説明

高強度用途におけるガース溶接用のガスレス・プロセス及びシステム

【課題】有心溶接棒及びショートアーク溶接システム、並びに特別な有心の溶接棒を溶着させるためのシステムの溶融パルスを制御する方法を提供する。
【解決手段】ショートアーク溶接プロセス及びセルフシールド溶接棒を用いて高強度の材料をガース溶接する溶接システム及び方法が開示され、前記溶接システムは、セルフシールド溶接棒を溶接されるべきワークピースに向かって進行させると共にアーク長さを制御する溶接装置と該装置の操作を含む結果、溶接部が少なくともアメリカ石油協会の等級X−80のパイプの溶接に対する要求を満たす。前記システムは更に、前記溶接棒にエネルギを導入してセルフシールド溶接棒の端末を溶融させる電流パルスを生成するためのコントローラを備えた電源と、その期間中に溶融した溶接棒がワークピースに対して短絡する溶融パルスの終末に後続する低電流での休止した金属移転部分と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年4月29日に出願手続された米国特許出願第10/834,141号の一部継続出願、2004年10月6日に出願手続された米国特許出願第10/959,857号の一部継続出願、2005年10月31日に出願手続された米国特許出願第11/263,064号の一部継続出願、及び2006年1月20日に出願手続された米国特許出願第11/336,506号の一部継続出願であり、その全ての開示事項は、引用することによりここに組み入れられる。
【0002】
本発明は、電気アーク(arc)溶接の分野に関し、より詳しく言えば、セルフシールド・フラックスコアード(self-shield flux cored)アーク溶接(FCAW−S)棒を用いて行う改良されたショートアーク(short arc)溶接システム、溶接の方法、及び溶接棒の成分に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、ガス無し(ガスレス:gas-less)又はセルフシールドの溶接プロセスを用いて、高強度のパイプ及びパイプラインを、半自動で、周状に溶接するための商業ベースでの解決法または方法はない。これは、ガスレス又はセルフシールド溶接用途に用いられる伝統的な技術が、高強度溶接用途における固有の制限を抱えているからである。
【0004】
ガスレス又はセルフシールド溶接棒を用いるに際して、雰囲気中の酸素および窒素と反応してこれら成分を溶接部外に保つために、溶接棒内には様々な化学物質が使用されている。これら化学物質は、酸素または窒素が溶接品質を悪化させることを防止するに十分な量が用いられる。しかしながら、例えばチタニウムやアルミニウムのようなこれら化学物質は、溶接部をより強くするが、反面、それらはまた、溶接部を脆くするという逆効果も有している。この脆性は、溶接強度がアメリカ石油協会(API: American Petroleum Institute)の等級(グレード:Grade)X−80のラインパイプの溶接に対する要求もしくはそれ以上の要求を十分に満たすことを求められることが多々ある、例えばパイプライン溶接のような、多くの高強度溶接に、ガスレス又はセルフシールド溶接法が用いられることを妨げている。
【0005】
更に、ガスシールド溶接法を用いてこれら溶接要求に適合する方法があるけれども、これらの方法も、それらが望ましいとは言えなくする欠点を有している。すなわち、ガスシールド法を用いて(他の用途に加えて)高強度のパイプ又はパイプラインを溶接するための現行の方法およびシステムは、雰囲気および元素(エレメント:element)から溶接領域を保護するために、コストが嵩み時間の掛かる段取り(セットアップ:set up)を必要とする。このことは、困難な環境条件においてしばしば外部で溶接が行われるパイプライン用途において特に当てはまることである。
【0006】
(参照による組み入れ)
本発明は、アメリカ石油協会(API)のグレードX−80のラインパイプの溶接に対する要求もしくはそれ以上の要求を満たすことができる、セルフシールド有心(フラックスコアード:flux cored)アーク溶接棒を採用したショートアーク溶接プロセスを用いることを伴うものである。本発明の溶接方法とフラックス入りの溶接棒を組み合わせる場合には、相互依存的な関係がある。そこで、本発明は、入力エネルギを制御することと、高い強度および靱性を達成するために溶着される溶接金属の微視的構造の制御とを、一緒に組み合わせるものである。特に、本発明の或る例示的な実施形態は、550MPaを越える降伏強さおよび690MPaを越える引張強さ、並びに摂氏20度で60ジュール(Joules)を越えるシャルピーV−ノッチ(CVN)の靱性を達成することができる。
【0007】
パイプの溶接方法および装置と同様に、短絡アーク溶接のシステム,技法および関連した概念は、特許文献1−13に一般的に述べられており、それらの内容は、背景技術情報として引用することによりここに組み入れられる。
【0008】
電気アーク溶接の分野では、消耗し得る進行する溶接棒の端部と加工物(ワークピース:workpiece)の間で様々の溶接プロセスを用いる。ワークピースは、一緒に溶接される2つ若しくはそれ以上の部品も含み得るものである。本発明の或る実施形態はショートアークプロセスに関するものであり、このショートアークプロセスでは、進行する溶接棒は電流パルス期間中にアークの熱によって溶融し、そして、溶融金属が表面張力の作用によって球状体(ボール:ball)を形成した後、この溶融金属の球状体は短絡作用によってワークピースに移行する。短絡は、進行するワイヤが球状体を移動させてワークピース上の溶融金属溜まりに接触させるときに生じ、短絡(ショート:short)は、溶接電圧の急な落ち込みによって感知される。その後、短絡は中断され、ショートアーク溶接プロセスが繰り返される。
本発明は、ショートアーク溶接の改良であり、溶接波形の輪郭(プロフィール:profile)が高速スイッチングインバータのパルス幅変調器を操作する波形発生器によって制御される電源を用いることによって実行されるもので、そのことは、引用することによりここに組み入れられるものであるが、譲受人による幾つかの特許、例えば特許文献14,15及び12に開示されている。これら3つの特許は、本発明の或る例示的な実施形態を実施するために採用された高速スイッチングタイプの電源を図説しており、背景技術としてここに組み入れられる。
波形発生器の波形は、状態テーブルとしてメモリに記憶されており、前記テーブルは、オハイオ(Ohio)州クリーブランド(Cleveland)のリンカーン・エレクトリック・カンパニー(Lincoln Electric Company)によって先駆された標準技術に従って、選択され、波形発生器に出力される。波形発生器内に波形プロフィールを生成するテーブルのこのような選択は、例えば前述の特許文献15など、幾つかの先の特許に開示されている。従って、本発明を実施するのに用いられる電源は、一般に知られており、本発明において用いられる背景技術を構成するものである。
本発明のショートアーク溶接システムの一つの様相は、例えば特許文献14に記載されているように、進行する溶接棒の溶融金属球状体を形成する溶融パルスのトータルエネルギを決定する回路を採用している。この溶融パルスのトータルエネルギは、溶融パルスの全期間にわたる統合した出力を有する電力計によって感知される。この技術は、本発明の一つの様相に採用されているので、引用することによりここに組み入れられる。
ショートアーク溶接システムにおいて短絡(ショート:short)が生成された後、短絡は、続いて起こる溶接電流の増加によって解消される。かかる状態進行はショートアーク溶接システムにおいては良く知られており、特許文献16及び特許文献14にその全体が記載されている。従って、特許文献16に記載された技術も、背景技術としてここに組み入れられるものである。
本発明の或る例示的な実施形態は、溶接産業において公知の標準的な交流(AC)パルス溶接システムの一つの変形である。譲受人の先の出願は、本発明の或る例示的なAC短絡の実行の実施に用いられるタイプの高周波スイッチング電源用のエネルギ測定回路またはプログラムを備えた、直流(DC)および交流(AC)の両方の標準的なパルス溶接を開示している。本発明を理解する上で或いは本発明を実施する上で必ずしも必要ではないけれども、2005年4月11日に出願された出願番号11/103,040号のこの先行する出願は、引用することによりここに組み入れられる。
【0009】
本発明は、有心溶接棒およびショートアーク溶接システム、並びに、特別な有心の溶接棒を、従ってシールドガスを要することなく、溶着するためのシステムの溶融パルスを制御する方法であり、アメリカ石油協会(API)グレードX−80のラインパイプの溶接に対する要求もしくはそれ以上の要求を満たすことができる方法、に関するものである。
このシステム及び方法は、パルスと実際の短絡との間を所望の期間に維持する。この期間は、短絡とパルスの所望のタイミングを含むフィードバックループ(feedback loop)によって制御され、その結果、堅実な短絡タイミングを維持するようにパルスの球状体の大きさが変化させられる。
このプロセスは、特許文献17に開示されているような、2つの電源を用いた他のショートアーク制御装置の実質的な改良である。第1の電源は、一定の大きさの溶融パルスを維持し、短絡とそれに続くクリーニングパルス(cleaning pulse)の間には定まった期間がある。律動的なタイミングと溶融パルスのパラメータの間には、本発明において採用されているような、フィードバックは無い。溶融パルスの終末と短絡発生の間に、所望の期間が維持される。フィードバックループの概念を用いて所望の期間を固定することにより、アークの安定性が向上する。
本発明は、特許文献17に示されるように、DCプロセスに適用可能であるが、主として、ACショートアーク溶接システムを用いる場合に有益である。従って、特許文献17は、2つの関係しないタイミングが溶融パルスの閉ループ制御なしに一定に維持されたDCショートアークシステム用の制御回路を示す背景技術として、引用することにより、ここに組み入れられるものである。
【0010】
本発明は、更に、フラックス入りの、つまりセルフシールドの溶接棒または溶接ワイヤを採用している溶接方法を含むものである。アーク溶接棒またはワイヤの詳細、とりわけ有心の溶接棒の詳細が特許文献18−32に提示されており、それら全ては、引用することによりここに組み入れられる。
【0011】
また、出願番号10/655,685号として2003年9月8日に出願された先行する出願、出願番号10/834,141号として2004年4月29日に出願された先行する出願、出願番号10/959,587号として2004年10月6日に出願された先行する出願、及び出願番号11/263,064号として2005年10月31日に出願された先行する出願は、引用することにより、非先行背景技術としてここに組み入れられる。
【特許文献1】米国特許第4717807号(パークス:Parks)明細書
【特許文献2】米国特許第4954691号(パークス:Parks)明細書
【特許文献3】米国特許第5676857号(パーカー:Parker)明細書
【特許文献4】米国特許第5742029号(ステーバ:Stava)明細書
【特許文献5】米国特許第5961863号(ステーバ:Stava)明細書
【特許文献6】米国特許第5981906号(パーカー:Parker)明細書
【特許文献7】米国特許第6093906号(ニコルソン:Nicholson)明細書
【特許文献8】米国特許第6160241号(ステーバ:Stava)明細書
【特許文献9】米国特許第6172333号(ステーバ:Stava)明細書
【特許文献10】米国特許第6204478号(ニコルソン:Nicholson)明細書
【特許文献11】米国特許第6215100号(ステーバ:Stava)明細書
【特許文献12】米国特許第6472634号(ヒューストン:Houston)明細書
【特許文献13】米国特許第6501049号(ステーバ:Stava)明細書
【特許文献14】米国特許第4866247号(パークス:Parks)明細書
【特許文献15】米国特許第5278390号(ブランケンシップ:Blankenship)明細書
【特許文献16】米国特許第6617549号(アイデ:Ihde)明細書
【特許文献17】米国特許第4020320号(ピジルス:Pijls)明細書
【特許文献18】米国特許第5369244号明細書
【特許文献19】米国特許第5365036号明細書
【特許文献20】米国特許第5233160号明細書
【特許文献21】米国特許第5225661号明細書
【特許文献22】米国特許第5132514号明細書
【特許文献23】米国特許第5120931号明細書
【特許文献24】米国特許第5091628号明細書
【特許文献25】米国特許第5055655号明細書
【特許文献26】米国特許第5015823号明細書
【特許文献27】米国特許第5003155号明細書
【特許文献28】米国特許第4833296号明細書
【特許文献29】米国特許第4723061号明細書
【特許文献30】米国特許第4717536号明細書
【特許文献31】米国特許第4551610号明細書
【特許文献32】米国特許第4186293号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、先に議論した問題に取り組み、また、アメリカ石油協会(API)のグレードX−80のラインパイプの溶接に対する要求もしくはそれ以上の要求を満たす溶接部を形成することができるシステム及び方法をもたらすための、システム及び方法に注力したものである。特に、本発明の例示的な実施形態は、550[Mpa]を越える降伏強さ及び690[Mpa]を越える引張強さ、並びに摂氏20度で60ジュール[J]を越えるシャルピーVノッチ(CVN)靱性を達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のシステム及び方法は、望ましい溶接特性を達成するために、有心の、つまりセルフシールドの溶接棒の使用と連繋して、アーク長さを最短にする専用の電源を通じて溶接アークを制御する。ショートアークの使用は、溶融池(プール:pool)において雰囲気からの汚染を最少にし、しかも、同時に、溶接中、気孔に対してより耐性がある。更に、本発明の或る実施形態によれば、短いアーク長さの使用は、後で更に議論する本発明の一つの様相に係る成分を含有したセルフシールド溶接棒を使用できるようにする。加えて、本発明を用いることで、アメリカ石油協会(API)のグレードX−80のラインパイプの溶接に対する要求もしくはそれ以上の要求を満たす、及び/又は、550[Mpa]を越える降伏強さ及び690[Mpa]を越える引張強さ、並びに摂氏20度で60ジュール[J]を越えるシャルピーVノッチ(CVN)靱性の溶接を達成するのに、追加的なシールドガスを用いる必要はない。
【0014】
本発明の方法に関連した第1の様相によれば、ショートアーク波形の溶融パルスは、溶融パルスの値を一定に固定することによってではなく、フィードバックループによって相互作用的に制御される。溶融パルスの終端と短絡との間の時間は、ショートアーク溶接システムにおける溶融パルスの反作用的に変化するパラメータによって維持される。本発明の或る例示的な実施形態では、システムはACシステムであるが、特許文献17に概略的に記載されたタイプのDCシステムにおいても使用できる。ショートアーク波形の操作(マニピュレーション:manipulation)は、特許文献12に開示されているような、高速スイッチングインバータのパルス幅変調器を操作する波形発生器によって制御される波形を有する単一の電源を用いることによって容易化される。本発明を実施することにより認識される一つの利点は、先行技術に示されるような、2つの別々の電源を用いるショートアーク溶接に対する改良である。
【0015】
本発明の第1の様相の他の実施形態によれば、ショートアーク溶接システムは、溶融パルスが負の極性を有するACシステムである。一定した溶融金属ビード(bead)を維持するために、進行する溶接棒の端末の溶融金属が球状体を形成し、そしてワークピースの溶接溜まりに対して短絡するように、電力供給を低レベルの正の電流に移行させるジュール(joule)閾値のスイッチがある。或る実施形態においては、AC波形は、波形の個々の電流部分のプロフィールを制御し波形部分の極性を決定する波形発生器によって制御される。先行技術においては、溶融パルスに一定のエネルギを与えるためにジュール閾値のスイッチが用いられていた。
本発明の或る実施形態では、溶融パルスの後に溶接棒がショートするための時間を計測するタイマがある。溶融パルスと短絡発生との間の一貫した時間を維持するために、フィードバックループが採用されている。この時間の制御は、アーク及び短絡サイクルを安定させる。本発明の或る実施形態では、溶融パルスとショートとの間の時間は約1.0[ms]である。溶接棒のサイズ及び溶着速度に依存して、溶融パルスと短絡発生との間の時間は、0.5[ms]から2.0[ms]の一般的な範囲内で或る固定した値に調整され得る。タイミングの制御は、典型的にはACショートアーク溶接に適用可能であるが、同じ概念が直列のDC正極に適用可能である。
両方の例において、溶融パルスによって形成された溶融金属を伴った進行するワイヤは、短絡発生に先立って球状体の形成を助長する低レベルの零入力の正の電流に保たれる。本発明の何れの実施においても、溶融パルスのジュール又は他のパラメータは、短絡発生に対するプリセット(preset)時間を維持するように条件付けられたフィードバックループによって制御される。
【0016】
本発明の第1の様相のACでの実施は、有心タイプの環状の溶接棒にとって有益であり、或る実施形態は、以下で更に議論される本発明の一つの様相に係る合金成分をコア(core)内に備えた有心溶接棒を用いて実施される。短絡時間からのフィードバックに基づいた有心溶接棒の溶融サイクルの制御は、AC短絡溶接プロセスの安定性を維持するために、非常に精密な手順である。
前述の見地から、本発明の或る実施形態は、本発明の一実施形態に係る有心の、つまりセルフシールドの溶接棒を用いてパイプを溶接するのに使用することができる。そのような溶接棒に対する溶接電流は、本発明の方法を用いる場合には、スプレイ(spray)溶接に対する閾値電流以下である。従って、パイプ接合部への金属の移行は、何れかのタイプの短絡を伴わなければならず、本発明の実施形態においては、本発明が注力しているタイプであるグロビュラ(globular)短絡移行を伴うことになろう。
ACショートアーク溶接を用いることによって溶接部の安定性を向上させてもなお、アークの不安定をもたらすかも知れない。この不安定性は、本発明を実施することによって克服された。従って、本発明は、セルフシールド有心溶接棒を用いたパイプ接合のACショートアーク溶接にとりわけ適用可能であり、その結果、溶接強度は、アメリカ石油協会(API)のグレードX−80のラインパイプの溶接に対する要求もしくはそれ以上の要求を満たすものとなる。
【0017】
本発明の或る実施形態によれば、進行するワイヤ溶接棒とワークピースとの間にショートアーク溶接プロセスを実行する溶接システムが提供され、前記システムは、溶接棒の端末を溶融させるエネルギを溶接棒内に導入する電流パルス、及び溶接棒の端末の溶融金属がワークピースの溶接溜まり内に溶着されることができるようにする低電流での休止した金属移転(トランスファ)部を生成する、コントローラを有する電源を備えている。低電流での休止した金属移転部の期間中は、溶融金属は、溶融金属溜まりに対して短絡している。タイマ(timer)は、溶融パルスと短絡発生との間の実際の時間を計測する。前記パルスと短絡発生との間の望ましい時間を設定するのに或る装置が用いられ、また、実際の時間と前記望ましい時間との差に基づいて修正信号を生成するのに或る回路が使用される。この修正信号は、例えば溶融パルス期間中にワイヤに導入されるトータルエネルギのように、溶融パルスの所定のパラメータを制御するのに用いられる。
【0018】
本発明の第1の様相の或る例示的な実施形態によれば、ショートアーク溶接プロセスはACプロセスであり、そこでは、溶融パルスは負の電流で実行され、波形の休止低電流金属移転部は負の極性である。本発明のACバージョン(version)は、例えばパイプの溶接接合の初層溶接(ルートパス:root pass)のような、幾つかの環境における有心溶接棒を用いた溶接に適用可能である。
【0019】
本発明の電源の他の様相によれば、ショートアーク溶接システムのコントローラは、短絡後に短絡クリーニングパルス(cleaning pulse)を生成する回路を有している。前記電源のこの実施形態では、波形発生器が、任意の所定時間において、溶接波形の極性およびプロフィールを決定する。本発明の溶接システムは、定められた値で溶融パルスとショートとの間の時間を維持し、前記定められた値は、一般的な範囲0.5−2.0[ms]であり、他の実施形態では、約1.0[ms]である。
【0020】
前記電源または前記電源により実行される方法の他の様相によれば、ショートアーク溶接システムは、溶融パルスと休止部の両方が正であり、正の短絡クリーニングパルスがこれに続いて、DC正が実行される。本発明のこの実施は、ショートアーク溶接プロセスを実行するための波形の処理期間中に波形発生器からの極性変化を伴うものではない。ショートアーク溶接システムはACであり、溶融パルスと短絡との間の実際の時間を、それが望ましい時間と同じであるようにするために、電流パルスを制御する回路がある。本発明のこの実施形態は、本発明の他の実施形態がそうであるように、一定の時間を維持する。
【0021】
本発明の一実施形態は、溶融パルスと究極的な短絡発生との間の時間を制御するために、溶融パルスのエネルギを制御する。
【0022】
本発明の第1の様相の更に他の様相は、プロセスが溶融パルスと短絡発生との間の選択された時間を有するように、ショートアーク溶接プロセスの溶融パルスを制御する方法をもたらすことである。この方法によって制御されるパラメータは、溶融パルスのトータルエネルギである。本発明のこの実施形態は、有心溶接棒を用いた周状のオープンルート(open root)パイプ接合のルートパスに用いることができる。
【0023】
本発明の第2の様相は、AC溶接中に前述のショートアーク法によって得られるような比較的短いアーク長さを利用することに少なくとも部分的に関連しており、そのことは、雰囲気からの溶接部の汚染の著しい低減をもたらすものである。
本発明のこの実施形態は、また、本発明のこの様相と共に溶接棒に用いられると有益な結果を達成することができる、独特のフラックス(flux)合金システムを利用している。有心溶接棒の前記フラックス/合金システムは、短いアーク長さを可能にし、また、促進する。
本発明の或る実施形態に従ってこれらの様相を組み合わせることは、60を越え70[ksi]までに至る強度をもった健全で強靱な溶接金属を創り出すという、共同作用的な現象をもたらし、また、他の実施形態においては少なくとも80[ksi]の降伏強さを有しており、従って、アメリカ石油協会(API)のグレードX−80のラインパイプの溶接に対する要求もしくはそれ以上の要求を満たす溶接部をもたらす。
また、本発明の或る例示的な実施形態は、550[Mpa]を越える降伏強さ及び690[Mpa]を越える引張強さ、並びに摂氏20度で60ジュール[J]を越えるシャルピーVノッチ(CVN)靱性を達成することができる。更に、本発明の実施形態で用いられる合金は、より薄肉のパイプの使用を可能にし、また、パイプ溶接領域におけるシールドガスの必要性はない。
【0024】
オハイオ(Ohio)州クリーブランド(Cleveland)のリンカーン・エレクトリック・カンパニー(Lincoln Electric Company)によって先駆されている波形技術は、有心溶接棒を用いるAC(交流)溶接での使用のために修正されてきた。有心溶接棒は、溶接ビードの合金が当該ビードにとって望ましい機械的特性に調整され、また溶接作業の位置がより制限されない状態で、溶接作業がより精密に制御され得るようにする。しかしながら、アークの安定性ならびに適切な溶融温度および速度を与えるためには、ACプロセスのための波形の実際の制御は、非常に複雑である。
アーク溶接中の溶接金属の汚染は、AC溶接を用いる有心溶接棒にとって、なお問題である。溶接作業後の溶接金属における汚染は、気孔,亀裂およびその他の欠陥を溶接金属中に生じさせる。従って、アーク溶接プロセスの設計者が直面する主要な難題は、大気から、アーク環境からの汚染のような要素を排除するための技術、或いは、そのような不純物の潜在的に有害な作用を中和するための技術を、開発することであった。潜在的な汚染源は、溶接棒を構成する材料、ワークピース自体内の不純物、及び周囲環境の雰囲気を含むものである。
有心溶接棒は、例えばアルミニウム,マグネシウム,ジルコニウム及びチタニウムなどの、キリングエージェント("killing" agent)を含有しているかも知れず、それらエージェントは、潜在的な汚染物質と化学的に結合し、それらが、溶接金属内で気孔や有害な介在物を形成することを阻止する。本発明は、有心溶接棒が溶接金属内に汚染物の介在を許容する傾向を減少せしめる溶接棒成分を用いることを伴うものである。また、その方法は、キリングエージェントとして必要とされる材料の量を低減する。
【0025】
本発明は、特に、AC波形を用いて、低減された汚染レベルの溶接部を形成するのに特に適合した、セルフシールド有心アーク溶接(FCAW−S)棒を提供する。前記溶接棒は、約35から約55%のバリウムフッ化物,約2から約12%のリチウムフッ化物,約0から約15%のリチウム酸化物,約0から約15%のバリウム酸化物,約5から約20%の酸化鉄、及び約25%未満の脱酸および脱窒素(ディニトライディング:denitriding)エージェントでなる、合金/フラックス・システムを有している。このエージェントは、アルミニウム,マグネシウム,チタニウム,ジルコニウム及びその組み合わせから選ばれる。
【0026】
本発明は、独特の合金/フラックス・システムを利用したセルフシールド有心溶接棒を用いるアーク溶接法を提供するものである。この方法は、溶接棒と基体(サブストレート:substrate)の間に第1の負の電圧を印可して、溶接棒のサブストレートに近い側に、少なくとも部分的な溶融を生じせしめることを含んでいる。この方法は、また、溶接棒とサブストレートの間に正の電圧を印可して、溶接棒から流動可能な材料の塊の形成を促進することを含んでいる。この方法は、更に、溶接棒とサブストレートの間に前記流動可能な塊を介して電気的なショート(短絡)が起こることを監視することを含んでいる。この方法は、更に電気的なショートを検出すると、溶接棒とサブストレートの間に第2の負の電圧を印可することを含んでいる。そして、この方法は、第2の負の電圧の大きさを増し、それにより、電気的なショートをクリア(clear)し、前記流動可能な塊からサブストレート上に溶接部を形成することを含んでいる。
セルフシールド有心溶接棒は、約35から約55%のバリウムフッ化物,約2から約12%のリチウムフッ化物,約2から約15%のリチウム酸化物,約5から約20%の酸化鉄、及び約25%未満の脱酸および脱窒素エージェントであって、アルミニウム,マグネシウム,チタニウム,ジルコニウム及びその組み合わせでなるグループから選ばれたもの、を含むことができる。
【0027】
本発明の一つの目的は、少なくともアメリカ石油協会(API)のグレードX−80のラインパイプの溶接に対する要求を満たす溶接部をもたらすために、特にプロセスがACモードで実行されているときに、プロセス中の短絡事象の間隔を制御する、ショートアーク溶接システムを提供することである。
【0028】
本発明の今一つの目的は、溶融パルスとショートとの間の時間に基づいて、この時間が望ましい値に固定されるように、前記溶融パルスを制御する、ショートアーク溶接方法を提供することである。
【0029】
本発明の更に他の目的は、改良された溶接棒成分、そして特に、新規なショートアーク溶接システム及び方法と組み合わせて用いるのに特に適合する溶接棒充填(フィル:fill)成分を、提供することである。
【0030】
本発明の更なる目的は、可能な最短のアーク長さでアークを安定させるために、ショートアークプロセスと有心溶接棒を備えた共同作用的なシステムを提供することである。従って、大気からの汚染は最小になる。合金システムと溶接プロセスの組み合わせは、そのような短いアーク長さでアークが案手できるようにし、健全で強靱な溶接金属をもたらす。
本発明の一つの実施形態は、ガスシールドを用いることなく、少なくとも80[ksi]の降伏強さを有する溶接部をもたらすことができ、従って、アメリカ石油協会(API)のグレードX−80のラインパイプの溶接に対する要求もしくはそれ以上の要求を満たす溶接部をもたらす。また、本発明の或る例示的な実施形態は、550[Mpa]を越える降伏強さ及び690[Mpa]を越える引張強さ、並びに摂氏20度で60ジュール[J]を越えるシャルピーVノッチ(CVN)靱性を達成することができる。
【0031】
これら及び他の目的および利点は、添付図面と共に以下の説明から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
電気アーク溶接産業においては、ショートアーク溶接は一般によく行われており、図2に模式的に示されているように、4つの段階(ステージ:stage)I,II,III及びIVを伴うものである。ショートアーク溶接を行うための電源は、変圧器ベースの電源であってもよい;しかしながら、本発明の例示的な実施形態によれば、図1に示されたシステムAは、導線(ライン:line)14a,14bを渡る第1直流(DC)信号を生成するインバータ14に指向した、ライン10,14を渡るAC供給(サプライ:supply)或いは3相サプライを有する、高速スイッチングインバータ・ベースの電源Bを用いている。
標準的な構成に従って、ブースト(boost)又はバック(buck)コンバータ20が、出力ライン22,24を渡る制御された第2DC信号を生成することにより入力電力要素(ファクタ:factor)を修正するために、電源Bに用いられている。高速スイッチングインバータ30は、ライン22,24を渡る前記第2DC信号を、出力リード線32,34を渡る多数の電流パルスによって生成された波形に変換する。本発明の例示的な実施形態によれば、リード線32,34を渡る波形は正の直流(DC)か又は交流(AC)であり;従って、インバータ30は、図には示されていないが、リード線32,34を渡る輪郭が描かれた波形の極性を指示する出力段(ステージ:stage)を有している。前記リード線は、それぞれ溶接棒E及びワークピースWPに接続されている。
標準的なショートアーク技術によれば、溶接棒Eは、供給スプール(spool)又はドラム(drum)40から接触片42を通って供給されるワイヤWの前進端である。所望の極性を有する制御された波形が溶接棒EとワークピースWPの間の間隙を渡って生成されながら、ワイヤWは所定のWFSでワークピースWPに向かって駆動される。
本発明の実施形態では、ワイヤWはフラックス入りのワイヤで、図1Aにおいて模式的に描かれ、フラックス剤を有し通常は合金粒子を含む内部フラックスコアを取り囲む低炭素鋼製の鞘(シース:sheath)50を含むことが示されており、セルフシールドのワイヤ又は溶接棒としても知られている。溶接棒の実施形態については、以下により詳しく議論されよう。
【0033】
分流器(シャント:shunt)60がフィードバック電流装置(デバイス:device)62を駆動し、ライン64の電圧信号が溶接プロセスの瞬間アーク電流を表示する。同様のやり方で、デバイス70が、溶接プロセスの瞬間の電圧を表示する、ライン72上の信号を生成する。インバータ30のコントローラCは、例えばDSPやマイクロプロセッサ等のようなデジタル式の装置であり、全体的にアナログ構成で模式的に描かれた機能を実行する。
コントローラCの中心的な構成要素として、波形発生器100は、メモリユニット102に記憶され、デバイス又は回路104により所望の溶接プロセスに応じて選択された、状態テーブルからの特定の波形を処理する。所望のショートアーク溶接プロセスが選択されると、選択信号104aがメモリユニット102に向けられ、所望のショートアーク溶接波形の特性およびパラメータを規定する状態テーブルが、ライン102aで表示されるように、波形発生器100にロード(load)される。発生器100は、任意の所定時間に、ライン100bのロジック(logic)により表示される所望の極性をもって、出力ライン100aに波形のプロフィールを出力する。
デジタル式のコントローラCによって制御される図示された電源Bは、電流制御フィードバックタイプのもので、そこでは、ライン64上の電圧を表示する電流が、誤差増幅器110によってライン100a上の波形プロフィール信号と組み合わされており、前記誤差増幅器110は、標準的な波形制御技術に従ったパルス幅変調器112を制御するために、ライン110a上に出力信号を有している。ライン112aの出力信号はライン32,34を渡る波形の形状を制御し、また、インプリメント(implement)された特定の波形プロフィールの極性は、ライン100bのロジックにより設定される。このようにして、波形発生器100はパルス幅変調器112を制御し、ライン112aにおけるパルスにインバータ30の高周波動作を制御させる。このインバータのスイッチング周波数は、一般に18kHzよりも高く、好ましくは40kHzよりも高い。
これまでに説明したように、コントローラCを備えた電源Bは、オハイオ(Ohio)州クリーブランド(Cleveland)のリンカーン・エレクトリック・カンパニー(Lincoln Electric Company)によって先駆されている標準的な技術に従って動作する。コントローラCは、アナログ形式で図説されているがデジタル式のものである。
ショートアーク溶接プロセスを実施するには、コントローラCが、溶接棒EとワークピースWPの間の短絡条件に関するフィードバック情報を受け取ることが必要である。コントローラCのこの特徴は、短絡検出器120として模式的に示されており、前記短絡検出器は、ライン122にロジックを生成して、短絡事象SCが在ることを波形発生器100に報知する。このように、前記発生器は、短絡が在るときには知らされ、任意のショートアーク溶接プロセスにおいて遂行されるように、短絡の処理に従った波形を実施する。これまでに説明したように、コントローラCは、標準技術のものであるが、ライン100bのロジックによりインバータ30の出力にて極性の切り換えを制御するという例外を備えている。
【0034】
本発明を実施するために、コントローラCは、短絡に先立って溶融パルスを制御する回路150を備えている。該回路150は、アナログ構造で図説されているがデジタル式のものである。その機能はコントローラCのデジタルプロセッサによって実行され、溶融パルスのエネルギを制御する。かかるエネルギ制御の回路構成は、本願出願人により2005年4月11日に出願された先行する同時係属出願である出願番号11/103,040号に記載されている。この先行する出願は、先行技術としてではないが、関連技術として、引用することによりここに組み入れられる。
この先行出願に示されるように、パルスにされた溶接波形の溶融パルスのエネルギは、回路150によって制御することができ、該回路は、溶接プロセスの瞬間ワット(watt)を表示するライン154上の信号をもらすために、ライン62,72上の瞬間信号を乗算する乗算器152(マルチプライヤー:multiplier)を有している。ライン154上のワット数の信号は、特許文献14に記載されているような標準的な積分器156(インテグレータ:integrator)によって累計される。
ライン154上のワット信号の積分は、ライン162のロジックによって示される溶融パルスの開始(スタート:start)に対応するブロック160に示されるように、パルススタート命令(コマンド:command)を生成する、波形発生器100によって制御される。該波形発生器100によって溶融パルスがスタートするとき、その開始点は時間tである。
ライン164上の出力信号が、ライン154上のワット信号の積分器156による積分を開始させる。入力ライン172a上のロジックを受け取ると直ぐに、ストップパルス装置または回路172の作動によって生じるライン170上のロジックにより、積分プロセスは停止させられる。ライン172a上のロジックは、装置172のスイッチを切り換えて、出力ライン172b及び172cにおけるロジックを変化させる。ライン172cのロジックは、出力ライン100a上のプロフィールを変えるために溶融パルスが停止されるべきことを、波形発生器に報知する。同時に、ライン172bの信号は、リセット(reset)装置または回路174のスイッチを切り換えて、ライン170のロジックを変え、瞬間ワット信号の積分を停止させる。
ショートアーク溶接プロセスにおける所定の溶融パルスのトータルエネルギを表示する出力182を有するレジスター(register)180に、出力ライン156a上のデジタル数字がロードされる。このトータルエネルギ信号は、ライン192にデジタル数字または信号を与えるために、レジスター190に記憶された望ましいエネルギ水準と比較される。比較器194は、ライン182上の数値で表される所定のパルスに対する実際のエネルギを、ライン192上の数値で示される望ましいエネルギ水準と比較する。
前記実際のエネルギと望ましいエネルギの相互関係が、ライン172a上のロジックを制御する。ライン182からの信号がライン192上の信号と等しい場合には、比較器194は、ライン172aのロジックを変更して、デバイスまたは回路172によって表示されるようにパルスを停止させる。このことは、積分を停止させ、また、波形発生器100によって生成された溶融パルスを停止させる。
回路150は、本発明の例示的な一実施形態を実行するために採用されており、そこでは、回路200の調整を通じてライン192上の数値を変えることにより、溶融パルスに対する基準となる又は望ましいエネルギを変える調整されたエネルギ又はエネルギ閾値が、ライン192上の信号と対比されるライン182上の数字信号によって決定されたように達すると、パルスが停止される。本発明の一実施形態においては、電源および用いられた方法が回路200を調整し、溶融パルスを変えることによってショートアーク溶接プロセスを実行ために基準エネルギを変える。
【0035】
デジタルコントローラCを備えた電源Bを用いるショートアーク溶接システムAは、回路200を調整して、図3に示される波形を実行することにより稼働される。AC電流波形200は、溶融パルスが溶接棒Eの端末に溶融金属220を創り出す図2のステージIで表される負の溶融パルス212を有している。パルス212の電流のレベルは、スプレーアークに要する電流以下であり、短絡(ショート:short)による移転(トランスファ:transfer)がある。後に説明するように、時間tでジュール測定が始まる。前記パルスは、時間tにスタート位置を、時間tに停止位置を有している。
標準的な実施に従えば、溶融パルスに続いて、図2のステージIIで表されるように、正の低電流での休止した移転(トランスファ)部214がある。このステージでは、進行する溶接棒Eの端末の溶融金属220が、時間tで発生しステージIIIで示される短絡を待ちながら、表面張力作用により球状体に形成される。従って、tとtの間の時間は、溶融パルスの終末と短絡発生との間の時間であり、この時間は、図1に示されるように、ライン122上のロジックにより示されるものである。
ステージIIの後、ネック(neck)部に示される電流ピンチ(pinch)作用が、溶融金属220を溜まり224から分離させる。標準的な実施に従えば、ステージIVに示されるこの電気的なピンチング作用は、急峻な傾斜部をもった第1電流部216aと、それに続いてより漸進的な傾斜部をもった第2電流部216bとを有する、負の短絡パルス216によって促進される。
最後に、ショートされた金属は分離し、ライン122上のSCロジックがシフトして、移行部218によって示される時間tで、次の電流パルスをスタートさせる。波形210は、負の溶融パルス212,低電流での休止した部分214、及び時間tで次の負のパルスに遷移するクリアランスパルス216を、有するAC波形である。
対応する電圧は、負の部分232、ショート236で急落する低レベルの正の部分234、及びそれに続いて部分240で次の溶融パルス電圧232に遷移する負の電圧部分238を備えた、波形230を有している。
全体のサイクルタイムはtから次のtであり、正のトランスファ214は、全体のサイクルタイムの20%よりも短い時間を有している。このことは、スタッビング(stubbing)を防止する。
【0036】
本発明は、コントローラCの波形発生器100によって波形210を制御する、電源および方法を伴うものであり、tでの溶融パルス212の終末と実際の短絡発生tとの間の時間は、回路200の調整に基づいて一定である。或る例示的な実施形態では、この時間遅延の調整は、図4に示される回路250によって成し遂げられる。この回路においては、時間tでの溶融パルスと時間tでの短絡の時間は、0.5から2.0[ms]の間の所望のレベルに設定される。
或る一つの実施形態では、この設定された所望の時間遅延は、1.0[ms]であり、これはライン254の信号のレベルである。このように、ライン254上の数値は、所望時間tからtである。tとtの間の実際の時間は、時間tでスタートし時間tで停止するタイマ260によって決定される。タイマ260は、tとして示される適切な時間で、次の測定のために初期状態に戻される(リセット(reset)される)。前記tは、tの後の様々な位置に調整可能で、その位置は、図3における溶融パルス期間中に図示されている。
ライン262上の数値は、tとtの間の実際の時間である。この実際の時間は、例えば時間tのような任意の適切な時間でリセットされるレジスター270に記憶される。従って、ライン272上のデジタルデータは、tとtの間の実測時間である。この時間が、ライン254上の望ましい時間と比較される。
実測時間の設定時間に対する関係をデジタル的に処理するために、任意の誤差増幅器を用いることができる。この処理は、加算ジャンクション(junction)280、及び調整回路200への出力284を有するデジタルフィルタ282として、模式的に図示されている。所望の時間と実測時間の間の差異は、ライン284の誤差信号であり、それは回路200の所望のトータルエネルギを増加または減少させる。この所望のトータルエネルギは、更新(アップデート:update)回路290により、tとして示される適切な時間で定期的に更新される。
このように、図1のライン192の信号は、常時、ショートアークプロセスのパルス212にとって望ましいトータルエネルギである。このトータルエネルギは時間tと時間tの間の任意の差異によって調整され、パルス212のエネルギは、一定、又はやがて来る短絡に対する所望の時間遅れに維持される。この時間制御は、システムAのショートアーク溶接プロセスを安定したものにする。
【0037】
図4においては、電源の例示的な実施形態が、溶融パルスに対するエネルギ閾値を変化させることによって実施され、前記パルスと短絡事象との間のタイミングを変化させている。この時間は、図5及び6に模式的に図説されるように、溶融パルスの電圧または電力によっても変化させることができる。これら実施形態の両方において、溶融パルスの時間tからtは、ブロック300で示されるように、一定に維持されている。この一定時間の溶融パルス期間中、電圧または電力が変化させられて、パルスと短絡事象との間の時間を制御する。
図5においては、フィルタ282からの出力ライン284の数値がフィードバックループ310を制御して、ライン312上の数値データで示されるように、溶融パルスの電圧を調整する。短絡発生の遅延時間を制御する電力を調整するためには、フィードバックループ320を調整するために出力ライン284の数値が用いられ、それが、波形発生器100により、ライン154の瞬間電力と比較される。電力の変化はライン322上の数値であり、それが、溶融パルスの電力を制御するために、ライン154上のデジタル数値と比較される。
このように、本発明の実施形態においては、波形の全エネルギ,波形の電圧または波形の電力は、tからtまでを一定時間に維持するために調整され、図1に示されたシステムAのアーク及び短絡事象を安定したものとする。
【0038】
電源の他の実施形態よれば、溶融パルス212のエネルギ調整は、図5及び6に図説された本発明の2つの変形例と組み合わされている。このような組み合わせ制御が、図7及び8に示されており、そこでは、従前の加算ジャンクション280及びデジタルフィルタ282が、アナログ式の誤差増幅器330と組み合わされて図説されている。構成要素またはプログラムは、ライン182のロジックで示されるように、閾値エネルギが到達されたときに、溶融パルスを停止させるロジックを伴った出力332を有している。従って、パルスの全エネルギは、図7におけるパルス電圧制御回路310及び図8に示されるようなパルス電力制御回路320と一緒に、制御される。
出力312は、波形発生器100のライン100aにおける波形プロフィールを制御するために出力172cと組み合わされる。同様のやり方で、エネルギレベルが、電力パルス制御回路320の出力ライン322のデジタル情報と組み合わされて、ライン172c上のロジックによって制御される。
溶融パルスと短絡事象との間の時間の精密な制御を保証するために、パラメータの他の組み合わせが溶融パルス212を制御するのに用いることができる。このようなパラメータは、閉じたフィードバックループによって波形発生器を制御する分野の技術の範囲内のものである。
【0039】
本発明の例示的な或る実施形態においては、図4に示されるように、プロセスは交流(AC)プロセスである;しかしながら、図9に示されるように、正の直流(DC)波形400を用いることができる。溶融パルス402は、パルスが時間tで止まるまでは、正の高電流402aを有している。正のDCモードにおいて、電流は、金属がショートを伴わずに分離することがないように、スプレーアークに必要とされるよりも低いレベルに制限されている。この概念は、ショートアーク溶接プロセスを規定している。
それから、波形は、時間tでの短絡を待ちながら、低レベルの正の電流部404に遷移する。この低レベルの正の電流は、本発明の或る例示的な実施形態において用いられ、時間tで止まる。その後、ショートクリーニングパルス412が、波形発生器によって生成される。パルス410は、電流を高電流レベル402aに戻すために、高傾斜領域412と段付き領域414とを有している。本発明の図説された様々の実施形態が、正の電流波形400を与えて用いることができる;しかしながら、ライン32,34の出力波形の極性を制御するライン100bのロジックは必要ではない。
【0040】
電源の或る例示的な実施形態は、図1Aに模式的に表されたような有心溶接棒を用いたパイプ溶接作業である。かかるパイプ溶接作業は図10に模式的に示されており、そこでは、パイプ断面420,422がオープンルート(open root)424を形成している。図4に示された本発明は、ワイヤWが接触チップ42を通ってパイプ接合部のオープンルート424まで移動するときに、ワイヤW上の波形を制御する。図10は、後に続く標準的な溶接技法を用いた接合のために、パイプ断面を仮付けするパイプ接合部の初層(ルート)パスの溶接に本発明を用いた、特定の実施形態を示したものである。
【0041】
或る実施形態においては、本発明に係る電源および/または溶接作業は、次の様相の1つ若しくはそれ以上の様相を呈している。金属の移転(トランスファ:transfer)の基本的なモードは短絡溶接であるので、電流密度は一般にスプレー溶接に要するよりも低い。多くの短絡溶接におけるように、ピンチ電流はワイヤの直径に応じて設定される。例えば、5/64インチのフラックス入りワイヤに対しては、625アンペアの電流を用いることができる。
一般に、正の電流はアーク長さをセットする傾向がある。たとえ1ミリ秒の半分でも、正の電流が負の電流のアーク長さと同レベルに達することが許容される場合には、正の電流のアークは望ましくない長さに達するでああろう。一般に、正側の制御電流は、約50アンペアから約125アンペアの範囲にあり、或る実施形態では約75アンペアである。
波の形状の負の部分は、約5から15パーセントの電流の勾配を伴って、一定の電力または電圧の何れであっても良い。典型的には、溶接は、約60ヘルツ、10パーセント正で行うことができる。正の電流が比較的低いレベルに設定されているので、波の形状が正である部分は典型的には20パーセントよりも少ない。
【0042】
図11並びに12は、波形技術の溶接機および/または溶接システム510並びに有心溶接棒530を示している。前記溶接システムは、溶接棒530をワークピースWの方に指向させるトーチ(torch)を有する溶接機510を備えている。溶接システム510は、整流器550,560を通って整流される3相の入力電力供給(サプライ:supply)L1,L2,L3、及び電源540を含んでいる。電源540は、出力、特に、前に引用することによりここに組み入れられたものであるが、2005年10月31日に出願手続された米国特許出願第11/263,064号に記載されているように、AC波形を与える。アークACが溶接棒530の端末部とワークピースWの間に生成される。
溶接棒は、鞘部(シース:sheath)600と内部に充填された芯部(コア:core)610とを備えた、有心溶接棒である。前記コアは、小片(パーティクル:particle)610aで表されるように、フラックス成分を包含している。これら成分610aの目的は、(a)溶融金属をスラグ(slag)で覆うことにより、大気の汚染から溶融金属を遮蔽する、(b)任意の大気中の汚染物質と化学的に結合して、溶接部の品質へのその悪影響を最小にする、及び/又は(c)アークシールドガスを発生する、ことである。
標準的な実施によれば、コア610は、コア610の充填をもたらすために組み合わせられる他の雑多な小片610cと一緒に、小片610bとして参照される合金化成分も含んでいる。従来の用途においては、溶接作業を最適化するために、均質(ソリッド:solid)なワイヤを外部のシールドガスと共に用いることが必要であった。しかしながら、特定の機械的および冶金学的特性を備えた溶接部を創り出すためには、特定の合金が必要とされ、そのことは、ソリッドワイヤの形態では得ることが困難である。
更に、ガスシールドは、風を受ける条件、清浄なガス混合へのアクセス可能性および難しい地勢による、ガスへのアクセス或いは適正な遮蔽(シールディング:shielding)を達成する困難性のために、常に実行可能な選択肢であるとは限らない。従って、セルフシールド有心溶接棒を用いることは有益であり、その結果、本発明におけるように、環境が溶接に影響を及ぼすことはない。
【0043】
溶接波形プロフィールの制御なしで有心溶接棒を用いる場合に生じる一般的な問題が、図13に示されている。溶接プロセスは、シース600を溶かして、溶融された上端部640で示されるように、溶接棒の周囲に上向きに溶かされた溶融金属の部分630をもたらす。このように、溶接棒のシースは、コアよりも迅速に溶かされる。このことは、コア610の内部の構成物の溶融によって生成される保護ガス又は化学反応なしで、溶接棒530の出力端部に溶融金属材料が存在する状態を生じさせる。従って、アークACは、保護されていない雰囲気下で溶接棒の金属を溶融させることになる。溶融金属にとって必要な遮蔽は、シースとコアとが同じ速度で溶かされた場合に形成される。
溶融金属をコアよりも迅速に溶かすことの問題が、図14の図による描写によって示されている。シース600からの溶融金属650は、コア610が溶かされる機会を得る以前に、既にワークピースWに結合している。従って、コア610は、溶接プロセスにとって必要な遮蔽をもたらすことはできない。
図13及び14は、有心溶接棒を用いたAC溶接が、海洋パイプラインの溶接および他のパイプラインの溶接に用いられて来なかった理由を示している。しかしながら、AC波形は、有心溶接棒を用いる場合に、熱入力を制御するのに利用することができる。
【0044】
溶接プロセスに用いるAC波形に対し精密なプロフィールを制御することにより、シース600とコア610とが近似的に同じ速度で溶融されることができる。
シースの溶融をコアの溶融と好適に調整することの失敗は、図15に示されるように、シールドガスSGが用いられる理由の一つである。AC波形のプロフィールを制御することの利点は、外部のシールドガスSGを避け得ることである。
【0045】
AC波形の制御は前述のように顕著な利点を導き得るものであるが、アークの安定性並びに適正な溶融温度および速度を与えるためには、前記AC波形の実際の制御は非常に複雑である。また、たとえ精巧なAC波形を使用したとしても、溶接部の汚染は起こり得るものである。精巧なAC波形を使用して形成した溶接部の汚染は、たとえシールドガスが用いられたとしても、なお起こり得る。従って、本発明の好ましい態様では、AC波形と共に用いられた際に、著しい汚染問題を伴うことなく、また、AC波形に求められるものでない制御の程度を伴うことなく、高強度かつ強靱で耐久性のある溶接部を形成することができる、或る溶接棒成分が与えられる。
【0046】
有心溶接棒を用いて、本発明の方法または電源によって溶接する場合、シースとコアとを同じ速度で溶融させることが望ましい。この作業は、或るコア材料の外側シースとの均一な混合を促進し、溶融材料の混合が化学的に雰囲気汚染の影響に抵抗する。所望の機械的および冶金学的特性を有する溶接部を創り出すのに必要とされる合金化元素は、溶接金属中に均一に分与される。更に、スラグ及び/又はガス形成の構成物によりもたらされる保護上の利点が最も効果的にされる。前述のように、この状態が図15に示されている。
対照的に、図14は、シースがコアよりも迅速に溶ける状態を示している。この有害な状況では、シース500からの溶融金属650は、コア610が溶かされる機会を得る以前に、既にワークピースWに結合している。金属650は、溶融されていないコア構成物が実際に溶融されてしまった場合の程度にまで、雰囲気汚染の影響から保護されてはいない。加えて、所望の機械的および冶金学的特性を達成するに必要な合金化元素は、
溶融金属650から消失してしまうかも知れない。
【0047】
前に示したように、波形技術を用いるタイプの電気溶接機は、例えば図16に示される溶接棒700のような有心溶接棒を用いるAC溶接に使用することができる。かかる溶接棒は、合金化金属およびスラグ又はフラックス材料を含む粒状の材料で形成されたコア720を取り巻く、鋼製の外側シース710を有している。
内部フラックス又はスラグ材料を有することにより、溶接中に外部シールドガスは必要がない。コア720内に合金化材料を含むことにより、ワークピース730上の溶接金属740の溜まりは、正確な合金組成を有するように変化することができる。このことは、合金化が溶接ワイヤの実際の組成によって達成されなければならないソリッドな溶接ワイヤに代えて、有心溶接棒を用いる利点であり理由である。ソリッド溶接ワイヤを用いる場合、溶接金属に対する合金化の調整は非常に困難である。従って、高品質の溶接において、有心の、つまりセルフシールドの溶接棒を用いることは有益である。
アークARは、基本的に同一になるように制御され得る速度で、シース710を溶かし、そしてコア740の構成物または充填物を溶かす。例えば水素,窒素および酸素のような、溶接金属内の汚濁物質は、溶接金属内における、気孔の問題、亀裂および他の物理的な欠陥を引き起こすおそれがある。従って、溶融した溶接金属から汚染物質を排除する溶接プロセスを設計することは、難題である。
潜在的な汚染物質と化学的に結合して、それらが溶接金属内で気孔や有害な介在物を形成することを阻止する、典型的には、シリコン,アルミニウム,チタニウム及び/又はジルコニウムなどの「キリング」エージェント("killing" agent)を用いることは一般的である。更に、溶接部から水素を除去するために、核種を含有する水素と反応する、不純物除去剤(スカベンジャ:scavenger)も添加してもよい。健全な溶接金属を堅固に溶着させるために、例えば延性や低温靱性などの溶接部の特性にとってそれ自体有害なキリングエージェントを多量に添加する必要がしばしばあった。従って、キリングエージェントを最少にできるように、溶接棒700からワークピース730へ移行する金属の汚染を防止するために、アークAR内の溶融金属の露出を抑制することが望ましい。
【0048】
本発明の溶接棒成分は、AC溶接に用いられるときに、耐久性,靱性があり、従来の溶接棒成分の使用に係る問題に影響されにくい、望ましい溶接部を創り出す。本発明の溶接棒成分は、AC波形の正の形状および負の形状がアーク全長LAを減少せしめるように変化させられるAC波形と共に用いることができる。このやり方では、雰囲気への露出がより少なく、また、金属が溶融している時間もより短い。本発明の溶接棒成分がそれ用に設計されるAC波形および関連した溶接プロセスの詳細な説明は、前に引用することによりここに組み入れられたものであるが、2005年10月31日に出願手続された米国特許出願第11/263,064号に記載されている。
実際、アーク長さを短くすることにより、溶融金属が溶接棒700から溶接金属溜まり740へ移動するときに、溶融金属の温度を低下させることができる。
典型的には、正の部分と負の部分に対して異なる形状でもってAC溶接プロセスを実行することができる溶接機を用いる場合、有心溶接棒で行うAC溶接は現場で有効に使用することができる。交番する波形の正および負の部分のパラメータは、補償し、また、選択された溶接棒700に対してシース710及びコア720の両方の溶融を最適化するように、独立して調整することができる。
【0049】
特に、本発明の一実施形態は、溶接棒とAC溶接の組み合わせを伴うものであり、そこでは、波形の正および負の部分が個々に調整されて、短いアーク長さという目的を達成し、汚染を低減する。この戦略を用いて、本発明の溶接棒成分は、特に、それがセルフシールドであるので、顕著な利点をもたらすことができる。前記溶接棒は、シールドガスを用いることなく、また、特定の用途に依存することなく、使用することができ、しかも、雰囲気汚染からの更なる保護のために、コア内の脱酸剤および脱窒素剤をあてにすることができる。
【0050】
本発明の一実施形態は、溶接方法と、FCAW−S溶接棒のコア内の合金化およびフラックス成分の独特の組み合わせとの、相互作用的なシステムを提供する。注記したように、有心溶接棒は、粉状にされたフラックス及び/又は合金化成分を伴って、管状の金属製シースを連続的に送給する。これらは、靱性および強度を増し、耐食性を向上させ、及びアークを安定化させる成分だけでなく、フラッキシング(fluxing)成分,脱酸および脱窒素剤,及び合金化材料を含んでいても良い。典型的なコア材料は、アルミニウム,カルシウム,炭素,クロム,鉄,マグネシウム、並びに他の元素および材料を含み得る。フラックスコアの溶接棒がより広範に用いられる一方、金属コアの製品は、合金鋼を溶接する場合に溶加材(フィラー:filler)金属成分を調整するのに有用である。金属コアの溶接棒における粉状体は、一般に、化合物というよりも金属および合金の粉状体であり、溶接部の表面上にスラグのほんの小さな島(アイランド:island)を創り出すだけである。対照的に、フラックスコアの溶接棒は、溶接中ビードを支えて形作る広範囲に及ぶスラグの覆い(カバー:cover)を創り出す。
【0051】
本発明の合金/フラックス・システムは、特定の量のバリウム源、特定の量のリチウム源,酸化リチウム,酸化鉄、並びに随意的な量の酸化カルシウム,酸化珪素(シリコン:silicon)及び酸化マグネシウム、を包含している。1種もしくはそれ以上のバリウムのフッ化物,酸化物および/または炭酸塩が、バリウム源として用いることができる。また、1種もしくはそれ以上のリチウムのフッ化物および/または炭酸塩が、リチウム源として用いることができる。前記合金/フラックス・システムは、溶接棒の充填物(フィル:fill)内に含まれている。この溶接棒の充填物は、一般に、溶接棒の約18から約24%を構成している。
前記合金/フラックス・システムの或る例示的な実施形態は、以下を包含している。
バリウム源として約35から約55%のフッ化バリウム、
リチウム源として約2から約12%のフッ化リチウム、
第2のバリウム源として約0から約8%の炭酸バリウム、
第2のリチウム源として約0から約8%の炭酸リチウム、
約0から約15%の酸化リチウム、
約0から約15%の酸化バリウム、
約5から約20%の酸化鉄、
約0から約5%の酸化カルシウム、
約0から約5%の酸化珪素、
約0から約5%の酸化マンガン、及び
脱酸および脱窒素のために、約25%未満のアルミニウム,マグネシウム,チタニウム,ジルコニウム及びその組み合わせ、並びに鉄,ニッケル,マンガン,珪素,又はその組み合わせを随意的に含む残余の金属物。尚、ここに表示された全ての百分率(パーセント)は、特に注記しない限り重量パーセントである。
或る実施形態では、溶接棒の充填物成分は、約35から約55%のフッ化バリウム、約2から約12%のフッ化リチウム、約0から約15%の酸化リチウム、約0から約15%の酸化バリウム、約5から約20%の酸化鉄、並びに約25%未満の前述の脱酸および脱窒素剤を包含している。
他の実施形態においては、前述の溶接棒の充填物成分は、約0から約8%の炭酸バリウムも含み得る。更に他の実施形態においては、溶接棒の充填物成分は、約0から約8%の炭酸リチウムを更に含んでいてもよい。また更に他の実施形態においては、前記充填物成分は、約0から約5%の酸化カルシウムを含むことができる。また更に他の実施形態においては、溶接棒の充填物成分は、約0から約5%の酸化珪素を含むことができる。そして、今一つの実施形態では、溶接棒の充填物成分は、約0から約5%の酸化マンガンを包含し得る。他の実施形態は、これらエージェント、つまり、炭酸バリウム,炭酸リチウム,酸化カルシウム,酸化珪素,酸化マンガン、及びこれらの組み合わせ、の1つ若しくはそれ以上を用いることを含んでいる。
【0052】
本発明に係る方法の或る例示的な実施形態は、溶接棒と基体(サブストレート:substrate)の間に第1の負の電圧を印可して、サブストレートに近い側で、溶接棒の少なくとも部分的な溶融を生じせしめることを含んでいる。この方法は、また、溶接棒とサブストレートの間に正の電圧を印可して、溶接棒から流動可能な材料の塊の形成を促進することを含んでいる。この方法は、更に、溶接棒とサブストレートの間に前記流動可能な塊を介して電気的なショート(短絡)が起こることを監視(モニタ:monitor)することを含んでいる。この方法は、更に電気的なショートを検出すると、溶接棒とサブストレートの間に第2の負の電圧を印可することを含んでいる。そして、この方法は、第2の負の電圧の大きさを増し、それにより、電気的なショートを解消(クリア:clear)し、前記流動可能な塊からサブストレート上に溶接部を形成することを含んでいる。
有心溶接棒の溶接棒充填物の成分は、約35から約55%のフッ化バリウム,約2から約12%のフッ化リチウム,約0から約15%の酸化リチウム,約0から約15%の酸化バリウム,約5から約20%の酸化鉄、並びに約25%未満の脱酸および脱窒素剤であって、アルミニウム,マグネシウム,チタニウム,ジルコニウム及びその組み合わせでなるグループから選ばれたもの、を包含している。
他の実施形態では、溶接棒充填物に追加的なエージェントが組み入れられている。例えば、約0から約8%の炭酸バリウムが含まれ得る。溶接棒の充填物成分の他の実施形態は、約0から約8%の炭酸リチウムを含んでいる。溶接棒の充填物成分の更に他の実施形態は、約0から約5%の酸化カルシウムを含んでいる。今一つの実施形態は、約0から約5%の酸化珪素を含んでいる。そして、更に今一つの実施形態では、約0から約5%の酸化マンガンを含んでいる。
更なる実施形態では、溶接棒の充填物成分に、これらエージェントの1つ若しくはそれ以上が添加または含まれることができる。例えば、溶接棒の充填物は、前述の割合のフッ化バリウム,フッ化リチウム,酸化リチウム,酸化バリウム,酸化鉄、並びに1種もしくはそれ以上の特定の脱酸および脱窒素剤に加えて、約0から約8%の炭酸バリウム,約0から約8%の炭酸リチウム,約0から約5%の酸化カルシウム,約0から約5%の酸化珪素および約0から約5%の酸化マンガンも包含することができる。
【0053】
前記フラックス/合金システムは、このプロセスで用いられる独特の波形に起因する、短いアーク長さを達成し、低い熱入力で溶接するために、FCAW−S溶接棒用の伝統的なフラックス/合金システムから改変されている。短いアーク長さ及び安定したアークは、合金およびフラックス・システムと独特の特性をもつ波形の組み合わせの結果である。基本的には、最終的な溶接の製品要求を達成するために、溶接の消費財とプロセスの両方が並行して最適化される。
【0054】
或る実施形態においては、本発明は、魅力ある特性を有する溶接金属を形成する方法をもたらす。一般に、これらの方法は、前述の成分を備えたコアを有する溶接ワイヤ又は溶接棒を提供することを伴うものである。或る一つの実施形態では、前記溶接ワイヤ又は溶接棒は、シールドガスやかかるガスを形成するエージェント無しで使用される。
前記方法は、例えばパイプの2つの断面間に形成される接合部のような、関心ある領域へ向かってワイヤ又は溶接棒が移動させられるプロセスも含んでいる。更なる実施形態では、かかる移動が制御された送り速度で行われる。前記方法は、また、ワイヤとパイプ断面との間のアークによりワイヤ又は溶接棒を溶融させ、それにより接合部に溶融金属のビードを形成する、溶接電流を生成することを含んでいる。前記方法は、また、短絡事象の継続により、溶けたワイヤを溶融金属ビードへ移転(トランスファ)させることを含んでいる。
前記方法は、特に、少なくとも約70[ksi]の降伏強さと約0.75インチ未満の厚さを有する金属で形成された2つのパイプ断面の間の接合部を溶接する用途に適合している。更なる実施形態においては、本発明は、ガスシールドを用いることなく、少なくとも80[ksi]の降伏強さを有する溶接部をもたらすことができ、従って、少なくともアメリカ石油協会(API)のグレードX−80のラインパイプの溶接に対する要求を満たす溶接部をもたらす。更に、本発明の或る例示的な実施形態は、550[Mpa]を越える降伏強さ及び690[Mpa]を越える引張強さ、並びに摂氏20度で60ジュール[J]を越えるシャルピーVノッチ(CVN)靱性を達成することができる。
【0055】
しかしながら、本発明は0.75インチよりも大きい又は未満の厚さを有するパイプへの用途にも使用し得ることが理解されよう。或る実施形態では、結果として得られるビードが一般に70[ksi]よりも高い降伏強さを有し、或る適用では約90[ksi]よりも高い。
或る特定の様相では、溶融電流は負であっても良い。溶融電流が負の場合には、金属の移転動作は正の電流によって行われることができる。しかしながら、金属の移転は、溶融電流とは独立した正の電流によって行われることができる。
前述の方法を実行するとき、或る実施形態では、平均アーク長さは、0.30インチよりも短く、更なる実施形態では0.20インチよりも短く、そして、今一つの実施形態では0.10インチよりも短い。前述の方法の一実施形態では、短絡現象の速度は自動的に制御される。短絡現象の速度は、一般に、毎秒約40から約100サイクルである。
【0056】
他の実施形態では、前述の概念、つまり、電源および制御技術をここに注記した溶接棒成分と組み合わせて用いることは、摂氏20度で最低でも60ジュール[J]のシャルピーVノッチ靱性を有する溶接金属を創り出すのに利用することができる。同様に、前記方法は、摂氏40度で最低でも40ジュール[J]のシャルピーVノッチ靱性を有する溶接金属を創り出すのに用いることができる。また、前記方法は、90[ksi]を越える引張強さを有する溶接金属を創り出すのに用いることができる。従って、約0.75インチよりも薄い薄肉のパイプを用いることができ、結果として節約をもたらす。シールドガスは必要でなく、従って、現場でのガスのコストが無くなるか又は大幅に低減される。
【0057】
本用途は広範な配置の用途に利用することができる。ここに説明されたシステム,プロセス及び/又は成分は、特に、少なくともX80パイプ(呼称X80はAPI 5L:2000工業仕様に従ったものである)のセルフシールド・フラックス入りワイヤを用いた溶接における使用に適合している。しかしながら、本発明は、他のパイプ等級についても利用され得るものである。
本発明は、パイプに実施される「初層パス(ルートパス:root pass)」或いは仮止め(タック:tack)溶接作業にも利用され得る。本発明は、初期の溶接パスに対する埋れショートアークを用いる現在既知の実務作業に比べて、より小さいアーク力で、より多量の溶接ワイヤを溶融させるのに用いることができる。本発明の更に他の用途は、薄いゲージ(gauge)金属の高速溶接用のロボット溶接用途である。
【0058】
(実施例)
以下の論議は、本発明の実施例についてのものである。本発明は、以下で論議する実施形態および結果に限定されるものではないが、以下の論議は、本発明の例示的な実施形態から達成され得る結果を実証するために与えられるものである。
【0059】
一連の試験溶接が、本発明の実施形態を用いて行われ、そこでは、ショートアーク溶接プロセスに、セルフシールドでフラックスコアの溶接棒が使用された。幾つかの試験では、直径0.062インチのリンカーン(Lincoln)社のインナーシールド(Innershield)NR−233が用いられた。溶接は、一定のワイヤ送り速度およびワイヤ移動速度で行われた。
溶接は、3つのパスが並び、それから第1の3つのパス上の第2層に2つのパスが並ぶ、ビード・オン・プレート(bead on plate)溶接であった。板の表面は、スケール(scale)及び塵埃を除去するために、溶接に先立ってショットブラスト(shot blast)が施された。第2層における溶接金属層が、窒素含有量について分析された。使用された溶接棒には意図的に窒素が全く入れられていないので、以下の分析は、溶接金属中の窒素は周囲雰囲気から来たという前提の下に行われた。
【0060】
更に、溶接電力の供給は可変波形の交番電流を生成するように構成され、AC波形の以下の特性が変化させられた:
「波形バランス(balance)」−波形バランスは、溶接棒の極性が正のときのACサイクル時間の百分率である。また;
「DCオフセット(offset)」−DCオフセットは、波形の正の部分および負の部分の大きさが等しくない程度の測定値である。−20のDCオフセットとは、波形の正の部分の大きさが19.4ボルトであり、一方、負の部分が23ボルトであることを示している。更に、+20は、その逆、つまり、正が23ボルトで負が19.4ボルトであることを示している。
【0061】
図17は、クレームされた発明の実施例によって実行された例示的な溶接において、溶接金属の窒素の回復(リカバリー:recovery)に対する波形バランス及びDCオフセットの影響を表している。図17に示されるように、0%波形バランスでの大きいデータポイント、0.029%窒素リカバリーは、DC−電流を用いてなされた溶接に対する結果である。10%波形バランス,+20DCオフセットでなされた2つの溶接、
50%波形バランス,−20DCオフセットでなされた2つの溶接は、DC溶接よりも著しく低い窒素リカバリーであった。更に、試験期間中、DC−で観察された窒素リカバリーよりも高い窒素リカバリーが、波形バランス及びDCオフセットの他の組み合わせで観察されたことが分かった。
【0062】
更に、追加的な実施形態では、AC波形をうまく扱って溶接金属内の酸素および水素のレベルを制御することができる。汚染物質の全体レベルを低減することは、キリングエージェント,不純物除去剤または幾何学的な修正あるいは溶解性制限剤の必要性を減少せしめる。従って、セルフシールド溶接棒における合金レベルを最適化して、溶接金属における最適な物理的特性を達成することができる。
【0063】
以下の表は、本発明の実施形態に従って実行された溶接例の溶接データ及び溶接仕様を提供している。この例では、表1に記述された手順に応じた5G姿勢において、オハイオ州クリーブランドのリンカーン・エレクトリック社製のパイプライナー(登録商標)溶接棒が用いられた。
更に、図18は、以下の表に示されたデータに対応した溶接接合の設計構造を表している。溶接された金属181は、17mmの厚さを有するAPIグレードX−80であり、溶接構造は図18に示されている。更に、図18に示すように、溶接パスは、#1から#9として示されている。表2は、表1に従って行われた溶接部の機械試験結果を示している。最後に、表3は、表1に記載した例の溶着部の化学成分を示している。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
上記の実施例は、本発明の一実施形態の単なる例示を意図したものであり、何れにしても本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0068】
本発明の一実施形態では、ショートアーク溶接装置は、溶接されるべきワークピースに向かって溶接棒を連続的に前進させるために溶接ガンを採用する溶接装置である。これはMIG溶接プロセスに類似している。しかしながら、上で示したように、前記プロセスは、セルフシールド・フラックスコア溶接棒を用いるガス無し(ガスレス:gas-less)プロセスである。更に、前記ショートアーク溶接システム及び前記開示された溶接棒を用いる溶接の方法は、溶接棒が溶接ガンを通って連続的に前進する点で、MIG溶接に類似した溶接方法である。
【0069】
更に、前述の論議に加えて、本発明の更なる実施形態においては、溶接装置は、エンジン駆動の機械、又は燃料電池もしくは電池(バッテリー:battery)ベースで駆動される機械である。加えて、本発明は、自動またはロボット溶接機と共に採用されることもできる。
【0070】
本発明は、若干数の実施形態および用途と共に説明されてきた。これらは、添付クレームに規定されたような発明の範囲を逸脱することなく、組み合わせ及び互換し得るものである。添付クレームに規定されているような前記システム,方法および溶接棒ならびにそれらの組み合わせは、相乗効果のある本発明の新規な特徴の記載の一部分であるかのようにして、引用することによりここに組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の例示的な実施形態に用いられるショートアーク溶接システムのブロック線図である。
【図1A】図1の1A−1A線に略沿った拡大断面図である。
【図2】ショートアーク溶接プロセスにおけるステージI−IVを示す一連の側面図である。
【図3】図2に示された様々のステージに対して、図4に開示されるように本発明の実施形態を実施する波形を示す、電流波形および電圧波形の組み合わせたグラフである。
【図4】本発明の実施形態を実行するための、図1のシステムの変形例を説明するフローチャートブロック線図である。
【図5】本発明の更なる実施形態を実行するための、図1に示された溶接システムの一部のフローチャートブロック線図である。
【図6】本発明の更なる実施形態を実行するための、図1に示された溶接システムの一部のフローチャートブロック線図である。
【図7】図4に示された本発明の実施形態を図5に示された本発明の実施形態からの組み合わせ波形制御と組み合わせる、図1に示された溶接システムの部分的なフローチャートブロック線図である。
【図8】図4に示された本発明の実施形態を図6に示された本発明の実施形態からの組み合わせ波形制御と組み合わせる、図1に示された溶接システムの部分的なフローチャートブロック線図である。
【図9】本発明のDC正の実施に対する電流波形である。
【図10】パイプの溶接接合の初層パス又は仮止めパスに用いられる本発明を示す模式的な正面図である。
【図11】代表的な溶接システム及び溶接棒の使用を示すブロック線図を伴った側面図である。
【図12】図11の12−12線に略沿った絵画化した拡大断面図で、溶接棒をより詳しく拡大した図である。
【図13】被覆材と芯材とが異なる速度で溶融する有心の溶接棒を示す拡大した模式図である。
【図14】有心の溶接棒を用いた溶接に対して調整された波形を採用しなかったことの不利益を示す、図13と同様の図である。
【図15】図13及び図14と同様の図である。
【図16】本発明の実施形態に係る有心の溶接棒を説明し、本発明の使用により長さが最少にされたアーク長さを示す、部分的な側面図である。
【図17】本発明の実施例における溶着金属の窒素リカバリーに及ぼす波形バランス及びDCオフセットの影響を示す図である。
【図18】本発明の例示的な実施形態に従って実行された溶接例の接合設計を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
100 波形発生器
102 メモリ
120 短絡検出器
260 タイマ
510 溶接機
530 溶接棒
540 電源
610 コア
A 溶接システム
B 電源
C コントローラ
E 溶接棒
W 溶接ワイヤ
WP ワークピース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを溶接する方法であって、
セルフシールド溶接棒を溶接装置からワークピースに向かって進行させるステップと、
前記進行するセルフシールド溶接棒を用い、ショートアーク溶接プロセスを採用して前記ワークピースを溶接するステップと、を備え、
溶接部が少なくとも70[ksi]の降伏強さを有している、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶接棒は有心セルフシールド溶接棒であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶接棒は溶接ガンを通って進行させられることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記降伏強さは少なくとも80[ksi]であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶接部が少なくとも70[ksi]の引張強さを有していることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶接部が少なくとも90[ksi]の引張強さを有していることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶接部が、20度で少なくとも60[J]のシャルピーVノッチ靱性を有していることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶接部が、40度で少なくとも40[J]のシャルピーVノッチ靱性を有していることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶接部が、少なくともアメリカ石油協会の等級X−80のパイプの溶接に対する要求を満たしていることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記セルフシールド溶接棒は、フラックス入りセルフシールドアーク溶接ワイヤであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
ショートアーク溶接プロセスの溶融パルスを制御するステップを更に備え、前記溶接プロセスでは、溶融パルスに続いて低電流のトランスファサイクルが、
前記溶融パルスと前記トランスファサイクル期間中の短絡との間の継続時間を測定し、
前記継続に対する望ましい時間を設定し、
前記測定された継続時間と前記設定された望ましい時間とを比較することにより修正信号を生成し、
前記修正信号に基づいて前記溶融パルスのパラメータを調整する、
ことにより、生じることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記ショートアーク溶接プロセス中の平均アーク長さは0.3インチ以下であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記ショートアーク溶接プロセス中の平均アーク長さは0.2インチ以下であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、
前記ショートアーク溶接プロセス中の平均アーク長さは0.1インチ以下であることを特徴とする方法。
【請求項15】
ワークピースを溶接する方法であって、
セルフシールド溶接棒を溶接装置からワークピースに向かって進行させるステップと、
前記進行するセルフシールド溶接棒を用い、ショートアーク溶接プロセスを採用して前記ワークピースを溶接するステップと、を備え、
溶接部が、少なくともアメリカ石油協会の等級X−80のパイプの溶接に対する要求を満たしている、
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記溶接棒は有心セルフシールド溶接棒であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、
前記溶接棒は溶接ガンを通って進行させられることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、
前記溶接部が少なくとも70[ksi]の引張強さを有していることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、
前記溶接部が少なくとも90[ksi]の引張強さを有していることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法であって、
前記溶接部が、20度で少なくとも60[J]のシャルピーVノッチ靱性を有していることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項15に記載の方法であって、
前記溶接部が、40度で少なくとも40[J]のシャルピーVノッチ靱性を有していることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項15に記載の方法であって、
前記セルフシールド溶接棒は、フラックス入りセルフシールドアーク溶接ワイヤであることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項15に記載の方法であって、
ショートアーク溶接プロセスの溶融パルスを制御するステップを更に備え、前記溶接プロセスでは、溶融パルスに続いて低電流のトランスファサイクルが、
前記溶融パルスと前記トランスファサイクル期間中の短絡との間の継続時間を測定し、
前記継続に対する望ましい時間を設定し、
前記測定された継続時間と前記設定された望ましい時間とを比較することにより修正信号を生成し、
前記修正信号に基づいて前記溶融パルスのパラメータを調整する、
ことにより、生じることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項15に記載の方法であって、
前記ショートアーク溶接プロセス中の平均アーク長さは0.3インチ以下であることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項15に記載の方法であって、
前記ショートアーク溶接プロセス中の平均アーク長さは0.2インチ以下であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項15に記載の方法であって、
前記ショートアーク溶接プロセス中の平均アーク長さは0.1インチ以下であることを特徴とする方法。
【請求項27】
ワークピースを溶接する方法であって、
セルフシールド溶接棒を溶接装置からワークピースに向かって進行させるステップと、
前記進行するセルフシールド溶接棒を用い、ショートアーク溶接プロセスを採用して前記ワークピースを溶接するステップと、を備え、
溶接部が、20度で少なくとも60[J]のシャルピーVノッチ靱性を有している、
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
前記溶接棒は有心セルフシールド溶接棒であることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項27に記載の方法であって、
前記溶接棒は溶接ガンを通って進行させられることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項27に記載の方法であって、
前記溶接部が少なくとも70[ksi]の降伏強さを有していることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項27に記載の方法であって、
前記溶接部が少なくとも80[ksi]の降伏強さを有していることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項27に記載の方法であって、
前記溶接部が少なくとも70[ksi]の引張強さを有していることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項27に記載の方法であって、
前記溶接部が少なくとも90[ksi]の引張強さを有していることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であって、
前記溶接部が、40度で少なくとも40[J]のシャルピーVノッチ靱性を有していることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項27に記載の方法であって、
前記溶接部が、少なくともアメリカ石油協会の等級X−80のパイプの溶接に対する要求を満たしていることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項27に記載の方法であって、
前記セルフシールド溶接棒は、フラックス入りセルフシールドアーク溶接ワイヤであることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項27に記載の方法であって、
ショートアーク溶接プロセスの溶融パルスを制御するステップを更に備え、前記溶接プロセスでは、溶融パルスに続いて低電流のトランスファサイクルが、
前記溶融パルスと前記トランスファサイクル期間中の短絡との間の継続時間を測定し、
前記継続に対する望ましい時間を設定し、
前記測定された継続時間と前記設定された望ましい時間とを比較することにより修正信号を生成し、
前記修正信号に基づいて前記溶融パルスのパラメータを調整する、
ことにより、生じることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項27に記載の方法であって、
前記ショートアーク溶接プロセス中の平均アーク長さは0.3インチ以下であることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項27に記載の方法であって、
前記ショートアーク溶接プロセス中の平均アーク長さは0.2インチ以下であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項27に記載の方法であって、
前記ショートアーク溶接プロセス中の平均アーク長さは0.1インチ以下であることを特徴とする方法。
【請求項41】
セルフシールド有心溶接棒を溶接ガンからワークピースに向かって進行させるステップと、
前記進行するセルフシールド溶接棒を用い、ショートアーク溶接プロセスを採用して前記ワークピースを溶接するステップと、を備え、
溶接部が少なくとも70[ksi]の降伏強さを有している、
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項42】
セルフシールド有心溶接棒を溶接ガンからワークピースに向かって進行させるステップと、
前記進行するセルフシールド溶接棒を用い、ショートアーク溶接プロセスを採用して前記ワークピースを溶接するステップと、を備え、
溶接部が、少なくともアメリカ石油協会の等級X−80のパイプの溶接に対する要求を満たしている、
ことを特徴とする方法。
【請求項43】
セルフシールド有心溶接棒を溶接ガンからワークピースに向かって進行させるステップと、
前記進行するセルフシールド溶接棒を用い、ショートアーク溶接プロセスを採用して前記ワークピースを溶接するステップと、を備え、
溶接部が、20度で少なくとも60[J]のシャルピーVノッチ靱性を有している、
ことを特徴とする方法。
【請求項44】
溶接されるべきワークピースに向かって溶接棒を進行させるショートアーク溶接システムを備え、
前記溶接棒はセルフシールド溶接棒であり、
前記ショートアーク溶接システムは、溶接部が少なくとも70[ksi]の降伏強さを有するように制御される、
ことを特徴とする溶接装置。
【請求項45】
溶接されるべきワークピースに向かって溶接棒を進行させるショートアーク溶接システムを備え、
前記溶接棒はセルフシールド溶接棒であり、
溶接部が、少なくともアメリカ石油協会の等級X−80のパイプの溶接に対する要求を満たす、
ことを特徴とする溶接装置。
【請求項46】
溶接されるべきワークピースに向かって溶接棒を進行させるショートアーク溶接システムを備え、
前記溶接棒はセルフシールド溶接棒であり、
溶接部が、20度で少なくとも60[J]のシャルピーVノッチ靱性を有する、
ことを特徴とする溶接装置。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−301633(P2007−301633A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−283971(P2006−283971)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(399011597)リンカーン グローバル インコーポレーテッド (24)
【Fターム(参考)】