説明

高所作業車

【課題】作業台に設けられた副作業台により高所作業車の作業台が拡張された状態であっても副作業台が所定の最大移動位置を超えることなく昇降装置を作動させることができる高所作業車を提供する。
【解決手段】軌陸作業車1は、作業台30上に設けられ、作業台30よりも上方に位置する副作業台70と、作業台30が所定の最大揚程hを超えないように設定された第1作動範囲内で昇降装置20の作動を制御する第1昇降制御と、副作業台70が前記最大揚程hを超えないように設定された第2作動範囲S2内で昇降装置20の作動を制御する第2昇降制御とを切り替えて昇降装置20の作動を制御することが可能に構成されたコントローラ(昇降作動制御装置)とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体上に設けられた昇降装置により昇降移動される作業台を備えた高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記高所作業車の一例として、走行自在な車体上に旋回動、起伏動および伸縮動等が自在に配設されたブームと、そのブームの先端部に支持された作業者搭乗用の作業台とを備え、作業台に搭乗した作業者が、作業台を所望の高所作業位置に移動させて作業を行うように構成されたものがある。そして、このような高所作業車の作業台には、作業者の転落を防止するため、作業台の床部上面の周縁部に上方に延びて設けられた乗員保護柵(手すり)が設けられている。ところが、このような作業台では、所望の高所作業位置に移動させる際に、乗員保護柵が邪魔して所望の位置に移動させることができず、作業者の手が作業箇所に届かない場合には、作業台上に脚立をセットして作業を行ったり、乗員保護柵に足をかけて作業を行っていた。そこで、作業台上に副作業台を備え、上記のように作業箇所に手が届かない場合にはこの副作業台に搭乗して作業を行い、安全な高所作業を提供できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9‐286598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このように作業台上に副作業台を備えた高所作業車では、高所作業車の揚程位置が副作業台を備えた分だけ上がるため、昇降装置を従来の作動範囲内で作動させると、副作業台が最大揚程位置を超える場合があるという問題があった。また、車両を走行させながら高所作業を行う際に、副作業台が走行規制範囲を超えた状態で車両を走行させる場合があるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、作業台に設けられた副作業台により高所作業車の作業台が拡張された状態であっても、副作業台が所定の最大移動位置を超えることなく昇降装置を作動させることができる高所作業車を提供することを目的とする。また、副作業台が走行規制範囲を超えた状態での車両の走行を規制することができる高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の本発明は、車体を備えて走行可能に構成された走行体と、前記車体上に設けられた昇降装置と、前記昇降装置に支持され前記昇降装置により昇降移動される作業台とを備える高所作業車(例えば、実施形態における軌陸作業車1)において、前記作業台に設けられ、前記作業台よりも外方に位置する副作業台と、前記作業台が所定の最大移動位置を超えないように設定された前記昇降装置の第1作動範囲内で前記昇降装置の作動を制御する第1昇降制御と、前記副作業台が前記所定の最大移動位置を超えないように設定された前記昇降装置の第2作動範囲内で前記昇降装置の作動を制御する第2昇降制御とを切り替えて前記昇降装置の作動を制御することが可能に構成された昇降作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ50)とを備えて構成される。
【0007】
なお、上記構成の高所作業車において、前記副作業台は前記作業台に着脱可能に構成され、前記副作業台が前記作業台に取り付けられているか否かを検出する副作業台着脱検出器を備え、前記昇降作動制御装置は、前記副作業台着脱検出器により前記副作業台が前記作業台に取り付けられていないと検出されたときには前記第1昇降制御を行い、前記副作業台着脱検出器により前記副作業台が前記作業台に取り付けられていると検出されたときには前記第2昇降制御を行うように構成されることが好ましい。
【0008】
また、上記構成の高所作業車において、前記副作業台は前記作業台に対して移動可能に構成され、前記作業台に対する前記副作業台の移動量を検出する副作業台移動量検出器(例えば、実施形態におけるマスト長さ検出器175)を備え、前記昇降作動制御装置は、前記副作業台移動量検出器により検出された前記副作業台の移動量に応じて前記第2作動範囲を設定し、設定された前記第2作動範囲内で前記昇降装置の作動を制御するように構成されることが好ましい。
【0009】
第2の本発明は、車体を備えて走行可能に構成された走行体と、前記車体上に設けられた昇降装置と、前記昇降装置に支持され前記昇降装置により昇降移動される作業台とを備える高所作業車(例えば、実施形態における軌陸作業車1)において、前記作業台に設けられ、前記作業台よりも外方に位置する副作業台と、前記作業台が所定の走行規制範囲を超えないように設定された前記昇降装置の第3作動範囲を前記昇降装置が超えているか否かを判断する第1走行規制判断手段と、前記副作業台が前記所定の走行規制範囲を超えないように設定された前記昇降装置の第4作動範囲を前記昇降装置が超えているか否かを判断する第2走行規制判断手段とを切り替えて走行規制判断を行うことが可能に構成され、前記第1走行規制判断手段により前記昇降装置が前記第3作動範囲を超えていると判断したとき、または前記第2走行規制判断手段より前記昇降装置が前記第4作動範囲を超えていると判断したときに、前記走行体の走行に対する警報作動を行う走行制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ50)とを備えて構成される。
【0010】
なお、上記構成の高所作業車において、前記副作業台は前記作業台に着脱可能に構成され、前記副作業台が前記作業台に取り付けられているか否かを検出する副作業台着脱検出器を備え、前記走行制御装置は、前記副作業台着脱検出器により前記副作業台が前記作業台に取り付けられていないと検出されたときには前記第1走行規制判断手段を用い、前記副作業台着脱検出器により前記副作業台が前記作業台に取り付けられていると検出されたときには前記第2走行規制判断手段を用いるように構成されることが好ましい。
【0011】
また、上記構成の高所作業車において、前記昇降装置の作動を制御する昇降作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ50)を備え、前記昇降作動制御装置は、前記走行体が走行中のときに、前記作業台および前記副作業台が前記所定の走行規制範囲を超えないように前記昇降装置の作動を規制するように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
第1の本発明に係る高所作業車によれば、昇降作動制御装置は、作業台が所定の最大移動位置を超えないように設定された第1作動範囲内で昇降装置の作動を制御する第1昇降制御と、副作業台が前記最大移動位置を超えないように設定された第2作動範囲内で昇降装置の作動を制御する第2昇降制御とを切り替えて昇降装置の作動を制御することが可能に構成されるため、副作業台により高所作業車の作業台が拡張された状態であっても、副作業台が前記最大移動位置を超えることがないように昇降装置を作動させることができる。
【0013】
なお、上記高所作業車において、副作業台は作業台に着脱可能に構成され、副作業台が作業台に取り付けられているか否かを検出する副作業台着脱検出器を備え、昇降作動制御装置は、副作業台着脱検出器により副作業台が作業台に取り付けられていないと検出されたときには前記第1昇降制御を行い、副作業台着脱検出器により副作業台が作業台に取り付けられていると検出されたときには前記第2昇降制御を行うように構成されることが好ましく、このように構成すれば、副作業台の着脱状態に基づいて昇降装置の作動制御の切り替えを行うことができ、副作業台が前記最大移動位置を超えることなく昇降装置を作動させることができる。
【0014】
また、上記高所作業車において、副作業台は作業台に対して移動可能に構成され、作業台に対する副作業台の移動量を検出する副作業台移動量検出器を備え、昇降作動制御装置は、副作業台移動量検出器により検出された副作業台の移動量に応じて第2作動範囲を設定し、設定された第2作動範囲内で前記昇降装置の作動を制御するように構成されることが好ましく、このように構成すれば、作業台に対する副作業台の移動量(拡張量)が変化しても、それに応じて昇降装置の作動を制御することができ、副作業台を常に前記最大移動位置まで到達させることが可能となる。
【0015】
第2の本発明に係る高所作業車によれば、走行制御装置は、作業台が所定の走行規制範囲を超えないように設定された第3作動範囲を昇降装置が超えているか否かを判断する第1走行規制判断手段と、副作業台が前記走行規制範囲を超えないように設定された第4作動範囲を昇降装置が超えているか否かを判断する第2走行規制判断手段とを切り替えて走行規制判断を行うことが可能に構成され、前記第1走行規制判断手段により昇降装置が前記第3作動範囲を超えていると判断したとき、または前記第2走行規制判断手段により昇降装置が前記第4作動範囲を超えていると判断したときに、走行体の走行に対する警報作動を行うように構成されるため、作業台または副作業台が前記走行規制範囲を超えた状態での車両の走行を規制することができる。なお、本明細書において、警報作動とは、車両が走行を開始しないように規制する作動や、警報ブザー、警報ランプ等を用いて警報報知を行う作動を含めた作動を意味する。
【0016】
なお、上記高所作業車において、副作業台は作業台に着脱可能に構成され、副作業台が作業台に取り付けられているか否かを検出する副作業台着脱検出器を備え、走行制御装置は、副作業台着脱検出器により副作業台が作業台に取り付けられていないと検出されたときには前記第1走行規制判断手段を用い、副作業台着脱検出器により副作業台が作業台に取り付けられていると検出されたときには前記第2走行規制判断手段を用いるように構成されることが好ましく、このように構成すれば、副作業台の着脱状態に基づいて走行規制判断手段の切り替えを行うことができ、作業台または副作業台が前記走行規制範囲を超えた状態での車両の走行を規制することができる。
【0017】
また、上記高所作業車において、昇降装置の作動を制御する昇降作動制御装置を備え、昇降作動制御装置は、走行体が走行中のときに、作業台および副作業台が前記走行規制範囲を超えないように昇降装置の作動を規制するように構成されることが好ましく、このように構成すれば、走行中に、作業台または副作業台が前記走行規制範囲を超えて、走行制御装置が前記警報作動を行うような事態を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る軌陸作業車の側面図である。
【図2】上記軌陸作業車における第1実施形態の動力伝達系統を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の副作業台が取り付けられた上記軌陸作業車の側面図である。
【図4】第1実施形態の副作業台が取り付けられた上記軌陸作業車の平面図である。
【図5】上記副作業台の平面図、側面図および正面図である。
【図6】折り畳んだ状態の上記副作業台の平面図、側面図および正面図である。
【図7】上記軌陸作業車に副作業台が取り付けられていない場合のブーム作動範囲を示す図である。
【図8】上記軌陸作業車に副作業台が取り付けられた場合のブーム作動範囲を示す図である。
【図9】上記副作業台が取り付けられた上記軌陸作業車の背面図である。
【図10】第2実施形態の副作業台が設けられた上記軌陸作業車の側面図である。
【図11】上記軌陸作業車における第2実施形態の動力伝達系統を示すブロック図である。
【図12】上記副作業台が走行規制範囲を超えていない場合の上記軌陸作業車の背面図である。
【図13】上記副作業台が走行規制範囲を超えている場合の上記軌陸作業車の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明に係る高所作業車の一例である軌陸作業車を示している。この軌陸作業車1は、運転キャブ11を有するトラック車両をベースに構成された走行体10と、この走行体10上に設けられた昇降装置20と、この昇降装置20に支持された作業者搭乗用の作業台30とを有して構成されている。
【0020】
走行体10は、前後左右に道路走行用車輪であるタイヤ車輪12を備えるとともに、内部にエンジン(図示せず)を備えており、このエンジンによりタイヤ車輪12を駆動して道路上を走行することができるようになっている。また、走行体10は、前後左右(各タイヤ車輪12の後側)に鉄輪支持部材13を介して軌道走行用車輪である鉄輪15を備えるとともに、内部に走行モータ(油圧モータ)16,16を備えており(図2を参照)、この走行モータ16,16により左右の鉄輪15,15を回転駆動して軌道上を走行することができるようになっている。
【0021】
なお、鉄輪支持部材13は、走行体10に上下方向に揺動自在に支持され、走行体10の内部に設けられた鉄輪張出シリンダ(油圧シリンダ)の伸縮作動により上下に揺動されて鉄輪15をタイヤ車輪12より下方に張り出したり上方に格納したりできるようになっている。このように鉄輪15を張り出したり格納したりするため(軌陸作業車1を軌道上へ載せ換え移動するため)、走行体10は、中央下部に転車台17を備えるとともに、内部に転車台張出シリンダ(油圧シリンダ)を備えており、この転車台張出シリンダの伸縮作動により転車台17を下方に張り出して軌陸作業車1を持ち上げた状態(タイヤ車輪12が地面から浮いた状態)とすることができるようになっている。
【0022】
また、走行体10は、前後左右(各タイヤ車輪12と鉄輪15の間)に走行体10の幅方向に拡幅自在かつ上下方向に伸縮自在なアウトリガジャッキ18を備えるとともに、内部にアウトリガシリンダおよびジャッキシリンダ(共に油圧シリンダ)を備えており、このアウトリガシリンダの伸縮作動によりアウトリガジャッキ18を走行体10の幅方向に拡幅伸長させ、さらにジャッキシリンダの伸縮作動によりアウトリガジャッキ18を下方に伸長させて接地状態とすることができるようになっている。このようにアウトリガジャッキ18を接地状態にすれば、軌陸作業車1を安定して支持することができ、走行体10に作用する転倒モーメントに抗して安全に高所作業を行うことができる。
【0023】
昇降装置20は、走行体10上に設けられた旋回台21と、旋回台21の上部にフートピン22を介して基端部が支持されたブーム(伸縮ブーム)25とを有して構成されている。旋回台21は、走行体10上の運転キャブ11の後方位置に上下軸まわり回動自在に取り付けられ、走行体10の内部に設けられたブーム旋回モータ(油圧モータ)23(図2を参照)の回転作動により不図示のギヤを介して水平旋回動するようになっている。
【0024】
ブーム25は、基端ブーム25a、中間ブーム25bおよび先端ブーム25cが入れ子式に組み合わされて構成されており、内部に設けられたブーム伸縮シリンダ(油圧シリンダ)26(図2を参照)の伸縮作動により各ブーム25a,25b,25cを相対的に移動させてブーム25全体を軸方向に伸縮動させることができるようになっている。また、基端ブーム25aと旋回台21との間には、ブーム起伏シリンダ(油圧シリンダ)27が跨設されており、このブーム起伏シリンダ27を伸縮作動させることによりブーム25全体を旋回台21(走行体10)に対して起伏動させることができるようになっている。
【0025】
ブーム25(先端ブーム25c)の先端部には、作業台支持金具28が設けられている。この作業台支持金具28は、ブーム25の先端部に下端部が枢支された垂直部28aと、この垂直部28aから水平に延びた水平部28bとを有して構成され、垂直部28aが不図示のレベリング機構によりブーム25の起伏角度によらず常に垂直姿勢が保持されるようにレベリング制御され、水平部28bの上面が常に水平状態となるようになっている。
【0026】
作業台支持金具28の水平部28bの上面には、作業台旋回プレート29が回動自在に設けられており、この作業台旋回プレート29の上面に作業台30が取り付けられている。また、水平部28bの上面(作業台旋回プレート29の内部)には、作業台旋回モータ(油圧モータ)33が設けられており、この作業台旋回モータ33を回転作動させることにより作業台旋回プレート29を作業台支持金具28に対して旋回させて、作業台30全体を旋回動させることができるようになっている。ここで、上記のように作業台支持金具28の水平部28bの上面はレベリング機構によって常に水平状態に保たれるため、作業台30の床面はブーム25の起伏角度によらず常に水平状態に保持される。
【0027】
また、昇降装置20は、ブーム25の起伏角度を検出する起伏角度検出器24a(例えば、ブーム起伏シリンダ27の伸長量に基づいてブーム起伏角度を検出する検出器)と、ブーム25の長さを検出するブーム長さ検出器24b(例えば、ブーム25内に設けられブーム25の伸縮に伴い繰出し、または巻き取られるワイヤの繰出し量または巻き取り量に基づいてブーム長さを検出する検出器)と、ブーム25の旋回角度を検出する旋回角度検出器24c(例えば、ブーム旋回モータ23の回転角度に基づいてブーム旋回角度を検出する検出器)とを有しており(図2を参照)、各検出器24a,24b,24cにより検出された検出情報はそれぞれブーム位置検出信号としてコントローラ50に入力されるようになっている。
【0028】
作業台30は、作業台旋回プレート29の上面に固定された床部31と、床部31の上面周縁部に上方に延びて設けられた乗員保護柵32とを有して構成されている。作業台30には、操作装置40が設けられており(図2を参照)、この操作装置40はブーム操作レバー41、作業台旋回レバー42、および走行操作レバー43を有して構成されている。ブーム操作レバー41は、前後および左右方向への傾動操作と軸回り左右方向への捻り操作が可能であり、ブーム操作レバー41の前後方向への傾動操作により出力された操作信号はブーム25の起伏操作信号として、ブーム操作レバー41の左右方向への傾動操作により出力された操作信号はブーム25の伸縮操作信号として、ブーム操作レバー41の軸回り左右方向への捻り操作により出力された操作信号はブーム25の旋回操作信号として、それぞれ走行体10内に設けられたコントローラ50に入力されるようになっている。
【0029】
作業台旋回レバー42は、左右方向への傾動操作が可能であり、作業台旋回レバー42の左右方向への傾動操作により出力された操作信号は作業台30の旋回操作信号としてコントローラ50に入力されるようになっている。走行操作レバー43は、前後方向への傾動操作が可能であり、走行操作レバー43の前後方向への傾動操作により出力された操作信号は鉄輪15,15による軌道上での走行体10の走行操作信号としてコントローラ50に入力されるようになっている。
【0030】
なお、ブーム操作レバー41および作業台旋回レバー42は、上記のように作業台30に設けられているほかに、走行体10にも設けられている。よって、軌陸作業車1では、昇降装置20および作業台30を用いて高所作業を行う際、作業台30上の各操作レバー41,42によってブーム25および作業台30の作動操作を行うことができるほか、走行体10上の各操作レバー41,42によってブーム25および作業台30の作動操作を行うこともできる。ただし、一方の操作レバーで作動操作を開始した時点で、他方の操作レバーによる作動操作は規制されるようになっている。
【0031】
また、走行操作レバー43は、上記のように作業台30に設けられているほかに、運転キャブ11内にも設けられている。よって、軌陸作業車1では、鉄輪15,15を用いて軌道上を走行する際、作業台30上の走行操作レバー43によって走行操作を行うことができるほか、運転キャブ11内の走行操作レバー43によって走行操作を行うこともできる。ただし、上記ブーム操作レバー41等と同様、一方の走行操作レバーで走行操作を開始した時点で、他方の走行操作レバーによる走行操作は規制されるようになっている。なお、タイヤ車輪12を用いて道路上を走行する際の走行操作(運転)は、運転キャブ11内に設けられた道路走行操作装置(図示せず)でのみ行うことができる。
【0032】
走行体10上の運転キャブ11と旋回台21の間には、ブーム旋回モータ23等の各油圧アクチュエータに作動油を供給するためのパワーユニット60が設けられている。パワーユニット60は、図1および図2に示すように、電気モータもしくは小型のエンジン(タイヤ車輪12の駆動源であるエンジンとは別のもの)等からなる動力源61と、この動力源61によって駆動される油圧ポンプ62と、動力源61および油圧ポンプ62を覆いこれらを内部に収容する防音カバー63とを有して構成されている。
【0033】
駆動源61により油圧ポンプ62が駆動されると、オイルタンクからの作動油が油圧ポンプ62により吐出され、この作動油が、旋回モータ制御バルブ23v経由でブーム旋回モータ23に、ブーム伸縮シリンダ制御バルブ26v経由でブーム伸縮シリンダ26に、ブーム起伏シリンダ制御バルブ27v経由でブーム起伏シリンダ27に、作業台旋回モータ制御バルブ33v経由で作業台旋回モータ33に、それぞれ供給されるようになっている。また、油圧ポンプ62から吐出された作動油が、走行モータ制御バルブ16v経由で走行モータ16,16に供給されるようになっている。旋回モータ制御バルブ23v、ブーム伸縮シリンダ制御バルブ26v、ブーム起伏シリンダ制御バルブ27v、作業台旋回モータ制御バルブ33v、および走行モータ制御バルブ16vは、いずれも電磁比例式の方向流量制御バルブである。
【0034】
なお、パワーユニット60の動力源61の出力を捕捉するために、タイヤ車輪12の駆動源であるエンジンの出力をパワーテイクオフ機構を介して取り出して油圧ポンプ62を駆動するように構成してもよい。
【0035】
図3および図4に示すように、作業台30は、床部31の上面に作業者搭乗用の副作業台70を取り付けることができるようになっている。副作業台70は、図5および図6に示すように、作業台30の床部31の上面に上方に延びて取り付けられる前後二つの脚部71,71と、これら脚部71,71の上端部に設けられた床部72と、この床部72の上面左右縁部にそれぞれ上方に延びて設けられた乗員保護柵73,73と、これら乗員保護柵73,73の一方の前後上部に前後方向に揺動可能に設けられた開閉柵74,74とを有して構成される。
【0036】
副作業台70の各脚部71,71は、左右二本の角柱棒状部材とこれらの間に跨設された二本の角柱棒状部材とにより梯子状に構成されている。各脚部71,71の下端部には左右方向に張り出したフランジ部71a,71aが形成されており、これらフランジ部71a,71aに設けられた固定ボルト71b,71bを利用して副作業台70が作業台30の床部31上に固定されるようになっている。また、各脚部71,71は、床部72との結合部において床部72に対して前後方向に揺動可能になっており、副作業台70を作業台30から取り外した状態で、脚部71,71をそれぞれ床部72の下面側に揺動させて互いに上下に重なるようにして折り畳むことができるようになっている(図6を参照)。なお、このとき一方の脚部71は軸方向に縮むようになっている。
【0037】
なお、副作業台70の作業台30への固定方法は、上記のように固定ボルトを利用するものに限らず、例えば、作業台の床部に設けられたフック部材を、副作業台の脚部に形成された取付孔に係合させて、副作業台を作業台に固定する構造等、作業台30に副作業台70を着脱可能に固定できる構造であれば、いずれのものであってもよい。
【0038】
副作業台70の床部72の上面は、作業台30の床部31の上面よりも小さな面積となっており、本実施形態では、副作業台70は、作業台30の床部31における後方右側の位置(図4を参照)に、上記複数の固定ボルト71bを利用して固定されるようになっている。
【0039】
副作業台70の各乗員保護柵73,73は、床部72との結合部において床部72に対して左右方向に揺動可能になっており、副作業台70を作業台30から取り外した状態で、乗員保護柵73,73をそれぞれ床部72の上面側に揺動させて互いに上下に重なるようにして折り畳むことができるようになっている(図6を参照)。なお、このとき、前後の開閉柵74,74は乗員保護柵73の内面側に接するように揺動された状態となり、左右の乗員保護柵73,73は軸方向に縮むようになっている。
【0040】
このように構成された副作業台70では、作業台30の床部31に固定された状態において、床部31上に居る作業者は、脚部71における上下に所定間隔で配設された角柱棒状部材に足をかけて登り、開閉柵74を乗員保護柵73の内面側に揺動させて、副作業台70内すなわち床部72上に搭乗することができる。また、副作業台70では、作業台30から取り外して、上記のように脚部71,71および乗員保護柵73,73を折り畳むことで、図6に示すように非常にコンパクトな状態にすることができる。したがって、副作業台70が不要な場合には、副作業台70をこのようなコンパクトな状態にして走行体10に設けられた収容箱等(図示せず)に収容することができるようになっている。
【0041】
作業台30の床部31における副作業台70の脚部71が固定される箇所には、副作業台70が作業台30に取り付けられているか否かを検出する副作業台着脱検出器35(例えば、リミットスイッチ等により構成される)が設けられており(図2を参照)、副作業台着脱検出器35により検出された検出情報は着脱検出信号としてコントローラ50に入力されるようになっている。
【0042】
図2に示すように、コントローラ50は、ブーム操作レバー41の操作により出力された上記操作信号に基づいて各制御バルブ23v,26v,27vのスプールを駆動させ、ブーム旋回モータ23、ブーム伸縮シリンダ26およびブーム起伏シリンダ27をそれぞれブーム操作レバー41の各方向への操作状態に応じた方向および速度で作動させる。このとき、コントローラ50は、起伏角度検出器24a、ブーム長さ検出器24bおよび旋回角度検出器24cからそれぞれ出力されたブーム位置検出信号に基づいてブーム25の先端部(このブーム25の先端部とは、作業台支持金具28をも含む概念であり、以降の説明においてブーム先端部と称する)の位置を算出する。そして、コントローラ50は、副作業台着脱検出器35から出力された着脱検出信号に基づいて副作業台70が作業台30に取り付けられているか否かを判断し、その結果に応じてコントローラ50の記憶部51に予め記憶された二つのブーム作動範囲のうちのいずれか一方を選択し、車両が停車中のときには、選択したブーム作動範囲をブーム先端部が超えないようにブーム25を作動させる(このブーム作動範囲については後段で説明する)。また、コントローラ50は、車両が走行中のときには、作業台30が記憶部51に予め記憶された走行規制範囲を超えないようにブーム25を作動させる(この走行規制範囲についても後段で説明する)。
【0043】
また、コントローラ50は、作業台旋回レバー42の傾動操作により出力された旋回操作信号に基づいて作業台旋回モータ制御バルブ33vのスプールを駆動させ、作業台旋回モータ33を作業台旋回レバー42の操作状態に応じた方向および速度で回転作動させる。
【0044】
また、コントローラ50は、走行操作レバー43の傾動操作により出力された走行操作信号に基づいて走行モータ制御バルブ16vのスプールを駆動させ、走行モータ16,16を走行操作レバー43の操作状態に応じた方向および速度で回転作動させる。このとき、コントローラ50は、副作業台着脱検出器35から出力された着脱検出信号に基づいて副作業台70が作業台30に取り付けられているか否かを判断し、その結果に応じてコントローラ50の記憶部51に予め記憶された二つのブーム作動範囲を選択する(このブーム作動範囲については後段で説明する)。そして、コントローラ50は、選択したブーム作動範囲をブーム先端部が超えているか否かを判断し、その結果に応じて走行モータ16,16を回転作動させないように規制する(車両の走行を規制する)か否かを決定するとともに(この走行規制についても後段で説明する)、走行が規制された場合にはその旨を不図示のブザーやランプ等を用いて報知する。
【0045】
以上のように構成された軌陸作業車1を用いて軌道上で高所作業、例えば張架線やトロリ線等の鉄道設備の工事や保守点検等を行う場合には、まず、走行操作レバー43を操作して走行モータ16,16を回転作動させることにより鉄輪15,15を回転駆動させて、軌道上を走行して作業現場まで移動する。作業現場に到着すると車両を停車させ、ブーム操作レバー41を操作してブーム25を起伏、伸縮および旋回作動させ、或いは作業台旋回レバー42を操作して作業台30を旋回作動させることにより、作業台30(および副作業台70)を所望の位置に移動させて、作業台30(もしくは副作業台70)に搭乗した作業者が軌道上の張架線やトロリ線等の工事や保守点検等を行う。
【0046】
このとき、コントローラ50は、上述したように、副作業台着脱検出器35から出力された着脱検出信号に基づいて副作業台70が作業台30に取り付けられているか否かを判断し、その結果に応じて記憶部51内の二つのブーム作動範囲のうちのいずれか一方を選択し、選択したブーム作動範囲をブーム先端部が超えないようにブーム25を作動させる。すなわち、コントローラ50は、図7に示すように副作業台70が作業台30に取り付けられていない場合には、ブーム先端部が第1ブーム作動範囲S1を超えないようにブーム25を作動させ、図8に示すように副作業台70が作業台30に取り付けられている場合には、ブーム先端部が第2ブーム作動範囲S2を超えないようにブーム25を作動させる。
【0047】
ここで、第1ブーム作動範囲S1と第2ブーム作動範囲S2は、高さ方向の範囲のみ異なっており、副作業台70が取り付けられていない場合に第1ブーム作動範囲S1内でブーム25が作動されて作業台30の上端部が到達可能な高さ(軌道の上面からの高さ)と、副作業台70が取り付けられている場合に第2ブーム作動範囲S2内でブーム25が作動されて副作業台70の上端部が到達可能な高さ(軌道の上面からの高さ)とが共に所定の最大揚程hとなるように設定されている。すなわち、副作業台70が作業台30に取り付けられているか否かにかかわらず、いずれの場合でも到達可能な高さが所定の最大揚程hを超えないようにブーム25の作動が制御される。
【0048】
このように、コントローラ50は、副作業台70の着脱状態に基づいてブーム25の作動制御の切り替えを行うことができ、副作業台70により軌陸作業車1の揚程位置が上がっても、副作業台70が所定の最大揚程hを超えることなくブーム25を作動させることができる。
【0049】
ところで、軌道上での高所作業には、軌道上を走行しながら作業を行う場合がある。その場合には、上述した作業現場まで移動する場合と同様、走行操作レバー43を操作して走行モータ16,16を回転作動させることにより鉄輪15,15を回転駆動させて、軌道上を走行する。このとき、コントローラ50は、上述したように、副作業台着脱検出器35から出力された着脱検出信号に基づいて副作業台70が作業台30に取り付けられているか否かを判断し、その結果に応じて記憶部51内の二つのブーム作動範囲を選択する。すなわち、コントローラ50は、副作業台70が作業台30に取り付けられていない場合には、作業台30が走行規制範囲S′(図9を参照)を超えないように設定された第3ブーム作動範囲(図示せず)を選択し、副作業台70が作業台30に取り付けられている場合には、副作業台70が走行規制範囲S′を超えないように設定された第4ブーム作動範囲(図示せず)を選択する。
【0050】
そして、コントローラ50は、副作業台70が作業台30に取り付けられていない場合には、ブーム先端部が第3ブーム作動範囲を超えているか否か、すなわち作業台30が走行規制範囲S′を超えているか否かを判断し、作業台30が走行規制範囲S′を超えていない場合には車両の走行を許可し、作業台30が走行規制範囲S′を超えている場合には、車両の走行を規制するとともに、ブザーやランプ等を用いて走行が規制されていることを報知する。
【0051】
また、コントローラ50は、副作業台70が作業台30に取り付けられている場合には、ブーム先端部が第4ブーム作動範囲を超えているか否か、すなわち副作業台70が走行規制範囲S′を超えているか否かを判断し、副作業台70が走行規制範囲S′を超えていない場合には車両の走行を許可し、副作業台70が走行規制範囲S′を超えている場合には、車両の走行を規制するとともに、ブザーやランプ等を用いて走行が規制されていることを報知する。但し、本実施形態では、図9に示すように、ブーム25が走行体10上に格納された状態であっても、副作業台70を作業台30に取り付けた段階で、副作業台70の上端部が走行規制範囲S′を超えるため、コントローラ50は車両の走行を規制するようになっている。このように、コントローラ50は、副作業台70の着脱状態に基づいて走行規制判断手段(基準)を切り替えて作業台30または副作業台70が走行規制範囲S′を超えているか否かを判断することができ、作業台30または副作業台70が走行規制範囲S′を超えた状態での車両の走行を規制することができる。
【0052】
そして、車両が走行中のときに、ブーム操作レバー41を操作してブーム25を起伏、伸縮および旋回作動させる場合に、コントローラ50は、算出したブーム先端部の位置に基づいて作業台30が走行規制範囲S′を超えないようにブーム25の作動を規制する。このため、走行中に、作業台30が走行規制範囲S′を超えて、コントローラ50が走行規制や警報報知を行うような事態を防ぐことができる。
【0053】
なお、上述の実施形態では、軌陸作業車1を用いて軌道上で高所作業を行う場合について説明したが、軌道上以外(例えば道路上)で高所作業を行う場合についても同様に、ブーム作動制御および走行規制等を行うようになっている。すなわち、コントローラ50は、車両が停車中のときに、副作業台70が作業台30に取り付けられているか否かにかかわらず、いずれの場合でも作業台30もしくは副作業台70の到達可能な高さが所定高さ(地面からの高さ)を超えないようにブーム25の作動を制御する。また、例えば道路トンネル内での高所作業では、タイヤ車輪12を回転駆動して道路上を走行しながら作業を行う場合があるが、その場合にも、コントローラ50は、作業台30もしくは副作業台70が道路走行時の走行規制範囲を超えている場合には、車両の走行を規制するとともに、不図示のブザーやランプ等を用いて走行が規制されていることを報知する。また、コントローラ50は、車両が走行中のときには、作業台30が道路走行時の走行規制範囲を超えないようにブーム25の作動を制御する。
【0054】
また、上述の実施形態では、作業台30に副作業台70が取り付けられる場合について説明したが、作業台30には種々の副作業台が着脱可能である構成としてもよく、その場合には、作業台30に取り付けられる副作業台を特定する信号をコントローラ50に入力する手段と、各々の副作業台に対応するブーム作動範囲、または各々の副作業台に対応するブーム先端部の位置から副作業台の上端部までのオフセット量をコントローラ50の記憶部51に予め記憶しておけばよい。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態について図10〜13を用いて説明する。第2実施形態に係る軌陸作業車では、副作業台の構成、並びに、それに伴うブーム制御および走行制御が上述の実施形態と異なり、それ以外の構成については上述の実施形態と同一構成である。そのため、上述の実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその説明を省略し、ここでは上述の実施形態と異なる、副作業台の構成、並びに、それに伴うブーム制御および走行制御について説明する。
【0056】
副作業台170は、図10に示すように、作業台30の床部31の上面に上方に延びて固定されたマスト171と、このマスト171に設けられて作業台30の床部31と平行に延びる床部172と、この床部172の上面周縁部に上方に延びて設けられた乗員保護策173とを有して構成される。マスト171は、複数のマスト部材が入れ子式に組み合わされて構成されており、内部に設けられたマスト伸縮シリンダ(油圧シリンダ)174(図11を参照)の伸縮作動により各マスト部材を相対的に移動させてマスト171全体を軸方向(上下方向)に伸縮動させることができるようになっている。副作業台170の床部172は、マスト171の上端マスト部材に取り付けられており、床部172の上面は、作業台30の床部31の上面よりも小さな面積となっている。
【0057】
このような副作業台170では、副作業台170が不要な場合には、マスト171を最も縮小させて床部172の下面が作業台30の床部31の上面に接した格納状態で作業台30上に設けられる。なお、この格納状態の副作業台170の上端部の高さは、作業台30の上端部の高さと略一致するようになっている。
【0058】
マスト171には、マスト171の長さを検出するマスト長さ検出器175(例えば、マスト171内に設けられマスト171の伸縮に伴い繰出し、または巻き取られるワイヤの繰出し量または巻き取り量に基づいてマスト長さを検出する検出器)が設けられており(図11を参照)、マスト長さ検出器175により検出された検出情報は副作業台高さ検出信号としてコントローラ50に入力されるようになっている。
【0059】
副作業台170には、マスト操作レバー181を有する操作装置180が設けられている(図11を参照)。マスト操作レバー181は、前後方向への傾動操作が可能であり、マスト操作レバーの前後方向への傾動操作により出力された操作信号はマスト171の伸縮操作信号としてコントローラ50に入力されるようになっている。
【0060】
図11に示すように、本実施形態のコントローラ50は、マスト操作レバー181の操作により出力された伸縮操作信号に基づいてマスト伸縮シリンダ制御バルブ(電磁比例式の方向流量制御バルブ)174vのスプールを駆動させ、マスト伸縮シリンダ174をマスト操作レバー181の操作状態に応じた方向および速度で伸縮作動させる。このとき、コントローラ50は、マスト長さ検出器175から出力された副作業台高さ検出信号に基づいて副作業台170の格納状態からの高さ変化量(昇降移動量)を算出する。そして、コントローラ50は、コントローラ50の記憶部51に予め記憶されたブーム作動範囲(副作業台170が格納状態のときのブーム作動範囲)の最大到達可能高さから副作業台170の高さ変化量分を差し引いた(オフセットした)補正ブーム作動範囲を設定し、車両が停車中のときにブーム操作レバー41が操作されると、その補正ブーム作動範囲をブーム先端部が超えないようにブーム25を作動させる。また、コントローラ50は、車両が走行中のときには、作業台30または副作業台170が記憶部51に予め記憶された走行規制範囲を超えないようにブーム25およびマスト171を作動させる。
【0061】
また、コントローラ50は、走行操作レバー43を操作して走行モータ16,16を回転作動させるとき、起伏角度検出器24a、ブーム長さ検出器24bおよびマスト長さ検出器175からそれぞれ出力された検出信号に基づいて作業台30または副作業台170がコントローラ50の記憶部51に予め記憶された走行規制範囲を超えているか否かを判断し、その結果に応じて走行モータ16,16を回転作動させいように規制する(車両の走行を規制する)か否かを決定する(この走行規制については後段で説明する)。また、走行が規制された場合にはその旨を不図示のブザーやランプ等を用いて報知する。
【0062】
このように構成された第2実施形態の軌陸作業車1を用いて軌道上で高所作業を行う場合には、上述の実施形態と同様に、作業現場に到着すると車両を停車させ、ブーム操作レバー41を操作してブーム25を起伏、伸縮および旋回作動させ、作業台旋回レバー42を操作して作業台30を旋回作動させ、或いはマスト操作レバー181を操作してマスト171を伸縮作動させることにより、作業台30および副作業台170を所望の位置に移動させて、作業台30もしくは副作業台170に搭乗した作業者が軌道上で高所作業を行う。
【0063】
このとき、コントローラ50は、上述したように、マスト長さ検出器175から出力された副作業台高さ検出信号に基づいて副作業台170の格納状態からの高さ変化量を算出し、記憶部51内のブーム作動範囲(副作業台170が格納状態のときのブーム作動範囲)の最大到達可能高さから副作業台170の高さ変化量分を差し引いた補正ブーム作動範囲を設定し、その補正ブーム作動範囲をブーム先端部が超えないようにブーム25を作動させる。したがって、副作業台170が作業台30に対して昇降移動して副作業台170の作業台30に対する高さ位置が変化した場合でも、副作業台170の到達可能な高さが最大揚程hを超えないようにブーム25の作動が制御される。このように、コントローラ50は、作業台30に対する副作業台170の高さ位置が変化しても、それに応じてブーム25の作動を制御することができ、副作業台170を常に最大揚程hまで到達させることが可能となる。
【0064】
また、軌道上を走行しながら高所作業を行う場合には、走行操作レバー43を操作して走行モータ16,16を回転作動させることにより鉄輪15,15を回転駆動させて、軌道上を走行する。このとき、コントローラ50は、上述したように、起伏角度検出器24a、ブーム長さ検出器24bおよびマスト長さ検出器175からそれぞれ出力された検出信号に基づいて作業台30または副作業台170が記憶部51内の走行規制範囲を超えているか否かを判断し、その結果に応じて車両の走行を規制するか否かを決定する。また、走行が規制された場合にはその旨を不図示のブザーやランプ等を用いて報知する。すわなち、コントローラ50は、図12に示すように作業台30および副作業台170が走行規制範囲S′を超えていない場合には車両の走行を許可し、図13に示すように副作業台170の上端部が走行規制範囲S′を超えている場合には、車両の走行を規制するとともに、ブザーやランプ等を用いて走行が規制されていることを報知する。このように、コントローラ50は、作業台30に対する副作業台170の高さ位置に基づいて作業台30または副作業台170が走行規制範囲S′を超えているか否かを判断することができ、作業台30または副作業台170が走行規制範囲S′を超えた状態での車両の走行を規制することができる。
【0065】
そして、車両が走行中のときに、ブーム操作レバー41を操作してブーム25を起伏、伸縮および旋回動させ、或いはマスト操作レバー181を操作してマスト171を伸縮作動させる場合に、コントローラ50は、起伏角度検出器24a、ブーム長さ検出器24bおよびマスト長さ検出器175からそれぞれ出力された検出信号に基づいて、作業台30または副作業台170が記憶部51内の走行規制範囲S′を超えないようにブーム25およびマスト171を作動させる。このため、走行中に、作業台30または副作業台170が走行規制範囲S′を超えて、コントローラ50が走行規制や警報報知を行うような事態を防ぐことができる。
【0066】
なお、上述の第2実施形態では、軌陸作業車1を用いて軌道上で高所作業を行う場合について説明したが、軌道上以外(例えば道路上)で高所作業を行う場合についても同様に、ブーム作動制御および走行規制等を行うようになっている。すなわち、コントローラ50は、車両が停車中のときに、副作業台170が作業台30に対して昇降移動して副作業台170の作業台30に対する高さ位置が変化した場合でも、副作業台170の到達可能な高さが所定高さ(地面からの高さ)を超えないようにブーム25の作動を制御する。また、例えば道路トンネル内での高所作業では、タイヤ車輪12を回転駆動して道路上を走行しながら作業を行う場合があるが、その場合にも、コントローラ50は、作業台30または副作業台170が道路走行時の走行規制範囲を超えている場合には、車両の走行を規制するとともに、ブザーやランプ等を用いて走行が規制されていることを報知する。また、コントローラ50は、車両が走行中のときには、作業台30または副作業台170が道路走行時の走行規制範囲を超えないようにブーム25およびマスト171の作動を制御する。
【0067】
これまで本発明に係る実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、副作業台70,170が作業台30よりも上方に位置するように設けられているが、副作業台は、作業台の前後または左右方向に拡張するように設けられても良い。そして、その場合には、作業台または副作業台が前後または左右方向の所定の最大移動位置を超えないようにブーム等の作動を制御し、作業台または副作業台が所定の走行規制範囲を超えている場合には、車両の走行を規制するとともに、ブザーやランプ等を用いて走行が規制されていることを報知する。さらに、車両が走行中のときには、作業台または副作業台が前記走行規制範囲を超えないようにブーム等を作動させるように構成される。
【0068】
また、上述の実施形態では、作業台30または副作業台70,170が走行規制範囲を超えている場合に、車両の走行規制およびブザーやランプ等を用いて警報報知の両方を行うようになっているが、走行規制および警報報知のうちいずれか一方を行うようにしてもよい。また、上述の第2実施形態では、マスト式の副作業台170について説明したが、副作業台はシザースリンク式等いずれの昇降方式であってもよい。また、上述の実施形態では、ブーム式の軌陸作業車1について説明したが、本発明は、マスト式やシザースリンク式等の軌陸作業車にも適用させることができる。また、上述の実施形態では、本発明に係る高所作業車の一例として軌陸作業車について説明したが、本発明は、必ずしも道路走行および軌道走行の両方を可能に構成された軌陸作業車である必要はなく、道路走行のみ可能な高所作業車や、軌道走行のみ可能な高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 軌陸作業車(高所作業車)
10 走行体
20 昇降装置
30 作業台
35 副作業台着脱検出器
50 コントローラ(昇降作動制御装置、走行制御装置)
70,170 副作業台
175 マスト長さ検出器(副作業台移動量検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を備えて走行可能に構成された走行体と、
前記車体上に設けられた昇降装置と、
前記昇降装置に支持され、前記昇降装置により昇降移動される作業台とを備える高所作業車において、
前記作業台に設けられ、前記作業台よりも外方に位置する副作業台と、
前記作業台が所定の最大移動位置を超えないように設定された前記昇降装置の第1作動範囲内で前記昇降装置の作動を制御する第1昇降制御と、前記副作業台が前記所定の最大移動位置を超えないように設定された前記昇降装置の第2作動範囲内で前記昇降装置の作動を制御する第2昇降制御とを切り替えて前記昇降装置の作動を制御することが可能に構成された昇降作動制御装置とを備えることを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記副作業台は、前記作業台に着脱可能に構成され、
前記副作業台が前記作業台に取り付けられているか否かを検出する副作業台着脱検出器を備え、
前記昇降作動制御装置は、前記副作業台着脱検出器により前記副作業台が前記作業台に取り付けられていないと検出されたときには前記第1昇降制御を行い、前記副作業台着脱検出器により前記副作業台が前記作業台に取り付けられていると検出されたときには前記第2昇降制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記副作業台は、前記作業台に対して移動可能に構成され、
前記作業台に対する前記副作業台の移動量を検出する副作業台移動量検出器を備え、
前記昇降作動制御装置は、前記副作業台移動量検出器により検出された前記副作業台の移動量に応じて前記第2作動範囲を設定し、設定された前記第2作動範囲内で前記昇降装置の作動を制御することを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項4】
車体を備えて走行可能に構成された走行体と、
前記車体上に設けられた昇降装置と、
前記昇降装置に支持され、前記昇降装置により昇降移動される作業台とを備える高所作業車において、
前記作業台に設けられ、前記作業台よりも外方に位置する副作業台と、
前記作業台が所定の走行規制範囲を超えないように設定された前記昇降装置の第3作動範囲を前記昇降装置が超えているか否かを判断する第1走行規制判断手段と、前記副作業台が前記所定の走行規制範囲を超えないように設定された前記昇降装置の第4作動範囲を前記昇降装置が超えているか否かを判断する第2走行規制判断手段とを切り替えて走行規制判断を行うことが可能に構成され、前記第1走行規制判断手段により前記昇降装置が前記第3作動範囲を超えていると判断したとき、または前記第2走行規制判断手段により前記昇降装置が前記第4作動範囲を超えていると判断したときに、前記走行体の走行に対する警報作動を行う走行制御装置とを備えることを特徴とする高所作業車。
【請求項5】
前記副作業台は、前記作業台に着脱可能に構成され、
前記副作業台が前記作業台に取り付けられているか否かを検出する副作業台着脱検出器を備え、
前記走行制御装置は、前記副作業台着脱検出器により前記副作業台が前記作業台に取り付けられていないと検出されたときには前記第1走行規制判断手段を用い、前記副作業台着脱検出器により前記副作業台が前記作業台に取り付けられていると検出されたときには前記第2走行規制判断手段を用いることを特徴とする請求項4に記載の高所作業車。
【請求項6】
前記昇降装置の作動を制御する昇降作動制御装置を備え、
前記昇降作動制御装置は、前記走行体が走行中のときに、前記作業台および前記副作業台が前記所定の走行規制範囲を超えないように前記昇降装置の作動を規制することを特徴とする請求項4または5に記載の高所作業車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−30943(P2012−30943A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172563(P2010−172563)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】