説明

高分子成形体およびその製造方法

【課題】架橋性高分子を架橋させて成る高分子成形体であって熱による機械物性の劣化が十分に抑えられた高分子成形体を提供する。
【解決手段】過酸化物架橋剤と共架橋剤の作用によって硬化された高分子成形体であり、以下に記載する条件下の熱劣化試験の前後におけるASTM D 638に準拠して測定した引張り強度(MPa)の変化率(試験後引張り強度と試験前引張り強度の差と試験前引張り強度の比率)が−55%〜0%である高分子成形体。
[熱劣化試験の条件]
JIS K6251に規定されたダンベル状3号形に打ち抜かれた試験片を使用し、ギヤオーブン内で250℃70時間処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子成形体およびその製造方法に関し、詳しくは、過酸化物架橋剤と共架橋剤の作用によって硬化された高分子成形体およびその製造方法に関する。なお、本発明において、高分子とは架橋性エラストマー及び架橋性熱可塑性樹脂の両者を示す。
【背景技術】
【0002】
架橋性高分子は、過酸化物架橋剤と共架橋剤の作用により硬化されて高分子成形体に成形される。上記の硬化は、架橋性高分子に過酸化物架橋剤と共架橋剤を配合し、所望形状の金型に所定量充填し、加熱プロセスにより一次架橋を施した後、オーブン内で二次架橋を施すことによって行われる。
【0003】
高分子成形体の機械的特性は重要であるが、架橋プロセスの作用を最大限に発現させることは必ずしも容易ではなく、熱よる機械物性の劣化が十分に抑えられた高分子成形体の製造は困難である。そして、斯かる機械物性の劣化は、例えば、太陽電池、半導体装置などの分野で使用される封止材としての用途においては重要な問題である。
【0004】
機械物性の1つである圧縮歪みが改善されたフルオロポリマーが提案されている(特許文献1)。この提案では、特殊な組成のフルオロエラストマー組成物の使用により圧縮歪みが改善されており、過酸化物架橋剤としては通常のものが例示され、共架橋剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリ(メチルアリル)イソシアヌレート、トリス(ジアリルアミン)−s−トリアジン等が例示されている。因に、具体的に使用されている共架橋剤はトリアリルイソシアヌレート(以下TAICと称す)である。
【0005】
TAICは、古くより、有用な共架橋剤として知られている。TAICを使用した高分子成形体の最も大きな特徴は耐薬品性と圧縮永久歪が優れている点である。
【0006】
しかしながら、汎用されている架橋性エラストマー及び架橋性熱可塑性樹脂に過酸化物架橋剤とTAICを作用させて得られる高分子成形体は耐熱劣化性が十分とは言えず、未だ、熱による機械物性の劣化が十分に抑えられた高分子成形体は提案されていない現状にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2005−533162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、架橋性高分子を架橋させて成る高分子成形体であって熱による機械物性の劣化が十分に抑えられた高分子成形体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の第1の要旨は、過酸化物架橋剤と共架橋剤の作用によって硬化された高分子成形体であり、以下に記載する条件下の熱劣化試験の前後におけるASTM D 638に準拠して測定した引張り強度(MPa)の変化率(試験後引張り強度と試験前引張り強度の差と試験前引張り強度の比率)が−55%〜0%であることを特徴とする高分子成形体に存する。
[熱劣化試験の条件]
JIS K6251に規定されたダンベル状3号形に打ち抜かれた試験片を使用し、ギヤオーブン内で250℃70時間処理する。
【0010】
そして、本発明の第2の要旨は、過酸化物架橋剤と以下の一般式(I)で表されるメラミン誘導体またはそのプレポリマーから成る共架橋剤の存在下に架橋性の高分子を硬化する請求項1に記載の高分子成形体の製造方法であって、一次架橋の後、160〜290℃、3〜15時間の条件で二次架橋を行うことを特徴とする請求項1に記載の高分子成形体の製造方法に存する。
【0011】
【化1】

(式(I)中、X、Y、Zのうちの少なくとも2つは、各々独立に、ジアリルアミノ基、モノアリルアミノ基またはアリル−メチルアミノ基を示し、残りは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、架橋性高分子を架橋させて成る高分子成形体であって熱による機械物性の劣化が十分に抑えられた高分子成形体およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
先ず、説明の便宜上、本発明に係る高分子成形体の製造方法について説明する。
【0015】
本発明で使用する架橋性の高分子は、架橋性エラストマー及び架橋性熱可塑性樹脂である。
【0016】
架橋性エラストマーとは、ラジカル発生により架橋可能な活性点を有するエラストマーをいう。架橋性エラストマーの種類は、特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ヒドリンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、これらの2種以上から成るブレンドゴムでもよい。好ましくはフッ素ゴムである。フッ素ゴムの種類は、特に限定されず、KFM系、FFKM系、FEPM系、TFE系などが挙げられる。
【0017】
架橋性熱可塑性樹脂とは、ラジカル発生により架橋可能な活性点を有する熱可塑性樹脂をいう。架橋性熱可塑性樹脂の種類は、特に限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、これらの2種以上のブレンド樹脂でもよい。好ましくは、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂であり、更に好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリブチレンテレフタレートである。
【0018】
本発明で使用する有機過酸化物は、加硫条件でパーオキシラジカルを発生する有機過酸化物であれば特に限定されない。例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゼン等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、上記の有機過酸化物と共に、共架橋剤として、以下の一般式(I)で表されるメラミン誘導体またはそのプレポリマーを使用することが重要である。
【0020】
【化2】

(式(I)中、X、Y、Zのうちの少なくとも2つは、各々独立に、ジアリルアミノ基、モノアリルアミノ基またはアリル−メチルアミノ基を示し、残りは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
【0021】
上記の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基および芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は分岐構造を有していてもよく。また、これらは置換基を有していてもよい。炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アルコキシカルボニル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。なお、式(I)中のX、Y、Zは、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
一般式(I)で表されるメラミン誘導体の具体例としては、トリス(ジアリルアミノ)−S−トリアジン、トリス(アリルアミノ)−s−トリアジン、トリス(アリル−メチルアミノ)−S−トリアジン、4,6−ビス(ジアリルアミノ)−2−アリルアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(ジアリルアミノ)−2−(アリル−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリルアミノ)−2−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリルアミノ)2−(アリル−メチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリル−メチルアミノ)−2−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリル−メチルアミノ)2−アリルアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(ジアリルアミノ)−2−フェニル−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(ジアリルアミノ)−2−シクロヘキシル−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(ジアリルアミノ)−2−メトキシ−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリルアミノ)−2−フェニル−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリルアミノ)−2−シクロヘキシル−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリルアミノ)−2−メトキシ−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリル−メチルアミノ)−2−フェニル−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリル−メチルアミノ)−2−シクロヘキシル−1,3,5−トリアジン、4,6−ビス(アリル−メチルアミノ)−2−メトキシ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0023】
一般式(I)で表されるメラミン誘導体およびそのプレポリマーは、既に公知であり、前者の単量体は、例えば、塩基の存在下に塩化シアヌルにジアリルアミン、モノアリルアミン等と反応させる方法で容易に得ることが出来る。塩基としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物などが挙げられる。塩基としては、トリエチルアミン等の3級アミンや反応成分であるアミンを塩基として使用する場合もある。反応溶媒としては、テトセヒドロフラン(THF),ジオキサン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が使用される。反応温度は、反応成分の種類などによって異なるが、一般的には約20〜200℃である。上記のメラミン誘導体のプレポリマーは、有機過酸化物などを開始剤として単量体をラジカル重合させて得ることが出来、その分数平均分子量は、通常1000〜20000、好ましくは2000〜7000である。
【0024】
本発明においては、前記の共架橋剤と共に他の共架橋剤を併用してもよい。他の共架橋剤は、特に制限されないが、以下の一般式(II)で表されるイソシアヌレート誘導体が好ましい。
【0025】
【化3】

(式(II)中、A、B、Cのうちの少なくとも2つは、各々独立に、置換されていてもよいアリル基を示し、残りは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
【0026】
上記の炭化水素基は前記一般式(I)で説明したものと同義である。なお、式(II)中のA、B、Cは、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
一般式(II)で表されるイソシアヌレート誘導体は、既に公知であり、その具体例としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ジアリルメタリルイソシアヌレート、ジアリルベンジルイソシアヌレート、ジアリル−4−トリフルオロメチルベンジルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0028】
本発明においては、例えば、重合禁止剤、充填剤、顔料、安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、老化防止剤、カップリング剤などの公知の添加剤を使用することが出来る。
【0029】
例えば、老化防止剤としては、ジ−t−ブチル−P−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキシ[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2′メチレンビス(2−メチル−6−t−ブチルフェニル)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペラジル)セバケート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペラジル)セバケート等が挙げられる。
【0030】
また、カップリング剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、前記の過酸化物架橋剤と共架橋剤の存在下に架橋性の高分子を硬化して高分子成形体を得る。
【0032】
過酸化物架橋剤の配合量は、架橋性の高分子の種類によっても異なるが、架橋性の高分子100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。共架橋剤の配合量は、架橋性の高分子の種類によっても異なるが、架橋性の高分子100重量部に対し、通常0.5〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。共架橋剤として、一般式(I)で表されるメラミン誘導体またはそのプレポリマーと共に一般式(II)で表されるイソシアヌレート誘導体を併用する場合、イソシアヌレート誘導体の割合は、全共架橋剤に対する割合として、通常50重量%以下である。また、前記の添加剤の割合は、架橋性の高分子100重量部に対し、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。これらの成分は、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロール等の通常の混練機によって混合され、硬化(架橋)処理の原料粉とされる。
【0033】
上記の硬化は、所望形状の金型に所定量の原料粉を充填し、加熱プロセスにより一次架橋を施した後、オーブン内で二次架橋を施すことによって行われる。成型機の金型の形状は、例えば、シート状、棒状、リング状、各種複雑なブロック形状など、得られる高分子成形体の用途に応じて任意に選択することが出来る。
【0034】
一次架橋は、例えば、射出成型機、加圧成型機などを使用し、通常、150℃〜200℃、約2〜30分加熱することにより行われる。
【0035】
二次架橋は、160℃〜290℃、3時間〜15時間の条件で行うことが重要である。本発明においては、共架橋剤として一般式(I)で表されるメラミン誘導体またはそのプレポリマーを使用すると共に上記の二次架橋の条件を採用したことにより、過酸化物架橋剤と共架橋剤の作用を最大限に発現させることが出来、熱による機械物性の劣化が十分に抑えられた高分子成形体を得ることが出来る。成形体の形状は、例えば、シート状、棒状、リング状、各種複雑なブロック形状など、その用途に応じて任意の形状とすることが出来る。
【0036】
次に、本発明の高分子成形体について説明する。
【0037】
本発明の高分子成形体は、例えば、前述の製造方法で得ることが出来、その最大の特徴は、所定条件下の熱劣化試験の前後におけるASTM D 638に準拠して測定した引張り強度(MPa)の変化率(試験後引張り強度と試験前引張り強度の差と試験前引張り強度の比率)が−55%〜0%である点にある。
【0038】
上記の熱劣化試験の条件は、「JIS K6251に規定されたダンベル状3号形に打ち抜かれた試験片を使用し、ギヤオーブン内で250℃70時間処理する」というものである。
【0039】
なお、上記の「ギヤオーブン内で250℃70時間」の条件は、JIS K6257において規定された加硫ゴムに関する「促進老化試験」の条件に対応する。
【0040】
ギヤオーブンとしては、例えば、ゴム、プラスチック等の高分子材料の促進熱老化試験機として市販されている(株)東洋精機製作所製の「ギヤ熱老化試験機」(ACR−60A型)を好適に使用することが出来る。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例より更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した評価方法は次の通りである。
【0042】
(1)引張り強度(MPa)、100%引張り応力(MPa)、伸び(%)の各物性は、ASTM D 638に準拠して行った。硬さ(ショアA)はJIS K 6253に準拠して行った。
【0043】
(2)熱劣化試験は、JIS K6251に規定されたダンベル状3号形に打ち抜かれた試験片を使用し、ギヤオーブン内で250℃70時間処理することによって行った。ギヤオーブンは(株)東洋精機製作所製の「ギヤ熱老化試験機」(ACR−60A型)を使用した。
【0044】
合成例1[トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジンの合成]
1,4−ジオキサン140gに炭酸ナトリウム33.9g(0.32mol)と塩化シアヌール20.0g(0.10mol)を添加して溶解した後、ジアリルアミン51.1g(0.52mol)を徐々に添加し、更に、苛性ソーダ15.2g(0.35mol)を添加した。反応熱により反応液の温度は約90℃となりその温度で5時間反応させた。その後、冷却し、反応混合物を濾過して副生した塩化ナトリウムを除去し、この濾液を減圧蒸留し溶媒を回収した。得られた残渣を酢酸エチルで希釈してから5重量%塩酸水溶液で抽出し、更に水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥して濾過した。得られた濾液中の酢酸エチルを減圧蒸留で回収し、更に、残渣を蒸留(留出温度155℃、真空度0.4Torr)し、35.2gの液体として目的物を得た(LC純度99%、収率93%)。
【0045】
上記の「LC純度」は、島津製作所製の「LC−10ADVP」に「INERTSIL
ODS−3」カラム(25cm)を装填し、アセトニトリル溶媒と水混合溶媒を使用してクロマト測定を行い、グラフィーの面積百分率として求めた。
【0046】
合成例2[トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジンのプレポリマーの合成]
上記と同様にしてトリス(ジアリルアミン)−S−トリアジンを合成し、これを単量体として使用し、次の要領でそのプレポリマーを合成した。
キシレン78g中、ジクミルパーオキサイド2.11g(0.001mol)の存在下、単量体20.0g(0.05mol)を140℃で6時間加熱処理した。そして、得られた反応液を冷却し、メタノール100g中に添加した後に濾過し、得られた残渣を乾燥して粉体状のプレポリマー7.6gを得た。収率は38%であり、GPC分析で求めた数平均分子量(Mn)3,000であった。
【0047】
上記の「GPC分析」は、カラムとして、東ソー(株)製の「SUPER HM−N」(15cm)2本、「SUPER HZ−1000」(15cm)1本を使用し、キャリアにテラヒドロフランを使用して行った。
【0048】
実施例1〜4及び比較例1:
表1に示す配合組成でオープンロールにてフッ素ゴムへ混練りした。得られたエラストマー組成物を原料とし、表1に示す条件でプレス架橋(一次架橋)を行い、次いで表2に示す条件で二次架橋を行なった。そして、各架橋物の機械的特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0049】
【表1】

(1)ダイキン工業(株)製「ダイエル G−902」
(2)Carbons Inc.製「サーマックスMT N990」
(3)2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製)
(4)合成例1で得たトリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン
(5)合成例2で得たトリス(ジアリルアミン)−S−トリアジンのプレポリマー
(6)トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製)
【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物架橋剤と共架橋剤の作用によって硬化された高分子成形体であり、以下に記載する条件下の熱劣化試験の前後におけるASTM D 638に準拠して測定した引張り強度(MPa)の変化率(試験後引張り強度と試験前引張り強度の差と試験前引張り強度の比率)が−55%〜0%であることを特徴とする高分子成形体。
[熱劣化試験の条件]
JIS K6251に規定されたダンベル状3号形に打ち抜かれた試験片を使用し、ギヤオーブン内で250℃70時間処理する。
【請求項2】
共架橋剤が以下の一般式(I)で表されるメラミン誘導体またはそのプレポリマーである請求項1に記載の高分子成形体。
【化1】

(式(I)中、X、Y、Zのうちの少なくとも2つは、各々独立に、ジアリルアミノ基、モノアリルアミノ基またはアリル−メチルアミノ基を示し、残りは水素原子または置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
【請求項3】
高分子が架橋性エラストマーである請求項1又は2に記載の高分子成形体。
【請求項4】
架橋性エラストマーがフッ素ゴムである請求項3に記載の高分子成形体。
【請求項5】
過酸化物架橋剤と前記一般式(I)で表されるメラミン誘導体から成る共架橋剤の存在下に架橋性の高分子を硬化する請求項1に記載の高分子成形体の製造方法であって、一次架橋の後、160〜290℃、3〜15時間の条件で二次架橋を行うことを特徴とする請求項1に記載の高分子成形体の製造方法。
【請求項6】
高分子が架橋性エラストマーである請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
架橋性エラストマーがフッ素ゴムである請求項6に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−162634(P2011−162634A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25807(P2010−25807)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000230652)日本化成株式会社 (85)
【Fターム(参考)】