説明

高分子化合物及びこれを含む有機発光素子

【課題】高分子化合物及びこれを含む有機発光素子を提供する。
【解決手段】下記化学式1で表示される高分子である:


前記化学式に係わる説明は、発明の詳細な説明を参照する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子化合物及びこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物を利用した電界発光素子は、コダック社のC.W.Tangによって、機能分離された多層構造の素子が発表されて以来、軽量化、薄膜化及び多様な色相の具現が容易であり、スイッチング速度が速く、かつ低い駆動電圧で高い輝度を得ることができるという長所があり、これまで10年あまり多くの研究が進められてきた。その結果、多層薄膜構造の導入を介する素子の均衡した電荷注入、ドーピングを介する色相調節及び量子効率向上、合金などを利用した新たな電極材料の開発など、短期間に素子の性能において注目すべき成長がなされた。
【0003】
高分子を利用した電界発光素子に係わる研究は、1990年に、ケンブリッジ大グループによって、π共役高分子であるポリ(1,4−フェニレンビニレン)(PPV)に電気を加えたときに光が発光するという事実が報告された後、活発な研究が進められている。π共役高分子は、単結合(あるいはσ結合)と二重結合(あるいはπ結合)と交互に存在する化学構造を有しており、偏在化されずに、結合鎖によって比較的自由に動くことができるπ電子を有している。π共役高分子は、このような半導体的な性質によって、それらを電界発光素子の発光層に適用するとき、HOMO(highest occupied molecular orbital)−LUMO(lowest unoccupied molecular orbital)バンドギャップ(band-gap)に該当する全可視光領域の光が分子設計を介して容易に得ることができ、スピンコーティング法あるいはプリンティング法で簡単に薄膜を形成できて素子製造工程が簡単であり、かつ費用が低廉であり、高いガラス転移温度を有しているために、優秀な機械的性質の薄膜を提供できるという長所を有している。
【0004】
しかし、高分子を利用した電界発光素子の場合、色純度低下、高い駆動電圧、低効率などが問題になっており、現在このような問題点を克服するための研究が活発に進行中である。その一例として、フルオレン含有高分子を共重合することにより(特許文献1及び非特許文献1)、或いはブレンディングすることにより(非特許文献2)電界発光特性を向上させる方案が提案されたが、まだその向上程度が不十分な状態である。よって、さらに優秀な特性を示す高分子材料の開発が急務となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,169,163号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Synthetic Metal,Vol.106,pp.115-119,1999
【非特許文献2】Applied Physics Letter,Vol.76,No.14,pp.1810,2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、正孔輸送能などにすぐれる高分子材料を提供するものである。
【0008】
本発明はまた、前記高分子を含む有機発光素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によって、下記化学式1で表示される高分子が提供される。
【化1】

ここで、
n=0.01ないし0.99の実数であり、
X=OまたはSであり、
は、H、C−C20直鎖状アルキル基、C−C20分枝状アルキル基、C−C20環状アルキル基、またはC−C14芳香族基であり、前記芳香族基は、C−C20アルキル基またはC−C20アルコキシ基で置換可能であり、
及びRは、それぞれ独立して、C−C26芳香族基、またはヘテロ原子で置換されたヘテロ芳香族基であり、前記芳香族基またはヘテロ芳香族基は、C−C20アルキル基またはC−C20アルコキシ基で置換可能であり、
Arは、C−C20直鎖状アルキル基、C−C20分枝状アルキル基、C−C26芳香族基、またはヘテロ原子で置換されたヘテロ芳香族基であり、前記芳香族基またはヘテロ芳香族基は、C−C20アルキル基またはC−C20アルコキシ基で置換可能である。
【0010】
本発明の一具現例によれば、前記Arは、次の化学式2で表示される群のうち一つでありうる。
【0011】
【化2A】

【化2B】

【化2C】

ここで、mは、1ないし4の整数であり、Rは、C−C20アルキル基である。
【0012】
本発明の他の一具現例によれば、前記R、R、及びRは、それぞれ独立してフェニル基でありうる。
【0013】
本発明のさらに他の一具現例によれば、前記高分子の重量平均分子量は、10,000ないし300,000でありうる。
【0014】
本発明の他の一具現例によれば、前記高分子は、化学式3ないし9のうちのいずれか一つで表示されうる。
【0015】
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【0016】
本発明のさらに他の一具現例によれば、前記高分子の分子量分散度は、1.5ないし4でありうる。
【0017】
本発明のさらに他の一具現例によれば、前記高分子は、有機発光素子用として使われうる。
【0018】
本発明の他の側面によって、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に介在された有機膜と、を具備した有機発光素子であって、前記有機膜の少なくとも1層が前記高分子を含む有機発光素子が提供される。
【0019】
本発明の一具現例によれば、前記有機発光素子の有機膜は、正孔輸送層を含みうる。
【0020】
本発明の他の一具現例によれば、前記有機発光素子の有機膜は、発光層を含みうる。
【発明の効果】
【0021】
使われたフェノキサジン(phenoxazine)単位またはフェノチアジン(phenothiazine)単位は、電荷の移動性が大きく、エネルギーギャップが大きいので、青色発光体の正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層または電子注入層の材料として有機発光素子の特性を向上させることができる。
【0022】
特に、フェノキサジン単量体の両側にアリールアミンが導入されることによって、ホール移動度(hole mobility)が増大し、HTL(hole transporting layer)材料として優秀である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一般的な有機発光素子構造の断面を模式的に図示した図である。
【図2】比較例1の有機発光素子構造の断面を模式的に図示した図である。
【図3】実施例1の有機発光素子構造の断面を模式的に図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
本発明の一具現例による高分子は、下記化学式1で表示されうる。
【化10】

ここで、
n=0.01ないし0.99の実数であり、
X=OまたはSであり、
は、H、C−C20直鎖状アルキル基、C−C20分枝状アルキル基、C−C20環状アルキル基、またはC−C14芳香族基であり、前記芳香族基は、C−C20アルキル基またはC−C20アルコキシ基で置換可能であり、
及びRは、それぞれ独立して、C−C26芳香族基、またはヘテロ原子で置換されたヘテロ芳香族基であり、前記芳香族基またはヘテロ芳香族基は、C−C20アルキル基またはC−C20アルコキシ基で置換可能である。
【0026】
前記化学式1の高分子化合物の置換基R、R、及びRについてさらに詳細に叙述する。
【0027】
前記化学式1で、R及びRは、同一であってもよく、またはR、R、及びRは、互いに同一であってもよい。本発明の化学式で使われた基のうち、代表的な基の定義について以下に述べる。
【0028】
前記化学式1で、C−C20直鎖状または分枝状アルキル基の非制限的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、iso−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノナニル基、ドデシル基などを挙げることができるが、これらに限定されない。前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、リン酸もしくはその塩、C−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、C−C10アルケニル基、C−C10アルキニル基、C−C16アリール基、またはC−C16ヘテロアリール基で置換されうる。
【0029】
前記化学式1で、C−C20環状アルキル基の中の一つ以上の水素原子は、前述のC−C20直鎖状または分枝状アルキル基の置換基と同じ置換基で置換可能である。
【0030】
一方、前記化学式1でArは、C−C20直鎖状アルキル基、C−C20分枝状アルキル基、C−C26芳香族基、またはヘテロ原子が置換されたヘテロ芳香族基であり、前記芳香族基またはヘテロ芳香族基は、C−C20アルキル基またはC−C20アルコキシ基で置換可能である。
【0031】
前記化学式1で、芳香族基は、一つ以上の環を含む炭素環式芳香族系を意味し、2以上の環を有する場合、互いに融合されるか、或いは単結合などを介して連結されうる。芳香族という用語は、フェニル、ナフチル、アントラセニルのような芳香族系を含む。また、前記芳香族基のうち一つ以上の水素原子は、前述のC−C20直鎖状または分枝状アルキル基の置換基と同じ置換基で置換可能である。
【0032】
このような芳香族基の例としては、フェニル基、C−C10アルキルフェニル基(例えば、エチルフェニル基)、ハロフェニル基(例えば、o−、m−、及びp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基)、シアノフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビフェニル基、ハロビフェニル基、シアノビフェニル基、C−C10アルキルビフェニル基、C−C10アルコキシビフェニル基、o−、m−、及びp−トリル基、o−、m−、及びp−クメニル基、メシチル基、フェノキシフェニル基、(α,α−ジメチルベンゼン)フェニル基、(N,N’−ジメチル)アミノフェニル基、(N,N’−ジフェニル)アミノフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ハロナフチル基(例えば、フルオロナフチル基)、C−C10アルキルナフチル基(例えば、メチルナフチル基)、C−C10アルコキシナフチル基(例えば、メトキシナフチル基)、シアノナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントラキノリル基、メチルアントリル基、フェナントリル基、トリフェニレン基、ピレニル基、クリセニル基、エチル−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネリル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0033】
前記化学式1で、ヘテロ芳香族基は、窒素原子(N)、酸素原子(O)、燐原子(P)または硫黄原子(S)中から選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、2以上の環を有する場合、それらは互いに融合されるか、或いは単結合などを介して連結されうる。ヘテロ芳香族基の例としては、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、ピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、カルバゾリル基、インドリル基、キノリニル基、イソキノリニル基などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、前記ヘテロ芳香族基のうち一つ以上の水素原子は、前述のC−C20直鎖状または分枝状アルキル基の置換基と同じ置換基で置換可能である。
【0034】
前記化学式1で、アルコキシ基とは、−OA(ここで、Aは、前述のようなC−C20直鎖状または分枝状アルキル基である)の構造を有する基であって、その非制限的な例として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基などを挙げることができるが、これらに限定されない。それらアルコキシ基のうち少なくとも一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0035】
さらに具体的には、前記Arは、次の化学式2で表示される群のうちの一つでありうる。
【0036】
【化11A】

【化11B】

【化11C】

ここで、mは、1ないし4の整数であり、Rは、C−C20アルキル基である。
【0037】
本発明の一具現例によれば、前記R、R、及びRは、それぞれ独立して、フェニル基であり、前記高分子の重量平均分子量は、10,000ないし300,000であり、前記高分子の分子量分散度は、1.5ないし4でありうる。
【0038】
重量平均分子量及び分子量分散度が前記範囲内である場合、加工性にすぐれ、作業が容易なだけではなく、その後の物性評価でも優秀な結果をもたらす。
【0039】
さらに具体的には、前記高分子は、化学式3ないし9のうちいずれか一つで表示されうる。
【0040】
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

nは、前述の通りである。
【0041】
本発明の一具現例による高分子は、主鎖内に、フェノキサジンに直接連結されたアミン基を有する。このようなアミン基の影響によって、本発明の一具現例による高分子は、安定性にすぐれ、正孔輸送能も優秀である。従って、前記高分子は、有機発光素子用として使われる場合、効果的である。
【0042】
本発明の一具現例による有機発光素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に前述のような化学式1で表示される高分子を含んだ有機膜と、を具備する。
【0043】
本発明の前記化学式1で表示される高分子を含んだ有機膜は、正孔輸送層または発光層でありうる。
【0044】
一方、前記第1電極はアノードであってもよく、前記第2電極はカソードであってもよいが、これと反対の場合も可能であることはいうまでもない。
【0045】
以下、本発明による有機発光素子の製造方法について、図1に図示された一般的な有機発光素子を参照しつつ述べる。図1の一般的な有機発光素子は、基板、第1電極(アノード)、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、及び第2電極(カソード)を具備している。
【0046】
まず、基板上部に大きい仕事関数を有する第1電極用物質を、蒸着法またはスパッタリング法などによって形成し、第1電極を形成する。前記第1電極は、アノードまたはカソードでありうる。ここで、基板としては、一般的な有機発光素子で使われる基板を使用するが、機械的強度、熱的安定性、透明性、表面平滑性、取扱容易性及び防水性にすぐれるガラス基板または透明プラスチック基板が望ましい。第1電極用物質としては、伝導性にすぐれる酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)などを利用することが可能であり、透明電極または反射電極として形成されうる。
【0047】
次に、前記第1電極上部に、スピンコーティング法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett)法のような多様な方法を利用し、正孔注入層(HIL)を形成できる。
【0048】
スピンコーティング法によって正孔注入層を形成する場合、そのコーティング条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性によって異なるが、約1,000rpmないし5,000rpmのコーティング速度、コーティング後の溶媒除去のための熱処理温度は、約80℃ないし250℃の温度範囲で適切に選択することが望ましい。
【0049】
前記正孔注入層の物質としては、公知の正孔注入材料を使用できるが、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス{N,Nジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(2−TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)またはポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PANI/PSS)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化19】

【0051】
前記正孔注入層の厚みは、約100Åないし1,0000Å、望ましくは、100Åないし1,000Åでありうる。前記正孔注入層の厚みが前記範囲を満足する場合、駆動電圧の上昇なしに、優秀な正孔注入特性を得ることができる。
【0052】
次に、前記正孔注入層の上部に、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような多様な方法を利用し、正孔輸送層(HTL)を形成できる。スピンコーティング法によって正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0053】
前記正孔輸送層の物質は、前述のような化学式1で表示される高分子を含むことができる。化学式1で表示される高分子と共に、公知の正孔輸送層の物質を利用することもできるが、例えば、N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体;N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)などの芳香族縮合環を有するアミン誘導体などを使用できるが、これらに限定されない。例えば、(4,4−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン)(TCTA)の場合、正孔輸送の役割以外にも、発光層から励起子が拡散することを防止する役割も行うことができる。
【0054】
【化20】

【0055】
前記正孔輸送層の厚みは、約50Åないし1,000Å、望ましくは、100Åないし600Åでありうる。前記正孔輸送層の厚みが前述のような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、優秀な正孔輸送特性を得ることができる。
【0056】
次に、前記正孔輸送層の上部に、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような方法を利用し、発光層(EML)を形成できる。スピンコーティング法によって発光層を形成する場合、その蒸着条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0057】
前記発光層は、前述のような化学式1で表示される高分子を含むことができる。例えば、化学式1で表示される高分子は、青色発光層にホストまたはドーパントとして使われうる。前記化学式1で表示される高分子以外に、発光層は、公知の多様な発光物質を利用して形成できるが、公知のホスト及びドーパントを利用して形成することもできる。前記ドーパントの場合、公知の蛍光ドーパント及び公知のリン光ドーパントをいずれも使用できる。
【0058】
例えば、ホストとしては、トリス(8−キノラト)アルミニウム(Alq3)、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(ADN)、またはジスチリルアリーレン(DSA)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
一方、公知の赤色ドーパントとして、オクタエチルポルフィリン白金(II)(PtOEP)、Ir(piq)、BtpIr(acac)、4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(DCJTB)などを利用できるが、これに限定されるものではない。
【0060】
【化21】

【0061】
また、公知の緑色ドーパントとして、Ir(ppy)(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)、C545T(イーストマン・コダック社の商品名)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
【化22】

【0063】
一方、公知の青色ドーパントとして、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)、Ir(dfppz)、ter−フルオレン、4,4’−ビス(4−ジフェニルアミノスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、及び2,5,8,11−テトラ−tー−ブチルペリレン(TBPe)などを利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
【化23】

【0065】
前記ドーパントの含有量は、発光層の形成材料100重量部(すなわち、ホストとドーパントとの総重量は100重量部である)を基準として、0.1ないし20重量部、特に0.5〜12重量部であることが望ましい。ドーパントの含有量が前記範囲を満足するならば、濃度消光現象が実質的に防止されうる。
【0066】
前記発光層の厚みは、約100Åないし1,000Å、望ましくは、200Åないし600Åでありうる。前記発光層の厚みが前記範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、優秀な発光特性を得ることができる。
【0067】
発光層がリン光ドーパントを含む場合、三重項励起子または正孔が、電子輸送層に拡散する現象を防止するために、正孔阻止層(HBL)を発光層の上部に形成できる(図1には図示せず)。このとき、使用できる正孔阻止層の物質は、特別に制限されず、公知の正孔阻止層の物質のうちから任意に選択して利用できる。例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)のようなフェナントロリン誘導体、及びビス(2−メチル−8−キノリラート)−(p−フェニルフェノラート)−アルミニウム(Balq)などを利用できる。
【0068】
【化24】

【0069】
前記正孔阻止層の厚みは、約50Åないし1,000Å、望ましくは、100Åないし300Åでありうる。前記正孔阻止層の厚みが50Å未満である場合、正孔阻止特性が低下し、前記正孔阻止層の厚みが1,000Åを超える場合、有機発光素子の駆動電圧は上昇しうる。
【0070】
次に、電子輸送層(ETL)をスピンコーティング法、キャスト法などの多様な方法を利用して形成しうる。スピンコーティング法によって電子輸送層を形成する場合、その条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0071】
前記電子輸送層の物質は、前述のような化学式1で表示されるヘテロ環化合物を含みうる。または、公知の電子輸送層の形成材料から任意に選択されうる。その例としては、Alq3、Balqのようなキノリン誘導体;1,2,4−トリアゾール誘導体(TAZ)のような公知の材料を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
【化25】

【0073】
前記電子輸送層の厚みは、約100Åないし1,000Å、望ましくは、100Åないし500Åでありうる。前記電子輸送層の厚みが前述のような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、優秀な電子輸送特性を得ることができる。
【0074】
さらに、電子輸送層の上部に、カソードから電子の注入を容易にする機能を有する物質である電子注入層(EIL)が積層されうる。
【0075】
電子注入層の物質としては、前述のような化学式1で表示されるヘテロ環化合物でありうる。または、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaOのような電子注入層の形成材料として公知の任意の物質を利用できる。前記電子注入層の蒸着条件及びコーティング条件は、使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲で選択される。
【0076】
前記電子注入層の厚みは、約1Åないし100Å、望ましくは、5Åないし90Åでありうる。前記電子注入層の厚みが前述のような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに、優秀な電子注入特性を得ることができる。
【0077】
最後に、電子注入層の上部に真空蒸着法やスパッタリング法などの方法を利用し、第2電極を形成できる。前記第2電極は、カソードまたはアノードとして使われうる。前記第2電極形成用物質としては、小さい仕事関数を有する金属、合金、導電性化合物及びこれらの混合物を使用できる。このような物質の具体的な例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、前面発光素子を得るために、ITO、IZOを使用した透明カソードを使用することもできる。
【0078】
本発明による有機発光素子は、多様な形態の平板表示装置、例えば、受動マトリックス有機発光表示装置及び能動マトリックス有機発光表示装置に備わりうる。特に、能動マトリックス有機発光表示装置に備わる場合、基板側に備わった第1電極は、画素電極であって、薄膜トランジスタのソース電極またはドレイン電極と電気的に連結されうる。また、前記有機発光素子は、両面に画面を表示できる平板表示装置に備わりうる。
【0079】
以下、本発明について、化学式3及び4で表示される高分子の望ましい合成例及び実施例を具体的に例示するが、本発明が下記の実施例に限定されるということを意味するものではない。
【0080】
単量体の合成
フェノキサジン単量体cの合成
【化26】

【0081】
1)化合物aの合成
フェノキサジン10g(54mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド7.4g(77mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd(dba))0.61g(1.1mmol)、及びトリ(tert−ブチル)ホスフィン0.22g(1.1mmol)をキシレン200mLに溶解させた後、80℃で12時間還流させた。
前記反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却させ、蒸溜水200mlを添加し、キシレン:水=1:1(体積比)で抽出した。集められた有機層を硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥させた後で濃縮し、トルエン:ヘキサン=1:2(体積比)を溶離液として使用し、シリカゲル・カラムクロマトグラフィを実施した。ここで得た溶出液を濃縮、乾燥させ、15.2g(収率:71%)の化合物aを収得した。
【0082】
2)化合物bの合成
化合物a 15g(57.8mmol)をCHCl 200mLに溶解させた後、0℃に維持しつつ、臭素2当量(18.5g)を徐々に添加した。混合物を40分間撹拌した後で反応を停止させた。
前記反応混合物に少量のアセトンを添加し、臭素をケンチング(quenching)した後、水:CHCl=2:1(体積比)を使用して抽出を実施した。集められた有機層をMgSOで乾燥させた後で濃縮させ、MeOHで再沈殿させることによって、17g(収率:70.5%)の化合物bを得た。
【0083】
3)化合物cの合成
化合物b 17g(41mmol)、アニリン7.6g(82mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド7.4g(77mmol)、Pd(dba) 0.61g(1.1mmol)、及びトリ(tert−ブチル)ホスフィン0.22g(1.1mmol)をキシレン200mLに溶解させた後、60℃で1時間還流させた。
前記反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却させ、蒸溜水200mlを添加し、キシレン:水=1:1(体積比)で抽出した。集められた有機層をMgSOで乾燥させた後で濃縮し、トルエン:ヘキサン=1:1(体積比)を溶離液として使用し、シリカゲル・カラムクロマトグラフィを実施した。ここで得た溶出液を濃縮、乾燥させ、8g(収率:44.2%)の化合物cを収得した。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ4.08(s、2H)、δ5.87〜7.01(m、20H)
【0084】
これと同じ方法で、フェノチアジン単量体dも製造できる。
【化27】

【0085】
高分子の合成
化学式3の高分子合成
【化28】

化合物c 8g(18mmol)、2,7−ジブロモスピロフルオレン8.5g(18mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド7.4g(77mmol)、Pd(dba) 0.61g(1.1mmol)、及びトリ(tert−ブチル)ホスフィン0.22g(1.1mmol)をキシレン200mLに溶解させた後、80℃で2日間還流させた。
前記反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却させ、蒸溜水200mlを添加し、キシレン:水=1:1(体積比)で抽出した。集められた有機層をMgSOで乾燥させた後で濃縮し、トルエンを溶離液として使用し、シリカゲル・カラムクロマトグラフィを実施した。ここで得た溶出液をトルエンに溶解させた後、MeOH 4Lで沈殿させた。これを洗浄して減圧下で乾燥し、トルエン/MeOHで3回沈殿させた。ここから、化学式3の高分子8.8gを薄黄色固体として収得した。
高分子化合物をゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で分析した結果、重量平均分子量(Mw)は38,000であり、分子量分散度は2.8であった。
【0086】
化学式4の高分子合成
【化29】

化合物d 5g(11mmol)、2,7−ジブロモスピロフルオレン5.2g(11mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド5.4g(60mmol)、Pd(dba)0.61g(1.1mmol)、及びトリ(tert−ブチル)ホスフィン0.22g(1.1mmol)をキシレン150mLに溶解させた後、80℃で2日間還流させた。
前記反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却させ、蒸溜水200mlを添加し、キシレン:水=1:1(体積比)で抽出した。集められた有機層をMgSOで乾燥させた後で濃縮し、トルエンを溶離液として使用し、シリカゲル・カラムクロマトグラフィを実施した。ここで得た溶出液に、エタノール800mlを加えて沈殿させた。このようにして得た有機物を凝縮させ、100mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶かした後、MeOH 2lで沈殿させた。これを洗浄して減圧下で乾燥し、トルエン/MeOHで3回沈殿させた。ここから化学式4の高分子3.1gを薄黄色固体として収得した。
高分子化合物をゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で分析した結果、重量平均分子量(Mw)は40,000であり、分子量分散度は、3.2であった。
【0087】
実施例1
図3に示された構造で、有機発光素子を製作した。アノードは、Corning社製の15Ω/cm(1,200Å)ITOガラス基板を50mm×50mm×0.5mmサイズに切り、イソプロピルアルコールと純水との中でそれぞれ5分間超音波洗浄した後、20分間UV(ultraviolet)オゾン洗浄して使用した。次に、前記ITO膜上に、伝導性バッファ層として、H.C.Stark社のCH8000を約600Å厚にコーティングした後、200℃で約20分間ベーキングした。次に、前記実施例によって製造した化学式3の高分子3mgを、トルエン1mlに溶解させて高分子溶液を得、該高分子溶液をスピンコーティングする前に0.2μmフィルタで濾過した。これを前記バッファ層上にスピンコーティングし、200℃で10分間ベーキング処理し、高分子正孔輸送層を形成した。高分子正孔輸送層の厚みは、溶液の濃度とスピン速度とを調節することによって、約300Åになるようにした。正孔輸送層を形成した後、前記正孔輸送層の上部に、リン光ホストとしてDSAを使用し、ドーパントとしてTBPeを3%使用し、これを真空蒸着して300Å厚の発光層を形成した。その後、前記発光層の上部にAlq3を真空蒸着し、200Å厚の電子輸送層を形成した。前記電子輸送層の上部に、LiF 80ÅとAl 3,000Åとを順次に真空蒸着し、LiF/Al電極を形成した。このとき、蒸着時の膜厚及び膜の成長速度は、クリスタルセンサーを利用した。
【0088】
実施例2
正孔輸送層として化学式4の高分子を利用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で素子を製作した。
【0089】
比較例1
図2に示された構造で有機発光素子を製作した。正孔輸送層を構成しないことを除いては、前記実施例1と同じ方法で素子を製作した。
【0090】
比較例2
正孔輸送層として化学式10の高分子を利用したことを除いては、前記実施例1と同じ方法で素子を製作した。
【化30】

【0091】
前記実施例1及び2、並びに比較例1及び2の有機発光素子に対して、PR650(Spectroscan)Source Measurement Unitを利用し、電流密度(mA/cm)、駆動電圧(V)、輝度(cd/m)、及び効率(cd/A)を測定し、半減寿命を測定した(Mc Science社)。その結果を下記表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
前記表1を参照すれば、比較例1は、バッファ層上に中間層(interlayer)がない例であり、中間層を有する素子である実施例1及び比較例2と比較して、低効率でありかつ短寿命である。これにより、中間層が必要であるということが分かる。
【0094】
一方、フェノキサジン中にアリールアミン基を含む高分子化合物(実施例1)は、アリールアミン基を含まないフェノキサジン高分子(比較例2)と比較しても、正孔輸送能にすぐれており、安定性が高く、かつさらに優秀な効率と寿命とを有することが可能であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示される高分子。
【化1】

[式中、
n=0.01ないし0.99の実数であり、
X=OまたはSであり、
は、H、C−C20直鎖状アルキル基、C−C20分枝状アルキル基、C−C20環状アルキル基、またはC−C14芳香族基であり、前記芳香族基は、C−C20アルキル基またはC−C20アルコキシ基で置換可能であり、
及びRは、それぞれ独立して、C−C26芳香族基、またはヘテロ原子で置換されたヘテロ芳香族基であり、前記芳香族基またはヘテロ芳香族基は、C−C20アルキル基またはC−C20アルコキシ基で置換可能であり、
Arは、C−C20直鎖状アルキル基、C−C20分枝状アルキル基、C−C26芳香族基、またはヘテロ原子が置換されたヘテロ芳香族基であり、前記芳香族基またはヘテロ芳香族基は、C−C20アルキル基またはC−C20アルコキシ基で置換可能である。]
【請求項2】
前記Arは、下記化学式2で示されるもののうちの一つであることを特徴とする、請求項1に記載の高分子。
【化2A】

【化2B】

【化2C】

[式中、mは、1ないし4の整数であり、Rは、C−C20アルキル基である。]
【請求項3】
前記R、R、及びRは、それぞれ独立してフェニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子。
【請求項4】
前記高分子の重量平均分子量が10,000ないし300,000であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子。
【請求項5】
前記高分子が化学式3ないし9のうちのいずれか一つで示されることを特徴とする、請求項1に記載の高分子。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【請求項6】
前記高分子の分子量分散度が1.5ないし4であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子。
【請求項7】
前記高分子が有機発光素子用として使われることを特徴とする、請求項1に記載の高分子。
【請求項8】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と第2電極との間に介在された有機膜と
を具備した有機発光素子であって、
前記有機膜の少なくとも1層が請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載の高分子を含むことを特徴とする、有機発光素子。
【請求項9】
前記有機発光素子の有機膜が正孔輸送層を含むことを特徴とする、請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記有機発光素子の有機膜が発光層を含むことを特徴とする、請求項8に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−219731(P2011−219731A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289799(P2010−289799)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(308040351)三星モバイルディスプレイ株式會社 (764)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Mobile Display Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】San #24 Nongseo−Dong,Giheung−Gu,Yongin−City,Gyeonggi−Do 446−711 Republic of KOREA
【Fターム(参考)】