説明

高ゲル強度を有する改質脂肪種子材料

高ゲル強度を有する改質脂肪種子材料について、記述する。改質脂肪種子材料は、食肉加工品などのタンパク質が補われた食品の調製も含む、様々な栄養上の適用例に利用することができる。改質脂肪種子材料は、典型的な場合、少なくとも85wt%のタンパク質(乾燥固形分ベース)を含み、優れた機能性を有する。例えば改質脂肪種子材料は、少なくとも約40wt%のタンパク質を含むことができ、300kDaよりも大きい見掛けの分子量、少なくとも0.50Nのゲル破壊強さを有し、かつ/または前記タンパク質が、少なくとも約200kDaのMW50を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
改質脂肪種子材料は、様々な食品の食感およびその他の機能特性を高めるための食品添加物として、ならびにタンパク質供給源として、使用される。しかし、改質大豆材料などの改質脂肪種子材料の使用は、その香味および/または色特性が原因で、いくつかの例に限定される可能性がある。依然として、どの成分が脂肪種子の香味および色特性の原因となっているのか、必ずしも明らかではないが、様々な化合物が、これらの特性を引き起こすのではないかと疑われている。その中には、脂肪族カルボニル、フェノール類、揮発性脂肪酸およびアミン、エステル、およびアルコールがある。
【背景技術】
【0002】
脂肪種子材料、特に大豆材料の、栄養価および香味の単離、精製、および改良に使用されるプロセスについて、多数の報告がある。大豆タンパク質は、その自然のままの状態では味がひどく、栄養価が損なわれているが、それは、哺乳類のミネラル吸収を妨げるフィチン酸錯体が存在するからであり、かつ哺乳類でのタンパク質消化を妨げる抗栄養因子が存在するからである。報告されている方法は、熱処理によるトリプシン阻害剤の破壊、ならびにフィチン酸を除去する方法を含む。精製分離体として得られたタンパク質の収量を、大豆原料中に含有されるものよりも改善する、広く様々な試みについても記述されている。
【0003】
大豆タンパク質の香味を改善するための多くのプロセスは、熱、トースト処理、アルコール抽出、および/または酵素修飾を含む。これらのタイプのプロセスは、しばしば、かなりのタンパク質変性および修飾をもたらし、それによって、生成物の機能を大幅に変化させる。さらに、これらのプロセスは、脂質および炭水化物成分を有するタンパク質と、それらの分解生成物との間の相互作用を、促進させる可能性がある。これらのタイプの反応は、食品、特に乳製食品および飲料のように高い可溶性および機能性を有するタンパク質を必要とする食品中の、大豆タンパク質の有用性を低下させる可能性がある。
【0004】
少なくとも70重量%のタンパク質(乾燥固形分ベース(dry solids basis)、または「dsb」)を有する大豆タンパク質製品と定義される、商用の大豆タンパク質濃縮物は、一般に、可溶性の糖、灰分、および若干の従属成分を除去することによって生成される。糖は、一般に、まずタンパク質を湿熱で不溶化した後に、(1)水性アルコール;(2)希釈酸性水溶液;または(3)水で抽出することによって除去される。これらのプロセスは、一般に、独特の味および色を備えた大豆タンパク質製品を製造する。
【0005】
大豆タンパク質分離体(soy protein isolates)は、少なくとも90重量%のタンパク質(dsb)を有する製品と定義される。大豆タンパク質分離体を製造するための商用プロセスは、一般に、タンパク質の酸沈殿を基にする。大豆タンパク質分離体を製造する方法は、しばしば、(1)アルカリ性のpHの水で大豆フレークからタンパク質を抽出し、液体抽出物から固形分を除去するステップと;(2)タンパク質の溶解度が最小になる点に、液体抽出物のpHを調節することによって、液体抽出物を等電沈殿にかけ、それによって、最大量のタンパク質沈殿物を得るステップと;(3)沈殿したタンパク質カードを、副生成物液体ホエーから分離するステップとを含む。しかしこのタイプのプロセスは、依然として、独特の味および色を備えたタンパク質製品を製造する傾向がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
膜濾過技術を使用して濃縮大豆タンパク質製品を製造するプロセスの、いくつかの例が、報告されている。しかし、コスト、効率、および/または製品特性を含めたいくつかの因子により、膜ベースの精製手法は、商用プロセスとして広く採用されてこなかった。そのようなプロセスは、得られるタンパク質製品の機能特性の低下、ならびに/または「オフ」フレーバおよび/もしくはダーククリームから薄い小麦色の色にいたるようなオフカラーを有する製品の製造など、1つまたは複数の欠点を被る可能性がある。膜ベースのプロセスは、細菌汚染および膜の汚れに関連した問題が原因で、商用生産条件下で操作するのが困難である可能性もある。細菌汚染は、製品の香味に関して望ましくない結果を有する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
高ゲル強度を有する、改質された脂肪種子材料について、本明細書に記述する。改質された脂肪種子材料(modified oilseed material)は、脱脂大豆白色フレークや大豆ミールなどの脂肪種子材料から適切に得ることができ、望ましい香味および/または色特性を適切に示す。高ゲル強度材料は、一般に、ヒトおよび/または動物消費用の食品に組み込むための、タンパク質供給源として使用するのに適している(例えば、タンパク質が補われた食品を製造するため)。高ゲル強度材料は、加工肉、肉類似品、ソース、またはスープ系でのタンパク質供給源として使用するのに、特に適している。
【0008】
高ゲル強度を有する改質脂肪種子材料は、典型的な場合、脂肪種子材料中に存在するタンパク質様材料を可溶化するための抽出ステップを含む、膜ベースの精製プロセスによって製造することができる。抽出ステップは、40〜60パーセントのタンパク質様材料を約3分間の抽出時間内に水性溶媒中に溶解する、高速抽出法を含むことができる。ある場合には、連続した多段階プロセスとして、抽出を実施することが望ましいと考えられる(例えば、多段階向流抽出)。適切な多段階抽出プロセスは、最初の段階を、部分抽出された固形分を後続の操作で抽出するのに使用される水溶液のpHとは異なるpHを有する水溶液を用いて、操作するステップを含むことができる。後続の抽出とのpHの差は、2.5以下であることが適切である(例えば、脂肪種子材料を初期段階で実質的に中性のpHを有する水溶液によって抽出し、部分抽出された固形分を2回目にアルカリ水溶液で抽出する)。ある適切な実施形態では、脂肪種子材料を6.5〜7.5のpHを有する水溶液を用いて初期段階で抽出し、部分抽出された固形分を2回目に8.0〜8.5のpHを有する水溶液を用いて抽出する。
【0009】
高ゲル強度を有する改質された脂肪種子材料は、一般に、脂肪種子材料中に存在するタンパク質様材料を可溶化する抽出ステップを含むプロセスによって製造することができる。溶解したタンパク質を含有する抽出物を、一般に7.0〜7.8のpHに調節し、次いで膜処理中、このpHに維持する。このプロセスは、抽出物からタンパク質を分離し濃縮するために、1つまたは複数のミクロ孔膜(microporous membrane)を使用する。一般に、接触角が比較的小さいフィルタ表面、例えば約40度以下の接触角を有するミクロ孔膜を使用することが有利である。このプロセスは、一般に、比較的大きい孔の限外濾過膜(例えば、分子量カットオフ(「MWCO」)が約25,000〜500,000である膜)または孔径が約1.5μまでの精密濾過膜を利用する。精密濾過膜を用いる場合、孔径が約1.0μ以下のもの、より望ましくは約0.5μ以下のものが、特に適している。この場合、「ミクロ孔膜」という用語は、限外濾過膜と精密濾過膜をまとめて指すのに使用する。そのような、比較的大きい孔の膜を用いることによって、本発明の方法における膜濾過操作は、約100psig以下の膜間圧力、望ましくは約50psig以下、しばしば約10〜20psigの範囲内の膜間圧力を使用して実施することができる。
【0010】
高ゲル強度の改質脂肪種子材料は、一般に、材料を殺菌するための短時間の超高温(UHT)処理を含むプロセスによって、製造することができる。pHは、一般に、UHT処理の全体を通して約7.0〜7.8で維持される。UHT処理は、濃縮水をポンプで水蒸気インジェクタに通すステップを含むことができ、そこで濃縮水を水蒸気と混合し、少なくとも約200°Fで短時間、例えば一般に、約5〜20秒間加熱する。この生成物を、約130°Fにフラシュ冷却する。UHT処理の生成物を、約7.0〜7.8のpHで噴霧乾燥して、高ゲル強度の改質脂肪種子材料を得ることができる。
【0011】
高ゲル強度の、特に望ましい改質脂肪種子材料は、一般に、UHT処理の全体を通してpHが一般に約7.1〜7.7に維持されるUHT処理を含むプロセスによって、生成することができる。UHT処理は、一般に、材料を約9〜15秒間、約200〜250°Fに加熱するステップを含む。UHT処理の生成物を、典型的な場合にはフラッシュ冷却し、噴霧乾燥して、改質脂肪種子材料を得る。
【0012】
高ゲル強度の、特に望ましい改質脂肪種子材料は、一般に、UHT処理の全体を通してpHが一般に約7.2〜7.4に維持されるUHT処理を含むプロセスによって、生成することができる。UHT処理は、一般に、材料を約9〜15秒間、約210°Fに加熱するステップを含む。UHT処理の生成物を、典型的な場合にはフラッシュ冷却し、噴霧乾燥して、改質脂肪種子材料を得る。
【0013】
高ゲル強度の改質脂肪種子材料は、食品、特に加工肉系に組み込むためのタンパク質供給源として使用するのに特に適したものにする、様々な特徴を有することができる。適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質、好ましくは少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含み、ゲル破壊強さが少なくとも約0.50Nであり;下記の特徴の1つまたは複数を有することができ:すなわちMW50が少なくとも約200kDaであり;タンパク質の少なくとも約40%が300kDaより大きい見掛けの分子量を有し;約70mm以下のESIを有し;固形分プロフィルが約11.00%以下である、という特徴の、1つまたは複数を有することができる。
【0014】
適切な改質脂肪種子材料は、下記の特徴の1つまたは複数を有することができ:すなわちNSIが少なくとも約80であり;全タンパク質のパーセンテージとして1.4%のシステインであり;Gardner L値が少なくとも約85であり;実質的に淡白な味であり;分散体粘度(dispersion viscosity)が少なくとも約0.30Nsm-2であり;加熱および冷却サイクル後の最終粘度が少なくとも約0.50Nsm-2であり(本明細書の実施例5で記述されるように);NaCl存在下での、加熱および冷却サイクル後の最終粘度が、少なくとも約0.45Nsm-2である(本明細書の実施例6で記述されるように)、という特徴の、1つまたは複数を有することができる。
【0015】
本発明の方法は、ナトリウム、カルシウム、およびカリウムイオンの総量に対するナトリウムイオンの比が0.5以下であり;ナトリウムイオンが約7000mg/kg(dsb)以下であり;細菌負荷(bacteria load)が約50,000cfu/g以下であり;香味成分含量が、約2500ppb以下の2-ペンチルフラン、600ppbの2-ヘプタノン、250ppbのE,E-2,4-デカジエナール、および/または500ppbのベンズアルデヒドを含むものである、改質脂肪種子材料を生成するのに使用することもできる。
【0016】
タンパク質が補われた食品を製造するのに使用することができる、本発明の方法によって形成される、特に望ましい改質脂肪種子材料は、下記の特徴の1つまたは複数を有することができ:すなわちMW50が少なくとも約400kDaであり;タンパク質の少なくとも約60%が300kDaより大きい見掛けの分子量を有し;ゲル破壊強さが少なくとも約0.60Nであり;約60mm以下のESIを有し;固形分プロフィルが約10.75%以下である、という特徴の、1つまたは複数を有することができる。
【0017】
特に望ましい改質脂肪種子材料は、下記の特徴の1つまたは複数を有してもよく:すなわち分散体粘度が少なくとも約0.40Nsm-2であり;加熱および冷却サイクル後の最終粘度が少なくとも約0.60Nsm-2であり;NaCl存在下での、加熱および冷却サイクル後の最終粘度が、少なくとも約0.46Nsm-2である、という特徴の、1つまたは複数を有してもよい。
【0018】
本発明の改質脂肪種子材料の、ある実施形態は、約2500ppbの2-ペンチルフラン、450ppbの2-ヘプタノン、150ppbのE,E-2,4-デカジエナール、350ppbのベンズアルデヒド、および/または50ppbのE,E-2,4-ノナジエナールを含む、香味成分含量を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ヒトおよび/または動物消費用の食品に組み込むのに適切な、高ゲル強度を有する改質脂肪種子材料について、本明細書に記述する。改質脂肪種子材料は、加工肉系への組込みに、特に適している。
【0020】
改質脂肪種子材料は、一般に、高いタンパク質含量ならびに高いゲル強度を有し、粘性ある分散体を形成することが可能である。典型的な場合、分散体は、加熱および冷却サイクルによって、より粘性あるものにすることができる。改質脂肪種子材料は、塩の存在下で加熱したときに粘度が増大する分散体を、形成してもよい。改質脂肪種子材料は、一般に、熱的に安定なエマルジョンを形成する。改質脂肪種子材料は、ヒトおよび/または動物消費用の食品に組み込むための、タンパク質供給源としての使用に適したものにする、様々なその他の特徴を有することができる。
【0021】
改質脂肪種子材料は、一般に、脂肪種子材料中に存在するタンパク質様材料を可溶化する抽出ステップと、後続の、1つまたは複数のミクロ孔膜を使用して抽出物を精製し、それによってかなりの量の炭水化物、塩、およびその他の非タンパク質成分を除去するステップとを含むプロセスによって、生成することができる。抽出手順によって生成された懸濁液中に存在する、かなりの量の粒状物質を、少なくとも除去することによって、膜精製の前に抽出物を頻繁に清澄にする。清澄な抽出物のpHを、約7.0〜7.8のpH(適切な場合には約7.1〜7.7、より適切な場合には約7.2〜7.4、好ましくは約7.3)に調節し、膜による処理中は、7.0〜7.8に維持する。
【0022】
本明細書で述べる方法は、脂肪種子抽出物からタンパク質を分離し、濃縮するために、1つまたは複数のミクロ孔膜を使用する。一般に、比較的小さい接触角、例えば約40度以下の接触角である、フィルタ表面を有するミクロ孔膜を使用することが有利である。さらに小さい接触角、例えば接触角が約30度以下であり、ある場合には約15度以下であるフィルタ表面を有するミクロ孔膜は、本発明の方法で使用するのに特に適切である。このプロセスは、一般に、比較的大きい孔の限外濾過膜(例えば、分子量カットオフ(「MWCO」)が少なくとも約30,000である膜)または孔径が約2μまでの精密濾過膜を利用する。
【0023】
本明細書で記述する方法は、一般に、濃縮水を殺菌する(pasteurize)ための、短時間の超高温(UHT)処理を含む。溶液のpHは、UHT処理および乾燥プロセスの全体を通して、約7.0〜7.8に維持することが好ましく、約7.1〜7.7に維持することが適切であり、約7.2〜7.4に維持することがより適切であり、好ましくは約7.3である。UHT処理は、典型的な場合、濃縮水をポンプ式で水蒸気インジェクタに送り込むステップを含むことができ、例えばその場合、濃縮水を水蒸気と混合し、約200〜250°Fで約5〜20秒間加熱し、適切な場合には約205〜240°Fで約9〜15秒間、より適切な場合には約210〜215°Fで約9〜15秒間加熱する。この生成物を、一般に、約130°Fにフラシュ冷却する。UHT処理の生成物を、一般に噴霧乾燥して、高ゲル強度の改質脂肪種子材料を得る。
【0024】
脂肪種子材料の供給源
本発明の方法で用いられる、出発時の脂肪種子材料は、一般に、脱脂した脂肪種子材料から得られた材料を含むが、脂肪種子をベースにした材料の、その他の形を用いることができる。脂肪は、いくつかの異なる方法によって、例えば皮(殻)なしの(dehusked)種子を単に加圧することによって、または皮なしの種子を有機溶媒で、例えばヘキサンなどで抽出することによって、皮なしの脂肪種子から実質的に除去することができる。本発明の方法の好ましい実施形態で用いられる、脱脂した脂肪種子材料は、典型的な場合、約3wt%以下、好ましくは約1wt%以下の脂肪を含有する。溶媒抽出プロセスは、典型的な場合、平らに伸ばしてフレークにした皮なしの脂肪種子に関して実施する。そのような抽出の生成物を、脂肪種子「白色フレーク」と呼ぶ。例えば、大豆白色フレークは、一般に、皮なしの大豆を平らなフレークに加圧し、このフレークから、残留油分の大部分を、ヘキサンを用いた抽出により除去することによって得られる。残留溶媒は、得られた白色フレークから、いくつかの方法によって除去することができる。ある手順では、高温溶媒蒸気が入っているチャンバ内に脂肪種子白色フレークを通すことによって、溶媒を抽出する。次いで少なくとも約75℃の温度のヘキサン蒸気が入っているチャンバ内に通すことによって、残留ヘキサンを大豆白色フレークから除去することができる。そのような条件下、残留ヘキサンの大部分をフレークから揮発させ、引き続き、例えば真空を用いることによって除去することができる。この手順によって生成された材料を、フラッシュ脱溶媒化(flash desolventized)脂肪種子白色フレークと呼ぶ。次いでフラッシュ脱溶媒化脂肪種子白色フレークを、典型的な場合には粉砕して、顆粒状材料(ミール)を生成する。しかし望むなら、フラッシュ脱溶媒化脂肪種子白色フレークを、本発明の方法で直接使用することができる。
【0025】
本発明の方法での使用に適切な材料から得られた、別の脱脂した脂肪種子は、トースト処理(toasting)と呼ばれるプロセスによって、脂肪種子白色フレークからヘキサンを除去することによって得られた材料から得られる。このプロセスでは、ヘキサン抽出された脂肪種子白色フレークを、少なくとも約105℃の温度の水蒸気が入っているチャンバ内に通す。これにより、フレーク内の溶媒を揮発させ、水蒸気と共に取り除く。得られた生成物を、トースト処理済み脂肪種子フレークと呼ぶ。フラッシュ脱溶媒化脂肪種子白色フレークの場合と同様に、トースト処理済み脂肪種子フレークは、本発明の方法で直接使用することができ、または抽出前に粉砕して顆粒状物質にすることができる。
【0026】
脱溶媒化脂肪種子白色フレークは、抽出ステップで直接使用することができるが、抽出用の出発物質として用いる前に、脱溶媒化フレークを粉砕してミールにすることが、より一般的である。大豆ミールなど、このタイプの脂肪種子ミールは、広く様々なその他の適用例で使用され、商業上の供給元から容易に入手可能である。培地での使用に適した脂肪種子材料のその他の例には、カノーラミール、サンフラワーミール、綿実ミール、ピーナツミール、ルピナスミール、およびこれらの混合物が含まれる。脱脂大豆および/または脱脂綿実から得られた脂肪種子材料は、そのような材料が比較的高いタンパク質含量を有するので、本発明の方法で使用するのに特に適している。本明細書の実施例および記述の多くは、改質大豆材料に適用されるが、本発明の方法および材料は、それらに限定するものと解釈すべきでなく、その他の穀物および脂肪種子に適用できることに、留意することが重要である。
【0027】
脂肪種子材料の抽出
脂肪種子材料からのタンパク質画分の抽出は、従来の装置を使用して、様々な条件下で実施することができる。プロセスパラメータおよび装置の選択に影響を及ぼす因子の中には、抽出効率、抽出物中のタンパク質の品質に及ぼす影響、およびプロセスが環境に及ぼす影響の最小化がある。コストおよび環境上の理由から、プロセスで使用される水の体積を、しばしば減少させたくなる。プロセスパラメータも、一般に、例えば固有の酵素および/または化学反応を介したタンパク質の分解が最小限になるように、ならびに抽出物のかなりの細菌汚染が回避されるように、選択される。
【0028】
撹拌タンク反応器、流動床反応器、充填床反応器を含めた様々な反応器構成を、抽出ステップで用いることができる。例えば、抽出反応の全体は、媒体の温度および混合を制御するのに適した機構を有する単一の容器内で行うことができる。あるいは抽出は、個別の反応容器内で、多段階で実施することができる(例えば、図1に示すプロセスシステム参照)。例えば抽出は、連続多段階プロセスとして実施してもよい(例えば、2段階以上を含む向流抽出)。別の実施形態では、抽出の少なくとも1つの段階を、固体の脂肪種子と抽出溶媒との接触時間を最小限にする条件下で、実施することができる。比較的短い抽出時間を含む別の実施形態では、脂肪種子材料に対し、固体/液体分離機器に導入したときに、温めた(例えば55℃〜75℃)水溶液を噴霧することができる。そのようなシステムは、5〜30秒の抽出時間を有することができる。例えば、水溶液および脂肪種子材料を、スクリュ押出し機内に同時に噴射し、即座に固体/液体分離機器(例えばデカンタや遠心分離機など)内に通すことができる。そのようなシステムでは、固体および液体の相を、システムの構成に応じて1分以下の時間、接触させるだけでよい。
【0029】
多くのプロセスで一般的であるように、様々な対象の最適化は、典型的な場合、プロセスパラメータの選択のバランスをとることを必要とする。例えば、タンパク質の実質的な化学分解を回避するために、抽出を、比較的低い温度で、例えば15℃〜40℃で、好ましくは約20℃〜30℃で実行することができる。しかし、そのような温度は細菌増殖に繋がる可能性があり、したがって、抽出時間を最小限に抑え、かつ/または後続のプロセス操作を、細菌増殖が減少するよう十分高い温度で実施することが最良と考えられる。
【0030】
脂肪種子材料は、そのタンパク質様物質を得るために、酸性と塩基性の両条件下で抽出することができる。本発明の方法は、典型的な場合、約6.5〜約10のpHを有する溶液を使用した抽出を含む。より適切な場合、この方法は、例えば約7〜約9のpHを有するアルカリ溶液を使用した、中性から塩基性条件下での抽出を含む。抽出は、脂肪種子材料と、設定量の塩基、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、および/または水酸化カルシウムなどを含有する水溶液とを接触させ、そのpHをゆっくりと低下させることにより実施することができるが、それは、固体脂肪種子材料から抽出された物質によって、塩基が中和されるからである。初期の塩基の量は、典型的な場合、抽出操作の終わりに抽出物が所望のpH値を有するように、例えば7.0〜8.5の範囲内のpHを有するように、選択される。あるいは、水相のpHは、抽出中にモニタすることができ(連続的に、または定期的な間隔で)、pHが所望の値または所望のpH範囲内に維持されるように、必要に応じて塩基を添加することができる。
【0031】
抽出を、単一段階の操作で実施する場合、使用済みの脂肪種子材料を、一般に水またはアルカリ水溶液で少なくとも1回洗浄し、それによって、固形分の画分に閉じ込められている可能性のあるタンパク質様材料を、回収する。洗液は、さらなる処理に向けて主抽出物と合わせることができ、または、脂肪種子材料の後続のバッチの抽出で使用することができる。
【0032】
抽出を多段階操作で実施する場合、抽出パラメータは、各段階ごとに最適化することができる。例えば、多段階抽出では、ある段階でのpHを、その前の段階または後の段階でのpHよりも、高くまたは低くすることができる。pHの変化は、1.5以下であることが適切である。適切なある実施形態では、脂肪種子材料を初期段階で7.0〜7.5のpHを有する水溶液で抽出し、部分抽出された固形分を2回目で8.0〜8.5のpHを有する水溶液で抽出する。
【0033】
抽出操作により、一般に、可溶性タンパク質様物質を含む水相中に不溶性材料が混合した混合物が生成される。抽出物は、膜濾過を介した分離に直接かけることができる。しかし、ほとんどの場合、混合物から粒状物質の少なくとも一部を除去することによって抽出物を最初に清澄にし、それによって、清澄な抽出物を形成する。一般に、清澄化操作では、粒状物質のかなりの部分、好ましくは実質的に全てを除去する。抽出物の清澄化は、後続の膜濾過操作の効率を高め、この操作で使用される膜に関連した問題の回避を助けることができる。
【0034】
清澄化は、水性懸濁液から粒状物質を除去するのに一般に用いられる、濾過および/または関係するプロセス(例えば遠心分離)を介して、実施することができる。デカンタ遠心分離は、一般に、水性脂肪種子スラリから液相を分離するのに使用される。抽出物を膜濾過にかける前に、例えばスラッジ除去遠心分離を使用することによって、抽出物をさらに清澄化することが有利と考えられる。しかしそのようなプロセスは、一般に、可溶性材料の多くを除去することがなく、したがって、可溶化タンパク質が水相中に残されたままであり、これは膜濾過によってさらに精製される。タンパク質の全収量を高くすることが望ましいので、清澄化ステップは、典型的な場合、可溶性タンパク質様材料を吸着する可能性のある凝集剤などの濾過助剤を利用しない。
【0035】
図1に示すように、抽出および清澄化操作を実施するある適切な方法は、多段階向流抽出プロセスを実施する一連の抽出タンクおよびデカンタ遠心分離機を用いる。このタイプのシステムでは、水とフレークとの比が比較的低い状態で、非常に高い効率の抽出を実施することが可能になる。例えば、このタイプのシステムは、各相での水性抽出溶液と脂肪種子材料との重量比が6:1〜10:1の範囲内である抽出を、効率的に実施することができる。水とフレークとの比を低くすることによって、比較的高い濃度の溶解固形分を含有する脂肪種子抽出物、例えば溶解固形分濃度が5wt%以上の脂肪種子抽出物の生成を可能にすることができ、少なくとも約7wt%の固形分を有する抽出物の生成は、珍しいことではない。水とフレークとの比を低くし、より濃縮された抽出物を使用することによって、このプロセスを、より低い体積容量要件を備えたシステムで実施することが可能になり、それによって、システムに関連した資本コストに対する要求を低下させる。
【0036】
特定の場合におけるシステム要件が、全体積に対する著しい制限を含まない場合、抽出プロセスは、水とフレークとのより高い比を使用して実施することができる。水とフレークとの比較的高い比、例えば20:1〜40:1の比を抽出操作で用いる場合、その抽出を単一段階で実施することが、より都合良いと考えられる。これらのタイプの水とフレークとの比は、より大きい体積の流体(出発時の脂肪種子材料1ポンド当たり)を取り扱うことが可能なシステムを必要とするが、タンパク質抽出におけるより高い希釈係数は、膜濾過操作で使用されるミクロ孔膜の汚損の可能性を低下させることができる。
【0037】
膜濾過
抽出液は、一般にまず清澄な抽出物を膜供給タンクに導入することによって、抽出システムから膜分離システムに移す。抽出液は、一般に、約4.0〜5.0%の可溶性タンパク質と、約1.5〜2.0%の溶解非タンパク質材料とを含有し、7.0付近のpHを有する。抽出物のpHは、上述のようにいくつかの一般的なアルカリ物質のいずれかを使用して、約7.0〜7.8に(適切な場合には約7.1〜7.7に、より適切な場合には約7.2〜7.4に)調節する。精密濾過操作の1つの目的は、タンパク質を非タンパク質材料から分離することである。これは、抽出液を1組の精密濾過膜に循環させることによって、実現することができる。水および非タンパク質材料は、透過水として膜を通過するのに対し、タンパク質のほとんどは、循環流中に留まる(「濃縮水」)。濃縮水のpHは、約7.0〜7.8の範囲内に維持される(適切な場合、約7.1〜7.7、より適切な場合には約7.2〜7.4)。タンパク質含有濃縮水は、典型的な場合、約2.5〜3×に濃縮される(例えば、流入する粗製抽出物30ガロンを3×に濃縮すると、濃縮水10ガロンが生成される)。濃縮係数は、膜を通過する透過水の体積を測定することによって、都合良くモニタすることができる。抽出物を3×に膜濃縮することにより、一般に、少なくとも約80wt%のタンパク質(dsb)を含有する溶解固形分を含んだ濃縮水流が、生成される。タンパク質濃度を90wt%に増大させるため、典型的な場合には、1:1のダイアフィルトレーションを2回実施する。ダイアフィルトレーション操作では、水を、高濃度の濃縮水に添加し、次いでミクロ孔膜を通して除去する。これは、上述のような手法で、または本発明の方法の代替の実施形態で実施することができ、ダイアフィルトレーションは、膜濾過の初期段階で、例えば当初の体積が実質的に維持されるように、供給タンク内に流入する抽出物に水を連続的に添加することによって、実施することができる。
【0038】
膜濾過操作は、典型的な場合、少なくとも2.5×に濃縮される濃縮水を生成し、すなわちある体積の抽出物を濾過システムに通すことによって、当初の抽出物体積の約40%以下の体積を有する、タンパク質に富んだ濃縮水を生成する。膜濾過操作からの出力は、一般に、少なくとも約10wt%のタンパク質を含んだタンパク質に富む濃縮水を提供し、12〜14wt%のタンパク質濃度が、しばしば容易に実現される。
【0039】
環境上および効率上の理由で、一般に、できる限り多くの水を膜透過水から回収し、回収された水をこのプロセスに戻して再利用することが望ましい。これにより、プロセスの全般的な水力学的デマンド(overall hydraulic demand)を低下させ、それと共に、プロセスによって排出される流出液の体積が最小限に抑えられる。典型的な場合、ダイアフィルトレーション透過水を、膜濾過の濃縮相からの透過水と合わせる。合わせた透過水中の水の大部分は、この合わせた透過水を、逆浸透(「RO」)膜で、RO濃縮水とRO透過水とに分離することによって回収することができる。RO分離は、本質的に純粋な水である透過水を、生成することができる。これは、プロセスのより早い段階へと再循環することができる。例えば、RO透過水は、脂肪種子材料を抽出するための水溶液中で使用することができる。RO透過水は、タンパク質に富む濃縮水を、RO透過水を含む水性希釈液で希釈することによって、ダイアフィルトレーション操作で利用することもできる。
【0040】
本発明の方法は、抽出物からタンパク質を分離し、濃縮するために、1つまたは複数のミクロ孔膜を備えた膜濾過システムを使用する。一般に、比較的小さい接触角、例えば約40度以下の接触角を有するフィルタ表面を有するミクロ孔膜は、汚損に対して良好な耐久性示しながら効率的な分離をもたらすことができるので、そのような膜を使用することが有利である。より小さいフィルタ表面接触角を有する多孔質膜(すなわち、より大きい親水性を有する表面)は、本発明の方法で使用するのに特に適している。そのような膜は、接触角が25度以下のフィルタ表面を有することができ、いくつかの膜は、約10度以下のフィルタ表面接触角を有することができる。
【0041】
本明細書で使用する「接触角」という用語は、液滴法を使用して測定された表面の接触角を指す。これは、表面の局所領域の濡れ特性を評価するのに使用される、光学的接触角法である。水滴(注射器を使用して、平らな膜表面にアプライした)のベースラインと、この水滴の境界での接線との角を、測定する。接触角を測定するのに適切な機器の例は、Krussから市販されている、モデルDSA 10 Drop Shape Analysis Systemである。
【0042】
膜は、高いパーセンテージの媒体と、抽出物中に存在する高分子量タンパク質成分とを維持すると同時に、水およびその他の成分を通過させることが可能であるべきである。膜濾過操作は、一般に、比較的大きい孔の限外濾過膜(例えば、分子量カットオフ(「MWCO」)が少なくとも約30,000である膜)、または孔径が約1.5μまでの精密濾過膜を利用する。MWCOが25,000〜200,000である低接触角精密濾過膜は、本発明の方法で使用するのに特に適している。適切なミクロ孔膜の特定の例は、フィルタ表面接触角が約25度以下であり、かつMWCOが30,000〜100,000である、改良されたPAN膜である。このプロセスの商用タイプのもので役立てるには、膜が、かなりの透過速度を維持可能であるべきであり、例えば、約12平方メートルの膜表面積を有する膜モジュールをおよそ1500〜3000mL/分で通過させることが可能であるべきである。そのような、比較的大きい孔のミクロ孔膜を用いることにより、膜濾過操作は一般に、約100psig以下の膜背圧を使用して実施することができる。より好ましくは、膜背圧が約50psig以下であり、効率的な膜分離は、10〜20psigの範囲の背圧で実現された。
【0043】
膜濾過システムは、一般に、クロスフロー濾過モードで実行されるように構成する。より大きい粒子および細片は、典型的な場合、より早い時点での清澄化操作によって除去されるので、ミクロ孔膜は、容易に詰まるような傾向にはならない。このプロセスの上流に清澄化ステップを含むことによって、より長い膜寿命およびより高い膜流出比を得易くなる。膜濾過システムは、典型的な場合、1つまたは複数の交換可能な膜モジュールを用いる。これにより、膜の孔径(またはMWCO)および/または膜のタイプを必要に応じて変化させることが可能になり、かつ汚損した膜の容易な交換が可能になる。
【0044】
クロスフロー濾過は、連続的にまたはバッチモードで実施することができる。クロスフロー膜濾過は、様々なフロー構成で実施することができる。例えば、管形熱交換器内の管と同様に、管内で長手方向に膜が並べられている管状構成は、様々な粒径を含む溶液の処理を可能にするので、1つの一般的な構成である。いくつかの、その他の従来のクロスフロー構成、例えばフラットシートおよび渦巻き形の構成は、膜の汚損を低減させながら効果的な膜分離をもたらすことが、知られている。渦巻き形の(spiral wound)クロスフロー膜システムは、本発明のプロセスで使用するのに特に適しており、特に、供給溶液が、清澄化脂肪種子抽出物のように比較的小さい粒状物質を含有する場合に、特に適している。渦巻き形の膜モジュールは、非常に効率的な分離をもたらす傾向があり、比較的コンパクトなスペースにおける大きい膜表面積を有する濾過システムの設計を可能にする。
【0045】
抽出操作の場合と同様に、膜濾過操作中のタンパク質含有溶液の温度は、タンパク質の化学状態(例えば、分解および/または変性を介して)ならびに生ずる細菌汚染の量に影響を及ぼす可能性がある。より低い温度では、タンパク質の化学分解を最小限に抑える傾向がある。しかし、より低い温度では、細菌増殖が問題になる可能性があり、より濃縮されたタンパク質溶液(例えば、少なくとも約10wt%のタンパク質を有する溶液)の粘度は、加工に関する問題を提示する可能性がある。本発明者等は、膜分離を実施しながらタンパク質含有抽出物を約55〜65℃に維持することによって、化学分解/変性に起因したタンパク質の機能性の変化を最小限に抑えながら、細菌増殖を効果的に抑制できることを見出した。より高い温度への相当な曝露はタンパク質に変化を引き起こす可能性があるように見え、それによって、濃縮された溶液を、例えば後続の噴霧乾燥操作中に、よりゲル化し易くする可能性がある。
【0046】
膜濾過をバッチ操作として実行する場合、膜は、一般に、各実行ごとに清浄化する。典型的な場合、膜システムは、実行の前の日に清浄化し衛生化しておくことになり、膜は、必要な場合には、殺菌剤(例えば次亜塩素酸ナトリウム)溶液中に保存することになる。次いで使用前に、膜システム殺菌剤溶液を膜システムから流出させ、全システムを水で濯ぐ。膜分離を連続操作として実施する場合、膜は、一般に定期的な間隔で閉鎖し、同様の手法で清浄化する。
【0047】
効果的に清浄化することができる膜を選択することによって(例えば、改良されたPAN膜などの、低接触角濾過表面を備えた膜)、比較的低い細菌レベルを有する濃縮水を生成する、濃縮された脂肪種子タンパク質抽出物の膜濾過を実施することが可能になる。
【0048】
膜構成
本発明の方法で使用される膜の表面は、典型的な場合、水に対する親和性を示す親水性の官能基を含む。膜は、一般に、表面が親水性になるよう十分な無電荷の親水性極性基をマトリックス表面に提供する側基を持った、適切なポリマー分子から形成される。これらの基は、ポリマー側基の誘導体化によって得ることができ、あるいはこれらの基は、「事前製作」することができ、次いでマトリックス表面でポリマーに直接付着しまたはグラフト化することができる。同様に、マトリックス表面に疎水性側基を付着することができ、次いでこれらの基の全てまたは一部を適切な基に誘導体化して、その表面が親水性になるようにすることが、可能である。同様に、適切な側基を含有するモノマーを、マトリックス表面に付着しまたはグラフト化することができる。比較的親水性のある表面を備えた膜の例は、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第4,147,745号、米国特許第4,943,374号、米国特許第5,000,848号、米国特許第5,503,746号、米国特許第5,456,843号、および米国特許第5,939,182号に記載されている。適切な膜の例は、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第6,630,195号にも開示されている。
【0049】
残留する有機物質が除去されるよう、かつ細菌汚染に関する問題が回避されるよう、膜を効果的に清浄化するために、一般に、比較的頑丈な膜を利用することが好ましい。膜が、比較的高い温度(例えば約50℃まで)に耐えることが可能であり、酸化溶液(例えば水性次亜塩素酸溶液)での処理に耐えることが可能であり、界面活性剤ベースの清浄溶液での処理に耐えることが可能であり、かつ/または約5〜11に及ぶpH、好ましくは約2〜12に及ぶpHの溶液など、ある範囲のpHの水溶液への曝露に耐えることが可能である場合、膜の清浄化を大幅に促進させることができる。
【0050】
濃縮水の下流処理
膜濾過操作によって生成された濃縮水を、しばしば殺菌して、微生物活性を確実に最小限に抑える。殺菌では、一般に、濃縮物の内部温度を少なくとも約180°Fに、より一般には少なくとも約200°Fに上昇させ、その温度を、溶液中に存在する細菌のほとんが死滅するよう十分な時間にわたって維持することが必要である。生成物は、一般に、高濃度の濃縮水をUHT処理にかけることによって、殺菌する。UHT処理は、タンパク質含有濃縮水を生蒸気と混合する水蒸気インジェクタに、ポンプ式で高濃度の濃縮水を通すことにより、実施することができ、約200〜250°Fに、適切な場合には約210〜240°Fに、より適切な場合には約210°Fに、素早く加熱することができる(205〜215℃)。次いで加熱された濃縮物を、加圧下で比較的短い時間(例えば約2〜30秒、適切な場合には約5〜20秒、より適切な場合には約9〜15秒)、ホールドチューブに通すことができる。UHT条件下での時間の長さは、チューブの長さを変えることによって、容易に制御することができる。ホールドチューブの後、加熱した濃縮物を真空容器に通すことによって、冷却することができる。真空中での濃縮物からの水の蒸発によって、加熱された溶液のフラッシュ冷却が行われ、温度を約130〜140°F(約54〜60℃)の範囲まで素早く降下させる(約45〜50℃)。典型的な場合、UHT処理の前に、濃縮水のpHを約7.0〜7.8に調節することが有利と考えられる。希HClまたは水酸化ナトリウムは、典型的な場合、濃縮水のpHを調節するのに使用することができる。典型的な場合、濃縮水のpHは、殺菌(例えばUHT処理)の全体を通して、約7.0〜7.8(一般に約7.1〜7.7、適切な場合には約7.2〜7.4、より適切な場合には約7.3)に維持することができる。
【0051】
UHT処理は、膜濾過の前に実施することができる。ある適切な実施形態によれば、抽出物は、抽出プロセス中に(例えば、多段階抽出プロセスの各段階ごとに)UHT処理にかけることができる。このタイプの処理は、タンパク質の実質的な化学分解を回避しながら細菌を破壊するのに、非常に効果的であることがわかった。また、膜の汚染を低減させるのにも実に効果的と考えられる。
【0052】
その貯蔵特性を改善するために、改質脂肪種子生成物を、典型的な場合にはこの生成物が、最終乾燥生成物の重量に対して約12wt%以下の水分を含有するように、好ましくは約8wt%以下水分を含有するように、乾燥させる。利用した乾燥方法および乾燥生成物の形態に応じて、取扱いおよび包装を容易にするために、乾燥後にこの生成物を、易流動性固体粒子に粉砕することができる。例えば、乾燥し改質された脂肪種子生成物を、ケークに乾燥した場合、乾燥粉末に粉砕することができ、好ましくは、この材料の少なくとも約95wt%が約10メッシュ以下のサイズを有する粒子の形をとるように、粉砕することができる。
【0053】
代替のプロセスでは、液体濃縮水のpHを、約7.0〜7.8に(一般に、約7.1〜7.7に、適切な場合には約7.2〜7.4に、より適切な場合には約7.3に)調節することができる(必要な場合)。液体濃縮物は、乾燥粉末化生成物が形成されるよう、噴霧乾燥することができる。噴霧乾燥生成物は、好ましくは含水量が約10wt%以下の水になるよう乾燥され、より好ましくは約4〜6wt%の水になるよう乾燥される。
【0054】
一実施形態では、濃縮水の高濃度溶液(例えば約10〜16wt%の固形分)を、乾燥器入口温度が約230〜270℃であり、供給ポンプ圧力が約1500〜2500psigであり、かつ排気温度が約75〜95℃である噴霧乾燥器に通すことによって、この濃縮水を噴霧乾燥することができる。
【0055】
ある場合には、最終の噴霧乾燥ステップの前に、膜濾過操作によって生成された濃縮水を、高濃度にすることが有利と考えられる。適切なタンパク質含有濃縮物は、一般には加工した大豆タンパク質材料の大規模な加熱が回避されるように、真空の助けを借りて、従来の蒸発技法を使用することによって形成することができる。このタイプの濃縮ステップがプロセスに含まれる場合、これは通常、濃縮水のpHを中性pH(例えば約6.8〜7.4のpH)に調節した後に、行われる。
【0056】
噴霧乾燥またはUHT処理の一部として行うことができる加熱の前に、典型的な場合には、濃縮水またはタンパク質含有濃縮物のpHを、約7.0〜7.8に(一般には約7.1〜7.7に、適切な場合には約7.2〜7.4に、より適切な場合には約7.3に)調節することが有利である。例えば、濃縮水のpHは、サンプルの加熱を含む任意の他の処理の前に、調節することができる。濃縮水またはタンパク質含有濃縮物の加熱は、分子量プロフィル、したがって生成物の機能性を、変化させる可能性がある。
【0057】
改質脂肪種子材料の特徴
改質脂肪種子材料は、大豆ミールやカノーラミール、サンフラワーミール、綿実ミール、ピーナツミール、ルピナスミール、またはこれらの混合物など、様々な前駆体脂肪種子材料から得ることができる。大豆フレークまたはミールは、本発明の方法で利用するのに特に適した脂肪種子タンパク質の供給源である。改質された脂肪種子材料は、ヒトおよび/または動物消費用の食品に組み込むためのタンパク質供給源として使用するのに適したものにする、様々な特徴を有することができる。
【0058】
改質された脂肪種子材料は、ヒト消費用の、タンパク質が補われた食品を製造するのに使用することができる。タンパク質が補われた食品の例には、飲料、加工肉、冷凍デザート、菓子製品、乳製品、ソース配合物、および穀物製品が含まれる。食品を補うのに使用された改質脂肪種子材料の量は、特定の食品に応じて大幅に変えることができる。本明細書で提供する食品は、単なる例示を目的とし、完全なリストを意味するものではない。
【0059】
高ゲル強度を有する改質脂肪種子材料は、食肉加工品に組み込むのに特に有利である。タンパク質が補われた肉製品の例には、鶏挽き肉製品、水添加ハム製品、ボローニャ、ホットドッグ、フランクフルトソーセージ、チキンパティ、チキンナゲット、ビーフパティ、フィッシュパティ、すり身、ベーコン、ランチョンミート、サンドイッチ用詰め物、デリミート、ミートスナック、ミートボール、ジャーキー、ファヒータ、みじん切りベーコン、注入ミート、およびブラートブルストが含まれる。
【0060】
高ゲル強度を有する改質脂肪種子材料は、食感または外観が肉のような、様々な肉類似製品に組み込むのにも、特に有利である。そのような製品の例には、ベジタリアン用のパティおよびナゲット、ベジタリアン用のホットドッグおよびフランクフルトソーセージ、香味を付けた粗挽きソーセージ、乳化ソーセージ類似品が含まれる。
【0061】
高ゲル強度を有する改質脂肪種子材料は、ソースおよびスープに組み込むのにも、特に有利である。そのような製品の例には、「クリーム」スープ(例えばマッシュルームクリーム、コーンクリーム)、「クリーム」および「チーズ」ソース(例えばAlfredoソース、Mornayソース)が含まれる。
【0062】
本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料は、典型的な場合、高いパーセンテージの高分子量タンパク質を含み、低分子量タンパク質はそれほど混入されてはいない。この材料中に見られる高分子量タンパク質の含量を分析するのに適した方法は、実施例8で述べるように、クロマトグラフィデータを基にする。
【0063】
生のクロマトグラフィデータは、いくつかの異なる基準値を計算するのに使用することができる。1つの基準値は、分子量を計算することであり、すなわち質量の50%がその分子量よりも高く、質量の50%がその分子量よりも低い値を計算することである。この最初の基準値は、精密には平均分子量でなく、加重平均分子量に近い。これを、本明細書では「MW50」で表す。別の基準値は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有する改質脂肪種子材料の、wt%を計算することである。さらに別の基準値は、100kDa未満の見掛けの分子量を有する改質脂肪種子材料の、wt%を計算することである。これら3つの基準値のいずれか1つを、特定の改質脂肪種子材料の分子量を特徴付けるのに個々に使用することができる。
【0064】
あるいは、これら3つの基準値の2つ以上の組合せを、改質脂肪種子材料の分子量プロフィルを特徴付けるのに使用することができる。好ましくは、本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料は、少なくとも約200kDaのMW50を有する。より好ましくは、少なくとも約400kDaである。少なくとも約600kDaのMW50を有する改質脂肪種子材料は、いくつかの適用例に特に適したものにすることができる。上記第2の基準値に関し、適切な改質脂肪種子材料の少なくとも約40%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有してよい。いくつかの適用例では、改質脂肪種子材料の少なくとも約60%が300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有する場合が望ましいと考えられる。
【0065】
上記第3の基準値によれば、改質脂肪種子材料の約40%以下が、100kDa未満の見掛けの分子量を有することが好ましい。しかし、いくつかの適用例では、改質脂肪種子材料の約35%以下が、100kDa未満の見掛けの分子量を有することが好ましい。適切な改質脂肪種子材料は、これら3つの基準値の1つまたは複数の好ましい値を満足させることができる。例えば、特に適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約200kDaのMW50を有することができ、改質脂肪種子材料の少なくとも約60%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有する。少なくとも約600kDaのMW50を有する改質脂肪種子材料と、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有する改質脂肪種子材料の少なくとも約60%は、本発明の方法によって形成することができる。
【0066】
加熱すると、タンパク質分子はより激しく振動し、より多くの水と結合し、すなわちより多く水和するようになる。ある時点で、分子はその生来の高次構造を失い、全体的に水に曝されるようになる。これを、デンプンのゼラチン化およびタンパク質の変性と呼ぶ。さらなる加熱は、分子間の全ての相互作用が乱されるので、粘度が低下する可能性がある。冷却すると、デンプンおよびタンパク質は共に、高粘度の網状構造を形成することができる(ゲルと呼ぶ)。
【0067】
いくつかの食品に関連した適用例では、改質脂肪種子材料がゲルを形成する能力が、重要な機能特性になる。ゲル化中、タンパク質は変性して、タンパク質が大量の水を取り囲みかつ結合している緩い網状構造を形成する。本明細書で使用する「ゲル強度」という用語は、実施例3で述べる分析に従った、破壊強さを指す。本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.50Nのゲル強度を有することができる。本発明の方法によって形成された適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.60Nのゲル強度を有することができる。本発明の方法によって形成された特に適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.70Nのゲル強度を有することができる。特定の食品配合物に重要と考えられるその他の特徴には、分子量、粘度、乳化安定度、およびタンパク質含量が含まれる。これらの特徴の1つまたは複数による特定の性質は、タンパク質が補われた食品の開発に有利と考えられる。
【0068】
本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料は、典型的な場合、望ましい粘度特性を示す。ある一組のパラメータの下、より薄い溶液を提供する改質脂肪種子材料は、より薄い溶液をより容易に肉製品に注入しまたはすり込むことができる場合、肉の注入などの適用例で有利である。典型的な場合、加熱による希薄化(thinning)を示さない改質脂肪種子材料が、一般に好ましい。いくつかの適用例で、加熱および冷却サイクルの全体を通して粘度を維持できることは、望ましい性質である。本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料は、加熱するにつれて粘度を増大させることができ、したがって、その水上での保持は、加熱調理の初期段階中に改善される。対照的に、ほとんどの商用サンプルは、加熱調理の初期に粘度が低下し、その水上での保持が低下する。
【0069】
デンプン質サンプルの分析のため、高速粘度分析(「RVA」)を開発したが、これは、一般にBraebender分析に類似している。デンプン系とタンパク質系との類似を考えると、実施例4で述べるRVA分析を、本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料に適用することができる。
【0070】
実施例4で述べるRVA分析によれば、ブレンドの約10分後に、粘度を測定することができる。適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.30Nsm-2の粘度を有することができる。特に適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.40Nsm-2の粘度を有することができる。表2に示すように、本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.50Nsm-2の粘度を示した。
【0071】
粘度の別の指標は、実施例5で述べる分析によるなど、RVA中の加熱および冷却サイクルによって得ることができる。この方法によれば、粘度は、加熱および冷却サイクルの全体を通して、ある間隔で測定することができる。実施例5で述べる方法によれば、適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.50Nsm-2の最終粘度(35分で)を有することができる。特に適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.60Nsm-2の最終粘度を有することができる。表4に示すように、本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.60Nsm-2の最終粘度を示した。
【0072】
同様の粘度分析は、実施例6で述べる方法によるなど、NaClの存在下、RVAでの加熱および冷却サイクルによって得ることができる。実施例6で述べる方法によれば、2%のNaClの存在下、適切な改質脂肪種子材料は、冷却および加熱サイクルによって、粘度を増大させることができる。特に適切な改質脂肪種子材料は、2%のNaClの存在下、少なくとも約0.45Nsm-2の最終粘度(35分で)を有することができる。表5に示すように、本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.46Nsm-2の最終粘度を示した。
【0073】
いくつかの食品関連の適用例では、改質脂肪種子材料がエマルジョンを形成する能力が、重要な機能特性になる可能性がある。油と水とは混和性でなく、それらの間の界面を安定化させる材料が存在しない場合、界面の全表面積が最小限に抑えられることになる。これは典型的な場合、油相と水相との分離に繋がる。タンパク質は、表面の変性により液滴(油滴であろうと水滴であろうと)に被覆をもたらすことにより、これらの界面を安定化することができる。タンパク質は、油および水の両方と相互に作用することができ、事実上、油と水のそれぞれを相互に隔離する。大きい分子量のタンパク質は、そのような液滴表面を変性させ、小さいタンパク質よりも大きな安定性をもたらすことができ、それによって液滴の凝集が防止されると考えられる。
【0074】
乳化安定度は、実施例7で述べる手順に基づいて決定することができる。この手順によれば、サンプルは、エマルジョンから放出された油の量によって分析される。本明細書で使用する「乳化安定指数」または「ESI」という用語は、実施例7で述べる分析条件に従ってエマルジョンから放出された、油の量によって引き起こされた「脂肪スポット」または「油リング」の直径を指す。本発明の方法によって調製された、改質脂肪種子タンパク質生成物は、一般に、比較的安定なエマルジョンを形成する。典型的な場合、応力がないと、本質的に油は2〜3時間以内でエマルジョンから分離しなくなる。実施例7で述べる加熱手順の後、適切な材料は、約70mm以下のESIを有することができる。特に適切なエマルジョンは、約60mm以下、より望ましくは約50mm以下のESIを有することができる。
【0075】
本発明の方法によって形成された改質脂肪種子材料は、ヒトおよび/または動物消費用の食品に組み込むタンパク質供給源としての使用に適したものにする、様々な特徴を有することができる。適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質、好ましくは少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含むことができる。適切な改質脂肪種子材料は、少なくとも約200kDaのMW50を有してもよく、かつ/または材料の少なくとも約40%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有する。
【0076】
改質脂肪種子材料は、下記の特徴の1つまたは複数を有してもよく、すなわち:少なくとも約0.50Nのゲル破壊強さ;約70mm以下のESI;少なくとも約80のNSI;全タンパク質のパーセンテージとして、少なくとも約1.4%のシステイン;少なくとも約85のGardner L値;および実質的に淡白な味の、1つまたは複数である。
【0077】
改質脂肪種子材料は、下記の特徴の1つまたは複数を有してもよく、すなわち:少なくとも約0.30Nsm-2の粘度;加熱および冷却サイクル後の、少なくとも約0.50Nsm-2の最終粘度;2%のNaClの存在下、加熱および冷却サイクル後の、少なくとも約0.45Nsm-2の最終粘度の、1つまたは複数である。
【0078】
タンパク質が補われた食品の製造に使用することができる、本発明の方法によって形成された、特に望ましい改質脂肪種子材料は、少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質、好ましくは少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含むことができ、下記の基準の1つまたは複数、すなわち:少なくとも約400kDaのMW50であり;この材料の少なくとも約60%が300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有する、という基準の1つまたは複数を満たすことができる。
【0079】
特に望ましい改質脂肪種子材料は、下記の特徴の1つまたは複数を有してもよく、すなわち:少なくとも約60Nのゲル破壊強さ;約60mm以下のESI;約10.75%以下の固形分プロフィル;少なくとも約0.40Nsm-2の粘度;加熱および冷却サイクル後の、少なくとも約0.60Nsm-2の最終粘度;2%のNaClの存在下、加熱および冷却サイクル後の、少なくとも約0.46Nsm-2の最終粘度の、1つまたは複数である。
【0080】
特に望ましい改質脂肪種子材料は、下記の特徴の1つまたは複数を有してもよく、すなわち:少なくとも約70Nのゲル破壊強さ;約50mm以下のESI;および少なくとも約0.50Nsm-2の粘度の、1つまたは複数である。
【実施例1】
【0081】
抽出を、2段階向流抽出システムで実施した。1分当たり1ポンドの大豆白色フレークを、部分富化された抽出物1.7gpmと連続的に混合した。タンク内の温度を120°Fに制御し、pHは、苛性ソーダを添加することによって約7.0に維持した(必要に応じて)。25分という平均抽出滞留時間は、タンクの放出速度を制御することによって維持した。スラリを、抽出タンクからデカンタ遠心分離機へと連続的にポンプ送出し、そこで、スラリを2つの流れに、すなわちタンパク質に富む液体流と、部分抽出されたフレーク流とに分離させた。タンパク質に富む抽出物を、スラッジ除去遠心分離機に送って清澄化し、次いで膜供給タンクに送った。部分抽出されたフレークは、第2の抽出タンクに送り、そこで、水道水1.7gpmと連続的に混合した。苛性ソーダ(NaOH)をタンクに添加して、タンク内のpHを8.5に制御した。タンク内の温度は、130°Fに制御した。25分という平均抽出滞留時間は、タンクの放出速度を制御することによって維持した。スラリを、抽出タンクからデカンタ遠心分離機へと連続的にポンプ送出し、そこで、スラリを2つの流れに、すなわち部分的に富化したタンパク質の液体流と、使用済みのフレーク流とに分離させた。部分的に富化したタンパク質の液体流を、第1のタンクに送って、新鮮な白色フレークを抽出した。
【0082】
抽出タンク、遠心分離機、および相互接続する配管を、使用前に、0.75%の苛性アルカリ溶液で清浄化し、500ppmの次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)溶液で衛生化した。
【0083】
抽出液を、膜供給タンクにポンプ送出した。抽出液は、約3.0%のタンパク質を含有する。膜システムは、限外濾過膜を使用して可溶性炭水化物およびその他の可溶性成分(例えば無機塩)からタンパク質を分離するのに使用する。約100ガロンの抽出溶液を、抽出システムから膜供給タンクに移した後、抽出液を、約80gpmというおおよその流量で、膜システム内を再循環させた。抽出液の温度は、インライン熱交換器で140°F(60℃)に制御した。抽出液のpHは、苛性ソーダで7.3に調節し、その値で維持した。合計で300ガロンの抽出液を、膜供給タンクに移した。
【0084】
抽出液の全てを膜供給タンクに移した後、140°F(60℃)に保った抽出液を、80gpmで膜全体に再循環させたが、このときの膜背圧は、10〜20psigに制御した。膜濾過システムは、公称50,000MWCOの、6個の改良されたPAN膜(Osmonics, Minnetonka, MNから入手可能なMX-50膜)を含んでいた。一連の膜の全濾過表面積は、約1260平方フィートであった。
【0085】
膜濾過の初期濃縮段階中、透過水の流束は、典型的な場合、約2.5gpmという初期速度から、濃縮の後期段階中の約1.5gpmまで、様々である。このステップ中、タンパク質は、3%〜約10%に濃縮された。
【0086】
初期濃縮段階の後、140°F(60℃)の水100ガロンを、膜供給タンクに添加し、それによって、タンパク質含量を約3.3%にまで希釈する。次いでタンパク質含量を、元の10%固形分にまで濃縮した。これを、ダイフィルトレーションステップと呼ぶ。2つのダイアフィルトレーションステップを使用して、濃縮物の流れの中の、固形分のタンパク質含量を、最小で90%(dsb)にまで増大させた。この実験操作中、膜システムからの透過水は、廃棄した。
【0087】
第2のダイアフィルトレーションの後、膜システムからの濃縮水を、UHT供給タンクに移した。膜システムに、水道水30ガロンを一気に流し、このシステムからの追加のタンパク質を回収した。この一気に流した水を、UHT供給タンク内の濃縮水と一緒にした。次の操作の前に、希HClまたは水酸化ナトリウムで、濃縮水のpHを7.1〜7.7に調節した(室温で測定)。
【0088】
pH調節に続き、濃縮水を殺菌するために、濃縮水を超高温加熱(「UHT」)処理にかけた。UHTステップは、濃縮物を2gpmで、水蒸気インジェクタにポンプ送出することからなる。水蒸気インジェクタでは、濃縮物を生蒸気と混合し、即座に210°F〜240°Fに加熱する。加熱した濃縮物は、12秒間にわたり加圧下で、ホールドチューブに通す。ホールドチューブの後、生成物は真空容器内に流入し、そこでは生成物を130°Fにフラッシュ冷却する。次いで生成物を噴霧乾燥する。UHTステップは、細菌を死滅させ、高温菌を死滅させるのにも非常に効果的である。全平板菌数は、UHT操作の後に、300,000cfu/gほどの高さから、100cfu/g程度に減少させることができた。
【0089】
次いでUHT処理した材料を噴霧乾燥することにより、約80ミクロンの平均粒径を有し、約90wt%のタンパク質(dsb)および約8〜9wt%の水分を含有する、大豆タンパク質生成物を得た。
【実施例2】
【0090】
改質脂肪種子材料の複合サンプル
大豆タンパク質材料の複合サンプルは、実施例1で述べた方法によって生成され、かつ実施例10で大豆タンパク質生成物10.14、10.20、10.26、10.31、および10.32であると確認された、それぞれ等分量の5種類の大豆タンパク質生成物を混合することによって構成した。この複合大豆タンパク質材料を、実施例3〜9で述べるように分析した。
【実施例3】
【0091】
改質脂肪種子材料のゲル特性
大豆タンパク質分離体が、水と相互に作用する能力の1つの尺度は、ゲル化試験で見ることができる。ゲル化では、タンパク質が変性して、大量の水を取り囲みかつ結合する、緩く繋がったタンパク質の網状構造を形成する。いくつかのゲル化手段を使用することができるが、冷蔵温度で固め、平衡にした後のゲル強度の測定を、選択した。
【0092】
大豆ゲルの決定は、下記の手順に従って実施した。
【0093】
1. 21gの大豆タンパク質分離体を計量する。
【0094】
2. 129mLの蒸留水を、ミニフードプロセッサ(約1.5カップモデル)のボールに入れる。
【0095】
3. 大豆分離体をボールに加える。15秒間混合する。側面を掻き落として、分離体を濡れた状態にする。
【0096】
4. さらに45秒間混合する。
【0097】
5. 混合物25gを、50mLの使い捨て遠心分離管に入れる。
【0098】
6. 臨床遠心分離機に配置する。運転速度を最大限にし、次いで遠心分離機を止める。
【0099】
7. 遠心分離管を、85℃の水浴中に30分間置く。
【0100】
8. 遠心分離管を、4℃の冷却器内に一晩置く。
【0101】
9. 細いヘラを使用して、遠心分離管からゲルを取り出す。平らな面に置く。
【0102】
10. Texture Technologies TA-XT2テクスチャ分析器に取付けられた、45°のナイフを使用して、ゲル強度を測定する。ゲルを、1mm/秒で10mm貫通させる。ゲルの長さに沿った3点で測定し、平均を記録する。
【0103】
ゲル試験の結果を表1に示すが、この表は、商用サンプルのゲル強度と、実施例2の複合大豆タンパク質材料のゲル強度との比較である。本明細書で使用される「ゲル強度」という用語は、この一組の条件下で測定した改質脂肪種子材料の、ゲル強度を指すのに使用する。
【表1】

【0104】
この分析は、実施例2の複合大豆タンパク質材料が、高ゲル強度を有することを示す。Samprosoy 90MPだけが、実施例2の複合大豆タンパク質材料に近いゲル強度を有する。
【実施例4】
【0105】
改質脂肪種子材料の粘度
粘度は、一般に、流体の濃さの尺度であり、それに対してゲル強度は固体の性質である。実際に、これら尺度の境界は、不明瞭である。非常に弱いゲルは、流体になることができ、非常に粘性の高い流体は、固体状になることができる。より実用的なレベルでは、大豆分離体が水中で薄い(低粘度の)流体を形成し、それによって、ゲルが形成される点まで加熱する間(またはその後の冷却中)に粘度を著しく増大することが、望ましいと考えられる。例えば、薄い流体を形成することによって、その流体を、肉の全筋片に注入することが可能になり、次いで加熱調理中に凝固させ、生成物中に水を閉じ込めることが可能になる。同様に、薄い液体を形成する生成物を使用して、油または脂肪を含むエマルジョンを形成することができ、次いで加熱調理中に固める。典型的な場合に肉に使用される大豆タンパク質濃度では(生成物全体に対して1〜2%、「ブライン」ベースではおそらく10%)、非常に弱いゲルだけが形成される可能性があり、これらは、粘性流体としてより良好と考えられる。
【0106】
高速粘度分析(「RVA」)を、デンプン質サンプルの分析用に開発したが、これは一般に、Braebender分析に類似している。例えばサンプルは、撹拌しながら水中に分散させる。分散体を一定の温度で維持し、その粘度(撹拌に対する抵抗力)を測定する。
【0107】
粘度の決定は、下記の手順に従って実施した。
【0108】
1. 分離体25.0gを、短いパルス間隔(最長5秒)でブレンドしながら、Waringブレンダ内で175mLの水中に分散させる。
【0109】
2. 飛び散った材料を、混合物中に掻き落とし、ブレンドを繰り返す。
【0110】
3. 分散体のpHを、HClまたはNaOHで、所望のpHに調節し、典型的な場合には7.0に調節する。
【0111】
4. 分散体30gをRVAキャニスタに量り取り、RVAに取り付ける。
【0112】
5. RVAは、パドル速度960rpmの状態で、サンプルが37℃に維持されるように設定した。
【0113】
大豆分離体分散液の、固形分12.5%、pH 7.0、および37℃での比較を、表2に示す。本明細書で使用する「分散体粘度」という用語は、この一組の条件下で測定した改質脂肪種子材料の粘度を指すのに使用する。
【表2】

【0114】
この分析は、実施例2の複合大豆タンパク質材料が、高粘度を有することを示すと共に、Supro EX33と2種のSamprosoyサンプルだけが、実施例の複合大豆タンパク質材料の粘度に近いことを示す。
【実施例5】
【0115】
加熱したときの改質脂肪種子材料の粘度
粘度の別の指標は、RVAでの加熱および冷却サイクルによって得ることができる。pHが7.0である11%分散体の、540rpmの剪断での粘度を、表3に示すように、5分、20分、および35分で記録した(例えば、35℃の初期温度で、10分後の85℃で、さらに35℃に戻った後7分で)。適切な改質脂肪種子材料は、初期粘度が低く、加熱後に、非常に高い粘度を形成することができる。粘度が変化する割合、すなわち最終粘度と初期粘度との比は、この分析により計算することもできる。
【表3】

【0116】
表4からわかるように、実施例2の複合大豆タンパク質材料は、その他の商用サンプルに相当する初期粘度を有する。これら材料の全ては、サイクル中20分(加熱の終了近く)で著しく低い粘度を示すが、実施例2の複合大豆タンパク質材料は、最高粘度を示す。分散体が再び35℃で安定化すると、実施例2の複合大豆タンパク質材料は、その他の大豆タンパク質材料に比べて高い粘度を有する。最初は最低の粘度である材料の1つであるが、実施例2の複合大豆タンパク質材料は、加熱および冷却サイクル後に最高粘度を有する。
【0117】
表4は、表3に記載される加熱サイクルによって得られた大豆分離体の11%分散体の、粘度変化を示す。本明細書で使用する「最終粘度」は、この一組の条件下で測定された、35分での改質脂肪種子材料の粘度を指すのに使用する。
【表4】

【実施例6】
【0118】
NaClの存在下で加熱したときの、改質脂肪種子材料の粘度
肉製品は、典型的な場合に塩で加工されるので、実施例5で述べた分析を、2%のNaClを含めた状態で繰り返した。結果を表5に示す。
【0119】
表5は、表3に記載されるように、2%のNaClの存在下、加熱サイクルによって得られた大豆分離体の11%分散体の、粘度変化を示す。
【表5】

【0120】
一般に、粘度は、塩の存在下で非常に低くなる。さらに、塩の存在下で、材料は、典型的な場合に初期粘度よりも高い最終粘度を有する。実施例2の複合大豆タンパク質材料は、塩によって著しい影響を受けなかったので、塩の影響を最も受けにくい製品の1つである。
【0121】
表6は、2%のNaClの存在下、初期粘度と最終粘度とを比較したものである。
【表6】

【実施例7】
【0122】
改質脂肪種子材料の乳化安定度
タンパク質の潜在的な機能特性の1つは、界面、例えば油-水の界面の安定化である。油と水とは混和性でなく、これらの界面を安定化させる材料が存在しない場合、この界面の全表面積が最小限になる。これは典型的な場合、個々に離れた油相と水相とをもたらす。タンパク質は、これらの界面を安定化させることができると、広く考えられている。
【0123】
分析は、下記の手順に従って行った。
【0124】
1. 大豆分離体10.7gを計量する。
【0125】
2. 冷却した蒸留水75gを計量する。
【0126】
3. 低温(4℃)のラード75gを計量する。
【0127】
4. プロセッサのボール(Cuisinart Little Pro Plus(商標)金属ブレード)に水を添加する。
【0128】
5. プロセッサのボールに大豆分離体を添加する。
【0129】
6. 30秒間混合する。
【0130】
7. 停止し、側面を掻き落とす。
【0131】
8. 低温のラードを添加する。
【0132】
9. 30秒間混合する(合計で1分の混合時間)。
【0133】
10. 停止し、側面を掻き落とす。
【0134】
11. 2分間混合する(合計で3分の混合時間)。
【0135】
カットオフ3ccシリンジを使用して、エマルジョンを取り出し、エマルジョン1mLを、直径125mmの#4 Whatman濾紙の中央に置く。この濾紙を、100℃のオーブン内に、厳密に30分間置く。濾紙を取り出し、「脂肪スポット」または「油リング」の縁部にマークを付ける。スポットの直径を、透明な定規を使用してmm単位で測定する(楕円形のスポットが得られた場合、両方の直径を測定し、平均する)。
【0136】
大まかに言えば、エマルジョンは、物理的強度(変形に対する抵抗力)ならびに安定性(エマルジョンがそのまま残り続けること)を有することができる。一般に、物理的に強力なエマルジョンは、物理的により安定であるとも考えられる。本明細書に記載される方法では、より熱的に安定なエマルジョンは、少ない水および油しか放出しなくなり、その結果、より小さい脂肪スポットまたは油リングになる。一般に、エマルジョンの物理的強度と油リングの直径との間には、逆相関関係が観察され(「乳化安定指数」または「ESI」)、より強力なエマルジョンは熱的安定性が低いことが示唆された。表7の結果が示すように、実施例2の複合大豆タンパク質材料は、比較的弱いが非常に安定なエマルジョンを生成する。これは、実施例2の複合大豆タンパク質が、加工肉の系内に、ゲル強度とエマルジョン安定性とのプラスの組合せを提供できることを示唆している。
【表7】

【実施例8】
【0137】
改質脂肪種子材料の分子量プロフィル
その生来の構造で依然として存在するタンパク質の量に関する1つの指標は、それらの分子量プロフィルである。純粋なタンパク質の場合、クロマトグラフィは、通常は単一の対称ピークを明らかに示す。大豆分離体に存在するような、タンパク質の混合物は、一般に一連の対称ピークからなるべきである。加工によってタンパク質の分解が生じなかった場合、大豆分離体について同様のプロフィルが観察されることが予測されると考えられる。
【0138】
大豆タンパク質生成物のサンプルは、1時間振盪させることによって、pH 7.0の水に分散させた1%分散体が調製されるように、調製した。このサンプルを、微量遠心管内で1分間遠心分離にかけて、不溶物を沈降させた。上澄み(100μL)を溶媒(900μL)で希釈し、0.45μmシリンジフィルタに通して濾過し、濾過したサンプル100μLをHPLCに注入した。HPLCカラムは、50mMのリン酸ナトリウム-NaOH(pH 6.8)、0.01%w/vアジ化ナトリウムで平衡にされた、Biorad SEC 125およびSEC 250ゲルクロマトグラフィカラムを含むタンデムセットであった。流量を、0.5mL/分に設定し、タンパク質の溶出を、280nmでモニタした。得られたクロマトグラムを、約0.3分ごとの切片に分割し、各切片でのサンプルのパーセントを、MWマーカーに基づいて、その切片の計算分子量(MW)と比較した。次いでプロフィル全体を、累積パーセントグラフとしてプロットし、3つの測定値を記録した:すなわち中央MW(MW50)、300kDaよりも大きいサンプルのパーセンテージ、および100kDa未満のサンプルのパーセンテージである。非常に高いMW50およびMW>300を有する大豆分離体は、加水分解を比較的少ししか経験してない生成物である。加水分解したサンプルは、これら2つの測定値が低いが、MW<100が高くなると考えられる。大豆タンパク質生成物のサンプルの他、大豆フレークの新鮮で清澄な抽出物(pH8.5)を、平衡緩衝液で希釈し、実験操作にかけて、未処理の比較を行った。簡単に言うと、商用サンプル(図示せず)の大部分は、分解の徴候を示し、時には著しい量の分解が示された。しかし、実施例2の複合大豆タンパク質材料は、分解がかなり少ないという証拠を示した。
【0139】
分解は、偶発的または意図的なものである可能性がある。偶発的な分解は、機械的損傷(例えば、高剪断またはキャビテーション混合)、加熱ステップ中の酸またはアルカリ加水分解、あるいは加工中の任意の時間での酵素加水分解から生ずる可能性がある。酵素加水分解は、大豆中に天然に存在するタンパク質分解酵素、または細菌を汚染することによって分泌された酵素が原因と考えられる。タンパク質は、タンパク質の機能性を変化させるために、意図的に分解させることもできる。部分加水分解は、大豆タンパク質の乳化または起泡特性を改善することができる。大規模な加水分解は、酸性条件下での溶解性を改善することができる。
【0140】
商用大豆分離体のサンプルは、様々な商業上の供給元から得た。生の分子量プロフィルデータの収集は、上述の通りである。
【0141】
分析は、エマルジョンの粒径分析で使用されたものと類似している。例えば、材料のどの程度のパーセンテージが100kDa未満であるのか問うことができる。Samprosoy 90MPの場合、100kDa未満の画分が約57%を構成するのに対し、実施例2の複合大豆タンパク質材料では、この画分が約36%を構成する。クロマトグラフィデータを分析する別の方法は、分子量、すなわち質量の50%がその上にありかつ質量の50%が下にある分子量を、計算することである。これは、正確には平均分子量ではなく、加重平均分子量に近い。これを、本明細書では、「MW50」という用語で表す。Samprosoy 90MPのMW50が約56kDaであるのに対し、実施例1の方法により形成された材料のMW50は、約229kDaである。
【0142】
表8の結果が示すように、実施例2の複合大豆タンパク質材料は、最高のMW>300と、はるかに高いMW50とを有する。実施例2の複合大豆タンパク質材料に関するMW50は、2番目に高い生成物のMW50の、ほぼ2倍である。これは、ゲルの網状構造に関与するタンパク質が、大きい分子量であるために(かつ相互作用に向けて任意の単一の分子に利用可能な、推定される、より大きなタンパク質表面であるために)、潜在的に多くの相互作用を形成することが可能であることを示している。
【0143】
表8は、大豆分離体に関する分子量分布の測定値を示す。MW50は中央分子量であり、MW>300は、300kDaより大きい見掛けの分子量を有するタンパク質のパーセントであり、MW<100は、100kDa未満の見掛けの分子量を有するタンパク質のパーセントである。
【表8】

【0144】
実施例2の複合大豆タンパク質材料は、商用のサンプルよりも高いパーセンテージの高分子量タンパク質を有する。試験をしたほとんどの商用サンプルは、著しく少ない高分子量材料を有していた。
【0145】
より高い分子量の画分が及ぼす可能性のある影響は、いくつかの領域に生ずると考えられる。1つの利点は、苦味ペプチドの存在が減少することである。タンパク質から低分子量ペプチド(400<MW<2000)への加水分解は、しばしば、苦い香味を有する化合物の生成をもたらす。この一例は、並外れた甘さに関連するが苦い後味にも関連するアスパルテームである。大豆タンパク質の香味は、複数成分の複合混合物から得られる。苦味は、これら不快な香味の1つである。少ないペプチド含量は、苦味がより少ない生成物をもたらすと考えられる。
【0146】
高分子量であることの第2の結果は、界面の安定化にあると考えられる。空気-水の界面と油-水の界面は、より低い分子量材料によって、最初はより良好に安定化することができるが、これらの面の長期にわたる安定化は、より大きい分子に依存する可能性がある。
【実施例9】
【0147】
改質脂肪種子材料の固形分プロフィル
粘度の別の指標は、選択された粘度を得るのに必要な材料の濃度を考慮することである。この分析では、1本のラインを、粘度対濃度のデータに当てはめることができる(固形分6〜18%の範囲にわたる)。このラインに関する方程式は、等しい固形分濃度を計算するのに一定の粘度を使用することができるように、再構成される。0.4Nsm-2という粘度を選択し、それぞれの濃度を計算した。この分析に関して得られた固形分プロフィルを、表9に示す。0.4Nsm-2という粘度を実現するのに必要な、改質脂肪種子材料の固形分濃度またはwt%ベースを、本明細書では「固形分プロフィル」と呼ぶ。
【0148】
実施例2の複合大豆タンパク質材料のパーセンテージとして、同じ粘度を得るのに必要な追加の材料を、計算した。表9に示すように、実施例2の複合大豆タンパク質材料は、同等の商用生成物よりも11〜45%、より効果的である。
【表9】

【実施例10】
【0149】
大豆白色フレークのバッチ処理分を抽出し、膜濾過中のpH、固形分パーセント、UHT処理中のpH、およびUHT処理中の温度を様々に変えながら、実施例1で述べた方法に従って加工した。大豆タンパク質生成物10.1〜10.32までを、表10に列挙したパラメータに従って加工した。
【表10】

【0150】
表11は、ゲル強度、分散体粘度、ESI、300kDaより大きい見掛けの分子量を有するタンパク質のパーセンテージ、および大豆タンパク質生成物10.1〜10.32までの溶解度を示す。
【表11】

【0151】
追加の例示的な実施形態
いくつかの追加の例示的な実施形態に関する記述を、以下に示す。記述される実施形態は、本発明の材料および方法の例示を目的とするものであり、その範囲を限定するものではない。
【0152】
改質脂肪種子材料は、少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質および少なくとも約200kDaのMW50を有するものを、形成することができる。改質脂肪種子材料は、1つまたは複数の追加の基準を、さらに満たすことができる。
【0153】
改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.50Nのゲル破壊強さと、約70mm以下のESIとを有してもよい。改質脂肪種子材料は、さらに、約11.00%以下の固形分プロフィルを有することができる。
【0154】
改質脂肪種子材料は、少なくとも約80のNSI;全タンパク質のパーセンテージとして少なくとも約1.4%のシステイン;少なくとも約85のGardner L値;および実質的に淡白な味を有してもよい。
【0155】
別の例は、改質脂肪種子材料が、少なくとも約0.30Nsm-2の分散体粘度と、加熱および冷却サイクル後の少なくとも約0.50Nsm-2の最終粘度(11%の固形分で)とを有することができることである。さらに、改質脂肪種子材料は、2%のNaClの存在下、加熱および冷却サイクル後に少なくとも約0.45Nsm-2の最終粘度(11%の固形分で)を有することができる。
【0156】
有用な基準の追加の例では、改質脂肪種子材料が、少なくとも約85の乾燥Gardner L値を有してもよい。さらに、改質脂肪種子材料は、少なくとも約80のNSIを有することができる。
【0157】
別の例は、改質脂肪種子材料が、全タンパク質のパーセンテージとして少なくとも約1.4%のシステインを含むことができることである。さらに、改質脂肪種子材料は、ナトリウムイオンと、ナトリウム、カルシウム、およびカリウムイオンの総量との比が、約0.5以下でよい。
【0158】
追加の例では、改質脂肪種子材料が、約7000mg/kg(dsb)以下のナトリムイオンを有することができる。改質脂肪種子材料は、実質的に淡白な味を有してもよい。さらに、改質脂肪種子材料は、改質大豆材料を含むことができる。
【0159】
改質脂肪種子材料は、約0.5〜25wt%(dsb)で食品に含めることができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含んでもよい。さらに、改質脂肪種子材料は、約50,000cfu/g以下の細菌負荷を有することができる。
【0160】
少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を有する改質脂肪種子材料を形成することができ、改質脂肪種子材料中のタンパク質の少なくとも約40wt%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有することができる。改質脂肪種子材料は、さらに、1つまたは複数の追加の基準を満たすことができる。
【0161】
改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.60Nのゲル破壊強さと、約60mm以下のESIとを有してもよい。改質脂肪種子材料は、さらに、約11.00%以下の固形分%を有することができる。
【0162】
改質脂肪種子材料は、少なくとも約80のNSI;全タンパク質のパーセンテージとして少なくとも約1.4%のシステイン;および少なくとも約85のGardner L値を有してもよい。
【0163】
別の例は、改質脂肪種子材料が、少なくとも約0.40Nsm-2の分散体粘度(11%の固形分で)と、加熱および冷却サイクル後の少なくとも約0.60Nsm-2の最終粘度(11%の固形分で)とを有することができることである。さらに、改質脂肪種子材料は、2%のNaClの存在下、加熱および冷却サイクル後に少なくとも約0.46Nsm-2の最終粘度(11%の固形分で)を有することができる。
【0164】
有用な基準の追加の例は、改質脂肪種子材料が、少なくとも約85の乾燥Gardner L値を有してもよいことである。さらに、改質脂肪種子材料は、少なくとも約80のNSIを有することができる。
【0165】
追加の例は、改質脂肪種子材料が、約7000mg/kg(dsb)以下のナトリウムイオンを有することができることである。改質脂肪種子材料は、実質的に淡白な味を有してもよい。さらに、改質脂肪種子材料は、改質大豆材料を含むことができる。
【0166】
追加の例は、改質脂肪種子材料の10mgサンプル中のタンパク質の、少なくとも約50%が、25℃の水1.0mLに溶解できることである。
【0167】
適切な改質脂肪種子材料は、改質脂肪種子材料の10mgサンプル中のタンパク質の少なくとも約60%が、やはり25℃の水1.0mLに溶解可能であるという、追加の特徴を有することができる。より適切な場合、改質脂肪種子材料の510mgサンプル中のタンパク質の、少なくとも約70%は、やはり25℃の水1.0mL中に溶解することができる。
【0168】
改質脂肪種子材料は、約0.5〜25wt%(dsb)で食品に含めることができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含んでもよい。さらに、改質脂肪種子材料は、約50,000cfu/g以下の細菌負荷を有することができる。
【0169】
別の例は、改質脂肪種子材料が、少なくとも約0.50Nsm-2の粘度(12.5%の固形分で)を有することができることである。さらに、改質脂肪種子材料は、少なくとも約400kDaのMW50を有することができる。
【0170】
改質脂肪種子材料は、約0.1〜10wt%で食品に含めることができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含んでもよい。さらに、改質脂肪種子材料は、約50,000cfu/g以下の細菌負荷を有することができる。
【0171】
少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を有する改質脂肪種子材料を形成することができ、改質脂肪種子材料中のタンパク質の少なくとも約40wt%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有することができる。改質脂肪種子材料は、さらに、少なくとも約200kDaのMW50、約0.50Nのゲル破壊強さ、および少なくとも約0.40Nsm-2の分散体粘度を有することができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含むことができる。さらに、改質脂肪種子材料は、改質大豆材料を含むことができる。
【0172】
少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を有する改質脂肪種子材料を形成することができ、改質脂肪種子材料中のタンパク質の少なくとも約40wt%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有することができる。改質脂肪種子材料は、さらに、少なくとも約200kDaのMW50と、少なくとも約0.50Nのゲル破壊強さを有することができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含むことができる。さらに、改質脂肪種子材料は、改質大豆材料を含むことができる。
【0173】
少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を有する改質大豆材料を形成することができ、改質脂肪種子材料中のタンパク質の少なくとも約40wt%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有することができる。改質脂肪種子材料は、さらに、少なくとも約200kDaのMW50と、少なくとも約0.60Nのゲル破壊強さを有することができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含むことができる。さらに、改質脂肪種子材料は、改質大豆材料を含むことができる。
【0174】
少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を有する改質脂肪種子材料を形成することができ、改質脂肪種子材料中のタンパク質の少なくとも約40wt%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有することができる。改質脂肪種子材料は、さらに、少なくとも約200kDaのMW50と、加熱および冷却サイクルの後の少なくとも約0.50Nsm-2の最終粘度とを有することができる。改質脂肪種子材料は、2%のNaClの存在下、加熱および冷却サイクルの後に、少なくとも約0.45Nsm-2の最終粘度を有してもよい。改質脂肪種子材料は、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含むことができる。さらに、改質脂肪種子材料は、改質大豆材料を含むことができる。
【0175】
少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を有する改質脂肪種子材料を形成することができ、改質脂肪種子材料中のタンパク質の少なくとも約40wt%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有することができる。改質脂肪種子材料は、さらに、少なくとも約200kDaのMW50と、少なくとも約70mmのESIとを有することができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含むことができる。さらに、改質脂肪種子材料は、改質大豆材料を含むことができる。
【0176】
少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を有する改質脂肪種子材料を形成することができ、改質脂肪種子材料中のタンパク質の少なくとも約40wt%は、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有することができる。改質脂肪種子材料は、さらに、少なくとも約200kDaのMW50と、約11.00%以下の固形分プロフィルとを有することができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含むことができる。さらに、改質脂肪種子材料は、改質大豆材料を含むことができる。
【0177】
改質脂肪種子材料は、アルカリ水溶液で脂肪種子材料を抽出して、脂肪種子抽出物中に粒状物質が懸濁している懸濁液を形成するステップと、この抽出物を、ミクロ孔膜を含む濾過システムに通して、透過水、およびタンパク質に富む濃縮水を生成するステップとを含むプロセスによって、形成することができる。ミクロ孔膜は、接触角が約30度以下である濾過表面を有することができる。
【0178】
改質脂肪種子材料は、pHが7.5〜10.0の水溶液により20℃〜60℃で脂肪種子材料を抽出して、粒状物質がアルカリ抽出溶液に混合している混合物を形成するステップと、この混合物から粒状物質の少なくとも一部を除去して、清澄な抽出物を形成するステップと、この清澄な抽出物を、55℃〜60℃で濾過システムに通して、透過水、およびタンパク質に富む濃縮水を生成するステップとを含むプロセスによって、形成してもよい。濾過システムは、ミクロ孔変性ポリアクリロニトリル膜を含むことができる。ミクロ孔変性ポリアクリロニトリル膜は、25,000〜500,000のMWCOと、接触角が約30度以下の濾過表面とを有することができる。
【0179】
抽出中の接触時間(すなわち、脂肪種子材料が水溶液に曝される時間)は、1時間未満であることが望ましいと考えられる。連続多段階プロセス(例えば、向流抽出)を使用する場合、見掛けの接触時間(すなわち、脂肪種子材料が水溶液に曝される平均時間)は、約1時間以下であることが有利と考えられる。
【0180】
この方法は、さらに、タンパク質に富む濃縮水を濾過システムに通してダイアフィルトレーションを行い、それによって、タンパク質含有ダイアフィルトレーション濃縮水を生成するステップを、含むことができる。ダイアフィルトレーション濃縮水は、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間、少なくとも約75℃に加熱することが有利と考えられる。
【0181】
本発明のタンパク質が補われた食品組成物は、典型的な場合に乾燥固形分ベースで少なくとも約85wt%、より望ましくは少なくとも約90wt%のタンパク質を含む改質脂肪種子材料を、含むことができる。
【0182】
食品組成物は、少なくとも約200kDaのMW50を有する改質脂肪種子材料を含むことができ、この場合、改質脂肪種子材料は、少なくとも約0.50Nのゲル破壊強さを有するものである。
【0183】
食品組成物は、少なくとも約200kDaのMW50と、少なくとも約0.50Nsm-2の粘度とを有する改質脂肪種子材料を含むことができる。
【0184】
食品組成物は、少なくとも約200kDaのMW50を有し、かつ約60mm以下のESIを有する改質脂肪種子材料を含むことができる。
【0185】
食品組成物は、改質脂肪種子材料中のタンパク質の少なくとも約40wt%が、少なくとも300kDaの見掛けの分子量と少なくとも約0.60Nのゲル破壊強さとを有する改質脂肪種子材料を含むことができる。
【0186】
食品組成物は、少なくとも200kDaのMW50と、加熱および冷却サイクル後に少なくとも約0.50Nsm-2の粘度とを有する改質脂肪種子材料を含むことができる。改質脂肪種子材料は、2%のNaClの存在下、加熱および冷却サイクルの後に少なくとも約0.45Nsm-2の最終粘度を有してもよい。
【0187】
食品組成物は、改質脂肪種子材料中のタンパク質の少なくとも約40wt%が、少なくとも300kDaの見掛けの分子量と;少なくとも約0.50Nのゲル破壊強さと;約60mm以下のESIと;少なくとも約0.40Nsm-2の粘度とを有する改質脂肪種子材料を、含むことができる。
【0188】
食品組成物は、50,000cfu/g以下の細菌負荷を有する改質脂肪種子材料を含むことができる。
【0189】
食品組成物は、(a)アルカリ水溶液で脂肪種子材料を抽出して、粒状物質が脂肪種子抽出物中に懸濁している懸濁液を形成するステップと、(b)この抽出物を、ミクロ孔膜を含む濾過システムに通して、透過水、およびタンパク質に富む濃縮水を生成するステップとを含むプロセスによって生成された、改質脂肪種子材料を含むことができる。ミクロ孔膜は、一般に、接触角が30度以下である濾過表面を有する。
【0190】
食品組成物は、肉と、水と、一般に乾燥固形分ベースで少なくとも約90wt%のタンパク質を含む改質大豆材料とを含んだ食肉加工品を含むことができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約400kDaのMW50と、少なくとも約0.50Nのゲル破壊強さとを有することができる。
【0191】
食品組成物は、野菜ベースの材料(例えば、押し出された植物性タンパク質およびデンプン)と、水と、一般に乾燥固形分ベースで少なくとも約90wt%のタンパク質を含む改質脂肪種子材料とを含んだ肉類似品を含むことができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約400kDaのMW50と、少なくとも約0.50Nのゲル破壊強さとを有することができる。
【0192】
食品組成物は、乳成分ベースの材料(例えば、チーズまたは乳脂肪)と、水と、一般に乾燥固形分ベースで少なくとも約90wt%のタンパク質を含む改質脂肪種子材料とを含んだソースを含むことができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約400kDaのMW50と、少なくとも約0.50Nのゲル破壊強さとを有することができる。
【0193】
食品組成物は、ドレッシング(例えば、マヨネーズ状のドレッシング)にすることができ、油と、水と、一般に乾燥固形分ベースで少なくとも約90wt%のタンパク質を含む改質大豆材料とを含むことができる。改質脂肪種子材料は、少なくとも約400kDaのMW50と、少なくとも約0.50Nのゲル破壊強さとを有することができる。
【0194】
改質脂肪種子材料を生成するための方法は、脂肪種子材料を水溶液で抽出して、粒状物質が脂肪種子抽出物に懸濁している懸濁液を形成するステップと、この抽出物を、ミクロ孔膜を含む濾過システムに通して、第1の透過水、およびタンパク質に富む濃縮水を生成するステップとを含むことができ、この場合、ミクロ孔膜は、接触角が30度以下である濾過表面を有するものである。改質脂肪種子材料を生成するための方法は、約7.0〜7.8のpHで実施されるUHT処理および乾燥手順を含んでもよい。
【0195】
適切な実施形態では、改質脂肪種子材料を生成するための方法が、約7.1〜7.7のpHで実施されるUHT処理を含むことができる。
【0196】
より適切な場合、改質脂肪種子材料を生成するための方法は、約7.2〜7.4のpHで実施されるUHT処理を含むことができる。
【0197】
適切な実施形態では、ミクロ孔膜が、1.5μ以下の孔径を有することができる。
【0198】
別の適切な実施形態では、清澄な抽出物を、50psig以下の膜間圧力の下で濾過システムに通すことができる。
【0199】
別の適切な実施形態では、第1の透過水を、逆浸透膜によりRO濃縮水とRO透過水とに分離することができる。
【0200】
別の適切な実施形態では、抽出物を、55℃〜60℃で濾過システムに通すことができる。
【0201】
別の適切な実施形態では、タンパク質に富む濃縮水を濾過システムに通してダイアフィルトレーションを行い、それによってダイアフィルトレーション濃縮水およびダイアフィルトレーション透過水を生成する。
【0202】
特に適切な実施形態では、第1の透過水とダイアフィルトレーション透過水とを一緒にして混合透過水を形成することができ、この混合透過水は、逆浸透膜によって、RO濃縮水とRO透過水とに分離することができる。
【0203】
別の適切な実施形態では、タンパク質に富む濃縮水のダイアフィルトレーションが、このタンパク質に富む濃縮水を、RO透過水を含む水性希釈剤で希釈するステップを含む。
【0204】
別の適切な実施形態では、脂肪種子材料を抽出するために、RO透過水を水溶液中に再循環させることができる。
【0205】
別の適切な実施形態では、脂肪種子材料をアルカリ水溶液で抽出して、懸濁液を形成することができる。
【0206】
別の適切な実施形態では、アルカリ水溶液が、約6.5〜10.0のpHを有する。
【0207】
別の適切な実施形態では、抽出物を濾過システムに通すステップが、1回目として当初の体積の抽出物を濾過システムに通すと同時に、当初の体積が実質的に維持されるように供給タンク内の抽出物に水を添加するステップと、2回目として抽出物を濾過システムに通すと同時に、濃縮水を当初の体積に対して少なくとも2.5倍に濃縮させるステップとを含む。
【0208】
別の適切な実施形態では、濃縮水を、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間、約7.0〜7.8のpHで加熱することができる。
【0209】
別の適切な実施形態では、濃縮水を、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間、約7.1〜7.7のpHで加熱することができる。より適切な場合、濃縮水は、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間、約7.2〜7.4のpHで加熱することができる。
【0210】
別の適切な実施形態では、濃縮水を、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間、少なくとも約200°F〜250°Fに加熱することができる。
【0211】
別の適切な実施形態では、濃縮水を、約210°F〜240°Fに加熱することができる。
【0212】
さらに別の適切な実施形態では、濃縮水を約2〜30秒間加熱して、殺菌された濃縮水を形成することができる。
【0213】
さらに別の適切な実施形態では、濃縮水を約5〜20秒間加熱して、殺菌された濃縮水を形成することができる。
【0214】
別の適切な実施形態では、殺菌された濃縮水を乾燥することができる。
【0215】
脂肪種子タンパク質生成物を生成するための方法は、脂肪種子材料をアルカリ水溶液で抽出して、粒状物質が脂肪種子抽出物中に懸濁されたアルカリ懸濁液を形成するステップと、抽出物を、ミクロ孔膜を含む濾過システムに通して、第1の透過水およびタンパク質に富む濃縮水を生成するステップと、前記タンパク質に富む濃縮水を、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間、約7.0〜7.8のpHで加熱するステップと、殺菌された濃縮水を乾燥するステップとを含むことができる。
【0216】
別の適切な実施形態では、タンパク質に富む濃縮水を、約220°F以下の温度に加熱する。
【0217】
別の適切な実施形態では、殺菌した濃縮水を、約7.0〜7.8のpHで乾燥する。
【0218】
別の適切な実施形態では、タンパク質に富む濃縮水を、約7.1〜7.7のpHで殺菌する。
【0219】
別の適切な実施形態では、殺菌した濃縮水を、約7.1〜7.7のpHで乾燥する。
【0220】
別の適切な実施形態では、タンパク質に富む濃縮水を、約7.2〜7.4のpHで殺菌する。
【0221】
別の適切な実施形態では、殺菌した濃縮水を、約7.2〜7.4のpHで乾燥する。
【0222】
別の適切な実施形態では、タンパク質に富む濃縮水を、約7.3のpHで殺菌する。
【0223】
別の適切な実施形態では、殺菌した濃縮水を、約7.3のpHで乾燥する。
【0224】
別の適切な実施形態では、ミクロ孔膜が、30度以下の接触角を有する濾過表面を有する。
【0225】
別の適切な実施形態では、ミクロ孔膜が、40度以下の接触角を有する濾過表面を有する。
【0226】
本発明を、様々な、特定のかつ例示的な、実施形態および技法に関して述べてきた。しかし、本発明の精神および範囲を超えることなく、多くの変更および修正を加えることができることを理解すべきである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を含む改質脂肪種子材料であって、少なくとも0.50Nのゲル破壊強さを有し、前記タンパク質の少なくとも約40wt%が300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有する、改質脂肪種子材料。
【請求項2】
少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を含む改質脂肪種子材料であって、少なくとも約200kDaのMW50を有し、少なくとも約0.5Nsm-2の分散体粘度を有する、改質脂肪種子材料。
【請求項3】
少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を含む改質脂肪種子材料であって、少なくとも約200kDaのMW50を有し、約70mm以下のESIを有する、改質脂肪種子材料。
【請求項4】
少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を含む改質脂肪種子材料であって、少なくとも約200kDaのMW50、および少なくとも0.50Nのゲル破壊強さを有する改質脂肪種子材料。
【請求項5】
少なくとも0.60Nのゲル破壊強さを有する、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項6】
少なくとも約0.4Nsm-2の分散体粘度を有する、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項7】
前記改質脂肪種子材料が、約60mm以下のESIを有する、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項8】
前記改質脂肪種子材料が、少なくとも80のNSIを有する、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項9】
前記タンパク質の少なくとも約40wt%が、300kDaよりも大きい見掛けの分子量を有する、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項10】
前記改質脂肪種子材料が、50,000cfu/g以下の細菌負荷を有する、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項11】
約500ppb以下のベンズアルデヒド、約2500ppb以下の2-ペンチルフラン、約600ppb以下の2-ヘプタノン、および約200ppb以下のE,E-2,4-デカジエナールを含んだ香味成分を含む、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項12】
約350ppb以下のベンズアルデヒド、約450ppb以下の2-ヘプタノン、約150ppb以下のE,E-2,4-デカジエナール、および約50ppb以下のE,E-2,4-ノナジエナールを含んだ香味成分を含む、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項13】
前記改質脂肪種子材料が、改質大豆材料を含む、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項14】
前記改質脂肪種子材料が、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含む、請求項4に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項15】
(1) 脂肪種子材料を水溶液で抽出して、脂肪種子抽出物を形成するステップと、
(2) 前記抽出物を、ミクロ孔膜を含む濾過システムに通して、第1の透過水およびタンパク質に富む濃縮水を生成するステップと、
(3) 前記濃縮水を、約7.1〜7.8のpHで、殺菌された改質脂肪種子材料を形成するのに十分な時間にわたり約200〜250°Fの温度に加熱するステップと
を含む、改質脂肪種子材料の製造方法。
【請求項16】
前記殺菌した改質脂肪種子材料を乾燥するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記殺菌した改質脂肪種子材料を乾燥するステップが、約7.0〜8.0のpHを有する殺菌した改質脂肪種子材料を乾燥することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記濃縮水を加熱するステップが、前記濃縮水を約7.2〜7.5のpHで加熱することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記濃縮水を加熱するステップが、前記濃縮水を約2〜30秒間加熱することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
水溶液で脂肪種子材料を抽出して、脂肪種子抽出物を形成するステップと、前記抽出物を、ミクロ孔膜を含む濾過システムに通して、透過水およびタンパク質に富む濃縮水を生成するステップと、前記タンパク質に富む濃縮水を、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間にわたり、約7.1〜7.8のpHで約200〜250°Fの温度に加熱するステップと、前記殺菌された濃縮水を噴霧乾燥するステップとを含む方法によって製造された、改質脂肪種子材料。
【請求項21】
水溶液で脂肪種子材料を抽出して、脂肪種子抽出物に粒状物質が懸濁した懸濁液を形成するステップと、
前記抽出物を、ミクロ孔膜を含む濾過システムに通して、第1の透過水およびタンパク質に富む濃縮水を生成するステップであって、前記ミクロ孔膜が、少なくとも25,000のMWCOと、30度以下の接触角を有する濾過表面とを有するものであるステップと、
前記タンパク質に富む濃縮水を、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間にわたり、約7.1〜7.8のpHで加熱するステップと、
前記殺菌された濃縮水を乾燥して、改質脂肪種子材料を形成するステップと
を含む、改質脂肪種子材料の製造方法。
【請求項22】
前記タンパク質に富む濃縮水を濾過システムに通してダイアフィルトレーションを行って、ダイアフィルトレーション濃縮水およびダイアフィルトレーション透過水を生成するステップであって、前記ダイアフィルトレーション濃縮水が、タンパク質に富む溶解固形分を含むものであるステップと、
前記第1の透過水と前記ダイアフィルトレーション透過水とを一緒にして、混合透過水を形成するステップと、
前記混合透過水を、逆浸透膜によりRO濃縮水およびRO透過水に分離するステップと
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質に富む濃縮水を加熱するステップが、約200〜250°Fに加熱するものである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記殺菌された濃縮水を乾燥するステップが、約7.1〜7.8のpHを有する殺菌された濃縮水を乾燥することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記タンパク質に富む濃縮水を加熱するステップが、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間、約7.2〜7.5のpHで、前記タンパク質に富む濃縮水を加熱することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記殺菌された濃縮水を乾燥するステップが、約7.2〜7.5のpHを有する殺菌された濃縮水を乾燥することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質に富む濃縮水が、少なくとも約85wt%(dsb)のタンパク質を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質に富む濃縮水が、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記抽出物を、50psig以下の膜間圧力下で濾過システムに通すステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記抽出物を、50℃〜65℃で濾過システムに通すステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記脂肪種子材料を抽出するステップが、前記脂肪種子材料と、約6.5〜10.0のpHを有するアルカリ水溶液とを接触させることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記アルカリ水溶液が、約7.0〜8.5のpHを有する、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記ミクロ孔膜が、約25,000〜500,000のMWCOを有する限外濾過膜である、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記抽出操作が、見掛けの接触時間が20分以下である連続プロセスである、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記脂肪種子材料が、脱脂大豆由来の脂肪種子材料を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
前記脂肪種子材料が、大豆白色フレークを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
脂肪種子材料を、20℃〜60℃でアルカリ水溶液により抽出して、抽出物溶液に粒状物質が混合した混合物を形成するステップと、
前記粒状物質の少なくとも一部を前記混合物から除去して、少なくとも5wt%の溶解固形分含量を有する清澄な抽出物を形成するステップと、
200°F〜250°Fの前記清澄な抽出物を、微孔質の改質ポリアクリロニトリル膜を含む濾過システムに通して、透過水およびタンパク質に富む濃縮水を生成するステップと、
前記タンパク質に富む濃縮水を、殺菌された濃縮水を形成するのに十分な時間にわたり、約7.1〜7.8のpHで、少なくとも200°Fに加熱するステップと、
前記殺菌された濃縮水を、約7.1〜7.8のpHで噴霧乾燥して、約10wt%以下の含水量を有する乾燥された改質脂肪種子材料を形成するステップと
を含む、改質脂肪種子材料を生成するための方法。
【請求項38】
前記微孔質の改質ポリアクリロニトリル膜が、25,000〜500,000のMWCOと、30度以下の接触角を有する濾過表面とを有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記タンパク質に富む濃縮水が、少なくとも約70wt%(dsb)のタンパク質を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質に富む濃縮水が、少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
改質脂肪種子材料を含む食品組成物であって、前記改質脂肪種子材料が、乾燥固形分ベースで少なくとも85wt%のタンパク質を含み、前記タンパク質の少なくとも約40wt%が、少なくとも300kDaの見掛けの分子量を有し、前記改質脂肪種子材料が、少なくとも0.50Nのゲル破壊強さを有するものである食品組成物。
【請求項42】
前記食品組成物が、加工肉組成物である、請求項41に記載の食品組成物。
【請求項43】
前記食品組成物が、加工肉類似品である、請求項41に記載の食品組成物。
【請求項44】
前記食品組成物が、ソース、スープ、またはドレッシングである、請求項41に記載の食品組成物。
【請求項45】
少なくとも約90wt%(dsb)のタンパク質を含む、改質脂肪種子材料であって、少なくとも約200kDaのMW50を有し、少なくとも0.50Nのゲル破壊強さを有し、少なくとも80のNSIを有し、約60mm以下のESIを有している、改質脂肪種子材料。
【請求項46】
前記改質脂肪種子材料の含水量が、約10wt%以下であり、約200ミクロン以下の平均粒径を有する、請求項45に記載の改質脂肪種子材料。
【請求項47】
約50〜150ミクロンの平均粒径を有する、請求項46に記載の改質脂肪種子材料。


【公表番号】特表2007−513612(P2007−513612A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541672(P2006−541672)
【出願日】平成16年11月23日(2004.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/039393
【国際公開番号】WO2005/054414
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】