説明

高分子電解質とそれを用いた電解質フィルムおよび電気化学素子

【課題】イオン伝導性に優れる高分子電解質と電解質フィルムとを提供する。また、特性に優れる電気化学素子を提供する。
【解決手段】オキシアルキレン構造を側鎖に有する構造単位を含む重合体と、多官能性モノマーとを、前記重合体をプレポリマーとするプレポリマー法により重合させて得た高分子架橋体と、イオン種とを含み、23℃におけるイオン伝導率が、2.9×10-6(S/cm)以上であることを特徴とする高分子電解質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質とそれを用いた電解質フィルムおよび電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池などの電気化学素子(以下、単に「素子」ともいう)に用いる電解質として、高分子電解質の開発が進められている。高分子電解質は、ベースとなる高分子に、電気化学反応を担うイオン種を分散させた構造を有しており、通常、膜やゲルなどの固体電解質として素子に用いられる。このため、高分子電解質を用いた素子は、一般的な電解質溶液(例えば、リチウム塩などの電解質塩を非水溶媒に溶解させた溶液)を用いた素子に比べて、液漏れの心配がなく、安全性に優れている。また、素子形状の自由度が高く、情報・携帯機器に用いる電源への応用が期待されている。
【0003】
ベースとなる高分子には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリエーテル類が多く用いられるが、これらポリエーテル類を用いた高分子電解質のイオン伝導率は、電解質溶液に比べて、特に室温近傍において低い。これは、イオンを伝達するポリエーテル鎖の分子運動が、室温近傍において低下することが原因と考えられる。充放電時に高い電流密度が要求される二次電池に用いるためには、イオン伝導率の向上が必須である。
【0004】
高分子電解質のイオン伝導率を向上させる手法の一つとして、相分離構造の形成が挙げられる。例えば、特許文献1および2に開示されている高分子電解質は、スチレン−ブタジエン共重合体などの低極性高分子からなる低極性相と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの高極性高分子および電解質溶液を含む高極性相とからなる相分離構造を有している。このような高分子電解質では、低極性相により高分子膜としての形状や強度を保持させた上で、電解質溶液が有する高いイオン導電性を利用することによって、イオン伝導率の向上が図られている。
【特許文献1】特開平5−299119号公報
【特許文献2】特開平5−325990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2に開示されている高分子電解質では、イオンは、主に電解質溶液によって伝導されるため(低極性高分子からなる低極性相は、イオン伝導にほとんど寄与しない)、電解質全体の数十重量%以上の割合を占める量の電解質溶液が含まれている必要がある。素子の種類によっては、例えばより高い安全性を確保するために、高分子電解質に含まれる電解質溶液の量の低減が望まれるが、特許文献1および2に開示されている高分子電解質では、イオンキャリアそのものを減少させることになるため、イオン伝導率が大きく低下することになる。このため、あくまでも高分子鎖の分子運動によるイオン伝導を主としながらも、イオン伝導率、特に室温近傍におけるイオン伝導率を向上させた高分子電解質が望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、上述した相分離構造の形成とは異なる手法により、イオン伝導性に優れる高分子電解質と電解質フィルムとを提供することを目的とする。本発明は、また、特性に優れる電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高分子電解質は、オキシアルキレン構造を側鎖に有する構造単位を含む重合体と、多官能性モノマーとを、前記重合体をプレポリマーとするプレポリマー法により重合させて得た高分子架橋体と、イオン種とを含み、23℃におけるイオン伝導率が、2.9×10-6(S/cm)以上であることを特徴としている。
【0008】
本発明の電解質フィルムは、上述した本発明の高分子電解質を含むことを特徴としている。
【0009】
本発明の電気化学素子は、一対の電極と、前記一対の電極によって狭持された電解質とを含む電気化学素子であって、前記電解質が、上述した本発明の高分子電解質であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イオン伝導性を有する重合体をプレポリマーとして、多官能性モノマーとともにプレポリマー法により重合させて得た高分子架橋体を含むことにより、高分子鎖の分子運動によるイオン伝導を主とする、イオン伝導性に優れる高分子電解質を提供できる。また、このような高分子電解質を用いることにより、イオン伝導性に優れる電解質フィルムと、特性に優れる電気化学素子とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部材に同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。
【0012】
最初に、本発明の高分子電解質について説明する。
【0013】
本発明の高分子電解質は、オキシアルキレン構造を側鎖に有する構造単位を含む重合体と、多官能性モノマーとを、重合体をプレポリマーとするプレポリマー法により重合させて得た高分子架橋体と、イオン種とを含んでいる。そのイオン伝導率は、室温(23℃)において2.9×10-6(S/cm)以上であり、4.8×10-6(S/cm)以上であることが好ましく、2×10-5(S/cm)以上であることがより好ましい。
【0014】
本発明の高分子電解質が、イオン伝導性、特に室温近傍におけるイオン伝導性に優れる理由は明確ではないが、以下に示す構造モデルによりイオン伝導率が向上している可能性がある。
【0015】
本発明の高分子電解質におけるイオン伝導性は、オキシアルキレン構造(代表的には、オキシエチレン構造あるいはオキシプロピレン構造)を含む高分子鎖の分子運動によって発現されると考えられる。この点は、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイドなどのポリエーテル類からなる従来の高分子電解質の場合と同様である。しかし、双方の高分子電解質の構造および構成は、互いに異なっている。
【0016】
ポリエーテルからなる従来の高分子電解質の場合、オキシアルキレン構造は、電解質全体にランダムに存在している(図1参照)。図1に示す高分子電解質51では、オキシアルキレン構造がポリエーテルの分子鎖52上に均等に存在しており、分子鎖52自体の配列もランダムであるため、オキシアルキレン構造は、高分子電解質52全体としてランダムに存在することになる。
【0017】
これに対して、本発明の高分子電解質に含まれる高分子架橋体11では(図2参照)、プレポリマーとして用いられた重合体12が、多官能性モノマーに基づく架橋構造13によって互いに結合される(多官能性モノマーが架橋点を形成する)ことで粒子14状となっており、粒子14の表面に、重合体12の端部15が無数に突出した構造が形成されていると考えられる。ただし、重合体12の架橋密度により程度は異なるものの、通常、粒子14の輪郭は明瞭ではなく(図2に示すように、架橋構造13によって重合体12の密度が高くなった部分を、便宜上、粒子14と称しているに過ぎない)、粒子14の内外で相分離構造は形成されていない。
【0018】
本発明の高分子電解質は、このような高分子架橋体11を無数に含んでおり、各々の高分子架橋体11は、図3に示すように、互いの端部15を絡み合わせながら配置されていると考えられる。このとき、端部15がオキシアルキレン構造を含んでいるため、粒子14の間にイオンチャネル16が形成されるが、イオンチャネル16におけるオキシアルキレン構造の密度は、図1に示すポリエーテル全体における同構造の密度に比べて高いと考えられる。また、隣り合う端部15同士の距離が非常に小さいために、イオン伝導に必要な分子運動は小さくてもよいと考えられる。本発明の高分子電解質1では、これらの要因によって、イオン伝導率(特に室温近傍、あるいは室温近傍以下におけるイオン伝導率)が向上できるのではないかと推定される。即ち、本発明の高分子電解質1は、オキシアルキレン構造を含む高分子鎖の配置を制御する(より具体的には、オキシアルキレン構造そのものの配置を制御する)ことによって、イオン伝導率を向上させた高分子電解質であるともいえる。ポリエーテルからなる従来の高分子電解質の構造および構成に対して、この点が、最も大きく異なっている。
【0019】
また、粒子14の内部には、重合体12を構成する分子鎖の間に空隙が多数存在すると考えられ、粒子14の内部に位置する重合体12を介しても、イオンを伝導できると考えられる。即ち、粒子14の内部にもイオンチャネルが存在すると推定され、このようなイオンチャネル(高分子架橋体内部のイオンチャネル)の存在も、本発明の高分子電解質1が、イオン伝導性に優れる要因であると考えられる。即ち、本発明の高分子電解質1は、主として高分子鎖の分子運動によってイオンが伝達されること、粒子14の境界が明瞭ではなく相分離構造が形成されていないこと、粒子14の内部を介してイオンを伝達しうることなどの点で、特許文献1および2に開示されている高分子電解質とは、その構造および構成が全く異なっていると考えられる。
【0020】
また、高分子架橋体11は架橋構造13を有しているため、本発明の高分子電解質1は、ポリエーテルからなる従来の高分子電解質に比べて、強度、形状保持力などの機械的特性にも優れていると考えられる。
【0021】
重合体の構造単位が有するオキシアルキレン構造は特に限定されないが、イオン伝導性に優れることから、通常、オキシエチレン構造および/またはオキシプロピレン構造である。即ち、本発明の高分子電解質における重合体は、以下の化学式(1)によって示されるオキシエチレン構造、および、以下の化学式(2)によって示されるオキシプロピレン構造から選ばれる少なくとも1つを側鎖に有し、側鎖の末端がHまたはCH3である構造単位を含んでいてもよい。このような構成とすることによって、プレポリマー法により重合させて得た高分子架橋体を含む高分子電解質のイオン伝導率をより向上できる。
【0022】
【化1】

【0023】
上記式(1)において、n1は、3以上100以下の自然数であり、3以上20以下の自然数であることが好ましい。なお、上記n1は、一般的な手法、例えば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)測定および/またはNMR(核磁気共鳴)測定を行うことなどにより求めることができるが、バラツキを反映した平均値として測定されるため、上記n1の測定値は必ずしも自然数にならない。これ以降の各化学式に示すn2〜n5についても同様である。
【0024】
【化2】

【0025】
上記式(2)において、n2は、1以上90以下の自然数であり、3以上20以下の自然数であることが好ましい。
【0026】
オキシエチレン構造を側鎖に有する構造単位としては、イオン伝導性に優れることから、以下の化学式(3)によって示される構造単位が好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
上記式(3)において、R1およびR2は、互いに独立して、HまたはCH3である。n3は、3以上100以下の自然数であり、3以上20以下の自然数であることが好ましい。
【0029】
上記式(3)によって示される構造単位は(即ち、上記式(3)によって示される構造単位を含む重合体は)、例えば、以下の化学式(7)によって示されるモノマーA((メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル)の重合により形成できる。
【0030】
【化7】

【0031】
上記式(7)において、R8およびR9は、互いに独立して、HまたはCH3である。n5は、3以上100以下の自然数であり、3以上20以下の自然数であることが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」の表記は、アクリル酸(モノマーAでは、R8=H)またはメタクリル酸(モノマーAでは、R8=CH3)を意味している。
【0032】
上記式(3)に示す構造単位を含む重合体の場合、重量平均分子量(Mw)にして、10万〜300万程度の範囲であればよく、20万〜100万程度の範囲が好ましい。分子量が過大あるいは過小になると、プレポリマー法による重合の際に、図2に示すような構造が形成できず、イオン伝導性を向上する効果が低下することがある。
【0033】
重合体は、一般的な重合方法(例えば、溶液ラジカル重合)を用いて形成すればよい。例えば、モノマーAと、重合溶媒と、重合開始剤とを混合し、所定の温度に加熱したり、紫外線を照射したりすればよい。
【0034】
多官能性モノマーは、重合体間に架橋構造を形成できる限り特に限定されず、例えば、以下の化学式(4)によって示されるモノマーを用いればよい。式(4)によって示されるモノマーは、上記式(3)によって示される構造単位を含む重合体との反応性に優れている。
【0035】
【化4】

【0036】
上記式(4)において、R3は、HまたはCH3である。R4は、Hまたは以下の化学式(5)によって示される基であり、少なくとも2つのR4が、以下の式(5)によって示される基である。
【0037】
【化5】

【0038】
上記式(5)において、R5は、HまたはCH3である。
【0039】
本発明におけるプレポリマー法とは、予めモノマーAなどのモノマーを重合させることによりプレポリマーである重合体を形成し、形成した重合体と多官能性モノマーとを重合させて高分子架橋体を得る手法をいう。実際にプレポリマー法により高分子架橋体を得るためには、一般的な重合方法(例えば、溶液ラジカル重合)を用いればよい。その際、重合体の形成に引き続いて、形成した重合体と多官能性モノマーとの重合を行ってもよいし、別途形成した重合体と多官能性モノマーとの重合を行ってもよい。重合体の形成に引き続いて、多官能性モノマーとの重合を行う具体的な方法は、実施例に後述する。
【0040】
重合体との重合時の多官能性モノマーの量は、重合体100重量部に対して、例えば、0.1重量部〜5重量部の範囲であればよく、0.2重量部〜1重量部の範囲が好ましい。多官能性モノマーの量が過大になると、得られた高分子架橋体の架橋密度が過大になり、高分子電解質のイオン伝導率が低下することがある。多官能性モノマーの量が過小になると、図2に示すような構造を形成することが困難になる。
【0041】
溶液ラジカル重合は一般的な手順に従って行えばよく、例えば、重合体、多官能性モノマー、重合溶媒および重合開始剤を混合し、所定の温度に加熱したり、紫外線を照射したりすればよい。混合方法は特に限定されず、例えば、重合体を含む重合溶媒中に重合開始剤を加え、多官能性モノマーを滴下させることにより、重合反応を進めながら混合してもよい。この方法では、重合溶媒内における重合体の網目構造内に、多官能性モノマーが入り込む形で架橋構造を形成するため、元の網目構造を反映した構造を有する高分子架橋体が形成できると考えられる。溶液ラジカル重合は、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素ガス雰囲気下、希ガス雰囲気下)において行うことが好ましい。
【0042】
重合溶媒は、ラジカル重合に一般的に使用される溶媒であればよく、例えば、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、メタノールなどを用いればよい。重合開始剤についても同様に、ラジカル重合に一般的に使用される開始剤であればよく、例えば、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物系開始剤や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ系開始剤、イルカギュア(R)などの光重合開始剤などを用いればよい。混合する重合開始剤の量は、重合体100重量部に対して、通常、0.01重量部〜5重量部程度の範囲である。
【0043】
重合体と多官能性モノマーとを重合する際に、重合体および多官能性モノマーの双方と重合反応を行うことができるモノマーをさらに加えてもよく、重合体に含まれる構造単位を形成できるモノマーをさらに加えることが好ましい。例えば、重合体が上記式(3)に示す構造単位を含む場合、重合体と多官能性モノマーと式(7)に示すモノマーAとを混合し、重合させてもよい。モノマーAが重合体12と多官能性モノマーとの間に入り込むように重合が行われるため、架橋構造13が大きくなり(即ち、重合体12間の距離が大きくなり)、粒子14の形状や粒子14内の空隙の大きさなどを最適化することができる。また、モノマーAが重合体12の端部15に付加するようにも重合が行われるため、端部15の長さ、即ち、イオンチャネル16の状態を最適化することができる。
【0044】
さらに加えるモノマーの量は、重合体100重量部に対して、例えば、5重量部〜40重量部の範囲であればよく、10重量部〜30重量部の範囲が好ましい。
【0045】
本発明の高分子電解質では、重合体に含まれる構造単位の側鎖と相溶性を有する極性ポリマーをさらに含んでいてもよい。より具体的に言えば、端部15と相溶性を有する極性ポリマーをさらに含んでいてもよい。極性ポリマーは、端部15の近傍、即ち、イオンチャネル16内に配置されるため、イオン伝導性をさらに向上できる。このような構成の高分子電解質は、粒子状の架橋体の周囲に、非架橋の極性ポリマーからなる被覆が形成された状態にある、ともいえる。
【0046】
極性ポリマーは、例えば、ポリエチレンオキサイド(エチレンオキサイド重合体)、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体であればよい。これらの重合体は、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
【0047】
また例えば、極性ポリマーが、以下の化学式(6)によって示される構造単位を含んでいてもよい。
【0048】
【化6】

【0049】
上記式(6)において、R6およびR7は、互いに独立して、HまたはCH3であり、n4は、3以上100以下の自然数である。このような極性ポリマーは、上述した式(7)に示すモノマーAを重合させて形成できる。
【0050】
極性ポリマーの分子量は特に限定されず、例えば、重量平均分子量(Mw)にして、10万〜500万程度の範囲であればよい。
【0051】
極性ポリマーは、高分子電解質の製造工程において、高分子架橋体を形成した後の任意の時点で加えればよい。加える量は、高分子架橋体100重量部に対して、例えば、10重量部〜50重量部の範囲であればよく、15重量部〜30重量部の範囲が好ましい。
【0052】
本発明の高分子電解質が含むイオン種は、端部15または粒子14内部であるかを問わず、高分子架橋体11を介して輸送される種(高分子電解質1として伝導性を有する種)であれば特に限定されず、例えば、リチウムイオンであればよい。イオン種がリチウムイオンである場合、本発明の高分子電解質は、リチウム一次/二次電池やキャパシタなどに用いることができる。なお、高分子電解質は、通常、上記イオン種のカウンターイオンを含んでいる。
【0053】
高分子電解質が含むイオン種の量は、特に限定されない。イオン種がリチウムイオンである場合、共重合体の重量aに対するリチウムの重量bの比(b/a)の値は、0.01≦b/a≦10の範囲であることが好ましく、0.02≦b/a≦2の範囲がより好ましい。b/aの値が小さすぎる場合は、イオン種の欠乏によって、また、b/aの値が大きすぎる場合は、過剰なイオン種が、カウンターイオンと共に電解質塩として析出したり、イオン会合を起こしたりすることによって、高分子電解質のイオン伝導性が低下する傾向を示す。
【0054】
イオン種は、高分子電解質の製造工程における任意の時点において加えればよい。高分子架橋体を形成する際に(プレポリマー法による重合時に)イオン種を加えてもよいし、高分子架橋体を形成した後にイオン種を加えてもよい。極性ポリマーをさらに加える場合、極性ポリマーと同時にイオン種を加えてもよい。
【0055】
混合するイオン種の形態は特に限定されず、例えば、イオン種を含む塩を用いればよい。イオン種がリチウムイオンである場合、リチウム塩を用いればよい。具体的には、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF6)、リチウムトリフルオロメタンスルホン酸イミド(LiN(CF3SO22)などを用いればよい。混合するイオン種の量は、高分子電解質として必要なイオン種の量に応じて設定すればよい。
【0056】
本発明の高分子電解質の形態や構成などは、特に限定されず、例えば、膜状(フィルム状)であってもよいし、ゲル状であってもよい。膜状あるいはゲル状の高分子電解質は、固体電解質として扱うことができるため、取り扱い性や、電気化学素子に用いた場合の素子の安全性に優れている。膜状の高分子電解質は、電解質フィルムであるともいえる。
【0057】
本発明の高分子電解質は、高分子架橋体を支持する支持体をさらに含んでいてもよく、支持体を含むことにより、強度などの力学的特性を向上できる。支持体を含む場合、支持体の片側あるいは両側の主面に高分子架橋体が配置されていればよい。支持体が多孔質である場合、支持体の内部の空孔に高分子架橋体が配置されていてもよい。
【0058】
支持体には、例えば、不織布や多孔質フィルムを用いればよい。具体的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などからなる不織布や、PP、PE、エチレン−プロピレン共重合体などからなる多孔質フィルムを用いればよい。支持体の形状は、特に限定されない。
【0059】
本発明の高分子電解質において、上述した各々の形態および構成とする方法は、特に限定されない。例えば、溶液ラジカル重合法によって得られた溶液状の高分子電解質を、基板の表面に塗布した後に、溶媒を除去することにより、膜状の高分子電解質(電解質フィルム)としてもよい。基板と電解質フィルムとを剥離する必要がある場合には、剥離性を有するように、基板の表面が処理されていることが好ましい。
【0060】
溶液状の高分子電解質を多孔質の支持体に含浸させた後に、溶媒を除去することにより(あるいは溶媒を残留させた状態で)、支持体を含む膜状の高分子電解質(電解質フィルム)としてもよい。得られた電解質フィルムを、一対の電極によって狭持すれば、電気化学素子を形成できる。
【0061】
また、溶液状の高分子電解質を電極の表面に塗布した後に溶媒を除去することによっても、膜状の高分子電解質を形成でき、電気化学素子を形成できる。
【0062】
極性ポリマーをさらに加える場合、溶液状の高分子電解質に極性ポリマーを加えた後に、上述した膜形成処理を行ってもよいし、溶液状の高分子電解質を一度フィルムとした後に粉砕して粉末状とし、極性ポリマーを加えて溶媒に再溶解させ、再度、膜形成処理を行ってもよい。これらの方法は、必要な高分子電解質の特性に応じて、任意に選択すればよい。
【0063】
本発明の高分子電解質は、必要に応じ、高分子架橋体およびイオン種以外の材料を含んでいてもよく、例えば、絶縁性かつ上記イオン種の伝導性を有する溶液を含んでいてもよい。粒子14内部の空隙に溶液が保持されることによって、イオン伝導性がさらに向上した高分子電解質とすることができる。
【0064】
上記溶液は、高分子架橋体およびイオン種との相溶性に優れることが好ましく、イオン種がリチウムイオンである場合、例えば、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどのカーボネート類、γ−ブチロラクトンに代表される環状エステル類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンに代表されるエーテル類などであればよい。
【0065】
また例えば、絶縁性を有するポリマー粒子や無機粒子を含んでいてもよい。これらの粒子は、高分子電解質が用いられる環境(例えば、二次電池内)において、溶解しないことが好ましい。粒子の種類を適宜選択することによって、強度などの力学的特性を向上できたり、高分子電解質を狭持する電極間の短絡抑制効果を高めたり、膜状の高分子電解質とする場合に、その膜厚をより均一にできる。無機粒子の種類は特に限定されないが、絶縁性であり、高分子電解質に含まれるイオン種と実質的に化学反応しない無機粒子が好ましい。具体的には、アルミナ粒子、シリカ粒子などを用いればよく、高分子電解質内における安定性の観点からは、アルミナ粒子を用いることが好ましい。ポリマー粒子としては、例えば、架橋ポリスチレン粒子や、ポリ4フッ化エチレン粒子などを用いればよい。
【0066】
これらの粒子のサイズは、平均粒径にして、例えば、5μm〜100μm程度の範囲であればよく、高分子電解質に含まれる上記粒子の量は、共重合体100重量部に対して、10重量部〜500重量部程度の範囲であればよい。
【0067】
これら、高分子架橋体およびイオン種以外の材料は、高分子電解質の製造工程における任意の時点で加えればよい。なお、本発明の高分子電解質を製造する際には、重合体あるいは高分子架橋体を精製する工程など、必要に応じて任意の工程を加えることができる。
【0068】
次に、本発明の電気化学素子について説明する。
【0069】
本発明の電気化学素子は、一対の電極と、前記一対の電極によって狭持された本発明の高分子電解質とを含んでいる。本発明の高分子電解質がイオン伝導性に優れることから、特性(例えば、放電特性)に優れる電気化学素子とすることができる。
【0070】
本発明の電気化学素子の具体的な構成は特に限定されない。正極および負極の構成、高分子電解質に含まれるイオン種などを選択することによって、一次電池、二次電池、キャパシタ、センサーなどを構成できる。
【0071】
図4に、本発明の電気化学素子の一例を示す。図4に示す電気化学素子21は、コイン型のリチウム二次電池である。電気化学素子21は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出できる負極活物質24を含む負極と、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出できる正極活物質26を含む正極と、正極および負極によって狭持された高分子電解質22とを含んでいる。ここで、高分子電解質22は、上述した本発明の高分子電解質であり、イオン種としてリチウムイオンを含み、リチウムイオン伝導性を有している。正極活物質26は、正極集電体25上に配置されており、負極活物質24は、負極集電体23上に配置されている。負極集電体23は、負極端子を兼ねた封口板28と電気的に接続され、正極集電体25は、正極端子を兼ねたケース27と電気的に接続されている。ケース27と封口板28とは、絶縁性のガスケット29により固定されており、正極、負極および高分子電解質22は、ケース27の内部に密閉されている。
【0072】
高分子電解質22を除き、電気化学素子21が備える各部材には、リチウム二次電池として一般的な材料を用いればよい。負極活物質24には、例えば、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−インジウム合金、リチウム−スズ合金、リチウム−鉛合金、リチウム−ビスマス合金、リチウム−ガリウム合金、リチウム−亜鉛合金、リチウム−カドミニウム合金、リチウム−ケイ素合金、リチウム−カルシウム合金、リチウム−バリウム合金、および、リチウム−ストロンチウム合金などの合金類、酸化鉄、酸化スズ、酸化ニオビウム、酸化タングステンおよび酸化チタンなどの酸化物、コークス、黒鉛および有機物焼成体などの炭素材料を用いればよい。正極活物質26には、例えば、LiCoO2などのリチウムコバルト酸化物、LiMn24などのリチウムマンガン酸化物、LiNiO2などのリチウムニッケル酸化物、LiNiO2のNiをCoにより一部置換したLiNiCoO2、二酸化マンガン、五酸化バナジウムおよびクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化チタンおよび二硫化モリブデンなどの金属硫化物などを用いればよく、LiNiO2、LiNiCoO2およびLiMn24から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0073】
正極および負極は、集電体および活物質以外に、必要に応じて、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックなどからなる導電剤や、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどからなる結着剤を含んでいてもよい。
【0074】
電気化学素子21は、リチウム二次電池の一般的な製造方法により、形成できる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0076】
本実施例では、リチウムイオン伝導性を有する高分子電解質サンプルを5種類(実施例サンプル3種類、比較例サンプルを2種類)作製し、各サンプルのリチウムイオン伝導率を測定した。
【0077】
各電解質サンプルの作製方法を示す。
【0078】
−サンプル1−
最初に、モノマーAとしてアクリル酸ポリエチレングリコールメチルエーテル(式(7)におけるR8=H、R9=CH3、n5(平均値)=9、シグマ−アルドリッチ社製)40重量部を、重合溶媒である酢酸エチル60重量部中に、重合開始剤であるAIBN0.01重量部とともに溶解させ、形成した溶液に連鎖移動剤であるGSH(グルタチオン)0.01重量部をさらに加えた後に、60℃に昇温して、溶液ラジカル重合を行った。重合は、窒素雰囲気下において12時間実施した。
【0079】
重合によって得られた溶液中に含まれるポリマーをGPC(ゲル浸透クロマトグラフ)により分析したところ、モノマーAの重合によって、式(3)に示す構造単位からなる重合体(式(3)におけるR1=H、R2=CH3、n3(平均値)=9)が形成されていることが確認された。重合体の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、約12万であった。
【0080】
次に、得られた溶液に、上記モノマーAをさらに160重量部、多官能性モノマーとして、式(4)によって示される3官能性モノマー(式(4)におけるR3=CH3、全てのR4は式(5)によって示される基であり、式(5)におけるR5=H)を2重量部、および、重合開始剤としてイルガキュア1010:長瀬産業社製)を0.5重量部加えて混合した。混合によって得られた溶液を、基板であるポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に塗布した後に、紫外線を照射し、上記重合体をプレポリマーとする溶液ラジカル重合を行い、フィルム状の高分子架橋体を得た。次に、得られたフィルムをPETフィルムから剥離した後に、ヘキサン/酢酸エチル混合溶液(体積比1:1)に浸漬し、未反応モノマーを除去した。その後、100℃で3時間真空乾燥した後に、乳鉢を用いて粉砕し、粉末状の高分子架橋体とした。得られた高分子架橋体粉末は、100℃で24時間さらに真空乾燥した。
【0081】
次に、このようにして作製した粉末状の高分子架橋体30重量部と、リチウムイオンとしてリチウムトリフルオロメタンスルホン酸イミド(LiN(CF3SO22:LiTFSI、キシダ化学社製)5重量部と、極性ポリマーとしてポリエチレンオキサイド(アルコックスR−150、明成化学工業社製、粘度平均分子量15万、直鎖状)65重量部と、混合溶媒としてアセトニトリル200重量部とを80℃で撹拌しながら混合し、溶液を得た。次に、得られた溶液をシャーレに展開し、80℃で3時間加熱乾燥した後に、100℃で24時間真空乾燥して、厚さ約100μmの電解質フィルム(サンプル1)を得た。
【0082】
−サンプル2−
最初に、サンプル1と同様にして粉末状の高分子架橋体を作製した。
【0083】
次に、このようにして作製した粉末状の高分子架橋体30重量部と、リチウムイオンとしてLiTFSI(キシダ化学社製)5重量部と、極性ポリマーとしてエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(PEPO−10、明成化学工業社製、粘度平均分子量100万、直鎖状)65重量部と、混合溶媒としてアセトニトリル200重量部とを80℃で撹拌しながら混合し、溶液を得た。次に、得られた溶液をシャーレに展開し、80℃で3時間加熱乾燥した後に、100℃で24時間真空乾燥して、厚さ約100μmの電解質フィルム(サンプル2)を得た。
【0084】
−サンプル3−
最初に、サンプル1と同様にして粉末状の高分子架橋体を作製した。
【0085】
次に、このようにして作製した粉末状の高分子架橋体30重量部と、リチウムイオンとしてLiTFSI(キシダ化学社製)5重量部と、極性ポリマーとして、別途作製したメタクリル酸ポリエチレングリコールメチルエーテル重合体65重量部と、混合溶媒としてアセトニトリル200重量部とを、80℃で撹拌しながら混合し、溶液を得た。次に、得られた溶液をシャーレに展開し、80度で3時間加熱乾燥した後に、100℃で24時間真空乾燥して、厚さ約100ミクロンの電解質フィルム(サンプル3)を得た。
【0086】
極性ポリマーの作製方法は以下の通りである。
【0087】
モノマーとしてメタクリル酸ポリエチレングリコールメチルエーテル(式(7)におけるR8=CH3、R9=CH3、n5(平均値)=9、日本油脂社製)40重量部を、重合溶媒である酢酸エチル60重量部中に、重合開始剤であるAIBN0.01重量部とともに溶解させ、60℃に昇温して、溶液ラジカル重合を行った。重合は、窒素雰囲気下において12時間実施した。
【0088】
次に、重合によって得られた溶液中に含まれるポリマーを、ヘキサン/酢酸エチル混合溶液(体積比1:1)を用いて、3回再沈精製し、極性ポリマーとした。精製後のポリマーをGPCにより測定したところ、上記モノマーの重合によって、式(3)に示す構造単位からなる重合体(式(3)におけるR1=H、R2=CH3、n3(平均値)=9、ポリスチレン換算分子量約20万)が形成されていることが確認された。
【0089】
−サンプルA(比較例)−
比較例であるサンプルAとして、高分子成分がポリエーテル(ポリエチレンオキサイド)からなる電解質フィルムを作製した。
【0090】
具体的には、ポリエチレンオキサイド(アルコックスR−150、明成化学工業社製、粘度平均分子量15万、直鎖状)95重量部と、リチウムイオンとしてLiTFSI(キシダ化学社製)5重量部と、混合溶媒としてアセトニトリル200重量部とを、80℃で撹拌しながら混合し、溶液を得た。次に、得られた溶液をシャーレに展開し、80度で3時間加熱乾燥した後に、100℃で24時間真空乾燥して、厚さ約100ミクロンの電解質フィルム(サンプルA)を得た。
【0091】
−サンプルB(比較例)−
比較例であるサンプルBとして、高分子成分がポリエーテル(エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体)からなる電解質フィルムを作製した。
【0092】
具体的には、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(PEPO−10、明成化学工業社製、粘度平均分子量100万、直鎖状)95重量部と、リチウムイオンとしてLiTFSI(キシダ化学社製)5重量部と、混合溶媒としてアセトニトリル200重量部とを、80℃で撹拌しながら混合し、溶液を得た。次に、得られた溶液をシャーレに展開し、80度で3時間加熱乾燥した後に、100℃で24時間真空乾燥して、厚さ約100ミクロンの電解質フィルム(サンプルB)を得た。
【0093】
−リチウムイオン伝導率測定−
作製した電解質フィルムを、アルゴン雰囲気下において、一対の白金電極(円形、直径10mm)によって狭持し、インピーダンス測定装置(263Aポテンショスタット+5210アンプ:プリンストン アプライド リサーチ社製)を用い、温度23℃にて、複素インピーダンス解析法により実数インピーダンス成分R(Ω)を求めた。高分子電解質のリチウムイオン伝導率σ(S/cm)は、インピーダンス成分R(Ω)、高分子電解質の厚さd(cm)、および、白金電極と高分子電解質とが接触している面積A(cm2)から、式σ=d/(R・A)により求めた。
【0094】
以下の表1に、各高分子電解質サンプルに対するイオン伝導率の測定結果を示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1に示すように、実施例であるサンプル1〜3では、比較例であるサンプルAおよびBに比べて、リチウムイオン伝導率が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、イオン伝導性に優れる高分子電解質と電解質フィルムとを提供できる。本発明によれば、上記高分子電解質を用いることによって、特性に優れる電気化学素子を提供できる。本発明の高分子電解質は、一次電池、二次電池、キャパシタ、センサーなど、各種の電気化学素子に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】従来の高分子電解質の構造の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の高分子電解質に含まれる高分子架橋体の構造の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の高分子電解質の構造の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の電気化学素子の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0099】
1 高分子電解質
11 高分子架橋体
12 重合体
13 架橋構造
14 粒子
15 端部
16 イオンチャネル
21 電気化学素子(リチウム二次電池)
22 高分子電解質
23 負極集電体
24 負極活物質
25 正極集電体
26 正極活物質
27 ケース
28 封口板
29 ガスケット
51 高分子電解質
52 分子鎖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシアルキレン構造を側鎖に有する構造単位を含む重合体と、多官能性モノマーとを、前記重合体をプレポリマーとするプレポリマー法により重合させて得た高分子架橋体と、
イオン種とを含み、
23℃におけるイオン伝導率が、2.9×10-6(S/cm)以上であることを特徴とする高分子電解質。
【請求項2】
前記構造単位が、以下の化学式(1)によって示されるオキシエチレン構造、および、以下の化学式(2)によって示されるオキシプロピレン構造から選ばれる少なくとも1つを側鎖に有し、前記側鎖の末端がHまたはCH3である請求項1に記載の高分子電解質。
【化1】

上記式(1)において、n1は、3以上100以下の自然数である。
【化2】

上記式(2)において、n2は、1以上90以下の自然数である。
【請求項3】
前記構造単位が、以下の化学式(3)によって示される請求項1に記載の高分子電解質。
【化3】

上記式(3)において、R1およびR2は、互いに独立して、HまたはCH3であり、n3は、3以上100以下の自然数である。
【請求項4】
前記多官能性モノマーが、以下の化学式(4)によって示される請求項1に記載の高分子電解質。
【化4】

上記式(4)において、R3は、HまたはCH3である。
4は、Hまたは以下の化学式(5)によって示される基であり、少なくとも2つのR4が、以下の化学式(5)によって示される基である。
【化5】

上記式(5)において、R5は、HまたはCH3である。
【請求項5】
前記側鎖と相溶性を有する極性ポリマーをさらに含む請求項1に記載の高分子電解質。
【請求項6】
前記極性ポリマーが、エチレンオキサイド重合体およびエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体から選ばれる少なくとも1つである請求項5に記載の高分子電解質。
【請求項7】
前記極性ポリマーが、以下の化学式(6)によって示される構造単位を含む請求項5に記載の高分子電解質。
【化6】

上記式(6)において、R6およびR7は、互いに独立して、HまたはCH3であり、n4は、3以上100以下の自然数である。
【請求項8】
前記イオン種が、リチウムイオンである請求項1に記載の高分子電解質。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質を含むことを特徴とする電解質フィルム。
【請求項10】
一対の電極と、
前記一対の電極によって狭持された電解質とを含む電気化学素子であって、
前記電解質が、請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質であることを特徴とする電気化学素子。
【請求項11】
前記一対の電極が、前記高分子電解質に含まれるイオン種を可逆的に吸蔵および放出できる正極および負極であり、
前記イオン種が、リチウムイオンである請求項10に記載の電気化学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−103145(P2007−103145A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290880(P2005−290880)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】