説明

高分子化合物の製造方法

【課題】長波長の光の吸光度が大きい高分子化合物を製造する方法の提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物又は式(3)で表される化合物とを反応させる式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の製造方法。


(1)


(4)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料は、有機光電変換素子(有機太陽電池、光センサー等)への適用が期待されている。中でも、有機半導体材料として高分子化合物を用いれば、安価な塗布法で機能層を作製することができる。有機光電変換素子の諸特性を向上させるために、様々な高分子化合物である有機半導体材料を有機光電変換素子に用いることが検討されている。有機半導体材料として、例えば、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジボロン酸エステルと5,5’’’’−ジブロモ−3’’,4’’−ジヘキシル−α−ペンタチオフェンとを重合した高分子化合物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−529596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記高分子化合物は、長波長の光の吸収が十分でないという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は長波長の光の吸光度が大きい高分子化合物の製造方法及び長波長の光の吸光度が大きい高分子化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は第一に、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物又は式(3)で表される化合物とを反応させる式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の製造方法を提供する。

(1)
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。2個あるRは、同一でも相異なっていてもよい。Qはジヒドロキシボリル基又はホウ酸エステル残基を表す。2個あるQは、同一でも相異なっていてもよい。)

(2) (3)
(式(2)及び式(3)中、Tは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。複数個あるTは、同一でも相異なっていてもよい。Aは、臭素原子、塩素原子又はヨウ素原子を表す。2個あるAは、同一でも相異なっていてもよい。)

(4)
(式中、aは、0又は1を表す。T及びRは、前述と同じ意味を表す。)
【0007】
本発明は第二に、式(5)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を提供する。

(5)
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。2個あるRは、同一でも相異なっていてもよい。Tは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。複数個あるTは、同一でも相異なっていてもよい。)
【0008】
本発明は第三に、一対の電極と、該電極間に設けられた機能層とを有し、該機能層が電子受容性化合物と前記高分子化合物とを含む有機光電変換素子を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高分子化合物の製造方法は、長波長の光の吸光度が大きい高分子化合物を製造することができるため、工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】高分子化合物Aの吸収スペクトルを示す図である。
【図2】高分子化合物Bの吸収スペクトルを示す図である。
【図3】高分子化合物Cの吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物又は式(3)で表される化合物とを反応させる式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の製造方法である。

(1)
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。2個あるRは、同一でも相異なっていてもよい。Qはジヒドロキシボリル基又はホウ酸エステル残基を表す。2個あるQは、同一でも相異なっていてもよい。)

(2) (3)
(式(2)及び式(3)中、Tは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。複数個あるTは、同一でも相異なっていてもよい。Aは、臭素原子、塩素原子又はヨウ素原子を表す。2個あるAは、同一でも相異なっていてもよい。)

(4)
(式中、aは、0又は1を表す。T及びRは、前述と同じ意味を表す。)
【0013】
式(1)及び式(4)中、Rで表されるアルキル基は鎖状でも環状でもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基が挙げられる。アルキル基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基が挙げられる。
【0014】
Rで表されるアルコキシ基中のアルキル部は鎖状でも環状でもよく、アルコキシ基の具体例として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が挙げられる。アルコキシ基中の水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。フッ素原子で置換されたアルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基が挙げられる。
【0015】
Rがアルキル基又はアルコキシ基である場合、高分子化合物の溶媒への溶解性の観点からは、炭素数が1〜20であることが好ましく、2〜18であることがより好ましく、3〜12であることがさらに好ましい。
【0016】
Rで表されるアリール基は、無置換の芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団であり、ベンゼン環を持つもの、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。アリール基の炭素数は、6〜60であることが好ましく、6〜30であることがより好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられる。アリール基は、置換基を有していてもよく、アリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。
【0017】
式(1)〜式(4)中、Tで表されるアルキル基、アルコキシ基及びアリール基の定義及び具体例は、Rで表されるアルキル基、アルコキシ基及びアリール基の定義及び具体例と同じである。
【0018】
式(1)中、Qは、ジヒドロキシボリル基又はホウ酸エステル残基を表す。
【0019】
ジヒドロキシボリル基は、下記基を表す。

【0020】
ホウ酸エステル残基とは、ホウ酸ジエステルからヒドロキシ基を除いた基を意味し、その具体例としては、下記式で表される基が挙げられる。

(式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【0021】
式(1)で表される化合物の有機溶媒への溶解性の観点からは、Qは、ホウ酸エステル残基であることが好ましい。
【0022】
式(2)及び式(3)中、Aは、臭素原子、塩素原子又はヨウ素原子を表す。反応性の観点からは、臭素原子が好ましい。
【0023】
2個あるQがジヒドロキシボリル基である式(1)で表される化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられる。

【0024】
2個あるQがホウ酸エステル残基である式(1)で表される化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられる。

【0025】

【0026】
2個あるQがホウ酸エステル残基である式(1)で表される化合物は、例えば、有機溶媒中で、式(6)で表される化合物とアルコール又はジオールとを脱水縮合させることにより製造することができる。

(6)
(式中、Rは、前述と同じ意味を表す。)
【0027】
前記反応において、スラリー状の式(6)で表される化合物が消失して反応液が均一な溶液となることで、2個あるQがホウ酸エステル残基である式(1)で表される化合物の生成を確認することができる。反応後、エバポレータを用いて反応溶液を濃縮し、残渣をヘキサン等の沸点が比較的低い炭化水素溶媒で洗浄し、その後、ろ過を行い2個あるQがホウ酸エステル残基である式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0028】
前記反応に用いることができるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
前記反応に用いることができるジオールとしては、ピナコール、カテコール、エチレングリコール、1、3−プロパンジオール等が挙げられる。
また、前記反応において、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム等の脱水剤を添加してもよい。
【0029】
式(6)で表される化合物は、式(7)で表される化合物をブチルリチウム(n−BuLi)等の有機リチウム化合物でリチオ化し、その後、リチオ化した化合物とホウ酸トリメチル(トリメトキシボラン)等のホウ酸エステルとを反応させて式(8)で表される化合物を製造し、式(8)で表される化合物を希塩酸等の酸で酸処理することにより製造することができる。

(7) (8) (6)
(式中、Rは、前述と同じ意味を表す。)
【0030】
前記リチオ化反応は、通常、無水テトラヒドロフラン、無水ジエチルエーテル等の無水エーテル溶媒中で行われる。反応温度は、反応基質である式(7)で表される化合物の種類にもよるが、通常、−80℃〜25℃である。また、前記酸処理に使用される酸としては、塩酸、硫酸、酢酸等が挙げられる。
【0031】
式(2)で表される化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられる。

【0032】
式(3)で表される化合物としては、例えば、下記化合物が挙げられる。

【0033】
式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを反応させて得られる高分子化合物が有する繰り返し単位としては、例えば、以下の繰り返し単位が挙げられる。

【0034】
式(1)で表される化合物と式(3)で表される化合物とを反応させて得られる高分子化合物が有する繰り返し単位としては、例えば、以下の繰り返し単位が挙げられる。

【0035】
式(4)で表される繰り返し単位の好ましい一態様は、式(5)で表される繰り返し単位である。

(5)
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。2個あるRは、同一でも相異なっていてもよい。Tは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。複数個あるTは、同一でも相異なっていてもよい。)
【0036】
本発明の製造方法で製造される式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物は、該高分子化合物を含む有機層を有する有機光電変換素子の光電変換効率を高める観点からは、該高分子化合物中の全繰り返し単位の合計に対して、式(4)で表される繰り返し単位の量が、20〜100モル%であることが好ましく、30〜100モル%であることがより好ましい。
【0037】
式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、103〜108であることが好ましく、より好ましくは103〜107であり、さらに好ましくは103〜106である。
【0038】
式(4)で表される高分子化合物は、共役系高分子化合物であることが好ましい。ここで、共役系高分子化合物とは、該化合物を構成する分子の主鎖が共役している化合物を意味する。
【0039】
式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物は、式(4)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。該繰り返し単位としては、アリーレン基、ヘテロアリーレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。ヘテロアリーレン基としては、フランジイル基、ピロールジイル基、ピリジンジイル基等が挙げられる。
【0040】
<高分子化合物の製造方法>
本発明の製造方法は、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物又は式(3)で表される化合物とを反応させる式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の製造方法である。反応としては、例えば、Suzukiカップリング反応が挙げられる。
【0041】
Suzukiカップリング反応による重合は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸三カリウム、フッ化カリウム等の無機塩基、又は、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の有機塩基の存在下、パラジウム[テトラキス(トリフェニルホスフィン)]、[トリス(ジベンジリデンアセトン)]ジパラジウム、パラジウムアセテート、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル等のパラジウム錯体又はニッケル錯体を触媒として用い、必要に応じて、トリフェニルホスフィン、トリ(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(2-メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノプロパン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン等の配位子を添加し、ボロン酸残基又はホウ酸エステル残基を有するモノマーと、臭素原子、ヨウ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を有するモノマーとを反応させる重合である。Suzukiカップリング反応による重合の詳細は、例えば、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.39,1533−1556(2001)に記載されている。
【0042】
本発明の製造方法には、通常、溶媒が用いられる。この溶媒は、用いる重合反応、モノマー及びポリマーの溶解性等を考慮して選択すればよい。具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒、有機溶媒相と水相の二相を有する混合溶媒が挙げられる。Suzukiカップリング反応に用いる溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒等の有機溶媒、有機溶媒相と水相の二相を有する混合溶媒が好ましい。反応溶媒は、副反応を抑制するために、反応前に脱酸素処理を行うことが好ましい。
【0043】
本発明の製造方法の反応温度の下限は、反応性の観点からは、好ましくは−100℃であり、より好ましくは−20℃であり、特に好ましくは0℃である。反応温度の上限は、モノマー及び高分子化合物の安定性の観点からは、好ましくは200℃であり、より好ましくは150℃であり、特に好ましくは120℃である。
【0044】
本発明の製造方法において、反応終了後の反応液から式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を取り出す方法としては、公知の方法が挙げられる。例えば、メタノール等の低級アルコールに反応溶液を加え、析出させた沈殿をろ過、乾燥することにより、式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を得ることができる。得られた高分子化合物の純度が低い場合は、再結晶、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
【0045】
式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を有機光電変換素子の製造に用いる場合には、末端基としてA又はQで表される重合活性基が高分子化合物に残っていると、得られる有機光電変換素子の耐久性等の特性が低下することがあるので、高分子化合物の末端を安定な基で保護することが好ましい。
【0046】
末端を保護する安定な基としては、アルキル基、アルコキシ基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、アリール基、アリールアミノ基、1価の複素環基等が挙げられる。また、安定な基に代えて、水素原子が末端に位置していてもよい。末端基でホール輸送性を高めるという観点からは、アリールアミノ基などの電子供与性を付与する基が好ましい。末端基としては、主鎖の共役構造と連続した共役結合を有している基も好ましく用いることができる。該基としては、例えば、炭素−炭素結合を介してアリール基又は1価の複素環基と結合している基が挙げられる。アリールアミノ基としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。1価の複素環基としては、チェニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。
【0047】
<有機光電変換素子>
式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物は、600nmの光等の長波長の光の吸光度が高く、太陽光を効率的に吸収するため、該高分子化合物を用いて製造した有機光電変換素子は短絡電流密度が大きくなる。
【0048】
本発明の有機光電変換素子は、一対の電極と、該電極間に機能層を有し、該機能層が電子受容性化合物と式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含有する。電子受容性化合物としては、フラーレン、フラーレン誘導体が好ましい。また、式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の中でも、式(5)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物が好ましい。有機光電変換素子の具体例としては、
1.一対の電極と、該電極間に機能層を有し、該機能層が電子受容性化合物と、式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物とを含有する有機光電変換素子;
2.一対の電極と、該電極間に機能層を有し、該機能層が電子受容性化合物と、式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物とを含有する有機光電変換素子であって、該電子受容性化合物がフラーレン誘導体である有機光電変換素子;
が挙げられる。前記一対の電極は、通常、少なくとも一方が透明又は半透明であり、以下、その場合を一例として説明する。
【0049】
前記1.の有機光電変換素子では、電子受容性化合物及び前記高分子化合物を含有する機能層における該電子受容性化合物の割合が、前記高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部であることが好ましく、20〜500重量部であることがより好ましい。また、前記2.の有機光電変換素子では、光電変換効率を高める観点からは、機能層における該フラーレン誘導体の割合が、前記高分子化合物100重量部に対して、20〜400重量部であることが好ましく、40〜250重量部であることがより好ましく、80〜120重量部であることがさらに好ましい。短絡電流密度を高める観点からは、機能層における該フラーレン誘導体の割合が、該重合体100重量部に対して、20〜250重量部であることが好ましく、40〜120重量部であることがより好ましい。
【0050】
有機光電変換素子が高い光電変換効率を有するためには、前記電子受容性化合物及び式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が所望の入射光のスペクトルを効率よく吸収することができる吸収域を有するものであること、ヘテロ接合界面が励起子を効率よく分離するためにヘテロ接合界面を多く含むこと、ヘテロ接合界面が生成した電荷を速やかに電極へ輸送する電荷輸送性を有することが重要である。
【0051】
このような観点から、有機光電変換素子としては、前記1.、前記2.の有機光電変換素子が好ましく、ヘテロ接合界面を多く含むという観点からは、前記2.の有機光電変換素子がより好ましい。また、本発明の有機光電変換素子には、少なくとも一方の電極と該素子中の機能層との間に付加的な層を設けてもよい。付加的な層としては、例えば、ホール又は電子を輸送する電荷輸送層等が挙げられる。
【0052】
本発明の有機光電変換素子は、通常、基板上に形成される。該基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に化学的に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンが挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。
【0053】
一対の電極の材料としては、金属、導電性高分子等を用いることができ、好ましくは一対の電極のうち一方の電極の材料は仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらの金属のうちの2つ以上の金属の合金、又はそれらの金属のうちの1つ以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1つ以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。
前記の透明又は半透明の電極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性材料を用いて作製された膜、NESA、金、白金、銀、銅が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。電極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、電極材料として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0054】
前記付加的な層としての電荷輸送層、即ち、ホール輸送層又は電子輸送層に用いられる材料として、それぞれ後述の電子供与性化合物、電子受容性化合物を用いることができる。
付加的な層としてのバッファ層に用いられる材料としては、フッ化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物又は酸化物等を用いることができる。また、酸化チタン等無機半導体の微粒子を用いることもできる。
【0055】
<有機薄膜>
本発明の有機光電変換素子における前記機能層としては、例えば、式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含有する有機薄膜を用いることができる。
【0056】
有機薄膜の膜厚は、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは2nm〜1000nmであり、より好ましくは5nm〜500nmであり、さらに好ましくは20nm〜200nmである。
【0057】
有機薄膜は、式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を一種単独で含んでいても二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、有機薄膜のホール輸送性を高めるため、有機薄膜中に電子供与性化合物として、その他の高分子化合物又は低分子化合物を混合して用いることもできる。
【0058】
式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物以外に有機薄膜が含んでいてもよい電子供与性化合物としては、例えば、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、オリゴチオフェン及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体が挙げられる。
【0059】
前記電子受容性化合物としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、C60等のフラーレン及びその誘導体、カーボンナノチューブ、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン等のフェナントロリン誘導体が挙げられ、とりわけフラーレン及びその誘導体が好ましい。
【0060】
なお、前記電子供与性化合物及び前記電子受容性化合物は、これらの化合物のエネルギー準位のエネルギーレベルから相対的に決定される。
【0061】
フラーレン及びその誘導体としては、C60、C70、C84及びその誘導体が挙げられる。
フラーレン誘導体とは、フラーレンの少なくとも一部が修飾された化合物を表す。
【0062】
フラーレン誘導体としては、例えば、式(I)で表される化合物、式(II)で表される化合物、式(III)で表される化合物、式(IV)で表される化合物が挙げられる。

(I) (II) (III) (IV)

(式(I)〜式(IV)中、Rは、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はエステル構造を有する基である。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。Rはアルキル基又はアリール基を表す。複数個あるRは、同一であっても相異なってもよい。)
【0063】
及びRで表されるアルキル基、アリール基の定義、具体例は、Rで表されるアルキル基、アリール基の定義、具体例と同じである。
【0064】
で表されるヘテロアリール基は、通常、炭素数が3〜60であり、チェニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。
【0065】
で表されるエステル構造を有する基は、例えば、式(V)で表される基が挙げられる。

(V)
(式中、u1は、1〜6の整数を表す、u2は、0〜6の整数を表す、Rは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0066】
で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例は、Rで表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0067】
60の誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。

【0068】

【0069】

【0070】
70の誘導体の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。

【0071】
<有機薄膜の製造方法>
前記有機薄膜は、如何なる方法で製造してもよく、例えば、式(4)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を含む溶液からの成膜による方法で製造してもよいし、真空蒸着法により有機薄膜を形成してもよい。溶液からの成膜により有機薄膜を製造する方法としては、例えば、一方の電極上に該溶液を塗布し、その後、溶媒を蒸発させて有機薄膜を製造する方法が挙げられる。
【0072】
溶液からの成膜に用いる溶媒は、前記高分子化合物を溶解させるものであれば特に制限はない。この溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン等の炭化水素溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル溶媒が挙げられる。前記高分子化合物は、通常、前記溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0073】
溶液からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができ、スピンコート法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法が好ましい。
【0074】
<素子の用途>
有機光電変換素子は、透明又は半透明の電極から太陽光等の光を照射することにより、電極間に光起電力が発生し、有機薄膜太陽電池として動作させることができる。有機薄膜太陽電池を複数集積することにより有機薄膜太陽電池モジュールとして用いることもできる。
【0075】
また、電極間に電圧を印加した状態で、透明又は半透明の電極から光を照射することにより、光電流が流れ、有機光センサーとして動作させることができる。有機光センサーを複数集積することにより有機イメージセンサーとして用いることもできる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量はサイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)により求めた。
カラム: TOSOH TSKgel SuperHM-H(2本)+ TSKgel SuperH2000(4.6mm I.d. × 15cm);検出器:RI (SHIMADZU RID-10A);移動相:テトラヒドロフラン(THF)
【0078】
合成例1
(化合物(2)の合成)

(1) (2)
窒素雰囲気下、ジムロートコンデンサーを装着した100mlの3口フラスコに、Adv.Funct. Mater.、2007年、17巻、3836−3842頁に記載の方法で合成した化合物(1)を3.1g(4.5mmol)、無水テトラヒドロフラン(THF)を50ml入れ、−78℃にて攪拌した。フラスコ内の温度を−70℃以下に保ちながら、1.57Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液を5.9ml(9.3mmol)滴下し、1時間攪拌した。その後、フラスコ内にトリメトキシボランを1.0g(9.6mmol)滴下し、30分攪拌した後、室温(25℃)まで昇温し、5時間攪拌した。
その後、水50mlを加え、ジエチルエーテル100mlを用いた抽出を2回行った。得られた有機層をエバポレータで濃縮した後、濃縮した溶液に、クロロホルム50ml、及び6N−塩酸50mlを加え、室温(25℃)にて5時間攪拌した。1時間静置後、ろ過し得られた固体を、5時間減圧乾燥(30mmHg、80℃)し、化合物(2)を0.74g得た。化合物(2)の精製を行わず、次の反応に用いた。化合物(2)の収率は、26%であった。
【0079】
合成例2
(化合物(3)の合成)

(2) (3)
100mlの3口フラスコに、室温(25℃)下で、化合物(2)を0.74g(1.2mmol)、ピナコールを0.29g(2.5mmol)、及びクロロホルムを30ml入れ、スラリー状の反応液が均一溶液になるまで加熱還流しながら攪拌した。その後、無水硫酸マグネシウム1.0gを反応液に加え、さらに4時間加熱還流しながら攪拌した。攪拌後、ろ過し、ろ液をエバポレータで濃縮した。濃縮後、残渣をヘキサン20mlで洗浄し、得られた結晶をろ取し、3時間減圧乾燥(50mmHg、30℃)して化合物(3)を0.57g(0.73mmol)得た。化合物(3)の収率は、62%であった。
【0080】
1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ7.99(s、2H)、7.39(brs、2H)、7.15(m、4H)、6.87(m、2H)、3.88(t、4H)、1.77−1.66(m、4H)、1.47(s、24H)、1.50−1.20(m、24H)、0.89(t、6H)
【0081】
実施例1
(高分子化合物Aの合成)
アルゴン雰囲気において、反応容器に化合物(3)を150mg(0.190mmol)、2,5−ジブロモチオフェン(東京化成製)を46mg(0.190mmol)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、シグマアルドリッチ社製)を49mg、トルエンを10mL入れ、アルゴンを用いて得られた溶液をバブリングし、十分に脱気を行った。さらに酢酸パラジウムを0.64mg(0.00285mmol)、トリス(メトキシフェニル)ホスフィンを3.50mg(0.00993mmol)、脱気した16.7重量(wt)%の炭酸ナトリウム水溶液を1.0mL加え、反応溶液を4時間還流した。次に、反応溶液にフェニルホウ酸を10.0mg加えた後、2時間還流した。その後、反応溶液に9.1wt%のジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を10ml加え、5時間還流した。還流終了後、反応溶液を室温(25℃)まで冷却した。その後、反応溶液を静置し、分液したトルエン層を回収した。該トルエン層を水10mLで2回、3wt%の酢酸水10mLで2回、さらに水10mLで2回洗浄し、得られたトルエン層をメタノール中に注ぎ込み、析出した沈殿物を回収した。この沈殿物を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。次に、得られたトルエン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、アルミナ/シリカゲルカラムに通し、精製した。得られたトルエン溶液を減圧濃縮した後、メタノール中に注ぎ込み、生成した沈殿を回収した。この沈殿をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、高分子化合物Aを65mg得た。
【0082】
高分子化合物Aは、下式で表される繰り返し単位のみを含む。

【0083】
実施例2
(高分子化合物Bの合成)

単量体A
アルゴン雰囲気において、反応容器に化合物(3)を312mg(0.395mmol)、ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリー、2002年、第12号、2887−2892頁に記載のある方法で合成した単量体Aを200mg(0.436mmol)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、シグマアルドリッチ社製)を128mg、トルエンを26mL入れ、アルゴンを用いて得られた溶液をバブリングし、十分に脱気を行った。さらに酢酸パラジウムを1.47mg(0.00655mmol)、トリス(メトキシフェニル)ホスフィンを8.10mg(0.0230mmol)、脱気した16.7wt%の炭酸ナトリウム水溶液を2.6mL加え、反応溶液を1時間還流した。次に、反応溶液に、フェニルホウ酸を60.0mg加えた後、2時間還流した。その後、反応溶液をメタノールに注ぎ、沈殿したポリマーをろ過し、回収した。得られたポリマーを純水50mLで2回、メタノール50mLで2回洗浄し、乾燥して重合体を230mg得た。
上記で得られた重合体をオルトジクロロベンゼン30mLに溶解し、9.1wt%のジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を10ml加え、反応溶液を5時間還流した。還流終了後、反応溶液を室温(25℃)付近まで冷却した。その後、反応溶液を静置し、分液したオルトジクロロベンゼン層を回収した。該オルトジクロロベンゼン層を水10mLで2回、3wt%の酢酸水10mLで2回、さらに水10mLで2回洗浄し、得られたオルトジクロロベンゼン層をメタノール中に注ぎ込み、析出した沈殿物を回収した。この沈殿物を減圧乾燥した後、オルトジクロロベンゼンに溶解した。次に、得られたオルトジクロロベンゼン溶液をろ過し、不溶物を除去した後、ろ液をアルミナ/シリカゲルカラムに通し、精製した。得られたオルトジクロロベンゼン溶液を減圧濃縮した後、メタノール中に注ぎ込み、生成した沈殿を回収した。この沈殿をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、高分子化合物Bを170mg得た。
【0084】
高分子化合物Bは、下式で表される繰り返し単位のみを含む。

【0085】
合成例3
(高分子化合物Cの合成)

フラスコ内の気体をアルゴンで置換した2L四つ口フラスコに、化合物(C)を7.928g(16.72mmol)、化合物(F)を13.00g(17.60mmol)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、シグマアルドリッチ社製、CH3N[(CH2)7CH3]3Cl、density 0.884g/ml、25℃)を4.979g、及びトルエンを405ml入れ、撹拌しながら反応系内を30分間アルゴンバブリングした。フラスコ内にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を0.02g加え、105℃に昇温し、撹拌しながら2mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液42.2mlを滴下した。滴下終了後5時間反応させ、その後、フェニルボロン酸2.6gとトルエン1.8mlとを加え、105℃で16時間撹拌した。その後、反応液にトルエン700ml及び7.5wt%のジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物水溶液200mlを加え、85℃で3時間撹拌した。反応液の水層を除去後、有機層を60℃のイオン交換水300mlで2回、60℃の3wt%酢酸300mlで1回、さらに60℃のイオン交換水300mlで3回洗浄した。有機層をセライト、アルミナ及びシリカを充填したカラムに通し、ろ液を回収した。その後、熱トルエン800mlでカラムを洗浄し、洗浄後のトルエン溶液をろ液に加えた。得られた溶液を700mlまで濃縮した後、濃縮した溶液を2Lのメタノールに加え、重合体を再沈殿させた。重合体をろ過して回収し、500mlのメタノール、500mlのアセトン、500mlのメタノールで重合体を洗浄した。重合体を50℃で一晩真空乾燥することにより、ペンタチエニル−フルオレンコポリマー(高分子化合物C)を12.21g得た。高分子化合物Cのポリスチレン換算の重量平均分子量は1.1×105であった。
【0086】
測定例1
(有機薄膜の吸光度の測定)
高分子化合物Aを0.5重量%の濃度でo−ジクロロベンゼンに溶解させ、塗布溶液を作製した。得られた塗布溶液をガラス基板上に、スピンコートで塗布した。塗布操作は23℃で行った。その後、大気下120℃の条件で5分間ベークし、膜厚約100nmの有機薄膜を得た。有機薄膜の吸収スペクトルを分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:V−670)で測定した。測定したスペクトルを図1に示す。600nm及び700nmにおける吸光度を表1に示す。
【0087】
測定例2
(有機薄膜の吸光度の測定)
高分子化合物Aの代わりに高分子化合物Bを使用した以外は、測定例1と同様にして有機薄膜を作製し、該有機薄膜の吸収スペクトルを測定した。測定したスペクトルを図2に示す。600nm及び700nmにおける吸光度を表1に示す。
【0088】
比較例1
(有機薄膜の吸光度の測定)
高分子化合物Aの代わりに高分子化合物Cを使用した以外は、測定例1と同様にして有機薄膜を作製し、該有機薄膜の吸収スペクトルを測定した。測定したスペクトルを図3に示す。600nm及び700nmにおける吸光度を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
参考例1
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
電子受容性化合物であるフラーレン誘導体C70PCBM(Phenyl C71-butyric acid methyl ester、アメリカンダイソース社製、商品名:ADS71BFA)と、電子供与性化合物である高分子化合物Aとを、2:1の重量比で混合し、該混合物の濃度が2重量%となるよう、o−ジクロロベンゼンに溶解させた。得られた溶液を、孔径1.0μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過し、塗布溶液1を調製した。
【0091】
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板をオゾンUV処理して表面処理を行った。次に、PEDOT:PSS溶液(H.C.スタルク社製CleviosP VP AI4083)をスピンコートによりITO膜上に塗布し、大気中120℃で10分間加熱することにより、膜厚50nmの正孔注入層を作成した。次に、前記塗布溶液1を、スピンコートにより正孔注入層上に塗布し、有機薄膜太陽電池の機能層を得た。機能層の膜厚は100nmであった。その後、真空蒸着機によりカルシウムを膜厚4nmで蒸着し、次いで、アルミニウムを膜厚100nmで蒸着することにより、有機薄膜太陽電池を作製した。蒸着のときの真空度は、すべて1〜9×10-3Paであった。こうして得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正方形であった。得られた有機薄膜太陽電池をソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUN II:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm2)を用いて一定の光を照射して測定し、発生する電流と電圧を測定して光電変換効率を求めた。光電変換効率は、3.87%であり、短絡電流密度は8.5mA/cmであり、開放端電圧は0.91Vであり、フィルファクター(FF)は0.50であった。
【0092】
参考例2
(有機薄膜太陽電池の作製、評価)
電子受容性化合物にC70PCBMの代わりにC60PCBM(Phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製、商品名:E100)を使用し、高分子化合物Aの代わりに高分子化合物Bを使用し、C60PCBMと高分子化合物Bを3:1の重量比で混合し以外は、参考例1と同様にして有機薄膜太陽電池の作製、評価を行った。光電変換効率は、1.6%であり、短絡電流密度は5.6mA/cmであり、開放端電圧は0.54Vであり、FFは0.53であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物又は式(3)で表される化合物とを反応させる式(4)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物の製造方法。

(1)
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。2個あるRは、同一でも相異なっていてもよい。Qはジヒドロキシボリル基又はホウ酸エステル残基を表す。2個あるQは、同一でも相異なっていてもよい。)

(2) (3)
(式(2)及び式(3)中、Tは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。複数個あるTは、同一でも相異なっていてもよい。Aは、臭素原子、塩素原子又はヨウ素原子を表す。2個あるAは、同一でも相異なっていてもよい。)

(4)
(式中、aは、0又は1を表す。T及びRは、前述と同じ意味を表す。)
【請求項2】
式(5)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物。

(5)
(式中、Rは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。2個あるRは、同一でも相異なっていてもよい。Tは、水素原子、フッ素原子、フッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基又は置換されていてもよいアリール基を表す。複数個あるTは、同一でも相異なっていてもよい。)
【請求項3】
一対の電極と、該電極間に設けられた機能層とを有し、該機能層が電子受容性化合物と請求項2に記載の高分子化合物とを含む有機光電変換素子。
【請求項4】
機能層中に含まれる電子受容性化合物の量が、高分子化合物100重量部に対して、10〜1000重量部である請求項3に記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
電子受容性化合物が、フラーレン誘導体である請求項3又は4に記載の有機光電変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−72398(P2012−72398A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191480(P2011−191480)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】