説明

高含水率有機廃棄物の脱塩方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料

【課題】家畜排泄物あるいは食品廃棄物等を含有する高含水率有機廃棄物を、エネルギー源として有効利用することができ、さらにはセメント焼成設備等の燃料として有効利用することができる高含水率有機廃棄物の脱塩方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料を提供する。
【解決手段】本発明の高含水率有機廃棄物の脱塩方法は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を、その等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌してなる有機廃棄物スラリーS1、または、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する含水率が60質量%以上の含水有機廃棄物S2をスクリュープレス3に投入し、スクリュウ12を4.5m/分以下の周速にて回転させて脱水処理し、塩素濃度が2500ppm以下、含水率が75質量%以下の脱塩素有機廃棄物からなるケーキCとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含水率有機廃棄物の脱塩方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料に関し、更に詳しくは、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等にて廃棄される食品廃棄物等を含有する有機廃棄物に含まれる塩素の濃度及び含水率を低減することが可能な高含水率有機廃棄物の脱塩方法、及び、この高含水率有機廃棄物の脱塩方法により得られた脱塩素有機廃棄物をバイオマス燃料とすることが可能な高含水率有機廃棄物の燃料化方法、並びに、セメント焼成設備等のエネルギー源として有効利用することが可能なバイオマス燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等にて廃棄される売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物は、そのままの状態もしくは発酵させた状態で肥料として利用するのが一般的であるが、焼却炉等を用いて焼却することで減容化し、得られた焼却灰を肥料として利用することもある。
特に、近年、家畜排泄物の管理に関する適正化法が施行されたことにもより、畜糞尿を含む家畜排泄物の多くが肥料化されることが予想される一方、農地の減少傾向により使用される肥料の総量も減少傾向にある。そこで、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するために、肥料以外の用途の多角化が急務になっており、エネルギーとしての利用もその一つである。
【0003】
一般に、家畜排泄物は35質量%以下の低含水率状態では高位の発熱量を有するものであるが、低含水率状態とするためには、長時間の自然乾燥や化石燃料を用いた加熱乾燥を必要とするために、エネルギーとしての利用はごく一部では行われているものの総体的には進んでいない。
現在行われている家畜排泄物のエネルギー利用としては、鶏糞を発電や廃棄物ボイラーの燃料として用いたり、牛や豚の糞尿をメタン発酵させてメタンガスを主成分とするバイオガスを生成させ、このバイオガスを燃料として用いる等がある。
【0004】
そこで、このような家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や装置が提案されており、例えば、次のような提案がなされている。
(1)鶏糞、家畜糞等の含水廃棄処理物を、蒸気管と燃焼室を備えた熱風炉と多段式の乾燥炭化炉との間に発生蒸気の循環系統を配設して密閉系内で熱源を循環させながら炭化物及び灰化物を生成する方法(特許文献1)。
この方法では、乾燥炭化炉から炭化物を、熱風炉から灰化物を、それぞれ回収することで、二次利用可能な炭化物及び灰化物を同時に資源回収するとともに、省資源化と無公害化の推進を図っている。
(2)畜糞を乾燥させる乾燥機と、乾燥された畜糞を小粒と大粒に分離する分離機と、分離された小粒の乾燥畜糞を焼却処理する焼却炉と、乾燥未完了の畜糞を破砕して金属類の混入異物を露出するとともに、この混入異物を磁石を介して除去する磁石付振動式篩とを有する畜糞乾燥焼却装置(特許文献2)。
この装置では、畜糞原料に混入している石、金属などの金属類異物を簡単容易に撤去することで、金属類異物に起因する機械のトラブルを未然に回避するとともに、この畜糞を焼却処理することにより発生する熱を有効利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−330092号公報
【特許文献2】特開2005−156085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したように、家畜排泄物や食品廃棄物等の有機廃棄物を有効利用するための様々な方法や装置が提案されているが、これらの方法や装置においても、次のような問題点があった。
鶏糞をエネルギー源として利用しようとした場合、鶏糞のエネルギー利用を阻んでいる主たる点は、塩素含有量が高いという点である。鶏糞の塩素含有量が高いと、この塩素成分のために燃焼装置が腐食したり、あるいは低融点塩素化合物が発生して配管等の様々な箇所で閉塞等の様々なトラブルが発生する虞があるという問題点があった。
また、この鶏糞を、例えば、セメント焼成設備に燃料として投入した場合、それに含まれる塩素成分がセメントクリンカに混入してセメントの品質を低下させる虞がある。また、塩素成分がセメント焼成設備を腐食させる等のトラブルが発生する虞があるために、セメントの操業に悪影響を及ぼす虞がある。
【0007】
また、牛や豚の糞尿がエネルギー利用され難いのは、鶏糞と同様に塩素含有量が高いことと、含水率が80%前後と高いために、燃料として用いた場合、燃焼時に発生する熱エネルギーが糞尿に含まれる水分の蒸発潜熱に奪われてしまい、燃料としてのエネルギーの有効利用を図ることが難しいからである。
また、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物を発酵させたものもあるが、この発酵物は、含水率は低下しているものの、発酵元によってバラツキがあり、品質が安定していないという欠点があった。
このように、様々な理由から、家畜排泄物や食品廃棄物等を含む有機廃棄物のエネルギー源としての有効利用ははかばかしくないのが現状である。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物、あるいは、売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物、等を含有する高含水率有機廃棄物を、エネルギー源として有効利用することができ、さらにはセメント焼成設備等の燃料として有効利用することができる高含水率有機廃棄物の脱塩方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する含水率が60質量%以上の含水有機廃棄物、または、前記家畜排泄物、前記食品廃棄物のいずれか一方または双方をその等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌してなる有機廃棄物スラリーからなる高含水率有機廃棄物を、脱水効率に優れているスクリュープレスを用いて4.5m/分以下の周速にて脱水処理すれば、塩素濃度が2500ppm以下かつ含水率が70質量%以下の脱塩素有機廃棄物を得ることが可能であり、さらに、この脱塩素有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥すれば、含水率が35質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物を得ることが可能であることを見出し、本発明を提案することに至った。
【0010】
すなわち、本発明の高含水率有機廃棄物の脱塩方法は、高含水率有機廃棄物を脱塩及び低含水率化するための方法であって、前記高含水率有機廃棄物をスクリュープレスを用いて4.5m/分以下の周速にて脱水処理して、塩素濃度が2500ppm以下、含水率が75質量%以下の脱塩素有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0011】
前記高含水率有機廃棄物は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する含水率が60質量%以上の含水有機廃棄物、または、前記家畜排泄物、前記食品廃棄物のいずれか一方または双方を、その等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌してなる有機廃棄物スラリーであることが好ましい。
前記高含水率有機廃棄物にカチオン系の高分子系凝集剤を添加して、平均粒子径が2mm以上の凝集粒子を生成させ、この凝集粒子を含む高含水率有機廃棄物を、前記スクリュープレスを用いて脱水処理することが好ましい。
【0012】
本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法は、本発明の高含水率有機廃棄物の脱塩方法により得られた脱塩素有機廃棄物をバイオマス燃料とするための方法であって、前記脱塩素有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が2500ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とすることを特徴とする。
【0013】
本発明のバイオマス燃料は、高含水率有機廃棄物をスクリュープレスを用いて4.5m/分以下の周速にて脱水処理し、得られた脱塩素有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料であって、塩素濃度が2500ppm以下かつ含水率が35質量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高含水率有機廃棄物の脱塩方法によれば、高含水率有機廃棄物を、脱水効率に優れたスクリュープレスを用いて4.5m/分以下の周速にて脱水処理するので、脱水処理により得られる脱塩素有機廃棄物の塩素濃度を2500ppm以下、含水率を75質量%以下に低減することができる。
また、このスクリュープレスは、構成が簡単で、イニシャルコスト及びランニングコストに優れ、稼働時のトラブルも少なく、メンテナンス性に優れているので、他の脱水機を用いた場合と比べて、含水率がより低い脱塩素有機廃棄物を容易に得ることができ、さらには、脱水処理工程における作業時間及び作業効率、及び作業に掛かる製造コストを大幅に改善することができる。
【0015】
本発明の高含水率有機廃棄物の燃料化方法によれば、本発明の高含水率有機廃棄物の脱塩方法により得られた脱塩素有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が2500ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とするので、含水率の高い有機廃棄物を、容易に燃料化することができる。
しかも、得られたバイオマス燃料は、塩素濃度が2500ppm以下であり、かつ含水率も35質量%以下と低いので、塩素濃度及び含水率の低い高品位のバイオマス燃料を低コストにて容易に得ることができる。
【0016】
本発明のバイオマス燃料によれば、高含水率有機廃棄物をスクリュープレスを用いて4.5m/分以下の周速にて脱水処理し、得られた脱塩素有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料の塩素濃度を2500ppm以下、かつ含水率を35質量%以下としたので、バイオマス燃料としての燃焼効率を向上させることができ、塩素濃度及び含水率が低く高品位のバイオマス燃料を提供することができる。
また、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入したとしても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の脱塩・燃料化設備を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態の脱塩・燃料化設備のスクリュープレスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の高含水率有機廃棄物の脱塩方法及び燃料化方法並びにバイオマス燃料を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
なお、本形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0019】
[高含水率有機廃棄物の脱塩・燃料化設備]
図1は、本発明の一実施形態の高含水率有機廃棄物の脱塩方法及び燃料化方法に用いられる脱塩・燃料化設備を示す模式図であり、図において、1は溶解槽、2は貯留装置、3はスクリュープレス、4は乾燥設備、5は乾燥機、6は粉砕機、7は排水処理装置である。
【0020】
この脱塩・燃料化設備で脱塩・燃料化の対象となる高含水率有機廃棄物としては、次の(1)、(2)が挙げられる。
(1)家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する含水率が60質量%以上の含水有機廃棄物。
(2)家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を、その等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌してなる有機廃棄物スラリー。
【0021】
ここで、家畜排泄物とは、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物のことであり、鶏舎、牛舎、豚舎等の畜舎から発生する洗浄水を含んだ含水率が60質量%以上の鶏糞、牛糞、豚糞等の高含水排泄物も含まれる。
また、食品廃棄物とは、百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、飲食店等にて廃棄される売れ残り弁当や各種残飯等の食品廃棄物のことである。
この家畜排泄物や食品廃棄物は、その用途や必要に応じて、1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
この高含水率有機廃棄物における塩素、または塩素化合物、あるいは塩素及び塩素化合物の含有量は、5000ppm〜30000ppmである。
【0022】
溶解槽1は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有しかつ塩素、または塩素化合物、あるいは塩素及び塩素化合物を所定量以上含む高含水率有機廃棄物を、その等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して有機廃棄物スラリーS1を作製することができるものであればよく、槽の少なくとも内面が有機廃棄物に含まれる塩素、または塩素化合物、あるいは塩素及び塩素化合物に対して耐食性を有する金属、例えばステンレス鋼等からなる槽が好ましく、例えば、撹拌手段が備えられた密閉式あるいは開放式の溶解槽が好適である。
【0023】
貯留装置2は、溶解槽1にて作製された有機廃棄物スラリーS1(あるいは、鶏舎、牛舎、豚舎等の畜舎から発生する洗浄水を含んだ含水率が60質量%以上の鶏糞、牛糞、豚糞等の含水有機廃棄物S2)をスクリュープレス3に送る際に、その流量を調整するために一旦貯留し、さらには、この有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)に、カチオン系の高分子系凝集剤を添加して平均粒子径が2mm以上の凝集粒子(フロック)を生成させる装置であり、有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)の固形分の沈降・滞留による嫌気性発酵を生じさせないように、この有機廃棄物スラリーS1あるいは含水有機廃棄物S2中の固形分の濃度を保持しかつその温度を制御しつつ撹拌する装置である。
【0024】
スクリュープレス3は、貯留装置2から送り出される有機廃棄物スラリーS1あるいは含水有機廃棄物S2を脱水処理して脱塩素有機廃棄物である固形状のケーキ(脱水有機廃棄物)と濾液とに固液分離する装置であり、図2に示すように、一端部11aから他端部11bに向かって拡径した軸11の外周面にスクリュウ12が設けられたスクリュウ軸13と、このスクリュウ軸13を囲むように設けられた円筒状の金属製のスクリーン14と、スクリュウ軸13に同軸的に設けられたモーター15とにより構成されている。
このスクリュープレス3は、含水率75質量%以下の固形状のケーキCを短時間で得ることができるので、含水率が60質量%以上の含水有機廃棄物を脱水処理するのに適した装置である。
【0025】
乾燥設備4は、固形状のケーキCを乾燥させるために、このケーキCに含まれる家畜排泄物や食品廃棄物の種類や量に応じて太陽熱単独あるいは太陽熱及び自然の風力による天日乾燥、自然の風力あるいは他の設備からの排気等を利用した風力乾燥、有機廃棄物の発酵に伴う発酵熱による発酵乾燥のいずれか1種、あるいは2種以上を選択することができる設備であり、有機廃棄物の発酵乾燥を行う縦型撹拌式発酵装置、横型開放式堆肥舎等の発酵装置と、太陽熱、自然の風力、他の設備からの排気等を利用してスクリュープレス3で脱水処理されたケーキCの天日乾燥あるいは風力乾燥を行うハウスとを備えている。
なお、この乾燥設備4は、高含水率有機廃棄物に含まれる家畜排泄物や食品廃棄物の種類や量が限定される場合には、それらの用途に応じて、発酵装置、ハウスのいずれか一方のみにより構成してもよい。
【0026】
乾燥機5は、乾燥設備4で天日乾燥されたケーキCの含水率を調整したり、あるいはスクリュープレス3での固液分離により生じた濾液をばっき槽により排水処理する際に発生する余剰汚泥を脱水処理して得られたケーキをさらに乾燥する必要がある場合等に用いられる装置であり、特に、用途に応じて乾燥、加熱乾燥を使い分けることができるという使い勝手の点でヒータ内蔵の乾燥機が好ましい。
粉砕機6は、乾燥設備4(あるいは乾燥機5)から取り出された固形状の乾燥したケーキ(乾燥有機廃棄物)に対して分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより直径10mm以下の粒子状とする分級機能を有する装置であり、篩、分級機等を備えた自動乳鉢、スタンパ、ニーダー、ロールミル等が好適に用いられる。
排水処理装置7は、スクリュープレス3からの濾液Wに所定の排水処理を施し、処理済みの排水を放流する装置である。
【0027】
[高含水率有機廃棄物の脱塩・燃料化方法]
次に、上記の高含水率有機廃棄物の脱塩・燃料化設備を用いて高含水率有機廃棄物を脱塩・燃料化する方法について説明する。
(1)有機廃棄物スラリーの作製
溶解槽1に所定量の水、例えば、脱塩処理された上水道水等の新水、あるいはスクリュープレス3等から排出される二次水等を、投入される有機廃棄物に対して等量以上かつ20倍量以下となるように投入し、さらに家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する有機廃棄物を投入して撹拌することにより、有機廃棄物スラリーを作製する。
【0028】
例えば、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する有機廃棄物が、塩素、または塩素化合物、あるいは塩素及び塩素化合物を所定量以上、例えば5000ppm〜30000ppm含む場合、この有機廃棄物の等倍量以上かつ20倍量以下、より好ましくは等倍量以上かつ10倍量以下、さらに好ましくは等倍量以上かつ5倍量以下の水と混合し有機廃棄物スラリーとする。
【0029】
この有機廃棄物スラリー中の固形分の濃度は、10質量%以上かつ40質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以上かつ25質量%以下である。
ここで、有機廃棄物スラリー中の固形分の濃度を10質量%以上かつ40質量%以下とした理由は、固形分の濃度が10質量%未満では、水の量が多すぎてしまい、有機廃棄物スラリーの発酵が進行し易くなり、その結果、発熱量を3500kcal/kg以上に維持することができなくなるからであり、一方、固形分の濃度が40質量%を超えると、水の量が少なすぎてしまい、撹拌が十分に行うことができなくなり、その結果、有機廃棄物スラリーに含まれる塩素、または塩素化合物、あるいは塩素及び塩素化合物を水中に溶出させることができなくなるからである。
【0030】
この有機廃棄物スラリー中の固形分の濃度を10質量%以上かつ40質量%以下とすることにより、この有機廃棄物スラリーに含まれる塩素、または塩素化合物、あるいは塩素及び塩素化合物を水中に溶出させ、脱塩処理することが可能になる。
【0031】
撹拌時間は、有機廃棄物スラリー中の固形分が沈降することなく、この固形分に含まれる塩素、または塩素化合物、あるいは塩素及び塩素化合物を水中に溶出させるのに充分な時間であればよく、通常、3分〜60分の範囲である。
この撹拌の間に、有機廃棄物が水洗されると同時に微細化されて水中に拡散し、有機廃棄物に含まれる塩素、または塩素化合物、あるいは塩素及び塩素化合物が水中に溶出され、脱塩処理される。
【0032】
(2)有機廃棄物スラリーあるいは含水有機廃棄物の貯留
次いで、溶解槽1にて作製された有機廃棄物スラリーS1(あるいは、畜舎から排出される鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を洗浄水にて洗浄することで生じた含水率が60質量%以上の鶏糞、牛糞、豚糞等の含水有機廃棄物S2)を、貯留装置2に投入し、この有機廃棄物スラリーS1あるいは含水有機廃棄物S2の温度を0℃以上かつ30℃以下、より好ましくは0℃以上かつ25℃以下、さらに好ましくは0℃以上かつ20℃以下の温度範囲内となるように調整し、撹拌する。
【0033】
ここで、有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)の温度は、メタン発酵させるのに最適な温度が37℃付近であることを考慮すると、30℃〜45℃がメタン発酵に最適な温度領域となるので、メタン発酵を抑制するには、この温度領域以下とする必要がある。
そこで、有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)の温度を0℃以上かつ30℃以下、より好ましくは0℃以上かつ25℃以下、さらに好ましくは0℃以上かつ20℃以下の温度範囲内に調整する。
なお、有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)の貯留の温度が30℃を超えると、このスラリー中におけるメタン発酵が進行し、得られた燃料の発熱量を3000kcal/kg以上に維持することができなくなる。また、スラリーの温度を0℃より下げると、結氷が生じてスラリーの状態を維持することができない。
【0034】
この有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)に、カチオン系の高分子系凝集剤を添加すると、平均粒子径が2mm以上の凝集粒子(フロック)を生成させることができ、脱水効率を向上させることができる。これにより、脱水により得られた固形分の含水率が75質量%以下となり、固形分の回収率を高めることができる。
このカチオン系の高分子系凝集剤としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アシジン等を主成分とする高分子系凝集剤が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0035】
この凝集粒子(フロック)を生成させるための有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)の撹拌時間は、例えば、1分以上かつ30分以下であることが好ましい。
撹拌時間を1分以上かつ30分以下とすることにより、平均粒子径が2mm以上の凝集粒子(フロック)を効率良く生成させることができる。
【0036】
(3)有機廃棄物スラリーあるいは含水有機廃棄物の脱水
次いで、有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)を、スクリュープレス3に輸送し、スクリュウ軸13をモーター15にて所定の周速にて回転させつつ、このスクリュウ軸13の一端部11a側から有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)を投入する。
【0037】
この有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)は、スクリュウ軸13の回転により一端部11a側から他端部11b側に向かって送られる間に押圧されて脱水処理され、含水率が75質量%以下に低減された脱塩素有機廃棄物である固形状のケーキCと濾液Wとに固液分離され、含水率75質量%以下の固形状のケーキCはスクリュウ軸13とスクリーン14との間から外方へ押し出され、濾液Wはスクリーン14を通過して外方へ排出される。
この脱水処理により、有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)に含まれる塩素、または塩素化合物、あるいは塩素及び塩素化合物が取り除かれ、塩素濃度が2500ppm以下、含水率が75質量%以下の固形状のケーキCが得られる。
【0038】
ここで、この有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)を脱水処理して、塩素濃度が2500ppm以下、含水率が75質量%以下の固形状のケーキCとするためには、スクリュープレス3の周速を1.2m/分以下とする必要がある。
ここで、周速とは、スクリュープレス3におけるスクリュウ12の最外周部の回転速度のことである。
【0039】
スクリュープレス3では、得られたケーキCの含水率は周速にほぼ比例する。そこで、スクリュープレス3の周速を4.5m/分以下、好ましくは、豚糞の場合には1.5m/分以下、牛糞あるいは鶏糞の場合には4.5m/分以下と限定すれば、この限定した周速の最大値に対応して得られたケーキCの含水率の上限値も限定されることとなる。
例えば、この有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)の有機成分が豚糞の場合、スクリュープレス3の周速を1.5m/分以下とすることで、ケーキCの含水率を75質量%以下とすることができる。
また、この成分が牛糞、あるいは鶏糞の場合、繊維質が多いために脱水性が良く、スクリュープレス3の周速を4.5m/分以下とすることで、ケーキCの含水率を70質量%以下とすることができる。
【0040】
また、平均粒子径が2mm以上の凝集粒子(フロック)が生成した有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)では、脱水効率が向上することにより、脱水後の固形分の回収率を60%以上とすることができる。なお、平均粒子径が2mm未満の凝集粒子(フロック)が生成した有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)では、脱水後の固形分の回収率が50%未満となり、脱水効率が低下する。
【0041】
このように、有機廃棄物スラリーS1(あるいは含水有機廃棄物S2)は、スクリュープレス3の周速を、豚糞の場合には1.5m/分以下、牛糞または鶏糞の場合には4.5m/分以下とすることにより、効率的に脱水処理されて、塩素濃度が2500ppm以下、含水率が75質量%以下の脱塩素有機廃棄物からなるケーキCとなる。
一方、このスクリュープレス3から排出される排水Wは、排水処理装置7により所定の排水処理が施された後、外部の排水路等へ放流される。
【0042】
(4)ケーキの乾燥または加熱乾燥
次いで、この脱塩素有機廃棄物からなるケーキCを乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が2500ppm以下、好ましくは2000ppm以下であり、かつ含水率が35質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とする。
このケーキCの乾燥または加熱乾燥は、乾燥設備4を用いて、天日乾燥、風力乾燥、発酵乾燥のいずれか1種または2種以上を組み合わせて行う。
例えば、上記のケーキCを乾燥設備4内に搬入し、太陽熱等の自然エネルギーを利用した天日乾燥、風力等の自然エネルギーあるいは他の設備からの排気等を利用した風力乾燥、縦型撹拌式発酵装置や横型開放式発酵装置等の発酵装置から発生する発酵熱を用いた発酵乾燥等のうち1種、あるいは2種以上を組み合わせて上記のケーキCの乾燥を行い、塩素濃度が2500ppm以下、好ましくは2000ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とする。
【0043】
なお、このケーキCを発酵装置を用いて発酵させると同時に、この発酵熱を用いて乾燥を行えば、効率的な乾燥処理を行うことができる。この発酵装置では、発酵により生じる臭気及び水分を含む空気を水槽内に導入することにより、この臭気及び水分を取り除いているので、臭気等が外部へ漏れる虞はない。
【0044】
このようにして得られた乾燥脱塩素有機廃棄物は、塩素濃度が2500ppm以下と低く、かつ高位の発熱量を有しているので、セメント焼成設備等の工業用各種燃料としての利用が可能である。
また、この乾燥脱塩素有機廃棄物の含水率を、例えば20質量%以下に調整する必要がある場合、乾燥機5を用いて所定の温度にて所定時間乾燥処理を施すことにより、含水率を所定の範囲内に調整することができる。
【0045】
この乾燥脱塩素有機廃棄物は、単に乾燥しただけでは、球状、塊状(ブロック状)、板状等、大きな形状をしていることが多い。用途によってはこのままの形状でもよいが、セメント焼成設備等にて用いる場合等では、燃焼効率を向上させるために、粉砕機6に備えられた篩または分級機を用いて分級した後、この粉砕機6により粉砕または解砕して、直径10mm以下の粒子状とするのがよい。
このようにして得られた乾燥脱塩素有機廃棄物は、塩素濃度が2500ppm以下と低くかつ高位の発熱量を有し、しかも、直径10mm以下の粒子状とされているので、セメント焼成設備のセメントキルンの窯尻部等に投入することによりセメント焼成用燃料として有効利用される。
【0046】
「バイオマス燃料」
本実施形態のバイオマス燃料は、上述した高含水率有機廃棄物をスクリュープレス3を用いて1.2m/分以下の周速にて脱水処理し、得られた脱塩素有機廃棄物からなるケーキCを乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料であり、その塩素濃度は2500ppm以下が好ましく、より好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下である。
また、含水率は35質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
また、発熱量は、3000kcal/kg以上であることが好ましい。
【0047】
このバイオマス燃料では、塩素濃度を2500ppm以下、含水率を35質量%以下、発熱量を3000kcal/kg以上としたことにより、バイオマス燃料としての発熱効率が向上し、有機廃棄物が有するエネルギーを有効利用することが可能になる。
また、塩素濃度を2500ppm以下としたことにより、燃焼装置等においても腐食や配管等の閉塞等のトラブルが発生する虞がなく、また、セメント焼成設備に投入した場合においても、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞が無い。
このバイオマス燃料は、上述した高含水率有機廃棄物の脱塩・燃料化方法により、効率的に得ることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の高含水率有機廃棄物の脱塩方法によれば、高含水率有機廃棄物を、脱水効率に優れたスクリュープレス3を用いて1.2m/分以下の周速にて脱水処理するので、脱塩素有機廃棄物からなるケーキCの塩素濃度を2500ppm以下、含水率を75質量%以下に低減することができる。
また、このスクリュープレス3は、構成が簡単で、イニシャルコスト及びランニングコストに優れ、稼働時のトラブルも少なく、メンテナンス性に優れているので、他の脱水機を用いた場合と比べて、含水率がより低い脱塩素有機廃棄物を容易に得ることができ、脱水処理時間及び処理効率、及び作業に掛かる製造コストを大幅に改善することができる。
【0049】
本実施形態の高含水率有機廃棄物の燃料化方法によれば、スクリュープレス3を用いて1.2m/分以下の周速にて脱水処理された脱塩素有機廃棄物からなるケーキCを、乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が2500ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とするので、含水率の高い有機廃棄物を、容易に燃料化することができる。
しかも、得られたバイオマス燃料は、塩素濃度が2500ppm以下であり、かつ含水率も35質量%以下と低いので、塩素濃度及び含水率の低い高品位のバイオマス燃料を低コストにて容易に得ることができる。
【0050】
本実施形態のバイオマス燃料によれば、高含水率有機廃棄物をスクリュープレス3を用いて1.2m/分以下の周速にて脱水処理し、得られた脱塩素有機廃棄物からなるケーキCを乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度を2500ppm以下、かつ含水率を35質量%以下としたので、バイオマス燃料としての燃焼効率を向上させることができ、塩素濃度及び含水率が低く高品位のバイオマス燃料を提供することができる。
また、このバイオマス燃料をセメント焼成設備に投入したとしても、燃焼効率が低下する虞がなく、セメントの操業や品質に悪影響を及ぼす虞も無い。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
高含水率有機廃棄物として含水率90質量%、塩素濃度9000ppmの豚糞を用い、この豚糞100kgをスクリュープレス3を用いて0.8m/分の周速にて脱水処理した。これにより得られた脱塩豚糞の質量は31kg、含水率は68質量%、塩素濃度は2100ppmであった。
次いで、この脱塩豚糞を横型開放式堆肥舎に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させ、乾燥脱塩豚糞12kgを得た。この乾燥脱塩豚糞の含水率は20質量%、塩素濃度は2100ppm、発熱量は3500kcal/kgであった。
また、この乾燥脱塩豚糞を、セメント焼成設備のセメントキルンの窯前部の燃焼バーナーより吹き込み、燃焼させたところ、セメントキルンの燃焼効率が低下することはなく、セメントキルンの操業やセメント品質に影響は無かった。
【0053】
(実施例2)
高含水率有機廃棄物として含水率92質量%、塩素濃度10000ppmの牛糞を用い、この牛糞100kgをスクリュープレス3を用いて2.3m/分の周速にて脱水処理した。これにより得られた脱塩牛糞の質量は23kg、含水率は65質量%、塩素濃度は1630ppmであった。
次いで、この脱塩牛糞を横型開放式堆肥舎に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させ、乾燥脱塩牛糞12kgを得た。この乾燥脱塩牛糞の含水率は25質量%、塩素濃度は1630ppm、発熱量は3800kcal/kgであった。
また、この乾燥脱塩牛糞を、セメント焼成設備のセメントキルンの窯前部の燃焼バーナーより吹き込み、燃焼させたところ、セメントキルンの燃焼効率が低下することはなく、セメントキルンの操業やセメント品質に影響は無かった。
【0054】
(実施例3)
高含水率有機廃棄物として含水率45質量%、塩素濃度6000ppmのブロイラー鶏糞を用い、このブロイラー鶏糞100kgを、脱塩処理を施した上水道水200Lに溶解させ、ブロイラー鶏糞スラリーを作製した。
次いで、このブロイラー鶏糞スラリーをスクリュープレス3を用いて3.0m/分の周速にて脱水処理した。これにより得られた脱塩ブロイラー鶏糞の質量は157kg、含水率は65質量%、塩素濃度は2500ppmであった。
次いで、この脱塩ブロイラー鶏糞を横型開放式堆肥舎に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させ、乾燥脱塩ブロイラー鶏糞64kgを得た。この乾燥脱塩ブロイラー鶏糞の含水率は15質量%、塩素濃度は2500ppm、発熱量は4000kcal/kgであった。
また、この乾燥脱塩ブロイラー鶏糞を、セメント焼成設備のセメントキルンの窯前部の燃焼バーナーより吹き込み、燃焼させたところ、セメントキルンの燃焼効率が低下することはなく、セメントキルンの操業やセメント品質に影響は無かった。
【0055】
(比較例1)
高含水率有機廃棄物として含水率90質量%、塩素濃度10000ppmの牛糞を用い、この牛糞100kgをスクリュープレス3を用いて5.2m/分の周速にて脱水処理した。これにより得られた脱塩牛糞の質量は45kg、含水率は78質量%、塩素濃度は3900ppmであった。
次いで、この脱塩牛糞を横型開放式堆肥舎に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させようとしたが、含水率が高かったために、発酵が進まなかった。
そこで、この脱塩牛糞を天日乾燥により含水率が70質量%になるまで乾燥させ、引き続き横型開放式堆肥舎に搬入して発酵熱を用いて乾燥させ、乾燥脱塩牛糞13kgを得た。この乾燥脱塩牛糞の含水率は25質量%、塩素濃度は3900ppm、発熱量は3800kcal/kgであった。
また、この乾燥脱塩牛糞を、セメント焼成設備のセメントキルンの窯前部の燃焼バーナーより吹き込み、燃焼させたところ、セメントキルンの燃焼効率は低下しなかったが、塩素濃度が高かったためにセメントキルンの操業やセメント品質に悪影響があった。
【0056】
(比較例2)
高含水率有機廃棄物として含水率90質量%、塩素濃度9000ppmの豚糞を用い、この豚糞100kgをローラプレス式脱水機を用いて脱水処理した。これにより得られた脱塩豚糞の質量は55kg、含水率は82質量%、塩素濃度は4500ppmであった。
次いで、この脱塩豚糞を横型開放式堆肥舎に搬入し、発酵熱を用いて乾燥させようとしたが、含水率が高かったために、発酵が進まなかった。
そこで、この脱塩豚糞を天日乾燥により含水率が60質量%になるまで乾燥させ、引き続き横型開放式堆肥舎に搬入して発酵熱を用いて乾燥させ、乾燥脱塩豚糞13kgを得た。この乾燥脱塩豚糞の含水率は25質量%、塩素濃度は3900ppm、発熱量は3800kcal/kgであった。
また、この乾燥脱塩豚糞を、セメント焼成設備のセメントキルンの窯前部の燃焼バーナーより吹き込み、燃焼させたところ、セメントキルンの燃焼効率は低下しなかったが、塩素濃度が高かったためにセメントキルンの操業やセメント品質に悪影響があった。
【符号の説明】
【0057】
1 溶解槽
2 貯留装置
3 スクリュープレス
4 乾燥設備
5 乾燥機
6 粉砕機
7 排水処理装置
11 軸
11a 一端部
11b 他端部
12 スクリュウ
13 スクリュウ軸
14 スクリーン
15 モーター
S1 有機廃棄物スラリー
S2 含水有機廃棄物
C ケーキ
W 排水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含水率有機廃棄物を脱塩及び低含水率化するための方法であって、
前記高含水率有機廃棄物をスクリュープレスを用いて4.5m/分以下の周速にて脱水処理して、塩素濃度が2500ppm以下、含水率が75質量%以下の脱塩素有機廃棄物とすることを特徴とする高含水率有機廃棄物の脱塩方法。
【請求項2】
前記高含水率有機廃棄物は、家畜排泄物、食品廃棄物のいずれか一方または双方を含有する含水率が60質量%以上の含水有機廃棄物、または、前記家畜排泄物、前記食品廃棄物のいずれか一方または双方を、その等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌してなる有機廃棄物スラリーであることを特徴とする請求項1記載の高含水率有機廃棄物の脱塩方法。
【請求項3】
前記高含水率有機廃棄物にカチオン系の高分子系凝集剤を添加して、平均粒子径が2mm以上の凝集粒子を生成させ、この凝集粒子を含む高含水率有機廃棄物を、前記スクリュープレスを用いて脱水処理することを特徴とする請求項1または2記載の高含水率有機廃棄物の脱塩方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の高含水率有機廃棄物の脱塩方法により得られた脱塩素有機廃棄物をバイオマス燃料とするための方法であって、
前記脱塩素有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥して、塩素濃度が2500ppm以下かつ含水率が35質量%以下の乾燥脱塩素有機廃棄物とすることを特徴とする高含水率有機廃棄物の燃料化方法。
【請求項5】
高含水率有機廃棄物をスクリュープレスを用いて4.5m/分以下の周速にて脱水処理し、得られた脱塩素有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥してなるバイオマス燃料であって、
塩素濃度が2500ppm以下かつ含水率が35質量%以下であることを特徴とするバイオマス燃料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−234221(P2010−234221A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83821(P2009−83821)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】