説明

高い強度をもつパワーIGBT

【課題】縦型パワーIGBTのラッチアップ動作を改善する素子構造を提供する。
【解決手段】第1の伝導型のエミッタ区域11およびエミッタ区域11に隣接する第2の伝導型のドリフト区域12を有する半導体基板と、多数のトランジスタセルを有するセルアレイとを備える。トランジスタセルは、それぞれ、ソース区域15と、ソース区域15と上記ドリフト区域12との間に配置されるボディ区域14と、ソース区域15およびボディ区域14から絶縁して配置されるゲート電極16とを有する。ソース区域15およびボディ区域14は短絡されている。エミッタ区域11のエミッタ効率を、第1のセルアレイ部分101の領域内よりも第2のセルアレイ部分102の領域内において低くするため、セルアレイは、第1のセル密度を有する第1のセルアレイ部分101と、第1のセル密度より低い第2のセル密度を有する第2のセルアレイ部分102とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、パワーIGBTに関する。
【0002】
〔背景〕
パワーIGBTは、例えば、Stengl, Tihanyi: "Leistungs-MOS-FET-Praxis" (Power MOS-FET practice), Pflaum出版社, Munich, 1992, pages 101-104、あるいはBaliga: "Power Semiconductor Devices," PWS Publishing, 1995, pages 428-431に記載されている。
【0003】
図1は、垂直パワーIGBTの部分断面図である。このIGBTは、エミッタ区域(emitter zone)11を有する半導体基板100を備える。図1に示される素子では、エミッタ区域11は、半導体基板100の背面側の領域に配置される。このエミッタ区域11は、IGBTの場合にはコレクタとも称される。該エミッタ区域11は、エミッタ区域11に対して相補的にドープされたドリフト区域(drift zone)12に隣接する。半導体基板100の背面側とは反対側にある正面側の領域には、同一に構成されたトランジスタセルを多数備えるセルアレイが存在する。これらのトランジスタセルは、それぞれ、ソース区域15およびボディ区域14を有する。ボディ区域14は、ソース区域15とドリフト区域12との間に配置される。また、ボディ区域14は、ソース区域15およびドリフト区域12に対して相補的にドープされる。
【0004】
ドリフト区域12とソース区域15との間のボディ区域14内には、伝導チャネルまたは反転チャネルを制御するために、ゲート電極16が備えられる。ゲート電極16は、ソース区域15およびボディ区域14に隣接して配置される。また、ゲート電極16は、ゲート絶縁層17によって半導体基板から絶縁される。該ボディ区域14は、ドリフト区域12内において、互いに距離を置いて配置される。該ボディ区域14は、例えば、図1に示される図の平面に対して垂直に広がる平面内において、長方形または六角形の断面を有する。該ゲート電極16は、例えばStengl, Tihanyi, loc cit., page 33において説明されているように、上記平面では格子状であり、さらに凹みを有する。この凹みを用いて、端子電極18は、個々のトランジスタセルのソース区域15およびボディ区域14を接点接続し、これによって上記ボディ区域14と上記ソース区域15とを短絡させる。この場合、上記ゲート電極16は、別の絶縁層19によって、この端子電極18から絶縁されている。
【0005】
垂直パワーIGBTは、上記エミッタ区域11と、ソース電極とも称される端子電極18との間に正電圧が印加された時、および上記ボディ区域14内に反転チャネルを形成するための適切な駆動電位が上記ゲート電極16に印加された時に作動する。該IGBTが作動すると、上記ドリフト区域12は、p型荷電キャリアまたはホールによって満たされる。これらのp型荷電キャリアまたはホールは、パワーIGBTのスイッチが切られている時、ボディ区域14を経由して、より低電位の端子電極18へと必然的に流れる。上記素子のスイッチを切るとき、該素子に印加される電圧の時間的変化、あるいは該素子を流れる電流の時間的変化が、スイッチ切断動作中に所定の制限値を超過しないように、ゲート電位を緩やかに変化させることを確実に行う必要がある。こうして、上記素子は、停止される。これらの制限値は、製造者によって具体的に規定され、いわゆる安全作動領域(Safe Operating Area; SOA)の範囲において、素子を確実に作動させるために用いられる。
【0006】
上記素子は、あまりにも急激にスイッチが切断されると、該素子のいわゆる「ラッチアップ」が生じる可能性がある。ラッチアップとは、n型にドープされたソース区域15、p型にドープされたボディ区域14、およびn型にドープされたドリフト区域12から形成された寄生npnバイポーラトランジスタが作動する際の動作である。上記寄生npnバイポーラトランジスタが作動すると、結果として、上記ソース区域15、ボディ区域14、ドリフト区域12、およびエミッタ区域11から形成された寄生サイリスタが発火する。これによって、もはや素子の制御が不可能となり、破壊に至る可能性がある。素子のスイッチが切断されようとしている時にドリフト区域12から流出するホール電流が、非常に大きいため、該ホール電流によって、ボディ区域14内で、ソース区域15の下で、上記寄生バイポーラトランジスタの閾値電圧より大きい電圧降下が起こったとき、上記寄生npnバイポーラトランジスタは、作動する。
【0007】
上記セルアレイの別の領域と比較してセル密度が低く、それゆえ、上記ドリフト区域12からホールを除去するための上記ソース電極18との端子接点がより少ないセルアレイの領域では、「ラッチアップ」動作の危険性が特に高い。図1に示される素子では、このようにセル密度の低い領域を示すために、参照符号102が用いられている。上記実施例において、上記セル密度の低い領域は、セルアレイに加えて、ゲートリード(gate lead)22が備えられる領域である。該ゲートリード22は、ゲート電極16を、インピーダンスが低くなるようにゲート電位に接続するために用いられる。ドリフト区域12内のゲートリード22の下には、トランジスタセルは備えられておらず、特にソース電極18への端子は備えられていない。上記素子のスイッチが切断されようとしている時、セル密度の低い上記領域102に隣接して配置されるトランジスタセルのボディ区域14を経由して、上記ゲートリード22下のホールを、ドリフト区域12の領域から流出させる必要がある。従って、上記素子のスイッチが切断されようとしている時、上記領域102からより遠く離れて配置されるセルアレイ内の他のトランジスタセルと比較して、上記領域102に隣接して配置されるトランジスタセルでは、ホールの電流密度が高くなる。この結果、これらのトランジスタセルに関しては、「ラッチアップ」の危険が特に高くなる。この場合、これらのトランジスタセルは、上記素子のスイッチを切断しようとしている時、素子全体の最大許容電流または電圧の変化を制限する。
【0008】
この場合、上記素子のスイッチを切断しようとしている時に、上記素子内で起こる電流または電圧の変化は、スイッチの切断動作が緩やかであるほど小さい。しかし、スイッチの切断動作の所要時間が増加するほど、スイッチング損失が増大する。
【0009】
本発明の一実施形態にかかるパワーIGBTは、第1の伝導型のエミッタ区域と、第2の伝導型のドリフト区域とを有する半導体基板を備えている。上記ドリフト区域は、上記エミッタ区域に隣接している。また、上記パワーIGBTは、多数のトランジスタセルを有するセルアレイを備える。上記多数のトランジスタセルは、それぞれ、ソース区域と、ボディ区域と、ゲート電極とを有する。上記ボディ区域は、上記ソース区域と上記ドリフト区域との間に配置される。上記ゲート電極は、上記ソース区域およびボディ区域から絶縁されるように配置される。また、上記トランジスタセルにおいて、上記ソース区域と上記ボディ区域とは、短絡されている。上記セルアレイは、第1のセル密度を有する第1のセルアレイ部分(section)と、上記第1のセル密度より低い第2のセル密度を有する第2のセルアレイ部分とを有する。また、上記第2のセル密度は、ゼロであってもよい。具体的には、これは、上記第2のセルアレイ部分にトランジスタセルが存在しないという事実と同じ意味である。
【0010】
「ラッチアップ」動作を改善するために、上記第1のセルアレイ部分の領域よりも、第2のセルアレイ部分の領域において、上記エミッタ区域のエミッタ効率を低下させる。上記第2のセルアレイ部分の領域において、上記エミッタ区域のエミッタ効率がより低下しているため、上記IGBTが作動すると、エミッタ効率がそれほど低下されていない従来の素子と比較して、上記第2のセルアレイ部分の領域において、ドリフト区域内のp型荷電キャリアまたはホールが少ない。上記第2のセルアレイ部分の領域では、このようにホール濃度がより低いため、上記IGBTのスイッチが切断されようとしている時、第1のセルアレイ部分と第2のセルアレイ部分との間の遷移領域内に配置されるトランジスタセルに負荷されるホール電流は、従来の素子よりも小さい。それゆえ、上記トランジスタセルの「ラッチアップ」傾向が低くなる。
【0011】
本発明の一実施形態は、第1のセルアレイ部分の領域内に第1のエミッタ部分を有し、第2のセルアレイ部分の領域内に第2のエミッタ部分を有する、エミッタ区域を備える。この実施形態は、第2のエミッタ部分の領域におけるエミッタ効率を低下させるために、第2のエミッタ部分の第1の伝導型のドーパント原子の有効ドーピング濃度を、第1のエミッタ部分の有効ドーピング濃度より低くすることにより提供される。上記エミッタ区域を形成する時、例えばイオン注入およびその後のアニーリング工程を用いて、第1のエミッタ部分よりも第2のエミッタ部分へ注入するドーパント原子を少なくすることによって、第2のエミッタ部分の有効ドーピング濃度を低くすることができる。
【0012】
また、第2のエミッタ部分の有効ドーピング濃度は、以下の方法によって、第1のエミッタ部分の有効ドーピング濃度よりも低くすることができる。まず、上記と同様の方法によって、双方のエミッタ部分のドーピング濃度が同一になるように2つのエミッタ部分をドープする。しかし、そのとき、第2のエミッタ部分の領域内に結晶欠陥を形成させる。上記欠陥は、有効ドーピング濃度を低くする。また、上記欠陥は、例えば、いわゆる「ダメージ注入(damage implantation)」によって形成することができる。このダメージ注入では、第2のエミッタ区域内に非ドーパント原子が注入され、その結果、該第2のエミッタ区域において、これらの非ドーパント原子が結晶欠陥となる。
【0013】
さらに、第2のセルアレイ部分の領域内にあるエミッタ区域を完全に除くことも可能である。しかし、この結果、反対方向への電圧(つまり、負のドレイン−ソース電圧)を遮断できるIGBTの機能が失われる。
【0014】
ドリフト区域内のエミッタ側(つまり、上記ボディ区域よりも上記エミッタ区域に近接した位置)で、セルアレイのボディ区域とエミッタ区域との間に配置された、該ドリフト区域と同じ伝導型のフィールドストップ区域(field stop zone)を有するパワーIGBTの場合では、エミッタのドーピング濃度を低くすることによってエミッタ効率を低下させる代わりに、あるいはそれに加えて、素子の「ラッチアップ」動作を改善するために、第1のセルアレイ部分の領域内のフィールドストップ区域よりも第2のセルアレイ部分の領域内のフィールドストップ区域のドーピング濃度を高くすることができる。第2のセルアレイ部分の領域内にあるフィールドストップ区域のドーピング濃度のほうを高くすることによって、エミッタ区域のドーピング濃度を低くした場合と同様に、エミッタ効率は低下する。従って、IGBTが作動する時、第2のセルアレイ部分の領域内にあるドリフト区域において、ホール電流密度が低下する。第2のセルアレイ部分の領域内におけるホール電流密度を可能な限り効果的に低下させるために、エミッタ効率を低下させたこの区域は、側面方向に、第1のセルアレイ部分にまで到達させることが好ましい。第1のセルアレイ部分に向かう、エミッタ効率が低下した上記区域の範囲は、自由荷電キャリアの拡散距離の0.1〜2倍であることが好ましい。
【0015】
エミッタのドーピング濃度を局所的に低くする、あるいはフィールドストップ区域のドーピング濃度を局所的に高くすることによって、上記エミッタ効率を低下させることの代わりに、あるいはそれに加えて、ドリフト区域の別の部分と比較して、第2のセルアレイ部分の領域内において、上記ドリフト区域内におけるホールの荷電キャリア寿命を短くしてもよい。これによって、素子のスイッチを切断しようとしている時、第1のセルアレイ部分と第2のセルアレイ部分との間の遷移領域内にあるトランジスタセルを経由して、ドリフト区域部分の第2のセルアレイ部分の領域から除去すべきホールが少なくなる。それゆえ、同様に、素子の「ラッチアップ」動作が改善される。ドリフト区域における第2のセルアレイ部分の領域内における荷電キャリア寿命は、具体的には、ドリフト区域の第2のセルアレイ部分内の結晶格子欠陥の濃度を増加させることによって実現することができる。しかし、例えば、プラチナなどの重金属に局所的に拡散させることも可能である。
【0016】
上記説明した方法の代わりに、あるいはこの方法に加えて、「ラッチアップ」動作を改善するために、第1のセルアレイ部分と第2のセルアレイ部分と間の遷移領域内に、第2のセルアレイ部分から第1のセルアレイ部分への方向に向かって、1つまたはそれ以上のトランジスタセルを配置してもよい。該トランジスタセルは、そのソース区域の、ホールの流れる方向の寸法が、第1のセルアレイ部分の別の領域内のトランジスタセルのソース区域より小さくなるように配置される。ソース区域の寸法が縮小されていないトランジスタセルと比較して、上記方法では、ソース区域と、ボディ区域と、ドリフト区域とから形成された寄生バイポーラトランジスタを必要とすることなく、より高いホール電流を流すことができる。特に、第1のセルアレイ部分と第2のセルアレイ部分との間の遷移領域内に、第2のセルアレイ部分から第1のセルアレイ部分への方向に向かって、「改変トランジスタセル」を1つまたはそれ以上備えてもよい。該トランジスタセルは、ソース区域を有しないように改変されている。
【0017】
さらに、第1のセルアレイ部分と第2のセルアレイ部分との間の遷移領域内に、第2のセルアレイ部分から第1のセルアレイ部分に向かって、少なくとも1つのトランジスタセルを備えることが可能である。該トランジスタセルでは、ソース区域の下にあるボディ区域は、ボディ区域の別の部分よりもドーピング濃度が高くなった部分を少なくとも1つ有している。所定のホール電流では、このようにドーピング濃度を局所的に高くすることによって、寄生npnバイポーラトランジスタ内における電圧降下が低下する。従って「ラッチアップ」傾向も低下する。
【0018】
図面を参照しながら、本発明の実施形態について、以下、より詳細に説明する。
【0019】
図1は、垂直パワーIGBTの部分断面図である。
【0020】
図2は、セル密度を低下させたセルアレイ部分と、該セルアレイ部分の領域内に設けられ、エミッタ効率を低下させたエミッタ区域とを備える、本発明にかかるIGBTの部分断面図である。
【0021】
図3は、図2にかかるパワーIGBTの平面図である。
【0022】
図4は、図2にかかるIGBTのトランジスタセルの、図2に示す断面A−Aに沿った断面図である。
【0023】
図5は、セル密度を低下させたセルアレイ部分の領域内にエミッタ区域が存在しない、本発明にかかるパワーIGBTを示す。
【0024】
図6は、セル密度を低下させたセルアレイ部分の領域内において、ドーピング濃度が別の領域よりも高いフィールドストップ区域を有する、本発明にかかるパワーIGBTを示す。
【0025】
図7は、セル密度が低いセルアレイ部分の領域内において、ドリフト区域における荷電キャリア寿命を低下させた、本発明にかかるパワーIGBTを示す。
【0026】
図8は、セル密度が異なる第1のセルアレイ部分と第2のセルアレイ部分との間の遷移領域において、端子電極とボディ区域との間の短絡回路領域が増大された、本発明にかかるパワーIGBTを示す。
【0027】
図9は、第1のセルアレイ部分と第2のセルアレイ部分との間の遷移領域内にトランジスタセルが配置され、該トランジスタセルのソース区域の寸法が、ホールの流れる方向に向かって小さくなっている、本発明にかかるパワーIGBTを示す。
【0028】
図10は、セル密度が異なる2つのセルアレイ部分の間の遷移領域内のボディ区域のドーピング濃度が局所的に増加されたトランジスタセルを少なくとも1つ有する、本発明にかかるパワーIGBTを示す。
【0029】
図11は、トレンチIGBTの形態である本発明にかかるパワーIGBTを示す。
【0030】
上記図面では、特に明記されていない限り、同一の参照符号は同義であり、同一素子領域を示す。
【0031】
図2は、本発明にかかるパワーIGBTの第1の実施形態の部分断面図を示す。図3は、図2にかかるIGBTの縮尺平面図を示す。図4は、図2に示される断面A−Aに沿った断面図を示す。
【0032】
図2に示されるIGBTは垂直パワーIGBTであり、第1の伝導型のエミッタ区域11を第1の側(この実施例では背面側)の領域内に有する半導体基板を備える。該エミッタ区域11は、上記半導体基板100の第2の側(この実施例では正面側)の方向において、ドリフト区域12と隣接する。該ドリフト区域12は、上記エミッタ区域11に対して相補的にドープされる。同一に構成されたトランジスタセル13を複数備えたセルアレイは、正面側の領域に配置される。これらトランジスタセル13は、それぞれ、第2の伝導型のソース区域15、および第1の伝導型のボディ区域14を有する。該ボディ区域14は、ソース区域15と上記ドリフト区域との間に配置される。
【0033】
IGBTの場合は、エミッタ区域11およびボディ区域14は、通常、p型にドープされる。一方、トランジスタセル13のドリフト区域12およびソース区域15は、通常、n型にドープされる。個々のトランジスタセル13のソース区域15およびボディ区域14は、端子電極(以下、ソース電極と称する)18によって接点接続され、該端子電極18を用いて短絡される。個々のトランジスタセル13のボディ区域14に隣接して、ゲート電極16が配置される。該ゲート電極16は、ゲート絶縁層17によって半導体基板100から電気的に絶縁される。そして、ゲート電極16は、トランジスタセル13内のソース区域15とドリフト区域12との間にあるボディ区域14内において、反転チャネルを制御するために用いられる。上記セルアレイの個々のトランジスタセル13は、一般的に、ドリフト区域12およびエミッタ区域11を有する。上記トランジスタセルは、共通のソース電極18によって互いに並列接続される。該ソース電極18は、別の絶縁層19によってゲート電極16から絶縁される。
【0034】
図2にかかる実施例に示されるトランジスタセルは、いわゆるDMOS(Double Diffused MOS; 二重拡散MOS)セルである。図4を参照すると、トランジスタセルは、例えば、いわゆる「長方形セル」、つまり、セルのボディ区域14が長方形、特に正方形のセルである。言うまでもなく、ボディ区域14は、公知の方法によって、他の任意の形状、特に六角形または細片形にすることも可能である。
【0035】
個々のトランジスタセル13は、共通のゲート電極16を有する。該ゲート電極16は、平面図では格子状であり、接点部分181の領域内に凹み161を有する。該凹み161は、ソース電極18がソース区域15およびボディ区域14を短絡させるために用いられる。
【0036】
図3を参照すると、ゲート電極(図2における16)にゲート電位を印加するために用いられるゲートパッド24が半導体基板100上に配置される。ゲートリード22は、ゲートパッド24から半導体基板100上を伸びている。該ゲートリード22はフィンガ状であり、ゲートフィンガとも称される。
【0037】
図2の左側部分は、上記ゲートリード22の1つの部分的断面を示す。上記ゲートリード22は、凹み231を有する絶縁層23上に配置される。該凹み231は、上記ゲートリード22が上記ゲート電極16の部分162を接点接続するために用いられる。接点接続されたゲート電極の上記部分162は、絶縁層20によって半導体基板100から絶縁される。上記絶縁層20は、トランジスタセルの領域内にあるゲート絶縁層17よりも厚いことが好ましい。
【0038】
上記ゲートリード22の下にはトランジスタセルは備えられない。また、特に、この領域には、ソース電極18への端子が全く備えられない。これによって、ゲートリード22の下の領域内のドリフト区域12からホールが流出でき、その一方で、素子のスイッチが切断される。同様に、ゲートパッド24の下にもトランジスタセルは備えられない。
【0039】
第2のセルアレイ部分102の領域内で、ゲートリード22に対向する表側の下にあるドリフト区域12内に、半導体区域143を任意に備えることが可能である。該半導体区域は、ドリフト区域12に対して相補的にドープされており、好ましくはトランジスタセルが備えられない領域全体を占めている。該半導体区域143のドーピング濃度は、トランジスタセル13のボディ区域14のドーピング濃度と一致してもよい。この場合、該半導体区域143は、トランジスタセルのボディ区域14を形成するために用いられる方法工程と同一の方法工程を用いて形成することができる。しかし、別の方法工程を用いて該半導体区域143を形成してもよい。
【0040】
図2に示されるように、上記ドリフト区域に対して相補的にドープされた半導体区域143は、トランジスタセル13のボディ区域14に隣接していてもよい。また、該半導体区域143は、該ボディ区域14によってソース電極18に接続されていてもよい。詳細は図示されていないが、該半導体区域143をフローティングするように配置することも可能である。つまり、上記半導体区域143をトランジスタセルのボディ区域へ接続せず、その結果、この半導体区域をソース電位へ接続させないように配置することもできる。
【0041】
図示されている実施例では、上記IGBTのセルアレイは、第1のセルアレイ部分101と第2のセルアレイ部分102との2つのセルアレイ部分を有する。セル密度、すなわち、上記半導体基板の所定領域あたりのトランジスタセルの個数は、上記2つのセルアレイ部分において異なる。なお、上記所定領域は、トランジスタセルに必要な領域よりも大きい。上記実施例では、第2のセルアレイ部分102の領域にトランジスタセルが存在していないため、この領域におけるセル密度はゼロである。上記実施例では、第1のセルアレイ部分101と第2のセルアレイ部分102との境界は破線で示されている。この境界は、第2のセルアレイ部分102側の、第1のセルアレイ部分101の縁に配置されるセルとの境界をなしている。
【0042】
図2に示される素子の場合、本発明は、第2のセルアレイ部分102の領域内において、エミッタ11の他の領域よりエミッタ効率が低い、背面側のエミッタ11を備える。上記エミッタ効率を低下させることが可能な方法の1つとして、エミッタのドーピング濃度を局所的に低くする方法がある。この場合、上記エミッタ11は、第1のセルアレイ部分101の領域内に第1のエミッタ部分111を有し、第2のセルアレイ部分102の領域内に第2のエミッタ部分112を有する。この場合、p型ドーパント原子を用いたエミッタ11の有効ドーピング濃度は、第1のエミッタ部分111より第2のエミッタ部分112において低い。
【0043】
イオン注入を用いてエミッタ区域11を形成する時、第2のエミッタ部分112に注入するドーパント原子を、第1のエミッタ部分111に注入するドーパント原子より少なくすることによって、第2のエミッタ部分112のドーピング濃度を低下させることができる。上記目的のために、例えば2段階の注入方法が行われる。この場合、第1段階では、より高濃度にドープされた第1のエミッタ部分へのみドーパント原子を注入するマスク注入(masked implantation)が行われる。第2段階では、半導体基板100の背面側の領域全体にわたって、ドーパント原子が注入される。p型にドープされたエミッタ区域11を形成するための適切なドーパント材料は、例えばホウ素である。
【0044】
さらに、まず均一にドープされたエミッタ区域を形成し、その後、第2のエミッタ部分112を形成するエミッタ区域11の領域内に、マスク注入法により、非ドーピング粒子を注入することによって、有効ドーピング濃度が異なるエミッタ11を形成することもできる。この場合、上記非ドーピング粒子は、有効p型ドーピング濃度を低下させる結晶欠陥を生じさせる。
【0045】
第1のエミッタ部分111内にあるエミッタ11と比較して、第2のエミッタ部分112内にあるエミッタ11のエミッタ効率を低下させることによって、IGBTが作動する時、ドリフト区域12において、第1のエミッタ部分111の上よりも、第2のエミッタ部分112の上のほうが、p型荷電キャリアが少なくなる。エミッタ効率を局所的に低下させない従来のパワーIGBTと比較して、本発明にかかるパワーIGBTの場合では、ソース電極18への端子を全く有しない第2のセルアレイ部分102から、p型荷電キャリアを除去する必要がほとんどない。従って、素子のスイッチを切断すると、第1のセルアレイ領域101と第2のセルアレイ領域102と間の遷移領域内にあるトランジスタセルに負荷するホール電流、および第1のセルアレイ領域101の縁に配置されるトランジスタセルに負荷するホール電流が低下する。これによって、第1のセルアレイ部分101の縁の領域内にあるトランジスタセルの「ラッチアップ」強度が増す。
【0046】
図5を参照すると、特に、第2のセルアレイ領域102の下のエミッタの存在を完全に省くことが可能できる。この場合、上記ドリフト区域12は、上記半導体基板100の背面側に達し、かつ該背面側に設けられた端子電極26にまで達する。
【0047】
ドーピング濃度が低下した第2のエミッタ部分112は、区域内に、好ましくは上記領域内における自由荷電キャリアの拡散距離の0.1〜2倍の距離にわたって、横方向に向かって、第1のセルアレイ領域101のトランジスタセルの下にまで延びていることが好ましい。これによって、素子が作動すると、第1のセルアレイ領域と第2のセルアレイ領域との間の遷移領域、および第1のセルアレイ領域101の縁の領域において、スイッチの切断動作中に流出されるべきp型荷電キャリアが、エミッタ11からドリフト区域12へ注入される。
【0048】
パワーIGBT内に、ドリフト区域12と伝導型が同じであるが、ドリフト区域12より高濃度にドープされたフィールドストップ区域25が任意で備えられる。このフィールドストップ区域25は、エミッタ区域11とボディ区域14との間に配置されるが、ボディ区域14よりもエミッタ区域11に近接して配置されることが好ましい。特に、エミッタ区域11に直接隣接して配置されてもよい。上記フィールドストップ区域25は、図2において破線で示されている。
【0049】
第2のセルアレイ部分102の領域内にあるエミッタ区域のドーピング濃度を局所的に低下させることによってエミッタ効率を下げることの代わりに、あるいはそれに加えて、第2のセルアレイ部分102の領域内にあるフィールドストップ区域25のドーピング濃度を局所的に増加させることによって、該素子の「ラッチアップ」強度を高めることができる(図6を参照)。この方法は、さらにエミッタ効率を下げる。図6では、フィールドストップ区域25は、2つのフィールドストップ区域部分251および252を有する。そのうち、第1のフィールドストップ区域部分251は、第1のセルアレイ部分101のトランジスタセルの下に配置され、第2のフィールドストップ区域部分252より低濃度にドープされる。第2のフィールドストップ区域部分252は、第2のセルアレイ部分102の領域内に配置され、より高濃度にドープされる。また、第2のフィールドストップ区域部分252は、横方向に延び、第1のセルアレイ部分101のトランジスタセルの下、つまり、第1のセルアレイ部分101の縁の領域内に配置されるトランジスタセルの下にまで達していることが好ましい。より高濃度にドープされたフィールドストップ区域は、第1のセルアレイ部分に向かって、横方向に、自由荷電キャリアの拡散距離の0.1〜2倍延びていることが好ましい。
【0050】
フィールドストップ区域25のドーピング濃度を局所的に増加させることによって、素子が作動する時、第2のフィールドストップ区域部分252の領域内にあるドリフト区域12へ注入されるp型荷電キャリアが少なくなる。従って、素子のスイッチを切断する時、上記領域からp型荷電キャリアを除去する必要がほとんどない。
【0051】
エミッタのドーピング濃度を局所的に低下させるか、あるいはフィールドストップ区域のドーピング濃度を局所的に増加させることによって、エミッタ効率を局所的に下げるという上述の方法に代えて、あるいはこの方法に加えて、少数の荷電キャリア(すなわち、本実施形態ではp型荷電キャリアまたはホール)の荷電キャリア寿命を、第2のセルアレイ部分102の領域内のドリフト区域12において短縮することができる(図7を参照)。図7にかかる素子は、第1のセルアレイ部分101の領域内にある第1のドリフト区域部分121、および第2のセルアレイ部分102の領域内にある第2のドリフト区域部分122の2つのドリフト区域部分を有する。この場合、第1のドリフト区域部分121よりも第2のドリフト区域部分122におけるp型荷電キャリアの荷電キャリア寿命は短い。この場合、第2のドリフト区域部分122は、第1のセルアレイ部分101の縁の領域内に配置されるトランジスタセルのボディ区域14の下にまで、横方向に伸びていることが好ましい。第2のドリフト区域部分122は、第1のセルアレイ部分101に向かって、自由荷電キャリアの拡散距離の0.1〜2倍延びていることが好ましい。第2のドリフト区域部分122における荷電キャリア寿命が短縮すると、素子のスイッチを切断しようとする時、ドリフト区域の上記部分から流出すべきp型荷電キャリアが少なくなる。従って、第1のセルアレイ部分101の縁の領域内のトランジスタセルに負荷されるホール電流が低下する。それゆえ、従来の素子と比較してトランジスタセルの「ラッチアップ」強度が高まる。
【0052】
第2のドリフト区域部分122内における荷電キャリア寿命は、例えば電子、陽子、またはヘリウム原子などの高エネルギー粒子を用いた半導体基板のマスク放射(masked irradiation)によってパワーIGBTを形成する方法の過程で、短縮させることができる。上記のような放射に用いるマスクとして、金属マスクを用いることができる。これらの高エネルギー粒子によって、第2のドリフト区域部分122の領域内に結晶欠陥が形成される。そのため、このドリフト区域部分122内におけるp型荷電キャリア寿命が短縮される。
【0053】
第2のドリフト区域部分122内における荷電キャリア寿命の短縮は、特に、短縮の程度が垂直方向で変化する程度となるように、実施することができる。このような荷電キャリア寿命の垂直方向での変化は、特に、陽子またはヘリウム原子を用いて半導体基板100の正面側または背面側を放射することによって達成することができる。このような「重」粒子によって、上記半導体基板内に不均一な結晶欠陥分布が形成される。この結晶欠陥は、放射側の方向で最大となる。第2のドリフト区域部分122は、エミッタ区域11に隣接した領域内、つまり、ホールが上記ドリフト区域に注入される領域、またはゲートリードの下あるいはトランジスタセル13のボディ区域14近傍の領域において、荷電キャリア寿命が最も短縮されるように形成させることが有利である。
【0054】
「ラッチアップ」強度を増加させるための上記方法の代わりに、あるいはこの方法に加えて、第1のセルアレイ部分101の縁の領域内にあって、該第1のセルアレイ部分101のトランジスタセルのボディ区域とソース電極18との間にある接点領域を、第1のセルアレイ部分101の別のトランジスタセルと比較して、拡大させることが可能である(図8を参照)。例えば、第1のセルアレイ部分101の縁の領域内に、ソース区域を持たない改変セル132を備えることによって、電極部分181は、上記セル内のボディ区域14とのみ接点接続される。これによって、上記接点領域を拡大させることができる。図8において破線で示されているように、第1のセルアレイ部分101の縁の領域内に、p型にドープされた半導体区域142を形成することも可能である。端子電極18を用いて、p型にドープされた半導体区域142を、複数の位置あるいは領域全体において、接点接続するために、この半導体区域の横方向の寸法を、トランジスタセルのボディ区域の横方向の寸法より大きくする。
【0055】
図2〜図7の方法の代わりに、あるいはこれらの方法に加えて、「ラッチアップ」強度を増加させる別の方法がある。すなわち、第1のセルアレイ部分101の縁の領域内に、改変トランジスタセル131を備える(図9を参照)。該トランジスタセルのソース区域151の寸法を、半導体基板100の横方向にある第1のセルアレイ部分101の他のトランジスタセル13より小さくする。これらの改変トランジスタセル131では、「標準的な」ソース区域15(つまり、寸法が縮小されていないソース区域15)の下よりも、改変ソース区域151の下において、所定のホール電流によって引き起こされる電圧降下が小さい。これによって、第1のセルアレイ部分101の縁の領域内にある上記トランジスタセルの「ラッチアップ」強度が増す。
【0056】
第1のセルアレイ部分101の縁の領域内にあるトランジスタセルのソース区域15の下における電圧降下を減少させるための別の方法として、ソース区域15の下の縁の領域のトランジスタセルのうち、少なくともボディ区域14の部分をより高濃度にドープする方法がある(図10を参照)。より高濃度にドープされた部分は、図10の参照符号141によって示されている。所定のホール電流を用いて、ボディ区域14のドーピング濃度を局所的に高めることによって、ボディ区域14のドーピング濃度が局所的に高められていない「標準的な」トランジスタセルのソース区域の下よりも、上記のような改変トランジスタセル131のソース区域15の下のほうが、電圧降下が小さくなる。
【0057】
要約すると、図2〜図7を参照しながら説明した方法、すなわち、エミッタのドーピング濃度を局所的に低くする、フィールドストップ区域のドーピング濃度を局所的に高める、あるいはドリフト区域内における荷電キャリア寿命を局所的に短縮することによって、エミッタ効率を局所的に低下させる方法によれば、「ラッチアップ」強度を高めることができる。これらの方法は、互いに代替として、あるいは他と共に実施することができる。これらの方法に加えて、あるいはこれらの方法の代わりに、パワーIGBTの「ラッチアップ」強度をさらに高めるために、図8〜図10に関する説明によれば、第1のセルアレイ領域101の縁の領域内にあるトレンチセルを改変することができる。
【0058】
パワーIGBTの「ラッチアップ」強度を高めるための本発明にかかる方法について、プレーナトランジスタセルまたはDMOSセルを有するセルアレイを備えたパワーIGBTを参照しながら説明してきた。言うまでもなく、これらの方法、すなわちエミッタ区域のドーピング濃度を局所的に下げること、またはフィールドストップ区域のドーピング濃度もしくはドリフト区域内における荷電キャリア寿命を局所的に下げることによって、エミッタ効率を低下させる方法は、トレンチセルを有するセルアレイを備えたパワーIGBTにも応用可能である。
【0059】
図11は、そのようなトレンチセルを有するパワーIGBTを示す。このIGBTは、個々のトランジスタセル13のゲート電極16が、半導体基板100内へと垂直に延びるトレンチにおいて、少なくとも断面部に配置されるという事実によって、上述したプレーナセルを有するIGBTとは区別される。この場合、ゲート電極16は、ゲート絶縁層17によって半導体基板100の半導体区域から絶縁される。また、ゲート電極16は、ドリフト区域14を通過して、ドリフト区域12に向かって、垂直方向に延びる。この場合、個々のトランジスタセルは、特に、共通のボディ区域を有する。ゲート電極16へ駆動電位が印加されたときにボディ区域14内に伝導チャネルが形成されるチャネル区域が、上記素子内を垂直に延びる。
【0060】
トレンチセルを有するパワーIGBTでは、第1のセル密度を有する第1のセルアレイ部分と、より低い第2のセル密度を有する第2のセルアレイ部分との間の遷移領域内において、(冒頭において説明した)「ラッチアップ」問題が同様に存在する。この問題を回避または軽減するために、図11にかかる素子において、第2のセルアレイ部分102の領域内に、エミッタ効率が低下したエミッタ区域11を備える。この目的のために、上記実施例では、第1のエミッタ部分内にあるエミッタのドーピング濃度と比較して、第2のエミッタ部分112内にあるエミッタ11のドーピング濃度を低くする。エミッタのドーピング濃度を局所的に低くすることによってエミッタ効率を低下させる方法の代わりに、あるいはこの方法に加えて、上述したように、第2のセルアレイ部分の領域内において、ドーピング濃度が局所的に高められたフィールドストップ区域を備えることによってエミッタ効率を低下させる方法がある。
【0061】
エミッタ効率を低下させることの代わりに、あるいはエミッタ効率を低下させることに加えて、図7〜図10を参照しながら説明した、ラッチアップ問題を軽減または回避するための別の方法を、トレンチセルを有するパワーIGBTの場合に適用することも可能である。これらの方法は、ドリフト区域内における荷電キャリア寿命を局所的に短縮する方法、第1のセルアレイ部分101の縁に配置されるセル内のソース区域15に隣接するボディ区域14のドーピング濃度を局所的に高くする方法、第1のセルアレイ部分101の縁に配置されるセル内のソース区域15の寸法を縮小する方法、あるいは、ソース電極18と、第1のセルアレイ部分101の縁に配置されるボディ区域14との間にある短絡回路領域を拡大する方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】垂直パワーIGBTの部分断面図である。
【図2】セル密度が低下したセルアレイ部分と、該セルアレイ部分の領域内に設けられ、エミッタ効率が低下したエミッタ区域とを備える、本発明にかかるIGBTの部分断面図である。
【図3】図2にかかるパワーIGBTの平面図である。
【図4】図2にかかるIGBTのトランジスタセルの断面A−Aに沿った断面図である。
【図5】セル密度が低下したセルアレイ部分の領域内にエミッタ区域が存在しない、本発明にかかるパワーIGBTを示す図である。
【図6】セル密度が低下したセルアレイ部分の領域内にドーピング濃度が別の領域よりも高いフィールドストップ区域を有する、本発明にかかるパワーIGBTを示す図である。
【図7】セル密度が低いセルアレイ部分の領域内において、ドリフト区域における荷電キャリア寿命が短縮された、本発明に従ったパワーIGBTを示す図である。
【図8】端子電極とボディ区域との間の短絡回路領域が、セル密度の異なる第1のセルアレイ部分と第2のセルアレイ部分との間の遷移領域において増大された、本発明にかかるパワーIGBTを示す図である。
【図9】第1のセルアレイ部分と第2のセルアレイ部分との間の遷移領域内にトランジスタセルが配置されており、該トランジスタセルのソース区域の寸法が、ホールの流れる方向に向かって小さくなっている、本発明にかかるパワーIGBTを示す図である。
【図10】セル密度が異なる2つのセルアレイ部分の間の遷移領域内のボディ区域のドーピング濃度が局所的に増加されたトランジスタセルを少なくとも1つ有する、本発明にかかるパワーIGBTを示す図である。
【図11】トレンチIGBTの形態である、本発明にかかるパワーIGBTを示す図である。
【符号の説明】
【0063】
11 エミッタ区域
12 ドリフト区域
13 トランジスタセル
14 ボディ区域
15 ソース区域
16 ゲート電極
17 ゲート絶縁層
18 端子電極、ソース電極
19、20 絶縁層
22 ゲートリード
23 絶縁層
24 ゲートパッド
25 フィールドストップ区域
100 半導体基板
111、112 エミッタ部分
121、122 ドリフト区域部分
131〜133 改変トランジスタセル
141〜143 第1の伝導型の半導体区域
151 ソース区域
161 ゲート電極の凹み
162 ゲート電極の部分
181 端子電極の接点部分
231 凹み
251、252 フィールドストップ区域部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板(100)と、セルアレイとを備えるパワーIGBTであって、
上記半導体基板(100)は、第1の伝導型のエミッタ区域(11)と、該エミッタ区域(11)に隣接する第2の伝導型のドリフト区域(12)と、を有し、
上記セルアレイは、多数のトランジスタセル(13)を備え、
上記多数のトランジスタセル(13)は、それぞれ、ソース区域(15)と、該ソース区域(15)と上記ドリフト区域との間に配置されるボディ区域(14)と、上記ソース区域(15)および上記ボディ区域(14)から絶縁されるように配置されるゲート電極(16)と、を有し、
上記ソース区域(15)と上記ボディ区域(14)とは短絡されており、
上記セルアレイは、第1のセル密度を有する第1のセルアレイ部分(101)と、第2のセル密度を有する第2のセルアレイ部分(102)と、を有し、
上記第2のセルアレイ部分(102)はゲートパッド(24)またはゲートリード(22)の下に配置されており、かつ、上記第2のセルアレイ部分(102)はトランジスタセルを含んでおらず、
上記第2のセルアレイ部分(102)内において、上記ドリフト区域(12)に対して相補的にドープされた半導体区域(143)が、上記ドリフト区域(12)の上記エミッタ区域(11)に対向する側の領域内に配置され、上記半導体区域(143)が上記ボディ区域(14)に隣接しており、
上記エミッタ区域は、上記第1のセルアレイ部分(101)の領域内に第1のエミッタ部分(111)を有し、かつ、上記第2のセルアレイ部分(102)の領域内に第2のエミッタ部分(112)を有し、上記第2のエミッタ部分(112)の上記第1の伝導型のドーパント原子の有効ドーピング濃度は、上記第1のエミッタ部分(111)の有効ドーピング濃度より低く、
および/または、上記セルアレイの上記ボディ区域(14)と上記エミッタ区域(11)との間の上記ドリフト区域(12)において、上記第2の伝導型のフィールドストップ区域(25)が配置され、上記フィールドストップ区域(25)は、上記ドリフト区域(12)よりも高濃度にドープされていると共に、上記第1のセルアレイ部分(101)の領域内に、第1のストップ区域部分(251)を有し、かつ、上記第2のセルアレイ部分(102)の領域内に、第2のストップ区域部分(252)を有し、上記第2のストップ区域部分(252)は、上記第1のストップ区域部分(251)よりもドーピング濃度が高い、パワーIGBT。
【請求項2】
上記第2のエミッタ部分内に結晶欠陥が存在することによって、上記第1のエミッタ部分(111)の上記有効ドーピング濃度と比較して、上記第2のエミッタ部分(112)の上記有効ドーピング濃度が低下している、請求項1に記載のパワーIGBT。
【請求項3】
上記第2のセルアレイ部分(102)は、上記第1のセルアレイ部分(101)にまで達する、請求項1または2に記載のパワーIGBT。
【請求項4】
上記第1のセルアレイ部分(101)にまで延びるエミッタ効率が低下した領域の寸法が、自由荷電キャリアの拡散距離の0.1〜2倍である、請求項3に記載のパワーIGBT。
【請求項5】
上記第2のエミッタ部分(112)は、上記第2の伝導型のドーパント原子によってドープされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパワーIGBT。
【請求項6】
上記第2のエミッタ部分の上記第2の伝導型のドーパント原子のドーピング濃度が、上記ドリフト区域(12)の上記ドーピング濃度と一致する、請求項5に記載のパワーIGBT。
【請求項7】
上記第2のストップ区域部分(252)が、上記第1のセルアレイ部分(101)にまで達する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のパワーIGBT。
【請求項8】
上記第1のセルアレイ部分(101)にまで延びる上記第2のストップ区域部分(252)の寸法が、自由荷電キャリアの拡散距離の0.1〜2倍である、請求項7に記載のパワーIGBT。
【請求項9】
上記ドリフト区域(12)は、上記第1のセルアレイ部分(101)の領域内に、第1のドリフト区域部分(121)を有し、かつ、上記第2のセルアレイ部分(102)の領域内に、第2のドリフト区域部分(122)を有し、
上記第1の伝導型の自由荷電キャリアの荷電キャリアの荷電キャリア寿命は、上記第1のドリフト区域部分よりも上記第2のドリフト区域部分(122)内の少なくとも一部分において短い、請求項1〜8のいずれか1項に記載のパワーIGBT。
【請求項10】
上記第2のドリフト区域部分(122)が、上記第1のセルアレイ部分(101)にまで達する、請求項9に記載のパワーIGBT。
【請求項11】
上記第1のセルアレイ部分(101)にまで延びる上記第2のドリフト区域部分(122)の寸法が、自由荷電キャリアの拡散距離の0.1〜2倍である、請求項10に記載のパワーIGBT。
【請求項12】
上記第2のドリフト区域部分(122)内の結晶格子欠陥によって、上記第1のドリフト区域部分(121)内における上記荷電キャリア寿命と比較して、上記第2のドリフト区域部分(122)内における上記荷電キャリア寿命が短縮されている、請求項9〜11のいずれか1項に記載のパワーIGBT。
【請求項13】
上記第2のドリフト区域部分(122)内に重金属原子が存在することによって、上記第1のドリフト区域部分(121)内における上記荷電キャリア寿命と比較して、上記第2のドリフト区域部分(122)内における上記荷電キャリア寿命が短縮されている、請求項9〜11のいずれか1項に記載のパワーIGBT。
【請求項14】
上記第1のセルアレイ部分(101)と上記第2のセルアレイ部分(102)との間の遷移領域内に、少なくとも1つのトランジスタセル(131)が、上記第2のセルアレイ部分(102)から上記第1のセルアレイ部分(101)への方向に向かって、備えられ、
該少なくとも1つのトランジスタセルのソース区域(151)の寸法は、上記第1のセルアレイ部分(101)の別の領域内にあるトランジスタセルのソース区域(15)の寸法より小さい、請求項1〜13のいずれか1項に記載のパワーIGBT。
【請求項15】
上記第1のセルアレイ部分(101)と上記第2のセルアレイ部分(102)との間の遷移領域内に、少なくとも1つのトランジスタセル(131)が、上記第2のセルアレイ部分(102)から上記第1のセルアレイ部分(101)への方向に向かって、備えられ、
上記ソース区域(15)に隣接するボディ区域は、上記ボディ区域の別の部分と比較してドーピング濃度が高い部分(141)を有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のパワーIGBT。
【請求項16】
上記第1のセルアレイ部分(101)と上記第2のセルアレイ部分(102)との間の遷移領域内に、ソース区域を持たない、少なくとも1つの改変トランジスタセル(131)が、上記第2のセルアレイ部分(102)から上記第1のセルアレイ部分(101)への方向に向かって、備えられる、請求項1〜15のいずれか1項に記載のパワーIGBT。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−182470(P2012−182470A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97021(P2012−97021)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2006−302653(P2006−302653)の分割
【原出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(501209070)インフィネオン テクノロジーズ アーゲー (331)
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG