説明

高度に架橋され、化学的に構造化された単層

本発明は、低分子量芳香族化合物から構成され、横方向に高度に架橋された構造化単層であって、2つの表面のうちの1つの上に官能基のパターンを有する、構造化単層、このような構造化単層を製造するプロセス、及びまたその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子芳香族化合物から構成され、横方向に高度に架橋された構造化単層であって、2つの表面のうちの1つの上に官能基のパターンを有する構造化単層、及びこのような構造化単層を調製する方法、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の従来技術によれば、表面は大抵、物理吸着した液体薄膜(例えば油、ワックス)、又は表面上に適用したポリマー塗料により、腐食の影響、及び摩擦により引き起こされる機械的ストレスから保護されている。これらの従来の膜は通常、数マイクロメートルから数ミリメートルまでの範囲の層厚を有する。しかしながら、それらの厳密な層厚を手順の観点から制御することは困難である。
【0003】
従来技術の架橋されていない単層、特に脂肪族炭化水素鎖に基づく単層は、機械的安定性が低く、それ故に不十分な保護効果しかもたらさない。さらに、架橋されていない単層は、腐食因子と接触すると、欠損部位における個々の分子が表面から動きこれらの部位から層の脱離が続くため、脱着する。種々の基板上にこのような有機分子の架橋されていない単層を調製する従来方法は、例えば非特許文献1及び非特許文献2に、より詳細に記載されている。
【0004】
これらの問題を解決するために、特許文献1により、表面を修飾した層系であって、基板、並びに少なくともその上に部分的に配置された、低分子芳香族化合物及び/又は複素環式芳香族化合物から構成され、横方向に架橋され、固定基(anchor groups)を介して基板の少なくとも1つの表面と共有結合した、単層を含む、表面を修飾した層系が提案されている。低分子芳香族化合物及び/又は複素環式芳香族化合物から構成され、横方向に架橋されたこれらの層系の単層は、架橋された固体の特徴を有しており、それ故に対応する基板の表面を摩擦及び腐食による損傷から保護する。このような系は、作動距離の小さい(マイクロメートル若しくはナノメートルの範囲の)機械的に動く機器、例えば電子データ記憶のためのハードディスクドライブの、又は大きさがマイクロメートル以下の範囲の可動部分を有する微小機械的機器の表面保護に特に好適である。
【0005】
しかしながら、これらの表面を修飾した層系の欠点は、微細に集束させた電離放射線による又はシャドーマスクを使用することによる架橋により、これらが架橋に関して側方構造を有することがあるが、横方向に架橋された単層は均一又は均質な表面を有するため表面構造を全く有しないことである。したがって、さらなるナノ物体(nanoobjects)を、特定のパターンにおいてこの架橋された表面と結合させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第199 45 935号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A. Ulman, “An Introduction to Ultrathin Films”, Academic Press, Boston 1991
【非特許文献2】A. Ulman, Chem. Rev. 1996, 96, 1533
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、架橋された芳香族化合物及び/又は複素環式芳香族化合物の機械的に安定な2次元の超薄層であって、その表面上にさらなるナノ物体、例えば高分子、官能化ナノ粒子又はタンパク質を任意のパターンにおいて選択的に固定することができる、超薄層を提供することが本発明の目的である。
【0009】
この目的は、特許請求の範囲において特徴づけられる実施の形態により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
低分子芳香族化合物から構成され、横方向に高度に架橋された構造化単層であって、2つの表面のうちの1つの上に官能基のパターンを有する、構造化単層が、特に提供される。
【0011】
本発明の範囲内において、「低分子芳香族化合物」という用語は、オリゴマー形態又はポリマー形態で存在しないような芳香族の化合物を指定する。この用語はさらに、高エネルギー放射線により処理した後、芳香族化合物が互いに架橋される可能性を含む。本発明の範囲内において、「芳香族化合物」という用語は、「複素環式芳香族化合物」という用語も含み、すなわち「芳香族化合物」という用語は、ヘテロ原子を含有しない、又は少なくとも1つの芳香環に1つ若しくは複数のヘテロ原子を含有する芳香族の化合物を指定する。好ましくは、前記単層は、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン、ビピリジン、テルピリジン、チオフェン、ビチエニル、テルチエニル、ピロール、及びそれらの組合せからなる群から選択される芳香族化合物から構成される。本発明の特に好ましい1つの実施の形態では、単層はビフェニルから構成される。これは、横方向の架橋性に関して、特に有利である。さらに、ビフェニルから構成される単層は、機械的に極めて安定である。単層が少なくとも2つの異なる芳香族化合物を含有することも可能である。例えば、単層の一方の領域がビピリジンから構成されており、単層の別の領域がビフェニルから構成されていてもよい。
【0012】
本発明による単層は、横方向に高度に架橋されている。横方向の架橋により、低分子芳香族化合物から構成される単層に、高い機械的安定性及び化学的安定性がもたらされる。好ましくは単層は、電子放射線、プラズマ放射線、X線、β放射線、γ放射線、UV放射線、又はEUV放射線(「極UV」、スペクトル範囲はおよそ1nm〜およそ50nmである)で処理することにより架橋される。
【0013】
本発明による単層の2つの表面のうちの1つは、官能基のパターンを有する。本発明の範囲内において、官能基のパターンは表面の化学的構造であると理解され、ここで官能基はこの化学的構造を表し、これにより単層の表面上において所望のパターンを形成する。この構造又はパターンは、官能基によって表面を部分的に官能化することにより得られる。特に、標的指向的なパターンを有する単層は、このようにして官能基から得ることができる。ここでは官能基は各々が芳香族化合物と結合している。それに対して、従来技術のコーティング系は、官能基による全体的な被覆を示すのみであり、パターンは形成されない。従来技術のコーティング系が、官能基のパターンを有する化学的に構造化された表面を有することは可能である。しかしながらこの場合、単層は、横方向に高度に架橋されず、機械的安定性の低減という欠点をもたらす。
【0014】
官能基は、照射により切断されず、さらなる反応(例えばさらなる分子を単層と結合させるための)に好適な、全ての官能基であり得る。好ましくは、官能基は、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、シアノ基、チオール基、ヒドロキシ基、及びそれらの組合せから選択される。特に好ましくは、前記単層は、2つの表面のうちの1つの上に前記官能基としてのアミノ基のパターンを有する。
【0015】
パターンが形成される領域における芳香族化合物は、パターンが形成されない領域における芳香族化合物と同一であってもよく、又はこれと異なっていてもよい。
【0016】
使用される芳香族化合物に依存して、本発明による単層は、任意の好適な厚みを有し得る。好ましくは、本発明による単層は、0.1nm〜10nmの範囲の、特に好ましくは0.3nm〜3nmの範囲の層厚を有する。
【0017】
本発明のさらに好ましい1つの実施の形態では、官能基のパターンを有しない前記単層の表面は、固定基を介して基板の少なくとも1つの表面と共有結合している。この場合、単層は非拘束の状態では(freely)、例えばシートの形態では存在しないが、基板と結合するとコーティング又はカバーを表す。従来のコーティング系(例えば物理吸着した液体薄膜又はポリマー塗料に基づく)とは対照的に、本発明による単層の厚みは、固定基を介して基板表面と共有結合し、横方向に架橋された単層を形成する分子の空間的伸長により厳密に制御又は調整することができる。基板との共有的な結合により、単層は、基板に高い機械的安定性及び化学的安定性を付与し、基板表面を摩擦又は腐食因子による損傷から効果的に保護する。
【0018】
本発明により使用される基板は、少なくとも1つの表面を有しており、任意の好適な材料から構成され得る。好ましくは前記基板は、金、銀、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、タングステン、モリブデン、白金、アルミニウム、鉄、鋼、ケイ素、ゲルマニウム、リン化インジウム、ヒ化ガリウム、窒化ケイ素、及びそれらの酸化物又は合金又は混合物、並びに酸化インジウムスズ(ITO)ガラス及びケイ酸ガラス又はホウ酸ガラスからなる群から選択される。特に好ましくは前記基板は金でコーティングされたケイ素であり、ケイ素と金層との間にさらにチタンプライマーを有する。
【0019】
基板材料の表面が原子的に平坦かつ均質である場合、すなわち該表面が如何なる端部の転位又は欠損をも有しない場合、保護層も同様に原子的に平坦であり、均質であり、欠損を有さず、また保護対象の基板表面上にほぼ理想的に滑らかな保護膜を形成する。保護層は、ほぼ理想的に、基板の形態に適合する。このようにして、3次元の表面形態を有する物体も同様に、規定の厚みを有する架橋された保護層により被覆することができる。
【0020】
本発明による単層は、電子又は正孔の通過により電気伝導性も示し得る。これにより、安定な保護層により表面を通じた電荷の通過が制御される機器において、例えばコーティングされた電子構成部品又は電極において、本発明による単層を使用することが可能となる。
【0021】
低分子芳香族化合物を基板と共有結合させるのに好適な全ての基が、固定基の役割を果たすことができる。好ましくは、前記固定基は、カルボキシ基、チオール基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、ホスホネート基、ヒドロキサム酸基及びホスフェート基からなる群から選択される。特に好ましい1つの実施の形態では、前記固定基はチオール基である。本発明の好ましい1つの実施の形態では、前記固定基は、1個〜10個のメチレン基の長さを有するスペーサーを用いて、低分子芳香族化合物から構成され、横方向に架橋された前記単層と共有結合している。
【0022】
当業者に既知のように、固定基の性質は、それぞれの基板材料に合わせて調整される。例えば、トリクロロシラン又はトリアルコキシシラン、例えばトリメトキシシラン、トリエトキシシラン等は、酸化ケイ素の表面に対する固定基として特に好適である。水素化ケイ素の表面に対しては、アルコール基を固定のために使用することができる。金及び銀の表面に対しては、チオール基が固定基として好適であり、例えば、鉄又はクロム等の酸化金属の表面に対しては、ホスホン酸、カルボン酸又はヒドロキサム酸が好適である。
【0023】
本発明の特に好ましい1つの実施の形態では、構造化単層は、固定基としてチオール基を介して、対応する基板表面、例えば金又は銀の表面と共有結合した、ビフェニル単位から構成される単層を含む。
【0024】
さらに好ましい1つの実施の形態では、本発明による単層は、表面が官能基のパターンを有しない領域において、ハロゲン原子、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、チオール基、ヒドロキシ基又はカルボニル基から選択されるさらなる官能基を保有し得る(ただし、該官能基は、パターンを形成する官能基とは異なる)。したがって、構造化単層であって、その表面が複数の官能基による全体的な被覆を示し、一方の種類の官能基によりパターンが形成され、残りの表面がそれとは異なる種類の官能基を有する、構造化単層が提供される。
【0025】
さらに、本発明は、低分子芳香族化合物から構成され、横方向に高度に架橋された、2つの表面のうちの1つの上に官能基のパターンを有する構造化単層を調製する方法であって、
(a)基板を用意する工程、
(b)必要に応じて前記基板の少なくとも1つの表面を修飾する工程、
(c)固定基を介して結合することにより、前記基板の、少なくとも1つの必要に応じて修飾した表面に、低分子芳香族化合物の単層を適用する工程、
(d)低分子芳香族化合物から構成される前記単層が特定の領域において横方向に選択的に架橋されることによりパターンを形成し、それにより架橋された領域及び架橋されていない領域を有する単層が形成されるように、工程(c)において得られる前記基板を高エネルギー放射線により処理する工程、
(e)前記架橋されていない低分子芳香族化合物の、少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物への交換が起こるように、工程(d)において得られる前記基板を少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物により処理する工程、並びに
(f)前記交換された少なくとも1つの官能基を有する芳香族化合物の、互いの間における、及び工程(d)において架橋された芳香族化合物との架橋が起こるように、工程(e)において得られる前記基板を高エネルギー放射線により処理する工程
を含む、方法に関する。
【0026】
工程(a)において用意される基板は、少なくとも1つの表面を有しており、任意の好適な材料から構成され得る。好ましくは、前記基板は、金、銀、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、タングステン、モリブデン、白金、アルミニウム、鉄、鋼、ケイ素、ゲルマニウム、リン化インジウム、ヒ化ガリウム、窒化ケイ素、及びそれらの酸化物又は合金又は混合物、並びに酸化インジウムスズ(ITO)ガラス及びケイ酸ガラス又はホウ酸ガラスからなる群から選択される。特に好ましくは、前記基板は金でコーティングされたケイ素であり、ケイ素と金層との間にさらにチタンプライマーを有する。
【0027】
その後、固定基を介して低分子芳香族化合物の単層を基板と共有結合するために、本発明による方法の工程(b)において、基板表面を必要に応じて事前に修飾することができる。修飾は、化学的修飾及び/又は洗浄を含み得る。洗浄は、水若しくは有機溶媒、例えばエタノール、アセトン若しくはジメチルホルムアミドで表面を単にリンスすることにより、又はUV放射線によって作り出される酸素プラズマでの処理により、行うことができる。特に好ましくは、最初にUV放射線での処理を行い、その後エタノールでリンスした後窒素流中における乾燥を行う。固定基、例えばホスホン酸基、カルボン酸基又はヒドロキサム酸基を用いて単層を酸化金属の表面に適用する場合、金属表面を予め制御酸化することが有利である。これは、酸化剤、例えば過酸化水素、カロ酸又は硝酸で金属表面を処理することにより達成することができる。基板表面を修飾することのさらなる可能性は、末端反応性基、例えばアミノ基、ヒドロキシ基、クロロ基、ブロモ基、カルボキシ基又はイソシアネート基を有する第1の有機単層を適用することであり、実際に架橋される単層は第2の工程において好適な官能基により該第1の有機単層と化学的に結合する。
【0028】
その後本発明による方法の工程(c)において、低分子芳香族化合物の単層を、固定基を介する結合を使用して、前記基板の、少なくとも1つの必要に応じて修飾した表面に適用する。好ましくは単層を、固定基を介する共有的な結合により基板の表面に適用する。単層の適用を、ディッピング法、キャスティング法若しくはスピンコーティング法を使用して、又は溶液からの吸着により、行うことができる。このような方法は、従来技術から既知である。好ましくは、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン、ビピリジン、テルピリジン、チオフェン、ビチエニル、テルチエニル、ピロール、及びそれらの組合せからなる群から選択される芳香族化合物の単層が適用される。本発明の特に好ましい1つの実施の形態では、前記芳香族化合物は、チオール基を介して前記基板と共有結合したビフェニルである。
【0029】
本発明の範囲内において、「少なくとも1つの官能基を有する芳香族化合物」という用語は、少なくとも1つの官能基を有するような芳香族化合物を指定する。官能基は、その後の照射により切断されず、さらなる反応(例えばさらなる分子を単層と結合させるための)に好適な、任意の官能基であり得る。好ましくは、官能基は、アミノ基、ニトロ基、カルボキシ基、シアノ基、チオール基、ヒドロキシ基、及びそれらの組合せから選択される。特に好ましくは、官能基はニトロ基である。本発明のさらに好ましい1つの実施の形態では、低分子芳香族化合物は、単層の形成後に単層の表面上に官能基が存在するように、末端位置に官能基を有する。
【0030】
それに対して、本発明の範囲内において、「芳香族化合物」という用語は、官能基を有しない、又はハロゲン原子、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、チオール基、ヒドロキシ基若しくはカルボニル基から選択される少なくとも1つの官能基を有するような芳香族化合物を指定する(ただし該官能基は、パターンを形成する上述の官能基とは異なる)。しかしながら、これらの芳香族化合物は、官能基を有さず、非置換の芳香族化合物のみを表すことが好ましい。
【0031】
本発明による方法の工程(d)では、工程(c)において得られる前記基板を、低分子芳香族化合物から構成される前記単層が特定の領域において横方向に選択的に架橋されることによりパターンを形成するように、高エネルギー放射線により処理する。それにより、架橋された領域及び架橋されていない領域を有する単層が形成される。好ましくは単層は、横方向に共有的に架橋される。この方法の工程では、単層の特定の一領域のみを選択的に照射して、それによりこの領域のみを横方向に架橋する。このようにして、単層の表面上に構造又はパターンが得られる。しかしながら、照射されていない領域は、架橋されないままである。好ましくは、電子放射線、プラズマ放射線、X線、β放射線、γ放射線、UV放射線又はEUV放射線により照射を行う。
【0032】
例えば、微細に集束させた電離電子、イオン又は光子放射線により、選択的な架橋を実施して、それにより構造を形成させることができる。構造化させる領域全体に対するビームの集束及び走査は、電子光学素子又はイオン光学素子により、例えば走査型電子顕微鏡による電子ビームリソグラフィにおいて又は集束イオン(FIB)によるリソグラフィにおいて、行うことができる。好ましくは、電子リソグラフィ、X線リソグラフィ又はEUVリソグラフィにより選択的照射を行う。好ましくは、構造化を、局所プローブプロセスにより行うこともできる。ここでは、電子、イオン又は光子の集束を、小型の電子源、イオン源又は光子源(局所プローブ)により確保する。その後局所プローブを、0.1nm〜1000nmの距離で、構造化させる領域全体に対して導く。電子に関して特に好適な局所プローブは、走査型トンネル顕微鏡(STM)、原子間力顕微鏡(AFM)のチップ、及び原子的に規定される電界エミッタチップ(例えば、Mueller et al., Ultramicroscopy 1993, 50, 57に記載の方法を使用して作製されている)を含む。後者は、プローブと試料との間のより大きな距離(>10nm)での構造化のための局所プローブとして特に好適であり、電界イオン源として使用することもできる。近接場光学顕微鏡(SNOM)において使用されるような、ガラス又は別の光子伝導材料から作製される微細チップは、光子による構造化に好適である。全ての局所プローブ法において、局所プローブを、位置決め装置、例えば圧電セラミック素子から作製される装置により、曝露される領域に対して直接位置決めする。特に好ましい1つの実施の形態では、STM、AFM及びSNOMからなる群から選択される局所プローブ法を使用して、選択的架橋を行う。
【0033】
本発明による方法のさらに好ましい1つの実施の形態では、基板表面に適用された単層の空間的に画定された領域のみが照射され、それにより基板上に構造化した表面が形成されるように、シャドーマスクを使用して、高エネルギー放射線による処理を実施する。電磁放射線(例えばX線、UV放射線、EUV放射線)による側方構造化による架橋のために、それぞれの波長範囲に好適なシャドーマスクと併せた従来技術において利用可能な光源、又は好適な光ガイドによる走査を、考えることができる。本発明による方法のさらに好ましい1つの実施の形態では、開放された領域のみが電子に曝露されるように、シャドーマスクと併せて大面積型照明用電子源を使用して、構造化を行う。
【0034】
本発明による方法の工程(e)では、工程(d)において得られる前記基板を、前記架橋されていない低分子芳香族化合物の、少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物への交換が起こるように、少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物により処理する。好ましい1つの実施の形態では、工程(e)において使用される低分子芳香族化合物は、工程(c)において使用される低分子芳香族化合物とは対照的に、少なくとも1つの官能基を有する。別の好ましい実施の形態では、工程(e)において使用される低分子芳香族化合物、及び工程(c)において使用される低分子芳香族化合物の両方が、少なくとも1つの官能基を有する(しかし、これらの官能基は異なるものである)。このようにして、構造化単層の表面上に同様にパターンがもたらされる。
【0035】
ディッピング法、キャスティング法若しくはスピンコーティング法を使用して、又は溶液からの吸着により、処理を行うことができる。好ましくは、溶液は希薄溶液である。本発明の別の好ましい実施の形態では、気相からの吸着により処理を行う。好ましくは、交換される基板上の架橋されていない芳香族化合物に対して、過剰の少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物(工程(e)において使用される)が存在して、それにより架橋されていない芳香族化合物の交換が促進される。例えば、工程(d)において選択的に架橋された単層を、好ましくは、交換を実施するために、他の官能化した芳香族化合物の高濃度溶液中に置く。好ましくは、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン、ビピリジン、テルピリジン、チオフェン、ビチエニル、テルチエニル、ピロール、及びそれらの組合せからなる群から選択される芳香族化合物が交換のために使用される。これらの芳香族化合物は各々が置換基として少なくとも1つの官能基を有する。官能基とは別に、芳香族化合物は、工程(c)において使用される芳香族化合物と同一であってもよく、又はこれと異なっていてもよい。本発明の特に好ましい1つの実施の形態では、4’−ニトロビフェニル−4−チオールが交換のために使用され、この場合、基板表面との結合はチオール基を介して実施される。交換のメカニズムは、例えばA. Turchanin et al., Appl. Phys. Lett. 2007, 90, 053102に記載されている。
【0036】
本発明による方法の工程(f)では、工程(e)において得られる前記基板の高エネルギー放射線処理を、前記交換された少なくとも1つの官能基を有する芳香族化合物の、互いの間における、及び工程(d)において架橋された芳香族化合物との架橋が起こるように、行う。
【0037】
好ましい1つの実施の形態では、工程(d)に関して上述したように、先に照射されていない領域の選択的照射を実施することができる。別の好ましい実施の形態では、この工程における照射を大きな領域に対して行う、すなわち基板の領域全体を照射する。好ましくは、電子放射線、プラズマ放射線、X線、β放射線、γ放射線、UV放射線又はEUV放射線により照射を行う。
【0038】
本発明による方法の好ましい1つの実施の形態では、大面積型照明用電子源、例えば「フラッドガン」、又はHild et al., Langmuir 1998, 14, 342-346の図2に記載されるような構築物を、電子による照射のために使用することができる。使用される電子エネルギーは、広範囲、好ましくは1eV〜1000eVにわたり、それぞれの有機膜及びそれらの基板に適合させることができる。例えば、金上のビフェニル−4−チオールを架橋するために、50eVの電子放射線を使用することができる。
【0039】
電磁放射線(例えばX線、UV放射線、EUV放射線)による大きな領域の架橋のために、従来技術において利用可能な光源を使用することができる。
【0040】
工程(c)及び/又は工程(e)において、低分子芳香族化合物の単層を適用する代わりに、例えば固定基により基板表面と共有結合した飽和した分子又は単位を適用する(該分子又は単位は、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、テルシクロヘキシル、部分的に若しくは完全に水素化されたナフタレン若しくはアントラセン、又は部分的に若しくは完全に水素化された複素環式芳香族化合物を含む)場合、工程(d)及び工程(f)における高エネルギー放射線による処理による横方向の架橋に加えて、対応する芳香族化合物又は複素環式芳香族化合物への脱水素を行うことができる。
【0041】
本発明による方法の好ましい1つの実施の形態によれば、官能基はニトロ基である。この場合、工程(f)における高エネルギー放射線による基板の照射により、ニトロ基をアミノ基へとさらに変換する。この還元の前に芳香族化合物中におけるC−H結合の切断が起こり、放出された水素原子がその後ニトロ基をアミノ基へと還元すると考えられる。
【0042】
さらに好ましい1つの実施の形態では、本発明による方法により得られる単層は、表面が官能基のパターンを有しない領域において、ハロゲン原子、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、チオール基、ヒドロキシ基又はカルボニル基から選択されるさらなる官能基を保有し得る(ただし、該官能基はパターンを形成する官能基とは異なる)。この目的のために、本発明による方法の工程(c)において、これらの他の官能基の少なくとも1つを有する芳香族化合物が使用され得る。
【0043】
使用される芳香族化合物に依存して、本発明による単層は、任意の好適な厚みを有し得る。好ましくは、本発明による単層は、0.1nm〜10nmの範囲の、特に好ましくは0.3nm〜3nmの範囲の層厚を有する。
【0044】
好ましい1つの実施の形態では、本発明による方法は、工程(f)の後に、前記基板を除去して基板と結合していない構造化単層を得る工程(g)をさらに含む。これは、エッチング除去(etching-away)によって基板を溶解することにより、又は固定基を介した単層と基板との間の結合を化学的に切断することにより、達成することができる。単層から基板を除去するための対応する方法は、従来技術から既知である。固定基としてチオール基を使用する場合、例えばヨウ素での処理により、これを達成することができる(例えばW. Eck et al., Adv. Mater. 2005, 17, 2583-2587を参照されたい)。
【0045】
基板の除去後、構造化単層は、コーティングの形態では存在せず、例えばシートの形態で又は膜の形態で存在する。特に、化学的に構造化されたナノメンブレンとして基板表面から単層を剥がすことが可能である。
【0046】
本発明による方法の好ましい1つの実施の形態は、図1において、より詳細に説明される。ここでは、先ず第1に基板表面を、ビフェニル−4−チオールで処理することにより単層でコーティングし、単層を電子衝撃によって選択的に架橋することにより構造を形成させる。この後、架橋されていないビフェニル−4−チオールを4’−ニトロビフェニル−4−チオールへと交換する。2回目の照射により、ニトロ基からアミノ基への化学的変換、交換された領域の架橋、及び1回目の照射プロセス時に架橋された領域との結合がもたらされる。
【0047】
さらに、本発明は、低分子芳香族化合物から構成され、横方向に高度に架橋された、2つの表面のうちの1つの上に官能基のパターンを有する構造化単層を調製する方法であって、
(a)基板を用意する工程、
(b)必要に応じて前記基板の少なくとも1つの表面を修飾する工程、
(c)固定基を介して結合することにより、前記基板の、少なくとも1つの必要に応じて修飾した表面に、少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物の単層を適用する工程、
(d)低分子芳香族化合物から構成される前記単層が特定の領域において横方向に選択的に架橋されることによりパターンを形成し、それにより架橋された領域及び架橋されていない領域を有する単層が形成されるように、工程(c)において得られる前記基板を高エネルギー放射線により処理する工程、
(e)前記架橋されていない少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物の低分子芳香族化合物への交換が起こるように、工程(d)において得られる前記基板を低分子芳香族化合物により処理する工程、並びに
(f)前記交換された芳香族化合物の、互いの間における、及び工程(d)において架橋された少なくとも1つの官能基を有する芳香族化合物との架橋が起こるように、工程(e)において得られる前記基板を高エネルギー放射線により処理する工程
を含む、方法に関する。
【0048】
先に説明した本発明による方法と同様に、この方法により構造化単層がもたらされる(しかし、方法工程の順序はわずかに変化している)。この方法では、先ず第1に工程(c)において少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物の単層を適用した後、工程(e)において少なくとも1つの官能基を有する架橋されていない芳香族化合物のみを低分子芳香族化合物へと交換する。しかしながら、後者の方法は、官能基としてニトロ基を使用した場合、本方法の工程(e)における交換がおよそ3倍速く行われることにより製造プロセスがより速くなるという利点を有する。
【0049】
この本発明による方法の好ましい1つの実施の形態は、図2において、より詳細に説明される。ここでは、先ず第1に基板表面を、4’−ニトロビフェニル−4−チオールで処理することにより単層でコーティングし、単層を電子衝撃によって選択的に架橋することにより構造を形成させる。ここで同様にニトロ基からアミノ基への化学的変換が起こる。この後、架橋されていない4’−ニトロビフェニル−4−チオールをビフェニル−4−チオールへと交換する。この場合でも同様に、2回目の照射により、交換された領域の架橋、及び1回目の照射プロセス時に架橋された領域との結合がもたらされる。
【0050】
本発明はさらに、本発明による構造化単層の膜としての使用に関する。この場合、単層は基板と結合していない。高度に架橋され、化学的に構造化された層により、架橋された単分子膜(「ナノシート」とも称される)の適用可能性が増大する(このことは、例えばW. Eck et al., Adv. Mater. 2005, 17, 2583-2587に記載されている)。特に、本発明による方法により、化学的に構造化させた形で膜を製造することができ、それにより透過型電子顕微鏡観察及びX線顕微鏡観察における分子及び細胞の局所的固定化のためのスライドとして、またデジタルインラインホログラフィ(DIH)によるX線顕微鏡観察における分子及び細胞の局所的固定化のためのスライドとして、直接使用することができる。
【0051】
加えて、本発明による高度に架橋され、化学的に構造化された単層を、ナノマイクロフォン、ナノシートによるナノ電気機械的システム(NEMS)、自立型(freestanding)ナノシートを有する物体、自立型ナノシートを有する任意の材料における開口部のカバー、架橋された層を有する任意の材料のコーティングの製造、架橋された層による腐食保護、個々のタンパク質の局所的結合に関するバイオチップ用の鋳型、任意の基板上におけるナノバイオチップの製造において、及び構造化された自己凝集性単層(例えばナノリボン又はナノサークル)の移送(transfer)のために、使用することができる。
【0052】
したがって、本発明による単層により、架橋された芳香族化合物の機械的に安定な2次元の超薄層であって、その表面上にナノ物体の結合に好適な官能基のパターンが存在する、超薄層が提供される。これらのパターンの大きさを、肉眼で見える範囲からナノメートル範囲まで任意に変化させることができる。
【0053】
したがって、本発明はさらに、前記単層の前記官能基を介してナノ物体を選択的に結合するための、本発明による構造化単層の使用に関する。ナノ物体は、官能基を介して単層と結合することができる全ての好適な物体又は分子であり得る。好ましくはナノ物体は、高分子、官能化ナノ粒子又はタンパク質である。特に好ましくは、結合するためのナノ物体としてタンパク質、抗体、金ナノ粒子、DNA、ポリマービーズ及び/又は色素分子が使用される。官能基がアミノ基であることが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による方法の好ましい1つの実施の形態を示す図である。
【図2】本発明による方法の別の好ましい実施の形態を示す図である。
【0055】
本発明を、以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0056】
本発明による構造化単層を調製するための両方の方法を、以下のように使用した。
【0057】
基板:G. Albert PVD(Silz, Germany)から入手したチタンプライマー(9nm)及び30nmの金層を有するケイ素を基板として使用した。UVクリーナー(FHR(Germany)のUVOH 150 LAB)中で3分間、基板を洗浄し、エタノールでリンスし、窒素流中で乾燥した。
【0058】
超音波処理:全ての超音波処理工程を、ElmaのTranssonic T310ユニット中で、3分間実施した。
【0059】
単層の調製:金の基板を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、p.a.、VWRから入手し、0.4nmのモレキュラーシーブで乾燥した)中における4’−ニトロ−1,1’−ビフェニル−4−チオール(NBPT、Taros Chemicalsから入手した)又は1,1’−ビフェニル−4−チオール(BPT、Platte Valley Scientificから入手した)の10mM溶液中に室温で3日間浸漬した。その後試料を、DMFでリンスし、DMF中において超音波で処理し、エタノール(p.a.、VWRから入手した)でリンスし、最後に窒素流中で乾燥した。
【0060】
電子曝露:フラッドガン(仕様(Specs):FG20)を架橋のために使用した。電子曝露を、100eVの電子エネルギーを用いて高真空(<5×10−7mbar)中で実施した。20mC/cmの電子線量を適用した。試料から小距離でファラデーカップを用いて線量を測定した。キャリアとしての透過型電子顕微鏡のグリッド上において1μm〜8μmの円形及び楕円形の開口部を有する炭素フォイル(Multi A、Quantifoil Micro Tools、Jena, Germany)を、ステンシルマスクとして使用した。
【0061】
チオール交換:NBPT又はBPTの部分的に架橋された単層を有する試料を、それぞれ、乾燥DMF中におけるBPT及びNBPTの10mM溶液中に、55℃で1時間〜3日間、浸漬した。DMFでリンスし、DMF中で超音波処理し、その後エタノールでリンスし、続いて窒素流中で乾燥した後、試料全体を40mC/cmの線量により100eVの電子に曝露した。
【0062】
誘導体化:アミノ末端領域を有する単層を、3.8体積%のペンタン酸塩化物(Sigma-Aldrichから入手した)及び1.3体積%のN−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン(Sigma-Aldrichから入手した)を有する1,2−ジクロロエタン(SPECTRANAL(登録商標)、ACS試薬、Sigma-Aldrichから入手した)の溶液中に2.5時間浸漬した。その後試料を、1,2−ジクロロエタンでリンスし、窒素流中で乾燥した。
【0063】
X線光電子分光測定(XPS):単色Al Kα放射線を使用するOmicronのマルチサンプル分光計を用いてXPスペクトルを取得した。Au 4fシグナルを調整することによりスペクトルを84.0eVにキャリブレートした。
【0064】
原子間力顕微鏡観察(AFM):AFM画像を、0.1N/mの力定数で、ケイ素キャリアを使用するコンタクトモードにおいて、NT-MDTのNtegraを用いて取得した。
【0065】
高度に架橋され、化学的にパターン化された単層の調製を、図1及び図2に概略的に示す。
【0066】
図2による方法では、4−ニトロ−1,1’−ビフェニル−4−チオール(NBPT)の単層が、金の表面上に形成された。その後、局所的な電子曝露により、曝露された領域内において、分子間架橋、及びニトロ基からアミノ基への変換がもたらされた。DMF中における1,1’−ビフェニル−4−チオール(BPT)の溶液中に単層でコーティングされた基板を浸漬すると、架橋されていない領域におけるNBPT分子がBPT分子により置き換えられ、それによりこの領域においてBPT単層が形成された。表面全体の電子曝露によりBPT単層の架橋がもたらされ、そのようにしてアミノ領域と官能化されていないBPT領域との間にさらなる架橋が形成された。
【0067】
代替的には、図1の方法によるパターンが得られたが、該方法はBPT単層で開始され、BPTは1回目の電子曝露後にNBPTに交換された。表面全体の最後の電子曝露により、NBPT単層の架橋、及びニトロ基からアミノ基への変換、及び架橋されたアミノ末端NBPT領域と官能化されていないBPT領域との結合がもたらされた。
【0068】
個々の方法工程は各々X線光電子分光測定(XPS)によりモニタリングされ、ここで、最初にNBPTの単層を調製し、架橋されていないNBPTをBPTに置き換えた場合(図2による方法)、先ず第1にBPTの単層を調製し、架橋されていないBPTをNBPTに置き換える逆の方法(図1による方法)と比較して、架橋されていない芳香族化合物の交換が約3倍速いことが見出された。
【0069】
得られたパターンを有する単層の構造を、原子間力顕微鏡観察により実証した。例えば、アミド形成によるペンタン酸塩化物でのアミノ基の変換後、官能化した領域は、隣接する官能化されていない領域の表面よりおよそ10Å高いことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子芳香族化合物から構成され、横方向に高度に架橋された構造化単層であって、2つの表面のうちの1つの上に官能基のパターンを有する、構造化単層。
【請求項2】
2つの表面のうちの1つの上に前記官能基としてのアミノ基のパターンを有する、請求項1に記載の構造化単層。
【請求項3】
フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン、ビピリジン、テルピリジン、チオフェン、ビチエニル、テルチエニル、ピロール、及びそれらの組合せからなる群から選択される芳香族化合物から構成される、請求項1又は2に記載の構造化単層。
【請求項4】
官能基のパターンを有しない前記単層の表面が、固定基を介して前記基板の少なくとも1つの表面と共有結合した、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造化単層。
【請求項5】
前記基板が、金、銀、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、タングステン、モリブデン、白金、アルミニウム、鉄、鋼、ケイ素、ゲルマニウム、リン化インジウム、ヒ化ガリウム、窒化ケイ素、及びそれらの酸化物又は合金又は混合物、並びに酸化インジウムスズ(ITO)ガラス及びケイ酸ガラス又はホウ酸ガラスからなる群から選択される、請求項4に記載の構造化単層。
【請求項6】
前記固定基が、カルボキシ基、チオール基、トリクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、ホスホネート基、ヒドロキサム酸基及びホスフェート基からなる群から選択される、請求項4又は5に記載の構造化単層。
【請求項7】
前記固定基が、1個〜10個のメチレン基の長さを有するスペーサーを用いて、低分子芳香族化合物から構成され、横方向に架橋された前記単層と共有結合した、請求項4〜6のいずれか一項に記載の構造化単層。
【請求項8】
低分子芳香族化合物から構成され、横方向に高度に架橋された、2つの表面のうちの1つの上に官能基のパターンを有する構造化単層を調製する方法であって、
(a)基板を用意する工程、
(b)必要に応じて前記基板の少なくとも1つの表面を修飾する工程、
(c)固定基を介して結合することにより、前記基板の、少なくとも1つの必要に応じて修飾した表面に、低分子芳香族化合物の単層を適用する工程、
(d)低分子芳香族化合物から構成される前記単層が特定の領域において横方向に選択的に架橋されることによりパターンを形成し、それにより架橋された領域及び架橋されていない領域を有する単層が形成されるように、工程(c)において得られる前記基板を高エネルギー放射線により処理する工程、
(e)前記架橋されていない低分子芳香族化合物の、少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物への交換が起こるように、工程(d)において得られる前記基板を少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物により処理する工程、並びに
(f)前記交換された少なくとも1つの官能基を有する芳香族化合物の、互いの間における、及び工程(d)において架橋された芳香族化合物との架橋が起こるように、工程(e)において得られる前記基板を高エネルギー放射線により処理する工程
を含む、方法。
【請求項9】
低分子芳香族化合物から構成され、横方向に高度に架橋された、2つの表面のうちの1つの上に官能基のパターンを有する構造化単層を調製する方法であって、
(a)基板を用意する工程、
(b)必要に応じて前記基板の少なくとも1つの表面を修飾する工程、
(c)固定基を介して結合することにより、前記基板の、少なくとも1つの必要に応じて修飾した表面に、少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物の単層を適用する工程、
(d)低分子芳香族化合物から構成される前記単層が特定の領域において横方向に選択的に架橋されることによりパターンを形成し、それにより架橋された領域及び架橋されていない領域を有する単層が形成されるように、工程(c)において得られる前記基板を高エネルギー放射線により処理する工程、
(e)前記架橋されていない少なくとも1つの官能基を有する低分子芳香族化合物の低分子芳香族化合物への交換が起こるように、工程(d)において得られる前記基板を低分子芳香族化合物により処理する工程、並びに
(f)前記交換された芳香族化合物の、互いの間における、及び工程(d)において架橋された少なくとも1つの官能基を有する芳香族化合物との架橋が起こるように、工程(e)において得られる前記基板を高エネルギー放射線により処理する工程
を含む、方法。
【請求項10】
前記芳香族化合物が前記固定基としてチオール基を介して前記基板と共有結合したビフェニルである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
電子リソグラフィ、X線リソグラフィ、EUVリソグラフィ及び/又は局所プローブにより工程(d)における選択的照射を行う、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)においてディッピング法、キャスティング法、スピンコーティング法を使用して、若しくは溶液からの吸着により前記適用を行うことができ、及び/又は工程(e)においてディッピング法、キャスティング法、スピンコーティング法により、若しくは溶液若しくは気相からの吸着により前記処理を行う、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(g)前記基板を除去して基板と結合していない構造化単層を得る工程
を工程(f)の後にさらに含む、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
膜又はナノシートとしての、請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造化単層の使用。
【請求項15】
前記単層の前記官能基を介してナノ物体を選択的に結合するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の構造化単層の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−502147(P2012−502147A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526409(P2011−526409)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006584
【国際公開番号】WO2010/028834
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(510056146)ユニヴェルシテート ビーレフェルト (3)
【Fターム(参考)】