説明

高信頼マルチキャスト・ストリーミングを行う方法および装置

例えば無線LAN(WLAN)などのネットワーク・システムにおいてネットワーク伝送を行う方法および装置を提供する。ネットワーク・システム中には、ビデオ・ストリームを伝送するメディア・サーバ、ならびにメディア・サーバから重要なパケットを取得し、取得した重要なパケットを再構築してQoSマルチキャスト・ストリームにするQoSサーバがある。さらに、マルチキャスト・ビデオ・ストリームを受信してそのまま移動局に送信し、またQoSマルチキャスト・ストリームを受信して再カプセル化し、当該ストリームをマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト方式で送信するAPもある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク伝送に関し、特に、WLANにおいてマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト(multicast−over−unicast)伝送方式を用いる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクセス・ポイント(AP)やブリッジ、ルータなど、移動装置およびその他のネットワークへのアクセスを提供する中間装置を定義するIEEE802.11標準に基づく無線ローカル・エリア・ネットワークすなわちWLANでは、ビデオ伝送、とりわけ実時間伝送を行うのに、ブロードキャスト/マルチキャスト伝送が必要である。しかし、ブロードキャスト/マルチキャスト伝送には、誤り訂正機構を本質的に欠いているという問題がある。一群の受信側に対してデータ・パケットを送信(ブロードキャスト/マルチキャスト)するときに、伝送側が各受信側の再送プロトコルを管理することは、不可能とまでは言えないが、極めて困難である。
【0003】
具体的には順方向誤り訂正(FEC)やマルチキャスト自動再送要求(ARQ)など、データ・パケット喪失を克服するための機構はいくつかある。しかし、これらの機構には例外なく、一部のネットワークにおいて複雑さと制限事項が大きく増加するという問題がある。例えば、アクセス・ポイント(AP)やブリッジなど一部のWLAN中間装置では、マルチキャストの品質は例えば受信状態が最悪の移動端末などクライアントによる制限を受けるという前提の下、WLANマルチキャスト・データ・パケットの伝送速度に本質的な制限がある。なお、本明細書では、ブリッジおよび/またはAPという用語は、ルータおよび/またはブルータ、あるいはそれらと同等の機能を有する任意の装置も含むものとして使用している。また、全てのマルチキャスト・パケットを、マルチキャスト・オーバ・ユニキャスト方式を用いて伝送する機構もあるが、この方式は、当然、スケーラビリティの問題を生じる。帯域幅に制限があるために、全てのマルチキャスト・パケットをマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト方式を用いて伝送した場合に、それらのマルチキャスト・パケットを同時に受信することができる端末の数も、帯域幅によって制限されることになるからである。
【0004】
第1の特徴では、ネットワーク中で第1のパケット・セットを含むパケット・ストリームを伝送する方法を提供する。この方法は、前記第1のパケット・セットをマルチキャスト・モードで複数の受信側に送信するステップと、前記複数の受信側のうちの少なくとも1つの受信側に第2のパケット・セットをユニキャスト・モードで送信するステップと、を含み、第2のパケット・セットは、第1のパケット・セットのパケットのサブセットである。
【0005】
詳細には、第1のパケット・セットは、マルチキャスト・グループのマルチキャストIPアドレスおよび対応するマルチキャストMACアドレスを有するマルチキャスト・パケットにカプセル化され、第2のパケット・セットを少なくとも1つの受信側に送信するときには、第2のパケット・セットに含まれるマルチキャストMACアドレスが、前記少なくとも1つの受信側のMACアドレスに変更される。
【0006】
さらに、第2のパケット・セットは、前記少なくとも1つの受信側によるマルチキャスト・グループに加入することを求める要求に応答して、受信側に伝送される。
【0007】
さらに、第2のパケット・セットは、第1のパケット・セットのペイロード・データを復号するために重要度に基づいて選択される。
【0008】
上記の方法では、前記第2のパケット・セットは、ビデオ・ストリームのIフレームまたはベース・レイヤ・パケットを復号するために必要なパケットである。
【0009】
第2の特徴では、ネットワーク中で第1のパケット・セットを含むパケット・ストリームを受信する方法について述べる。この方法は、第1のパケット・セットをマルチキャスト・モードで受信するステップと、第2のパケット・セットをユニキャスト・モードで受信するステップであり、前記第2のパケット・セットのパケットが、前記第1のパケット・セットのパケットのサブセットであるステップと、第2のパケット・セットのパケットを用いて、第1のパケット・セットの、喪失した、または訂正不可能なパケットを置換するステップと、を含む。
【0010】
第2の特徴の方法では、第1のパケット・セットは、マルチキャスト・グループのマルチキャストIPアドレスおよび対応するマルチキャストMACアドレスを有するマルチキャスト・パケットにカプセル化され、第2のパケット・セットが送信されるときには、第2のパケット・セットに含まれるマルチキャストMACアドレスが、ユニキャストMACアドレスに変更される。
【0011】
さらに、第2の特徴は、第1のパケット・セットに対応するマルチキャスト・グループに加入するステップと、第2のパケット・セットのユニキャスト伝送をトリガするために、第2のマルチキャスト・グループに加入するステップとをさらに含む。
【0012】
さらに、前記パケットのサブセットは、ビデオ・ストリームのIフレームまたはベース・レイヤ・パケットを復号するために必要なパケットである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のネットワーク・システムの実施例を示す図である。
【図2a】イーサネット(登録商標)フレームの例示的なフォーマットを示す図である。
【図2b】マルチキャスト・パケットの例示的なフォーマットを示す図である。
【図2c】マルチキャスト・オーバ・ユニキャスト機構を用いる図2bのマルチキャスト・パケットの例示的なフォーマットを示す図である。
【図3】本発明のネットワーク・システムのプロセスを示す流れ図である。
【図4】本発明のネットワーク・システム中のQoSサーバにおけるプロセスを示す流れ図である。
【図5】本発明のネットワーク・システム中のQoSエージェントを有するAPにおけるプロセスを示す流れ図である。
【図6】ネットワーク・システムの構造を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施例による、無線ローカル・エリア・ネットワーク(WLAN)を含むネットワーク・システムを示すブロック図である。図1に示すように、メディア・サーバ1、複数の移動局2、QoS(サービス品質)サーバ3、QoSエージェント5を内部に備えたAP(アクセス・ポイント)4、およびルータ6がある。メディア・サーバ1およびQoSサーバ3は、例えばIEEE802.3LANなどのLAN内にある。複数のMS2は、例えばIEEE802.11無線LANなどのWLAN内にあり、AP4を介してLANに接続される。
【0015】
図1の例では、マルチキャスト・メディア・ストリームは、ビデオ・ストリームAである。メディア・サーバ1では、最初にビデオ・ストリームAがIPパケットにカプセル化され、その後、これらのIPパケットが、イーサネット(登録商標)MACフレーム・フォーマットにカプセル化される。図2aは、IEEE802.3プロトコルによるイーサネット(登録商標)MACフレーム・フォーマットを示す図である。イーサネット(登録商標)MACヘッダを付加された各IPパケット(「データ」フィールド)を、イーサネット(登録商標)MACフレームと呼ぶ。IPパケット中では、「宛先IPアドレス」フィールドは、パケットが経路指定された宛先IPアドレスである。「ソースIPアドレス」は、パケットがどこから来たかを示している。マルチキャスト伝送では、宛先IPアドレスは、マルチキャストIPアドレスである。MACヘッダに含まれる「宛先MACアドレス」フィールドは、IPパケットが経路指定されることになる宛先を特定するために使用される。なお、一般的なマルチキャスト・パケットでは、この含まれる宛先MACアドレスは、マルチキャストIPアドレスに対応するマルチキャストMACアドレスである。そのため、ビデオ・ストリームAについては、マルチキャスト・グループはA1、マルチキャスト・グループの宛先MACアドレスはA2(01−00−5e−01−01−01)、およびマルチキャスト・グループの宛先IPアドレスはA2’(例えば230.1.1.1)である。ソースMACアドレスは、メディア・サーバ1のMACアドレスであり、ソースIPアドレスは、メディア・サーバ1のIPアドレスである。
【0016】
例えばマルチキャスト・ビデオ・ストリームAなどのマルチキャスト伝送の前に、メディア・サーバ1は、セッション記述を含む適当なアナウンスメントを行う。標準的なセッション記述は、インターネット技術タスク・フォースのドラフトRFC2327に定義されるように、セッション記述プロトコル(SDP)を用いて生成される。SDPは、実時間マルチメディア・セッションおよびそれらに関連するスケジューリング情報を記述するために使用される、単純なASCIIテキスト・ベースのプロトコルである。SDPメッセージは、マルチキャスト・セッションの各メディア・ストリームについての情報を搬送して、受信者がセッションに加入することができるようにする。SDP情報に含まれるメディア情報は、メディアのタイプ(例えばビデオ、オーディオなど)、トランスポート・プロトコル(例えばRTP、UDPまたはIPなど)、メディアのフォーマット(例えばMPEGビデオなど)、メディアのマルチキャスト・アドレス、メディアのトランスポート・ポートなどを含む。メディアのマルチキャスト・アドレスは、マルチキャスト・ストリームの宛先アドレスおよび宛先ポートである。送信されているアドレスSDP情報は224.2.2.2であり、UDPポートは4000である。マルチキャスト・セッションのことを知りたいホストは、この特別なマルチキャスト・セッションに加入し、SDP情報を受信することができる。メディア・サーバ1におけるマルチキャスト・ビデオ・ストリームAについては、ストリームAのマルチメディア・アドレスは、マルチキャストIPアドレスA2’(230.1.1.1)、および対応するMACアドレスA2(01−00−5e−01−01−01)である。
【0017】
SDP(サービス記述プロトコル)情報を解析することにより、QoS(サービス品質)サーバ3は、マルチキャスト・グループA1にマルチキャストすべきメディア・コンテンツAがメディア・サーバ1に存在することを知り、ルータ6に要求を送信し、マルチキャスト・グループA1に加入する意志を示す。この要求は、例えば、IGMP(インターネット・グループ管理プロトコル)に従って送信される。インターネット・グループ管理プロトコル(IGMP)は、インターネット・プロトコル・マルチキャスト・グループのメンバシップを管理するために使用される通信プロトコルである。IGMPは、IPホスト(例えばQoSサーバ3または移動局2)および近接するマルチキャスト・ルータが、マルチキャスト・グループ・メンバシップを確立するために使用する。QoSサーバ3は、マルチキャスト・ビデオ・ストリームAのマルチキャスト・グループA1に加入することを求めて、IGMPルータであるルータ6に対してメッセージ(JOIN)を発行する。ルータ6は、このJOINメッセージに対してQUERYメッセージで応答して、当該QoSサーバがそのメンバとなるグループを決定する。QoSサーバは、メンバシップ報告とともにこの問合せをフィードバックして、当該QoSサーバがマルチキャスト・グループA1に加入したい旨を通知する。QoSサーバ3は、マルチキャスト・ビデオ・ストリームAを受信することができる。
【0018】
QoSサーバ3は、マルチキャスト・ビデオ・ストリームAを捉えると、当該ビデオ・ストリーム中の全てのRTP/IPパケットの例えばフレーム・フォーマットを解析し、ビデオ・ストリームAから複製/コピーした重要なパケットのいくつかしか含まない別のマルチキャストQoSストリームBを再構築する。図2bに示すように、再構築されたQoSストリームBは、マルチキャストMACアドレスB2(01−00−5e−01−01−02)および対応するマルチキャストIPアドレスB2’(230.1.1.2)を有するマルチキャスト・グループB1にマルチキャストされる。
【0019】
例えば、QoSサーバ3は、ビデオ・ストリームA中の全てのRTP/IPパケットのフレーム・フォーマットを解析し、(例えばMPEG−2符号化ビデオ・ストリームの)Iフレームを含むこれらのパケットを複製し、これらを記憶する。これは、MPEG−2ストリームでは、BフレームおよびPフレームがIフレームに対して生成されるからである。パケットが、Iフレームだけでなく、例えばBフレームおよび/またはPフレームなどその他のフレームも含む場合には、このパケットは、依然として重要なパケットであると見なされ、QoSサーバ3で記憶される。別の例で、空間的にスケーラブルなビデオ・ストリームでは、重要なパケットがベース・レイヤ・パケットである場合もある。これは、スケーラブルな符号化/復号ストリームでは、ベース・レイヤが低解像度画像に関係し、このベース・レイヤから、高解像度画像に関係する少なくとも1つのエンハンスメント・レイヤが符号化/復号されるからである。QoSサーバ3は、ルータ6を介してビデオ・サーバ1にも要求を送信して、ビデオ・ストリームAのSDP情報を更新することを要求する。更新されたSDP情報は、ビデオ・ストリームAの宛先マルチキャスト・アドレスA2およびA2’と、補足ビデオ・ストリームBの宛先マルチキャスト・アドレスB2およびB2’を示すようになる。ビデオ・ストリームAは、ビデオ・ストリームのパケットも含む。さらに、QoSサーバ3は、ビデオ・サーバ1と一体化されていても、本明細書に示すようにビデオ・サーバ1から分離していてもよい。
【0020】
例えばIPアドレスが10.11.72.64、MACアドレスが00−1c−23−3B−83−5AであるMSなど、WLAN中の移動局2は、ビデオ・サーバ1にSDP情報を求める要求を発行すると、ビデオ・ストリームAに関係するSDP(サービス記述プロトコル)情報をビデオ・サーバ1から受信することになる。このSDP情報を解析することにより、移動局2は、マルチキャストMACアドレスA2(01−00−5e−01−01−01)およびマルチキャストIPアドレスA2’(230.1.1.1)を有するマルチキャスト・グループA1に加入すれば元のビデオ・ストリームAを入手することができ、マルチキャストMACアドレスB2(01−00−5e−01−01−02)およびマルチキャストIPアドレスB2’(230.1.1.2)を有するマルチキャスト・グループB1に加入すれば補足QoSビデオ・ストリームBを入手することができることを学習する。
【0021】
無線アクセス・ポイント(AP)4のQoSエージェント5は、移動局2からストリームAおよび/またはBのパケットを求める要求を受けるまで、ビデオ・サーバ1からのマルチキャスト・ストリームAおよびQoSサーバ3からの補足QoSビデオ・ストリームBのパケットを遮断する。移動局2から送信される要求は、IGMP(インターネット・マルチキャスト・プロトコル)JOINメッセージである。
【0022】
移動局2が、例えばIGMP(インターネット・グループ管理プロトコル)JOINメッセージなどのメッセージをAP4を介してルータ6に送信することによってマルチキャスト・グループA1またはマルチキャスト・グループB1に加入すると、マルチキャスト・ビデオ・ストリームAおよび/またはビデオ・ストリームBが、AP4を介して移動局2に転送される。
【0023】
無線アクセス・ポイント(AP)4は、移動局2から送信されるIGMPメッセージをモニタリングする。MSなどの移動局2からマルチキャスト・グループA1に加入することを求めるIGMP JOIN要求を受信すると、AP4は、元のマルチキャスト・ビデオ・ストリームAをMSにそのまま転送する。ビデオ・ストリームAが以前に送信されており、移動局2がそのコンテンツを既に入手している場合には、移動局2は、このビデオ・ストリームを再度求めることはない。AP4がマルチキャスト・グループB1に加入することを求めるIGMP要求を受信した場合には、QoSエージェント5は、マルチキャスト・ストリームB中のIPマルチキャスト・データ・パケットを、受信したIGMPパケットのソース・アドレスに対応する宛先MACアドレス、すなわちこの場合にはMSのMACアドレス(00−1c−23−3B−83−5A)を有するユニキャストIEEE802.11フレームにカプセル化し、これをマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト方式を用いて送信する。図2cに示すように、IPマルチキャスト・データ・パケットは、変更されていないIPマルチキャスト・グループ・アドレスB2’(230.1.1.2)を含む。通常は、各IPパケットは、イーサネット(登録商標)MACフレームと呼ばれるイーサネット(登録商標)MACヘッダを有する。「宛先MACアドレス」フィールドは、MACヘッダに含まれ、IPパケットが経路指定される宛先を特定する。なお、一般的なマルチキャスト・パケットでは、含まれる宛先MACアドレスは、グループ・アドレスに対応するマルチキャストMACアドレスであることに留意されたい。マルチキャスト・オーバ・ユニキャストを実施するために、含まれる「宛先MACアドレス」は特定のホストMACアドレスに変更するが、その他のフィールドは、一般的なマルチキャスト・パケットと同じままである。この例では、特定のホストMACアドレスは、MSのアドレス(00−1c−23−3B−83−5A)である。マルチキャスト・オーバ・ユニキャスト伝送方式を使用することにより、MACレイヤ再送機構を用いることなく元のビデオ・ストリームAをマルチキャスト・ストリームで移動局2に伝送しながら、これらの最も重要なパケットを、移動局2に確実に送達することができる。実施態様によって、ストリームBは、移動局の一部に送信することもできるし、全ての移動局に送信することもできる。
【0024】
例えばMSなどの移動局2は、マルチキャスト・ストリームAと、マルチキャスト・ストリームBがカプセル化されたマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト・ストリームとを、連続的に受信する。移動局2は、受信したマルチキャスト・ストリームAのRTPパケットを記憶し、解析し、RTPヘッダ中のシーケンス番号フィールドをカウントすることによってマルチキャスト・ストリームA中でRTPパケットが喪失していることを発見した場合には、受信したマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト・ストリームのRTPパケット待ち行列中で同じシーケンス番号を有するRTPパケットを探す。受信したマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト・ストリームのRTPパケット待ち行列中に、受信したマルチキャスト・ストリームAのRTPパケット待ち行列中の喪失したRTPパケットと同じシーケンス番号を有するRTPパケットがある場合には、移動局2は、マルチキャスト・オーバ・ユニキャスト・ストリームのバッファ8中の待ち行列の対応するRTPパケットを、バッファ7中のマルチキャスト・ストリームAの待ち行列にコピーまたは移動する。その後、移動局2は、マルチキャスト・ストリームAの待ち行列中のこれらのRTPパケットを使用して、当該ビデオのフレームを構成し、これらのフレームを復号し、これを再生する。
【0025】
このプロセスの間、AP4は、移動局2から送信されるIGMPメッセージを常にモニタリングしており、移動局2がIGMP離脱メッセージを発行することによってマルチキャスト・グループBを抜けたことを検出したときには、マルチキャスト・オーバ・ユニキャスト・ストリームBの移動局2への伝送を停止する。
【0026】
図3は、この実施例によるネットワークにおけるプロセスを示す流れ図である。このプロセスは、ステップ310で開始される。ステップ320で、メディア・サーバ1は、マルチキャスト・ストリームAを、マルチキャストMACアドレスA2およびマルチキャストIPアドレスA2’を有するマルチキャスト・グループA1に送信する。ステップ330で、例えばビデオ・ストリームAに関係するSDP情報を解析した後で、QoSサーバ3は、マルチキャスト・グループA1に加入し、マルチキャスト・ストリームAを取り込む。その後、QoSサーバ3は、マルチキャストQoSストリームBを生成する。このQoSストリームBは、マルチキャスト・ストリームAからコピー/複製した重要なパケットを含む。移動局(ユーザ)2は、ステップ340でマルチキャスト・ストリームAを申し込むと、マルチキャストMACアドレスA2(01−00−5e−01−01−01)およびマルチキャストIPアドレスA2’(230.1.1.1)を有するマルチキャスト・グループA1に加入すれば元のストリームAを入手することができ、マルチキャストMACアドレスB2(01−00−5e−01−01−02)およびマルチキャストIPアドレスB2’(230.1.1.2)を有するマルチキャスト・グループB1に加入すれば補足QoSビデオ・ストリームBを入手することができることを知る。ステップ350で、QoSエージェント5を有するAP4は、マルチキャスト・グループB1に加入し、QoSビデオ・ストリームBをユニキャストIEEE802.11フレームにカプセル化し、それらをマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト方式を用いて移動局2に送信する。このプロセスは、ステップ360で終了する。従って、AP4から移動局2にQoSビデオ・ストリームBを伝送するときには、ユニキャスト・セッションを確立して、QoSビデオ・ストリームBに含まれるマルチキャスト・パケットを伝送する。
【0027】
図4は、QoSサーバ3におけるプロセスの詳細を示す流れ図である。このプロセスは、ステップ410で開始される。ステップ420で、ビデオ・サーバ1からの新たなパケットが到着しているかどうかを判定する。到着している場合には、プロセスはステップ430に進んで、QoSサーバ3が受信した新たなパケットを解析し、ステップ440で、受信した新たなパケットが重要なパケットであるか否かを判定する。一例では、重要なパケットは、Iフレームに関するデータを含むパケットとして判定される。受信した新たなパケットが重要なパケットである場合には、ステップ450で、受信した新たなパケットのコピーをマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト・ストリームに挿入し、移動局に伝送する。
【0028】
図5は、AP4におけるプロセスの詳細を示す流れ図である。ステップ510で、プロセスが開始される。次いで、ステップ520で、新たなパケットが到着しているかどうかを判定する。到着していると判定された場合には、プロセスはステップ530に進み、この新たなパケットがQoSストリームのパケットであるかどうかを、そのマルチキャスト宛先アドレスB1およびB1’によってさらに判定する。QoSストリームのパケットである場合には、ステップ550で、マルチキャスト・オーバ・ユニキャスト方法を用いてこの新たなパケットを伝送する。その後、ステップ560で、このプロセスは終了する。ステップ530で、QoSストリームのパケットではないと判定された場合、それは、パケットに含まれる宛先アドレスを解析することにより、当該パケットがマルチキャストMACアドレスA1およびIPアドレスA1’を有するマルチキャスト・グループAに向けられたものであり、QoSストリームのパケットではないということになるので、プロセスはステップ540に進み、この新たなパケットを通常のマルチキャスト・パケットとして伝送する。同じメディア・コンテンツ(ペイロード)でも、QoSストリームに含まれているときと、元のメディア・ストリームに含まれているときとでは、マルチキャスト・アドレスが異なるので、前者の場合にはマルチキャスト・オーバ・ユニキャスト方式で移動局2に伝送され、後者の場合にはそのままマルチキャスト方式で移動局2に伝送される。その後、ステップ560で、このプロセスは終了する。
【0029】
図6は、ネットワークの構造およびネットワーク中の装置を示すブロック図である。上記のプロセスを実施するためには、図6に示すように、QoSサーバ3は、メディア・サーバ1からマルチキャスト・パケットを受信するための入力31と、受信したマルチキャスト・パケットが重要なパケットであるか否かの解析および判定を行うプロセッサ32とを含む。受信したマルチキャスト・パケットが、例えばIフレームに関するパケットなど、重要なパケットである場合には、プロセッサ32は、これらの重要なパケットを複製し、新たなマルチキャスト・パケットに再構築する。その後、この再構築された重要なパケットが、出力33を介してAP4に伝送される。
【0030】
従って、AP4には、QoSサーバ3およびメディア・サーバ1からパケットを受信するための入力41がある。また、受信したパケットがメディア・サーバ1からのパケットであるか、QoSサーバ3からのQoSストリームのパケットであるかを解析するQoSエージェント5もある。受信したパケットがメディア・サーバ1からのパケットである場合には、このパケットは、出力43を介して、そのままマルチキャストで移動局2に送信される。受信したパケットがQoSサーバ3からのQoSストリームのパケットである場合には、このパケットは、出力43を介して、マルチキャスト・オーバ・ユニキャスト・モードで移動局2に送信される。
【0031】
上記の説明では、メディア・サーバ1およびQoSサーバ3の装置を別々に配置しているが、これらの装置は、一緒に配置することもできる。さらに、システム全体または特定の装置におけるプロセスについて上記では順番に説明したが、これは、本発明の原理を制限するものと解釈すべきではなく、これらの順序は変更することもできる。
【0032】
いくつかの実施態様について説明した。ただし、様々な修正を加えることができることは理解されるであろう。さらに、当業者なら、開示の構造およびプロセスをその他の構造およびプロセスで置換することができること、ならびに、その結果得られた実施態様が、開示の実施態様と少なくとも実質的には同じである1つまたは複数の機能を、少なくとも実質的には同じである1つまたは複数の方法で実行して、少なくとも実質的には同じである1つまたは複数の結果をもたらすことを理解するであろう。従って、本願は、上記の実施態様およびその他の実施態様を企図するものであり、それらの実施態様は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク中で第1のパケット・セットを含むパケット・ストリームを伝送する方法であって、
前記第1のパケット・セットをマルチキャスト・モードで複数の受信側に送信するステップと、
前記複数の受信側のうちの少なくとも1つの受信側に第2のパケット・セットをユニキャスト・モードで送信するステップと、
を特徴とし、
前記第2のパケット・セットが、前記第1のパケット・セットのパケットのサブセットであり、前記第1のパケット・セットのペイロード・データを復号するために重要度に基づいて選択される、前記方法。
【請求項2】
前記第1のパケット・セットが、マルチキャスト・グループのマルチキャストIPアドレスおよび対応するマルチキャストMACアドレスを有するマルチキャスト・パケットにカプセル化され、前記第2のパケット・セットを少なくとも1つの受信側に送信するときに、前記第2のパケット・セットに含まれるマルチキャストMACアドレスが、前記少なくとも1つの受信側のMACアドレスに変更される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のパケット・セットが、前記少なくとも1つの受信側による前記マルチキャスト・グループに加入することを求める要求に応答して受信側に伝送される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のパケット・セットが、ビデオ・ストリームのIフレームまたはベース・レイヤ・パケットを復号するために必要なパケットである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ネットワーク中で第1のパケット・セットを含むパケット・ストリームを受信する方法であって、
前記第1のパケット・セットをマルチキャスト・モードで受信するステップと、
第2のパケット・セットをユニキャスト・モードで受信するステップであり、前記第2のパケット・セットのパケットが、前記第1のパケット・セットのパケットのサブセットであり、前記第1のパケット・セットのペイロード・データを復号するために重要度に基づいて選択されるステップと、
前記第2のパケット・セットのパケットを用いて、前記第1のパケット・セットの、喪失した、または訂正不可能なパケットを置換するステップと、
を特徴とする、前記方法。
【請求項6】
前記第1のパケット・セットが、マルチキャスト・グループのマルチキャストIPアドレスおよび対応するマルチキャストMACアドレスを有するマルチキャスト・パケットにカプセル化され、前記第2のパケット・セットが送信されるときに、前記第2のパケット・セットに含まれるマルチキャストMACアドレスが、ユニキャストMACアドレスに変更される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のパケット・セットに対応するマルチキャスト・グループに加入するステップと、
前記第2のパケット・セットのユニキャスト伝送をトリガするために、第2のマルチキャスト・グループに加入するステップと、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パケットのサブセットが、ビデオ・ストリームのIフレームまたはベース・レイヤ・パケットを復号するために必要なパケットである、請求項5〜7の何れか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−513692(P2012−513692A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541335(P2011−541335)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066730
【国際公開番号】WO2010/072567
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】