説明

高分子蛍光体およびそれを用いた高分子発光素子

【課題】より強い蛍光を有する高分子蛍光体と、該高分子蛍光体を用いて、低電圧、高効率で駆動できる高性能の高分子LEDを提供する。
【解決手段】固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である高分子蛍光体において、下記式(1)および式(3)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、これらの繰り返し単位が特定の条件を満たす高分子蛍光体。


(1)〔Ar1は、C6〜60のアリーレン基が2〜5個直接線条に連結した基等。R1、R2は、水素原子等。nは0または1。〕


(3)〔ここで、Ar5は、主鎖部分に含まれるC6〜60のアリーレン基等。R3、R4は、水素原子等。lは0または1。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子蛍光体およびそれを用いた高分子発光素子(以下、高分子LEDということがある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
無機蛍光体を発光材料として用いた無機エレクトロルミネッセンス素子(以下、無機EL素子ということがある。)は、例えばバックライトとしての面状光源やフラットパネルディスプレイ等の表示装置に用いられているが、発光させるのに高電圧の交流が必要であった。
【0003】
無機EL素子の改良の観点から、有機蛍光体色素を発光層に用い、これと電子写真の感光体等に用いられている有機電荷輸送化合物とを積層した二層構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ということがある。)が開示されている(特開昭59−194393号公報)。有機EL素子は、無機EL素子に比べ、低電圧駆動、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られるという特徴があることから素子構造や有機蛍光色素、有機電荷輸送化合物について多くの試みが報告されている〔ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第27巻、L269頁(1988年)〕、〔ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(J.Appl.Phys.)第65巻、3610頁(1989年)〕。
【0004】
また、蛍光体として主に低分子の有機化合物を用いる有機EL素子とは別に、高分子量の蛍光体(以下、高分子蛍光体ということがある)を用いる高分子LEDについて、WO9013148号公開明細書、特開平3−244630号公報、アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)第58巻、1982頁(1991年)などに記載されている。またWO9013148号公開明細書には、可溶性前駆体を電極上に成膜し、熱処理を行うことにより共役系高分子に変換されたポリ(p−フェニレンビニレン)(以下、PPVということがある。)薄膜が得られることおよびそれを用いた素子が開示されている。
【0005】
さらに、特開平3−244630号公報には、それ自身が溶媒に可溶であり、熱処理が不要であるという特徴を有する共役系高分子からなる高分子蛍光体が記載されている。さらにアプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.)第58巻、1982頁(1991年)には、溶媒に可溶な高分子蛍光体およびそれを用いて作成した高分子LEDが記載されている。
【0006】
高分子LEDに用いる高分子蛍光体は、塗布により容易に有機層を製膜することができるので、低分子を蒸着してする製膜する場合と比較して、発光素子の大面積化や低コスト化に有利であり、高分子であることから膜の機械的強度も優れている。
【0007】
従来、これら高分子LEDに用いられる高分子蛍光体としては、上記ポリ(p−フェニレンビニレン)以外にも、ポリフルオレン(ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn.J.Appl.Phys.)第30巻、L1941頁(1991年))、ポリパラフェニレン誘導体(アドバンスト・マテリアルズ(Adv.Mater.)第4巻、36頁(1992年))などが報告されている。
【0008】
また、特開平5−202355号公報には、2種類以上のアリーレンビニレン繰り返し単位からなる共重合体からなる高分子蛍光体が記載されており、アリーレン基の例としてビフェニレン基やターフェニレン基が例示されている。
【0009】
また、特開平11−97175号公報には、2つ以上のアリール基または芳香族ヘテロ環基で置換されたアリーレン基または芳香族ヘテロ環基からなるポリアリーレンビニレンが記載されており、アリーレン基の例としてビフェニレン基やターフェニレン基も例示されている。
【0010】
さらに、特開平11−140168号公報には、ポリ(置換ビフェニレンビニレン)とその製造方法が記載されている。
【0011】
また、特表平11−502248号公報には、オリゴ−p−フェニレン単位を含むポリマーとその製造方法が記載されている。
【0012】
次に、特開平10−36487号公報には、フルオレンビニレンとアリーレンビニレンの交互共重合体が記載されている。
【0013】
このように高分子LEDに用いる高分子蛍光体として、様々なポリアリーレンビニレンやその共重合体が開示されているが、さらに強い蛍光を示し得る高分子蛍光体が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、より強い蛍光を有する高分子蛍光体と、該高分子蛍光体を用いて、低電圧、高効率で駆動できる高性能の高分子LEDを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、このような事情をみて鋭意検討した結果、2〜5個のアリーレン基または複素環化合物基が連結してなる特定の基を含む繰り返し単位と、特定のアリーレン基または複素環化合物基を含む繰り返し単位とを特定の割合で含み、かつこれらの繰り返し単位のそれぞれのみからなるポリマーの吸収端波長同士が特定の関係にある高分子蛍光体が、より強い蛍光を有しており、該高分子蛍光体を用いることにより、低電圧、高効率で駆動できる高性能の高分子LEDが得られることを見出し、本発明に至った。
【0016】
すなわち本発明は、〔1〕固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である高分子蛍光体において、下記式(1)および式(3)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、これらの繰り返し単位が以下の条件(a)〜(c)を満たす高分子蛍光体に関する。
(a)式(1)および式(3)で示される繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の50モル%以上である。
(b)式(1)および式(3)で示される繰り返し単位の合計に対して、式(3)で示される繰り返し単位が0.1モル%以上9モル%以下である。
(c)式(1)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ1(nm)、式(3)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ2(nm)としたとき、
1239/λ1≧1239/λ2+0.05
が成り立つ。
【0017】
【化1】

・・・・・(1)
〔ここで、Ar1は、下記式(2)で示される基である。R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。nは0または1である。〕
【0018】
【化2】

・・・・・(2)
〔ここで、Ar2〜Ar4はそれぞれ独立に、主鎖部分に含まれる炭素原子数が6〜60のアリーレン基、または主鎖部分に含まれる炭素原子数が4〜60の2価の複素環化合物基である。 Ar2〜Ar4のうち少なくとも1つは、六員環以外の基であるか、または、少なくとも1つは水素原子ではない置換基を有する。複数の置換基を有する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。また、隣接する環どうしがそれぞれ互いに直接または置換基を介して連結されて環を形成していてもよい。mは0〜3の整数である。ここで、Ar2とAr4とは、Ar2を平行移動してもAr4と完全に重なることがない構造を有する。〕
【0019】
【化3】

・・・・・(3)
〔ここで、Ar5は、主鎖部分に含まれる炭素原子数が6〜60のアリーレン基、または主鎖部分に含まれる炭素原子数が4〜60の2価の複素環化合物基である。R3、R4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。lは0または1である。〕
【0020】
また、本発明は、〔2〕固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である高分子蛍光体において、前記式(1)、式(3)および下記式(4)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、これらの繰り返し単位が以下の条件(d)〜(f)を満たす高分子蛍光体に関する。
(d)式(1)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の10モル%以上であり、かつ式(1)、式(3)および式(4)で示される繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の50モル%以上である。
(e)式(1)、式(3)および式(4)で示される繰り返し単位の合計に対して、式(3)で示される繰り返し単位が0.1モル%以上9モル%以下である。
(f)式(1)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ1(nm)、式(3)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ2(nm)、式(4)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ3(nm)としたとき、
1239/λ1≧1239/λ2+0.05
1239/λ3≧1239/λ2+0.05
が成り立つ。
【0021】
【化4】

・・・・・(4)
〔ここで、Ar6は、主鎖部分に含まれる炭素原子数が6〜60のアリーレン基、または主鎖部分に含まれる炭素原子数が4〜60の2価の複素環化合物基である。R5、R6は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。kは0または1である。〕
【0022】
また、本発明は、〔3〕少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、発光層を有する高分子発光素子において、上記〔1〕または〔2〕の高分子蛍光体が、該発光層中に含まれる高分子発光素子に係るものである。
【0023】
さらに、本発明は、〔4〕上記〔3〕の高分子発光素子を用いた面状光源に係るものである。
【0024】
次に、本発明は、〔5〕上記〔3〕の高分子発光素子を用いたセグメント表示装置に係るものである。
【0025】
また、本発明は、〔6〕上記〔3〕の高分子発光素子を用いたドットマトリックス表示装置に係るものである。
【0026】
さらに本発明は、〔7〕上記〔3〕の高分子発光素子をバックライトとする液晶表示装置に係るものである
【発明の効果】
【0027】
本発明の高分子蛍光体は、より強い蛍光を有しており、高分子LEDやレーザー用色素として好適に用いることができる。また、該高分子蛍光体を用いた高分子LEDは、低電圧、高効率で駆動できる高性能の高分子LEDである。したがって、該高分子LEDは、液晶ディスプレイのバックライトまたは照明用としての曲面状や平面状の光源、セグメントタイプの表示素子、ドットマトリックスのフラットパネルディスプレイ等の装置に好ましく使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の高分子蛍光体およびそれを用いた高分子LEDについて詳細に説明する。
本発明の高分子蛍光体は、固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108であり、前記式(1)および式(3)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、かつ以下の条件(a)〜(c)を満たすように繰り返し単位が選択されている高分子蛍光体である。
(a)式(1)および式(3)で示される繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の50モル%以上である。
(b)式(1)および式(3)で示される繰り返し単位の合計に対して、式(3)で示される繰り返し単位が0.1モル%以上9モル%以下である。
(c)式(1)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ1(nm)、式(3)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ2(nm)としたとき、
1239/λ1≧1239/λ2+0.05
が成り立つ。
ここで、ポリマーの吸収端波長は、該ポリマーの薄膜の吸収スペクトルを測定し、ベースラインから吸収が立ち上がる波長を求める。具体的には、例えば石英板上に高分子蛍光体の溶液をスピンコートして、厚さ50〜300nm程度の薄膜を形成し、吸収スペクトルを求める。このスペクトルに対し、ベースライン、吸収の立ち上がり部分にそれぞれ接する直線の交点の波長を吸収端波長とする。また、吸収端波長(nm)の逆数を取り、1239倍することにより、該ポリマーを励起するのに必要な最も小さなエネルギーの大きさをエレクトロンボルト(eV)単位で表した数字に変換することができる。
【0029】
繰り返し単位の構造にもよるが、上記(a)〜(c)に加えて下記(a’)〜(c’)のいずれか1つ以上が成り立つことが好ましく、3つとも成り立つことがより好ましい。
(a’)式(1)および式(3)で示される繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の70モル%以上である。
(b’)式(1)および式(3)で示される繰り返し単位の合計に対して、式(3)で示される繰り返し単位が0.2モル%以上8モル%以下である。
(c’)1239/λ1 ≧ 1239/λ2 + 0.07
が成り立つ。
【0030】
また、本発明のもう1つの高分子蛍光体は、固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108であり、前記式(1)、式(3)および式(4)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、かつ以下の条件(d)〜(f)を満たすように繰り返し単位が選択されている高分子蛍光体である。
(d)式(1)で示される繰り返し単位は全繰り返し単位の10モル%以上であり、かつ式(1)、式(3)および式(4)で示される繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の50モル%以上である。
(e)式(1)、式(3)および式(4)で示される繰り返し単位の合計に対して、式(3)で示される繰り返し単位が0.1モル%以上9モル%以下である。
(f)式(1)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ1(nm)、式(3)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ2(nm)、式(4)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ3(nm)としたとき、
1239/λ1≧1239/λ2+0.05
1239/λ3≧1239/λ2+0.05
が成り立つ。
【0031】
繰り返し単位の構造にもよるが、上記(d)〜(f)に加えて下記(d’)〜(f’)のいずれか1つ以上が成り立つことが好ましく、3つとも成り立つことがより好ましい。
(d’)式(1)で示される繰り返し単位は全繰り返し単位の20モル%以上であり、かつ式(1)、式(3)および式(4)で示される繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の70モル%以上である。
(b’)式(1)、式(3)および式(4)で示される繰り返し単位の合計に対して、式(3)で示される繰り返し単位が0.2モル%以上8モル%以下である。
(c’)1239/λ1 ≧ 1239/λ2 + 0.07
および1239/λ3 ≧ 1239/λ2 + 0.07
が成り立つ。
【0032】
Ar1は、前記式(2)で示されるアリーレン基または複素環化合物基が2〜5個連結した基である。これらの基は、その両端のアリーレン基または複素環化合物基における置換基の位置と結合の方向によって特徴づけられており、Ar2とAr4とは、Ar2を主鎖の方向に平行移動してもAr4と完全に重なることがない構造を有する。つまり、Ar2とAr4とは、式(2)において、Ar2とAr4とを化学構造式同士で比較したときに、並進対称性をもたない構造を有する。一般に、適当な平行移動を行ったときに、移動前の図形との違いがわからない図形は「並進対称性をもつ」という(化学大辞典、東京化学同人、1989年)。
【0033】
すなわち、両端の2個は互いに骨格となる環が異なるか、同一の環であっても異なる置換基を有するか、同一の環が同一の置換基を有していてもその結合数や位置が異なっており、主鎖の単結合が回転してもそれらが同じ構造と方向となることはない。従って、1種類のアリーレン基または複素環化合物基が2〜5個組合わさったものとは異なっている。
【0034】
好ましい例の1つとしては、下記式(5)で示される2〜5個の六員環が1,4−位で互いに連結した基である。
【0035】
【化5】

・・・・・(5)
【0036】
これらの基は、置換基の位置、Nの有無および位置によって特徴づけられており、1種類の六員環が2〜5個組合わさったものとは異なっている。
【0037】
上記式(1)におけるAr1が上記式(5)で示される基である場合、2〜5個の六員環芳香環が互いに連結してなる二価の基である。ここで、X1〜X12はそれぞれ独立に、C−R7またはNであり、 X1〜X12のうち少なくとも1つはC−R7である。R7は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜60のアルキルシリル基、炭素数1〜40のアルキルアミノ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数7〜60のアリールアルキル基、炭素数7〜60のアリールアルコキシ基、炭素数8〜60のアリールアルケニル基、炭素数8〜60のアリールアルキニル基、炭素数6〜60のアリールアミノ基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。R7のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R7が複数の場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0038】
また、隣接する六員環どうしがそれぞれ互いに直接または置換基を介して連結されて環を形成していてもよい。jは0〜3の整数であり、 j=0であれば合成が容易であり、好ましい。
【0039】
ここで、X1とX9、X2とX10、X3とX11、X4とX12の4つの組がすべて同時にそれぞれ同一であることはなく、またX1とX12、X2とX11、X3とX10、X4とX9の4つの組がすべて同時にそれぞれ同一であることはない。
【0040】
Ar1としては、高分子蛍光体の蛍光特性を損なわないように選択すればよく、具体例としては、下記化11、化12の基のなかで、上記式(2)におけるAr2とAr4の関係などの条件を満たすもの、および下記化12の基のなかで、上記式(5)におけるX1とX9、X2とX10、X3とX11、X4とX12の4つの組の関係およびX1とX12、X2とX11、X3とX10、X4とX9の4つの組の関係を満たした基が挙げられる。ここで、化12のR9が、上記式(5)におけるR7に対応する場合には、少なくとも1つは水素原子以外の基である。
【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
ここで、R8、R9は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を示す。置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜60のアルキルシリル基、炭素数1〜40のアルキルアミノ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数7〜60のアリールアルキル基、炭素数7〜60のアリールアルコキシ基、炭素数8〜60のアリールアルケニル基、炭素数8〜60のアリールアルキニル基、炭素数6〜60のアリールアミノ基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基が例示される。上記の例において、1つの構造式中に複数のR8またはR9を有しているが、それらは同一であってもよいし、異なる基であってもよく、それぞれ独立に選択される。
【0044】
Ar1の水素原子以外の基の置換態様に関しては、例えば、下記化13のものが挙げられる。化13において、R10は、 R8またはR9について例示された基のうち水素原子ではない基を示す。
【0045】
【化8】

【0046】
Ar1のうちm=0または1のものが好ましくm=0のものがさらに好ましい。2個または3個の六員環および縮合環が連結した基が好ましく、
m=0のもののなかでは、置換ビフェニレン基、置換ジナフタレン基、置換ジアントラセン基、置換9,10−ジヒドロフェナントレン基、置換ピリミジンジイル−フェニレン基、置換フルオレン基がさらに好ましい。また、m=1のもののなかでは、置換ターフェニレン基、置換ジフェニルアントラセン基がさらに好ましい。
これらのなかで、置換ビフェニレン基、置換フルオレン基が特に好ましい。
【0047】
上記式(3)におけるAr2および上記式(4)におけるAr3は、主鎖部分に含まれる炭素原子数が6個以上60個以下からなるアリーレン基、または主鎖部分に含まれる炭素原子数が4個以上60個以下からなる2価の複素環化合物基である。
Ar2またはAr3複数の置換基を有する場合、それらは同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。溶媒への溶解性を高めるためには、水素原子でない置換基を少なくとも1つ有していることが好ましく、また置換基を含めた繰り返し単位の形状の対称性が少ないことが好ましい。
【0048】
Ar2またはAr3としては、高分子蛍光体の蛍光特性を損なわないように選択すればよく、具体的な例としては下記化14、化15、化16、化17に例示された二価の基が挙げられる。
【0049】
【化9】

【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

【0053】
ここで、Rは、それぞれ独立に、水素原子または置換基を示す。置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜60のアルキルシリル基、炭素数1〜40のアルキルアミノ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数7〜60のアリールアルキル基、炭素数7〜60のアリールアルコキシ基、炭素数8〜60のアリールアルケニル基、炭素数8〜60のアリールアルキニル基、炭素数6〜60のアリールアミノ基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基が例示される。上記の例において、1つの構造式中に複数のRを有しているが、それらは同一であってもよいし、異なる基であってもよく、それぞれ独立に選択される。Ar2またはAr3が複数の置換基を有する場合、それらは同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。溶媒への溶解性を高めるためには、水素原子でない置換基を少なくとも1つ有していることが好ましく、また置換基を含めた繰り返し単位の形状の対称性が少ないことが好ましい。
【0054】
Rが、水素原子またはシアノ基以外の置換基である場合について述べると、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基などが挙げられ、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基が好ましい。
【0055】
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ラウリルオキシ基などが挙げられ、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基が好ましい。
【0056】
炭素数1〜20のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ラウリルチオ基などが挙げられ、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基が好ましい。
【0057】
炭素数1〜60のアルキルシリル基としては、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基、ブチルシリル基、ペンチルシリル基、ヘキシルシリル基、ヘプチルシリル基、オクチルシリル基、ノニルシリル基、デシルシリル基、ラウリルシリル基、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基などが挙げられ、ペンチルシリル基、ヘキシルシリル基、オクチルシリル基、デシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基が好ましい。
【0058】
炭素数1〜40のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ラウリルアミノ基などが挙げられ、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基が好ましい。
【0059】
炭素数6〜60のアリール基としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示され、 C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
【0060】
炭素数6〜60のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが例示され、C1〜C12アルコキシフェノキシ基、C1〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0061】
炭素数6〜60のアリールアルキル基としては、フェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基、1−ナフチル−C1〜C12アルキル基、2−ナフチル−C1〜C12アルキル基などが例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルキル基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルキル基が好ましい。
【0062】
炭素数6〜60のアリールアルコキシ基としては、フェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C1〜C12アルコキシ基などが例示され、C1〜C12アルコキシフェニル−C1〜C12アルコキシ基、C1〜C12アルキルフェニル−C1〜C12アルコキシ基が好ましい。
【0063】
炭素数6〜60のアリールアミノ基としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C1〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基などが例示され、C1〜C12アルキルフェニルアミノ基、ジ(C1〜C12アルキルフェニル)アミノ基が好ましい。
【0064】
炭素数4〜60の複素環化合物基としては、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基などが例示され、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0065】
Rの例のうち、アルキル鎖を含む置換基においては、それらは直鎖、分岐枝付きまたは環状のいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよく、直鎖でない場合、例えば、イソアミル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロヘキシル基、4−C1〜C12アルキルシクロヘキシル基などが例示される。高分子蛍光体の溶媒への溶解性を高めるためには、Ar1、Ar2またはAr3の置換基のうちの1つ以上に環状または分岐のあるアルキル鎖が含まれることが好ましい。
【0066】
上記式(1)において、nは0または1であり、上記式(3)において、lは0または1であり、上記式(4)において、kは0または1である。上記式(1)におけるR1、R2、上記式(3)におけるR3、R4はおよび上記式(4)におけるR5、R6は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。R1、R2、R3、R4、R5、R6が、水素原子またはシアノ基以外の置換基である場合について述べると、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が好ましい。
【0067】
炭素数6〜60のアリール基としては、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが例示され、フェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
炭素数4〜60の複素環化合物基としては、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基などが例示され、チエニル基、C1〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C1〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0068】
また、高分子蛍光体の末端基は、特に限定されないが、重合活性基がそのまま残っていると、素子にしたときの発光特性や寿命が低下する可能性があるので、安定な基で保護されていることが好ましい。主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものがより好ましく、例えば、ビニレン基を介してアリール基または複素環化合物基と結合している構造が例示される。具体的には、特開平9−45478号公報の化10に記載の置換基等が例示される。
【0069】
該高分子蛍光体の合成法としては、主鎖にビニレン基を有する場合には、例えば特開平5−202355号公報に記載の方法が挙げられる。すなわち、ジアルデヒド化合物とジホスホニウム塩化合物とのWittig反応による重合、ハロゲン化メチル基を2つ有する化合物の脱ハロゲン化水素法による重縮合、スルホニウム塩基を2つ有する化合物のスルホニウム塩分解法による重縮合、ジアルデヒド化合物とジアセトニトリル化合物とのKnoevenagel反応による重合、ジビニル化合物とジハロゲン化合物とのHeck反応などの方法が例示される。
【0070】
また、主鎖にビニレン基を有しない場合には、例えば該当するモノマーからSuzukiカップリングにより重合する方法、ゼロ価ニッケル錯体を用いて重合する方法、Grignard反応により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、あるいは適当な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法などが例示される。
【0071】
なお、該高分子蛍光体は、蛍光特性や電荷輸送特性を損なわない範囲で、式(1)、式(3)または式(4)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。また、式(1)、式(3)または式(4)で示される繰り返し単位や他の繰り返し単位が、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基などを有する非共役の単位で連結されていてもよいし、繰り返し単位にそれらの非共役部分が含まれていてもよい。
また、該高分子蛍光体は、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。蛍光の量子収率の高い高分子蛍光体を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロックまたはグラフト共重合体が好ましい。主鎖に枝分かれがあり、末端部が3つ以上ある場合も含まれる。
【0072】
また、薄膜からの発光を利用するので該高分子蛍光体は、固体状態で蛍光を有するものが好適に用いられる。
該高分子蛍光体に対する良溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、デカリン、n−ブチルベンゼンなどが例示される。高分子蛍光体の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1重量%以上溶解させることができる。
【0073】
該高分子蛍光体は、数平均分子量がポリスチレン換算で103〜108であり、溶解性および成膜性の観点からは、104〜106が好ましく、5×104〜106が特に好ましい。また、重量平均分子量と数平均分子量の比は、1〜40であることが好ましく、2〜20であることが特に好ましい。それらの重合度は、繰り返し構造やその割合によっても変わる。成膜性の点から一般には、繰り返し構造の合計数が、好ましくは20〜10000、さらに好ましくは30〜10000、特に好ましくは50〜5000である。
【0074】
これらの高分子蛍光体を高分子LEDの発光材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、重合前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製したのちに重合することが好ましく、また合成後、再沈精製、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0075】
次に、本発明の高分子LEDについて説明する。本発明の高分子LEDの構造としては、少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に発光層を有する高分子LEDにおいて、本発明の高分子蛍光体が該発光層中に含まれる。
【0076】
また、本発明の高分子LEDとしては、陰極と発光層との間に電子輸送層を設けた高分子LED、陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子LED、陰極と発光層との間に電子輸送層を設け、かつ陽極と発光層との間に正孔輸送層を設けた高分子LED等が挙げられる。
例えば、具体的には、以下のa)〜d)の構造が例示される。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0077】
ここで、発光層とは、発光する機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。
【0078】
発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
【0079】
また、電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と一般に呼ばれることがある。
【0080】
さらに電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して前記の電荷注入層または膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0081】
積層する層の順番や数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0082】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた高分子LEDとしては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた高分子LED、陽極に隣接して電荷注入層を設けた高分子LEDが挙げられる。
【0083】
例えば、具体的には、以下のe)〜p)の構造が挙げられる。
e)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
f)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
l)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0084】
電荷注入層の具体的な例としては、導電性高分子を含む層、陽極と正孔輸送層との間に設けられ、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、陰極と電子輸送層との間に設けられ、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層などが例示される。
【0085】
上記電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10-5S/cm以上103S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10-5S/cm以上102以下がより好ましく、10-5S/cm以上101以下がさらに好ましい。
【0086】
通常は該導電性高分子の電気伝導度を10-5S/cm以上103S/cm以下とするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0087】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンなどが例示され、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが例示される。
【0088】
電荷注入層の膜厚としては、例えば1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0089】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニンなど)、カーボンなどが例示される。
【0090】
膜厚2nm以下の絶縁層は電荷注入を容易にする機能を有するものである。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LEDとしては、陰極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LED、陽極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けた高分子LEDが挙げられる。
【0091】
具体的には、例えば、以下のq)〜ab)の構造が挙げられる。
q)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
s)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
t)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
v)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/膜厚2nm以下の絶
縁層/陰極
w)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
y)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶
縁層/陰極
z)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
ab)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/膜厚
2nm以下の絶縁層/陰極
【0092】
高分子LED作成の際に、これらの有機溶媒可溶性の高分子蛍光体を用いることにより、溶液から成膜する場合、この溶液を塗布後乾燥により溶媒を除去するだけでよく、また電荷輸送材料や発光材料を混合した場合においても同様な手法が適用でき、製造上非常に有利である。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0093】
発光層の膜厚としては、用いる高分子蛍光体によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0094】
本発明の高分子LEDにおいては、発光層に上記高分子蛍光体以外の発光材料を混合使用してもよい。また、本発明の高分子LEDにおいては、上記高分子蛍光体以外の発光材料を含む発光層が、上記高分子蛍光体を含む発光層と積層されていてもよい。
【0095】
該発光材料としては、公知のものが使用できる。低分子化合物では、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセンもしくはその誘導体、ペリレンもしくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンもしくはその誘導体、またはテトラフェニルブタジエンもしくはその誘導体などを用いることができる。
【0096】
具体的には、例えば特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されているもの等、公知のものが使用可能である。
【0097】
本発明の高分子LEDが正孔輸送層を有する場合、使用される正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリピロールもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体が例示される。
【0098】
具体的には、該正孔輸送材料として、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0099】
これらの中で、正孔輸送層に用いる正孔輸送材料として、ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、またはポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体等の高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体、ポリシランもしくはその誘導体、側鎖もしくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0100】
ポリビニルカルバゾールもしくはその誘導体は、例えばビニルモノマーからカチオン重合またはラジカル重合によって得られる。
【0101】
ポリシランもしくはその誘導体としては、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許GB2300196号公開明細書に記載の化合物等が例示される。合成方法もこれらに記載の方法を用いることができるが、特にキッピング法が好適に用いられる。
【0102】
ポリシロキサンもしくはその誘導体は、シロキサン骨格構造には正孔輸送性がほとんどないので、側鎖または主鎖に上記低分子正孔輸送材料の構造を有するものが好適に用いられる。特に正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖または主鎖に有するものが例示される。
【0103】
正孔輸送層の成膜の方法に制限はないが、低分子正孔輸送材料では、高分子バインダーとの混合溶液からの成膜による方法が例示される。また、高分子正孔輸送材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0104】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0105】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0106】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0107】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0108】
本発明の高分子LEDが電子輸送層を有する場合、使用される電子輸送材料としては公知のものが使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンもしくはその誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、ナフトキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンもしくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンもしくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体等が例示される。
【0109】
具体的には、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示される。
【0110】
これらのうち、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンもしくはその誘導体、アントラキノンもしくはその誘導体、または8−ヒドロキシキノリンもしくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリンもしくはその誘導体、ポリキノキサリンもしくはその誘導体、ポリフルオレンもしくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムがさらに好ましい。
【0111】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液もしくは溶融状態からの成膜による方法が、高分子電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜による方法がそれぞれ例示される。溶液または溶融状態からの成膜時には、高分子バインダーを併用してもよい。
【0112】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、電子輸送材料および/または高分子バインダーを溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒として、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒が例示される。
【0113】
溶液または溶融状態からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。
【0114】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。該高分子バインダーとして、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)もしくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリシロキサンなどが例示される。
【0115】
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nmから1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0116】
本発明の高分子LEDを形成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン基板などが例示される。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明または半透明であることが好ましい。
【0117】
本発明において、陽極側が透明または半透明であることが好ましいが、該陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作成された膜(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0118】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0119】
また、陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、カーボンなどからなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0120】
本発明の高分子LEDで用いる陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、およびそれらのうち2つ以上の合金、あるいはそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイトまたはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0121】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、例えば10nmから10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0122】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよく、陰極作製後、該高分子LEDを保護する保護層を装着していてもよい。該高分子LEDを長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層および/または保護カバーを装着することが好ましい。
【0123】
該保護層としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などを用いることができる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などを用いることができ、該カバーを熱効果樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子が傷つくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1つ以上の方策をとることが好ましい。
【0124】
本発明の高分子LEDを用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、前記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極または陰極のいずれか一方、または両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にOn/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメントタイプの表示素子が得られる。更に、ドットマトリックス素子とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子蛍光体を塗り分ける方法や、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス素子は、パッシブ駆動も可能であるし、TFTなどと組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置として用いることができる。
【0125】
さらに、前記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、あるいは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0126】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ここで、数平均分子量については、クロロホルムを溶媒として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。
【0127】
実施例1
<高分子蛍光体1の合成>
4,4’−ビスクロロメチル−2、2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,1’−ビフェニレン0.98gと2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−p−キシレンジクロリド0.012gと(モル比98:2)を乾燥1,4−ジオキサン200gに溶解し、30分間窒素でバブリングし脱気した後、反応溶液を95℃まで昇温した。この溶液に、t−ブトキシカリウム0.55g/乾燥1,4−ジオキサン15gの溶液を5分で滴下した。さらにこの溶液を97℃に昇温した後、t−ブトキシカリウム0.42g/乾燥1,4−ジオキサン12gの溶液を滴下した。そのまま98℃で2時間反応させた。反応後、50℃に冷却し、酢酸/1,4−ジオキサンの混合液を加えて中和した。室温に放冷後、この反応液を攪拌したイオン交換水中に注ぎこんだ。次に析出した沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。これを減圧乾燥して重合体を得た。
次に、これをテトラヒドロフランに溶解し、これをメタノール中にそそぎ込み、再沈精製した。この沈殿をエタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、高分子蛍光体1を0.01g得た。
該高分子蛍光体1のポリスチレン換算の数平均分子量は、3.2×104、重量平均分子量は、8.8×104であった。該高分子蛍光体1の構造については、1H−NMRにより、2、2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−4,4’−ビフェニレンビニレンと2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−p−フェニレンビニレンとの共重合体に相当するスペクトルが得られた。
【0128】
高分子蛍光体1の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0129】
【化13】

【0130】
【化14】

【0131】
<吸収スペクトル、蛍光スペクトルの測定>
上記高分子蛍光体1と下記参考例1〜2で製造された高分子蛍光体2〜3は、クロロホルムに溶解させることができた。その0.2%クロロホルム溶液を石英板上にスピンコートして重合体の薄膜を作成した。この薄膜の紫外可視吸収スペクトルと蛍光スペクトルを、それぞれ自記分光光度計UV365(島津製作所製)、蛍光分光光度計850(日立製作所製)を用いて測定した。吸収スペクトルから、吸収端波長を求めた。また、330nmまたは410nmで励起した時の蛍光スペクトルから、蛍光ピーク波長を求めた。表1に示したとおり、実施例1の高分子蛍光体1は、参考例1〜2の高分子蛍光体2〜3のいずれとも異なる蛍光スペクトルを有していた。
【0132】
また、高分子蛍光体2、3の吸収端波長をそれぞれ、λP2、λP3とすると、
1239/λP2≧1239/λP3+0.05
の関係を満たしていた。従って、高分子蛍光体1において、請求項1の(c)の関係が成り立つことが確認できた。
【0133】
参考例1
<高分子蛍光体2の合成>
4,4’−ビスクロロメチル−2、2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,1’−ビフェニレン1.0gを乾燥1,4−ジオキサン200gに溶解し、30分間窒素でバブリングし脱気した後、反応溶液を95℃まで昇温した。この溶液に、t−ブロキシカリウム0.55g/乾燥1,4−ジオキサン15gの溶液を5分で滴下した。さらにこの溶液を97℃に昇温した後、t−ブロキシカリウム0.42g/乾燥1,4−ジオキサン12gの溶液を滴下した。そのまま98℃で2時間反応させた。反応後、50℃に冷却し、酢酸/1,4−ジオキサンの混合液を加えて中和した。室温に放冷後、この反応液を攪拌したイオン交換水中に注ぎこんだ。次に析出した沈殿をろ別し、メタノールで洗浄した。これを減圧乾燥して重合体を得た。
【0134】
次に、これをテトラヒドロフランに溶解し、これをメタノール中にそそぎ込み、再沈精製した。この沈殿をエタノールで洗浄した後、減圧乾燥して、高分子蛍光体2を0.02g得た。
【0135】
該高分子蛍光体2のポリスチレン換算の数平均分子量は、3.3×104であった。該高分子蛍光体2の構造については、1H−NMRにより、ポリ{2、2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−4,4’−ビフェニレンビニレン}に相当するスペクトルが得られた。
【0136】
高分子蛍光体2の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0137】
【化15】

【0138】
参考例2
<高分子蛍光体3の合成>
2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−p−キシレンジクロリド3.32gを乾燥テトラヒドロフラン300gに溶解し、15分間窒素でバブリングし脱気した後、t−ブロキシカリウム6.72gを乾燥テトラヒドロフラン30gに溶解させた溶液を、室温で滴下した。引き続いて室温で7時間反応させた。次に、この反応液を、氷酢酸3.5mlを含むメタノール中に注ぎこみ、生成した赤色の沈殿を、ろ過して回収した。
【0139】
次に、この沈殿をエタノールで洗浄、続いて、エタノール/イオン交換水混合溶媒で繰り返し洗浄し、最後に、エタノールで洗浄した。これを減圧乾燥して、重合体1.3gを得た。次に、この重合体をトルエンに溶解した。この重合体溶液をメタノール中に注ぎこみ、再沈精製した。沈殿を回収した後、これを減圧乾燥して高分子蛍光体3を得た。
【0140】
該高分子蛍光体3のポリスチレン換算の数平均分子量は、9.9×104であった。該高分子蛍光体3の構造については、1H−NMRにより、ポリ{2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−p−フェニレンビニレン}に相当するスペクトルが得られた。
【0141】
高分子蛍光体3の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0142】
【化16】

【0143】
【表1】

*:約460nm付近に肩が存在。
【0144】
実施例2
<高分子蛍光体4の合成>
9,9−ビス(3,7−ジメチルオクチル)フルオレン−2,7−ビスほう酸0.587gと2,7−ジブロモ−9,9−ビス(3,7−ジメチルオクチル)フルオレン0.592gと1,4−ジブロモ−2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)ベンゼン0.01gと(モル比50:45:5)、炭酸ナトリウム0.23gをアルゴン雰囲気下のフラスコに入れ、トルエン2mlエタノール2.5ml、イオン交換水1.2mlを加えた。アルゴンで25分間脱気したのち、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.08gを加えて、さらに5分間脱気した。この反応溶液を90℃に昇温し、12時間反応させた。室温に放冷後、反応溶液をメタノール/水にそそぎ込んだ。析出した沈殿をろ別し、水、メタノールの順に洗浄した。
【0145】
次にテトラヒドロフランに溶解し、これをメタノール中にそそぎ込み、再沈精製した。この沈殿を減圧乾燥して、高分子蛍光体4を0.59g得た。
【0146】
該高分子蛍光体4のポリスチレン換算の数平均分子量は1.6×104、重量平均分子量は4.2×104であった。該高分子蛍光体4の構造については、1H−NMRにより、9,9−ビス(3,7−ジメチルオクチル)フルオレン−2,7−ジイルと2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンとの共重合体に相当するスペクトルが得られた。
【0147】
高分子蛍光体4の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0148】
【化17】

【0149】
【化18】

【0150】
また、実施例1と同じ方法で、高分子蛍光体4の蛍光、吸収スペクトルを測定したところ、蛍光ピーク波長は426nm、吸収端波長は430nmであった。
【0151】
実施例3
<素子の作成および評価>
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板に、高分子蛍光体4の1.0wt%クロロホルム溶液を用いてスピンコートにより120nmの厚みで成膜した。さらに、これを減圧下80℃で1時間乾燥した後、陰極として、フッ化リチウムを約0.4nm相当、次いでカルシウムを40nm、さらにアルミニウムを70nm蒸着して、高分子LEDを作製した。蒸着のときの真空度は、すべて8×10-6Torr以下であった。得られた素子に電圧を10V印加することにより、青色のEL発光が観測された。素子の発光スペクトルは、高分子蛍光体4の蛍光スペクトルと同じ位置にピークを有していた。
【0152】
実施例4
<高分子蛍光体5の合成>
2、2’−ビス{4−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル}−4,4’−ビスクロロメチルビフェニレンと2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−p−キシレンジクロリドとを98:2のモル比で仕込み、t−ブトキシカリウムを用いて、脱ハロゲン化水素法により重合する。得られる重合物を高分子蛍光体5と呼ぶ。
【0153】
高分子蛍光体5は、2、2’−ビス{4−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル}−4,4’−ビフェニレンビニレンと2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−p−フェニレンビニレンとが、ランダムに共重合したものである。
【0154】
高分子蛍光体5の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0155】
【化19】

【0156】
【化20】

【0157】
実施例5
<高分子蛍光体6の合成>
2,7−ビス(ブロモメチル)−9,9−ビス(3,7−ジメチルオクチル)フルオレンとトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩を得る。該ホスホニウム塩、2,7−ジホルミル−9,9−ビス(3,7−ジメチルオクチル)フルオレン、2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)テレフタルアルデヒドを1:0.96:0.04のモル比で仕込み、Wittig反応により重合する。得られる重合物を高分子蛍光体6と呼ぶ。
【0158】
高分子蛍光体6は、9,9−ビス(3,7−ジメチルオクチル)フルオレンビニレンと2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニレンビニレンが、ランダムに共重合したものである。
【0159】
高分子蛍光体6の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0160】
【化21】

【0161】
【化22】

【0162】
実施例6
<高分子蛍光体7の合成>
2,2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−4,4’−ビス(ブロモメチル)ビフェニレンとトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩を得る。該ホスホニウム塩、2,2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−4,4’−ジホルミルビフェニレン、2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)テレフタルアルデヒドを1:0.96:0.04のモル比で仕込み、Wittig反応により重合する。得られる重合物を高分子蛍光体7と呼ぶ。
【0163】
高分子蛍光体7は、2,2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)ビフェニレンビニレンと2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニレンビニレンが、ランダムに共重合したものである。
【0164】
高分子蛍光体7の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0165】
【化23】

【0166】
【化24】

【0167】
実施例7
<高分子蛍光体8の合成>
2,2’−ビス{4−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル}−4,4’−ビス(ブロモメチル)ビフェニレンとトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩を得る。該ホスホニウム塩、2,2’−ビス{4−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル}−4,4’−ジホルミルビフェニレン、2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)テレフタルアルデヒドを1:0.96:0.04のモル比で仕込み、Wittig反応により重合する。得られる重合物を高分子蛍光体8と呼ぶ。
【0168】
高分子蛍光体8は、2,2’−ビス{4−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニル}ビフェニレンビニレンと2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニレンビニレンが、ランダムに共重合したものである。
【0169】
高分子蛍光体8の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0170】
【化25】

【0171】
【化26】

【0172】
実施例8
<高分子蛍光体9の合成>
9,10−ビス(3,7−ジメチルオクチル)−2,7−ビス(ブロモメチル)ジヒドロフェナントレンとトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩を得る。該ホスホニウム塩、9,10−ビス(3,7−ジメチルオクチル)−2,7−ジホルミル−ジヒドロフェナントレン、2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)テレフタルアルデヒドを1:0.96:0.04のモル比で仕込み、Wittig反応により重合する。得られる重合物を高分子蛍光体9と呼ぶ。
【0173】
高分子蛍光体9は、9,10−ビス(3,7−ジメチルオクチル)ジヒドロフェナントレニレンビニレンと2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニレンビニレンが、ランダムに共重合したものである。
【0174】
高分子蛍光体9の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0175】
【化27】

【0176】
【化28】

【0177】
実施例9
<高分子蛍光体10の合成>
9,10、11,12−テトラキス(3,7−ジメチルオクチル)−2,7−ビス(ブロモメチル)テトラヒドロピレンとトリフェニルホスフィンを反応させてホスホニウム塩を得る。該ホスホニウム塩、9,10、11,12−テトラキス(3,7−ジメチルオクチル)−2,7−ジホルミル−テトラヒドロピレン、2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)テレフタルアルデヒドを1:0.96:0.04のモル比で仕込み、Wittig反応により重合する。得られる重合物を高分子蛍光体10と呼ぶ。
【0178】
高分子蛍光体10は、9,10、11,12−テトラキス(3,7−ジメチルオクチル)テトラヒドロピレニレンビニレンと2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニレンビニレンが、ランダムに共重合したものである。
【0179】
高分子蛍光体10の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0180】
【化29】

【0181】
【化30】

【0182】
実施例10
<高分子蛍光体11の合成>
2,2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)ビフェニレン−4,4’−ジビニル、2,2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−4,4’−ジブロモ−ビフェニレン、2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−ジブロモベンゼンを1:0.96:0.04のモル比で仕込み、Heck反応により重合する。得られる重合物を高分子蛍光体11と呼ぶ。
【0183】
高分子蛍光体11は、2,2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)ビフェニレンビニレンと2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニレンビニレンが、ランダムに共重合したものである。
【0184】
高分子蛍光体11の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0185】
【化31】

【0186】
【化32】

【0187】
実施例11
<高分子蛍光体12の合成>
4,4’−ジブロモ−2,2’−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)スチルベン、1,4−ビス{4−ブロモ−2−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニルエテニル}−2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)ベンゼン、9,9−ビス(3,7−ジメチルオクチル)フルオレン−2,7−ビスホウ酸プロピルエステルを0.96:0.04:1のモル比で仕込み、Suzukiカップリング反応により重合する。得られる重合物を高分子蛍光体13と呼ぶ。
【0188】
高分子蛍光体12は、3−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニレン−9,9−ビス(3,7−ジメチルオクチル)フルオレン−2,7−ジイル−2−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)と2,5−ビス(3,7−ジメチルオクチルオキシ)フェニレンが、ランダムに共重合したものである。
【0189】
高分子蛍光体12の繰り返し単位の構造式を下記に示す。
【0190】
【化33】

【0191】
【化34】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である高分子蛍光体において、下記式(1)および式(3)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、これらの繰り返し単位が以下の条件(a)〜(c)を満たすように繰り返し単位が選択されていることを特徴とする高分子蛍光体。
(a)式(1)および式(3)で示される繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の50モル%以上である。
(b)式(1)および式(3)で示される繰り返し単位の合計に対して、式(3)で示される繰り返し単位が0.1モル%以上9モル%以下である。
(c)式(1)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ1(nm)、式(3)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ2(nm)としたとき、
1239/λ1≧1239/λ2+0.05
が成り立つ。
【化1】

・・・・・(1)
〔ここで、Ar1は、下記式(2)で示される基である。R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。nは0または1である。〕
【化2】

・・・・・(2)
〔ここで、Ar2〜Ar4はそれぞれ独立に、主鎖部分に含まれる炭素原子数が6〜60のアリーレン基、または主鎖部分に含まれる炭素原子数が4〜60の2価の複素環化合物基である。Ar2〜Ar4のうち少なくとも1つは、六員環以外の基であるか、または、少なくとも1つは水素原子ではない置換基を有する。複数の置換基を有する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。また、隣接する環どうしがそれぞれ互いに直接または置換基を介して連結されて環を形成していてもよい。mは0〜3の整数である。ここで、Ar2とAr4とは、Ar2を平行移動してもAr4と完全に重なることがない構造を有する。〕
【化3】

・・・・・(3)
〔ここで、Ar5は、主鎖部分に含まれる炭素原子数が6〜60のアリーレン基、または主鎖部分に含まれる炭素原子数が4〜60の2価の複素環化合物基である。R3、R4は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。lは0または1である。〕
【請求項2】
固体状態で蛍光を有し、ポリスチレン換算の数平均分子量が103〜108である高分子蛍光体において、請求項1記載の式(1)、式(3)および下記式(4)で示される繰り返し単位をそれぞれ1種類以上含み、これらの繰り返し単位が以下の条件(d)〜(f)を満たすように繰り返し単位が選択されていることを特徴とする高分子蛍光体。
(d)式(1)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の10モル%以上であり、かつ式(1)、式(3)および式(4)で示される繰り返し単位の合計が全繰り返し単位の50モル%以上である。
(e)式(1)、式(3)および式(4)で示される繰り返し単位の合計に対して、式(3)で示される繰り返し単位が0.1モル%以上9モル%以下である。
(f)式(1)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ1(nm)、式(3)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ2(nm)、式(4)で示される繰り返し単位のみからなるポリマーの吸収端波長をλ3(nm)としたとき、
1239/λ1≧1239/λ2+0.05
1239/λ3≧1239/λ2+0.05
が成り立つ。
【化4】

・・・・・(4)
〔ここで、Ar6は、主鎖部分に含まれる炭素原子数が6〜60のアリーレン基、または主鎖部分に含まれる炭素原子数が4〜60の2価の複素環化合物基である。R5、R6は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。kは0または1である。〕
【請求項3】
前記式(2)で示される基が、下記式(5)で示される基であることを特徴とする請求項1記載の高分子蛍光体。
【化5】

・・・・・(5)
〔ここで、X1〜X12はそれぞれ独立に、C−R7またはNであり、X1〜X12のうち少なくとも1つはC−R7である。ここでR7は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜60のアルキルシリル基、炭素数1〜40のアルキルアミノ基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数6〜60のアリールオキシ基、炭素数7〜60のアリールアルキル基、炭素数7〜60のアリールアルコキシ基、炭素数8〜60のアリールアルケニル基、炭素数8〜60のアリールアルキニル基、炭素数6〜60のアリールアミノ基、炭素数4〜60の複素環化合物基およびシアノ基からなる群から選ばれる基を示す。R7のうち少なくとも1つは水素原子以外の基である。R7が複数の場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。式(5)で示される基は、少なくとも1つ以上は、水素原子ではない置換基を有し、複数の置換基を有する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。また、隣接する六員環どうしがそれぞれ互いに直接または置換基を介して連結されて環を形成していてもよい。jは0〜3の整数である。ここで、X1とX9、X2とX10、X3とX11、X4とX12の4つの組がすべて同時にそれぞれ同一であることはなく、またX1とX12、X2とX11、X3とX10、X4とX9の4つの組がすべて同時にそれぞれ同一であることはない。〕
【請求項4】
上記式(5)においてj=0であることを特徴とする請求項3記載の高分子蛍光体。
【請求項5】
少なくとも一方が透明または半透明である一対の陽極および陰極からなる電極間に、少なくとも発光層を有する高分子発光素子において、請求項1〜4記載の高分子蛍光体が、該発光層中に含まれることを特徴とする高分子発光素子。
【請求項6】
少なくとも一方の電極と発光層との間に該電極に隣接して導電性高分子を含む層を設けたことを特徴とする請求項5記載の高分子発光素子。
【請求項7】
少なくとも一方の電極と発光層との間に該電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けたことを特徴とする請求項5記載の高分子発光素子。
【請求項8】
陰極と発光層との間に、該発光層に隣接して電子輸送性化合物からなる層を設けたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の高分子発光素子。
【請求項9】
陽極と発光層との間に、該発光層に隣接して正孔輸送性化合物からなる層を設けたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の高分子発光素子。
【請求項10】
陰極と発光層との間に、該発光層に隣接して電子輸送性化合物からなる層、および陽極と発光層との間に、該発光層に隣接して正孔輸送性化合物からなる層を設けたことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の高分子発光素子。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれかに記載の高分子発光素子を用いたことを特徴とする面状光源。
【請求項12】
請求項5〜10のいずれかに記載の高分子発光素子を用いたことを特徴とするセグメント表示装置。
【請求項13】
請求項5〜10のいずれかに記載の高分子発光素子を用いたことを特徴とするドットマトリックス表示装置。
【請求項14】
請求項5〜10のいずれかに記載の高分子発光素子をバックライトとすることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2011−246716(P2011−246716A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127036(P2011−127036)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2000−232770(P2000−232770)の分割
【原出願日】平成12年8月1日(2000.8.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】