説明

高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板およびその製造方法

【課題】曲げ加工性及びめっき性に優れ、1470MPa以上のTSを有する高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.26〜0.35%、Si:0.4%以下、Mn:1.0%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.07%以下、N:0.01%以下、Ti:0.05%以下、V:1.2〜1.8%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、マトリックス全体に占めるフェライト相(F相)の面積率が90%以上であり、F相にはVCが析出しているミクロ組織を有し、かつVCの全個数のうち大きさが10nm未満のVCの個数の割合が85%以上であり、鋼中の固溶V量が0.30質量%以下である高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板;ここで、VCの大きさとは、TEMによりマトリックスであるF相の[001]方位から観察される正方板状のVCにおいて、21/2×L(L:正方板の1辺の長さ)で表せるVCの大きさの平均値のことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や建設機械の分野などで用いられる構造部材に適した高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板、特に、曲げ加工性およびめっき性に優れ、1470MPa以上の引張強度TSを有する板厚6mm以下の高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の軽量化では、高強度鋼板の使用量増加やさらなる高強度化を図った鋼板の適用が検討されている。一般的には、鋼板の高強度化は鋼板の延性の低下、すなわち加工性の低下を招くことから、高強度と高加工性を併せ持ち、さらに耐食性にも優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が要求されている。なかでも、構造部材には、低コストの観点から、高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板が望まれる。
【0003】
こうした高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板として、これまで、フェライト相に分散させたマルテンサイト相などの硬化相により高強度化を図る組織強化型の鋼板が検討されている。例えば、特許文献1には、重量比にて、C:0.005〜0.15%、Mn:0.3〜2.0%、Cr:0.03〜0.8%を含有する薄鋼板を連続亜鉛めっきラインによって合金化溶融亜鉛めっきする合金化亜鉛めっき高張力鋼板の製造方法において、前記鋼板をAc1変態点とAc3変態点間の温度に加熱する工程と、前記加熱温度よりの冷却途中450〜550℃の温度範囲で溶融亜鉛めっきを施し更に500℃とAc1変態点間の温度範囲に加熱し合金化処理を行う工程と、前記合金化処理後引続き300℃以下まで冷却する工程と、を有して成り、前記Ac1〜Ac3間の加熱温度より溶融亜鉛めっきを施すまで、および合金化処理後300℃以下まで冷却する冷却工程における冷却速度を、logCR=-3.11Cr-1.93Mn+4.61で与えられる臨界冷却速度CR(℃/sec)以上とすることを特徴とする加工性の良好な合金化亜鉛めっき高張力鋼板の製造方法が提案されている。また、特許文献2には、重量%で、C:0.04〜0.1%、Si:0.4〜2.0%、Mn:1.5〜3.0%、B:0.0005〜0.005%、P:≦0.1%、Ti>4NかつTi≦0.05%、Nb:≦0.1%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板表層に合金化亜鉛めっき層を有し、合金化溶融亜鉛めっき層中のFe%が5〜25%であることを特徴とする、引張強度800MPa以上の成型性およびめっき密着性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭62-40405号公報
【特許文献2】特開平9-13147号公報
【特許文献3】特開2009-31269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で製造された合金化亜鉛めっき高張力熱延鋼板では、高々520MPaのTSしか、また、特許文献2の高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板では、高々920MPaのTSしか得られず、いずれも曲げ加工性に劣るという問題がある。さらに、特許文献2の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、めっき性に劣るという問題もある。
【0006】
本発明は、曲げ加工性およびめっき性に優れ、1470MPa以上のTSを有する高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の目的を達成すべく鋭意検討したところ、Si量を低下し、CとV量を適切に制御してフェライト相に大きさが10nm以下のVの炭化物(VC)を均一に析出させたミクロ組織にすることが効果的であることを見出した。ここで、VCの大きさとは、透過電子顕微鏡(TEM)によりマトリックスであるフェライト相の[001]方位から観察される正方板状のVCにおいて、21/2×L(L:正方板の1辺の長さ)で表せるVCの大きさを複数個のVCに対して求め、算術平均した値のことである。なお、VCの大きさをこのように決定できるのは、NaCl型の結晶構造を有するVCがマトリックスとの間に特定の方位関係(Baker-Nutting)を有するためである。
【0008】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、質量%で、C:0.26〜0.35%、Si:0.4%以下、Mn:1.0%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.07%以下、N:0.01%以下、Ti:0.05%以下、V:1.2〜1.8%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、マトリックス全体に占めるフェライト相の面積率が90%以上であり、前記フェライト相にはVの炭化物(VC)が析出しているミクロ組織を有し、かつ前記VCの全個数のうち大きさが10nm未満のVCの個数の割合が85%以上であり、鋼中の固溶V量が0.30質量%以下であることを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板を提供する。
【0009】
本発明の高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板では、さらに、質量%で、Cr:1%以下、B:0.0030%以下、Mo:0.5%以下、W:1%以下のうちから選ばれた少なくとも一種の元素を含む組成を有することが好ましい。
【0010】
本発明の高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板は、上記組成を有する鋼を、900℃以上の仕上温度で熱間圧延後、580〜680℃の巻取温度で巻取り、酸洗後、還元雰囲気中で600〜700℃に10〜90秒加熱し、亜鉛めっき浴に浸漬してめっき処理を施し、460〜550℃でめっき層の合金化処理を行う方法により製造できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、曲げ加工性およびめっき性に優れ、1470MPa以上のTSを有する高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板を製造できるようになった。本発明の高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板は、自動車や建設機械の構造部材などに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者等は、特許文献1、2に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が曲げ加工性に劣る原因や特許文献2に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板がめっき性に劣る原因を究明したところ、前者の場合は高強度化のためにフェライト相に分散させた硬質なマルテンサイト相と軟質なフェライト相の界面に応力集中が起きやすいことが主因であり、後者の場合はSi量が高いことが主因であることが明らかになった。そこで、本発明では、曲げ加工性の改善のために、マトリックスをフェライト単相とし、フェライト相に大きさが10nm以下の微細なVCを均一に析出させて、応力集中の発生を防ぐとともに、析出強化により高強度化を図っている。特に、VCは、NaClと同様な構造のMC型炭化物であり、700℃以下の熱処理により粗大化しにくく、合金化溶融亜鉛めっき処理後にも微細な状態を維持できるので、高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板を製造する上で効果的な析出物といえる。また、めっき性の改善のために、Si量を0.4質量%以下としている。
【0013】
以下に、本発明の詳細について説明する。なお、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0014】
1) 成分組成
C:0.26〜0.35%
CはVCとして鋼中に析出し、高強度化に寄与する重要な元素である。C量が0.26%を下回ると1470MPa以上のTSが得られず、0.35%を超えると延性が低下する。したがって、C量は0.26〜0.35%とする。
【0015】
Si:0.4%以下
Siは固溶強化元素として強度調整に有効な元素であるが、その量が0.4%を超えるとめっき性が劣化する。したがって、Si量は0.4%以下とする。
【0016】
Mn:1.0%以下
Mn量が1.0%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されたり、その偏析によりバンド状組織が形成され、曲げ加工性が劣化する。したがって、Mn量は1.0%以下、好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下とする。
【0017】
P:0.03%以下
P量が0.03%を超えると粒界偏析が顕著になって曲げ加工性が劣化する。したがって、P量は0.03%以下とする。
【0018】
S:0.01%以下
S量が0.01%を超えるとMnSの析出が顕著になって曲げ加工性が劣化する。それゆえ、S量は0.01%以下とする。
【0019】
Al:0.07%以下
Al量が0.07%を超えると熱間圧延プロセス中に表面窒化を促進し、曲げ加工性を劣化させるおそれがある。したがって、Al量は0.07%以下とする。
【0020】
N:0.01%以下
N量が0.01%を超えると粗大なTiNが形成され、曲げ加工性が劣化する。したがって、N量は0.01%以下とする。
【0021】
Ti:0.05%以下
Ti量が0.05%を超えると1μm程度の粗大なTiNが形成され、曲げ加工性が劣化する。また、TiCが形成され、本発明に必要なVCの形成を阻害する。したがって、Ti量は0.05%以下、好ましくは0.015%以下とする。
【0022】
V:1.2〜1.8%
Vは微細なVCを形成して、曲げ加工性を劣化させることなく高強度化に寄与する重要な元素である。V量が1.2%を下回ると十分な量のVCが析出しないため、1470MPa以上のTSが得られなくなるとともに、セメンタイトやパーライトが生成して曲げ加工性が劣化する。一方、V量が1.8%を超えると延性が低下する。したがって、V量は1.2〜1.8%とする。
【0023】
残部はFeおよび不可避的不純物であるが、以下の理由により、さらに、Cr:1%以下、B:0.0030%以下、Mo:0.5%以下、W:1%以下のうちから選ばれた少なくとも一種の元素が含有されることが好ましい。
【0024】
Cr:1%以下
Crは厚さ5μmを超えるようなスケール生成を抑制する効果がある。しかし、Cr量が1%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されるため、曲げ加工性が劣化する。また、Cr系炭化物形成によりVC形成が抑制されることから、Cr量は1%以下とする。
【0025】
B:0.0030%以下
Bはフェライト粒界に偏析することでフェライト粒界を強化し、曲げ加工性をさらに向上させる。しかし、B量が0.0030%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されるため、曲げ加工性が劣化する。したがって、B量は0.0030%以下とする。
【0026】
Mo:0.5%以下
Moはパーライトの生成を抑制する効果を有する。しかし、Mo量が0.5%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されるため、曲げ加工性が劣化する。したがって、Mo量は0.5%以下とする。
【0027】
W:1%以下
Wも、Moと同様、パーライトの生成を抑制する効果を有する。しかし、W量が1%を超えるとフェライト変態を遅滞させてベイナイト相やマルテンサイト相のような硬質相が形成されるため、曲げ加工性が劣化する。したがって、W量は1%以下とする。
【0028】
2) ミクロ組織
良好な曲げ加工性を確保するには、ベイナイト相、マルテンサイト相、センメンタイト、パーライトなどの粗大な硬質相の生成を極力回避するため、マトリックス全体に占めるフェライト相の面積率を90%以上、好ましくは95%以上とする必要がある。
【0029】
しかし、フェライト相主体のミクロ組織にしただけでは、1470MPa以上のTSが得られない。そこで、本発明では、曲げ加工性に大きな影響を与えることのない微細なVCをフェライト相に析出させて高強度化を図っている。すなわち、VCの全個数のうち大きさが10nm未満のVCの個数の割合を85%以上にするとともに、鋼中の固溶V量を鋼組成全体を100質量%とした場合に対し0.30質量%以下として、微細なVCを十分な個数析出させて優れた曲げ加工性と1470MPa以上のTSを確保している。鋼中の固溶V量が0.30質量%を超えたり、大きさが10nm未満のVCの個数の割合が85%未満だと、1470MPa以上のTSが得られない。なお、本発明においては、VCに極微量のTiが含まれる場合もある。
【0030】
ここで、フェライト相の面積率は、下地熱延鋼板の圧延方向板厚断面の板厚1/4部分を電解研磨により仕上げ、走査電子顕微鏡(SEM)により加速電圧10kV、2000倍で反射電子像を観測し、反射電子像中に認められるマトリックスとは明らかに異なる組織(パーライトや硬質相は表面凹凸で判断可能)領域を抽出し、残部をフェライト相と判断して、観察視野中に占める面積率を求め、5視野で算術平均した値である。また、VCの大きさは、上記の方法で求めた。さらに、鋼中の固溶V量は、特許文献3に記載の方法にしたがって求めた。すなわち、対象析出物が非常に微細であるため、抽出した析出物を全添加量から差し引く一般的な固溶量の求め方では精度が出ないので、ここでは試料を非水溶媒系電解液中で所定量だけ電解した後、電解液を分析溶液とし、ICP質量分析法を用いてVおよび比較元素としてFeの液中濃度を測定した。得られた濃度を基に、Feに対するVの濃度比を算出し、さらに、試料中のFe量(質量%)を乗じることで、固溶V量(質量%)を求めた。試料中のFe量(質量%)は、Fe以外の組成値の合計を100質量%から減算することで求めることができる。
【0031】
なお、測定した析出物がVCであるかどうかは、TEMで電子回折を行って確認した。
【0032】
3) 製造条件
本発明の高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板は、上記組成を有する鋼を、900℃以上の仕上温度で熱間圧延後、580〜700℃の巻取温度で巻取り、酸洗後、還元雰囲気中で600〜700℃に加熱し、亜鉛めっき浴に浸漬してめっき処理を施し、460〜550℃でめっき層の合金化処理を行う方法により製造できる。
【0033】
熱間圧延の仕上温度:900℃以上
仕上温度が900℃未満だと大きなフェライト粒と小さなフェライト粒がバンド状に層構造を形成するため、曲げ加工性が劣化する。そのため、仕上温度は900℃以上とする。
【0034】
なお、仕上温度を900℃以上にするには、熱間圧延前に鋼をオーステナイト単相域まで加熱する必要があるが、そのときスラブ中のVCはオーステナイト相中に容易に溶解される。溶解をより確実にするには1150℃以上の加熱が好ましい。なお、同じ炭化物でもTiCやNbCの場合は、1470MPa以上のTSを得ようとすると1300℃以上、もしくは鋼が溶解するまで加熱する必要があり、実現不可能である。
【0035】
また、本発明では、連続鋳造後の鋼をそのまま熱間圧延する直送圧延の技術も適用することができる。このとき、900℃以上の仕上温度を確保するために、熱間圧延前に補助的な加熱を行うこともできる。
【0036】
巻取温度:580〜680℃
巻取温度が580℃未満では大きさが10nm未満の微細なVCの析出が困難になるとともに、パーライト変態が生じるので、また、680℃を超えるとVCが粗大化するので、高強度化が阻害される。そのため、巻取温度は580〜680℃とする。なお、巻取り後は、めっき処理のために酸洗してスケールを除去する必要がある。
【0037】
めっき処理前の還元雰囲気中での加熱条件:600〜700℃で10〜90秒加熱
亜鉛めっき浴に浸漬してめっき処理を施す前には、例えば水素20vol.%+窒素80vol.%の還元雰囲気中での600℃以上に10秒以上加熱して鋼板表面を浄化する必要があるが、VCの粗大化を防止して高強度化を達成するために、加熱温度、時間の上限はそれぞれ700℃、90秒とする。
【0038】
めっき処理:通常の条件、すなわちAlを含有する480℃前後の亜鉛めっき浴に浸漬してめっき処理を行えばよい。
【0039】
めっき層の合金化処理:めっき処理後は、通常の条件、すなわち460〜550℃でめっき層の合金化処理を行えばよい。合金化処理時間は、通常の60秒以下で十分である。
【0040】
なお、処理温度が700℃以下のめっき処理やめっき層の合金化処理では、VCの粗大化は起こることはない。
【実施例】
【0041】
表1に示す成分組成の鋼A〜Iを溶製後、表2に示す熱延条件で板厚2.5mmの熱延鋼板を作製した。この熱延鋼板を、酸洗によりスケールを除去後、水素20vol.%+窒素80vol.%の還元雰囲気中で600℃で60秒加熱し、次いで500℃まで冷却し、480℃に保持したAl:0.1質量%を含有した亜鉛めっき浴に浸漬してめっき処理を施した後、550℃で30秒の合金化処理を行い、平均冷却速度10℃/秒で冷却して合金化溶融亜鉛めっき鋼板のサンプル1〜15を作製した。このときのZnの目付量は40g/m2である。
【0042】
そして、各サンプルに対して次のような調査を行った。
ミクロ組織:
a) フェライト相の面積率:各サンプルから、上記方法でフェライト相の面積率を求めた。
b) 全VC個数に対する大きさ10nm未満のVC個数の割合:上記サンプルから機械的研削および湿式研摩により1/4t領域よりそれぞれ試料を採取し、電解研摩法によりTEM用薄膜試料を作成し、上記方法で全VC個数に対する大きさ10nm未満のVC個数の割合を求めた。
c) 鋼中の固溶V量:上記サンプルを適当な大きさに切断後、機械的研削により表裏面の溶融亜鉛めっき層を除去した。このめっき層を除去した鋼板を、10%AA系電解液(10vol%アセチルアセトン-1mass%塩化テトラメチルアンモニウム-メタノール)中で、約0.2gを電流密度20mA/cm2で定電流電解した。電解後の10%AA系電解液から上記方法にて鋼中の固溶V量を求めた。
強度および伸び:JIS 5号引張試験片を圧延方向に平行に採取し、JIS Z 2241に準拠して、クロスヘッド速度10mm/minで引張試験を行い、TSおよび伸びElを求めた。
曲げ加工性:幅50mm長さ100mmの試験片を圧延方向に平行に採取し、90°曲げ加工した際の稜線部分を目視し、割れの箇所が5箇所未満の場合を曲げ加工性に優れる(○)、割れの箇所が5箇所以上である場合を曲げ加工性が不良(×)とした。
めっき性:目視により不めっきの有無を調査し、不めっき無(○)、不めっき有(×)でめっき性を評価した。
【0043】
結果を表2に示す。本発明例では、1480〜1610MPaすなわち1470MPa以上のTS、10%以上のElが得られ、曲げ加工性およびめっき性にも優れていることがわかる。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.26〜0.35%、Si:0.4%以下、Mn:1.0%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Al:0.07%以下、N:0.01%以下、Ti:0.05%以下、V:1.2〜1.8%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有し、マトリックス全体に占めるフェライト相の面積率が90%以上であり、前記フェライト相にはVの炭化物(VC)が析出しているミクロ組織を有し、かつ前記VCの全個数のうち大きさが10nm未満のVCの個数の割合が85%以上であり、鋼中の固溶V量が0.30質量%以下であることを特徴とする高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板;ここで、VCの大きさとは、透過電子顕微鏡によりマトリックスであるフェライト相の[001]方位から観察される正方板状のVCにおいて、21/2×L(L:正方板の1辺の長さ)で表せるVCの大きさを複数個のVCに対して求め、算術平均した値のことである。
【請求項2】
さらに、質量%で、Cr:1%以下、B:0.0030%以下、Mo:0.5%以下、W:1%以下のうちから選ばれた少なくとも一種の元素を含む組成を有することを特徴とする請求項1に記載の高強度合金化溶融亜鉛めっき熱延鋼板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成を有する鋼を、900℃以上の仕上温度で熱間圧延後、580〜680℃の巻取温度で巻取り、酸洗後、還元雰囲気中で600〜700℃に10〜90秒加熱し、亜鉛めっき浴に浸漬してめっき処理を施し、460〜550℃でめっき層の合金化処理を行うことを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき熱延鋼板の製造方法。

【公開番号】特開2012−172239(P2012−172239A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37938(P2011−37938)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】