説明

高い還元性および安定な比表面積を有する、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムに基づく組成物、調製方法、ならびに排気ガスの処理における使用

酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムに基づく本発明の組成物は、多くても50重量%の酸化セリウム含有量、600℃での空気中における焼成の後での少なくとも95%の還元性のレベル、および1100℃での4時間の焼成の後での少なくとも15m/gの比表面積を有する。本発明の組成物は、ジルコニウム化合物およびセリウム化合物を含む水性混合物を形成すること;この混合物を少なくとも100℃に加熱し、加熱後、混合物を塩基性pHにすること;界面活性剤タイプの添加剤を、この混合物から得られた沈殿物に加えること;および沈殿物を少なくとも900℃の温度で不活性ガス中または真空下において焼成し、次いで、少なくとも600℃の温度で酸化性雰囲気において行うことによって調製される。本発明の組成物は自動車排気ガスの処理において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い還元性および安定な比表面積を有する、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムに基づく組成物、その調製方法、ならびに特に自動車排気ガスの処理におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な「多機能」触媒が現在、内燃機関からの排気ガスを処理するために使用される(自動車の燃焼後触媒)。用語「多機能(的)」は、酸化、具体的には、排気ガスに存在する一酸化炭素および炭化水素の酸化だけではなく、還元、特に、これらの排気ガスに同様に存在する窒素酸化物の還元もまた行うことができる触媒(「三元」触媒)を意味する。酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムが、現在のところ、このタイプの触媒の組成物に含まれる物質の2つの特に重要で、好都合な構成成分であるように思われる。そのような使用において効果的であるためには、これらの物質は、高温においてさえ依然として十分に大きいままである比表面積を有しなければならない。酸化ジルコニウムは、このタイプの製造物の表面を安定化することを特に可能にする。
【0003】
これらの物質について要求される別の特性は還元性である。用語「還元性」は、この場合には、また、以降の記載については、還元性雰囲気の影響下および所与の温度においてセリウム(III)に変換され得る物質中のセリウム(IV)の含有量を意味する。この還元性は、例えば、所与の温度領域における水素の消費によって測定することができる。このことは、そのようなタイプの組成物(例えば、本発明の組成物など)の場合におけるセリウムに帰因し、すなわち、セリウムが、還元または酸化されるという特性を有することに帰因する。この還元性は、自明のことではあるが、できる限り大きくなければならない。
【0004】
そのうえ、これらの物質の効力、特に、それらを貴金属のための担体として使用しているときにおける効力を増大させることが依然として探求されている。この使用において、これらは窒素酸化物の還元ならびに一酸化炭素および炭化水素の酸化を促進させる。貴金属のできる限り少ない量を使用する系を開発することもまた探求されている。より具体的には、パラジウムに基づく系が開発中である。これは、この金属が、他の貴金属(例えば、白金など)よりも高価でないという利点を有するからである。現在のところ、パラジウム系は、高いジルコニウム含有量を有する組成物については特に、他の金属に基づく系よりも効率が低い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記で述べられた特徴を満足することができる、改善された特性を有する組成物の開発であり、特に、パラジウムとともに効果的に使用することができる組成物の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的により、本発明の組成物は酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムに基づいており、50質量%以下の酸化セリウムの割合、1100℃での4時間の焼成の後での少なくとも15m/gの比表面積、および600℃での空気中における焼成の後での少なくとも95%の還元性の程度を有することを特徴とする。
【0007】
本発明はまた、700℃での空気中における焼成の後での少なくとも95%の還元性の程度を有する、上記で示された組成物と同じ割合での酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムに基づく、同じ表面特徴を有する組成物に関する。
【0008】
本発明はまた、900℃での空気中における焼成の後での少なくとも85%の還元性の程度を有する、上記で示された組成物と同じ割合での酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムに基づく、同じ表面特徴を有する組成物に関する。
【0009】
本発明はまた、下記のステップを含むことを特徴とする、そのような組成物を調製するための方法に関する:
(a)ジルコニウム化合物およびセリウム化合物を含む水性混合物を形成するステップ;
(b)このように形成された混合物を少なくとも100℃の温度に加熱し、その結果として、反応媒体中に懸濁された沈殿物を得るステップ;
(c)加熱後に得られた反応媒体を塩基性pHにするステップ;
(d)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびこの塩、ならびにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシラートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤を最初に、前段ステップから得られる媒体に加え、その後、前記沈殿物を分離するステップ;
(d’)または前記沈殿物を最初に、ステップ(c)から得られる媒体から分離し、その後、前記添加剤を前記沈殿物に加えるステップ;
(e)このように得られた沈殿物の第1の焼成を少なくとも900℃の温度で不活性ガス下または真空下において行い、その後、少なくとも600℃の温度での酸化性雰囲気下における第2の焼成を行うステップ。
【0010】
本発明の他の特徴、詳細および利点が、下記の説明を読んだとき、さらに一層十分に明らかになり、同様に、具体的な、しかし、非限定的な様々な例が、本発明を例示するために意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以降の記載において、用語「比表面積」は、the Journal of the American Chemical Society、60、309(1938)に記載されるBrunauer−Emmett−Teller法によって確立されたASTM標準D3663−78に従って窒素の吸着によって求められるBET比表面積を意味する。
【0012】
用語「ランタニド」(Ln)は、イットリウム、ならびに57から71の間の原子番号(57および71を含む。)を有する周期表の元素によって構成される群の元素を意味する。
【0013】
以降の本記載について、別途示されない限り、与えられた値の範囲においては、限界値が含まれることが指摘される。
【0014】
含有量は、別途示されない限り、酸化物の質量として与えられ、この場合、これらの含有量を表すためのこれらの酸化物は、セリウムについては酸化セリウム(IV)の形態であり、他のランタニド(Ln)についてはLnの形態であり、特にプラセオジムの場合においてはPr11の形態であると見なされる。
【0015】
所与の温度および時間について示される比表面積の値は、別途示されない限り、示された時間にわたる公称温度での空気中における焼成に対応する。
【0016】
本発明の組成物は、酸化ジルコニウムに基づく混合酸化物タイプであり、酸化セリウムもまた含む。本発明の組成物はまた、セリウム以外のランタニドから選ばれる別の元素の少なくとも1つの酸化物を含むことができる。したがって、この場合、三元組成物、または特に四元組成物を有することが可能である。上記の元素は、より具体的には、イットリウム、ランタン、ネオジムまたはプラセオジムから選ぶことができる。より具体的には、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化プラセオジムおよび酸化ランタンに基づく組成物、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ネオジムおよび酸化ランタンに基づく組成物、ならびに酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化イットリウムおよび酸化ランタンに基づく組成物を挙げることができる。
【0017】
本発明の組成物における様々な構成成分の含有量は割合のある範囲内で変化し得る。
【0018】
セリウムについては、この含有量は50質量%以下であり、より具体的には45%以下であり、一層より具体的には40%以下である。
【0019】
酸化ジルコニウムが組成物の残りを構成する。したがって、ジルコニウム含有量は少なくとも50質量%とすることができ、より具体的には少なくとも55%とすることができ、一層より具体的には少なくとも60%とすることができる。この含有量はまた、特に組成物における上記タイプの1つまたは複数の元素の起こり得る存在の関数として、少なくとも65%とすることができ、一層より具体的には少なくとも70%とすることができる。この存在もまた考慮に入れると、ジルコニウム含有量は三元組成物または四元組成物においては50%未満とすることができる。
【0020】
より具体的には、それ以外の可能な元素の含有量、またはこれらの元素のすべての含有量は、通常、35%以下である。より具体的には、それ以外の可能な元素の含有量、またはこれらの元素のすべての含有量は30%以下とすることができ、一層より具体的には20%以下または10%以下とすることができる。そのうえ、それ以外の可能な元素の含有量、またはこれらの元素のすべての含有量は、好ましくは、少なくとも3%であり、より具体的には少なくとも5%である。したがって、この含有量は、最も一般的な場合においては3%から35%の間とすることができる。
【0021】
本発明の組成物の主要な特徴は高い還元性であり、これは本記載においては還元性の程度によって測定される。
【0022】
組成物の還元性は、30℃から900℃の間で測定される組成物の水素消費を測定することによって求められる。この測定は、アルゴンで希釈された水素を使用して所与の温度でのプログラム化された還元によって行われる。シグナルが熱伝導度検出器により検出される。水素の消費が、30℃でのベースラインの水素シグナルから、900℃でのベースラインまでの欠けている面積から計算される。還元性の程度は、還元されたセリウムの百分率を表す。この場合、上記の方法によって消費および測定されたHの1/2molが、還元されたCe(IV)の1molに対応することが理解される。
【0023】
還元性の程度は、組成物がその調製期間中に焼成されていてもよい温度の関数として変化し得る。
【0024】
本記載において、還元性の所与の程度が、様々な温度での、2時間から4時間に及び得る時間にわたる空気中における焼成を受けている組成物に対して上記の方法によって測定される。この時間範囲内では、還元性の程度における著しい変動が認められないことは特筆される。この理由のために、また、別途示されない限り、還元性の程度は、2時間にわたって焼成されている製造物について示される。
【0025】
したがって、600℃での空気中における2時間の焼成の後、本発明の組成物は少なくとも95%の還元性の程度を有する。還元性の程度が100%に達することさえあり得る。
【0026】
700℃での空気中における2時間の焼成の場合、本発明の組成物はまた、少なくとも95%の還元性の程度を有する。還元性の程度は、この場合においてもまた、100%にまで達し得る。一般に、本発明の組成物の700℃での還元性の程度は、600℃での還元性の程度と同一であるか、または600℃で測定された還元性の程度に関して何らかの著しい変動を示さない。
【0027】
900℃での空気中における2時間の焼成の場合、本発明の組成物はさらに、少なくとも85%の還元性の程度を有する。
【0028】
1つの具体的な実施形態によれば、本発明の組成物は、25%以下の酸化セリウムの割合、15%以下の別のランタニド酸化物の含有量、および少なくとも80%の還元性の程度、より具体的には、1000℃での空気中における焼成の後での少なくとも85%の還元性の程度を有することができる。
【0029】
本発明の組成物はまた、特定の比表面積特徴を有する。
【0030】
最初に、本発明の組成物は、高温での大きい表面積、すなわち、1100℃での4時間の焼成の後での大きい表面積を有し、これらの組成物の比表面積は少なくとも15m/gであり、より具体的には少なくとも20m/gであり、一層より具体的には少なくとも25m/gである。最大の表面積値が一般には、少なくとも1つの上記元素(セリウム以外のランタニド)を含む組成物について得られ、また、1100℃での最大表面積値に関しては、ジルコニウムの大きい含有量(すなわち、少なくとも50%)について得られる。
【0031】
本発明の組成物が表面安定性を900℃から1000℃の間において有することもまた特筆され得る。本記載のために、この安定性は、900℃での4時間の焼成の後で見出される表面積(S900)と、1000℃での4時間の焼成の後で見出される表面積(S1000)との間における変動によって測定され、この変動は、百分率として表される比率、(S900−S1000)/S900によって表される。900℃から1000℃の間におけるこの変動は25%以下とすることができ、より具体的には15%以下とすることができる。
【0032】
ある程度の表面安定性がまた、1000℃から1100℃の間でも見出され得る。この変動は、(S1100−S1000)/S1000の比率によって同様に表されるが、上記温度での4時間の焼成の後では30%以下とすることができ、より具体的には20%以下とすることができる。
【0033】
本発明の組成物を調製するための方法が次に記載される。
【0034】
本方法の最初のステップは、例えば、ジルコニウム化合物およびセリウム化合物と、1つまたは複数の上記元素に基づく組成物の調製の場合においては、この元素またはこれらの元素の化合物とを含む水性混合物を調製することにある。
【0035】
そのような化合物は、好ましくは、可溶性の化合物である。そのような化合物は特に、ジルコニウムの塩、セリウムの塩およびランタニドの塩であり得る。これらの化合物は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、セリウム(IV)アンモニア性(ceri−ammoniacal)硝酸塩、またはジルコニウムもしくはセリニウムについては、これらの元素の(オキソ)水酸化物から選ぶことができる。
【0036】
したがって、挙げることができる例には、硫酸ジルコニル、硝酸ジルコニルおよび塩化ジルコニルが含まれる。硝酸ジルコニルが最も一般に使用される。また、例えば、セリウム(IV)の塩(例えば、硝酸塩またはセリウム(IV)アンモニア性硝酸塩など)も特に挙げることができ、これらは本明細書中における使用のために特に好適である。硝酸セリウム(IV)が使用される場合がある。少なくとも99.5%の純度(より具体的には少なくとも99.9%の純度)を有する塩を使用することが好都合である。硝酸セリウム(IV)の水溶液を、例えば、硝酸を、セリウム(III)塩(例えば、硝酸セリウム(III))の溶液およびアンモニア水溶液を過酸化水素の存在下で反応することにより従来の様式で調製される水和した酸化セリウム(IV)と反応することによって得ることができる。特に、文書FR−A−2570087に記載されるように、硝酸セリウム(III)溶液の電解酸化の方法に従って得られる硝酸セリウム(IV)溶液を使用することもまた可能であり、この硝酸セリウム(IV)溶液は本明細書中では好都合な出発物質を構成する。
【0037】
セリウム塩の水溶液およびジルコニル塩の水溶液が、塩基または酸の添加によって調節することができる特定の初期遊離酸性度を有し得ることは特筆される。しかしながら、上記で述べられたような特定の遊離酸性度を効果的に有するセリウム塩およびジルコニウム塩の初期溶液、または程度の差はあるが、積極的に事前に中和されている溶液を使用することが同等に可能である。この中和は、塩基性化合物を、この酸性度を制限するように上記混合物に加えることによって行うことができる。この塩基性化合物は、例えば、アンモニア水の溶液、または代替では、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物の溶液であり得るが、しかし、好ましくは、アンモニア水溶液であり得る。
【0038】
最後に、出発混合物がセリウム化合物を含有するとき(この場合、この元素はCe(III)の形態である。)、方法の期間中に酸化剤(例えば、過酸化水素)を導入することが好ましいことは特筆される。この酸化剤は、ステップ(a)の期間中またはステップ(b)の期間中に、特に、これらのステップの終了時に反応媒体に加えられることによって使用することができる。
【0039】
ゾルをジルコニウムまたはセリウムの出発化合物として使用することもまた可能である。用語「ゾル」は、水性液相に懸濁されたジルコニウム化合物またはセリウム化合物(この化合物は一般に、ジルコニウムまたはセリウムの酸化物および/または水和した酸化物である。)に基づく、コロイドサイズ(すなわち、約1nmから約500nmの間におけるサイズ)の微細な固体粒子によって構成される任意の系を示し、この場合、前記粒子はまた、結合または吸着したイオン(例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩化物またはアンモニウム)の残存量を含有することが可能である。そのようなゾルにおいて、ジルコニウムまたはセリウムは完全にコロイドの形態であり得るか、または同時にイオンの形態およびコロイドの形態であり得るかのいずれかであることは特筆される。
【0040】
混合物は、好ましいことではないが、例えば、最初は固体状態にある化合物から得ることができ(この場合、混合物が後で原料用の水に導入される。)、または代替では、これらの化合物の溶液を直接に使用し、その後、前記溶液を任意の順序で混合して得ることができる。
【0041】
最初の混合物がこのように得られると、その後、この混合物の加熱が本発明による方法のステップ(b)に従って行われる。
【0042】
この熱処理が行われる温度は少なくとも100℃である。したがって、この熱処理が行われる温度は、100℃から反応媒体の臨界温度の間、具体的には、100℃から350℃の間、好ましくは100℃から200℃の間であり得る。
【0043】
加熱操作は、上記の化合物を含有する水性混合物を密閉されたチャンバー(オートクレーブタイプの密閉された反応器)の中に入れることによって行うことができ、この場合、その後、必要な圧力が、単に反応媒体を加熱することから生じる(自生圧力)。したがって、上記で示された温度条件のもと、および水性媒体において、1つの例示として、密閉された反応器における圧力が、1バール(10Pa)を超える値と、165バール(1.65×10Pa)との間に、好ましくは、5バール(5×10Pa)から165バール(1.65×10Pa)の間に及び得ることを指摘することができる。自明ではあるが、外部からの圧力を及ぼすこともまた可能であり、この場合、外部からの圧力はその後、加熱から生じる圧力を増大させる。
【0044】
加熱はまた、100℃の領域における温度については開放式の反応器において行うことができる。
【0045】
加熱を、空気中、または不活性ガス(好ましくは、この場合においては窒素)の雰囲気でのいずれかにおいて行うことができる。
【0046】
このような処理の持続期間は重要ではなく、したがって、広い範囲内で変化させることができ、例えば、1時間から48時間の間で変化させることができ、好ましくは、2時間から24時間の間で変化させることができる。同様に、温度上昇が、大きな影響を及ぼさない割合で行われ、したがって、設定された反応温度には、媒体を、例えば、30分間および4時間にわたって加熱することによって到達することができる。この場合、これらの値は純粋に指針として示される。
【0047】
この第2のステップの後、反応媒体に懸濁された沈殿物が得られる。
【0048】
本方法の第3のステップ(c)は、以前に得られた反応媒体を塩基性pHにすることにある。この操作は、媒体に塩基(例えば、アンモニア水溶液など)を加えることによって行われる。
【0049】
用語「塩基性pH」は、7を超えるpH値を意味し、好ましくは、8を超えるpH値を意味する。
【0050】
本方法のこの段階において、熟成を行うこともまた可能である。これは、塩基の添加の後で得られた反応媒体に対して直接に、または沈殿物を水に戻した後で得られる懸濁物に対して行うことができる。熟成は、媒体を加熱することによって行われる。媒体が加熱される温度は少なくとも40℃であり、より具体的には少なくとも60℃であり、一層より具体的には少なくとも100℃である。したがって、媒体は、通常的には少なくとも30分、より具体的には少なくとも1時間である時間にわたって一定の温度で維持される。熟成は大気圧において行うことができ、または場合により、より高い圧力において行うことができる。第2の熟成を、沈殿物を最初の熟成の後で得られた反応媒体から分離し、この沈殿物を水に戻した後で行うことが可能であることもまた特筆され得る。この場合、この2回目の熟成は、最初の熟成について記載された条件のもとで行われる。
【0051】
本方法の残りを、2つの変法に従って、すなわち、上記で記載されたステップ(d)またはステップ(d’)に従って行うことができる。
【0052】
ステップ(d)に対応する第1の実施形態によれば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびこの塩、ならびにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシラートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤が、前段ステップから得られた反応媒体に加えられる。この添加剤に関しては特許出願WO98/45212の教示を参照することができ、また、前記文書において記載される界面活性剤を使用することができる。
【0053】
挙げることができるアニオンタイプの界面活性剤には、エトキシカルボキシラート、エトキシル化脂肪酸またはプロポキシル化脂肪酸(特に、商品名Alkamuls(登録商標)のエトキシル化脂肪酸またはプロポキシル化脂肪酸)、式R−C(O)N(CH)CHCOOのサルコシナート、式RR’NH−CH−COO(式中、RおよびR’はアルキル基またはアルキル−アリール基である。)のベタイン、ホスファートエステル(特に、商品名Rhodafac(登録商標)のホスファートエステル)、スルファート(例えば、アルコールスルファート、アルコールエーテルスルファートおよび硫酸化アルカノールアミドエトキシラートなど)、およびスルホナート(例えば、スルホスクシナートおよびアルキルベンゼンスルホナートまたはアルキルナフタレンスルホナート)が含まれる。
【0054】
挙げることができる非イオン性界面活性剤には、アセチレン系界面活性剤、エトキシル化脂肪アルコールまたはプロポキシル化脂肪アルコール(例えば、商品名Rhodasurf(登録商標)または商品名Antarox(登録商標)のエトキシル化脂肪アルコールまたはプロポキシル化脂肪アルコール)、アルカノールアミド、アミンオキシド、エトキシル化アルカノールアミド、長鎖のエトキシル化アミンまたはプロポキシル化アミン(例えば、商品名Rhodameen(登録商標)のエトキシル化アミンまたはプロポキシル化アミン)、エチレンオキシド/プロピレンオキシドのコポリマー、ソルビタン誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセリルエステルおよびこのエトキシル化誘導体、アルキルアミン、アルキルイミダゾリン、エトキシル化オイル、ならびにエトキシル化アルキルフェノールまたはプロポキシル化アルキルフェノール(特に、商品名Igepal(登録商標)のエトキシル化アルキルフェノールまたはプロポキシル化アルキルフェノール)が含まれる。具体的には、Igepal(登録商標)、Dowanol(登録商標)、Rhodamox(登録商標)およびAlkamide(登録商標)の各商品名でWO98/45212において述べられる製造物もまた挙げることができる。
【0055】
カルボン酸に関しては、脂肪族のモノカルボン酸またはジカルボン酸、これらの中で、より具体的には、飽和酸を使用することが特に可能である。脂肪酸、より具体的には、飽和脂肪酸もまた使用することができる。したがって、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、2−エチルヘキサン酸およびベヘン酸を特に挙げることができる。挙げることができるジカルボン酸には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸が含まれる。
【0056】
カルボン酸の塩もまた使用することができる。
【0057】
最後に、カルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシラートタイプの界面活性剤から選ばれる界面活性剤を使用することが可能である。
【0058】
用語「カルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシラートタイプの製造物」は、−CH−COOH基を鎖の末端に含むエトキシル化またはプロポキシル化された脂肪アルコールから構成される製造物を意味する。
【0059】
これらの製造物は下記の式に対応し得る:
−O−(CR−CR−O)−CH−COOH
式中、Rは飽和または不飽和の炭素型鎖を示し、その長さは一般には22個以下の炭素原子であり、好ましくは、少なくとも12個の炭素原子であり;R、R、RおよびRは同一で、水素を表し得るか、またはRがCH基を表すことができ、R、RおよびRが水素を表し;nは、50までであり得る、ゼロでない整数であり、より具体的には5から15の間である(これらの値は含まれる。)。界面活性剤が、上記式の製造物の混合物(これらについて、Rはそれぞれ、飽和および不飽和であり得る。)から、または代替では、−CH−CH−O−基および−C(CH−CH−O−基の両方を含む製造物の混合物から構成され得ることは特筆される。
【0060】
自明のことではあるが、上記で記載されたタイプの添加剤の混合物を使用することが可能である。
【0061】
界面活性剤が加えられた後、沈殿物が場合により、任意の知られている手段によって液体媒体から分離される。
【0062】
ステップ(d’)の実行に対応する別の実施形態は、沈殿物をステップ(c)から得られる反応媒体から最初に分離し(これは任意の知られている手段によって行われる。)、その後、界面活性添加剤を、使用される界面活性剤の状態の関数として、沈殿物の含浸によって、または固体/固体の混合によってこの沈殿物に加えることにある。
【0063】
一般に、使用される添加剤または界面活性剤の量は、酸化物として計算される組成物の重量に対する添加剤の重量百分率として表現されるとき、一般には5%から100%の間であり、より具体的には15%から60%の間である。
【0064】
本方法の最終ステップ、すなわち、ステップ(e)は、以前に得られた沈殿物の二重の焼成を含む。
【0065】
最初の焼成が不活性ガス下または真空下において行われる。不活性ガスは、ヘリウム、アルゴンまたは窒素であり得る。真空は、一般には、10−1mバール未満の酸素の分圧を有する一次真空である。焼成温度は少なくとも900℃である。この値よりも低い温度は、上記で示された還元性特性を有する製造物をもたらさないという危険性を有する。焼成温度を上げることにより、還元性における増大がもたらされ、還元性は非常に高い温度では100%の値に達し得る。温度はまた、焼成温度が高くなるほど、製造物の比表面積がそれに比例して低くなるということを考慮に入れて、所定の値で設定される。したがって、一般に、最大焼成温度は1000℃以下である。これは、この温度を超えると、比表面積は、不十分であるという危険性を有するからである。この最初の焼成の継続期間は、一般には少なくとも2時間であり、好ましくは少なくとも4時間であり、特に少なくとも6時間である。この継続期間における増大は通常、還元性の程度における増大をもたらす。言うまでもなく、継続期間は温度の関数として設定することができ、短い焼成時間はより高い温度を必要とする。
【0066】
その後、第2の焼成が、酸化性雰囲気において、例えば、空気中において行われる。この場合、焼成が一般には、少なくとも600℃の温度で、一般には少なくとも30分の時間にわたって行われる。600℃よりも低い温度は、上記で記載されたステップ(d)またはステップ(d’)の期間中に使用された添加剤を除くことを困難にし得る。900℃の焼成温度を超えないことが好ましい。
【0067】
上記で記載されるような、または上記の方法によって得られるような本発明の組成物は粉末の形態であり、しかし、場合により、様々なサイズの顆粒、ビーズ、円筒状物またはハニカム物の形態であるように形成することができる。これらの組成物は、触媒反応の分野において通常的に使用される任意の担体(すなわち、特に、熱的に不活性な担体)に加えることができる。このような担体は、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、ケイ酸塩、結晶性リン酸シリコアルミニウムおよび結晶性リン酸アルミニウムから選ぶことができる。
【0068】
組成物はまた、様々な触媒系において使用することができる。これらの触媒系は、触媒作用特性を有する、これらの組成物に基づいた被覆(薄め塗膜(wash coat))を、例えば、金属モノリスタイプまたはセラミックタイプの基体の表面に含むことができる。被覆はまた、そのようなタイプの担体(例えば、本明細書中上記で述べられた担体など)を含むことができる。この被覆は、基体に後で堆積させることができる懸濁物を形成するように組成物を担体と混合することによって得られる。
【0069】
これらの触媒系、およびより具体的には、本発明の組成物は数多くの適用が見出され得る。したがって、それらは、様々な反応(例えば、脱水、水硫化、水素化脱窒素、脱硫、水素化脱硫、脱ハロゲン化水素、リフォーミング、蒸気リフォーミング、クラッキング、水素化分解、水素化、脱水素化、異性化、不均化、オキシ塩素化、炭化水素または他の有機化合物の脱水素環化、還元反応および/または酸化反応(具体的には、線状もしくは分岐型の芳香族炭化水素、メタンまたはCOの還元反応および/または酸化反応)、クラウス反応、内燃機関の排気ガスの処理、脱金属化、メタン化、転化、内燃機関(例えば、不良な状態で運転されるディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンなど)によって放出されるススの接触酸化など)の触媒反応のために特に好適であり、したがって、そのような触媒反応において使用可能である。本発明の触媒系および組成物は最終的には、NOxスカベンジャーとの組合せで使用することができる。
【0070】
これらの述べられた使用の中でも、上記の触媒系を使用する内燃機関の排気ガスの処理(自動車の燃焼後触媒反応)は特に好都合な適用を構成する。
【0071】
触媒反応におけるこれらの使用の場合において、本発明の組成物は貴金属との組合せで使用することができる。したがって、本発明は、本発明の組成物が貴金属のための担体として使用される上記で記載されたタイプの触媒系に関する。これらの金属の性質、およびこれらの金属をこれらの組成物に取り込むための技術が当業者には広く知られている。例えば、これらの金属は、白金、ロジウム、パラジウムまたはイリジウムであり得るし、特に、含浸によって組成物に取り込むことができる。本発明の1つの具体的な実施形態によれば、触媒系はパラジウムを貴金属として含有する。そのような系における貴金属の含有量は一般に10%以下であり、好ましくは5%以下であり、一層より好ましくは1%以下であり、この場合、この量は、本発明の金属/酸化物系組成物組合せに対する金属の質量として表される。この含有量は、とりわけ、所望される適用の関数として、また、酸化物に基づく組成物の性質の関数として変化し得る。
【0072】
本発明の組成物が、少なくとも10%未満の貴金属の量について、先行技術の結果と類似した結果をもたらし得ることに留意することは興味深いことである。
【0073】
次に、実施例が示される。
【0074】
実施例において述べられる評価試験は下記の条件で行われた。
【0075】
還元性の程度
セリウムの還元性の程度が、プログラム化された温度での還元をOhkura Riken TP5000装置で行うことによって測定される。この装置では、本発明による組成物の水素消費が温度の関数として測定され、セリウムの還元の程度が水素の消費から推定される。
【0076】
より具体的には、水素が、30mL/分の流速により、アルゴンにおいて10体積%で還元ガスとして使用される。実験プロトコルは、サンプルの200mgを事前に風袋測定された容器に計り取ることにある。その後、サンプルは、石英ウールを底に含有する石英セルの中に導入される。最後に、サンプルは石英ウールで覆われ、測定装置の炉に入れられる。温度プログラムは下記の通りである:
酸化:He中に5vol%でのOのもとにおいて10℃/分の増加率での500℃までへの温度上昇;
30分間の定常段階、その後、30℃への低下;
Ar下における30℃での20分間の処理;
還元:Ar中に10vol%でのHのもとにおいて20℃/分の増加率での900℃までへの温度上昇;
校正;
900℃から30℃へのAr下における温度低下。
【0077】
このプログラムの期間中、サンプルの温度が、サンプル上部の石英セル内に置かれた熱電対を使用して測定される。還元期の期間中における水素消費が、熱伝導度検出器(TCD)を使用してセルの出口で測定されるガス流の熱伝導度における変動の校正によって推定される。
【0078】
セリウムの還元の程度が、30℃から900℃の間で測定された水素消費から計算される。
【0079】
動的三元触媒作用試験
この試験は、汚染物質(CO、NOおよび炭化水素)の除去に関して粉末形態での単一金属触媒の性能特性を動的条件(1Hzの振動数)のもとで評価することを可能にする。この試験において使用される炭化水素はプロパンおよびプロペンである。いくつかの測定値が、ガス混合物の富化度を0.980から1.015の値の間で変化させることによって等温測定により得られる。下記の表には、これら2つの値についてのこのガス混合物の組成が示される。評価温度は480℃であり、20mgの触媒量が、不活性な希釈剤として使用されるSiCの150mgと混合される。触媒性能特性がCOP(交差点)として与えられ、この場合、COPは、混合物の富化度の関数としてのCOおよびNOの変換についての曲線の交わる点として定義される。
【0080】
この試験のために、本発明の組成物は、パラジウムまたはロジウムの貴金属硝酸塩の溶液により含浸される。パラジウムの場合においては、パラジウム元素の0.5%の質量含有量が設定される。ロジウムの場合においては、ロジウム元素の0.1%または0.07%の質量含有量が設定される。その後、製造物は乾燥され、500℃で4時間、空気中において活性化される。試験を行う前に、時効処理が、5分の継続期間について1.8vol%のO/10vol%のHO/残量のNの酸化性流動、および5分の継続期間について1.8vol%のCO/10vol%のHO/残量のNの還元性流動を交互にすることによって950℃で16時間、または1050℃で48時間行われる。
【0081】
【表1】

【0082】
ライトオフ(light−off)三元触媒作用試験
このライトオフ試験は、粉末形態における三元触媒が汚染物質(CO、NOおよび炭化水素)に関して20%または50%の変換(T20またはT50)に達する温度を評価することを可能にする。高富化(rich)ライトオフ試験が、1.024の富化度のガス混合物を用いて行われる。低富化(poor)ライトオフ試験が、0.98の富化度を有するガス混合物を用いて行われる。触媒の20mg量が、不活性な希釈剤として使用されるSiCの150mgと混合される。上記の汚染物質に対する変換が、その後、温度の関数として測定される。この場合、温度は25℃/分の加熱速度により200℃から500℃の間に及ぶ。それぞれの汚染物質についてのライトオフ性能がT20(20%の変換が達成される温度)として表される。
【0083】
この試験のために、本発明による組成物は、貴金属(例えば、パラジウムまたはロジウムなど)の硝酸塩の溶液により含浸される。その後、製造物は乾燥され、500℃で4時間、空気中において活性化される。試験を行う前に、時効処理が、5分の継続期間について1.8vol%のO/10vol%のHO/残量のNの酸化性流動、および5分の継続期間について1.8vol%のCO/10vol%のHO/残量のNの還元性流動を交互にすることによって950℃で16時間、または1050℃で48時間行われる。
【実施例1】
【0084】
本実施例は、47%、47%および6%の酸化物のそれぞれの質量割合での酸化セリウム、酸化ジルコニウムおよび酸化ランタンに基づく本発明による組成物の調製に関する。
【0085】
上記組成物を得るために要求される化学量論的割合で、硝酸セリウム(IV)の溶液、硝酸ランタンの溶液および硝酸ジルコニルの溶液を一緒に混合する。
【0086】
この混合物の濃度(これは様々な元素の酸化物として表される。)を80g/lに調節する。その後、この混合物を150℃で4時間維持する。
【0087】
その後、アンモニア水溶液を、pHが8.5を超えるように反応媒体に加える。このように得られた反応媒体を2時間沸騰させる。静置し、その後、沈降させることによって相を分離した後、固体製造物を再懸濁し、このように得られた媒体を100℃で1時間処理する。
【0088】
このように得られた懸濁物をブフナー漏斗でろ過する。酸化物の35質量パーセントを含有する沈殿物が回収される。
【0089】
この沈殿物の100gを採取する。
【0090】
並行して、ラウリン酸アンモニウムのゲルを下記の条件のもとで調製した。ラウリン酸の250gをアンモニア水(12mol/l)の135mlおよび蒸留水の500mlに導入し、その後、混合物を、スパチュラを使用して均質化する。
【0091】
このゲルの28gを沈殿物の100gに加え、その後、混合物を、均一なペーストが得られるまで混合する。
【0092】
最初の焼成を、この段階で、1000℃の温度で4時間、300cm/分の流速により窒素下において行う。その後、製造物を室温に戻す。2回目の焼成を、この段階で、600℃の温度で2時間、300cm/分の流速により空気中において行う。
【0093】
このように得られた製造物は27m/gの表面積を有する。
【0094】
異なる温度での続く焼成の後で得られた表面積が下記に示される。
4時間、1000℃ = 26m/g
4時間、1100℃ = 23m/g。
【0095】
1000℃から1100℃の間での焼成温度についての表面積における変動は12%である。
【0096】
異なる温度での空気中における焼成の後での還元性の程度および最高還元可能温度がさらに下記に示される。600℃での値については、これは、本実施例において上記で記載された手順の後で得られるような製造物に関する。他の温度値については、これは、示される時間および温度でのさらなる焼成をその後で受けた同じ製造物に関する。
2時間、600℃ 還元性の程度=100% Tmax=580℃
2時間、900℃ 還元性の程度=88%
【実施例2】
【0097】
本実施例は、40%、50%、5%および5%の酸化物のそれぞれの質量割合での酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンおよび酸化イットリウムに基づく本発明による組成物の調製に関する。
【0098】
上記組成物を得るために要求される化学量論的割合で、実施例1の手順と同一の手順に従う。イットリウムのために使用された前駆体は硝酸イットリウムの溶液である。沈殿物は35%の酸化物含有量を有する。ラウリン酸アンモニウムの41.4gが沈殿物の100gについて使用される。
【0099】
このように得られた製造物は36m/gの表面積を有する。
【0100】
異なる温度での続く焼成の後で得られた表面積が下記に示される。
4時間、1000℃ = 34m/g
4時間、1100℃ = 27m/g。
【0101】
1000℃から1100℃の間での焼成温度についての表面積における変動は21%である。
【0102】
異なる温度での空気中における焼成の後での還元性の程度および最高還元可能温度がさらに下記に示される。600℃での値については、これは、本実施例において上記で記載された手順の後で得られるような製造物に関する。他の温度値については、これは、示される時間および温度でのさらなる焼成をその後で受けた同じ製造物に関する。
2時間、600℃ 還元性の程度=96% Tmax=560℃
2時間、900℃ 還元性の程度=88%
以前に記載されたような時効処理試験の結果、および上記で記載された調製手順に由来する製造物に対して得られた結果、すなわち、特に、4時間にわたる1000℃の第1の焼成および2時間にわたる600℃の第2の焼成の後における結果がさらに下記に示される。
【0103】
950℃での16時間のレドックス時効処理の後では、高富化媒体におけるライトオフ三元触媒作用試験は、ロジウムの0.1質量%により含浸されたこの製造物が350℃におけるNOの20%の変換および360℃におけるプロペンの20%の変換を達成することを示す。
【0104】
1050℃/48時間でのレドックス時効処理の後では、高富化媒体におけるライトオフ三元触媒作用試験は、ロジウムの0.1質量%により含浸されたこの製造物が、405℃におけるNOの50%の変換、408℃におけるプロペンの50%の変換、および345℃におけるCOの20%の変換を達成することを示す。
【0105】
同様に、1050℃/48時間でのレドックス時効処理の後では、低富化媒体におけるライトオフ三元触媒作用試験は、ロジウムの0.1質量%により含浸されたこの製造物が360℃におけるCOの50%の変換および390℃におけるプロペンの50%の変換を達成することを示す。
【0106】
1050℃/48時間でのレドックス時効処理の後では、動的三元触媒作用試験は、ロジウムの0.1質量%により含浸された製造物について、COPにおける95%の変換を示す。COPにおける92.5%の変換が、ロジウムの0.07質量%により含浸された製造物について得られる。ロジウムの質量含有量における30%の低下はCOPにおける2.5%の低下を引き起こす。
【実施例3】
【0107】
本実施例は、21%、72%、2%および5%の酸化物のそれぞれの質量割合での酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンおよび酸化ネオジムに基づく本発明による組成物の調製に関する。
【0108】
上記組成物を得るために要求される化学量論的割合で、実施例1の手順と同一の手順に従う。ネオジムのために使用された前駆体は硝酸ネオジムの溶液である。沈殿物は30%の酸化物含有量を有する。ラウリン酸アンモニウムの35.5gが沈殿物の100gについて使用される。
【0109】
このように得られた製造物は40m/gの表面積を有する。
【0110】
様々な温度での続く焼成の後で得られた表面積が下記に示される。
4時間、1000℃ = 38m/g
4時間、1100℃ = 27m/g。
【0111】
1000℃から1100℃の間での焼成温度についての表面積における変動は29%である。
【0112】
様々な温度での空気中における焼成の後での還元性の程度および最高還元可能温度がさらに下記に示される。600℃での値については、これは、本実施例において上記で記載された手順の後で得られるような製造物に関する。他の温度値については、これは、示される時間および温度でのさらなる焼成をその後で受けた同じ製造物に関する。
2時間、600℃ 還元性の程度=100% Tmax=540℃
2時間、900℃ 還元性の程度=90%
2時間、1000℃ 還元性の程度=87%
上記で記載された調製方法から得られる製造物に対して得られた結果、すなわち、特に、4時間にわたる1000℃の第1の焼成および2時間にわたる600℃の第2の焼成の後における、以前に記載された三元触媒作用試験の後での結果がさらに下記に示される。
【0113】
動的三元触媒作用試験は、パラジウムの0.5質量%により含浸された製造物について、COPにおける94%の変換を示す。1.005の富化度については、この試験において測定されたNOxの変換度が99%である。
【0114】
高富化媒体におけるライトオフ三元触媒作用試験において、パラジウムの0.5質量%により含浸されたこの製造物は400℃の温度におけるNOの20%の変換を達成する。
【実施例4】
【0115】
本実施例は、30%、42%および28%の酸化物のそれぞれの質量割合での酸化セリウム、酸化ジルコニウムおよび酸化ランタンに基づく本発明による組成物の調製に関する。
【0116】
上記組成物を得るために要求される化学量論的割合で、実施例1の手順と同一の手順に従う。沈殿物は34%の酸化物含有量を有する。ラウリン酸アンモニウムの40gが沈殿物の100gについて使用される。
【0117】
このように得られた製造物は、23m/gの表面積、および600℃で測定される98%の還元性の程度、および625℃である最高還元可能温度を有する。
【0118】
様々な温度での続く焼成の後で得られた表面積が下記に示される。
4時間、1000℃ = 21m/g
4時間、1100℃ = 17m/g。
【0119】
1000℃から1100℃の間での焼成温度についての表面積における変動は19%である。
【0120】
比較実施例5
本実施例は、実施例3の組成物と類似する組成物、すなわち、21%、72%、2%および5%の酸化物のそれぞれの質量割合での酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンおよび酸化ネオジムに基づく組成物の調製に関する。
【0121】
硝酸ジルコニルの900ml(80g/l)、IIIの酸化状態での硝酸セリウムの42.3ml(496g/l)、硝酸ランタンの4.4ml(454g/l)、および硝酸ネオジムの9.5ml(524g/l)を、撹拌されたビーカーの中に導入する。その後、混合物を、これらの硝酸塩の溶液の1リットルを得るように蒸留水で補う。
【0122】
アンモニア水溶液(12mol/l)の250mlおよび過酸化水素の74ml(110体積)を、撹拌された反応器の中に導入し、体積を、1リットルの総体積を得るように蒸留水で補う。
【0123】
硝酸塩溶液を、懸濁物を得るように絶え間ない撹拌とともに反応器の中に1時間かけて導入する。
【0124】
得られた懸濁物を、撹拌用ローターを備えるステンレススチール製オートクレーブに入れる。媒体の温度を撹拌とともに150℃で2時間維持する。
【0125】
このように得られた懸濁物をブフナー漏斗でろ過する。酸化物の23質量パーセントを含有する淡黄色の沈殿物が得られる。この沈殿物の76gを採取する。
【0126】
並行して、ラウリン酸アンモニウムのゲルを下記の条件のもとで調製した。ラウリン酸の250gをアンモニア水(12mol/l)の135mlおよび蒸留水の500mlに導入し、その後、混合物を、スパチュラを使用して均質化する。
【0127】
このゲルの21gをボールミルにおいて沈殿物の76gに加え、その後、全体を、均一なペーストが得られるまで粉砕する。
【0128】
その後、製造物を、この段階で、700℃で4時間、空気中において焼成する。
【0129】
このように得られた製造物は80m/gの表面積を有する。
【0130】
異なる温度での続く焼成の後で得られた表面積が下記に示される。
4時間、900℃ = 55m/g
4時間、1000℃ = 43m/g
4時間、1100℃ = 22m/g。
【0131】
1000℃から1100℃の間での焼成温度についての表面積における変動は49%である。
【0132】
900℃から1000℃の間での焼成温度についての表面積における変動は22%である。
【0133】
異なる温度での焼成の後における還元性の値が下記に示される。700℃での値については、これは、本実施例において上記で記載された手順の後で得られるような製造物に関する。他の温度値については、これは、示される時間および温度でのさらなる焼成をその後で受けた同じ製造物に関する。
4時間、700℃ 還元性の程度=85%
2時間、900℃ 還元性の程度=80%
2時間、1000℃ 還元性の程度=78%
三元触媒作用試験は、パラジウムの0.5質量%により含浸された製造物についてCOPにおける86%の変換を示す。1.005の富化度については、この試験において測定されたNOxの変換度が89%である。
【0134】
高富化媒体におけるライトオフ三元触媒作用試験において、パラジウムの0.5質量%により含浸されたこの製造物は415℃の温度におけるNOの20%の変換を達成する。
【0135】
比較実施例6
本実施例は、実施例2の組成物と類似する組成物、すなわち、40%、50%、5%および5%の酸化物のそれぞれの質量割合での酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタンおよび酸化イットリウムに基づく組成物の調製に関する。
【0136】
上記組成物を得るために要求される化学量論的割合で、実施例5の手順と同一の手順に従う。イットリウムのために使用された前駆体は硝酸イットリウムの溶液である。沈殿物は25%の酸化物含有量を有する。ラウリン酸アンモニウムの29gが沈殿物の100gについて使用される。
【0137】
このように得られた製造物は73m/gの表面積を有する。
【0138】
様々な温度での続く焼成の後で得られた表面積が下記に示される。
4時間、900℃ = 54m/g
4時間、1000℃ = 43m/g
4時間、1100℃ = 20m/g。
【0139】
1000℃から1100℃の間での焼成温度についての表面積における変動は53%より大きい。
【0140】
900℃から1000℃の間での焼成温度についての表面積における変動は26%である。
【0141】
異なる温度での焼成の後における還元性の値が下記に示される。700℃での値については、これは、本実施例において上記で述べられた手順の後で得られるような製造物に関する。他の温度値については、これは、示される時間および温度でのさらなる焼成をその後で受けた同じ製造物に関する。
2時間、700℃ 還元性の程度=68%
2時間、900℃ 還元性の程度=63%
以前に記載されたような時効処理試験の結果、および実施例5について上記で記載された調製方法に由来する製造物に対して得られた結果、すなわち、700℃での4時間の焼成の後における結果がさらに下記に示される。
【0142】
950℃/16時間でのレドックス時効処理の後では、高富化媒体におけるライトオフ三元触媒作用試験は、ロジウムの0.1質量%により含浸されたこの製造物が390℃におけるNOの20%の変換および395℃におけるプロペンの20%の変換を達成することを示す。
【0143】
1050℃/48時間でのレドックス時効処理の後では、高富化媒体におけるライトオフ三元触媒作用試験は、ロジウムの0.1質量%により含浸されたこの製造物が、430℃におけるNOの50%の変換、426℃におけるプロペンの50%の変換、および365℃におけるCOの20%の変換を達成することを示す。
【0144】
1050℃/48時間でのレドックス時効処理の後では、低富化媒体におけるライトオフ三元触媒作用試験は、ロジウムの0.1質量%により含浸されたこの製造物が390℃におけるCOの50%の変換および450℃におけるプロペンの50%の変換を達成することを示す。
【0145】
1050℃/48時間でのレドックス時効処理の後では、動的三元触媒作用試験は、ロジウムの0.1質量%により含浸された製造物について、COPにおける91%の変換を示す。COPにおける84%の変換が、ロジウムの0.07質量%により含浸された製造物について得られる。ロジウムの質量含有量における30%の低下はCOPにおける6%の低下を引き起こす。
【0146】
下記の表1には、実施例2および実施例6の組成物(これらは酸化物の同じ含有量を有する。)について、1050℃/48時間でのレドックス時効処理の後における動的三元触媒作用試験のCOPにおける結果がまとめられる。
【0147】
【表2】

【0148】
本発明の組成物は、ロジウム含有量が30%低下するとき、その触媒特性の変動が比較用組成物の触媒特性の変動よりも顕著に低いことが認められ、しかし、最も低いロジウム含有量についてのその特性は、最も高い含有量についての比較用組成物の特性よりも依然として高いままであることもまた認められる。
【0149】
下記の表2には、実施例3および実施例5の組成物(これらは同じ酸化物含有量を有し、パラジウムの0.5質量%により含浸される。)について、動的三元触媒作用試験およびライトオフ三元触媒作用試験についてのCOPにおける結果がまとめられる。
【0150】
【表3】

【0151】
本発明の組成物は、比較実施例の効力よりも優れている高い効力をパラジウムとともに示すことが認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50質量%以下の酸化セリウムの割合、600℃での空気中における焼成の後での少なくとも95%の還元性の程度、および1100℃での4時間の焼成の後での少なくとも15m/gの比表面積を有することを特徴とする、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムに基づく組成物。
【請求項2】
50質量%以下の酸化セリウムの割合、700℃での空気中における焼成の後での少なくとも95%の還元性の程度、および1100℃での4時間の焼成の後での少なくとも15m/gの比表面積を有することを特徴とする、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムに基づく組成物。
【請求項3】
50質量%以下の酸化セリウムの割合、900℃での空気中における焼成の後での少なくとも85%の還元性の程度、および1100℃での4時間の焼成の後での少なくとも15m/gの比表面積を有することを特徴とする、酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムに基づく組成物。
【請求項4】
セリウム以外のランタニドから選ばれる別の元素の少なくとも1つの酸化物も含むことを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の組成物。
【請求項5】
イットリウム、ランタン、ネオジムおよびプラセオジムから選ばれるランタニドの少なくとも1つの酸化物を含むことを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の組成物。
【請求項6】
45%以下の酸化セリウムの割合を有することを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項7】
40%以下の酸化セリウムの割合を有することを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項8】
25%以下の酸化セリウムの割合、15%以下の別のランタニド酸化物の含有量、および1000℃での空気中における焼成の後での少なくとも80%および、より具体的には、少なくとも85%の還元性の程度を有することを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項9】
1100℃での4時間の焼成の後での少なくとも20m/gおよび、より具体的には、少なくとも25m/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の組成物。
【請求項10】
3%から35%の間のランタニド含有量を有することを特徴とする、請求項4から9の一項に記載の組成物。
【請求項11】
1000℃での4時間の焼成、次いで、1100℃での4時間の焼成の後において30%以下および、より具体的には、20%以下の比表面積における変動を有することを特徴とする、請求項1から10の一項に記載の組成物。
【請求項12】
(a)ジルコニウム化合物およびセリウム化合物と、場合により、上記元素の1つとを含む水性混合物を形成するステップ;
(b)このように形成された混合物を少なくとも100℃の温度に加熱し、その結果として、反応媒体中に懸濁された沈殿物を得るステップ;
(c)加熱後に得られた反応媒体を塩基性pHにするステップ;
(d)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびこの塩、ならびにカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシラートタイプの界面活性剤から選ばれる添加剤を最初に、前段ステップから得られる媒体に加え、その後、前記沈殿物を分離するステップ;
(d’)または前記沈殿物を最初に、ステップ(c)から得られる媒体から分離し、その後、前記添加剤を前記沈殿物に加えるステップ;
(e)このように得られた沈殿物の第1の焼成を少なくとも900℃の温度で不活性ガス下または真空下において行い、その後、少なくとも600℃の温度での酸化性雰囲気下における第2の焼成を行うステップ
を含むことを特徴とする、請求項1から11の一項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項13】
ステップ(c)の後、前記反応媒体を少なくとも40℃の温度に加熱することによって、前記反応媒体の熟成を行うことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
使用されたジルコニウムの化合物、セリウムの化合物および上記元素の化合物が、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物およびセリウム(IV)アンモニア性硝酸塩から選ばれる化合物であることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
第2の焼成を空気中において行うことを特徴とする、請求項12から14の一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から11の一項に記載の組成物、または請求項12から15の一項に記載の方法によって得られる組成物を含むことを特徴とする触媒系。
【請求項17】
担体としての上記組成物と、前記組成物に担持されたパラジウムとを含むことを特徴とする、請求項16に記載の触媒系。
【請求項18】
請求項16または17に記載の触媒系を触媒として使用することを特徴とする、内燃機関の排気ガスを処理するための方法。

【公表番号】特表2009−530091(P2009−530091A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500843(P2009−500843)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052586
【国際公開番号】WO2007/107546
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】