説明

高分子フィルムの製造方法およびその利用

【課題】フィルムの流れ方向および幅方向ともに物性差がほとんどなく、諸物性の均一性に優れた高分子フィルムの製造方法およびその利用を提供する。
【解決手段】高分子フィルムの製造方法は、ゲルフィルム両端部を固定する前に、加熱炉内でゲルフィルム中央部に生じる収縮力に逆らう応力を、ゲルフィルム中央部に負荷するため、ボーイング現象を抑制することができる。それゆえ、フィルムの流れ方向および幅方向ともに諸物性を均一化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子フィルムの製造方法およびその利用に関するものであって、フィルムの流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)共に諸物性の均一性が高い高分子フィルムの製造方法およびその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリント配線板やTAB用キャリアテープ等の材料には、高分子フィルムが用いられている。例えば、ポリイミドフィルムは、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性および耐低温性等を備えており、コンピュータ並びにIC制御の電気・電子機器部品材料の支持体として広範に用いられている。
【0003】
一方、近年、コンピュータ並びにIC制御の電気・電子機器の小型化・軽量化が進み、配線基板やICパッケージ材料においても小型化・軽量化が求められるようになっている。さらに、これらに施される配線パターンも細密になってきている。そのため、上記高分子フィルムにおいて、上記要望に応えるべく、より高い寸法安定性が求められるようになってきている。
【0004】
ポリイミドフィルムのような溶融加工の困難な高分子材料からなるフィルムの場合、その製造には、以下のような連続成形方法が用いられる。すなわち、まず、高分子材料を非プロトン性極性溶媒等の溶媒に溶解して溶液状態にする。そこに、脱水剤、種々の触媒等の硬化剤を加えた後、ダイキャスト法、または塗布法等の方法で、ベルトまたはドラムなどの支持体上に流延または塗布する。その後、加熱、反応、および乾燥を行い、自己支持性をもつフィルム(ゲルフィルム)を得る。さらに、当該ゲルフィルムを上記支持体から引き剥がし、引き続きピン等で当該ゲルフィルムの両端を固定した後、該フィルムを搬送しながら、加熱炉を通過させることにより、最終的な高分子フィルムを得る。
【0005】
ところが、上記のような製造方法では、加熱炉内においてフィルムの両側端は把持手段により把持されている。そのため、フィルムに含有される溶剤の蒸発に伴い生じる横方向の収縮(実質的には横延伸と同義である)と、上記横方向の収縮によって生じる縦方向の収縮応力とは、フィルムの両側端では、把持手段によって拘束されている。
【0006】
これに対し、フィルム中央部分においては、把持手段による拘束力が比較的弱い。そのため、上記収縮応力の影響によって、把持手段で把持されているフィルムの両側端に対してフィルム中央部分では遅れが生じ、フィルム中央部分が移動する傾向がある。分かりやすくいえば、上記ゲルフィルムの面上に横方向に沿って直線を描いておくと、この直線は横延伸の際に変形する。具体的には、フィルムの進行方向に対して横延伸の始めの領域で凸型に変形し、横延伸の終わり直前の領域で直線に戻り、横延伸終了後には凹型に変形する。さらに、加熱炉内で加熱するときに凹形の変形は最大値に達する。その結果、得られたフィルムには凹形の変形が残る。この現象はボーイング現象と称されているものである。このボーイングの現象がフィルムの幅方向の物性、特に配向角分布などの光学的特性、機械的特性、湿度膨張率、熱膨張率、および熱収縮率を不均一にする原因となっている。
【0007】
このようなフィルム面内における特性の差は、フィルム加工時において、フィルム面内の場所および方向による品質差、特に寸法変化の差を生む原因となる。このことは、精密部品等の用途、例えば、回路形成のベース材や記録媒体等の用途において、大きな問題となる。したがって、フィルム面内の特性の等方性を確保するための技術改善が求められている。
【0008】
そこで、このような幅方向の物性差を解消するために幾つかの提案がなされている。例えば、横延伸と熱処理との間にニップロールを設けて、中央部を強制的に進行させる方法(特許文献1を参照);ガラス転移温度以上で熱固定する延伸フィルムの製造方法において、熱固定においてフィルムの幅方向で、フィルムの中央部からフィルムの端部に向かって、該熱固定時間を長くする方法(特許文献2を参照);フィルムをガラス点移転温度以上で熱固定する延伸フィルムの製造方法において、熱固定温度までフィルム温度を昇温せしめる過程で、フィルムの幅方向の位置によって昇温速度に差をつける方法(特許文献3を参照);フィルムを二軸延伸後、フィルムの中央部より端部の温度が高くなるように加熱する方法(特許文献4を参照)などが提案されている。
【0009】
また、ポリイミドフィルムのボーイング現象抑制の手段としては、例えば、フィルムのボーイング現象の発生状態を観測した後、加熱炉温度を決定する方法(特許文献5を参照);テンター炉入口のフィルム固定端から加熱炉において、フィルム固定端から炉内進行方法へフィルム幅と同じ長さまでは主たる揮発分の沸点以上に加熱しない方法(特許文献6を参照);ゲルフィルムを150℃以下で走行方向に1.1〜1.9倍延伸し、次いで幅方向に400℃以下で走行方向の延伸倍率の0.9〜1.3倍の倍率で延伸する方法(特許文献7を参照)などが提案されている。
【特許文献1】特公昭63−24459号公報(昭和63(1988)年2月1日公開)
【特許文献2】特開2002−137286号公報(平成14(2002)年5月14日公開)
【特許文献3】特開2002−18948号公報(平成14(2002)年1月22日公開)
【特許文献4】特開平6−262676号公報(平成6(1994)年9月20日公開)
【特許文献5】特開2002−154168号公報(平成14(2002)年5月28日公開)
【特許文献6】特開平8−230063号公報(平成8(1996)年9月10日公開)
【特許文献7】特開平5−237928号公報(平成5(1993)年9月17日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1〜4に開示されている技術は、ポリエステル等の熱可塑性フィルムに関するものである。そのため、ポリイミドフィルムのような溶融加工の困難な高分子材料からなるフィルムへの応用が困難である。すなわち、ポリエステルなどの場合と同等の効果が得られないという問題がある。
【0011】
また、上記特許文献5〜7の方法では、ボーイング現象を多少制御することはできても、光学的特性、熱寸法安定性、機械的特性、および平面性などを損なわずにフィルムの幅方向における諸物性を均一化することが困難である。さらに、これらの方法では、装置が大型化するといった問題が生じる。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルムの流れ方向、および幅方向ともに、物性差がほとんどなく、諸物性の均一性に優れた高分子フィルムの製造方法およびその利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ゲルフィルムに含有される揮発成分が、加熱炉内で加熱され揮発するときに生じるフィルム中央部の収縮に逆らう応力を、当該ゲルフィルムを加熱炉に挿入する前に、ゲルフィルム中央部に負荷することによって、ボーイング現象を抑制できることを独自に見出し、本発明を完成されるに至った。
【0014】
すなわち、本発明にかかる高分子フィルムの製造方法は、高分子樹脂からなり揮発成分を含有するゲルフィルムを用いて高分子フィルムを製造する高分子フィルムの製造方法において、ゲルフィルム両端部を固定して、上記ゲルフィルムを加熱炉に挿入する工程と、上記ゲルフィルムを、加熱炉内を通過させながら、加熱することによって、上記ゲルフィルムを乾燥、硬化、または焼成させる工程とを含み、かつ、上記ゲルフィルム両端部を固定する前に、加熱炉内でゲルフィルム中央部に生じる収縮力に逆らう応力を上記ゲルフィルム中央部に負荷することを特徴としている。
【0015】
また、上記高分子フィルムの製造方法では、上記ゲルフィルム両端部を固定する前に、上記ゲルフィルムを、ロール中央部半径がロール端部半径よりも大きい誘導ロールに接触させることによって、上記応力を上記ゲルフィルム中央部に負荷することが好ましい。
【0016】
さらに、上記高分子フィルムの製造方法では、上記ゲルフィルム両端部を固定する前に、上記ゲルフィルムを、ロール中央部半径がロール端部半径の1.01〜1.50倍の範囲内であり、かつ、ロール中央部幅がゲルフィルム幅の0.05〜0.75倍の範囲内である誘導ロールに接触させることによって、上記応力を上記ゲルフィルム中央部に負荷することが好ましい。
【0017】
上記ゲルフィルムの揮発成分含有率は、下記式で規定される範囲内であることが好ましい。
【0018】
15(%)<{(ゲルフィルムの揮発成分含有重量)/(ゲルフィルムの固形分重量)}×100(%)<200(%)
また、上記高分子樹脂はポリイミドであることが好ましい。
【0019】
さらに、上記高分子樹脂からなる高分子フィルムの弾性率は、3GPa以上であることが好ましい。
【0020】
本発明にかかるフィルムの製造装置は、高分子樹脂からなるゲルフィルムを加熱し、乾燥、硬化、または焼成させることによって、連続的に高分子フィルムを製造するフィルムの製造装置において、上記ゲルフィルムを固定するためのフィルム固定手段と、上記ゲルフィルムが上記フィルム固定手段によって固定される前に、加熱炉内でゲルフィルム中央部に生じる収縮力に逆らう応力を上記ゲルフィルム中央部に負荷するための誘導ロールとを備えることを特徴としている。
【0021】
上記誘導ロールのロール中央部半径が、ロール端部半径の1.01〜1.50倍の範囲内であり、かつ、ロール中央部幅が、ゲルフィルム幅の0.05〜0.75倍の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる高分子フィルムの製造方法では、ゲルフィルム両端部が固定される前に、加熱炉内でゲルフィルム中央部に生じる収縮力に逆らう応力をゲルフィルム中央部に負荷する。そのため、ゲルフィルム両端部を固定した状態で、加熱炉にて焼成する際に生じるボーイング現象の発生を抑制できる。それゆえ、フィルムの流れ方向および幅方向ともに、諸物性の均一性が高い高分子フィルムが得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
<I.高分子フィルム>
本発明にかかる高分子フィルムは、フィルムの流れ方向(以下、「MD方向」ともいう)、および幅方向(以下、「TD方向」ともいう)に沿って物性差がほとんどない均一性に優れた高分子フィルムである。より具体的にいえば、当該高分子フィルムの平面内で、MD方向、TD方向、MD方向から右45°方向、およびMD方向から左45°方向への線膨張係数および弾性率の最大値と最小値との比(最大値/最小値)が、1.3以下であることが好ましい。
【0025】
本発明において、上記高分子フィルムは、直線性が高い、換言すると高い弾性率を有する高分子フィルムであることが好ましい。具体的には、上記高分子フィルムの弾性率は、3GPa以上であることが好ましい。このような高分子フィルムは、加熱過程での面内配向が強く進み、またその配向が特性に与える影響が大きいため、本発明の製造方法により大きな効果を得ることができる。なお、上記高分子フィルムの弾性率は、ASTM D882に準拠して測定することができる。
【0026】
また、加熱溶融により直接フィルム状に加工可能な場合には加熱過程での面内配向の問題が生じないため、本発明にかかる高分子フィルムは、熱溶融による加工が不可能な高分子フィルムであることが好ましい。
【0027】
具体的には、芳香族ポリイミドをはじめ、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、およびその他の液晶性高分子、並びに各種ラダーポリマー等のフィルムが例として挙げられる。
【0028】
上記高分子フィルムの形状は特に限定されるものではないが、フィルムの厚みが、1〜500μmであると、特に本発明の効果が得やすくなる。さらに、フィルム幅は、ゲルフィルムが500mm以上で連続的に製造される場合に、顕著な効果が得られる。
【0029】
<II.高分子フィルムの製造方法>
本発明者らは、ゲルフィルムを加熱し、乾燥、硬化、または焼成させることにより、高分子フィルムを製造する場合に、高分子フィルムの幅方向に沿って物性差が生じる原因を解析した。その結果、ゲルフィルム両端部を固定した状態で加熱炉に搬送された直後に、ゲルフィルム中央部は、ゲルフィルムに含有される有機溶剤の蒸発に伴って、その平面内で均等に収縮することが分かった。一方、ゲルフィルム端部ではフィルム固定手段により拘束されているため、その平面内で均等な収縮が生じなかった。以上のことから、高分子フィルムの端部近傍において、物性の差異が生じるのは、ゲルフィルムに含有される有機溶剤の蒸発によるゲルフィルムの収縮が、ゲルフィルム中央部とゲルフィルム端部とで異なるためであることが明らかとなった。
【0030】
そこで、本発明にかかる高分子フィルムの製造方法は、高分子樹脂からなり揮発成分を含有するゲルフィルムの、ゲルフィルム両端部を固定して、上記ゲルフィルムを加熱炉に挿入する工程(以下、「ゲルフィルム固定工程」ともいう)と、上記ゲルフィルムを、上記加熱炉内を通過させながら、加熱することによって、上記ゲルフィルムを乾燥、硬化または焼成させる工程(以下、「焼成工程」ともいう)とを少なくとも含んでいればよく、その他の具体的な構成は特に限定されるものではない。例えば、上記工程に加えて、高分子樹脂を、揮発成分を含有するゲルフィルムに成形する工程(以下、「ゲルフィルム成形工程」ともいう)を含んでいてもよい。
【0031】
上記構成によれば、上記<I>項で述べた高分子フィルムを好適に製造することができる。すなわち、本発明は、加熱の過程でフィルムの分子鎖の面内配向が進むフィルムであれば、どのような高分子フィルムにも適用することができる。
【0032】
以下、上記の各工程について、詳細に述べる。
【0033】
(II−1.ゲルフィルム成形工程)
上記ゲルフィルム成形工程は、高分子樹脂を、揮発成分を含有するゲルフィルムに成形する工程である。本明細書において、「揮発成分」とは、ゲルフィルムに含まれる物質であって、焼成工程後の高分子フィルムにおいて、その含有量が減少する物質をいう。つまり、上記揮発成分とは、特に限定されるものではなく、高分子樹脂やその原料を溶解するために用いる有機溶媒、高分子樹脂をゲルフィルムに成形する過程で生成される生成水分、高分子樹脂を硬化させるために用いられる脱水剤および/または環化触媒などが含まれる。上記有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルスルホンが例示できる。
【0034】
本発明においては、上記ゲルフィルムにおける揮発成分の含有率(以下、「揮発成分含有率」ともいう)は15〜200%であることが好ましい。
【0035】
尚、揮発成分含有率は下記式で表される。
【0036】
揮発成分含有率={(高分子樹脂フィルム状物の揮発成分含有重量)/(高分子樹脂フィルム状物の固形分重量)}×100(%)={(ゲルフィルム中揮発成分含有重量)/(ゲルフィルム中固形分重量)}×100(%)
ゲルフィルムにおける揮発成分含有率が、15%以下であると、加熱炉内でのフィルムの強度が著しく低下する。そのため、加熱炉内でフィルムが裂け、安定してフィルムを製造することができない。また、200%以上であると、フィルム内において、フィルムの幅方向での揮発成分含有率のバラツキが大きくなる。そのため、幅方向に物性が均一なフィルムを得にくくなる。
【0037】
また、上記ゲルフィルムの力学的特性は、特に限定されるものではなく、ロールツーロールで搬送できる自己支持性を有していればよい。
【0038】
また、高分子樹脂をゲルフィルムに成形する方法については、その具体的な工程、材料、条件、使用装置、および使用機器等については、特に限定されるものではなく、当該高分子樹脂の種類に応じて、適宜選択すればよい。例えば、高分子樹脂が揮発成分を有する状態、または加熱により収縮を伴う反応を生じる状態で、高分子樹脂をフィルム状(ゲルフィルム)に成形すればよい。
【0039】
より具体的には、上記高分子樹脂がポリイミド樹脂である場合、以下のようにして、ポリイミド樹脂をゲルフィルムに成形することができる。ポリイミド樹脂をゲルフィルムに成形する場合、まず、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸有機溶媒溶液を調製する。次に、調製したポリアミド酸有機溶媒溶液をイミド化することによって、フィルム状に成形する。そうすることによって、ポリイミドのゲルフィルムが得られる。上記のポリアミド酸有機溶媒溶液を調製する方法、およびポリアミド酸溶液をイミド化する方法は、以下の通りである。
【0040】
(A)ポリアミド酸有機溶媒溶液の調製
本発明において用いられるポリアミド酸有機溶媒溶液は、従来公知の方法で有機ジアミン成分と有機テトラカルボン酸二無水物とを、例えばN,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒中で反応(重合)させることにより得られるものであり、その構造は特に限定されない。但し、本発明で得られたポリイミドフィルムが、主用途としてフレキシブルプリント配線板用ベースフィルムおよび/またはフレキシブルプリント配線板用カバーレイフィルムに用いられる場合は、極めて高い直線性を発現するパラフェニレンジアミンを全ジアミン成分に対して25モル%以上、および/またはピロメリット酸二無水物を全酸二無水物成分に対して25モル%以上用いて合成したポリイミドフィルムが好ましい。
【0041】
上記の重合で使用する溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルスルホンなどが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0042】
上記の重合反応の結果得られるポリアミド酸有機溶媒溶液のポリアミド酸濃度は、10〜30重量%となるように調整することが好ましい。
【0043】
(B)ポリアミド酸のイミド化
次に、ポリアミド酸有機溶媒溶液からポリイミドのゲルフィルムを得る方法について説明する。上記ポリアミド酸有機溶媒溶液を用いて、ポリアミド酸を環化することによって、ポリイミドのゲルフィルムが得られる。本発明において、ポリアミド酸を環化する方法は、特に限定されるものではなく、環化触媒および脱水剤を用いて化学環化する方法(以下、「化学閉環法」ともいう)、および熱的に脱水して環化する方法(以下、「熱閉環法」ともいう)のいずれを用いてもよい。なお、熱閉環法を用いるより化学閉環法を用いるほうが、生産性がよい。
【0044】
化学閉環法で使用する上記脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、およびフタル酸無水物などの芳香族酸無水物などが挙げられる。これら脱水剤は、単独で、あるいは混合して使用することが好ましい。また上記環化触媒としては、ピリジン、ピコリン、およびキノリンなどの複素環式第3級アミン類、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、並びにN,N-ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類などが挙げられる。これら環化触媒は、単独で、あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0045】
また、化学閉環法を用いてポリイミドのゲルフィルムを製造する方法としては、(1)ポリアミド酸溶液中に環化触媒および脱水剤を混合させイミド化した後に、この溶液を平滑表面を有する金属製支持体上に流延塗布してポリイミドのゲルフィルムフィルムを得る方法、および(2)ポリアミド酸溶液をコーティングして薄膜化させた後に環化触媒および脱水剤の混合中に浸漬してイミド化させることによってポリイミドのゲルフィルムを得る方法などがある。上記(1)の方法のほうが厚み方向に均一なポリイミドのゲルフィルムが得られるので好ましい。
【0046】
上記(1)の方法において、平滑表面を有する金属製支持体上に流延塗布する前に、ポリアミド酸有機溶媒溶液と脱水剤と環化触媒とを混合する際には、事前に、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、またはジメチルスルホンなどの溶媒を用いて、脱水剤と環化触媒とを調整した混合溶液を作製する。その後、当該混合溶液をポリアミド酸有機溶媒溶液と混合することで、脱水剤/環化触媒とポリアミド酸有機溶媒溶液との混合性が良好となるので好ましい。また、上記混合溶媒とポリアミド酸有機溶媒溶液との混合割合は、ポリアミド酸有機溶媒溶液100重量部に対し、上記混合溶液を20〜100重量部とすることが好ましく、30〜80重量部とすることがより好ましい。上記の割合で混合することにより、得られるフィルムの厚みが幅方向で均一となり好ましい。
【0047】
上記(1)の方法では、このポリアミド酸有機溶媒溶液と脱水剤と環化触媒とを含む混合溶液を平滑な表面を有する金属製の支持体表面に連続的に流延して前記溶液の薄膜を形成させる。その後、その薄膜を、60〜160℃で、2〜20分間程度加熱乾燥させ、金属支持体より引き剥がすことによって、ポリイミドの自己支持性フィルム、すなわち、ゲルフィルムを得ることができる。このように得られたポリイミドのゲルフィルムにおける、前記溶媒および生成水分からなる揮発成分の含有率、すなわち揮発成分含有率は15〜200%程度である。
【0048】
(II−2.ゲルフィルム固定工程)
本発明にかかる高分子フィルムの製造方法では、上記ゲルフィルムは、成形後、図1に示すように、ロールツーロールで加熱炉まで搬送されることが好ましい。ゲルフィルム固定工程では、ゲルフィルム(自己支持性フィルム)両端部を固定し、その状態で、ゲルフィルムを加熱炉に挿入、すなわち搬送する。その際、上記ゲルフィルム両端部を固定する前、好ましくは直前に、加熱炉内でのゲルフィルム中央部で生じる収縮力に逆らう応力を上記ゲルフィルム中央部に負荷することが好ましい。本発明では、上記応力は、ゲルフィルムが搬送される方向とは逆向きに働く力である。
【0049】
上記ゲルフィルム両端部を固定する方法は、特に限定されない。例えば、レールに沿って駆動するチェーンに取り付けたフィルム把持装置などの従来公知のフィルム把持装置を用いて固定することができる。
【0050】
上記応力をゲルフィルム中央部に負荷する方法は、特に限定されるものではない。例えば、上記ゲルフィルム両端部が固定される前、好ましくは直前に、上記ゲルフィルムを、ロール中央部の半径(以下、「ロール中央部半径」ともいう、図2を参照)がロール端部の半径(以下、「ロール端部半径」ともいう、図2を参照)よりも大きい誘導ロールに接触させる方法などが挙げられる。そうすることによって、フィルムのMD方向、およびTD方向ともに物性が均一なフィルムが得られる。なお、上記「ゲルフィルム両端部が固定される直前」とは、ゲルフィルム両端部が固定される地点より手前の位置であればよい。具体的には、ゲルフィルム両端部が固定される地点よりも、ゲルフィルム幅の2倍以下の距離だけ手前の地点であることが好ましい。
【0051】
上記誘導ロールは、具体的には、ロール中央部半径がロール端部半径の1.01倍以上で、1.50倍以下の範囲内であることが好ましい。ロール中央部半径が上記の範囲よりも小さければ所望の効果が得られず、逆に、大きければゲルフィルムを安定的にフィルム固定手段に搬送できず、フィルム両端部を固定できない。また、仮に、ゲルフィルムを固定できたとしても、フィルム中央部は大きく弛み、安定的に加熱炉にて加熱・焼成できない。
【0052】
さらに、半径が増大しているロール中央部の幅(以下、「ロール中央部幅」ともいう、図2を参照)は、ゲルフィルムの幅(以下、「ゲルフィルム幅ともいう」)の0.05倍以上で0.75倍以下の範囲内であることが好ましい。ロール中央部幅が上記の範囲よりも小さければ所望の効果が得られず、逆に、大きければ、ゲルフィルムを安定的にフィルム固定手段に搬送することができない。
【0053】
なお、図2は、上記誘導ロールの一例に過ぎず、これに限定されるものではない。具体的には、該誘導ロール中央部の半径が増大している部位は図2のような形状(半径増大部が明確な段差を有するもの)であってもよいが、半径増大部の端部がテーパ状になっており段差のないものであってもよい。
【0054】
さらに、ゲルフィルム固定工程において、ゲルフィルムをフィルム固定手段に挿入する際のフィルム挿入角度(図3を参照)は、水平から20°以下であることが好ましい。フィルム挿入角度が、上記範囲内であれば、安定的にゲルフィルム両端部をフィルム固定手段により固定することができる。
【0055】
また、誘導ロールからフィルム固定手段によってゲルフィルム両端部が固定される地点までの距離(以下、「誘導ロール−フィルム固定部間距離」ともいう、図3を参照)は、ゲルフィルム幅の2倍以下であることが好ましい。上記誘導ロール−フィルム固定部間距離をゲルフィルム幅の2倍よりも長く設定すると、ゲルフィルム両端部を安定して固定できないだけでなく、本発明の効果も得られにくくなる。
【0056】
また、ゲルフィルムがロールツーロールで加熱炉まで搬送される際に、ゲルフィルムが高温に曝露されると、ゲルフィルムはフィルムの幅方向(TD方向)に収縮し、フィルムの幅方向に厚みムラが生じる。したがって、ゲルフィルムは、50℃以下の状態で搬送されるのが好ましく、30℃以下の状態で搬送されるのがより好ましい。すなわち、ゲルフィルム固定工程におけるゲルフィルムの温度は50℃以下に維持されていることが好ましく、30℃以下に維持されていることがより好ましい。
【0057】
(II−3.焼成工程)
上記ゲルフィルム固定工程において、ゲルフィルムを固定し、加熱炉に搬送したのち、焼成工程において、乾燥/加熱処理を行い、高分子フィルムを得る。この際、フィルムの加熱方法は公知の方法を用いればよい。例えば、加熱炉は熱風炉や遠赤外線ヒーター炉(遠赤炉、IR炉ともいう)、並びに加熱炉、熱風炉、IR炉、および徐冷炉からなる連続加熱炉などを用いることができる。また、フィルムのTD方向への延伸には、従来公知の拡縮操作を実施すればよい、例えば、加熱炉前半で徐々にフィルム幅を増大させ、その後縮小させる方法や、加熱炉前半でフィルム幅を縮小させた後、増大させる方法等を適宜用いることができる。
【0058】
なお、上記焼成工程における加熱方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。また、加熱条件は、用いる高分子樹脂の組成に応じて、適宜設定すればよい。
【0059】
<III.フィルムの製造装置>
本発明にかかるフィルムの製造装置は、高分子樹脂からなるゲルフィルムを加熱し、乾燥、硬化、または焼成させることによって、連続的に高分子フィルムを製造するフィルムの製造装置である。その具体的な構成について、図1〜3に基づき説明すると、以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0060】
本実施形態にかかるフィルムの製造装置1は、図1に示すように、ゲルフィルム両端部110を固定するためのフィルム固定部300と、ゲルフィルム両端部110がフィルム固定部300によって固定される前に、加熱炉(図示せず)内でゲルフィルム中央部120に生じる収縮力に逆らう応力を上記ゲルフィルム中央部120に負荷するための誘導ロール200とを備えていればよく、その他の具体的な構成は限定されない。例えば、ゲルフィルム100をロールツーロールで加熱炉に搬送するための搬送手段や、加熱炉などを備えていてもよい。
【0061】
上記誘導ロール200は、加熱によりフィルム中央部120で生じる収縮力に逆らう応力を、上記ゲルフィルム中央部120に負荷するものであればよく、その構造、材質などは特に限定されるものではない。具体的には、上記誘導ロール200の構造は、図2に示すように、ロール中央部半径204がロール端部半径203よりも大きいことが好ましい。具体的には、誘導ロール200のロール端部半径203をX(mm)、誘導ロール200のロール中央部半径204をX1(mm)とした時、1.01X≦X1≦1.50Xを満足することが好ましい。X1<1.01Xであると所望の効果が得られず、X1>1.50Xであるとゲルフィルム100を安定的にフィルム固定部300に搬送できない。仮に、搬送できて、ゲルフィルム100を搬送し、固定できたとしても、固定後のフィルムのゲルフィルム中央部120は大きく弛み、安定的に加熱炉にて加熱・焼成できない。
【0062】
また、ゲルフィルム幅130をY(mm)、該誘導ロール200の半径が増大している中央部の幅、すなわちロール中央部幅205をY1(mm)とした時、0.05Y≦Y1≦0.75Yを満足することが好ましい。Y1<0.05Yであると所望の効果が得られず、Y1>0.75Yであるとゲルフィルム100を安定的にフィルム固定部300に搬送できない。
【0063】
また、上記誘導ロール200のロール中央部半径204が増大している部分は図2のような形状(半径増大部が明確な段差を有するもの)もしくは半径増大部の端部がテーパ状になっており段差のないものいずれでもよい。
【0064】
誘導ロール200のロール中央部202は、適宜ロール中央部幅205が変更できるようになっていてもよい。そのような構成とすれば、製造する高分子フィルムの幅、言い換えれば、ゲルフィルム幅130が、どのようなものであっても、ゲルフィルム幅130と、ロール中央部幅205との関係を、上記の好ましい範囲に設定することができる。それゆえ、上記高分子フィルムの製造装置を、様々な規格の高分子フィルムの製造に用いることが可能となる。
【0065】
また、図3に示すように、上記誘導ロール200は、フィルム固定部300とほぼ水平にゲルフィルム100を誘導できるように、より具体的には、フィルム挿入角度410が20°以下でゲルフィルム100をフィルム固定部300に挿入するように、フィルム固定部300の前、好ましくは直前に設置されることが好ましい。上記構成とすれば、安定的にゲルフィルム両端部110をフィルム固定部300により固定することができる。
【0066】
さらに、誘導ロール200は、誘導ロール−フィルム固定部間距離400が、ゲルフィルム幅130の2倍以内となるように設置されることが好ましい。上記誘導ロール−フィルム固定部間距離400をゲルフィルム幅130の2倍よりも長く設定すると、ゲルフィルム両端部110を安定して固定できないだけでなく、本発明の効果も得られにくくなる。
【0067】
また、本実施形態にかかるフィルムの製造装置1は、加熱炉に挿入されるゲルフィルム100の温度を制御するための温度制御手段(図示せず)を備えていてもよい。上記温度制御手段は、ゲルフィルム100の温度を50℃以下に制御することが好ましく、30℃以下に制御することがより好ましい。上記構成とすることにより、上記フィルムの製造装置1を、上記高分子フィルムの製造方法を実施するために用いた場合、ゲルフィルム100がロールツーロールで加熱炉まで搬送される際に、ゲルフィルム100が高温に曝露されることがない。それゆえ、ゲルフィルム100がフィルムの幅方向に収縮し、フィルムの幅方向に厚みムラが生じるのを防ぐことができる。
【0068】
上述のとおり、本発明にかかる高分子フィルムの製造方法では、金属支持体より引き剥がされたゲルフィルム(自己支持性フィルム)は、ロールツーロールで加熱炉まで搬送されるが、加熱炉の手前でフィルム固定手段により固定される。したがって、本発明にかかるフィルムの製造装置は、上記高分子フィルムの製造方法を実施するのに好適に用いることができる。
【0069】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0070】
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例における線膨張係数は次のようにして評価した。
【0071】
〔線膨張係数〕
熱機械的分析装置(セイコーインスツルメント社製、商品名:TMA120C)により窒素気流下、昇温速度10℃/分にて室温から400℃までの昇温後、室温まで冷却した。さらに、昇温速度10℃/分にて室温から400℃まで昇温し、2回目の昇温時の100〜200℃の範囲内の平均値を求めた。なお、図4に模式的に示すように、高分子フィルムのTD方向にA、B、Cの3点(両端部と中央部)からフィルムをサンプリングした。また、線膨張係数は、A、B、Cの3点からサンプリングしたフィルムについて、MD方向、TD方向、MD方向から右45°方向(表2では右45°方向と記す)、およびMD方向から左45°方向(表2では左45°方向と記す)の4方向(図4を参照)への線膨張係数をそれぞれ測定した。
【0072】
〔合成例1:ポリイミドのゲルフィルムの製造〕
ピロメリット酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/パラフェニレンジアミンを、それぞれモル比1/1/1/1の比率で、N,N’−ジメチルアセトアミド溶媒下、固形分が18%になるように重合した。
【0073】
この重合溶液を約0℃に冷却した上で、約0℃に冷却したポリアミド酸有機溶媒溶液に無水酢酸/イソキノリン/N,N’−ジメチルアセトアミドの混合溶媒を、ポリアミド酸有機溶媒溶液100重量部に対し、50重量部添加し、充分に攪拌した後、約5℃に保ったダイより押し出して、エンドレスベルト上に流延塗布し、加熱・乾燥し、揮発成分含有率80%のゲルフィルムを得た。
【0074】
〔実施例1〜4:ポリイミドフィルムの製造〕
合成例1の自己支持性を有したゲルフィルム(幅:500mm)を引き剥がし、ロールツーロールで誘導ロールまで搬送し、続いて上記ゲルフィルムの両端部を、連続的にシートを搬送するピンシートに固定し、熱風加熱炉、遠赤炉(IR炉)、徐冷炉に搬送し、徐冷炉から搬出したところでピンからフィルムを引き剥がし、巻取って約470mm幅の12.5μmポリイミドフィルムを得た。なお、実施例1〜4で用いた誘導ロールのロール端部半径、ロール中央部半径、およびロール中央部幅は、表1に示すとおりである。さらに、加熱炉(熱風炉である)(1〜4炉)、遠赤炉(IR炉)、徐冷炉の雰囲気温度並びに滞留時間についても表1に示すとおりである。また、フィルムの幅は加熱炉内中、一定とした。
【0075】
【表1】

上記のようにして、得られたポリイミドフィルムについて、線膨張係数を測定した。その結果を表2に示す。
【0076】
【表2】

〔比較例1〕
誘導ロールの形状を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法で、ポリイミドフィルムを製造した。そうしたところ、誘導ロール通過後ゲルフィルムが大きく撓み、フィルム把持装置に安定的にゲルフィルムを搬送できなかった。
【0077】
〔比較例2〕
誘導ロールの形状を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法で、ポリイミドフィルムを製造した。そして、得られたポリイミドフィルムについて、線膨張係数を測定した。その結果を表2に示す。
【0078】
〔比較例3〕
誘導ロールのロール形状を真円状とした以外は実施例1と同様の方法で、ポリイミドフィルムを製造した。そして、得られたポリイミドフィルムについて、線膨張係数を測定した。
【0079】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明にかかる高分子フィルムの製造方法により製造された高分子フィルムは、フィルムの幅方向に沿って、光学的特性、機械的特性、湿度膨張率、熱膨張率、および熱収縮率などの物性差がほとんどなく、均一性に優れている。したがって、本発明は、精密部品等の用途、例えば、回路形成のベース材や記録媒体等の用途に利用することができるだけではなく、高分子フィルムを用いる電子部品の製造に関わる分野にも応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態におけるフィルムの製造装置のフィルム固定部および誘導ロールの位置関係を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるフィルムの製造装置の誘導ロール部の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態におけるフィルムの製造装置を横から見たときのフィルム固定部と誘導ロールとの位置関係を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施例において、フィルムの線膨張係数測定のためのフィルムのサンプリングを模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
1 フィルムの製造装置
100 ゲルフィルム
110 ゲルフィルム両端部
120 ゲルフィルム中央部
130 ゲルフィルム幅
200 誘導ロール
201 ロール端部
202 ロール中央部
203 ロール端部半径
204 ロール中央部半径
205 ロール中央部幅
300 フィルム固定部(フィルム固定手段)
310 端部固定冶具
400 誘導ロール−フィルム固定部間距離
410 フィルム挿入角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂からなり揮発成分を含有するゲルフィルムを用いて高分子フィルムを製造する高分子フィルムの製造方法において、
ゲルフィルム両端部を固定して、上記ゲルフィルムを加熱炉に挿入する工程と、
上記ゲルフィルムを、加熱炉内を通過させながら、加熱することによって、上記ゲルフィルムを乾燥、硬化、または焼成させる工程とを含み、かつ、
上記ゲルフィルム両端部を固定する前に、加熱炉内でゲルフィルム中央部に生じる収縮力に逆らう応力を上記ゲルフィルム中央部に負荷することを特徴とする高分子フィルムの製造方法。
【請求項2】
上記ゲルフィルム両端部を固定する前に、上記ゲルフィルムをロール中央部半径がロール端部半径よりも大きい誘導ロールに接触させることによって、上記応力を上記ゲルフィルム中央部に負荷することを特徴とする請求項1に記載の高分子フィルムの製造方法。
【請求項3】
上記ゲルフィルム両端部を固定する前に、上記ゲルフィルムを、ロール中央部半径がロール端部半径の1.01〜1.50倍の範囲内であり、かつ、ロール中央部幅がゲルフィルム幅の0.05〜0.75倍の範囲内である誘導ロールに接触させることによって、上記応力を上記ゲルフィルム中央部に負荷することを特徴とする請求項2に記載の高分子フィルムの製造方法。
【請求項4】
上記ゲルフィルムの揮発成分含有率が下記式で規定される範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子フィルムの製造方法。
15(%)<{(ゲルフィルムの揮発成分含有重量)/(ゲルフィルムの固形分重量)}×100(%)<200(%)
【請求項5】
上記高分子樹脂がポリイミドであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子フィルムの製造方法。
【請求項6】
上記高分子樹脂からなる高分子フィルムの弾性率が3GPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子フィルムの製造方法。
【請求項7】
高分子樹脂からなるゲルフィルムを加熱し、乾燥、硬化、または焼成させることによって、連続的に高分子フィルムを製造するフィルムの製造装置において、
ゲルフィルム両端部を固定するためのフィルム固定手段と、
上記ゲルフィルム両端部が上記フィルム固定手段によって固定される前に、加熱炉内でゲルフィルム中央部に生じる収縮力に逆らう応力を上記ゲルフィルム中央部に負荷するための誘導ロールとを備えることを特徴とするフィルムの製造装置。
【請求項8】
上記誘導ロールのロール中央部半径が、ロール端部半径の1.01〜1.50倍の範囲内であり、かつ、ロール中央部幅が、ゲルフィルム幅の0.05〜0.75倍の範囲内であることを特徴とする請求項7に記載のフィルムの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−21914(P2007−21914A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207751(P2005−207751)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】