説明

高い穿刺抵抗及び引裂伝播抵抗を有する多層フィルム

本発明は、層(a)、層(c)及び少なくとも1つの内層(b)を含み、更に、層(a)と内層(b)の間及び内層(b)と層(c)の間にそれぞれ配置される接着促進剤層(d)及び(e)を含む多層フィルムに関し、層(a)及び層(c)は、何れの場合も層(a)又は層(c)の総重量に対して、少なくとも30重量%の量のプロピレンコポリマー少なくとも1つ及び少なくとも20重量%の量のプロピレンホモポリマー少なくとも1つをそれぞれ含み、内層(b)は、ポリアミド成分として、イソホロンジアミン単位を有するホモ−及び/又はコポリアミド少なくとも1つに基づき、接着促進剤層(d)及び(e)は、少なくとも1つの変性熱可塑性オレフィンホモ−又はコポリマーにそれぞれ基づく。更に、本発明は、そのような多層フィルムを含むシーリングシート及びルーフカバーへのその使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層(a)、層(c)、少なくとも1つの内層(b)、接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)を含む多層フィルムに関し、層(a)及び層(c)は、いずれの場合も層(a)又は層(c)の総重量に対して、少なくとも30重量%の量のプロピレンコポリマー少なくとも1つと、少なくとも20重量%の量のプロピレンホモポリマー少なくとも1つと、場合により他のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、と、場合により30重量%までの添加剤とに、それぞれ基づき、ただし、前記成分は、常に合計100重量%となり、層(b)は、ポリアミド成分として、イソホロンジアミン単位を有するホモ−及び/又はコポリアミド少なくとも1つに基づき、接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)は、それぞれ、少なくとも1つの変性熱可塑性オレフィンホモ−又はコポリマーに基づき、層(a)と層(b)の間又は層(b)と層(c)の間にそれぞれ配置される。更に、本発明は、この種の多層フィルムを含むシーリングシート及びルーフカバーへのその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術は、多岐にわたる技術用途に好適な、多岐にわたる多層フィルムを公開している。
【0003】
しかしながら、前記技術用途の一部では、これらの目的のために使用される多層フィルムは、極めて特別な機械特性の組み合わせ及び更に特有のバリア特性を特徴とすることが要求される。このことは、特に、シーリングシート、具体的にはビチューメン系シーリングシート(bitumen−based sealing sheet)、を製造するために使用される多層フィルムに当てはまる。この種のビチューメン系シーリングシートは、例として、ルーフカバーに使用される。
【0004】
先行技術は、多層フィルムを含むこの種のシーリングシートを既に開示している。
【0005】
しかしながら、前記多層フィルム製シーリングシートの欠点は、これらが、油、具体的には鉱油、に対し、適切なバリア性に欠けることが多いことである。この種の油は、詳細には、ビチューメン系組成物の成分である。前記油がビチューメン系組成物から多層フィルムへ移動すると、ビチューメン組成物の乾燥が起こるだけでなく、ビチューメン系シートへの多層フィルムの接着力も減じさせ、その結果、多層フィルムは、時間の経過につれ、ビチューメン系組成物から分離する。
【0006】
先行技術で開示され、かつシーリングシートの製造に使用される多層フィルムは、更に、不適切な機械特性、例えば、不十分な引張強度、乏しい引裂伝播特性及び不十分な穿刺抵抗(puncture resistance)、を有することが多い。具体的には、シーリングシート用、例えばルーフカバー用、多層フィルムは、その上を人が歩行すること及び建設材料の保管と移動並びにまた風化の影響から生じる高い機械負荷にさらされるので、厳しい機械的基準に適合せねばならない。
【0007】
そのため、油に対し、バリア性に非常に優れるだけでなく、非常に良好な機械的安定性でも優れている多層フィルムへの需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、本発明の目的は、公知多層フィルムと比べて、油に対する非常に優れたバリア作用及び改良された機械特性、例えば改良された引裂伝播抵抗、穿刺抵抗及び良好な引張強度など、を特徴とする多層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、少なくとも、
(a) 層(a)の総重量に対して、少なくとも30重量%の量のプロピレンコポリマー少なくとも1つと、前記層(a)の総重量に対して、少なくとも20重量%の量のプロピレンホモポリマー少なくとも1つと、場合により他のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、と、場合により、前記層(a)の総重量に対して30重量%までの添加剤とに基づく層、好ましくは表面層の形状の1層(ただし、成分は、常に合計100重量%となる)、
(b) ポリアミド成分として、イソホロンジアミン単位を有する少なくとも1つのホモ−及び/又はコポリアミドに基づく内側で、好ましくは中心の層少なくとも1つ、
(c) 層(c)の総重量に対して、少なくとも30重量%の量のプロピレンコポリマー少なくとも1つと、前記層(c)の総重量に対して、少なくとも20重量%の量のプロピレンホモポリマー少なくとも1つと、場合により他のポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、と、場合により、前記層(c)の総重量に対して30重量%までの添加剤とに基づく層、好ましくは第二表面層の形状の層(ただし、成分は、常に合計100重量%となる)、
(d)及び(e) 前記層(a)と前記層(b)の間又は前記層(b)と前記層(c)の間にそれぞれ配置される、少なくとも1つの変性熱可塑性オレフィンホモ−又はコポリマーにそれぞれ基づく接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)
を含む多層フィルムを提供することにより達成される。
【0010】
好ましくは、層(a)及び層(c)は、それぞれ、本発明多層フィルムの表面層である。
【0011】
本発明多層フィルムの層(a)は、層(c)と同じか又は異なるものであり、それぞれ前記層(a)又は前記層(c)の総重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも35重量%、特に好ましくは少なくとも40重量%の量のプロピレンコポリマー少なくとも1つを含む。
【0012】
本発明多層フィルムの層(a)及び層(c)それぞれの好ましく好適なプロピレンコポリマーは、好ましくは炭素原子2、又は4個〜6個を有するα,β−不飽和オレフィンとプロピレンとのコポリマー少なくとも1つである。特に好ましくは、前記層(a)及び前記層(c)それぞれは、プロピレン−エチレンコポリマー、プロピレン−ブチレンコポリマー、プロピレン−イソブチレンコポリマー、及び前記コポリマー少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるプロピレンコポリマー少なくとも1つを含む。極めて特に好ましくは、少なくとも1つのプロピレン−エチレンコポリマーが、前記層(a)及び前記層(c)に存在する。
【0013】
特に好ましくは、層(a)及び層(c)それぞれは、プロピレン−エチレンコポリマー少なくとも1つを含み、このコポリマーは、プロピレン−エチレンコポリマーの総重量に対して、高々10重量%、好ましくは1重量%〜10重量%、特に好ましくは5重量%〜10重量%、極めて特に好ましくは7重量%〜9重量%のエチレン単位を有する、
【0014】
本発明多層フィルムの層(a)及び層(c)それぞれは、前記層(a)又は前記層(c)の総重量に対して、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも25重量%の量のプロピレンホモポリマー少なくとも1つを含む。
【0015】
層(c)は、好ましくは、本発明多層フィルムの第二の表面層である。
【0016】
本発明多層フィルムの層(a)及び層(c)は、それぞれ相互に独立して、好ましくは、5μm〜100μm、特に好ましくは10μm〜90μm、極めて特に好ましくは20μm〜80μmの層厚を有し、とりわけ25μm〜70μm、とりわけ好ましくは30μm〜50μmの層厚を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明多層フィルムの好ましい一実施形態では、層(a)及び層(c)は、同じ層構造、好ましくは同じ層厚、及び同じポリマー成分を有する。
【0018】
本発明多層フィルムの層(b)は、多層フィルムの構造に関して、好ましくは中心の内層であり、かつイソホロンジアミン単位を有するホモ−及び/又はコポリアミド少なくとも1つに基づく。
【0019】
好ましくは、本発明多層フィルムの層(b)は、バリア層として、好ましくは、ガス−バリア層、特に好ましくは酸素−バリア層、水蒸気−バリア層及び/又は油−バリア層、極めて特に好ましくは油−バリア層として機能する。
【0020】
ジアミン単位としてイソホロンジアミン単位を有し、層(b)の製造に好適なホモ−及び/又はコポリアミドは、好ましくは、イソホロンジアミン単位を有する熱可塑性脂肪族、半芳香族及び芳香族ホモ−又はコポリアミドからなる群から選択されるホモ−又はコポリアミド少なくとも1つである。イソホロンジアミン単位を有するこれらのコポリアミドは、炭素原子2個〜10個を有する他の脂肪族及び/又は脂環式ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン、から、及び/又は炭素原子6個〜10個を有する芳香族ジアミン、例えばp−フェニレンジアミン、から、並びに炭素原子6個〜14個を有する脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、テレフタル酸又はイソフタル酸、から構成されていてよい。イソホロンジアミン単位を有するコポリアミドは、更に、炭素原子4個〜10個を有するラクタム、例えばε−カプロラクタム、から製造することも可能である。しかしながら、どの場合も、前記ホモ−及び/又はコポリアミドの製造に、イソホロンジアミンが、少なくとも1つのジアミン成分として使用されるため、層(b)の製造に好適なホモ−及び/又はコポリアミドは、イソホロンジアミン単位を含む。イソホロンジアミン単位を有し、本発明に使用されるポリアミドは、好ましくは、ε−カプロラクタムから、イソホロンジアミンから、及び芳香族ジカルボン酸、好ましくはイソフタル酸、から製造されるコポリアミドである。
【0021】
好ましくは、層(b)は、イソホロンジアミン単位を有するホモ−及び/又はコポリアミド少なくとも1つに基づき、特に好ましくは、前記層(b)の総重量に対して、少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも35重量%、極めて特に好ましくは少なくとも40重量%、の量のイソホロンジアミン単位を有するコポリアミド少なくとも1つに基づく。
【0022】
好ましくは、層(b)の前記ポリアミド成分中のイソホロンジアミン単位の割合は、前記ポリアミド成分の総重量に対して、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%、特に好ましくは少なくとも3重量%であり、とりわけ少なくとも4重量%、とりわけ好ましくは少なくとも5重量%である。
【0023】
別の好ましい実施形態では、層(b)の前記ポリアミド成分中のイソホロンジアミン単位の割合は、ポリアミド成分の総重量に対して、好ましくは、少なくとも1重量%〜10重量%、特に好ましくは、1.2重量%〜9重量%、極めて特に好ましくは1.5重量%〜8重量%であり、とりわけ1.8重量%〜7重量%、とりわけ好ましくは2重量%〜6重量%である。
【0024】
好ましい1実施形態では、イソホロンジアミン単位を含む層(b)のポリアミド成分は、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸単位、好ましくは芳香族ジカルボン酸単位、特に好ましくはテレフタル酸単位及びイソフタル酸単位からなる群から選択される芳香族ジカルボン酸単位を含む。
【0025】
好ましくは、層(b)は、他のポリアミド成分として、イソホロンジアミン単位を含まない、好ましくは脂肪族のホモ−及び/又はコポリアミドを少なくとも1つ含み、その場合、このポリアミドの量は、層(b)の総重量に対して、少なくとも40重量%であり、特に好ましくは少なくとも45重量%、極めて特に好ましくは少なくとも50重量%、とりわけ少なくとも60重量%であり、ただし、ポリアミド成分は常に合計100重量%である。
【0026】
他のポリアミド成分として、層(b)の製造に好適である、イソホロンジアミン単位を含まないホモ−及び/又はコポリアミドは、好ましくは、熱可塑性脂肪族、半芳香族及び芳香族ホモ−又はコポリアミドからなる群から選択されるものである。イソホロンジアミン単位を含まないこれらのホモ−又はコポリアミドは、炭素原子2〜10個を有する脂肪族及び/又は脂環式ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン、から、及び/又は炭素原子6〜10個を有する芳香族ジアミン、例えばp−フェニレンジアミン、から、並びに炭素原子6〜14個を有する脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、テレフタル酸又はイソフタル酸、から構成されていてよい。これらのホモ−又はコポリアミドは、更に、炭素原子4〜10個を有するラクタム、例えばε−カプロラクタム、から製造することも可能である。本発明で使用される、イソホロンジアミン単位を含まないホモ−及び/又はコポリアミドは、好ましくは、PA6、PA12、PA66、PA6I、PA6T、相当するコポリマー、及び前記ポリアミド少なくとも2つの混合物からなる群から選択されるものである。
【0027】
本発明多層フィルムの層(b)は、好ましくは、5μm〜100μm、特に好ましくは7.5μm〜75μm、極めて特に好ましくは10μm〜50μmの層厚を有し、とりわけ15μm〜30μmの層厚を有する。
【0028】
本発明多層フィルムの接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)は、少なくとも1つの変性熱可塑性オレフィンホモ−又はコポリマーにそれぞれ基づく。
【0029】
接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)を製造するのに好ましくは好適な材料は、炭素原子2個〜10個を有するα,β−不飽和オレフィンの変性熱可塑性オレフィンホモ−又はコポリマー、例えば、ポリエチレン(PE、詳細にはLDPE又はHDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、ポリイソブチレン(PI)、又は前記ポリマー少なくとも2つの混合物である。「LDPE」は、低密度ポリエチレンを示し、その密度は、0.86g/cm〜0.93g/cmの範囲にあり、分子の高い分岐度を特徴とする。「HDPE」は、高密度ポリエチレンを示し、分子鎖の分岐度は僅かであり、その密度は、0.94g/cm〜0.97g/cmの範囲であってよい。接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)を製造するのに好ましい熱可塑性変性オレフィンホモ−又はコポリマーは、変性プロピレンホモポリマーである。好ましくは、熱可塑性オレフィンホモ−又はコポリマーは、ポリマー基、好ましくは有機酸基(カルボキシ基)及び/又は有機酸無水物基、特に好ましくは無水マレイン酸基、で変性されている。
【0030】
好ましくは、接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)は、それぞれ少なくとも1つの変性プロピレンホモポリマーに基づき、前記ポリマーの量は、それぞれ、いずれの場合も接着促進剤層(d)又は接着促進剤層(e)の総重量に対して、少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも55重量%、特に好ましくは少なくとも65重量%、極めて特に好ましくは少なくとも75重量%である。
【0031】
本発明多層フィルムの好ましい1実施形態では、接着促進剤層(d)及び/又は接着促進剤層(e)は、他のポリオレフィン成分として、それぞれ相互に独立して、少なくとも1つの未変性オレフィンホモ−又はコポリマー、好ましくはそれぞれ相互に独立して、少なくとも1つの未変性オレフィンホモポリマー、特に好ましくはそれぞれ未変性プロピレンホモポリマー、を、好ましくは、いずれの場合も接着促進剤層(d)又は接着促進剤層(e)の総重量に対して、最大30重量%までの割合でそれぞれ含み、その際、ポリオレフィン成分は、常に合計100重量%である。
【0032】
好ましい1実施形態では、接着促進剤層(d)及び/又は接着促進剤層(e)は、他のポリオレフィン成分として、それぞれ相互に独立して、少なくとも1つの未変性オレフィンホモ−又はコポリマー、を、5重量%〜30重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の量で含み、ここでポリオレフィン成分は、常に合計100重量%である。
【0033】
本発明多層フィルムの別の好ましい1実施形態では、接着促進剤層(d)及び/又は接着促進剤層(e)は、他のポリマー成分として、それぞれ相互に独立して、オレフィンと、少なくとも1つのエステル基を有する他のα,β−不飽和モノマー少なくとも1つとからのコポリマー少なくとも1つ、特に好ましくは、それぞれ相互に独立して、エチレン又はプロピレンと、酢酸ビニル及びアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びイソプロピル(メタ)アクリレート、n−及びイソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される化合物少なくとも1つとからのコポリマー少なくとも1つを、好ましくは、いずれの場合も接着促進剤層(d)又は接着促進剤層(e)の総重量に対して、0.1重量%〜30重量%、好ましくは1重量%〜20重量%、特に好ましくは2重量%〜10重量%、の量で含み、その際、ポリマー成分は、常に合計100重量%である。
【0034】
接着促進剤層(d)及び/又は接着促進剤層(e)の他のポリマー成分として好ましくは存在する物質は、エチレン−ビニルアセテートコポリマー及びエチレン−C1〜4−アルキル(メタ)アクリレートコポリマー、からなる群から選択される少なくとも1つのコポリマー、好ましくはエチレン−酢酸ビニルコポリマー及び/又はエチレン−ブチルアクリレートコポリマーである。
【0035】
本発明多層フィルムの接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)は、好ましくはそれぞれ相互に独立して、1μm〜30μm、特に好ましくは2μm〜25μm、極めて特に好ましくは3μm〜20μmの層厚を有し、とりわけ4μm〜15μmの層厚を有する。
【0036】
本発明の多層フィルムの好ましい1実施形態では、接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)は、同じ層構造、好ましくは同じ層厚及び同じポリマー成分を有する。
【0037】
好ましい1実施形態では、本発明多層フィルムの配置は、中心層(b)に対して対称である。
【0038】
層(a)、層(b)及び層(c)、また接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)は、必要ならば、それぞれ相互に独立して、抗酸化剤、粘着防止剤、防曇剤、静電防止剤、抗菌作用物質、UV吸収剤、UVフィルター、染料、着色顔料、光安定剤又は他の安定剤、好ましくは熱安定剤、プロセス安定剤、及び好ましくは少なくとも1つの立体障害アミン(HALS)に基づくUV安定剤及び/又は光安定剤、加工助剤、難燃剤、核剤、結晶化剤、好ましくは結晶核形成剤、滑剤、蛍光増白剤、柔軟剤、シール剤、可塑剤、シラン、スペーサー、充填剤、剥離添加剤、ワックス、湿潤剤、界面活性化合物、好ましくは界面活性剤、及び分散剤からなる群から選択される添加剤を含んでよい
【0039】
層(a)、層(b)及び(c)、また接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)は、それぞれ相互に独立して、いずれの場合も個々の層の総重量に対して、少なくとも0.01重量%〜30重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%〜20重量%の前記添加剤少なくとも1つを含んでよい。この目的のために、添加剤は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、又はポリアミドのマスターバッチの形状で、各層に導入することができる。
【0040】
本発明の多層フィルムは、好ましくは、合計層厚、10μm〜300μm、特に好ましくは15μm〜250μm、極めて特に好ましくは20μm〜200μm、とりわけ30μm〜180μm、とりわけ好ましくは50μm〜150μmを有する。
【0041】
好ましくは、本発明多層フィルムの穿刺抵抗は、ASTM E154−10に従い、少なくとも250Nであり、その引張強度は、ASTM D1970に従い、少なくとも150Nであり、及び/又はその引裂伝播抵抗は、エルメンドルフ法(Elmendorf method)により少なくとも1500 mNである(ISO 6383−2)。
【0042】
好ましい1実施形態では、本発明多層フィルムは、少なくとも1つの、好ましくは永久接着性の層(f)、特に好ましくは感圧接着剤層、及び/又は少なくとも1つの層(h)を、場合により、それぞれその表面層の1つの上に有し、前記層(h)は、シーリング組成物、好ましくは粘着シーリング組成物、特に好ましくは粘着ビチューメン系シーリング組成物又はゴム、好ましくはブチルゴム、に基づく粘着シーリング組成物、詳細には、低温粘着又は高温粘着ビチューメン系シーリング組成物、特に好ましくは低温粘着ビチューメン系シーリング組成物、に基づく。本発明多層フィルムが、少なくとも1つの層(h)及び/又は少なくとも1つの接着剤層(f)を含む場合、この層は、場合により、その表面に、好ましくはシリコン処理済紙(siliconized paper)に基づく取り外し可能な保護フィルム又は取り外し可能な保護層(g)を有する。
【0043】
本発明は、更に、本発明多層フィルムの製造方法を提供する。
【0044】
好ましい1実施形態では、本発明多層フィルムの層(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は、完全な多層フィルムとして、管状フィルムの形状に製造及び加工することができる
【0045】
他の好ましい実施形態では、本発明多層フィルムの層(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は、全体としてそっくりそのままキャストフィルムの形状に製造及び加工することができる。
【0046】
従って、本発明多層フィルムの各層(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は、同時押出により製造することができる。
【0047】
層(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)からなる本発明多層フィルムは、好ましくは、(共)押出、特に好ましくはインフレートフィルム(共)押出、又はキャスト(共)押出により得ることができる。
【0048】
本発明多層フィルムが、好ましくは、永久接着性の接着剤層(f)、好ましくは感圧接着剤層(f)、をその表面層の1つの上に有する場合は、前記接着剤層(f)は、本発明多層フィルムの層(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の層複合体の1表面上への接着剤層(f)のコーティング又は貼り合せにより製造することができる。接着剤層(f)の保護のために、場合によりその表面に、後続の工程ステップで、取り外し可能な保護フィルム又は取り外し可能な保護層(g)を保護カバーとして取り付けることができる。
【0049】
本発明多層フィルムが、シーリング組成物に基づく層(h)をその永久接着性ではない表面層の1つの上に有する場合は、前記層(h)を、慣用の貼り合せ用接着剤(lamination adhesive)を用いて、コーティング又は貼り合せにより本発明多層フィルムの層(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び場合により(f)の層複合体の表面の1つに結合させることができる。層(h)が、粘着シーリング組成物に基づく場合は、本発明多層フィルムは、場合によりシーリング組成物の冷却又は加熱下に、単純なコーティングにより層(h)と結合させることができる。層(h)の保護のために、場合によりその表面に、後続の工程ステップで、取り外し可能な保護フィルム又は取り外し可能な保護層(g)を、保護カバーとして取り付けることができる。
【0050】
各製造プロセス及び相当する製造パラメーターは、当業者によく知られている。
【0051】
本発明多層フィルムは、好ましくは、印刷及び/又は着色フィルムであってよい。
【0052】
接着剤層を備える本発明多層フィルムは、好ましくは、粘着テープとして使用される。
【0053】
そのため、本発明は、更に、粘着テープ製造への本発明多層フィルムの使用及び本発明多層フィルムの粘着テープの形状での使用を提供する。
【0054】
本発明は、更に、本発明多層フィルムを含む粘着テープを提供する。
【0055】
シーリング組成物を有する本発明多層フィルムは、好ましくは、シーリングシートとしても使用される。
【0056】
そのため本発明は、シーリングシート、好ましくはビチューメン系シーリングシート、の製造への本発明多層フィルムの使用、並びにルーフカバー、パイプ被覆、外装材、又は建物もしくは建物の一部の保護カバーのためのシーリングシート、好ましくはビチューメン系シーリングシート、の形状での本発明多層フィルムの使用も提供する。
【0057】
本発明は、更に、本発明多層フィルムを含む、好ましくは水及び/又は風化の影響に対し効果のあるシーリングシート、好ましくはビチューメン系シーリングシート、を提供する。
【0058】
本発明は、更に、本発明多層フィルムを含むシーリングシート、好ましくはビチューメン系シーリングシートを、ルーフカバーとして、外装材として、建物もしくは建物の一部のための保護カバーとして、又はパイプ被覆として、好ましくはスリーブ用保護カバーとして提供する。
【0059】
油に対するバリア効果の測定
油に対する多層フィルムのバリア効果を測定するために、下記重力試験法を用いて、長期に及ぶ保管後ですら、多層フィルムが、油含有組成物からの、例えばビチューメンからの、油の移動を食い止めるかどうか、即ちビチューメン中に存在する油を吸収せず、その代わりにその中にある油に対しバリア効果を示すかどうかを測定することができる。
【0060】
シリコン剥離ライナーで保護被覆されたビチューメン系組成物を、油に対し非常に良好なバリア効果のある第一の下部基板フィルム(OPETフィルム、円滑、DIN A4)に施す(19cm×19cm)。シリコン剥離ライナーを、ビチューメン系組成物から除去後に、本発明多層フィルム(DIN A4)サンプル(又は比較フィルムサンプル)を、空気の混入を回避しながら、同一物の中心にビチューメンの全域をカバーするようにして施す。本発明多層フィルムサンプルは、壁紙ローラーでビチューメン域に押し付ける。吸収力のあるライナー、即ち油に対しバリア効果がないフィルム(LDPEフィルム、円滑、DIN A4)を、ビチューメン域に施された多層フィルムに施し、次に、第二の上部表面フィルム(OPETフィルム、円滑、DIN A4)を、前記吸収性ライナーに施す。前記第二キャッピングフィルム上に、それぞれ2.6kgの重石を4つ置く。この形状の全テストパッケージをオーブン中に40℃で1週間の期間、保管する。
【0061】
油に対するバリア効果を、本発明多層フィルムサンプル及び吸収性ライナーへの油吸収を定量的に測定して決定する。この目的のために、サンプルと吸収性ライナーの両方を、テスト開始前に、分析天秤により計量する。
【0062】
それぞれ、3日、5日、及び7日後に、テストパッケージをオーブンから取り出し、各層をばらばらにし、サンプルと吸収性ライナーの両方を分析天秤で計量する。誤まった解釈を避けるため、ビチューメン残渣がサンプル上へ接着しないように注意を払わねばならない。計量手順後、各層をそのもとの場所に戻す。このようにして、最初の重量から出発して、重量増加を%で計算できる。重量変化をこのように用いて、油吸収の程度について結論を出すことができ、この結論により油に対するバリア特性について判定できる。
【0063】
引裂伝播抵抗の測定
引裂伝播抵抗は、ISO 6383−2に従い決定され、引裂伝播力として測定され、[N]で記述される。
【0064】
ASTM E154−10に従う穿刺抵抗の測定
穿刺抵抗は、ASTM E154−10に従い測定され、[N]で記述される。
【0065】
ASTM D1970に従う引張強度の測定
引張強度は、ASTM D1970に従い測定され、[N]で記述される。
【0066】
以下の実施例及び比較例を使用して、本発明を説明するが、これらは、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0067】
I.使用原料の化学的特性表示
プロピレンコポリマー: Dow Chemicals社製プロピレン−エチレンコポリマー(エチレン含有率:7%〜9%)
プロピレンホモポリマー: Borealis社製プロピレンホモポリマー
マスターバッチ1: Schulman社製カラーマスターバッチ、ポリマー成分としてポリエチレン約50重量%含有
MSA−変性ポリプロピレン: 無水マレイン酸基で変性されたポリプロピレン(三井化学社製)
IPDIコポリアミド: ε−カプロラクタム、イソホロンジアミン及びイソテレフタル酸から形成されたコポリアミド、イソホロンジアミン含分は約5%(Lanxess社製)
コポリアミド: ε−カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸から形成されたコポリアミド(BASF社製)
PA 6: ε−カプロラクタムから形成されたホモポリアミド(Lanxess社製)
【0068】
II.多層フィルムの製造
比較例の多層フィルムV1a及びV1b、並びにまた本発明例1の多層フィルム(B1)は、いずれも5層から構成され、合計層厚は、それぞれ125μmである。層(a)及び層(c)の層厚は、それぞれ42μmであり、接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)の層厚はそれぞれ8μmであり、層(b)の層厚はそれぞれ25μmである。多層フィルムの個々の層は、何れの場合も以下に列記する順番で相互に直接に隣接する。比較例の多層フィルムV1a及びV1b並びにまた本実施例1の多層フィルム(B1)の各層(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)は、それぞれインフレートフィルム共押出法により製造した。
【0069】
III.実施例及び比較例
下記%のデーターは、全て重量%である。
例1−多層フィルムB1、V1a及びV1b
【表1】

【0070】
本実施例1の多層フィルム(B1)及びまた比較例1aの多層フィルム(V1a)については、いずれの場合も前記方法を使用し、穿刺抵抗及び引張強度を測定した。
【0071】
本実施例1の多層フィルム(B1)及びまた比較例1bの多層フィルム(V1b)について、更に、いずれの場合も前記方法を使用し、引裂伝播抵抗を測定した。
【表2】

【0072】
本実施例の多層フィルムB1は、前記方法により測定され、油に対し非常に優れたバリア効果も有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層(a)であって、この層(a)の総重量に対して、少なくとも30重量%の量のプロピレンコポリマー少なくとも1つと、前記層(a)の総重量に対して、少なくとも20重量%の量のプロピレンホモポリマー少なくとも1つと、場合により他のポリオレフィンと、場合により、前記層(a)の総重量に対して、30重量%までの添加剤とに基づく層(a)と(ただし、成分は、常に合計100重量%となる)、
ポリアミド成分として、イソホロンジアミン単位を有するホモ−及び/又はコポリアミド少なくとも1つに基づく内層(b)少なくとも1つと、
層(c)の総重量に対して、少なくとも30重量%の量のプロピレンコポリマー少なくとも1つと、前記層(c)の総重量に対して、少なくとも20重量%の量のプロピレンホモポリマー少なくとも1つと、場合により他のポリオレフィンと、場合により、前記層(c)の総重量に対して、30重量%までの添加剤とに基づく層(c)と(ただし、成分は、常に合計100重量%となる)、
前記層(a)と前記層(b)の間又は前記層(b)と前記層(c)の間にそれぞれ配置される、少なくとも1つの変性熱可塑性オレフィンホモ−又はコポリマーにそれぞれ基づく接着促進剤層(d)及び接着促進剤層(e)と
を含む多層フィルム。
【請求項2】
前記層(b)は、前記イソホロンジアミン単位を有するホモ−及び/又はコポリアミド少なくとも1つに基づき、好ましくは、前記層(b)の総重量に対して、少なくとも30重量%の量の、イソホロンジアミン単位を有するコポリアミド少なくとも1つに基づくことを特徴とする、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
ポリアミド成分中の前記イソホロンジアミン単位の割合は、前記ポリアミド成分の総重量に対して、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも3重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記層(b)の、前記イソホロンジアミン単位を含むポリアミド成分は、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸単位、好ましくは芳香族ジカルボン酸単位を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記層(b)は、他のポリアミド成分として、イソホロンジアミン単位を含まない脂肪族ホモ−及び/又はコポリアミドを少なくとも1つ含むことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記層(a)及び前記層(c)は、それぞれ相互に独立して、それぞれ前記層(a)又は前記層(c)の総重量に対して、少なくとも35重量%の量のプロピレンコポリマー少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記層(a)及び前記層(c)は、同じ層構造、好ましくは同じ層厚、及び同じポリマー成分を有することを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記層(b)は、バリア層として、好ましくは油−バリア層として機能することを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項9】
その配置は、中心層(b)に対して対称であることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記層(a)及び前記層(c)それぞれは、表面層であり、前記層(b)は、中心層であることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項11】
その穿刺抵抗は、ASTM E154−10に従い、少なくとも250Nであり、その引張強度は、ASTM D1970に従い、少なくとも150Nであり、及び/又はその引裂伝播抵抗は、エルメンドルフ法(ISO6383−2)により、少なくとも1500mNであることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項12】
好ましくは永久接着性の接着剤層(f)少なくとも1つを有し及び/又はシーリング組成物、好ましくは自己粘着シーリング組成物、に基づく層(h)少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の多層フィルム。
【請求項13】
粘着テープ製造への、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の多層フィルムの使用。
【請求項14】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の多層フィルムを含む、粘着テープ。
【請求項15】
シーリングシート製造への、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の多層フィルムの使用。
【請求項16】
請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の多層フィルムを含む、水及び/又は風化影響に対し効果のあるシーリングシート、好ましくはビチューメン系シーリングシート。
【請求項17】
ルーフカバーとして、外装材として、建物もしくは建物の一部のための保護カバーとして、又はパイプ被覆材としての、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の多層フィルムを含む、シーリングシート、好ましくはビチューメン系シーリングシート。

【公表番号】特表2013−513494(P2013−513494A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542403(P2012−542403)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007571
【国際公開番号】WO2011/069680
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(503102423)フータマキ フィルムズ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (9)
【住所又は居所原語表記】Zweibrueckenstr. 15−25, D−91301 Forchheim, Germany
【Fターム(参考)】