説明

高い熱伝導率を有する定着ベルトのための金属ナノ粒子強化ポリイミド

【課題】低い熱容量、高い熱伝導率を有する高速複写機及びプリンタに適した定着ベルトを提供する。
【解決手段】ステンレス鋼基材上に、ポリイミド成分が約80.0重量%から約99.9重量%の間からなり、複数の銅ナノ粒子が約0.01重量%から約3.0重量%の間からなる液体コーティング溶液を塗布、硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、ゼログラフィ、電子写真画像化、又は、静電複写画像化等の静電複写法において、画像化処理は、用紙シート、プラスチック、フィルム等の支持体表面上に可視トナー像を形成することを含む。可視トナー像は、大抵は、中間転写ベルトに対して転写されることができる静電潜像を感光体上に形成することによって生成され、その後、永久像を形成するために、加熱された定着ベルト又は加熱されたロール定着器を使用して支持体表面上に定着される。
【0002】
ロール定着器は、定着ベルトよりも高い温度まで加熱されることができ、高速、高スループット及び高品質の像を支持体表面上に提供することができる。しかしながら、ロール定着器は、最初の予熱時間を必要とし、したがって、瞬時オンプリンタを提供しない。像を定着するための定着ベルトは、ロール定着器よりも低い温度に加熱され、より低いエネルギー消費量を有する瞬時オンプリンタを提供することができる。しかしながら、それらは、一般に、ロール定着器を有するプリンタよりも低い速度をもたらす。定着ベルトの材料は、通常、ポリイミド及びポリイミド共重合体等の高性能エンジニアリングポリマーを含む。しかしながら、ポリマーはまた、像の定着中に熱エネルギーをトナー及び支持体表面に対して伝達するよりもむしろ蓄積する定着ベルトをもたらし得る高い熱容量及び低い熱伝導率に悩まされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それゆえに、定着ベルトに付随する問題を解決するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本教示の実施形態は、約0.1重量%から約60重量%の間の固形物と約40重量%から約99.9重量%の溶媒とからなる混合物を備えるポリイミド成分を、複数の銅ナノ粒子と混合することを備える方法を使用して液体コーティング溶液を形成することを備え、液体コーティング溶液内のポリイミド成分が約80.0重量%から約99.9重量%の間からなり、液体コーティング溶液内の複数の銅ナノ粒子が約0.01重量%から約3.0重量%の間からなる、静電複写装置のための定着ベルトを製造する方法を含むことができる。液体コーティングは、固体基材に対して塗布されることができ、液体コーティング溶液は、硬化されて固体基材から取り外される。
【0005】
本教示の他の実施形態は、静電複写像形成装置のための定着ベルトを含むことができる。定着ベルトは、約85重量%から約99.8重量%の間のポリイミドと、約0.1重量%から約15重量%の間の銅ナノ粒子と、約1000メガパスカル(MPa)から約10000MPaの間のヤング率とを含むことができる。
【0006】
さらに、本教示は、定着ベルトを備える静電複写像形成装置を含むことができる。定着ベルトは、約85重量%から約99.9重量%の間のポリイミドと、約0.1重量%から約15重量%の間の銅ナノ粒子と、約20メガパスカル(MPa)から約500MPaの間の破壊強度と、約1000MPaから約10000MPaの間のヤング率とを含むことができる。静電像形成装置は、さらに、潜像を受けるように構成された少なくとも1つの感光体と、少なくとも1つの感光体上に潜像を書き込むように構成された少なくとも1つの帯電装置とを含むことができ、定着ベルトは、永久基材上にトナー像を定着させるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、ポリイミド及び銅ナノ粒子によって形成された定着ベルトと比較して純粋なポリイミドによって形成された定着ベルトの熱容量を比較しているグラフである。
【図2】図2は、本教示にかかる定着ベルトを含む静電複写印刷装置の横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
注意すべきは、厳密な構造上の正確さ、細部及び縮尺を維持するためよりはむしろ、本教示の理解を容易にするために、図面の一部の詳細が簡略化されて描かれているということである。
【0009】
本願明細書において使用されているように、語「プリンタ」は、ディジタル複写機、製本機、ファクシミリ機、多機能機等の任意の目的のために印刷出力機能を実行するいかなる像形成装置も含む。語「ポリマー」は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ポリカーボネートやエポキシ等の樹脂、及び、当該技術にとって公知の関連化合物を含む長鎖分子から形成される炭素系化合物の広い範囲のうちの任意の1つを含む。
【0010】
定着ベルトは、構造の大部分を形成する基材を含むことができ、様々な量で他の添加物を含んでもよい。定着ベルトがある特性を有することが望ましい。例えば、望ましい定着ベルトの特性は、低い熱容量、高い熱伝導率、良好な柔軟性、及び、十分な強度を含む。低い熱容量を有する定着ベルトは、より少ない熱エネルギーを蓄積し、それゆえに、物理的接触によってより迅速に熱を支持体表面に対して伝達し、支持体表面に対するトナーの改善された定着をもたらす。同様に、高い熱伝導率を有する定着ベルトは、低い熱伝導率を有する材料よりも良好に熱エネルギーを吸収して放出し、定着ベルトのより均一な加熱をもたらす。しかしながら、ポリイミド及びポリイミド共重合体等の定着ベルトの製造に使用される材料は、通常、高い熱容量及び低い熱伝導率を有する。
【0011】
本教示の実施形態において、金属ナノ粒子は、定着ベルトを形成するために使用される溶液に組み込まれることができる。例えば、銅ナノ粒子は、継目なしの定着ベルトを形成するように流し塗りのためにポリアミック酸コーティング溶液内に混入されることができる。加熱、乾燥及び硬化の後、銅ナノ粒子強化ポリイミドフィルムは、空気及び窒素に対する露出下で改善された熱安定性をもたらすことができる。
【0012】
純粋なポリイミドを使用して形成された定着ベルトを、本教示の実施形態にかかる銅ナノ粒子が混合されたポリイミドによって形成された定着ベルトと比較すると、ヤング率又は破壊強度のいずれかにおいては、有意差はみつからなかった。
【0013】
さらに、重量で7%(すなわち7重量%)の銅ナノ粒子を有する完成した定着ベルトをもたらすようにポリイミド材料に銅ナノ粒子を導入することによって製造される定着ベルトは、銅ナノ粒子なしで形成されたポリイミドコーティングを有するベルトと比較して、熱容量の減少をもたらした。50℃における熱容量は、1.281J/g・℃から1.021ジュール/グラム・℃(J/g・℃)まで20%減少した。100℃において、熱容量は、0.9748J/g・℃から0.6218J/g・℃まで36%減少した。150℃において、熱容量は、0.3534J/g・℃から0.2136J/g・℃まで28%減少した。それゆえに、本教示の実施形態にかかる定着ベルトは、従来の定着ベルトよりも望ましい熱伝達効率を有することができ、高速複写機及びプリンタにより適した定着ベルトをもたらす。
【0014】
本願明細書において記載されるサンプルの調合液は、所定量の溶媒にポリイミドワニス(ポリアミック酸)溶液を含んでいた。適切なポリアミック溶液は、日本、東京の宇部興産社から入手可能なU−ワニスタイプSを含むことができる。U−ワニスは、溶媒における18重量%(±1重量%)の固形分の混合物として提供される。この構成のための溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)である。サンプル試験の間、U−ワニスは、結果として生じたポリアミド溶液がより良好なコーティング品質を容易にするように13.7重量%の固体濃度を有するように、追加のNMPによってさらに希釈された。
【0015】
定着ベルトの形成中におけるステンレス鋼基材等の固体基材上への定着ベルト基礎液の適切なコーティングを確実にするために、非イオン性界面活性剤及び表面張力低減剤が液体コーティング溶液に与えられた。適切な非イオン性界面活性剤は、イリノイ州ノースフィールドのステパンプロダクツ社から入手可能なStepfac−8171を含む。適切な表面張力低減剤は、コネチカット州ウォリンフォードのBYK USA社から入手可能なBYK−333を含む。
【0016】
さらに、サンプルBのみにおいて、銅ナノ粒子が液体コーティング溶液内に混合された。ニューヨーク州サウスグレンズフォールズのエイムズ・ゴールドスミス社から入手された銅ナノ粒子は、約350ナノメートル(nm)の平均直径を有していた。
【0017】
以下の表1は、重量(グラム)及び重量パーセント(重量%)で各サンプルについての液体コーティング溶液に添加される各材料の量の一覧を示している。
【表1】

【0018】
表1におけるポリアミック酸溶液(すなわち、U−ワニス)は、18%のポリイミド及び82重量%のNMPを含む。表2は、2つのサンプルについての各材料の総重量%の一覧を示している。
【表2】

【0019】
各サンプル混合物を与えた後に、各サンプルは、30分の期間だけステンレス鋼ビーズを使用して引き延ばされた。引き延ばされた後に、引き延ばし媒体は、濾過されて取り除かれた。次に、各サンプル液体コーティング溶液は、10ミルのバードバーを使用して、固体基材上に、より具体的にはステンレス鋼基材上にコーティングされた。
【0020】
固体基材上に施した後に、コーティングは、65℃の温度で30分間、第1の加熱ステージを使用し、続いて、135℃の温度で30分間、第2の加熱ステージを使用し、続いて、285℃の温度で45分間、第3の加熱ステージを使用し、溶媒を焼くことによって柔軟性のある固体状態に乾燥されて硬化された。定着ベルトを室温まで硬化させて冷却した後に、ベルトは、固体基材から取り外された。硬化後に、結果として生じた定着ベルトは、約1ミルから約3ミルまでの範囲の公称厚さを有した。揮発性成分を取り除いた後に、硬化中において、サンプルBの銅強化定着ベルトは、7重量%で定着ベルトの全体にわたって均一に分散された銅ナノ粒子を含んだ。
【0021】
フィルムは、窒素下での示差走査熱量測定(DSC)によって及び空気及び窒素下での熱重量分析(TGA)によってそれぞれ分析された。DSCトレースは、異なる温度でフィルムの熱容量を計算するために使用された。TGAデータは、フィルムの熱安定性を比較するために分析された。
【0022】
図1は、2つの試験サンプルを使用して形成された定着ベルトの熱容量を描いているグラフである。サンプルAの定着ベルトは、銅を含まない一方で、サンプルBの定着ベルトは、7重量%の銅ナノ粒子を含んだ。サンプルBは、より低い熱容量、したがって、より高い熱伝導率を明示している。
【0023】
表3は、窒素及び空気下でのサンプルA及びサンプルBについてのTGA結果を要約している。
【表3】

【0024】
7重量%の銅ナノ粒子を含んだサンプルBのポリイミド定着ベルトは、銅ナノ粒子がないサンプルAの定着ベルトよりも良好な熱安定性を明示した。
【0025】
定着ベルトのヤング率及び破壊強度はまた、インストロン社(マサチューセッツ州ノーウッド)6022フロアモデル試験システムを使用して試験された。試験結果は、サンプルA(純粋なポリイミド)が5578メガパスカル(MPa)のヤング率及び186.0MPaの破壊強度を有することを示した。7重量%の銅ナノ粒子を含んだサンプルBからの試験結果は、5773MPaのヤング率及び169.6MPaの破壊強度を示した。それゆえに、銅ナノ粒子によって製造される定着ベルトの機械的特性は、僅かに低減されるが、それらは同程度である。
【0026】
要約すると、NMPにおけるポリアミック酸溶液から形成されて銅ナノ粒子によって強化された定着ベルトは、銅ナノ粒子がない定着ベルトと比較して低減された熱容量を明示した。銅ナノ粒子を有する定着ベルトは、僅かに熱安定性を改善した。液体コーティング溶液は、非イオン性界面活性剤及び表面張力低減剤を含み、固体基材上の材料の十分なコーティングが達成された。材料がステンレス鋼固体基材から十分な取り外しを明示したことから、追加の取り外しコーティングは必要ではなかった。
【0027】
液体コーティング溶液は、溶液内でともに成分を最初に与えることによって調製されることができる。ポリイミド成分は、例えばNMP等の約82重量%の溶媒において約18重量%の固形分の溶液を含むことができる。ポリイミド成分は、約50.0重量%から約99.8重量%の間の又は約55重量%から約95重量%の間の又は約60重量%から約80重量%の間の重量による百分率として溶液の範囲内で与えられることができる。当然のことながら、ポリイミド及び溶媒(例えばNMP)のそれぞれが別個の材料として混合されるか又は異なる出発重量%(すなわち、前もって混合されたU−ワニスを使用しない)を有する場合、記載されたような均等な最終重量%をもたらすための材料量の調整が、液体コーティング溶液及び定着ベルトを製造するために実行されることができる。例えば、完成した液体コーティング溶液についてのポリイミド成分は、約0.1重量%から約60重量%の間又は約5重量%から約40重量%の間又は約10重量%から約30重量%の間の総固形分を有することができる。ポリイミド成分は、約40重量%から約99.9重量%の間又は約60重量%から約95重量%の間又は約70重量%から約90重量%の間の総固形分を有することができる。
【0028】
銅ナノ粒子は、約5nmから約500nmまで又は約100nmから約450nmの間又は約200nmから約400nmまでの平均直径を有することができる。銅ナノ粒子成分は、約0.01重量%から約3.0重量%の間又は約0.5重量%から約2.0重量%の間又は約0.8重量%から約1.2重量%の間の重量による百分率として溶液の範囲内で与えられることができる。不十分な量の銅ナノ粒子が添加された場合、結果は、むしろ純粋なポリイミドに近い機能を果たす材料であるか又は同様の熱容量及び熱伝導率を有することになる。過剰な銅ナノ粒子を添加することは、十分に柔軟性がなく、脆弱で初期故障の傾向がある定着ベルトをもたらし得る。
【0029】
例えばStepfac−8171等の非イオン性界面活性剤は、任意であり、0.50重量%未満又は約0.01重量%から約3重量%の間又は約0.28重量%から約0.34重量%の間の重量による百分率として溶液の範囲内で与えられることができる。一般に、非イオン性界面活性剤は、使用される場合には、イオン電荷を有しない材料とすることができ、長いC−C分子鎖を有する材料であってもよい。
【0030】
例えばBYK−333等の表面張力低減剤は、任意であり、約0.50重量%未満又は約0.01重量%から約3重量%の間又は約0.01重量%から約0.40重量%の間又は約0.01重量%から約0.03重量%の間の重量による百分率として溶液の範囲内で与えられることができる。一般に、表面張力低減剤は、使用される場合には、フッ素重合体等の1つ以上のフッ化材料及び/又は1つ以上のシリコン材料を含むことができる。
【0031】
例えばNMP等の溶媒の添加量は、約10重量%から約46重量%の間又は約20重量%から約40重量%の間又は約25重量%から約35重量%の間の重量による百分率として溶液の範囲内で与えられることができる。
【0032】
溶液成分を与えた後に、溶液は、約10分から約72時間の間又は約20分から約48時間の間又は例えば約24時間等の約20時間から約30時間の間の期間、ステンレス鋼ビーズ等の引き延ばし媒体を使用して混合されて引き延ばされることができる。引き延ばした後に、引き延ばし媒体は、液体コーティング溶液から濾過されて取り除かれる。液体コーティング溶液は、収集され、例えば吹き付け塗布又は浸漬塗布によってステンレス鋼基材等の固体基材上に分配される。液体コーティング溶液は、乾燥後に結果として生じる定着ベルトが、例えば約1ミルから約8ミルの間といった約0.1ミルから約10ミルの間の厚さを有するように十分な厚さに分配される。
【0033】
固体基材をコーティングする溶液は、例えば加熱を使用して乾燥されて硬化されることができる。1つのプロセスにおいて、第1の加熱ステージは、加熱チャンバ内に溶液及び固体基材を置くことと、約50℃から約120℃の間又は約60℃から約100℃の間又は約65℃の第1の目標温度までチャンバ内で温度に傾斜をつけることとを含むことができる。固体基材及び液体コーティング溶液は、約5分から約75分の間又は約20分から約40分の間又は約30分の期間、第1の目標温度でチャンバ内で加熱される。これは、約120℃から約190℃の間又は約120℃から約150℃の間又は約135℃の第2の目標温度までチャンバ温度に傾斜をつけることを含むことができる第2の加熱ステージへと続くことができる。固体基材及び液体コーティング溶液は、約10分から約80分の間又は約20分から約40分の間又は約30分の期間、第2の目標温度でチャンバ内で加熱される。これは、約250℃から約450℃の間又は例えば約285℃等の約270℃から約300℃の間の第3の目標温度までチャンバ温度に傾斜をつけることを含むことができる第3の加熱ステージへと続くことができる。固体基材及び液体コーティング溶液は、約10分から約2時間の間又は約30分から1時間の間又は約45分の期間、第3の目標温度でチャンバ内で加熱される。
【0034】
使用の準備が整っている定着ベルトの組成物は、1つの組成物を有することができる。例えば、定着ベルトは、約85重量%から約99.9重量%の間又は約87重量%から約99.5重量%又は約92重量%から約99重量%の間の硬化されたポリイミドを含むことができる。定着ベルトは、さらに、約0.1重量%から約15重量%の間又は約0.5重量%から約13重量%の間又は例えば7重量%等の約6重量%から約8重量%の間の銅ナノ粒子を含むことができる。
【0035】
本教示にかかる定着ベルトは、約20MPaから約500MPaの間又は約50MPaから約400MPaの間又は約80MPaから約350MPaの間の破壊強度を有することができる。さらに、定着ベルトは、約1000MPaから約10000MPaの間又は約2000MPaから約9000MPaの間又は約3000MPaから約8000MPaの間のヤング率を有することができる。
【0036】
さらに、本教示にしたがって形成された定着ベルトは、50℃において約0.75ジュール/グラム・℃(J/g・℃)から1.25J/g・℃の間又は約0.9J/g・℃から1.2J/g・℃の間又は約1.0J/g・℃から約1.1J/g・℃の間の熱容量を有することができる。100℃において、定着ベルトは、約0.4J/g・℃から0.9J/g・℃の間又は約0.5J/g・℃から0.7J/g・℃の間又は約0.55J/g・℃から約0.7J/g・℃の間の熱容量を有することができる。150℃において、定着ベルトは、約0.1J/g・℃から0.3J/g・℃の間又は約0.15J/g・℃から0.25J/g・℃の間又は約0.19J/g・℃から約0.23J/g・℃の間の熱容量を有することができる。当然のことながら、このデータは、測定を提供するために使用される測定システムに強く依存するものであり、それゆえに、データは、異なるシステム間で比較できないかもしれない。データは、DSCによって測定された。
【0037】
定着ベルトは、プリンタ、ディジタル複写機、製本機、ファクシミリ機、多機能機等の様々な静電複写装置において使用されることができる。図2は、本教示の実施形態にかかる定着ベルトを有する静電複写装置、特にカラーレーザプリンタの例を描いている。図1のプリンタ10は、ハウジング12と、少なくとも1つ又は複数のカラートナーカートリッジ14A〜14Dとを含むことができる。複数のカラートナーカートリッジ内のトナーは、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、黒(すなわち、CMYK)とすることができる。プリンタ10は、さらに、潜像を受けるようにそれぞれ構成された少なくとも1つ又は複数の感光体(すなわち、ドラム)16A〜16Dと、少なくとも1つの感光体16A〜16D上に潜像を書き込むように構成された少なくとも1つ又は複数の帯電装置18A〜18Dとを含むことができる。像形成装置は、さらに、少なくとも1つの感光体からトナー像を受け、永久基材に対してトナー像を転写するように構成された中間転写ベルト20と、定着ベルト22と、加圧ローラ24とを含むことができる。定着ベルト22は、永久基材に対してトナー像を定着させるように構成されている。用紙トレイ等のホッパ26は、説明を簡単にするために本願明細書ではまとめて「用紙」と称される普通紙のシート、プラスチック又は他の印刷媒体等の複数の永久基材28を格納することができる。プリンタ10は、さらに、ピックアップローラ30と、排出ホッパ又はプラットホーム32とを含むことができる。
【0038】
使用中において、パターン及び色情報を含む像データは、例えばマイクロプロセッサによって処理される。パターン及び色情報に対応するパターン化された静電潜像は、対応する帯電装置18A〜18Dを使用して、回転する感光体16A〜16Dのうちの1つ以上に書き込まれる。各感光体16A〜16D上の静電潜像は、感光体16A〜16D上のカラートナーにおいてパターン化された静電潜像を再生するように、対応するトナーカートリッジ14A〜14Dからトナーを引き付ける。そして、トナーは、各感光体16A〜16Dから中間転写ベルト20へと転写される。用紙シート28は、ピックアップローラ30によってトレイ26から移動される。トナー像は、中間転写ベルト20との圧力接触によって用紙28に対して転写される。そして、像は、定着ベルト22によって供給された熱を用いて且つ定着ベルト22と加圧ローラ24との間における圧力によって用紙に対して固定又は定着される。用紙28上に像を定着した後に、用紙28は、排出トレイ30へと移動させることができる。
【0039】
プリンタは、追加の構造を含むことができ、像形成は、説明の簡略化のために記載されなかった追加の材料及び処理を含むことができる。
【0040】
それゆえに、実施形態は、定着ベルトと、定着ベルトを形成する方法と、定着ベルトを含む静電複写装置とを含むことができる。定着ベルトは、妥当なコストで製造されることができ、例えば従来の定着ベルトに関して減少した熱容量及び増加した熱伝導率等、良好な動作特性を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電複写装置のための定着ベルトを製造する方法において、
約0.1重量%から約60重量%の間の固形物と約40重量%から約99.9重量%の溶媒とからなる混合物を備えるポリイミド成分を、複数の銅ナノ粒子と混合することを備える方法を使用して液体コーティング溶液を形成することと、
液体コーティング溶液を固体基材に塗布することと、
液体コーティング溶液を硬化させることと、
硬化された液体コーティング溶液を固体基材から取り外すことと
を備え、
液体コーティング溶液内のポリイミド成分が約80.0重量%から約99.9重量%の間からなり、液体コーティング溶液内の複数の銅ナノ粒子が約0.01重量%から約3.0重量%の間からなる、方法。
【請求項2】
さらに、約18重量%の固形物と約82重量%の溶媒との混合物からなるポリイミド成分を、複数の銅ナノ粒子と混合することによって液体コーティング溶液を形成することを備え、液体コーティング溶液内のポリイミド成分が約80.0重量%から約99.8重量%の間からなり、液体コーティング溶液内の複数の銅ナノ粒子が、約0.1重量%から約3.0重量%の間からなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、液体コーティング溶液内に表面張力低減剤を混合することを備え、液体コーティング溶液内の表面張力低減剤が約0.01重量%から3.00重量%の間からなる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに、液体コーティング溶液内に溶媒を混合することを備え、液体コーティング溶液内に混合された溶媒が約10重量%から約99重量%からなる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
さらに、ポリイミド成分、複数の銅ナノ粒子、非イオン性界面活性剤、及び、表面張力低減剤の混合後に、約10分から約72時間の間、引き延ばし媒体を使用して液体コーティング溶液を引き延ばすことと、
引き延ばし媒体を液体コーティング溶液から濾過して取り除くことと、
固体基材上に液体コーティング溶液を施すことと
を備える、請求項4記載の方法。
【請求項6】
固体基材がステンレス鋼基材であり、方法が、さらに、
加熱チャンバ内にステンレス鋼基材及び液体コーティング溶液を置くことと、
約5分から約75分の間の期間、約50℃から約120℃の間の第1の目標温度までチャンバ内で温度に傾斜をつけることと、
約10分から約80分の間の期間、約120℃から約190℃の間の第2の目標温度までチャンバ内で温度に傾斜をつけることと、
約10分から約2時間の間の期間、約250℃から約450℃の間の第3の目標温度までチャンバ内で温度に傾斜をつけることと
を備える方法を使用してステンレス鋼基材上の施された液体コーティング溶液を硬化させることと、
ステンレス鋼基材から硬化された液体コーティング溶液を取り除くことと
を備える、請求項5記載の方法。
【請求項7】
静電複写像形成装置のための定着ベルトにおいて、
定着ベルトの約85重量%から約99.8重量%の間からなるポリイミドと、
定着ベルトの約0.1重量%から約15重量%の間からなる複数の銅ナノ粒子と
を備え、
定着ベルトが、約1000メガパスカルから約10000メガパスカルの間のヤング率を有する、定着ベルト。
【請求項8】
定着ベルトが、
約80メガパスカルから約350メガパスカルの間の破壊強度を有し、
約3000メガパスカルから約8000メガパスカルの間のヤング率を有する、
請求項7記載の定着ベルト。
【請求項9】
定着ベルトが、
50℃において約0.75ジュール/グラム・℃(J/g・℃)から1.25J/g・℃の間の熱容量を有し、
100℃において約0.4J/g・℃から0.9J/g・℃の間の熱容量を有し、
150℃において約0.1J/g・℃から0.3J/g・℃の間の熱容量を有する、
請求項7記載の定着ベルト。
【請求項10】
定着ベルトの約85重量%から約99.9重量%の間からなるポリイミドと、
定着ベルトの約0.1重量%から約15重量%の間からなる複数の銅ナノ粒子と
を備え、
約20メガパスカルから約500メガパスカルの間の破壊強度を有し、
約1000メガパスカルから約10000メガパスカルの間のヤング率を有する
定着ベルトと、
潜像を受けるように構成された少なくとも1つの感光体と、
少なくとも1つの感光体上に潜像を書き込むように構成された少なくとも1つの帯電装置と
を備え、
定着ベルトが、永久基材上にトナー像を定着させるように構成されている、静電複写像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−168517(P2012−168517A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−11285(P2012−11285)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】