説明

高分子組成物及びそれを用いた高分子発光素子

【課題】発光素子の作製に用いた場合、発光効率、寿命、色純度のバランスが良好な発光素子が得られる高分子組成物、並びに高分子発光素子、面状光源及び表示装置を提供する。
【解決手段】電荷輸送性低分子化合物と、電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物とを含有する高分子組成物、該高分子組成物を含有してなる発光層を有する高分子発光素子、該高分子発光素子を用いてなる面状光源、並びに該高分子発光素子を用いてなる表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子組成物及びそれを用いた高分子発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子量の発光材料は、通常、溶媒に可溶であるため、塗布法により発光素子における有機層を形成でき、素子の大面積化等の要求に合致している。このため、近年種々の高分子発光材料となり得る高分子化合物、及びそれを用いた高分子発光素子が提案されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】Advanced Materials Vol.12 1737-1750 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記高分子化合物等の従来の高分子化合物には、発光素子の作製に用いた場合、得られる発光素子の発光効率(即ち、電流当たりの発光輝度)、寿命、色純度のバランスが十分ではないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、発光素子の作製に用いた場合、発光効率、寿命、色純度のバランスが良好な発光素子が得られる高分子組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、本発明をなすに至った。
本発明は第一に、電荷輸送性低分子化合物と、電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物とを含有する高分子組成物を提供する。
本発明は第二に、前記高分子組成物を含有してなる発光層を有する高分子発光素子を提供する。
本発明は第三に、前記高分子発光素子を用いてなる面状光源及び表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の高分子組成物は、エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子の作製に用いた場合、発光効率、寿命、色純度のバランスが良好な発光素子が得られるものである。従って、本発明の高分子組成物、高分子発光素子(例えば、本発明の高分子組成物を用いてなる高分子発光素子等)は、曲面状光源、平面状光源等の面状光源(例えば、照明等);セグメント表示装置(例えば、セグメントタイプの表示素子等)、ドットマトリックス表示装置(例えば、ドットマトリックスのフラットディスプレイ等)、液晶表示装置(例えば、液晶表示装置、液晶ディスプレイのバックライト等)等の表示装置等に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<高分子組成物>
本発明の高分子組成物は、電荷輸送性低分子化合物と、電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物とを含有するものである。これらの電荷輸送性低分子化合物、電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物は、各々独立に、正孔輸送性(即ち、正孔の電荷輸送性)、電子輸送性(即ち、電子の電荷輸送性)、両電荷輸送性(即ち、正孔及び電子の電荷輸送性)のいずれであってもよい。また、本発明の高分子組成物において、電荷輸送性低分子化合物、及び電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物は、それぞれ、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0009】
−電荷輸送性低分子化合物−
正孔輸送性の電荷輸送性低分子化合物としては、例えば、「有機ELディスプレイ」(時任他著、オーム社刊、101頁〜104頁、平成17年9月1日 第1版第3刷発行)に示されるような芳香族アミンが挙げられ、具体的には、下記式で表されるような化合物が挙げられる。
【0010】
【化1】

【0011】
電子輸送性の電荷輸送性低分子化合物としては、例えば、「有機ELディスプレイ」(時任他著、オーム社刊、104頁〜106頁、平成17年9月1日 第1版第3刷発行)に示されるような化合物が挙げられ、具体的には、下記式で表されるような化合物が挙げられる。
【0012】
【化2】

【0013】
両電荷輸送性の電荷輸送性低分子化合物としては、例えば、下記一般式(1):
【0014】
【化3】


(1)
〔式中、Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい2価の複素環基、若しくは置換基を有していてもよいトリフェニルアミン−4,4’−ジイル基、又はこれらの基の2つ以上が結合した2価の基を表す。R1a〜R8a及びR1b〜R8bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリール基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルコキシ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリールオキシ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキルチオ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリールチオ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルキニル基、−NQ12、−C≡N、又は−NO2を表す。ここで、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数6〜26のアリール基、又は置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R1a〜R8a及びR1b〜R8bのうち、隣接する炭素原子に結合する任意の2つは一緒になって環を形成していてもよい。〕
で表される化合物が挙げられる。なお、「環を構成する炭素数」には、置換基の炭素数は含まないものとし、以下、同じである。
【0015】
前記式(1)中、Arで表されるアリーレン基の環を構成する炭素数は、通常、6〜26程度である。このアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレンジイル基、ターフェニレンジイル基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ペンタレンジイル基、インデンジイル基、ヘプタレンジイル基、インダセンジイル基、トリフェニレンジイル基、ビナフチルジイル基、フェニルナフチレンジイル基、スチルベンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。Arで表されるアリーレン基は、置換基を有していてもよく、その場合には、該アリーレン基の置換基を含めた炭素数は、通常、6〜60程度である。
【0016】
Arで表される2価の複素環基の環を構成する炭素数は、通常、3〜20程度である。ここで、2価の複素環基とは、複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいう。この2価の複素環基の具体例としては、ピリジン−ジイル基、ジアザフェニレン基、キノリンジイル基、キノキサリンジイル基、アクリジンジイル基、ビピリジルジイル基、フェナントロリンジイル基等が挙げられる。Arで表される2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、その場合には、該2価の複素環基の置換基を含めた炭素数は、通常、3〜60程度である。
【0017】
Arで表される基は、置換されていてもよいフェニレン基、置換されていてもよいビフェニレンジイル基、又は下記構造式(2):
【0018】
【化4】

(2)
〔式中、a環及びb環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれa環又はb環上に存在し、Xはa環上の2個の原子とb環上の2個の原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表す。〕
で表される基であることが、発光効率、寿命の観点から好ましい。
【0019】
前記式(2)中、a環及びb環で表される芳香族炭化水素環は、それぞれ独立に、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0020】
前記式(2)中、Xとしては、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子、又はこれらの原子を1つ以上含む基が挙げられ、具体的には、−C(Q3)(Q4)−、−C(=O)−、−OC(Q5)(Q6)−、−O−、−S−、−SO2−、−N(Q7)−等が挙げられる。Q3、Q4、Q5、Q6及びQ7はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数6〜26のアリール基、又は置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。
【0021】
前記式(2)で表される基としては、例えば、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、置換基を有していてもよいジベンゾフランジイル基、置換基を有していてもよいジベンゾチオフェンジイル基、置換基を有していてもよいカルバゾールジイル基、置換基を有していてもよいジベンゾピランジイル基等が挙げられる。
【0022】
・式(1)中のR1a〜R8a及びR1b〜R8bで表される原子、基の説明
1a〜R8a及びR1b〜R8bで表される原子、基の中でも、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリール基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、−NQ12が好ましい。
【0023】
1a〜R8a及びR1b〜R8bで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0024】
1a〜R8a及びR1b〜R8bで表される炭素数1〜12のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。このアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。このアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0025】
1a〜R8a及びR1b〜R8bで表される、環を構成する炭素数が6〜26のアリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いてなる残基であり、縮合環をもつもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。このアリール基の具体例としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(「C1〜C12アルコキシ」は、アルコキシ部分の炭素数が1〜12であることを意味する。以下、同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基(「C1〜C12アルキル」は、アルキル部分の炭素数が1〜12であることを意味する。以下、同様である。)、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。このアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0026】
1a〜R8a及びR1b〜R8bで表される、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリール基の具体例としては、ピリジル基、フラニル基、チアゾリル基、チエニル基、カルバゾリル基等が挙げられる。このヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0027】
1a〜R8a及びR1b〜R8bで表される炭素数1〜12のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。このアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基等が挙げられる。このアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。
【0028】
1a〜R8a及びR1b〜R8bで表される−NQ12において、Q1及びQ2で表されるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、R1a〜R8a及びR1b〜R8bで表される基として説明し例示したものと同じである。
【0029】
1a〜R8a及びR1b〜R8bのうち、隣接する炭素原子に結合する任意の2つは一緒になって環を形成していてもよい。
【0030】
前記式(1)で表される化合物の具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0031】
【化5】

【0032】
両電荷輸送性の電荷輸送性低分子化合物としては、安定性、合成の容易さ等の観点から、下記式:
【0033】
【化6】


で表される化合物(即ち、4,4’−ビス(9−カルバゾイル)−ビフェニル(CBP))が好ましい。
【0034】
−電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物−
前記電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物は、例えば、電荷輸送性基を側鎖として共役系高分子主鎖に結合した化合物である。そして、該共役系高分子化合物の中でも、発光素子の発光体として作用する観点から、発光性共役系高分子化合物が好ましい。
【0035】
前記電荷輸送性基としては、例えば、上述の電荷輸送性低分子化合物の残基(即ち、該電荷輸送性低分子化合物中の水素原子の一部を結合手に替えてなる基)、上述の電荷輸送性低分子化合物の残基が連結基(例えば、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12の2価の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数が6〜26の2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数が3〜20の芳香族複素環化合物等から水素原子2つを除いた2価の基;−O−、−S−、−N(Q8)−、−C(=O)−等のヘテロ原子又はヘテロ原子を含む原子団からなる2価の基;及びそれらの組み合わされた2価の基等)を有する基、下記式で表される基、下記式で表される基が前記連結基を有する基等が挙げられる。これらの電荷輸送性基は、共役系高分子化合物中に、一種のみ存在していても二種以上存在していてもよい。
【0036】
【化7】

【0037】
【化8】


(式中、R、R1c〜R4c、R1d〜R7d及びR1e〜R8eはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリール基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリールオキシ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキルチオ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリールチオ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキニル基、−NQ12、−C≡N、又は−NO2を表す。ここで、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数6〜26のアリール基、又は置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R、R1c〜R4c、R1d〜R7d及びR1e〜R8eのうち、隣接する炭素原子に結合する任意の2つは一緒になって環を形成していてもよい。)
【0038】
上記式中、R、R1c〜R4c、R1d〜R7d及びR1e〜R8eで表される原子、基は、前記R1a〜R8a及びR1b〜R8bで表される原子、基として説明し例示したものと同じである。
【0039】
前記共役系高分子化合物は、共役系高分子を主鎖内に含む高分子化合物であり、下記式(3):
【0040】
【化9】

(3)
〔式中、A環及びB環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれA環又はB環上に存在し、YはA環上の2個の原子とB環上の2個の原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表す。〕
で表される構成単位を主鎖内に含むことが好ましい。
【0041】
なお、本明細書において、「構成単位」とは、高分子(例えば、電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物等)、オリゴマー分子、ブロック、又は分子鎖の基本構造の一部分を構成する原子又は原子団を意味し、一般的には、「繰り返し単位」と呼ばれることもある。
【0042】
前記式(3)中、A環及びB環で表される芳香族炭化水素環は、それぞれ独立に、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等である。これらの環は、置換基を有していてもよい。
【0043】
前記式(3)中、Yとしては、例えば、炭素原子、酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子、又はこれらの原子を1つ以上含む基が挙げられ、具体的には、−C(Q9)(Q10)−、−C(=O)−、−OC(Q11)(Q12)−、−O−、−S−、−SO2−、−N(Q13)−等が挙げられる。Q9、Q10、Q11、Q12及びQ13はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数6〜26のアリール基、又は置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。
【0044】
前記式(3)で表される構成単位としては、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、置換基を有していてもよいベンゾフルオレンジイル基が好ましい。
【0045】
前記電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物としては、特に限定されないが、下記式で表される分岐単位(即ち、側鎖を有する構成単位)からなるホモポリマー、下記式で表される分岐単位を含むランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、又はブロック共重合体が好ましい。該単位は、一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。なお、以下の例示を一例として説明すると、「側鎖」とは、主鎖に含まれる構成単位の環上の原子を分岐点とする、該主鎖から分岐した基を意味する。
【0046】
【化10】


(式中、Yは前記で定義したとおりであり、kは1以上の整数であり、好ましくは1〜10の整数である。)
【0047】
前記電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物としては、具体的には、例えば、上記式で表される構成単位のほか、以下の具体的な式で表される構成単位等からなるホモポリマー、以下の具体的な式で表される構成単位等を含むランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、又はブロック共重合体が挙げられる。
【0048】
【化11】


(式中、k’は2以上の整数であり、好ましくは2〜10の整数である。)
【0049】
中でも、前記電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物としては、発光効率、寿命の観点から、該側鎖が結合する分岐点が芳香環上の原子である基、即ち、該芳香環を核置換する基であるものが好ましい。
【0050】
前記共役系高分子化合物中の側鎖に位置する電荷輸送性基の合計量が、該共役系高分子化合物100重量部に対して、通常、0.1重量部以上であり、10重量部以上であることが好ましく、50重量部以上であることがより好ましく、また、通常、99重量部以下であり、合成の容易さの観点からは、95重量部以下であることが好ましく、91重量部以下であることがより好ましく、典型的には、0.1〜99重量部である。
【0051】
−電荷輸送性低分子化合物と電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物の関係−
本発明の高分子組成物において、前記電荷輸送性低分子化合物の含有量は、前記電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物100重量部に対して、通常、0.1〜10000重量部程度であり、好ましくは1〜1000重量部、より好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。
【0052】
本発明の高分子組成物は、電荷輸送性低分子化合物、電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物以外にも、溶媒、色素等を含有していてもよい。溶媒を含有してなる高分子組成物を用いると、通常、塗布法により、発光素子の発光層を形成できる。こうして作製された発光層は、通常、前記高分子組成物を含むものとなる。従って、本発明の高分子組成物は、溶媒を含有し、通常、−40〜40℃、1.0×105Paの圧力下で溶液の状態であるものが好ましい。
【0053】
前記溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、n−ブチルベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等が例示される。これらの溶媒を用いた場合、高分子組成物の種類、構成等にもよるが、通常、該溶媒に対して高分子組成物中の該溶媒以外の成分を合計で0.1重量%以上溶解させることができる。なお、これらの溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明の高分子組成物が前記溶媒を含有する場合には、該溶媒の量は、高分子組成物中の該溶媒以外の成分の合計100重量部に対して、通常、1000〜100000重量部程度である。
【0055】
<高分子発光素子>
本発明の高分子発光素子は、前記高分子組成物を含有してなる発光層を有するものであり、より具体的には、例えば、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられ前記高分子組成物を含む発光層とを有するものである。この高分子発光素子は、如何なる方法によって作製してもよいが、例えば、前述の溶液を含む高分子組成物から作製することができる。
【0056】
本発明の高分子発光素子としては、その他にも、例えば、(1)陰極と発光層との間に電子輸送層を設けた高分子発光素子、(2)陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子発光素子、(3)陰極と発光層との間に電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子発光素子等が挙げられる。
【0057】
本発明の高分子発光素子の構造としては、例えば、以下のa)〜d)が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下、同じである。)
【0058】
発光層とは、発光する機能を有する層をいう。正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層をいう。電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層をいう。なお、正孔輸送層と電子輸送層を総称して電荷輸送層という。発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上存在してもよい。
【0059】
また、電極に隣接して設けた正孔輸送層、電子輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、それぞれ、特に正孔注入層、電子注入層(以下、これら二層を総称して「電荷注入層」ということがある。)と一般に呼ばれることがある。
【0060】
さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層又は膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0061】
積層する層の種類、順番、層数、及び各層の厚さは、発光効率、素子寿命等を勘案して、適宜、調整・選択すればよい。
【0062】
発光層は、例えば、本発明の高分子組成物を用いて、溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また、該高分子組成物中に電荷輸送材料や発光材料を混合した場合でも同様な手法が適用できるので、製造上非常に有利である。
【0063】
溶液からの成膜には、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0064】
発光層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように調整すればよいが、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜600nmであり、さらに好ましくは5nm〜400nmである。
【0065】
本発明の高分子発光素子において、発光層に前記高分子組成物以外の発光材料を混合してもよい。また、このような高分子組成物以外の発光材料を含む発光層が、前記高分子発光体を含む発光層と積層されていてもよい。
【0066】
前記発光材料としては、公知のものが使用できる。低分子化合物では、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、三重項発光錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等を用いることができる。具体的には、例えば、特開昭57-51781号公報、特開昭59-194393号公報等に記載されているもの等の公知のものが使用可能である。
【0067】
三重項発光錯体としては、例えば、イリジウムを中心金属とするIr(ppy)3、Btp2Ir(acac)、白金を中心金属とするPtOEP、ユーロピウムを中心金属とするEu(TTA)3phen等が挙げられる。
【0068】
【化12】

【0069】
【化13】

【0070】
【化14】

【0071】
【化15】


三重項発光錯体として具体的には、例えば、Nature, (1998), 395, 151、Appl. Phys. Lett. (1999), 75(1), 4、Proc. SPIE-Int. Soc. Opt. Eng. (2001), 4105(Organic Light-Emitting Materials and DevicesIV), 119、J. Am. Chem. Soc., (2001), 123, 4304、Appl. Phys. Lett., (1997), 71(18), 2596、Syn. Met., (1998), 94(1), 103、Syn. Met., (1999), 99(2), 1361、Adv. Mater., (1999), 11(10), 852 、Jpn.J.Appl.Phys.,34, 1883 (1995)等に記載されている。
【0072】
本発明の高分子発光素子が正孔輸送層を有する場合、通常、該正孔輸送層には正孔輸送材料(低分子、高分子のものがある。)が用いられる。正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等が例示される。具体的には、該正孔輸送材料としては、特開昭63-70257号公報、特開昭63-175860号公報、特開平2-135359号公報、特開平2-135361号公報、特開平2-209988号公報、特開平3-37992号公報、特開平3-152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0073】
これらの中で、正孔輸送材料としては、好ましくは、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物の残基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体等の高分子の正孔輸送材料であり、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0074】
ポリビニルカルバゾール及びその誘導体は、例えば、ビニルモノマーからカチオン重合又はラジカル重合によって得られる。
【0075】
ポリシラン及びその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0076】
正孔輸送層の成膜の方法は、特に制限されないが、低分子の正孔輸送材料では、前記高分子バインダーとの混合溶液から成膜する方法が例示され、高分子の正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0077】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解させるものであれば、特に制限されない。この溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0078】
溶液からの成膜には、溶液からの、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0079】
前記高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。高分子バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0080】
正孔輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように調整すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0081】
本発明の高分子発光素子は、とりわけ芳香族アミンから誘導される構成単位を有するポリアミンの正孔輸送層を用いることで、さらに高発光効率を得ることができる。
【0082】
本発明の高分子発光素子が電子輸送層を有する場合、通常、該電子輸送層には電子輸送材料(低分子、高分子のものがある。)が用いられる。電子輸送材料としては、公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が例示される。
【0083】
該電子輸送材料としては、具体的には、特開昭63-70257号公報、特開昭63-175860号公報、特開平2-135359号公報、特開平2-135361号公報、特開平2-209988号公報、特開平3-37992号公報、特開平3-152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0084】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0085】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子の電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、及び溶液又は溶融状態からの成膜による方法が例示され、高分子電子輸送材料では溶液又は溶融状態からの成膜による方法が例示される。溶液又は溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0086】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料及び/又は高分子バインダーを溶解又は均一に分散できるものが好ましい。具体的には、前記正孔輸送層の項において、正孔輸送層の溶液からの成膜に用いる溶媒として例示したものが挙げられる。この溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0087】
溶液又は溶融状態からの成膜方法としては、前記正孔輸送層の項において、正孔輸送層の溶液からの成膜方法として例示したものが挙げられる。
【0088】
電子輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、電子輸送層の膜厚は、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0089】
溶液又は溶融状態からの成膜には、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0090】
前記高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリシロキサン等が例示される。
【0091】
電子輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように調整すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、電子輸送層の膜厚としては、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0092】
陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作製された膜(NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、陽極として、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0093】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜調整することができるが、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μm、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0094】
陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボン等からなる層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0095】
陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0096】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜調整することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μm、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0097】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機層との間に、導電性高分子からなる層、又は金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよく、陰極作製後、該高分子発光素子を保護する保護層を設けてもよい。高分子発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを設けることが好ましい。
【0098】
保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができ、該カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0099】
本発明において、電荷注入層を設けた高分子発光素子としては、例えば、陰極に隣接して電荷注入層を設けた高分子発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた高分子発光素子が挙げられる。具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
【0100】
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0101】
電荷注入層の具体例としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層等が挙げられる。
【0102】
電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-5S/cm以上103S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10-5S/cm以上102S/cm以下がより好ましく、10-5S/cm以上101S/cm以下がさらに好ましい。通常、該導電性高分子の電気伝導度を10-5S/cm以上103S/cm以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0103】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオン等が挙げられる。カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0104】
電荷注入層の膜厚は、通常、1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0105】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が例示される。
【0106】
膜厚2nm以下の絶縁層は、電荷注入を容易にする機能を有するものである。絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。
【0107】
膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子発光素子としては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子発光素子、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子発光素子が挙げられる。具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
【0108】
q)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
s)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
t)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
v)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
w)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
y)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
z)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
ab)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
【0109】
本発明の高分子発光素子は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよい。基板の材料としては、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極(即ち、基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。通常、本発明の高分子発光素子が有する陽極及び陰極の少なくとも一方が透明又は半透明である。陽極側が透明又は半透明であることが好ましい。
【0110】
本発明の高分子組成物、高分子発光素子は、例えば、曲面状光源、平面状光源等の面状光源(例えば、照明等);セグメント表示装置(例えば、セグメントタイプの表示素子等)、ドットマトリックス表示装置(例えば、ドットマトリックスのフラットディスプレイ等)、液晶表示装置(例えば、液晶表示装置、液晶ディスプレイのバックライト等)等の表示装置等に用いることができる。
【0111】
本発明の高分子発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極又は陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等の表示装置として用いることができる。
【0112】
面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、又は面状の照明用光源として好適に用いることができる。フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0113】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例において、「dppf」とは、1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)フェロセンを意味する。
【0114】
−分子量の測定方法−
実施例において、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びピークトップ分子量(Mp)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算のものを求めた。具体的には、GPC(東ソー製、商品名:HLC-8220GPC)により、TSKgel SuperHM-H(東ソー製)3本を直列に繋げたカラムを用いて、テトラヒドロフランを展開溶媒として0.5mL/minの流速で流し、40℃で測定した。検出器には、示差屈折率検出器を用いた。
【0115】
<合成例1>(化合物Eの合成)
−化合物Aの合成−
不活性雰囲気下、300ml三つ口フラスコに、1−ナフタレンボロン酸5.00g(29mmol)、2−ブロモベンズアルデヒド6.46g(35mmol)、炭酸カリウム10.0g(73mmol)、トルエン36ml、及びイオン交換水36mlを入れ、室温で撹拌しつつ20分間アルゴンバブリングした。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム16.8mg(0.15mmol)を入れ、さらに室温で撹拌しつつ10分間アルゴンバブリングした。100℃に昇温し、25時間反応させた。室温まで冷却後、トルエンで有機層を抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を留去した。こうして得られた化合物を、トルエン:シクロヘキサン=1:2(容積比)の混合溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムで精製することにより、下記式:
【0116】
【化16】


で表される化合物A5.18g(収率86%)を白色結晶として得た。
【0117】
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ7.39〜7.62(m、5H)、7.70(m、2H)、7.94(d、2H)、8.12(dd、2H)、9.63(s、1H)
MS(APCI(+)):(M+H)+ 233
【0118】
−化合物Bの合成−
不活性雰囲気下で300mlの三つ口フラスコに、前記と同様に合成した化合物A 8.00g(34.4mmol)と脱水THF46mlを入れ、−78℃まで冷却した。次いで、n−オクチルマグネシウムブロミド(1.0mol/l THF溶液)52mlを30分かけて滴下した。滴下終了後、0℃まで昇温し、1時間撹拌した後、室温まで昇温して45分間撹拌した。氷浴して1N塩酸20mlを加えて反応を終了させ、酢酸エチルで有機層を抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、トルエン:ヘキサン=10:1(容積比)の混合溶媒を展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することにより、下記式:
【0119】
【化17】


で表される化合物B7.64g(収率64%)を淡黄色のオイルとして得た。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)測定では2本のピークが見られたが、LC/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析法)測定では同一の質量数であったので、異性体の混合物であると推測される。
【0120】
−化合物Cの合成−
不活性雰囲気下、500ml三つ口フラスコに、化合物B(異性体の混合物)5.00g(14.4mmol)と脱水ジクロロメタン74mlを入れ、室温で撹拌、溶解させた。次いで、三フッ化ホウ素のエーテラート錯体を室温で1時間かけて滴下し、滴下終了後、室温で4時間撹拌した。撹拌しながらエタノール125mlをゆっくりと加え、発熱が収まったらクロロホルムで有機層を抽出し、得られた有機層を2回水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去後、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することにより、下記式:
【0121】
【化18】


で表される化合物C3.22g(収率68%)を無色のオイルとして得た。
【0122】
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.90(t、3H)、1.03〜1.26(m、14H)、2.13(m、2H)、4.05(t、1H)、7.35(dd、1H)、7.46〜7.50(m、2H)、7.59〜7.65(m、3H)、7.82(d、1H)、7.94(d、1H)、8.35(d、1H)、8.75(d、1H)
MS(APCI(+)):(M+H)+ 329
【0123】
−化合物Dの合成−
不活性雰囲気下200ml三つ口フラスコに、イオン交換水20mlを入れ、撹拌しながら水酸化ナトリウム18.9g(0.47mol)を少量ずつ加え、溶解させた。得られた水溶液を室温まで冷却した後、トルエン20ml、前記と同様に合成した化合物C5.17g(15.7mmol)、及び臭化トリブチルアンモニウム1.52g(4.72mmol)を加え、50℃に昇温した。臭化n−オクチルを滴下し、滴下終了後、50℃で9時間反応させた。反応終了後、トルエンで有機層を抽出し、得られた有機層を2回水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することにより、下記式:
【0124】
【化19】


で表される化合物D5.13g(収率74%)を黄色のオイルとして得た。
【0125】
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.52(m、2H)、0.79(t、6H)、1.00〜1.20(m、22H)、2.05(t、4H)、7.34(d、1H)、7.40〜7.53(m、2H)、7.63(m、3H)、7.83(d、1H)、7.94(d、1H)、8.31(d、1H)、8.75(d、1H)
MS(APCI(+)):(M+H)+ 441
【0126】
−化合物Eの合成−
空気雰囲気下、50mlの三つ口フラスコに、化合物D4.00g(9.08mmol)と、酢酸:ジクロロメタン=1:1(容積比)の混合溶媒57mlを入れ、室温で撹拌し、溶解させた。次いで、三臭化ベンジルトリメチルアンモニウム7.79g(20.0mmol)を加えて撹拌しつつ、塩化亜鉛を三臭化ベンジルトリメチルアンモニウムが完溶するまで加えた。室温で20時間撹拌した後、5重量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10mlを加えて反応を停止し、クロロホルムで有機層を抽出し、得られた有機層を炭酸カリウム水溶液で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ヘキサンを展開溶媒とするフラッシュカラムクロマトグラフィーで2回精製した後、エタノール:ヘキサン=1:1(容積比)の混合溶媒で再結晶し、次いで、エタノール:ヘキサン=10:1(容積比)の混合溶媒で再結晶することにより、下記式:
【0127】
【化20】


で表される化合物E4.13g(収率76%)を白色結晶として得た。
【0128】
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ0.60(m、4H)、0.91(t、6H)、1.01〜1.38(m、20H)、2.09(t、4H)、7.62〜7.75(m、4H)、7.89(s、1H)、8.20(d、1H)、8.47(d、1H)、8.72(d、1H)
MS(APPI(+)):M+ 596
【0129】
<合成例2>(化合物Fの合成)
100mLの4口丸底フラスコをアルゴンガス置換後、化合物E(3.2g、5.3mmol)、ビスピナコーラートジボロン(3.8g、14.8mmol)、PdCl2(dppf)(0.39g、0.45mmol)、ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン(0.27g、0.45mmol)、及び酢酸カリウム(3.1g、32mmol)を仕込み、脱水ジオキサン45mlを加えた。アルゴン雰囲気下、100℃まで昇温し、36時間反応させた。放冷後、セライト2gをプレコートして濾過を行い、濃縮したところ黒色液体を得た。この黒色液体をヘキサン50gと混合し、こうして得られた混合溶液を、ラジオライト5gをプレコートして濾過を行い、活性炭で着色成分を除去することにより、37gの淡黄色液体を得た。この淡黄色液体に、酢酸エチル6g、脱水メタノール12g、及びヘキサン2gを加え、ドライアイス−メタノール浴に浸して晶析し、ろ過、乾燥することにより、下記式:
【0130】
【化21】


で表される化合物F 2.1gの無色結晶を得た。
【0131】
<合成例3>(重合体1の合成)
アルゴン雰囲気下、ジムロートを接続した1L三つ口フラスコに、前記と同様に合成した化合物E17.0g(28.4mmol)、前記と同様に合成した化合物F19.4g(28.0mmol)、及びトルエン311mLを加えた後、窒素ガスバブリングにより容器内のガスを窒素置換した。45℃に昇温した後に、酢酸パラジウム19mg、及びトリ(o−メトキシフェニル)ホスフィン118mgを加え、45℃で5分間攪拌した後に、33重量%のビス(テトラエチルアンモニウム)カーボネート水溶液25.9mLを加え、114℃で24時間攪拌した。次いで、4−ブロモトルエン5.27g(30.8mmol)を加え、114℃で1時間攪拌し、さらに4−t−ブチルフェニルボロン酸5.48g(30.8mmol)を加え、114℃で1時間攪拌した。65℃まで冷却し、5重量%ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液で2回、2規定塩酸で2回、10重量%酢酸ナトリウム水溶液で2回、水で6回洗浄した後、得られた有機層をセライトろ過し、減圧濃縮し、メタノール中へ滴下することによりポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥して粉末を得た後、再度トルエンに溶解しメタノール中に滴下して沈殿させる操作を2回繰り返した。こうして得られた沈殿を減圧乾燥することにより、下記式:
【0132】
【化22】


で表される構成単位を有する重合体(仕込み原料からの推測)(以下、「重合体1」という。)を22.4g(収率90.3%)得た。また、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは7.9×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.7×105であった。
【0133】
<合成例4>(重合体2の合成)
アルゴンガス雰囲気下、100mLフラスコに、重合体1(1.0g、ベンゾフルオレン構成単位換算で2.28mmol)、クロロホルム50mLを仕込み、室温にて攪拌して溶解させた後に、トリフルオロ酢酸3.5mL、臭素91μL(1.78mmol、ベンゾフルオレン単位に対して78モル%)を順次仕込み、遮光下で6時間攪拌した。反応マスをメタノール250mLに攪拌下で滴下することにより沈殿を得た。得られた沈殿をろ過、メタノールで洗浄、減圧乾燥することで、重合体1.09gを得た。この重合体を、アルゴンガス雰囲気下、100mLフラスコに仕込み、そこへクロロホルム50mLを仕込み、室温にて攪拌して溶解させた後に、トリフルオロ酢酸3.4mL、臭素41μL(0.80mmol、ベンゾフルオレン単位に対して36モル%)を順次仕込み、遮光下で17時間攪拌した。反応マスをメタノール250mLに攪拌下で滴下することにより沈殿を得た。得られた沈殿をろ過、メタノールで洗浄、減圧乾燥することで、下記式:
【0134】
【化23】


で表される構成単位を有する重合体(仕込み原料からの推測)(以下、「重合体2」という。)1.08gを得た。重合体2のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは7.4×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.6×105であり、ポリスチレン換算のピークトップ分子量Mpは1.3×105であり、Mw/Mnで規定される分散度は2.2であった。
【0135】
元素分析の結果、Br基を有する構成単位(式(P−2))とBr基を含有しない構成単位(式(P−1))の比率は、(P−1)/(P−2)=35/65(モル比)であり、(全ベンゾフルオレン構成単位)/Br基=61/39(モル比)となることが判明した。
元素分析測定値:C80.20%、H8.40%、N<0.3%、Br10.56%
元素分析計算値:C80.92%、H8.51%、N0%、Br10.56%((P−1)/(P−2)=35/65(モル比)での計算値)
【0136】
<合成例5>(化合物Gの合成)
窒素雰囲気下、50mlの三つ口フラスコに、下記式:
【0137】
【化24】


で表される化合物Ga1.32g(6mmol)、脱水ジメチルホルムアミド26.4gを仕込み室温で撹拌して溶解させた後0℃まで冷却した。次に1〜4℃で鉱物油に分散した水素化ナトリウム(含量60%)0.29g(7.2mmol)を35分かけて仕込み1〜2℃で2.5時間撹拌した。次に、1.5〜2.5℃で、下記式:
【0138】
【化25】


で表される化合物Gb 2.42g(4mmol)を5分割で5分かけて仕込んだ。1.5〜2℃で1時間、室温で2時間撹拌した。その後、室温で化合物Ga0.44(2mmol)g、水素化ナトリウム0.15g(3.8mmol)を追加し室温で1.5時間撹拌した。300ml三つ口フラスコに水100mlを加え、これに撹拌しながら反応液をゆっくり加えた。この液をフラスコから300ml分液ロ−トに移しクロロホルム100mlで3回抽出した。クロロホルム層を500ml分液ロ−トに移し水100mlで3回洗浄した。クロロホルム層をエバポレ−タを用い75℃で減圧濃縮し濃縮物3.95gを得た。シリカゲルクロマトグラフィ−で4回精製{展開溶媒:クロロホルム/n−ヘキサン/トリエチルアミン(1/1/0.002、容積比)}することにより無色固体として、下記式:
【0139】
【化26】


で表される化合物G1.64g(収率55.0%)を得た。
【0140】
1H−NMR(270MHz/CDCl3):
δ1.33(s、12H)、2.23〜2.26(m、2H)、3.00〜3.05(t、2H)、4.03〜4.08(t、2H)、6.91〜6.95(d、2H)、7.28〜7.35(m、4H)、7.42〜7.53(m、7H)、7.68〜7.78(m、6H)、7.89〜7.93(m、4H)、7.99〜8.11(s、1H)、8.13〜8.19(m、3H)
【0141】
<合成例6>(高分子化合物1の合成)
重合体2(500mg、ベンゾフルオレン構成単位換算で1.56mmol)、化合物G(731mg、0.98mmol)、酢酸パラジウム(II)(1.5mg)、及びトリシクロヘキシルホスフィン(3.7mg)を100mLフラスコに仕込み、アルゴンガスにより置換した後、脱水トルエン(市販品)60mLを仕込み、室温にて攪拌して溶解させた。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(1.4mol/L、2.4mL)を仕込み、110℃に昇温した後に、110℃で3時間攪拌した後、4−t−ブチル−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼン532mg、酢酸パラジウム(II)(0.4mg)、トリシクロヘキシルホスフィン(1.1mg)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(1.4mol/L、0.7mL)を仕込み、110℃で3時間攪拌した。室温に冷却した後、トルエンで希釈し、15重量%食塩水で洗浄し、得られた有機層をセライトろ過、減圧濃縮し、アセトン中へ滴下することにより沈殿を得た。得られた沈殿をろ過、アセトンで洗浄、減圧乾燥することにより、粗重合体815mgを得た。
【0142】
上記粗重合体814mgをトルエン167mLに室温にて溶解し、あらかじめトルエンを通液したシリカゲルカラム及びアルミナカラムに溶液を通液し、さらにトルエンで洗い出した後に、3重量%アンモニア水溶液、水で順次洗浄し、減圧濃縮し、15gの溶液を得た。これをアセトン中へ滴下することで、再沈した。得られた沈殿を、ろ過、アセトンで洗浄、減圧乾燥することにより、重合体(以下、「高分子化合物1」という。)794mgを得た。高分子化合物1のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.7×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.7×105であり、ポリスチレン換算のピークトップ分子量Mpは1.3×105であり、Mw/Mnで規定される分散度は2.0であった。
【0143】
元素分析の結果、構成単位(式(P−1))、Br基を有する構成単位(式(P−2))、側鎖を有する構成単位(式(P−3))の比率は、(P−1)/(P−2)/(P−3)=35/0/65(モル比)であり、ベンゾフルオレン構成単位と側鎖((P−3)の電荷輸送性基の部分)の比率は、ベンゾフルオレン構成単位/側鎖=61/39(モル比)であると推測される。
元素分析測定値:C88.92%、H7.57%、N2.05%、Br<0.1%
元素分析計算値:C89.06%、H7.55%、N2.16%、Br0%((P−1)/(P−2)/(P−3)=35/0/65(モル比)での計算値)
【0144】
【化27】

【0145】
<合成例7>〔N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−N−フェニルアミンの合成〕
・4−t−ブチル−2,6−ジメチルブロモベンゼンの合成
不活性雰囲気下で、500mlの3つ口フラスコに、酢酸225gを入れ、5−t−ブチル−m−キシレン24.3gを加えた。次いで、臭素31.2gを加えた後、15〜20℃で3時間反応させた。得られた反応液を水500mlに加え、析出した沈殿をろ過した。水250mlで2回洗浄し、下記式:
【0146】
【化28】

で表される4−t−ブチル−2,6−ジメチルブロモベンゼン 34.2gを白色の固体として得た。
【0147】
1H−NMR(300MHz/CDCl3):
δ(ppm) = 1.3〔s,9H〕、2.4〔s,6H〕、7.1〔s,2H〕
MS(FD+)M+ 241
【0148】
・N,N−ジフェニル−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−アミンの合成
不活性雰囲気下で、300mlの3つ口フラスコに、脱気した脱水トルエン100mlを入れ、ジフェニルアミン16.9g、4−t−ブチル−2,6−ジメチルブロモベンゼン25.3gを加えた。次いで、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.92g、t−ブトキシナトリウム12.0g、を加えた後、トリ(t−ブチル)ホスフィン1.01gを加えた。その後、100℃で7時間反応させた。得られた反応液を飽和食塩水と混合し、トルエン100mlで抽出した。トルエン層を希塩酸、飽和食塩水で洗浄後、溶媒を留去して黒色の固体を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム=9/1(容積比))で分離精製し、下記式:
【0149】
【化29】


で表されるN,N−ジフェニル−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−アミン 30.1gを白色の固体として得た。
【0150】
1H−NMR(300MHz/CDCl3):δ(ppm)=1.3〔s,9H〕、2.
0〔s,6H〕、6.8〜7.3〔m,10H〕
【0151】
・N−(4−ブロモフェニル)−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−N−フェニルアミンの合成
乾燥した三つ口フラスコに、N,N−ジフェニル−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−アミン3.0g(9.1mmol)を仕込み、容器内をアルゴンガスで置換し、シリンジにて脱水ジメチルホルムアミド105mLを加えて均一にした。反応溶液を氷浴にて0〜5℃に冷却し、N−ブロモスクシンイミド1.5g(0.9当量)と脱水ジメチルホルムアミド5.2mLからなる溶液を30分かけて滴下し、そのまま30分間攪拌した。次いで、氷浴を取り外して室温まで戻した後、5時間攪拌した。次いで、反応溶液に蒸留水130mL、クロロホルム150mLを加え十分攪拌し、有機層と水層を分離した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮乾固した。次いでトルエン200mLに溶解させシリカゲルカラムに通液し、溶液を濃縮乾固した。クロロホルム、シクロヘキサンを展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製、濃縮乾固し、下記式:
【0152】
【化30】


で表されるN−(4−ブロモフェニル)−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−N−フェニルアミン2.0gを白色固体として得た(HPLC測定による、当該化合物のピーク面積が、当該化合物及び不純物のピーク面積の合計に占める割合(以下、「LC面積百分率値」という。)99.7%、収率53.3%)。
【0153】
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ1.32(s,9H),2.00(s,6H),6.81−6.98(m,5H),7.09(s,2H),7.16−7.27(m,4H)
LC/MS(APPI(+)):M+ 407
【0154】
・N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−N−フェニルアミンの合成
乾燥した三つ口フラスコに、N−(4−ブロモフェニル)−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−N−フェニルアミン7.78g(19.1mmol)を仕込み、容器内をアルゴンガスで置換し、脱水テトラヒドロフラン76mL、脱水ジエチルエーテル191mLを加えて攪拌し溶解させた。反応溶液を−76℃に冷却し、1.54mol/Lのn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液13.61mL(21.0mmol)を30分かけて滴下し、そのまま0.5時間攪拌した。次いで、−76℃にて2−イソプロピルオキシ−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン5.83mL(28.6mmol)を20分かけて滴下し、そのまま1時間攪拌した後、室温まで昇温させ2時間攪拌した。得られた反応液を0℃に冷却した0.2規定塩酸200mL中へ15分かけて滴下し、室温にて15分攪拌した後に、有機層と水層を分離した。水層をジエチルエーテルで抽出し、有機層を合一した後に、蒸留水、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水で順次洗浄し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮乾固し、粗生成物9.0gを薄桃色固体として得た。この粗生成物8.6gをテトラヒドロフラン17.1gに50℃にて加熱溶解し、メタノール85.6gをゆっくりと加えることにより晶析し、ろ過した後、減圧乾燥することにより、下記式:
【0155】
【化31】


で表されるN−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−N−フェニルアミン7.6gを白色固体として得た。(LC面積百分率値98.5%、収率86.7%)。不純物としては、N,N−ジフェニル−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−アミンがLC面積百分率値1.5%含まれていた。
【0156】
1H−NMR(300MHz、CDCl3):δ1.32(s,9H),1.32(s,12H),2.00(s,6H),6.81−6.98(m,3H),7.01(d,2H),7.09(s,2H),7.15−7.27(m,2H),7.62(d,2H)
LC/MS(APPI(+)):[M+H]+ 456
【0157】
<合成例8>(高分子化合物2の合成)
重合体2(300mg、ベンゾフルオレン構成単位換算で0.649mmol)、N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−N−フェニルアミン(136mg、0.30mmol)、酢酸パラジウム(II)(0.7mg)、及びトリシクロヘキシルホスフィン(1.7mg)を50mLフラスコに仕込み、アルゴンガスにより系内をアルゴン置換した後、脱水トルエン(市販品)36mLを仕込み、室温にて攪拌して溶解させた。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(1.4mol/L、1.1mL)を仕込み、110℃に昇温した後に、110℃で3時間攪拌した後、4−t−ブチル−4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼン169mg、酢酸パラジウム(II)(0.7mg)、トリシクロヘキシルホスフィン(1.7mg)、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(1.4mol/L、1.1mL)を仕込み、110℃で3時間攪拌した。室温に冷却した後、トルエンで希釈し、15重量%食塩水で洗浄し、得られた有機層をセライトろ過した後、減圧濃縮し、アセトン中へ滴下することにより沈殿を得た。得られた沈殿をろ過、アセトンで洗浄、減圧乾燥することで、粗重合体317mgを得た。
【0158】
この粗重合体317mgをトルエン65mLに室温にて溶解し、あらかじめトルエンを通液したシリカゲルカラム及びアルミナカラムに溶液を通液し、さらにトルエンで洗い出した後に、3重量%アンモニア水溶液、水で順次洗浄し、減圧濃縮し、11gの溶液を得た。これをメタノール中へ滴下することで、再沈した。得られた沈殿を、ろ過、メタノールで洗浄、減圧乾燥することにより、重合体(以下、「高分子化合物2」という。)310mgを得た。高分子化合物2のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.5×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.6×105であり、ポリスチレン換算のピークトップ分子量Mpは1.3×105であり、Mw/Mnで規定される分散度は1.9であった。
【0159】
元素分析の結果、構成単位(下記式(P−1))、Br基を有する構成単位(下記式(P−2))、及び側鎖を有する構成単位(下記式(P−4))の比率は(P−1)/(P−2)/(P−4)=83/0/17(モル比)であり、ベンゾフルオレン構成単位と側鎖((P−4)の電荷輸送性基の部分)との比率は、ベンゾフルオレン構成単位/側鎖=85/15(モル比)であると推測される。
【0160】
【化32】

【0161】
元素分析測定値:C89.65%、H9.32%、N0.49%、Br<0.1%
元素分析計算値:C90.08%、H9.43%、N0.49%、Br0%((P−1)/(P−2)/(P−4)=83/0/17(モル比)での計算値)
【0162】
<合成例9>(高分子化合物3の合成)
化合物E22.5gと2,2’−ビピリジル17.6gとを反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、あらかじめアルゴンガスでバブリングして、脱気したテトラヒドロフラン(脱水溶媒)1500gを加えた。次に、こうして得られた混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)を31g加え、室温で10分間攪拌した後、60℃で3時間反応した。なお、反応は、窒素ガス雰囲気中で行った。
【0163】
反応後、この反応溶液を冷却した後、該溶液に25重量%アンモニア水200ml/メタノール900ml/イオン交換水900ml混合溶液を注ぎ込み、約1時間攪拌した。次に、生成した沈殿を濾過し、回収した。この沈殿を減圧乾燥した後、トルエンに溶解した。このトルエン溶液を濾過し、不溶物を除去した後、該トルエン溶液を、アルミナを充填したカラムを通過させることにより精製した。次に、このトルエン溶液を、1規定塩酸水溶液で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、約3重量%アンモニア水で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液をイオン交換水で洗浄し、静置、分液した後、トルエン溶液を回収した。次に、このトルエン溶液を、メタノール中に注ぎ込み、再沈精製した。
【0164】
次に、精製した沈殿を回収し、メタノールで洗浄した後、この沈殿を減圧乾燥して、重合体(以下、「高分子化合物3」という。)6.0gを得た。高分子化合物3のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは8.2×105であり、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは1.0×105であり、ポリスチレン換算のピークトップ分子量Mpは1.3×106であり、Mw/Mnで規定される分散度は8.2であった。なお、仕込み原料の構造より、高分子化合物3は、下記式(P−1)で表される構成単位からなるものと推測される。
【0165】
【化33】

【0166】
<合成例10>(高分子化合物4の合成)
不活性雰囲気下、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−n−ブチルフェニル)1,4−フェニレンジアミン(1.911g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)フェニルアミン(0.484g)、及び2,2’−ビピリジル(1.687g)をあらかじめアルゴンでバブリングした、脱水テトラヒドロフラン109mLに溶解させた。この溶液を60℃まで昇温後、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)2}(2.971g)を加え、攪拌し、5時間反応させた。こうして得られた反応液を室温まで冷却し、25重量%アンモニア水14mL/メタノール109mL/イオン交換水109mL混合溶液中に滴下して1時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して減圧乾燥し、トルエン120mlに溶解させた。溶解後、ラヂオライト0.48gを加えて30分攪拌し、不溶解物を濾過した。得られた濾液をアルミナカラムを通して精製を行った。次に、4重量%アンモニア水236mLを加え、2時間攪拌した後に水層を除去した。さらに有機層にイオン交換水約236mLを加え1時間攪拌した後、水層を除去した。その後、有機層をメタノール376mlに注加して0.5時間攪拌し、析出した沈殿をろ過して減圧乾燥した。得られた重合体(以下、高分子化合物4という。)の収量は1.54gであった。高分子化合物4のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.6×103であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは9.7×104であり、ポリスチレン換算のピークトップ分子量Mpは1.5×105であり、Mw/Mnで規定される分散度は11であった。なお、高分子化合物4は下記式(P−5)で表される構成単位からなるものと推測される。
【0167】
【化34】

(P−5)
【0168】
<合成例11>(重合体3の合成)
・2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレンと2,7−ジブロモ−9,9−ビス(3−メチルブチル)フルオレンの縮合重合
2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン26.3g、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(3−メチルブチル)フルオレン5.6g及び2,2’−ビピリジル22gを脱水したテトラヒドロフラン1600mLに溶解した後、窒素でバブリングして系内を窒素置換した。窒素雰囲気下において、この溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0){Ni(COD)2}(40.66g)加え、60℃まで昇温し、攪拌しながら8時間反応させた。反応後、得られた反応液を室温(約25℃)まで冷却し、25重量%アンモニア水1200mL/メタノール1200mL/イオン交換水1200mL混合溶液中に滴下して0.5時間攪拌した後、析出した沈殿をろ過して2時間減圧乾燥し、その後、トルエン1110mLに溶解させてからろ過を行い、ろ液にトルエンを加え、約2800mLの溶液とした後、1規定塩酸水2000mlで1時間、4重量%アンモニア水2200mLで1時間、イオン交換水1000mLで10分間、さらにイオン交換水1000mLで10分間、有機層を洗浄した。この有機層を50℃にて、592gになるまで減圧濃縮した後に、メタノール3330mLに滴下して0.5時間攪拌し、析出した沈殿をろ過し、得られた沈殿をメタノール500mLで2回洗浄した後に、50℃にて5時間減圧乾燥した。得られた共重合体の収量は12.6gであった。この共重合体を重合体3と呼ぶ。重合体3のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.4×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.6×105であった。重合体3は下記式(P−6):
【0169】
【化35】


で表される構成単位の組み合わせからなるものと推測され、仕込み比から推測される9,9−ジ−n−オクチルフルオレンと9,9−ビス(3−メチルブチル)フルオレンの構成単位のモル比は80:20である。
【0170】
<合成例12>(重合体4の合成)
アルゴンガス雰囲気下、200mLフラスコに、重合体3(2.00g、フルオレン構成単位換算で5.38mmol)、クロロホルム100mLを仕込み、室温にて攪拌して溶解させた後に、トリフルオロ酢酸8.3mL、臭素104μL(2.05mmol、フルオレン構成単位に対して38モル%)を順次仕込み、遮光下で20時間攪拌した。反応マスをメタノール500mLに攪拌下で滴下することにより、沈殿を得た。得られた沈殿をろ過、メタノールで洗浄、減圧乾燥することで、重合体2.17gを得た。得られた重合体を重合体4と呼ぶ。重合体4のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは9.2×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.7×105であり、ポリスチレン換算のピークトップ分子量Mpは1.4×105であり、Mw/Mnで規定される分散度は1.90であった。
【0171】
元素分析の結果より、Br基を有する構成単位の組合せ(式(P−7))とBr基を含有しない構成単位の組合せ(式(P−6))との比率は、(P−6)/(P−7)=63/37(モル比)に相当し、(全フルオレン構成単位)/Br基=73/27(モル比)に相当する。
【0172】
元素分析測定値:C82.48%、H9.25%、N<0.3%、Br7.44%
元素分析計算値:C83.21%、H9.35%、N0%、Br7.44%((P−6)/(P−7)=63/37(モル比)での計算値)
【0173】
【化36】

【0174】
【化37】

【0175】
<合成例13>(高分子化合物5の合成)
重合体4 300mg、N−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−N−フェニルアミン 62.0mg、酢酸パラジウム(II)0.65mg、及びトリシクロヘキシルホスフィン1.58mgを100mLフラスコに仕込み、アルゴンガスにより置換した後、脱水トルエン(市販品)72mLを仕込み、室温にて攪拌して溶解させた。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(1.4M)1.00mLを仕込み、110℃に昇温し、110℃で3時間攪拌した。一旦加熱を中断した後に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)ブチルトルエン196.3mg、酢酸パラジウム(II)0.63mg、トリシクロヘキシルホスフィン1.62mg、及びテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(1.4M)1.00mLを仕込み、再度110℃に昇温し、3時間攪拌した。室温に冷却した後、トルエン15mLで希釈し、分液した後、15重量%食塩水20mLで2回洗浄し、得られた有機層をラヂオライト(昭和科学工業株式会社製)3gをプレコートしたろ過器に通液し、トルエン20mLで洗浄した。得られた有機層を濃縮した後に、アセトン中へ滴下することで沈殿を得た。得られた沈殿をろ過し、アセトンで洗浄、減圧乾燥することで、粗重合体278mgを得た。
【0176】
上記粗重合体277mgをトルエン60mLに室温にて溶解し、あらかじめトルエンを通液したシリカゲルカラム及びアルミナカラムに溶液を通液し、さらにトルエンで洗い出した後に、3重量%アンモニア水で1回洗浄し、蒸留水で2回洗浄し、減圧濃縮した溶液をメタノール中へ滴下することにより再沈した。得られた沈殿を、ろ過、メタノールで洗浄、減圧乾燥することにより、重合体(以下、「高分子化合物5」という。)259mgを得た。高分子化合物5のポリスチレン換算の数平均分子量Mnは9.2×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.7×105であり、ポリスチレン換算のピークトップ分子量Mpは1.4×105であり、Mw/Mnで規定される分散度は1.9であった。
【0177】
なお、高分子化合物5は、下記式(P−6)で表される構成単位の組合せ、及び下記式(P−8)で表される構成単位の組合せを含むものであって、元素分析の結果より、その比率は(P−6)/(P−8)=94/6(モル比)に相当する。
【0178】
元素分析測定値:C89.36%、H9.92%、N0.24%、Br<0.1%
元素分析計算値:C88.71%、H11.05%、N0.24%、Br0%((P−6)/(P−8)=94/6(モル比)での計算値)
【0179】
【化38】

【0180】
【化39】

【0181】
<正孔注入層の作成>
高分子化合物4と架橋剤DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬製、商品名:KAYARAD DPHA)とを80/20(重量比)の割合でトルエンに混合し溶解させた。その後、0.2ミクロン径のテフロン(登録商標)フィルターでろ過して塗布溶液を調製した。スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、上記溶液をスピンコートにより製膜し、窒素雰囲気下において300℃/20minの条件でベークして正孔注入層を作製した。ベーク後の正孔注入層の膜厚を触針式膜厚計(ビーコ社製、商品名:DEKTAK)で測定したところ、約50nmであった。
【0182】
<発光層用溶液(組成物)の調製>
高分子化合物と電荷輸送性低分子化合物とを表1に示される種類・割合でトルエンに溶解させた。その後、0.2ミクロン径のテフロン(登録商標)フィルターでろ過して発光層用溶液を調製した。
【0183】
<素子の作成及び評価>
正孔注入層の上に前記発光層用溶液を用いてスピンコートにより約70nmの厚みで発光層を成膜した。さらに、これを減圧下90℃で1時間乾燥した後、陰極バッファー層としてフッ化リチウムを4nm、陰極としてカルシウムを5nm、次いでアルミニウムを100nm蒸着して、高分子発光素子を作製した。蒸着のときの真空度は、すべて1×10-4Pa〜9×10-4Paであった。こうして得られた発光部が2mm×2mm(面積4mm2)の素子に電圧を段階的に印加することにより、高分子発光素子からのEL発光の正面輝度を測定し、その測定値から電流効率の値を求めた。得られた素子の電流効率の最大値(最大電流効率)、EL発光のピーク波長、及び色度座標を表1に示す。なお、電流効率は正面輝度/電流密度の値で表され、単位電流当たりの輝度を表す。電流効率は素子への印加電圧と無関係であり、電圧の影響を除いて材料間の性能を比較することができるために、有機EL素子で最も広く用いられる発光効率である。
【0184】
また、高分子発光素子の寿命試験は10mAの定電流駆動で行った。具体的には、EHC社製有機EL輝度評価システムで、10mAの定電流駆動を行い、シリコンフォトダイオードにより受光し、輝度の経時変化測定を行った。測定開始直後の輝度を「初期輝度」とし、該初期輝度の半分の輝度になるまでの時間を「輝度半減時間」として、下記表1に示す。
【0185】
【表1】


*上記表1中、CBPは、下記式:
【0186】
【化40】


で表される4,4’−ビス(9−カルバゾイル)−ビフェニル((株)同仁化学研究所製、商品名:DCBP)を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷輸送性低分子化合物と、電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物とを含有する高分子組成物。
【請求項2】
前記電荷輸送性低分子化合物が、下記構造式(1):

(1)
〔式中、Arは、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい2価の複素環基、若しくは置換基を有していてもよいトリフェニルアミン−4,4’−ジイル基、又はこれらの基の2つ以上が結合した2価の基を表す。R1a〜R8a及びR1b〜R8bはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリール基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルコキシ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリールオキシ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキルチオ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリールチオ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12のアルキニル基、−NQ12、−C≡N、又は−NO2を表す。ここで、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数6〜26のアリール基、又は置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R1a〜R8a及びR1b〜R8bのうち、隣接する炭素原子に結合する任意の2つは一緒になって環を形成していてもよい。〕
で表される請求項1に記載の高分子組成物。
【請求項3】
前記Arで表される基が、置換されていてもよいフェニレン基、置換されていてもよいビフェニレンジイル基、又は下記構造式(2):

(2)
〔式中、a環及びb環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれa環又はb環上に存在し、Xはa環上の2個の原子とb環上の2個の原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表す。〕
で表される基である請求項2に記載の高分子組成物。
【請求項4】
前記共役系高分子化合物が発光性共役系高分子化合物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の高分子組成物。
【請求項5】
前記電荷輸送性基が正孔の電荷輸送性を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子組成物。
【請求項6】
前記電荷輸送性基が電子の電荷輸送性を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子組成物。
【請求項7】
前記電荷輸送性基が正孔及び電子の電荷輸送性を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子組成物。
【請求項8】
前記電荷輸送性基が、下記構造式:




(式中、R、R1c〜R4c、R1d〜R7d及びR1e〜R8eはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリール基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリール基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキルオキシ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリールオキシ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキルチオ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が6〜26のアリールチオ基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数が3〜20のヘテロアリールチオ基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数が1〜12のアルキニル基、−NQ12、−C≡N、又は−NO2を表す。ここで、Q2及びQ3はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数6〜26のアリール基、又は置換基を有していてもよく、環を構成する炭素数3〜20のヘテロアリール基を表す。R、R1c〜R4c、R1d〜R7d及びR1e〜R8eのうち、隣接する炭素原子に結合する任意の2つは一緒になって環を形成していてもよい。)
のいずれかで表される請求項7に記載の高分子組成物。
【請求項9】
前記共役系高分子化合物が、下記構造式(3):

(3)
〔式中、A環及びB環はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、2つの結合手はそれぞれA環又はB環上に存在し、YはA環上の2個の原子とB環上の2個の原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子団を表す。〕
で表される構成単位を主鎖内に有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の高分子組成物。
【請求項10】
前記一般式(3)で表される構成単位が、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基、又は置換基を有していてもよいベンゾフルオレンジイル基である請求項9に記載の高分子組成物。
【請求項11】
前記共役系高分子化合物中の側鎖に位置する電荷輸送性基の合計量が、該共役系高分子化合物100重量部に対して0.1〜99重量部である請求項1〜10のいずれか一項に記載の高分子組成物。
【請求項12】
前記電荷輸送性低分子化合物の含有量が、前記電荷輸送性基を側鎖に有する共役系高分子化合物100重量部に対して、0.1〜10000重量部である請求項1〜11のいずれか一項に記載の高分子組成物。
【請求項13】
更に溶媒を含有し、溶液の状態である請求項1〜12のいずれか一項に記載の高分子組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の高分子組成物を含有してなる発光層を有する高分子発光素子。
【請求項15】
請求項14に記載の高分子発光素子を用いてなる面状光源。
【請求項16】
請求項14に記載の高分子発光素子を用いてなる表示装置。

【公開番号】特開2007−321022(P2007−321022A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151276(P2006−151276)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】