説明

高分子化合物の処理方法及びその装置

【課題】超臨界二酸化炭素と酸化剤を押出機に供給してポリマーと混練する際に、反応を均一かつ精密にコントロールできる高分子化合物の処理方法及びその装置を提供する。
【解決手段】押出機1を用いて高分子化合物を押し出しながらその押出機1に二酸化炭素および酸化剤を注入して超臨界二酸化炭素中で酸化剤を用いて高分子化合物を変性する高分子化合物の処理方法であって、上記押出機1に、二酸化炭素と酸化剤を注入する前にあらかじめ二酸化炭素と酸化剤を混合するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物を酸化剤により変性反応、分解反応、架橋ポリマーの架橋点又は分子鎖を切断して熱可塑性樹脂又はワックスを得るための高分子化合物の処理方法及びその装置に係り、特に、材料供給用押出機を用いて高分子と超臨界二酸化炭素中の酸化剤を反応させて連続的に処理できる高分子化合物の処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題が重要となる中で、廃棄物処理費用が年々高くなっている。ポリマー廃棄物についても再生再利用の気運が高まっている。しかし、リサイクルポリマーは一般に付加価値が低く、材料価格の変動に影響されて逆有償で取引されることになるなどの問題がある。こうした動きの中で、廃棄物をより高付加価値製品ヘリサイクルするための技術が重要となっている。特に、熱硬化性樹脂や架橋ポリマー、エラストマーなどは、加熱しても分子の三次元的なネットワークのために流動化が生じず、成形ができないのでマテリアルリサイクルが困難である。このため、低付加価値のサーマルリサイクルが行なわれる場合が多く、石油価格の変動に大きく影響を受ける。
【0003】
ポリマーをリサイクルした材料の価値がバージンよりも下がるのは、異物の混入や色が混ざるという問題、さらにはポリマーの劣化などが原因である。このような問題を避けて、できるだけ高付加価値製品にリサイクルするためにバージンポリマーと同等のリサイクルポリマーを製造する試みがある。しかし、汎用ポリマーはバージンポリマーの価格が安いので、それだけでは経済的に有利なリサイクルを実現することが難しい。
【0004】
一方で、超臨界CO2中でポリマーを窒素酸化物で酸化することによりリサイクルすると同時にポリマーを機能化することが検討されている(特許文献1)。この方法では、熱可塑性ポリマーを機能化するのみならず、架橋ポリマーの三次元ネットワーク構造を崩して熱可塑化しつつ高機能化することも可能である。
【0005】
こうした手法を実用規模とするには、ポリマーを連続的に処理するプロセスが必須である。
【0006】
超臨界流体を用いてポリマーを連続処理する方法として特許文献2、3のように押出機を用いることが提案されている。
【0007】
この方法では廃ポリマーを押出ながら超臨界水や超臨界アルコールを注入して大量にポリマーを処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−191174号公報
【特許文献2】特開2001−253967号公報
【特許文献3】特開2007−84748号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】第58回高分子討論会、予稿集、2009/9/16〜9/18、熊本大(熊本)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2、3の実施例に示されているケースの場合、アルコールや水が反応するポリマー中の化学結合が限られるため反応の制御が容易であるが、架橋ポリマーの架橋部を優先的に切断することは困難である。
【0011】
一方、特許文献1や非特許文献1に示されるように二酸化炭素と酸化剤である二酸化窒素を混ぜてポリマーと押出機内で反応させることで優先的に架橋部を切断できることが可能となるが、押出機内での反応条件を厳密にコントロールしなければ必要以上にポリマーを酸化劣化してしまう問題がある。すなわち、酸化剤による変性反応は、アルコールや水よりも選択性が低いからである。
【0012】
したがって、反応を均一に進行させなければ一方ではポリマーの劣化が進み、他方では十分に変性できないという問題が発生する。
【0013】
例えば特許文献2、3のような押出装置を用いて酸化剤と二酸化炭素を個別に押出機に注入した場合、ポリマーが部分的に酸化劣化してしまう問題が発生する。また、反応時間を精密にコントロールしなければ酸化反応が進みすぎてポリマーが劣化してしまう問題が発生する。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、超臨界二酸化炭素と酸化剤を押出機に供給してポリマーと混練する際に、反応を均一かつ精密にコントロールできる高分子化合物の処理方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、押出機を用いて高分子化合物を押し出しながらその押出機に二酸化炭素および酸化剤を注入して超臨界二酸化炭素中で酸化剤を用いて高分子化合物を変性する高分子化合物の処理方法であって、上記押出機に、二酸化炭素と酸化剤を注入する前にあらかじめ二酸化炭素と酸化剤を混合することを特徴とする高分子化合物の処理方法である。
【0016】
請求項2の発明は、前記二酸化炭素と前記酸化剤を混合する前に、あらかじめ二酸化炭素を超臨界点以上に加圧・加熱する請求項1記載の高分子化合物の処理方法である。
【0017】
請求項3の発明は、前記二酸化炭素と前記酸化剤を混合する際に、前記二酸化炭素および前記酸化剤を同じ相状態で混合する請求項1記載の高分子化合物の処理方法である。
【0018】
請求項4の発明は、高分子化合物を押し出しながら超臨界二酸化炭素中で高分子化合物と酸化剤を混合するための押出機と、前記押出機に接続され、押出機からの高分子化合物と酸化剤の混合物を導入してそれらを反応させるための反応容器と、二酸化炭素と酸化剤をあらかじめ混合して、前記押出機に注入する混合ガス供給手段とを備えたことを特徴とする高分子化合物の処理装置。
【0019】
請求項5の発明は、前記混合ガス供給手段は、前記押出機に二酸化炭素と酸化剤を注入する前に、超臨界状態の二酸化炭素と酸化剤を混合するスタティックミキサーを備えた請求項4記載の高分子化合物の処理装置である。
【0020】
請求項6の発明は、前記混合ガス供給手段は、二酸化炭素と酸化剤の混合ガスを加圧・加熱して前記押出機に注入する請求項4記載の高分子化合物の処理装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、二酸化炭素と酸化剤を材料供給用押出機に供給してポリマーと混練する際に、あらかじめ二酸化炭素と酸化剤を混合することにより、反応を均一かつ精密にコントロールすることができる。特に酸化反応が部分的に進行することによって起こる変色などを防止しつつ、酸化反応を利用して酸変性することが可能となるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の高分子処理装置の一実施の形態を示す全体図である。
【図2】本発明の高分子処理装置の他の実施の形態を示す全体図である。
【図3】比較例としての高分子処理装置の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0024】
図1において、ペレット状又はナゲット状に粉砕された架橋ポリエチレン(高分子化合物)は、ホッパ13を介して材料供給用押出機1に投入される。
【0025】
二酸化炭素と酸化剤としての二酸化窒素が、混合ガス供給手段40を介して材料供給用押出機1に注入される。混合ガス供給手段40による二酸化窒素と二酸化炭素の注入位置は、架橋ポリエチレンが材料供給用押出機1内で十分に高密度化された位置よりも下流であることが好ましく、それにより二酸化炭素と二酸化窒素の上流側への漏れが防止できる。
【0026】
なお、材料供給用押出機1では昇温した架橋ポリエチレンの温度が下がらない程度に加熱することが望ましい。
【0027】
材料供給用押出機1は、高温高圧の二酸化炭素と二酸化窒素が逆流しないように、また混練が充分行なわれるように2本のスクリュー1aを有する二軸押出機を用いるのが好ましい。
【0028】
混合ガス供給手段40は、二酸化窒素と超臨界状態にした二酸化炭素を混合して材料供給用押出機1に注入するものであり、二酸化窒素は二酸化窒素ボンベ181からポンプ171で加圧され、逆止弁152を介してヒータ141に供給され、二酸化炭素は、液化二酸化炭素ボンベ182からマスフローコントローラ172、逆止弁153を介してスタティックミキサー154に供給され、そこで二酸化窒素と混合された後、ヒータ142で加熱され、バルブ15を通して材料供給用押出機1内に注入される。
【0029】
この際、二酸化炭素と二酸化窒素は、材料供給用押出機1の内部の圧力以上に加圧されて注入される。
【0030】
スタティックミキサー154は、パイプの中に、長方形の板を180度左方向にねじった左エレメントと180度右方向にねじった右エレメントを90度交差させて交互に直列挿入したもので、左右のエレメントで、導入された二酸化窒素素と二酸化炭素の混合気体を2分割することで、エレメント数(n)ですなわち、2のn乗で分割混合する。
【0031】
材料供給用押出機1内では、投入した架橋ポリエチレンと注入した二酸化炭素と二酸化窒素とがスクリュー1aにより混合撹拌される。この際、少なくとも材料供給用押出機1の一部分において、二酸化炭素が超臨界状態となる温度、圧力条件になるようにすると、架橋ポリエチレンと二酸化窒素との架橋切断反応が充分に進み、良好な高分子処理物が得られる。ここでは、反応時間を十分確保するために、容積80Lの流通式反応容器100を材料供給用押出機1に接続した。
【0032】
材料供給用押出機1および流通式反応容器100で可塑化された架橋ポリエチレンの高分子処理物及び二酸化炭素と二酸化窒素の混合物は、圧力調整手段としての減圧バルブ11(或いはディスチャージ弁)で減圧され、さらに段階的に圧力を下げるために複数の穴の空いた抵抗体としてブレーカプレート31を取り付けて高分子処理物の減圧を段階的に行う。なお、圧力調整手段はギアポンプでもよい。
【0033】
さらに後段の排出ライン23が、脱気用押出機2に接続され、脱気用押出機2に導入された粘稠な液体の高分子処理物を、スクリュー2aによって脱気用押出機2の吐出方向へ押出すと共に、二酸化窒素や二酸化炭素等の気体は圧力の低いバックベントのベントボックス8へと流れることにより、高分子処理物と気体が分離される。
【0034】
ベントボックス8は電熱ヒータによるベントボックスヒータ10によって熱せられ、二酸化窒素や二酸化炭素が気体として存在する温度に保たれる。
【0035】
またベントボックスヒータ10の代わりに、図には示していないがベントボックス8の高分子処理物貯蔵部の外周部に設けられた熱媒体が循環するジャケットと、熱媒体をジャケットに供給する熱媒体循環装置でベントボックス8を加熱するようにしてもよい。
【0036】
ベントボックス8は、流通式反応容器100の体積の2倍とする。このように流通式反応容器100の体積よりもベントボックス8を大きくすることにより、高分子処理物と気体の吐出が断続的になった場合もベントボックス8内部の圧力を流通式反応容器100の圧力の1/2以下に下げることができる。
【0037】
ベントボックス8内部は、流通式反応容器100よりは低い圧力に維持されており、これによって、高分子処理物が容易にベントボックス8外にライン24を介して排出される。ベントボックス8では気体は槽の上方から分離され、槽の下には溶融状態の高分子処理物が溜まっており、槽の下部に設けられた穴から自重で脱気用押出機2に送られ、スクリュー2aによって先端部のダイ3側に押し出される。
【0038】
脱気用押出機2は一軸、二軸いずれのタイプの押出機も使用可能である。ここでは、ダイ3により、糸状のストランド5として成形され、冷却器4によってほぼ常温に冷却固化される。ストランド5はストランドカッタ6によってペレット7となる。
【0039】
一方、ベントボックス8で高分子処理物と分離された二酸化炭素と二酸化窒素の気体は、槽圧調整手段としての槽圧調整バルブ12を介して常圧となり、ドライ真空ポンプ19の吸引力によりトラッパ18に送られる。
【0040】
トラッパ18では、反応中に生成し、気体中に混入した不純物で沸点の高いものや樹脂粉末などを捕集する。トラッパ18で不純物が除去された気体は、ドライ真空ポンプ19に吸引され、コンデンサー20に送られる。
【0041】
コンデンサー20では、気体を冷却することで、気体中の二酸化窒素が液化され、二酸化炭素等が排出ライン21から排出され、液化された二酸化窒素が液化二酸化窒素ボンベ181に戻されて、再利用される。
【0042】
このように、本発明は、超臨界二酸化炭素中で酸化剤を用いることにより、高分子化合物である架橋ポリマーを変性する反応を利用する際に、材料供給用押出機1を用いて高分子化合物を押出しながら酸化剤である二酸化窒素と二酸化炭素を材料供給用押出機1のシリンダーに注入し、高分子化合物と酸化剤を材料供給用押出機1のシリンダーの中で混練しながら、高温高圧の流通式反応容器100の中へ高分子化合物と酸化剤の混合物を吐出して反応させるものである。この際に、材料供給用押出機1に注入する二酸化炭素と二酸化窒素を、注入前に、二酸化炭素を超臨界二酸化炭素とし、その超臨界二酸化炭素に酸化剤が混合された状態で注入することにより、材料供給用押出機1と流通式反応容器100内での反応を均一に精密にコントロールすることができる。特に酸化剤は超臨界二酸化炭素と混合して材料供給用押出機1内に注入されるため、酸化反応が部分的に進行して起こる変色などを防止しつつ、酸化反応を利用して酸変性することが可能となる。
【0043】
本発明においては、二酸化炭素を臨界点以上にした超臨界二酸化炭素と酸化剤をスタティックミキサー154であらかじめ混合するために、超臨界二酸化炭素と酸化剤が、同じ相状態(液−液、ガス−ガス、超臨界流体−超臨界流体)での混合となり、酸化剤が二酸化炭素に分散されるため、高分子化合物の反応を均一かつ精密にコントロールすることが可能となる。
【0044】
このように本発明は、超臨界二酸化炭素中の反応を、高分子化合物の変性反応やその変性反応の一種である架橋切断反応のいずれかである場合に適応することができる。
【0045】
また、処理される高分子化合物が架橋ポリマーであり、前記二酸化炭素に加える酸化剤が、二酸化窒素の他に、酸素、過酸化水素、過酸化水素水、あるいは硝酸や亜硝酸、硫酸であってもよい。また、酸化剤の種類によって混合部で、相状態を同じにするためにポンプ171と逆止弁152の間にヒータを入れたり、あるいは図1に示した符号141のヒータが不要な場合も考えられる。
【0046】
本発明で言う高分子化合物とは、架橋ポリマー、プラスチックやエラストマー、熱硬化性樹脂などの合成高分子に加えて、リグニン、セルロース、タンパク質等の天然高分子、更には合成高分子と天然高分子混合物を含んでいる。また、シュレッダーダストの様に、高分子を主として、これに他の材料が混合したものでもよい。
【0047】
特に、高分子化合物として架橋ポリマーを用いた場合に、高分子化合物の主鎖の酸化劣化を防止するため、このような装置及び構成が有効に機能する。
【0048】
二酸化炭素中の酸化反応で高分子化合物を変性する場合、高分子化合物の酸化劣化を防止するために二酸化炭素が酸化剤を取り囲むケージ効果を用いて反応を進行させる必要がある。したがって、二酸化炭素と二酸化窒素を均一混合した上で材料供給用押出機1に注入することで、高分子化合物の酸化劣化を防止しながら酸化反応を行うことが可能となる。
【0049】
次に、図2により本発明の他の実施の形態を説明する。
【0050】
図1の実施の形態においては、酸化剤である二酸化窒素と超臨界状態にした二酸化炭素を、混合ガス供給手段40で供給する際に、スタティックミキサー154で混合して材料供給用押出機1に注入する形態を示したが、本実施の形態の混合ガス供給手段40は、二酸化炭素と酸化剤である二酸化窒素をあらかじめ混合して混合ガスボンベ183に収容し、その混合ガスボンベ183から二酸化炭素と二酸化窒素の混合物をポンプ171で加圧し、これをヒータ142で加熱して超臨界状態とし、バルブ15を介して材料供給用押出機1に注入するように構成したものである。
【0051】
この実施の形態における混合ガス供給手段40は、二酸化炭素と二酸化窒素とをあらかじめ混合しておくことで、スタティックミキサー154等の機器が不要となり装置を簡略化できる。
【実施例】
【0052】
次に実施例と比較例を説明する。
【0053】
[実施例1]
図1で説明した処理装置を用いて、高分子化合物の一種である架橋ポリエチレンを変性することにより架橋を切断するとともに超臨界二酸化炭素中の酸化反応によりカルボキシル基やカルボニル基を導入する反応を行った。
【0054】
ペレット状に粉砕された架橋ポリエチレンをホッパ13を介して材料供給用押出機1に投入した。材料供給用押出機1は、シリンダ径30mm、L/D=64を用いた。
【0055】
一方、反応に要する二酸化炭素と酸化剤である二酸化窒素は、それぞれ二酸化炭素ボンベ182および二酸化窒素ボンベ181から供給し、二酸化窒素はポンプ171で加圧されると共に、ヒータ141によって加熱される。一方、ボンベ182から出た二酸化炭素はマスフローコントローラ172で定量的に供給した。マスフローコントローラ172の代わりにブースターを用いたり、ブースターとマスフローコントローラを併用することも可能である。また、二酸化炭素を冷却してマスフローコントローラ172の代わりに送液ポンプを使用することも可能である。さらに、ボンベ内の物質の相状態をコントロールするために、ボンベ181、182に温度調節装置を付け加えても良い。二酸化窒素と二酸化炭素の比は質量分率で1:2とし、混練部における温度を50℃、圧力を0.7〜0.8MPa(二酸化窒素、二酸化炭素ともに気体の状態)とした。
【0056】
また、ポンプ171,マスフローコントローラ172の直後に逆止弁152、153を設けて、二酸化炭素、二酸化窒素それぞれの成分の圧力によりボンベ側へ互いに逆流することを予防した。この二成分はスタティックミキサー154で混合されてヒータ142で反応温度にまで加熱される。
【0057】
バルブ15を介して二酸化炭素と酸化剤の混合物を、材料供給用押出機1の減速機側からL/D=20の位置に圧力0.5MPaで注入した。その注入位置は、架橋ポリエチレンが材料供給用押出機1内で1MPa以上に加圧されて高密度化された位置よりも下流で、かつ加圧部の長さがL/D=4以上であり、それにより二酸化炭素や二酸化窒素の上流側への漏れが防止される。
【0058】
材料供給用押出機1は、押出機のコストを押さえるとともに、高い圧力にも耐えうる装置とするために単軸の押出機を用いてもよい。
【0059】
ポンプ171およびマスフローコントローラ172では、注入する位置における材料供給用押出機1に対しての内部の圧力以上に加圧することが必要であり、また、ヒータ141,142により、材料供給用押出機1で昇温した高分子化合物の温度が下がらない程度に加熱することが望ましい。また、押出機の注入口には逆止弁を設けて押出機内部の樹脂の逆流を防止した。
【0060】
ここでは材料供給用押出機1および流通式反応容器100の温度、圧力を120℃,20MPaとし、注入する際のガス温度も120℃とした。
【0061】
材料供給用押出機1内では、投入した架橋ポリエチレンと注入した二酸化炭素と二酸化窒素がスクリュー1aにより混合撹拌される。この際、少なくとも材料供給用押出機1の一部分において、二酸化炭素が超臨界状態となる温度、圧力条件にしておかなければ過剰な酸化や副反応によりポリマーが変色する可能性がある。ここでは、反応時間を1時間以上確保するために、容積80Lの流通式反応容器100を材料供給用押出機1に接続した。
【0062】
材料供給用押出機1および流通式反応容器100で架橋ポリエチレンを処理して得られた高分子処理物及び二酸化炭素と二酸化窒素の混合物は、減圧バルブ11で減圧され、さらに段階的に圧力を下げるために複数の穴の空いた抵抗体としてとりつけたブレーカプレート31により段階的に減圧した。さらに後段には脱気用押出機2が接続され、ここで粘稠な液体の高分子処理物はスクリュー2aによって脱気用押出機2の吐出方向へ押出すとともに、気体となった二酸化炭素と二酸化窒素は圧力の低いバックベントのベントボックス8へと流れることにより、高分子処理物と分離される。ベントボックス8には酸化剤も流入するため、これを気化するためにベントボックス8を電熱ヒータなどで加熱したほうがよい。ベントボックス8内部は真空ポンプ19により減圧されており、これによって高分子処理物と二酸化炭素などのガスが完全に分離できる。
【0063】
高分子処理物は脱気用押出機2に送られ、その先端部のダイ3によって成形される。脱気用押出機2は一軸又は二軸の押出機が使用可能である。ここでは糸状のストランド5として成形され、冷却器4によって融点以下に冷却固化される。ストランド5はストランドカッタ6によってペレット7となる。脱気用押出機2は高分子処理物から二酸化炭素と二酸化窒素を完全に除去するためにダイスよりも上流側にベントをさらに設けても良い。
【0064】
一方、ベントボックス8で高分子処理物と分離された二酸化炭素と二酸化窒素を含むガスは、槽圧調整バルブ12を介して常圧となり、トラッパ18に送られる。トラッパ18では、反応中に生成した固形物などをフィルターにより分離する。二酸化炭素と二酸化窒素の混合物は、真空ポンプ19の下流に接続されたコンデンサ20によって冷却され、二酸化窒素を液化してボンベ181に戻される。
【0065】
このような装置構成は、二酸化炭素に二酸化窒素などの酸化剤を混ぜる場合に有効である。
【0066】
この様な装置を用いた場合、架橋ポリエチレンの処理量は押出機の吐出能力が許す単位時間あたり2〜50kg/hの範囲で24時間以上の連続安定運転による処理が可能であり、得られた生成物はゲル分率0%で数平均分子量1万以上、供給したポリマーと同じ色相のポリマーを得ることができた。
【0067】
この方法では次の実施例2に比べてコンデンサ20に回収したものの二酸化窒素濃度が減少しないので実施例2に見られるように反応が徐々に抑制されることはなく、その結果より長時間の運転が可能である。また、あらかじめ混合ガスを作る必要がないのでコスト高になるという問題がない。
【0068】
[実施例2]
実施例2は、図2で説明した、架橋ポリエチレンの架橋切断処理装置で高分子化合物を処理した例である。
【0069】
この実施例2では、実施例1における二酸化炭素と二酸化窒素の混合をあらかじめ混合し、これを混合ガスボンベ183に収容し、その混合ガスボンベ183から二酸化炭素と二酸化窒素の混合ガスをポンプ171で加圧し、これをヒータ142で加熱して超臨界状態とし、バルブ15を介して材料供給用押出機1に注入するようにしたものである。
【0070】
この様な装置を用いた場合、架橋ポリエチレンの処理量は押出機の吐出能力が許す単位時間あたり2〜50kg/hの範囲で10時間以上の連続安定運転による処理が可能であり、得られた生成物はゲル分率0%で数平均分子量1万以上、供給したポリマーと同じ色相のポリマーを得ることができた。
【0071】
[比較例1]
比較例1として、図3に示した処理装置を用いて高分子化合物の酸化反応を行った。
【0072】
図3は、図1、図2の実施の形態と違って、二酸化窒素と二酸化炭素を別個に材料供給用押出機1に注入したものであり、二酸化窒素ボンベ181と液化二酸化炭素ボンベ182から独立して材料供給用押出機1に注入する架橋ポリエチレンの架橋切断処理装置を示したものである。
【0073】
すなわち、二酸化炭素は、液化二酸化炭素ボンベ182からマスフローコントローラ172にて超臨界圧にし、ヒータ141で臨界点まで加熱し、バルブ16から供給し、二酸化窒素は、二酸化窒素ボンベ181からポンプ171で加圧し、バルブ15を介して、二酸化炭素が供給される位置より上流側の位置で材料供給用押出機1へ注入するようにしたものである。
【0074】
この様な装置を用いた場合、架橋ポリエチレンの処理量は押出機の吐出能力が許す単位時間あたり2〜50kg/hの範囲で10時間以上の連続安定運転による処理が可能であったが、反応を十分に制御することができず、数平均分子量は4000であり、ゲル分率0%で数平均分子量1万以上のものを得ることができなかった。また、生成物は黄色から茶色に着色したものであった。これは、二酸化窒素と二酸化炭素が十分に混ざり合わない状態で架橋ポリエチレンに接触するので、部分的に酸化反応が激しく進行するためと考えられる。
【0075】
以上により、本発明は、二酸化炭素と酸化剤を材料供給用押出機に供給してポリマーと混練する際に、あらかじめ二酸化炭素と酸化剤を混合することにより、反応を均一かつ精密にコントロールすることができる。特に酸化反応が部分的に進行することによって起こる変色などを防止しつつ、酸化反応を利用して酸変性することが可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1 材料供給用押出機
13 ホッパー
40 混合ガス供給手段
154 スタティックミキサー
181 二酸化窒素ボンベ
182 二酸化炭素ボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機を用いて高分子化合物を押し出しながらその押出機に二酸化炭素および酸化剤を注入して超臨界二酸化炭素中で酸化剤を用いて高分子化合物を変性する高分子化合物の処理方法であって、上記押出機に、二酸化炭素と酸化剤を注入する前にあらかじめ二酸化炭素と酸化剤を混合することを特徴とする高分子化合物の処理方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素と前記酸化剤を混合する前に、あらかじめ二酸化炭素を超臨界点以上に加圧・加熱する請求項1記載の高分子化合物の処理方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素と前記酸化剤を混合する際に、前記二酸化炭素および前記酸化剤を同じ相状態で混合する請求項1記載の高分子化合物の処理方法。
【請求項4】
高分子化合物を押し出しながら超臨界二酸化炭素中で高分子化合物と酸化剤を混合するための押出機と、前記押出機に接続され、押出機からの高分子化合物と酸化剤の混合物を導入してそれらを反応させるための反応容器と、二酸化炭素と酸化剤をあらかじめ混合して、前記押出機に注入する混合ガス供給手段とを備えたことを特徴とする高分子化合物の処理装置。
【請求項5】
前記混合ガス供給手段は、前記押出機に二酸化炭素と酸化剤を注入する前に、超臨界状態の二酸化炭素と酸化剤を混合するスタティックミキサーを備えた請求項4記載の高分子化合物の処理装置。
【請求項6】
前記混合ガス供給手段は、二酸化炭素と酸化剤の混合ガスを加圧・加熱して前記押出機に注入する請求項4記載の高分子化合物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162689(P2011−162689A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28035(P2010−28035)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】