説明

高周波電源装置

【課題】冷却水として純水を使用せずに工業用水の使用により電源装置内部を効果的に冷却して、電源供給を安定的に行うことができる高周波電源装置を提供する。
【解決手段】交流電源を直流に変換するAC/DC変換部と、AC/DC変換部で変換された直流を平滑化するフィルター部と、フィルター部で平滑化された直流電圧を高周波電圧に変換するDC/AC変換部と、DC/AC変換部で変換された高周波電圧を整合する負荷マッチング部とを筺体内に備えた高周波電源装置であって、AC/DC変換部からDC/AC変換部の間を接続するブスバー6に、熱伝導性絶縁接着シート61を介して銅板63と冷却配管64とからなる冷却板62が接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置等に接続される高周波電源装置に係り、交流電源を直流に変換して平滑化した後に高周波電圧に変換して供給する電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱装置は、電気導体からなる被加熱材料に電磁誘導によって誘導電流を生じさせ、被加熱材料自身のジュール熱によって発熱させる装置であり、外部熱源を持たず、熱効率が高いため、省エネルギー化にもつながり、金属の溶解、金属の焼入れ等の熱処理などに広く用いられている。
この誘導加熱装置に用いられる電源装置としては、例えば特許文献1に記載されるように、交流電源を整流器によって直流に変換し、リアクトル、コンデンサ等を経て平滑化した後、スイッチング素子によって高周波の交流に変換して負荷に供給するようにしたものがある。
また、特許文献2記載の高周波電源装置は、商用交流電源電圧を有する入力電源信号と高周波交流信号を平衡変調器に入力して、DSB変調信号を出力し、これを絶縁兼変圧用のトランスに入力して変圧後、復調器で復調し、所定の電圧を有する信号を出力するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−64907号公報
【特許文献2】特開平11−242526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような高周波電源装置では高電流が出力されるため、内部の発熱が問題になる。特許文献1記載の電源装置においては、特に、直流領域で用いられる導体の放熱対策が必要であり、その導体を冷却水によって冷却することが行われるが、電食防止のために冷却水として純水が使用される。このため、電源装置に付帯して純水装置を設置し、電源装置との間で純水を常時循環させる必要があり、装置全体の大型化を招くという問題がある。また、リアクトルやトランスなどの発熱部品が多く用いられるため、その放熱対策も講じておく必要がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、冷却水として純水を使用せずに工業用水の使用により内部を効果的に冷却して、電源供給を安定的に行うことができる高周波電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高周波電源装置は、交流電源を直流に変換するAC/DC変換部と、該AC/DC変換部で変換された直流を平滑化するフィルター部と、該フィルター部で平滑化された直流電圧を高周波電圧に変換するDC/AC変換部と、該DC/AC変換部で変換された高周波電圧を整合する負荷マッチング部とを筺体に備えた高周波電源装置であって、前記AC/DC変換部から前記DC/AC変換部の間を接続するブスバーに、その長さ方向に沿う冷却配管が熱伝導性絶縁接着シートを介して接合されていることを特徴とする。
【0007】
この電源装置においては、ブスバーと冷却配管とを熱伝導性絶縁接着シートにより接着したので、ブスバーで発生した熱を、熱伝導性絶縁接着シートを介して速やかに冷却配管に伝達することができる。また、熱伝導性絶縁接着シートは絶縁性を有しているので、ブスバーと冷却配管との間を電気的に絶縁状態にして、冷却配管の電食を引き起こすことがない。そのため、冷却水に純水ではなく工業用水を使用することができる。
【0008】
また、本発明の高周波電源装置において、前記筺体に吸気孔及び排気孔が設けられるとともに、前記排気孔に冷却ファンが設けられており、前記冷却ファンによって生じる前記吸気孔から前記排気孔に向けた冷却風の流れの中に、前記フィルター部のリアクトル及び前記負荷マッチング部のマッチングトランスが配置されていることを特徴とする。
【0009】
前記吸気孔と前記排気孔との間の空気の流れに沿って、フィルター部のリアクトル及び負荷マッチング部のマッチングトランスを冷却することが可能となり、これにより、筺体内の温度上昇を抑制して全体の冷却効率を向上することができる。
【0010】
さらに、本発明の高周波電源装置において、前記筺体は箱体とこれを蓋う蓋体とを備え、該蓋体の内面にロジック基板が設けられ、該ロジック基板に電源回路用CPU及び制御回路用CPUが設けられていることを特徴とする。
【0011】
一枚のロジック基板にCPUを二つ搭載して、一方は電源動作をさせて、もう一方は電源内の保護動作を制御させる構成とすることで、基板を一枚に集約することができる。このように、電源及び制御回路を一枚の基板に集約することで、電源装置自体を小型化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高周波電源装置内部を効果的に冷却して、電源供給を安定的に行うことができ、しかも、純水を使用せずに工業用水での冷却を可能とし、装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る高周波電源装置の一実施形態を示す図であり、(a)が正面図、(b)が側面図である。
【図2】高周波電源装置の蓋体の内面を示す図である。
【図3】高周波電源装置に設けられるブスバーを説明する図である。
【図4】高周波電源装置を説明するブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の高周波電源装置1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図4に示す高周波電源装置1は、外部から供給される50Hz又は60Hzの商用周波数電力(例えば、200V)を所望の周波数をもった高周波電圧に変換する。この高周波電源装置1には、外部から供給された交流電源を直流に変換するAC/DC変換部2と、このAC/DC変換部2に接続され、AC/DC変換部2で変換された直流を平滑化するフィルター部3と、このフィルター部3に接続され、平滑化された直流を所望の高周波電圧に変換するDC/AC変換部4と、このDC/AC変換部4で変換された高周波電圧を整合する負荷マッチング部5とにより構成されており、これらAC/DC変換部2、フィルター部3、DC/AC変換部4、負荷マッチング部5は、図1に示すように小型の筺体10内に収納されている。
【0015】
AC/DC変換部2は、ブリッジダイオード20によって構成される。ブリッジダイオード20により、外部から供給される三相電圧は全波整流されてDC電圧に変換される。供給される三相電圧は、図4中のR,S,Tの端子部で示している。
フィルター部3は、フィルターコンデンサ30及びリアクトル31によって構成される。フィルターコンデンサ30は三相全波整流波形の電圧のリプルを平滑化し、リアクトル31は三相全波整流波形の電流のリプルを平滑化する。
【0016】
DC/AC変換部4は二つのIGBTモジュール40(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)により構成されており、DC電圧は、このIGBTモジュール40のフルブリッジ回路に送られ、高周波電圧に変換される。
これらのAC/DC変換部2からDC/AC交換部4の間は、銅製の帯状導電板からなるブスバー6により接続されている。
そして、負荷マッチング部5は、マッチングトランス50と、図示しない整合コンデンサ及び加熱コイルによって構成される。DC/AC変換部4で高周波化された電力はマッチングトランス50に送られて、マッチングトランス50の出力は整合コンデンサと加熱コイルによる直列共振回路に送られる。
【0017】
次に、このように構成した高周波電源装置1において、各ユニットの筺体10内の配置を説明する。
筺体10は箱体11と蓋体12とで構成され、箱体11内中央部に配置されるブリッジダイオード20及びIGBTモジュール40は下面が電気的に絶縁されており、一つのヒートシンク21に搭載されている。このブリッジダイオード20の近傍(図中の左下)に、リアクトル31がダンパー32を介して箱体11の底面から隙間を設けて配置されており、リアクトル31の下方に位置する箱体11の底面に、吸気孔13が設けられている。
フィルターコンデンサ30はIGBTモジュール40の真上に配置されており、省スペース化を図るとともに、配線を短くしてインダクタンスを最小化して、配線インダクタンスに起因して発生するサージ電圧用のスナバ回路を省略している。
【0018】
また、箱体11には吸気孔13から導入される空気を排出する排気孔14が設けられている。この排気孔14は、筺体10内に配置された種々の電気部品を吸気孔13との間に挟み込むように、筺体10の吸気孔13から離れた位置で、吸気孔13とほぼ対角をなす位置の側面に設けられている。図1(b)に示す例では、吸気孔13の真上にリアクトル31が配置され、排気孔14の内側にマッチングトランス50が配置されている。そして、排気孔14の外側に冷却ファン7が取り付けられている。
このように、吸気孔13と排気孔14との間の空間にリアクトル31やマッチングトランス50、その他の電子部品が配置されているので、空冷ファン7の冷却風が吸気孔13から排気孔14に向けて流れると、筺体10内部の電子部品を効率的に空冷することができる。これにより、筺体10内の温度上昇を抑制して全体の冷却効率を向上することができる。例えば、冷却風の流れFを、図1中の二点鎖線で示す。
【0019】
そして、図1中に示していないが、ブリッジダイオード20とリアクトル31との間及びフィルターコンデンサ30とIGBTモジュール40との間は、例えば、銅製の帯状導電板のブスバー6により接続されている。このブスバー6は、図3に示すように熱伝導性及び絶縁性を有した熱伝導性絶縁接着シート61を介して冷却板62を接合する構成とされている。冷却板62は、銅板63に複数の冷却配管64をろう付け又は溶接等の方法により接合した構成であり、冷却配管64内を循環する冷却水によってブスバー6を冷却する。
【0020】
熱伝導性絶縁接着シート61は、エポキシ樹脂等の接着剤の中に熱伝導性の高いフィラーを充填してなるものであり、そのフィラーとしては窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、アルミナ等が用いられる。熱伝導性絶縁接着シート61の熱伝導性としては、例えば、レーザーフラッシュ法により測定される熱伝導率が1〜5W/m・K、絶縁性としてはJIS K6911による絶縁破壊電圧が120〜170KV/mmとされる。このような特性の熱伝導性絶縁接着シートとして、例えば、東レ株式会社のTSAが好適である。ブスバー6と冷却板62とは、熱伝導性に優れた熱伝導性絶縁接着シートを介して接触しているので、効率的にブスバー6の冷却を行うことができる。また、これらのブスバー6及び冷却板62は電気的に絶縁状態にされているので、冷却水に純水ではなく工業用水を使用することができる。
【0021】
また、本実施形態の高周波電源装置1においては、図1(b)中に示す箱体11内部の右側部に、冷却水を循環供給可能な複数の循環パイプ80が備えられた水冷ヘッダー8が設けられている。この水冷ヘッダー8から、筺体10内の冷却配管64に冷却水が供給される。
さらに、図2に示すように筺体10の上部に設けられた蓋体12の内面には、ロジック基板9が設けられている。図1に示すシールド板15は、このロジック基板9をシールドするために設けられている。
【0022】
本実施形態の高周波電源装置1は、DC/AC変換部4で周波数を可変することで出力の調整を行っている。この可変動作を行うのがロジック基板9である。このロジック基板9には、電源回路用のCPU91及び制御回路用のCPU92が取り付けられている。CPU91は、電圧に変換された各フィードバック信号と出力設定電圧とを比較しながら出力DC電圧を可変させるマイコンであり、CPU92は、各種インターロックを監視して盤内温度及び接点の異常を検出し、CPU91に停止命令を出すマイコンである。筺体10内には、ゲートドライブ基板17や電圧フィードバック基板18等が備えられており、これらの基板から発信された信号を検知して、高周波電源装置1の制御を行う。
このように、一枚のロジック基板9にCPUを二つ搭載して、一方のCPU91に電源動作をさせ、もう一方のCPU92に電源内の保護動作を制御させる構成とし、ロジック基板8を一枚に集約している。そして、電源及び制御回路を一枚のロジック基板8に集約することで、電源装置自体を小型化している。
【0023】
また、本実施形態の高周波電源装置1においては、筺体10内の各側面の内側に部品を配置しているが、これら部品は底面で支持されている。このため、側面の四方に配置されたパネルを着脱することができ、メンテナンス性が向上している。
【0024】
このように、上述した高周波電源装置1においては、ブスバー6に熱伝導性絶縁接着シートを介して冷却配管を接合したことによって冷却水として純水を使用せずに工業用水の使用を可能とし、効果的に冷却することができるとともに、筺体に設けられた吸気孔及び排気孔との間に発熱部品を挟んで配置しているので、一つの冷却ファンで効率的に筺体の内部を冷却することができる。
加えて、一つのロジック基板にCPUを二つ搭載することで、電源装置自体を小型化することができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態である高周波電源装置1について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、ブスバー6に複数の冷却配管64を設けた構成としたが、ブスバー6の板幅に合わせて扁平な一つの流路を有する配管で冷却配管を構成しても良い。
また、AC/DC変換部2からDC/AC変換部4の間の接続にだけ上述のブスバー6を用いたが、その他の部品間の接続にこのブスバー6を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 高周波電源装置
2 AC/DC変換部
3 フィルター部
4 DC/AC変換部
5 負荷マッチング部
6 ブスバー
7 冷却ファン
8 水冷ヘッダー
9 ロジック基板
10 筺体
11 箱体
12 蓋体
13 吸気孔
14 排気孔
15 シールド板
17 ゲートドライブ基板
18 電圧フィードバック基板
20 ブリッジダイオード
21 ヒートシンク
30 フィルターコンデンサ
31 リアクトル
32 ダンパー
40 IGBTモジュール
50 マッチングトランス
61 熱伝導性絶縁接着シート
62 冷却板
63 銅板
64 冷却配管
80 循環パイプ
91,92 CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を直流に変換するAC/DC変換部と、該AC/DC変換部で変換された直流を平滑化するフィルター部と、該フィルター部で平滑化された直流電圧を高周波電圧に変換するDC/AC変換部と、該DC/AC変換部で変換された高周波電圧を整合する負荷マッチング部とを筺体に備えた高周波電源装置であって、前記AC/DC変換部から前記DC/AC変換部の間を接続するブスバーに、その長さ方向に沿う冷却配管が熱伝導性絶縁接着シートを介して接合されていることを特徴とする高周波電源装置。
【請求項2】
前記筺体に吸気孔及び排気孔が設けられるとともに、前記排気孔に冷却ファンが設けられており、前記冷却ファンによって生じる前記吸気孔から前記排気孔に向けた冷却風の流れの中に、前記フィルター部のリアクトル及び前記負荷マッチング部のマッチングトランスが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波電源装置。
【請求項3】
前記筺体は箱体と該箱体を蓋う蓋体とを備え、該蓋体の内面にロジック基板が設けられ、該ロジック基板に電源回路用CPU及び制御回路用CPUが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波電源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−129644(P2011−129644A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285522(P2009−285522)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(593223020)玉川エンジニアリング株式会社 (2)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)
【Fターム(参考)】