説明

高圧放電ランプおよび高圧放電ランプ装置

【課題】 本発明は、待機モードの待機電力を下げつつ、処理モードにおいて、短時間で立ち上がり、立ち切れしない高出力点灯ができる高圧放電ランプおよび高圧放電ランプ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 一対の電極が対向配置され、水銀が封入された発光管と、前記発光管の外側に形成された直管状の外管を備え、前記発光管の両端で前記外管が固定されている高圧放電ランプにおいて、
前記発光管の外表面、または、前記外管の内表面に、凸部が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、液晶等の露光装置用光源に用いられる高圧放電ランプおよび高圧放電ランプ装置に関し、特に、発光管の外側に外管を配置した高圧放電ランプおよび、当該高圧放電ランプを冷却ジャケット内に配置した高圧放電ランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば接着剤などの樹脂の硬化処理やプリント基板などの露光処理においては、紫外線照射装置が利用されており、紫外線光源としては、例えば高圧放電ランプが用いられている。
図6は、従来における高圧放電ランプ装置の構成の概略を示す説明図である。
特許文献1に記載の発明のように、この高圧放電ランプ装置は、高圧放電ランプ1の発光管2の外側に、内管25と外管26とからなる冷却ジャケット21を配置し、発光管2の冷却を行っている。高圧放電ランプ1の発光管2と冷却ジャケット21の内管との隙間は、平均約1mmとなっている。高圧放電ランプ1は、直管状の石英ガラス製の発光管2の両端に一対の電極を封着し、内部に水銀を封入している。冷却ジャケット21は円筒状の石英ガラス等の透明な材料よりなり、内管25と外管26よりなる二重管構造になっている。また、両端外周に設けられた接続管27a,27bを通して外部から冷却水がジャケット内を循環して、空気層を介して近接する発光管2を冷却すると共に高圧放電ランプ1から放射される熱を吸収する。
【0003】
図6に記載の高圧放電ランプ装置では、高圧放電ランプ1の発光管2と冷却ジャケット21の内管25との隙間に存在する空気の単純な熱伝導だけでは発光管2で発生する熱を冷却ジャケット21に伝達することができないので、高圧放電ランプ1の発光管2と冷却ジャケット21の内管25との隙間に冷却風を流して冷却効率を高めている。しかし、放電ランプの発光管2と冷却ジャケット21の内管25との隙間を進む冷却風は、入射側と出射側で温度が不均一になり、それに伴って発光管2の温度も不均一になってしまう。
【特許文献1】特開平6−267512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、発光管2と冷却ジャケット21との隙間に冷却風を流すことなく発光管2の冷却を行うために、発光管2と冷却ジャケット21の間隔を小さくすることが提案されている。発光管2と冷却ジャケット21との隙間を平均約50μmとすることで、発光管2の内径3.4mm(発光管2の外径7.4mm)の高圧放電ランプ1において、入力を250W/cmとしても発光管2の内表面温度を800℃程度に冷却することができる。
【0005】
高圧放電ランプ装置は、半導体等の露光装置用光源として使用される時、処理中以外のワーク入れ替えなどの待機中は、節電のため、図7に示すように、ランプに投入する入力電力を下げて点灯する。待機電力は低ければ低いほど節電効果が大きいことから、待機電力の低電力化が望まれている。
しかしながら、待機モード時の待機電力を下げすぎると、発光管2の内表面温度が低下してしまい、発光管2内の封入された水銀の未蒸発が発生する。水銀の未蒸発が発生すると、待機モードから処理モードへ移行するときの立ち上がり時間が遅くなることや、放電が維持できなくなり立ち切れしてしまうといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、待機モードの待機電力を下げつつ、処理モードにおいて、短時間で立ち上がり、立ち切れしない高出力点灯ができる高圧放電ランプおよび高圧放電ランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明は、一対の電極が対向配置され、水銀が封入された発光管と、前記発光管の外側に形成された直管状の外管を備え、前記発光管の両端で前記外管が固定されている高圧放電ランプにおいて、前記発光管の外表面、または、前記外管の内表面に、凸部が形成されていることを特徴とする。
また、本願第2の発明は、本願第1の発明において、前記凸部は、外管の内表面に螺旋状の筋を設けることにより形成されることを特徴とする。
また、本願第3の発明は、本願第1の発明において、前記凸部は、発光管の外表面を、管軸方向に垂直に切断した断面において断面多角形状にすることにより形成されることを特徴とする。
また、本願第4の発明は、本願第1〜3の発明において、前記外管の内径と前記発光管の外径との差は200μm以下であり、前記凸部の高さは200μm以下であることを特徴とする。
また、本願第4の発明は、本願第1〜4の発明のいずれかに記載の高圧放電ランプを、冷却ジャケットの内部に配置し、前記外管の壁面に沿って冷却媒体が流過されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る高圧放電ランプおよび高圧放電ランプ装置によれば、外管の内表面、または、発光管の外表面に凸部を形成することによって、放電空間内における最冷点の温度を上げることができるので、待機電力を下げても発光管の内表面温度を高く維持することができ、発光管内の封入された水銀の未蒸発の発生を抑制することができる。したがって、待機モードの待機電力を下げつつ、処理モードにおいて、短時間で立ち上がり、立ち切れしない高出力点灯ができる高圧放電ランプを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の高圧放電ランプ装置の構成を示す説明用断面図である。
高圧放電ランプ装置は、冷却ジャケット21の内部に、発光管2の外側に外管3が配置された高圧放電ランプ1を挿通して構成される。冷却ジャケット21は、高圧放電ランプ1から放射される紫外線を透過する材料、例えば石英ガラスにより構成されている。冷却ジャケット21の両端には、冷却媒体を供給する供給流路22と、冷却媒体を排出する排出流路23が形成される。供給流路22および排出流路23は全体が略L字型の管状であり、冷却ジャケット21および高圧放電ランプ1を保持固定している。軸方向内方側の口締め部24aによって、Oリングを介して冷却ジャケット21の外周面が保持固定されている。軸方向外方側の口締め部24bによって、Oリングを介して高圧放電ランプ1の外周面が保持固定されている。
【0010】
高圧放電ランプ1の点灯時において、冷却媒体が図示しないポンプによって供給される。高圧放電ランプ1の冷却は、冷却媒体を例えば5L(リットル)/minの流量で循環させることによって達成される。また、冷却媒体には、水、純水、逆浸透膜透過水等が好適である。
【0011】
図2は、本発明の高圧放電ランプ1の構成を示す説明用断面図である。
高圧放電ランプ1は、両端が封止された、例えば石英ガラスからなる直管状の発光管2の内部に、各々例えばタングステンからなる一対の棒状の電極4が対向配置されている。各電極4は金属箔5の一端に接続し、金属箔5の他端には外部リード6が接続されている。金属箔5はモリブデンよりなり、発光管2の両端に形成されたロッド状の封止部7に気密に埋設されている。外部リード6は、封止部7の外方においてサポーター9によって被覆され、大径になっている。封止部7は、例えば、発光管2の構成材料であるパイプ体における両端部を溶融状態にして内部を減圧するシュリンクシール法により形成されたものであり、発光管2の中央部(発光領域に相当する部分)より小径とされている。
【0012】
高圧放電ランプ1は、例えば「キャピラリーランプ」と称される高圧水銀ランプとして構成されており、発光管2の内部には、例えば1mg/cc以上の水銀、あるいは水銀と共に鉄、コバルト、ニッケル、鉛、ガリウム、マグネシウム、錫、タリウム、マンガン等の金属ハロゲン化物のうち少なくとも一種類以上が添加、封入されると共にアルゴンガスなどの希ガスが適宜の量で封入されている。そして、例えば波長が200〜450nmの紫外線を含む光を放射する。
【0013】
高圧放電ランプ1の発光管2の外側に、円筒状の石英ガラス等の透明な材料よりなり、内径寸法が管軸方向に対して均一な直管状の外管3が形成される。外管3の外表面に沿って冷却媒体を流過させて、高圧放電ランプ1が冷却される。発光管2の両端近傍から外部リード6を被覆するサポーター9の一部にわたって、外管3との間にベース8が挿入され、ベース8を介して接着剤により発光管2と外管3とが気密に固定されている。発光管2と外管3との間の隙間には、空気層または適宜のガスによるガス層が形成されている。
【0014】
高圧放電ランプ1の発光管2は、発光領域に相当する中央部より封止部7の方が小径となるように構成されているので、中央部において外管3に近接し、封止部7において外管3と離間している。そのため、高圧放電ランプ1の発光管2の中央部において、冷却媒体により十分に冷却して、過熱による発光管2の破損を防止できる。さらに、高圧放電ランプ1の発光管2の封止部7において、冷却作用が弱められるので、過冷却されることを確実に防止して、水銀の未蒸発に起因する照度低下を防止できる。
【0015】
上記高圧放電ランプ1の一構成例を示すと、発光管2における中央部の内径がφ3.4mm、発光管2における中央部の外径がφ7.4mm、封止部7の外径がφ6mm、発光管2の全長が150mm、電極4間距離が100mm、放電空間10内に位置される電極4部分の長さが3mm、水銀の封入量が44mg/mmである。外管3の外径がφ9.5mm、外管3の内径がφ7.4mmである。
ランプ点灯時における高圧放電ランプ1の定格電圧が2000V、定格電流が1.25Aであり、入力電力が2500Wである。
【0016】
図3は、本発明の高圧放電ランプ1の中央部を示す拡大断面図である。図3(a)は高圧放電ランプ1を管軸に垂直に切断したときの拡大断面図であり、図3(b)は高圧放電ランプ1を管軸に平行に切断したときの接触部分17の拡大断面図である。
高圧放電ランプ1は、発光管2と外管3の間の隙間14が平均50μm程度と非常に狭いので、発光管2と外管3の軸中心を一致させても、石英ガラスが有する寸法誤差等のため、発光管2と外管3が接触する領域が発生してしまう。図3(a)に示すように、発光管2が外管3の中心より下側に偏って配置され、下側の発光管2と外管3との隙間dが、上側の発光管2と外管3との隙間Dより小さくなっている。下側の発光管2の外表面12は、冷却媒体により冷却されている外管3までの距離が短いので、上側の発光管2の外表面12に比べて冷却効果が高い。したがって、発光管2の外表面12と外管3の内表面13とが接触する接触部分17における発光管2の内表面11が最も冷却効果が高く、放電空間10内における最冷点となる。逆に、発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間の隙間Dが最も大きくなる部分における発光管2の内表面11が最も冷却効果が低く、放電空間10内における最温点となる。
【0017】
図3(b)に示すように、高圧放電ランプ1の管軸方向に沿って切断した断面において、外管3の内表面13に軸方向に周期的に凸部15が発生するように形成されている。具体的には、円筒状の外管3の内表面13において、凸部15が螺旋状の筋となって形成されている。凸部15の高さhは10〜200μmであり、隣接する凸部15との間隔Pは0.1〜2mmである。外管3の内表面13に凸部15が形成されているので、接触部分17といえども拡大してみると、凸部15においては発光管2の外表面12と外管3の内表面13が接触しているが、凸部15以外の部分では発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間に隙間が発生し、空気層16が存在する。発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間の隙間dが最も小さくなる接触部分17においても、発光管2の外表面12と外管3の内表面13は密着して面接触しているわけではなく、発光管2の外表面12と外管3の内表面13は凸部15において接触する線接触または点接触となり、接触箇所と空気層16部分が存在する。
【0018】
図3(a)に示すように、上側の発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間の隙間Dは、発光管2の外表面12と外管3の内表面13との接触部分17に対向するため、最も大きくなる。しかし、接触部分17の発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間の間隔が凸部15の高さh程度あるので、隙間14が最も大きくなる部分の発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間の隙間Dも、外管3の内径Rと発光管2の外径rとの差から、凸部15の高さhを引いた値((R−r)−h)となる。
このように、発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間の隙間dが最も小さくなる接触部分17において、隙間dが凸部15の高さh程度あるので、発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間の隙間Dが最も大きくなる部分において、外管3の内表面13に凸部15が形成されていない場合に比べて、隙間Dが凸部15の高さhだけ小さくなる。
【0019】
放電空間10内における最冷点となる隙間14が最も小さくなる接触部分17において、発光管2の外表面12と外管3の内表面13は凸部15において接触する線接触または点接触となるので、外管3との間に空気層16が存在し、冷却媒体により冷却されている外管3との距離が大きくなるので、最冷点の温度が上がる。また、凸部15が円筒状の外管3の内表面13において螺旋状の筋となるように形成されているため、外管3の内表面13のどの箇所に接触部分17が形成されても、必ず空気層16が存在し、発光管2の外表面12と外管3の内表面13とが密着することがない。一方、放電空間10内における最温点となる隙間14が最も大きくなる部分Dは、外管3との距離がわずかに小さくなるが、外管3との間に隙間14による空気の層が存在するため、最温点の温度は凸部15の有無に係わらずほとんど変動しない。したがって、外管3の内表面13に凸部15を形成することによって、最冷点と最温点の温度差を小さくすることができる。
【0020】
外管3の内表面13に凸部15を形成することによって、放電空間10内における最冷点の温度を上げることができるので、待機電力を下げても発光管2の内表面11の温度を高く維持することができ、発光管2内の封入された水銀の未蒸発の発生を抑制することができる。したがって、待機モードの待機電力を下げつつ、処理モードにおいて、短時間で立ち上がり、立ち切れしない高出力点灯ができる高圧放電ランプ1を実現できる。
【0021】
図4は、本発明の高圧放電ランプ1を製作する方法を説明するための説明図である。
この高圧放電ランプ1は、次のようにして作製することができる。
まず、金属箔5の両端に、ロッド状の電極4と外部リード6とを電気的に接続し、電極4構造体を2つ作成する。円筒状の石英ガラス管の内部に、適宜の量の水銀等を封入すると共に電極構造体を石英ガラス管の両側から挿入し、シュリンクシール法により石英ガラス管の両端部を封止する。このようにして、内部に封入物および電極4を備える発光管2が作成される。
【0022】
図4(a)に示すように、発光管2の外表面12に直径80μmのカーボン線30を2mm間隔で螺旋状に巻く。便宜上、図面の上ではカーボン線30を拡大して描画している。一方、発光管2の外径寸法より大きい内径寸法を有する円筒状の石英ガラス管31を用意し、片方のみを封止する。カーボン線30が巻回された発光管2を石英ガラス管31の中に入れ、石英ガラス管31の内部を減圧して回転させる。酸水素バーナーを軸方向にスキャンさせて、石英ガラス管31の外側から加熱して、石英ガラス管31を焼き縮めて外管3が形成される。このとき、外管3は、発光管2との隙間14がカーボン線30よりも狭くなるまで焼き縮める。
【0023】
図4(b)に示すように、外管3が十分に焼き縮められたら、外管3の両端を切断して、両端開口の円筒管形状にする。そして、高圧放電ランプ1を大気圧雰囲気で1000℃の電気炉中で3時間加熱する。この加熱により、カーボン線30が焼き飛ばされる。外管3と発光管2との隙間14に存在したカーボン線30がなくなり、外管3の内表面13に螺旋状の筋が設けられることよりなる凸部15が形成される。図示のように高圧放電ランプ1の管軸に沿って切断した断面において、外管3の内表面13に凸部15が管軸方向に周期的に複数形成される。螺旋状の筋よりなる凸部15は、このようにカーボン線30を巻きつけて加工することによって容易に形成することができる。また、上述のように石英ガラス管31を焼き縮めて外管3を形成すると、カーボン線30がスペーサーの役割もするので、外管3と発光管2の間隔をほぼ一定のパターンで制御できる。そのため、発光管2と外管3が密着する領域が発生せず、冷却の偏りなどが解消され、高圧放電ランプ1のばらつきも抑えることができる。
【0024】
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、本発明の高圧放電ランプ1の中央部において、高圧放電ランプ1を管軸に垂直に切断したときの発光管2の外表面12と外管3の外表面12との接触部分17を示す一部拡大断面図である。
第2の実施形態の高圧放電ランプ1は、外管3の内表面13が滑らかな面となっていて、発光管2の外表面12が断面多角形状となっていることを除いて、第1の実施形態の高圧放電ランプ1と同様の構成を有するものである。第2の実施形態について、第1実施形態の高圧放電ランプ1と同一の構成部材の説明は省略する。
【0025】
図5に示すように、発光管2の外表面12が、高圧放電ランプ1の管軸方向に垂直に切断した断面において、発光管2の外周が断面多角形状に形成され、その頂部が凸部18となるように形成されている。具体的には、円筒状の発光管2の外表面12が、軸方向に長い断面多角形状となるように形成されている。10〜60個の角を有する多角形であり、凸部18の高さhは10〜200μmであり、隣接する凸部18の間隔Pは0.5〜2mmである。凸部18となっている部分が発光管2の厚さが最大となっており、発光管2の外表面12と外管3の内表面13とが接触している。凸部16以外の部分では発光管2の厚さが薄くなっており、発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間に空気層16が形成される。
【0026】
発光管2の外表面12と外管3の内表面13とが接触する凸部18は、冷却媒体により冷却されている外管3までの距離が短く、発光管2が外管3によって直接冷却される。凸部18における発光管2の内表面11は、冷却効果が最も高い。一方、凸部18の隣接部分20は、発光管2の外表面12と外管3の内表面13との間に空気層16が形成され、冷却媒体により冷却されている外管3までの距離が遠くなる。発光管2は空気層16によって間接冷却されることになるので、発光管2の内表面11の冷却効果が弱まる。そのため、隣接部分20における発光管2の内表面11の温度は、凸部18の内表面13ほど下がらない。
また、凸部18が発光管2の外周を断面多角形状にすることによって形成されているため、外管3の内表面13のどの箇所に接触部分17が存在しても、必ず空気層16が存在し、発光管2の外表面12と外管3の内表面13とが密着することがない。
【0027】
接触部分17においても、発光管2の外表面12と外管3の内表面13は密着して面接触しているわけではなく、発光管2の外表面12と外管3の内表面13は凸部18において接触する線接触または点接触となり、接触箇所と空気層16部分が存在する。空気層16を有する隣接部分20における発光管2の内表面11の温度は、凸部18における発光管2の内表面11の温度より高くなるので、凸部18における発光管2の内表面11を温めて、接触部分17の全体としての発光管2の内表面11の温度を高くすることができる。したがって、放電空間10内における最冷点となる接触部分17における発光管2の内表面11の温度を、発光管2の外表面12に凸部18を形成しない場合に比べて、上げることができる。
発光管2の外表面12に凸部18を形成することによって、放電空間10内における最冷点の温度を上げることができるので、待機電力を下げても発光管2の内表面11の温度を高く維持することができ、発光管2内の封入された水銀の未蒸発の発生を抑制することができる。したがって、待機モードの待機電力を下げつつ、処理モードにおいて、短時間で立ち上がり、立ち切れしない高出力点灯ができる高圧放電ランプ1を実現できる。
【0028】
続いて、実施例について説明する。
<実施例1>
第1の実施形態に示す高圧放電ランプを用いた高圧放電ランプ装置を作成し、実験対象とした。実験対象として用いた高圧放電ランプの仕様を以下に示す。
発光管:石英ガラス製、中央部の内径φ8mm、中央部の外径φ12mm、封止部の外径:φ6mm、発光長100mm
外管:石英ガラス製、内径φ12.1mm、外径φ14.1mm
凸部:高さ50μm、管軸方向の間隔2mm
電極:タングステン製、電極間距離100mm、放電空間10内に位置される電極部分の長さ3mm
封入物:水銀7.5mg/cc、アルゴンガス100Torr
なお、凸部は発光管の外表面に直径80μmのカーボン線を2mm間隔でコイル状に巻いて、上述した方法により形成した。
処理モードで30秒間点灯し、続いて待機モードで30秒間点灯し、処理モードと待機モードとが交互になるように点灯した。処理モード時において、高圧放電ランプの入力電力が3000W(300W/cm)となるように点灯した。待機モード時において、高圧放電ランプの入力電力が2000W(200W/cm)となるように点灯した。
冷却ジャケットには、冷却媒体として、水を5L/minの流量で循環させた。
また、比較対象として、外管の内表面に凸部が形成されていないことを除いて、実験対象と同様の仕様の高圧放電ランプ1を作成した。
【0029】
外管の内表面に凸部が形成された実験対象の高圧放電ランプは、発光管の内表面における温度が、処理モードでは、接触部分で700℃となり、隙間の最大部分で1000℃となった。また、待機モードでは、接触部分で540℃となり、隙間の最大部分で800℃となった。
外管の内表面に凸部が形成されていない比較対象の高圧放電ランプは、発光管の内表面における温度が、処理モードでは、接触部分で550℃となり、隙間の最大部分で1000℃となった。また、待機モードでは、接触部分で430℃となり、隙間の最大部分で800℃となった。
外管の内表面に凸部が形成された実験対象の高圧放電ランプは、最冷点となる接触部分の温度が、比較対象の高圧放電ランプに比べて、処理モードでは150℃高く、待機モードでは110℃高くなった。
【0030】
放電空間内の温度が400℃以下になると、封入されている水銀の未蒸発が発生して、待機モードから処理モードへ移行するときの立上り時間の遅延や、放電を維持できなくなる立ち切れが発生する。本実験結果より、外管の内表面に凸部が形成された実験対象の高圧放電ランプは、高圧放電ランプの点灯中に放電容器内の温度が最も低くなる待機モード時における接触部分の温度が540℃であり、最冷点温度が400℃より140℃高くなることがわかった。これより、外管の内表面に凸部が形成された実験対象の高圧放電ランプは、待機モードの入力電力を200W/cmより小さくして、待機モード時における接触部分の温度がさらに低下するような条件で点灯しても、水銀の未蒸発分が発生しないことが予測された。
【0031】
<実験例2>
実験例1の実験結果からの予測から、外管の内表面に凸部が形成された実験対象の高圧放電ランプ装置を、待機モードの入力電力を小さくして点灯することにした。実験対象として用いた高圧放電ランプの仕様は、実験例1と同様とした。また、高圧放電ランプ装置の冷却条件も、実験例1と同様とした。なお、高圧放電ランプの点灯条件は、次のようにした。
処理モードで30秒間点灯し、続いて待機モードで30秒間点灯し、処理モードと待機モードとが交互になるように点灯した。処理モード時において、高圧放電ランプの入力電力が3000W(300W/cm)となるように点灯した。待機モード時において、高圧放電ランプの入力電力が1500W(150W/cm)となるように点灯した。
すなわち、待機モードの入力電力を下げたことを除いて、高圧放電ランプの点灯条件も、実験例1と同様とした。
【0032】
外管の内表面に凸部が形成された実験対象の高圧放電ランプは、待機モードの入力電力を150W/cmとしても、水銀の未蒸発分が発生しなかった。水銀の未蒸発分が発生しないので、待機モードから処理モードへの移行も、立上り時間が短いまま維持できた。また、処理モードにおいては、待機モードの入力電力値にかかわらず、高い入力電力で高出力点灯ができた。
したがって、待機モードの待機電力を下げても、水銀の未蒸発分が発生しないので、待機モードから処理モードへ短時間で立ち上がり、処理モードにおいて立ち切れしない高出力点灯ができる高圧放電ランプを実現できることが確かめられた。
【0033】
実験例1の結果によれば、外管の内表面に凸部が形成されていない高圧放電ランプでは、入力電力を200W/cmとすると、放電空間内の最冷点となる接触部分の発光管の内表面温度が430℃となる。入力電力値をこれ以上小さくすると、放電空間内の最冷点温度が下がって水銀の未蒸発が発生してしまう。すなわち、外管の内表面に凸部が形成されていない高圧放電ランプでは、待機モードにおける入力電力の最低値が200W/cmであった。
一方、実験例2の結果により、外管の内表面に凸部が形成された実験対象の高圧放電ランプは、待機モードの入力電力を150W/cmとできることが確かめられた。これより、凸部が形成されていない従来技術に係る高圧放電ランプに比べて、待機モードの入力電力を75%に低減できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の高圧放電ランプ装置の構成を示す説明用断面図
【図2】本発明の高圧放電ランプの構成を示す説明用断面図
【図3】本発明の高圧放電ランプの中央部を示す拡大断面図
【図4】本発明の高圧放電ランプを製作する方法を説明するための説明図
【図5】本発明の高圧放電ランプの中央部を示す拡大断面図
【図6】従来における高圧放電ランプ装置の構成の概略を示す説明図
【図7】高圧放電ランプ使用時の入力電力を示す説明図
【符号の説明】
【0035】
1 高圧放電ランプ
2 発光管
3 外管
4 電極
14 隙間
15 凸部
16 空気層
17 接触部分
21 冷却ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極が対向配置され、水銀が封入された発光管と、前記発光管の外側に形成された直管状の外管を備え、前記発光管の両端で前記外管が固定されている高圧放電ランプにおいて、
前記発光管の外表面、または、前記外管の内表面に、凸部が形成されていることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記凸部は、外管の内表面に螺旋状の筋を設けることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記凸部は、発光管の外表面を、管軸方向に垂直に切断した断面において断面多角形状にすることにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
前記外管の内径と前記発光管の外径との差は200μm以下であり、前記凸部の高さは200μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の高圧放電ランプを、冷却ジャケットの内部に配置し、前記外管の壁面に沿って冷却媒体が流過されることを特徴とする高圧放電ランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−104839(P2009−104839A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273951(P2007−273951)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】