説明

高周波治療器、高周波治療システムおよびそれらの使用方法

【課題】RFアンテナアセンブリと少なくとも硬質材料製の切開刃1個を包含する鞘を有する治療用アンテナプローブなどのRF治療器、RF治療器を内蔵するRF治療システム、その使用方法を提供する。
【解決手段】 治療用アンテナプローブは、ダイポールアンテナアセンブリ420を形成するRF電力伝送ケーブルと鞘401とから構成される。RF電力伝送手段は、中心導体と、円筒状誘電絶縁体403と、外部導体404とから構成され、これらが組み合わされてダイポールアンテナアセンブリとなる。ダイポールアンテナ420は、ダイポールアンテナアセンブリの部材であり、外部導体の一部から形成されかつ1本の中心導体に接続される第1および第2電極408,409と、両電極間に形成される絶縁手段407とから構成される。鞘401は、硬質材料製で、鋭利な辺部を有するヘッドエレメントを少なくとも1個収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波(以下、RFと言う)治療器およびそのシステムの構造と使用方法の全般に関する。具体的には、本発明は、RFアンテナアセンブリと少なくとも硬質材料製の切開刃1個を包含する鞘とを有する治療用アンテナプローブなどのRF治療器と、RF治療器を内蔵するRF治療システムと、その使用方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
RF手術器は、腫瘍や病変組織を除去する目的で広く用いられている。RF手術器の特徴の一つとして、侵襲性が比較的低いことが挙げられる。これは、手術器を特殊な方法で使用し、病変腫瘍の特定領域に、または病変腫瘍と近接する組織の特定領域に挿入することによる。RF手術器は、腫瘍の内部において、または病変や癌の発現している病変組織の内部において熱を発生させることによって、病変がまさに発現している組織領域にRF電力を吸収させ、その組織領域を温熱焼灼するものである。RF手術器による治療は経皮的に行うが、開腹範囲が比較的狭いため、治療に伴う侵襲性が比較的低く、患者の入院期間を短くすることができる。
【0003】
RF手術器には、次の2種類がある。一方は、RF切除器であり、このRF切除器が挿入された組織の内部において電流を誘起させ、その誘起電流が発生させる温熱によって組織を凝固させるというものである。これは、文献1の説明の通り、LeVeenが提案したものである。もう一方の種類のRF手術器は、マイクロ波電力を放射し、その電力をRF手術器が挿入された組織の内部にある水分に吸収させるというものである。細胞内の水分に吸収させた電力によって、組織の蛋白質を分解し、かつ組織の細胞を壊死させるのに必要な温度以上に組織を加熱する。かねてよりマイクロ波の周波数としては、945MHzまたは2.45GHzが用いられている。上記のようなRF手術器を使用する治療方法は、RFハイパーサーミアまたは経皮的マイクロ波凝固法と呼ばれている。
【0004】
治療用製品としては、マイクロターゼ(アルフレッサファーマ社の登録商標、文献1)が有名である。この製品は、上記二つの治療効果を活用するものである。マイクロターゼに用いられる電気プローブ(以下、「プローブ」と略称する)は、同軸ケーブルと似た同軸構造を持つ。具体的には、同プローブは、図1および図2に示す通り、中心導線102(「中心導体」と略称する)と、その外周を取り巻く円筒形状の誘電絶縁体103と、外部導電性筒体104(「外部導体」と略称する)と、それを覆う外部被覆105とで構成される。外部導体104は一方の電極として、中心導体102は他方の電極として形成される。外科手術を行いやすくするため、プローブの先端は図1および図2に示すような針の先端として、または図3と図4に示す弾丸状頭部106として形成する。構造体全体については、温熱療法プローブと呼び、この電気プローブの電気的特性に基づいて特に温熱療法モノポールアンテナプローブ(TTMPと略称する)と呼ぶ。
【0005】
上記2番目の種類(文献3)に関して説明した温熱療法プローブの他にも、水がマイクロ波を吸収し、加熱することに特化した温熱療法プローブが新たに発表されている。このプローブは、セミリジッドな(Semi Rigid)同軸ケーブルで製作したものであるが、この同軸ケーブルはプローブの目的に合った同軸構造となっている。具体的には、図5および図6に示す通り、外部導体104はいくつかのセグメントに分割されており、隣接するセグメント2個それぞれの間に電気的絶縁間隙107が1個所設けられたものである。第1電極108は、一方の外部導体104であるとともに、隣接するセグメントのうち中心導体102に接続されている方のセグメントとなっているものであって、外部導体104用に形成されたものである。第2電極109は、もう一方の外部導体104であるととともに、隣接するセグメントのもう一方のセグメントであり、かつ第1電極108から絶縁されているものであって、外部導体104から形成されたものである。外部導体は、外部被覆105で覆われている。したがって、この温熱療法プローブの電極は、アンテナアセンブリの構造、特にダイポールアンテナの構造を有する。アンテナアセンブリ全体は、絶縁材料で覆うか、あるいは絶縁材料製の絶縁ケースに収納する。この構造体は、温熱療法ダイポールアンテナプローブ(以下、TTDPと略称する)と呼ばれる。
【0006】
文献1と文献2において説明されている絶縁ケース117または117Aの外観は、図5および図6に示す通りであるが、これらは硬質ポリ塩化ビニール(PVC)製、またはポリ四フッ化エチレン(PTFE)製である。絶縁ケース117はダイポールアンテナ全体を覆い、絶縁ケース117Aはダイポールアンテナ全体を収納する。外部導体の構造体のもう一つ別の部分において、第1電極の一部が導電性円板110を介して中心導体に電気的に接続され、それによってプローブ構造体を円筒対称にしている構造が知られている。このようなTTDPは、具体的には図7および図8に示す通り、絶縁ケース117によって覆われている。
【0007】
TTMPとTTDPとによって得られる治療効果を比較して、使用時の実際の現象を確認してみると、TTMPが挿入された病変組織がその領域で加熱され、中心導体とその近傍周辺の外部導体とに挟まれる領域がそこに流れ込む誘電電流によって加熱されることが分かる(図9)。したがって、TTMPによって焼灼される(焼け焦げない程度に加熱される)領域は、中心導体102(t0に位置する)からr1までの区間に局所化される。ここで、r1は実線と点線が交差するTTMPからの離間距離である。一方、TTDPの場合、第1電極と第2電極がダイポールアンテナを構成する。TTDPが挿入された位置の周囲の病変組織領域の水分は、そのような位置から放射されたマイクロ波を吸収し、病変組織の蛋白質が分解する温度以上に加熱される。したがって、TTDPによって治療する「焼灼」領域の面積は、TTMPによる治療領域の面積よりも(図10に示す通り)大きくなるが、これは、第1電極と第2電極とからなるダイポールアンテナを形成する同軸ケーブル内において、TEMモードからの変換後の水平方向マイクロ波伝播、すなわちマイクロ波放射の物理的特性に起因する。焼灼領域は、r=ts、すなわち絶縁ケース117または117Aの表面からr=r2までの区間である。ここで、r2は実線と点線が交差するTTDPからの離間距離である。特に、癌組織などの腫瘍は、蛋白質分解温度よりも若干高い程度の低温で容易に壊死する。したがって、TTDPでは、正常な組織にほとんど負担を与えずに腫瘍を焼灼して壊死させることが可能である。腫瘍に対するこの治療効果は、ハイパーサーミアと同じものである。図11および図12に示すTTMPとTTDPとの細部構造は、図2および図6に示すものと同じである。図11および図12において、符号TRは温熱療法領域を、符号TIは組織を意味する。
【0008】
【非特許文献1】“Microtaze” (Trade Mark), a corporate booklet of Alfresa Pharma (www.alfresa-pharma.co.jp/microtaze/520e.pdf).
【非特許文献2】医器学 74巻、No. 6、2004年、292−314ページ
【非特許文献3】“Clinical Trials of Interstitial Microwave Hyperthermia by Use of Coaxial-Slot Antenna With Two Slots”, Kazuyuki Saito, Hiroyuki Yoshimura, Koichi Ito, Yutaka Aoyagi and Hirotoshi Horita, IEEE Transaction on Microwave Theory and Techniques, Vol. 52, No. 8, August 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
まず、本発明について以下に概説する。
【0010】
TTMPの表面は、銅製の外部導体で形成される。医療規制により、銅と組織とが直接接触することは許されない。したがって、文献3において説明されるTTDPの頭部は、硬質PVC(ポリ塩化ビニール)製またはPTFE製の絶縁ケースで覆われるか、またはその中に収納される。ただし、これらの材料は、TTDPを組織に経皮的に挿入するには硬度不足である。外科医は、TTDPを挿入してRF温熱療法を行う前にメスまたは外科刃を使って、腫瘍に達する穴を開け、TTDPを挿入する必要がある。したがって、外科医は、治療手術に先立ち、事前処置を行う必要がある。皮膚組織の「事前切開」によって案内溝を設けてTTDPを導くと、あとでそこから出血を誘発する可能性があるので、TTDPを腫瘍内に経皮的に侵襲させ、加熱してRF温熱療法を行える単一施術治療とする。このように単一施術とすることで、外科医の施術時間が短縮され、外科手術の安全性を高めることが可能となる。
【0011】
本発明の第1の目的は、事前処置の必要性をなくし、RF温熱療法を迅速に行えるようにするための手段を提供することである。この目的のためには、TTDPの絶縁ケースの前方頭部を鋭利にする必要がある。TTDPの頭部を鋭利にすることにより、組織を経皮的に切開することが可能となり、外科医はTTDPの腫瘍への挿入を単一施術で行うことができる。
【0012】
文献3中のTTDPについては、アンテナアセンブリを覆う絶縁ケースが強度不足であるため、同アセンブリの機械的安定性を維持できないという問題が別個に存在する。したがって、患者が手術台上で動いてその筋力でTTDPが曲がり、電気的絶縁間隙が若干歪めば、ダイポールアンテナからの、特に第1電極と第2電極との間の電気的絶縁間隙からのRF電力放射の放射方向が逸れる。放射電力の方向が逸れるため、腫瘍に加熱むらが生じ、RF温熱療法の施術が不十分または不完全になる。この問題を解決するためには、アンテナアセンブリを堅固に保持する、TTDP全体の剛性を維持できる絶縁ケースが必要である。そのような絶縁ケースを実現するには、鋭利な頭部を組み込んだ鞘と、アンテナを堅固に保持するパイプとを使用し、手術中におけるRF電力放射の方向の逸れを抑制できるようにすればよい。鋭利な頭部は、硬質材料製とする。したがって、本発明の第1の目的を達成するためには、鋭利な頭部を有する絶縁ケースと、アンテナアセンブリに十分な剛性または堅牢性を持たせる堅固なパイプとを使用すればよい。
【0013】
文献1、文献2および文献3において説明されているTTMPおよびTTDPは、前者が中心導体と外部導体との間の電気的絶縁間隙から、後者が第1電極と第2電極との間の電気的絶縁間隙から、RF電力を放射するようになっている。したがって、誘起電流とRF電力が上記の電気的絶縁間隙に局所化されるので、プローブ近傍の組織の温度はプローブからやや離れた組織の温度よりも高くなる傾向がある。TTMPの使用目的は高温で腫瘍を凝固させることであるので、このような温度分布のむらはTTMPの使用に当たっては重大な問題とはならない。ただし、TTDPを使用して、腫瘍の蛋白質が分解するに足るだけの温度に腫瘍を保とうとする場合、温度分布にむらがあると、プローブ近傍の組織が高温になる。高温だと、組織の焼殺が起こるのであって、焼灼による蛋白質の分解は起こらない。また、TTDPには別の問題がある。すなわち、TTDPの第1電極と第2電極との間の電気的絶縁間隙に近い組織は、電気的絶縁間隙から離れた領域内の他の組織よりも、加熱によって高温になりやすいが、これはマイクロ波放射電力密度がそのような電気的絶縁間隙から遠ざかるにつれて低下するためである。
【0014】
TTDPへ供給されるRF電力を低減すれば、温度上昇を抑制することができる。そのようにRF電力を抑制すれば、TTDP近傍の組織の温度を蛋白質分解温度に維持することは可能であるが、TTDPからやや離れた組織の温度は蛋白質分解温度よりも低く保たれる。すると、広い領域内で成長した腫瘍を壊死させるというTTDPの利点が低減されてしまう。
【0015】
本発明の第2の目的は、温度分布のむらを解消することである。この問題を解決するため、非導電性かつ高熱伝導性の材料製の鞘を絶縁ケースとして使用する。この鞘には、硬質材料を用いることができる。非導電性や高熱伝導性などの特性によって、鞘からのRF放射が可能になり、また、鞘近傍に集中した熱が容易に拡がる。さらには、鞘の誘電率を大きくすることが望ましい。というのは、鞘の誘電率が大きければ、空気と腫瘍との誘電率の比が低減し、TTDPからの有効電気長を大きく取って鞘の表面の過熱を防止することができるからである。
【0016】
文献3中のTTDPには、電気的絶縁間隙は1個しかなく、それを通じてRF電力を放射し、病変組織を加熱して壊死させるようになっている。したがって、これらのTTDPの場合、上述の通り放射間隙が1個しかないので、TTDPの絶縁ケース沿いに腫瘍を均一に加熱することが難しいという別の問題が存在する。
【0017】
本発明の第3の目的は、放射間隙が1個しかないことに起因する上記の問題を解決することである。そこで、新たなアンテナ構成を提案し、TTDP用のアンテナアセンブリの上部に電気的絶縁間隙を複数設けるようにする。これらの間隙は、アンテナアセンブリの長手方向沿いに設ける。
【0018】
すなわち、これらのアンテナには、電気的絶縁間隙が複数あるので、電気的絶縁間隙相互の間隔が詰まっており、そのため、加熱の均一性がいっそう向上する。このように間隔を詰めるため、本発明はアンテナ内を伝播するマイクロ波の有効波長を縮めることのできるダイポールアンテナ構造を提供する。この新しいアンテナ構造によって、アンテナに沿った垂直方向のRF電力を、軸方向に長くかつ均一に分布させることが可能となる。すると、TTDPの長手方向において腫瘍を均一に加熱することが可能となる。
【0019】
RF電力の放射は、アンテナに設けた電気的絶縁間隙から行われる。この電気的絶縁間隙は、外部導体から作った第2電極と中心導体に接続した第1電極との間に設ける。したがって、電気的絶縁間隙とアンテナの先端との距離が大きくなり、その結果、TTDPの先端部領域へのRF電力放射が十分に行われない。これを「灯台効果」と呼ぶが、その由来は、灯台の屋根からは光が照射されないがそれと同様、RF電力はアンテナの先端からは放射されないことのたとえからである。
【0020】
そこで本発明の第4の目的は、第1電極を短縮してRF電力をアンテナ先端部に回折させるか、または第1から第3の目的の発明において設けた放射間隙とは異なる放射間隙をアンテナの先端に別個設けることによって、灯台効果を解消することである。このようなアンテナの構造を、電気的絶縁間隙を複数備える先述の新しいアンテナアセンブリ用に追加採用することができる。こうすることにより、腫瘍におけるRF電力の分布がいっそう均一になる。
【0021】
本発明の第5の目的は、TTDPに薬剤輸送送達機能を持たせ、TTDPの挿入された病変組織内に薬剤を注入できるようにすることである。注入後の薬剤は、TTDPから放射されるRF電力による加熱によって播散させられ、または活性化(いわゆる薬剤への転換)することができる。TTDPには、このような薬剤輸送送達用の経路を設ける。すると、TTDPを経皮的に組織に挿入する単一施術によって病変組織の加熱処置、薬剤への転換および薬剤注入を順次または同時に行うことができるようになるので、腫瘍治療においてTTDPを効果的に使用できるようになる。制癌剤は、腫瘍の治療に見合う量が輸送送達される。
【0022】
本発明の第6の目的は、本発明の第1から第5の目的の説明の通り、本発明において開示したTTDPを外科医が安全に使用できるようにする制御システムを提供することである。制御システムの操作は、本発明の第1から第5の目的において説明した基本構造を有するTTDPによる薬剤輸送送達とともに行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、第1の目的を達成するために、RF温熱療法用に改良型のTTDPを提供する。
【0024】
改良型のTTDP(以下、本TTDPと略称する)は、アンテナアセンブリを形成するRF電力伝送手段(同軸ケーブルなど)と、鋭利な辺部を有する頭部少なくとも1個が硬質材料製であってかつダイポールアンテナアセンブリ(以下、「アンテナアセンブリ」と略称する)を収納する硬質材料製の鞘と、から構成される。RF電力伝送手段は、中心導体1本と、中心導体の外周に形成した円筒状誘電絶縁体と、外部導体とで構成されるが、これらすべてが組み合わさってアンテナアセンブリとなり、そのダイポールアンテナは、外部導体の一部から形成されかつ少なくとも中心導体1本と電気的に接続される第1電極と、外部導体の他の一部から形成される第2電極と、第1電極と第2電極との間に形成される絶縁手段と、から構成される。頭部は、辺部と可撓性パイプとで構成されるヘッドエレメントであり、可撓性パイプはこのヘッドエレメントに内設した結合部に連結されている。
【0025】
具体的には、本TTDPは、サファイアなどの硬質材質製のヘッドエレメントが一部をなす頭部からなる鞘状の絶縁ケースを有する。鞘のヘッドエレメントは、先端の鋭利な辺部と、ヘッドエレメントに密着する可撓性パイプとを有する。鞘の頭部は、ヘッドエレメントと可撓性パイプとで構成される。鞘のヘッドエレメントは、以下、鋭利な辺部を有する頭部と呼ぶ。鋭利な辺部を有する頭部の機能の一つは、外科医が腫瘍や病変組織に本TTDPを経皮的に貫入させるための刃物としての役割である。治療のためにプローブ挿入穴を組織に開ける事前処置が不要になるので、治療を迅速に行うことができる。サファイアは非導電性であるので、アンテナから放射されるマイクロ波の場が大きく減衰することはない。したがって、本TTDPによる焼灼は、文献3において説明されているPVCやPTFEを用いた従来のTTDPと比べて遜色ない。
【0026】
アンテナを堅固に保持するパイプとしては、FEP(フッ化エチレンプロピレン共重合体)製、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)製、ETFE(エチレン四フッ化エチレン共重合体)製、PFA(四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体)製、熱収縮架橋ポリエチレン製、または熱収縮エチレンプロピレン製であって、アンテナアセンブリに機械的に堅固に接触する絶縁可撓性パイプを使用できる。アンテナアセンブリに対する堅固な接触は、上記の材料(以下、単に「熱収縮チューブ」と呼ぶ)の熱収縮効果によって実現するので、絶縁性パイプはまず成形工程で製作し、そのあと、鋭利な辺部を有する頭部付きの鞘を形成する。加熱工程は、鋭利な辺部を有する頭部、アンテナアセンブリ、およびその周りを覆う絶縁性パイプなどをあらかじめ組み込んだアセンブリについて行う。上記の工程において、絶縁性可撓性パイプは、熱収縮性により収縮し、アンテナアセンブリを堅固に保持する。したがって、本TTDPの電気的絶縁間隙からのRF電力放射を、手術中における患者の筋肉の曲げ力に抗して機械的に安定させることが可能になる。
【0027】
上記の目的のための本TTDPの構造は、図13から図15に示す通りである。アンテナアセンブリ220は、中心導体202と、中心導体202の外周を取り巻く円筒状誘電絶縁体203と、外部導体204とで構成される。この外部導体204は、中心導体202と電気的に接続される第1電極208がそれ自身の一部であり、また、第1電極208から電気的に絶縁される第2電極209がそれ自身の別の一部となっている。TTDP224は、アンテナアセンブリ220と、頭部を収納する鞘230とで構成される。頭部は、i)鋭利な辺部と結合部292とで構成されるヘッドエレメント(以下、「鋭利な辺部を有する頭部」と呼ぶ)293と、ii)結合部292に連結する熱収縮チューブ294とを有する。鋭利な辺部を有する頭部293は、サファイアなどの非導電性かつ硬質の材料で作られ、辺部291と、熱収縮チューブ294に連結する結合部292とで形成される。第1電極208と第2電極209は電気的絶縁間隙207によって絶縁されており、これらすべてをもってアンテナアセンブリ220の部材であるダイポールアンテナが構成される。電気的絶縁間隙207は、外部導体204の一部を加工により除去して形成する。中心導体202は、図13および図14に示すアンテナアセンブリ220用の導電性円板210を介して第1電極208に接続される。図15に示す別タイプのTTDP224の場合、中心導体202は、第1電極208に直結される。図13は、第1電極208と第2電極209との外観ならびに鞘230の断面を示す。熱収縮チューブ294は、周囲から加熱されるとアンテナアセンブリ220を堅固に保持するようになっている。したがって、アンテナアセンブリは、容易に曲がらない。鋭利な辺部を有する頭部293の辺部291によって、組織を容易に切開できるので、単一施術による処置でTTDP224を腫瘍に経皮的に容易に侵入させることができる。このとき、TTDP224は、外科医が押し込んでも、曲がらずに、腫瘍に向かってまっすぐ貫入する。熱収縮チューブ294の締め付けにより、アンテナアセンブリ220が安定し、TTDPが揺れても第1電極208と、第2電極209と、電気的絶縁間隙207とからなるダイポールアンテナ構成体からのRF電力放射は不安定にならない。
【0028】
本発明の第1の目的のTTDP224には、上述の利点以外にも利点が多数あり、さらなる利点については個別実施例の記述を通じて説明する。
【0029】
本発明の2番目の目的は、温度むらを解消することである。
【0030】
具体的には、1)TTDPの表面(したがって、鞘の表面)とその周囲の組織との温度差が大きくならないようにすること、2)TTDPの表面の温度を、特にその裏面が第1電極と第2電極との間の電気的絶縁空隙に面する高温部分の表面の温度を、効果的に抑制すること、3)TTDPの表面上およびその近傍の組織内の温度と、病変組織の蛋白質が分解する温度との差が大きくならないようにすること、ならびに4)剛性に富んだ鞘を設け、単一操作治療によってTTDPを経皮的に容易に腫瘍に貫入させられるようにすることである。
【0031】
本発明の2番目の目的のため、TTDPは、アンテナアセンブリを形成する電力伝送手段(同軸ケーブルなど)と、鋭利な辺部を有する単一体として形成されていてサファイアなどの硬質材料で作られていてアンテナアセンブリを収納する鞘と、から構成される。このRF電力伝送手段は、中心導体1本と、中心導体の外周に形成した円筒状誘電絶縁体と、外部導体とで構成されるが、これらすべてが組み合わさってアンテナアセンブリとなり、そのダイポールアンテナは、外部導体の一部から形成されかつ少なくとも中心導体1本に電気的に接続される第1電極と、外部導体の別の一部から形成される第2電極と、第1電極と第2電極との間に形成される絶縁手段と、から構成される。
【0032】
具体的には、この目的に供せられるTTDPの構造は図16から図18に示す通りである。アンテナアセンブリ320は、中心導体302と、中心導体302の外周を取り巻く円筒状誘電絶縁体303と、外部導体304とで構成されるが、この304の一部は中心導体302に電気的に接続された第1電極308を形成しており、またその別の一部は第1電極から電気的に絶縁された第2電極を形成している。TTDP324は、アンテナアセンブリ320と、サファイアなどの誘電性の単一材を材料とする単一体鞘301と、から構成される。第1電極308と第2電極309は、電気的絶縁空隙307を介して電気的に絶縁されているが、これらすべてが組み合わさってアンテナアセンブリ320の部材であるダイポールアンテナとなっている。中心導体302は、図16および図17に示すアンテナアセンブリ320においては導電性円板310を介して第1電極308に接続され、また、図18に示す別タイプのTTDP324においては第1電極308に直結される。図16は、第1電極308と第2電極309との外観図であるが、単一体鞘301については断面図となっている。
【0033】
単一体鞘301の材質がサファイアである場合、TTDP324の回転軸に対応する原点における放射平面では、SAR(Specific Absorption Rate(比吸収率))によって定まる温度分布は図10に示す通りとなる。実線は組織の温度を、破線は単一体鞘301の温度を示す。ゼロ点は、外部導体304の表面(したがって、第1電極308の表面と第2電極309の表面)に対応する。温度Tsは、蛋白質の分解が始まる42℃を示す。鞘201の材質の誘電率は、サファイアの結晶の向きにより変わるが、9.4から11.6とかなり高めになっている。この数値は、ガラスの場合と比べ、はるかに大きい。
【0034】
比較のため、図5、図6、図7および図8に示す従来型のTTDPについて、SARによって定まる温度分布を図9に示す。実線は組織の温度を、破線はTTDPの絶縁ケース117の温度を示す。図9(また、後述する通り、図10)においては、水平方向の破線沿いの符号TTは温熱療法温度を、垂直方向の線沿いのTDはSARによって定まる温度をセ氏で示している。
【0035】
絶縁ケース117または117Aの比誘電率は、絶縁ケース117または117Aに用いられる硬質PVCや硬質PTFEなどの材料によって異なる。前者の範囲は2.3から3.1であり、後者の範囲は2.2から2.9である。いずれの誘電率も、組織内の水の誘電率(体温で約80℃)よりもはるかに低い。したがって、誘電率の2乗を乗じた絶縁ケース117または117Aの貫通電界経路によって定まる電気的経路はかなり短く、TTMPから放射されるRF電力の減衰は軽微である。病変組織の水の誘電率によって、電気的経路の長さは物理的な長さよりも大きくなる。したがって、温度は、絶縁ケース117または117Aの表面(すなわち図9におけるr = t0)から病変組織に向かうに連れて急激に低下する。蛋白質分解温度であるTsよりも病変組織の温度を高く保つため、r = t0における絶縁ケース117の表面温度は十分に高くなる。
【0036】
本発明のTTDPの場合、tsにおける鞘表面は原点r = 0からの電気的距離(図10参照)が、図9に示すケース117または117A付きのTTDP(以下、従来型TTDPと呼ぶ)よりも大きい。これは、サファイア製の単一体鞘301は従来型の絶縁鞘117よりも誘電率が高いからである。TTDP324の鞘の表面はアンテナアセンブリ320の表面からの電気的距離が大きいので、アンテナアセンブリTTDP324の表面温度がRF電力によって大幅に上昇しても、TTDP324の表面温度を抑制することは可能である。すなわち、蛋白質分解温度Tsを大幅に超えない程度にTTDPの表面付近の組織の温度を抑えることによって、RF電力によって加熱しても組織が焼け焦げることがないようにすることができる。
【0037】
単一体鞘301の位置はr = tsであるので、組織の温度がTsよりも高くなるRF吸収領域は従来型のTTDPを使用した場合よりも狭くなる。ただし、単一体鞘301によってTTDPに供給されるRF電力を増せば、温度がTsよりも高くなるRF吸収領域を、従来型のTTDPを用いる絶縁ケースのRF吸収領域よりも大幅に拡げることができる。例えば、RF電力を20%増加させると、RF吸収領域は60%拡がる。
【0038】
本発明のTTDPの発熱源は、第1電極308と第2電極309との間の電気的絶縁間隙307である。単一体鞘301に使用するサファイアの熱伝導率は25W/m/Kであるが、これは従来型のTTDPに用いるPVCの熱伝導率を大幅に上回る。したがって、電気的絶縁間隙307に近い領域で発生したこのような熱は、単一体鞘301の軸方向の熱伝導性が大きいので、抑制することができる。したがって、SARによって定まる温度Tの分布は、図19に示す実線のようになる。図19においては、符号TTは温熱療法温度を、符号TDはSARによって定まる組織温度をセ氏で示している。図19における点線は、図9で組織の熱吸収における温度分布を示す実線と同じものである。図19からサファイアが高い熱伝導効果を持つことが容易に見て取れる。単一体鞘301内の電気的絶縁間隙307に近い位置で発生する熱は単一体鞘301に沿ってTTDPの軸方向に拡がるので、鞘方向に沿って長手方向に均一に加熱できる。
【0039】
本発明の第2の目的に係るTTDP324は、モース硬度9のサファイア製の単一体鞘301に収納される。この値は、例えば、PTFE製であるためモース硬度が1から2である従来型の絶縁鞘117の材料の値を大幅に上回る。サファイアの剛性は非常に高いので、単一体鞘301は変形せず、また、その生体組織中の切開能力はRF電力をTTDP324に供給したときの高温環境においてさえも低下しない。したがって、外科手術に時間がかからず、術後の回復もかなり早くなる。
【0040】
TTDP324の寸法を定量的に分析するため、以下、ダイポールアンテナ構造について電気的構造の観点から論じる。ここでは、TTDP324が有するダイポールアンテナは、同軸ケーブルなどのRF電力伝送手段から形成されるものとする。ダイポールアンテナは、アンテナアセンブリの部材であるが、以下、これをアンテナアセンブリ(320)と呼ぶ。電気的絶縁間隙307における電界強度を(図16から図18に示すように)最高にするには、第1電極308と第2電極309との有効長を1/4波長にする必要がある。Lを第1電極の物理長、aを同軸ケーブルの長手方向における間隙307の物理長、dを円筒状誘電絶縁体303の直径とすると、下記の式が成り立つ。
【数1】

【0041】
ここで、λはマイクロ波の波長(2.45 GHzのマイクロ波を用いた場合、λ = 122.4 mm)、kは同軸ケーブルを伝播する伝送波の短縮係数である。 TTDPからの最大電力放射は、絶縁ケースの側壁の誘電率εs(絶縁ケースがサファイア製の場合、εsの値は約11.6)を考慮に入れると、下記の範囲内の値において得られる。
【数2】

【0042】
式(2)によれば、サファイア製の絶縁ケースの場合、TTDP324から得られる電力が最大となるのは、各電極の長さの範囲が = 4.9〜9.7 mmのときである。この長さは、マイクロ波の1/4波長(30.6 mm)よりもはるかに短い。したがって、寸法的に短いアンテナアセンブリを製作すれば、小型のプローブを実現できる。したがって、TTDP324は、従来型のTTMPよりも、小さな腫瘍の手術に適していることになる。
【0043】
本発明のTTDP324の利点は、上述の利点以外にも多数あり、それらについては個別実施例の記述を通じて説明する。
【0044】
本発明の第3の目的は、放射間隙が1個しかないという問題を解決することである。この問題については、電気的絶縁間隙を複数有して構成した、配列したアンテナアセンブリを用いる。これらの電気絶縁間隙は、そのようなアンテナアセンブリの長手方向沿いに形成する。
【0045】
本発明の第3の目的のため、TTDPは、アンテナアセンブリを形成するRF電力伝送手段(結合線路など)と、鋭利な辺部を有する頭部少なくとも1個が硬質材料製であってかつアンテナアセンブリを収納する硬質材料製の鞘と、から構成される。RF電力伝送手段は、少なくとも、中心導体1本と、中心導体の外周に形成した円筒状誘電絶縁体と、外部導体とで構成されるが、これらすべてが組み合わさってアンテナアセンブリとなり、そのダイポールアンテナのうち少なくとも1本は、外部導体の一部から形成されかつ少なくとも中心導体1本と電気的に接続される第1電極と、外部導体の他の一部から形成される第2電極と、第1電極と第2電極との間に形成される絶縁手段と、から構成される。頭部は、辺部と可撓性パイプとで構成されるヘッドエレメントであり、可撓性パイプはこのヘッドエレメント内に形成した結合部に連結される。鞘は、サファイアなどの硬質材料製で、単一体として形成することもできる。
【0046】
TTDPの構造として、第1ダイポールアンテナが電力供給点を介して第1中心導体と第2中心導体とを第1電極と第2電極とにそれぞれ接続する構造で形成され、かつ電力供給点において第1電極と第2電極を隣り合わせに対面させる配置で形成され、第2ダイポールアンテナが電力供給点を介して第1中心導体と第2中心導体とを第2電極と第1電極とにそれぞれ接続する構造で形成され、かつ電力供給点において第1電極と第2電極を隣り合わせに対面させる配置で形成されるように第1ダイポールアンテナと第2ダイポールアンテナが組み立てられている構造とすることもできる。この場合において、一つ目の電極対と二つ目の電極対は、アンテナアセンブリ内において交互に形成するものとする。
【0047】
さらに、TTDPのダイポールアンテナは結合線路の終端に形成してもよい。この場合、ダイポールアンテナは、折り曲げた第1電極と折り曲げた第2電極とで構成され、これらの電極の有する外部電極は外部導体から形成された第1電極と第2電極とにそれぞれ電気的に接続される。
【0048】
具体的には、図20および図21に示すアンテナアセンブリ420は、アンテナアセンブリを複数並べた構成となっている。図11および図12においては、符合L、E、およびIはそれぞれ有効4/1波長、電界強度、電流強度を表し、また、図11および図12においては、符号TRは温熱療法領域を、符号TIは組織を示している。アンテナアセンブリ420から放射されるマイクロ波の有効長は、式(2)で与えられる関係を満足する。これらは、図22および図23に示すように結合線路435から作られる。具体的には、第1電極408と第2電極409との対が複数形成されており、RF電力伝送ケーブルである結合線路435に第1中心導体402aと第2中心導体402bとが設けられている。これらの中心導体は、電力供給点434aおよび434bを介して第1電極408と第2電極409に接続され、電力供給点434aおよび434bにおいて第1電極408と第2電極409が隣り合わせに対面するようにそれぞれ配置される。各第1電極408と各第2電極409は、電気的絶縁間隙407によって絶縁されている。
【0049】
本発明のTTDP424は(図24から図26に示す通り)、少なくとも、複数の中心導体を第1中心導体402aおよび第2中心導体402bとして有するアンテナアセンブリ420(中心導体の本数は3本以上も可)と、その外周を取り巻く円筒状誘電絶縁体403と、円筒状誘電絶縁体403の表面上に形成される外部導体404と、アンテナアセンブリ420の部材である複数のダイポールアンテナ436aおよび436bと、から構成される。ダイポールアンテナ436aおよび436bにおいては、第1電極408と第2電極409はどちらとも外部導体404の一部から形成され、互いに絶縁される。第1電極408は第1中心導体に、第2電極409は第2中心導体に接続される。各第1電極408と各第2電極409は、電気的絶縁間隙407によって絶縁される。外部導体404は、略円筒形である。ダイポールアンテナを436a、436b、436cといった具合に複数有するアンテナアセンブリ420は、単一体鞘401に収納される。アンテナアセンブリ420と単一体鞘401とをこのように組み合わせることによって、TTDP424を提供する。
【0050】
図20と図21との間、または図24と図26との間におけるアンテナアセンブリ420の違いは、各中心導体402aと各中心導体402bとを接続するとともに各第1電極408と各第2電極409とを接続する電力供給点434aおよび434bの違いである。各第1電極408と各第2電極409との長手方向の長さは、TTDP424から放射されるRF波の1/4波長に対応する。複数のダイポールアンテナは物理的に直列に配置されているので、各第1中心導体402aは各第1電極408に、各第2中心導体402bは各第2電極409に接続される。この構成の場合、RF電力の電界と電流はそれぞれ電力供給点434aと434bにおいて節と腹を有する。というのは、RF波は、対でダイポールアンテナとして機能する第1電極408と第2電極の中で定常波となるからである。これらの電力供給点434aおよび434bは電流の腹であるので、外部導体404への最大電流の供給が可能になる。その結果、アンテナアセンブリ420は、第1ダイポールアンテナ436a、第2ダイポールアンテナ436b、第3ダイポールアンテナ436cといった具合に複数のダイポールアンテナを具備できる(図24から図26において、ダイポールアンテナ3個の全体像を示す)。このようにダイポールアンテナが複数あるので、温熱療法による病変組織の手術においてRF電力放射による均一な加熱が可能となる。
【0051】
TTDP424においては、上記のダイポールアンテナ436a、436b、436c等から放射されるRF波の結合線路435における有効波長は、中心導体402aと402bとの相互結合によってかなり短くなっている。したがって、電極の物理長を結合線路435の軸方向において短くすることができる。この短縮効果により、電気的絶縁間隙であるRF放射源を密に配置して、TTDP424の単位長さ当たりの間隔を詰め、加熱の均一性を高めて病変組織を焼灼することによって、外科手術の所要時間を短縮することができる。
【0052】
従来型のRF電力伝送ケーブルについて、中心導体と、その外周を取り巻く円筒状誘電絶縁体と、外部導体とが構成要素となっている場合、同軸ケーブルを使用する。第1電極と第2電極との軸方向の長さは、同軸ケーブル構造を有する従来型のRF電力伝送ケーブルの有効波長λeの4分の1である。有効波長λeは下記の式(3)によって表される。
【数3】

【0053】
ここで、λ0は真空下での波長、εrは誘電絶縁体の比誘電率、Dは誘導絶縁体の直径、そしてaは中心導体の直径である。例えば実際の数値として、RF周波数を2.45 GHz、比誘電率を2.3とすると、第1電極と第2電極との長さは4.95 cmとなる。
【0054】
TTDP424については、図22および図23に示す通り、2本の中心導体402aおよび402bと、円筒状誘電絶縁体403と、外部導体404とが用いられている結合線路435がRF電力伝送ケーブルとして使用される。有効波長は、中心導体402aと402bとの結合インピーダンスによってさらに短くなるが、この結合インピーダンスは式(2)で表される。
【数4】

【0055】
ここで、図23に示す通り、dは2本の中心導体402aと402bとの間の離間距離(両者の中心間の距離)である。したがって、有効波長全体は式(5)で表される。
【数5】

【0056】
ここで、kおよびαはそれぞれ下記の式で表される。
【数6】

【数7】

【0057】
式(6)は、ある中心導体の他の中心導体に対するシールド効果kを表す。kの値は、通常、0.3から0.5である。したがって、結合線路435の短縮効果は式(8)で表される係数によって高められる。
【数8】

【0058】
D = 1.1 mm、d/a = 0.2 mm/0.18 mmである絶縁ケースの場合、式(8)の値を式(5)に代入することによって短縮効果の値は0.28となる。第1電極と第2電極との長さはともに2.4 cmである。アンテナアセンブリ420についても、同じ短縮効果が得られる。
【0059】
複数の中心導体の短縮効果は、中心導体の数量によって高められる。例えば、中心導体が3本使用されている場合、1/4波長は下記の式のようになり、
【数9】

電極の長さは、下記の式の係数によって短縮できる。
【数10】

【0060】
上記の短縮効果は、電力供給点434aと434bとの位置に影響されない。中心導体が3本ある場合、各中心導体は、2本の中心導体が第1中心導体402aとして、残りの1本の中心導体が第2中心導体402bとして機能するように用いられる。上記2本の中心導体は、隣接し合う2個の電力供給点434aによって定まる各セグメントの中心導体3本の中から選択される。
【0061】
本発明のTTDP424の利点は、上述の利点以外にも多数あり、それらについては個別実施例の記述を通じて説明する。
【0062】
本発明の第4の目的は、灯台効果を解消することである。本発明の第4の目的のため、TTDPは、アンテナアセンブリを形成するRF電力伝送手段(連結線路など)と、鋭利な辺部を有する頭部少なくとも1個が硬質材料製であってかつアンテナアセンブリを収納する硬質材料製の鞘と、から構成される。RF電力伝送手段(連結線路など)は、中心導体2本と、中心導体の外周を取り巻く円筒状誘電絶縁体と、外部導体とで構成されるが、これらすべてが組み合わさってアンテナアセンブリとなり、そのダイポールアンテナのうち少なくとも1本は、外部導体の一部から形成されかつ中心導体1本と電気的に接続される第1電極と、外部導体の別の一部から形成される第2電極と、第1電極と第2電極との間に形成される絶縁手段と、から構成される。結合線路の終端に形成されるもう1本のダイポールアンテナにおいては、半円環状の電極2個1対が円筒状誘電絶縁体の周りに設けられる。この円筒状誘電絶縁体は、上記の半円環状電極2個が電気的絶縁間隙を介して絶縁され、かつ中心導体が上記の半円環状電極に電気的に接続される構造になっている。頭部は、辺部と可撓性パイプとで構成されるヘッドエレメントであり、可撓性パイプはこのヘッドエレメントに内設した結合部に連結される。鞘は、サファイアなどの硬質材料で製作し、単一体として形成することができる。
【0063】
アンテナアセンブリ内に配置されるダイポールアンテナのいずれにおいても、RF電力放射は第1電極と第2電極との間に形成される電気的絶縁間隙から行われる。第1電極と第2電極をこのように配置して、ダイポールアンテナを形成する。結合線路は、中心導体2本によってRF電力を先端のダイポールアンテナに供給でき、先端のダイポールアンテナに伝送されたRF電力がそこから放射される。結合線路に形成された単数または複数のダイポールアンテナは、このようなアンテナ構造にすることもできる。
【0064】
上記の構成は、図27から図29に示す通りである。図27から図29に示すアンテナアセンブリの基本的な配置は、図24から図26に示すアンテナアセンブリの配置と同じである。このアンテナ構成の詳細な構造は、図24から図26に示すものと類似している。ただし、アンテナアセンブリ520の部材である追加ダイポールアンテナは、アンテナアセンブリ520の先端に取り付けられる。図22に示す結合線路435は、外部導体504を介してダイポールアンテナ536a、526bおよび536cを形成するために用いられる。RF電力を伝送する2本の中心導体502aおよび502bは、前方ダイポールアンテナ538で終端処理されているので、アンテナアセンブリ520の部材である他のダイポールアンテナ536a、536b、536c等とともにそこで均等な励振を行うことができる。最終電力供給点534aおよび534bから見た場合に最も近いダイポールアンテナ536aまでの前方ダイポールアンテナ538の有効電気長は、1/2波長に設定されている。この物理長の場合、前方ダイポールアンテナ538による終端処理によって反射が抑制され、RF電力が前方ダイポールアンテナ538に伝送され、その結果、伝送されたRF電力は最終的に前方ダイポールアンテナから組織領域に放射される。
【0065】
本発明のTTDP524の利点は、上述の利点以外にも多数あり、それらについては個別実施例の記述を通じて説明する。
【0066】
本発明の第1から第4の目的は、従来型のTTMPよりもはるかに進歩したTTDPを好適に実施することである。以下に説明する通り、TTDPの表面の温度制御機能を追加することによって、さらに好適なTTDPを実施することができる。
【0067】
TTDP324、424および524の絶縁ケースがサファイア製の単一体鞘からなる場合、単一体鞘301、401および501の温度制御は、鞘内部に冷却液を循環させることによって容易に実現できる。こうすれば、TTDP324、424および524によるRF放射によって病変組織を加熱しても、単一体鞘301、401および501の表面温度は低く保たれる。したがって、病変組織の温度は均一に制御され、図30に示す通り、加熱しても病変組織の壊死を引き起こす温度を大きく超えることはない。図30において、符号TTは温熱療法温度を、符号TDはSARによって定まる組織温度をセ氏で示している。点線(訳者注:原文ではdotted lineとなっていますが、これはsolid lineの間違いではないでしょうか?とりあえずそのまま訳しておきます)は病変組織の温度が低く抑えられていることを、破線はTTDPの表面からの距離に対するTTDPの温度変化を示している。単一体鞘301、401および501の温度を大幅に下げることができるので、TTDP324、424および524が挿入された病変組織の凝固は抑制されるが、これらの組織の壊死は阻害されず、またTTDP324、424および524の組織への固着も防止される。この温度制御により、外科医は高出力RFを利用できるようになるが、組織の壊死などの治療効果ならびにTTDPの組織への固着の防止により、温熱療法において従来よりも広い領域の病変組織を加熱できるようになる。
【0068】
本発明の第5の目的は、TTDPに薬剤輸送送達機能を持たせ、TTDPを経皮的に挿入した病変組織内に薬剤を注入できるようにすることである。
【0069】
さらに、本発明の第5の目的のため、本発明の第1から第4の目的において説明したTTDPが有する単一体鞘には、自身の辺部を貫く穴が鋭利な辺部に開けられているか、または自身の頭部から穴が開けられている。この鞘の円筒状の表面には、内側から外側に向かって穴が穿たれている。
【0070】
本発明の第5の目的であるTTDPの利点は、下記の通りである。例えば、図106から図110に示すように、薬剤を注入した後、組織内部に分散させることができる。または、拡散させた後、TTDP624から放射されるRF電力による加熱によって活性化させることができる。このTTDPには、このような薬剤輸送送達用の経路が物理的に設けられる。薬剤は、熱感応性ゲル製のカプセルに封入されており、RF放射によって加熱すれば、このゲルカプセルが破れ、薬剤が腫瘍内に分散する。あるいは、加熱によって薬剤が特定腫瘍の細胞の蛋白質の受容性を変化させ、その結果、薬剤がその腫瘍の一部を構成する細胞に浸透する。TTDPは、単一操作による組織への経皮的侵襲によって病変組織の加熱処置、薬剤への変換、および薬剤の注入を行えるので、カプセルまたは薬剤の種類によっては、TTDPが腫瘍の治療において有効である。
【0071】
本発明のTTDP624の利点は、上述の利点以外にも多数あり、それらについては個別実施例の記述を通じて説明する。
【0072】
本発明の第6の目的は、本発明の第1から第5の目的において開示したTTDPを外科医が安全に使用するための制御システムを提供することである。RF電力をRF電源からTTDPに導く際、TTDPでの電力反射がRF電源に戻らないようにして、戻り電力によるRF電源でのRF発電の不安定化を防止する必要がある。制御システムには、TTDPにおいて反射されるRF電力がRF電源に戻らないようにするためのサーキュレータを設ける。この制御システムは、RF電力の出力レベルを制御し、RF電力を適切なレベルに保ち、TTDPの挿入された病変組織の過熱を防止する。
【0073】
本発明の第6の目的のため、治療用アンテナプローブシステムは、RF電源と、同RF電源に接続されるサーキュレータと、本発明の第1から第5の目的に係るTTDPのうちから選択されかつ同軸ケーブルや結合線路などのRF電力伝送手段を介して上記サーキュレータに接続されたTTDPと、電力結合器を介して上記RF電源に接続されたRF電力メータと、から構成される。このRF電力メータは、RF電源が発生させるRF電力を電力メータの出力信号によって制御する制御器に接続される。
【0074】
治療用アンテナプローブシステムに熱変換器を組み込んで、この熱変換器からの出力信号を上記制御器への入力とし、その結果、同出力信号によって上記RF電源が発生させたRF電力を制御し、温熱療法の制御を改善することもできる。
【0075】
本発明の第6の目的の治療用アンテナプローブシステムの利点は、上述の利点以外にも多数あり、それらについては個別実施例の記述を通じて説明する。
【0076】
本発明の第7の目的は、本発明の第6の目的で説明した治療用アンテナプローブシステムと、制癌効果および抗癌効果をもたらす一群の薬効から選択されたある特定の薬効を有する制癌剤と、を併用できるようにすることである。
【0077】
本発明の治療用アンテナプローブシステムと制癌剤との併用の利点は、上述の利点以外にも多数あり、それらについては個別に実施例の記述を通じて説明する。
【実施例】
【0078】
ここで図面に立ち戻り、多数のTTDPの実施例について、本発明の第1から第6の目的に沿って説明する。
【0079】
まず、本発明の第1の目的のためサファイア製の頭部と可撓性絶縁チューブとを用いたTTDPについて、以下に説明する。
【0080】
図13から図15は、本発明の第1の目的の好適な実施例を示す。アンテナアセンブリは、中心導体202と、中心導体202の外周に形成した円筒状誘電絶縁体203と、外部導体204とで構成され、外部導体204の一部から形成される第1電極208が中心導体202に電気的に接続され、外部導体204の別の一部から形成される第2電極209が第1電極208から電気的に絶縁されている。第1電極208と第2電極209は、同軸ケーブルなどのRF電力伝送ケーブルを介してRF電力を供給するダイポールアンテナを形成する。中心導体202、円筒状誘電絶縁体203および外部導体204は、同軸ケーブルの終端部に形成してもよい。TTDPは、アンテナアセンブリ220と、鋭利な辺部を有する頭部293を特徴とする鞘230と、から構成され、鋭利な辺部を有する頭部293は、辺部291と、可撓性絶縁パイプ294に堅固に結合される結合部292と、からなる。鋭利な辺部を有する頭部293の辺部291については、その先端部を機械加工によって鋭い刃物とし、組織を経皮的に切開し、その内部に挿入できるようにする。
【0081】
第1電極208と第2電極209との電気的絶縁は、外部導体204の一部を切除しその切除部として電気的絶縁間隙207は外部導体204に形成される。中心導体202と第1電極208との電気的接続は、図13および図14に示す通り、導電性円板210を介して行うことが望ましい。図13は、アンテナアセンブリ220の断面図である。図14は、図13に示すアンテナアセンブリ220の別の断面図である。
【0082】
さらに図15は、本発明の第1の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。中心導体と第1電極との電気的接続は、中心導体202を延長し、折り曲げて第1電極208と電気的に接触させることによって行う。導電性円板210は、この実施例には使用しない。したがって、この実施例は、アンテナアセンブリ220に必要な構成部品が従来よりも少ない場合に向いている。
【0083】
さらに図31は、本発明に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。第1電極208と第2電極209の構造は、金属パイプから、または外部導体204に巻き付けた金属板から作られ、かつ第1電極208と第2電極209に電気的に接触する追加電極218と219を、第1電極208と第2電極209に追加したものである。外部導体204が、金属メッシュ(可撓性同軸ケーブルに用いられる)から、または錫または半田で固めた金属メッシュ(セミリジッドな同軸ケーブルに用いられる)から、作られる場合、電極208および209が軟らかすぎて機械的に正確に成形できないので、電気的絶縁間隙207について、カットラインの明瞭な、または物理的精度の高い電極構造にすることはできない。したがって、第1電極208および第2電極209の代わりに追加電極218および219によってカットラインを明瞭にし、これら追加電極の輪郭線によって電気的絶縁間隙207を電気的に定義する。
【0084】
図32から図34は、本発明の第1の目的に係るその他の好適な実施例を示す。第1電極208と第2電極209とを電気的に絶縁するために設ける電気的絶縁間隙には、両電極間の電気絶縁体となり、好ましくは円筒状誘電絶縁体203と同一または類似の材質から作られる絶縁環211をはめ込む。この絶縁環211を使うと、電気的絶縁間隙が単なる切除によって設けられた場合よりも第1電極208と第2電極209との間の絶縁破壊電圧を高くすることができる。したがって、RF電力の供給量を増し、RF電力放射の量を増すことができる。曲げ力による電気的絶縁間隙の歪みについては、上記の絶縁環211の機械的剛性によって抑制できる。図34に示す絶縁環211は円筒状誘電絶縁体203に設けた間隙に埋め込まれるので、第1電極208と第2電極209とのエッジライン上の余計な材料が取り除かれて、電気的絶縁間隙における外部導体204のエッジが明瞭になる。
【0085】
図35および図36は、図14および図33に示すTTDPアンテナアセンブリ220を先端に形成する同軸ケーブル233を覆って保護する外部被覆205にTTDP224が繋がっていることを特徴とする、本発明の第1の目的に係るその他の好適な実施例をそれぞれ示す。追加収縮チューブ212を追加することによって、収縮チューブ294の内側を気密にして外気から遮断し、アンテナアセンブリ220から雑菌が漏れ出すことを抑制できる構造としている。当然、TTDPアンテナアセンブリ220を覆う熱収縮チューブ294で外部被覆205を直接覆ってもよいが、その構成の場合、追加収縮チューブ212は不要である。
【0086】
図37は、図35および図36に示す追加収縮チューブ212を使わず、熱収縮チューブ294を引き伸ばして露出同軸ケーブルを覆うことを特徴とする、本発明の第1の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。この熱収縮チューブ294は、露出同軸ケーブルの保護被覆となり、アンテナアセンブリ220から雑菌が漏れ出すのを効果的に抑制できる。
【0087】
TTDPを容易に取り扱えるようにすることを意図する場合、TTDPの構成をセミリジッドな同軸ケーブルまたは可撓性同軸ケーブルから分離したものとすることが、RF電源からTTDPへの電力伝送上、望ましい場合もある。図38に示す通り、アンテナアセンブリ220は、上記ケーブルから分離されているが、コネクタ214を介して結合されている。RF電力は、RF電力伝送線を介してコネクタ214に供給される。このTTDP224は、上記ケーブルが外れるので、殺菌装置の容器に入れて殺菌できる。これにより、術後の感染のおそれを低減することが可能となる。
【0088】
図39および図40は、追加電極221が第1電極208と第2電極209との間に追加されることを特徴とする、本発明の第1の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。SARの分布が追加電極において伸び、TTDP224に沿って長い範囲に渡って焼灼することが可能になり、それによって、焼灼を複数回行うのではなく、TTDP224を病変組織に経皮的に挿入する深さで治療を1回行うだけで済ませられる。
【0089】
図41から図48は、辺部291と熱収縮チューブ294に密着する結合部とからなる、鋭利な辺部を有する頭部293の刃先の形状が一枚刃プローブ形状の鞘230を形成することを特徴とする、本発明の第1の目的に係るその他の好適な実施例を示す。結合部292を熱収縮チューブ294に接合する方法がよく分かるように、熱収縮チューブ294を断面図に示す。何れも若干テーパ状になっていて、右側の直径が左側の直径よりもやや大きくなる。したがって、サファイア製の頭部293を結合部292において熱収縮チューブ294に固く接合できるので、熱収縮チューブ294を引き抜く際にサファイア製の頭部293が組織に取り残されるといった事故を起さずにTTDP224を引き抜くことができる。辺部291と結合部292は、一塊のサファイアまたはサファイア原石を切断または削摩して作る。図41および図42は、直線状の刃先を示す。図43および図44は、先細り状の刃先を示す。図45および図46は、円錐状の刃先を示す。図47および図48は、矢状の刃を示す。
【0090】
図49から図51は、結合部292が有するカット面295が熱収縮チューブと密着しており、同チューブ内での辺部291の回転が防止されるようになっていることを特徴とする、本発明の第1の目的に係るその他の好適な実施例を示す。図50および図51は、辺部291付きの結合部292の断面図を示す。図51に示す切り込み296も、図49と図50に示すカット面と同じく、本発明の第1の目的に対して好適である。
【0091】
本発明の第2の目的は、温度むらを低減することである。本発明の第2の目的のためにサファイア製の鞘によってアンテナアセンブリを覆うTTDPについて、以下、図16から図18を用いて説明する。
【0092】
本発明の第2の目的に供せられるTTDPの構造は、図16から図18に示す通りである。アンテナアセンブリ320は、中心導体302と、中心導体302の外周に形成される円筒状誘電絶縁体303と、外部導体304とから構成されており、第1電極308が外部導体304の一部から形成されかつ中心導体302と電気的に接続され、第2電極309が第1電極308から電気的に絶縁された外部導体304の別の部分から形成されることを特徴とする。第1電極308と第2電極309は、同軸ケーブルを介してRF電力の供給を受けるダイポールアンテナを形成する。中心導体302、円筒状誘電絶縁体303および外部導体304は、同軸ケーブルの終端部に形成してもよい。TTDP324は、アンテナアセンブリ320と、サファイア製の単一体鞘301とから構成される。単一体鞘301の頭部は、機械加工によって鋭い刃物となっており、組織を経皮的に切開し、その内部に挿入できるようになっている。
【0093】
第1電極308と第2電極309との電気的絶縁は、外部導体304の一部の切除跡として外部導体304に形成される電気的絶縁間隙307によって行う。中心導体302と第1電極308との電気的接続は、図16および図17に示す通り、導電性円板310を介して行う。図16は、アンテナアセンブリ320の外観図と単一体鞘301の断面図を示す。さらに図17は、図16に示すアンテナアセンブリの断面図を示す。
【0094】
さらに図18は、本発明の第2の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。中心導体と第1電極との電気的接続は、中心導体302を延長し、折り曲げて第1電極308と電気的に接触させることによって行う。導電性円板310は使用しないので、この実施例は、アンテナアセンブリ320用の構成部品が従来よりも少ない場合に適している。
【0095】
さらに図52は、本発明の第2の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。金属パイプから、または外部導体304に巻き付けた金属板から作った追加電極318と319とを、第1電極308と第2電極309に追加する。外部導体304が金属メッシュパイプ(可撓性同軸ケーブルに用いられる)から、または錫または半田で固めた金属メッシュ(セミリジッドな同軸ケーブルに用いられる)から作られる場合、電極308および309が軟らかすぎて機械的に正確に成形できないので、電気的絶縁間隙307について、カットラインの明瞭な、または物理的精度の高い電極構造にすることはできない。したがって、第1電極308および第2電極309の代わりに追加電極318および319によってカットラインを明瞭にし、これら追加電極の輪郭線によって電気的絶縁間隙307を電気的に形状の確定をする。
【0096】
図53から図55は、本発明の第2の目的に係るその他の好適な実施例を示す。第1電極308と第2電極309とを電気的に絶縁するために設ける電気的絶縁間隙には、円筒状誘電絶縁体303と同一または類似の材質から作られる絶縁環311を詰める。この絶縁環311を使うと、電気的絶縁間隙が単なる切除した部分である場合よりも第1電極308と第2電極309との間の絶縁破壊電圧を高くすることができる。したがって、RF電力の供給量を増し、RF電力放射の量を増すことができる。曲げ力による電気的絶縁間隙の歪みについては、上記の絶縁環311の機械的剛性によって抑制できる。図55に示す絶縁環311は、円筒状誘電絶縁体303に設けた間隙に埋め込まれるので、第1電極308と第2電極309とのエッジライン上の余計な材料が取り除かれ、電気的絶縁間隙における外部導体304の辺が明瞭になる。
【0097】
図56と図57は、図17および図54に示すTTDPアンテナアセンブリ320を先端に形成する同軸ケーブル333を覆って保護する外部被覆305にTTDP324が繋がっていることを特徴とする、本発明の第2の目的に係るその他の好適な実施例をそれぞれ示す。追加収縮チューブ312を追加することによって、単一体鞘301の内側を気密化して外気から遮断し、アンテナアセンブリ320から雑菌が漏れ出すことを抑制することができる。当然、TTDPアンテナアセンブリ320を収納する単一体鞘301は、図56および図57に示す通り、追加収縮チューブ312と外部被覆305とで覆われる。
【0098】
図58は、金属パイプから、または外部導体304に巻き付けた金属板から作られ、図52に示す通り、第1電極308と第2電極309に電気的に接触する追加電極318と319を第1電極308と第2電極309に追加することを特徴とする、本発明の第2の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。追加収縮チューブ312は、同軸ケーブル333の保護被覆となり、アンテナアセンブリ320から雑菌が漏れ出すのを効果的に抑制することができる。
【0099】
TTDPを容易に取り扱えるようにすることを意図する場合、TTDPの構成をセミリジッドな同軸ケーブルから、または可撓性同軸ケーブルから分離したものとすることが望ましい場合もある。図59に示す通り、アンテナアセンブリ320は、上記ケーブルから分離されているが、コネクタ314を介して結合されている。RF電力は、RF電力伝送線を介してコネクタ314に供給される。このTTDP324は、上記ケーブルが外れるので、殺菌装置の容器に入れて殺菌することができる。これにより、術後感染のおそれを低減することが可能となる。
【0100】
図60および図61は、第1電極308と第2電極304との間に第3電極321が追加された、本発明の第2の目的に係るその他の好適な実施例を示す。SAR分布が追加電極によって伸びるので、TTDP324に沿って長い範囲に渡って焼灼することが可能になり、それによって、焼灼を複数回行うのではなく(文献3を参照)、TTDP324を病変組織に経皮的に挿入する深さで1回治療を行うだけで済ませられる(文献3を参照)。
【0101】
図62から図69は、単一体鞘301の頭部が機械加工によって鋭い刃物となっており、組織を経皮的に切開し、その内部に挿入することのできる、本発明の第2の目的に係るその他の好適な実施例を示す。単一体鞘301は、この好適な実施例ではサファイア製であるが、その刃先の形状は、図62および図63に示す通り、直線状になっている。図64および図65に示すサファイア製の頭部301の刃先の形状は、テーパ状になっている。図66および図67に示すサファイア製の頭部301の刃先の形状は、円錐状になっている。図68および図69に示すサファイア製の頭部301の刃先の形状は、槍の穂先状になっている。
【0102】
本発明の第3の目的は、放射間隙が1個しかないという問題、すなわち、組織に対してただ一つの間隙からしかRF放射が行われず、焼灼を均一に行うことが難しいという問題、を解決することである。ここで提供するアンテナ構造では、複数の電気的絶縁間隙がTTDP用のアンテナ上に形成されている。
【0103】
図24から図26は、本発明の第3の目的に係る一連の好適な実施例を示す。第1電極408と第2電極409とからなる各電極対には、結合線路の外部導体404の一部を除去して電気的絶縁間隙407を設ける。図25は、アンテナアセンブリの正面図を示す。第1電極408、第2電極409、ならびに中心導体402aおよび402bは、図24から図26に示す通り、結合線路435の構造内で電気的に接続される。ただし、第1中心導体402aと第2中心導体402bとの間の電気的接続方法および第1電極408と第2電極409との間の電気的接続方法は、それぞれの図ごとに異なる。第1電極408と第2電極409との各対は、ダイポールアンテナ436a、436bおよび436cを形成する。TTDP424は、ダイポールアンテナ436a、436bおよび426cからなるアンテナアセンブリと、サファイア製の単一体鞘401とで構成される。鞘については、サファイア製の頭部とポリマー製のパイプとを組み合わせた絶縁材料からなるものを使用することもできる。
【0104】
図24に示す実施例は、第1中心導体402aと第2中心導体402bとを有する結合線路によるものである。第1電極408と第2電極409は、それぞれ電力供給点434aと434bを介して第1中心導体402aと第2中心導体402bに接続され、それぞれ電力供給点434aと434bに近接して対面している。図26に示す実施例は、第1中心導体402aと第2中心導体402bとを有する結合線路によるものである。第1中心導体402aと第2中心導体402bは、第1電極対をなす第1電極408と第2電極409とにそれぞれ電力供給点403aおよび403bを経由して接続され、第1電極408と第2電極409は、電力供給点403aと403bに近接して対面する。第1および第2中心導体は、第2電極対をなす第2電極409と第1電極408とにそれぞれ電力供給点403bおよび403a経由で接続され、第1電極408と第2電極409は電力供給点403bと403aに近接して対面する。第1電極対と第2電極対は、アンテナアセンブリ420内に交互に形成される。
【0105】
さらに、単一体鞘301は、サファイアから作ることもできる。さらに、この鞘は、辺部と、可撓性絶縁パイプ(TEFLON(商標)製、またはPTFE以外のポリエチレン製)に堅固に結合される結合部と、から構成されるサファイア製の頭部を有する鞘として形成される。サファイア製の頭部の辺部は、その先端部を機械加工によって鋭い刃物とすることによって、組織を経皮的に切開し、その内部に挿入できるようになっている。
【0106】
図70から図72は、本発明の第3の目的に係る、もう一つ別の一連の好適な実施例を示す。結合線路435は、RF電源と接続することによりRF電力伝送ケーブルとして機能し、2本の中心導体402aと402bに電気的に接続される。アンテナアセンブリ420は、複数のダイポールアンテナ対からなり、第1電極と第2電極との間および中心導体402aと402bとの間を結ぶその電気接続構成は、図24および図26に示す構成と同じである。ただし、第1中心導体402aと第2中心導体402bとの間の電気的接続方法および第1電極と第2電極との間の電気的接続方法は、図ごとに異なる。一方、結合線路435は、図70および図72(両者ともこの一連の好適な実施例の断面図)ならびに図71(この一連の好適な実施例の正面図)に示す通り、電力伝送ケーブルとして機能し、外部被覆405によって覆われる。追加収縮チューブ412を追加することによって、外部被覆405と単一体鞘401との間の気密性を確保する。この気密性の高い構成によって、手術中におけるTTDPアンテナアセンブリからの雑菌の漏出を防止する。第1電極と第2電極との間、または中心導体の間のどちらの電気的接続でも、図70または図72に示す方法で行うことができる。追加収縮チューブ412は熱収縮チューブとし、外部被覆405は非収縮被覆としてよい。
【0107】
図73から図79は、本発明の第3の目的に係り、特に二つの中心導体402aおよび402bと外部導体404との接続に係る、もう一つ別の一連の好適な実施例を示す。さらに、電気的絶縁間隙407を介して第1電極408と第2電極409を絶縁する構造においては、第1電極408と第2電極409を中心導体402aと402bに接続することによって電気的接続を行う。第1電極と第2電極は、結合線路435を切って小部品にしたものである。中心導体402aおよび402bは、向かい合った小部品の第1電極408と第2電極409との終端面から引き出される。図73と図74に示す通り、電気的絶縁間隙407は、導電層438aと438bを有するプリント基板(PCBと略称する)から製作可能な絶縁間隙片437によって与えられる。絶縁間隙片437は、結合線路435の断面の形状に似た円板状に成形されており、中心導体402aと402bを通す貫通穴439を2個有する。絶縁間隙片437の導電層438aと438bについては、貫通穴439の直径に比して大きな穴を開け、貫通穴439において中心導体402aと402bが導体層438aと438bに接触することがないようにする。第2電極409側の第1中心導体402aは、第1電極408に接触する絶縁間隙片437の導電層438aの方向へ引き出される。第1電極408側の第2中心導体402bは、第2電極409に接触する絶縁間隙片437の他方の導電層438bの方向へ引き出される。図73と図74に示す通り(図73は斜視図、図74は断面図)、第1中心導体402aは第2電極409に、そして第2中心導体402bは第1電極408に、半田445を使って半田付けされる。結合線路435に沿って電気的絶縁間隙407の長手方向の長さを短くして、第1電極408と第2電極409とによって構成されるダイポールアンテナ内に組み込めるようにするために、第1中心導体402aと第2中心導体402bとの捩り部分を外部導体404から引き出す。第1中心導体402aと第2中心導体402bとの捩り部分が外部導体404の表面からはみ出る場合、図75に示すように、半田で固めた後のはみ出し部分を除去する。中心導体402aと402bがそれぞれ絶縁間隙片437上の導電層438aと438bに不必要に接触するのを防止するため、図76(断面図)に示すように、絶縁間隙片437の一部について導電層438aおよび438bを部分的に残し、第2電極409と第1電極408とにそれぞれ半田付けし、不要な部分を除去する。中心導体402aおよび402bと、絶縁間隙片437と、第1電極408および第2電極409とを半田付けする場合、結合線路435の円筒状誘電絶縁体403と異なる誘電絶縁材料(樹脂など)で絶縁片443を別途製作し、図77に示すように、この絶縁片を中心導体402aと402bとの周りの隙間に詰めることができる。
【0108】
絶縁間隙片437を使用する代わりに、中心導体402aと402bとの捩り部分を引き出し、外部導体404に半田付けし、捩り部分のうち結合線路の表面からはみ出す部分を除去し、図78に示すように第1電極408と第2電極との間に位置し、捩り部分を収めるスロットに上記の絶縁片443を挿入するかまたは詰め込む。
【0109】
電気的絶縁間隙407は、外部導体404の一部を除去して第1電極408と第2電極409との間に設ける。したがって、中心導体402aと402bとの電気的接続部434aおよび434bのためにアンテナアセンブリ420に隙間を設ける必要がある。電気的接続部434aと434bの接続を良好に行うため、外部導体404の表面にスロット442を設け、図79に示す通り、中心導体402aと402bならびに第1電極408と第2電極409を確実に半田付けできるようにする。
【0110】
図80から図82は、本発明の第2の目的に係り、特にアンテナアセンブリ420と電力伝送ケーブルとして機能する結合線路435との接続に係る、もう一つ別の一連の好適な実施例を示す。結合線路435は、2本の中心導体402aおよび402bと、円筒状誘電絶縁体403と、外部導体404とから構成されており、その終端にはアンテナアセンブリ420を設ける。結合線路435は、従来型のRF電力伝送ケーブルと同じものであってもよい。本実施例では、第1中心導体402aと第2中心導体402bが互いに接続される。片側に導電層438cを有する絶縁間隙片440は、電気的絶縁間隙407のために使用される。この絶縁間隙片440は、結合線路435の断面の形状に類似した円板状に成形されており、中心導体402aと402bを通す貫通穴439を2個有する。中心導体402aついては、第1電極408内から引き出し、結合線路435の外部導体404に半田付けする。電力伝送ケーブルとして機能する結合線路435の中心導体402aとアンテナアセンブリ420内の中心導体402a(図70から図73を参照)とは、絶縁間隙片440の導電層438cに接続され、図80に示す通り、第1電極に半田445で半田付けされる。
【0111】
中心導体402aおよび402bと絶縁間隙片440の導電層438cとを不必要に接触させることなく、確実に外部導体404と第1電極408の中心導体402bとを電気的に接触させるため、貫通穴439の直径と比較して大きな穴を導電層438cに開ける代わりに、図81(主要部分の斜視図)に示すように導電層438cの大部分を除去し、第1電極408と向き合う導電層438cの一部を第1電極408に半田付けする。中心導体402bと、絶縁間隙片440と、第1電極408とを半田付けする際に中心導体402bの周りに生じる隙間を埋めるため、図82に示す通り、上記の絶縁片443を絶縁間隙片440と第1電極408との間の隙間に挿入する。結合線路435の中心導体2本は、結合線路435の中心導体2本の接続点434cで終端処理されるので、中心導体2本を1本の中心導体として使用してRF電源からRF給電を行うことができる。
【0112】
従来型のRF電力伝送ケーブルは、単一中心導体402dと、単一中心導体402dの外周に形成した円筒状誘電絶縁体403と、さらにその周りを覆う外部導体404とからなる同軸ケーブル435dであり、図83に示す通り、中心導体402dが第1中心導体402aに、そして外部導体404が第2導体402bに電気的に接続された電力伝送ケーブルとして使用できる。
【0113】
絶縁間隙片440については、半田付けによって第1電極408と第2電極409に接触する部分に導電層438aを設けてもよい。具体的には、導体402aと402bとの捩り部分を収納する隙間をアンテナアセンブリ420に設ける必要がある。電気的接続を良好に行うため、外部導体404の表面にスロット442を設け、図84に示す通り、中心導体402aと402bならびに第1電極408と第2電極409を確実に半田付けできるようにする。
【0114】
図85から図87は、本発明の第3の目的に係るもう一つ別の一連の好適な実施例を示す。アンテナアセンブリ420は、両方とも第1電極408と第2電極409とからなるダイポールアンテナ436aおよび436bと、各電極が互い違いに長手方向に折り曲げられている別の電極対436eとから構成されている。第1電極408と第2電極409は、外部導体404から形成される。その他の外部導体408aと409aは、第1電極408と第2電極409にそれぞれ電気的に接続され、両電極は図85と図87の断面図に示す形状に折り曲げられる。図85および図87に示すダイポールアンテナ436aと436bとの構造は、図24に示すダイポールアンテナ436aと436bとの構造と同じであり、電極対436bと436cとの構造はそれぞれ図26に示す通りである。電力供給点434bと434eは、TTDP424が挿入された外側の組織領域へのRF電力放射量が、アンテナアセンブリ420の各電極上の他の場所と比べ、電気的絶縁間隙407aにおいて多くなるように定める。電極対436eは、ダイポールアンテナとして機能する。電気的絶縁間隙407aは結合線路435の外部導体404の一部を除去して形成し、2本の外部電極408aおよび409aは外部導体404上で折り曲げて形成され、同外部導体の一部は第1電極408として、同外部導体の別の一部は第2電極409として形成される。第2中心導体402bと曲がり電極409aとの電気的接続構造は、第2導体402aと外部導体404について図73から図79に示す電気的接続構造と同じである。第1中心導体402aともう一つ別の外部電極408a(折り曲げ構造)との電気的接続は、図13に示す導電性円板210と類似した導電性円板410を介して行う。図86は、アンテナアセンブリの正面図である。第1電極408、第2電極409および中心導体は、図85および図87に示す通り、結合線路435(図85から図87では特に図示しない)の内部で電気的に接続される。ただし、第1中心導体402aと第2中心導体402bとの間の電気的接続方法および第1電極408と第2電極409との間の電気的接続方法は、それぞれの図によって異なる。対をなす第1電極408と第2電極409はダイポールアンテナ436aおよび436bを形成し、もう一つ別の対をなす外部電極409aと408a(折り曲げ構造)はダイポールアンテナ436dを形成する。TTDP424は、ダイポールアンテナ436a、436bおよび426dからなるアンテナアセンブリ420と、絶縁材料製の単一体鞘401とで構成される。
【0115】
図88から図90は、本発明の第3の目的に係るもう一つ別の一連の好適な実施例を示す。結合線路435は、RF電源との接続によりRF電力伝送ケーブルとして機能し、2本の中心導体402aと402bに電気的に接続される。アンテナアセンブリ420は、複数のダイポールアンテナ対536a、536b、536cおよび536dからなり、第1電極408と第2電極409との間、および中心導体402aと402bとの間を結ぶその電気接続構成は図24および図26に示す構成と同じである。一方、結合線路435は、図70および図72(両者ともこの一連の好適な実施例の断面図)ならびに図71(この一連の好適な実施例の正面図)に示す通り、電力伝送ケーブルとして機能し、外部被覆405によって覆われる。図89も、この一連の好適な実施例の正面図である。追加収縮チューブ412を追加することによって、外部被覆405と単一体鞘401との間の気密性が確保される。この気密性の高い構成によって、手術中におけるTTDPアンテナアセンブリからの雑菌の漏出を防止する。第1電極408と第2電極409との間、または中心導体402aと402bとの間の電気的接続を図88または図90のどちらにしたがって実施するにせよ、その方法は図70または図72に示すものと同じとする。追加収縮チューブ412は熱収縮チューブ、外部被覆405は非収縮被覆としてよい。
【0116】
本発明の第3の目的の単一体鞘401は、図24その他に示す単一体構造に代えて、TTDP224用の鞘230と同じもの、例えば、鋭利な辺部と熱収縮チューブとで構成される、鋭利な辺部を有する頭部293を有する鞘としてよい。
【0117】
図27から図29は、本発明の第4の目的に係る一連の好適な実施例を示す。アンテナアセンブリ520は、前方ダイポールアンテナ538を形成する電極対537aと537bを自身の先端に有する。中心導体502aと502bは、それぞれ電極対537aと537bに接続される。電極対537aと537bは、二つの電気的絶縁間隙507aと539を共有し、それらによって各電極が互いに絶縁される。RF電極は、電気的絶縁間隙539から外側に向かって放射される。各間隙は、ダイポールアンテナ536a、536bおよび536cのインピーダンスが同じになるように電気的絶縁間隙507aと電気的絶縁間隙539を形成することによって決定する。その結果、RF電力がダイポールアンテナ536a、536bおよび536cを介して外側の組織領域に放射されると、RF電力の一部が円筒状の組織領域に対して水平に放射され、また、RF電力が前方ダイポールアンテナ538を介して外側の組織領域に放射されると、RF電力の残りの部分はTTDP524の挿入された前方組織領域に対して垂直に放射される。図91は、前方ダイポールアンテナ538の拡大図である。電気的絶縁間隙507aは、結合線路535の外部導体504の一部を除去して形成される。二つの電極対537aと537bについては、半円環状電極2個(各電極については半円環状電極と呼ぶ)が円筒状誘電絶縁体503の周りに取り付くようにして形成する。二つの電気的絶縁間隙539は、半円環状に形成した一対の電極537aと537bとの間に形成される。中心導体502aと502bは、それぞれ電極対537aと537bに電気的に接続される。電極対537aと537bとの結合線路535の軸に沿った長さは、もっとも近い電力供給点534aおよび534bから電気的絶縁間隙539までの中心導体502aと502bとの有効長がRF波の1/2波長となるように定める。すると、最大電流が電気的絶縁間隙539において、また、一定レベルの電流が電気的絶縁間隙507aにおいて発生し、残りのRF電力が電気的絶縁間隙539と電気的絶縁間隙507aから放射される。電極対537aと537bは、ダイポールアンテナ、特に前方ダイポールアンテナ538に合わせて形成される。電気的絶縁間隙539からの放射は、灯台効果の軽減に特に有効である。図28は、アンテナアセンブリの正面図と単一体鞘501の断面図とを示す。第1電極508、第2電極509ならびに中心導体502aおよび502bは、図27および図29に示す通り、結合線路535内で電気的に接続される。ただし、第1中心導体502aと第2中心導体502bとの間の電気的接続方法および第1電極508と第2電極509との間の電気的接続方法は、それぞれの図によって異なる。対をなす第1電極508と第2電極509はダイポールアンテナ536a、536bおよび536cに合わせて形成され、電極対537aと537bはダイポールアンテナ538に合わせて形成される。TTDP524は、ダイポールアンテナ536a、536b、536cおよび538からなるアンテナアセンブリ520と、サファイアなどの絶縁材料製の単一体鞘501と、から構成される。
【0118】
図92から図94は、本発明の第4の目的に係るもう一つ別の一連の好適な実施例を示す。結合線路535は、RF電源(上記図に図示せず)との接続によりRF電力伝送ケーブルとして機能し、2本の中心導体502aと502bに電気的に接続される。アンテナアセンブリ520は、複数のダイポールアンテナ対からなり、第1電極と第2電極との間、中心導体502aと502bとの間を結ぶその電気接続構成は図27および図29に示す構成と同じである。一方、結合線路535は、図92および図94(両者ともこの一連の好適な実施例の断面図)ならびに図93(この一連の好適な実施例の正面図と単一体鞘501の断面図)に示す通り、電力伝送ケーブルとして機能し、外部被覆405によって覆われる。追加収縮チューブ512を追加することによって、外部被覆505と単一体鞘501との間の気密性が確保される。この気密性の高い構成によって、手術中におけるTTDPアンテナアセンブリ520からの雑菌の漏出を防止する。第1電極508と第2電極509との間、または中心導体502aと502bとの間の電気的接続を図92または図94のどちらにしたがって実施するにせよ、その方法は図70または図72に示すものと同じである。追加収縮チューブ512は熱収縮チューブ、外部被覆505は非収縮被覆としてよい。
【0119】
図95から図97は、本発明の第4の目的に係るもう一つ別の一連の好適な実施例を示す。アンテナアセンブリ520は、前方ダイポールアンテナ538を形成する電極対537aと537bを自身の先端に有する。中心導体502aと502bは、それぞれ電極対537aと537bに接続される。電極対537aと537bは、図98に示す通り、半分に切ったカップ状の構造を有する。これらは、前方ダイポールアンテナ538を構成要素とする。電極対537aと537bは、半円環状電極2個が円筒状誘電絶縁体503の周りに取り付くようにして形成される。中心導体502aと502bは、導電性上面540aおよび540bと埋め込み半田541とを介してそれぞれ電極対537aと537bに電気的に接続される。電極対537aと537bは、二つの電気的絶縁間隙539を有し、それらによって各電極が互いに絶縁される。RF電力は、これらの間隙から外側に向かって放射される。電気的絶縁間隙539は、ダイポールアンテナ536a、536b、536cおよび536dのインピーダンスが同じになるように電気的絶縁間隙507aと電気的絶縁間隙539を形成することによって決定する。その結果、RF電力がダイポールアンテナ538を介して外側の組織領域に放射されると、RF電力の一部が円筒状の組織領域に対して水平に放射され、RF電力の残りの部分はTTDP524の挿入された前方組織領域に対して垂直に放射される。図98は、前方ダイポールアンテナ538の拡大図である。電気的絶縁間隙507aは、結合線路533の外部導体504の一部を除去して形成する。電極対537aと537bとの結合線路535の軸に沿った長さは、もっとも近い電力供給点534aおよび534bから電気的絶縁間隙539までの中心導体502aと502bとの有効長がRF電力のRF波の1/2波長となるように定める。すると、最大電流が電気的絶縁間隙539において、また、一定レベルの電流が電気的絶縁間隙507aにおいて発生し、間隙507からのRF放射電力とは別のRF電力が電気的絶縁間隙539と電気的絶縁間隙507aから放射される。電気的絶縁間隙539からの放射は、灯台効果の軽減に特に有効である。図96は、アンテナアセンブリの正面図と単一体鞘の断面図を示す。第1電極508、第2電極509ならびに中心導体502aおよび502bは、図95および図97に示す通り、結合線路535内で電気的に接続される。ただし、第1中心導体502aと第2中心導体502bとの間の電気的接続方法および第1電極508と第2電極509との間の電気的接続方法は、それぞれの図によって異なる。第1電極508と第2電極509からなる各対、536a、536b、536cおよび536d、はダイポールアンテナであり、それぞれ半円環状に成形された電極対537aと537bもダイポールアンテナである。TTDP524は、ダイポールアンテナ536a、536b、536cおよび536dと前方ダイポールアンテナ538とからなるアンテナアセンブリ520と、サファイアなどの絶縁材料製の単一体鞘501と、から構成される。
【0120】
図99から図101は、本発明の第4の目的に係るもう一つ別の一連の好適な実施例を示す。RF電力伝送ケーブルとして機能する結合線路535は、2本の中心導体502aと502bに電気的に接続されるRF電源に接続される。アンテナアセンブリ520は、複数のダイポールアンテナ対からなり、第1電極と第2電極との間、および中心導体502aと502bとの間を結ぶ電気接続構成は、図70および図72に示す構成と同じである。一方、結合線路535は、図70および図72(両者ともこの一連の好適な実施例の断面図)ならびに図71(この一連の好適な実施例の正面図と単一体鞘501の断面図)に示す通り、電力伝送ケーブルとして機能し、外部被覆505によって覆われる。追加収縮チューブ512を追加することによって、外部被覆505と単一体鞘501との間の気密性が確保される。この気密性の高い構成によって、手術中におけるTTDPアンテナアセンブリからの雑菌の漏出を防止する。第1電極と第2電極との間、または中心導体の間の電気的接続を図88または図90のどちらにしたがって実施するにせよ、その方法は図70または図72に示すものと同じである。追加収縮チューブ512は熱収縮チューブとし、外部被覆505は非収縮被覆としてよい。
【0121】
TTDPの絶縁ケースがサファイア製の単一体鞘である場合、サファイアの温度制御はサファイア内に冷却液を循環させることによって容易に実現できる。図102と図103は、さらに本発明の第2の目的に係る好適な実施例を示す。図103は、線103で切断したTTDP324の断面図である。TTDP324は、TTDP324の内部に、特に単一体鞘301の内面とアンテナアセンブリ320との間の間隙に、冷却液を出入りさせるためのチューブ313aを有する。溝313cは、TTDP324の内部に液体を流入させやすくするための経路として単一体鞘301の内面に設けられる。単一体鞘301の表面温度は、TTDP324によるRF放射によって病変組織を加熱しても低く保たれる。したがって、病変組織の温度は、均一に制御され、図30に示す通り病変組織の壊死を引き起こす温度を大幅に超えることはない。したがって、TTDP324の挿入された病変組織の凝固は抑制されるが、これらの組織の壊死は阻害されず、またTTDP324の組織への固着も防止される。この温度制御により、外科医は高出力RFを利用できるようになるが、組織の壊死などの治療効果ならびにTTDPの組織への焼着の防止により、従来よりも広い領域の病変組織を加熱できるようになる。チューブ313aおよび313bや単一体鞘301内の溝313cなどと同じ冷却手段を、本発明の第2、第3および第4の目的である他のTTDP、すなわちTTDP224、TTDP424およびTTDP524、にも適用できる。上記の冷却手段の追加による改造によって本発明の第2、第3、第4の目的について得られる個別の実施例は図示しない。というのは、上記のチューブ313aおよび313bや溝313cを追加して単一体鞘301、401および501内に冷却液を流入させるための改造は容易に理解できるからである。図56、57、58、60および61に示すTTDP324、図70、72、88および90に示すTTDP424、ならびに図92、94、99および101に示すTTDP524については、改造により冷却液循環機能を追加できる。
【0122】
本発明の第4の目的の単一体鞘501は、図92などに示す単一体構造に代えて、TTDP224用の鞘230と同じもの、例えば、鋭利な辺部と熱収縮チューブとで構成される、鋭利な辺部を有する頭部293からなる鞘としてよい。
【0123】
図104から図107は、本発明の第5の目的に係り、特に好ましくはサファイア製で鋭利な辺部を有する頭部693またはサファイア製の単一体鞘301を備え、薬剤送達経路を設けることが可能なTTDP624、に係る一連の好適な実施例を示す。図104および図105は、鋭利な先端から辺部を貫く穴が開けられている単一体鞘301の刃先を示す。この穴は薬剤注入用先端穴618hと言い、この穴からTTDP624の挿入された病変組織に薬剤を注入する。図106は、薬剤輸送送達機能を有するTTDP624を示す。この流路は、単一体鞘601とアンテナアセンブリ620との間の間隙に設けたチューブ613dと、薬剤注入用先端穴618hと、から構成される。本構造の他の部分は、図57に示すTTDP324と同じである。薬剤は、シリンジポンプなどの注射手段に入れられそこから供給されるが、その際、流路であるチューブ613dを通って病変組織へ注入される。図107は、もう一つ別の種類の薬剤輸送送達機能、具体的には薬剤を病変組織に水平に注入する機能、を有するTTDP624を示す。単一体鞘601の刃先に設ける薬剤注入用先端穴618hに加え、単一体鞘601の円筒面に内側から外側に抜ける穴を追加する。これらの穴は薬剤注入用側面穴618aと言い、これらの穴を介して単一体鞘の内部からTTDP624の挿入された組織へと薬剤を流出させる。薬剤が薬剤注入用側面穴618aから流出しやすいように、チューブ613dを短くしている。本構造の他の部分は、図57に示すTTDP324と同じである。アンテナアセンブリ620の表面との接触による薬剤の汚染を防止するには、アンテナアセンブリ620の表面をフォトレジンまたはフォトポリマーでコーティングしてアンテナアセンブリ620の金属表面から薬剤へのイオン溶出を防止すればよい。この薬剤輸送送達方法の特徴は、図106に示すTTDPよりも短時間でかつ均一に薬剤を病変組織部に輸送送達できるということである。この違いは、この薬剤輸送送達機能の優れていることのみを意味するものではなく、薬剤を内包する各種カプセルを多種多様な選択肢から選んで使用する能力を有することを意味する。
【0124】
図108は、本発明の第5の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。単一体鞘601ではなく鞘630内に熱収縮チューブ694を有するTTDP624に上記の流路を設ける。薬剤の輸送送達方法は、図106に示すTTDP624による場合と同じである。
【0125】
図109および図110は、本発明の第5の目的に係るもう一つ別の一連の好適な実施例を示す。本発明の第3の目的のために実施するTTDP424には、薬剤輸送送達用の流路が追加される。この流路は、単一体鞘601内を縦貫するチューブ613dと、単一体鞘601の刃先に形成される薬剤注入用先端穴618hとから構成される。
【0126】
上記の流路を設ける改造を行えば、本発明の第4の目的に適用する薬剤輸送送達機能と同じ薬剤輸送送達機能を実施できることは自明である。ただし、病変組織への薬剤輸送送達を可能にするために上記の流路を追加するための改造は容易に理解できるので、これらの実施例については図示しない。図35、37、39および40に示すTTDP224、図56、58、60および61に示すTTDP324、図70、72、88および90に示すTTDP424、ならびに図92、94、99および101に示すTTDP524を改造して冷却液を循環させる機能を持たせることもできる。
【0127】
制癌効果または抗癌効果を有する制癌剤、例えば、ミトマイシンC、アドリアマイシン、エピルビシン、ピラルビチン、シスプラチン、メトレザーテ、5−FU(FUまたは5−FU)、テガフル、UFT、カルモフル、ドキシフルリダイン、TS−1、イリノテカン、ドセタゼル、リュコヴォリン(全て商標)等を病変組織に注入するには、液相運搬体または薬剤運搬体、すなわち、感熱自壊型薬剤搬送体や、高分子ミセルや、感熱性ナノミセルや、感温疎水性・感温親水性ヒドロゲル微粒子や、シスジクロロジアミンプラチンを内包させた反応性PEG(ポリエチレングリコール)鎖を有するドラッグキャリヤ様の新型重合ミセルや、シスジクロロジアミンプラチンを内包するブロック共重合体ミセルなどを用いる。制癌剤は、正常な細胞を直接攻撃しない。薬剤の注入後、TTDP624によって組織が加熱されると、制癌剤を内包する運搬体または搬送体の分解が始まる。その後、制癌剤は腫瘍内に留まるので、TTDP624による熱壊死と、薬剤によるアポトーシスの促進とが各所で同時に発生し、温熱治療領域全体に拡がる。したがって、癌治療の実施に伴う人体への負担が軽減される。その他の制癌剤、例えば、抗癌剤−DNA複合体、化学抗癌剤、高分子抗癌剤などを上記のカプセル化技術と組み合わせて使用することもできる。このTTDP624を癌治療に応用すると、薬物活性の効果を高め、かつ長期間持続させることができる。その結果、細胞内の水分のRF加熱機能と特定の病変細胞への薬剤注入機能との複合効果が期待できる。
【0128】
図111は、本発明の第6の目的に係る好適な実施例を示す。治療用アンテナプローブシステム731Aは、RF電源721(または、マイクロ波周波数を有するマイクロ波電力を使用する場合、マイクロ波電源と呼ばれる)と、RF電源721に接続されるサーキュレータ722と、同軸ケーブル233および333や結合線路435、535および635などのRF電力伝送手段である送電ケーブル729と、電力結合器728を介してRF電源721に接続される電力メータ723と、RF電力を測定する電力メータ723の出力信号によってRF電源721の発生させるRF電力を制御する制御器725と、から構成される。電力結合器728の目的は、RF電源721からのRF電力出力強度レベルを監視することであり、RF電力出力からのRF電力の電力結合器728への割当量は少量でよい。というのは、電力結合器728の使用目的は、RF電力出力に対する比例関係があることにより、RF電力出力を監視することができるからである。サーキュレータ722は、負荷744に接続されているのでTTDP724からの反射電力を吸収し、RF電源721に逆流させず、治療用アンテナプローブシステム731の動作を安定させることができる。
【0129】
上記の治療用アンテナプローブシステム731Aの場合、TTDP724への送電ケーブル729の接続をコネクタ、同軸ケーブル233および333、または結合線路435および535のいずれで行うかは、TTDPの種類がTTDP224、324、424、524、624のいずれであるかによって決まる。送電ケーブル729の外部導体は、同軸ケーブル233または333の、または結合線路435、535または635の、外部導体を介して最終的には第1電極208、308、408、508または608と、第2電極209、309、409、509または609とに接続される。
【0130】
治療用アンテナプローブシステム731Aが、TTDP724とは別個の機器、例えば熱電対や白金製温度センサなどである熱変換器726と、TTDP724とを備えていれば、RF電源721からの出力電力が制御され、RF電力による病変組織の過熱による凝固が防止されるのでさらに望ましい。また、この制御方法では、TTDP724によって加熱される病変組織の温度を監視することにより、RF電源721からのRF電力を治療手術中に適正レベルに維持できる。
【0131】
RF電源721は、2.45 GHzのマイクロ波または945 MHzのいわゆるUHVを発生させる。RF電力の周波数が異なっている場合、945 MHzのときの電気的絶縁間隙207、307、407、407a、507、507a、539および607を修正して、2.45 GHzのときの2.6倍になるようにしなければならない。
【0132】
図112は、本発明の第6の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。治療用アンテナプローブシステム731Bは、TTDP724を備え、その鞘の中には熱変換器726aが組み込まれる。熱変換器726aは、熱電対または白金製温度センサであることが望ましい。図113から図116は、辺部791、すなわち鞘730の先端に加工された穴726cに熱変換器726aが挿入されていることを特徴とする、本発明の第1、第3、および第4の目的の各種TTDPの断面図を示す。熱変換器726aと辺部793は、熱伝導性のセメントまたはヒートシンクオイルによって接触させる。その他のTTDPについても、その単一体鞘301、401、501および601に熱変換器726aを組み込めることが望ましい。
【0133】
図117および図118は、本発明の第6の目的に係るその他の好適な実施例を示す。符号P2は、差分電力信号を意味する。具体的には、電力メータ723への入力信号は、RF電源721からの出力電力と、サーキュレータ722の残りのポートが発生させる電力とによって発生する。この残りのポートからの電力を監視することによってTTDP724からの反射電力(P1)の測定が可能である。RF電源721からの出力電力と反射電力(P1)との差分電力が測定できる。RF電源721の出力電力(P0)が制御器725によって制御されることにより、組織への入力(P0−P1)が適切に制御される。
【0134】
その結果、RF電源721の出力電力(P0)とTTDP724からの反射電力との差分電力の信号が差分電力(P2)として測定される。この差分電力(P2)は、TTPD 724の挿入された組織に実際に送られる電力とみなされる。したがって、差分電力(P2)の信号によって制御器725を制御することにより、RF電源721が、組織に対して適切なレベルのRF電力を出力できるようになっている。
【0135】
図119は、本発明の第6の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。この実施例は、熱変換器726または726aの信号が制御器725への入力となり、RF電源721のON/OFF切り換えを制御することを特徴とする、RF電源721からのRF電力の制御シーケンスに関する。具体的には、RF電源721からの出力電力は、断続的な給電期間と、時間tで表される無給電期間という形で表される。給電期間におけるRF電力レベルは一定であるが、差分電力(P2)を監視することによりRF電力レベルが組織の過熱レベルを超えたと判定されると、給電停止となる。給電期間の監視および制御は、熱変換器726または726aの出力信号によって行われる。この制御方法を用いれば、TTDP724が挿入された組織の温度を、温熱療法によって局所的な凝固を起さずに病変領域を壊死させる範囲内に適切に維持できる。
【0136】
制御器725に設定する制御温度の下限TLは、細胞の壊死が始まる蛋白質分解温度(42.5℃)に近い温度である。温度が制御温度の下限TLよりも低くなると、熱変換器726から信号が送られて、RF電源721の出力が再開される。RF電源721からの平均出力電力は10 Wで、負荷サイクルは50%(給電期間と無給電期間はどちらも1繰り返し期間の50%である)で、合計RF給電(負荷率50%未満)時間は本温熱療法による手術の焼灼単位である600秒である。TTDP724の挿入された組織の温度が44℃を超えると、制御器721がRF電源721を制御し、その出力を遮断する。
【0137】
制御温度の上限THは、制御器725で設定する。熱変換器726または726aの出力信号は、制御温度TLとTHに基づいて評価される。熱変換器726または726aからの出力信号がいったんTHを示すと、先述の通り、RF電源721からの出力電力は遮断される。すると、TTDPの挿入された病変組織の温度が下がり始め、病変組織周辺の正常な細胞の温度に達する。病変組織の温度がTLまで下がると、制御器725はRF電源721を再起動し、出力電力を供給する。制御器725は、上記のような履歴シーケンスで電力のON/OFF切り換えを制御する。
【0138】
図119は、RF電源721を制御する制御器725の動作シーケンスを示す。符号TMPはセ氏表示の温度を、符号tは秒単位の時間を、符号TLおよびTHは制御温度を、符号OTTは熱温度出力を、符号PSは給電期間を、そして符号NPSは無給電期間を表す。RF電力の出力電力レベルは一定に維持され、TTDPからのRF電力出力のONおよびOFFは、それぞれ1サイクルの50%になるように制御される。組織の温度がTH(44℃)を超えると、電力出力が遮断され、組織の温度がTL(42.5℃)まで下がると電力出力が再開される。
【0139】
図120は、本発明の第6の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。符号P2は、差分電力信号を表す。治療用アンテナプローブシステム732Cは、薬剤輸送送達システムを含む。このシステムは、供給チューブ713eを介して薬剤を注入するためのシリンジポンプを内蔵する注入ユニット730からなり、この供給チューブ713eは、延長されてTTDP624のチューブ613aに接続されている。
【0140】
注入ユニット730は、薬剤注入用先端穴618hおよび側面穴618aを有する上記のTTDP724が挿入された病変組織に薬剤を供給する。注入ユニット730については、手動操作、または電動機による自動動作が行えることが望ましい。本治療用アンテナプローブシステム731Cの他の部分は、治療用アンテナプローブシステム731Aまたは731Bのものと同じである。病変組織に注入する薬剤を活性化するために、TTDP724による焼灼を行う前、最中、または後のうち、どのタイミングでTTDP724への薬剤注入を行うかどうかは制癌剤などの薬効によって異なる。
【0141】
図121は、本発明の第6の目的に係るもう一つ別の好適な実施例を示す。このTTDP724の構成は、本発明の第1の目的のTTDPの構成と同じであり、辺部791、すなわち、鞘730の先端、に加工した穴726cに熱変換器726aが挿入されることを特徴とする。熱変換器726aと辺部793は、熱伝導性のセメントまたはヒートシンクオイルによって接触させる。さらにTTDP724は、図106に示すものと同じ薬物輸送送達機能を有する。このTTDP724により、TTDP724の挿入された組織の温度を監視すること、ならびに組織の温度が適切な状態で制癌剤を輸送送達することが可能になる。
【0142】
その他のTTDPについても、単一体鞘301、401、501および601にも熱変換器726aを組み込めることが望ましい。
【0143】
単一体鞘301、401、501、601および701の構造は、曲げおよび加圧に対する機械的耐久性が高い単体構造とする。
【0144】
熱収縮チューブ294と単一体鞘301は、一部または全体を着色してよい。TTDPの色を目視確認することにより、治療過程と外科手術方法を管理できる。
【0145】
本発明の範囲は、上記の各図面に示した実施例に限定されるものではない。本発明の概念と同じ概念の範囲に収まる変形例も、本発明と同一または等価の発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明は、産業上の実用性を有する。本発明の第1から第6の目的は、いずれも産業技術によって実施するものであって、各種産業分野に、具体的には、高周波治療器、高周波治療システムおよびそれらの使用方法に関する医療技術に、応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
本発明の目的と利点について理解を深めるには、添付図面とともに以下の詳細説明を参照する必要がある。互いに類似した部品には互いに類似した参照番号が割り当てられている:
【図1】マイクロターゼ用の電気プローブの側面図である。
【図2】マイクロターゼ用の電気プローブの断面図である。
【図3】頭部が弾丸形状のマイクロターゼ用の電気プローブの断面図である。
【図4】頭部が弾丸形状のマイクロターゼ用の電気プローブの断面図である。
【図5】文献2における研究対象である新しい温熱療法プローブの図である。
【図6】文献2における研究対象である新しい温熱療法プローブの図である。
【図7】文献2における研究対象である新しい温熱療法プローブの図である。
【図8】文献2における研究対象である新しい温熱療法プローブの図である。
【図9】組織内におけるSARによって定まる温度分布図である。
【図10】組織内におけるSARによって定まる温度分布図である。
【図11】従来技術の温熱療法プローブによる温熱療法が有効な領域の模式図である。
【図12】従来技術の温熱療法プローブによる温熱療法が有効な領域の模式図である。
【図13】本発明の第1の目的に係るTTDPの断面図である。
【図14】本発明の第1の目的に係るTTDPの断面図である。
【図15】本発明の第1の目的に係るTTDPの断面図である。
【図16】本発明の第2の目的に係るTTDPの断面図である。
【図17】本発明の第2の目的に係るTTDPの断面図である。
【図18】本発明の第2の目的に係るTTDPの断面図である。
【図19】本発明の第2の目的に係るTTDPを使用する場合において、SARによって定まる組織内の温度分布図である。
【図20】本発明の第3の目的に係るTTDPのアンテナアセンブリの断面図である。
【図21】本発明の第3の目的に係るTTDPのアンテナアセンブリの断面図である。
【図22】本発明の第3の目的に用いる結合線路の斜視図および断面図である。
【図23】本発明の第3の目的に用いる結合線路の斜視図および断面図である。
【図24】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図である。
【図25】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図である。
【図26】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図である。
【図27】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図である。
【図28】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図である。
【図29】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図である。
【図30】本発明の第1から第3の目的に係るTTDPが冷却液を内部で循環させる構造を備える場合において、組織内におけるSARによって定まる温度分布図である。
【図31】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図32】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図33】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図34】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図35】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図36】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図37】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図38】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図39】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図40】本発明の第1の目的に係るTTDPの図である。
【図41】本発明の第1の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図42】本発明の第1の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図43】本発明の第1の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図44】本発明の第1の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図45】本発明の第1の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図46】本発明の第1の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図47】本発明の第1の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図48】本発明の第1の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図49】TTDPのヘッドエレメントの結合部に形成されるカット面である。
【図50】TTDPのヘッドエレメントの結合部に形成するカット面と切り込みとを示す図である。
【図51】TTDPのヘッドエレメントの結合部に形成するカット面と切り込みとを示す図である。
【図52】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図53】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図54】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図55】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図56】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図57】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図58】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図59】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図60】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図61】本発明の第2の目的のTTDPにおいてアンテナアセンブリに変更を加えた変形例の図である。
【図62】本発明の第3の目的に係るTTDPの頭部の形状を示す図である。
【図63】本発明の第3の目的に係るTTDPの頭部の形状を示す図である。
【図64】本発明の第3の目的に係るTTDPの頭部の形状を示す図である。
【図65】本発明の第3の目的に係るTTDPの頭部の形状を示す図である。
【図66】本発明の第3の目的に係るTTDPの頭部の形状を示す図である。
【図67】本発明の第3の目的に係るTTDPの頭部の形状を示す図である。
【図68】本発明の第3の目的に係るTTDPの頭部の形状を示す図である。
【図69】本発明の第3の目的に係るTTDPの頭部の形状を示す図である。
【図70】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図71】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図72】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図73】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図74】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図75】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図76】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図77】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図78】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図79】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図80】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図81】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図82】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図83】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図84】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図85】本発明の第3の目的に係るTTDPの断面図と部分斜視図である。
【図86】本発明の第3の目的に係るTTDPの変形例の断面図である。
【図87】本発明の第3の目的に係るTTDPの変形例の断面図である。
【図88】本発明の第3の目的に係るTTDPの変形例の断面図である。
【図89】本発明の第3の目的に係るTTDPの変形例の断面図である。
【図90】本発明の第3の目的に係るTTDPの変形例の断面図である。
【図91】本発明の第4の目的に係るTTDPの追加ダイポールアンテナの斜視図である。
【図92】本発明の第4の目的に係るTTDPの断面図である。
【図93】本発明の第4の目的に係るTTDPの断面図である。
【図94】本発明の第4の目的に係るTTDPの断面図である。
【図95】本発明の第4の目的に係るTTDPの断面図である。
【図96】本発明の第4の目的に係るTTDPの断面図である。
【図97】本発明の第4の目的に係るTTDPの断面図である。
【図98】本発明の第4の目的に係るTTDPの追加ダイポールアンテナの斜視図である。
【図99】本発明の第4の目的に係るTTDPの断面図である。
【図100】本発明の第4の目的に係るTTDPの断面図である。
【図101】本発明の第4の目的に係るTTDPの断面図である。
【図102】本発明の第1の目的に係る、冷却液循環構造を内蔵するTTDPの断面図である。
【図103】本発明の第2の目的に係る、冷却液循環構造を内蔵するTTDPの断面図である。
【図104】本発明の第5の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図105】本発明の第5の目的に係るTTDPの頭部の図である。
【図106】本発明の第5の目的に係るTTDPの断面図である。
【図107】本発明の第5の目的に係るTTDPの断面図である。
【図108】本発明の第5の目的に係るTTDPの断面図である。
【図109】本発明の第5の目的に係るTTDPの断面図である。
【図110】本発明の第5の目的に係るTTDPの断面図である。
【図111】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムの回路図である。
【図112】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムの回路図である。
【図113】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムに使用するTTDPの断面図である。
【図114】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムに使用するTTDPの断面図である。
【図115】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムに使用するTTDPの断面図である。
【図116】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムに使用するTTDPの断面図である。
【図117】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムの回路図である。
【図118】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムの回路図である。
【図119】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムの制御方法を示す制御シーケンスである。
【図120】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムのブロック図である。
【図121】本発明の第6の目的に係る治療用アンテナプローブシステムに使用するTTDPの断面図である。
【符号の説明】
【0148】
102 中心導体
103、203、403、503 円筒状誘電絶縁体
104 外部導体
105、205、305、405、505、605 外部被覆
106 弾丸状頭部
107、207、307、407、407a、507、507a、607 電気的絶縁間隙
108、208、308、408、508、608 第1電極
109、209、309、409、509、609 第2電極
117 従来型絶縁用鞘
117A 絶縁ケース
202、302 中心導体
204、304、404、504 外部導体
208、308、408、508、608 第1電極
210、310、410 導電性円板
211、311 絶縁環
212、312、412、512 追加熱収縮チューブ
214、314 コネクタ
218、219、318、319、618、619 追加電極
220、320、420、520、620 アンテナアセンブリ
224、324、424、524、624、724 TTDP(温熱療法用ダイポールアンテナ)
230、630、730 鞘
233、333、435d、533 同軸ケーブル
291、691、791 辺部
292、692、792 結合部
293、693、793 鋭利な辺部を有する頭部
294、694、794 熱収縮チューブ
295 カット面
296 切り込み
301、401、501、601、701 単一体鞘
303、403、503 円筒状誘電絶縁体
313a、613d チューブ
313c 溝
320、420、520、620、720 アンテナアセンブリ
321 第3電極
402a、502a 第1中心導体
402b、502b 第2中心導体
404、504 外部導体
408a、409a 外部電極
434a、434b、534a、534b 給電点
435、535、635 結合線路
436a、436b、436c、436d、536a、526b、536c、536d ダイポールアンテナ
436e 電極対
437、440 絶縁間隙片
537a、537b 電極対
438a、438b、438c 導電層
439 貫通穴
538 前方ダイポールアンテナ
443 絶縁片
434c 接続点
402d シングル中心導体
442 溝
436e 他方の電極対
539 電気的絶縁間隙
540a、540b 導電性端部
541 埋め込み式半田付け
613a チューブ
618a、618h 薬剤注入用側面穴および先端穴
713e 供給チューブ
731A、731B、731C 治療用アンテナプローブシステム
721 RF電源
722 サーキュレータ
729 電力伝送ケーブル
723 電力メータ
728 電力結合器
725 制御器
722 サーキュレータ
729 送電ケーブル
731 治療用アンテナプローブシステム
744 負荷
726、726a 熱変換器
731B 治療用アンテナプローブシステム
726c 穴
725 制御器
730 注入ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイポールアンテナアセンブリが形成された高周波電力伝送手段と、
少なくとも頭部において硬い材質からなり、当該頭部は鋭利な辺部を有しておりかつ当該ダイポールアンテナを内包する鞘と、から構成された治療用アンテナプローブ。
【請求項2】
前記高周波電力伝送手段は少なくとも1つの中心導電体と当該中心導電体の周りに形成された誘電絶縁体と外部導体から成り、
これら全ては前記ダイポールアンテナ構成部を形成し、
そのうちの1つのダイポールアンテナは、当該外部導体の一部から形成されかつ当該少なくとも1つの中心導体に電気的に接続される第1電極と、当該外部導体の他の一部から形成された第2電極と、当該第1電極と当該第2電極の間に形成された絶縁手段からなることを特徴とする、
請求項1に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項3】
前記絶縁手段は前記外部導体を切除することにより形成されていることを特徴とする、
請求項1及び請求項2に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項4】
前記絶縁手段は前記第1電極と前記第2電極の間に充填された絶縁環により形成されていることを特徴とする、
請求項1及び請求項2に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項5】
頭部は前記頭部であって、当該頭部は辺部と、当該頭部に作られた結合部に結合する可撓性パイプとからなることを特徴とする、
請求項1及び請求項2に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項6】
前記頭部はサファイアからなり、かつ可撓性パイプは熱収縮チューブであることを特徴とする、
請求項1と請求項2及び請求項5に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項7】
前記鞘は単一体の形状に形成されており、かつ前記硬い材質がサファイアであることを特徴とする、
請求項1及び請求項2に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項8】
全ての前記中心導体は前記ダイポールアンテナアセンブリの中にありかつ当該頭部の反対側にある前記第1電極の区間に電気的に接続されていることを特徴とする、
請求項2に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項9】

となる関係にあることを特徴とする、
請求項2と請求項7及び請求項8に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項10】
前記高周波電力伝送手段を覆う被覆と前記鞘との外部を覆う他の収縮チューブが付加されていることを特徴とする、
請求項2ないし請求項5及び請求項8に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項11】
前記結合部がその周囲に切り込み又はカット面を有することを特徴とする、
請求項5及び請求項6に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項12】
前記絶縁手段は絶縁間隙片であって前記外部導体の直径と直径が同じである円盤形状を有し、前記中心導体が貫通する穴を有することを特徴とする、
請求項2と請求項3及び請求項5ないし請求項8に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項13】
前記絶縁間隙片は少なくとも一方の側に伝導層を有し、かつ前記第1電極と第2電極のうちの1つが当該導電層に接していることを特徴とする、
請求項12に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項14】
前記絶縁手段が絶縁間隙片であって、当該絶縁間隙片が有する伝導層が前記第1電極と第2電極に半田付けローにより一部において接続していることを特徴とする、
請求項12に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項15】
前記第1電極と前記第2電極の間に第3電極が形成されていることを特徴とする、
請求項2と請求項5ないし請求項7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項16】
前記第1電極は電気的に導電性を有する円盤を介して前記中心導体に接続されていることを特徴とする、
請求項2ないし請求項7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項17】
前記第1電極と第2電極に電気的に接続している追加の電極が当該第1電極と第2電極の表面に付加されていることを特徴とする、
請求項2ないし請求項7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項18】
前記ダイポールアンテナアセンブリに、コネクタが接続され当該コネクタを介して高周波電力が供給されることを特徴とする、
請求項2ないし請求項8に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項19】
前記高周波電力伝送手段が、少なくとも第1と第2の中心導体と、前記少なくとも第1と第2の中心導体の周りに形成された誘電絶縁体と、外部導電体であって当該外部電極より第1電極と第2電極の少なくとも1つの組が当該第1電極と第2電極間に介在する絶縁手段と共に形成されることにより少なくとも1つのダイポールアンテナが構成されてなる当該外部電極と、からなる結合線路であって、
ダイポールアンテナが、前記第1と第2の中心導体がそれぞれ前記第1電極と前記第2電極とに電極供給点介して接続され、当該前記第1電極と前記第2電極がそれぞれ前記電力供給点において隣り合って対面している配置となって形成されていることを特徴とする、
請求項2と請求項5ないし請求項8に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項20】
前記高周波電力伝送手段が、少なくとも第1と第2の中心導体と、前記少なくとも第1と第2の中心導体の周りに形成された誘電絶縁体と、外部導電体であって当該外部電極より第1電極と第2電極の組が当該第1電極と第2電極間に介在する絶縁手段と共に少なくとも2組形成されることにより第1のダイポールアンテナと第2のダイポールアンテナが構成されることとなる当該外部電極と、からなる結合線路であって、
第1のダイポールアンテナが、前記第1と第2の中心導体がそれぞれ前記第2電極と前記第1電極とに電極供給点介して接続され、当該前記第1電極と前記第2電極がそれぞれ前記電力供給点において隣り合って対面している配置となって形成されており、
第2のダイポールアンテナが、前記第1と第2の中心導体がそれぞれ前記第2電極と前記第1電極とに電極供給点介して接続され、当該前記第1電極と前記第2電極がそれぞれ前記電力供給点において隣り合って対面している配置となって形成されており、
前記第1電極と第2電極の第1電極組みと前記第1電極と第2電極の第2電極組みが交互に当該結合線路に形成されていることを特徴とする、
請求項2と請求項5ないし請求項8に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項21】
前記結合線路の終端部に形成されたダイポールアンテナは折り曲げた第1電極と折り曲げた第2電極を有し、これら電極は前記外部導体から形成された第1電極と第2電極にそれぞれ電気的に接続された外部電極を有することを特徴とする、
請求項6ないし請求項8と請求項19及び請求項20に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項22】
前記結合線路の終端部に形成されたダイポールアンテナは前記誘電絶縁体を取り囲む2つの半円環状の電極の組であって、当該半円環状の電極が電気的絶縁間隙を介して隔絶され、前記中心導体が当該半円環状の電極に接続されていることを特徴とする、
請求項19及び請求項20に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項23】
前記鞘は少なくとも一部が着色されていることを特徴とする、
請求項2と請求項5ないし請求項7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項24】
前記鞘は当該鞘の内部表面に形成された溝を有することを特徴とする、
請求項7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項25】
前記鞘は先端部を貫通し鋭利な辺部に穿たれた開口穴を有することを特徴とする、
請求項2と請求項5ないし請求項7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項26】
前記鞘は当該鞘の円柱表面に内部から外部に穿たれた穴を有することを特徴とする、
請求項7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項27】
前記鞘の先端部には熱変換器が付加されていることを特徴とする、
請求項2と請求項5ないし請求項7に記載の治療用アンテナプローブ。
【請求項28】
高周波電力源と、当該高周波電力源に接続されたサーキュレータと、高周波電力伝送手段を介して前記サーキュレータに接続された請求項2と請求項5と請求項7及び請求項18ないし請求項24のいずれかに記載された前記治療用アンテナプローブと、電力結合器を介して前記高周波電力源に接続された高周波電力メータと、前記高周波電力源により発生した高周波電力を前記電力メータの出力信号により制御する制御器とから成る治療用アンテナプローブシステム。
【請求項29】
前記高周波電力メータの前記出力信号が、前記高周波電力源により発生した前記高周波電力と前記サーキュレータを経て得られる前記治療用アンテナプローブからの反射であるところの当該反射電力との差分電力により制御されていることを特徴とする、
請求項28に記載の治療用アンテナプローブシステム。
【請求項30】
熱変換器からの出力信号が前記制御器に入力され前記高周波電力源により発生した高周波電力が前記出力信号により制御されることとなる当該熱変換器を更に含むことを特徴とする、
請求項28と請求項29に記載の治療用アンテナプローブシステム。
【請求項31】
前記高周波電力源により発生した前記高周波電力が、高周波電力の供給がある場合とない場合がある期間において交互にかつ反復してパルス状に現れるように高周波電力源が与えられ、前記制御器より前記高周波電力が設定され、前記高周波電力が供給される所定の期間が前記熱変換器からの前記出力により制御されていることを特徴とする、
請求項28ないし請求項30に記載の治療用アンテナプローブシステム。
【請求項32】
請求項16と請求項17に記載のいずれかの治療用アンテナプローブを介して薬剤を注入する注射器を更に含んでいることを特徴とする請求項28ないし請求項31に記載の治療用アンテナプローブシステム。
【請求項33】
ミトマイシンC 、アドリアマイシン、エピルビシン、ピラルビチン、シスプラチン、メトレザーテ、5-FU(FU, 5-FU,)、テガフル、UFT、カルモフル、ドキシフルリダイン、TS−1、イリノテカン、ドセタゼル、リュコヴォリン(全て商標)からなる1群の薬剤の薬効から選択された制癌性効果と癌抑制効果を有する1または2以上の制癌剤が、液相で、または薬液キャリヤで、または感温性自己破壊体、重合ミセル、感温性ナノミセル、感温変化型親疎水性ヒドロゲル微粒子、シスジクロロジアミンプラチンを内包させた反応性PEG (ポリエチレングリコール)鎖を有するドラッグキャリヤ様の重合ミセルで、またはシスジクロロジアミンプラチンを内包したブロック共重合体ミセルを有する感温性薬剤搬送体に入れて、病変生体に注入されることと共に請求項32に記載の治療用アンテナプローブシステムを使用する使用方法。
【請求項34】
前記制癌剤が、高周波電力源により高周波電力を供給すると共に注入手段により前記治療用アンテナプローブに供給されることを特徴とする請求項33に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図54】
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【図56】
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【図57】
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【図60】
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【図62】
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【図101】
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【図110】
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【図111】
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【図112】
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【図114】
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【図115】
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【図116】
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【図117】
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【図118】
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【図119】
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【図120】
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【図121】
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【公開番号】特開2008−245990(P2008−245990A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−92193(P2007−92193)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】