説明

高い弾性付与活性を有する組成物

妊娠後期における膣及び会陰の弾性を改善するための組成物は、チオール化化合物又はその混合物と有機酸のエステル又はその混合物を組み合わせることを含む。本発明による組成物は、伸展性の増大及びより速い弾性回復の両方の点での膣及び/又は会陰組織の弾性特性を改善する。本発明による組成物は、分娩時の会陰組織の外傷のリスク、並びに分娩後短/中/長期合併症としての直腸又は膀胱失禁のリスクを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膣及び/又は会陰における弾性特性を向上させるのに有用な有機酸のエステルと組み合わせたチオール化化合物の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野において、遊離SH基、及び官能基によりブロックされたS原子を有するチオール化化合物は、タンパク質構造の剛性を減少させる能力を有し、二硫黄結合を切断することによって、タンパク質分子の伸張性の増大をもたらす。この結果は、一次及び二次構造に影響を及ぼさずに、三次及び四次構造に作用することによって達成され、したがって、可逆的である。この作用は、非常によく知られており、2つの広範な分野、例えば、気管支炎のヒト療法においては、痰の粘度を低下させ、急性及び慢性気管支炎における気管支及び気管クリアランスを改善するために適用され、他方、しわ及び線条を有する対象の皮膚の柔軟性を改善するために化粧品産業で適用されている。実際、皮膚の主成分であるケラチンの構造は、アミノ酸鎖中で、2つの隣接していないシステイン分子間での相互作用の結果として、二硫黄結合に富む。同様なことが、成分が二硫黄結合に富む痰について言える。−SS−架橋を2つの−SH遊離基に還元することによる二硫黄結合の切断は、共有結合に起因する剛性を開放することにより、タンパク質の伸張を可能にする。他方で、この現象は可逆的であり、実際、2つの遊離基は、さらに相互作用して、−SS−架橋を形成し得る。
【0003】
アルコールと有機酸のエステルは、当技術分野で知られており、スキンケアとして、さらには伸展線の予防と低減のための栄養物として用いられる。それらは、必須の皮膚軟化薬が有効に軟化及び弾性付与を保持している限り実質的に作用する。トリグリセリドは、動物及び植物組織に生理的に存在するグリセロールのエステルである。それらのエステルは、6から18個までの異なる炭素原子数の炭素原子鎖を有する有機脂肪酸から構成されており、飽和又は不飽和、主として一、二若しくは三不飽和であってもよい。鎖長及び二重結合の存在は、脂肪酸及びそれらのエステルの融点に影響する。融点の低下により、これらの化合物は、それらの皮膚軟化及び湿潤特性に有用である半固体又は液状となる。コレステリドは、コレステロールと有機脂肪酸とのエステルであり、自然界、主として動物の脂肪組織及び神経組織にも存在する。それらはまた、それらの皮膚軟化特性のためにクリーム剤及び軟膏剤の調製に用いられる。フィトステロールエステルは、植物におけるその等価物であり、成分植物油フィトステロールエステルのステロール成分は、β−シトステロール、カンペステロール及びスチグマステロールである。植物油フィトステロールエステルのこれらの成分は、それらの皮膚軟化特性のために、スキンケア製品などの化粧品中の成分として既に存在しており、したがって、コレステリド及びトリグリセリドと類似の意図する用途を有する。ステロールとのエステルの組成中に加わる脂肪酸はまた、炭素原子が6から18個まで変化し、それらは、飽和又は不飽和、主として一、二若しくは三不飽和脂肪酸であってもよい。ミリスチン酸イソプロピル及びパルミチン酸イソプロピルなどのアルコールと有機酸とのエステルは、合成することができる。ミリスチン酸イソプロピルは、イソプロピルアルコールと飽和C14脂肪酸であるミリスチン酸とのエステルであり、化粧品及び製薬産業の双方に、そしてまた膣製剤用途において広範に用いられている。本発明の対象である組成物は、増大した伸展性と弾性回復との双方の点から、組織の弾性の改善に相乗的に作用する少なくともチオール化化合物と有機酸のエステルとを含有する。この特徴は、妊娠後期における膣の遠位部分及び会陰組織の弾性を増大させるために重要である。自然分娩は、娩出期中の過度の伸展に起因する会陰組織の裂傷を伴うことが多い。短〜中期合併症は、しばしば女性の30〜50%における疼痛、性交疼痛及び尿失禁であることが示されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2)。
【0004】
会陰切開の実施は、裂傷の割合と重症度の点で自然裂傷を減少させ得るが、産床女性の性交疼痛及び直腸失禁のような合併症がないことはない。最近の系統的エビデンスレビューによれば、会陰切開は米国における経膣分娩の約30〜35%において実施されているが、重度な膣若しくは会陰外傷、性交疼痛又は尿失禁について統計的に有意な差は報告されなかった(非特許文献3)。
【0005】
妊娠の最後の数週間における会陰マッサージは、自然分娩時における伸展への一層の要請に対し組織に準備させるための当技術分野で知られている習慣である。10〜15分間のマッサージを分娩の前の最後の6〜8週間ほぼ毎日又は週3回行う。アーモンド油を潤滑剤として用いる。この習慣の有用性は議論の的となっており、非特許文献4によれば、会陰マッサージの習慣は、経膣分娩の経験のない女性において縫合に余儀なくされる外傷の発生率及び会陰切開術の数を有意に減少させることにより、会陰組織の伸展性を改善することができるが、会陰マッサージを実行しない女性と比較して1若しくは2度の会陰の裂け又は3から4度の会陰外傷の発生率の差は認められなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Lukaxz ES et al. Obst Gynecol. 2006
【非特許文献2】Olsen LO et al Obstet. Gynecol. 1997
【非特許文献3】ACOG Practice Bulletin. Episiotomy. Clinical Management Guidelines for Obstet. Gynecol. 2006
【非特許文献4】Beckman MM et al. Birth 2006
【非特許文献5】Sparavigna A, Setaro M, Misurazione delle proprieta meccaniche della cute mediante metodi di torsione, "Diagnostica non invasiva in dermatologia" a cura di Stefania Seidenari, EDRA Medical Publishing & New Media, Milano, 1998, pages 323-328
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくともチオール化化合物と、有機酸のエステルと、適切な賦形剤とを含有する組成物は、2つの成分、すなわち、チオール化化合物及び有機酸のエステルの相乗作用により皮膚の弾性を改善することが今回示された。さらに、少なくともチオール化化合物と、有機酸のエステルと、適切な賦形剤とを含有する組成物の定期的な適用は、膣の遠位部及び会陰組織の弾性特性を増大させることができる。組成物は、会陰組織中への成分の深い浸透を改善し、また分娩の娩出期に向けて膣及び会陰筋をトレーニングするためにも、クリーム、軟膏、ゲル又はローションの形態であることが好ましく、会陰マッサージにより局所適用することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
組成物は、少なくともチオール化化合物を、組成物の総重量を基準として0.1から25重量%、好ましくは0.5から15重量%、より好ましくは1.0から10%の割合で含有する。チオール化化合物は、好ましくは硫酸化アミノ酸、より好ましくはシステインの誘導体、最も好ましくはカルボキシメチルシステインである。好ましい実施形態によれば、前記硫酸化アミノ酸は、1−メチオニン、1−システイン、1−シスチン、タウリン、4−チアゾリジンカルボン酸、カルボキシメチルシステイン及び/又はメチルスルホニルメタン又はそれらの生理学的に許容できる塩から選択される。
【0009】
組成物は、少なくとも有機酸のエステルを、組成物の総重量を基準として1から95重量%、好ましくは5から70重量%、より好ましくは10から45%の割合で含有する。有機酸のエステルは、好ましくはグリセロールのエステル又はコレステロールのような動物若しくは植物ステロールのエステル又はそれらの混合物である。
【0010】
有機酸は、2から30個の炭素原子、好ましくは6から18個の炭素原子、より好ましくは12から18個の炭素原子を含有する。有機酸は、飽和又は不飽和である。
【0011】
組成物は、従来の技術により調製し、適合性賦形剤及び薬剤学的に許容できる担体、例えば、イオン化剤、酸化防止剤、キレート化剤、湿潤剤、うっ血除去剤、消毒剤及び/又は抗菌剤、香味料及び着色剤を含有してもよい。
【0012】
組成物はまた、補足的な、又はともかく有用な活性を有する他の有効成分と組み合わせて含有してもよい。本発明により調製されるこれらの組成物の例は、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤又は泡剤などである。
【実施例】
【0013】
本発明の医薬組成物及びその使用を、以下の実施例によってより詳細に説明する。しかし、かかる実施例は例示のために示すものであって、限定のためではないことに留意すべきである。
【0014】
(実施例1)
以下のw/w%組成を有するリポゲル(=均一な疎水性軟膏)製剤を調製した。
1)システイン酸リシンカルボキシメチル1 5.00%
2)ポリグリセリル−3蜜ろう2 7.50%
3)甘扁桃油(Prunus amygdalus var. dulcis)3 12.00%
4)トコフェロール、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸4 0.05%
5)ワセリン5 15.00%
6)水素化ヒマシ油6 2.00%
7)鉱物油7 100.00%まで適量
1Elastocell(登録商標);2Cera Bellina(遊離脂肪酸がポリグリセロールエステルに変換された蜜ろうの親水性誘導体);3スイートアーモンド油(約65%のオレイン酸由来のグリセリドを含有する);4Aperoxid TLA;5白色軟パラフィン;6Cutina(登録商標)HR粉末(ヒドロキシステアリン酸(C18)のトリグリセリドから主に構成される);7Pharma 55
鉱物油、ポリグリセリル−3蜜ろう、甘扁桃油、Aperoxid TLA及びワセリンをターボエマルサー(turboemulsor)で混合し、70℃で加熱した。塊が溶融したときに、完全に分散するまで穏やかに撹拌しながら水素化ヒマシ油を加えた。次いで、溶融した塊を45℃に冷却し、均一なゲルが得られるまで撹拌しながらシステイン酸リシンカルボキシメチルを加えた。
【0015】
得られたゲルは、本発明による21.50%のエステルを含有する。これは、象牙色で、外観が均一である。
【0016】
(実施例2)
以下のw/w%組成を有するリポゲル(=均一な疎水性軟膏)製剤を調製した。
1)システイン酸リシンカルボキシメチル 7.50%
2)ポリグリセリル−3蜜ろう 5.00%
3)アセチル化ラノリン* 2.00%
4)トコフェロール、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸 0.05%
5)ワセリン 38.50%
6)鉱物油 14.00%
7)水素化ヒマシ油 3.00%
8)ダイズ油** 100.00%まで適量
*Modulan(商標)ラノリン誘導体(Noveon)アセチル化ラノリンアルコール;**リノール酸(50〜57%)、リノレン酸(5〜10%)、オレイン酸(17〜26%)、パルミチン酸(9〜13%)及びステアリン酸(3〜6%)のグリセリドからなる。
【0017】
得られたゲルは、本発明による39.95%のエステルを含有する。
【0018】
製剤は、実施例1で記載した同じ方法を用いて調製した。
【0019】
(実施例3)
以下のw/w%組成を有するリポゲル(=均一な疎水性軟膏)製剤を調製した。
1)システイン酸リシンカルボキシメチル 5.00%
2)ポリグリセリル−3蜜ろう 5.00%
3)甘扁桃油 12.00%
4)トコフェロール、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸 0.10%
5)ワセリン 15.00%
6)フィトステロールエステル* 15.00%
7)水素化ヒマシ油 3.50%
8)シリカ 1.50%
9)鉱物油 100.00%まで適量
*Vegapure(Cognis)
得られたゲルは、本発明による35.5%のエステルを含有する。
【0020】
製剤は、実施例1で記載した同じ方法を用いて調製した。
【0021】
(実施例4)
以下のw/w%組成を有するリポゲル(=均一な疎水性軟膏)製剤を調製した。
1)システイン酸リシンカルボキシメチル 5.00%
2)ポリグリセリル−3蜜ろう 7.50%
3)甘扁桃油 7.00%
4)ミリスチン酸イソプロピル* 5.00%
5)トコフェロール、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸 0.10%
6)ワセリン 15.00%
7)水素化ヒマシ油 4.50%
8)シリカ 1.50%
9)鉱物油 100.00%まで適量
*Crodamol IPM(Croda、イソプロピルアルコールと飽和脂肪酸であるミリスチン酸とのエステル)
得られたゲルは、本発明による24.00%のエステルを含有する。
【0022】
製剤は、実施例1で記載した同じ方法を用いて調製した。
【0023】
(実施例5)
以下のw/w%組成を有するリポゲル(=均一な疎水性軟膏)製剤を調製した。
1)L−メチオニン 5.00%
2)合成蜜ろう* 8.50%
3)甘扁桃油 12.00%
4)トコフェロール、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸 0.05%
5)ワセリン 15.00%
6)水素化ヒマシ油 4.00%
7)シリカ 2.50%
8)ニーム油** 1.00%
9)ゴマ油*** 2.00%
10)鉱物油 100.00%まで適量
*Syncrowax BB4(Croda)
**リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸及びステアリン酸のトリグリセリドの混合物を含有
***アラキドン酸(0.8%)、リノール酸(40.4%)、オレイン酸(45.4%)、パルミチン酸(9.1%)及びステアリン酸(4.3%)のグリセリドを含有
得られたゲルは、本発明による27.50%のエステルを含有する。
【0024】
製剤は、実施例1で記載した同じ方法を用いて調製した。
【0025】
(実施例6)
以下のw/w%組成を有するリポゲル(=均一な疎水性軟膏)製剤を調製した。
1)メチルスルホニルメタン 5.00%
2)合成蜜ろう 5.00%
3)甘扁桃油 12.00%
4)トコフェロール、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸 0.10%
5)ワセリン 15.00%
6)水素化植物油* 3.50%
7)シリカ 1.50%
8)鉱物油 100.00%まで適量
*CEGESOFT(登録商標)HF62(Cognis、C16〜C24トリグリセリドの混合物を含有)
得られたゲルは、本発明による20.50%のエステルを含有する。
【0026】
製剤は、実施例1で記載した同じ方法を用いて調製した。
【0027】
(実施例7)
以下のw/w%組成を有するリポゲル(=均一な疎水性軟膏)製剤を調製した。
1)システイン酸リシンカルボキシメチル 5.00%
2)合成蜜ろう 5.00%
3)甘扁桃油 6.00%
4)トコフェロール、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸 0.10%
5)ワセリン 15.00%
6)ラノリンアルコール* 3.50%
7)ラノリンUSP** 6.00%
8)シリカ 1.50%
9)鉱物油 100.00%まで適量
*Super Hartolan(Croda、医薬品等級のラノリンのコレステロールに富む固体画分);**Medilan(商標)(Croda、コレステロールと数種の脂肪酸のエステルとの混合物を含有)
得られたゲルは、本発明による20.50%のエステルを含有する。
【0028】
製剤は、実施例1で記載した同じ方法を用いて調製した。
【0029】
(実施例8)
比較臨床試験
白色軟パラフィンからなる標準対照製品と比較して、急性試験において3種の組成物の皮膚弾性化活性を調査することを目的とした健常志願者に対する臨床試験を実施した。本試験の目的は、カルボキシメチルシステイン酸塩等のチオール化化合物及び脂肪酸とグリセロールとのエステルの混合物を含有する製剤の活性を、チオール化化合物のみ又はエステル混合物のみを含有する異なる製剤の活性と比較することであった。
【0030】
志願者は、24から55歳(平均45歳)の21人の女性であった。各製品を、前腕の掌側表面に軽いマッサージにより無作為に1回適用した。可塑弾性(Plastoelasticity)の測定は、ベースライン時及び各製品の適用の30分後に、非特許文献5に記載されている皮膚トルクメーター(Dia−Stron LTD)により測定されるねじれ測定法(torsiometry)により実施した。
【0031】
この方法は、両面粘着テープにより皮膚に付着させる2つの同心円からなる装置により皮膚部位においてin vivoで行われるねじれの原理を用いる。2つの円の間の距離(1mm)がねじれを受ける部位を制限する。内側の円は、外側の円に対して回転することによって皮膚に一定のねじれを加え、皮膚の拮抗する作用力が、加えられるねじれモーメント(9mNm)と釣り合ったときに停止する。ねじれの持続時間は、1秒である。装置は、機械の動作により要求される段階とまたその停止時に得られるねじれ角θを測定する。
【0032】
a.m.技術により測定されるパラメーターは、以下のような測定される弾性回復及び皮膚弾性であった。
e:即時伸展性
f:最大伸展性
v:粘弾性
r:即時弾性回復
r/Ue:弾性回復
r/Uf:皮膚弾性
v/Uc:粘性
τon及びτoffは「前進」及び「戻り」曲線上の時定数
【0033】
用いた組成物は以下のとおりであった。
製品1:実施例1による組成を有するリポゲルLPOL514
製品2:以下のw/w%組成を有するヒドロゲルLPOL513
1)システイン酸リシンカルボキシメチル1 7.50%
2)プロピルパラベンナトリウム 0.04%
3)メチルパラベンナトリウム 0.37%
4)イミダゾリジニルウレア2 0.20%
5)EDTA二ナトリウム 0.10%
6)ヒドロキシエチルセルロース3 1.50%
7)カラゲニンゲル4 5.00%
8)クエン酸 pH5.5まで適量
9)水 100.00%まで適量
1Elastocell(登録商標);2Gram 1;3Natrosol 250M;4Seamollient
製品3:以下のw/w%組成を有するヒドロゲルLPOL520
1)水素化ダイズホスファチジルコリン1 1.03%
2)コレステロールUSP 0.26%
3)ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA) 0.10%
4)アスコルビン酸 7.10%
5)グリセロール 5.00%
6)EDTA二ナトリウム2 0.10%
7)メチルパラベンナトリウム3 0.37%
8)プロピルパラベンナトリウム4 0.04%
9)イミダゾリジニルウレア5 0.21%
10)ヒドロキシエチルセルロース6 0.70%
11)キサンタンゴム7 1.00%
12)水 100.00%まで適量
1Lipoid S 100−3;2Dissolvine NA−2;3Nipagin M ナトリウム;4Nipasol M ナトリウム;5Gram 1;6Natrosol 250M;7Rhodigel Ultra
製品4:以下の組成を有する対照標準
1)ワセリン(=白色軟パラフィン)CAS番号8009−03−8 100%
結果を以下の表1に要約する。
【0034】
表1:21人の健常志願者の前腕皮膚に異なる治験製品又は対照の適用30分後のねじれ測定パラメーターのベースラインに対する変化率(スチューデントのt検定)
【0035】
【表1】

【0036】
* ベースラインに対してP<0.05
** ベースラインに対してP<0.01
***: ベースラインに対してP<0.001
【0037】
結果は、製品1及び2に含まれているチオール化化合物と製品1、3及び4に含有されているエステルの相乗活性を示している。実際のところ、2つの主成分であるチオール化化合物及びエステルは、製品2(活性なし)若しくは製品3(活性なし)、又は製品4(穏やかな活性を有する対照の白色軟パラフィン)のように単独で存在する場合には、弾性付与活性はないか、又は穏やか(13%以下)であった。これに対して、製品1のように、チオール化化合物とエステルとが同じ製剤中に組み合わされている場合、得られた弾性付与活性は強く(弾性について+24%、弾性回復について+23%)、エステル単独の活性より優位であった。結果として得られた効果は、相乗的であり、組合せが、2つの成分の単独の合計よりも優っていた。
【0038】
(実施例9)
比較臨床試験
妊娠の最後の2ヵ月間に実施例3による製剤を定期的に適用することにより、会陰組織における弾性付与活性及び分娩時の会陰の外傷を予防する能力を調査することを目的として、妊娠女性における臨床試験を実施した。試験は、既存群と比較した、オープンラベルであった。
【0039】
全体として、36人の妊娠女性を試験に含めた。すべての女性が初産婦(初回妊娠)であり、その女性のうちのいずれも帝王切開分娩の危険にさらされていなかった。製品を、第30週の初めから自然分娩まで毎日規則的に会陰のマッサージを実施することによって適用した。製品(2〜5g)の適用は、会陰を製剤で湿らせ、次いで、陰唇及び膣の遠位部上に円運動による緩やかなマッサージを約15分間実施することによって行った。
【0040】
分娩時に評価したパラメーターは、婦人科医の判断による0(なし)から100(最大)までの視覚的アナログ尺度(VAS)における伸展性及び弾性回復、会陰切開術のパーセント、裂傷の割合及びグレード、有害事象並びに効能の総合評価であった。
【0041】
結果は次のとおりであった。伸展性は平均値±SDが78.81±8.59であり、弾性回復は78.04±12.4であり、会陰切開術は施行されず、グレードIの裂傷は8.3%であり、グレードII及びIIIの裂傷はなかった。会陰切開術及び/又は会陰裂傷に関する結果を、2004年の1年間に同じ治験実施施設で起こった全ての分娩を含む425例の自然分娩の既存群と比較した。データを以下の表2に要約する。
【0042】
表2:女性の既存群と比較した試験群における自然分娩時の会陰切開術及び裂傷の割合
【0043】
【表2】

【0044】
製品は、会陰の弾性の改善及び分娩時の会陰組織における外傷性合併症の予防に非常に有効であったと結論付けられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠女性における膣及び会陰の弾性を改善するための局所組成物の製造のための
a)少なくともチオール化化合物、及び
b)少なくとも有機酸のエステル又はその混合物
の使用。
【請求項2】
成分a)は硫酸化アミノ酸及びその誘導体から選択されることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
成分a)は1−メチオニン、1−システイン、1−シスチン、タウリン、4−チアゾリジンカルボン酸、カルボキシメチルシステイン及び/又はメチルスルホニルメタン、並びにそれらの生理学的に許容される塩から選択されることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
成分a)は0.1から25重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項5】
成分a)は0.5から15重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
成分a)は1.0から10重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項7】
成分b)はグリセロールのエステル又は動物若しくは植物ステロールのエステル又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記ステロールがコレステロールであることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記有機酸は2から30個の炭素原子、好ましくは6から18個の炭素原子、より好ましくは12から18個の炭素原子を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記有機酸は飽和又は不飽和であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項11】
成分b)は1.0から95重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項12】
成分b)は5から70重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項13】
成分b)は10から45重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項14】
1又は複数の薬剤学的に許容できる賦形剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項15】
前記賦形剤はイオン化剤、酸化防止剤、キレート化剤、湿潤剤、熱粘着化剤(thermoviscosizing agent)、うっ血除去剤、消毒剤及び/又は抗菌剤、香味料及び着色剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2010−500309(P2010−500309A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523211(P2009−523211)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053793
【国際公開番号】WO2008/017521
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(503459992)ポリケム・エスエイ (16)
【Fターム(参考)】