説明

高度計装置、及び、距離計算方法

【課題】 自己が信号を発することなく、自己の高度を計測する高度計装置を得る。
【解決手段】 この発明の高度計装置30は、飛行体11の上部に第1の受信系(第1の受信アンテナ23aと第1の受信部33)を設け、飛行体11の下部に第2の受信系(第2の受信アンテナ23bと第2の受信部35)を設け、準天頂衛星201が送信した直接波の測位信号203を第1の受信系により受信して、測位信号203の反射波の信号205を第2の受信系により受信する。さらに、信号処理部37を備えて直接波と反射波との時間差を求め、求めた時間差に対して光速を乗じて距離を求めて、求めた距離の半分を反射点から自己までの高度(距離)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直接波の測位信号と反射波の測位信号とを飛行体、例えば飛行機が入力して、反射波の反射点から自己の位置までの高度を計算する高度計装置と距離計算方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電波高度計は、送信機、送信アンテナ、受信アンテナ、受信機、信号処理器を具備し、これらを飛行機等の下面に設置している。このため、高度の算出は、送信アンテナから電波を海面や地面に向けて送信し、海面や地面からの反射電波を受信アンテナで受信し、送信信号と受信信号との時間差から高度を算出していた。
【0003】
また、従来の電波高度計は、電波高度計自らが送信する電波の変調方式により、パルス式とFM−CW式(「FM−CW」は「Frequency Modulation−Continuous wave」の略称)に大別できる。前者は「特開平10−293173号公報」に、後者は「特許第3129840号」が公知文献の例である。
【特許文献1】特開平10−293173号公報
【特許文献2】特許第3129840号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のいずれの方式においても、飛行機等が自ら電波を送信する必要があるので、その送信電波を友好関係に無いものに受信されることにより、自らの存在を友好関係に無いものに察知されるという欠点があった。これは隠密作戦行動をとる場合に作戦遂行上の障害となる。
【0005】
さらに、狭い空間に複数の航空機等が存在し、これらの航空機等が同時に高度測定を行う場合においては、互いの送信電波が干渉し、高度測定が不可能になったり測定結果に誤差を生じるという問題があった。
【0006】
たとえば、本来は自らが送信した電波が海面、地面に当って反射してくる電波を受信する必要があるが、編隊飛行中の隣の飛行機が送信した電波の反射波を自らの送信波の反射波であると誤解して受信してしまうと、高度測定結果に大きな誤差を生じる問題が発生する。
【0007】
また、たとえば、本来は海面や、地面に当って反射してくる電波を受信する必要があるが、編隊飛行中の隣の飛行機が送信した電波を(海面や地面を経由せずに)直接受信した場合には、高度測定結果に大きな誤差を生じる問題が発生する。もしくは、隣の飛行機からの直接波は反射波よりもその電波強度が格段に大きいので、隣の飛行機からの強大な直接波により自らの受信機が飽和してしまい、海面反射波が受信できない場合は、高度測定不能となる問題がある。
【0008】
この発明は、上記した問題点を解消するため以下のことを目的とする。
・飛行体が自ら電波を送信することなく、自己の高度の測定を可能にする。
・他の飛行体の送信電波と自己の送信電波とを区別することを可能にして、編隊飛行においても自己の高度を測定可能にする。
・他の飛行体が送信した電波の反射波を自らの反射波と誤解して受信することを防止する。
・他の飛行体が送信した電波を自らの反射波と誤解して受信することを防止する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る所定の飛行体に搭載されて所定の測位信号を受信して、受信した測位信号を用いて高度を計測する高度計装置は、上記飛行体の天頂側に設置されて、天頂近くから送信された測位信号を受信する第1のアンテナ部と、上記第1のアンテナ部に対して反対側に設置されて、測位信号の反射波を受信する第2のアンテナ部と、上記第1のアンテナ部が受信した測位信号を入力して、入力した測位信号を第1のベースバンド信号に変換して出力する第1の受信部と、上記第2のアンテナ部が受信した測位信号の反射波を入力して、入力した測位信号の反射波を第2のベースバンド信号に変換して出力する第2の受信部と、上記第1の受信部が出力した第1のベースバンド信号と、上記第2の受信部が出力した第2のベースバンド信号とを入力して、入力した第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号との時間差を測定して時間差情報を生成し、生成した時間差情報に対して光速を乗じて距離差を示す距離差情報を生成し、生成した距離差情報の半分の距離を上記所定の飛行体の高度として出力する信号処理部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の高度計装置は、天頂近くから送信された測位信号と、その測位信号の反射波とを用いて高度を測定する。天頂近くから送信される測位信号は、固有の符号で変調されている。このため、他の飛行体が送信した電波と容易に区別でき、正確な高度測定を行うことができる。また、反射波についても、直接波と同じ固有の符号で変調されているので他に飛行体が送信した電波の反射と容易に区別できるので、正確な高度測定を行うことができる効果がある。また、飛行体自ら電波を送信することがないので、電波を傍受されて自己の存在を察知されることを防ぐことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
この実施の形態では、測位用電波信号を受信するためのアンテナと受信機とを、2系統有している高度計装置の一例を説明する。また、以後(アンテナ+受信機)を受信系と呼ぶ。さらに、高度計装置は、この2つの受信系が出力する信号の時間差を分析する信号処理部を備える。また、1つの受信系は、飛行体、例えば飛行機等の上部に設置し、他の1つの受信系は飛行機等の下部に設置するものとする。信号処理部の設置場所は、受信系が出力する信号を入力することができればどこに設置してもかまわないものとする。
【0012】
図1は、この実施の形態の高度計装置を備えた飛行体を含むシステムの全体構成図を示す図である。図1において、飛行体11は、例えば飛行機であり、高度計装置30を備える。高度計装置30は、2つの受信系を備え、第1の受信系は、第1の受信アンテナ23aと第1の受信部33とを有し、これらは図1のように飛行体11の上部(上面)に設置する。第2の受信系は、第2の受信アンテナ23bと第2の受信部35とを有し、これらは図1のように飛行体11の下部(下面)、すなわち、第1の受信系に対して反対側に設置する。また、高度計装置30は、第1の受信部33と第2の受信部35とからそれぞれ出力された信号を入力して、それぞれの信号の時間差を分析する信号処理部37を備える。
【0013】
上記第1と第2の受信系のうち機体上面に装備された第1の受信系は、準天頂衛星201が送信する測位用電波信号(測位信号203)を直接受信する、すなわち、直接波を受信する。一方、機体下面に装備された第2の受信系は、準天頂衛星201が地球に向けて送信した測位用電波信号(測位信号203)が海面や地面(海面・地面400)に当って反射した信号205を受信する、すなわち、海面(地面)反射波を受信する。
【0014】
ここで、準天頂衛星201について説明する。準天頂衛星は、通信総合研究所 鹿島宇宙通信研究センター 宇宙サイバネティクスグループによるホームページ(ホームページのアドレスは「www2.crl.go.jp/ka/index−j.html」の「宇宙サイバネティクスG」にリンクする「準天頂衛星」の「www2.crl.go.jp/ka/control/index−J.html」)に掲載された資料等に有るように、赤道面から約45度の傾斜角になるように地球の自転に合わせて1日に1周回している。なお、赤道面からの傾斜角は、設計により任意に設定してよい。また、一例として昇交点赤経(赤道面との交点)において120度ずつ離れるように3機が配置されている。地表面上に投影される準天頂衛星軌道の軌跡は、地上を固定して考えた場合に、準天頂衛星は赤道上を交点とする「8の字」または「涙的型」を描くように周回している。3機の準天頂衛星は、軌道面を異にするが8時間ごとに交代(会合)することにより、切れ目なく日本上空に位置している。また、地域を日本で考えた場合、仰角が70度以上の準天頂衛星が常に存在することになる。切れ目なく日本上空に位置しているため、仰角が70度以上の準天頂衛星が常に存在し、受信者が地上で準天頂衛星から電波を受ける際、高さのある建物の谷間でも電波を遮られることが少ない。このため、高度計装置30は仰角が70度以上の位置から、すなわち、天頂近くから送信された測位信号203を受信することができる。
【0015】
このように、高度計装置30は天頂近くから送信された測位信号203とその反射波である信号205を受信するので、信号処理部37は2つの信号の時間差から求めた距離を用いて飛行体の高度を測定できる。
【0016】
第1と第2のそれぞれの受信系で受信した信号は、共通の信号処理部37に入力される。信号処理部37では、第1と第2のそれぞれの受信系が受信した信号の時間差を測定し、その時間差に光速(3×108m/s)を乗じて時間差を距離差に変換する。図1の幾何学的考察から明らかなように、求めた距離差の半分が飛行機等の高度(測位信号203が反射した海面や地面の反射点からの高さ)となる。信号処理部37は、求めた高度を、例えば飛行体11のパイロットに対して表示して現在高度を知らせたり、その他の機器(たとえば自動操縦装置等)に出力して、飛行体11が海面や地表に衝突しないように、自動操縦を行うことを可能にしたりする。
【0017】
次に、高度計装置30の動作を説明する。なお、出願時点において、準天頂衛星が送信する測位用電波信号の形式は未定である。しかし、従来のGPS測位との両立性を確保するため、従来のGPS衛星が送信している測位用電波信号に類似した形式の電波信号を用いることとして、ここでは、準天頂衛星が送信する測位用電波信号の形式は、従来のGPS衛星が送信する測位用電波信号の形式と等しいものとする。すなわち、変調方式=BPSK(Binary Phase Shift Keyingの略)、変調符号=1024ビットのゴールド符号、チップレート=976.56nsであるとして、動作を説明する。もちろん、GPS衛星が送信している測位用電波信号と類似しない、独自の信号を送信しても良い。
【0018】
飛行体11の上部に設置される第一の受信系(第1の受信アンテナ23aと第1の受信部33)は、準天頂衛星201が地球にむけて送信する測位用電波信号の直接波(測位信号203)を受信する。第1の受信部33は受信した測位信号203を増幅、検波し、ベースバンド信号31aを信号処理部37に向けて出力する。ベースバンド信号は、「1」か「−1」のゴールド符号となる。
【0019】
飛行体11の下部に設置される第二の受信系(第2の受信アンテナ23bと第2の受信部35)は、準天頂衛星201が地球にむけて送信した測位用電波信号(測位信号203)が海面・地面400にあたって反射されてきた信号205を受信する。第2の受信部35の動作および、第2の受信部35が出力するベースバンド信号31b、ベースバンド信号31bの送信先については、上記第一の受信系における第1の受信部33と同じである。また、第1の受信アンテナ23aの端部23cから信号処理部37との間の電気的な長さと、第2の受信アンテナ23bの端部23dから信号処理部37との間の電気的な長さとは、等しいものとする。もちろん、電気的な長さに差がある場合は、その差を信号処理部37で補正すればよい。
【0020】
信号処理部37は、第一の受信系(第1の受信アンテナ23aと第1の受信部33)から出力されたベースバンド信号31aのゴールド符号を入力するとともに、第二の受信系(第2の受信アンテナ23bと第2の受信部35)から出力されたベースバンド信号31bのゴールド符号を入力して、これらの符号の時間差を測定する。この様子を図2に示す。図2は第1の受信系からの信号と第2の受信系からの信号との時間差を示す図である。時間差の測定方法は各種考えられる。ここでは一例を示す。第一の受信系(第1の受信アンテナ23aと第1の受信部33)からの受信信号を遅延させ、かつ、その遅延量を少しずつ増加させつつ、第二の受信系(第2の受信アンテナ23bと第2の受信部35)からの信号と符号を比較する。遅延させた第一の受信系の信号と、(遅延させない)第二の受信系からの符号が完全に一致すれば、そのときの遅延時間が求める時間差となる。
【0021】
次に、信号処理部37は、上記のようにして求めた時間差に光速度(3×108m/s)を乗じて時間差を距離差に変換する。求めた距離差の半分が飛行機等の飛行体の高度(測位信号203が反射した海面や地面の反射点からの高さ)となり、これを表示して飛行体のパイロットに高度を知らせたり、その他の機器(たとえば自動操縦装置等)に出力して、飛行体が地表に衝突しないように、自動操縦を行うことを可能にしたりする。厳密にいえば、前記で求めた「飛行体の高度」には、飛行体の最下面(図1でいえば第2の受信アンテナ23b面)と、飛行体の最上面(図1でいえば第1の受信アンテナ23a面)との長さの半分が、海面・地面400から飛行体の最下面の高さに加算されている。必要に応じて、前記で求めた「飛行体の高度」に補正を加えればよい。
【0022】
このように、準天頂衛星201が送信した測位信号を使用して高度を測定する場合、GPS衛星等が送信した測位信号を使用する場合と比較して、以下のような特徴点を有することが考えられる。
【0023】
従来のGPS衛星等と異なり、準天頂衛星は、飛行体のほぼ真上に存在するので、以下のような電波伝播上の特徴を有しており、この発明はこれらの特徴を利用したものである。
【0024】
(1)海面や地面からの反射電波の強度が強い。したがって反射波受信系(飛行体11の下部に設置してある第2の受信系(第2の受信アンテナ23bと第2の受信部35)の受信感度は低いもので良い。信号処理工学の理論により、受信感度と受信時間は反比例する関系にある。低い受信感度でよければ、受信時間は短時間で良く、つまり、高度測定は短時間に終了できる。さらに受信系が安価になる。一方、準天頂衛星以外の衛星であって、GPS衛星等、天頂近くにない衛星からの海面反射波、地面反射波の強度は弱い。よって長時間の受信時間が必要となり、高度測定結果を得るまでに時間を要する。さらに高感度受信機は高価になる。
【0025】
(2)信号時間差から求めた距離差の半分が海面や地面からの高度となる。このため、高度計算には、その他の情報もその他の測位衛星からの信号も必要としない。準天頂衛星1機からの測位信号を受信するだけで高度測定が可能となる。一方、準天頂衛星以外の衛星であって、GPS衛星等、天頂近くにない衛星からの海面反射波、地面反射波を利用して高度測定する場合は、時間差から求めた距離差の半分が高度とはならない。距離差の半分の値に、さらに衛星仰角に応じて角度補正を施す必要がある。したがって、衛星の仰角情報を有していなければ高度計算は不可能となる。衛星の仰角情報を得るには、衛星の宇宙空間での位置と飛行機等の自己の位置とが既知である必要があるが、自己の位置を得るにはGPS測位の原理から4つのGPS衛星からの信号による測位行為が必要となる。もし4衛星からの信号を受信できない場合は高度計算が不可能となる。仮に4衛星からの信号を受信して測位計算ができたとしても、その受信系は高価となる。
【0026】
以上のように、この実施の形態の高度計装置は上記のように構成され、かつ、上記のように動作するので、高度測定を行う際に、自ら電波を送信する必要が無く、したがって自己の存在を知られたくない相手に自らが送信する電波を受信される心配が無い。このため、自己の存在を悟られることが無く、また、自己の位置が相手に知られることがない効果がある。
【0027】
さらに、自ら電波を送信する必要が無いので、狭い空間に複数の航空機等の飛行体が存在し、これらの航空機等が同時に高度測定を行う場合においても、互いの送信電波干渉を受けることなく、全ての航空機等が同時に高度測定が可能となる効果がある。このため、例えば戦闘機が編隊飛行を行う場合において有用となる効果がある。
【0028】
さらに、高度測定に必要な衛星は準天頂衛星1つのみでよい。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態1の高度計装置の構成は、アンテナ+受信機を機体の上部と下部に具備していたが、これ以外に以下の構成例が考えられる。
・アンテナのみ機体の上部と下部に具備し、2つの受信機は信号受信処理部内に取り組む構成(図3参照)。
【0030】
図3は、この実施の形態の高度計装置を含むシステムの全体構成図を示す図である。図3の高度計装置30は、図1と同じ動作を行って高度測定を行うものである。図1と異なる点は、信号受信処理部39が第1の受信部33と第2の受信部35とを備えるようにしたので、見かけ上受信機(第1の受信部33と第2の受信部35)が存在しないことのみである。
【0031】
この実施の形態2の高度計装置は、実施の形態1の高度計装置と実質同じ構成であるため、実施の形態1の効果と同様の効果を奏する。すなわち、高度測定を行う際に、自ら電波を送信する必要が無く、したがって自己の存在を知られたくない相手に自らが送信する電波を受信される心配が無い。このため、自己の存在を悟られることが無く、また、自己の位置が相手に知られることがない効果がある。
【0032】
さらに、自ら電波を送信する必要が無いので、狭い空間に複数の航空機等の飛行体が存在し、これらの航空機等が同時に高度測定を行う場合においても、互いの送信電波干渉を受けることなく、全ての航空機等が同時に高度測定が可能となる効果がある。このため、例えば戦闘機が編隊飛行を行う場合において有用となる効果がある。
【0033】
さらに、高度測定に必要な衛星は準天頂衛星1つのみでよい。
【0034】
実施の形態3.
実施の形態1の高度計装置の構成は、アンテナ+受信機を機体の上部と下部に具備していたが、これ以外に以下の構成例が考えられる。
・アンテナのみ飛行体の上部と下部に具備し、これらの信号を信号合成器で合成して1つの信号とし、これを1つの受信機で受信し信号処理する構成(図4参照)。
【0035】
図4は、この実施の形態の高度計装置を含むシステムの全体構成図を示す図である。図4では、高度計装置30は、第1の受信アンテナ23aが受信した測位信号203と第2の受信アンテナ23bが受信した信号205とを入力して合成する合成部41を備えた。また、受信機として受信部43を1つ備え、受信部43は信号受信処理部39が備える。受信部43はゴールド符号の自己相関特性を利用して、時間差測定を実施する。また、第1の受信アンテナ23aの端部23cから合成部41との間の電気的な長さと、第2の受信アンテナ23bの端部23dから合成部41との間の電気的な長さとは、等しいものとする。以下に、この時間差測定方式を説明する。
【0036】
図5の(a)〜(c)は、この実施の形態の高度計装置の遅延時間の算出について説明する図である。はじめに、高度計装置30は、合成部41によって、第1の受信アンテナ23aが受信した測位信号203と第2の受信アンテナ23bが受信した信号205とを合成する。図5(a)の上段が第1の受信アンテナ23aが受信した測位信号203であり、下段が第2の受信アンテナ23bが受信した信号205である。合成部41は、図5(a)にように2つの信号を合成して、合成した合成信号を信号受信処理部39へ出力する。
【0037】
次に、高度計装置30は、図5(b)に示すように受信部43によりコリレーション値を生成して出力する。受信部43は、図5(b)に示すように、レプリカ信号を自ら発生するレプリカ信号発生部43bと、レプリカ信号発生部43bが発生したレプリカ信号の遅延間隔を可変にする可変遅延回路43cとを備える。例えば、可変遅延回路43cは、レプリカ信号の遅延間隔を1ビット以下になるように調整する。また、乗算器43aと積算&ダンプ回路43dとを備える相関部44を備える。相関部44は、合成部41が合成した合成信号(図5(a)参照)と可変遅延回路43cによって遅延の調整を行ったレプリカ信号とを順次入力して、入力したそれぞれの信号を乗算器43aにより乗算する。そして、乗算した結果を積算&ダンプ回路43dに入力して、コリレーション演算を行う。このとき、レプリカ信号発生部43bによるレプリカ信号の発生タイミングを少しずつずらしていくと、図5(c)にように2箇所でコリレーション値がピークを示す。1箇所(遅延時間が短いところにあるピーク)は、飛行体の上部の第1の受信アンテナ23aで受信した信号タイミングに対してであり、もう1箇所(遅延時間が長いところにあるピーク)は、飛行体の下部の第2の受信アンテナ23bで受信した信号タイミングに対してである。信号処理部37は、この2箇所の遅延時間差を、第1の受信アンテナ23aと第2の受信アンテナ23bとが受信した信号の時間差とするのである(図5参照)。
【0038】
時間差を求めた後、信号処理部37は、実施の形態1と同様に時間差に光速度(3×108m/s)を乗じて時間差を距離差に変換する。求めた距離差の半分が飛行機等の飛行体の高度(測位信号203が反射した海面や地面の反射点からの高さ)となり、これを表示して飛行体のパイロットに高度を知らせたり、その他の機器(たとえば自動操縦装置等)に出力して、飛行体が地表に衝突しないように、自動操縦を行うことを可能にしたりする。
【0039】
上記した相関部44は、ハードウェアとソフトウェアとのいずれによって構成されてもかまわない。仮に、ソフトウェアによって構成すると、符号が変わった場合にソフトウェアを入れ換えることによって直ちに対応可能となる。
【0040】
以上のように、この実施の形態の高度計装置は、高度測定を行う際に、自ら電波を送信する必要が無く、したがって自己の存在を知られたくない相手に自らが送信する電波を受信される心配が無い。このため、自己の存在を悟られることが無く、また、自己の位置が相手に知られることがない効果がある。
【0041】
さらに、自ら電波を送信する必要が無いので、狭い空間に複数の航空機等の飛行体が存在し、これらの航空機等が同時に高度測定を行う場合においても、互いの送信電波干渉を受けることなく、全ての航空機等が同時に高度測定が可能となる効果がある。このため、例えば戦闘機が編隊飛行を行う場合において有用となる効果がある。
【0042】
さらに、高度測定に必要な衛星は準天頂衛星1つのみでよい。
【0043】
実施の形態4.
上記した実施の形態1〜3では、2つの受信系を備えていたが、1つの受信系でも上記した実施の形態1〜3と同様の効果を得られる高度計装置を実現できる。
【0044】
図6は、この実施の形態の高度計装置を含むシステムの全体構成図を示す図である。図6において、高度計装置30は、準天頂衛星201が送信した測位信号203と、測位信号203が海面・地面400に反射した反射波の信号205とを受信するアンテナ24を備えた。すなわち、アンテナ24は、図4の第1の受信アンテナ23aと第2の受信アンテナ23bと合成部41との機能を有するものである。このため、アンテナ24は、受信した測位信号203と信号205とを図5(a)のように合成する。図5(a)の上段が測位信号203であり、下段が信号205である。アンテナ24は図5(a)のように2つの信号を合成して、合成した合成信号を信号受信処理部39へ出力する。また、図6の他の構成要素は、図4の同じ符号の構成要素と同じである。このため、アンテナ24が出力した合成信号を受信した信号受信処理部39は、上記実施の形態3の図4の信号受信処理部39と同様の動作を行い、飛行体11の高度を計測するものとする。
【0045】
また、図6ではアンテナ24を飛行体11の前方(飛行方向)の端部に設置したが、後部(飛行方向とは逆の方向)に設置してもかまわない。
【0046】
以上のように、この実施の形態の高度計装置は、実施の形態1〜3の高度計装置よりも少ない部品点数で実施の形態1〜3と同様に飛行体の高度を計測できる。このため、実施の形態1〜3よりも安価に高度計装置を構築できる効果がある。
【0047】
また、この実施の形態の高度計装置は、高度測定を行う際に、自ら電波を送信する必要が無く、したがって自己の存在を知られたくない相手に自らが送信する電波を受信される心配が無い。このため、自己の存在を悟られることが無く、また、自己の位置が相手に知られることがない効果がある。
【0048】
さらに、自ら電波を送信する必要が無いので、狭い空間に複数の航空機等の飛行体が存在し、これらの航空機等が同時に高度測定を行う場合においても、互いの送信電波干渉を受けることなく、全ての航空機等が同時に高度測定が可能となる効果がある。このため、例えば戦闘機が編隊飛行を行う場合において有用となる効果がある。
【0049】
さらに、高度測定に必要な衛星は準天頂衛星1つのみでよい。
【0050】
実施の形態5.
上記した実施の形態1〜4の高度計装置30を搭載した飛行体による飛行の一例を説明する。
【0051】
図7は、この実施の形態の高度計装置を搭載した飛行体による飛行の一例を示す図である。図7の飛行体11は、上記した実施の形態1〜4のいずれかの高度計装置30を搭載しているものとする。飛行体11が図7のように山肌51に沿うように一定の高度53を保持しながら低空飛行する場合、地点A,地点B,地点C,地点D,地点Eにおいてそれぞれ高気圧や低気圧による気圧変動があっても、高度計装置30は、準天頂衛星201が送信した測位信号203とその反射信号205とを用いて飛行体11の高度を計測するので、気圧の違いによる影響を受けずに高度の計測を行うことができる。このため、飛行体11が山肌すれすれに飛行するような場合には、高度計装置30の計測した高度を信頼して飛行を行えば、山肌に衝突することなく、安全に低空飛行を行うことが可能になる。
【0052】
一方、気圧高度計によって高度を測定する場合には、地点A,地点B,地点C,地点D,地点Eのそれぞれの地点の高気圧や低気圧による気圧の違いにより信頼性の高い高度の測定を行うことができない。このため、飛行体11が山肌すれすれに飛行するような場合には、測定した高度の誤差によって飛行体が山肌に衝突してしまうことが考えられる。
【0053】
実施の形態6.
この実施の形態では、上記した実施の形態1〜4の高度計装置の距離(高度)計算方法について説明する。
【0054】
図8は、この実施の形態の距離計算方法を示すフローチャート図である。図8において、高度計装置30は、準天頂衛星201から送信された測位信号203(直接波)を入力する(S10、直接波入力ステップ)。続いて、測位信号203が海面や地面に反射した反射信号205を入力する(S11、反射波入力ステップ)。次に、S10で入力した直接波とS11で入力した反射波との相関をとって、直接波と反射波との時間差を求める(S12)。そして、S12で求めた時間差に対して光速を乗じ、距離差を求める(S13)。S13で求めた距離差の半分を自己と反射点までの距離(高度)とする(S14)。上記S12〜S14は、距離計算ステップとする。
【0055】
求めた距離(高度)は、飛行体のパイロットに知らせたり、その他の機器(たとえば自動操縦装置等)に出力して、飛行体が地表に衝突しないように、自動操縦を行うことを可能にしたりする。
【0056】
以上のように、この実施の形態の距離計算方法は、高度測定を行う際に、自ら電波を送信する必要が無く、したがって自己の存在を知られたくない相手に自らが送信する電波を受信される心配が無い。このため、自己の存在を悟られることが無く、また、自己の位置が相手に知られることがない効果がある。
【0057】
さらに、自ら電波を送信する必要が無いので、狭い空間に複数の航空機等の飛行体が存在し、これらの航空機等が同時に高度測定を行う場合においても、互いの送信電波干渉を受けることなく、全ての航空機等が同時に高度測定が可能となる効果がある。このため、例えば戦闘機が編隊飛行を行う場合において有用となる効果がある。
【0058】
さらに、高度測定に必要な衛星は準天頂衛星1つのみでよい。
【0059】
以上の実施の形態の説明において「〜部」として説明したものは、一部或いはすべてコンピュータで動作可能なプログラムにより構成することができる。これらのプログラムは、例えば、C言語により作成することができる。
【0060】
また、実施の形態の説明において「〜部」として説明したものは、ROM(Read Only Memory)に記憶されたファームウェアで実現されていてもかまわない。或いは、ソフトウェア或いは、ハードウェア或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組みあわせで実施されてもかまわない。
【0061】
また、上記各実施の形態を実施させるプログラムは、記録媒体に記録される。記録媒体は、磁気ディスク装置、FD(Flexible Disk)、光ディスク、CD(コンパクトディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)等その他の記録媒体による記憶装置を用いてもかまわない。
【0062】
上記プログラムは、コンピュータにロードされ、プロセッサの制御に基づいて実行される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態1の高度計装置を含むシステムの全体構成図を示す図である。
【図2】第1の受信系からの信号と第2の受信系からの信号との時間差を示す図である。
【図3】実施の形態2の高度計装置を含むシステムの全体構成図を示す図である。
【図4】実施の形態3の高度計装置を含むシステムの全体構成図を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は実施の形態3の高度計装置の遅延時間の算出について説明する図である。
【図6】実施の形態4の高度計装置を含むシステムの全体構成図を示す図である。
【図7】実施の形態5の高度計装置を搭載した飛行体による飛行の一例を示す図である。
【図8】実施の形態6の距離計算方法を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0064】
11 飛行体、23a 第1の受信アンテナ、23b 第2の受信アンテナ、23c,23d 端部、24 アンテナ、30 高度計装置、31a,31b ベースバンド信号、33 第1の受信部、35 第2の受信部、37 信号処理部、39 信号受信処理部、41 合成部、43 受信部、43a 乗算器、43b レプリカ信号発生部、43c 可変遅延回路、43d 積算&ダンプ回路、44 相関部、51 山肌、53 高度、201 準天頂衛星、203 測位信号、205 信号、400 海面・地面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の飛行体に搭載されて所定の測位信号を受信して、受信した測位信号を用いて高度を計測する高度計装置において、
上記飛行体の天頂側に設置されて、天頂近くから送信された測位信号を受信する第1のアンテナ部と、
上記第1のアンテナ部に対して反対側に設置されて、測位信号の反射波を受信する第2のアンテナ部と、
上記第1のアンテナ部が受信した測位信号を入力して、入力した測位信号を第1のベースバンド信号に変換して出力する第1の受信部と、
上記第2のアンテナ部が受信した測位信号の反射波を入力して、入力した測位信号の反射波を第2のベースバンド信号に変換して出力する第2の受信部と、
上記第1の受信部が出力した第1のベースバンド信号と、上記第2の受信部が出力した第2のベースバンド信号とを入力して、入力した第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号との時間差を測定して時間差情報を生成し、生成した時間差情報に対して光速を乗じて距離差を示す距離差情報を生成し、生成した距離差情報の半分の距離を上記所定の飛行体の高度として出力する信号処理部と
を備えたことを特徴とする高度計装置。
【請求項2】
所定の飛行体に搭載されて所定の測位信号を受信して、受信した測位信号を用いて高度を計測する高度計装置において、
上記飛行体の天頂側に設置されて、天頂近くから送信された測位信号を受信する第1のアンテナ部と、
上記第1のアンテナ部に対して反対側に設置されて、測位信号の反射波を受信する第2のアンテナ部と、
上記第1のアンテナ部が受信した測位信号と上記第2のアンテナ部が受信した測位信号の反射波とを入力して、入力したそれぞれの測位信号をベースバンド信号に変換して、変換したそれぞれのベースバンド信号の時間差を測定して時間差情報を生成し、生成した時間差情報に対して光速を乗じて距離差を示す距離差情報を生成し、生成した距離差情報の半分の距離を上記所定の飛行体の高度として出力する信号受信処理部と
を備えたことを特徴とする高度計装置。
【請求項3】
上記信号受信処理部は、
上記第1のアンテナ部が受信した測位信号を入力して、入力した測位信号を第1のベースバンド信号に変換して出力する第1の受信部と、
上記第2のアンテナ部が受信した測位信号の反射波を入力して、入力した測位信号の反射波を第2のベースバンド信号に変換して出力する第2の受信部と、
上記第1の受信部が出力した第1のベースバンド信号と、上記第2の受信部が出力した第2のベースバンド信号とを入力して、入力した第1のベースバンド信号と第2のベースバンド信号との時間差を測定して時間差情報を生成し、生成した時間差情報に対して光速を乗じて距離差を示す距離差情報を生成し、生成した距離差情報の半分の距離を上記所定の飛行体の高度として出力する信号処理部と
を備えたことを特徴とする請求項2記載の高度計装置。
【請求項4】
上記第1のアンテナ部と第2のアンテナ部とはそれぞれ端部を有し、
上記第1のアンテナ部の端部から上記信号処理部との間と、上記第2のアンテナ部の端部から上記信号処理部との間とは、電気的に同じ長さである
ことを特徴とする請求項1または3に記載の高度計装置。
【請求項5】
所定の飛行体に搭載されて所定の測位信号を受信して、受信した測位信号を用いて高度を計測する高度計装置において、
上記飛行体の天頂側に設置されて、天頂近くから送信された測位信号を受信する第1のアンテナ部と、
上記第1のアンテナ部に対して反対側に設置されて、測位信号の反射波を受信する第2のアンテナ部と、
上記第1のアンテナ部が受信した測位信号と上記第2のアンテナ部が受信した測位信号の反射波とを入力して、入力した2つの信号を合成する合成部と、
上記合成部が出力した信号に対して、上記第1のアンテナが受信した測位信号と上記第2のアンテナが受信した測位信号の反射とのそれぞれの信号のピークを有するコリレーション値を作成するとともに、コリレーション値を入力して、入力したコリレーション値のそれぞれの信号のピークからそれぞれの信号の時間差を示す時間差情報を生成して、生成した時間差情報に対して光速を乗じて距離差を示す距離差情報を生成し、生成した距離差情報の半分の距離を上記所定の飛行体の高度として出力する信号受信処理部と
を備えたことを特徴とする高度計装置。
【請求項6】
所定の飛行体に搭載されて所定の測位信号を受信して、受信した測位信号を用いて高度を計測する高度計装置において、
天頂近くから送信された測位信号を受信するとともに、上記測位信号の反射波も受信するアンテナと、
上記アンテナが出力した2つの受信信号に対してそれぞれの信号のピークを有するコリレーション値を作成するとともに、コリレーション値を入力して、入力したコリレーション値のそれぞれの信号のピークからそれぞれの信号の時間差を示す時間差情報を生成して、生成した時間差情報に対して光速を乗じて距離差を示す距離差情報を生成し、生成した距離差情報の半分の距離を上記所定の飛行体の高度として出力する信号受信処理部と
を備えたことを特徴とする高度計装置。
【請求項7】
上記信号受信処理部は、
上記アンテナもしくは合成部が出力した2つの受信信号に対してそれぞれの信号のピークを有するコリレーション値を作成するとともに、コリレーション値を入力して、入力したコリレーション値のそれぞれの信号のピークからそれぞれの信号の時間差を示す時間差情報を生成して出力する受信部と、
上記受信部が出力した時間差情報を入力して、入力した時間差情報に対して光速を乗じて距離差を示す距離差情報を生成し、生成した距離差情報の半分の距離を上記所定の飛行体の高度として出力する信号処理部とを備えた
ことを特徴とする請求項5または6記載の高度計装置。
【請求項8】
直接波を入力する直接波入力ステップと、
反射波を入力する反射波入力ステップと、
直接波入力ステップで入力した直接波と、反射波入力ステップで入力した反射波との相関をとり、上記直接波と上記反射波との時間差とにより、反射点までの距離を求める距離計算ステップとを
有することを特徴とする距離計算方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−38722(P2006−38722A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221085(P2004−221085)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】