高度帯電電荷安定ナノ繊維ウェブ
帯電多層フィルターは、多孔質のロールツーロール方式で加工可能な支持層の上に、約12〜約300mmの有限長を有する複数の絡み合ったナノ繊維を含むハイドロ帯電濾過層を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維性空気濾過ウェブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に空気濾過ウェブの濾過効率は、サブミクロン粒子を含有する気流に暴露されるとき、低下する。濾過効率は、例えば、塩化ナトリウム又はフタル酸ジオクチルの粒子を含有するチャレンジエアゾールを用いて、パーセント貫通テストにより評価することができる。初期貫通率及び最大貫通率共に、こうしたテストにより決定することができる。最大貫通率値は、フィルターの耐用期間を示すため、特に興味深い。
【0003】
濾過効率を改善するために、様々な帯電技術が採用されてきた。しかしながら、油状エアゾールなどの特定の物質は、徐々に電荷を低下させることが知られている。高い初期濾過効率は、ニードルフェルトなどの帯電濾材、又は、帯電スパンボンドウェブ若しくはメルトブロウンウェブを用いて達成できる。しかしながら、特に繊維直径が比較的大きい帯電濾材にも、不必要に大きい坪量が要求される場合がある。粗繊維性の帯電濾材は、多くの場合高い初期効率を有するが、フィルターが微細粒子を堆積するにつれて、効率を著しく低下させることがある。帯電濾材におけるこの効率低下は、エレクトレット劣化と呼ばれることがある。米国暖房冷凍空調技術者協会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers, Inc.)(ASHRAE)の規格No.52.2、表題「粒径による全体換気空気清浄装置の除去効率の試験方法(Method of Testing General Ventilation Air Cleaning Devices for Removal Efficiency by Particle Size)」では、冷暖房空調設備(HVAC)用フィルターを格付けする最小効率値(MERV)を決定する。エレクトレット劣化の理由を説明する規格No.52.2の改定案は、エレクトレットフィルターが比較的割合の高い小粒子に暴露されるように、規格が変更される可能性がある。もし成立すれば、これらの規格の変更点により、典型的なエレクトレット濾材のMERV等級は、2〜3点下がるであろう。
【0004】
一般的に、微細繊維(例えば、ナノ繊維)も高い濾過効率に寄与するが、繊維直径が小さくなるにつれて、圧力低下が典型的にみられる。例えば、サブミクロン繊維を含有する繊維ガラス複合物を用いて、高い初期濾過効率を達成することができるが、これら良好な初期濾過効率は、多くの場合初期圧力を大きく低下させて達成される。一般に繊維の再利用ができず、その脆性のため破壊傾向があるという点で、ガラス繊維にも問題がある。ガラス繊維フラグメントは、呼吸器刺激性又は皮膚刺激性の原因となる恐れもある。ポリマーナノ繊維製の濾材は、ガラス繊維の代わりに使用されている。しかしながら、ポリマーナノ繊維は、ガラス繊維よりも耐薬品性及び耐溶媒性が悪い。例えば、電界紡糸で製造されたポリマーナノ繊維は、紡糸された溶媒の影響が最小限である。また、現在入手可能である多くのナノ繊維は、通常は、多くの用途においてコスト超過となるほど非常に低速で製造される。電界紡糸ナノ繊維は、通常は、一日あたりグラムオーダーの速度で製造され、標準的な濾材と比較すると、ブロウンガラスナノ繊維は比較的高価である。高速で製造可能な海島型ナノ繊維でさえ、取り外し可能な海と、海を取り外すプロセス工程を必要とするため、製造コストがかかる。
【0005】
初期貫通率値及び最大貫通率値は、相関関係が弱い場合がある。この相関関係の欠如により、初期貫通の測定値を基準とした最大貫通率値の予測が困難になる。代わりに最大貫通率値を測定する場合もあるが、微小(例えば、サブミクロン)粒子に暴露された濾材の測定には時間がかかる場合がある。ウェブの初期貫通率値及び最大貫通率値がほとんど相関しないとき、フィルターの設計もより困難になる場合がある。
【0006】
繊維性空気濾過ウェブは、例えば、米国特許第4,011,067号(ケアリー(Carey))、同第4,215,682号(キュービック(Kubik)ら)、同第4,592,815号(ナカオ(Nakao))、同第4,729,371号(クルーガー(Krueger)ら)、同第4,798,850号(ブラウン(Brown))、同第5,401,446号(ツァイ(Tsai)ら)、同第5,496,507号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら、‘507)、同第6,119,691号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら、‘691)、同第6,183,670 B1号(トロビン(Torobin)ら、‘670)、同第6,315,806 B1号(トロビン(Torobin)ら、‘806)、同第6,397,458 B1号(ジョーンズ(Jones)ら、‘458)、同第6,554,881 B1号(ヒーリー(Healey))、同第6,562,112 B2号(ジョーンズ(Jones)ら、‘112)、同第6,627,563 B1号(ヒューバティ(Huberty))、同第6,673,136 B2号(ギリンガム(Gillingham)ら)、同第6,716,274 B2号(ゴギンズ(Gogins)ら)、同第6,743,273 B2号(チャン(Chung)ら)、並びに同第6,827,764 B2号(スプリンゲット(Springett)ら)、及びツァイ(Tsai)らによる、電界紡糸の理論と技術(Electrospinning Theory and Techniques)(第14回国際TANDEC不織布会議年会(Annual International TANDEC Nonwovens Conference)、2004年11月9〜11日)に記載されている。その他の繊維性ウェブは、例えば、米国特許第4,536,361号(トロビン(Torobin))、及び同第5,993,943号(ボダギ(Bodaghi)ら)に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、小粒子を含有する気流に暴露した後においても、驚くほど有効な濾過性能を有する帯電空気濾過材料を提供する。開示される濾材は、非常に良好な電荷保持能を有し、初期貫通率値及び最大貫通率値の相関関係が、典型的なエレクトレット濾材の場合と比較してはるかに優れている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明の濾材は、
a)約12〜約300ミリメートル(mm)の長さを有する複数の絡み合ったナノ繊維を含むハイドロ帯電(hydrocharged)繊維性濾過層と、
b)多孔質のロールツーロール方式で加工可能な支持層と、を含む。
【0009】
開示される濾材における濾過層は、例えば、米国特許第4,536,361号又は同第6,315,806 B1号により製造されてよく、例えば、米国特許第5,496,507号によりハイドロ帯電している。得られる濾材は、微粒子への暴露後、参照特許で開示される濾材の場合よりも良好な濾過効率を提供すると考えられ、初期貫通率値及び最大貫通率値の相関関係が強い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】本発明による多層濾材の概略断面図。
【図1b】本発明による多層濾材の概略断面図。
【図2a】本発明によるプリーツフィルターの斜視図。
【図2b】本発明による使い捨て個人用マスク装置の部分的断面の透視図。
【図3a】本発明により開示される濾材における濾過層の走査型電子顕微鏡写真。
【図3b】本発明により開示される濾材における濾過層の走査型電子顕微鏡写真。
【図4】本発明の濾材における濾過層の坪量に対する圧力低下を示すプロット。
【図5】本発明の濾材における濾過層の坪量に対する貫通率を示すプロット。
【図6】種々の濾過層の坪量において、圧力低下に対して貫通率が相関しているプロット。
【図7】本発明の濾材における塩化ナトリウムチャレンジ量に対する貫通率を示すプロット。
【図8】本発明の濾材における塩化ナトリウムチャレンジ量に対する圧力低下を示すプロット。
【図9】初期塩化ナトリウム貫通率に対する最大貫通率のプロット。
【図10】初期塩化ナトリウム貫通率に対する最大貫通率のプロット。
【図11】推定チャレンジ量に対するフタル酸ジオクチル貫通率及び圧力低下を示すプロット。 図面の様々な図における同様の参照記号は、同様の要素を指し示す。図中の要素は原寸に比例していない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で用いる用語を以下に定義する。
【0012】
「エアゾール」は、固体又は液体形状に懸濁した粒子を含有するガスを意味する。
【0013】
「坪量」は、フィルター又はフィルター層に関して使用するとき、フィルター又はフィルター層の主表面における、単位表面積あたりのフィルター又はフィルター層中の材料の重量を意味する。
【0014】
「帯電(した)(charged)」という用語は、繊維群に関して使用するとき、7cm/秒の面速度におけるフタル酸ジオクチル貫通率(%DOP)について評価した際、1mmのベリリウムフィルターの付いた、吸収線量20グレイ、80KVpのX線への暴露後に、品質係数QF(下で説明する)で少なくとも50%減を示す繊維を意味する。
【0015】
「連続的」という用語は、繊維又は繊維群に関して使用するとき、本質的に無限のアスペクト比(すなわち、例えば、少なくとも約10,000以上の長さ対寸法比)を有する繊維を意味する。
【0016】
「有効繊維直径」(EFD)という用語は、繊維群に関して使用するとき、円形又は非円形であるいずれかの断面形状を持つ繊維のウェブに関して、デイビーズ,C.N.(Davies, C. N.)著「空中に浮遊する埃及び粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)」(ロンドンの英国機械工学学会(Institution of Mechanical Engineers, London)、会報1B、1952年)に記載の方法に従って求めた値を意味する。
【0017】
「効率」は、フィルターに関して使用するとき、フィルターにより除去されたチャレンジエアゾールの量をパーセントで表したものを意味し、貫通率に基づき以下の式で決定される。
効率(%)=100−貫通率(%)
例えば、貫通率5%を示すフィルターは、対応する95%の効率を有することになる。
【0018】
「ハイドロ帯電(した)(hydrocharged)」は、繊維群に関して使用するとき、極性流体(例えば、水、アルコール、ケトン、又は極性流体の混合物)と密接する状態におき、続いて繊維が帯電するのに十分な条件下で乾燥させた繊維を意味する。
【0019】
「層」は、2つの主表面と、主表面間に厚みを有するフィルターの一部を意味し、層は、主表面に沿って不定長さで延びることがあり、又は、定められた境界を有することがある。
【0020】
「大部分」は、50%超を意味する。
【0021】
「ナノ繊維」は、1μm未満のメジアン径(顕微鏡及び手集計により決定される)を有する繊維を意味する。
【0022】
「不織布ウェブ」は、例えば、ある組の繊維が、規則正しい配列で別の組の繊維の上及び下に配置されるといった、所定の方式に配列された繊維を有さないウェブを意味する。
【0023】
「ポリマー」は、モノマーから製造された巨大分子を意味し、ホモポリマー、コポリマー、及びポリマーブレンドを含む。
【0024】
「ポリマー材料」は、少なくとも1種のポリマー、及び場合により、ポリマーに追加するその他成分を含む材料を意味する。
【0025】
「多孔質」は、通気性を意味する。
【0026】
「圧力低下」は、流体流(例えば、気流)が通るフィルターの上流側及び下流側の間で、流体流の静圧が低下することを意味する。
【0027】
「マスク装置」は、ヒトの呼吸器官上に着用するよう設計され、汚染物質が着用者の気道に侵入するのを防いだり、着用者の呼吸により放出される病原菌や他の汚染物質に、他の人物や物質が暴露されるのを防いだりするシステム又は装置を意味し、フィルター付きフェイスマスクを含むが、これに限定されない。
【0028】
「ロールツーロール方式で加工可能」は、フィルター又は支持層に関して使用するとき、ロールツーロールウェブ処理装置を用いて別個のフィルターへの転換を所望する場合、フィルター又は支持層が製造可能であることを意味する。
【0029】
用語「径」は、繊維に関して使用するとき、円形断面を有する繊維については、繊維直径を意味し、又は非円形断面を有する繊維を横切って構成されてもよい横断面の最長弦の長さを意味する。
【0030】
「実質的に全て」は、少なくとも80%を意味する。
【0031】
図1aは、開示される多層濾材の一実施形態の概略断面図を示す。濾材1は、支持層4に隣接する繊維性濾過層2を備える。層2はナノ繊維6を含有し、例えば、米国特許第4,536,361号により調製することができる。繊維6は絡み合っており、層12中の、好ましくは大部分、より好ましくは実質的に全ての繊維に相当する。繊維6は、約12〜約300mm、約25〜約200mm、又は約50〜約150mmの有限長を有し、連続的ではない。層2は多孔質であるが、濾材1を通過する流体(例えば、空気)中に一緒に運ばれる小粒子(例えば、マイクロメートルサイズ及びより小さい粒子)を捕捉するのに十分に小さい孔径を有する。層4も多孔質であるが、典型的には層2よりもはるかに大きい孔径を有する。例示する実施形態では、層4は糸目の粗いニット織物である。流体は、様々な方向(例えば、濾材1に垂直に層2を通過してから層4を通過、又は濾材1に垂直に層4を通過してから層2を通過)で濾材1を貫流してもよい。空気濾過においては、典型的な流れの方向は、層4を通過してから層2を通過することである。
【0032】
図1bは、開示される多層濾材の別の実施形態の概略断面図を示す。濾材10は、支持層14に隣接する繊維性濾過層12を備える。層12は、1マイクロメートル以上のメジアン繊維径を有する複数の第1の繊維16、及び、サブミクロン径を有し、かつ層12中の好ましくは大部分の繊維に相当する複数の第2の繊維18を含有する。層12は、例えば、米国特許第6,315,806 B1号により調製することができる。繊維16は、好ましくは層12中の半分未満の繊維に相当する。繊維16は、層12中で、例えば総繊維数(又は繊維の代表的なサンプルについて)の約1〜約49、約2〜約40、又は約3〜約20、又は約5〜約15パーセントに相当する。繊維18は、層12中で、例えば総繊維数(又は繊維の代表的なサンプルについて)の約51〜約99、又は約60〜約98、又は約80〜約97、又は約85〜約95パーセントに相当する。繊維18は、例えば約12〜約300mm、約25〜約200mm、又は約50〜約150mmの有限長を有し、繊維16より短い平均長を有してもよいし、繊維16より長い平均長を有してもよい。繊維18は、第1の繊維16の一部に少なくとも部分的に巻かれてもよいし、複数の第1の繊維16により層12に支持されてもよい。層12は多孔質であるが、濾材10を通過する流体中に一緒に運ばれる小粒子を捕捉するのに十分に小さい孔径を有する。層14も多孔質であるが、典型的には層12よりもはるかに大きい孔径を有する。例示する実施形態では、層14は不織布ウェブ内に配置される繊維20を含む。流体は、様々な方向(例えば、濾材10に垂直に層12を通過してから層14を通過、又は濾材10に垂直に層14を通過してから層12を通過)で濾材10を貫流してもよい。空気濾過においては、標準的な流れの方向は、層14を通過してから層12を通過し得る。
【0033】
図2aは、開示される多層濾材(例えば、濾材1又は10)を離間したプリーツ24の列に成形することにより作製されているプリーツフィルター22の斜視図を示す。フィルター22を「そのまま」使用してもよいし、又は、(例えば、平面的に伸張された金属面層、ホットメルト接着剤の補強線、接着剤で結合された補強バー、又はその他選択的補強支持体により)更に安定化又は補強され、所望により、例えば、HVACシステムで用いるための交換可能なフィルターを提供するために好適なフレーム(例えば、金属フレーム又は厚紙フレーム)に取り付けられたフィルター22の選択された部分を有してもよい。多層濾材は別として、フィルター22の構造に関する更なる詳細については、当業者には周知となろう。
【0034】
図2bは、カップ型の使い捨て個人用マスク装置26の透視図及び部分断面図を示す。マスク装置26は、内部カバーウェブ28、開示される多層濾材(例えば、濾材1又は10)で作製される濾過層30、及び外部カバー層32を備える。溶接縁部34は、これらの層を一体に保持して顔面封止領域を提供し、マスク装置26の縁部からの漏れを低減する。この漏れは、例えば、アルミニウムなどの金属、又はポリプロピレンなどのプラスチック製の柔軟な極軟鼻バンド36により、更に低減することができる。マスク装置26は、タブ40を用いて固定される調整可能なヘッド及びネックストラップ38、及び呼気弁42もまた備える。多層濾材は別にして、マスク装置26の構造に関する更なる詳細については、当業者には周知となろう。
【0035】
開示される濾過層は、別個に形成されるよりは、好ましくは支持層上に直接形成される。濾過層は、同一の又は異なるポリマー繊維形成材料から製造される1種以上の繊維を含むことができる。濾過層中の大部分及び好ましくは全ての繊維は、エレクトレット電荷を十分に受容し、適切な電荷分離を維持できる繊維形成材料から形成される。好ましいポリマー繊維形成材料は、室温(22℃)で1014オーム−センチメートル以上の体積抵抗率を有する非導電性樹脂である。好ましくは、この樹脂は、約1016オーム−センチメートル以上の体積抵抗性を有する。ポリマー繊維形成材料の固有抵抗は、標準検査ASTM D 257−93に従って測定できる。使用してもよいポリマーの一例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのポリオレフィン及び環状オレフィンコポリマー、並びにこれらのポリマーの組み合わせを含む熱可塑性ポリマーが挙げられる。使用してもよいが、荷電が困難であるか、又は電荷を迅速に失うことがある他のポリマーとしては、ポリカーボネート類、スチレン−ブタジエン−スチレン及びスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーなどのブロックコポリマー類、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリウレタン類、並びに当業者には周知であろう他のポリマーが挙げられる。濾過層繊維の一部又は全部を、所望される場合、スプリット繊維などの複合成分繊維から製造してもよい。好適な複合成分(例えば、2成分)繊維として、サイド−バイ−サイド型、シース−コア型、セグメント化パイ型、海島型、チップ化及びセグメント化リボン型繊維が挙げられる。スプリット繊維が採用される場合、スプリットは、カーディング、エアジェット、エンボス加工、カレンダー加工、水流交絡、又はニードルパンチングを含む、様々な当業者に周知であろう技術を用いて実施又は促成されてもよい。濾過層は、好ましくは、ポリ−4−メチル−1ペンテン若しくはポリプロピレンの単成分繊維、又は、例えば外側表面上にポリ−4−メチル−1ペンテン若しくはポリプロピレンを用いた層状又はコア−シース配置である、ポリ−4−メチル−1ペンテン及びポリプロピレンの2成分繊維から調製される。特に湿潤環境でのポリプロピレンの電荷保持性能のため、最も好ましくは、濾過層はポリプロピレンホモポリマーの単成分繊維から調製される。添加剤をポリマーに添加し、ウェブの濾過性能、エレクトレット帯電機能、機械的特性、老化特性、呈色性、表面特性又はその他の重要な特性を強化してもよい。代表的な添加剤としては、充填剤、核剤(例えば、ミリケンケミカル(Milliken Chemical)から市販されているミラッド(MILLAD)(商標)3988、ジベンジリデンソルビトール)、エレクトレット帯電増強剤(例えば、トリステアリルメラミン、及びチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)のチマソルブ(CHIMASSORB)(商標)119及びチマソルブ(CHIMASSORB)944などの様々な光安定剤)、硬化開始剤、強化剤(例えば、ポリ(4−メチル−1−ペンテン))、界面活性剤、並びに表面処理(例えば、ジョーンズ(Jones)への米国特許第6,398,847 B1号、同第6,397,458 B1号、及び同第6,409,806 B1号に記載されているように、油霧環境における濾過性能を向上させるためのフッ素原子処理)が挙げられる。こうした添加剤の種類及び添加量は、当業者には周知であろう。例えば、エレクトレット帯電増強剤は、約5重量%未満、及びより典型的には約2重量%未満の量で一般に存在する。ポリマー繊維形成材料はまた、好ましくは、電気伝導度を顕著に上昇できる、ないしは別の方法で繊維の静電荷の受容及び保持能力を顕著に干渉できる静電気防止剤などの成分を実質的に含まない。
【0036】
濾過層は、様々な坪量、繊維径、厚さ、圧力低下、及びその他特徴を有することができ、ロールツーロール方式で加工不可能であるように、それ自体は十分に脆弱であってもよい。濾過層は、例えば、約0.5〜約300g/m2(gsm)、約0.5〜約100gsm、約1〜約50gsm、又は約2〜約40gsmの範囲の坪量を有してもよい。比較的低い坪量、例えば、約2、5、15、25、又は40gsmが濾過層に好ましい。濾過層中の繊維は、例えば、約10μm未満、約5μm未満、又は約1μm未満のメジアン繊維径を有してもよい。濾過層の厚さは、例えば、約0.1〜約20mm、約0.2〜約10mm、又は約0.5〜約5mmであってもよい。ある支持層(例えば、粗く非平坦な支持層)に極めて低い坪量で適用されるナノ繊維濾過層は、全体の濾材の厚さを変えないことがある。濾過層の坪量及び厚さは、例えば、回収装置の速度又はポリマーのスループットを変更することにより、制御又は調整することができる。
【0037】
濾過層が支持層上に形成でき、ロールツーロール加工装置を用いて、得られた濾材を必要に応じて更に変換できるように、支持層は十分に堅牢である。支持層は、様々な材料から形成でき、様々な坪量、厚さ、圧力低下、及びその他の特徴を有することができる。例えば、支持層は、不織布ウェブ、織布、編布、連続気泡フォーム、又は穿孔付き膜であってもよい。不織布である繊維性ウェブは、好ましい支持層である。こうした不織布ウェブの製造に好適な繊維性前駆体として、上述のポリマー繊維形成材料、及び、静電荷を容易に受容しない又は維持しないその他のポリマー繊維形成材料が挙げられる。支持層は、天然繊維、又は合成及び天然繊維のブレンドから形成されてもよい。不織布ウェブから作られる場合、支持層は、例えば、メルトブロウン加工、溶融紡糸加工、若しくはその他好適なウェブ加工技術を用いて溶融熱可塑性ポリマーから、カーディング加工若しくはランド・ウェバー(Rando-Webber)機器からの付着加工を用いて天然繊維又は合成及び天然繊維のブレンドから、又は当業者には周知であろうその他技術を用いて形成されてもよい。織布ウェブ又は編布から作られる場合、支持層は、例えば、マイクロデニール連続フィラメント又はステープルファイバー糸(すなわち、約1未満のフィラメントあたりのデニール(dpf)を有する糸)から形成され、当業者には周知であろう好適な加工技術を用いて織物又は編物の支持布へ加工されてもよい。支持層は、例えば、約5〜約300gsm、より好ましくは約40〜約150gsmの範囲の坪量を有してもよい。支持層の厚さは、例えば、約0.2〜約40mm、約0.2〜約20mm、約0.5〜約5mm、又は約0.5〜約1.5mmであってもよい。
【0038】
所望の場合、更なる層を開示される濾材に追加してもよい。代表的な追加の層は当業者には周知であり、保護層(例えば、抗剥離層、抗刺激層、及びその他のカバー層)、強化層、並びに吸着層が挙げられる。吸着粒子(例えば、活性炭粒子又はアルミナ粒子)もまた、当業者には周知であろう方法を用いて濾材内(例えば、支持層14内)に導入してもよい。
【0039】
開示される多層濾材のハイドロ帯電は、濾材上に極性流体を吹付け、浸漬、又は濃縮し、続いて濾材が帯電するように乾燥するといった様々な技術を用いて行うことができる。ハイドロ帯電を説明している代表的な特許としては、上述の米国特許第5,496,507号、並びに同第5.908,598号(ルソー(Rousseau)ら)、同第6,375,886 B1号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら、‘886)、同第6,406,657 B1号(エイツマン(Eitzman)ら、‘657)、同第6,454,986 B1号(エイツマン(Eitzman)ら、‘986)、及び同6,743,464 B1号(インズリー(Insley)ら)が挙げられる。好ましくは、水は極性ハイドロ帯電液として用いられ、濾材は、好ましくは、液体噴流又は任意の好適な噴霧手段により提供される液滴流を用いて、極性ハイドロ帯電液に暴露される。繊維を水圧で交絡するのに有用な装置は、一般的にハイドロ帯電を行うのに有用であるが、ハイドロ帯電においてその操作は、一般に水流交絡で用いられるものよりも低い圧力で行われる。米国特許第5,496,507号は、代表的な装置について説明しており、その装置では、濾過性能増強エレクトレット電荷を有し、後で乾燥される濾材を提供するのに十分な圧力で、水の噴流又は水滴流が濾材上に吹付けられる。最適な結果を得るのに必要な圧力は、用いる噴霧器の種類、濾過層12を形成するポリマーの種類、濾材の厚さ及び密度、並びに、コロナ帯電などの前処理がハイドロ帯電の前に行われるかどうかにより変わる。一般的には、約69〜約3450kPaの範囲の圧力が好適である。好ましくは、水滴を提供するために使用される水は、相対的に純粋である。蒸留水又は脱イオン水が、水道水より好ましい。
【0040】
開示される濾材は、静電帯電(例えば、米国特許第4,215,682号、同第5,401,446号、及び同第6,119,691号に記載のような)、摩擦帯電(例えば、米国特許第4,798,850号に記載のような)、又はプラズマフッ素化(例えば、米国特許第6,397,458 B1号に記載のような)などのハイドロ帯電の前又は後に、その他の帯電技術で処理してもよい。ハイドロ帯電前のコロナ帯電、及び、ハイドロ帯電前のプラズマフッ素化は、好ましい複合帯電技術である。
【0041】
開示される多層濾材を評価し、貫通パーセント、圧力低下、及び濾過品質係数QF((特に指示のない限り)NaCl粒子については60リットル/分、DOP粒子については85リットル/分の流速で供給されるNaCl又はDOP粒子を含有するチャレンジエアゾールを用い、TSI(商標)モデル8130高速自動濾過試験機(TSI社(TSI Inc.)から市販)を用いて評価される)を求めることができる。NaCl試験において、粒子は、2%のNaCl溶液から生成してもよく、約16〜23mg/m3の大気中濃度で、約0.075μmの直径を有する粒子を含むエアゾールを提供し、自動濾過試験機は、加熱機及び粒子中和器を稼動しながら操作してもよい。DOP試験において、エアゾールは、約100mg/m3の濃度で、約0.185μmの直径を有する粒子を含んでもよく、自動濾過試験機は、加熱機及び粒子中和器を稼動させずに操作してもよい。較正された光度計をフィルターの入口と出口に使用し、濾材を通る粒子濃度及び粒子貫通%を測定することができる。MKS圧力変換器(MKSインスツルメンツ(MKS Instruments)から市販される)を使用して、濾材通過の圧力低下(ΔP、mm H2O)を測定してもよい。式:
【数1】
は、QFを算出するために用いてもよい。選択されたチャレンジエアゾールを測定又は計算することができるパラメータは、初期粒子貫通率、初期圧力低下、初期線質係数QF、最大粒子貫通率、最大貫通率での圧力低下、最大貫通率でのミリグラムの粒子荷重(最大貫通率の時間までのフィルターに対する総重量チャレンジ)を含む。最大貫通率を決定する荷重テストは、貫通率及び圧力低下を連続的に測定しながら、フィルターにエアゾールを連続的に曝すことにより行われ、このテストは、典型的には明確に最大貫通率が観察された後に終了する。開示される濾材については、初期貫通率と最大貫通率との間に比較的良好な相関関係があるため、初期品質係数QF値は、全般性能に対する非常に信頼できる指標となり、初期QF値が高いほど濾過性能が良いことを示し、初期QF値が低いほど濾過性能が落ちていることを示す。5.5cm/sの流速で0.075μmのNaCl粒子に暴露されるとき、濾材は、好ましくは少なくとも約0.9mm−1 H2O、及びより好ましくは少なくとも約1.8mm−1 H2Oの初期品質係数QFを有する。10cm/sの流速で0.075μmのNaCl粒子に暴露されるとき、濾材は、好ましくは少なくとも約0.4mm−1 H2O、及びより好ましくは少なくとも約0.8mm−1 H2Oの初期品質係数QFを有する。14cm/sの流速で0.185μmのDOP粒子に暴露されるとき、濾材は、好ましくは少なくとも約0.2mm−1 H2O、及びより好ましくは少なくとも約0.4mm−1 H2Oの品質係数QFを有する。
【0042】
開示される多層濾材はシート状で用いてもよいし、成形、折り重ね、ないしは別の方法で三次元形状を有する濾材形状に形成してもよい。例えば、開示される濾材は、例えば米国特許第6,740,137 B2号(クボカワ(Kubokawa)ら)及び米国特許出願公開第2005/0217226 A1号(サンデット(Sundet)ら、‘226)に記載される方法及び構成要素を用いて、プリーツフィルター状に成形してもよい。一般に、少なくともいくつかの繊維交点で互いに繊維を固着する(又は更に固着する)加熱の使用により、プリーツ成形を補助するであろう。プリーツ成形は、当業者に周知のその他の方法及び構成要素を用い、実施又は増大してもよい。また、フィルター要素の選択された部分は、先端安定化(例えば、平面のワイヤー面層若しくはホットメルト接着剤の線)又は周辺補強(例えば、縁部接着剤若しくはフィルターフレーム)を追加することによって、安定化又は補強されてもよい。開示される濾材はまた、米国特許第4,536,440号(バーグ(Berg))、同第4,547,420号(クルーガー(Krueger)ら)、同第5,374,458号(ブルジョ(Burgio))、同第6,394,090 B1号(チェン(Chen)ら)、同第6,827,764 B2号(スプリンゲット(Springett)ら)、及び同第7,069,930 B2号(ボストック(Bostock)ら)に記載されるような当業者には周知であろう方法を用いて、マスク装置状に形成してもよい。
【0043】
EFDは、(特に指示がない限り)85リットル/分の気流速度(13.8cm/秒の面速度に相当する)を採用して、デイビーズ,C.N.(Davies, C. N.)著「空中に浮遊する埃及び粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)」(ロンドンの英国機械工学学会(Institution of Mechanical Engineers, London)、会報1B、1952年)に記載されている方法を用いて求めてもよい。
【0044】
開示される多層濾材は、効率がMERV12以上のものに特に好適であろう冷暖房空調設備(HVAC)用濾過用途に用いることができる。帯電ナノ繊維は、通常HEPA(高性能)、ULPA(超高性能)、及びより高い性能が要求されるクリーンルームの濾過用途でも用いることができる。開示される多層濾材は、個人用呼吸保護装置、例えば、手入れの要らないマスク装置、防塵マスク、及び顔半面用マスク装置、顔全面用マスク装置、又は電動マスク装置のカートリッジフィルターで用いることができる。多層濾材は、自動車用空気濾過、吸気濾過、真空バッグ、及びその他真空フィルター装置でも用いることができる。多層濾材は、空気清浄機用途でも用いることができる。
【0045】
本発明を、以下の例証的な実施例で更に説明しており、ここで、全ての部及び割合は、指示がない限り重量基準である。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
米国特許第6,607,624 B2号(ベリガン(Berrigan)ら、‘624)及び同第6,916,752 B2号(ベリガン(Berrigan)ら、‘752)に示されるような装置、及び2006年7月31日に出願された米国特許出願第11/457,899号に示されるような急冷流体加熱機を用い、3種のポリプロピレン・スパンボンド支持層ウェブを、メルトフローレートインデックスが100であるダイプロ(DYPRO)(商標)3860ポリプロピレン(トータル・ペトロケミカルズ(Total Petrochemicals)から入手可能)から調製した。支持体ウェブの特徴を以下の表1に示す。
【表1】
【0047】
運転番号1−1の支持層を、3m/分のベルト速度及び29kVのコロナ電圧で操作する4ビームベルトのコロナ帯電ユニットを用いてコロナ帯電し、次いで1.5m/分のベルト速度、0.8MPaの水圧、及び脱イオン水で操作するハイドロ帯電ユニットを用いてハイドロ帯電した。ウェブの両側に水を噴霧し、真空により水を除去した。運転番号1−2及び1−3の支持層は帯電しなかった。ナノファイバーズ社(Nanofibers, Inc.)(ノースカロライナ州アバディーン(Aberdeen))の単一エミッター、30.5cm幅の繊維成形装置を用いて、運転番号1−1及び1−2の支持層ウェブを5、15、25、及び50gsmの坪量のポリプロピレンナノ繊維でコーティングし、運転番号1−3の支持層ウェブを5、8、10、及び13gsmの坪量のポリプロピレンナノ繊維でコーティングした。運転番号1−1及び1−2の支持層ウェブに適用したポリプロピレンはナノファイバーズ社(Nanofibers, Inc.)の担当者が選択し、運転番号1−3の支持層ウェブに適用したポリプロピレンは、メルトフローレート・インデックスが350であるFINA(商標)3960ポリプロピレン(トータル・ペトロケミカルズ(Total Petrochemicals)から入手可能)とした。ナノ繊維層は、スパンボンド支持層に良好に接着した。これは、ナノ繊維がスパンボンド支持層上に付着されるときに起こる、交絡と熱接着の両方によるものと思われる。
【0048】
運転番号1−1の支持体上の5gsmナノ繊維層、及び、運転番号1−3の支持体上の11gsmナノ繊維層の金/パラジウムコーティングされたサンプルを、カール・ツァイス社(Carl Zeiss SMT)のLEO VP 1450走査電子顕微鏡を高真空下、加速電圧15kV、作動距離(WD)15mm、及び傾斜0°の条件で操作し、100倍〜3,000倍の倍率の走査電子顕微鏡により評価した。繊維直径は、テキサス大学ヘルスサイエンスセンターサンアントニオ校(University of Texas Health Science Center at San Antonio)のUTHSCSAイメージツール(UTHSCSA IMAGE TOOL)画像解析プログラムを用いて、1000倍以上の倍率で撮影した画像から測定した。ナノ繊維は、表2に示す特徴を有していた。
【表2】
【0049】
11gsm濾過層のSEM写真を図3a(2000倍)及び図3b(250倍)に示す。特に、ナノ繊維が絡み合っており、サブミクロン径を有するものの写真を示す。
【0050】
多層濾材サンプルを、運転番号1−1の支持層について記載した手順を用いてコロナ帯電、又は、コロナ帯電かつハイドロ帯電した。追加のサンプルを、0.039kPa(300ミリトル)において100sccmのペルフルオロプロパン、及び1分間1.0kW暴露の処理条件を用いて、プラズマフッ素化システム上でプラズマフッ素化した。サンプルをひっくり返し、プラズマフッ素化処理を繰り返した。次に、上述の手順によりサンプルをハイドロ帯電した。得られた帯電多層濾材サンプルを、続いて評価し、圧力低下を判定した。図4に結果を示す。運転番号1−1の支持層上の多層濾材サンプルについて、約10gsmのナノ繊維により、流速85リットル/分において約2.5〜3mm H2Oの圧力低下が得られると考えられた。より低い坪量のナノ繊維層では、グラム数がほとんどない場合はより高い限界圧力低下が得られると考えられ、これは基材との界面効果の可能性を示した。25及び50gsmのナノ繊維サンプルは、ハイドロ帯電中に圧密されたと考えられ、その結果圧力低下が大きかった。運転番号1−1の濾過層は、運転番号1−3の濾過層よりも、より粒状の、かつ、よりロープ状/束状の繊維を含有し、繊維直径分布が狭くないと考えられ、これらの要因により、運転番号1−1及び1−3の結果間で観察された圧力低下の違いを部分的に説明できる。運転番号1−3の支持層上にコーティングされたナノ繊維は、他のサンプルでみられたものよりも、重量あたりの実質的な圧力低下がより大きいと考えられた。より均一なナノ繊維横置き特性を求めることにより、圧力低下を部分的に制御可能にできる。
【0051】
運転番号1−1(帯電支持層)及び運転番号1−2(非帯電支持層)上にコーティングされた多層濾材を評価して初期DOP貫通率及び品質係数QF値を判定し、続いて種々ナノ繊維の坪量において互いに比較した。図5はDOPの結果を示し、曲線Aはナノ繊維層帯電前の運転番号1−2の支持層上のサンプル、曲線Bはナノ繊維層帯電前の運転番号1−1の支持層上のサンプル、曲線Cはナノ繊維層帯電後の運転番号1−1の支持層上のサンプル、曲線Dはナノ繊維層帯電後の運転番号1−2の支持層上のサンプルを表す。これらの曲線は特に、運転番号1−2の支持層上に形成された多層濾材が、多層濾材の両方の層をハイドロ帯電したとき、より高い品質係数とより低い初期貫通率をもたらすことを示す。曲線Aは、非帯電支持層とナノ繊維層の機械的濾過性能も示す。曲線Bの左方原点は、ナノ繊維重量がゼロにおいてハイドロ帯電支持層ウェブを用いる効果を示す。曲線A及びBを比較すると、ハイドロ帯電支持層ウェブの効果とナノ繊維の効果の両方が、適用されるナノ繊維の各重量について一定のままであることが示される。曲線Cは、最初から帯電支持層とナノ繊維が帯電されるとき、支持体ウェブは影響を受けない(ナノ繊維重量がゼロにおいて観察される貫通率が同じ)が、貫通率は、ナノ繊維が存在すると著しく低下することを示し、ひいてはナノ繊維自体が帯電するようになることを示す。ナノ繊維が帯電するようにならなかった場合、曲線B及び曲線Cは重なり合うだろう。最後に、曲線Dは、ナノ繊維及び支持層の両方を一緒に帯電でき、得られる性能は、支持層よりも主にナノ繊維の寄与による場合があることを示す。
【0052】
種々ナノ繊維の坪量において、貫通率に対して圧力低下をプロットし、コロナ帯電かつハイドロ帯電されたサンプルを評価した。結果を図6に示す。圧力低下及び貫通率値は極めて強く相関し、圧力低下を貫通率値の自然対数と比較するとき、補正係数R2は78%である。
【0053】
運転番号1−3の支持層上に形成された非帯電かつコロナ+ハイドロ帯電サンプルを比較し、種々ナノ繊維の坪量における初期DOP貫通率及び品質係数QFを確認した。更に、10gsmのナノ繊維でコーティングし、コロナ帯電のみ、又は、プラズマフッ素化かつハイドロ帯電サンプルも検査し、一定のナノ繊維コーティング重量における様々な帯電処理の影響を確認した。以下の表3aに結果を示す。
【表3】
【0054】
表3aに示すように、プラズマフッ素化/ハイドロ帯電濾材は、コロナ/ハイドロ帯電濾材、コロナ処理濾材、又は非帯電濾材よりも、低い貫通率と高い品質係数QF値を示した。10gsmのナノ繊維重量では、プラズマフッ素化/ハイドロ帯電濾材は、0.53という最大の品質係数QFを有した。
NaCl荷重テストも実施した。運転番号1−2の支持層上に形成されたコロナ+ハイドロ帯電サンプルを比較し、10cm/秒の面速度を用いて、種々ナノ繊維の坪量における、初期圧力低下、初期NaCl貫通率、初期品質係数QF、最大貫通率での圧力低下、最大貫通%、及び最大貫通率でのチャレンジ量を確認した。以下表3bに結果を示す。
【表4】
【0055】
運転番号1−2及び1−3の支持層上に形成された非帯電、コロナ帯電、コロナ+ハイドロ帯電、及びプラズマフッ素化+ハイドロ帯電サンプルを比較し、種々ナノ繊維の坪量における、初期圧力低下、初期NaCl貫通率、初期品質係数QF、最大貫通率での圧力低下、最大貫通%、及び最大貫通率でのチャレンジ量を確認した。以下表3Cに結果を示す。
【表5】
【0056】
図7は、10gsmのナノ繊維濾過層を含む多層濾材における貫通率対荷重量の曲線を示し、図8は、対応する圧力低下対荷重量の曲線を示す。図7及び図8では、曲線Aは非帯電濾材の結果を示し、曲線Bはコロナ帯電濾材の結果を示し、曲線Cはコロナ+ハイドロ帯電濾材の結果を示し、曲線Dはプラズマフッ素化+ハイドロ帯電濾材の結果を示す。この結果は特に、低い初期貫通率値を有するサンプルが、0.075μmのNaCl粒子での低い最大貫通率をも有することを示す(他の濾材では、初期及び最大貫通率の結果の相関性は乏しいことが多い)。また、4種の帯電技術により、類似する圧力低下−荷重曲線を有する濾材が得られた。
【0057】
荷重挙動を更に調べるため、ナノ繊維濾過層を利用した様々な非帯電及び帯電多層濾材サンプルと、様々な帯電スパンボンドエレクトレットウェブサンプルを比較した。全てのサンプルをダイプロ(DYPRO)3860ポリプロピレンから製造し、全てのサンプルをハイドロ帯電した。サンプルは、坪量が100〜230gsmの範囲、EFDが8〜約15マイクロメートルの範囲であった。サンプルの一部をエレクトレット帯電添加剤(0.25〜2%トリ−ステアリルメラミン又はチマソルブ(CHIMASSORB)944)存在下で製造し、別の一部をこうした添加剤の非存在下で製造した。サンプルの一部をカレンダリングして表面ウェブ特性を改変し、その他のものはカレンダリングしなかった。平滑及び模様付きの両方のカレンダーパターンを用いた。サンプルの一部をハイドロ帯電前に更にコロナ帯電したが、その他のものはしなかった。図9は、運転番号1−2及び1−3の支持層ウェブ上にコーティングされた非帯電及び帯電多層濾材サンプルについて、同一の試験条件下での初期及び最大NaCl貫通率値間の比較を示す。図10は、スパンボンド・エレクトレットについて、同一の試験条件下での初期及び最大NaCl貫通率値間の比較を示す。図9は、2種の異なるキャリアウェブと数種の異なる帯電技術を備えるナノ繊維含有サンプルにおいて、直線になることを示す。ナノ繊維含有サンプルの最大NaCl貫通率は、初期貫通率の結果に基づき適宜予測できた。図10は、スパンボンド・エレクトレットサンプルのばらつきは1桁以上であり、最大NaCl貫通率値が、初期貫通率の結果に基づき確実に予測できないことを示す。
【0058】
更にテストを実施し、10gsmのプラズマフッ素化+ハイドロ帯電ナノ繊維を含む多層濾材について、及び同一の初期圧力低下を有する非帯電繊維ガラスサンプルについて、DOP荷重及び圧力低下を比較した。DOPは、NaClよりも低度のチャレンジであると看做されることがある。繊維ガラス濾材サンプルは、90〜95%の粉塵スポット等級(MERV 14)を提供するとされており、その特性を以下表4に示した。
【表6】
【0059】
平坦な円形ウェブサンプルを用い、流速85リットル/分において、少なくとも200mgの推定DOP荷重がかかるまで荷重テストを実施した。ナノ繊維のテストを一時的に停止し、再度開始すると、収集データを継ぐことになった。両サンプルとも、約11.8mm H2O初期圧力低下を示した。図11中、曲線A及び曲線Bはそれぞれ、ナノ繊維含有濾材サンプル、及び繊維ガラス濾材サンプルについてのDOP荷重曲線を示す。曲線C及び曲線Dはそれぞれ、ナノ繊維含有濾材サンプル、及び繊維ガラス濾材サンプルについての圧力低下曲線を示す。図11に示すように、ナノ繊維含有濾材は、約1%の貫通率から始まり、徐々に上昇して200mgの推定荷重量では13%の貫通率となった。図11には示していないが、ナノ繊維含有サンプルは、400mgの荷重量で約25%の貫通率に達し、400mgを超えると、徐々にではあるが更に上昇すると思われた。繊維ガラスサンプルは、52%の貫通率で始まり、200mgの推定荷重後64%の貫通率まで上昇した。200mgを超えると、徐々にではあるが更に上昇すると思われた。同等のDOP荷重について、両サンプルとも圧力低下では同様の上昇を示した。
【0060】
更なる試験を実施し、運転番号1−3の支持体ウェブ上に10gsmのプラズマフッ素化+ハイドロ帯電ナノ繊維を含む多層濾材を、米国特許第6,183,670 B1号(トロビン(Torobin)ら、‘670)に示される好ましい実施形態(「特許実施形態」)と比較した。特許実施形態は、トロビン(Torobin)ら、‘670において、米国特許第5,401,446号に従って静電的に帯電されており、トロビン(Torobin)ら、‘670の図9に示される濾過性能を示すことが提示される。TSI 8130自動濾過試験機と、トロビン(Torobin)ら、‘670にあるように、面速度5.5cm/秒で流れる直径0.075μmのNaCl粒子を用いて、ナノ繊維含有濾材を評価した。特許実施形態のサンプルが手元になかったため、その濾過性能は、トロビン(Torobin)ら、‘670の図9から得られる値に基づき計算した。得られた比較結果を以下表5に示す。
【表7】
______
(1)グラフより推定
(2)推定値に基づいて計算
【0061】
ナノ繊維含有濾材は、特許実施形態よりも約2桁低い貫通率をもたらした。特許実施形態は、非帯電サンプルよりも約50%高い品質係数QFをもたらしたのに対して、ナノ繊維含有濾材は、非帯電サンプルよりも約300%高い品質係数QFをもたらした。
【0062】
5、25、及び50gsmでナノ繊維濾過層をコーティングした開示される多層濾材の3種のサンプルをコロナ帯電かつハイドロ帯電し、16日間保存後に試験し、初期NaCl貫通率及び品質係数QFを判定した。それらの結果を下の表6に示す。
【表8】
【0063】
サンプルは、帯電を大幅に保持した。ナノ繊維は、電界紡糸を用いて製造してもよい。しかしながら、ツァイ(Tsai)らによる、電界紡糸の理論と技術(Electrospinning Theory and Techniques)(第14回国際TANDEC不織布会議年会(Annual International TANDEC Nonwovens Conference)、2004年11月9〜11日)で報告されるように、電界紡糸繊維は、その電荷を2〜3日以内に失う。
【0064】
(実施例2)
実施例1の方法を用いて、坪量35gsm、厚さ0.045cm(0.018インチ)、及びEFD 20μmのスパンボンドウェブを、ダイプロ(DYPRO)3860ポリプロピレンから調製した。ナノファイバーズ社(Nanofibers, Inc.)の76.2cm幅の繊維成形装置を用いて、得られた支持層ウェブを4.6、7.0、及び27.44gsmの坪量のポリプロピレンナノ繊維でコーティングした。ナノ繊維は、約0.65μmの平均繊維直径を有した。得られた多層濾材サンプルの追加特性を以下表7に示す。圧力低下値は流速32リットル/分で得た。
【表9】
【0065】
これらのサンプルをハイドロ帯電し、ナノ繊維濾過層を含む帯電多層濾材を得ることができた。運転番号2−2のナノ繊維を、SEMを用いて検査し繊維径の分布を判定した。以下表8及び表9に結果を示す。
【表10】
【表11】
【0066】
(実施例3)
55gsmの坪量、1mmの厚さ、及び8.4μmのEFDを有するプロピレンのメルトブロウン支持層ウェブを、50.8cm幅のメルトブロウン加工ラインで調製した。実施例2の方法を用いて、支持体ウェブを、1.8、3.0、及び7.2gsmの坪量のダイプロ(DYPRO)3860ポリプロピレンから作製したナノ繊維でコーティングした。ナノ繊維の平均繊維直径は約0.77μmであった。得られた多層濾材サンプルの追加特性を以下の表10に示す。圧力低下値は流速32リットル/分で得た。
【表12】
【0067】
これらのサンプルをハイドロ帯電し、ナノ繊維濾過層を含む帯電多層濾材を得ることができた。
【0068】
(実施例4)
エアレイド不織布支持体ウェブを、30.5cm幅のランド・ウェバー(Rando-Webber)機器で調製した。供給した繊維の組成は、32デニール×76mmのポリエチレンテレフタレート繊維であるT293(インビスタ(Invista)から入手可能)80%、及び、2デニール×38mmの2成分coPET/PETのシース/コア繊維(シースの融点が約110℃)であるセルボンド(CELBOND)(商標)T254(インビスタ(Invista)から入手可能)20%であった。エアレイドウェブの平均坪量は42gsmであった。実施例2の方法を用いて、支持体ウェブを、30、41、及び126gsmの坪量のナノ繊維でコーティングした。ナノ繊維の平均繊維直径は約0.60μmであった。得られた多層濾材サンプルの追加特性を以下表11に示す。圧力低下値は流速32リットル/分で得た。
【表13】
【0069】
これらのサンプルをハイドロ帯電し、ナノ繊維濾過層を含む帯電多層濾材を得ることができた。
【0070】
本発明の多数の実施形態を記載してきた。いずれにしても、本発明から逸脱することなく様々な修正を行ってもよいことが理解されるであろう。したがって、その他の実施形態も、以下の特許請求の範囲の範疇にある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維性空気濾過ウェブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に空気濾過ウェブの濾過効率は、サブミクロン粒子を含有する気流に暴露されるとき、低下する。濾過効率は、例えば、塩化ナトリウム又はフタル酸ジオクチルの粒子を含有するチャレンジエアゾールを用いて、パーセント貫通テストにより評価することができる。初期貫通率及び最大貫通率共に、こうしたテストにより決定することができる。最大貫通率値は、フィルターの耐用期間を示すため、特に興味深い。
【0003】
濾過効率を改善するために、様々な帯電技術が採用されてきた。しかしながら、油状エアゾールなどの特定の物質は、徐々に電荷を低下させることが知られている。高い初期濾過効率は、ニードルフェルトなどの帯電濾材、又は、帯電スパンボンドウェブ若しくはメルトブロウンウェブを用いて達成できる。しかしながら、特に繊維直径が比較的大きい帯電濾材にも、不必要に大きい坪量が要求される場合がある。粗繊維性の帯電濾材は、多くの場合高い初期効率を有するが、フィルターが微細粒子を堆積するにつれて、効率を著しく低下させることがある。帯電濾材におけるこの効率低下は、エレクトレット劣化と呼ばれることがある。米国暖房冷凍空調技術者協会(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers, Inc.)(ASHRAE)の規格No.52.2、表題「粒径による全体換気空気清浄装置の除去効率の試験方法(Method of Testing General Ventilation Air Cleaning Devices for Removal Efficiency by Particle Size)」では、冷暖房空調設備(HVAC)用フィルターを格付けする最小効率値(MERV)を決定する。エレクトレット劣化の理由を説明する規格No.52.2の改定案は、エレクトレットフィルターが比較的割合の高い小粒子に暴露されるように、規格が変更される可能性がある。もし成立すれば、これらの規格の変更点により、典型的なエレクトレット濾材のMERV等級は、2〜3点下がるであろう。
【0004】
一般的に、微細繊維(例えば、ナノ繊維)も高い濾過効率に寄与するが、繊維直径が小さくなるにつれて、圧力低下が典型的にみられる。例えば、サブミクロン繊維を含有する繊維ガラス複合物を用いて、高い初期濾過効率を達成することができるが、これら良好な初期濾過効率は、多くの場合初期圧力を大きく低下させて達成される。一般に繊維の再利用ができず、その脆性のため破壊傾向があるという点で、ガラス繊維にも問題がある。ガラス繊維フラグメントは、呼吸器刺激性又は皮膚刺激性の原因となる恐れもある。ポリマーナノ繊維製の濾材は、ガラス繊維の代わりに使用されている。しかしながら、ポリマーナノ繊維は、ガラス繊維よりも耐薬品性及び耐溶媒性が悪い。例えば、電界紡糸で製造されたポリマーナノ繊維は、紡糸された溶媒の影響が最小限である。また、現在入手可能である多くのナノ繊維は、通常は、多くの用途においてコスト超過となるほど非常に低速で製造される。電界紡糸ナノ繊維は、通常は、一日あたりグラムオーダーの速度で製造され、標準的な濾材と比較すると、ブロウンガラスナノ繊維は比較的高価である。高速で製造可能な海島型ナノ繊維でさえ、取り外し可能な海と、海を取り外すプロセス工程を必要とするため、製造コストがかかる。
【0005】
初期貫通率値及び最大貫通率値は、相関関係が弱い場合がある。この相関関係の欠如により、初期貫通の測定値を基準とした最大貫通率値の予測が困難になる。代わりに最大貫通率値を測定する場合もあるが、微小(例えば、サブミクロン)粒子に暴露された濾材の測定には時間がかかる場合がある。ウェブの初期貫通率値及び最大貫通率値がほとんど相関しないとき、フィルターの設計もより困難になる場合がある。
【0006】
繊維性空気濾過ウェブは、例えば、米国特許第4,011,067号(ケアリー(Carey))、同第4,215,682号(キュービック(Kubik)ら)、同第4,592,815号(ナカオ(Nakao))、同第4,729,371号(クルーガー(Krueger)ら)、同第4,798,850号(ブラウン(Brown))、同第5,401,446号(ツァイ(Tsai)ら)、同第5,496,507号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら、‘507)、同第6,119,691号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら、‘691)、同第6,183,670 B1号(トロビン(Torobin)ら、‘670)、同第6,315,806 B1号(トロビン(Torobin)ら、‘806)、同第6,397,458 B1号(ジョーンズ(Jones)ら、‘458)、同第6,554,881 B1号(ヒーリー(Healey))、同第6,562,112 B2号(ジョーンズ(Jones)ら、‘112)、同第6,627,563 B1号(ヒューバティ(Huberty))、同第6,673,136 B2号(ギリンガム(Gillingham)ら)、同第6,716,274 B2号(ゴギンズ(Gogins)ら)、同第6,743,273 B2号(チャン(Chung)ら)、並びに同第6,827,764 B2号(スプリンゲット(Springett)ら)、及びツァイ(Tsai)らによる、電界紡糸の理論と技術(Electrospinning Theory and Techniques)(第14回国際TANDEC不織布会議年会(Annual International TANDEC Nonwovens Conference)、2004年11月9〜11日)に記載されている。その他の繊維性ウェブは、例えば、米国特許第4,536,361号(トロビン(Torobin))、及び同第5,993,943号(ボダギ(Bodaghi)ら)に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、小粒子を含有する気流に暴露した後においても、驚くほど有効な濾過性能を有する帯電空気濾過材料を提供する。開示される濾材は、非常に良好な電荷保持能を有し、初期貫通率値及び最大貫通率値の相関関係が、典型的なエレクトレット濾材の場合と比較してはるかに優れている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明の濾材は、
a)約12〜約300ミリメートル(mm)の長さを有する複数の絡み合ったナノ繊維を含むハイドロ帯電(hydrocharged)繊維性濾過層と、
b)多孔質のロールツーロール方式で加工可能な支持層と、を含む。
【0009】
開示される濾材における濾過層は、例えば、米国特許第4,536,361号又は同第6,315,806 B1号により製造されてよく、例えば、米国特許第5,496,507号によりハイドロ帯電している。得られる濾材は、微粒子への暴露後、参照特許で開示される濾材の場合よりも良好な濾過効率を提供すると考えられ、初期貫通率値及び最大貫通率値の相関関係が強い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】本発明による多層濾材の概略断面図。
【図1b】本発明による多層濾材の概略断面図。
【図2a】本発明によるプリーツフィルターの斜視図。
【図2b】本発明による使い捨て個人用マスク装置の部分的断面の透視図。
【図3a】本発明により開示される濾材における濾過層の走査型電子顕微鏡写真。
【図3b】本発明により開示される濾材における濾過層の走査型電子顕微鏡写真。
【図4】本発明の濾材における濾過層の坪量に対する圧力低下を示すプロット。
【図5】本発明の濾材における濾過層の坪量に対する貫通率を示すプロット。
【図6】種々の濾過層の坪量において、圧力低下に対して貫通率が相関しているプロット。
【図7】本発明の濾材における塩化ナトリウムチャレンジ量に対する貫通率を示すプロット。
【図8】本発明の濾材における塩化ナトリウムチャレンジ量に対する圧力低下を示すプロット。
【図9】初期塩化ナトリウム貫通率に対する最大貫通率のプロット。
【図10】初期塩化ナトリウム貫通率に対する最大貫通率のプロット。
【図11】推定チャレンジ量に対するフタル酸ジオクチル貫通率及び圧力低下を示すプロット。 図面の様々な図における同様の参照記号は、同様の要素を指し示す。図中の要素は原寸に比例していない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で用いる用語を以下に定義する。
【0012】
「エアゾール」は、固体又は液体形状に懸濁した粒子を含有するガスを意味する。
【0013】
「坪量」は、フィルター又はフィルター層に関して使用するとき、フィルター又はフィルター層の主表面における、単位表面積あたりのフィルター又はフィルター層中の材料の重量を意味する。
【0014】
「帯電(した)(charged)」という用語は、繊維群に関して使用するとき、7cm/秒の面速度におけるフタル酸ジオクチル貫通率(%DOP)について評価した際、1mmのベリリウムフィルターの付いた、吸収線量20グレイ、80KVpのX線への暴露後に、品質係数QF(下で説明する)で少なくとも50%減を示す繊維を意味する。
【0015】
「連続的」という用語は、繊維又は繊維群に関して使用するとき、本質的に無限のアスペクト比(すなわち、例えば、少なくとも約10,000以上の長さ対寸法比)を有する繊維を意味する。
【0016】
「有効繊維直径」(EFD)という用語は、繊維群に関して使用するとき、円形又は非円形であるいずれかの断面形状を持つ繊維のウェブに関して、デイビーズ,C.N.(Davies, C. N.)著「空中に浮遊する埃及び粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)」(ロンドンの英国機械工学学会(Institution of Mechanical Engineers, London)、会報1B、1952年)に記載の方法に従って求めた値を意味する。
【0017】
「効率」は、フィルターに関して使用するとき、フィルターにより除去されたチャレンジエアゾールの量をパーセントで表したものを意味し、貫通率に基づき以下の式で決定される。
効率(%)=100−貫通率(%)
例えば、貫通率5%を示すフィルターは、対応する95%の効率を有することになる。
【0018】
「ハイドロ帯電(した)(hydrocharged)」は、繊維群に関して使用するとき、極性流体(例えば、水、アルコール、ケトン、又は極性流体の混合物)と密接する状態におき、続いて繊維が帯電するのに十分な条件下で乾燥させた繊維を意味する。
【0019】
「層」は、2つの主表面と、主表面間に厚みを有するフィルターの一部を意味し、層は、主表面に沿って不定長さで延びることがあり、又は、定められた境界を有することがある。
【0020】
「大部分」は、50%超を意味する。
【0021】
「ナノ繊維」は、1μm未満のメジアン径(顕微鏡及び手集計により決定される)を有する繊維を意味する。
【0022】
「不織布ウェブ」は、例えば、ある組の繊維が、規則正しい配列で別の組の繊維の上及び下に配置されるといった、所定の方式に配列された繊維を有さないウェブを意味する。
【0023】
「ポリマー」は、モノマーから製造された巨大分子を意味し、ホモポリマー、コポリマー、及びポリマーブレンドを含む。
【0024】
「ポリマー材料」は、少なくとも1種のポリマー、及び場合により、ポリマーに追加するその他成分を含む材料を意味する。
【0025】
「多孔質」は、通気性を意味する。
【0026】
「圧力低下」は、流体流(例えば、気流)が通るフィルターの上流側及び下流側の間で、流体流の静圧が低下することを意味する。
【0027】
「マスク装置」は、ヒトの呼吸器官上に着用するよう設計され、汚染物質が着用者の気道に侵入するのを防いだり、着用者の呼吸により放出される病原菌や他の汚染物質に、他の人物や物質が暴露されるのを防いだりするシステム又は装置を意味し、フィルター付きフェイスマスクを含むが、これに限定されない。
【0028】
「ロールツーロール方式で加工可能」は、フィルター又は支持層に関して使用するとき、ロールツーロールウェブ処理装置を用いて別個のフィルターへの転換を所望する場合、フィルター又は支持層が製造可能であることを意味する。
【0029】
用語「径」は、繊維に関して使用するとき、円形断面を有する繊維については、繊維直径を意味し、又は非円形断面を有する繊維を横切って構成されてもよい横断面の最長弦の長さを意味する。
【0030】
「実質的に全て」は、少なくとも80%を意味する。
【0031】
図1aは、開示される多層濾材の一実施形態の概略断面図を示す。濾材1は、支持層4に隣接する繊維性濾過層2を備える。層2はナノ繊維6を含有し、例えば、米国特許第4,536,361号により調製することができる。繊維6は絡み合っており、層12中の、好ましくは大部分、より好ましくは実質的に全ての繊維に相当する。繊維6は、約12〜約300mm、約25〜約200mm、又は約50〜約150mmの有限長を有し、連続的ではない。層2は多孔質であるが、濾材1を通過する流体(例えば、空気)中に一緒に運ばれる小粒子(例えば、マイクロメートルサイズ及びより小さい粒子)を捕捉するのに十分に小さい孔径を有する。層4も多孔質であるが、典型的には層2よりもはるかに大きい孔径を有する。例示する実施形態では、層4は糸目の粗いニット織物である。流体は、様々な方向(例えば、濾材1に垂直に層2を通過してから層4を通過、又は濾材1に垂直に層4を通過してから層2を通過)で濾材1を貫流してもよい。空気濾過においては、典型的な流れの方向は、層4を通過してから層2を通過することである。
【0032】
図1bは、開示される多層濾材の別の実施形態の概略断面図を示す。濾材10は、支持層14に隣接する繊維性濾過層12を備える。層12は、1マイクロメートル以上のメジアン繊維径を有する複数の第1の繊維16、及び、サブミクロン径を有し、かつ層12中の好ましくは大部分の繊維に相当する複数の第2の繊維18を含有する。層12は、例えば、米国特許第6,315,806 B1号により調製することができる。繊維16は、好ましくは層12中の半分未満の繊維に相当する。繊維16は、層12中で、例えば総繊維数(又は繊維の代表的なサンプルについて)の約1〜約49、約2〜約40、又は約3〜約20、又は約5〜約15パーセントに相当する。繊維18は、層12中で、例えば総繊維数(又は繊維の代表的なサンプルについて)の約51〜約99、又は約60〜約98、又は約80〜約97、又は約85〜約95パーセントに相当する。繊維18は、例えば約12〜約300mm、約25〜約200mm、又は約50〜約150mmの有限長を有し、繊維16より短い平均長を有してもよいし、繊維16より長い平均長を有してもよい。繊維18は、第1の繊維16の一部に少なくとも部分的に巻かれてもよいし、複数の第1の繊維16により層12に支持されてもよい。層12は多孔質であるが、濾材10を通過する流体中に一緒に運ばれる小粒子を捕捉するのに十分に小さい孔径を有する。層14も多孔質であるが、典型的には層12よりもはるかに大きい孔径を有する。例示する実施形態では、層14は不織布ウェブ内に配置される繊維20を含む。流体は、様々な方向(例えば、濾材10に垂直に層12を通過してから層14を通過、又は濾材10に垂直に層14を通過してから層12を通過)で濾材10を貫流してもよい。空気濾過においては、標準的な流れの方向は、層14を通過してから層12を通過し得る。
【0033】
図2aは、開示される多層濾材(例えば、濾材1又は10)を離間したプリーツ24の列に成形することにより作製されているプリーツフィルター22の斜視図を示す。フィルター22を「そのまま」使用してもよいし、又は、(例えば、平面的に伸張された金属面層、ホットメルト接着剤の補強線、接着剤で結合された補強バー、又はその他選択的補強支持体により)更に安定化又は補強され、所望により、例えば、HVACシステムで用いるための交換可能なフィルターを提供するために好適なフレーム(例えば、金属フレーム又は厚紙フレーム)に取り付けられたフィルター22の選択された部分を有してもよい。多層濾材は別として、フィルター22の構造に関する更なる詳細については、当業者には周知となろう。
【0034】
図2bは、カップ型の使い捨て個人用マスク装置26の透視図及び部分断面図を示す。マスク装置26は、内部カバーウェブ28、開示される多層濾材(例えば、濾材1又は10)で作製される濾過層30、及び外部カバー層32を備える。溶接縁部34は、これらの層を一体に保持して顔面封止領域を提供し、マスク装置26の縁部からの漏れを低減する。この漏れは、例えば、アルミニウムなどの金属、又はポリプロピレンなどのプラスチック製の柔軟な極軟鼻バンド36により、更に低減することができる。マスク装置26は、タブ40を用いて固定される調整可能なヘッド及びネックストラップ38、及び呼気弁42もまた備える。多層濾材は別にして、マスク装置26の構造に関する更なる詳細については、当業者には周知となろう。
【0035】
開示される濾過層は、別個に形成されるよりは、好ましくは支持層上に直接形成される。濾過層は、同一の又は異なるポリマー繊維形成材料から製造される1種以上の繊維を含むことができる。濾過層中の大部分及び好ましくは全ての繊維は、エレクトレット電荷を十分に受容し、適切な電荷分離を維持できる繊維形成材料から形成される。好ましいポリマー繊維形成材料は、室温(22℃)で1014オーム−センチメートル以上の体積抵抗率を有する非導電性樹脂である。好ましくは、この樹脂は、約1016オーム−センチメートル以上の体積抵抗性を有する。ポリマー繊維形成材料の固有抵抗は、標準検査ASTM D 257−93に従って測定できる。使用してもよいポリマーの一例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのポリオレフィン及び環状オレフィンコポリマー、並びにこれらのポリマーの組み合わせを含む熱可塑性ポリマーが挙げられる。使用してもよいが、荷電が困難であるか、又は電荷を迅速に失うことがある他のポリマーとしては、ポリカーボネート類、スチレン−ブタジエン−スチレン及びスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマーなどのブロックコポリマー類、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ポリアミド類、ポリウレタン類、並びに当業者には周知であろう他のポリマーが挙げられる。濾過層繊維の一部又は全部を、所望される場合、スプリット繊維などの複合成分繊維から製造してもよい。好適な複合成分(例えば、2成分)繊維として、サイド−バイ−サイド型、シース−コア型、セグメント化パイ型、海島型、チップ化及びセグメント化リボン型繊維が挙げられる。スプリット繊維が採用される場合、スプリットは、カーディング、エアジェット、エンボス加工、カレンダー加工、水流交絡、又はニードルパンチングを含む、様々な当業者に周知であろう技術を用いて実施又は促成されてもよい。濾過層は、好ましくは、ポリ−4−メチル−1ペンテン若しくはポリプロピレンの単成分繊維、又は、例えば外側表面上にポリ−4−メチル−1ペンテン若しくはポリプロピレンを用いた層状又はコア−シース配置である、ポリ−4−メチル−1ペンテン及びポリプロピレンの2成分繊維から調製される。特に湿潤環境でのポリプロピレンの電荷保持性能のため、最も好ましくは、濾過層はポリプロピレンホモポリマーの単成分繊維から調製される。添加剤をポリマーに添加し、ウェブの濾過性能、エレクトレット帯電機能、機械的特性、老化特性、呈色性、表面特性又はその他の重要な特性を強化してもよい。代表的な添加剤としては、充填剤、核剤(例えば、ミリケンケミカル(Milliken Chemical)から市販されているミラッド(MILLAD)(商標)3988、ジベンジリデンソルビトール)、エレクトレット帯電増強剤(例えば、トリステアリルメラミン、及びチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)のチマソルブ(CHIMASSORB)(商標)119及びチマソルブ(CHIMASSORB)944などの様々な光安定剤)、硬化開始剤、強化剤(例えば、ポリ(4−メチル−1−ペンテン))、界面活性剤、並びに表面処理(例えば、ジョーンズ(Jones)への米国特許第6,398,847 B1号、同第6,397,458 B1号、及び同第6,409,806 B1号に記載されているように、油霧環境における濾過性能を向上させるためのフッ素原子処理)が挙げられる。こうした添加剤の種類及び添加量は、当業者には周知であろう。例えば、エレクトレット帯電増強剤は、約5重量%未満、及びより典型的には約2重量%未満の量で一般に存在する。ポリマー繊維形成材料はまた、好ましくは、電気伝導度を顕著に上昇できる、ないしは別の方法で繊維の静電荷の受容及び保持能力を顕著に干渉できる静電気防止剤などの成分を実質的に含まない。
【0036】
濾過層は、様々な坪量、繊維径、厚さ、圧力低下、及びその他特徴を有することができ、ロールツーロール方式で加工不可能であるように、それ自体は十分に脆弱であってもよい。濾過層は、例えば、約0.5〜約300g/m2(gsm)、約0.5〜約100gsm、約1〜約50gsm、又は約2〜約40gsmの範囲の坪量を有してもよい。比較的低い坪量、例えば、約2、5、15、25、又は40gsmが濾過層に好ましい。濾過層中の繊維は、例えば、約10μm未満、約5μm未満、又は約1μm未満のメジアン繊維径を有してもよい。濾過層の厚さは、例えば、約0.1〜約20mm、約0.2〜約10mm、又は約0.5〜約5mmであってもよい。ある支持層(例えば、粗く非平坦な支持層)に極めて低い坪量で適用されるナノ繊維濾過層は、全体の濾材の厚さを変えないことがある。濾過層の坪量及び厚さは、例えば、回収装置の速度又はポリマーのスループットを変更することにより、制御又は調整することができる。
【0037】
濾過層が支持層上に形成でき、ロールツーロール加工装置を用いて、得られた濾材を必要に応じて更に変換できるように、支持層は十分に堅牢である。支持層は、様々な材料から形成でき、様々な坪量、厚さ、圧力低下、及びその他の特徴を有することができる。例えば、支持層は、不織布ウェブ、織布、編布、連続気泡フォーム、又は穿孔付き膜であってもよい。不織布である繊維性ウェブは、好ましい支持層である。こうした不織布ウェブの製造に好適な繊維性前駆体として、上述のポリマー繊維形成材料、及び、静電荷を容易に受容しない又は維持しないその他のポリマー繊維形成材料が挙げられる。支持層は、天然繊維、又は合成及び天然繊維のブレンドから形成されてもよい。不織布ウェブから作られる場合、支持層は、例えば、メルトブロウン加工、溶融紡糸加工、若しくはその他好適なウェブ加工技術を用いて溶融熱可塑性ポリマーから、カーディング加工若しくはランド・ウェバー(Rando-Webber)機器からの付着加工を用いて天然繊維又は合成及び天然繊維のブレンドから、又は当業者には周知であろうその他技術を用いて形成されてもよい。織布ウェブ又は編布から作られる場合、支持層は、例えば、マイクロデニール連続フィラメント又はステープルファイバー糸(すなわち、約1未満のフィラメントあたりのデニール(dpf)を有する糸)から形成され、当業者には周知であろう好適な加工技術を用いて織物又は編物の支持布へ加工されてもよい。支持層は、例えば、約5〜約300gsm、より好ましくは約40〜約150gsmの範囲の坪量を有してもよい。支持層の厚さは、例えば、約0.2〜約40mm、約0.2〜約20mm、約0.5〜約5mm、又は約0.5〜約1.5mmであってもよい。
【0038】
所望の場合、更なる層を開示される濾材に追加してもよい。代表的な追加の層は当業者には周知であり、保護層(例えば、抗剥離層、抗刺激層、及びその他のカバー層)、強化層、並びに吸着層が挙げられる。吸着粒子(例えば、活性炭粒子又はアルミナ粒子)もまた、当業者には周知であろう方法を用いて濾材内(例えば、支持層14内)に導入してもよい。
【0039】
開示される多層濾材のハイドロ帯電は、濾材上に極性流体を吹付け、浸漬、又は濃縮し、続いて濾材が帯電するように乾燥するといった様々な技術を用いて行うことができる。ハイドロ帯電を説明している代表的な特許としては、上述の米国特許第5,496,507号、並びに同第5.908,598号(ルソー(Rousseau)ら)、同第6,375,886 B1号(アンガドジバンド(Angadjivand)ら、‘886)、同第6,406,657 B1号(エイツマン(Eitzman)ら、‘657)、同第6,454,986 B1号(エイツマン(Eitzman)ら、‘986)、及び同6,743,464 B1号(インズリー(Insley)ら)が挙げられる。好ましくは、水は極性ハイドロ帯電液として用いられ、濾材は、好ましくは、液体噴流又は任意の好適な噴霧手段により提供される液滴流を用いて、極性ハイドロ帯電液に暴露される。繊維を水圧で交絡するのに有用な装置は、一般的にハイドロ帯電を行うのに有用であるが、ハイドロ帯電においてその操作は、一般に水流交絡で用いられるものよりも低い圧力で行われる。米国特許第5,496,507号は、代表的な装置について説明しており、その装置では、濾過性能増強エレクトレット電荷を有し、後で乾燥される濾材を提供するのに十分な圧力で、水の噴流又は水滴流が濾材上に吹付けられる。最適な結果を得るのに必要な圧力は、用いる噴霧器の種類、濾過層12を形成するポリマーの種類、濾材の厚さ及び密度、並びに、コロナ帯電などの前処理がハイドロ帯電の前に行われるかどうかにより変わる。一般的には、約69〜約3450kPaの範囲の圧力が好適である。好ましくは、水滴を提供するために使用される水は、相対的に純粋である。蒸留水又は脱イオン水が、水道水より好ましい。
【0040】
開示される濾材は、静電帯電(例えば、米国特許第4,215,682号、同第5,401,446号、及び同第6,119,691号に記載のような)、摩擦帯電(例えば、米国特許第4,798,850号に記載のような)、又はプラズマフッ素化(例えば、米国特許第6,397,458 B1号に記載のような)などのハイドロ帯電の前又は後に、その他の帯電技術で処理してもよい。ハイドロ帯電前のコロナ帯電、及び、ハイドロ帯電前のプラズマフッ素化は、好ましい複合帯電技術である。
【0041】
開示される多層濾材を評価し、貫通パーセント、圧力低下、及び濾過品質係数QF((特に指示のない限り)NaCl粒子については60リットル/分、DOP粒子については85リットル/分の流速で供給されるNaCl又はDOP粒子を含有するチャレンジエアゾールを用い、TSI(商標)モデル8130高速自動濾過試験機(TSI社(TSI Inc.)から市販)を用いて評価される)を求めることができる。NaCl試験において、粒子は、2%のNaCl溶液から生成してもよく、約16〜23mg/m3の大気中濃度で、約0.075μmの直径を有する粒子を含むエアゾールを提供し、自動濾過試験機は、加熱機及び粒子中和器を稼動しながら操作してもよい。DOP試験において、エアゾールは、約100mg/m3の濃度で、約0.185μmの直径を有する粒子を含んでもよく、自動濾過試験機は、加熱機及び粒子中和器を稼動させずに操作してもよい。較正された光度計をフィルターの入口と出口に使用し、濾材を通る粒子濃度及び粒子貫通%を測定することができる。MKS圧力変換器(MKSインスツルメンツ(MKS Instruments)から市販される)を使用して、濾材通過の圧力低下(ΔP、mm H2O)を測定してもよい。式:
【数1】
は、QFを算出するために用いてもよい。選択されたチャレンジエアゾールを測定又は計算することができるパラメータは、初期粒子貫通率、初期圧力低下、初期線質係数QF、最大粒子貫通率、最大貫通率での圧力低下、最大貫通率でのミリグラムの粒子荷重(最大貫通率の時間までのフィルターに対する総重量チャレンジ)を含む。最大貫通率を決定する荷重テストは、貫通率及び圧力低下を連続的に測定しながら、フィルターにエアゾールを連続的に曝すことにより行われ、このテストは、典型的には明確に最大貫通率が観察された後に終了する。開示される濾材については、初期貫通率と最大貫通率との間に比較的良好な相関関係があるため、初期品質係数QF値は、全般性能に対する非常に信頼できる指標となり、初期QF値が高いほど濾過性能が良いことを示し、初期QF値が低いほど濾過性能が落ちていることを示す。5.5cm/sの流速で0.075μmのNaCl粒子に暴露されるとき、濾材は、好ましくは少なくとも約0.9mm−1 H2O、及びより好ましくは少なくとも約1.8mm−1 H2Oの初期品質係数QFを有する。10cm/sの流速で0.075μmのNaCl粒子に暴露されるとき、濾材は、好ましくは少なくとも約0.4mm−1 H2O、及びより好ましくは少なくとも約0.8mm−1 H2Oの初期品質係数QFを有する。14cm/sの流速で0.185μmのDOP粒子に暴露されるとき、濾材は、好ましくは少なくとも約0.2mm−1 H2O、及びより好ましくは少なくとも約0.4mm−1 H2Oの品質係数QFを有する。
【0042】
開示される多層濾材はシート状で用いてもよいし、成形、折り重ね、ないしは別の方法で三次元形状を有する濾材形状に形成してもよい。例えば、開示される濾材は、例えば米国特許第6,740,137 B2号(クボカワ(Kubokawa)ら)及び米国特許出願公開第2005/0217226 A1号(サンデット(Sundet)ら、‘226)に記載される方法及び構成要素を用いて、プリーツフィルター状に成形してもよい。一般に、少なくともいくつかの繊維交点で互いに繊維を固着する(又は更に固着する)加熱の使用により、プリーツ成形を補助するであろう。プリーツ成形は、当業者に周知のその他の方法及び構成要素を用い、実施又は増大してもよい。また、フィルター要素の選択された部分は、先端安定化(例えば、平面のワイヤー面層若しくはホットメルト接着剤の線)又は周辺補強(例えば、縁部接着剤若しくはフィルターフレーム)を追加することによって、安定化又は補強されてもよい。開示される濾材はまた、米国特許第4,536,440号(バーグ(Berg))、同第4,547,420号(クルーガー(Krueger)ら)、同第5,374,458号(ブルジョ(Burgio))、同第6,394,090 B1号(チェン(Chen)ら)、同第6,827,764 B2号(スプリンゲット(Springett)ら)、及び同第7,069,930 B2号(ボストック(Bostock)ら)に記載されるような当業者には周知であろう方法を用いて、マスク装置状に形成してもよい。
【0043】
EFDは、(特に指示がない限り)85リットル/分の気流速度(13.8cm/秒の面速度に相当する)を採用して、デイビーズ,C.N.(Davies, C. N.)著「空中に浮遊する埃及び粒子の分離(The Separation of Airborne Dust and Particles)」(ロンドンの英国機械工学学会(Institution of Mechanical Engineers, London)、会報1B、1952年)に記載されている方法を用いて求めてもよい。
【0044】
開示される多層濾材は、効率がMERV12以上のものに特に好適であろう冷暖房空調設備(HVAC)用濾過用途に用いることができる。帯電ナノ繊維は、通常HEPA(高性能)、ULPA(超高性能)、及びより高い性能が要求されるクリーンルームの濾過用途でも用いることができる。開示される多層濾材は、個人用呼吸保護装置、例えば、手入れの要らないマスク装置、防塵マスク、及び顔半面用マスク装置、顔全面用マスク装置、又は電動マスク装置のカートリッジフィルターで用いることができる。多層濾材は、自動車用空気濾過、吸気濾過、真空バッグ、及びその他真空フィルター装置でも用いることができる。多層濾材は、空気清浄機用途でも用いることができる。
【0045】
本発明を、以下の例証的な実施例で更に説明しており、ここで、全ての部及び割合は、指示がない限り重量基準である。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
米国特許第6,607,624 B2号(ベリガン(Berrigan)ら、‘624)及び同第6,916,752 B2号(ベリガン(Berrigan)ら、‘752)に示されるような装置、及び2006年7月31日に出願された米国特許出願第11/457,899号に示されるような急冷流体加熱機を用い、3種のポリプロピレン・スパンボンド支持層ウェブを、メルトフローレートインデックスが100であるダイプロ(DYPRO)(商標)3860ポリプロピレン(トータル・ペトロケミカルズ(Total Petrochemicals)から入手可能)から調製した。支持体ウェブの特徴を以下の表1に示す。
【表1】
【0047】
運転番号1−1の支持層を、3m/分のベルト速度及び29kVのコロナ電圧で操作する4ビームベルトのコロナ帯電ユニットを用いてコロナ帯電し、次いで1.5m/分のベルト速度、0.8MPaの水圧、及び脱イオン水で操作するハイドロ帯電ユニットを用いてハイドロ帯電した。ウェブの両側に水を噴霧し、真空により水を除去した。運転番号1−2及び1−3の支持層は帯電しなかった。ナノファイバーズ社(Nanofibers, Inc.)(ノースカロライナ州アバディーン(Aberdeen))の単一エミッター、30.5cm幅の繊維成形装置を用いて、運転番号1−1及び1−2の支持層ウェブを5、15、25、及び50gsmの坪量のポリプロピレンナノ繊維でコーティングし、運転番号1−3の支持層ウェブを5、8、10、及び13gsmの坪量のポリプロピレンナノ繊維でコーティングした。運転番号1−1及び1−2の支持層ウェブに適用したポリプロピレンはナノファイバーズ社(Nanofibers, Inc.)の担当者が選択し、運転番号1−3の支持層ウェブに適用したポリプロピレンは、メルトフローレート・インデックスが350であるFINA(商標)3960ポリプロピレン(トータル・ペトロケミカルズ(Total Petrochemicals)から入手可能)とした。ナノ繊維層は、スパンボンド支持層に良好に接着した。これは、ナノ繊維がスパンボンド支持層上に付着されるときに起こる、交絡と熱接着の両方によるものと思われる。
【0048】
運転番号1−1の支持体上の5gsmナノ繊維層、及び、運転番号1−3の支持体上の11gsmナノ繊維層の金/パラジウムコーティングされたサンプルを、カール・ツァイス社(Carl Zeiss SMT)のLEO VP 1450走査電子顕微鏡を高真空下、加速電圧15kV、作動距離(WD)15mm、及び傾斜0°の条件で操作し、100倍〜3,000倍の倍率の走査電子顕微鏡により評価した。繊維直径は、テキサス大学ヘルスサイエンスセンターサンアントニオ校(University of Texas Health Science Center at San Antonio)のUTHSCSAイメージツール(UTHSCSA IMAGE TOOL)画像解析プログラムを用いて、1000倍以上の倍率で撮影した画像から測定した。ナノ繊維は、表2に示す特徴を有していた。
【表2】
【0049】
11gsm濾過層のSEM写真を図3a(2000倍)及び図3b(250倍)に示す。特に、ナノ繊維が絡み合っており、サブミクロン径を有するものの写真を示す。
【0050】
多層濾材サンプルを、運転番号1−1の支持層について記載した手順を用いてコロナ帯電、又は、コロナ帯電かつハイドロ帯電した。追加のサンプルを、0.039kPa(300ミリトル)において100sccmのペルフルオロプロパン、及び1分間1.0kW暴露の処理条件を用いて、プラズマフッ素化システム上でプラズマフッ素化した。サンプルをひっくり返し、プラズマフッ素化処理を繰り返した。次に、上述の手順によりサンプルをハイドロ帯電した。得られた帯電多層濾材サンプルを、続いて評価し、圧力低下を判定した。図4に結果を示す。運転番号1−1の支持層上の多層濾材サンプルについて、約10gsmのナノ繊維により、流速85リットル/分において約2.5〜3mm H2Oの圧力低下が得られると考えられた。より低い坪量のナノ繊維層では、グラム数がほとんどない場合はより高い限界圧力低下が得られると考えられ、これは基材との界面効果の可能性を示した。25及び50gsmのナノ繊維サンプルは、ハイドロ帯電中に圧密されたと考えられ、その結果圧力低下が大きかった。運転番号1−1の濾過層は、運転番号1−3の濾過層よりも、より粒状の、かつ、よりロープ状/束状の繊維を含有し、繊維直径分布が狭くないと考えられ、これらの要因により、運転番号1−1及び1−3の結果間で観察された圧力低下の違いを部分的に説明できる。運転番号1−3の支持層上にコーティングされたナノ繊維は、他のサンプルでみられたものよりも、重量あたりの実質的な圧力低下がより大きいと考えられた。より均一なナノ繊維横置き特性を求めることにより、圧力低下を部分的に制御可能にできる。
【0051】
運転番号1−1(帯電支持層)及び運転番号1−2(非帯電支持層)上にコーティングされた多層濾材を評価して初期DOP貫通率及び品質係数QF値を判定し、続いて種々ナノ繊維の坪量において互いに比較した。図5はDOPの結果を示し、曲線Aはナノ繊維層帯電前の運転番号1−2の支持層上のサンプル、曲線Bはナノ繊維層帯電前の運転番号1−1の支持層上のサンプル、曲線Cはナノ繊維層帯電後の運転番号1−1の支持層上のサンプル、曲線Dはナノ繊維層帯電後の運転番号1−2の支持層上のサンプルを表す。これらの曲線は特に、運転番号1−2の支持層上に形成された多層濾材が、多層濾材の両方の層をハイドロ帯電したとき、より高い品質係数とより低い初期貫通率をもたらすことを示す。曲線Aは、非帯電支持層とナノ繊維層の機械的濾過性能も示す。曲線Bの左方原点は、ナノ繊維重量がゼロにおいてハイドロ帯電支持層ウェブを用いる効果を示す。曲線A及びBを比較すると、ハイドロ帯電支持層ウェブの効果とナノ繊維の効果の両方が、適用されるナノ繊維の各重量について一定のままであることが示される。曲線Cは、最初から帯電支持層とナノ繊維が帯電されるとき、支持体ウェブは影響を受けない(ナノ繊維重量がゼロにおいて観察される貫通率が同じ)が、貫通率は、ナノ繊維が存在すると著しく低下することを示し、ひいてはナノ繊維自体が帯電するようになることを示す。ナノ繊維が帯電するようにならなかった場合、曲線B及び曲線Cは重なり合うだろう。最後に、曲線Dは、ナノ繊維及び支持層の両方を一緒に帯電でき、得られる性能は、支持層よりも主にナノ繊維の寄与による場合があることを示す。
【0052】
種々ナノ繊維の坪量において、貫通率に対して圧力低下をプロットし、コロナ帯電かつハイドロ帯電されたサンプルを評価した。結果を図6に示す。圧力低下及び貫通率値は極めて強く相関し、圧力低下を貫通率値の自然対数と比較するとき、補正係数R2は78%である。
【0053】
運転番号1−3の支持層上に形成された非帯電かつコロナ+ハイドロ帯電サンプルを比較し、種々ナノ繊維の坪量における初期DOP貫通率及び品質係数QFを確認した。更に、10gsmのナノ繊維でコーティングし、コロナ帯電のみ、又は、プラズマフッ素化かつハイドロ帯電サンプルも検査し、一定のナノ繊維コーティング重量における様々な帯電処理の影響を確認した。以下の表3aに結果を示す。
【表3】
【0054】
表3aに示すように、プラズマフッ素化/ハイドロ帯電濾材は、コロナ/ハイドロ帯電濾材、コロナ処理濾材、又は非帯電濾材よりも、低い貫通率と高い品質係数QF値を示した。10gsmのナノ繊維重量では、プラズマフッ素化/ハイドロ帯電濾材は、0.53という最大の品質係数QFを有した。
NaCl荷重テストも実施した。運転番号1−2の支持層上に形成されたコロナ+ハイドロ帯電サンプルを比較し、10cm/秒の面速度を用いて、種々ナノ繊維の坪量における、初期圧力低下、初期NaCl貫通率、初期品質係数QF、最大貫通率での圧力低下、最大貫通%、及び最大貫通率でのチャレンジ量を確認した。以下表3bに結果を示す。
【表4】
【0055】
運転番号1−2及び1−3の支持層上に形成された非帯電、コロナ帯電、コロナ+ハイドロ帯電、及びプラズマフッ素化+ハイドロ帯電サンプルを比較し、種々ナノ繊維の坪量における、初期圧力低下、初期NaCl貫通率、初期品質係数QF、最大貫通率での圧力低下、最大貫通%、及び最大貫通率でのチャレンジ量を確認した。以下表3Cに結果を示す。
【表5】
【0056】
図7は、10gsmのナノ繊維濾過層を含む多層濾材における貫通率対荷重量の曲線を示し、図8は、対応する圧力低下対荷重量の曲線を示す。図7及び図8では、曲線Aは非帯電濾材の結果を示し、曲線Bはコロナ帯電濾材の結果を示し、曲線Cはコロナ+ハイドロ帯電濾材の結果を示し、曲線Dはプラズマフッ素化+ハイドロ帯電濾材の結果を示す。この結果は特に、低い初期貫通率値を有するサンプルが、0.075μmのNaCl粒子での低い最大貫通率をも有することを示す(他の濾材では、初期及び最大貫通率の結果の相関性は乏しいことが多い)。また、4種の帯電技術により、類似する圧力低下−荷重曲線を有する濾材が得られた。
【0057】
荷重挙動を更に調べるため、ナノ繊維濾過層を利用した様々な非帯電及び帯電多層濾材サンプルと、様々な帯電スパンボンドエレクトレットウェブサンプルを比較した。全てのサンプルをダイプロ(DYPRO)3860ポリプロピレンから製造し、全てのサンプルをハイドロ帯電した。サンプルは、坪量が100〜230gsmの範囲、EFDが8〜約15マイクロメートルの範囲であった。サンプルの一部をエレクトレット帯電添加剤(0.25〜2%トリ−ステアリルメラミン又はチマソルブ(CHIMASSORB)944)存在下で製造し、別の一部をこうした添加剤の非存在下で製造した。サンプルの一部をカレンダリングして表面ウェブ特性を改変し、その他のものはカレンダリングしなかった。平滑及び模様付きの両方のカレンダーパターンを用いた。サンプルの一部をハイドロ帯電前に更にコロナ帯電したが、その他のものはしなかった。図9は、運転番号1−2及び1−3の支持層ウェブ上にコーティングされた非帯電及び帯電多層濾材サンプルについて、同一の試験条件下での初期及び最大NaCl貫通率値間の比較を示す。図10は、スパンボンド・エレクトレットについて、同一の試験条件下での初期及び最大NaCl貫通率値間の比較を示す。図9は、2種の異なるキャリアウェブと数種の異なる帯電技術を備えるナノ繊維含有サンプルにおいて、直線になることを示す。ナノ繊維含有サンプルの最大NaCl貫通率は、初期貫通率の結果に基づき適宜予測できた。図10は、スパンボンド・エレクトレットサンプルのばらつきは1桁以上であり、最大NaCl貫通率値が、初期貫通率の結果に基づき確実に予測できないことを示す。
【0058】
更にテストを実施し、10gsmのプラズマフッ素化+ハイドロ帯電ナノ繊維を含む多層濾材について、及び同一の初期圧力低下を有する非帯電繊維ガラスサンプルについて、DOP荷重及び圧力低下を比較した。DOPは、NaClよりも低度のチャレンジであると看做されることがある。繊維ガラス濾材サンプルは、90〜95%の粉塵スポット等級(MERV 14)を提供するとされており、その特性を以下表4に示した。
【表6】
【0059】
平坦な円形ウェブサンプルを用い、流速85リットル/分において、少なくとも200mgの推定DOP荷重がかかるまで荷重テストを実施した。ナノ繊維のテストを一時的に停止し、再度開始すると、収集データを継ぐことになった。両サンプルとも、約11.8mm H2O初期圧力低下を示した。図11中、曲線A及び曲線Bはそれぞれ、ナノ繊維含有濾材サンプル、及び繊維ガラス濾材サンプルについてのDOP荷重曲線を示す。曲線C及び曲線Dはそれぞれ、ナノ繊維含有濾材サンプル、及び繊維ガラス濾材サンプルについての圧力低下曲線を示す。図11に示すように、ナノ繊維含有濾材は、約1%の貫通率から始まり、徐々に上昇して200mgの推定荷重量では13%の貫通率となった。図11には示していないが、ナノ繊維含有サンプルは、400mgの荷重量で約25%の貫通率に達し、400mgを超えると、徐々にではあるが更に上昇すると思われた。繊維ガラスサンプルは、52%の貫通率で始まり、200mgの推定荷重後64%の貫通率まで上昇した。200mgを超えると、徐々にではあるが更に上昇すると思われた。同等のDOP荷重について、両サンプルとも圧力低下では同様の上昇を示した。
【0060】
更なる試験を実施し、運転番号1−3の支持体ウェブ上に10gsmのプラズマフッ素化+ハイドロ帯電ナノ繊維を含む多層濾材を、米国特許第6,183,670 B1号(トロビン(Torobin)ら、‘670)に示される好ましい実施形態(「特許実施形態」)と比較した。特許実施形態は、トロビン(Torobin)ら、‘670において、米国特許第5,401,446号に従って静電的に帯電されており、トロビン(Torobin)ら、‘670の図9に示される濾過性能を示すことが提示される。TSI 8130自動濾過試験機と、トロビン(Torobin)ら、‘670にあるように、面速度5.5cm/秒で流れる直径0.075μmのNaCl粒子を用いて、ナノ繊維含有濾材を評価した。特許実施形態のサンプルが手元になかったため、その濾過性能は、トロビン(Torobin)ら、‘670の図9から得られる値に基づき計算した。得られた比較結果を以下表5に示す。
【表7】
______
(1)グラフより推定
(2)推定値に基づいて計算
【0061】
ナノ繊維含有濾材は、特許実施形態よりも約2桁低い貫通率をもたらした。特許実施形態は、非帯電サンプルよりも約50%高い品質係数QFをもたらしたのに対して、ナノ繊維含有濾材は、非帯電サンプルよりも約300%高い品質係数QFをもたらした。
【0062】
5、25、及び50gsmでナノ繊維濾過層をコーティングした開示される多層濾材の3種のサンプルをコロナ帯電かつハイドロ帯電し、16日間保存後に試験し、初期NaCl貫通率及び品質係数QFを判定した。それらの結果を下の表6に示す。
【表8】
【0063】
サンプルは、帯電を大幅に保持した。ナノ繊維は、電界紡糸を用いて製造してもよい。しかしながら、ツァイ(Tsai)らによる、電界紡糸の理論と技術(Electrospinning Theory and Techniques)(第14回国際TANDEC不織布会議年会(Annual International TANDEC Nonwovens Conference)、2004年11月9〜11日)で報告されるように、電界紡糸繊維は、その電荷を2〜3日以内に失う。
【0064】
(実施例2)
実施例1の方法を用いて、坪量35gsm、厚さ0.045cm(0.018インチ)、及びEFD 20μmのスパンボンドウェブを、ダイプロ(DYPRO)3860ポリプロピレンから調製した。ナノファイバーズ社(Nanofibers, Inc.)の76.2cm幅の繊維成形装置を用いて、得られた支持層ウェブを4.6、7.0、及び27.44gsmの坪量のポリプロピレンナノ繊維でコーティングした。ナノ繊維は、約0.65μmの平均繊維直径を有した。得られた多層濾材サンプルの追加特性を以下表7に示す。圧力低下値は流速32リットル/分で得た。
【表9】
【0065】
これらのサンプルをハイドロ帯電し、ナノ繊維濾過層を含む帯電多層濾材を得ることができた。運転番号2−2のナノ繊維を、SEMを用いて検査し繊維径の分布を判定した。以下表8及び表9に結果を示す。
【表10】
【表11】
【0066】
(実施例3)
55gsmの坪量、1mmの厚さ、及び8.4μmのEFDを有するプロピレンのメルトブロウン支持層ウェブを、50.8cm幅のメルトブロウン加工ラインで調製した。実施例2の方法を用いて、支持体ウェブを、1.8、3.0、及び7.2gsmの坪量のダイプロ(DYPRO)3860ポリプロピレンから作製したナノ繊維でコーティングした。ナノ繊維の平均繊維直径は約0.77μmであった。得られた多層濾材サンプルの追加特性を以下の表10に示す。圧力低下値は流速32リットル/分で得た。
【表12】
【0067】
これらのサンプルをハイドロ帯電し、ナノ繊維濾過層を含む帯電多層濾材を得ることができた。
【0068】
(実施例4)
エアレイド不織布支持体ウェブを、30.5cm幅のランド・ウェバー(Rando-Webber)機器で調製した。供給した繊維の組成は、32デニール×76mmのポリエチレンテレフタレート繊維であるT293(インビスタ(Invista)から入手可能)80%、及び、2デニール×38mmの2成分coPET/PETのシース/コア繊維(シースの融点が約110℃)であるセルボンド(CELBOND)(商標)T254(インビスタ(Invista)から入手可能)20%であった。エアレイドウェブの平均坪量は42gsmであった。実施例2の方法を用いて、支持体ウェブを、30、41、及び126gsmの坪量のナノ繊維でコーティングした。ナノ繊維の平均繊維直径は約0.60μmであった。得られた多層濾材サンプルの追加特性を以下表11に示す。圧力低下値は流速32リットル/分で得た。
【表13】
【0069】
これらのサンプルをハイドロ帯電し、ナノ繊維濾過層を含む帯電多層濾材を得ることができた。
【0070】
本発明の多数の実施形態を記載してきた。いずれにしても、本発明から逸脱することなく様々な修正を行ってもよいことが理解されるであろう。したがって、その他の実施形態も、以下の特許請求の範囲の範疇にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)約12〜約300mmの長さを有する複数の絡み合ったナノ繊維を含むハイドロ帯電した繊維性濾過層と、
b)多孔質のロールツーロール方式で加工可能な支持層と、を含む、帯電多層濾材。
【請求項2】
前記濾過層内の繊維が約10μm未満のメジアン繊維径を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項3】
前記濾過層内の繊維が約5μm未満のメジアン繊維径を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項4】
前記濾過層内の繊維が約1μm未満のメジアン繊維径を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項5】
前記ナノ繊維が約25〜約200mmの長さを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項6】
前記ナノ繊維が約50〜約150mmの長さを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項7】
前記濾過層内の繊維の大部分がナノ繊維である、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項8】
前記濾過層内の繊維の約60〜約98パーセントがナノ繊維である、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項9】
前記濾過層内の繊維の約80〜約97パーセントがナノ繊維である、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項10】
前記ナノ繊維がオレフィンを含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項11】
前記ナノ繊維がポリプロピレンを含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項12】
前記濾過層が約0.5〜約300g/m2の坪量を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項13】
前記濾過層が約2〜約40g/m2の坪量を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項14】
前記濾過層が約0.1〜約20mmの厚さを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項15】
前記支持層が織布、編布、連続気泡フォーム、又は穿孔付き膜を含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項16】
前記支持層が不織布ウェブを含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項17】
抗剥離層、抗刺激層、強化層、又は吸着層を更に含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項18】
前記濾過層が静電的に帯電され、かつハイドロ帯電される、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項19】
前記濾過層がプラズマフッ素化され、かつハイドロ帯電される、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項20】
面速度5.5cm/秒で流れる0.075μmの塩化ナトリウムエアゾールを使用して評価するとき、少なくとも約0.9mm−1H2Oの初期濾過品質係数QFを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項21】
面速度5.5cm/秒で流れる0.075μmの塩化ナトリウムエアゾールを使用して評価するとき、少なくとも約1.8mm−1H2Oの初期濾過品質係数QFを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項22】
10cm/秒で流れる0.075μmの塩化ナトリウムエアゾールに暴露されるとき、5%未満の最大貫通率を示す、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項23】
10cm/秒で流れる0.075μmの塩化ナトリウムエアゾールに暴露されるとき、1%未満の最大貫通率を示す、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項24】
請求項1に記載の帯電多層濾材を含むプリーツフィルター。
【請求項25】
請求項1に記載の帯電多層濾材を含むマスク装置。
【請求項1】
a)約12〜約300mmの長さを有する複数の絡み合ったナノ繊維を含むハイドロ帯電した繊維性濾過層と、
b)多孔質のロールツーロール方式で加工可能な支持層と、を含む、帯電多層濾材。
【請求項2】
前記濾過層内の繊維が約10μm未満のメジアン繊維径を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項3】
前記濾過層内の繊維が約5μm未満のメジアン繊維径を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項4】
前記濾過層内の繊維が約1μm未満のメジアン繊維径を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項5】
前記ナノ繊維が約25〜約200mmの長さを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項6】
前記ナノ繊維が約50〜約150mmの長さを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項7】
前記濾過層内の繊維の大部分がナノ繊維である、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項8】
前記濾過層内の繊維の約60〜約98パーセントがナノ繊維である、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項9】
前記濾過層内の繊維の約80〜約97パーセントがナノ繊維である、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項10】
前記ナノ繊維がオレフィンを含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項11】
前記ナノ繊維がポリプロピレンを含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項12】
前記濾過層が約0.5〜約300g/m2の坪量を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項13】
前記濾過層が約2〜約40g/m2の坪量を有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項14】
前記濾過層が約0.1〜約20mmの厚さを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項15】
前記支持層が織布、編布、連続気泡フォーム、又は穿孔付き膜を含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項16】
前記支持層が不織布ウェブを含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項17】
抗剥離層、抗刺激層、強化層、又は吸着層を更に含む、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項18】
前記濾過層が静電的に帯電され、かつハイドロ帯電される、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項19】
前記濾過層がプラズマフッ素化され、かつハイドロ帯電される、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項20】
面速度5.5cm/秒で流れる0.075μmの塩化ナトリウムエアゾールを使用して評価するとき、少なくとも約0.9mm−1H2Oの初期濾過品質係数QFを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項21】
面速度5.5cm/秒で流れる0.075μmの塩化ナトリウムエアゾールを使用して評価するとき、少なくとも約1.8mm−1H2Oの初期濾過品質係数QFを有する、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項22】
10cm/秒で流れる0.075μmの塩化ナトリウムエアゾールに暴露されるとき、5%未満の最大貫通率を示す、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項23】
10cm/秒で流れる0.075μmの塩化ナトリウムエアゾールに暴露されるとき、1%未満の最大貫通率を示す、請求項1に記載の帯電多層濾材。
【請求項24】
請求項1に記載の帯電多層濾材を含むプリーツフィルター。
【請求項25】
請求項1に記載の帯電多層濾材を含むマスク装置。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2010−534559(P2010−534559A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518161(P2010−518161)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/074423
【国際公開番号】WO2009/014539
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/074423
【国際公開番号】WO2009/014539
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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