説明

高周波スイッチモジュール

【課題】MEMS機構を用いて、より小型化が容易な高周波スイッチモジュールを実現する。
【解決手段】MEMS機構部10は、平板状の可動電極11と、固定電極13A,13Bおよび固定電極14A,14Bを備える。固定電極13A,13Bは、可動電極11を基準として、固定電極14A,14Bと対称の位置に形成されている。可動電極11と固定電極13A,13Bとの間に「0」でない電圧が印加されると、可動電極11と固定電極13A,13Bが当接して導通となり、可動電極11と固定電極14A,14Bが大きく離間して開放となる。可動電極11と固定電極14A,14Bとの間に「0」でない電圧が印加されると、可動電極11と固定電極14A,14Bが当接して導通となり、可動電極11と固定電極13A,13Bが大きく離間して開放となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高周波信号の導通および遮断をスイッチング制御する高周波スイッチモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1個のアンテナで、異なる周波数仕様からなる複数の高周波信号を送受信する高周波モジュールが各種考案されている。この高周波モジュールでは、周波数仕様毎に送信回路や受信回路等のRF回路を備えている。そして、複数のRF回路を1個のアンテナで共有するので、当該アンテナと各RF回路との間に、各RF回路とアンテナとの接続を切り替える高周波スイッチモジュールが必要となる。
【0003】
高周波スイッチモジュールとしては、FETやダイオードなどの半導体素子を用いたものが一般的であるが、これら半導体素子のスイッチよりも高周波伝送特性上に優位な点もあることから、特許文献1に示すようにMEMS機構を用いたものが、多く実用化されようとしている。
【0004】
MEMS機構のスイッチは、概略して、固定電極と所定のバネ定数を有する可動電極とを備え、当該固定電極と可動電極とを所定間隔で配置する。また、固定電極と可動電極との間に所定のスイッチング用電圧を印加する回路を備える。スイッチング用電圧を印加していなければ、固定電極と可動電極とは離間している。この場合、スイッチとしてはOFF状態となる。一方、スイッチング用電圧が印加されれば、固定電極と可動電極とがクーロン力により引き合い、例えば、固定電極と可動電極とが接触する。この場合、スイッチとしてはON状態となる。そして、スイッチング用電圧の印加を停止すると、可動電極は、バネ定数に基づく反発力により、スイッチング用電圧の印加前のように、固定電極に対して所定間隔をなす位置まで戻る。この場合、スイッチとしてはOFF状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−142982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に示した高周波スイッチは、高周波信号の入力端子と出力端子とが1個ずつの所謂SPST型である。したがって、上述のように、複数のRF回路に対して切替を行う場合には、RF回路数分だけ、MEMS機構部を設けなければならない。このため、回路規模が大型化し、高周波スイッチモジュールを小型化することが容易ではない。
【0007】
また、上述の特許文献1に示したMEMS機構部は、例えば高周波モジュールの表面等の実装面に実装して使用するため、このままの構造では、MEMS機構部が外部へ露出してしまう。このため、耐環境性が悪く、外的要因により可動電極へ力が加わり誤動作してしまう可能性や、可動電極の破損の可能性があった。
【0008】
このような課題を鑑み、この発明の目的は、MEMS機構を用いながらも、より小型化が容易であり、且つ信頼性の高い高周波スイッチモジュールを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、高周波スイッチモジュールに関する。この高周波スイッチモジュールは、可動電極、第1、第2の固定電極、接地用電極、およびスイッチング電圧印加用回路電極を備える。
【0010】
可動電極は、平板状であり、絶縁性を有する枠体の内側の空間に、枠体の開口面と平板面とが略平行になるように該枠体に対して梁によって保持されている。
【0011】
第1、第2の固定電極は、枠体の対向する開口面のそれぞれを覆う各絶縁層の枠体側の面に、可動電極を挟んで対向するように形成されている。
【0012】
接地用電極は、可動電極へ接続し、枠体および絶縁層を備える積層体に形成されている。
【0013】
スイッチング電圧印加用回路電極は、可動電極と第1の固定電極との間、または可動電極と第2の固定電極との間に直流のスイッチング電圧を与えるための回路である。
【0014】
この構成では、スイッチング電圧印加用回路電極を介して可動電極と第1の固定電極との間に「0」ではない所定電圧が印加されると、可動電極が第1の固定電極側へ変位する。したがって、可動電極と第1の固定電極との間隔が極狭くなり、可動電極と第2の固定電極との間隔が広くなる。可動電極は、接地用電極を介してグランドへ接続されているので、第1の固定電極側は、第1の固定電極と可動電極とからなるキャパシタを介するか、直接的に、接地される。このため、第1の固定電極側を高周波的に接地状態にすることができる。一方、第2の固定電極は、可動電極から離間しているため、当該第2の固定電極側は、接地されない。このため、第2の固定電極側は通常の伝送線路として機能させることができる。
【0015】
一方、スイッチング電圧印加用回路電極を介して可動電極と第2の固定電極との間に「0」ではない所定電圧が印加されると、第2の固定電極側を高周波的に接地状態にすることができ、第1の固定電極側を伝送線路として機能させることができる。これにより、MEMS機構を用いて、一つの可動電極の制御により、二つのスイッチ制御状態が同時に実現される。
【0016】
また、この発明は、高周波スイッチモジュールに関する。この高周波スイッチモジュールは、可動電極、第1、第2の固定電極、およびスイッチング電圧印加用回路電極を備える。
【0017】
可動電極は、平板状であり、絶縁性を有する枠体の内側の空間に、枠体の開口面と平板面とが略平行になるように該枠体に対して梁によって保持されている。
【0018】
第1、第2の固定電極は、枠体の対向する開口面のそれぞれを覆う各絶縁層の枠体側の面に、可動電極を挟んで対向するように形成されている。さらに、第1、第2の固定電極は、それぞれが互いに電気的に接続しない形状で形成された複数の固定部分電極によって構成されている。
【0019】
スイッチング電圧印加用回路電極は、可動電極と第1の固定電極との間、または可動電極と第2の固定電極との間に直流のスイッチング電圧を与えるための回路である。
【0020】
この構成では、第1の固定電極と第2の固定電極とが、それぞれに、分離された複数の電極群からなる場合を示している。この構成において、スイッチング電圧印加用回路電極を介して可動電極と第1の固定電極との間に「0」ではない所定電圧が印加されると、可動電極が第1の固定電極側へ変位する。したがって、可動電極と第1の固定電極との間隔が極狭くなり、可動電極と第2の固定電極との間隔が広くなる。この状態では、第1の固定電極を構成する各固定部分電極は、可動電極に対してそれぞれ所定のキャパシタンスで結合するか、もしくは同可動電極により導通される。ここで、導通されれば、単に短絡状態となる。一方、可動電極とそれぞれの固定部分電極とが所定のキャパシタンスで結合するのであれば、可動電極とそれぞれの固定部分電極とからなる複数のキャパシタの直列回路が構成される。これは、高周波的には、直流成分を通過させないハイパスフィルタを備えた伝送回路として機能する。
【0021】
一方、第2の固定電極の各固定部分電極は、可動電極から離間しているため、可動電極に対して所望のキャパシタンスを得られない。このため、第2の固定電極を構成する複数の部分固定電極間は、導通状態にならず、開放状態となる。
【0022】
逆に、スイッチング電圧印加用回路電極を介して可動電極と第2の固定電極との間に「0」ではない所定電圧が印加されると、第2の固定電極側を短絡状態にすることができ、第1の固定電極側を開放状態にすることができる。これにより、MEMS機構を用いて、一つの可動電極の制御により、二つのスイッチ制御状態が同時に実現される。
【0023】
また、この発明の高周波スイッチモジュールは、第1の伝送用電極と第2の伝送用電極とを備える。第1の伝送用電極および第2の伝送用電極は、枠体および絶縁層を備える積層体に形成されている。第1の伝送用電極は、第1の固定電極に接続し、少なくとも第1の固定電極を介して、高周波信号を伝送するための回路電極である。第2の伝送用電極は、第2の固定電極に接続し、少なくとも第2の固定電極を介して、高周波信号を伝送するための回路電極である。
【0024】
また、この発明の高周波スイッチモジュールでは、第1の伝送用電極と第2の伝送用電極で異なる周波数の信号が伝送する。
【0025】
この構成では、高周波スイッチモジュールとしてのより具体的な構成を示し、第1の固定電極に第1の伝送用電極を接続し、第2の固定電極に第2の伝送用電極を接続する。これにより、MEMS機構に接続する他の回路構成を積層体内に実現することができる。例えば、MEMS機構に接続するフィルタを構成するインダクタやキャパシタを積層体内で形成することができる。
【0026】
さらには、上述の可動電極が接地する構成では、第1の固定電極側の第1の伝送用電極を用いて、積層体の第1の高周波信号の入出力ポートと接地点との距離が、第1の高周波信号の波長λの1/4の線路長となるように形成すれば、第1の高周波信号に対して、より高精度に第1の入力ポート側を開放にすることができる。この際、第1の高周波信号と異なる第2の高周波信号に対しては短絡となる。一方、第2の固定電極側の第2の伝送用電極を用いて、積層体の第2の高周波信号の入出力ポートと接地点との距離が、第2の高周波信号の波長λの1/4の線路長となるように形成すれば、より高精度に第2の入出力ポート側を開放にすることができる。この際、第1の高周波信号に対しては短絡となる。すなわち、第1の固定電極側を第2の高周波信号を通過させ、第1の高周波信号を遮断する伝送回路とし、第2の固定電極側を第1の高周波信号を通過させ、第2の高周波信号を遮断する伝送回路として、機能させることができる。
【0027】
また、この発明の高周波スイッチモジュールは、可動電極の少なくとも一方の平板面に絶縁体膜を備える。
【0028】
この構成では、絶縁体層を形成することで、可動電極と第1の固定電極との間のキャパシタンスや、可動電極と第2の固定電極との間のキャパシタンスを適宜設定することができる。すなわち、スイッチング制御時に利用する第1の固定電極側のキャパシタンスや第2の固定電極側のキャパシタンスを、所望値に実現しやすくなる。
【0029】
なお、この際、絶縁体層は、可動電極の全面に形成する必要はなく、上述の複数の固定部分電極を用いる場合であれば、固定部分電極に対応する部分毎に絶縁体層を適宜形成することもできる。これにより、上述のキャパシタの直列回路を実現する際に、異なるキャパシタンスのキャパシタを直列接続する構造が、容易に実現できる。また、可動電極の質量増加を最小にでき、印加電圧を低減できる。
【0030】
また、この発明の高周波スイッチモジュールは、可動電極の両方の平板面にそれぞれ絶縁体膜を備え、該両面の平板面の絶縁体膜の形状が異なる。
【0031】
この構成では、可動電極の両面の絶縁体膜の形状が異なることで、第1の固定電極側と第2の固定電極側とで、キャパシタンスを異ならせることができる。これにより、第1の固定電極側の高周波特性と第2の固定電極側の高周波特性とを異ならせることができる。例えば、上述のように、第1の固定電極側で遮断する周波数と第2の固定電極側で遮断する周波数とを、異ならせることができる。
【0032】
また、この発明の高周波スイッチモジュールは、第1の固定電極および第2の固定電極の少なくとも一方に絶縁体膜を備える。
【0033】
この構成では、第1、第2の固定電極に絶縁体膜を形成している。この構成であっても、上述の可動電極に絶縁体膜を形成した場合と同様の作用効果が得られる。さらに、固定電極に絶縁体膜を形成することで、可動電極の絶縁体膜を省略もしくは、薄膜化することができる。これにより、可動電極の重さを軽減でき、より反応性が良く高速なスイッチングや、よりスイッチング制御電圧を低電圧化したスイッチングが可能となる。
【0034】
また、この発明の高周波スイッチモジュールは、第1の固定電極と第2の固定電極の形状が異なる。
【0035】
この構成でも、上述の固定電極に絶縁体膜を形成したり、第1、第2の固定電極に絶縁体膜を形成した場合と同様の作用効果が得られる。
【0036】
また、この発明の高周波スイッチモジュールは、第1の伝送用電極、第2の伝送用電極、および接地用電極が積層体に形成されている。そして、接地用電極は第1の伝送用電極と第2の伝送用電極との間に配置されている。
【0037】
この構成では、接地用電極が、第1の伝送用電極と第2の伝送用電極との間に介することで、第1の伝送用電極と第2の伝送用電極との間のアイソレーションを向上させることができる。これにより、MEMS機構部のみでなく、高周波スイッチモジュール全体としてのスイッチング特性が向上する。
【0038】
また、この発明の高周波スイッチモジュールでは、第1の伝送用電極と第2の伝送用電極とが積層体の同層に形成されている。枠体および絶縁層には、第1の固定電極と第2の固定電極を第1の伝送用電極と第2の伝送用電極が形成された層まで引き回す引き回し電極が形成されている。
【0039】
この構成では、上述のMEMS機構部が、高周波スイッチモジュールを構成する第1の伝送用電極と第2の伝送用電極および接地用電極を含む積層体とは別体に形成される場合に有効である。このように、MEMS機構部を別体形成した場合、当該MEMS機構部を積層体に実装しなければならない。この際、第1の固定電極および第2の固定電極に接続する引き回し電極を形成し、同層の外部接続電極を設ければ、MEMS機構部の実装が容易になる。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、1個の可動電極で、複数のスイッチング制御が可能であるので、1対複数の高周波スイッチモジュールを、より小型に形成することができる。また、可動電極が絶縁層の積層体に囲まれた空間内に存在するため、耐環境性に優れ、外力の影響も受け難く、高周波スイッチモジュールの信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成を説明する為の側断面の構成図、および部分透視平面構成図である。
【図2】MEMS機構部10の構成を示す側面断面図および積層図である。
【図3】第1の実施形態に係る高周波スイッチモジュールのスイッチング制御を説明する為の図である。
【図4】第2の実施形態に係る高周波スイッチモジュールのMEMS機構部の各種バリエーションを示す側断面から見た構成図である。
【図5】第2の実施形態に係る高周波スイッチモジュールのMEMS機構部の各種バリエーションを示す側断面から見た構成図である。
【図6】第3の実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成を説明する為の側断面の構成図、および部分透視平面構成図である。
【図7】第3の実施形態に係る高周波スイッチモジュールのスイッチング制御を説明する為の図である。
【図8】第4の実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成を説明する為の側断面の構成図、および部分透視平面構成図である。
【図9】第4の実施形態に係る高周波スイッチモジュールのスイッチング制御を説明する為の図である。
【図10】第5の実施形態の高周波スイッチモジュール1Cに含まれるMEMS機構部10Gの構造を説明するための図である。
【図11】第5の実施形態の高周波スイッチモジュール1Cの構成を説明する為の側断面の構成図、およびMEMS機構部10Gの実装される層の電極パターンを示す図である。
【図12】第6の実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成を説明する為の側断面の構成図、および部分透視平面構成図である。
【図13】第6の実施形態の高周波スイッチモジュールの積層図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の第1の実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成について、図を参照して説明する。図1(A)は、本実施形態の高周波スイッチモジュール1の構造を説明するための側断面で見た構成図である。図1(B)は、高周波スイッチモジュール1を積層方向から見て所定層だけ透視した状態での平面視した構成図である。
【0043】
高周波スイッチモジュール1は、複数の絶縁体層900を積層してなる積層体からなる。なお、以下では絶縁体層900を8層積層してなる積層体を例に示しているが、層数はこれに限るものではない。
【0044】
積層体を構成する最上層と最下層を除く所定数の絶縁体層900には、貫通穴が連続的に形成されている。これにより、MEMS機構部10が収容される空間が形成されている。具体的に、図1(A)の場合であれば、積層体を8層の誘電体層900から構成しており、最下層と最上層を除く6層の絶縁体層900に連続する貫通穴が形成されており、当該貫通穴による空間15内にMEMS機構部10が収容されている。
【0045】
また、積層体の所定の絶縁体層900には電極パターンが形成されている。具体的に、図1(A)の場合であれば、最下層の絶縁体層900の上面には、伝送用電極300A,300Bが所定のパターン形状で形成されている。これら伝送用電極300A,300Bは、具体的構造を後述するMEMS機構部10の接続用電極30A,30Bに、一方端が当接するような形状で形成されている。なお、他方端は、図示しないが、積層体内のビアホールや積層体側面に形成した電極などを介して積層体の下面等に設けられた所定の外部接続ランドに接続している。
【0046】
最上層の絶縁体層900の下面には、伝送用電極400A,400Bが所定のパターン形状で形成されている。これら伝送用電極400A,400Bは、MEMS機構部10の接続用電極40A,40Bに、一方端が当接するような形状で形成されている。なお、他方端は、伝送用電極300A,300Bと同様に、図示しないが、積層体の下面等に設けられた所定の外部接続ランドに接続している。
【0047】
積層体の中間層である最下層から4層目の絶縁体層900の上面には、接地用電極500が形成されている。接地用電極500は、積層体を平面視して、積層体内のMEMS機構部10の配置空間を除く略全面に形成されている。接地用電極は、図示しないが、積層体内のビアホール等を介して積層体の下面等に設けられた所定のグランド接続用ランドに電気的に接続している。
【0048】
このような周囲の構成に対して、積層体空間内に形成されるMEMS機構部10は、具体的に次に示す構成からなる。図2はMEMS機構部10の構成を説明する為の図であり、図2(A)は側断面から見た構成図、図2(B)〜(F)は積層構成図である。なお、以下では、MEMS機構部10を6層の絶縁体層90で構成する例を示しているが、層構成はこれに限るものではなく、可動電極11と固定電極13A,13B,14A,14Bとの構成が、後述する関係であればよい。また、MEMS機構部10を構成する絶縁体層90と、積層体を構成する絶縁体層900とは、同じ材料でもよく、絶縁体層900としてセラミックあるは樹脂等を用い、絶縁体層90としてガラス等を用いるように、異なる材料であってもよい。
【0049】
MEMS機構部10は、絶縁体層90を所定数積層した構造からなる。最下層の絶縁体層90の下面には、図2(A),(F)に示すように、伝送用電極300A,300Bにそれぞれ接続するための外部接続用電極30A,30Bが形成されている。最下層から2層目の絶縁体層90の上面には、図2(A),(E)に示すように、固定電極13A,13Bが所定の間隔をおき、所定面積で形成されている。この際、固定電極13Aは、外部接続用電極30Aと平面視して部分的に重なるように形成されている。そして、固定電極13Aと外部接続用電極30Aとは、積層方向へ延びる形状からなる導電性のビアホール31Aにより接続されている。また、固定電極13Bは、外部接続用電極30Bと平面視して部分的に重なるように形成されている。そして、固定電極13Bと外部接続用電極30Bとは、積層方向へ延びる形状からなる導電性のビアホール31Bにより接続されている。
【0050】
最下層から3層目と4層目の絶縁体層90は、図2(A),(D)に示すように、積層方向へ開口した空間を有する枠体形状からなる。これら3層目と4層目の絶縁体層90の境界面で、枠体の内側の空間内には、可動電極11が所定面積で形成されている。可動電極11は所定厚みの平板状からなり、その主面(平板面)は、固定電極13A,13Bの表面および後述する固定電極14A,14Bの表面と略平行になるように配置されている。また、可動電極11の主面は、固定電極13A,13B,14A,14Bのそれぞれと、所定面積で対向するように配置されている。このように配置されている可動電極11は、絶縁体層90に対して、梁12によって支持されている。これにより、可動電極11は、積層方向に沿って変位可能な形状となる。そして、この変位により、固定電極13A,13Bや固定電極14A,14Bと可動電極11との間隔を変化させることができる。
【0051】
なお、可動電極11は、絶縁体層90上に配置された金属板をエッチング等により加工した後、絶縁体層90を除去して形成したり、絶縁体層90上に真空蒸着等の薄膜形成方法により形成した後、絶縁体層90を除去して形成してもよい。
【0052】
最下層から5層目、逆に最上層から2層目の絶縁体層90の下面には、図2(A),(C)に示すように、固定電極14A,14Bが所定の間隔をおき、所定面積で形成されている。この際、これら固定電極14A,14Bは、その表面が、上述のように可動電極11の主面に対して所定面積で対向するように、形成されている。
【0053】
最上層の絶縁体層90の上面には、図2(A),(B)に示すように、伝送用電極400A,400Bにそれぞれ接続するための外部接続用電極40A,40Bが形成されている。この際、外部接続用電極40Aは、固定電極14Aと平面視して重なるように形成されている。そして、外部接続用電極40Aと固定電極14Aとは、積層方向へ延びる形状からなる導電性のビアホール41Aにより接続されている。外部接続用電極40Bは、固定電極14Bと平面視して重なるように形成されている。そして、外部接続用電極40Bと固定電極14Bとは、積層方向へ延びる形状からなる導電性のビアホール41Bにより接続されている。
【0054】
なお、図示していないが、固定用電極13A,13B,14A,14Bには、直流のスイッチング用制御電圧を印加するための制御用回路パターンが接続されている。当該制御用回路パターンは、絶縁体層90および絶縁体層900に適宜形成されている。また、可動電極11には、梁12を介して、直流のスイッチング用制御電圧を印加するための制御用回路パターンが接続されている。当該制御用回路パターンも、絶縁体層90および絶縁体層900に適宜形成されている。そして、これらの制御用回路パターンを用いることで、可動電極11と固定用電極13A,13B,14A,14Bとの間に、所定のスイッチング用制御電圧を与えることで、可動電極11を変位させる。そして、このように可動電極11を変位させることで、次に示すようなスイッチング制御が可能になる。
【0055】
図3は、本実施形態の高周波スイッチモジュール1のスイッチング制御を説明する為の図である。図3(A),(C),(E)は、スイッチング制御電圧と可動電極11の変位とを簡略的に表す図であり、図3(A)はスイッチング制御電圧V1,V2が「0」の場合、図3(C)はスイッチング制御電圧V1が正の所定値であり、スイッチング制御電圧V2が「0」の場合、図3(E)はスイッチング制御電圧V2が正の所定値であり、スイッチング制御電圧V1が「0」の場合を示す。図3(B),(D),(F)は、図3(A),(C),(E)のスイッチング制御の状態での高周波スイッチングモジュール1を高周波的観点から見た回路構成図である。
【0056】
なお、このような制御系の回路では、固定電極13A,13B間にインダクタL2と抵抗R2との直列回路が接続されており、固定電極14A,14B間にインダクタL1と抵抗R1との直列回路が接続されている。これらの直列回路を介して、直流の制御電圧v1,V2が固定電極に印加されるが、可動電極11を介して通過する高周波信号は、当該高周波信号の周波数において、これら直列回路を通過しないような高インピーダンスになるように、インダクタL1,L2と抵抗R1,R2は設定されている。
【0057】
図3(A)に示すように、スイッチング制御電圧V1,V2が印加されていない状態、すなわちV1=V2=「0」の場合、可動電極11はデフォルトの位置にあり、変位しない。したがって、固定電極13A,13Bとも固定電極14A,14Bとも所定の距離を置く位置に可動電極11が存在する。このため、高周波回路としては、図3(B)に示すように、伝送用電極400A(実質的には外部接続用電極40Aやビアホール41Aを含む)からなる伝送線路と、伝送用電極400B(実質的には外部接続用電極40Bやビアホール41Bを含む)からなる伝送線路とが、固定電極14Aと可動電極11とによるキャパシタと固定電極14Bと可動電極11とによるキャパシタにより接続された構成(図3(B)のキャパシタンスCn1に対応)となる。ただし、可動電極11と固定電極14A,14Bとの距離が離間しているため、実質的には殆ど結合することなく、これらの伝送線路間は略開放となる。
【0058】
同様に、伝送用電極300A(実質的には外部接続用電極30Aやビアホール31Aを含む)からなる伝送線路と、伝送用電極300B(実質的には外部接続用電極30Bやビアホール31Bを含む)からなる伝送線路とが、固定電極13Aと可動電極11とによるキャパシタと固定電極13Bと可動電極11とによるキャパシタにより接続された構成(図3(B)のキャパシタンスCn2に対応)となる。ただし、可動電極11と固定電極13A,13Bとの距離が離間しているため、実質的には殆ど結合することなく、これらの伝送線路間は略開放となる。
【0059】
次に、図3(C)に示すように、可動電極11と固定電極14A,14Bとの間に、所定の「0」でない電圧レベルVd1からなる直流のスイッチング制御電圧V1を印加する。この際、スイッチング制御電圧V2は「0」とする。
【0060】
このようなスイッチング制御電圧V1を印加すると、可動電極11と固定電極14A,14Bとの間にクーロン力が生じる。可動電極11は、作用するクーロン力と可動電極11自身や梁12の弾性率とに応じて、変形し、図3(C)に示すように、全体として固定電極14A,14B側へ変位し、最終的に可動電極11と固定電極14A,14Bとが当接する。
【0061】
このように、可動電極11と固定電極14A,14Bとが当接すると、高周波回路としては、図3(D)に示すように、伝送用電極400Aからなる伝送線路と、伝送用電極400Bからなる伝送線路とが、固定電極14A、可動電極11、および固定電極14Bを介して導通し、短絡された状態となる。これにより、伝送用電極400Aの固定電極14Aと反対側の端部にある入出力ポートP11と、伝送用電極400Bの固定電極14Bと反対側の端部にある入出力ポートP12とが導通する。これにより、入出力ポートP11,P12間で高周波信号を伝送することができる。
【0062】
一方、可動電極11が固定電極14A,14Bに近づくもしくは当接すると、可動電極11と固定電極13A,13Bとの間隔は、さらに離間する。このため、伝送用電極300Aからなる伝送線路と、伝送用電極300Bからなる伝送線路との間は開放となる。これにより、図3(D)に示すように、伝送用電極300Aの固定電極13Aと反対側の端部にある入出力ポートP21と、伝送用電極300Bの固定電極13Bと反対側の端部にある入出力ポートP22との間が分断される。これにより、入出力ポートP21,P22間では高周波信号は伝送されない。
【0063】
次に、図3(E)に示すように、可動電極11と固定電極13A,13Bとの間に、所定の「0」でない電圧レベルVd2からなる直流のスイッチング制御電圧V2を印加する。この際、スイッチング制御電圧V1は「0」とする。なお、可動電極11に対して固定電極14A,14Bと、固定電極13A,13Bとが対称に配置されていれば、スイッチング制御電圧V2の電圧レベルVd2は、上述の電圧Vd1と同じにすればよい。
【0064】
このようなスイッチング制御電圧V2を印加すると、可動電極11と固定電極13A,13Bとの間にクーロン力が生じる。可動電極11は、作用するクーロン力と可動電極11自身や梁12の弾性率とに応じて、変形し、図3(E)に示すように、全体として固定電極13A,13B側へ変位し、最終的に可動電極11と固定電極13A,13Bとが当接する。
【0065】
このように、可動電極11と固定電極13A,13Bとが当接すると、高周波回路としては、図3(F)に示すように、伝送用電極300Aからなる伝送線路と、伝送用電極300Bからなる伝送線路とが、固定電極13A、可動電極11、および固定電極13Bを介して導通し、短絡された状態となる。これにより、伝送用電極300Aの固定電極13Aと反対側の端部にある入出力ポートP21と、伝送用電極300Bの固定電極13Bと反対側の端部にある入出力ポートP22とが導通する。これにより、入出力ポートP21,P22間で高周波信号を伝送することができる。
【0066】
一方、可動電極11が固定電極13A,13Bに近づくもしくは当接すると、可動電極11と固定電極14A,14Bとの間隔は、さらに離間する。このため、伝送用電極400Aからなる伝送線路と、伝送用電極400Bからなる伝送線路との間は開放となる。これにより、図3(F)に示すように、伝送用電極400Aの固定電極14Aと反対側の端部にある入出力ポートP11と、伝送用電極400Bの固定電極14Bと反対側の端部にある入出力ポートP12との間が分断される。これにより、入出力ポートP11,P12間では高周波信号は伝送されない。
【0067】
以上のように、本実施形態の構成を用いることで、MEMS機構部10へ二種類のスイッチング制御電圧を印加することで、二つの高周波伝送回路のいずれか一方を短絡、他方を開放をする制御を、同時に実現することができる。すなわち、所謂DPDTスイッチを実現できる。そして、このような実質的に二つのスイッチ素子を実現するために、一つの可動電極11を用いればよいので、MEMS機構部10、ひいては高周波スイッチモジュール1を小型に形成することができる。さらには、可動電極11が高周波スイッチモジュール1の外方へ露出していないので、可動電極11に対する外力の影響も受け難い。特に、MEMS機構部10の周囲が絶縁体膜による積層体で保護されていることで、当該積層体に外力が加わっても、積層体領域で緩和され、MEMS機構部10には、殆ど影響しない。また、MEMS機構部10が外部環境に曝されないので、耐環境性も高い。したがって、MEMS機構部10および高周波スイッチモジュール1の信頼性を高くすることができる。
【0068】
次に、第2の実施形態に係る高周波スイッチモジュールについて、図を参照して説明する。図4、図5は、本実施形態に係る高周波スイッチモジュールのMEMS機構部の各種バリエーションを示す側断面から見た構成図である。
【0069】
上述の第1の実施形態では、可動電極11、固定電極13A,13B、固定電極14A,14Bの表面には、なにも形成していない。しかしながら、本実施形態では、可動電極11、固定電極13A,13B、および固定電極14A,14Bの少なくともいずれかに誘電体層を形成している。
【0070】
図4(A)に示すMEMS機構部10Aでは、可動電極11の両主面に誘電体層60を形成し、固定電極13A,13Bの表面に誘電体層61A,61Bをそれぞれ形成し、固定電極14A,14Bの表面に誘電体層62A,62Bをそれぞれ形成している。
【0071】
このような構成では、上述のスイッチング制御電圧V1=Vd1を印加して、可動電極11が固定電極14A,14Bに近接すると、誘電体層60と誘電体層62A,62Bとが当接する。これにより、可動電極11と固定電極14Aとの間に誘電体層60,62Aが配された所定のキャパシタンスを有するキャパシタが構成される。また、可動電極11と固定電極14Bとの間に誘電体層60,62Bが配された所定のキャパシタンスを有するキャパシタが構成される。そして、これらキャパシタを介して、伝送用電極400Aからなる伝送線路と伝送用電極400Bからなる伝送線路とが導通して、短絡された状態となる。したがって、伝送用電極400Aからなる伝送線路と伝送用電極400Bからなる伝送線路との間にハイパスフィルタを備える伝送回路を形成できる。
【0072】
一方、上述のスイッチング制御電圧V2=Vd2を印加して、可動電極11が固定電極13A,13Bに近接すると、誘電体層60と誘電体層61A,61Bとが当接する。これにより、可動電極11と固定電極13Aとの間に誘電体層60,61Aが配された所定のキャパシタンスを有するキャパシタが構成される。また、可動電極11と固定電極13Bとの間に誘電体層60,61Bが配された所定のキャパシタンスを有するキャパシタが構成される。そして、これらキャパシタを介して、伝送用電極300Aからなる伝送線路と伝送用電極300Bからなる伝送線路とが導通して、短絡された状態となる。したがって、伝送用電極300Aからなる伝送線路と伝送用電極300Bからなる伝送線路との間にハイパスフィルタを備える伝送回路を形成できる。
【0073】
以上のように、本実施形態の構成を用いれば、単なるスイッチング機能のみではなく、導通した側の伝送線路に対してフィルタ機能を備えることができる。
【0074】
なお、図4(B),(C)、図5(A),(B),(C)のMEMS機構部10B〜10Fは、図4(A)のMEMS機構部10Aに類似する構成であり、相違部分のみを以下に説明する。
【0075】
図4(B)のMEMS機構部10Bは、図4(A)のMEMS機構部10Aに対して、固定電極13A,13Bの表面の誘電体層61A,61B、固定電極14A,14Bの表面の誘電体層62A,62Bを省略した構成を備える。
【0076】
図4(C)のMEMS機構部10Cは、図4(A)のMEMS機構部10Aに対して、可動電極11の両主面の誘電体層60を省略した構成を備える。このような可動電極11の表面の誘電体層60を省略した構成の場合、可動する部材を、誘電体層60を備えた場合よりも軽量化することができる。したがって、より応答性の良いスイッチ制御が可能であったり、より低電圧でのスイッチ制御が可能になる。
【0077】
図5(A)のMEMS機構部10Dは、図4(A)のMEMS機構部10Aに対して、可動電極11の固定電極13A,13B側の誘電体層60のみを省略した構成を備える。なお、可動電極11の固定電極14A,14B側の誘電体層60のみを省略することもできる。
【0078】
図5(B)のMEMS機構部10Eは、図4(A)のMEMS機構部10Aに対して、固定電極13A,13Bの表面の誘電体層61A,61Bのみを省略した構成を備える。なお、固定電極14A,14Bの表面の誘電体層62A,62Bのみを省略することもできる。
【0079】
また、上述の図4(B),(C)、図5(A),(B)は一例であり、可動電極11、固定電極13A,13B、固定電極14A,14Bに形成する誘電体層は、必要とする仕様に応じて、適宜選択的に形成すればよい。また、上述の説明では、固定電極13A,13Bに対して、ともに誘電体層を形成するか、誘電体層を形成しない構成を示している。また、固定電極14A,14Bに対して、ともに誘電体層を形成するか、誘電体層を形成しない構成を示している。しかしながら、固定電極13Aの誘電体層61Aのみを形成し、固定電極13Bには誘電体層を形成しない構成や、固定電極14Aには誘電体層を形成せず、固定電極14Bの誘電体層62Bのみを形成する構成にしてもよい。
【0080】
図5(C)のMEMS機構部10Fは、図4(A)のMEMS機構部10Aに対して、可動電極11の固定電極13A,13B側の誘電体層60Aの厚みと、可動電極11の固定電極14A,13B側の誘電体層60Bの厚みとを異ならせた構成を備える。このような構成とすることで、固定電極13A,13B側、すなわち伝送用電極300Aからなる伝送線路と伝送用電極300Bからなる伝送線路側、図3であれば入出力ポートP21,P22間の伝送特性と、伝送用電極400Aからなる伝送線路と伝送用電極400Bからなる伝送線路側、図3であれば入出力ポートP11,P12間の伝送特性と、を適宜異ならせることができる。すなわち、スイッチング機能を実現しながら、それぞれの伝送線路に応じた伝送特性の伝送線路を実現できる。
【0081】
なお、誘電体層の厚みを変えて固定電極と可動電極との間で発生する容量を調整できるが、誘電体層の厚み以外に、誘電体層を点状、線状あるいは格子状等のように、電極表面に対して部分的に形成することで、容量調整を容易に行うことができる。
【0082】
次に、第3の実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成について、図を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成を説明する為の側断面の構成図、および部分透視平面構成図である。
【0083】
本実施形態の高周波スイッチモジュール1Aは、第1の実施形態の図1に示した高周波スイッチモジュール1に対して、MEMS機構部10の外部接続用電極30Aに当接する伝送用電極300Aに代わり、伝送用電極301Aを用いる。
【0084】
伝送用電極301Aの一方端は、MEMS機構部10の外部接続用電極30Aに当接する。伝送用電極301Aの他方端は、積層体に形成されたビアホール302Aにより、伝送用電極400Aの所定点に接続されている。このような構成とすれば、上述の第1の実施形態に示したDPDTの高周波スイッチモジュールに代えて、SPDTの高周波スイッチモジュールを実現することができる。
【0085】
具体的には、次に示す制御により、高周波スイッチモジュール1AはSPDTとして機能する。図7は、本実施形態の高周波スイッチモジュール1のスイッチング制御を説明する為の図である。図7(A),(C),(E)は、スイッチング制御電圧と可動電極11の変位とを簡略的に表す図であり、図7(A)はスイッチング制御電圧V1,V2が「0」の場合、図7(C)はスイッチング制御電圧V1が正の所定値であり、スイッチング制御電圧V2が「0」の場合、図7(E)はスイッチング制御電圧V2が正の所定値であり、スイッチング制御電圧V1が「0」の場合を示す。図7(B),(D),(F)は、図7(A),(C),(E)のスイッチング制御の状態での高周波スイッチングモジュール1を高周波的観点から見た回路構成図である。
【0086】
図7(A)に示すように、スイッチング制御電圧V1,V2が印加されていない状態、すなわちV1=V2=「0」の場合、可動電極11はデフォルトの位置にあり、変位しない。したがって、固定電極13A,13Bとも固定電極14A,14Bとも所定の距離を置く位置に可動電極11が存在する。このため、高周波回路としては、図7(B)に示すように、伝送用電極400A(実質的には外部接続用電極40Aやビアホール41Aを含む)からなる伝送線路と、伝送用電極400B(実質的には外部接続用電極40Bやビアホール41Bを含む)からなる伝送線路とが、固定電極14Aと可動電極11とによるキャパシタと固定電極14Bと可動電極11とによるキャパシタにより接続された構成(図7(B)のキャパシタンスCn1に対応)となる。ただし、可動電極11と固定電極14A,14Bとの距離が離間しているため、実質的には殆ど結合することなく、これらの伝送線路間は略開放となる。
【0087】
同様に、伝送用電極301A(実質的には外部接続用電極30Aやビアホール31Aを含む)からなる伝送線路と、伝送用電極300B(実質的には外部接続用電極30Bやビアホール31Bを含む)からなる伝送線路とが、固定電極13Aと可動電極11とによるキャパシタと固定電極13Bと可動電極11とによるキャパシタにより接続された構成(図7(B)のキャパシタンスCn2に対応)となる。ただし、可動電極11と固定電極13A,13Bとの距離が離間しているため、実質的には殆ど結合することなく、これらの伝送線路間は略開放となる。
【0088】
これにより、伝送用電極400Aの固定電極14Aと反対側の端部にある入出力ポートP11と、伝送用電極400Bの固定電極14Bと反対側の端部にある入出力ポートP12、および伝送用電極300Bの固定電極14Bと反対側の端部にある入出力ポートP22とは、ともに分断された状態となる。
【0089】
次に、図7(C)に示すように、可動電極11と固定電極14A,14Bとの間に、所定の「0」でない電圧レベルVd1からなる直流のスイッチング制御電圧V1を印加する。この際、スイッチング制御電圧V2は「0」とする。
【0090】
このようなスイッチング制御電圧V1を印加すると、図7(C)に示すように、全体として固定電極14A,14B側へ変位し、最終的に可動電極11と固定電極14A,14Bとが当接する。
【0091】
このように、可動電極11と固定電極14A,14Bとが当接すると、高周波回路としては、図7(D)に示すように、伝送用電極400Aからなる伝送線路と、伝送用電極400Bからなる伝送線路とが、固定電極14A、可動電極11、および固定電極14Bを介して導通し、短絡した状態になる。これにより、伝送用電極400Aの固定電極14Aと反対側の端部にある入出力ポートP11と、伝送用電極400Bの固定電極14Bと反対側の端部にある入出力ポートP12とが導通する。これにより、入出力ポートP11,P12間で高周波信号を伝送することができる。
【0092】
一方、可動電極11が固定電極14A,14Bに近づくもしくは当接すると、可動電極11と固定電極13A,13Bとの間隔は、さらに離間する。このため、伝送用電極301Aからなる伝送線路と、伝送用電極300Bからなる伝送線路との間は開放となる。これにより、図7(D)に示すように、伝送用電極300Aが接続する伝送用電極400Aの上記入出力ポートP11と、伝送用電極300Bの固定電極13Bと反対側の端部にある入出力ポートP22との間が分断される。これにより、入出力ポートP11,P22間では高周波信号は伝送されない。
【0093】
次に、図7(E)に示すように、可動電極11と固定電極13A,13Bとの間に、所定の「0」でない電圧レベルVd2からなる直流のスイッチング制御電圧V2を印加する。この際、スイッチング制御電圧V1は「0」とする。
【0094】
このようなスイッチング制御電圧V2を印加すると、図7(E)に示すように、全体として固定電極13A,13B側へ変位し、最終的に可動電極11と固定電極13A,13Bとが当接する。
【0095】
このように、可動電極11と固定電極13A,13Bとが当接すると、高周波回路としては、図7(F)に示すように、伝送用電極300Aからなる伝送線路と、伝送用電極300Bからなる伝送線路とが、固定電極13A、可動電極11、および固定電極13Bを介して導通し、短絡した状態になる。これにより、伝送用電極300Aが接続する伝送用電極400Aの上記入出力ポートP11と、伝送用電極300Bの固定電極13Bと反対側の端部にある入出力ポートP22とが導通する。これにより、入出力ポートP11,P22間で高周波信号を伝送することができる。
【0096】
一方、可動電極11が固定電極13A,13Bに近づくもしくは当接すると、可動電極11と固定電極14A,14Bとの間隔は、さらに離間する。このため、伝送用電極400Aからなる伝送線路と、伝送用電極400Bからなる伝送線路との間は開放となる。これにより、図7(F)に示すように、伝送用電極400Aの固定電極14Aと反対側の端部にある入出力ポートP11と、伝送用電極400Bの固定電極14Bと反対側の端部にある入出力ポートP12との間が分断される。これにより、入出力ポートP11,P12間では高周波信号は伝送されない。
【0097】
このような構成とすることで、共通のポートに対して2個の個別ポートを有し、共通のポートと一方の個別ポートとの間を導通し、共通ポートと他方の個別ポートとの間を開放するSPDTの高周波スイッチモジュールを、容易な構造で小型に構成することができる。
【0098】
次に、第4の実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成について、図を参照して説明する。図8は本実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成を説明する為の側断面の構成図、および部分透視平面構成図である。
【0099】
本実施形態の高周波スイッチモジュール1Bは、第1の実施形態の図1に示した高周波スイッチモジュール1に対して、固定電極の構造が異なる。具体的には、本実施形態の高周波スイッチモジュール1Bは、第1の実施形態の高周波スイッチモジュール1の固定電極13A,13Bが繋がった1個の固定電極13を備える。また、高周波スイッチモジュール1Bは、第1の実施形態の高周波スイッチモジュール1の固定電極14A,14Bが繋がった1個の固定電極14を備える。固定電極13の表面には、誘電体層61が形成され、固定電極14の表面には、誘電体層62が形成されている。
【0100】
また、可動電極11は、梁12を介して接地用電極500に電気的に接続している。すなわち、可動電極11は実質的に接地されている。
【0101】
このような構成の高周波スイッチモジュール1Bは、次に示すスイッチング制御により、DPDTのスイッチとして機能する。図9は、本実施形態の高周波スイッチモジュール1のスイッチング制御を説明する為の図である。図9(A),(C),(E)は、スイッチング制御電圧と可動電極11の変位とを簡略的に表す図であり、図9(A)はスイッチング制御電圧V1,V2が「0」の場合、図9(C)はスイッチング制御電圧V1が正の所定値であり、スイッチング制御電圧V2が「0」の場合、図9(E)はスイッチング制御電圧V2が正の所定値であり、スイッチング制御電圧V1が「0」の場合を示す。図9(B),(D),(F)は、図9(A),(C),(E)のスイッチング制御の状態での高周波スイッチングモジュール1を高周波的観点から見た回路構成図である。
【0102】
図9(A)に示すように、スイッチング制御電圧V1,V2が印加されていない状態、すなわちV1=V2=「0」の場合、可動電極11はデフォルトの位置にあり、変位しない。したがって、固定電極13とも固定電極14とも所定の距離を置く位置に可動電極11が存在する。
【0103】
このため、高周波回路としては、図9(B)に示すように、伝送用電極400A(実質的には外部接続用電極40Aやビアホール41Aを含む)からなる伝送線路と、伝送用電極400B(実質的には外部接続用電極40Bやビアホール41Bを含む)からなる伝送線路とが導通し、これらの接続点が固定電極14と可動電極11とによるキャパシタ(図9(B)のキャパシタンスCn1に対応)により高周波的に接地された状態となる。
【0104】
同様に、図9(B)に示すように、伝送用電極300A(実質的には外部接続用電極30Aやビアホール31Aを含む)からなる伝送線路と、伝送用電極300B(実質的には外部接続用電極30Bやビアホール31Bを含む)からなる伝送線路とが導通し、これらの接続点が固定電極13と可動電極11とによるキャパシタ(図9(B)のキャパシタンスCn2に対応)により高周波的に接地された状態となる。
【0105】
次に、図9(C)に示すように、可動電極11と固定電極14との間に、所定の「0」でない電圧レベルVd1からなる直流のスイッチング制御電圧V1を印加する。この際、スイッチング制御電圧V2は「0」とする。
【0106】
このようなスイッチング制御電圧V1を印加すると、可動電極11は、図9(C)に示すように、全体として固定電極14側へ変位し、最終的に可動電極11と固定電極14とが誘電体層62を介して当接する。
【0107】
可動電極11と固定電極14とが誘電体層62を介して当接すると、キャパシタが形成される。そして、伝送用電極400Aの固定電極14と反対側の端部の入出力ポートP11から可動電極11までの電極長として、当該入出力ポートP11に入力される第1の高周波信号の波長λの1/4となるように設定する。これにより、第1の高周波信号に対して、入出力ポートP11から見れば、伝送用電極400Aと伝送用電極400Bとの接続点は開放になり、第1の高周波信号は、入出力ポートP11から、伝送用電極400Bの固定電極14と反対側の端部の入出力ポートP12へ伝送されない。なお、第1の高周波信号と異なる周波数の第2の高周波信号は、入出力ポートP11から入出力ポートP12へ伝送させることができる。特に、第2の高周波信号の周波数が第1の高周波信号の周波数よりも低い場合は、伝送用電極400A,400Bの影響が小さくなり、伝送損失を小さくできる。
【0108】
一方、可動電極11が固定電極14に誘電体層62を介して当接すると、可動電極11と固定電極13との間隔は、さらに離間する。このため、伝送用電極300Aからなる伝送線路と、伝送用電極300Bからなる伝送線路との間は、上述の固定電極14側と異なり、第1の高周波信号に対して影響を与えない。これにより、図9(D)に示すように、伝送用電極300Aの固定電極13と反対側の端部にある入出力ポートP21と、伝送用電極300Bの固定電極13と反対側の端部にある入出力ポートP22との間で、第1の高周波信号は伝送される。
【0109】
次に、図9(E)に示すように、可動電極11と固定電極13との間に、所定の「0」でない電圧レベルVd2からなる直流のスイッチング制御電圧V2を印加する。この際、スイッチング制御電圧V1は「0」とする。
【0110】
このようなスイッチング制御電圧V2を印加すると、図9(C)に示すように、可動電極11は、全体として固定電極13側へ変位し、最終的に可動電極11と固定電極13とが誘電体層61を介して当接する。
【0111】
可動電極11と固定電極13とが誘電体層61を介して当接すると、キャパシタが形成される。そして、伝送用電極300Aの固定電極13と反対側の端部の入出力ポートP21から可動電極11までの電極長として、当該入出力ポートP21に入力される第2の高周波信号の波長λの1/4となるように設定する。これにより、第2の高周波信号に対して、入出力ポートP21から見れば、伝送用電極300Aと伝送用電極300Bとの接続点は開放になり、第2の高周波信号は、入出力ポートP21から、伝送用電極300Bの固定電極13と反対側の端部の入出力ポートP22へ伝送されない。なお、第2の高周波信号と異なる周波数の第1の高周波信号は、入出力ポートP21から入出力ポートP22へ伝送させることができる。
【0112】
一方、可動電極11が固定電極13に誘電体層61を介して当接すると、可動電極11と固定電極14との間隔は、さらに離間する。このため、伝送用電極400Aからなる伝送線路と、伝送用電極400Bからなる伝送線路との間は、上述の固定電極13側と異なり、第2の高周波信号に対して影響を与えない。これにより、図9(D)に示すように、伝送用電極400Aの固定電極14と反対側の端部にある入出力ポートP11と、伝送用電極400Bの固定電極14と反対側の端部にある入出力ポートP12との間で、第2の高周波信号は伝送される。
【0113】
このような構成であっても、所定の周波数の高周波信号に対して、一方の伝送線路では導通して、他方の伝送線路では遮断する高周波スイッチモジュールを構成することができる。
【0114】
なお、上述の説明では、入出力ポートP11や入出力ポートP21から高周波信号が入力される場合を示したが、伝送用電極300B,400Bを適宜設定することで、入出力ポートP12や入出力ポートP22から高周波信号が入力される場合にも、同様のスイッチング制御を行うことができる。
【0115】
また、本実施形態ではDPDTを例に説明したが、本実施形態の構成を、上述の第3実施形態のSPDTに適用することもできる。これにより、共通の入出力ポートP11に対して、個別の入出力ポートP12,P22にそれぞれ異なる所望周波数の高周波信号のみを伝送し、当該所望の周波数とは異なる特定周波数の高周波信号を選択的に遮断することができる。
【0116】
次に、第5の実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成について、図を参照して説明する。図10は、本実施形態の高周波スイッチモジュール1Cに含まれるMEMS機構部10Gの構造を説明するための図である。図10(A)はMEMS機構部10Gの側面断面図であり、図10(B)はMEMS機構部10Gの部分透視平面構成図であり、図10(C)はMEMS機構部10Gの底面図の外部接続用電極パターンを示す図である。
【0117】
本実施形態のMEMS機構部10Gは、第1の実施形態の図2に示したMEMS機構部10の固定電極14A,14Bの構造および外部接続用電極40A,40Bと異なる固定電極および外部接続用電極の構成を備える。
【0118】
固定電極14A,14Bは、絶縁体層90により形成される枠体まで延びる形状からなる。MEMS機構部10Gの底面には、固定電極13A,13Bにビアホール31A,31Bを介して接続する外部接続用電極30A,30Bとともに、外部接続用電極40C,40Dが形成されている。MEMS機構部10Gを平面して枠体に対応する領域には、ビアホール41C,41Dが形成されている。固定電極14Aはビアホール41Cにより外部接続用電極40Cに接続し、固定電極14Bはビアホール41Dにより外部接続用電極40Dに接続している。これにより、MEMS機構部10Gの外部接続用電極30A,30B,40C,40Dは、全てMEMS機構部10Gの底面に形成される。
【0119】
MEMS機構部10Gが実装される積層体は、第1の実施形態に示した積層体に対して、伝送用電極400A,400Bの代わりに、伝送用電極400C,400Dを備える。図11(A)は本実施形態の高周波スイッチモジュール1Cの構成を説明する為の側断面の構成図であり、図11(B)はMEMS機構部10Gの実装される層の電極パターンを示す図である。伝送用電極400C,400Dは、伝送用電極300A,300Bと同一層に形成されている。伝送用電極400Cは、MEMS機構部10Gが積層体内に実装された状態で、外部接続用電極40Cが当接する形状のランド電極を一方端に備える。伝送用電極400Dは、MEMS機構部10Gが積層体内に実装された状態で、外部接続用電極40Dが当接する形状のランド電極を一方端に備える。
【0120】
このような構成を用いることで、MEMS機構部10Gが積層体内の電極に当接する実装面が一面のみとなる。これにより、実装が容易になるとともに、実装の信頼性を向上することができる。
【0121】
次に、第6の実施形態に係る高周波スイッチモジュールの構成について、図を参照して説明する。上述の各実施形態では、MEMS機構部を個別に形成し、高周波スイッチモジュールを構成する積層体内に実装する構成を示したが、本実施形態では、MEMS機構部を含む高周波スイッチモジュール全体を一体形成する構成を示す。図12(A)は、本実施形態の高周波スイッチモジュール1Dの構造を説明するための側断面で見た構成図である。図12(B)は、高周波スイッチモジュール1Dを積層方向から見て所定層だけ透視した状態での平面視した構成図である。また、図13は、本実施形態の高周波スイッチモジュール1Dの積層図である。なお、本実施形態では、8層から高周波スイッチモジュール1Dを構成しているが、層数は適宜設定すればよい。
【0122】
最下層の絶縁体層900Aの上面には、図12および図13(E)に示すように、伝送用電極300A,300Bが所定のパターン形状で形成されている。伝送用電極300A,300Bの一方端は、積層体を平面視して、それぞれMEMS機構部10の固定電極13A,13Bの形成領域まで達する形状に形成されている。伝送用電極300A,300Bの他方端は、図示しないが、積層体の下面等に設けられた所定の外部接続ランドに接続している。
【0123】
最下層から3層目の絶縁体層900Cの上面には、図12および図13(D)に示すように、固定電極13A,13Bが所定間隔で離間されて、所定面積で形成されている。固定電極13Aは、2層目と3層目の絶縁体層900B,900Cに形成されたビアホール31Aにより、伝送用電極300Aに接続している。固定電極13Bは、2層目と3層目の絶縁体層900B,900Cに形成されたビアホール31Bにより、伝送用電極300Bに接続している。
【0124】
最下層から4層目の絶縁体層900Dおよび5層目の絶縁体層900Eには、平面視して、上述の固定電極13A,13Bの形成領域を含む所定面積範囲が開口される貫通穴が形成されてる。また、誘電体層900D,900Eの境界面の空間領域15には、図12および図13(C)に示すように、可動電極11が配置されている。可動電極11は梁12により、絶縁体層900D,900Eに対して支持されている。また、絶縁体層900D,900Eの枠体部分には、略全面に接地用電極500が形成されている。この際、本実施形態では、接地用電極500が梁12に接続しないように形成する。なお、上述の第4実施形態の構成に適用する場合には、接地用電極500と梁12とを接続して形成する。
【0125】
最下層から6層目の絶縁体層900Fの下面には、図12および図13(B)に示すように、固定電極14A,14Bが所定間隔で離間されて、所定面積で形成されている。この際、固定電極14A,14Bは、可動電極11を基準に、固定電極13A,13Bと対称に形成されている。
【0126】
最上層の絶縁体層900Hの下面には、図12および図13(A)に示すように、伝送用電極400A,400Bが所定のパターン形状で形成されている。これら伝送用電極400A,400Bは、固定電極14A,14Bに、一方端が当接するような形状で形成されている。なお、他方端は、伝送用電極300A,300Bと同様に、図示しないが、積層体の下面等に設けられた所定の外部接続ランドに接続している。伝送用電極400Aの一方端は、絶縁体層900F,900Gに形成されたビアホール41Aにより固定電極14Aに接続している。伝送用電極400Bの一方端は、絶縁体層900F,900Gに形成されたビアホール41Bにより固定電極14Aに接続している。
【0127】
なお、本実施形態でも、図12、図13にはスイッチング制御用電圧の印加用回路は記載していないが、第1の実施形態と同様に、上述の各回路電極パターンとともに積層体内に適宜形成されている。
【0128】
このような構成であっても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、このような一体形成を、上述の第3の実施形態の高周波スイッチモジュールや、第4の実施形態の高周波スイッチモジュールに対して適用することもできる。
【0129】
なお、上述の説明では、固定電極13A,13B、14A,14Bを同じ形状で形成する場合を示したが、仕様に応じてこれら固定電極13A,13B、14A,14Bの形状、例えば面積をそれぞれ個別に異なる面積等に設定することもできる。これにより、より正確に所望とする伝送特性を得ることができる。なお、固定電極の形状は、固定電極の厚み、可動電極との重なり面積等を変えることでも設定できる。
【0130】
また、上述の説明では、可動電極や固定電極の表面に誘電体層を形成する例を示したが、抵抗膜を形成する構成を用いてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1,1A,1B,1C,1D−高周波スイッチモジュール、10,10A〜10G−MEMS機構部、11−可動電極、12−梁、13,13A,13B,14,14A,14B−固定電極、30A,30B,40A,40B,40C,40D−外部接続用電極、31A,31B,41A,41B,41C,41D−ビアホール、90,900,900A〜900H−絶縁体層、60,61,61A,61B,62,62A,62B−誘電体層、300A,300B,400A,400B,400C,400D−伝送用電極、500−接地用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する枠体の内側の空間に、前記枠体の開口面と平板面とが略平行になるように該枠体に対して梁によって保持された平板状の可動電極と、
前記枠体の対向する開口面のそれぞれを覆う各絶縁層の前記枠体側の面に、前記可動電極を挟んで対向するように形成された第1の固定電極および第2の固定電極と、
前記可動電極へ接続し、前記枠体および前記絶縁層を備える積層体に形成された接地用電極と、
前記可動電極と第1の固定電極との間、または前記可動電極と前記第2の固定電極との間に直流のスイッチング電圧を与えるためのスイッチング電圧印加用回路電極と、
を備えた高周波スイッチモジュール。
【請求項2】
絶縁性を有する枠体の内側の空間に、前記枠体の開口面と平板面とが略平行になるように該枠体に対して梁によって保持された平板状の可動電極と、
前記枠体の対向する開口面のそれぞれを覆う各絶縁層の前記枠体側の面に、前記可動電極を挟んで対向するように形成され、それぞれが互いに電気的に接続しない形状で形成された複数の固定部分電極によって構成される第1の固定電極および第2の固定電極と、
前記可動電極と第1の固定電極との間、または前記可動電極と前記第2の固定電極との間に直流のスイッチング電圧を与えるためのスイッチング電圧印加用回路電極と、
を備えた高周波スイッチモジュール。
【請求項3】
前記枠体および前記絶縁層を備える積層体に形成され、前記第1の固定電極に接続し、少なくとも前記第1の固定電極を介して、高周波信号を伝送するための第1の伝送用電極と、
前記枠体および前記絶縁層を備える積層体に形成され、前記第2の固定電極に接続し、少なくとも前記第2の固定電極を介して、高周波信号を伝送するための第2の伝送用電極と、
を備えた請求項1または請求項2に記載の高周波スイッチモジュール。
【請求項4】
前記第1の伝送用電極と前記第2の伝送用電極には、異なる周波数の信号が伝送する、請求項3に記載の高周波スイッチモジュール。
【請求項5】
前記可動電極の少なくとも一方の平板面に絶縁体膜を備える、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の高周波スイッチモジュール。
【請求項6】
前記可動電極の両方の平板面にそれぞれ絶縁体膜を備え、該両面の平板面の絶縁体膜の形状が異なる、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の高周波スイッチモジュール。
【請求項7】
前記第1の固定電極および前記第2の固定電極の少なくとも一方に、絶縁体膜を備える、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の高周波スイッチモジュール。
【請求項8】
前記第1の固定電極と前記第2の固定電極の形状が異なる、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の高周波スイッチモジュール。
【請求項9】
前記積層体に形成され、前記第1の固定電極に接続し、少なくとも前記第1の固定電極を介して、高周波信号を伝送するための第1の伝送用電極と、
前記積層体に形成され、前記第2の固定電極に接続し、少なくとも前記第2の固定電極を介して、前記第1の固定電極側とは異なる周波数の高周波信号を伝送するための第2の伝送用電極と、を備え
前記接地用電極は前記第1の伝送用電極と前記第2の伝送用電極との間に配置されている、請求項1に記載の高周波スイッチモジュール。
【請求項10】
前記第1の伝送用電極と前記第2の伝送用電極とは、前記積層体の同層に形成され、
前記枠体および前記絶縁層には、前記第1の固定電極と前記第2の固定電極を、前記第1の伝送用電極と前記第2の伝送用電極が形成された層まで引き回す引き回し電極が形成されている、請求項3乃至請求項9のいずれかに記載の高周波スイッチモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−171897(P2011−171897A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32246(P2010−32246)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】