説明

高光沢二重発色インキ組成物及びそれを用いた筆記具

【課題】本発明の目的は、光沢感に優れ、かつ、輪郭線の色によりパール顔料の発色が影響を受けることの無い、高光沢二重発色インキ組成物を提供する。具体的には、二重発色インキにおける二重発色の輪郭線の色の影響を無くし、パール顔料そのものの色と輪郭線の色とのコントラストを明確に区分けさせることで顕著な高光沢二重発色効果を得ることである。
【解決手段】(1)パール顔料及び金属粉顔料、(2)水、(3)分岐した疎水性基を有するアルコール類、グリコール類及びグリコールエーテル類の少なくとも1種の水溶性有機溶剤ならびに(4)水溶性染料を含む高光沢二重発色インキ組成物、及びそれをインキとして用いた筆記具とすることで上記課題を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高光沢二重発色インキ組成物及びそれを用いた筆記具に関する。また、本発明は、上記組成物を用いた発色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二重発色用インキは、これを用いて筆記した場合、その筆跡の周囲にさらに輪郭線が生じて二重発色の筆跡が得られるものであり、マーキングペン、サインペン、水性ボールペン等のインキとして用いられる。
【0003】
従来、二重発色インキとしては、例えば金属粉顔料、水溶性染料、水並びに浸透性有機溶剤からなり、紙、布等の溶剤浸透性表面へ筆記用として用い、金属粉顔料により形成される筆跡の周囲に水溶性染料が浸透拡散して輪郭線効果が生じる二重発色インキ組成物が開示されている。(特許文献1、特許文献2)
【0004】
また、金属粉顔料がイオン化し、このイオン化の過程で水溶性染料を還元してしまう場合があることから、この不具合点を改善し、長期にわたって安定した二重発色効果が得られる二重発色インキ組成物が開示されている。(特許文献3)
【0005】
また、パール顔料および金属粉顔料を単独で使用した場合よりも、両方を混合して使用することにより、高光沢な筆跡が得られる水性高光沢インキ組成物が開示されている。(特許文献4)
【特許文献1】特開昭60−231777号公報
【特許文献2】特開昭61−123684号公報
【特許文献3】特開2000−129188号公報
【特許文献4】特開平10−245517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらのインキ組成物は隠蔽性の優れる金属粉顔料を使用している為、輪郭線の色の種類によらず筆跡の中心部分は金属粉顔料が本来もつ色を示すものの、「光沢感」があるとは言えない。しかし、「光沢感」を出すために金属粉顔料の代わりにパール顔料を使用すると、光沢感は得られるものの、パール顔料自身の隠蔽性が乏しい為、輪郭線の色の影響を受けやすく、同じパール顔料を使用しても輪郭線の色により全く異なる色に見えてしまうという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、光沢感に優れ、かつ、輪郭線の色によりパール顔料の発色が影響を受けることの無い、二重発色インキ組成物を提供することを特徴とするものである。即ち、特開平10−245517号が単に二重発色インキでない通常の筆跡の光沢感の向上等、単一筆跡の意匠性向上を目的としているのに対し、本発明は二重発色インキにおける二重発色の輪郭線の色の影響を無くし、パール顔料そのものの色と輪郭線の色とのコントラストを明確に区分けさせることで顕著な二重発色効果を得る点で両発明は相違するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の欠点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定組成をもつインキが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の1から14よりなる。
【0009】
1.(1)パール顔料及び金属粉顔料、(2)水、(3)分岐した疎水性基を有するアルコール類、グリコール類及びグリコールエーテル類の少なくとも1種の水溶性有機溶剤ならびに(4)水溶性染料を含む高光沢二重発色インキ組成物。
2.さらに水溶性樹脂を含む第1項に記載の高光沢二重発色インキ組成物。
3.パール顔料が金属酸化物被覆雲母である第1項又は第2項に記載の高光沢二重発色インキ組成物。
4.金属粉顔料がアルミニウム系顔料である第1項〜第3項に記載の高光沢二重発色インキ組成物。
5.パール顔料と金属粉顔料との重量比率がパール顔料10に対して金属粉顔料0.1〜5であり、パール顔料及び金属粉顔料を合計して4〜20重量%(固形分として)含有する第1項〜第4項のいずれかに記載の高光沢二重発色インキ組成物。
6.水溶性有機溶剤が、一般式CnH2n+2O(n:4〜6の整数)で示されるアルコール類である第1項〜第5項のいずれかに記載の高光沢二重発色インキ組成物。
7.水溶性有機溶剤が、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びヘキシレングリコールの少なくとも1種である第1項〜第5項のいずれかに記載の高光沢二重発色インキ組成物。
8.水溶性染料が、アントラキノン系染料、ジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、キサンテン系染料、アクリジン系染料、金属錯塩系染料の少なくとも1種である第1項〜第7項のいずれかに記載の高光沢二重発色インキ組成物。
9. 第1項〜第8項のいずれかに記載の水性ボールペン用高光沢二重発色インキ組成物。
10.ELD型粘度計3°(R14)コーン 0.5rpm(20℃)で測定したときのインキ粘度が1000〜10000mPa・sである第9項記載の水性ボールペン用高光沢二重発色インキ組成物。
11.第1項〜第10項のいずれかに記載の組成物をインキとして用いた筆記具。
12.第9項又は第10項に記載の組成物をインキとして用いた水性ボールペン。
13.ボールペンチップにおけるボール直径とボールハウス内径との差が0.03mm以上であるチップを用いた第12項に記載の水性ボールペン。
14.第1項〜第10項のいずれかに記載のインキ組成物を用いて吸収面上に描いた筆跡の少なくとも一部を消しゴムで擦ることによりパール顔料及び金属粉顔料を取り除くことを特徴とする発色方法。
【0010】
上記消しゴムは、特に制限されず、いずれの市販品も使用することができる。また、吸収面の種類(材質)も限定的ではなく、本発明の効果が得られる限りはいずれのタイプの吸収面にも適用できる。例えば、紙類、繊維質・木質材料、布類等が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高光沢二重発色インキ組成物及びそれを用いた筆記具では、光沢感に優れ、かつ、輪郭線の色によりパール顔料本来の発色が影響を受けること無く、安定した高光沢二重発色効果を得ることができる。また、本発明インキ組成物によれば、水性インキが増粘されていても、着色剤が筆記面に十分に浸透拡散されて効果的な輪郭線を形成でき、優れた二重発色効果を得ることができる。
【0012】
本発明の高光沢二重発色インキ組成物は、各種の筆記具のインキとして用いることができ、特に水性ボールペン用インキとして最適である。また、本発明の水性ボールペンにおいて特定構造のボールペンチップを採用すれば、最適なインキ流出量を確保することができる結果、本発明インキ組成物による二重発色効果をより確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1.高光沢二重発色インキ組成物
本発明の高光沢二重発色インキ組成物は、(1)パール顔料及び金属粉顔料、(2)水、(3)分岐した疎水性基を有するアルコール類、グリコール類及びグリコールエーテル類の少なくとも1種の水溶性有機溶剤ならびに(4)水溶性染料を含有するものである。
【0014】
・パール顔料
パール顔料としては、光輝感に優れるものであれば特に限定されず、屈折率の低い天然マイカや、合成マイカの表面を屈折率の高い金属酸化物で被覆したものや、魚鱗箔、塩基性炭酸塩、オキシ塩化ビスマスがあるが、一般的には天然マイカや合成マイカを金属酸化物で被覆したものが好ましい。パール顔料は屈折率の異なる平行な面での規則的な多重反射によって光沢が出るため、粒子径が5μmより小さいと光沢感が弱くなる。従って、その粒子径は5μm以上が好ましい。市販されているパール顔料としては、Iriodin100(粒子径10〜60μm、シルバー色)、Iriodin103(同10〜50μm、シルハ゛ー色)、Iriodin300(同10〜60μm、金色)、Iriodin302(同5〜20μm、金色)、Iriodin323(同5〜20μm、金色)、Iriodin504(同10〜60μm、赤色)、Iriodin524(同5〜20μm、赤色)、Iiriodin502(同10〜60μm、ブロンズ色)、Iriodin520(同5〜20μm、ブロンズ色)(以上、メルクジャパン社製)や、ULTIMICA SB−100(同5〜30μm、シルバー色)、ULTIMICA SD−100(同10〜60μm、シルバー色)、ULTIMICA RYB−100(同5〜30μm、金色)、ULTIMICA RYD−100(同10〜60μm、金色)(以上、日本光研工業社製)や、TAYCA PEARL TP−500(同10〜70μm、シルバー色)、TAYCA PEARL TPX−720(同7〜45μm、シルバー色)(以上、テイカ社製)がある。パール顔料は、単独でも2種以上併用しても使用できる。
【0015】
・金属粉顔料
金属粉顔料としては、金属光沢を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム系顔料、真鍮系顔料等が挙げられる。アルミニウム系顔料としては、例えば「アルペーストWJP−U75C」、「アルペーストWE1200」、「アルペーストWXM7675」、「アルペーストWXM0630」(以上、東洋アルミニウム製)、「1110W」、「2172SW」(以上、昭和アルミニウム製)、「AW−808C」、「AW7000R」(以上、旭化成製)等が挙げられる。真鍮系顔料としては、例えば「BS−605」、「BS−607」(以上、東洋アルミニウム製)、「ブロンズパウダーP−555」、「ブロンズパウダーP−777」(以上、中島金属箔粉工業製)等が挙げられる。また、「F500RG−W」、「F500BG−W」、「F701GR−W」、「F701RE−W」(以上、昭和アルミニウム製)等の着色アルミニウム系顔料も使用できる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。なお、金属粉顔料の粒径は、筆跡の意匠性に応じて適宜選定することができる。
【0016】
これら金属粉顔料の中でも、耐水性処理が施されているものが好ましい。耐水性処理は公知の方法で行える。例えば、リン酸含有溶液で処理された顔料等が使用でき、また市販品も使用できる。市販品としては、例えば上記「アルペーストWXM0630」(東洋アルミニウム製)、「AW7000R」(旭化成製)等が挙げられる。
【0017】
パール顔料と金属粉顔料との重量比率は、所望される意匠性や用いる顔料の種類等に応じて適宜定めることができるが、好ましくはパール顔料10に対して金属粉顔料0.1〜5であり、より好ましくはパール顔料10に対して金属粉顔料0.2〜3である。金属粉顔料の使用比率が5以上になるとパール顔料本来の高い光沢感が得られなくなる。また0.1未満になると金属粉顔料のもつ隠蔽効果が十分に発揮されないため、輪郭線の色の影響を受けやすく、同じパール顔料を使用しても輪郭線の色により全く異なる色に見えてしまうという不具合が発生するおそれがある。従って、本発明では、パール顔料と金属粉顔料との重量比率は、パール顔料10に対して金属粉顔料0.1〜5とするのが良い。
【0018】
パール顔料及び金属粉顔料の合計含有量は、用いる顔料の種類等に応じて適宜定めることができるが、好ましくは本発明インキ組成物中に固形分として4〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%である。含有量が15重量%を超えるとインキ中の固形分濃度が高くなり、粘度、流動性等に悪影響を与えることがある。また4重量%未満であれば顔料による隠蔽性が不十分となり、二重発色効果が得られなくなるおそれがある。従って、本発明では、パール顔料及び金属粉顔料の合計含有量が4〜20重量%程度となるようにすれば良い。
【0019】
・水溶性有機溶剤
水溶性有機溶剤としては、分岐した疎水性基を有するアルコール類、グリコール類及びグリコールエーテル類の少なくとも1種を用いる。
本発明の水溶性有機溶剤における「分岐した疎水性基を有する」構造とは鎖状化合物において疎水性基が主鎖に側鎖として結合している構造を意味する。疎水性基の種類は、メチル基、エチル基等のいずれであっても良い。疎水性基は、分子中に1つ又は2つ以上有していても良く、また2つ以上有する場合は互いに同じであっても異なっていても良い。
【0020】
上記の水溶性有機溶剤のうち、分岐した疎水性基を有するアルコール類としては、特に一般式CnH2n+2O(n:4〜6の整数)で示される化合物、例えばイソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール(C4)、イソペンタノール、s−ペンタノール、t−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール(C5)、2−エチルブタノール、4−メチル−2−ペンタノール(C6)等が挙げられる。
【0021】
分岐した疎水性基を有するグリコール類及びグリコールエーテル類としては、例えば1,3−オクチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)誘導体、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これら水溶性有機溶剤の中でも、特にジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール等を好適に使用することができる。
【0022】
水溶性有機溶剤の含有量は、水溶性有機溶剤の種類等に応じて適宜定めることができるが、通常は本発明インキ組成物中1〜50重量%程度、好ましくは5〜30重量%とする。水溶性有機溶剤の含有量が50重量%を超える場合は水溶性樹脂の溶解性が低下して析出するおそれがある。水溶性有機溶剤の含有量が1重量%未満の場合は十分な浸透拡散が得られなくなることがある。
【0023】
・水溶性染料
水溶性染料としては、本発明ではアントラキノン系染料、ジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、キサンテン系染料、アクリジン系染料、1:1型金属錯塩染料、1:2型金属錯塩染料及び銅フタロシアニン系染料から選ばれる少なくとも1種を用いることできる。これら染料自体は、公知のもの又は市販品をそのまま用いることもできる。本発明では、これら染料の中でもカルボニウム系染料及び金属錯塩系染料の少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0024】
アントラキノン系染料としては、アントラキノン骨格を有するものであれば良く、アントラキノン誘導体、アントロン誘導体等を含む。例えば、C.I.Acid Blue 27、C.I.Acid Blue 43、C.I.Acid Green 25、C.I.Basic Violet 25、C.I.Basic Blue 60、C.I.Mordnt Red 11、C.I.Acid Red 83、C.I.Direct Green 28、C.I.Mordant Blue 48 等を用いることができる。
【0025】
ジフェニルメタン系染料としては C.I.Basic Yellow 2、C.I.Basic Yellow 3、C.I.Basic Yellow 37等を用いることができる。
トリフェニルメタン系染料としては C.I.Acid Blue 90、C.I.Acid Blue 104、C.I.Acid Green 16、C.I.Acid Violet 49、C.I.Basic Red 9、C.I.Basic Blue 7、C.I.Acid Violet 1、C.I.Acid Red 289、C.I.Direct Blue 41、C.I.Mordnt Blue 1、C.I.Mordnt Violet 1等を用いることができる。
【0026】
キサンテン系染料としてC.I.Acid Yellow 73、C.I.Acid Yellow 74、C.I.Acid Red 52、C.I.Acid Violet 30、C.I.Basic Red 1、C.I.Basic Violet 10、C.I.Mordnt Red 27、C.I.Mordnt Violet 25等を用いることができる。
【0027】
アクリジン系染料としては C.I.Basic Yellow 6、C.I.Basic Yellow 7、C.I.Basic Orange 14、C.I.Basic Orange 15等を用いることができる。
【0028】
金属錯塩系染料としては、金属錯塩染料のほか、金属を含有する染料及び金属と配位結合し得る染料も包含される。例えば、金属と配位結合し得る染料としては、OH基、COOH基、NH2基等を有するアゾ系染料等を使用することができる。かかるアゾ系染料としては、例えば C.I.Mordant Red 30、C.I.Mordant Yellow 3、C.I.Mordant Green 15、C.I.Mordant Blue 13等を用いることができる。
【0029】
これら金属錯塩系染料の中でも、特に銅フタロシアニン系染料、1:1型金属錯塩染料、1:2型金属錯塩染料等を好適に使用することができる。具体的には、銅フタロシアニン系染料としては C.I.Direct Blue 86 等、1:1型金属錯塩染料としては C.I.Acid Yellow 54、C.I.Acid Orange 74、C.I.Acid Red 186、C.I.Acid Violet 56等、1:2型金属錯塩染料としては C.I.Acid Yellow 59、C.I.Acid Black 60、C.I.Acid Red 296、C.I.Acid Blue 167 等をそれぞれ例示することができる。
【0030】
水溶性染料の含有量は、水溶性染料の種類等に応じて適宜定めることができるが、通常は本発明インキ組成物中0.05〜5重量%程度、好ましくは0.1〜3重量%とすれば良い。水溶性染料が5重量%を超える場合は、粘度・流動性に悪影響を与えることがある。また、水溶性染料が0.05重量%未満の場合は、所望の二重発色効果が得られないことがある。
【0031】
・水溶性樹脂等
本発明では、必要に応じて水溶性樹脂を配合することもできる。水溶性樹脂としては、水性インキに増粘性及び/又は接着性を付与できるものであれば特に制限されず、使用目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、微生物産系多糖類又はその誘導体としてプルラン、ザンサンガム、ウェランガム、ラムザンガム等;水溶性植物系多糖類又はその誘導体としてグァーガム、ローカストビーンガム、ペクチン;水溶性動物系多糖類又はその誘導体としてゼラチン、カゼイン等;セルロース誘導体としてヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類のナトリウム塩、アンモニウム塩等;デンプン質誘導体としてデンプン、カチオンデンプン、デキストリン、変性デキストリン、デンプングリコール酸ナトリウム等;ビニル系合成高分子としてポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル等;アクリル系合成高分子としてポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等;その他の合成高分子としてポリエチレンオキシド、メトキシエチレンマレイン酸共重合体等が使用できる。これらは、1種又は2種以上で用いることができる。
【0032】
水溶性樹脂の含有量は、水溶性樹脂の種類等に応じて適宜定めることができるが、通常は本発明インキ組成物中0.05〜40重量%程度、好ましくは0.1〜30重量%とすれば良い。水溶性樹脂が40重量%を超える場合は、筆記が困難になるおそれがある。水溶性樹脂が0.05重量%未満の場合は所定の添加効果が得られなくなることがある。
【0033】
本発明インキ組成物では、その効果を妨げない範囲内で他の添加剤を配合することもできる。例えば、潤滑剤としてポリオキシエチレンアルカリ金属塩、ジカルボン酸アミド、リン酸エステル、N−オレイルサルコシン塩等;湿潤剤として多価アルコール又はその誘導体(グリセリン等);防錆剤としてベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトレート等;防腐・防錆剤としてベンゾイソチアゾリン系、ペンタクロロフェノール系、クレゾール等、その他にも各種の分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
本発明インキ組成物のインキ粘度は、特に水性ボールペン用として用いる場合は、ELD型粘度計3°(R14)コーン 0.5rpm(20℃)で測定した粘度が通常1000〜10000mPa・s程度であることが好ましい。この範囲のインキ粘度とすることにより、水性ボールペンとして特に優れた経時安定性、筆記性を得ることができる。なお、インキ粘度は、水溶性樹脂、水等により調整することができる。
【0035】
本発明インキ組成物は、公知の分散方法、脱泡方法、濾過方法等を用いて調製できる。例えば、水、水溶性染料及び金属粉顔料を混合・攪拌した後、水溶性樹脂を配合し、次いで水溶性有機溶剤及び必要に応じて各種の添加剤を配合することにより得られる。なお、各工程での混合又は攪拌は、デゾルバー、ミキサー、ニーダー等の公知の攪拌装置を用いれば良い。
【0036】
2.筆記具
本発明のインキ組成物は、各種の筆記具のインキとして使用でき、例えばマーカー、サインペン、ボールペン等として用いることができるが、特に水性ボールペン用インキとして好適に用いることができる。本発明の筆記具は、インキ以外の点においては基本的に公知の筆記具(マーカー、水性ボールペン等)の構成部材を適宜採用することができる。
水性ボールペンの場合、例えばインキ収容管も、公知の材料・大きさのものをそのまま適用できる。その材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製パイプ、その他にも金属製パイプが採用できる。ボールペンの組み立ては、公知のボールペン組立方法に従えば良い。
【0037】
また、ボールペンチップについても公知の水性ボールペンで用いられているものと同様の材質・構造を採用できるが、特にボール直径とボールハウス内径との差が通常0.03mm以上、特に0.03〜0.07mmであるボールペンチップを用いることが本発明インキ組成物(本発明筆記具)にとって好ましい。本発明において、上記差はボールとボールハウス内面との距離が最も近くなる箇所における距離に相当する。従来のボールペン(ボールペンチップ)におけるボール直径とボールハウス内径との差は通常0.01〜0.02mm程度であるが、本発明では特に0.03mm以上という大きな差を設けることによって、本発明インキ組成物による良好な二重発色効果をより確実に得ることができる。
【0038】
3.発色方法
本発明は、本発明インキ組成物を用いて吸収面上に描いた筆跡の少なくとも一部を消しゴムで擦ることによりパール顔料と金属粉顔料を取り除くことを特徴とする発色方法も包含する。
【0039】
本発明インキ組成物による筆跡は、消しゴムで擦ればパール顔料と金属粉顔料の面のみが実質的に取り除かれ、染料面だけが吸収面上に残ることになる。これにより、覆われていた染料面も露出する結果、染料のみの発色を得ることができる。例えば、筆跡の一部のみを消しゴムで擦った場合には、二重発色と染料のみの発色との組み合わせからなる多彩な外観を作り出すことができ、いろいろなデザインの創作が可能になる。
【0040】
本発明インキ組成物による筆跡は、これを消しゴムで擦ると実質的にパール顔料と金属粉顔料が取り除かれる結果、染料のみによる発色を容易に得ることができ、多様なデザインを創出することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。表1に比較対象A〜C、実施例1〜7及び比較例1〜4の組成を示す。尚、表1に示す配合(重量%)のインキをそれぞれ常温でデスパーを用い2時間攪拌して調製した。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示す各成分は以下の通りである。
(1)パール顔料
・パール顔料1:金属酸化物被覆雲母(「Iriodin323」メルク製)
・パール顔料2:金属酸化物被覆雲母(「Iriodin520」メルク製)
(2)金属粉顔料
・金属粉顔料1:アルミニウム粉顔料(「アルペーストWXM0630」東洋アルミニウ ム製)
・金属粉顔料2:アルミニウム粉顔料(「AW7000R」旭化成製)
(3)水溶性有機溶剤
・水溶性有機溶剤1:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(試薬)
・水溶性有機溶剤2:ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(試薬)
(4)水溶性樹脂
・水溶性樹脂1:ラムザンガム(「K7C233」三晶製)
・水溶性樹脂2:PVA(「PVA−204」クラレ製)
(5)水溶性染料
・水溶性染料1:Acid Red 289
・水溶性染料2:Acid Green 16
・水溶性染料3:Acid Blue 104
(6)添加剤
・防腐剤 :(「プロクセルXL−2」ソリューシア製)
・防カビ剤:(「コートサイドH」武田薬品製)
【0044】
以上、表1に示す比較対象A〜C、実施例1〜7及び比較例1〜4の各インキ組成物を、ステンレスボールペンチップ(ボール材質:セラミックス)を一端に取り付けたポリプロピレン製インキ収容管に充填し、インキ逆流防止体(シリコーンオイルをゲル化したもの)を充填してボールペンレフィールを作製した。次に、本体にボールペンレフィールを取り付け、キャップを装着した後、遠心分離機により管中の空気を除去し、最後に尾栓を装着してボールペンを得た。
【0045】
そして、比較対象として作製したインキ(輪郭線を得るための染料が配合されていないインキ)を充填したボールペンの筆跡と実施例、比較例で作製したボールペンの筆跡とを比較し、下記の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
○ :パール色部分の色が比較対象と同じ色に見える。
× :パール色部分の色が輪郭線の色の影響を受け、比較対象と異なる色に見える。
比較例1〜4は、パール色部分の色が輪郭線の色の影響を受け、比較対象と異なる色に見えた。比較例1と比較例2を比べても水溶性染料以外の組成は同一であるにもかかわらず、異なるパール色に見えた。
【0046】
これに対し、実施例1〜7では、パール色部分の色が比較対象と同じ色に見えた。従って、水溶性染料以外の組成を同一にし、水溶性染料を異なる色にした場合にも、輪郭線の色の影響を受けることなく、安定したパール色の発色が得られる。これらの筆跡を市販の消しゴムで擦ったところ、その部分のパール顔料と金属粉顔料が取り除かれ、水溶性染料による線が鮮明に現れた。
【0047】
これらの結果から明らかなように、本発明のインキは、輪郭線の色の影響を受けることなく、安定したパール色の発色が得られる二重発色インキ組成物である。











【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)パール顔料及び金属粉顔料、(2)水、(3)分岐した疎水性基を有するアルコール類、グリコール類及びグリコールエーテル類の少なくとも1種の水溶性有機溶剤ならびに(4)水溶性染料を含む高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項2】
さらに水溶性樹脂を含む請求項1に記載の高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項3】
パール顔料が金属酸化物被覆雲母である請求項1又は2に記載の高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項4】
金属粉顔料がアルミニウム系顔料である請求項1〜3に記載の高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項5】
パール顔料と金属粉顔料との重量比率がパール顔料10に対して金属粉顔料0.1〜5であり、パール顔料及び金属粉顔料を合計して4〜20重量%(固形分として)含有する請求項1〜4のいずれかに記載の高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項6】
水溶性有機溶剤が、一般式CnH2n+2O(n:4〜6の整数)で示されるアルコール類である請求項1〜5のいずれかに記載の高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項7】
水溶性有機溶剤が、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びヘキシレングリコールの少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項8】
水溶性染料が、アントラキノン系染料、ジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、キサンテン系染料、アクリジン系染料、金属錯塩系染料の少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の水性ボールペン用高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項10】
ELD型粘度計3°(R14)コーン 0.5rpm(20℃)で測定したときのインキ粘度が1000〜10000mPa・sである請求項9記載の水性ボールペン用高光沢二重発色インキ組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の組成物をインキとして用いた筆記具。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の組成物をインキとして用いた水性ボールペン。
【請求項13】
ボールペンチップにおけるボール直径とボールハウス内径との差が0.03mm以上であるチップを用いた請求項12記載の水性ボールペン。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載のインキ組成物を用いて吸収面上に描いた筆跡の少なくとも一部を消しゴムで擦ることによりパール顔料及び金属粉顔料を取り除くことを特徴とする発色方法。



























【公開番号】特開2007−31558(P2007−31558A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216652(P2005−216652)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】