説明

高インピーダンスの電気接続ビア

一般的に、ビア(106)のインピーダンスは自身に接続された信号線(102、128)よりも低い。ノイズおよび反射信号が原因でインピーダンス不整合が生じると、回路を、所望の周波数よりも大幅に低い周波数で動作させる必要が生じることがある。ある実施の形態は、回路内のインピーダンス不整合を回避し、スプリットリング共振器(104、112、120、126)をビア(106)の各端部に追加してビア(106)のインピーダンスをより高くすることにより、当該技術における進歩を遂げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
1つ以上の実施の形態は、概して非導電層によって隔てられた導体間に信号経路を与えるためのビアに関し、特にインピーダンスを増大させたビアに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
集積回路装置(IC)またはプリント回路基板(PCB)に含まれる回路は、絶縁性の非導電層によって隔てられた複数の信号線層で構成されていることが多い。信号は、異なる信号線層間で、ビアを利用して送信される。ビアとは、電気メッキ、環状リングまたは小型リベットの使用によって導電性が与えられた、非導電層と非導電層との間の孔である。
【0003】
回路内の信号線の幅ならびに近傍の接地および電力線または面との間の距離は一般的に、信号線に50オームといった標準特性インピーダンスを与えるような幅および距離である。これは、インピーダンス不整合を原因とする信号の変動および歪みを減じるためである。インピーダンスを整合させることは重要である。なぜなら、不整合があると、信号が不整合部分で反射することになるからである。反射した信号は、ノイズとなり、前方に伝搬する信号に歪みを生じさせる。インピーダンス不整合という欠陥は、高速回路では特に深刻である。高速回路では、クロックサイクルが、回路内で伝搬する信号を、トランジスタのスイッチオンまたはオフによる緩やかな立上がりおよび立下がりに対し、短期間安定した値に保つことを必要とすることがある。インピーダンスの不整合によって生じたノイズおよび歪みは、スイッチング遷移であると認識されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
差分信号のためのビアは一般的に、このビアに接続された信号線よりもインピーダンスが低いため、インピーダンスの不整合のために、所望の周波数よりも遥かに低い周波数で回路を動作させる必要がある場合がある。1つ以上の実施の形態は、上記問題の1つ以上に対処し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
ある実施の形態において、電気接続ビアが提供される。このビアは、電気信号を非導電層を通して接続する導体と、少なくとも第1の組と第2の組とを含む複数組のスプリットリング共振器とを含み得る。第1および第2の組は各々、少なくとも第1および第2のスプリットリング共振器を含むスプリットリング共振器を含み得る。第1の組の共振器は、非導電層に対して実質的に平行である第1の層に位置し得る。第2の組の共振器は、非導電層に対して実質的に平行である第2の層に位置し得る。第1の組の共振器は導体の第1の端部の近傍に位置し得る。第2の組の共振器は導体の第2の端部の近傍に位置し得る。導体の第1の端部は導体の第2の端部の反対側にある。
【0006】
このビアにおいて、導体は、第1の組のスプリットリング共振器および第2の組のスプリットリング共振器各々の実質的に中心に置いてもよい。第1の組のスプリットング共振器および第2の組のスプリットリング共振器各々を、他の導電材料すべてから導電分離してもよい。各組の第1のスプリットリング共振器の最も外側の部分の直径は、各組の第2のスプリットリング共振器の最も内側の部分の直径よりも小さくてもよく、導体の最も外側の部分の直径は、各組の第1のスプリットリング共振器の最も内側の部分の直径よりも小さくてもよい。第1の層および第2の層は非導電層の中にあってもよい、または、これに代えて、第1の層および第2の層は非導電層の外側にあってもよい。キャパシタを、各スプリットリング共振器の分断部の端から端に結合してもよい。第1の信号線を導体の第1の端部に接続してもよく、第2の信号線を導体の第2の端部に接続してもよい。第1および第2の導電面を、それぞれの基準電圧に結合してもよく、それぞれ第1および第2の組のスプリットリング共振器に電磁的に結合してもよい。
【0007】
電気接続ビアを与える方法は、第1の組のスプリットリング共振器を導体の第1の端部近傍に配置するステップを含み得る。導体は電気信号を非導電層を通して接続する。この方法は、第2の組のスプリットリング共振器を導体の第1の端部と反対側の導体の第2の端部近傍に配置するステップを含み得る。第1の組の共振器は非導電層に対して実質的に平行である第1の層に位置し得る。第2の組の共振器は非導電層に対して実質的に平行である第2の層に位置し得る。
【0008】
この方法において、導体は、第1の組のスプリットリング共振器および第2の組のスプリットリング共振器各々の実質的に中心に置いてもよい。第1の組のスプリットリング共振器および第2の組のスプリットリング共振器各々を、他の導電材料すべてから導電分離してもよい。各組の第1のスプリットリング共振器の最も外側の部分の直径は、各組の第2のスプリットリング共振器の最も内側の部分の直径よりも小さくてもよく、導体の最も外側の部分の直径は、各組の第1のスプリットリング共振器の最も内側の部分の直径よりも小さくてもよい。この方法はさらに、第1の信号線を導体の第1の端部に接続するステップと、第2の信号線を導体の第2の端部に接続するステップとを含み得る。各組の第1のスプリットリング共振器の分断部は、各組の第2のスプリットリング共振器の分断部の反対側にあってもよい。
【0009】
別の実施の形態において、半導体構造体が提供される。この構造体は、導電性のビアと、第1の金属層に位置しビアの第1の端部に接続された第1の信号線と、第2の金属層に位置しビアの第2の端部に接続された第2の信号線とを含み得る。第1の組および第2の組のスプリットリング共振器は、少なくとも2つの同心のスプリットリング共振器を含み得るものであり、第1および第2の金属層に対して実質的に平行である面にそれぞれ位置する。第1および第2の組のリング共振器は、ビアの端部の周囲が実質的に、第1および第2の金属層それぞれの上の第1および第2の組の最も内側にあるリングの突出部によって囲まれるように、配置される。
【0010】
この半導体構造体では、ビアを、第1の金属層上の第1の組のスプリットリング共振器の実質的に中心に置くことができるとともに第2の金属層上の第2の組のスプリットリング共振器の実質的に中心に置くことができる。各スプリットリング共振器を、他の導電材料すべてから導電分離してもよい。各組のスプリットリング共振器の直径は異なっていてもよく、スプリットリング共振器の、最小の直径を有する最も内側の部分の直径は、ビアの直径よりも大きくてもよい。第1および第2の組のスプリットリング共振器は、第1および第2の金属層と境を接する領域の外側の層を占めていてもよく、または、その代わりに、第1および第2の組のスプリットリング共振器は、第1および第2の金属層と境を接する領域の内側の層を占めていてもよい。半導体構造体はまた、各スプリットリング共振器の分断部の端から端に結合されたキャパシタを含み得る。第1および第2の組のスプリットリング共振器はビアに電磁的に結合されていてもよい。
【0011】
さらに他の実施の形態において、回路基板が提供される。この回路基板は、少なくとも1つの導電性信号線を含む2つ以上の層を含み得る。これら層は第1および第2の層を含む。第1および第2の層を非導電材料によって隔ててもよい。この回路基板はまた、非導電材料を通して延在し第1および第2の層の信号線を結合することができる少なくとも1つの導電性ビアを含み得る。少なくとも第1の組および第2の組を含む複数組の共振器が含まれていてもよい。各組は、少なくとも第1および第2のスプリットリング共振器を含む、複数の同心のスプリットリング共振器を含み得る。第1の組の共振器は第1の層に対して実質的に平行である第1の面に位置し得る。同様に、第2の組の共振器は第2の層に対して実質的に平行である第2の面に位置し得る。ビアならびに第1および第2の組を、ビアが、第1および第2の層上の共振器の各組の突出部の内側の実質的に中心になるように、配置してもよい。
【0012】
この回路基板では、第3および第4の層が、非導電材料が占める領域の内部にあってもよい。各スプリットリング共振器を他のすべての導電材料から導電分離してもよい。
【0013】
他のさまざまな実施の形態が以下の詳細な説明および特許請求の範囲に記載されていることがわかるであろう。
【0014】
さまざまな側面および利点が、以下の詳細な説明を検討し図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】スプリットリング共振器とともに構成されたビアの斜視図を示す。
【図2】スプリットリング共振器とともに構成されたビアの上面図を示す。
【図3−1】リング1つ当たり2つの分断部があるスプリットリング共振器の構成を示す。
【図3−2】リング1つ当たり4つの分断部があるスプリットリング共振器の構成を示す。
【図4】4つのスプリットリング共振器を有する1組のスプリットリング共振器を示す。
【図5】キャパシタンスが増すように構成された1組のスプリットリング共振器を示す。
【図6−1】1組の8角形のスプリットリング共振器を示す。
【図6−2】1組の正方形のスプリットリング共振器を示す。
【図7−1】2組のスプリットリング共振器とともに構成されたビアの側面図を示す。
【図7−2】4組のスプリットリング共振器とともに構成されたビアの側面図を示す。
【図7−3】6組のスプリットリング共振器とともに構成されたビアの側面図を示す。
【図7−4】4組のスプリットリング共振器とともに構成されたビアの側面図を示し、すべての共振器の組が信号線の間に配置されている。
【図8−1】2組のスプリットリング共振器と、基準電圧を有する2つの導電板とともに構成されたビアを示す。
【図8−2】複数組のスプリットリング共振器と、基準電圧を有する導電板とともに構成されたビアの上面図を示す。
【図9】シミュレーションを通してスプリットリング共振器の設計パラメータを求めるプロセスのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面の詳細な説明
1つ以上の実施の形態は、回路におけるインピーダンス不整合を回避する。より高いインピーダンスは、ビアの各端部にスプリットリング共振器(SSR)を追加することによって得られる。
【0017】
スプリットリング共振器は、空気またはその他の誘電物質の非導電性の空隙によって1(または数)箇所で分断された導電性リングからなる。このリングを電磁場の中に置くと、電磁場の変動が円形電流をこの金属リング内に誘導し、これにより、上記空隙を通して電荷が蓄積される。空隙における電荷のために生じる電界は、円形電流を打消すことにより、エネルギが空隙の近傍に(主として)蓄積されるとともに、磁場エネルギはリングによって囲まれた領域の中に集中する。このように、スプリットリング共振器は、垂直方向の磁場に反応し、空隙の実効キャパシタンスおよびリングによって定められるループの実効インダクタンスによって特徴付けることができる。共振LC回路は共振周波数ωm=1/LCを有し、Lはリングのインダクタンス、Cはスプリットリング共振器のキャパシタンスであることがわかる。信号がビアに接続された信号線を通過すると、電流が電磁場を生じさせこれがスプリットリング共振器を通過する。信号のエッジの立上りおよび立下りにより、電磁場が変化すると、電流がリング内に誘導され、スプリットリング共振器が共振する。このリングの共振が、磁場を修正することにより、ビアおよび信号線接続の誘導性インピーダンスを修正する。スプリットリング共振器の共振応答およびその電磁場に対する影響は、スプリットリング共振器の構成および配置に依存する。
【0018】
図1は、スプリットリング共振器とともに構成されたビアの斜視図を示す。ビア106は、ビアの上部で信号線102に、ビアの下部で信号線128に結合される。実質的にビア106を囲む2組のスプリットリング共振器が、信号線128の上方および信号線102の下方にある。これらスプリットリング共振器の組は、2つのリングがビアを取り囲んでいるという意味において、実質的にビアを囲んでいる。図示の各組は、2つのスプリットリング共振器を含み、これらは、外側のスプリットリング共振器104および120ならびに内側のスプリットリング共振器112および126である。内側および外側のスプリットリング共振器は、108、110、122、および124の位置で分断されている。これらリングの組は、信号線102から導電分離されるように、z軸に沿って配置されている。
【0019】
説明を容易にするために、「上方」、「下方」、「上部」、および「下部」という用語を用いて、記載されている構成要素間の位置関係を説明している。当業者は、これら用語が制限を意図したものでないことを理解するであろう。なぜなら、この構造を上下逆にしてもこの構造の特徴は変わらないからである。
【0020】
実際、信号線128および102は、非導電層(図示せず)によって隔てられている。これら信号線は、非導電層の境界を定める2つの平行面にある。図示のビア構成では、2組のスプリットリング共振器が2つの信号線の面の間の非導電層の中に位置する。これに代えて、スプリットリング共振器の組が、信号線の面の間に位置すると言うこともできる。本明細書ではこれらの表現を同じ意味で使用する。
【0021】
スプリットリング共振器の組は、ビアの端部近くに位置するが、スプリットリング共振器の組を信号線から導電分離するのに十分な距離だけ、信号線の面から離れている。ビア106は、中実またはその代わりに中空の円筒形で壁が導電材料を有していてもよい。スプリットリング共振器の共振周波数を調整することにより、信号線およびビアを流れる電流によって生じる磁場の変動に対する耐性を調整しビアのインピーダンスを増すことができる。
【0022】
図2は、図1の構成されたビアの上面図を示す。ビア208は、1組のスプリットリング共振器202および204の中心に位置する。これらスプリットリング共振器の向きは、内側のリングの分断部206と外側のリングの分断部210が反対側に位置するように、定められる。スプリットリング共振器の共振応答は、スプリットリング共振器のキャパシタンスに依存する。スプリットリング共振器のキャパシタンスは、分断部および隣接するリング間の空隙から生じる。この空隙は実質的に平行板キャパシタを形成する。平行板キャパシタにおいて、キャパシタンスは、導体板の表面積に正比例し、これら板の間の分離距離に反比例する。このキャパシタンスは、式C=εA/Sによって与えられ、式中Cは空隙のキャパシタンス、εは分離部分の誘電率、Aは平行板の面積、Sは分離距離または空隙の大きさである。この空隙の大きさを増すと、キャパシタンスが減少するのでスプリットリング共振器の共振周波数が増す。
【0023】
同様に、スプリットリング共振器はさまざまな数のリング分断部を含み得る。図3−1は、1つのリング当たり分断部が2つのスプリットリング共振器構成を示す。この構成では、内側の分断部と外側の分断部が、リングのうち一方の回転90度分、離れている。図3−2は、1つのリング当たり分断部が4つのスプリットリング共振器構成を示す。この構成では、内側の分断部と外側の分断部が、リングのうち一方の回転45度分、離れている。リング分断部の数が増すと、各リングにおけるキャパシタの数が増す。しかしながら、これらリングは直列接続されているのでキャパシタンスは減少する。さらに分断部を追加してゆくと、各リングのキャパシタンスは次のようになる。1/(C1+C2+C3…Cn)。個々の分断部のキャパシタンスはこの式の分母で表わされる。したがって、図3−2でスプリットリング共振器の分断部の数を倍にすると、キャパシタンスは図3−1のスプリットリング共振器の2分の1になる。結果として、スプリットリング共振器の共振周波数は増す。
【0024】
逆に、キャパシタンスを、スプリットリング共振器のリングの数を増すことによって増大させてもよい。リングを追加すると、リング間の相互キャパシタンスが増し、結果として各組のスプリットリング共振器の共振周波数が低下する。
【0025】
図4は、4つのスプリットリング共振器402、404、406、408を有する1組のスプリットリング共振器を示す。隣接する共振器リングの向きは、共振器リングの相互キャパシタンスを変化させる。図4に示される構成では、隣接するリングの向きが、内側のリングのリング分断部と外側のリングのリング分断部とが反対側に位置するように、定められる。しかしながら、このような向きが必要なのではなく、1つ以上の他の実施の形態には異なる向きが含まれ得る。内側の分断部と外側の分断部の向きを、さまざまな用途において調整してもよいことが理解される。隣接するリングの分断部が一直線に並ぶよう、共振器リングの向きを対称にしてもよい。分断部の向きが対称となるように、隣接するリングを整列させると、相互キャパシタンスは非常に小さくなる。向きを対称にすると、リングの数を増してもシステムのキャパシタンスにはほとんど影響しないであろう。リングの向きを、空隙が移動して互いから離れるように定めると、相互キャパシタンスが増す。1つ以上の実施の形態を実現するのに用いられる1組のスプリットリング共振器が任意の数のリングを含み得ることが理解される。
【0026】
加えて、より大きなキャパシタンスが必要である場合、キャパシタを空隙の両側に結合してキャパシタンスを設定することができる。図5はキャパシタンスを増大させた1組のスプリットリング共振器を示す。この組は、内側のスプリットリング504と外側のスプリットリング502と含む。キャパシタ506および508は、内側および外側のリングそれぞれのリング分断部の空隙の端から端に接続される。
【0027】
リングの幅を変化させてキャパシタンスを調整することもできる。リング幅変更の効果は、隣接するリング間の相互キャパシタンスによって左右される。リングの深さを増すと、隣接するリング間の表面積が増す。このため、リングの深さを増すと結果としてキャパシタンスが増す。実際、スプリットリングの大きさ、幅、直径および数は、信号線および構成部品の大きさ、長さ、および間隔に関するパッケージ設計ルールによってのみ制限される。たとえば、スプリットリング共振器の内側のリングの直径は、ビアによって与えられえる導電信号経路から一定の距離が保たれるように、制限してもよい。
【0028】
さまざまな実施の形態で使用し得るスプリットリング共振器は、円形のリングに限定されない。スプリットリング共振器を、多種多様の異なる形状で製造してもよい。図6−1および図6−2は各々、使用し得る非円形のスプリットリング共振器の組を示す。図6−1は、1組の8角形のスプリットリング共振器を示す。図6−2は1組の正方形のスプリットリング共振器を示す。図6−2に示される正方形のスプリットリング共振器は、スプリットリング共振器の用途で一般的に使用されるものである。なぜなら小規模で生産することが容易であるからである。当業者は、さまざまなこれら以外の多角形のうちいずれかを設計の制約および目的に従って構成し得ることを理解するであろう。
【0029】
図7−1、図7−2、図7−3、および図7−4は、さまざまな構成のスプリットリング共振器を備えたビアの側面図を示す。これら図面は、1組のスプリットリング共振器を各信号線の上方に配置しても下方に配置してもよいことを示している。また、さまざまな数の組のスプリットリング共振器を、所与の構成で使用してもよい。構成の一例では、偶数組のスプリットリング共振器を用いて、同数の組が各信号線と対応付けられるようにする。第1の信号線と対応付けられたスプリットリング共振器の組の配置は、第2の信号線と対応付けられた組の配置を反映する。配置を反映するとは、第1の信号線からの距離がDの場所にスプリットリング共振器の組があり、第2の信号線からの距離がDの場所にスプリットリング共振器があるということである。
【0030】
図7−1は、2組のスプリットリング共振器とともに構成されたビアを示す。ビア704は信号線706および708に結合されている。スプリットリング共振器の組710および712はそれぞれ、信号線706の上方および信号線708の下方に配置される。実際、信号線706および708は、非導電層705によって隔てられている。これら信号線は、非導電層705の境界を定める平行である2つの面にある。スプリットリング共振器の組710および712は、信号線の面に対して平行である面に配置される。スプリットリング共振器の組はまた、信号線の面を通るリング共振器の組の突出部714の実質的に中心にビア704が位置するように配置される。これらスプリットリング共振器の組は、ビアの端部近くに位置するが、スプリットリング共振器の組を信号線から導電分離するのに十分な距離だけ信号線の面から離されている。
【0031】
図7−2は、4組のスプリットリング共振器とともに構成されたビアを示す。図7−1と同様、ビア704は信号線706および708に結合されている。スプリットリング共振器の組710および712は、信号線706の上方および信号線708の下方にそれぞれ配置されている。さらに2組のスプリットリング共振器714および716が、上記信号線の間において、信号線706の下方および信号線708の上方にそれぞれ配置されている。図7−1の構成と同様、ビア704は、スプリットリング共振器の組の突出部の中心に位置する。スプリットリング共振器の組は、組710および712が信号線706および708からそれぞれ等距離となる反映構造で、対にされ配置される。しかしながら、高インピーダンス信号線から低インピーダンス信号線へと徐々に変化するものを提供する場合のような特定の用途では、アンバランスな構成が望ましいこともあることが当業者にはわかるであろう。奇数組のスプリットリング共振器を備える実施の形態では、信号線からの距離、リングの数および大きさを、上記のように調整することにより、ビアの各端部のインピーダンスを設定してもよい。
【0032】
図7−3は、6組のスプリットリング共振器とともに構成されたビアを示す。図7−2と同様、ビア704は信号線706および708に結合されている。スプリットリング共振器の組710および712は、信号線706の上方および信号線708の下方にそれぞれ配置されている。スプリットリング共振器の組714および716は、信号線の間の非導電層(図示せず)の中において、信号線706の下方および信号線708の上方にそれぞれ配置されている。加えて、2組のスプリットリング共振器718および720が、共振器の組714および716の間に配置されている。スプリットリング共振器の組718および720をそれぞれ組714および716近くに配置して相互キャパシタンスがそれぞれの組の間にあることが好ましい。
【0033】
1本の信号線の上方にあるスプリットリング共振器の組の数の取り決めは、図7−3に示されるように1本の信号線の下方にあるスプリットリング共振器の組の数と同一である必要はない。この構成では、4組のスプリットリング共振器714、716、718、および720が、信号線を含む面の間の非導電層に配置され、2組のスプリットリング共振器710および712が、信号線の面の間にある1組の面の外側に配置されている。これに代わる構成では、より多くの数の組のスプリットリング共振器が、信号線の面の間の非導電層が占めている面のサブセットの外側に配置される。この代替構成は、図7−3の配置と同様の結果をもたらすであろう。
【0034】
図7−4は、4組のスプリットリング共振器とともに構成されたビアを示し、すべての共振器の組が信号線の間に配置されている。ビア704は信号線706および708に結合されている。スプリットリング共振器の組714および716は、これら信号線の間において、信号線706の下方および信号線708の上方にそれぞれ配置されている。スプリットリング共振器の組718および720は、共振器の組714および716の間に配置されている。これに代わる構成では、スプリットリング共振器の組を信号線の外側に配置し信号線の間に配置される組がないようにする。この代替構成は図7−4の配置と同様の結果を生み出すであろう。
【0035】
図8−1は、2組のスプリットリング共振器および2つの導電板とともに構成されたビアを示す。ビア804は信号線806および808に結合されている。スプリットリング共振器の組810および812は、信号線806の上方および信号線808の下方にそれぞれ配置されている。導電板816および818は、共振器の組の近傍において組810の上方および組812の下方にそれぞれ配置されている。各板は接地基準電圧814に接続されている。
【0036】
図8−2は代替の基準板配置を有するビア構成を示す。図8−2には、ビア804およびリングの組810の上面図が示される。示されている導電板816は、スプリットリング共振器の組の直径よりも大きく切抜かれた部分を有する。図8−2に示されるように基準板を切抜いた場合、基準板を、スプリットリング共振器、ビア、および信号線から導電分離されるよう、任意の面に配置することができる。近傍にあるスプリットリング共振器の組のインピーダンスは、上記板によって与えられる接地基準とスプリットリング共振器の組との間の距離に依存する。
【0037】
図9は、シミュレーションを通してスプリットリング共振器の設計パラメータを求めるプロセスのフローチャートを示す。所望のリング構成を有するビア設計を、ステップ902でシミュレーション環境にロードする。この設計をステップ904でシミュレートする。シミュレーション結果に基づき、ステップ906でビアインピーダンスの値を求める。判定ステップ908でインピーダンスが所望の範囲に含まれていれば、プロセスを終了し、ビアを構成通りに実現できる。
【0038】
さもなければ、設計パラメータをステップ910で調整する。調整可能な設計パラメータは、組の数、組の配置、各組内のリングの数、リングの長さ/幅、空隙の幅、および空隙のキャパシタ値を含むが、これらに限定されない。設計パラメータを調整した後、設計を再びステップ904でシミュレートし、906でインピーダンスを求める。求めたインピーダンスが判定ステップ908で所望の範囲に含まれるようになるまで、調整およびシミュレーションのステップを繰返す。
【0039】
これに代わる、1つ以上のプロセッサおよびプログラムコードを用いて構成されたメモリ装置を含むさまざまな計算装置が、シミュレーションプロセスを実行してスプリットリング共振器の設計パラメータを求めるのに適しているであろうことを、当業者は理解するであろう。
【0040】
1つ以上の実施の形態は、さまざまなビアの構成および用途に適用できると考えられる。その他の側面および実施の形態は当業者には明らかであろう。本明細書および示されている実施の形態は例示にすぎず、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気接続ビアであって、
電気信号を非導電層を通して接続する導体と、
少なくとも第1の組の共振器と第2の組の共振器とを含む複数組のスプリットリング共振器とを備え、各組は、少なくとも第1のスプリットリング共振器と第2のスプリットリング共振器とを含む複数のスプリットリング共振器を含み、
前記第1の組の共振器は、前記非導電層に対して実質的に平行である第1の層に位置し、
前記第2の組の共振器は、前記非導電層に対して実質的に平行である第2の層に位置し、
前記第1の組の共振器は前記導体の第1の端部の近傍に位置し、前記第2の組の共振器は前記導体の第2の端部の近傍に位置し、前記導体の第1の端部は前記導体の第2の端部の反対側にある、電気接続ビア。
【請求項2】
前記導体は、前記第1の組のスプリットリング共振器および前記第2の組のスプリットリング共振器各々の実質的に中心にある、請求項1に記載の電気接続ビア。
【請求項3】
前記第1の組のスプリットリング共振器および前記第2の組のスプリットリング共振器は各々、他の導電材料すべてから導電分離されている、請求項1または2に記載の電気接続ビア。
【請求項4】
各組の第1のスプリットリング共振器の最も外側の部分の直径は、各組の第2のスプリットリング共振器の最も内側の部分の直径よりも小さく、前記導体の最も外側の部分の直径は、各組の第1のスプリットリング共振器の最も内側の部分の直径よりも小さい、請求項1から3のいずれか1項に記載の電気接続ビア。
【請求項5】
前記第1の層および前記第2の層は前記非導電層の中にある、請求項1から4のいずれか1項に記載の電気接続ビア。
【請求項6】
前記第1の層および前記第2の層は前記非導電層の外側にある、請求項1から4のいずれか1項に記載の電気接続ビア。
【請求項7】
各スプリットリング共振器の分断部の端から端に結合されたキャパシタをさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の電気接続ビア。
【請求項8】
前記導体の第1の端部に接続された第1の信号線と、前記導体の第2の端部に接続された第2の信号線とをさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の電気接続ビア。
【請求項9】
それぞれの基準電圧に結合され、それぞれが前記第1および第2の組のスプリットリング共振器に電磁的に結合された、第1および第2の導電面をさらに備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の電気接続ビア。
【請求項10】
電気接続ビアを与える方法であって、
第1の組のスプリットリング共振器を導体の第1の端部近傍に配置するステップを含み、前記導体は電気信号を非導電層を通して接続し、
第2の組のスプリットリング共振器を前記導体の第1の端部と反対側の前記導体の第2の端部近傍に配置するステップを含み、
前記第1の組の共振器は、前記非導電層に対して実質的に平行である第1の層にあり、
前記第2の組の共振器は、前記非導電層に対して実質的に平行である第2の層にある、方法。
【請求項11】
前記導体を、前記第1の組のスプリットリング共振器および前記第2の組のスプリットリング共振器各々の実質的に中心に置くステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の組のスプリットリング共振器および前記第2の組のスプリットリング共振器各々を、他の導電材料すべてから導電分離するステップをさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
各組の第1のスプリットリング共振器の最も外側の部分の直径は、各組の第2のスプリットリング共振器の最も内側の部分の直径よりも小さく、前記導体の最も外側の部分の直径は、各組の第1のスプリットリング共振器の最も内側の部分の直径よりも小さい、請求項10から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第1の信号線を前記導体の第1の端部に接続するステップと、
第2の信号線を前記導体の第2の端部に接続するステップとをさらに含む、請求項10から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
各組の第1のスプリットリング共振器の分断部は、各組の第2のスプリットリング共振器の分断部の反対側にある、請求項10から14のいずれか1項に記載の方法。

【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図1】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−509000(P2013−509000A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536802(P2012−536802)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/042129
【国際公開番号】WO2011/053396
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(591025439)ザイリンクス インコーポレイテッド (58)
【氏名又は名称原語表記】XILINX INCORPORATED
【Fターム(参考)】