説明

高フルオロ飽和比を有するエレクトレット物品

エレクトレット物品は、それに付与された帯電と、少なくとも約0.15のCF:CF比と、約200を超えるフルオロ飽和比とを有する高分子材料を備える。エレクトレット物品は、フィルターとしての使用に好適な高分子繊維の多孔質ウェブの形態であってよい。発明のエレクトレット物品は、高温長時間曝露の帯電劣化に対して耐性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも0.15のCF:CF比を有し、及び約200を超えるフルオロ飽和比を有するポリマーエレクトレット物品に関する。本発明のエレクトレット物品は、長時間の高温曝露時の帯電劣化に対して耐性がある。
【背景技術】
【0002】
エレクトレット物品(すなわち、少なくとも準恒久的な帯電を示す誘電体)は、良好な濾過性を示すことが知られている。物品は、多様な構造に形成されているが、空気濾過目的の場合、物品は、通常不繊布ポリマー繊維ウェブの形態をとる。そのような製品の例は、3M社(the 3M Company)により販売されたフィルトレット(Filtrete)(商標)ブランドのファーネスフィルターである。又、不繊布ポリマーエレクトレットフィルターは、個人用呼吸保護装置に使用されている。例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3を参照のこと。
【0003】
種々の方法が、エレクトレットを作製するために使用されており、それらには、繊維/電気粒子衝撃(クビック(Kubik)らに対する特許文献4)、直流「DC」コロナ帯電(ファン・タンホウ(van Turnhout)に対する特許文献5及び特許文献6、並びにナカオ(Nakao)に対する特許文献7を参照のこと)、ハイドロチャージ(アンガジバンド(Angadjivand)らに対する特許文献8、特許文献9、特許文献10及び特許文献11、エイツマン(Eitzman)らに対する特許文献12、並びにインスレイ(Insley)らに対する特許文献13を参照のこと)、及び極性液体への曝露(エイツマン(Eitzman)らに対する特許文献14)が挙げられる。誘電体物品に付与される帯電は、粒子捕捉の向上に有効である。
【0004】
繊維性構造体に加え、ミクロ構造化又はマイクロチャネル化濾材は、電気的に帯電され、濾過性を改善している(例えば、インスレイ(Insley)らに対する特許文献15を参照のこと)。
【0005】
使用時、エレクトレットフィルターは、しばしばエレクトレットフィルターのフィルター性能を妨げる粒子及び汚染物質の負荷がかけられている。例えば、液体エアゾール、特に油性エアゾールは、エレクトレットフィルターがエレクトレット強化フィルター効率を失う原因となる(フバティ(Huberty)に対する特許文献16を参照のこと)。
【特許文献1】米国特許第5,307,796号明細書(クロンザー(Kronzer)ら)
【特許文献2】米国特許第5,804,295号明細書(ブラウン(Braun)ら)
【特許文献3】米国特許第6,216,693号明細書(レコウ(Rekow)ら)
【特許文献4】米国特許第4,215,682号明細書
【特許文献5】米国特許第Re.30,782号明細書
【特許文献6】米国特許第Re.32,171号明細書
【特許文献7】米国特許第4,592,815号明細書
【特許文献8】米国特許第5,496,507号明細書
【特許文献9】米国特許第6,119,691号明細書
【特許文献10】米国特許第6,375,886号明細書
【特許文献11】米国特許第6,783,574号明細書
【特許文献12】米国特許第6,406,657号明細書
【特許文献13】米国特許第6,743,464号明細書
【特許文献14】米国特許第6,454,986号明細書
【特許文献15】米国特許第6,524,488号明細書
【特許文献16】米国特許第6,627,563号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このフィルター効率損失に対処するため多くの方法が開発されている。1つの方法としては、フィルターに不繊布ポリマーウェブの追加の層を加えることが挙げられる。しかし、この取組みは、エレクトレットフィルターに対する圧力低下を増し、その重量と嵩を増加するおそれがある。エレクトレットフィルターが個人用呼吸保護装置に使用される場合、これらの欠点が、特に障害になるおそれがある。例えば、圧力低下が大きいと呼吸抵抗が増え、呼吸用マスクの着用をより不快にする。油性ミストエアゾールに対する耐性を改善する他の方法としては、ポリマー繊維性物品作製時にフッ素性化学物質オキサゾリジノン、フッ素性化学物質ピペラジン又はペルフッ素化アルカン等の融解処理が可能なフッ素性化学物質添加剤をポリマーに加えることが挙げられる。例えば、クレータ(Crater)らに対する米国特許第5,025,052号及び同第5,099,026号、並びにジョーンズ(Jones)らに対する米国特許第5,411,576号及び同第5,472,481号を参照のこと。フッ素性化学物質は、融解処理が可能である、すなわち、フッ素性化学物質は、融解処理条件下で実質的に分解されず、エレクトレットウェブの繊維を形成するために使用される。ローソウ(Rousseau)らに対する米国特許第5,908,598号も参照のこと。又、融解処理法に加え、フッ素化エレクトレットは、ポリマー物品をフッ素含有化学種及び不活性ガスを含む雰囲気中に置き、次に電気的に放電し、ポリマー物品の表面化学を変えることにより作製されている。電気放電は、ACコロナ放電等のプラズマの形態であってよい。プラズマフッ素化法は、フッ素原子をポリマー物品の表面に存在させる。フッ素化ポリマー物品は、例えば上記のハイドロチャージ技術を使用し電気的に帯電されてよい。プラズマフッ素化法は、ジョーンズ/リオンズ(Jones/Lyons)らに対する幾つかの米国特許第6,397,458号、同第6,398,847号、同第6,409,806号、同第6,432,175号、同第6,562,112号、同第6,660,210号及び同第6,808,551号に記載されている。フッ素化技術を開示するその他の文献としては、米国特許第6,419,871号、同第6,238、466号、同第6,214,094号、同第6,213,122号、同第5,908,598号、同第4,557,945号、同第4,508,781号及び同第4,264,750号、米国公報第2003/0134515 A1号及び同第2002/0174869 A1号、並びにPCT国際公開公報WO 01/07144が挙げられる。
【0007】
フッ素化エレクトレットは、多くの濾過アプリケーションに好適であるが、一部のフィルターは製品規格、例えば軍の仕様及びNIOSHの要求に適合するため熱安定性の向上を必要とする。NIOSH、化学、生物、放射線物質及び原子核(CBRN)汚染空気浄化分離呼吸装置に関する標準の声明(Statement of Standard for Chemical, Biological, Radiological, and Nuclear (CBRN) Air-Purifying Escape Respirator)、添付書類A、2003年9月30日、及びNIOSH、化学、生物、放射線物質及び原子核(CBRN)汚染フルフェース空気浄化呼吸装置(APR)に関する標準の声明(Statement of Standard for Chemical, Biological, Radiological, and Nuclear (CBRN) Full Facepiece Air Purifying Respirator (APR))、付録A、2003年4月4日を参照のこと。アプリケーションは、エレクトレット濾材が高温長時間の帯電劣化に対して耐性でなければならない場合に存在する。以下に記載した本発明は、この必要性に取組み、それによって長時間高温に曝露されているにもかかわらず良好な油性ミスト濾過性を有するエレクトレット物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、新規なフッ素化ポリマー物品を提供し、前記物品は、それに付与された帯電と、少なくとも約0.15のCFとCFの比率と、約200を超えるフルオロ飽和比とを有するポリマー材料を備える。本発明は、これまで記載されていない又はポリマーエレクトレット物品技術分野において認知されていないCFとCFの組み合わせ及びフルオロ飽和比を有する点で既知のフッ素化エレクトレット物品と異なる。本発明者らは、前記比率を有するポリマーエレクトレット物品が、ストレスの多い熱的条件下で改良された濾過性を示し得ることを発見した。上記したジョーンズ/リオンズ(Jones/Lyons)らの特許に記載されたエレクトレット物品において、CF:CF比は、少なくとも約0.25、好ましくは少なくとも約0.45、より好ましくは0.9を超えると記載されている。しかしながら、ジョーンズ/リオンズ(Jones/Lyons)らの特許は、フルオロ飽和比、及び帯電安定性に関して前記比率が有し得る効果について少しも言及していない。テトラフルオロエチレン/六フッ化プロピレンコポリマー(フッ素化エチレンプロピレン又は「FEP」としても既知)、及びポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)は、例えばエレクトレット物品として変換器に使用されている。G.M.セスラー(G.M. Sessler)のエレクトレッツ(Electrets)、第1巻374〜381頁(1998年)を参照のこと。FEPは、幾つかのCF構成成分―CFの量に対しておおよそ0.11であると測定された―を有しているが、PTFEは、無視できる程度に僅かな量のCFしか有していない。従って、この発明のCF:CF比及びフルオロ飽和比を有するこれまでに製造された製品は、知られておらず、また前記比率を有し、本発明の熱安定性を示す既知のエレクトレット製品は1つもない。
【0009】
エレクトレット物品のフィルター性能は、通常当該技術分野において「品質因子」又は「Q値」と呼ばれるパラメーターを使用することを特徴とする。Q値は、濾過性能を粒子貫通と圧力低下パラメーターの調和とみなしている。上に示したように、一部のフィルターは、濾過製品規格に適合するために向上した熱安定性を必要とする。アプリケーションは、エレクトレット濾材が、高温で帯電劣化に対して耐性でなければならない場合に存在する。出願人は、促進高温エージング曝露後発明のエレクトレット物品を試験する際、並はずれた品質要因データが保持され得ることを実証する。具体的には、出願人は、並はずれた品質要因データが、100℃で9時間のエージング後達成され得ることを示している。この試験の結果得られるQ値は、「Q9」と呼ばれる。本発明者らは、約200を超えるフルオロ飽和比を含む少なくとも0.15のCFとCFの比率を有するエレクトレット物品を提供することにより、熱安定性の増加―Q9値により測定された―が、達成され得ることを発見した。従って、発明のエレクトレット物品は、高温で長時間「エージングされた」にもかかわらず良好な濾過効率を保持できる。
【0010】
本発明のこれら及びその他の特徴又は利点は、この発明の図面及び詳細な記載においてより十分に示され、説明される、ここで、同様の参照数字は、類似の部分を示すために使用される。しかしながら、図面及び記載は、説明だけのためであり、この発明の範囲を不必要に限定する意味に読み取られるべきでないことはいうまでもない。
【0011】
用語解説
以下に詳述された用語は、定義された意味を有することになる。
【0012】
「エアゾール」とは、固体又は液体形態の懸濁粒子を含有するガスを意味する。
【0013】
「フッ素原子%」とは、X−線光電子分光法(XPS)を使用し、フッ素の表面濃度を測定する方法により決定されるフッ素量を意味する。
【0014】
「汚染物質」とは、一般に粒子であることを考慮しなくてよいが、吸うと有害であるおそれのある粒子及び/又はその他の物質を意味する(例えば、有機体の蒸気)。
【0015】
「誘電体」とは、直流電流に対して非導電性であることを意味する。
【0016】
「エレクトレット」とは、少なくとも準恒久的な帯電を示す誘電体を意味する。
【0017】
「帯電」とは、電荷分離があることを意味する。
【0018】
「繊維性」とは、繊維及びおそらくはその他の成分を所有することを意味する。
【0019】
「繊維性エレクトレットウェブ」は、繊維を含有し、少なくとも準恒久的な帯電を所有する織布又は不織布ウェブを指す。
【0020】
「フッ素化する」とは、フッ素原子を物品の表面に配置することを意味する。
【0021】
「フッ素含有化学種」とは、例えばフッ素原子、元素フッ素及びラジカルを含有するフッ素を含むフッ素原子を包含する分子並びに部分を意味する。
【0022】
「非導電性」とは、室温(22℃)で約1014Ω・cmを超える体積抵抗率を所有することを意味する。
【0023】
「不繊布」とは、繊維又はその他の構造体構成成分が、織る以外の手段で一緒に保持される構造の構造体又は部分を意味する。
【0024】
「持続的な帯電」とは、エレクトレット物品が使用される製品の少なくとも一般に許容できる耐用年数の間、帯電がエレクトレット物品内に存在することを意味する。
【0025】
「ポリマー」とは、規則的又は不規則に配列される繰り返し結合分子単位又は基を含有する有機材料を意味する。
【0026】
「ポリマーの」とは、ポリマー及びおそらくはその他の成分を含有することを意味する。
【0027】
「ポリマー繊維形成材料」とは、ポリマーを含有し又はポリマーを製造できるモノマーを含有し、おそらくはその他の成分を含有し、及び固体繊維に形成され得る組成物を意味する。
【0028】
「準恒久的」とは、帯電が、有意に測定可能な十分に長い時間、(22℃、101,300パスカル(Pa)気圧及び湿度50%)周囲大気条件下で物品内に存在することを意味する。
【0029】
「短繊維」とは、一般に画定した長さ、典型的に約2cm〜約25cmに切断され、典型的に少なくとも15マイクロメートルの繊維直径を有する繊維を指す。
【0030】
「表面フッ素化」とは、表面(例えば、ポリマー物品の表面)にフッ素原子が存在することを意味する。
【0031】
「表面変性された」とは、表面での化学構造が、その元の状態から変更されていることを意味する。
【0032】
「熱可塑性」とは、感知されるほどの化学的な変化を受けることなく、熱に曝露されると柔らかくなり、冷却すると再び固くなる高分子材料を意味する。
【0033】
「ウェブ」とは、2つの寸法が3番目の寸法より有意に大きく、空気透過性である構造体を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
記載した好ましい本発明の実施形態において、明瞭性のため特殊な用語が使用される。しかしながら、本発明は、そのようにして選択された特殊な用語に限定されることを意図していない、そのようにして選択された各用語は、同様に作用する全ての技術的な等価物を含むことはいうまでもない。
【0035】
この発明に使用される好適なウェブは、種々の技術で作製されてよく、それらには、エアレイド法、湿式載置法、水流交絡法、スパンボンド法、及びメルトブロウン法が挙げられる。ファンA.ウェント(Van A. Wente)、「超微細熱可塑性繊維(Superfine Thermoplastic Fibers)」、インダストリアル・エンジニアリング・ケミストリ(Indus. Engn. Chem.)、第48巻、1342〜46頁、及びナバル・リサーチ・ラボラトリーズ(the Naval Research Laboratories)のレポート第4364号、ファンA.ウェント(Van A. Wente)ら、表題「超微細有機繊維の製造(Manufacture of Super Fine Organic Fibers)」、1954年5月25日出版を参照のこと。これら技術の組み合わせを使用し及び前記繊維の組み合わせから作製されたウェブも使用されてよい。マイクロファイバー、特にメルトブロウンマイクロファイバーは、フィルターとして使用される繊維ウェブに特に好適に使用される。この明細書で使用されるとき、「マイクロファイバー」とは、約25マイクロメートル以下の有効直径を有する繊維(類)を意味する。有効繊維直径は、デイビス(Davies)、C.N.、「空中の塵及び粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)」、インスティチューション・オブ・メカニカルエンジニア(Inst. Mech. Engn.)ロンドン、議事録1B(1952年)の式No.12を使用して計算できる。フィルターアプリケーションの場合、マイクロファイバーは、典型的に20マイクロメートル未満、より典型的には約1〜約10マイクロメートルの有効繊維直径を有する。又、解繊フィルムから作製された繊維が使用されてよい。例えば、ファンターンアウト(Van Turnout)に対する米国特許第RE30,782号、同第RE32,171号、同第3,998,916号、及び同第4,178,157号を参照のこと。
【0036】
又、短繊維は、マイクロファイバーと組合され、ウェブロフトを改善できる、すなわち、その密度を減少できる。ウェブ密度の減少でウェブに対する圧力低下を小さくでき、空気はより容易にフィルターを通過できる。より小さい圧力低下が、個人用呼吸保護装置において特に望ましい、というのは、それらが、呼吸用マスクの着用をより快適にする。圧力低下が小さければ小さいほど、フィルターを通して空気を吸うために必要なエネルギーは少なくなる。負圧マスクを着用する呼吸用マスク着用者―それは、フィルターを通して空気を吸うために着用者の肺に負圧を必要とする呼吸用マスクである―は、従って、濾過空気を呼吸するため骨を折る必要がない。又、より小さいエネルギー消費は、動力フィルターシステムに有益であり、ファンを動力で動かすことに関連するコストを下げ、バッテリー動力システムのバッテリーの耐用年数を延長する。典型的な不繊布繊維性フィルターでは、約90重量%以下の短繊維が存在し、より典型的には約70重量%以下の短繊維が存在する。典型的に繊維の残部は、マイクロファイバーである。短繊維を含有するウェブの例が、ハウサー(Hauser)に対する米国特許第4,118,531号に開示されている。
【0037】
又、活性物質微粒子が、吸着目的、及び触媒作用の目的等を含む様々な目的のためエレクトレットウェブに含有されてよい。例えば、センカス(Senkus)らに対する米国特許第5,696,199号は、おそらく好適である種々の活性物質微粒子を記載している。吸着性を有する活性物質微粒子―活性炭又はアルミナ等―は、ウェブに含有され、濾過操作時有機体蒸気を除去できる。活性物質微粒子は、ウェブ内に約95容積%までの量で存在してよい。粒子の入った不織布ウェブの例が、例えば、ブラウン(Braun)に対する米国特許第3,971,373号、アンダーソン(Anderson)に対する米国特許第4,100,324号、及びコルピン(Kolpin)らに対する米国特許第4,429,001号に記載されている。
【0038】
エレクトレット物品の製造に使用されて好適であってよいポリマーとしては、熱可塑性有機非導電性ポリマーが挙げられる。一般に、これらのポリマーは、多量の捕捉帯電を保持でき、メルトブロウイング装置又はスパンボンディング装置等により繊維に処理できる。用語「有機」とは、ポリマー主鎖が炭素原子を含むことを意味する。好ましいポリマー類としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、これらのポリマー類の1つ以上を含有するブレンド類又はコポリマー類、及びこれらのポリマー類の組み合わせが挙げられる。その他のポリマー類としては、ポリエチレン、その他のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル類、ポリスチレン類、ポリカーボネート類、ポリエチレンテレフタレート、その他のポリエステル類、及びこれらのポリマー類の組み合わせが挙げられてよく、並びに所望により、他の非導電性ポリマー類が、高分子繊維形成材料として又はその他のエレクトレット物品を製造するため使用されてよい。
【0039】
又、ポリマーエレクトレット物品、特に繊維が、押し出され、ないしは別の方法で形成され複合ポリマー構成成分を有してよい。クルーガー(Krueger)及びダイラッド(Dyrud)に対する米国特許第4,729,371号、並びにクルーガー(Krueger)及びメイヤー(Meyer)に対する米国特許第4,795,668号及び同第4,547,420号を参照のこと。異なるポリマー構成成分が、繊維の長さに沿って同心円的に又は長手方向に配列され、例えば、2成分繊維を作製してよい。繊維は、配列され、「巨視的に均質な」ウェブ、すなわち、各々が同一の一般組成を有する繊維から作製されるウェブを形成してよい。
【0040】
繊維は、他の好適な添加剤と組合わせてこれらのポリマーから作製されてよい。可能な添加剤は、熱的に安定な有機トリアジン化合物又はオリゴマーであり、その化合物又はオリゴマーは、トリアジン環内のものに加え、少なくとも1つの窒素原子を含有する。ローソウ(Rousseau)らに対する米国特許第6,268,495号、同第5,976,208号、同第5,968,635号、同第5,919,847号、及び同第5,908,598号を参照のこと。水の噴射により帯電されたエレクトレットを向上することがわかっている他の添加剤は、チバガイギー社(Ciba-Geigy Corp.)から入手可能なキマソーブ(Chimassorb)(商標)944LF(ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]])である。
【0041】
本発明に使用される繊維は、濾過アプリケーションに好適な繊維性製品を製造するためアイオノマー―特に、エチレン及びアクリル酸、メタクリル酸又は両方の金属イオン中和コポリマー―を含有する必要はない。不繊布繊維性エレクトレットウェブは、金属イオンで部分的に中和された酸基を有する5〜25重量%の(メタ)アクリル酸を含有することなく上記ポリマーから好適に製造できる。
【0042】
添加剤を含有する繊維は、エレクトレット物品を作製するためポリマーと添加剤の加熱溶融ブレンドを成形後、―アニーリング及び帯電工程がこれに続いた―冷却されてよい。エレクトレットをこのように作製することにより、向上した濾過性能が、物品に付与されてよい。ローソウ(Rousseau)らに対する米国特許第6,068,799号を参照のこと。又、エレクトレット物品は、荷重を改善するため低レベルの抽出炭化水素(<3.0重量%)を有するよう作製されてよい。ローソウ(Rousseau)らに対する米国特許第6,776,951号を参照のこと。
【0043】
本発明によるエレクトレット物品を製造するために使用される高分子材料は、好ましくは室温で1014Ω・cm以上の体積抵抗率を有する。より好ましくは、体積抵抗率は、約1016Ω・cm以上である。高分子繊維形成材料の固有抵抗は、標準試験法ASTMD257〜93により測定されてよい。又、メルトブロー繊維等のエレクトレット物品を作製するために使用される高分子繊維形成材料は、帯電防止剤等の構成成分を実質的に無くする必要がある、というのは、帯電防止剤は、帯電を受け取り保持するため導電性を増加させ、ないしは別の方法でエレクトレット物品の性能を妨げる。
【0044】
呼吸用マスクフィルターのための不繊布ポリマー繊維ウェブを含むエレクトレットは、典型的に平方メートル当たり約2〜500グラム(g/m)、より典型的には約20〜150g/mの範囲の「坪量」を有する。坪量は、フィルターウェブ単位面積当たりの質量である。前記不繊布ポリマー繊維ウェブの厚さは、典型的に約0.25〜20ミリメートル(mm)、より好ましくは約0.5〜2mmである。通常、多層繊維性エレクトレットウェブは、フィルター要素に使用される。繊維性エレクトレットウェブのソリディティ(solidity)は、典型的には約1〜25、より典型的には約3〜10である。
【0045】
発明のエレクトレット物品は、フィルターマスクのフィルターとして使用されてよく、着用者の少なくとも鼻と口をカバーする。
【0046】
図1は、本発明により製造される電気的に帯電した不織布ウェブを含有するよう構成されてよいフィルターフェースマスク10の例を示す。概ねカップ形状の本体部分12は、着用者の鼻と口を覆って取り付けられる。本体部分12は、多孔質であり、そのため、吸入した空気は、本体部分12を通過できる。エレクトレット濾材は、マスク本体部分12内に配置され(典型的にほぼ全表面積にわたって)吸入した空気から汚染物質を除去する。快適な鼻クリップ13が、マスク本体に配置されてよく、着用者の鼻を覆ってきちんとした取り付けを保持する手助けをする。鼻クリップは、カスティグリオン(Castiglione)に対する米国特許第Des.412,573及び同第5,558,089号に記載されたような「M−形状」クリップであってよい。ストラップ又はハーネスシステム14が、マスク本体12を着用者の顔に支持するため備えられてよい。図1には、二重ストラップシステムを示しているが、ハーネス14は、ストラップ16を1つだけ使用してよく、様々なその他の形状であってよい。例えば、ジャプンティッチ(Japuntich)らに対する米国特許第4,827,924号、セパラ(Seppalla)らに対する米国特許第5,237,986号、及びバイラム(Byram)に対する米国特許第5,464,010号を参照のこと。マスク内部から吐出空気をすばやくパージするためマスク本体に吐出弁が装着されてよい。ジャプンティッチ(Japuntich)らに対する米国特許第5,325,892号、同第5,509,436号、同第6,843,248号及び同第6,854,463号、並びにボウワーズ(Bowers)に対する米国特許第RE37,974号も参照のこと。
【0047】
図2は、マスク本体12の断面図の例を示す。マスク本体12は、数字18,20及び22で示したように複数個の層を有してよい。エレクトレット濾材は、熱固着繊維から作製される形成層等、繊維が繊維交点で他の繊維に固着できる外側熱可塑性構成成分を有する2成分繊維等の他の層で支持されてよい。層18は、外側形成層、層20は、濾過層、層22は、内側形成層であってよい。形成層18及び22は、濾過層20を支持し、及びマスク本体12に形状を付与する。用語「形成層」が、この説明に使用されるが、形成層は、その他の機能も有する、そしてそれは、最も外側層の場合、更に濾過層の保護及びガス状流の前濾過等の一次機能であってよい。又、用語「層」が使用されるが、1つの層は、正確に言えば所望の厚さ又は重量を得るため組み付けられた数個のサブレイヤを備えてよい。実施形態によっては、概ね内側の1つの形成層だけが、フェースマスク内に包含されるが、2つの形成層が使用される、例えば図2に示した濾過層の各側に1つの場合、形成は、より長持ちし、好都合に達成できる。形成層の例が以下の特許、すなわちバーグ(Berg)に対する米国特許第4,536,440号、ダイラッド(Dyrud)らに対する米国特許第4,807,619号、クロンザー(Kronzer)らに対する米国特許第5,307,796号、バージオ(Burgio)に対する米国特許第5,374,458号、及びスコブ(Skov)に対する米国特許第4,850,347号に記載されている。図1及び2に示した図示マスク本体は、概ね円形のカップ形状の構成を有するが、マスク本体は、その他の形状を有してよい。例えば、ジャプンティッチ(Japuntich)に対する米国特許第4,883,547号を参照のこと。
【0048】
図3は、発明のエレクトレット物品をフィルターとして使用してよい他の呼吸用マスク24を示す。呼吸用マスク24は、マスク本体に固定されたフィルターカートリッジ28を有するエラストマーマスク本体26を含む。典型的に、マスク本体26は、人の鼻と口を覆って快適に取り付けるエラストマーフェースピース30を含む。フィルターカートリッジ28は、着用者に吸入される前に汚染物質を捕捉するための発明のエレクトレット濾材を含有してよい。フィルター要素としては、それだけで又は活性炭床等のガスフィルターと組合わせた発明のポリマーエレクトレットフィルター物品が挙げられてよい。多孔質カバー又はスクリーン32は、フィルターカートリッジに備えられ、フィルター要素の外部表面を保護してよい。発明のエレクトレット濾材が使用されてよい他のフィルターカートリッジの例が、例えばブロストロム(Brostrom)らに対する米国特許第Re.35,062号又はバーンズ(Burns)及びレイシェル(Reischel)に対する米国特許第5,062,421号に開示されたフィルターカートリッジ等の呼吸用マスクのためのフィルターカートリッジに開示されている。これらの特許に示したように、複合フィルターカートリッジが使用されてよい。又、カートリッジは、取り外し及び置換可能であってよい。更に、発明の濾材は、動力空気浄化呼吸装置(PAPRs)のフィルターカートリッジに使用されてよい。PAPRsの例が、ベネット(Bennett)らに対する米国特許第6,666,209号及びクック(Cook)らに対する米国特許第6,575,165号に示されている。更に、発明の濾材は、脱出フード用のフィルターカートリッジに使用されてよい。マーチンソン(Martinson)らに対する米国特許第D480,476号及びレスニック(Resnick)に対する米国特許第6,302,103号、同第6,371,116号、6,701,925号を参照のこと。
【0049】
図4は、濾材配列40の斜視図を示す。配列40の構造体は、多流路42を備えてよく、配列40の第1の側44に入口43を画定し、配列48の第2の側に出口46を有する。流路は、波形化又はミクロ構造化層50及びキャップ層52により画定されてよい。波形化層50は、1つ以上のピーク又は谷部分でキャップ層52に接合されてよい。構造化及び平面部材の多層を積み重ねることにより、マイクロチャネル化配置が達成されてよい。流路は、高いアスペクト比を有する傾向があり、及びフィルム層は、好ましくは電気的に帯電され、良好な捕捉効率を有する物品40を提供する。第1の側44から第2の側48の配列40全体にわたる圧力低下は、無視できる。
【0050】
従って、濾過目的で使用される非繊維性エレクトレット物品は、形成フィルム、ミクロ構造化表面、又は多数のミクロ構造化路の形態を取ってよい。非繊維性エレクトレット物品の例が、インスレイ(Insley)らに対する米国特許第6,752,889号、インスレイ(Insley)らに対する米国特許第6,280,824号、ファンターンアウト(Van Turnout)に対する米国特許第4,016,375号、及びルサーフォード(Rutherford)に対する米国特許第2,204,705号に開示されている。
【0051】
フッ素化
発明のフッ素化エレクトレットは、化学反応、収着、縮合、又はその他の好適な手段によりフッ素含有化学種をガス相から物品に移動することにより調製されてよい。ポリマー物品は、所望により表面変性電気放電の存在時にフッ素化されてよく、それに次いで物品を帯電し、フッ素化エレクトレットを製造する。或いは、発明の物品は、先ず帯電され、次にフッ素化されてよい。
【0052】
フッ素含有化学種を含む雰囲気にポリマー物品を曝露することにより、ポリマー物品の表面が変性され、フッ素原子を含有する。フッ素化プロセスは、大気圧、大気圧未満、又は「減圧」下で行われてよい。フッ素化プロセスは、好ましくは制御された雰囲気で行われ、汚染物質が物品表面へのフッ素原子の付加を妨げるのを阻む。用語「制御された」とは、フッ素化が起こる室内の雰囲気の組成物を制御する能力を装置が有することを意味する。好ましくは、雰囲気には、実質的に酸素及びその他の望ましくない構成成分がない。典型的に、雰囲気は、体積で1%未満、好ましくは0.1%未満の酸素又はその他の望ましくない構成成分を含有する。
【0053】
雰囲気に存在するフッ素含有化学種は、フッ素化化合物に由来し、室温でガスあり、加熱されてガスになり、又は気化され得る。フッ素含有化学種の有用な発生源の例としては、フッ素原子、元素フッ素、フッ素化イオウ(例えば、SF6)、フッ素化窒素(例えば、NF3)及びPF3、BF3、SiF4等の無機フッ素、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。又、フッ素含有化学種の雰囲気は、貴ガスであるヘリウム、アルゴン等、及びそれらの組み合わせ等の不活性希釈ガスを含んでよい。窒素も希釈剤として使用されてよい。
【0054】
フッ素化処理時に適用される電気放電が、フッ素含有化学種の発生源が存在時に適用されると、ポリマー物品の表面化学を変性できる。電気放電は、プラズマ、例えばグロー放電プラズマ、コロナプラズマ及び無音放電プラズマ(誘電体バリア放電プラズマ及び交流(「AC」)コロナ放電とも呼ばれる)、ハイブリッドプラズマ、例えば大気圧でのグロー放電プラズマ、並びに擬似グロー放電の形態であってよい。ジョーンズ/リオンズ(Jones/Lyons)らに対する米国特許第6,808,551号、同第6,660,210号、同第6,562,112号、同第6,432,175号、同第6,409,806号、同第6,398,847号、及び同第6,397,458号を参照のこと。プラズマは、減圧でのACプラズマが好ましい。「減圧」とは、700Pa未満、好ましくは140Pa未満の圧力を意味する。有用な表面変性電気放電プロセスの例が、ストロベル(Strobel)らに対する米国特許第5,244,780号、同第4,828,871号、及び同第4,844,979号に記載されている。
【0055】
他のフッ素化プロセスとしては、元素フッ素に対して不活性である液体中にポリマー物品を浸漬し、元素フッ素ガスを液体を通してバブリングし、表面フッ素化物品を製造することが挙げられてよい。フッ素に対して不活性である有用な液体の例としては、ペルハロゲン化液、例えばパフォーマンスフルイド(Performance Fluid)PF5052(3M社(3M Company)から市販)等のペルフッ素化液が挙げられる。液体を通してバブリングされる元素フッ素含有ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、及びそれらの組み合わせ等の不活性ガスが挙げられてよい。
【0056】
所定の流速でQ9値が高くなればなるほど、高温貯蔵後のエレクトレットのフィルター性能は良くなる。好ましいエレクトレットは、少なくとも約1.4/mmH0(9.8Pa)、好ましくは少なくとも約1.5/mmH0(9.8Pa)、より好ましくは少なくとも約2.0/mmH0(9.8Pa)のQ9値を有する。Q9値は、以下に詳述する試験法により決定されてよい。又、より高い熱安定性に相当する、より高い熱誘発放電電流(TSDS)値が、この発明により達成されてよい。ポリプロピレンを含有する好ましいエレクトレットは、130℃を超える、より好ましくは140℃を超えるTSDSピーク値を有する。
【0057】
フッ素表面濃度は、X線光電子分光法又はXPSとしても知られている化学分析用電子分光法(ESCA)を使用し確認されてよい。本発明のエレクトレット物品の表面は、XPSで分析すると約45〜60フッ素原子%を示す。XPSは、被検物の最も外側表面(すなわち、おおよそ30〜100Å)の元素組成を分析する。発明の物品のCFとCFの比率は、少なくとも約0.15、好ましくは少なくとも約0.2、より好ましくは少なくとも約0.3である。上部末端部において、CF:CF比は、典型的に約0.7未満又は0.6である。CFとCFの比率は、以下に記載するX−線光電子分光法(XPS)を使用し決定されてよい。
【0058】
又、エレクトレットは、エレクトレットの表面で約200を超え、好ましくは約250を超え、約300を超えてよいフルオロ飽和比(FSR)を有する。フルオロ飽和比FSRは、試料のフッ素原子%をその飽和/不飽和比で除算することにより決定できる。フッ素原子%及び飽和/不飽和比は、以下に記載するXPS及びToF−SIMS手順を使用し決定されてよい。一般に、より良いQ9値は、より高いフルオロ飽和比で達成される(図9を参照のこと)、従って、FSRが高くなればなるほど、高温油性ミスト性は良くなる。350又は更に500のFSR値が達成されてよい。
【0059】
本発明のフルオロ飽和比を達成するため、エレクトレット物品は、好ましくは約4パスカル未満の圧力まで真空にし、意図したフッ素雰囲気の連続的な供給で再度満たし、同時にポンプ供給速度を制御し、所望の運転圧力を達成する系において調製(フッ素化)される。本発明者らは、AC電力放電を使用し減圧の状態でフッ素化工程を行うと好都合であることを発見した。
【0060】
帯電の付与
帯電は、種々の方法を使用しポリマー物品に付与されてよい。クビック(Kubik)らに対する米国特許第4,215,682号で教示されるように、高分子材料は、ダイ開口部から押し出される際に電気的粒子によって衝撃を受ける。或いは、ファン・タンホウ(van Turnhout)に対する米国特許第RE30,782号及び同第32,171号、ワドスウオース(Wadsworth)らに対する米国特許第4,375,718号及び同第5,401,446号、クラッセ(Klasse)らに対する米国特許第4,588,537号、並びにナカオ(Nakao)に対する米国特許第4,592,815号に記載されているようなDCコロナ帯電が使用されている。又、ポリマー物品は、それらを水又は極性液体と接触することにより帯電される。水の使用による帯電―すなわちハイドロチャージ―を説明する文献としてはアンガジバンド(Angadjivand)らに対する米国特許第5,496,507号、同第6,119,691号、同第6,375、886号及び同第6,783、574号、エイツマン(Eitzman)らに対する米国特許第6,406、657号、並びにインスレイ(Insley)らに対する米国特許第6,743,464号が挙げられる。又、エイツマン(Eitzman)らに対する米国特許第6,454,986号で教示されるように、エレクトレット物品は、それらを水以外の極性液体に曝露することにより帯電される。ハイドロチャージは、繊維に帯電を付与する好ましい方法である、というのは、それは、取扱いが簡単で、環境に優しい、直ちに入手できる材料を使用するからである。又、ハイドロチャージは、本発明と組合わせて使用するとより高いQ9値をもたらす。帯電処理は、物品の1つ以上の表面に適用されてよい。
【0061】
ハイドロチャージ法は、正及び負電荷の両方を繊維に注入する、そのため正及び負電荷は、ウェブ全体にわたってランダムに分散される。ランダムな電荷分散は、非分極性ウェブを製造する傾向にある。従って、水のような極性液体で帯電することにより製造される不繊布繊維性エレクトレットウェブは、ウェブ平面に垂直な平面において実質的に非分極されてよい。このように帯電されている繊維は、理想的にアンガジバンド(Angadjivand)らに対する米国特許第6,119,691号の図5Cに示される帯電構成を示す。又、繊維ウェブがコロナ帯電操作を受ける場合、その特許の図5Bに示される構成と類似の帯電構成を示すことになる。ハイドロチャージを使用し、ただ単に帯電された繊維から形成されたウェブは、典型的にウェブ容積全体にわたって非分極捕捉帯電を有している。「実質的な非分極捕捉帯電」は、繊維性エレクトレットウェブを指し、熱誘発放電電流(TSDS)分析の使用により検出可能放電電流1μC/m未満を示す、ここで、分母は、電極表面積である。この電荷構成は、ウェブをTSDCさせることにより示されてよい。有用なハイドロチャージプロセスの1つの例としては、水の噴射又は水液滴流をある圧力で十分な時間物品に衝突させ、ウェブに濾過向上エレクトレット帯電を付与し、更に物品を乾燥させることが挙げられる。アンガジバンド(Angadjivand)らに対する米国特許第5,496,507号を参照のこと。物品に付与された濾過向上エレクトレット帯電を最適化するのに必要な圧力は、使用した噴霧器の種類、物品が形成されるポリマーの種類、ポリマーに対する添加剤の種類と濃度、及び物品の厚さと密度により異なることになる。約69kPa(10psi)〜約3,450kPa(500psi)の範囲の圧力が、好適である。水の噴射又は水液滴流は、任意の好適なスプレーでもたらされてよい。有用なスプレーの1つの例は、水圧によって交絡した繊維に使用される装置である。
【0062】
この文献に記載された方法により形成されたフッ素化エレクトレットは、例えば、マイクロホン、ヘッドホン及びスピーカー、流体フィルター、塵粒制御装置等の電気音響機器における、例えば、高電圧静電起電機、静電記録装置、呼吸装置(例えば、前置フィルター、キャニスタ及び交換可能なカートリッジ)、暖房、換気、空気調整、及びフェースマスクにおける静電要素として使用されるのに好適である。
【0063】
X線光電子分光法(XPS)を使用したフッ素の表面濃度及びCF:CF比を決定する方法
X線光電子分光法(XPS)は、プローブとして軟X線(Al Kα、1,486.6eV)を使用する表面分析技術である。X線は、材料を照射し、運動エネルギー及び強度で特徴付けられる光電子を生成する。光電子の運動エネルギーは、要素及びその化学状態の定量的な情報を提供できる。XPSプローブは、試料表面の最も外側ほぼ30〜100Åを精査する。XPSは、水素及びヘリウムを除外して本質的に全ての要素に対して、おおよそ0.1原子%までの検出下限界を有して感度が良い。
【0064】
XPS測定は、単色のAl KαX線励起源及び球形状ミラー分析器を装備したクラトスアキス・ウルトラスペクトロメーター(Kratos Axis Ultra Spectrometer)(イングランド、マンチェスタのクラトスアナリティカル(Kratos Analytical))を使用し、試料材料上で行われた。スペクトロメーターは、168ワット(W)(14kV、12mA)と等しい又は近いX線出力を有していた。全ての記録されたスペクトルの光電子出発点角度は、試料表面を基準に測定したとき90度であった。クラトス(Kratos)システムは、おおよそ800マイクロメートル(μm)X600μmのサンプリング面積を有する。分析時の真空系の圧力は、7.0X10−6パスカル(Pa)又はそれ未満であった。
【0065】
XPS法を使用した場合、試料材料から幅の広い走査測量が得られた。広い走査測量スペクトルは、材料表面に存在する要素の特徴である光電子ピークを含有する。表面組成物(原子%単位)は、直線バックグラウンド除去法及び機器の原子感度因子に相当する補正によりコアレベル光電子ピークの相対面積から導き出される。クラトス(Kratos)スペクトロメーターの性能は、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)試料の分析により立証され、フッ素原子%(APF)=67及び炭素原子%=33の実験値を示した。これらの値は、PTFE理論化学量論とみごとに一致する。
【0066】
又、炭素1s(C1s)スペクトルの狭い走査が得られた。C1sスペクトルは、存在する炭素結合官能性の具体的な種類に関する化学的な情報を提供する。炭素1sエンベロープは、数個のピーク構成成分で構成され、そしてそれは、非官能炭素及び結合炭素からフッ素原子までのピークを含む。絶縁試料の帯電は、非官能炭素構成成分を285.0eVに置く通常の慣習を使用し補正された。帯電補正後、294eV近くのピークは、−CFピークに起因し、一方292eV近くにセンタリングされたピークは、−CF−官能性に起因していた。これらのピーク割り当ては、文献に十分記載されている。
【0067】
炭素1sスペクトルの分析では、各スペクトルを曲線手直し手順を使用し処理することが必要であった。ここでは、曲線手直し手順は、クラトスアナリティカル(Kratos Analytical)からのビジョンデータソフトウェアパッケージ(Vision Data Software Package)を使用し行われた。全ての曲線適合に使用されたピーク形状は、ガウス(70%)−ローレンツ(30%)ピーク形状モデルGL(30)である。炭素1sエンベロープは、6構成成分に分解された。ここで報告されたCF/CF値は、GL(30)曲線に適合した−CF及び−CF−ピークから計算された面積比である。
【0068】
測量及び炭素1sスペクトルを得るために使用された典型的な測量及び炭素1s機器設定は、下記の表1で与えられる。
【0069】

【0070】
ToF−SIMSを使用し飽和/不飽和比を決定する方法
飛行時間二次イオン質量分析法(ToF−SIMS)は、表面分析技術であり、キロボルトエネルギーイオン(一次イオン)のパルスビームが、被検物に衝撃を与えるために使用され、その表面にスパッタリングをもたらす。スパッタリング時、中性及びイオン化された原子と分子化学種が表面から放出される。イオン化化学種は、「二次イオン」と呼ばれ、衝撃一次イオンと区別される。1つの極性の二次イオンは、質量分析計の電界で加速される、ここで二次イオンは、フライトチューブを通って移動し、検出及びカウントシステムに到達する。フラグメントは、同時に試料表面から離れ、及び同じ加速電圧にされる、その結果、軽いフラグメントは、より重いフラグメントより先に検出システムに到達する。フラグメントの「飛行時間」は、その質量の平方根に比例する、そのため、異なる質量体は、飛行時に分離され、個々に検出されてよい。分析で測定された量は、フラグメント質量がフラグメントの帯電量で除算される(m/z)。
【0071】
ToF−SIMS分析は、フィジカルエレクトロニクストリフト(Physical Electronics Trift)I機器(ミネソタ州のエデンプライリー(Eden Prairie))を使用し、400μm×400μmの試料目標領域にわたってラスターされた15キロボルト(keV)Ga+一次イオンビームによりで試料上で行われた。ToF−SIMSは、材料の最も外側10〜20Åの化学的な情報を提供し、1,000原子質量単位(U)以上の質量に広がる正及び負イオンモードの両方でフッ化炭化水素のスペクトルを生成する。C−フッ素化ウェブの負イオンスペクトルの分析は、フッ化炭化水素イオンが、完全な飽和から高度に不飽和の範囲にわたって明確なオリゴマーシリーズに分離されていることを示した。より顕著なシリーズは、以下の通りである。
【0072】
2n+1、式中、n=1,2・・・、十分に飽和されたシリーズ(例:C,C17
【0073】
2n−1、式中、n=3,4・・・、不飽和シリーズ(例:C,C15
【0074】
2n−3、式中、n=6,7・・・、不飽和シリーズ(例:C11,C13
【0075】
2n−5式中、n=8,9・・・、高度に不飽和シリーズ(例:C11,C1015
【0076】
一般に、これらのイオンシリーズは、各々より高い質量で小さくなる傾向がある強度分布を示す。不飽和イオンシリーズは、主として直接的な試料のフッ素化を示し、一方n=3を超える不飽和イオンシリーズは、試料に配置された高度な分枝状フルオロポリマーコーティングを示す。
【0077】
飽和/不飽和比(SUR)は、以下の式を使用し計算される。
【数1】

与えられる:
【数2】

【数3】

【0078】
「C」の値は、以下の表2で特定されるスペクトル位置での所定の構造についてのイオンカウントである。
【0079】

【0080】
スペクトルタイプの実例として、図5は、フッ素化ポリプロピレンブロウンマイクロファイバー(BMF)に関するToF−SIMSスペクトル、より具体的にはCイオン化学種のスペクトル記録を示す。プロットは、連続的に219のm/zでCイオンのまわりにセンタリングする増幅を示す。下部プロットで示されるように、m/z218.329とm/z219.953の間の画定された範囲におけるC化学種のイオンカウントは、1,520であった。これは、飽和/不飽和比(SUR)の計算で使用されたカウント値ということになる。このように、飽和及び不飽和化学種についてのカウントは、特定の実施例のSUR計算にインプットするために作成された。
【0081】
フルオロ飽和比
フルオロ飽和比(FSR)は、試料のフッ素原子%(APF)を飽和/不飽和比(SUR)で除算することにより決定された計算値で
【数4】

として与えられる。
【0082】
熱誘発放電電流(TSDS)
熱誘発放電電流(TSDS)の研究は、コネチカット州スタンフォード(Stamford)のサーモウルド・パートナーズ社(TherMold Partners, L.P.)、サーマル・アナリシス・インスツルメンツ(Thermal Analysis Instruments)から入手できるピボット電極を有するソロマット(Solomat)TSC/RMAモデル91000を使用して実施された。先ず、試験試料をDCコロナ帯電に曝露することにより試験試料を調整し、先に実質的に非分極された捕捉帯電を分極した。DCコロナ帯電は、周囲条件下、水平に配列された一連の4つの帯電バーを使用して行われた(ペンシルバニア州ハットフィールド(Hatfield)のシムコン社(Simco Company)から商標表記「チャージ・マスター・ピナー・ARCレジスタント・チャージングバー(CHARGEMASTER PINNER ARC RESISTANT CHARGING BAR)」のもとで得られた)。帯電バーは、バー1と2、2と3、及び3と4の間の中心と中心の距離が各々7.6cm、8.3cm及び9.5cmに区切られている。各帯電バーは、対応する接地金属プレート上3.5cmに位置している。+29キロボルトの電圧(接地金属プレートを基準にして)を各帯電バーに加えた。ベルトが金属プレートと接触を維持するように帯電バーと金属プレートの間を通過する移動(2.54cm/秒)連続ベルト(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)のライトウェイトベルティング社(Light Weight Belting Corporation)から得られた部品番号8882802A)上に試料を配置することにより帯電した。
【0083】
TSDCを決定するため、ソロマット(Solomat)TSC/RMA試験機器の電極間にコロナ処理ウェブ試料を配置した。ソロマット(Solomat)機器では、温度計を試料に隣接して、接触しないように配置し、放電の温度を記録する。ウェブ試料は、光学的に緻密であった、すなわち、試料ウェブを通して目に見える穴はなかった。又、資料は、ソロマット(Solomat)機器の上部コンタクト電極を完全にカバーするのに十分な大きさであった。電極と良好な電気的接続を確実にするため、ウェブ試料は、約ファクター10の厚さに圧縮された。機器に取り付けられた試料の場合、約110kPaの圧力でヘリウムを使用し試料室から空気をパージした。室を約5℃の温度に冷却するため、液体窒素冷却を使用した。
【0084】
試験をしている間、試料は、磁界が無い状態で、5分間5℃に保持され、次に5℃/分で加熱され、同時に放電電流を測定した。帯電密度は、選択したピークの各々の側の最少値間に基準線を引き、ピークの面積を積分することにより、各TSDCスペクトルピークから計算されてよい。ピーク最大値は、放電電流が最大値に達する温度として定義される。
【0085】
熱安定性品質因子(Q9)
熱安定性品質因子(Q9)は、試験試料について、先ず試料をオーブン内で9時間100℃で調湿することにより決定された。調湿試料を冷却し、粒子貫通を試験した。Q9は、試験試料を通って濾過されるときのフタル酸ジオクチル(DOP)小粒の粒子貫通測定に基づく計算値である。粒子貫通は、ミネソタ州セントポール(St Paul)のTSI社(TSI Inc.)からのサーチテスト(CertiTest)自動濾過試験機を使用し決定された。機器の流量は、42.5リットル/分(L/min)に設定された、そしてそれは、1秒当たり6.9センチメートル(cm/sec)の面速度に相当する。システムの粒子中和剤が、止められた。電子式圧力計を使用し、6.9cm/secの課題面速度で試料に対する圧力低下を測定した。水のミリメートル単位(1mmH0(9.8Pa))で圧力低下を報告した。DOP貫通及び圧力低下は、下記式をもとにDOP貫通の自然対数(ln)からQ9を計算するために使用される。
【数5】

【0086】
Q9値が高くなればなるほど加熱調湿後の濾過性は良くなる。Q9の低下は、事実上加熱曝露における濾過性の減少と相関する。
【0087】
有効繊維直径
マイクロメートル単位のウェブ試料の平均有効繊維直径(EFD)は、デイビス(Davies)、C.N.、「空中の塵及び粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)」、インスティチューション・オブ・メカニカルエンジニア(Institution of Mechanical Engineers)ロンドン、議事録1B(1952年)に記載された方法により、式12及び32L/minの空気流速を使用して計算された。
【0088】
ウェブソリディティ
ウェブソリディティは、ウェブの嵩密度をウェブを作製した材料の密度で除算することにより決定された。嵩密度は、ウェブの厚さで除算されたウェブの坪量である(ウェブ重量とその表面積の比率)。ウェブの嵩密度は、面積既知ウェブの重量と厚さを測定し決定された。ウェブの厚さは、ウェブ試料を平らな支持体の上に置き、続いてプレート(直径9.81cm、230g)を298パスカルの荷重圧力で試料上に下げることにより決定された。荷重をかけられた試料について、プレートと平らな支持体間の距離を測定した。ウェブ試料重量を試料面積で除算することにより被検物の坪量(BW)が与えられ、そしてそれが、平方センチメートル当たりのグラム単位(g/cm)で報告される。嵩密度は、ウェブ坪量をその厚さで除算して決定され、立方センチメートル当たりのグラム単位(g/cm)で報告された。ウェブソリディティ(S)は、ウェブ嵩密度をウェブを製造した材料の密度で除算し決定された。ポリマー又はポリマー構成成分の密度は、供給元が材料密度を明示していない場合、幾何平均により測定されてよい。ソリディティ(S)は、所定被検物の固形分パーセントの無次元分数として報告され、以下のように計算される。
【数6】

【実施例】
【0089】
以下に示す実施例は、発明の特徴、利点及びその他の詳細を更に説明するために選択されているに過ぎない。しかしながら、実施例は、この目的を満足させるが、特殊な成分、使用量、並びにその他の条件及び詳細は、この発明の範囲を不必要に限定すると解釈されないことは明示的にいうまでもない。
【0090】
一般ウェブ作製、プラズマ処理、及びエレクトレット帯電手順
実施例に使用されたブロウンマイクロファイバー(BMF)ウェブは、ポリプロピレン(テキサス州、ヒューストン(Houston)のトータルペテロケミカルズ(Total Petrochemicals)USA社(Inc.)から入手できるフィナ(Fina)EOD97−13ポリプロピレン樹脂)から調製され、おおよそ7.5μmの有効繊維直径、62g/mの坪量、及び6%のウェブソリディティを有した。ウェブは、ウェンテ(Wente)、ファンA.(Van A.)により、スーパーファイン熱可塑性繊維(Superfine Thermoplastic Fibers)、インダストリアルエンジニアリングケミストリ(Industrial Eng. Chemistry)、48巻、1342〜1346頁に一般的に記載されたように調製された。
【0091】
BMFウェブは、プラズマ処理法A又はBとして示される2つの方法の1つを使用して処理された。これらの方法は、次のように記載される。
【0092】
プラズマ処理法A
プラズマ処理法「A」を使用し処理されたウェブを、1.3cm離れて一定の間隔をおいた2つの電極間の室に配置した。プレートは、おおよそ900cmの作用電極表面積を有していた。被検物の位置決めが完了した状態で、室を密封し、おおよそ3パスカル(Pa)以下の圧力にまで真空にした。真空にした後、ガス混合物を指定流速でプラズマ電極間の間隙に導入した。室の圧力を67Paに保持した。次に、プラズマを維持するため、自動整合ネットワーク(automatic matching network)(RF−50及びAMN−20−K、ニュージャージー州ボーヒーズ(Voorhees)にあるRFプラズマプロダクツ社(RF Plasma Products, Inc.))を介して連結されたRF発電機(13.56MHz)を使用して室内の電極に通電した。所望のプラズマで曝露エネルギーを実現するため、ウェブを指定時間プラズマに曝露した。処理室内のガス分子の滞留時間は、圧力67Pa、試料1平方センチメートル1分当たり0.024標準立方センチメートルの流量の場合、約50〜60ミリセコンドと推算された。ウェブの両側は、このようにして処理した。
【0093】
プラズマ処理法B
プラズマ処理法「B」を使用して処理されたウェブは、指定された合計プラズマエネルギーで24.7Paのフッ素含有化学種ガスが満たされた真空室内でACプラズマを使用しウェブ搬送プロセスにおいて指定時間処理されたプラズマであった。処理室内のガス分子の滞留時間は、圧力67Pa、試料1平方センチメートル1分当たり0.024標準立方センチメートルの流量の場合、約120ミリセコンドと推算された。ポンプ供給速度を調整し、所望の作用圧力を制御した。ウェブ搬送システムは、基材の両側がプラズマを受けられるような配置を有する一組のドラム電極間の間隙を通って被検物を移動させた。各側を同じ持続時間処理した。ドラム電極は、それを通って基材が走行する間隙を形成する同心円の6061−アルミニウムプレートによって取り囲まれた6061−アルミニウムドラムから構成した。プラズマを維持するため、自動整合ネットワーク(RF−50及びAMN−20−K、ニュージャージー州ボーヒーズ(Voorhees)にあるRFプラズマプロダクツ社(RF Plasma Products, Inc.))を介して連結されたRF発電機(13.56MHz)を使用し電力を供給した。電極の両方の組は、再循環水を使用して23℃まで冷却された。
【0094】
プラズマ処理後、アンガジバンド(Angadjivand)らに対する米国特許第5,496,507号に汎用的に記載された方法でウェブをエレクトレット帯電した。ハイドロチャージ法A又はBとして以下に示した2つの方法の1つを使用してウェブを帯電した。
【0095】
ハイドロチャージ法A
ハイドロチャージ法「A」を使用し処理されたウェブは、約6×10Ω−cmの固有抵抗を有する脱イオン水を他方のウェブ面を真空にすると同時に一方のウェブ面に放出するスプレーヘッドの下を通過させた。イリノイ州ウィートン(Wheaton)にあるスプレイングシステムズ(Spraying Systems)から入手できるティージェット(Teejet)モデル95015スプレーヘッドを使用し、水をウェブに放出した。スプレーヘッドは、10cm間隔でウェブから10.5cm離して配置し、689kPaの圧力で操作した。ウェブ平方メートル当たり約0.87リットルの水流量で水をスプレーした。ウェブは、スプレーヘッドの下を15cm/秒の流速で通過し、同時に開放メッシュキャリアベルトの下にスプレーヘッドと対向して位置決めされたスロット(約0.6cm幅)に大気未満の8.7kPaの真空を適用した。ウェブの両側を、このように処理した。ウェブを、71℃のオーブン内で約38秒乾燥した。
【0096】
ハイドロチャージ法B
ハイドロチャージ法「B」を使用し処理されたウェブを、約2×10Ω−cmの固有抵抗を有する蒸留水を使用して帯電した。ウェブ上に水がスプレーされ、同時にウェブは、多孔質ベルト上を5.1cm/秒の速度で搬送され、2個のスプレーヘッド(型式ティージェット(Teejet)9501、スプレイングシステムズ(Spraying Systems)、イリノイ州ウィートン(Wheaton))を通過した。スプレーヘッドを、758kPaの圧力で操作し、スプレーパターンがウェブ走行方向と垂直になるような方向に向けた。スプレーヘッドは、10cm間隔でベルトから10cm離して位置決めされた。デイトン・エレクトリック(Dayton Electric)湿式乾燥真空装置モデル2Z974B(デイトンエレクトリック(Dayton Electric)、イリノイ州シカゴ)に装着された長さ25cm幅0.5cmの真空スロットを、スプレーヘッドと対向する搬送ベルトの下に配置した。記載された方法でウェブの両側を処理した。水処理の後、ウェブを周囲条件でおおよそ16時間乾燥した。
【0097】
(実施例1,2,3及び4)
「一般ウェブの作製及び処理」の項で記載したBMFウェブを、種々の組成のプラズマを採用したプラズマ処理法Bを使用して調製した。プラズマ処理されたウェブをハイドロチャージ法Aを使用してエレクトレット帯電した。試料調製条件―フッ素含有化学種ガス、フッ素化学種ブレンド比、曝露時間、合計プラズマエネルギー、及びガス流速を含む―を、表5に示した結果として生じたフッ素原子%(APF)、飽和/不飽和比(SUR)、フルオロ飽和比(FSR)及び熱安定性品質因子(Q9)についての該当値と共に表4に示す。
【0098】
(実施例5,6,7及び8)
「一般ウェブの作製及び処理」の項で記載したBMFウェブを、5容積%F及び95容積%Heのガスブレンドの組成のプラズマを使用したプラズマ処理法A及びハイドロチャージ法Bを使用して調製した。指定持続時間後、室は通電を停止し、パージされ、試料が取り出された。次に、試料は、通電したプレート上に置かれた第1ステージで処理された側部を有する室に戻された。その方法を繰り返した。
【0099】
試料調製条件―フッ素含有化学種ガス、フッ素化学種ブレンド比、合計曝露時間、及び合計プラズマエネルギーを含む―を、表5に示した結果として生じたフッ素原子%(APF)、飽和/不飽和比(SUR)、フルオロ飽和比(FSR)及び熱安定性品質因子(Q9)についての該当値と共に表4に示す。
【0100】
比較例1c、2c、3c、4c、5c、6c、7c、8c及び9c
「一般ウェブの作製及び処理」の項で記載したBMFウェブを、種々のガス状フッ素含有化学種を使用しプラズマ処理法B及びハイドロチャージ法Aにしたがって調製した。試料調製条件―フッ素含有化学種ガス、曝露時間、及び合計プラズマエネルギーを含む―を、表5に示した結果として生じたフッ素原子%(APF)、飽和/不飽和比(SUR)、フルオロ飽和比(FSR)及び熱安定性品質因子(Q9)についての該当値と共に表4に示す。
【0101】
比較例10c、11c、12c及び13c
比較例10c〜13cは、表3に詳述した比較例と関連する特許の実施例と共に米国特許第6,397,548号(ジョーンズ(Jones)ら)から直接引用した。全てのこれらのウェブは、純粋なヘリウム中に希釈されたフッ素含有ガスの引用された濃度を用い大気圧でフッ素化された。試料調製条件―フッ素含有化学種ガス、曝露時間、及び合計プラズマエネルギーを含む―を、表4に示す。結果として生じたフッ素原子%(APF)、飽和/不飽和比(SUR)、フルオロ飽和比(FSR)及び熱安定性品質因子(Q9)の値を適用可能な場合は表5に示す。
【0102】

【0103】

NA=入手できない(適用せず)
【0104】

NA=入手できない(適用せず)
*信号検出できない
【0105】
表5に示したQ9濾過結果から明らかなように、より大きいFSR値を有する発明のフッ素化フィルターウェブは、有意に熱的に安定な濾過改善を実現した。フルオロ飽和比(FSR)200以上を有するウェブは、FSR値200未満を有するウェブと比較して改善されたレベルの熱安定性品質因子Q9を実現した。
【0106】
図6は、実施例1〜8に関するFSRデータのプロットで、FSR値の増加と共に増えるQ9値の一般的な傾向を示す。
【0107】
更には、より大きいTSDCピーク値を有する発明のフッ素化フィルターウェブは、より小さいTSDC値を有するウェブよりより良好な熱安定性を示す。図5に示したように、130℃以上のTSDCピーク値を有するウェブは、130℃未満のTSDCピーク値を有するウェブと比較して改善されたレベルの熱安定性品質因子Q9を示す。
【0108】
又、熱的に安定なエレクトレット物品を実現する方法を記載する出願は、へテロ原子及び低フルオロ飽和比を有するエレクトレット物品という表題をつけ、この出願と同じ日に提出された(弁護士事例番号59338US002)。
【0109】
この発明は、その精神及び範囲から逸脱することなく種々の修正及び変更ができる。従って、この発明は、上記に限定されないが、以下の請求項及び全てのその等価物に詳述する制限によって規制される。
【0110】
又、この発明は、本明細書で特に開示されていない要素が全く無くても好適に実行できる。
【0111】
背景技術の項のものを含む上記した全ての特許及び特許出願は、参照として全てがこの明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明のエレクトレット濾材を使用してよい使い捨て呼吸マスク10の斜視図。
【図2】図1に示した呼吸マスク10の本体12の断面図。
【図3】フィルターカートリッジ28を有し、本発明のエレクトレット濾材を含んでよい呼吸マスク24の斜視図。
【図4】本発明の濾材配列40の斜視図。
【図5】C−化学種を強調するフッ素化BMFウェブに関するToF−SIMSスペクトルの実例である。
【図6】実施例1〜8についてフルオロ飽和比に対してプロットされたQ9値を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトレット物品であって、
それに付与された帯電と、少なくとも約0.15のCFとCFの比率と、約200を超えるフルオロ飽和比とを有する高分子材料を備えるエレクトレット物品。
【請求項2】
前記高分子材料が、非導電性であり、前記エレクトレット物品が、持続的な帯電を示す、請求項1に記載のエレクトレット物品。
【請求項3】
前記高分子材料が、繊維の不織布ウェブの形態である、請求項2に記載のエレクトレット物品。
【請求項4】
前記繊維が、マイクロファイバーである、請求項3に記載のエレクトレット物品。
【請求項5】
前記繊維が、メルトブロウンマイクロファイバーである、請求項4に記載のエレクトレット物品。
【請求項6】
前記マイクロファイバーが、約1〜20マイクロメートルの有効繊維直径を有する、請求項4に記載のエレクトレット物品。
【請求項7】
前記CF:CF比が、少なくとも約0.2である、請求項2に記載のエレクトレット物品。
【請求項8】
前記CF:CF比が、少なくとも約0.3である、請求項2に記載のエレクトレット物品。
【請求項9】
前記CF:CF比が、約0.7未満である、請求項8に記載のエレクトレット物品。
【請求項10】
前記CF:CF比が、約0.6未満である、請求項9に記載のエレクトレット物品。
【請求項11】
体積抵抗率が、約1016Ωcm以上である、請求項2に記載のエレクトレット物品。
【請求項12】
約2〜500g/mの坪量を有する、請求項3に記載のエレクトレット物品。
【請求項13】
約20〜150g/mの坪量を有する、請求項12に記載のエレクトレット物品。
【請求項14】
前記繊維ウェブが、約0.25〜20mmの厚さを有する、請求項3に記載のエレクトレット物品。
【請求項15】
前記繊維の不織布ウェブが、約1〜25のソリディティを有する、請求項3に記載のエレクトレット物品。
【請求項16】
前記繊維の不織布ウェブが、約3〜10のソリディティを有する、請求項15に記載のエレクトレット物品。
【請求項17】
請求項3に記載の前記エレクトレット物品を含むフィルター要素を備えるフィルターフェースマスク。
【請求項18】
フィルター材料として請求項3に記載の前記エレクトレット物品を含有するフィルターカートリッジを有する呼吸用マスク。
【請求項19】
多流路配列形態である、請求項1に記載の前記エレクトレット物品を備えるフィルター要素。
【請求項20】
前記高分子材料の表面が、約45〜60フッ素原子%を有する、請求項2に記載のエレクトレット物品。
【請求項21】
約250を超えるフルオロ飽和比を有する、請求項2に記載のエレクトレット物品。
【請求項22】
約300を超えるフルオロ飽和比を有する、請求項21に記載のエレクトレット物品。
【請求項23】
1mmH0(9.8Pa)当たり少なくとも約1.40以上のQ9値を有する、請求項3に記載のエレクトレット物品。
【請求項24】
1mmH0(9.8Pa)当たり少なくとも約1.5のQ9値を有する、請求項24に記載のエレクトレット物品。
【請求項25】
1mmH0(9.8Pa)当たり少なくとも約2.0のQ9値を有する、請求項24に記載のエレクトレット物品。
【請求項26】
前記帯電が、少なくともハイドロチャージによりそれに付与される、請求項1に記載のエレクトレット物品。
【請求項27】
前記高分子材料が、非導電性であり、前記エレクトレットが、持続的な帯電を示し、前記繊維が、スパンボンド繊維である、請求項1に記載のエレクトレット物品。
【請求項28】
更に多層の繊維不織布ウェブを備える、請求項3に記載のエレクトレット物品。
【請求項29】
前記マスクが、着用者の鼻と口を覆って取り付けるためのマスク体を含み、エレクトレット濾材が、前記マスク体に配置される、請求項17に記載のフィルターフェースマスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−540856(P2008−540856A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510070(P2008−510070)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/016198
【国際公開番号】WO2006/119004
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】