説明

高い透明性を有するジケトピロロピロール混晶

本発明は、新規な結晶変態を有する式(I)、(II)および(III)の化合物を含む顔料組成物、その製造、およびこの新規性生物の顔料としての使用に関する。有機顔料の多くの用途、例えば、金属コーティングの着色またはカラーフィルターにおける使用に関しては、非常に高い透明性が必要である。カラーフィルターの製造には、例えば、コントラスト比の減少を引き起こす粒子散乱を大幅に排除できるように、特に微細な顔料が使用される。しかしながら、市販の製品がいつも全ての技術的条件を満たすわけではない。特に、透明性およびそれに関連する顔料結晶の微粉性、および彩度(Chroma)に関する改善の必要性が存在する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の結晶変態(Kristallmodifikation)を有する式(I)、(II)および(III)
【0002】
【化1】

【0003】
で表される化合物を含む顔料組成物、その製造、およびその新規生成物の顔料としての使用に関する。
【背景技術】
【0004】
有機顔料の多くの用途に関しては、例えば、金属コーティングの着色またはカラーフィルターにおける使用に関しては、非常に高い透明性が必要である。カラーフィルターの製造には、例えば、コントラスト比の減少を引き起こす粒子散乱を実質的に排除できるように、特に微細な顔料が使用される。
【0005】
しかしながら、市販の製品がいつも全ての技術的条件を満たすわけではない。特に、透明性およびそれに関連する顔料結晶の微粉性(Feinteiligkeit)、および彩度(Chroma)に関する改善の必要性が存在する。
【0006】
特許文献1から、2種の異なるニトリルAおよびBならびにコハク酸ジエステルからの混合合成(1 molのコハク酸ジエステルを各1 molの2種の異なるニトリルと反応させる)により製造されるジケトピロロピロール(DPP)の顔料組成物が公知である。実施例34には、1 molのコハク酸エステルの1 molの3-クロロベンゾニトリルおよび1 molの4-クロロベンゾニトリルとの反応が記載されている。
【0007】
特許文献2から、2種の異なるニトリルAおよびBならびにコハク酸ジエステルからの混合合成(実施例に開示されるニトリルのモル分率が88〜99.9 mol%のAに対して12〜0.1 mol%のBの範囲である)により製造されるジケトピロロピロール(DPP)の顔料組成物が公知である。3-クロロ-および4-クロロベンゾニトリルからの混合合成は具体的に記載されていない。
【0008】
特許文献3(実施例42)からは、結晶成長阻害剤の存在下におけるコハク酸ジエステルと50 mol%の3-クロロ-および50 mol%の4-クロロベンゾニトリルからの混合合成により製造される顔料組成物が公知である。
【0009】
特許文献4の実施例1e)からは、70 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび30 mol%の4-クロロベンゾニトリルからの混合合成および顔料アルカリ塩の酸による沈殿により製造される顔料組成物が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 094 911号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 181 290号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 962499号明細書
【特許文献4】国際公開第2002/085 987号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、顔料結晶の高い透明性および微粉性、ならびに高い色相の純度(Farbtonreinheit)および輝度(Brillanz)を示す、橙色から赤色を有するジケトピロロピロール顔料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、ビス(4-X-フェニル)-ジケトピロロピロール(I)、(3-クロロ-フェニル)-(4-X-フェニル)-ジケトピロロピロール(II)およびビス(3-クロロ-フェニル)-ジケトピロロピロール(III)の特定の量比を有する混晶、およびその製造方法によって、この課題が解決されることが見出された。
【0013】
本発明は、コハク酸ジエステルを、97〜80 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび3〜20 mol%の4-X-ベンゾニトリル(X = 塩素、メチルまたはニトリルであり、3-クロロベンゾニトリルと4-X-ベンゾニトリルとのモル分率(Molanteile)は合計で100 mol%である)を含む混合物と反応させることにより得られる、式(I)、(II)および(III)
【0014】
【化2】

【0015】
の化合物を含む混晶に関する。好ましくはXは塩素を意味する。
【0016】
コハク酸ジエステルを95〜83 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび5〜17 mol%の4-X-ベンゾニトリルからなる混合物と反応させる(3-クロロ-および4-X-ベンゾニトリルのモル分率は合計で100 mol%である)ことにより得られる混晶が好ましい。
【0017】
驚くべきことに、本発明の混晶が、これまでに知られていない新規の混晶変態で存在することが見出された。
【0018】
本発明において、混晶は「固溶体(feste Loesungenまたはsolid solutions)」も含むと解釈される。混晶の性質は、個々の成分の性質とも個々の成分の物理的混合物の性質とも異なる。特に、混晶のX線粉末ダイアグラム(Roentgenpulverdiagramme)は、対応する物理的混合物のものとは異なり、個々の化合物の粉末ダイアグラムの合計とも異なる。
【0019】
新規の混晶変態は、3-および4-X-ベンゾニトリルの混合合成から得られるこれまでに公知の変態とは異なるX線回折ダイアグラムを特徴とし、具体的には18.5における特徴的な線(Cu-Kα照射、度で表される2θ値、測定精度+/- 0.2°)を特徴とする。
【0020】
本発明の結晶変態は以下のX線粉末ダイアグラムを特徴とする(Cu-Kα照射、度で表される2θ値、測定精度+/- 0.2°、強度:vs = 非常に強い、s = 強い、m = 中程度、w = 弱い、他の全ての線は非常に弱い)。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明の混晶は、90〜150 m2/g、好ましくは92〜130 m2/gのBET表面積に相当する微粉性で得ることができる。
【0023】
本発明の対象はまた、強塩基の存在下、高温で、有機溶剤中において、コハク酸ジエステルを上記の量比にある3-クロロ-および4-X-ベンゾニトリルと反応させることにより顔料アルカリ塩を形成させ、それに続いて、水および/またはアルコール中において顔料アルカリ塩の加水分解を行い、そして場合により溶剤仕上げ(Loesemittelfinish)を施すことによる、本発明の混晶の製造方法である。
【0024】
有機溶剤におけるニトリルの全体濃度は有利には0.5〜5 mol/lである。
【0025】
コハク酸ジエステルに対する強塩基のモル比は、有利には、1 molのコハク酸ジエステルあたり0.1〜10 molの塩基である。
【0026】
顔料アルカリ塩を形成させるための反応温度は、60〜140℃、好ましくは80〜120℃である。
【0027】
使用されるコハク酸ジエステルは、ジアルキル-、ジアリール-もしくはモノアルキルモノアリールエステルであることができ、コハク酸ジアルキルエステルおよび-ジアリールエステルは不斉であってもよい。
【0028】
好ましくは、対称性のコハク酸ジエステル、特に対称性のコハク酸ジアルキルエステルが使用される。コハク酸ジアリールエステルもしくは-モノアリール-モノアルキルエステルにおいて、アリールは特に、置換されていないフェニルであるか、あるいはハロゲン、例えば塩素、C1-C6-アルキル、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチルもしくはtert-アミル、またはC1-C6-アルコキシ、例えばメトキシもしくはエトキシからなる群から選択される1、2もしくは3個の置換基により置換されたフェニルである。アリールは好ましくは置換されていないフェニルを意味する。コハク酸ジアルキルエステルもしくは-モノアルキル-モノアリールエステルにおいて、アルキルは非分岐状、分岐状または環状であることができ、好ましくは分岐状であり、特に1〜18個、特に1〜12個、とりわけ1〜8個、特に好ましくは1〜5個の炭素原子を含む。アルキルは好ましくは第二級または第三級アルキル、例えばイソプロピル、第二級ブチル、第三級ブチル、第三級アミル、シクロヘキシル、ヘプチル、2,2-ジメチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシルまたはオクタデシルである。
【0029】
コハク酸ジエステルの例としては、コハク酸-ジメチルエステル、-ジエチルエステル、-ジプロピルエステル、-ジブチルエステル、-ジペンチルエステル、-ジヘキシルエステル、-ジヘプチルエステル、-ジオクチルエステル、-ジイソプロピルエステル、-ジ-sec-ブチルエステル、-ジ-tert-ブチルエステル、-ジ-tert-アミルエステル、-ジ-[1,1-ジメチルブチル]-エステル、-ジ-[1,1,3,3-テトラメチルブチル]-エステル、-ジ-[1,1-ジメチルフェニル]-エステル、-ジ-[1-メチル-1-エチル-ブチル]-エステル、-ジ-[1,1-ジエチルプロピル]-エステル、-ジフェニルエステル、-ジ-[4-メチルフェニル]-エステル、-ジ-[2-メチルフェニル]-エステル、-ジ-[4-クロロフェニル]-エステル、-ジ-[2,4-ジクロロフェニル]-エステル、-モノエチルモノフェニルエステル、-ジシクロヘキシルエステルが挙げられる。
【0030】
特に、アルキルが分岐状であり、3〜5個の炭素原子を含む対称性のコハク酸ジアルキルエステルが使用される。
【0031】
コハク酸ジエステルのニトリルとの反応は、有機溶剤中で行われる。溶剤としては、例えば1〜10個の炭素原子を有する第一級、第二級もしくは第三級のアルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、例えばn-ペンタノール、または2-メチル-2-ブタノール、ヘキサノール、例えば2-メチル-2-ペンタノールもしくは3-メチル-3-ペンタノール、2-メチル-2-ヘキサノール、3-エチル-3-ペンタノール、オクタノール、例えば2,4,4-トリメチル-2-ペンタノール、シクロヘキサノール、またはグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールまたはグリセリン、またはポリグリコール、例えばポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコール、エーテル、例えばメチルイソブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンまたはジオキサン、グリコールエーテル、例えばエチレン-もしくはプロピレングリコールのモノメチル-もしくはモノエチルエーテル、ジエチレングリコール-モノメチルエーテルまたはジエチレングリコール-モノエチルエーテル、ブチルグリコール、またはメトキシブタノール、双極性非プロトン性溶剤、例えば、酸アミド、例えばジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、またはN-メチルピロリドン、尿素誘導体、例えばテトラメチル尿素、脂肪族または芳香族炭化水素、例えば、シクロヘキサンまたはベンゼン、またはアルキル、アルコキシ、ニトリルもしくはハロゲンで置換されたベンゼン、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンもしくは1,2,4-トリクロロベンゼン、芳香族N-複素環類、例えば、ピリジン、ピコリンもしくはキノリン、およびヘキサメチルリン酸トリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドまたはスルホランが好適である。
【0032】
顔料アルカリ塩の製造は、強塩基の存在下で行う。好適な強塩基としては特に、アルカリ金属自身、例えばリチウム、ナトリウムもしくはカリウム、またはアルカリアミド、例えばリチウムアミド、ナトリウムアミドもしくはカリウムアミド、またはアルカリ無水物、例えばリチウム無水物、ナトリウム無水物もしくはカリウム無水物、または特に1〜10個の炭素原子を有する第一級、第二級もしくは第三級脂肪族アルコールに由来するアルカリ土類-もしくはアルカリアルコラート、例えば、リチウム-、ナトリウム-もしくはカリウムメチレート、-エチレート、-n-プロピレート、-イソプロピレート、n-ブチレート、-sec-ブチレート、-tert-ブチレート、-2-メチル-2-ブチレート、-2-メチル-2-ペンチレート、-3-メチル-3-ペンチレート、-3-エチル-3-ペンチレートが挙げられる。上記の塩基の混合物もまた使用できる。
【0033】
アルカリアルコラートが好ましく、アルカリは特にナトリウムまたはカリウムであり、アルコラートは好ましくは第二級もしくは第三級アルコールに由来する。従って、特に好ましい強塩基は、例えばナトリウム-もしくはカリウム-イソプロピレート、-sec-ブチレート、-tert-ブチレートおよび-tert-アミレートである。アルカリアルコラートは、対応するアルコールをアルカリ金属、アルカリ無水物もしくはアルカリアミドと反応させることにより、in situで製造することもできる。
【0034】
顔料アルカリ塩の加水分解のために、加水分解剤として水または1種もしくはそれ以上のプロトン性有機溶剤を使用することができる。プロトン性溶剤としては、例えば、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するアルコール、例えばメタノールまたはエタノールが挙げられる。任意の組み合わせの水およびアルコールもまた使用することができる。加水分解はまた、非プロトン性有機溶剤の存在下で行うこともできる。
【0035】
加水分解は、加水分解剤の反応懸濁液への添加により直接的に、または反応懸濁液の加水分解剤への添加により間接的に行われる。加水分解剤である水およびプロトン性有機溶剤は、任意の順番でおよび混合物としても添加することができ、および/または予め仕込むこともできる。個々の成分を最初の仕込みに同時に添加することも可能である。
【0036】
加水分解の間にはバッファー、例えばリン酸塩バッファー、酢酸塩バッファー、クエン酸バッファーまたはトリエタノールアミンバッファーを使用するのが有利であり得る。
【0037】
加水分解における温度は-20℃〜200℃、好ましくは-5〜180℃、特に0〜160℃であり、場合により加水分解は加圧下で行われる。その場合に、反応懸濁液および加水分解剤は異なる温度を有していてもよい。例えば、加水分解はまた、水蒸気によって行うこともできる。
【0038】
加水分解剤の全量は、有利には、塩基を基準として少なくとも化学量論的な量である。例えば、水および/またはプロトン性有機溶剤は、形成される顔料の1部あたり0.5〜50重量部で使用される。
【0039】
本発明の混晶は、結晶変態を変えずに引き続き仕上げることも可能である。仕上げ条件に応じて微細な粒子は再び成長することができ、そのため所望の使用分野に応じて仕上げ条件は適切に調節されるべきである。より不透明な粒子を生じさせる仕上げ条件は当業者に公知であり、例えば特許文献4に記載されている。
【0040】
本発明に従って達成される微粉性を十分に維持する仕上げ条件は、例えば欧州特許出願公開第0 640 603号明細書に記載されている。
【0041】
好ましくは、顔料アルカリ塩の加水分解において得られる顔料懸濁液を、50〜150℃、特に80〜130℃の温度において、場合により加圧下で、0.1〜8時間、特に0.5〜6時間加熱するという方法がとられる。結晶の成長を阻害する界面活性剤の存在が有利であり得る。
【0042】
混晶形成の促進のために、混晶の安定化のために、結晶の成長の阻害のために、色の特性の改善のために、および/または所定の色の作用の達成のために、工程の任意の段階で、顔料分散剤、界面活性剤、消泡剤、増量剤または他の添加剤を、これらが本発明の有利な点を損なわない限り、添加することができる。これらの添加剤の混合物もまた使用することができる。添加剤の添加は、一度にまたは二度以上に分けて行うことができる。添加剤は、合成のまたは種々の後処理の各段階において、または後処理の後に、添加することができる。最も好適な時点は、予め、予備試験(orientierende Versuche)により確認されるべきである。
【0043】
本発明の顔料組成物を製造するための上記の方法の段階の1つまたはそれ以上は、例えば欧州特許出願公開第1 257 602号明細書に記載されるように、マイクロリアクターで行うことも可能である。
【0044】
本発明の混晶は、基本的に、天然または合成由来の全ての高分子有機材料、例えばプラスチック、樹脂、コーティング、特に金属コーティング、塗料(Anstrichfarben)、印刷用インク、電子写真トナー、および現像剤、エレクトレット材料、カラーフィルター、および液体インク(Tinten)、特にインクジェットインクの着色に使用することができる。
【0045】
本発明の混晶で着色できる高分子の有機材料としては、個々におけるまたは混合物における、例えば、セルロース化合物、例えばセルロースエーテルおよびセルロースエステル、例えばエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテートまたはセルロースブチレート、天然バインダー、例えば脂肪酸、脂肪油、樹脂およびこれらの変換生成物、または合成樹脂、例えば重縮合体、付加重合体、重合体および共重合体、例えばアミノプラスト、特に尿素-およびメラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノプラスト、およびフェノール樹脂、例えばノボラックまたはレゾール、尿素樹脂、ポリビニル、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテートまたはポリビニルエーテル、ポリカルボネート、ポリオレフィン、例えばポリスチレン、ポリビニルクロリド、ポリエチレンまたはポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレートおよびこれらの共重合体、例えばポリアクリル酸エステルまたはポリアクリルニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、クマロン-インデン-および炭化水素樹脂、エポキシ樹脂、異なる硬化メカニズムを有する不飽和合成樹脂(ポリエステル、アクリレート)、ワックス、アルデヒド-およびケトン樹脂、ゴム、弾性ゴム(Kautschuk)およびその誘導体、およびラテックス、カゼイン、シリコーンおよびシリコーン樹脂を挙げることができる。
【0046】
ここで、上記の高分子有機化合物が可塑的な物、溶解物として、あるいは紡糸液(Spinnloesungen)、分散液、コーティング、塗料または印刷用インクの形態で存在するかどうかは重要ではない。使用目的に応じて、本発明の混晶を混合物として、または調製物もしくは分散物の形態で利用することが有利であることが明らかになるであろう。
【0047】
着色される高分子有機材料を基準として、本発明の混晶は、多くの場合に、0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%の量で使用される。
【0048】
本発明の混晶はまた、電子写真トナーおよび現像剤、例えば1成分または2成分性粉末トナー(1成分または2成分性現像剤とも呼ばれる)、磁性トナー、液体トナー、重合トナーおよび特殊トナー(Spezialtoner)における着色剤として使用することができる。
【0049】
典型的なトナーバインダーは、重合樹脂、重付加樹脂および重縮合樹脂、例えば、スチレン樹脂、スチレン-アクリレート樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、アクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール-エポキシド樹脂(単独でまたは組み合わせて)、ならびにポリエチレンおよびポリプロピレンであり、これらはさらに別の成分、例えば荷電調整剤、ワックスまたは流動補助剤(Fliesshilfsmittel)を含むことができるか、またはこれらの添加によりその後変性される。
【0050】
さらに、本発明の混晶は、水性または非水性のベースを有するインクジェットインクにおける、およびホットメルト法により操作される上記インクにおける着色剤としても好適である。
【0051】
インクジェットインクは概して、全体として0.5〜15重量%、好ましくは1.5〜8重量%(乾燥重量で計算)の1種またはそれ以上の本発明の混晶を含む。
【0052】
マイクロエマルションインクは、有機溶剤、水および場合により追加的な向水性(hydrotropen)物質(相容化剤:Grenzflaechenvermittler)を基礎とする。 マイクロエマルションインクは、概して、0.5〜15重量%、好ましくは1.5〜8重量%の1種またはそれ以上の本発明の混晶、5〜99重量%の水および0.5〜94.5重量%の有機溶剤および/または向水性化合物を含む。
【0053】
「溶剤ベース」のインクジョットインクは、好ましくは0.5〜15重量%の1種またはそれ以上の本発明の混晶、85〜99.5重量%の有機溶剤および/または向水性化合物を含む。
【0054】
ホットメルトインクは、多くの場合に、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコールまたはスルホンアミドを基礎とし、これらは室温で固体であり、加熱下で液体であって、好ましい溶融領域は約60℃〜約140度である。ホットメルト・インクジェットインクは、例えば、20〜90重量%のワックスおよび1〜10重量%の1種またはそれ以上の本発明の混晶から実質的になる。さらに、0〜20重量%の追加的なポリマー(「色素溶解媒体(Farbstoffloeser)」として)、0〜5重量%の分散助剤、0〜20重量%の粘度調整剤(Viskositaetsveraenderer)、0〜20重量%の可塑剤、0〜10重量%の粘着剤(Klebrigkeitszusatz)、0〜10重量%の透明性安定剤(Transparenzstabilisator)(例えばワックスの結晶化を防ぐ)および0〜2重量%の酸化防止剤を含む。
【0055】
特に本発明の混晶は、カラーフィルター用の着色剤として、ならびに例えば電気工学システム、例えばテレビ画面、LCD(液晶ディスプレイ)、電化結合素子、プラズマディスプレイまたは電子発光ディスプレイ(これは他方でアクティブ(ツイステッドネマチック)もしくはパッシブ(スーパーツイステッドネマチック)強誘電性ディスプレイまたは発光ダイオードでもよい)における加色法(additive Farberzeugung)用および減色法(subtraktive Farberzeugung)用の着色剤として、ならびに電子インク(「electronic inks」または「e-inks」)または「電子ペーパー」(「e-paper」)用の着色剤として好適である。
【0056】
カラーフィルターの製造においては、反射型カラーフィルターも透明カラーフィルターも、ペーストの形態にある顔料または適当なバインダー(アクリレート、アクリル酸エステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エポキシド、ポリエステル、メラミン、ゼラチン、カゼイン)における着色されたフォトレジストとしての顔料を、それぞれのLCD構成成分(例えばTFT-LCD = 薄膜トランジスタ液晶ディスプレイまたは例えば(S) TN-LCD =(スーパー)ツイステッドネマチックLCD)に塗布する。安定なペーストもしくは着色されたフォトレジストのためには、高い熱安定性の他に、高い顔料純度も必要条件である。
【0057】
さらに、着色されたカラーフィルターはまた、インクジェット印刷法または他の適当な印刷法により塗布することができる。
【0058】
本発明の混晶の赤の色相は、特に赤-緑-青(RGB)のカラーフィルターカラーセットに非常に好適である。これらの3色は、フルカラー写真をバックライトを用いて作成する場合に、別々の画素(Farbpunkte)として同時に存在する。
【0059】
典型的な赤色画素用の着色剤は、ピロロピロール-、キナクリドン-およびアゾ顔料、例えばC.I. Pigment Red 254、C.I. Pigment Red 209、C.I. Pigment Red 175およびC.I. Pigment Orange 38(単独でまたは混合して)である。緑色画素の場合には、通常、フタロシアニン着色剤、例えば、C.I. Pigment Green 36およびC.I. Pigment Green 7が使用される。
【0060】
必要に応じて、各画素はさらに、シェーディングのために別の色と混合することができる。赤および緑の色相は好ましくは黄色、例えばC.I. Pigment Yellow 138、139、150、151、180および213と混合される。
【0061】
最終的に、本発明の混晶顔料は、有機または無機物質、顆粒、繊維原料、粉体および他の顔料との乾式混合により、物質混合物に加工することもできる。
【実施例】
【0062】
以下の実施例において、特に指定のない限り、パーセントの記載は重量パーセントを、部は重量部を意味する。X線粉末ダイアグラムは、Cu-Kα照射を用いて測定し、2シータ値は度、測定精度は±0.2°であり、強度はvs = 非常に強い、s = 強い、m = 中程度、w = 弱い、を意味する。
【0063】
比較例1(50% 3-クロロベンゾニトリル、50% 4-クロロベンゾニトリル):
顔料混合物を欧州特許出願第0 094 911号明細書の実施例34に従って、50 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび50 mol%の4-クロロベンゾニトリルの混合物から製造する。
【0064】
得られる顔料は56 m2/gのBET表面積を有し、X線粉末ダイアグラムにおいて以下の特徴的な線によって特徴付けられる:
【0065】
【表2】

【0066】
18.5°(±0.2)の2シータにおける本発明の結晶変態の特徴的な新しい線は観察されない。
【0067】
比較例2(70% 3-クロロベンゾニトリル、30% 4-クロロベンゾニトリル、酸による沈殿):
顔料を国際公開第02/085987号の実施例1eに従って、70 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび30 mol%の50%の4-クロロベンゾニトリルから製造する。
【0068】
得られる顔料は87 m2/gのBET表面積を有し、X線粉末ダイアグラムにおいて以下の特徴的な線によって特徴付けられる:
【0069】
【表3】

【0070】
18.5°(±0.2)の2シータにおける本発明の結晶変態の特徴的な新しい線は観察されない。
【0071】
比較例3(70% 3-クロロベンゾニトリル、30% 4-クロロベンゾニトリル、水における沈殿):
21.7部の3-クロロベンゾニトリルおよび9.3部の4-クロロベンゾニトリルを30%のナトリウムアミレート(9.3部のナトリウムおよび143部のアミルアルコールから製造)に加え、100℃に加熱する。2時間以内に30部のコハク酸ジイソプロピルエステルを添加する。100℃でさらに4時間経過後に、顔料アルカリ塩懸濁液を80℃に冷却し、60℃の熱水に加える。顔料懸濁液を引き続き5時間加熱することにより95℃に調節し、ろ過し、メタノールおよび水で洗浄し、乾燥棚において75℃で乾燥する。赤みがかった橙色の顔料が得られる。
【0072】
得られる顔料は73 m2/gのBET表面積を有し、X線粉末ダイアグラムにおいて以下の特徴的な線によって特徴付けられる:
【0073】
【表4】

【0074】
18.5°(±0.2)の2シータにおける本発明の結晶変態の特徴的な新しい線は観察されない。
【0075】
実施例1(80 mol%の3-クロロベンゾニトリル、20 mol%の4-クロロベンゾニトリル):
顔料を比較例3と同様に製造するが、24.8部の3-クロロベンゾニトリルおよび6.2部の4-クロロベンゾニトリルを反応させる。単離、およびメタノールおよび水での洗浄の後に、赤みがかった橙色の顔料が得られる。
【0076】
得られる顔料は103 m2/gのBET表面積を有し、比較例1および3からの顔料よりも非常に微細である。X線粉末ダイアグラムにおいて以下の特徴的な線によって特徴付けられる:
【0077】
【表5】

【0078】
18.5°(±0.2)の2シータにおける本発明の結晶変態の特徴的な新しい線が観察される。
【0079】
実施例2(83 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび17 mol%の4-クロロベンゾニトリルからの混晶):
顔料を比較例3と同様に製造するが、25.8部の3-クロロベンゾニトリルおよび5.2部の4-クロロベンゾニトリルを反応させる。赤みがかった橙色の顔料が得られる。
【0080】
得られる顔料は98 m2/gのBET表面積を有し、比較例1および3からの顔料よりも非常に微細である。X線粉末ダイアグラムにおいて以下の特徴的な線によって特徴付けられる:
【0081】
【表6】

【0082】
18.5°(±0.2)の2シータにおける本発明の結晶変態の特徴的な新しい線が観察される。
【0083】
実施例3(92 mol%の3-クロロベンゾニトリル、8 mol%の4-クロロベンゾニトリルからの混晶):
顔料を比較例3と同様に製造するが、28.4部の3-クロロベンゾニトリルおよび2.6部の4-クロロベンゾニトリルを反応させる。赤みがかった橙色の顔料が得られる。
【0084】
得られる顔料は99 m2/gのBET表面積を有し、比較例1および3からの顔料よりも非常に微細である。X線粉末ダイアグラムにおいて以下の特徴的な線によって特徴付けられる:
【0085】
【表7】

【0086】
18.5°(±0.2)の2シータにおける本発明の結晶変態の特徴的な新しい線が観察される。
【0087】
実施例4(83 mol%の3-クロロベンゾニトリル、17 mol%の4-メチルベンゾニトリルからの混晶):
顔料を比較例3と同様に製造するが、25.8部の3-クロロベンゾニトリルおよび5.2部の4-メチルベンゾニトリルを反応させる。赤みがかった橙色の顔料が得られる。
【0088】
得られる顔料は102 m2/gのBET表面積を有し、比較例1および3からの顔料よりも非常に微細である。18.5°(±0.2)の2シータにおける本発明の結晶変態の特徴的な新しい線が観察される。
【0089】
実施例5(83 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび17 mol%のテレフタロニトリルからの混晶):
顔料を比較例3と同様に製造するが、25.8部の3-クロロベンゾニトリルおよび5.2部のテレフタロニトリルを反応させる。赤みがかった橙色の顔料が得られる。
【0090】
得られる顔料は109 m2/gのBET表面積を有し、比較例1および3からの顔料よりも非常に微細である。18.5°(±0.2)の2シータにおける本発明の結晶変態の特徴的な新しい線が観察される。
【0091】
上記の実施例において製造された顔料のBET表面積を、以下の表に記載する。
【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
本発明の実施例1〜5は、比較例1〜3よりも非常に微細な結晶質である。
【0095】
使用例:
顔料混合物の色強度(Farbstaerke)および透明性を調べるために、得られた顔料を、透明なアルキド-メラミン焼付け塗料系(Alkyd-Melamin-Einbrennlacksystem)に完全に分散させた。
【0096】
透明性を測定するために、着色したアルキド-メラミン焼付け塗料を、比較すべきサンプルと一緒に、黒色の線(schwarzem Balken)をひいた白色のボール紙上に同時に上色コーティング(Volltonlack)として塗布し、30分間風乾し、その後140℃で30分間焼き付けた。透明性の評価のために、黒色の下地上における2種の塗布顔料の隠蔽力(Deckkraft)を比較した。
【0097】
色強度の測定のために、6.0 gのアルキド-メラミン上色コーティングを20.0 gの30%白色ワニス(Weisslacks)と混合することによって、解析用コーティング(Aufhellungslack)を製造した。
【0098】
得られた解析用コーティングを比較すべきサンプルと一緒に、白色のボール紙に同時に塗布し、30分間風乾し、その後140℃で30分間焼き付けた。色強度およびその測定はDIN EN ISO 787-26に定義されている。
【0099】
上記の実施例において製造された顔料の色強度、彩度(色純度)および透明性を以下の表に示す。色強度(100%)、彩度(Buntheit)ΔC(色純度)(ΔC =0)および透明性の標準として、実施例1からの顔料を使用した。
【0100】
透明性は以下のように評価した。
+VI 非常に著しく隠蔽(bedeutend deckender)
+V 著しく隠蔽(wesentlich deckender)
+IV 明確に隠蔽(deutlich deckender)
+III 明らかに隠蔽(merklich deckender)
+II ある程度隠蔽(etwas deckender)
+I 僅かに隠蔽(eine Spur deckender)
/=/ ほぼ同等(etwa wie)
-I 僅かに透明(eine Spur transparenter)
-II ある程度透明(etwas transparenter)
-III 明らかに透明(merklich transparenter)
-IV 明確に透明(deutlich transparenter)
-V 著しく透明(wesentlich transparenter)
-VI 非常に著しく透明(bedeutend transparenter)。
【0101】
【表10】

【0102】
比較例1、2および3は、本発明1〜3よりも非常に色が鈍い(trueber)(ΔC<<-1.0)。比較例1および3はさらに、本発明の実施例1〜3よりも非常に隠蔽力がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コハク酸ジエステルを、97〜80 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび3〜20 mol%の4-X-ベンゾニトリルからなる混合物(X = 塩素、メチルまたはニトリルであり、3-クロロベンゾニトリルと4-X-ベンゾニトリルとのモル分率(Molanteile)は合計で100 mol%である)と反応させることにより得られる、式(I)、(II)および(III)
【化1】

の化合物を含む混晶。
【請求項2】
コハク酸ジエステルを95〜83 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび5〜17 mol%の4-X-ベンゾニトリルからなる混合物(3-クロロベンゾニトリルおよび4-X-ベンゾニトリルのモル分率は合計で100 mol%である)と反応させることにより得られる、請求項1記載の混晶。
【請求項3】
Xが同じく塩素である、請求項1または2のいずれか1つに記載の混晶。
【請求項4】
Cu-Kα照射で測定される2シータ18.5°±0.2°でのX線回折ダイアグラムにおける特徴的な線を特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の混晶。
【請求項5】
以下のX線粉末ダイアグラム(Roentgenpulverdiagramme)(Cu-Kα照射、度で表される2シータ値、測定精度+/- 0.2°、強度:vs = 非常に強い、s = 強い、m = 中程度、w = 弱い)における線:
【表1】

を特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の混晶。
【請求項6】
90〜150 m2/gのBET表面積を特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の混晶。
【請求項7】
強塩基の存在下、高温で、有機溶剤中において、コハク酸ジエステルを97〜80 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび3〜20 mol%の4-X-ベンゾニトリルと反応させることにより顔料アルカリ塩を形成させ、それに続いて、水および/またはアルコール中において該顔料アルカリ塩の加水分解を行い、そして場合により溶剤仕上げ(Loesemittelfinish)を施すことによる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の混晶の製造方法。
【請求項8】
コハク酸ジエステルを95〜83 mol%の3-クロロベンゾニトリルおよび5〜17 mol%の4-X-ベンゾニトリルと反応させることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の混晶の、天然または合成由来の高分子有機材料の着色のための使用。
【請求項10】
プラスチック、樹脂、コーティング(Lacken)、塗料(Anstrichfarben)、印刷用インク、電子写真トナーおよび現像剤、カラーフィルターの着色のための、および液体インクの着色のための、請求項9記載の使用。
【請求項11】
カラーフィルター、金属コーティング(Metallic-Lacken)およびインクジェットインクの着色のための、請求項9または10のいずれか1つに記載の使用。

【公表番号】特表2010−519349(P2010−519349A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549785(P2009−549785)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000306
【国際公開番号】WO2008/101570
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】