのタンパク質への付着を制御し、ポリマーとの共役は、主にタンパク質のN末端で生じ、リジン側鎖アミノ基等の他の反応基の有意な修飾は生じない。
【0127】
アシル化およびアルキル化アプローチの両方において使用されるポリマー分子は、水溶性ポリマーの中から選択される。選択されたポリマーは、典型的には、アシル化の場合は活性エステルまたはアルキル化の場合はアルデヒド等の単一反応基を有するように修飾し、本方法において提供されるように重合の程度を制御できるようにする。例示的な反応性PEGアルデヒドは耐水性のポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドであるか、またはそのモノC1〜C10アルコキシまたはアリールオキシ誘導体である(例えば、Harrisらの米国特許第5,252,714号を参照されたい)。ポリマーは分岐であるか、または非分岐であり得る。アシル化反応の場合、選択されるポリマーは、典型的には、単一反応性エステル基を有する。還元アルキル化の場合、選択されるポリマーは、典型的には、単一反応性アルデヒド基を有する。一般に、水溶性ポリマーは、通常、哺乳動物の組み換え発現系によってより便宜的に形成されるため、自然発生するグリコシル残基から選択されない。
【0128】
PEG付加Sema6Aポリペプチドを調製するための方法は、概して、(a)分子が1つ以上のPEG基に付着する状況下で、Sema6Aポリペプチドをポリエチレングリコール(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体等)と反応させるステップと、(b)反応産物を取得するステップと、を含む。一般に、アシル化反応のための最適反応条件は、公知のパラメータおよび望ましい結果に基づいて、個別に決定される。例えば、タンパク質に対するPEGの比率が大きいほど、概して、ポリPEG付加産物の割合(%)が大きくなる。
【0129】
モノポリマー/Sema6Aポリペプチドの実質的に相同の集団を産生するための還元アルキル化は、概して、(a)還元アルキル化条件下、ポリペプチドのN末端アミノ基のペン−ニット選択的修飾に適切なpHにおいて、Sema6Aタンパク質またはポリペプチドを反応性PEG分子と反応させるステップと、(b)反応産物を取得するステップと、を含む。
【0130】
モノポリマー/Sema6Aポリペプチドの実質的に相同の集団の場合、還元アルキル化反応条件は、ポリペプチドのN末端に対する水溶性ポリマー部分の選択的付着を可能にする条件である。かかる反応条件は、概して、リジン側鎖アミノ基とN末端アミノ基間のpKa差を提供する。本発明の目的のために、pHは、概して、3〜9、典型的には3〜6の範囲である。
【0131】
Sema6Aポリペプチドは、例えば、タンパク質分解によって後に放出され得る部分等の標識を含み得る。したがって、リジン部分は、最初にリジンおよびN末端の両方と反応するTraut試薬(Pierce)等の低分子量リンカーで修飾したHis標識を反応させ、次いでHis標識を放出することによって、選択的に修飾することができる。その後、ポリペプチドは、マレイン酸、ビニルスルホン基、ハロアセテート基、または遊離あるいは保護SH等のチオール反応性頭部基を含有するPEGで選択的に修飾され得る遊離SH基を含有する。
【0132】
Traut試薬は、PEG付着のための特定部位を設定する任意のリンカーと置換することができる。例えば、Traut試薬は、SPDP、SMPT、SATA、またはSATP(Pierce)と置換することができる。同様に、タンパク質を、マレイミド(例えば、SMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS、またはGMBS)、ハロアセテート基(SBAP、SIA、SIAB)、またはビニルスルホン基を挿入するアミン反応性リンカーと反応させ、結果として生じる産物を、遊離SHを含有するPEGと反応させることができる。
【0133】
一部の実施形態においては、ポリアルキレングリコール部分は、Sema6Aポリペプチドのシステイン基に結合される。結合は、例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基礎、またはチオール基を使用して達成することができる。
【0134】
任意で、Sema6Aポリペプチドは、不安定結合を通してポリエチレン−グリコール部分に共役される。不安定結合は、例えば、生化学的加水分解、タンパク質分解、またはメルカプト基切断において切断することができる。例えば、結合は、生体内(生理的)条件下で切断することができる。
【0135】
反応基がN末端におけるαアミノ基上にある場合、反応は、一般に約pH5〜8、例えば、pH5、6、7、または8において、生物活性のある材料を不活性ポリマーと反応させるために使用される任意の適切な方法で起こり得る。一般に、過程は、活性ポリマーを調製するステップと、その後にタンパク質を活性ポリマーと反応させて、製剤に適切なタンパク質を産生するステップと、を含む。
【0136】
ベクター
Sema6Aポリペプチドをコード化する核酸を含むベクターも、本発明の方法において使用することができる。かかる核酸が操作可能に結合されるベクターおよび発現制御配列の選択は、望ましい機能特性、例えば、タンパク質発現、および形質転換される宿主細胞に依存する。
【0137】
操作可能に結合されるコード化配列の発現を調節するために有用な発現制御要素は、当該技術分野において既知である。例には、誘発可能プロモータ、構造性プロモータ、分泌シグナル、および他の調節要素が含まれるが、これらに限定されない。誘発可能プロモータが使用される場合は、例えば、栄養状態の変化、または温度の変化によって、宿主細胞培地中で制御することができる。
【0138】
ベクターは、原核性レプリコン、すなわち、細菌宿主細胞において組み換えDNA分子の自己複製および維持を染色体外に導く能力を有するDNA配列を含み得る。かかるレプリコンは、当該技術分野において公知である。加えて、原核性レプリコンを含むベクターは、発現が薬物耐性等の検出可能なマーカーを授与する遺伝子も含み得る。細菌薬物耐性遺伝子の例は、アンピリシンまたはテトラサイクリンに対する耐性を授与するものである。
【0139】
原核性レプリコンを含むベクターは、細菌宿主細胞において、コード化遺伝子配列の発現を導くための原核性またはバクテリオファージプロモータも含み得る。細菌宿主に適合するプロモータ配列は、典型的には、発現対象のDNAセグメントを挿入するために便宜的な制限酵素認識部位を含有するプラスミドベクターにおいて提供される。かかるプラスミドベクターの例は、pUC8、pUC9、pBR322、およびpBR329(BioRad)、pPLおよびpKK223(Pharmacia)である。任意の適切な原核性宿主細胞を使用して、本発明の方法で使用されるタンパク質をコード化する組み換えDNA分子を発現することができる。
【0140】
この発明の目的のために、多数の発現ベクター系が採用され得る。例えば、あるクラスのベクターは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTV、またはMOMLV)またはSV40ウイルス等の動物ウイルスに由来するDNA要素を利用する。他は、内部リボソーム結合部位を有する多シストロン系の使用を伴う。加えて、DNAをクロモソームに統合した細胞は、遺伝子導入した宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって、選択することができる。マーカーは、栄養素要求株宿主に対する原栄養体、殺生剤耐性(例えば、抗生物質)、または銅等の重金属に対する耐性を提供し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現対象のDNA配列に直接結合されるか、または同時形質転換によって同一細胞に導入される。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(ネオ)遺伝子は、選択可能なマーカー遺伝子の例である(Southern et al.,J.Mol.Anal.Genet.1:327−341(1982)を参照されたい)。mRNAの最適合成のために、追加要素が必要とされる場合もある。これらの要素は、シグナル配列、接合シグナル、ならびに転写プロモータ、エンハンサ、および終止シグナルを含み得る。
【0141】
一実施形態においては、NEOSPLA(米国特許第6,159,730号)と称されるBiogen IDEC,Inc.の特許発現ベクターを使用することができる。このベクターは、サイトメガロウイルスプロモータ/エンハンサ、マウスβグロビン主要プロモータ、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエクソン1およびエクソン2、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子およびリーダー配列を含有する。このベクターは、CHO細胞における遺伝子導入時、次いで培地およびメトトレキサート増幅を含有するG418における選択時に、極めて高レベルの発現を生じることが見出されている。当然のことながら、本発明において、真核細胞中で発現を導出できる、いかなる発現ベクターをも使用することができる。適切なベクターの例は、プラスミドpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAX1、およびpZeoSV2(Invitrogen,San Diego,CAから入手可能)、およびプラスミドpCI(Promega,Madison,WIから入手可能)を含むが、これらに限定されない。追加真核細胞発現ベクターは、当該技術分野において既知であり、市販されている。典型的には、かかるベクターは、望ましいDNAセグメントを挿入するための便宜的な制限部位を含有する。例示的なベクターは、pSVLおよびpKSV−10(Pharmacia)、pBPV−1、pml2d(International Biotechnologies)、pTDT1(ATCC31255)、レトロウイルス発現ベクターpMIGおよびpLL3.7、アデノウイルスシャトルベクターpDC315、およびAAVベクターを含む。他の例示的なベクター系は、例えば、米国特許第6,413,777号において開示される。
【0142】
一般に、高レベルのポリペプチドを適切に発現するものについて、多数の形質転換した細胞をスクリーニングすることは、例えば、ロボットシステムによって実行され得るルーチン実験である。
【0143】
哺乳動物宿主細胞発現に対して頻繁に使用される調節配列は、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を導くウイルス要素、例えば、レトロウイルスLTRに由来するプロモータおよびエンハンサ、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモータ/エンハンサ等)、Simianウイルス40(SV40)(SV40プロモータ/エンハンサ等)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモータ(AdmlP))、ポリオーマ、および天然免疫グロブリンおよびアクチンプロモータ等の強力な哺乳動物プロモータ等を含む。ウイルス調節要素およびその配列に関するさらなる説明については、例えば、Stinskiの米国特許第5,168,062号、Bellの米国特許第4,510,245号、およびSchaffnerの米国特許第4,968,615号を参照されたい。
【0144】
組み換え発現ベクターは、宿主細胞(例えば、複製起点)および選択可能なマーカー遺伝子において、ベクターの複製を調節する配列を担持し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞の選択を容易にする(例えば、Axelの米国特許第4,399,216号、第4,634,665号、および第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入される宿主細胞上で、G418、ヒグロマイシンまたはメトトレキサート等の薬物に対する耐性を授与する。頻繁に使用される選択可能なマーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(dhfr−宿主細胞において、メトトレキサート選択/増幅で使用するため)、およびネオ遺伝子(G418選択用)を含む。
【0145】
Sema6Aポリペプチドをコード化するベクターは、適切な宿主細胞の形質転換に使用することができる。形質転換は、任意の適切な方法によって行うことができる。外因性DNAを哺乳動物細胞に導入するための方法は、当該技術分野において既知であり、デキストラン媒介性形質転換、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性形質転換、原形質融合、電気穿孔、リポソーム内へのポリヌクレオチドのカプセル化、および原子核へのDNAの直接顕微注入を含む。加えて、核酸分子は、ウイルスベクターによって、哺乳動物細胞に導入され得る。
【0146】
宿主細胞の形質転換は、採用されるベクターおよび宿主細胞に適した従来の方法によって達成することができる。原核性宿主細胞の形質転換の場合は、電気穿孔および塩治療方法を採用することができる(Cohen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:2110−14(1972)を参照されたい)。脊椎動物細胞の形質転換の場合は、電気穿孔、陽イオン脂質、または塩治療方法を採用することができる。例えば、Graham et al.,Virology 52:456−467(1973)、Wigler et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 76:1373−76(1979)を参照されたい。
【0147】
タンパク質発現に使用される宿主細胞系は、哺乳動物起源であり得、当業者であれば、そこで発現する望ましい遺伝子産物に最適な特定の宿主細胞系を選択的に決定することができると考えられる。例示的な宿主細胞系は、NSO、SP2細胞、新生ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣系、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓系)、COS(SV40 T抗原を有するCVIの誘導体)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓系)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、および293(ヒト腎臓)を含むが、これらに限定されない。宿主細胞系は、典型的には、商業サービス、American Tissue Culture Collection、または既刊文献から入手可能である。
【0148】
産生細胞系のポリペプチドの発現は、既知の手法を使用して強化することができる。例えば、グルタミンシンテターゼ(GS)システムは、ある条件下で、発現を強化するために一般に使用される。例えば、欧州特許第0216846号、第0256055号、および第0323997号、および欧州特許出願第89303964.4号を参照されたい。
【0149】
宿主細胞
本発明の方法において使用するためのSema6Aポリペプチドを発現するための宿主細胞は、原核性または真核性であり得る。例示的な真核宿主細胞は、酵母および哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ATCC登録番号CCL61)、NIHスイスマウス胚細胞NIH−3T3(ATCC登録番号CRL1658)、および新生ハムスター腎臓細胞(BHK)を含むが、これらに限定されない。他の有用な真核宿主細胞は、昆虫細胞および植物細胞を含む。例示的な原核宿主細胞は、大腸菌およびストレプトミセスを含む。
【0150】
遺伝子治療法
Sema6Aポリペプチドは、オリゴデンドロサイトの生存、増殖、および/または分化を促進すること、またはニューロンの髄鞘形成を促進することが治療上有効である、神経系疾病、疾患、または損傷の治療に対する遺伝子治療法アプローチを使用して、例えば、ヒト患者等の哺乳動物において、生体内で産生することができる。これは、適切な発現制御配列に操作可能に結合する、適切なSema6Aポリペプチドコード化核酸の投与を伴う。一般に、かかる配列は、ウイルスベクターに組み込まれる。かかる遺伝子治療法に適切なウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、エンテロウイルスベクター、ペスチウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、EBウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターを含む。ウイルスベクターは、複製不全ウイルスベクターであり得る。そのE1遺伝子またはE3遺伝子に欠損を有するアデノウイルスベクターが、典型的に使用される。アデノウイルスベクターを使用する場合、ベクターは、通常、選択可能なマーカー遺伝子を有しない。
【0151】
薬理組成物
本発明の方法において使用されるSema6Aポリペプチドは、ヒトを含む哺乳動物に投与するための医薬組成物に形成することができる。本発明の方法において使用される医薬組成物は、例えば、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の一部グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン等の塩、または電解質、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂等を含む、医薬上許容し得る担体を含む。
【0152】
本発明の方法で使用される組成物は、任意の適切な方法で、例えば、非経口的、脳室内、経口的、吸入スプレーにより、局所的、経直腸的、経鼻腔的、頬側、経膣的、または埋め込まれた容器を介して投与され得る。本明細書で使用される「非経口的」という用語は、皮下、経静脈、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、髄板内、および頭蓋内注射または注入法を含む。前述のように、本発明の方法で使用されるSema6Aポリペプチドは、神経系において作用し、オリゴデンドロサイトの生存、増殖、および分化、ならびにニューロンの髄鞘形成を促進する。したがって、本発明の方法において、Sema6Aポリペプチドは、それらが血液脳関門を横断するように投与される。この横断は、Sema6Aポリペプチド分子自体が本来有する物理化学特性、医薬製剤中の他の構成要素、または血液脳関門を破るための針、カニューレ、または手術器具等の機械的装置の使用に起因し得る。Sema6Aポリペプチドが、本来、血液脳関門を横断しない分子である場合、例えば、横断を促進する部分に融合する場合、適切な投与経路は、例えば、髄腔内または頭蓋内であり、例えば、MSの慢性病巣への直接投与である。Sema6Aポリペプチドが、本来、血液脳関門を横断する分子である場合、投与経路は、以下に記載の様々な経路のうちの1つ以上により得る。
【0153】
本発明の方法で使用される組成物の無菌注入形態は、水性または油性の懸濁液であり得る。かかる懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を使用して、当該技術分野において既知の手法に従って調製され得る。無菌注入製剤または懸濁液は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注入溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール中の懸濁液であり得る。採用され得る許容される媒体および溶媒には、水、リンガー溶液、および等浸透圧の塩化ナトリウム溶液が含まれる。加えて、無菌の固定油が、溶媒または懸濁培地として従来採用される。この目的において、任意の無菌性固定油を採用し得、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体等の脂肪酸は、オリーブオイルまたはキャスターオイル等の医薬的に許容し得る天然油と同様に、特にそれらのポリオキシエチル化版での注入剤の調製に有用である。かかる油溶液または懸濁液は、カルボキシメチルセルロース等の長鎖アルコール希釈剤または分散剤、あるいは乳化剤および懸濁液を含む医薬的に許容し得る剤形で一般に使用される、同様の分散剤も含有し得る。Tweens、Spans等の他の一般に使用される界面活性剤、および医薬的に許容される固体、液体、または他の剤形の製造に一般に使用される他の乳化剤またはバイオアベイラビリティエンハンサを、製剤の目的で使用することもできる。
【0154】
非経口製剤は、単回ボーラス注射、後に維持量が加えられる、注入または負荷ボーラス用量であり得る。かかる組成物は、特定の固定または可変間隔、例えば、1日に1回、または「必要に応じて」投与され得る。
【0155】
本発明の方法で使用されるある種の医薬組成物は、例えば、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含む、許容し得る剤形で経口投与され得る。ある種の医薬組成物は、鼻エアロゾルまたは吸入によって投与することもできる。かかる組成物は、生理食塩水で、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを強化するための吸収プロモータ、および/または他の従来の可溶化または分散剤を用いた溶液として調製され得る。
【0156】
担体材料と組み合わせて単一剤形を産生できるSema6Aポリペプチドの量は、治療される宿主、使用されるポリペプチドの種類、および特定の投与モードに応じて異なる。組成物は、単回投与、複数投与、または確定した期間をかけて注入投与することができる。投与量レジメンは、最適で望ましい反応(例えば、治療または予防反応)を提供するように調整することもできる。
【0157】
本発明の方法は、「治療有効量」または「予防有効量」のSema6Aポリペプチドを使用する。かかる治療または予防有効量は、個人の疾病状態、年齢、性別、および体重等の要因にしたがって異なり得る。治療または予防有効量は、任意の毒性または有害な影響よりも、治療的に有益な効果が上回る量でもある。
【0158】
任意の特定患者に対する特定の投与量および治療レジメンは、使用される特定のSema6Aポリペプチド、患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、および食事、投与時間、排出率、薬物の組み合わせ、および治療対象の特定の疾病の重度を含む、様々な要因に依存する。医療従事者によるかかる要因の判断は、当該技術分野における通常技術の範囲内である。量は、治療対象の個別の患者、投与経路、製剤の種類、使用される化合物の特徴、疾病の重度、および望ましい効果にも依存する。使用される量は、当該技術分野において公知の薬理および薬物動態の原理によって決定することができる。
【0159】
本発明の方法において、Sema6Aポリペプチドは、概して、大脳心室内または髄腔内的に、神経系、例えば、MSの慢性病巣に直接投与される。本発明の方法に従って投与するための組成物は、1日に体重1kg当たり0.001〜10mgのSema6Aポリペプチドが投与されるように製剤することができる。本発明の、いくつかの実施形態においては、投与量は、1日に体重1kg当たり0.01〜1.0mgである。いくつかの実施形態においては、投与量は、1日に体重1kg当たり0.001〜0.5mgである。ある実施形態においては、投与量は、1日に体重1kg当たり5mg〜100mgである。本発明のさらなる実施形態においては、投与量は、1日に体重1kg当たり50mg〜500mgである。本発明は、1日に体重1kg当たり100mg〜1gの投与量をも含む。本発明の方法において使用される投与量の非限定例は、1日に体重1kg当たり0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、または1000mgから成る群より選択される。本発明において使用される投与量は、1日に体重1kg当たり1g〜5gであり得る。上述の範囲の中間にある用量も、本発明の範囲内であることが意図される。かかる投与量を、毎日、1日おき、1週間に1回、または実験による分析によって決定される任意の他のスケジュールに従って、対象に投与することができる。例示的な治療は、長期間、例えば、少なくとも6ヶ月をかけて、複数回投与での投与を含む。追加の例示的な治療レジメンは、2週間毎に1回、または1ヶ月に1回、あるいは3〜6ヶ月毎に1回の投与を含む。例示的な投与量スケジュールは、限定されないが、連日1〜10mg/kgまたは15mg/kg、1日おきに30mg/kg、1週間に1回60mg/kgの投与を含む。
【0160】
ある実施形態においては、Sema6Aポリペプチドをコード化する核酸分子を用いて対象を治療することができる。核酸の用量は、患者当たり約10ng〜1g、100ng〜100mg、1μg〜10mg、または30〜300μgDNAの範囲である。伝染性ウイルスベクターの用量は、1用量当たり10〜100ビリオン以上の範囲で変化する。
【0161】
補足的な活性化合物を、本発明の方法において使用される組成物に組み込むこともできる。例えば、Sema6Aポリペプチドまたは融合タンパク質を、1つ以上の追加治療薬と同時形成および/または同時投与することができる。
【0162】
本発明は、選択した標的組織へのSema6Aポリペプチドの任意の適切な送達方法を包含し、それには、水溶液のボーラス注入または制御放出システムが含まれる。制御放出インプラントの使用は、反復注射の必要性を低減する。
【0163】
本発明の方法において使用されるSema6Aポリペプチドは、脳に直接注入することができる。化合物を直接脳に注入するための様々なインプラントが知られており、神経系疾患に罹患するヒト患者への治療化合物の送達に有効である。これらには、ポンプ、定位固定的に埋め込まれた一時的間質カテーテル、永久間質カテーテルインプラント、および手術的に埋め込まれた生体分解性インプラントを使用しての、脳への長期注入が含まれる。例えば、Gill et al.,上記、Scharfen et al.,“High Activity Iodine−125 Interstitial Implant For Gliomas,”Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.24(4):583−591(1992)、Gaspar et al.,“Permanent 125I Implants for Recurrent Malignant Gliomas,”Int.J.Radiation Oncology Biol.Phys.43(5):977−982(1999);chapter 66,pages 577−580、Gildenberg et al.,Textbook of Stereotactic and Functional Neurosurgery,McGraw−Hill(1998)におけるBellezza et al.,“Stereotactic Interstitial Brachytherapy,”、およびBrem et al.,“The Safety of Interstitial Chemotherapy with BCNU−Loaded Polymer Followed by Radiation Therapy in the Treatment of Newly Diagnosed Malignant Gliomas:Phase I Trial,”J.Neuro−Oncology 26:111−23(1995)を参照されたい。
【0164】
組成物は、化合物に対する適切な送達または支持システムとして機能する、生体適合担体材料に分散したSema6Aポリペプチドも含み得る。持続放出担体の適切な例は、座薬またはカプセル等の造形品形態の半透性ポリマーマトリクスを含む。埋め込み可能、または微小カプセル持続放出マトリクスは、ポリラクチド(米国特許第3,773,319号、欧州特許第58,481号)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタミン酸のコポリマー(Sidman et al.,Biopolymers 22:547−56(1985))、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.,J.Biomed.Mater.Res.15:167−277(1981)、LangerのChem.Tech.12:98−105(1982))またはポリ−D−(−)−3ヒドロキシブチル酸(欧州特許第133,988号)を含む。
【0165】
本発明の一部の実施形態においては、Sema6Aポリペプチドは、直接注入によって、患者の脳の適切な領域に投与される。例えば、Gill et al.,“Direct brain infusion of glial cell line−derived neurotrophic factor in Parkinson disease,”Nature Med.9:589−95(2003)を参照されたい。代替手法を使用することができ、本発明に従って、Sema6Aポリペプチドを投与するために適用することができる。例えば、カテーテルまたはインプラントの定位固定配置は、Riechert−Mundinger単位、およびZD(Zamorano−Dujovny)多目的ローカライズ単位を使用して達成することができる。2mmスライス厚の120mlのオムニパーク、350mgヨウ素/mlを注入して造影コンピュータ断層撮影(CT)スキャンは、3次元の多平面治療計画を可能にする(STP,Fischer,Freiburg,Germany)。この機器は、明確な標的確認のためのCTおよびMRI標的情報を踏まえて、磁気共鳴映像法研究に基づく計画を可能にする。
【0166】
GE CTスキャナ(General Electric Company,Milwaukee,WI)とともに使用するために改変したLeksell定位固定システム(Downs Surgical,Inc.,Decatur,GA)、ならびにBrown−Roberts−Wells(BRW)定位固定システム(Radionics,Burlington,MA)をこの目的で使用することができる。したがって、インプラントの朝に、BRW定位固定フレームのアニュラベースリングを患者の頭蓋骨に取り付けることができる。連続CT断面を、底板に留めたカーボン竿ローカライザフレームを用いて、(標的組織)領域を通して、3mm間隔で取得することができる。コンピュータ化した治療計画プログラムは、カーボン竿画像のCT座標を使用して、VAX11/780コンピュータ(Digital Equipment Corporation,Maynard,Mass)上で実行し、CTスペースとBRWスペースとの間をマップすることができる。
【0167】
本明細書に記載される脱髄または髄鞘形成不全疾患の治療方法は、典型的には、ヒトにおいて使用する前に、望ましい治療または予防活性に関して生体外で試験された後、許容し得る動物モデルにおいて生体内で試験される。形質転換動物を含む適切な動物モデルは、当該技術分野において通常の技術を有する者に公知である。例えば、Sema6Aポリペプチドの分化および生存効果を示す生体外アッセイは、本明細書に記載されている。軸索またはオリゴデンドロサイト分化の髄鞘形成に関するSema6Aポリペプチドの効果は、実施例において説明されるように、生体外で試験することができる。最後に、生体内試験は、Sema6Aポリペプチドを発現する遺伝子移植マウスを形成することによって、またはSema6Aポリペプチドをモデルのマウスまたはラットに投与することによって行うことができる。
【0168】
神経変性病の診断またはモニタリング
本発明の一部の実施形態は、(a)診断またはモニタリングされる対象から、組織、または血液もしくはCSF等の生物学的液体試料等の標本を取得する、(b)標本においてSema6Aポリペプチドのレベルを測定する、および(c)Sema6Aポリペプチドのレベルを対比試験片と比較することによって、対象における神経系疾患または状態を診断またはモニタリングするための方法を対象とする。
【0169】
「診断する」という用語は、個人を特定の疾病または状態を有すると確認することを意味する。「モニタリングする」という用語は、特定の状態または現象を常に、および/または定期的にチェックすることを意味する。一実施形態においては、神経変性病をモニタリングするための方法は、神経変性病の治療中に、患者のモニタリングの一部として、幾つかの時点において、一定間隔で生物学的液体試料を取得するステップを含む。別の実施形態においては、神経変性病をモニタリングするための方法は、MSの治療中に、患者のモニタリングの一部として、幾つかの時点において、一定間隔で生物学的液体試料を取得するステップを含む。
【0170】
一実施形態においては、診断またはモニタリングされる疾病または状態は多発性硬化症(MS)である。他の実施形態においては、疾病または状態は、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中心髄鞘崩壊症(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、ペリツェウス・メルツバッヘル病(PMZ)、ウォラー変性、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、放射線照射後の損傷、化学療法の神経学的合併症、脳梗塞、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠乏、ビタミンE単独欠損症、AR、バッセン・コーンツヴァイク症候群、マルキアファーヴァ・ビニャミ症候群、異染性白質萎縮症、三叉神経痛、およびベル麻痺から成る群より選択され得る。
【0171】
生物学的液体試料は、血液、尿、および脳脊髄液(CSF)を含むが、これらに限定されない。生物学的液体試料が含まれ得る方法は、組織生検、静脈穿刺、尿採取および脊椎穿刺を含むが、これらに限定されない。一実施形態においては、生物学的液体試料は、CSFまたは血液である。
【0172】
組織は、上皮、筋肉組織、結合組織、または神経組織を含むが、これらに限定されない。一実施形態においては、組織は上皮、例えば、皮膚組織の一部である。別の実施形態においては、組織またはCSFまたは血液等の生物学的流体から収集した樹状細胞を使用して、Sema6A発現を検出する。
【0173】
生物学的液体試料を対象から取得する。一部の実施形態においては、対象は脊椎動物である。脊椎動物は、ヒト、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、爬虫類、魚類、両生類、および鳥類、爬虫類、および魚類の卵を含むが、これらに限定されない。一実施形態においては、対象はヒトである。別の実施形態においては、対象は、MS、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中心髄鞘崩壊症(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、ペリツェウス・メルツバッヘル病(PMZ)、グロボイド細胞白質ジストロフィー(クラッベ病)、ウォラー変性、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、放射線照射後の損傷、化学療法の神経学的合併症、脳梗塞、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠乏、ビタミンE単独欠損症、AR、バッセン・コルンツヴァイク症候群、マルキアファーヴァ・ビニャミ病、異染性白質ジストロフィー、三叉神経痛、およびベル麻痺から成る一覧より選択される神経系疾患を有するか、または有することが疑われるヒトである。特定の一実施形態においては、対象は、しびれ、衰弱、視力障害、平衡感覚障害、めまい、尿意切迫、疲労、およびうつ病から成る群より選択した少なくとも1つの状態を最近患ったMS患者である。本明細書で使用される「最近」とは、3、5、7、10、14または21日以内であり得る。
【0174】
標本におけるSema6A発現のレベルは、疾病状態、例えば、疾病または状態の重篤度、疾病にかかる対象の傾向、対象の予後、または疾病に対する治療の有効性の指標となり得る。
【0175】
本発明は、対象から採取した標本におけるSema6Aポリペプチドの存在を検出する方法をさらに提供する。タンパク質またはmRNAを検出するための、当該技術分野において既知の任意の方法を使用することができる。かかる方法は、クマシーブルー染色、免疫拡散、免疫電気泳動法、免疫化学的方法、バインダー−リガンドアッセイ、免疫組織化学的方法、凝集、および補体測定を含むが、これらに限定されない[Basic and Clinical Immunology,217−262,Sites and Terr,eds.,Appleton & Lange,Norwalk,CT(1991)は、参照することにより組み込まれる]。Sema6A mRNAを検出する方法は、当該技術分野において公知である。Tuan Rocky,Recombinant Protein Protocols:Detection and Isolation(Method in Molecular Biology)(1st ed.Humana Press,PA 1997)。かかる方法の非限定例は、ノーザンブロット、ヌクレアーゼ保護アッセイ、原位置ハイブリダイゼーション、またはRT−PCRである。
【0176】
多数の競合および非競合タンパク質結合免疫アッセイが、当該技術分野において公知である。かかるアッセイにおいて採用される抗体は、例えば、凝集試験に使用されるように、非標識であり得るか、または多様なアッセイ方法で使用するために標識化され得る。使用可能な標識は、放射免疫測定(RIA)、酵素免疫学的検定、例えば、酵素免疫測定(ELISA)、蛍光免疫測定、ウェスタンブロット解析等で使用するための放射性核種、酵素、蛍光剤、化学ルミネセンス、酵素基質、または共同因子、酵素阻害剤、粒子、染料等を含む。
【0177】
対象における神経系疾患の診断またはモニタリングにおいて、標本中のSema6Aポリペプチドのレベルを、対比試験片中のSema6Aポリペプチドのレベルと比較することができる。適切な対比試験片は、神経学的に正常な個人から得た組織または生物学的液体試料を含むが、これらに限定されない。一実施形態においては、対比試験片は、神経変性病を患っていない対象から得る。別の実施形態においては、対比試験片は、MSを患っていない対象から得る。加えて、アルブミン等の対象によって産生される既知のタンパク質は、血清または総タンパク質から測定する場合、内部標準または対照として作用し得る。
【0178】
診断キット
診断キットもまた本発明によって考慮される。かかるキットによって、神経変性病の検出、診断、またはモニタリングが可能になる。これらの診断キットによって適合されるかかる単一検査アプローチは、個人において神経変性病を診断するために必要な時間を削減する、および/または疾病の進行および/または疾病治療の効果をモニタリングされている際、患者の生物学的液体試料において分化発現したタンパク質を検出するために必要な時間を削減する。
【0179】
本発明の一実施形態は、抗体または本明細書に記載のSema6Aポリペプチドに対して特異的に結合する抗原結合フラグメント、および検出可能な標識を使用して、患者において神経変性病の検出、診断、またはモニタリングするための診断キットを対象とする。別の実施形態においては、本発明は、抗体または本明細書に記載のSema6Aポリペプチドに対して特異的に結合する抗原結合フラグメント、および検出可能な標識を使用して、患者においてMSを検出、診断、またはモニタリングするための診断キットを対象とする。
【0180】
一部の実施形態においては、抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、ブドウ糖酸化酵素等の検出に有用な酵素で標識化される。検出可能な酵素で標識化される実施形態においては、抗体は、酵素が使用して検出可能な反応産物を産生する追加試薬を添加することによって検出される。例えば、過酸化水素およびジアミノベンジジンとともにホースラディッシュペルオキシダーゼを使用する。抗体は、ビオチンで標識化され、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接測定を通して検出され得る。抗体は、二次レポーターによって認識される既定のポリペプチドエピトープでも標識化され得る(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープ標識)。
【0181】
本発明によって考慮されるキットは、ヒト、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、爬虫類、魚類、両生類、および鳥類、爬虫類、および魚類の卵を含むが、これらに限定されない、脊椎動物において、神経変性病を検出、診断、またはモニタリングすることを意図する。
【0182】
本発明の診断キットは、本発明に従う望ましい免疫測定を行うために必要な必須の試薬の一部またはすべてを含む。診断キットは、必要な試薬を保持する1つ以上の容器の組み合わせとして、市販のパッケージ化された形態で提供され得る。かかるキットは、幾つかの従来キットの構成要素と組み合わせて、本発明の抗体を含み得る。従来キットの構成要素は、当業者には容易に明らかとなり、例えば、HarlowおよびLane;Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.1988(その全体は参照することによって本明細書に組み込まれる)を含む、多数の発行物において開示されている。従来キットの構成要素は、例えば、マイクロタイタープレート、アッセイ混合物のpHを維持するためのバッファ(これらに限定されないが、Tris、HEPES、リン酸、炭酸等)、ペルオキシダーゼ共役した抗マウスIgG(または一次抗体が派生した動物に対する任意の抗IgG)等の共役二次抗体、安定剤、殺生物剤、例えば、血清アルブミン等の不活性タンパク質等の要素、および他の標準試薬を含み得る。
【0183】
本発明の診断キットは、自宅、ならびにクリニック、診療所、または研究所において使用するために適切なキットも含み得る。家庭用試験キットの例は、例えば、米国特許第5,602,040号において見出され、これは、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0184】
患者におけるタンパク質の存在を検出するという文脈において、本明細書で使用される「検出」という用語は、タンパク質量または患者においてタンパク質量を発現する能力の決定、疾病の考えられる結果および回復の見込みに関する予後の推測、状態の状況の測定としての一定期間のタンパク質レベルのモニタリング、および例えば、神経変性病を有する者等の患者に対する好ましい治療レジメンを決定するためのタンパク質レベルのモニタリングを含むことが意図される。
【実施例】
【0185】
実施例1
Sema6Aは、オリゴデンドロサイト生物学に関与する
オリゴデンドロサイトは、オリゴデンドロサイト前駆細胞(NG2を発現する)から幾つかの発達段階を通して成熟し、ミエリン化前オリゴデンドロサイト(O1およびO4を発現する)に分化して、最後にミエリン化オリゴデンドロサイト(O1、O4、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)および抗プロテオリピドタンパク質(PLP)を発現する)に成熟する。したがって、NG2、O1、O4、MBP、およびPLPマーカーの存在および不在をモニタリングすることによって、所与の細胞の発達段階を決定し、オリゴデンドロサイト生物学におけるSema6Aポリペプチドの役割を評価することができる。オリゴデンドロサイト転写調節因子−2(Olig−2)は、オリゴデンドロサイト系統において発現することが知られ、したがって、オリゴデンドロサイトを検出するためのマーカーとして使用される。Yokoo et al.,Amer.J.of Path.164:1717−1725(2004)を参照されたい。オリゴデンドロサイト生物学の一般評論については、例えば、BaumannおよびPham−DinhのPhysiol.Rev.81:871−927(2001)、Bras et al.,Int.J.Dev.Biol.49:209−220(2005)を参照されたい。
【0186】
O4およびMBPに対する単クローン抗体は、Chemiconから得た。PLPに対する単クローン抗体(クローンAA3、1:10)は、Pr.C.Luberzkiからの寄贈であった。Yamamura et al.,J.Neurochem.57(5):1671−80(1991)を参照されたい。星状細胞前駆細胞(APC)に対する単クローン抗体は、VWRインターナショナル(Fontenay Sous Bois,France)から得た。CNPaseに対する抗体は、Sigmaから得た。NG2(AB5320)に対する抗体は、Chemiconから得た。ヒトSema6Aに対する抗体は、R&D Systems(Minneapolis,MN)から得た。Na2+およびパラノジンに対する抗体は、Sigmaから得た。抗myc抗体(9E10,1:100)は、Santa Cruz Biotechnology(SC−40)から得た。
【0187】
Sema6A mRNAは、オリゴデンドロサイトにおいて発現する
Sema6A mRNAの発現は、原位置ハイブリダイゼーションによって、P1およびP15マウスの新鮮な凍結脳(矢状断面)または脊髄(冠状断面)において解析した。Swissマウス(Janvier,Le Genest Saint Isle,France)をイソフルレンフォレン(Abbott)の吸入によって麻酔し、頭部を切除した。脳および視神経をイソペンタン(−50℃)中で即時凍結し、ハイブリダイゼーション前に−80℃で保存した。組織断面を4%PFA中で10分間後置し、pH7.4のPBS中で洗浄し、プロテイナーゼK(10μg/ml;Invitrogen,Carlsbad,CA)で3〜5分間処理し、4%PFA中で5分間後置し、PBS中で洗浄、アセチル化して、PBS1% Triton X−100中で洗浄した。スライドをハイブリダイゼーションバッファ(50%ホルムアミド、5×SSC、1×デンハルト、250μg/ml酵母tRNA、および500μg/mlニシン精液、pH7.4)中、室温で2時間インキュベートした後、ジゴキシゲニン標識Sema6Aリボプローブ(0.5ng/μl)を用いて、組織断面を72℃で一晩ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション後、2×SSC中72℃で2時間断面を洗浄し、10%正常ヤギ血清(NGS)を含有する0.1M Tris、pH7.5、0.15M Nacl(B1)中、室温で1時間ブロックした。ブロッキング後、1%NGSを含有するB1中、アルカリホスファターゼ(1:5000;Roche Diagnostics)で共役した抗ジゴキシゲニン抗体を用いて、室温で一晩スライドをインキュベートした。追加洗浄後、塩化ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)(337.5μg/ml)および5−ブロモ−4−クロロ−3−リン酸インドリル(BCIP)(175μg/ml)(Roche Diagnostics)を使用して、アルカリホスファターゼ活性を検出した。Mowiol(Calbiochem/Merck,Carlstadt,Germany)に断面を載置した。図3に示されるように、Sema6A mRNAは、出生後の発達中、オリゴデンドロサイトによって、P15マウスCNS白質において広範に発現する。
【0188】
Sema6Aタンパク質はオリゴデンドロサイトにおいて発現する
P15マウス脳断面(4%PFA固定脳から得た)上のオリゴデンドロサイトにおいてSema6Aタンパク質の発現は、Sema6AおよびPLP、Sema6AおよびAPC(オリゴデンドロサイト用のマーカー)、ならびにSema6AおよびCNPase(オリゴデンドロサイトおよびSchwann細胞)の二重免疫染色によって確認した。0.2%ゼラチン(Prolabo,Fontenay−sous−Bois,France)および0.25%Triton X−100(PBS−G−T)を含有するPBS中、室温(RT)で1時間断面をブロックした後、一次抗体、すなわち、抗マウスSema6A抗体、抗PLP抗体、抗APC抗体、および抗CNPase抗体とともに、室温で一晩インキュベートした。次いで、4%PFAを用いて、培養物を室温で10分間固定、洗浄した後、飽和させ、10%NGSおよび0.2%Triton−X100を含有するPBSバッファ中で30分間透過させた。二次抗体、すなわち、Sema6Aに対するCY3共役抗体およびPLP、APC、およびCNPaseに対するFITC共役抗体を、10%NGSおよび0.1%Triton X−100を含有するPBS中で1時間希釈し、洗浄した後、二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。洗浄した後、培養物をMowiol(Calbiochem/Merck,Carlstadt,Germany)に載置する。
【0189】
二重免疫染色は、細胞を発現するすべてのSema6Aが、白質においてAPC、CNPase、またはPLPも発現したことを示した(データ図示せず)。しかしながら、PLP、APC、およびCNPaseを発現する一部の細胞は、Sema6Aを発現しない。したがって、Sema6Aタンパク質は、オリゴデンドロサイト系統の細胞のサブセット、またはオリゴデンドロサイトにおいて、特定の正確な成熟段階で発現するように思われる。したがって、オリゴデンドロサイトマーカー、PLP、APC、またはCNPaseと結合されるSema6Aから得た共免疫標識は、生体内オリゴデンドロサイト細胞によってSema6Aの発現を確認した。
【0190】
同一のP15脳断面(小脳、皮質)上で、オリゴデンドログリアル固有のタンパク質、例えば、PLPを用いる免疫染色を、Sema6A原位置ハイブリダイゼーションと組み合わせた。標準原位置ハイブリダイゼーションを、プロテイナーゼK消化(10μg/ml)を2分に短縮したこと以外は、上で示したように実行した。Sema6Aを用いた原位置ハイブリダイゼーションの後、断面をPBS−T中で洗浄し、PBS−G−T中室温で1時間ブロックし、抗PLP抗体(クローンAA3)を用いて室温で一晩インキュベートした後、ビオチニル化ウサギ抗ラット抗体(1:200;Dako,Glostrup,Denmark)およびHRP共役ストレプトアビジン(1:400;Amersham)中でインキュベートした。ジアミノベンジジン反応(茶色の沈殿物)を用いて断面を発達させた。すべての細胞発現Sema6A転写は紫色で現れ、またPLP発現を示す茶色の沈殿物によって取り囲まれた(データ図示せず)。
【0191】
Sema6Aタンパク質の発現は、発達上調節される
P15、P30、およびP45マウスから得た前脳冠状断面上のSema6AおよびAPCの発現も、上述のような抗マウスSema6Aおよび抗APC抗体を使用して、二重免疫染色によって解析した。強力なAPC発現が、すべての異なる年齢で観察されたが、APC/Sema6A細胞の最大同時標識がP15において認められ、オリゴデンドロサイト(APC細胞)の65%がSema6Aを発現した(データ図示せず)。白質においてSema6Aも発現するAPC陽性細胞の割合は、P30において14%に減少し、P45において8%まで低下した(データ図示せず)。これは、Sema6A発現が発達上調節され、髄鞘形成のピーク中、P15において最大に達することを示した。
【0192】
実施例2
オリゴデンドロサイト分化の様々な段階におけるSema6A発現
Sema6Aの発現は、精製したオリゴデンドロサイト培養物においても生体外で示された。P0からP5マウスの皮質脳半球を解剖し、10%ウシ血清で補完したDMEMから成る培地に移した。培地において70μmメッシュナイロンのふるいにかけることよって、組織を分離した。細胞懸濁液を、ポリオルニチンでコーティングした100mm直径のプラスチック組織培養皿に注いだ。細胞層上で培地を優しく注入することによって、オリゴデンドロサイト前駆細胞を選択的に分離した。次いで、コーティングしていないプラスチック培養皿において、採取した細胞を2つの連続する事前プレーティングに12時間以上かけて、残存する星状細胞および小膠細胞の付着を可能にした。非付着細胞および付着のゆるい細胞(オリゴデンドロサイト)を、60mmプラスチック培養皿において二次培養した。抗マウスSema6A抗体および抗NG2(オリゴデンドロサイト前駆細胞に対するマーカー)または抗O4(オリゴデンドロサイト前段階から発現したオリゴデンドロサイト系統のマーカー)および抗MBP抗体(成熟オリゴデンドロサイトに対するマーカー)を用いて、培養物を染色した。CY3共役抗体を二次抗体として使用し、Sema6A発現およびNG2、O4、およびMBPに対するFITC共役発現を可視化した。生体外で24時間後、異なる種類の細胞がNG2を発現し、極めて分化した形態学を有する一部の細胞は、FITC標識化(NG2)されたに過ぎず、およびしたがってSema6Aに対して陰性であり、他のより分化した(より多くの過程を経た)細胞は、細胞過程ではなく、細胞体においてNG2および低レベルのSema6Aを発現した(データ図示せず)。生体外で48時間後、O4陽性細胞は、Sema6Aを高く発現した(データ図示せず)。生体外で72時間後、MBP陽性細胞は、Sema6Aを高く発現した(データ図示せず)。これは、Sema6Aが、分化した(O4およびMBP)オリゴデンドロサイトにおいてより高く発現したことを示す(生体内で観察されるとおり)。
【0193】
実施例3
Sema6A−ノックアウトマウスは、ミエリン化した軸索の減少を呈する
Sema6Aノックアウトマウスを生成するために、内部リボソーム侵入部位(IRES)によって分離された、カセットコード化CD4膜貫通領域−β−ガラクトシダーゼ−ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(TM−β−geo)およびヒト胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)を、Leighton et al.,Nature,410:174−179に記載されるように、Sema6Aの第17イントロンに挿入した。アミノ酸623までのSema6Aタンパク質の残存する(およびしたがって、膜貫通および細胞質ドメインを欠失する)N末端部分は、β−ガラクトシダーゼに融合し、小胞体に捕捉した。
【0194】
髄鞘形成の遅延を解析するために、Sema6A不全マウスにおけるランヴィエ絞輪を研究した。ランヴィエ絞輪は、結節において特徴的な発現および機能を有する、幾つかの十分に同定されたタンパク質を発現する。パラノジン等のランヴィエ絞輪の形成に関与するタンパク質に対して生じた抗体を使用して、タンパク質の発現を検出した。結節は、十分に組織化された構造であり、ミエリン化される軸索とオリゴデンドロサイトとの間で密接に相互作用する。結節上のタンパク質の特徴的な発現により、異なる領域を可視化することができる。すなわち、Na2+電圧依存性チャネルは、結節の中央領域を可視化し、パラノジンは、結節の中央領域を取り囲む2つのドメインを可視化し、これらは、パラノジン/Na2+チャネルクラスタと称される。Na2+チャネルおよびパラノジンの発現は、抗Na2+チャネルおよびパラノジン抗体を使用して、P16マウスの視神経における免疫組織化学によって可視化した(データ図示せず)。免疫組織化学は、Sema6A不全マウスにおいて、パラノジン/Na2+チャネルクラスタ(−40.54%;n=3)の数の著しい減少を示した(データ表示せず)。この結果は、P16Sema6A不全マウスが、野生型よりもミエリン化した軸索が少ないことを示唆する。
【0195】
Sema6Aノックアウトマウスは、オリゴデンドロサイトにおいて低いPLP発現を呈する
Sema6A不全マウスにおいてオリゴデンドロサイトの分化または増殖が正常であったかどうかを決定するため、3つの主要な軸索路である、前交連(AC)、脳梁(CC)、および視神経(ON)を、非放射性原位置ハイブリダイゼーションによって標識化し、PLP発現細胞の数を定量した。ACおよびCCに関して、3つの年齢、すなわち、P16、P30、およびP45(それぞれ3匹の動物)を解析し、ONに関してP16を解析した。CCにおいて、いかなる年齢でもPLPの発現に有意な変化は認められなかった(データ図示せず)。しかしながら、PLP発現細胞の数は、野生型同腹子と比較して、Sema−/−マウス(−43%)において、P16で減少した(図4)。P16におけるこの減少は、PLP発現細胞の数の主要な減少(−60%)によって説明されるが、ACの表面の30%減少も伴う。ACのP30において、減少はそれほど顕著ではなく(−20%)、図4に示されるように、成人において正常に戻る。同様に、P16視神経におけるPLPの発現も、同様の減少(−26%)を示した(データ図示せず)。しかしながら、ACにおいて、オリゴデンドロサイト系統に属する転写調節因子2(Olig2)発現細胞の数に有意な変化は認められなかった(データ図示せず)。かかる結果は、生体内のオリゴデンドロサイトの分化、または軸索路を移行および移植させる能力のいずれかにおけるSema6Aの考えられる役割を示唆する。
【0196】
Sema6A不全オリゴデンドロサイトは、分化の遅延を呈する
オリゴデンドロサイトは、Sema6A−/−新生マウスから精製し、Bernard et al.,J.Neurosc.Res.65:439−445,2001に記載される方法によって分化するそれらの能力を解析した。簡潔に述べると、P0〜P10マウスまたはラットの脳半球全体を、リン酸バッファ生理食塩水中で解剖し、ペニシリン(50単位/ml)、ストレプトマイシン(50μg/ml)(Invitrogen15140)、ウシ血清(10%)(Gibco 16030074)、5ng/ml PDGFBB(Sigma P3201)、および5ng/ml bFGF(Sigma F0291)で補完したDMEM(Invitrogen 31966047)から成る培地に移した。培地において、組織を70μmメッシュナイロン(BD Biosciences)のふるいにかけることによって解離を行った。細胞懸濁液を、ポリオルニチンでコーティングした100mm直径のプラスチック組織培養皿(Sigma P3655)に注いだ。培養物は、95%空気−5%COで均衡した水飽和インキュベータ中、37℃でインキュベートした。培地は、播種後4日目に取り替え、その後は1週間に2回取り替えた。8〜10日後に、細胞層上で培地を優しく注入することによって、オリゴデンドロサイト前駆細胞を選択的に分離した。次いで、コーティングしていないプラスチック培養皿において、採取した細胞を2つの連続する事前プレーティングに12時間以上かけて、残存する星状細胞および小膠細胞の付着を可能にした。非付着細胞および付着のゆるい細胞を、0.5%ウシ胎仔血清(FCS)、10μMインスリン、100μg/mlトランスフェリン、0.5μg/mlアルブミン、2μMプロゲステロン、100μMプトレッシン、40ng/mlトリヨードチロニン、40ng/mlL−チロキシン、40nM d−ビオチンおよび100nMヒドロコルチゾンを含有する化学的に定義した培地中、ポリオルニチンでコーティングした60mmプラスチック培養皿において二次培養した。追加マイトジェンの不在下において、かかる二次培養物は、10日後に、90%Gal−C陽性細胞を含有する、略均質の細胞集団を生じる。Besnard et al.,Int.J.Dev.Neurosci.7(4):401−409,1989を参照されたい。かかる細胞をオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)段階において維持し、処理前の早期分化を回避するため、PDGFAA(10ng/ml)(ラット)またはPDGFBB(10ng/ml)およびbFGF(ラットの場合10ng/mlおよびマウスの場合20ng/ml)を培地に添加した。マイトジェン離脱後、OPC分化は24〜72時間以内に生じる。Bogler et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87(16):6368−6372,1990;Durand et al.,EMBO J.16(2):306−317,1997を参照されたい。R&Dシステムから購入したSema6A−Fcタンパク質も化学的に定義した培地に添加した。
【0197】
オリゴデンドロサイトの成熟段階は、培養したオリゴデンドロサイトの形態的な複雑性によって、例えば、細胞のフラクタル次元(FD)を測定することによって測定することができる。同上。図5は、生体外で24時間および48時間後に、Sema6A+/−およびSema6A−/−マウスから得た精製オリゴデンドロサイト(位相差顕微鏡によって可視化するか、または抗O4抗体で標識化した)のFD定量を示す。これは、48時間後にSema6A+/−オリゴデンドロサイトの大部分が1.25のFDを有するが、大部分のSema6A−/−オリゴデンドロサイトは、1.05〜1.15(n=3)のみのFDを有することを示した(図5A)。生体外で24時間後のSema6A+/−およびSema6A−/−オリゴデンドロサイトのFDは、48時間後のSema6A−/−オリゴデンドロサイトのFDに類似する(データ表示せず)。かかる結果は、オリゴデンドロサイト分化が、Sema6A−/−マウスにおいて遅延することを示す。
【0198】
72時間後、培地において、抗O4抗体(分化しているオリゴデンドロサイトに対するマーカー)および抗MBP抗体(分化したオリゴデンドロサイトに対するマーカー)を用いてオリゴデンドロサイトを免疫染色し、オリゴデンドロサイト分化を測定した。二次抗体として、O4に対するFITC共役抗体およびMBPに対するCY3共役抗体を使用した。顕微鏡下で、ランダムに選択した領域を解析した。72時間後、Sema6A−/−におけるO4+/MBP+細胞の数は、野生型のそれと比較して、40.09%減少した(データ図示せず)。生体外データは、オリゴデンドロサイト分化がオリゴデンドロサイトを欠失するSema6Aにおいて遅延するという結論を支持する。
【0199】
実施例4
Sema6A−Fcは、生体外で髄鞘形成を促進する
後根神経節(DRG)ニューロンおよびオリゴデンドロサイトの共培養をSema6A−Fcで処理し、免疫組織化学およびウェスタンブロットにより髄鞘形成を試験することによって、髄鞘形成におけるSema6Aの役割を生体外で調べた。かかる研究の場合、DRGニューロンおよびオリゴデンドロサイトの初代培養を最初に生成することが必要であった。
【0200】
SDラットE14〜E17胎児後根神経節を、ポリ−L−リジン(100μg/ml)でコーティングしたカバースリップ上に置いた。B27(Invitrogen 17504)で補完したNeurobasal培地(Invitrogen 21103049)において、それらを2週間成長させた。増殖しているグリア細胞を採取するため、培養物をフルオロデオキシウリジン(20μM)で1週間に2回パルスした。オリゴデンドロサイトは、実施例3に記載されるように調製した。
【0201】
共培養研究のため、100〜300ng/mlのSema6A−Fc(R&Dsystems,1146−S6−025)の存在下または不在下で、オリゴデンドロサイトをDRGニューロン点滴培養物に添加した。培地(B27および100ng/ml NGFで補完したNeurobasal培地)を取り替え、新鮮なSema6A−Fcを3日毎に細胞に添加した。髄鞘形成の変化を確認するため、3週齢の培養物を抗MBP抗体で標識化し、SDS−PAGE、次いでウェスタンブロット解析に共した。
【0202】
図6は、Sema6A−Fcタンパク質の添加が、用量依存的に、負の対照から0.1μg/ml、および0.1μg/mlから0.3μg/mlに髄鞘形成を増加させたことを示す。ウェスタンブロットも、Sema6A−Fcの添加によって、MBP発現が増加する、すなわち、0.1μg/mlから0.3μg/mlに増加することを示した(データ表示せず)。したがって、かかるデータは、Sema6Aポリペプチドが髄鞘形成を促進または誘発できることを示す。
【0203】
実施例5
Sema6A−Fcは、生体内の再髄鞘形成に関与した
クプリゾン(銅キレート)への露出を、マウス脳の広い領域において重要な脱髄を再生可能に誘発できる実験モデルとして使用した。Matsushima et al.,Brain Pathol.11(1),107-116,2001を参照されたい。8週齢のマウスに0.2%クプリゾンを食餌に入れて6週間与え、成熟オリゴデンドロサイトをアポトーシスによって死亡させた。細胞死は、小膠細胞の動員およびミエリンの食細胞活動に続いてすぐに生じた。クプリゾン治療の終了時、または継続するクプリゾン露出の後であっても、オリゴデンドロサイト前駆細胞は、増殖を開始し、脱ミエリン化領域を侵襲した。クプリゾン治療が終了すると、概して完全な再髄鞘形成が数週間後に生じる。クプリゾンモデルを使用して、脱髄および再髄鞘形成中のSema6A発現を解析することができる。クプリゾン露出および次いで終了後に、クプリゾン処理したマウスの脳梁において、Sema6A発現オリゴデンドロサイトの数の有意な増加が認められ、それは、クプリゾンの投与後3週間から始まり、4週間目にピーク(+310%,n=3)に達した後、6週間目に発現の基準レベルに戻った(図7)。病巣におけるかかるSema6A発現細胞は、olig−2に対してすべて陽性であった。Sema6A発現のこの上方規制を特徴付けるために、犠牲死の1週間前に、クプリゾン処理した動物にBrdUを注入した。Sema6A発現オリゴデンドロサイトの一部はBrdU陽性であって、クプリゾンによる脱髄の誘発中に分化した前駆体から動員されたことを示唆する。
【0204】
実施例6
Sema6Aは、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)に関与し得る
EAEを誘発するために、マウスのミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)配列35〜55に基づいた20アミノ酸ペプチドを使用した。EAEの開始日を実験の1日目として、EAEの臨床アセスメントを7日目から開始し、それを毎日行い、疾病に関して、マウスを以下の基準に従って採点した:疾病なし(0)、尾部の色調の低下(1)、後肢の衰弱または部分麻痺(2)、後肢の完全麻痺(3)、前肢および後肢麻痺(4)、および瀕死状態(5)。かかる得点は、脱髄疾患の発生を反映する。20アミノ酸ペプチドによるEAE誘発後に、Sema6A−/−マウスは、対照動物よりも少ない欠陥挙動を発症した。Sema6A−/−マウスの平均得点は、最大0.5にしか達しなかったが、対照動物の平均得点は3.5に達した(データ図示せず)。25%のSema6A−/−マウスのみが、病気の任意の兆候を示した(データ図示せず)。かかる実験は、Sema6Aが、EAE誘発において、また恐らくは、多発性硬化症等のより広範な自己免疫病理に関与し得ることを示唆する。
【0205】
加えて、EAE誘発に関して、プレキシンA4−/−マウスを試験した。Yamamoto et al.,Int.Immunol.DOI:10.1093/intimm/dxn006(Jan.2008)を参照されたい。Sema6A−/−マウスは、上で示されるように、EAE耐性を示したが、プレキシンA4−/−マウスは、EAE誘発に対してより高い感度を示した。同上を参照されたい。さらに、Sema6A−/−およびプレキシンA4−/−マウスの両方において、生体外T細胞増殖アッセイを行った。同上を参照されたい。プレキシンA4−/−マウスは、T細胞増殖の有意な増加を示したが、Sema6A−/−マウスは、T細胞増殖において差を示さなかった。同上を参照されたい。この情報は、Sema6A−/−マウスにおけるEAE耐性が、Sema6A−/−マウスにおける免疫反応の異常に起因しない可能性があることを示唆する。
【0206】
実施例7
Sema6Aポリペプチドは、ヒト多発性硬化症の病巣組織において発現する。
【0207】
Sema6A発現が、ヒトMS病巣組織と非病巣組織との間で異なるかどうかを決定するために、標準原位置ハイブリダイゼーションおよびヒトMS組織(新皮質試料)における免疫染色によって、Sema6A発現を測定した。MS組織は、Salpetriere Hospital,75013 ParisのFederation de Neurologieから取得した。標準原位置ハイブリダイゼーションを行った。4%パラホルムアルデヒドに浸漬することによって組織を固定し、パラフィンに埋め込んだ。原位置ハイブリダイゼーションのため、最初に組織断面をキシレン中でろう除去し(3×5分)、次いで、減少勾配のエタノール(100%、80%、70%、50%)および最後に水およびPBSに連続して通すことによって、水分補給した。組織断面を4%PFA中で10分間後置し、pH7.4のPBS中で洗浄し、プロテイナーゼK(50μg/ml;Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて15分間37℃で処理し、4%PFA中で5分間後置し、PBSで洗浄し、アセチル化して、連続エタノール浴(50%、70%、80%、100%)で脱水した。ハイブリダイゼーションバッファ中、68℃で2時間スライドをインキュベートし、実施例1に示されるように処理する。ハイブリダイゼーションバッファ(50%ホルムアミド、5×SSC、1×デンハルト、250μg/ml酵母tRNA、および500μg/mlニシン精液、pH7.4)中、室温で2時間スライドをインキュベートした後、ジゴキシゲニン標識化したSema6Aリボプローブ(0.5ng/μl)を用いて、72℃で一晩、組織断面をハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション後、2×SSC中72℃で2時間、断面を洗浄し、10%正常ヤギ血清(NGS)を含有する0.1M Tris、pH7.5、0.15M NaCl(B1)中、室温で1時間ブロックした。ブロッキングした後、1%NGSを含有するB1中、アルカリホスファターゼ(1:5000;Roche Diagnostics)と共役した抗ジゴキシゲニン抗体を用いて、室温で一晩スライドをインキュベートした。追加洗浄の後、塩化ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)(337.5μg/ml)および5−ブロモ−4−クロロ−3−リン酸インドリル(BCIP)(175μg/ml)(Roche Diagnostics)を使用して、アルカリホスファターゼ活性を検出した。図8Aおよび8Bに示されるように、Sema6A mRNAは、ヒトMS病巣組織において広範に発現するが、非病巣組織においては発現しない。
【0208】
MS病巣組織および非病巣組織の免疫染色も行ったところ、ヒトMS病巣組織が、Sema6Aを高く発現することを示した。0.2%ゼラチン(Prolabo,Fontenay−sous−Bois,France)および0.25%Triton X−100(PBS−G−T)を含有するPBS中、室温(RT)で1時間、組織断面をブロックした後、R&D systems(Minneapolis,MN)からの抗ヒトSema6A抗体を用いて、室温で一晩インキュベートした。次いで、PBS−G−T中で希釈したCY3共役抗体(Jackson Immunoresearch)とともに、室温で1時間、断面をインキュベートした。PBS−G−T(3×10分)で洗浄した後、断面をMowiol(Calbiochem/Merck,Carlstadt,Germany)に載置した。図8Cに示されるように、MS病巣組織は、高レベルのSema6A発現を示し、非病巣組織は、Sema6A発現をほとんど、またはまったく示さない(図8Aおよび図8B)。
【0209】
バイオマーカーとしてのSema6A発現の可能な使用を見出すために、非MS患者の組織においてもSema6A発現を測定したところ、非MS患者においてSema6Aは発現しなかった(データ図示せず)。血液細胞、例えば、樹状細胞はSema6Aを発現することがよく知られている。Gautier et al.,Immunopath.Infect.Dis.168(2):453−465(2006)を参照されたい。樹状細胞は、脳脊髄液(CSF)中に存在することも知られている。Pashenkov et al.,Brain 124(3):480−492(2001)を参照されたい。
【0210】
樹状細胞上のSema6A発現およびMS病巣組織と非病巣組織との間の分化Sema6A発現を考慮して、皮膚組織等の組織、または血液もしくはCSF等の体液等の検体をヒトから収集し、MSの病状について試験する。例えば、ELISAによって、Sema6Aの発現について標本を試験する。体液における特定レベルの発現は、MSの可能性、またはMSを発症する潜在性を示し得る。追加の実施形態において、かかるアッセイを使用して、特定のMS治療法の有効性を測定することができる。血清またはCSFがSema6Aの発現を呈する場合、血清を採取したヒトは、MSの疑いがあり得る。代替として、収集した標本から得た樹状細胞を濃縮した後、例えば、ELISAを使用して、標本中のSema6Aを測定することができる。本方法にしたがって、Sema6Aの検出を、実際または潜在的なMS疾患のマーカーとして使用することができる。
【0211】
実施例8
Sema6Aポリペプチドは、プレキシン−A2ポリペプチドと相互作用する
Sema6Aポリペプチドとプレキシン−A2ポリペプチドとの間の相互作用を決定するために、組み換えFc二量化AP標識Sema6A外部ドメイン(細胞外ドメイン)(AP−Sema6Aect−Fc)を、Suto et al.,J.Neurosci.25:3628−3637(2005)に記載されるように、全長マウスプレキシン−A2ポリペプチドを発現しているマウス線維芽細胞系統細胞(L細胞)に添加した。組み換えSema6A外部ドメインを形成するために、マウスSema6Aの外部ドメインに対応する配列(Sema6Aect;アミノ酸18〜648)を増幅させて、Aptag−4ベクターに挿入した(Dr.J.Flanagan,Harvard Medical School,Boston,MAからの寄贈)(AP−Sema6Aect)。Flanagan et al.,Methods Enzymol 327:17−35(2000)を参照されたい。組み換えタンパク質を二量化するために、AP−Sema6AectをコードするフラグメントをpEF−Fcに挿入した(AP−Sema6Aect−Fc;AP−Sema6Bect−Fc;pEF−Fc発現ベクターは、Dr.S.Nagata,Osaka Uninversityからの寄贈であった)。ヒト胎児腎臓293T(HEK293T)細胞を、Lipofectamine Plus(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用し、pEF−AP−Sema6Aect−Fc(pCAGGS発現ベクターは、Dr.J.Miyazaki,Osaka Universityからの寄贈であった)を用いて、遺伝子導入し、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するDMEMにおいて、5%CO中37℃で5〜7時間培養した。培養物の上清を収集し、0.22μmフィルターを使用してろ過した。
【0212】
プレキシン−A2発現L細胞を生成するために、全長マウスプレキシン−A2タンパク質をコード化するcDNAを、マウスSema3Aのシグナル配列の側面に配置し、N末端においてmyc標識(GGEQKLISEEDL:配列番号17)を付加した後、発現ベクターpCAGGSに結紮した。カルシウムリン酸化方法(ChenおよびOkaramaのMol.Cell Biol.7:2745−2752,1987)に従って、L細胞をプレキシン−A2発現ベクターおよびpST−neoB(Katoh et al.,Cell Struct.Funct.12:575−580,1987)で同時遺伝子導入し、GENETICIN(GIBCO)を用いて選択した。DH10倍地を用いてL細胞を培養した。プレキシン−A2タンパク質を安定して発現する細胞系統を、抗myc抗体9E10を用いた免疫染色によって単離した。Evan et al.,Mol.Cell Biol.5:3610−3616,1985を参照されたい。
【0213】
プレキシン−A2に対するSema6Aの結合を示すために、全長マウスプレキシン−A2タンパク質を安定して発現するL細胞を、0.5mg/mlBSAを有する250μlのHBSS、0.1%NaN、および1%FBSおよびAP−Sema6Aect−Fc組み換えタンパク質(培養上清)を含有する20mM HEPES、pH7.0(HBHA溶液)を用いて、FlanaganおよびLederのCell 63:185−194(1990)に記載されるように、氷上で1時間インキュベートした。HBHA溶液を除去した後、0.1%Triton X−100で補完した250μlの10mM Tris−HCl、pH8.0で細胞を処理し、細胞表面に結合した組み換えタンパク質を溶解した。細胞溶解物を比色分析に共し、FlanaganおよびLederのCell 63:185−194(1990)およびFlanagan et al.,Methods Enxymol 327:17−35(2000)に記載されるように、AP活性を測定した。
【0214】
Sema6AのFc二量体化組み換えAP標識外部ドメインが、高い親和性でプレキシン−A2発現L細胞と結合したことが示された。Sema6Aのプレキシン−A2との相互作用の解離定数(Kd)値は、3.21nMであった(データ表示せず)。Kd値は、Suto et al.,J.Neursci.25:3628−3637(2005)に記載されるSema6Aのプレキシン−A4、すなわち、3.56nMとの相互作用に関するKd値と同程度であった。
【0215】
実施例9
プレキシン−A2における単一突然変異は、Sema6Aの結合を除去し得る
Sema6Aに対するプレキシン−A2/プレキシン−A4の結合部位を決定するために、C57BL6/J突然変異マウス、すなわち、NMF454を試験した。C57BL6/Jマウスの後退ゲノム−幅広N−エチルN−ニトロソウレア(ENU)突然変異誘発スクリーニングで、NMF454マウス(Dr.S.Ackerman,Jackson Labs,Bar Harbor,USAからの寄贈)を確認した。NML454突然変異マウスの組織学的分析により、プレキシン−A2およびSema6Aヌルマウスのそれと著しく類似するように思われる、小脳の過形成性分子層が明らかになった。Renaud et al.,Nature Neuroscience,in press(2008)を参照されたい。
【0216】
NMF454突然変異が、プレキシン−A2またはSema6A遺伝子のいずれかにおいて生じたか否かを決定するために、マイクロサテライトマーカーを使用する遺伝子マッピングを行った。NMF454表現型を示したF2子孫(n=11)は、マッピングクロス(C57BL6/J X BALB/cBy)からのF1子孫の交雑受精によって生成し、罹患したF2子孫を組織学的に確認した。次いで、それぞれプレキシン−A2およびSema6A遺伝子と密接に結合する多様型のマイクロサテライトマーカーである、D1Mit155およびD18Mit178を用いて、F2子孫の遺伝子型を特定した。D18Mit178との結合は認められなかった(X=1.2;P>0.5)。しかしながら、D1Mit155との堅固な結合が認められた(X=33.0;P<0.0001)。この結果は、表現型分析と併せて、NMF454突然変異が、プレキシン−A2遺伝子(Plxna2)中に存在することを示唆した。
【0217】
突然変異の正確な位置を決定するために、小脳および新皮質におけるプレキシン−A2発現のウェスタンブロット解析を行った。図9Aに示されるように、ウェスタンブロット解析により、約250kDaの帯域が、NMF454同型突然変異マウス(n=2)、野生型、およびNMF454異型対照(n=2)において存在したが、通常のプレキシン−A2ノックアウト系統には存在しなかったことが明らかになった。このデータは、ENU突然変異が、ヌル対立遺伝子または切断プレキシン−A2タンパク質を生じなかったことを示唆する。突然変異の位置をさらに特定するために、プレキシン−A2遺伝子(Plxna2)のすべてのエクソンを、NMF454同型突然変異(n=3)および野生型対照(n=2)のゲノムDNAから完全に配列決定した。これにより、アデニンによる1187位でのシトシンの単一ヌクレオチド置換が、グルタミン酸残基によってアラニン(396)の置換を生じることが明らかになった。さらに、脊椎動物のプレキシン−A配列の配置により、セマフォリンドメインに位置するこのアラニンは、双方のSema6A受容体、すなわち、プレキシン−A2およびプレキシン−A4タンパク質の両方において進化的に保存されていることが明らかになった(図9B)。しかしながら、この配置は、アラニン(396)が、Sema6Aに結合することが知られていないプレキシン−A1およびプレキシン−A3において不在であったことを示した(図9B)。Suto et al.,J.Neurosci.25:3628(2005)を参照されたい。またSuto et al.,Neuron 53:535(2007)も参照されたい。
【0218】
NMF454同型突然変異体におけるアラニン(396)突然変異が、Sema6Aに対するプレキシン−A2の結合を混乱させるか否かを決定するために、標的突然変異誘発を行い、QuikChange II XL部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を使用して、プレキシン−A2 cDNAに、シトシン1187の同一点突然変異(GCGからGAG)を導入した。突然変異誘発に使用したプライマーは、以下のとおりであった。
【0219】
順方向プライマー(配列番号18)
5’−GCAGTGCACCAAGGAGCCTGTCCCAATCG−3’
逆方向プライマー(配列番号19)
5’−CGATTGGGACAGGCTCCTTGGTGCACTGC−3’
突然変異した組成物(プレキシン−A2A396E)を完全に配列決定し、シトシン1187のみがアデニンにより置換されたことを確認された。
【0220】
次いで、このプレキシン−A2A396E cDNAを、COS7細胞において発現させ、実施例8に示されるものと同一の方法を使用して、Sema6A−APに結合するその能力を試験した。Suto et al.,Neuron 53:5354(2007)を参照されたい。結合アッセイの結果は、Sema6A−APが、野生型プレキシン−A2を発現するCOS7細胞に極めて強力に結合したことを示した(図9C)。しかしながら、野生型および突然変異タンパク質の両方が同様のレベルで発現したようであったが、Sema6A−APは、プレキシン−A2A396Eを発現する細胞にまったく結合しなかった(図9D)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進するための方法であって、前記オリゴデンドロサイトを、単離セマフォリン6A(「Sema6A」)ポリペプチドを含む、有効量の組成物と接触させるステップを含む、方法。
【請求項2】
ニューロンのオリゴデンドロサイト媒介による髄鞘形成を促進するための方法であって、ニューロンおよびオリゴデンドロサイトの混合物を、単離セマフォリン6Aポリペプチドを含む、有効量の組成物と接触させるステップを含む、方法。
【請求項3】
哺乳動物において、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進するための方法であって、単離Sema6Aポリペプチドを含む有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項4】
哺乳動物において、ニューロンの髄鞘形成を促進するための方法であって、単離Sema6Aポリペプチドを含む有効量の組成物をその哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項5】
哺乳動物において、髄鞘形成不全または脱髄に関連する疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、単離Sema6Aポリペプチドを含む治療有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項6】
哺乳動物において、オリゴデンドロサイト細胞死または分化の欠失に関連する疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、単離Sema6Aポリペプチドを含む治療有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項7】
哺乳動物において、ミエリンの破壊を伴う疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、単離Sema6Aポリペプチドを含む治療有効量の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項8】
哺乳動物において、オリゴデンドロサイトの増殖、分化、または生存を促進するための方法であって、Sema6Aポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドを含む、有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項9】
哺乳動物において、ニューロンの髄鞘形成を促進するための方法であって、Sema6Aポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドを含む、有効量の組成物を、その哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項10】
哺乳動物において、髄鞘形成不全または脱髄を伴う疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、Sema6Aポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドを含む、治療有効量の組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む、方法。
【請求項11】
哺乳動物において、オリゴデンドロサイト細胞死または分化の欠失を伴う疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、Sema6Aポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドを含む、治療有効量の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項12】
哺乳動物において、ミエリンの破壊を伴う疾病、疾患、または損傷を治療するための方法であって、Sema6Aポリペプチドをコード化する単離ポリヌクレオチドを含む、治療有効量の組成物を投与するステップを含む、方法。
【請求項13】
前記Sema6Aポリペプチドは、プレキシン−A2ポリペプチドに結合する、請求項1から12のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記Sema6Aポリペプチドは、
i. 配列番号2の56〜417、
ii. 配列番号2のa〜417、
iii. 配列番号2のb〜417、
iv. 配列番号2の1〜417、
v. 配列番号2の56〜c、
vi. 配列番号2のa〜c、
vii. 配列番号2のb〜c、
viii. 配列番号2の1〜c、
ix. 配列番号6の56〜c’、
x. 配列番号6のa〜c’、
xi. 配列番号6のb〜c’、
xii. 配列番号6の1〜c’、
xiii. 配列番号2の56〜d、
xiv. 配列番号2のa〜d、
xv. 配列番号2のb〜d、
xvi. 配列番号2の1〜d、
xvii. 配列番号6の56〜d’、
xviii. 配列番号6のa〜d’、
xix. 配列番号6のb〜d’、
xx. 配列番号6の1〜d’、
xxi. 配列番号2の56〜e、
xxii. 配列番号2のa〜e、
xxiii. 配列番号2のb〜e、
xxiv. 配列番号2の1〜e、
xxv. 配列番号6の56〜e’、
xxvi. 配列番号6のa〜e’、
xxvii. 配列番号6のb〜e’、
xxviii. 配列番号6の1〜e’、
xxix. 配列番号8の56〜e’’、
xxx. 配列番号8のa〜e’’、
xxxi. 配列番号8のb〜e’’、
xxxii. 配列番号8の1〜e’’、
xxxiii. 配列番号4の56〜e’’’、
xxxiv. 配列番号4のa〜e’’’、
xxxv. 配列番号6のb〜e’’’、
xxxvi. 配列番号8の1〜e’’’、
xxxvii. 配列番号2の56〜f、
xxxviii. 配列番号2のa〜f、
xxxix. 配列番号2のb〜f、
xl. 配列番号2の1〜f、
xli. 配列番号6の56〜f’、
xlii. 配列番号6のa〜f’、
xliii. 配列番号6のb〜f’、
xliv. 配列番号6の1〜f’、
xlv. 配列番号8の56〜f’’、
xlvi. 配列番号8のa〜f’’、
xlvii. 配列番号8のb〜f’’、
xlviii. 配列番号8の1〜f’’、
xlix. 配列番号4の56〜f’’’、
l. 配列番号4のa〜f’’’、
li. 配列番号4のb〜f’’’、
lii. 配列番号4の1〜f’’’、
liii. 配列番号2の56〜1000、
liv. 配列番号2のa〜1000、
lv. 配列番号2のb〜1000、
lvi. 配列番号2の1〜1000、
lvii. 配列番号4の56〜1047、
lviii. 配列番号4のa〜1047、
lix. 配列番号4のb〜1047、
lx. 配列番号4の1〜1047、
lxi. 配列番号6の56〜971、
lxii. 配列番号6のa〜971、
lxiii. 配列番号6のb〜971、
lxiv. 配列番号6の1〜971、
lxv. 配列番号8の56〜975、
lxvi. 配列番号8のa〜975、
lxvii. 配列番号8のb〜975、
lxviii. 配列番号8の1〜975、
lxix. 配列番号2の19〜417、
lxx. 配列番号2の19〜472、
lxxi. 配列番号2の19〜551、
lxxii. 配列番号6の19〜492、
lxxiii. 配列番号2の19〜647、
lxxiv. 配列番号6の19〜588、
lxxv. 配列番号8の19〜592、
lxxvi. 配列番号4の19〜664、
lxxvii. 配列番号2の56〜472、
lxxviii. 配列番号2の56〜551、
lxxix. 配列番号6の56〜492、
lxxx. 配列番号2の56〜647、
lxxxi. 配列番号6の56〜588、
lxxxii. 配列番号8の56〜592、
lxxxiii. 配列番号4の56〜664、
lxxxiv. 配列番号2の1〜649、
lxxxv. 配列番号6の1〜590、
lxxxvi. 配列番号8の1〜594、
lxxxvii. 配列番号4の1〜666、
lxxxviii. 配列番号2の18〜703、
lxxxix. 配列番号6の18〜644、
xc. 配列番号8の18〜648、
xci. 配列番号4の18〜720、
xcii. 配列番号2の1〜648、
xciii. 配列番号6の1〜589、
xciv. 配列番号8の1〜593、
xcv. 配列番号4の1〜665、および
xcvi. 2つ以上の前記アミノ酸配列の組み合わせ、
から成る群より選択される参照アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、
aは24から56までの間の任意の整数であり、bは19から21までの間の任意の整数であり、cは472から512までの間の任意の整数であり、c’は418から453までの間の任意の整数であり、dは514から569までの間の任意の整数であり、d’は455から510までの間の任意の整数であり、eは570から650までの間の任意の整数であり、e’は511から591までの間の任意の整数であり、e’’は570から595までの間の任意の整数であり、e’’’は570から667までの間の任意の整数であり、fは647から671までの間の任意の整数であり、f’は588から612までの間の任意の整数であり、f’’は592から616までの間の任意の整数であり、f’’’は664から688までの間の任意の整数である、請求項1から13のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アミノ酸配列は、前記参照アミノ酸配列と少なくとも90%同一である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アミノ酸配列は、前記参照アミノ酸配列と同一である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記Sema6Aポリペプチドは環状ペプチドである、請求項1から16のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記環状ペプチドは、前記環状ペプチドのN末端に付着したビオチン分子およびC末端に付着したシステイン残基を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記環状ペプチドは、前記環状ペプチドのN末端およびC末端に付着したシステイン残基を含み、前記N末端システイン残基はアセチル化される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記C末端システインは付着したNH2部分を有する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリペプチドは、非Sema6A部分に付着する、請求項1から0のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記非Sema6A部分は、前記Sema6Aポリペプチドに融合される非相同ポリペプチドである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記非相同ポリペプチドは、免疫グロブリンポリペプチドまたはそのフラグメント、血清アルブミンポリペプチドまたはそのフラグメント、標的ポリペプチド、レポーターポリペプチドならびに精製促進ポリペプチド、および2つ以上の前記非相同ポリペプチドの組み合わせから成る群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記非相同ポリペプチドは、c−myc、ヒト胎盤アルカリホスファターゼ、免疫グロブリンヒンジならびにFc領域、および2つ以上の前記非相同ポリペプチドの組み合わせから成る群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記非Sema6A部分は、Sema6Aポリペプチドに共役したポリマーである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマーは、ポリアルキレングリコール、糖ポリマー、およびポリペプチドから成る群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマーはポリアルキレングリコールである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリアルキレングリコールはポリエチレングリコール(PEG)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記Sema6Aポリペプチドは、1、2、3または4つのポリマーと共役する、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
ポリマーの総分子量は、5,000Daから100,000Daである、請求項25から29のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物は、脱髄、髄鞘形成不全、または神経変性を伴う疾病、疾患、または損傷を診断されている、請求項3から13のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記疾病、疾患、または損傷は、多発性硬化症(MS)、進行性多巣性白質脳症(PML)、脳脊髄炎(EPL)、橋中心髄鞘崩壊症(CPM)、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、ペリツェウス・メルツバッヘル病(PMZ)、ウォラー変性、視神経炎、横断性脊髄炎、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄損傷、外傷性脳損傷、放射線照射後の損傷、化学療法の神経合併症、脳梗塞、急性虚血性視神経症、ビタミンE欠乏、ビタミンE単独欠損症、AR、バッセン・コーンツヴァイク症候群、マルキアファーヴァ・ビニャミ症候群、異染性白質萎縮症、三叉神経痛、およびベル麻痺から成る群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記疾病、疾患、または損傷は多発性硬化症(MS)である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物は、ボーラス注入法または長期注入によって投与される、請求項3から33のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物は、中枢神経系に直接投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物は、MSの慢性病巣に直接投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記接触ステップは、(a)発現制御配列への操作可能な連鎖を通して、前記Sema6Aポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドを用いて、前記オリゴデンドロサイトを遺伝子導入するステップと、(b)前記Sema6Aポリペプチドの発現を可能にするステップと、を含む、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリヌクレオチドは、発現制御配列への操作可能な結合を通して、前記Sema6Aポリペプチドをコード化する、請求項8から13のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリヌクレオチドは、発現ベクターとして投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記発現ベクターはウイルスベクターである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記投与するステップは、(a)前記ポリヌクレオチドを含む培養宿主細胞を提供するステップであって、前記培養宿主細胞は前記Sema6Aポリペプチドを発現するステップと、(b)前記培養宿主細胞を前記哺乳動物に導入し、前記Sema6Aポリペプチドが前記哺乳動物において発現するようにさせるステップを含む、請求項8から13のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記培養宿主細胞は、神経系の疾病、疾患、または損傷の部位、あるいはその付近において前記哺乳動物に導入される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記培養宿主細胞は、(a)請求項37または38のポリヌクレオチド、あるいは請求項39または40のベクターを用いて、受容宿主細胞を形質転換または遺伝子導入するステップと、(b)前記形質転換または遺伝子導入した宿主細胞を培養するステップと、を含む方法によって形成される、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記培養宿主細胞は、治療対象の哺乳動物に由来する、請求項41から43のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記Sema6Aポリペプチドは、神経系の疾病、疾患、または損傷の部位、あるいはその付近におけるオリゴデンドロサイトの増殖、分化または生存の阻害を低減するために十分な量で発現する、請求項3から44のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記Sema6Aポリペプチドは、神経系の疾病、疾患、または損傷の部位、あるいはその付近におけるニューロン髄鞘形成の阻害を低減するために十分な量で発現する、請求項3から45のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、アルファウイルスベクター、エンテロウイルスベクター、ペスチウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、パポバウイルスベクター、およびポックスウイルスベクターから成る群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記ヘルペスウイルスベクターは、単純ヘルペスウイルスおよびEBウイルスベクターから成る群より選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記ポックスウイルスベクターは、ワクシニアウイルスベクターである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記ベクターは、局所投与、眼内投与、非経口投与、くも膜下投与、硬膜下投与、および皮下投与から成る群より選択される経路によって投与される、請求項39、40、または47から49のうちのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2010−518007(P2010−518007A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548329(P2009−548329)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/001444
【国際公開番号】WO2008/097503
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【出願人】(509215466)サントル ナシオナル ドゥ ルシェルシュ シアンティフィク (1)
【出願人】(509215477)ユニバーシティー ピエール アンド マリー キュリー (1)
【Fターム(参考)】