説明

高接着性ポリイミドフィルムおよびその製造方法

【課題】銅箔との接着性が向上し、易滑性、寸法安定性、水濡れ性にも優れたポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から形成され、かつ無機粒子を含有するポリイミドフィルムであって、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下、フィルム表面の、触針式表面粗さ計で測定した表面粗さRaが0.065μm以上、Rmaxが1.0μm以上、静摩擦係数が1.0以下、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギ−が80mN/m以上である高接着性ポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高接着性ポリイミドフィルムおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは銅箔との接着性が向上し、易滑性、寸法安定性、水濡れ性にも優れたポリイミドフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムのような耐熱性フィルムは、電子部品などのフレキシブルプリント配線基板(FPC)に用いる基材として、TAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Flex)の基材絶縁フィルムとして、あるいは半導体装置における支持部材であるLOC用テープなどとして用いられている。このような用途では、基材となるフィルムの接着性が大きいことが望まれる。特に近年の高密度配線や微細加工といったファインピッチ化に伴い、その要求レベルは益々厳しくなってきている。また、耐熱性フィルムは、磁気記録媒体のベース材料としても用いられており、このような場合においても、フィルムの耐熱性と共に高い接着性が求められる。
【0003】
これまでに、耐熱性フィルムの接着性を向上させる表面改質方法としては、コロナ放電処理法(例えば、特許文献1参照)、アルカリ処理法(例えば、特許文献2参照)、サンドブラスト処理法(例えば、特許文献3参照)、プラズマ放電処理法(例えば、特許文献4参照)(特許文献4)等の種々の技術が提案実施されている。また、耐熱性フィルムの接着性を改善するために添加する無機粒子としては、二酸化チタン粒子(例えば、特許文献5参照)が知られており、無機粒子とプラズマ処理の組み合わせ(例えば、特許文献6参照)や、粒子が1〜5μmを主体とした無機粉体を対フィルム樹脂重量当たり0.1〜0.5重量%含む芳香族熱可塑性ポリイミドフィルム(例えば、特許文献参照)についても知られている。そして、特許文献7においては、内在させる無機粒子の粒子径が1μm以上であることが必須としており、1μm以上でないと十分な易滑性(滑り性)を発現しにくいと記載されている。
【0004】
上記従来技術のうち、プラズマ放電処理方法は、例えばポリイミドフィルムに対してコロナ放電処理と比較して良好な改質効果を発現させ得る。プラズマ処理とはいわゆるグロー放電処理であり、コロナ放電処理と比較して強い電力パワーを与えることが可能であるからである。より具体的には、コロナ放電処理に際しては、通常20〜500W・min/m程度の電力密度で処理されるのが通常であるのに対し、グロー放電処理では数千W・min/mでの放電が可能であることにより、効果が大きく向上するためと推定されるが、長期保管するとその効果は低下することが知られている。その原因は、ESCAなどのフィルム表面のO/C比を追跡するとO/C比の低下と接触角の増加を確認できる。
【0005】
また、サンドブラスト処理は、表面を粗面化させる意味では非常にその効果は大きく、その理由は接着剤が粗面化されて内部に食い込み、アンカー効果が発現したためと考えられる。
【0006】
一方、ポリイミドフィルムの寸法安定性を向上させるために、低熱収縮処理が行われるが、この低熱収縮処理は、製膜工程での引っ張り応力が残留されるために、のちの工程で接着剤を塗布しキュアー処理する際に著しく熱収縮を起こし、シワなどの発生を起こすなどの問題がある。そこで応力緩和処置として製膜されたフィルムに再度高熱処理を施すことにより熱安定性が向上することが知られている。
【0007】
しかしながら、従来のこれらの処理法は、通常単独での処理が主で実施されているか、せいぜい2種類の方法を組み合わせたものであり、これらの方法では未だに十分な接着性改善効果が得られてはいなかった。
【特許文献1】:特開平7−330930号
【特許文献2】:特開平8−12779号
【特許文献3】:特開平8−34866号
【特許文献4】:特開2003−55487号
【特許文献5】:特開2006−28216号
【特許文献6】:第3750044号
【特許文献7】:特公平6−65707号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、銅箔との接着性が向上し、易滑性、寸法安定性、水濡れ性にも優れたポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するため本発明によれば、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から形成され、かつ無機粒子を含有するポリイミドフィルムであって、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下、フィルム表面の、触針式表面粗さ計で測定した表面粗さRaが0.065μm以上、Rmaxが1.0μm以上、静摩擦係数が1.0以下、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギ−が80mN/m以上であることを特徴とする高接着性ポリイミドフィルムが提供される。
【0011】
なお、本発明の高接着性ポリイミドフィルムにおいては、
ポリイミドフィルムの組成比が、12〜30モル%のパラフェニレンジアミン、70〜88モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、50〜99.5モル%のピロメリット酸二無水物および0.5〜50モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から形成されること、
前記無機粒子の粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmであり、この無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合でフィルム中に分散され、かつフィルム表面にはこの無機粒子の存在に起因する微細な突起が形成されていること、
前記無機粒子の粒子径が0.01〜0.6μmの範囲内、かつ平均粒子径が0.1〜0.6μmであり、この無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.3〜0.9重量%の割合でフィルム中に分散されていること、および
前記無機粒子が、粒子径0.15〜0.6μmの粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高接着性ポリイミドフィルム
が、いずれも好ましい条件である。
【0012】
また、上記本発明の高接着性ポリイミドフィルムの製造方法は、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から形成され、かつ無機粒子を含有するポリイミドフィルムに、リラックス処理を施した後、サンドブラスト処理を施し、次いでプラズマ処理を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下に説明するとおり、銅箔等の金属箔との密着性が高く、また易滑性、寸法安定性に優れ、さらには水濡れ性にも優れたポリイミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のポリイミドフィルムおよびその製造方法についてさらに詳しく説明する。
【0015】
まず、本発明のポリイミドを得るに際してその前駆体であるポリイミド酸について説明する。本発明に用いられるポリアミド酸は、ジアミン成分としてのパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、酸成分としてのピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を重合させ無機粒子を添加することで得られる。
【0016】
本発明に用いられるパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルは有機溶媒に溶解させて用いられるのが好ましい。ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物並びにパラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを重合してポリアミド酸を得る方法は、各種公知の方法で行ってもよく、例えば予め所定量のパラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を有機溶媒に溶解させておき、それにピロメリット酸二無水物を添加することにより、所定の粘度を有するポリアミド酸を得る方法が挙げられる。
【0017】
次に、得られたポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを得る方法を説明する。
【0018】
まず、開環触媒および脱水剤を用いて脱水する化学閉環法または加熱処理によって脱水する熱閉環法によりポリアミド酸を環化させることにより、ポリイミドのゲルフィルムを得ることが好ましく行われる。そして、得られたゲルフィルムの端部を固定し、縦方向に1.05〜1.5の倍率、横方向に1.05〜2.0の倍率で2軸延伸してポリイミドフィルムを得ることができる。かかる2軸延伸を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの機械的特性を向上させることができる。化学閉環法または熱閉環法のいずれの方法で行っても良いが、得られるポリイミドフィルムの弾性率を向上させることができること、熱膨張係数を低下させることができるなどの利点を有する化学閉環法が好ましく採用される。
【0019】
化学閉環法で使用される脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物,N−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、アリルホスホン酸次ハロゲン化物、安息香酸無水物、フタル酸無水物などの芳香族酸無水物およびケテンなどが好ましい。
【0020】
また、使用される環化触媒としては、3,4’−Nルチジン、3,5−ルチジン、4−メチルピリジン、4−イソプロピルピリジン、4−ベンジルピリジンなどのピリジン類、N−ジメチルベンジルアミン、4−ジメチルベンジルアミン、4−ジメチルドデシルアミン、β−ピコリンなどのピコリン類、トリエチルアミン、N−ジメチルアニリン、キノリンおよびイソキノリンなどが好ましく、これらを単独または混合して使用するのが好ましい。
【0021】
化学閉環法を行うに際しては、ポリアミド酸溶液中に環化触媒、脱水剤を混合させイミド化した後に、この溶液をコ−ティングしてポリイミドフィルムを得る方法、およびポリアミド酸溶液をコ−ティングして薄膜化させた後、これを環化触媒、脱水剤の混合中に浸積してイミド化させることによってポリイミドフィルムを得る方法などが採用され得る。
【0022】
なお、得られるポリイミドフィルムの機械的性質などを改善させるために、種々の添加剤と触媒をポリアミド酸に添加することができるが、本発明においては、ポリイミドフィルムの表面を粗化させてフィルムに滑り性を付与し工程安定性を向上させる観点から、無機粒子をポリアミド酸に混合することが必要である。
【0023】
本発明で使用する無機粒子としては、ゾル・ゲル法、結晶シリカ、溶融シリカ等の二酸化珪素が好ましく、その形状については特に限定するものではない。無機粒子は、粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmである無機粒子を主体とする粉体が、フィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合で、フィルム中に分散され、かつ表面にはこの無機粒子の存在に起因する微細な突起が形成されていること、また無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.3〜0.8重量%の割合で含まれていることが好ましい。かつ無機粒子の平均径が0.1〜0.6μmであることがさらに好ましく、この無機粒子が、粒子径0.15〜0.6μmの粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有することがより好ましい。
【0024】
無機粒子の添加方法としては、重合時の溶媒に予め分散させたスラリ−を添加する方法が好ましい。
【0025】
本発明のポリイミドフィルムを構成するポリイミドは、ブロックポリマ−、ランダムポリマ−および混合ポリマ−のいずれであってもよい。
【0026】
ポリアミド酸溶液は粘性が高いことから、通常、キャスティングドラムあるいはエンドレスベルトの上にポリアミド酸溶液をフィルム状に押し出し、あるいは流延塗布し、前記キャスティングドラムまたはエンドレスベルトの上にポリアミド酸を少なくとも自己支持を備える程度に硬化させた後、必要に応じて熱処理などを施し、安定なポリイミドフィルムとすることも好ましく行われる。
【0027】
本発明の高接着性ポリイミドフィルムは、12〜30モル%のパラフェニレンジアミン(PPD)、70〜88モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、50〜99.5モル%のピロメリット酸二無水物(PMDA)および0.5〜50モル%の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)に無機粒子を添加してから形成されたものであることが望ましい。
【0028】
さらに好ましい組成としては、ジアミン成分としてPPD12モル%とODA88モル%、酸性分としてPMDA80モル%とBPDA20モル%から形成され、無機粒子を含有するポリイミドフィルムを、以下の処理に供して得られるポリイミドフィルムであることが望ましい。
【0029】
本発明のポリイミドフィルムとは、厚み数μm〜数mmの平板な形状を示し、通常の厚みは3〜300μmであり、好ましくは5〜125μm、より好ましくは7.5〜75μm、さらに好ましくは7.5〜50μmである。
【0030】
そして、本発明のポリイミドフィルムは、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下、フィルム表面の触針式表面粗さ計で測定した表面粗さRaが0.065μm以上、Rmaxが1.0μm以上、静摩擦係数が1.0以下、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギ−が80mN/m以上であることを特徴とする。
【0031】
200℃加熱収縮率が上記の範囲を超えると、寸法安定性の点で好ましくない。
【0032】
表面粗さRaおよびRmaxが上記の範囲を下回ると、接着剤のアンカー効果が落ち密着性が下がるという好ましくない結果が招かれる。
【0033】
また、静摩擦係数が上記の範囲を超えると、フィルム走行性が悪くなりフィルムの巻き取り不具合による巻きズレ・シワが発生するため好ましくない。
【0034】
さらに、表面自由エネルギ−が上記の範囲未満では、接着性改良効果が不十分となるため好ましくない。
【0035】
上記の特性を有するポリイミドフィルムは、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から形成され、かつ無機粒子を含有するポリイミドフィルムに、リラックス処理を施した後、サンドブラスト処理を施し、次いでプラズマ処理を施すことにより製造することができる。
【0036】
リラックス処理は、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下となるように行う。具体的には、200〜500℃の中を低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理を行う。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、走行速度を変えることでコントールすることになり、30秒〜5分の処理時間が好ましい。これより短いとフィルムに充分熱が伝わらず、また長いと過熱気味になり平面性を損なうため好ましくない。また、フィルムの走行時の張力は10〜50N/mが好ましく、さらには20〜30N/mが好ましい。この範囲よりも張力が低いとフィルムの走行性が悪くなり、また張力が高いと得られたフィルムの走行方向の熱収縮率が高くなるため好ましくない。
【0037】
リラックス処理の後で行うサンドブラスト処理は、好ましくは、サンド粒子径分布のサンド径80〜200μmをフィルム表面に打ち付けることにより、フィルム表面の平均表面粗さRa0.065μm以上、Rmaxが1.0μm以上となるように行う。平均表面粗さRmaxが1.6μmより大きい場合は、機械物性が低下する傾向が見られる。また1.0μmより小さい場合は、十分なアンカ−効果が期待できないために接着力が低いなどの問題を生じる。
【0038】
最後のプラズマ処理は、フィルムの接触角法に基づき測定した表面自由エネルギ−が80mN/m以上となるように行う。具体的には、希ガスが20モル%以上含有される雰囲気下、100〜1000torrの条件下で、かつ表面が誘電体によって被覆され、かつ10℃〜100℃に冷却された電極と、これに対向して設けられた表面が誘電体によって被覆された電極を用い、処理電力密度200W・min/m以上で行うことが好ましい。
【0039】
かくして得られる本発明の高接着性ポリイミドフィルムは、銅箔との接着性が高く、また寸法安定性に優れ、さらに水濡れ性にも優れた特性を有しているため、これらの特性を活かして、電子部品などのフレキシブルプリント配線基板(FPC)に用いる基材であるTAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Flex)の基材絶縁フィルムとして、あるいは半導体装置における支持部材であるLOC用テープなどとして有用に利用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。実施例中PPDはパラフェニレンジアミン、ODAは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、PMDAはピロメリット酸二無水物、BPDAは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、DMACは、N,N−ジメチルアセトアミドを表す。
【0041】
また、実施例中のポリイミドフィルムの各特性は、次の方法で評価した。
【0042】
(1)表面自由エネルギ−(mN/m)
表面処理を実施したフィルム表面を、水、エチレングリコール、ヨウ化メチレンで各n=5回測定した接触角の平均値を用いてKyowa Interface ScienceのFACE CA-W150を用い、表面自由エネルギ−を求めた。この値が大きいということは水濡れ性が良く接着力が一般に高いことを意味する。
【0043】
(2)熱収縮率
25℃、60%RHに調湿された部屋に2日間放置した後のフィルム寸法(L1)を測定し、続いて200℃60分加熱した後再び25℃、60%RHに調湿された部屋に2日間放置した後のフィルム寸法(L2)を測定し、下記計算式より評価した。
加熱収縮率=−(L2−L1)/L1×100
【0044】
(3)表面粗さ
小坂研究所の表面粗さ計(SE3500)にて測定長で2.5mm間を測定してRa、Rmaxを求めた。
【0045】
(4)各フィルムの接着力評価
三井化学株式会社製 エポキシ樹脂接着剤(商品名エポックス AH−357A/AH−357B/AH−357C=100/5/12重量比)で混合した接着剤をコータで各フィルムに塗布し、130℃×4分で予備乾燥を行い18μm圧延銅箔(BHY−22B−T、ジャパンエナジ−社製)を重ねて2MPa加圧下170℃80分のプレスキュアで銅張り積層板を得た。得られた積層板に0.8 mmの回路を切り、TAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Flex)の基材絶縁フィルムとして、あるいは半導体装置における支持部材であるLOC用テープなどとして有用に利用することができる。
【0046】
(5)静摩擦係数
JIS K7125に準拠してフィルムの表・裏面を重ね測定を行った。
【0047】
[実施例1]
DMACにPPD12モル%とPMDAの一部14.5モル%を投入し、常温常圧中窒素雰囲気下で1時間反応させた。次に、ここにODA88モル%を投入し均一になるまで撹拌した後、BPDA20モル%を添加し、1時間撹拌反応させた。さらに平均粒子径0.5μmのゾル・ゲル法シリカを固形分基準で0.3重量%と成るように添加した。 続いてここに残りのPMDA65.5モル%を添加し、さらに1時間反応させることにより、3500ポイズのポリアミド酸溶液を得た。固形分濃度は、最終的に20.3重量%になった。
【0048】
得られたポリアミド酸に無水酢酸、β−ピコリンを添加混合した後、エンドレスベルト上にキャストし100℃で5分乾燥して得られる自己支持性のフィルムを引き離し、端部を固定した後、テンタ−炉にて段階的に昇温して高温500℃にて1分間焼成して、厚み25μmのポリイミドフィルム長尺品を得た。
【0049】
得られたフィルムを最初に熱リラックス処理を行った。すなわち、450℃の中を低張力下にてフィルムを走行させるアニール処理を行った。炉の中でフィルムが滞留する時間が処理時間となるが、走行速度を変えることでコントールできる。この実験では2分間処理を行った。
【0050】
次に、サンドブラスト処理を行った。すなわち、サンド粒子径分布の80〜200μmのサンドを10〜100m/Sで投射処理を行った。
【0051】
次いで、希ガスが20モル%以上含有される760torr(常圧)の雰囲気下で、かつ表面が誘電体によって被覆され50℃に冷却された電極と、これに対向して設けられた表面が誘電体によって被覆された電極を用いて、処理電力密度500W・min/mでプラズマ処理を行った。
【0052】
得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0053】
[実施例2]
実施例1と同様の操作において、フィルム厚を7.5μmに変更した以外は、同様にしてポリイミドフィルムを作製した。
【0054】
得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0055】
[比較例1〜5]
実施例1において、リラックス処理も行わない未処理品を比較例1、リラックス処理のみを施したものを比較例2、リラックス処理とサンドマット処理を行ったものを比較例3、未処理品にサンドマット処理のみ行ったものを比較例4、リラックス処理後プラズマ処理を行ったものを比較例5として、それぞれ5種類のポリイミドフィルムを作製した。
【0056】
得られた各フィルムの特性を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果からは、リラックス処理/サンドブラスト処理/プラズマ処理を施した本発明のポリイミドフィルムは、寸法安定性とアンカー効果により接着力の優れたフィルムであることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の高接着性ポリイミドフィルムは、銅箔との接着性が高く、また寸法安定性に優れ、さらに水濡れ性にも優れた特性を有しているため、これらの特性を活かして、電子部品などのフレキシブルプリント配線基板(FPC)に用いる基材であるTAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Flex)の基材絶縁フィルムとして、あるいは半導体装置における支持部材であるLOC用テープなどとして有用に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から形成され、かつ無機粒子を含有するポリイミドフィルムであって、200℃加熱収縮率がフィルムの機械搬送方向(MD)と幅方向(TD)で共に0.05%以下、フィルム表面の、触針式表面粗さ計で測定した表面粗さRaが0.065μm以上、Rmaxが1.0μm以上、静摩擦係数が1.0以下、接触角法に基づき測定した表面自由エネルギ−が80mN/m以上であることを特徴とする高接着性ポリイミドフィルム。
【請求項2】
ポリイミドフィルムの組成比が、12〜30モル%のパラフェニレンジアミン、70〜88モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、50〜99.5モル%のピロメリット酸二無水物および0.5〜50モル%の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から形成されることを特徴とする請求項1記載の高接着性ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記無機粒子の粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmであり、この無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合でフィルム中に分散され、かつフィルム表面にはこの無機粒子の存在に起因する微細な突起が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の高接着性ポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記無機粒子の粒子径が0.01〜0.6μmの範囲内、かつ平均粒子径が0.1〜0.6μmであり、この無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.3〜0.9重量%の割合でフィルム中に分散されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高接着性ポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記無機粒子が、粒子径0.15〜0.6μmの粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高接着性ポリイミドフィルム。
【請求項6】
パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物から形成され、かつ無機粒子を含有するポリイミドフィルムに、リラックス処理を施した後、サンドブラスト処理を施し、次いでプラズマ処理を施すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高接着性ポリイミドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−106137(P2008−106137A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290148(P2006−290148)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】