高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法
【課題】高分子及びコーティング素材の表面に生成された引っ掻き(mar)及びスクラッチによる表面損傷程度を定量的な数値で評価できる方法を提供する。
【解決手段】高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法は、高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、前記試験片の表面にスクラッチ損傷を誘導する段階と、前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷を該当する色座標で表す段階と、前記試験片の表面に作用した荷重とスクラッチ損傷に該当する色座標を組み合わせて定量化した数値であるスクラッチ損傷指数を算出する段階とを含むことを特徴とする。
【解決手段】高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法は、高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、前記試験片の表面にスクラッチ損傷を誘導する段階と、前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷を該当する色座標で表す段階と、前記試験片の表面に作用した荷重とスクラッチ損傷に該当する色座標を組み合わせて定量化した数値であるスクラッチ損傷指数を算出する段階とを含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法に関し、更に詳しくは、高分子及びコーティング素材の表面に生成された引っ掻き(mar)とスクラッチによる表面の損傷程度を定量的な数値で評価できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近に入り感性品質の重要性が台頭しながら素材の表面物性が重要視されているが、高分子及びコーティング素材の表面特性、即ち表面粗度、硬度、摩擦・磨耗・引っ掻き及びスクラッチ特性などに関する研究の重要性が台頭しており、特に引っ掻き及びスクラッチは普通、素材の表面に発生した表面損傷として視覚的な認知が可能であるが、これによる表面の損傷を正確に評価し定量化するのに相当困難である。従って、高分子及びコーティング素材のスクラッチ特性を明確に定量化できる評価技法に対する関心が高まっている。
【0003】
最近ASTM(D7027−05)及びISO標準(19252:2008)などでスクラッチによる素材の表面損傷に対する定量的な評価方法を紹介しているが、これらの標準試験法は実験的なスクラッチ生成に関する方法論的側面のみを強調している。また、表面損傷の形状に関する観察に焦点を置いて記述している。
【0004】
例えば、ISO19252はスクラッチによる表面損傷をスクラッチチップが過ぎた部位の外観的な形状によって表面うね(ploughing)とくさび形成(wedging formaton)または引き裂け(cutting)現象などに分けて評価している。
【0005】
しかし、前記のような表面損傷の評価方法は観測者によってその境界の区分が極めて主観的という問題があり、これによる客観性不在による論難の余地が存在する。個人的判断に依存して評価されるため実験の再現性に問題があり、客観化が難しく識別力が低下するという問題点がある。
【0006】
更に、前記ASTM(D7027−05)では比較的低い一定荷重で素材の表面に引っ掻き現象が発生し、追加的な一定荷重がかけられた時、より深い白化現象が生じる。そして、この時点での垂直荷重、即ち臨界垂直荷重を判断基準として素材の表面損傷を定量的に評価している。
【0007】
しかし、臨界垂直荷重は単位長さ若しくは面積などに分けて標準化させた素材物性ではないため、実験者の個人的判断に依存して評価されるため、実験再現性に問題があり、客観化が難しく信頼性及び識別力が低下するという問題がある。よって、測定・評価因子にて一般化しづらいという問題点がある。
【0008】
従って、スクラッチによる素材の表面損傷やその視認性の評価において、前記のような従来の非効率的な評価方法と代替できる効率的でより定量化された評価方法が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は高分子及びコーティング素材表面に生成されたスクラッチによる表面損傷を評価する従来の方法に対する問題点を勘案して創出したものであり、本発明の目的は、スクラッチによる素材の表面損傷程度を測定または分析するために、一定荷重条件のスクラッチ試験を通して素材表面と面接触または線接触が可能なスクラッチチップを利用して人為的にスクラッチを発生させた後、前記素材の表面損傷程度を該当する色座標若しくは色差で表すことで、スクラッチによる表面損傷のを評価において、定量化された数値に算出して客観性と信頼性及び再現性などがより優れた高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法を提供することにある。
【0010】
更に、本発明のまた別の目的は、線形増加荷重下で高分子及びコーティング素材表面に生成された引っ掻きとスクラッチによる表面損傷の視認性を評価するにおいて、素材表面と所定の線接触が可能なスクラッチチップを利用して素材表面にスクラッチを人為的に発生させた後、表面損傷の視認性をカラーモデルの三次元(3D)色座標にて数値化することで、スクラッチによる表面損傷の視認性を定量化された数値、即ち、スクラッチ視認性指数(SVI)に算出して信頼性及び再現性などがより優れた高分子及びコーティング素材のスクラッチ視認性の定量化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、高分子及びコーティング素材の表面に生成されたスクラッチによる表面損傷を定量化するために、
高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、前記試験片の表面にスクラッチ損傷を誘導する段階と、前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷に該当する色座標で表す段階と、前記試験片表面に作用する荷重とスクラッチ損傷に該当する色座標を組み合わせて定量化された数値であるスクラッチ損傷指数を算出する段階と、を含むことを特徴とする高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法を提供する。
【0012】
好ましくは、前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチは、試験片の表面に面接触または線接触が可能なスクラッチチップを使用して発生させることを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチは、試験片の表面に一定荷重をかけて発生させることを特徴とする。
【0014】
そして、好ましくは、前記スクラッチ損傷に該当する色座標で表す段階は、試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷部位をスキャンしてイメージを得る段階と、色分析ソフトウェアを使用して前記イメージのカラー値を二次元若しくは三次元カラーモデルの色座標で表す段階からなることを特徴とする。
【0015】
より好ましくは、前記スクラッチ損傷を該当する色座標で表す段階は、色分析プロファイラーを利用して試験片の表面損傷を色差または色座標で表示することを特徴とする。
【0016】
また、好ましくは、前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷を分析するにおいて、二次元若しくは三次元のカラーモデルを利用した色分析技法を適用することを特徴とする。
【0017】
更に好ましくは、前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチ損傷の形態は、試験片の表面に一方向に加えられる単一的な損傷と、前記単一的な損傷が加えられた試験片の表面に再び他方向のスクラッチを加えることで発生する複合的な損傷であることを特徴とする。
【0018】
更に好ましくは、前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面損傷領域を全体若しくは任意で選択して色分析することができることを特徴とする。
【0019】
更に好ましくは、前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対する連続的な測定が可能であることを特徴とする。
【0020】
また、好ましくは、前記色分析ソフトウェアは、スクラッチチップが試験片の表面に線接触する場合、スクラッチ方向に沿ってイメージの各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことを特徴とする。
【0021】
そして、前記スクラッチ損傷指数は、スクラッチチップが試験片の表面と面接触する場合、スクラッチ損傷度(△D)とスクラッチ強度(
)にて算出され、スクラッチチップが試験片の表面と線接触する場合、スクラッチ損傷度(△D)とスクラッチ抵抗(
)にて算出されることを特徴とする。
【0022】
更に、本発明は、高分子及びコーティング素材の表面に生成されたスクラッチによる表面損傷の視認性を定量化するために、
高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、前記試験片の表面にスクラッチを発生させる段階と、前記スクラッチによる表面損傷をスキャンしてイメージを獲得する段階と、色分析ソフトウェアを利用して前記イメージを各ピクセル別に色分析して表面損傷の変化推移を色座標にプロファイル化する段階と、前記色座標と試験片の表面に作用する荷重の変化推移を図式化し、スクラッチ視認性と係る成分のみを判別、組み合わせてスクラッチ視認性指数(SVI)として表す段階と、を含むことを特徴とする高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法を提供する。
【0023】
好ましくは、前記スクラッチを発生させる段階のスクラッチは、試験片の表面に線接触が可能なスクラッチチップを使用して発生させることを特徴とする。
【0024】
また、好ましくは、前記スクラッチを発生させる段階のスクラッチは、試験片の表面に線形的な増加荷重をかけて発生させることを特徴とする。
【0025】
そして、好ましくは、前記スクラッチによる試験片の表面損傷部位を分析するにおいて、三次元カラーモデルを利用した色分析技法を適用することを特徴とする。
【0026】
更に好ましくは、前記色座標にプロファイル化する段階の色分析ソフトウェアは、試験片の表面損傷を分析するにおいて、全体若しくは任意の選択領域に対する色分析が可能であることを特徴とする。
【0027】
また、好ましくは、前記色分析ソフトウェアは、スクラッチ方向に沿ってイメージの各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことを特徴とする。
【0028】
更に好ましくは、前記色分析ソフトウェは、試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対する連続的な測定が可能であることを特徴とする。
【0029】
そして、前記スクラッチ視認性指数は、試験片の表面損傷の発生が認識される時点での明度値(Ic)、彩度値(Sc)、そして臨界スクラッチ抵抗(
)の組合せである[Ic,Sc,
]で表すことを特徴とする。
【0030】
より好ましくは、前記スクラッチチップは、試験片の表面に水平方向に接触して一定距離及び一定速度でスクラッチ損傷を誘導することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明による高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法は、素材の表面に発生したスクラッチによる表面損傷程度を定量的な数値で評価でき、これによる客観性を通して測定者及び測定環境による誤差を減らすことができ、従って、耐スクラッチ性評価に対する信頼性を確保することができる。
【0032】
更に、本発明による方法は、スクラッチによる素材表面の損傷程度を定量化されたスクラッチ損傷指数(Scratch Damage Index,SDI)で表すことで、全ての高分子及びコーティング素材のスクラッチによる表面損傷を客観的に評価することができる。
【0033】
更に、本発明では、高分子及びコーティング素材の表面に生成された引っ掻きとスクラッチによる表面損傷の視認性を定量化された数値に算出することで、スクラッチ視認性の客観的な評価が可能であり、これによって測定者及び測定環境による誤差を減らすことができ、耐スクラッチ性評価に対する信頼性を確保することができる。
【0034】
また、本発明では、表面損傷の視認性の評価において、スクラッチによる表面損傷の視認性を定量化されたスクラッチ視認性指数(Scratch Visibility Index,SVI)で表すことで、全ての高分子及びコーティング素材のスクラッチによる表面損傷の視認性を客観的に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明で使用した用語はただ特定な実施例を説明するために使用したものであり、本発明を限定しようという意図ではなく、説明において周知された技術と同一な部分について重複する説明は省略することもある。
【0036】
本発明は高分子及びコーティング素材の表面に生成された引っ掻き(mar)若しくはスクラッチによる損傷を定量的な数値で評価できる方法に関し、一定荷重条件でスクラッチ試験を通して前記素材表面と所定の面接触または線接触が可能なスクラッチチップを利用して人為的にスクラッチを発生させた後、素材表面の損傷程度を色差若しくは色座標で表し、このような色差若しくは色座標及び作用荷重を組み合わせてスクラッチによる表面損傷を定量化した数値、即ちスクラッチ損傷指数(Scratch Damage Index,SDI)で表す定量化方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のスクラッチ表面の損傷程度を定量化する方法と既存の評価方法を比較して表した試験順序図である。
【図2】一定荷重下で素材表面に人為的に誘導されたスクラッチの形状を図式化したものである。
【図3】本発明に適用されたスクラッチチップの細部的な形状図である。
【図4】本発明の実施例で一定荷重のスクラッチ実験を通して得た未加工データのグラフである。
【図5】本発明による実施例で平板形スキャナーを利用して得た単一損傷のデジタル化されたイメージである。
【図6】本発明の実施例で使用した三次元カラーモデルと色座標値の範囲を表した図面である。
【図7】本発明の実施例で色分析を通して得た結果をグラフ化した図面である。
【図8】本発明による実施例で平板形スキャナーを利用して得た複合損傷のデジタル化されたイメージである。
【図9】本発明による高分子及びコーティング素材のスクラッチ視認性を定量化する方法と既存の評価方法を比較して表した試験順序図である。
【図10】本発明で使用するスクラッチチップの具体的な形状と線形増加荷重下で誘導された素材表面損傷の形状を概略的に図式化したものである。
【図11】HSIカラーモデルの色座標を説明する概略図である。
【図12】本発明で使用した色分析ソフトウェアを利用してイメージの各列を代表する色座標値を取る方法を説明する概略図である。
【図13】本発明の実施例で平板形スキャナーから得た線形増加荷重下の引っ掻き及びスクラッチによる表面損傷イメージである。
【図14】本発明による実施例の色分析結果である3個の色座標及び該当スクラッチ抵抗の変化推移をスクラッチ軌跡に沿って図式化して表したグラフである。
【図15】図13に表示した領域I、II、IIIの光学顕微鏡写真であり、(a)は第1カラー転移点、(b)は第2カラー転移点、(c)は第3カラー転移点付近の表面損傷形態を表している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面を参照にして本発明を詳細に説明する。
【0039】
本発明において高分子及びコーティング素材は高分子素材と合せて各種素材表面に形成されたコーティング素材を言い、本明細書では‘高分子及びコーティング’を省略し、簡単に‘素材’と称する。
【0040】
図1に図示されるように、一定荷重下のスクラッチ試験で素材表面に作用する応力に対する耐スクラッチ性を評価するために、まず選択した素材の試験片を準備し、この試験片に人為的にスクラッチ損傷を誘導して表面を損傷させる。
【0041】
試験片の表面にスクラッチ損傷を加えるために、一定荷重が作用する条件でスクラッチ試験を実施し、このとき使用するスクラッチ発生器としては一般的なスクラッチ発生器を使用することができ、本発明の実施例ではスクラッチ発生器の一例としてCenter for Tribology社のUMT−2モデルを使用した。
【0042】
本発明においてスクラッチ発生器は試験片の表面に引っ掻き及びスクラッチを人為的に発生させるための装置であり、素材表面と面接触または線接触が可能なスクラッチチップを含み、前記スクラッチチップの材質は素材表面を損傷させるために,高分子及びコーティング素材より高い硬度の金属や鉱物または無機物であることが好ましい。
【0043】
本発明においてスクラッチチップは一定荷重条件で素材表面に接触してスクラッチ生成のための応力を作用させる。
【0044】
スクラッチチップによる素材の表面損傷は大きく2種類の形態に区分できるが、まずスクラッチチップが素材表面の一方向にスクラッチ損傷を加えて単一的な損傷を誘導した場合と、前記のような単一的な損傷が加えられた素材表面に再び他方向のスクラッチ損傷を加えることで複合的な損傷を発生させた場合であり、本発明による方法は前記2種類の形態のスクラッチ損傷に対する評価を全て含む。
【0045】
ここで、複合的なスクラッチ損傷は図2のように横方向にスクラッチ損傷が加えられた素材表面に再び縦方向にスクラッチ損傷を加えることで発生させる。
【0046】
図2は本発明によるスクラッチチップによる素材表面損傷の形状を概略的に図式化したものである。
【0047】
前記スクラッチチップは、素材表面に面接触または線接触して一定荷重をかけることで引っ掻き及びスクラッチを人為的に発生させるための手段であり、素材表面と面接触または線接触が可能な形状に形成され、面接触が可能な形状の場合、図3に図示されるようにスクラッチチップの接触面が三角形や四角形のような多角形または円形であることが好ましい。
【0048】
本発明は試験片の表面に引っ掻き及びスクラッチのような表面損傷が発生すると、スキャナーなどのような装備を利用して素材の表面損傷部位をスキャンしてデジタル化されたイメージを得て貯蔵する。
【0049】
ここで、前記イメージは、最小解像度600×600dpi以上、24ビットカラーモードでスキャンして損傷した素材表面をより鮮明ではっきりとイメージ化することが好ましく、本発明の実施例ではエプソン社のPerfection V700 photoモデルを使用してイメージを獲得した。
【0050】
前記のようにスクラッチされた試験片表面の損傷部位をデジタルイメージ化した後、損傷部位のイメージを色分析ソフトウェアを利用して分析評価する。
【0051】
ここで、色分析ソフトウェアは、二次元若しくは三次元の多様なカラーモデル及び色座標の数値を得ることのできるプログラムとして、本発明ではこれを利用してスクラッチによる素材表面の損傷程度を測定し、素材の耐スクラッチ性を評価することができる。
【0052】
本発明の実施例では商業用色分析プログラムであるQWinを使用し、分析結果を三次元カラーモデル及びRGMとHSIの色座標で表した。
【0053】
前記色座標はデジタル化されたイメージの各ピクセルに対して個数のカラー値を表す互いに異なる3つの成分で表現されるが、一例としてRGBカラーモデルの場合、レッド値(R)、グリーン値(G)及びブルー値(B)で表現され、HSIカラーモデルの場合は色相(Hue)値(H)、彩度(Saturation)値(S)、明度(Intensity)値(I)で表現される。
【0054】
前記色分析ソフトウェアは素材表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対する連続的な測定が可能であるだけでなく、素材表面の損傷領域を任意で選択して測定できることが好ましい。
【0055】
合わせて、スクラッチチップが試験片の表面に線接触する場合、前記色分析ソフトウェは全体または任意の選択領域(任意で選択した素材表面の損傷領域)に対する評価モード時にスクラッチ方向に沿って各列(j)を代表する色座標を該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことが好ましい。
【0056】
より具体的に説明すると、前記色分析ソフトウェアは試験片表面の損傷部位から得たイメージ分析領域中、全体若しくは任意で選択した領域に対してスクラッチ方向に沿ってイメージの各ピクセルを列(j)別に分類し、分類した各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表す。
【0057】
更に、本発明はスクラッチチップによる素材表面の損傷部位をスキャンしてイメージ化する過程なく、分光測定計や色差計またはカラーリーダーなどのような色分析プロファイラーを直接的に利用して表面損傷部位を色差または色座標で表すことも可能である。
【0058】
前記色差は引っ掻きやスクラッチが発生した領域と発生していない領域間の色座標の差で表す。
【0059】
本発明の実施例ではコニカミノルタ社のCM−3700d分光測色計を使用した。
【0060】
前記分光測色計を利用した色分析は、客観的で合理的な測定のために、標準条件であるD65標準光源、d/8拡散照明、鏡面反射光除去(Specular Component Excluded,SCE)モードで測定することが好ましい。
【0061】
前記のようにスクラッチチップによる試験片の損傷程度を色差または色座標で表し、その値を基にスクラッチによる表面損傷を定量化した数値、即ちスクラッチ損傷指数(SDI)を算出する。
【0062】
スクラッチ損傷指数は、スクラッチ損傷度(Degree of scratch damage,ΔD)とスクラッチ強度(Scratch strength,
)またはスクラッチ抵抗(Scratch resistance,
)で表記され、これはスクラッチチップの形状によってその表記方法を異にする。
【0063】
例えば、スクラッチチップが素材表面と一定な面積を持ち接触する場合、即ち面接触する場合、本発明では前記スクラッチ損傷指数を[ΔD,
]で表し、スクラッチチップが素材表面と線の形態で接触する場合、即ち線接触する場合は[ΔD,
]のように表現する。
【0064】
ここで、スクラッチ損傷度(ΔD)は、スクラッチ生成部位(x)と未生成部位(y)の色座標をユークリッド距離で算出することでスクラッチによる表面損傷を定量的に表す数値であり、前記2領域(スクラッチ生成部位(x)と未生成部位(y))の色空間上の距離は下記数学式1のように計算して導出する。合わせて、スクラッチ強度(
)及びスクラッチ抵抗(
)は各々下記数学式2と3を通して算出する。
【0065】
【数1】
【0066】
【数2】
【0067】
【数3】
【0068】
ここで、Aはスクラッチチップが素材表面と接触する面積であり、lはスクラッチチップが素材表面と接触する長さである。
【0069】
そして、スクラッチチップを面または線接触した状態で移動させて試験片にスクラッチ損傷を加えることができるようにするスクラッチ駆動力(Scratch force,
)は2つの法線ベクターである垂直荷重(
)と接線荷重(
)の合であり、スクラッチ試験時に作用する荷重によって決定し、下記数学式4のように求める。
【0070】
ここで、垂直荷重(
)はスクラッチチップを通して素材表面に垂直方向に作用する荷重であり、接線荷重(
)はスクラッチチップを通して素材表面に水平方向に作用する荷重である。
【0071】
【数4】
【0072】
図4は本発明の実施例で試験片に一定荷重のスクラッチ損傷を加える実験を通して得た未加工データのグラフである。
【0073】
本発明はスクラッチによる表面損傷を定量化するにおいて、素材の厚さに対する特別な制限はないが、厚さが10mm以下である試験片を使用することが好ましく、最小の長さが70mm以上であり屈曲がない平板形試験片を使用することが好ましい。
【0074】
本発明は下記実施例を通してより理解することができ、下記の実施例は本発明の例示目的のためのものとして添付した特許請求範囲を限定するわけではない。
【0075】
実施例1
本実施例1では、厚さ3mmの平板形ポリプロピレン複合素材をスクラッチ損傷評価用試験片として使用した。
【0076】
単一損傷の引っ掻き及びスクラッチの場合;
スクラッチ発生器を利用して前記試験片に一方向に総50mmのスクラッチを加えた。このときスクラッチ速度(スクラッチ損傷を生成する速度)は1mm/sに固定し、スクラッチを加える実験荷重は10N、20N、30Nで変化させた。
【0077】
試験片にスクラッチを加えるためのスクラッチチップは、細部的な形状が図3の(A−a)と(B)であるものを使用したが、面接触する場合、図3の(A−a)形状を有し、試験片と面接触する部分の直径が1mm、即ち接触面積が0.785mm2であるスクラッチチップを使用し、線接触する場合、図3の(B)形状を有し、試験片と線接触する長さが1mmであるものを使用した。
【0078】
前記のような過程を通して引っ掻き及びスクラッチなどの表面損傷が発生した試験片の表面を平板形スキャナー装備を利用してデジタルイメージを得た。
【0079】
図5は前記平板形スキャナー装備から得た引っ掻き及びスクラッチによる単一損傷イメージを表している。
【0080】
本実施例1では、全体スクラッチ幅の約90%程度のみを任意で選択し、RGB及びHSIなど2種類の三次元カラーモデルを使用して色分析を実施した。
【0081】
図6はRGB及びHSIカラーモデルの色座標値を表した概略図であり、図7は本実施例1でRGB及びHSIカラーモデルを使用した色分析結果を二次元で図式化して表したグラフであり、下記表1に図7の色分析結果値を平均値と標準偏差で表した。
【0082】
図5の色分析結果、表1に表したように試験片にかけた一定荷重が増加するに従ってRGBカラーモデルの色座標数値もやはり増加すると表れた反面、HSIカラーモデルの明度(Im)と彩度(Sm)数値は一定荷重が増加するに従って互いに相反する傾向を見せた。
【0083】
即ち、試験片にかけた一定荷重が増加するに従ってHSIカラーモデルの明度(Im)数値は増加し、彩度(Sm)数値は減少した。
【0084】
表1に数値化して表した色分析結果値から色座標と作用応力を組み合わせて、下記表2に最終的に定量化した数値である‘スクラッチ損傷指数(SDI)’に算出して表した。
【0085】
下記表1及び表2を通して確認できるように、本発明でスクラッチによる素材の表面損傷を評価する方法は、表面損傷程度がデジタル化された数値で表現されてより簡単に定量化されることが分かった。
【0086】
参考に、表1及び表3の試験条件中、controlはスクラッチ損傷を加えていない場合である。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
複合損傷の引っ掻き及びスクラッチの場合;
まず、準備した試験片に素材表面と線接触が可能なスクラッチチップを利用して縦方向に3mm間隔で20個の単一損傷を生成した後、再び縦方向に3mm間隔で20個のスクラッチ損傷を加えて複合損傷を誘導した。
【0090】
図8は本発明によって平板形スキャナー装備から得た引っ掻き及びスクラッチによる複合損傷イメージを表す写真であり、(a)は試験片の表面にスクラッチ損傷を加えていない場合のイメージであり、(b)は10Nの荷重をかけてスクラッチ損傷を加えた場合のイメージであり、(c)は20Nの荷重をかけてスクラッチ損傷を生成させた場合に獲得したイメージである。
【0091】
図8のように前記試験片に複合損傷を生成した後、分光測色計を利用してD65標準光源、d/8拡散照明、鏡面反射光除去モードで色分析を実施し、このとき直径が25.4mmである測定鏡を使用した。次に、L*a*b*カラーモデルを利用して色座標で表した後、スクラッチ未生成部位の色座標を基準とし、そこでスクラッチが生成された部位の色座標を比較して複合損傷による試験片表面の損傷程度を色差(ΔD)で表した。
【0092】
もちろん、複合損傷による引っ掻き及びスクラッチ程度は、前記単一損傷のように、複合損傷部位をスキャンしてイメージを得た後、色分析ソフトウェアを利用して定量化することも可能である。
【0093】
表3に複合損傷による試験片表面の損傷程度を色差(ΔD)の平均値と標準偏差にて表した。
【0094】
【表3】
【0095】
前記実施例1を通して分析したスクラッチによる表面損傷は客観化及び定量化された数値として、測定者と測定環境による誤差が少なく、信頼性及び再現性が高い評価結果であることが分かる。
【0096】
前述したように、本発明は素材表面と面接触または線接触するスクラッチチップを利用して引っ掻き及びスクラッチを人為的に発生させた後、前記素材の表面損傷部位をスキャンしてデジタルイメージ化した後、多様なカラーモデル及び色座標の値で表すことのできる色分析ソフトウェアを利用したり、或いはスキャンしてデジタルイメージ化する過程なく、分光測色計、色差計またはカラーリーダーなどのような色分析プロファイラーを利用して表面損傷部位に該当する色差または色座標を直接的に表示することで、測定者及び測定環境による誤差を減らすと同時に、スクラッチ表面の損傷を評価するにおいて客観的で数値化された評価方法を提示し、合わせて最終的にはスクラッチによる表面損傷程度をスクラッチ損傷指数(SDI)に算出することで、全ての高分子及びコーティング素材に適用することのできるスクラッチ表面損傷の定量化方法を提供する。
【0097】
従って、本発明はスクラッチ損傷が誘導された高分子及びコーティング素材の表面に対する色分析を行ってスクラッチによる表面損傷を定量化することができ、定量化された最終結果をスクラッチ損傷指数で表現することで、従来のスクラッチ特性を定量化及び物性かすることができる効果がある。
【0098】
合わせて、本発明は素材表面のカラー有無、表面模様の有無及び模様の形状に関係なく適用が可能であり、素材の表面損傷を分析評価時に測定者が所望するカラーモデルを直接選択するのに制約なく広範囲に使用することができる。
【0099】
一方、本発明は高分子及びコーティング素材の表面に生成された引っ掻き及びスクラッチによる表面損傷の視認性を定量的な数値で評価することができる方法を含み、線形に増加する荷重、即ち線形増加荷重条件で素材表面と線接触するスクラッチチップを利用してスクラッチによる表面損傷を誘導し、前記表面損傷部位をスキャンしてデジタル化されたイメージを得て貯蔵した後、色分析ソフトウェアを利用してスクラッチによる表面損傷の変化推移を三次元(3D)カラーモデルの色座標にプロファイル化した後、最後にスクラッチ軌跡による色座標と作用応力の変化推移を図式化し、スクラッチ視認性と係る成分のみを判別、組み合わせて最終的に定量化された数値であるスクラッチ視認性指数(SDI)に算出する方法を提供する。
【0100】
このような本発明について添付図面及び実施例を参照にして詳細に説明する。
【0101】
図9に図示されるように、線形増加荷重条件下でのスクラッチ試験を通した耐スクラッチ性を評価するために、まず選択した素材の試験片を準備し、この試験片に人為的にスクラッチ損傷を誘導して表面を損傷させる。
【0102】
試験片の表面にスクラッチされた表面損傷、即ちスクラッチ損傷を加えるために線形増加荷重下でスクラッチ試験を実施し、このとき試験片の表面を損傷させるためのスクラッチ発生器としては一般的なスクラッチ発生装置を使用することができ、本発明の実施例でCenter for Tribology社のUMT−2モデルを使用してスクラッチでストを行った。
【0103】
本発明においてスクラッチ発生器は試験片の表面に引っ掻き及びスクラッチを人為的に発生させるための装置であり、素材表面と線接触が可能なスクラッチチップを含み、前記スクラッチチップの材質は素材表面を損傷させるために、高分子及びコーティング素材より高い硬度の金属や鉱物または無機物であることが好ましい。
【0104】
本発明においてスクラッチチップは、線形に増加する荷重条件で素材表面に接触してスクラッチ生成のための応力を作用させる。
【0105】
このために、スクラッチ発生器はスクラッチチップが試験片の表面に線形的な増加荷重をかけるように制御する。
【0106】
前記スクラッチチップはスクラッチ試験で線形増加する荷重(例えば、1〜30N)下で試験片の表面と水平方向に接触して一定距離(長さ)及び一定速度でスクラッチ損傷を誘導する。
【0107】
即ち、スクラッチチップは試験片の表面にスクラッチ損傷を誘導するために、試験片の表面と水平方向に接触して一定距離及び一定速度で線形増加荷重をかける。
【0108】
図10は本発明で使用するスクラッチチップの具体的な形状と線形増加荷重下で誘導された素材表面損傷の形状を概略的に図式化したものであり、線形増加する荷重による試験片の表面損傷をスクラッチ軌跡に沿って表している。図示されるように、試験片の表面に生成された損傷はスクラッチ方向に沿って線形に増加する荷重がかけられることにより、第1カラー転移点(1st)、第2カラー転移点(2nd)、第3カラー転移点(3rd)が順次的に表れる。
【0109】
前記試験片の表面に引っ掻き及びスクラッチのような表面損傷が生成されると、スキャナーなどのような装備を利用して表面損傷部位をスキャンしてデジタル化されたイメージを獲得貯蔵する。
【0110】
ここで、前記デジタル化されたイメージは最小解像度1400×600dpi以上、24ビットカラーモードでスクラッチされた素材表面をデジタルイメージ化することが好ましく、本発明の実施例で一例としてエプソン社のPerfection D700 photoモデルを使用してデジタルイメージを獲得した。
【0111】
前記のように試験片表面のスクラッチ損傷部位をデジタルイメージ化した後、色分析ソフトウェアを利用してスクラッチチップが過ぎて生成した表面損傷の痕跡、即ち入力されたイメージのスクラッチ軌跡に沿って表面損傷の変化を3Dカラーモデルの3種のカラー成分(色座標)にて数値化する。
【0112】
ここで、色分析ソフトウェアは、前記イメージのスクラッチ軌跡に沿って表面損傷の変化推移を三次元カラーモデルの色座標値で測定して表すことのできるプログラフであり、本発明ではこれを利用してスクラッチによる表面損傷の視認性を測定し、素材の耐スクラッチ性を評価することができる。
【0113】
本発明の実施例で商業用色分析プログラムであるQWinを使用し、色分析結果を3DカラーモデルであるHSIの色座標で表した。
【0114】
前記色座標はデジタル化されたイメージの各ピクセルに対して固有のカラー値を表す互いに異なる3つの成分で表現され、例えば、RGBカラーモデルの場合、レッド値(R)、グリーン値(G)及びブルー値(B)で表現され、HSIカラーモデルの場合、図11のように色相値(H)、彩度値(S)、明度値(I)で表現される。
【0115】
色相若しくは色相値は色自体を表現する成分であり、彩度若しくは彩度値は白色をどれだけ含んでいるかを表す成分であり、最後に明度若しくは明度値は色の明度(輝度)を表す成分である。各々の成分は0から255までの数値で表現され、スキャン作業を通して得たイメージの各ピクセルは前記の3つのカラー成分の組合せ、即ち色座標として該当ピクセルの固有のカラーを表すことができる。
【0116】
前記色分析ソフトウェアは試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対する連続的な測定が可能であるだけなく、試験片表面の損傷領域を任意で選択して表面損傷の視認性を測定できることが好ましい。
【0117】
合わせて、前記色分析ソフトウェアは任意の選択領域(任意で選択した素材表面の損傷領域)に対する評価時、図12のようにスクラッチ方向に沿って各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値、例えば[Rj,Gj,Bj]で表すことが好ましく、これを数式で表すと下記数学式5の通りである。
【0118】
【数5】
【0119】
図12は色分析ソフトウェアを利用してスクラッチ方向に沿って各列の色座標値を取る方法を表した概略図であり、これを参照にしてより具体的に説明すると、前記色分析ソフトウェアは試験片表面の損傷部位から得たイメージ分析領域中、全体若しくは任意で選択した領域に対してスクラッチ方向に沿ってイメージの各ピクセルを列(j)別に分類し、分類した各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表す。
【0120】
本発明でRGBカラーモデルの場合、スクラッチ方向に沿って各列(j)を代表する色座標を前記数学式5のように表現できることを参照として、HSIカラーモデルの場合、下記数学式6のように表すことができることを類推することができる。
【0121】
【数6】
【0122】
従って、表面損傷のイメージ分析領域中、任意の選択領域でスクラッチ方向に沿った各列(j)を代表する色座標は[Rj,Gj,Bj]或いは[Hj,Sj,Ij]などで表現することができる。
【0123】
前記の色分析結果を基に、スクラッチ軌跡による色座標の変化と作用応力の増加を一つの図表に図式化して定量化された最終スクラッチ視認性指数(SVI)を算出する。
【0124】
スクラッチ視認性指数はスクラッチ視認性が感知される時点、即ち表面損傷の発生が認識される時点での色座標と臨界スクラッチ抵抗(
)の組合せにて表現することができ、本発明では前記スクラッチ視認性指数を下記数学式7のように定義する。
【0125】
【数7】
【0126】
ここで、IcとScは各々試験片の表面損傷が認識される時点の明度値と彩度値であり、即ち後述される視認性開始点での明度値と彩度値である。
【0127】
合わせて、スクラッチ抵抗(
)は下記数学式8のように計算する。
【0128】
【数8】
【0129】
ここで、lはスクラッチチップが素材表面と接触する長さであり、臨界スクラッチ抵抗(
)は試験片の表面損傷が認識される時点でのスクラッチ抵抗(
)を意味する。
【0130】
そして、スクラッチチップを試験片の表面に線接触した状態で移動させて試験片にスクラッチ損傷を加えることができるようにするスクラッチ駆動力(Scratch force,
)は2つの法線ベクターである垂直荷重(
)と接線荷重(
)の合であり、スクラッチ試験時に提供される線形増加する荷重によって決定し、下記数学式9のように求める。
【0131】
ここで、垂直荷重(
)はスクラッチチップを通して素材表面に垂直方向に作用する荷重であり、接線荷重(
)はスクラッチチップを通して素材表面に水平方向に作用する荷重である。
【0132】
【数9】
【0133】
本発明は素材表面に加えられたスクラッチ損傷の視認性を定量化するにおいて、素材の厚さに対する特別な制限はないが、厚さが10mm以下である試験片が好ましく、最小の長さが70mm以上であり屈曲のない平板形試験片を使用することが好ましい。
【0134】
本発明は下記実施例を通してより理解することができ、下記の実施例は本発明の例示目的のためのものとして添付した特許請求範囲を限定するわけではない。
【0135】
実施例2
本実施例2では、厚さ3mmの平板形ポリプロピレン複合素材をスクラッチ視認性評価用試験片として使用した。
【0136】
スクラッチ発生器を使用して前記試験片に総50mmのスクラッチを加えた。このときスクラッチ速度(スクラッチ損傷を生成する速度)は1mm/sに固定し、実験荷重条件は1〜30Nの線形増加する荷重を付与した。
【0137】
本実施例2において、スクラッチチップは図10の形状を持ち試験片の表面に接触する長さが1mmであるものを使用した。
【0138】
前記のような手順を通して引っ掻き及びスクラッチなどの表面損傷が誘導された素材表面を平板形スキャナー装備を利用してデジタルイメージ化した。
【0139】
図13は前記平板形スキャナーから得た引っ掻き及びスクラッチによる表面損傷イメージを表している。
【0140】
本実施例2では、全体スクラッチ幅の約90%のみを任意で選択し(図10参考)、HSIカラーモデルを使用して色分析を行った。
【0141】
図14は本実施例2の色分析結果である3つの色座標(H,S,I)及び該当スクラッチ抵抗(
)の変化推移などをスクラッチ軌跡に沿って図式化して表したグラフである。
【0142】
図14のようにスクラッチ軌跡が増加(スクラッチの長さが増加)するに従って、(1)スクラッチ抵抗(
)は線形的に増加し、(2)色相値(H)はほぼ一定な値を維持する反面、(3)明度値(I)の増加、及び(4)彩度値(S)の減少傾向を見せた。
【0143】
即ち、スクラッチ駆動力(
)がスクラッチ軌跡に沿って増加すると、スクラッチされた溝(groove)付近で表面損傷による光の散乱が増加する白化(whitening)現象が発生することが分かる。
【0144】
更に、スクラッチによる素材の白化現象は色座標の変化を誘発させるが、具体的に、HSIカラーモデルの明度値(I)と彩度値(S)は白化現象を直接的に反映して数値の変化を見せる反面、色相値(H)は白化現象と関係なく一定な数値を維持した。
【0145】
図14でスクラッチ軌跡による明度値(I)及び彩度値(S)のプロファイルを詳しく見てみると、スクラッチによる表面損傷の程度が増加するに従ってこれらの値の傾きが継続して変化することを観察することができる。
【0146】
例えば、図14で明度値(I)の場合、スクラッチ未生成領域(図14のNo damage zone)での数値は一定な値を維持した後、第1カラー変移点を過ぎてスクラッチ生成領域(図14のMar zone)に進入しながら増加し、再び一定に維持した後、第2カラー変移点を過ぎながら再び増加したら一定に維持され、それ以降、このような現象が反復的に再現されることを確認することができる。
【0147】
反面、図14で彩度値(S)の場合、初期数値は一定な値を維持した後、第1カラー変移点を過ぎてスクラッチ生成領域(図14のMar zone)に進入しながら減少し、再び一定に維持された後、第2カラー変移点を過ぎながら再び減少したら一定に維持され、それ以降、このような現象が反復的に再現された。
【0148】
このように図14での明度値(I)と彩度値(S)の傾きの変化は色座標値、特に、明度値と彩度値が表面損傷程度の変化を表す識別指標として使用できることを意味している。
【0149】
前述したところによって、素材表面に生成されたスクラッチの視認性は明度値(I)と彩度値(S)及びスクラッチ抵抗(
)と連関があることが分かり、スクラッチ視認性指数はこれらを組み合わせて導出することができることを推測することができる。
【0150】
一方、光学顕微鏡を利用した観察は図14のカラー変移点と表面損傷の形態を連関させるために行った。
【0151】
図15の(a)、(b)、(c)は図14に表示された領域I、II、IIIを各々拡大図示した光学顕微鏡写真であり、各々第1、第2、第3カラー変移点付近の表面損傷の形態を表している。
【0152】
図15から分かるように、領域Iは比較的軽い表面損傷である引っ掻き現象を表し、領域IIは波模様形状の表面損傷が重畳されている様子を表している。このような表面損傷は肉眼でも白化現象が確認され、本発明の実施例2ではより確実に識別可能な図14の第2カラー変移点を“視認性開始点”と決めた。
【0153】
そして、本発明は視認性開始点での明度値(Ic)、彩度値(Sc)、そしてスクラッチ抵抗(
)の組合せである[Ic,Sc,
]を“スクラッチ視認性指数”と決める。
【0154】
表4に前期実施例2の試験結果をスクラッチ視認性指数(SVI)で表した。
【0155】
【表4】
【0156】
本実施例2で本発明による引っ掻き及びスクラッチによる表面損傷の視認性を評価する方法は、表面損傷の視認性がデジタル化された数値で表現されてより簡単に定量化されることが分かった。
【0157】
一方、領域IIIは第IIIカラー変移点付近にてスクラッチ損傷が更に進行するに従って波模様の幅がより大きくなったことを確認することができた。
【0158】
このように、本発明は高分子及びコーティング素材に生成された引っ掻きとスクラッチによる表面損傷の視認性を定量化できることはもちろん、定量化された最終結果としてスクラッチ視認性指数を導出し出すことで、従来定量化が難しかったスクラッチ視認性を容易に定量化、物性化することができる効果がある。
【0159】
更に、前記実施例2を通して確認したように、表面損傷の視認性を表す定量化された数値は測定者と測定環境による誤差が小さく、信頼性および再現性が高い結果であることが分かる。
【0160】
合わせて、本発明による定量化方法は、高分子及びコーティング素材表面のカラー有・無、表面の模様の有・無及び模様の形状に関係なく適用が可能で広範囲に使用することができる。
【0161】
本発明の単純な変形乃至変更はこの分野の通常的な知識を有するものにより容易に実施することができ、このような変形や変更は全て本発明の領域に含まれると見ることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法に関し、更に詳しくは、高分子及びコーティング素材の表面に生成された引っ掻き(mar)とスクラッチによる表面の損傷程度を定量的な数値で評価できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近に入り感性品質の重要性が台頭しながら素材の表面物性が重要視されているが、高分子及びコーティング素材の表面特性、即ち表面粗度、硬度、摩擦・磨耗・引っ掻き及びスクラッチ特性などに関する研究の重要性が台頭しており、特に引っ掻き及びスクラッチは普通、素材の表面に発生した表面損傷として視覚的な認知が可能であるが、これによる表面の損傷を正確に評価し定量化するのに相当困難である。従って、高分子及びコーティング素材のスクラッチ特性を明確に定量化できる評価技法に対する関心が高まっている。
【0003】
最近ASTM(D7027−05)及びISO標準(19252:2008)などでスクラッチによる素材の表面損傷に対する定量的な評価方法を紹介しているが、これらの標準試験法は実験的なスクラッチ生成に関する方法論的側面のみを強調している。また、表面損傷の形状に関する観察に焦点を置いて記述している。
【0004】
例えば、ISO19252はスクラッチによる表面損傷をスクラッチチップが過ぎた部位の外観的な形状によって表面うね(ploughing)とくさび形成(wedging formaton)または引き裂け(cutting)現象などに分けて評価している。
【0005】
しかし、前記のような表面損傷の評価方法は観測者によってその境界の区分が極めて主観的という問題があり、これによる客観性不在による論難の余地が存在する。個人的判断に依存して評価されるため実験の再現性に問題があり、客観化が難しく識別力が低下するという問題点がある。
【0006】
更に、前記ASTM(D7027−05)では比較的低い一定荷重で素材の表面に引っ掻き現象が発生し、追加的な一定荷重がかけられた時、より深い白化現象が生じる。そして、この時点での垂直荷重、即ち臨界垂直荷重を判断基準として素材の表面損傷を定量的に評価している。
【0007】
しかし、臨界垂直荷重は単位長さ若しくは面積などに分けて標準化させた素材物性ではないため、実験者の個人的判断に依存して評価されるため、実験再現性に問題があり、客観化が難しく信頼性及び識別力が低下するという問題がある。よって、測定・評価因子にて一般化しづらいという問題点がある。
【0008】
従って、スクラッチによる素材の表面損傷やその視認性の評価において、前記のような従来の非効率的な評価方法と代替できる効率的でより定量化された評価方法が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は高分子及びコーティング素材表面に生成されたスクラッチによる表面損傷を評価する従来の方法に対する問題点を勘案して創出したものであり、本発明の目的は、スクラッチによる素材の表面損傷程度を測定または分析するために、一定荷重条件のスクラッチ試験を通して素材表面と面接触または線接触が可能なスクラッチチップを利用して人為的にスクラッチを発生させた後、前記素材の表面損傷程度を該当する色座標若しくは色差で表すことで、スクラッチによる表面損傷のを評価において、定量化された数値に算出して客観性と信頼性及び再現性などがより優れた高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法を提供することにある。
【0010】
更に、本発明のまた別の目的は、線形増加荷重下で高分子及びコーティング素材表面に生成された引っ掻きとスクラッチによる表面損傷の視認性を評価するにおいて、素材表面と所定の線接触が可能なスクラッチチップを利用して素材表面にスクラッチを人為的に発生させた後、表面損傷の視認性をカラーモデルの三次元(3D)色座標にて数値化することで、スクラッチによる表面損傷の視認性を定量化された数値、即ち、スクラッチ視認性指数(SVI)に算出して信頼性及び再現性などがより優れた高分子及びコーティング素材のスクラッチ視認性の定量化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、高分子及びコーティング素材の表面に生成されたスクラッチによる表面損傷を定量化するために、
高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、前記試験片の表面にスクラッチ損傷を誘導する段階と、前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷に該当する色座標で表す段階と、前記試験片表面に作用する荷重とスクラッチ損傷に該当する色座標を組み合わせて定量化された数値であるスクラッチ損傷指数を算出する段階と、を含むことを特徴とする高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法を提供する。
【0012】
好ましくは、前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチは、試験片の表面に面接触または線接触が可能なスクラッチチップを使用して発生させることを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチは、試験片の表面に一定荷重をかけて発生させることを特徴とする。
【0014】
そして、好ましくは、前記スクラッチ損傷に該当する色座標で表す段階は、試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷部位をスキャンしてイメージを得る段階と、色分析ソフトウェアを使用して前記イメージのカラー値を二次元若しくは三次元カラーモデルの色座標で表す段階からなることを特徴とする。
【0015】
より好ましくは、前記スクラッチ損傷を該当する色座標で表す段階は、色分析プロファイラーを利用して試験片の表面損傷を色差または色座標で表示することを特徴とする。
【0016】
また、好ましくは、前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷を分析するにおいて、二次元若しくは三次元のカラーモデルを利用した色分析技法を適用することを特徴とする。
【0017】
更に好ましくは、前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチ損傷の形態は、試験片の表面に一方向に加えられる単一的な損傷と、前記単一的な損傷が加えられた試験片の表面に再び他方向のスクラッチを加えることで発生する複合的な損傷であることを特徴とする。
【0018】
更に好ましくは、前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面損傷領域を全体若しくは任意で選択して色分析することができることを特徴とする。
【0019】
更に好ましくは、前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対する連続的な測定が可能であることを特徴とする。
【0020】
また、好ましくは、前記色分析ソフトウェアは、スクラッチチップが試験片の表面に線接触する場合、スクラッチ方向に沿ってイメージの各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことを特徴とする。
【0021】
そして、前記スクラッチ損傷指数は、スクラッチチップが試験片の表面と面接触する場合、スクラッチ損傷度(△D)とスクラッチ強度(
)にて算出され、スクラッチチップが試験片の表面と線接触する場合、スクラッチ損傷度(△D)とスクラッチ抵抗(
)にて算出されることを特徴とする。
【0022】
更に、本発明は、高分子及びコーティング素材の表面に生成されたスクラッチによる表面損傷の視認性を定量化するために、
高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、前記試験片の表面にスクラッチを発生させる段階と、前記スクラッチによる表面損傷をスキャンしてイメージを獲得する段階と、色分析ソフトウェアを利用して前記イメージを各ピクセル別に色分析して表面損傷の変化推移を色座標にプロファイル化する段階と、前記色座標と試験片の表面に作用する荷重の変化推移を図式化し、スクラッチ視認性と係る成分のみを判別、組み合わせてスクラッチ視認性指数(SVI)として表す段階と、を含むことを特徴とする高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法を提供する。
【0023】
好ましくは、前記スクラッチを発生させる段階のスクラッチは、試験片の表面に線接触が可能なスクラッチチップを使用して発生させることを特徴とする。
【0024】
また、好ましくは、前記スクラッチを発生させる段階のスクラッチは、試験片の表面に線形的な増加荷重をかけて発生させることを特徴とする。
【0025】
そして、好ましくは、前記スクラッチによる試験片の表面損傷部位を分析するにおいて、三次元カラーモデルを利用した色分析技法を適用することを特徴とする。
【0026】
更に好ましくは、前記色座標にプロファイル化する段階の色分析ソフトウェアは、試験片の表面損傷を分析するにおいて、全体若しくは任意の選択領域に対する色分析が可能であることを特徴とする。
【0027】
また、好ましくは、前記色分析ソフトウェアは、スクラッチ方向に沿ってイメージの各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことを特徴とする。
【0028】
更に好ましくは、前記色分析ソフトウェは、試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対する連続的な測定が可能であることを特徴とする。
【0029】
そして、前記スクラッチ視認性指数は、試験片の表面損傷の発生が認識される時点での明度値(Ic)、彩度値(Sc)、そして臨界スクラッチ抵抗(
)の組合せである[Ic,Sc,
]で表すことを特徴とする。
【0030】
より好ましくは、前記スクラッチチップは、試験片の表面に水平方向に接触して一定距離及び一定速度でスクラッチ損傷を誘導することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明による高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法は、素材の表面に発生したスクラッチによる表面損傷程度を定量的な数値で評価でき、これによる客観性を通して測定者及び測定環境による誤差を減らすことができ、従って、耐スクラッチ性評価に対する信頼性を確保することができる。
【0032】
更に、本発明による方法は、スクラッチによる素材表面の損傷程度を定量化されたスクラッチ損傷指数(Scratch Damage Index,SDI)で表すことで、全ての高分子及びコーティング素材のスクラッチによる表面損傷を客観的に評価することができる。
【0033】
更に、本発明では、高分子及びコーティング素材の表面に生成された引っ掻きとスクラッチによる表面損傷の視認性を定量化された数値に算出することで、スクラッチ視認性の客観的な評価が可能であり、これによって測定者及び測定環境による誤差を減らすことができ、耐スクラッチ性評価に対する信頼性を確保することができる。
【0034】
また、本発明では、表面損傷の視認性の評価において、スクラッチによる表面損傷の視認性を定量化されたスクラッチ視認性指数(Scratch Visibility Index,SVI)で表すことで、全ての高分子及びコーティング素材のスクラッチによる表面損傷の視認性を客観的に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明で使用した用語はただ特定な実施例を説明するために使用したものであり、本発明を限定しようという意図ではなく、説明において周知された技術と同一な部分について重複する説明は省略することもある。
【0036】
本発明は高分子及びコーティング素材の表面に生成された引っ掻き(mar)若しくはスクラッチによる損傷を定量的な数値で評価できる方法に関し、一定荷重条件でスクラッチ試験を通して前記素材表面と所定の面接触または線接触が可能なスクラッチチップを利用して人為的にスクラッチを発生させた後、素材表面の損傷程度を色差若しくは色座標で表し、このような色差若しくは色座標及び作用荷重を組み合わせてスクラッチによる表面損傷を定量化した数値、即ちスクラッチ損傷指数(Scratch Damage Index,SDI)で表す定量化方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のスクラッチ表面の損傷程度を定量化する方法と既存の評価方法を比較して表した試験順序図である。
【図2】一定荷重下で素材表面に人為的に誘導されたスクラッチの形状を図式化したものである。
【図3】本発明に適用されたスクラッチチップの細部的な形状図である。
【図4】本発明の実施例で一定荷重のスクラッチ実験を通して得た未加工データのグラフである。
【図5】本発明による実施例で平板形スキャナーを利用して得た単一損傷のデジタル化されたイメージである。
【図6】本発明の実施例で使用した三次元カラーモデルと色座標値の範囲を表した図面である。
【図7】本発明の実施例で色分析を通して得た結果をグラフ化した図面である。
【図8】本発明による実施例で平板形スキャナーを利用して得た複合損傷のデジタル化されたイメージである。
【図9】本発明による高分子及びコーティング素材のスクラッチ視認性を定量化する方法と既存の評価方法を比較して表した試験順序図である。
【図10】本発明で使用するスクラッチチップの具体的な形状と線形増加荷重下で誘導された素材表面損傷の形状を概略的に図式化したものである。
【図11】HSIカラーモデルの色座標を説明する概略図である。
【図12】本発明で使用した色分析ソフトウェアを利用してイメージの各列を代表する色座標値を取る方法を説明する概略図である。
【図13】本発明の実施例で平板形スキャナーから得た線形増加荷重下の引っ掻き及びスクラッチによる表面損傷イメージである。
【図14】本発明による実施例の色分析結果である3個の色座標及び該当スクラッチ抵抗の変化推移をスクラッチ軌跡に沿って図式化して表したグラフである。
【図15】図13に表示した領域I、II、IIIの光学顕微鏡写真であり、(a)は第1カラー転移点、(b)は第2カラー転移点、(c)は第3カラー転移点付近の表面損傷形態を表している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面を参照にして本発明を詳細に説明する。
【0039】
本発明において高分子及びコーティング素材は高分子素材と合せて各種素材表面に形成されたコーティング素材を言い、本明細書では‘高分子及びコーティング’を省略し、簡単に‘素材’と称する。
【0040】
図1に図示されるように、一定荷重下のスクラッチ試験で素材表面に作用する応力に対する耐スクラッチ性を評価するために、まず選択した素材の試験片を準備し、この試験片に人為的にスクラッチ損傷を誘導して表面を損傷させる。
【0041】
試験片の表面にスクラッチ損傷を加えるために、一定荷重が作用する条件でスクラッチ試験を実施し、このとき使用するスクラッチ発生器としては一般的なスクラッチ発生器を使用することができ、本発明の実施例ではスクラッチ発生器の一例としてCenter for Tribology社のUMT−2モデルを使用した。
【0042】
本発明においてスクラッチ発生器は試験片の表面に引っ掻き及びスクラッチを人為的に発生させるための装置であり、素材表面と面接触または線接触が可能なスクラッチチップを含み、前記スクラッチチップの材質は素材表面を損傷させるために,高分子及びコーティング素材より高い硬度の金属や鉱物または無機物であることが好ましい。
【0043】
本発明においてスクラッチチップは一定荷重条件で素材表面に接触してスクラッチ生成のための応力を作用させる。
【0044】
スクラッチチップによる素材の表面損傷は大きく2種類の形態に区分できるが、まずスクラッチチップが素材表面の一方向にスクラッチ損傷を加えて単一的な損傷を誘導した場合と、前記のような単一的な損傷が加えられた素材表面に再び他方向のスクラッチ損傷を加えることで複合的な損傷を発生させた場合であり、本発明による方法は前記2種類の形態のスクラッチ損傷に対する評価を全て含む。
【0045】
ここで、複合的なスクラッチ損傷は図2のように横方向にスクラッチ損傷が加えられた素材表面に再び縦方向にスクラッチ損傷を加えることで発生させる。
【0046】
図2は本発明によるスクラッチチップによる素材表面損傷の形状を概略的に図式化したものである。
【0047】
前記スクラッチチップは、素材表面に面接触または線接触して一定荷重をかけることで引っ掻き及びスクラッチを人為的に発生させるための手段であり、素材表面と面接触または線接触が可能な形状に形成され、面接触が可能な形状の場合、図3に図示されるようにスクラッチチップの接触面が三角形や四角形のような多角形または円形であることが好ましい。
【0048】
本発明は試験片の表面に引っ掻き及びスクラッチのような表面損傷が発生すると、スキャナーなどのような装備を利用して素材の表面損傷部位をスキャンしてデジタル化されたイメージを得て貯蔵する。
【0049】
ここで、前記イメージは、最小解像度600×600dpi以上、24ビットカラーモードでスキャンして損傷した素材表面をより鮮明ではっきりとイメージ化することが好ましく、本発明の実施例ではエプソン社のPerfection V700 photoモデルを使用してイメージを獲得した。
【0050】
前記のようにスクラッチされた試験片表面の損傷部位をデジタルイメージ化した後、損傷部位のイメージを色分析ソフトウェアを利用して分析評価する。
【0051】
ここで、色分析ソフトウェアは、二次元若しくは三次元の多様なカラーモデル及び色座標の数値を得ることのできるプログラムとして、本発明ではこれを利用してスクラッチによる素材表面の損傷程度を測定し、素材の耐スクラッチ性を評価することができる。
【0052】
本発明の実施例では商業用色分析プログラムであるQWinを使用し、分析結果を三次元カラーモデル及びRGMとHSIの色座標で表した。
【0053】
前記色座標はデジタル化されたイメージの各ピクセルに対して個数のカラー値を表す互いに異なる3つの成分で表現されるが、一例としてRGBカラーモデルの場合、レッド値(R)、グリーン値(G)及びブルー値(B)で表現され、HSIカラーモデルの場合は色相(Hue)値(H)、彩度(Saturation)値(S)、明度(Intensity)値(I)で表現される。
【0054】
前記色分析ソフトウェアは素材表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対する連続的な測定が可能であるだけでなく、素材表面の損傷領域を任意で選択して測定できることが好ましい。
【0055】
合わせて、スクラッチチップが試験片の表面に線接触する場合、前記色分析ソフトウェは全体または任意の選択領域(任意で選択した素材表面の損傷領域)に対する評価モード時にスクラッチ方向に沿って各列(j)を代表する色座標を該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことが好ましい。
【0056】
より具体的に説明すると、前記色分析ソフトウェアは試験片表面の損傷部位から得たイメージ分析領域中、全体若しくは任意で選択した領域に対してスクラッチ方向に沿ってイメージの各ピクセルを列(j)別に分類し、分類した各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表す。
【0057】
更に、本発明はスクラッチチップによる素材表面の損傷部位をスキャンしてイメージ化する過程なく、分光測定計や色差計またはカラーリーダーなどのような色分析プロファイラーを直接的に利用して表面損傷部位を色差または色座標で表すことも可能である。
【0058】
前記色差は引っ掻きやスクラッチが発生した領域と発生していない領域間の色座標の差で表す。
【0059】
本発明の実施例ではコニカミノルタ社のCM−3700d分光測色計を使用した。
【0060】
前記分光測色計を利用した色分析は、客観的で合理的な測定のために、標準条件であるD65標準光源、d/8拡散照明、鏡面反射光除去(Specular Component Excluded,SCE)モードで測定することが好ましい。
【0061】
前記のようにスクラッチチップによる試験片の損傷程度を色差または色座標で表し、その値を基にスクラッチによる表面損傷を定量化した数値、即ちスクラッチ損傷指数(SDI)を算出する。
【0062】
スクラッチ損傷指数は、スクラッチ損傷度(Degree of scratch damage,ΔD)とスクラッチ強度(Scratch strength,
)またはスクラッチ抵抗(Scratch resistance,
)で表記され、これはスクラッチチップの形状によってその表記方法を異にする。
【0063】
例えば、スクラッチチップが素材表面と一定な面積を持ち接触する場合、即ち面接触する場合、本発明では前記スクラッチ損傷指数を[ΔD,
]で表し、スクラッチチップが素材表面と線の形態で接触する場合、即ち線接触する場合は[ΔD,
]のように表現する。
【0064】
ここで、スクラッチ損傷度(ΔD)は、スクラッチ生成部位(x)と未生成部位(y)の色座標をユークリッド距離で算出することでスクラッチによる表面損傷を定量的に表す数値であり、前記2領域(スクラッチ生成部位(x)と未生成部位(y))の色空間上の距離は下記数学式1のように計算して導出する。合わせて、スクラッチ強度(
)及びスクラッチ抵抗(
)は各々下記数学式2と3を通して算出する。
【0065】
【数1】
【0066】
【数2】
【0067】
【数3】
【0068】
ここで、Aはスクラッチチップが素材表面と接触する面積であり、lはスクラッチチップが素材表面と接触する長さである。
【0069】
そして、スクラッチチップを面または線接触した状態で移動させて試験片にスクラッチ損傷を加えることができるようにするスクラッチ駆動力(Scratch force,
)は2つの法線ベクターである垂直荷重(
)と接線荷重(
)の合であり、スクラッチ試験時に作用する荷重によって決定し、下記数学式4のように求める。
【0070】
ここで、垂直荷重(
)はスクラッチチップを通して素材表面に垂直方向に作用する荷重であり、接線荷重(
)はスクラッチチップを通して素材表面に水平方向に作用する荷重である。
【0071】
【数4】
【0072】
図4は本発明の実施例で試験片に一定荷重のスクラッチ損傷を加える実験を通して得た未加工データのグラフである。
【0073】
本発明はスクラッチによる表面損傷を定量化するにおいて、素材の厚さに対する特別な制限はないが、厚さが10mm以下である試験片を使用することが好ましく、最小の長さが70mm以上であり屈曲がない平板形試験片を使用することが好ましい。
【0074】
本発明は下記実施例を通してより理解することができ、下記の実施例は本発明の例示目的のためのものとして添付した特許請求範囲を限定するわけではない。
【0075】
実施例1
本実施例1では、厚さ3mmの平板形ポリプロピレン複合素材をスクラッチ損傷評価用試験片として使用した。
【0076】
単一損傷の引っ掻き及びスクラッチの場合;
スクラッチ発生器を利用して前記試験片に一方向に総50mmのスクラッチを加えた。このときスクラッチ速度(スクラッチ損傷を生成する速度)は1mm/sに固定し、スクラッチを加える実験荷重は10N、20N、30Nで変化させた。
【0077】
試験片にスクラッチを加えるためのスクラッチチップは、細部的な形状が図3の(A−a)と(B)であるものを使用したが、面接触する場合、図3の(A−a)形状を有し、試験片と面接触する部分の直径が1mm、即ち接触面積が0.785mm2であるスクラッチチップを使用し、線接触する場合、図3の(B)形状を有し、試験片と線接触する長さが1mmであるものを使用した。
【0078】
前記のような過程を通して引っ掻き及びスクラッチなどの表面損傷が発生した試験片の表面を平板形スキャナー装備を利用してデジタルイメージを得た。
【0079】
図5は前記平板形スキャナー装備から得た引っ掻き及びスクラッチによる単一損傷イメージを表している。
【0080】
本実施例1では、全体スクラッチ幅の約90%程度のみを任意で選択し、RGB及びHSIなど2種類の三次元カラーモデルを使用して色分析を実施した。
【0081】
図6はRGB及びHSIカラーモデルの色座標値を表した概略図であり、図7は本実施例1でRGB及びHSIカラーモデルを使用した色分析結果を二次元で図式化して表したグラフであり、下記表1に図7の色分析結果値を平均値と標準偏差で表した。
【0082】
図5の色分析結果、表1に表したように試験片にかけた一定荷重が増加するに従ってRGBカラーモデルの色座標数値もやはり増加すると表れた反面、HSIカラーモデルの明度(Im)と彩度(Sm)数値は一定荷重が増加するに従って互いに相反する傾向を見せた。
【0083】
即ち、試験片にかけた一定荷重が増加するに従ってHSIカラーモデルの明度(Im)数値は増加し、彩度(Sm)数値は減少した。
【0084】
表1に数値化して表した色分析結果値から色座標と作用応力を組み合わせて、下記表2に最終的に定量化した数値である‘スクラッチ損傷指数(SDI)’に算出して表した。
【0085】
下記表1及び表2を通して確認できるように、本発明でスクラッチによる素材の表面損傷を評価する方法は、表面損傷程度がデジタル化された数値で表現されてより簡単に定量化されることが分かった。
【0086】
参考に、表1及び表3の試験条件中、controlはスクラッチ損傷を加えていない場合である。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
複合損傷の引っ掻き及びスクラッチの場合;
まず、準備した試験片に素材表面と線接触が可能なスクラッチチップを利用して縦方向に3mm間隔で20個の単一損傷を生成した後、再び縦方向に3mm間隔で20個のスクラッチ損傷を加えて複合損傷を誘導した。
【0090】
図8は本発明によって平板形スキャナー装備から得た引っ掻き及びスクラッチによる複合損傷イメージを表す写真であり、(a)は試験片の表面にスクラッチ損傷を加えていない場合のイメージであり、(b)は10Nの荷重をかけてスクラッチ損傷を加えた場合のイメージであり、(c)は20Nの荷重をかけてスクラッチ損傷を生成させた場合に獲得したイメージである。
【0091】
図8のように前記試験片に複合損傷を生成した後、分光測色計を利用してD65標準光源、d/8拡散照明、鏡面反射光除去モードで色分析を実施し、このとき直径が25.4mmである測定鏡を使用した。次に、L*a*b*カラーモデルを利用して色座標で表した後、スクラッチ未生成部位の色座標を基準とし、そこでスクラッチが生成された部位の色座標を比較して複合損傷による試験片表面の損傷程度を色差(ΔD)で表した。
【0092】
もちろん、複合損傷による引っ掻き及びスクラッチ程度は、前記単一損傷のように、複合損傷部位をスキャンしてイメージを得た後、色分析ソフトウェアを利用して定量化することも可能である。
【0093】
表3に複合損傷による試験片表面の損傷程度を色差(ΔD)の平均値と標準偏差にて表した。
【0094】
【表3】
【0095】
前記実施例1を通して分析したスクラッチによる表面損傷は客観化及び定量化された数値として、測定者と測定環境による誤差が少なく、信頼性及び再現性が高い評価結果であることが分かる。
【0096】
前述したように、本発明は素材表面と面接触または線接触するスクラッチチップを利用して引っ掻き及びスクラッチを人為的に発生させた後、前記素材の表面損傷部位をスキャンしてデジタルイメージ化した後、多様なカラーモデル及び色座標の値で表すことのできる色分析ソフトウェアを利用したり、或いはスキャンしてデジタルイメージ化する過程なく、分光測色計、色差計またはカラーリーダーなどのような色分析プロファイラーを利用して表面損傷部位に該当する色差または色座標を直接的に表示することで、測定者及び測定環境による誤差を減らすと同時に、スクラッチ表面の損傷を評価するにおいて客観的で数値化された評価方法を提示し、合わせて最終的にはスクラッチによる表面損傷程度をスクラッチ損傷指数(SDI)に算出することで、全ての高分子及びコーティング素材に適用することのできるスクラッチ表面損傷の定量化方法を提供する。
【0097】
従って、本発明はスクラッチ損傷が誘導された高分子及びコーティング素材の表面に対する色分析を行ってスクラッチによる表面損傷を定量化することができ、定量化された最終結果をスクラッチ損傷指数で表現することで、従来のスクラッチ特性を定量化及び物性かすることができる効果がある。
【0098】
合わせて、本発明は素材表面のカラー有無、表面模様の有無及び模様の形状に関係なく適用が可能であり、素材の表面損傷を分析評価時に測定者が所望するカラーモデルを直接選択するのに制約なく広範囲に使用することができる。
【0099】
一方、本発明は高分子及びコーティング素材の表面に生成された引っ掻き及びスクラッチによる表面損傷の視認性を定量的な数値で評価することができる方法を含み、線形に増加する荷重、即ち線形増加荷重条件で素材表面と線接触するスクラッチチップを利用してスクラッチによる表面損傷を誘導し、前記表面損傷部位をスキャンしてデジタル化されたイメージを得て貯蔵した後、色分析ソフトウェアを利用してスクラッチによる表面損傷の変化推移を三次元(3D)カラーモデルの色座標にプロファイル化した後、最後にスクラッチ軌跡による色座標と作用応力の変化推移を図式化し、スクラッチ視認性と係る成分のみを判別、組み合わせて最終的に定量化された数値であるスクラッチ視認性指数(SDI)に算出する方法を提供する。
【0100】
このような本発明について添付図面及び実施例を参照にして詳細に説明する。
【0101】
図9に図示されるように、線形増加荷重条件下でのスクラッチ試験を通した耐スクラッチ性を評価するために、まず選択した素材の試験片を準備し、この試験片に人為的にスクラッチ損傷を誘導して表面を損傷させる。
【0102】
試験片の表面にスクラッチされた表面損傷、即ちスクラッチ損傷を加えるために線形増加荷重下でスクラッチ試験を実施し、このとき試験片の表面を損傷させるためのスクラッチ発生器としては一般的なスクラッチ発生装置を使用することができ、本発明の実施例でCenter for Tribology社のUMT−2モデルを使用してスクラッチでストを行った。
【0103】
本発明においてスクラッチ発生器は試験片の表面に引っ掻き及びスクラッチを人為的に発生させるための装置であり、素材表面と線接触が可能なスクラッチチップを含み、前記スクラッチチップの材質は素材表面を損傷させるために、高分子及びコーティング素材より高い硬度の金属や鉱物または無機物であることが好ましい。
【0104】
本発明においてスクラッチチップは、線形に増加する荷重条件で素材表面に接触してスクラッチ生成のための応力を作用させる。
【0105】
このために、スクラッチ発生器はスクラッチチップが試験片の表面に線形的な増加荷重をかけるように制御する。
【0106】
前記スクラッチチップはスクラッチ試験で線形増加する荷重(例えば、1〜30N)下で試験片の表面と水平方向に接触して一定距離(長さ)及び一定速度でスクラッチ損傷を誘導する。
【0107】
即ち、スクラッチチップは試験片の表面にスクラッチ損傷を誘導するために、試験片の表面と水平方向に接触して一定距離及び一定速度で線形増加荷重をかける。
【0108】
図10は本発明で使用するスクラッチチップの具体的な形状と線形増加荷重下で誘導された素材表面損傷の形状を概略的に図式化したものであり、線形増加する荷重による試験片の表面損傷をスクラッチ軌跡に沿って表している。図示されるように、試験片の表面に生成された損傷はスクラッチ方向に沿って線形に増加する荷重がかけられることにより、第1カラー転移点(1st)、第2カラー転移点(2nd)、第3カラー転移点(3rd)が順次的に表れる。
【0109】
前記試験片の表面に引っ掻き及びスクラッチのような表面損傷が生成されると、スキャナーなどのような装備を利用して表面損傷部位をスキャンしてデジタル化されたイメージを獲得貯蔵する。
【0110】
ここで、前記デジタル化されたイメージは最小解像度1400×600dpi以上、24ビットカラーモードでスクラッチされた素材表面をデジタルイメージ化することが好ましく、本発明の実施例で一例としてエプソン社のPerfection D700 photoモデルを使用してデジタルイメージを獲得した。
【0111】
前記のように試験片表面のスクラッチ損傷部位をデジタルイメージ化した後、色分析ソフトウェアを利用してスクラッチチップが過ぎて生成した表面損傷の痕跡、即ち入力されたイメージのスクラッチ軌跡に沿って表面損傷の変化を3Dカラーモデルの3種のカラー成分(色座標)にて数値化する。
【0112】
ここで、色分析ソフトウェアは、前記イメージのスクラッチ軌跡に沿って表面損傷の変化推移を三次元カラーモデルの色座標値で測定して表すことのできるプログラフであり、本発明ではこれを利用してスクラッチによる表面損傷の視認性を測定し、素材の耐スクラッチ性を評価することができる。
【0113】
本発明の実施例で商業用色分析プログラムであるQWinを使用し、色分析結果を3DカラーモデルであるHSIの色座標で表した。
【0114】
前記色座標はデジタル化されたイメージの各ピクセルに対して固有のカラー値を表す互いに異なる3つの成分で表現され、例えば、RGBカラーモデルの場合、レッド値(R)、グリーン値(G)及びブルー値(B)で表現され、HSIカラーモデルの場合、図11のように色相値(H)、彩度値(S)、明度値(I)で表現される。
【0115】
色相若しくは色相値は色自体を表現する成分であり、彩度若しくは彩度値は白色をどれだけ含んでいるかを表す成分であり、最後に明度若しくは明度値は色の明度(輝度)を表す成分である。各々の成分は0から255までの数値で表現され、スキャン作業を通して得たイメージの各ピクセルは前記の3つのカラー成分の組合せ、即ち色座標として該当ピクセルの固有のカラーを表すことができる。
【0116】
前記色分析ソフトウェアは試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対する連続的な測定が可能であるだけなく、試験片表面の損傷領域を任意で選択して表面損傷の視認性を測定できることが好ましい。
【0117】
合わせて、前記色分析ソフトウェアは任意の選択領域(任意で選択した素材表面の損傷領域)に対する評価時、図12のようにスクラッチ方向に沿って各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値、例えば[Rj,Gj,Bj]で表すことが好ましく、これを数式で表すと下記数学式5の通りである。
【0118】
【数5】
【0119】
図12は色分析ソフトウェアを利用してスクラッチ方向に沿って各列の色座標値を取る方法を表した概略図であり、これを参照にしてより具体的に説明すると、前記色分析ソフトウェアは試験片表面の損傷部位から得たイメージ分析領域中、全体若しくは任意で選択した領域に対してスクラッチ方向に沿ってイメージの各ピクセルを列(j)別に分類し、分類した各列(j)を代表する色座標は該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表す。
【0120】
本発明でRGBカラーモデルの場合、スクラッチ方向に沿って各列(j)を代表する色座標を前記数学式5のように表現できることを参照として、HSIカラーモデルの場合、下記数学式6のように表すことができることを類推することができる。
【0121】
【数6】
【0122】
従って、表面損傷のイメージ分析領域中、任意の選択領域でスクラッチ方向に沿った各列(j)を代表する色座標は[Rj,Gj,Bj]或いは[Hj,Sj,Ij]などで表現することができる。
【0123】
前記の色分析結果を基に、スクラッチ軌跡による色座標の変化と作用応力の増加を一つの図表に図式化して定量化された最終スクラッチ視認性指数(SVI)を算出する。
【0124】
スクラッチ視認性指数はスクラッチ視認性が感知される時点、即ち表面損傷の発生が認識される時点での色座標と臨界スクラッチ抵抗(
)の組合せにて表現することができ、本発明では前記スクラッチ視認性指数を下記数学式7のように定義する。
【0125】
【数7】
【0126】
ここで、IcとScは各々試験片の表面損傷が認識される時点の明度値と彩度値であり、即ち後述される視認性開始点での明度値と彩度値である。
【0127】
合わせて、スクラッチ抵抗(
)は下記数学式8のように計算する。
【0128】
【数8】
【0129】
ここで、lはスクラッチチップが素材表面と接触する長さであり、臨界スクラッチ抵抗(
)は試験片の表面損傷が認識される時点でのスクラッチ抵抗(
)を意味する。
【0130】
そして、スクラッチチップを試験片の表面に線接触した状態で移動させて試験片にスクラッチ損傷を加えることができるようにするスクラッチ駆動力(Scratch force,
)は2つの法線ベクターである垂直荷重(
)と接線荷重(
)の合であり、スクラッチ試験時に提供される線形増加する荷重によって決定し、下記数学式9のように求める。
【0131】
ここで、垂直荷重(
)はスクラッチチップを通して素材表面に垂直方向に作用する荷重であり、接線荷重(
)はスクラッチチップを通して素材表面に水平方向に作用する荷重である。
【0132】
【数9】
【0133】
本発明は素材表面に加えられたスクラッチ損傷の視認性を定量化するにおいて、素材の厚さに対する特別な制限はないが、厚さが10mm以下である試験片が好ましく、最小の長さが70mm以上であり屈曲のない平板形試験片を使用することが好ましい。
【0134】
本発明は下記実施例を通してより理解することができ、下記の実施例は本発明の例示目的のためのものとして添付した特許請求範囲を限定するわけではない。
【0135】
実施例2
本実施例2では、厚さ3mmの平板形ポリプロピレン複合素材をスクラッチ視認性評価用試験片として使用した。
【0136】
スクラッチ発生器を使用して前記試験片に総50mmのスクラッチを加えた。このときスクラッチ速度(スクラッチ損傷を生成する速度)は1mm/sに固定し、実験荷重条件は1〜30Nの線形増加する荷重を付与した。
【0137】
本実施例2において、スクラッチチップは図10の形状を持ち試験片の表面に接触する長さが1mmであるものを使用した。
【0138】
前記のような手順を通して引っ掻き及びスクラッチなどの表面損傷が誘導された素材表面を平板形スキャナー装備を利用してデジタルイメージ化した。
【0139】
図13は前記平板形スキャナーから得た引っ掻き及びスクラッチによる表面損傷イメージを表している。
【0140】
本実施例2では、全体スクラッチ幅の約90%のみを任意で選択し(図10参考)、HSIカラーモデルを使用して色分析を行った。
【0141】
図14は本実施例2の色分析結果である3つの色座標(H,S,I)及び該当スクラッチ抵抗(
)の変化推移などをスクラッチ軌跡に沿って図式化して表したグラフである。
【0142】
図14のようにスクラッチ軌跡が増加(スクラッチの長さが増加)するに従って、(1)スクラッチ抵抗(
)は線形的に増加し、(2)色相値(H)はほぼ一定な値を維持する反面、(3)明度値(I)の増加、及び(4)彩度値(S)の減少傾向を見せた。
【0143】
即ち、スクラッチ駆動力(
)がスクラッチ軌跡に沿って増加すると、スクラッチされた溝(groove)付近で表面損傷による光の散乱が増加する白化(whitening)現象が発生することが分かる。
【0144】
更に、スクラッチによる素材の白化現象は色座標の変化を誘発させるが、具体的に、HSIカラーモデルの明度値(I)と彩度値(S)は白化現象を直接的に反映して数値の変化を見せる反面、色相値(H)は白化現象と関係なく一定な数値を維持した。
【0145】
図14でスクラッチ軌跡による明度値(I)及び彩度値(S)のプロファイルを詳しく見てみると、スクラッチによる表面損傷の程度が増加するに従ってこれらの値の傾きが継続して変化することを観察することができる。
【0146】
例えば、図14で明度値(I)の場合、スクラッチ未生成領域(図14のNo damage zone)での数値は一定な値を維持した後、第1カラー変移点を過ぎてスクラッチ生成領域(図14のMar zone)に進入しながら増加し、再び一定に維持した後、第2カラー変移点を過ぎながら再び増加したら一定に維持され、それ以降、このような現象が反復的に再現されることを確認することができる。
【0147】
反面、図14で彩度値(S)の場合、初期数値は一定な値を維持した後、第1カラー変移点を過ぎてスクラッチ生成領域(図14のMar zone)に進入しながら減少し、再び一定に維持された後、第2カラー変移点を過ぎながら再び減少したら一定に維持され、それ以降、このような現象が反復的に再現された。
【0148】
このように図14での明度値(I)と彩度値(S)の傾きの変化は色座標値、特に、明度値と彩度値が表面損傷程度の変化を表す識別指標として使用できることを意味している。
【0149】
前述したところによって、素材表面に生成されたスクラッチの視認性は明度値(I)と彩度値(S)及びスクラッチ抵抗(
)と連関があることが分かり、スクラッチ視認性指数はこれらを組み合わせて導出することができることを推測することができる。
【0150】
一方、光学顕微鏡を利用した観察は図14のカラー変移点と表面損傷の形態を連関させるために行った。
【0151】
図15の(a)、(b)、(c)は図14に表示された領域I、II、IIIを各々拡大図示した光学顕微鏡写真であり、各々第1、第2、第3カラー変移点付近の表面損傷の形態を表している。
【0152】
図15から分かるように、領域Iは比較的軽い表面損傷である引っ掻き現象を表し、領域IIは波模様形状の表面損傷が重畳されている様子を表している。このような表面損傷は肉眼でも白化現象が確認され、本発明の実施例2ではより確実に識別可能な図14の第2カラー変移点を“視認性開始点”と決めた。
【0153】
そして、本発明は視認性開始点での明度値(Ic)、彩度値(Sc)、そしてスクラッチ抵抗(
)の組合せである[Ic,Sc,
]を“スクラッチ視認性指数”と決める。
【0154】
表4に前期実施例2の試験結果をスクラッチ視認性指数(SVI)で表した。
【0155】
【表4】
【0156】
本実施例2で本発明による引っ掻き及びスクラッチによる表面損傷の視認性を評価する方法は、表面損傷の視認性がデジタル化された数値で表現されてより簡単に定量化されることが分かった。
【0157】
一方、領域IIIは第IIIカラー変移点付近にてスクラッチ損傷が更に進行するに従って波模様の幅がより大きくなったことを確認することができた。
【0158】
このように、本発明は高分子及びコーティング素材に生成された引っ掻きとスクラッチによる表面損傷の視認性を定量化できることはもちろん、定量化された最終結果としてスクラッチ視認性指数を導出し出すことで、従来定量化が難しかったスクラッチ視認性を容易に定量化、物性化することができる効果がある。
【0159】
更に、前記実施例2を通して確認したように、表面損傷の視認性を表す定量化された数値は測定者と測定環境による誤差が小さく、信頼性および再現性が高い結果であることが分かる。
【0160】
合わせて、本発明による定量化方法は、高分子及びコーティング素材表面のカラー有・無、表面の模様の有・無及び模様の形状に関係なく適用が可能で広範囲に使用することができる。
【0161】
本発明の単純な変形乃至変更はこの分野の通常的な知識を有するものにより容易に実施することができ、このような変形や変更は全て本発明の領域に含まれると見ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子及びコーティング素材の表面に生成されたスクラッチによる表面損傷を定量化するために、
高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、
前記試験片の表面にスクラッチ損傷を誘導する段階と、
前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷を該当する色座標で表す段階と、
前記試験片の表面に作用した荷重とスクラッチ損傷に該当する色座標を組み合わせて定量化した数値であるスクラッチ損傷指数を算出する段階と、
を含むことを特徴とする高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項2】
前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチは、試験片の表面に面接触または線接触が可能なスクラッチチップを使用して発生させることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項3】
前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチは、試験片の表面に一定荷重をかけて発生させることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項4】
前記スクラッチ損傷に該当する色座標で表す段階は、
試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷部位をスキャンしてイメージを得る段階と、色分析ソフトウェアを使用して前記イメージのカラー値を二次元若しくは三次元カラーモデルの色座標で表す段階と、からなることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項5】
前記スクラッチ損傷に該当する色座標で表す段階は、
色分析プロファイラーを利用して試験片の表面損傷を色差または色座標で表示することを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項6】
前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷の分析において、二次元若しくは三次元のカラーモデルを利用した色分析技法を適用することを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項7】
前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチ損傷の形態は、試験片の表面に一方向に加えられる単一的な損傷と、前記単一的な損傷が加えられた試験片の表面に再び他方向のスクラッチを加えることで発生する複合的な損傷であることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項8】
前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面損傷領域を全体若しくは任意で選択して色分析することができることを特徴とする、請求項4記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項9】
前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対して連続的な測定が可能であることを特徴とする、請求項4または8記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項10】
前記色分析ソフトウェアは、スクラッチチップが試験片の表面に線接触する場合、スクラッチ方向に沿ってイメージの各列(j)を代表する色座標を該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことを特徴とする、請求項4または8記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項11】
前記スクラッチ損傷指数は、スクラッチチップが試験片の表面と面接触する場合、スクラッチ損傷度(ΔD)とスクラッチ強度(
)にて算出され、スクラッチチップが試験片の表面と線接触する場合、スクラッチ損傷度(ΔD)とスクラッチ抵抗(
)にて算出されることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項12】
高分子及びコーティング素材の表面に生成されたスクラッチによる表面損傷の視認性を定量化するために、
高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、
前記試験片の表面にスクラッチを発生させる段階と、
前記スクラッチによる表面損傷をスキャンしてイメージを獲得する段階と、
色分析ソフトウェアを利用して前記イメージを各ピクセル別に色分析して表面損傷の変化推移を色座標にプロファイル化する段階と、
前記色座標と試験片の表面に作用する荷重の変化推移を図式化し、スクラッチ視認性と係る成分のみを判別、組み合わせてスクラッチ視認性指数(SVI)として表す段階と、
を含むことを特徴とする高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項13】
前記スクラッチを発生させる段階のスクラッチは、試験片の表面に線接触が可能なスクラッチチップを使用して発生させることを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項14】
前記スクラッチを発生させる段階のスクラッチは、試験片の表面に線形的な増加荷重をかけて発生させることを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項15】
前記スクラッチによる試験片の表面損傷部位の分析において、三次元カラーモデルを利用した色分析技法を適用することを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項16】
前記色座標にプロファイル化する段階の色分析ソフトウェアは、試験片の表面損傷の分析において全体若しくは任意の選択領域に対する色分析が可能であることを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項17】
前記色分析ソフトウェアは、スクラッチ方向に沿ってイメージの各列(j)を代表する色座標を該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことを特徴とする、請求項12または16記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項18】
前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対して連続的な測定が可能であることを特徴とする、請求項12または16記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項19】
前記スクラッチ視認性指数は、試験片の表面損傷の発生が認識される時点での明度値(Ic)、彩度値(Sc)、そして臨界スクラッチ抵抗(
)の組合せである[Ic,Sc,
]にて表すことを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項20】
前記スクラッチチップは、試験片の表面に水平方向に接触して一定距離及び一定速度でスクラッチ損傷を誘導することを特徴とする、請求項13記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項1】
高分子及びコーティング素材の表面に生成されたスクラッチによる表面損傷を定量化するために、
高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、
前記試験片の表面にスクラッチ損傷を誘導する段階と、
前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷を該当する色座標で表す段階と、
前記試験片の表面に作用した荷重とスクラッチ損傷に該当する色座標を組み合わせて定量化した数値であるスクラッチ損傷指数を算出する段階と、
を含むことを特徴とする高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項2】
前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチは、試験片の表面に面接触または線接触が可能なスクラッチチップを使用して発生させることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項3】
前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチは、試験片の表面に一定荷重をかけて発生させることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項4】
前記スクラッチ損傷に該当する色座標で表す段階は、
試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷部位をスキャンしてイメージを得る段階と、色分析ソフトウェアを使用して前記イメージのカラー値を二次元若しくは三次元カラーモデルの色座標で表す段階と、からなることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項5】
前記スクラッチ損傷に該当する色座標で表す段階は、
色分析プロファイラーを利用して試験片の表面損傷を色差または色座標で表示することを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項6】
前記試験片の表面に生成されたスクラッチ損傷の分析において、二次元若しくは三次元のカラーモデルを利用した色分析技法を適用することを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項7】
前記スクラッチ損傷を誘導する段階のスクラッチ損傷の形態は、試験片の表面に一方向に加えられる単一的な損傷と、前記単一的な損傷が加えられた試験片の表面に再び他方向のスクラッチを加えることで発生する複合的な損傷であることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項8】
前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面損傷領域を全体若しくは任意で選択して色分析することができることを特徴とする、請求項4記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項9】
前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対して連続的な測定が可能であることを特徴とする、請求項4または8記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項10】
前記色分析ソフトウェアは、スクラッチチップが試験片の表面に線接触する場合、スクラッチ方向に沿ってイメージの各列(j)を代表する色座標を該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことを特徴とする、請求項4または8記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項11】
前記スクラッチ損傷指数は、スクラッチチップが試験片の表面と面接触する場合、スクラッチ損傷度(ΔD)とスクラッチ強度(
)にて算出され、スクラッチチップが試験片の表面と線接触する場合、スクラッチ損傷度(ΔD)とスクラッチ抵抗(
)にて算出されることを特徴とする、請求項1記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項12】
高分子及びコーティング素材の表面に生成されたスクラッチによる表面損傷の視認性を定量化するために、
高分子及びコーティング素材の試験片を準備する段階と、
前記試験片の表面にスクラッチを発生させる段階と、
前記スクラッチによる表面損傷をスキャンしてイメージを獲得する段階と、
色分析ソフトウェアを利用して前記イメージを各ピクセル別に色分析して表面損傷の変化推移を色座標にプロファイル化する段階と、
前記色座標と試験片の表面に作用する荷重の変化推移を図式化し、スクラッチ視認性と係る成分のみを判別、組み合わせてスクラッチ視認性指数(SVI)として表す段階と、
を含むことを特徴とする高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項13】
前記スクラッチを発生させる段階のスクラッチは、試験片の表面に線接触が可能なスクラッチチップを使用して発生させることを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項14】
前記スクラッチを発生させる段階のスクラッチは、試験片の表面に線形的な増加荷重をかけて発生させることを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項15】
前記スクラッチによる試験片の表面損傷部位の分析において、三次元カラーモデルを利用した色分析技法を適用することを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項16】
前記色座標にプロファイル化する段階の色分析ソフトウェアは、試験片の表面損傷の分析において全体若しくは任意の選択領域に対する色分析が可能であることを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項17】
前記色分析ソフトウェアは、スクラッチ方向に沿ってイメージの各列(j)を代表する色座標を該当列(j)の全ての色座標値の平均値で表すことを特徴とする、請求項12または16記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項18】
前記色分析ソフトウェアは、試験片の表面に生じた全体スクラッチの幅と長さに対して連続的な測定が可能であることを特徴とする、請求項12または16記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項19】
前記スクラッチ視認性指数は、試験片の表面損傷の発生が認識される時点での明度値(Ic)、彩度値(Sc)、そして臨界スクラッチ抵抗(
)の組合せである[Ic,Sc,
]にて表すことを特徴とする、請求項12記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【請求項20】
前記スクラッチチップは、試験片の表面に水平方向に接触して一定距離及び一定速度でスクラッチ損傷を誘導することを特徴とする、請求項13記載の高分子及びコーティング素材のスクラッチ表面損傷の定量化方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図14】
【図2】
【図5】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図14】
【図2】
【図5】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図15】
【公開番号】特開2011−220995(P2011−220995A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174254(P2010−174254)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2010年2月3日 http://www.springer.com/materials/journal/10853における発表
【出願人】(398043850)コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2010年2月3日 http://www.springer.com/materials/journal/10853における発表
【出願人】(398043850)コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (21)
【Fターム(参考)】
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