説明

高架橋等の主桁の構築方法及びこれに用いるプレキャスト桁下方構成部材

【課題】プレキャスト桁の重量を低減させ、トラッククレーンによって架設できるようにする。
【解決手段】架設する主桁の一部を構成する桁下方構成部材K1, K2を予め打設して製作し、このプレキャスト桁下方構成部材K1, K2をトラッククレーンにより橋脚間に架設し、これら桁下方構成部材K1, K2同士を連結し、その後主桁の上方部分を構築するための鉄筋の配筋及び型枠を設置してコンクリートを打設して主桁を構築する方法である。この構築方法に使用する前記プレキャスト桁下方構成部材K1, K2は、その下端部で両側に略水平方向に張り出す下フランジ部11を有し、その一方又は両方の端部の両側に更に略水平方向に張り出してPC鋼材用シース20が設けられた定着突起部19, 19を有し、その一方又は両方の端面には桁接続用継手鉄筋18を設け、下フランジ部11の上方のウェブ15両側面には型枠留め具用の複数の孔部17を設けたものから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路等の高架橋や橋梁の主桁の構築方法とこれに用いるプレキャスト桁下方構成部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプレキャスト桁架設工法によるコンクリート橋・PCコンクリート橋の架設においては、架設する桁自体に多大な重量があるため、門型クレーン等架設設備が大掛かりなものとなっていた。
他方、場所打ちコンクリートによる橋梁上部工建設においては、支保工規模が大きくなり支保工の構築に多大な労力が掛かっていた。
また支保工構築には多大なコストが掛かっており、更にこの支保工の転用についても多大な労力を要している。
【0003】
下記特許文献に記載の橋梁架設方法は、上記プレキャスト桁の架設方法に係るものである。
即ち、橋桁径間部の構造を4本のプレキャスト桁が橋軸直交方向に所定間隔をおいて配置されたものであって、1対の橋桁柱頭部上に架設径間を跨ぐ架設用ガーダを設置した後、この架設用ガーダにより、架設径間において、1本のプレキャスト桁を、該プレキャスト桁における橋軸方向両端面の近傍部位を吊り支持した状態で、1対の橋桁柱頭部の高さまで吊り上げて橋軸直交方向の所定位置にセットし、この状態で、このプレキャスト桁とその橋軸方向両側の1対の橋桁柱頭部との間に目地コンクリートを打設してから橋軸方向のプレストレスを導入する。これを繰り返すことにより4本のプレキャスト桁の架設を行い、その後その上面に床版を構築するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−68249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明においては、従来工法によるプレキャスト桁の架設方法では、その架設重量が大きすぎるため、このプレキャスト桁の重量を低減させ、例えばトラッククレーン等の移動クレーンを用いて容易にこのプレキャスト桁を架設できるようにすることをその第一の課題としている。
勿論、支保工規模も小さくすることもその課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、高架橋や橋梁の主桁の構築方法であって、
架設する主桁の一部を構成する桁下方構成部材を予め打設して製作し、この予め製作されたプレキャスト桁下方構成部材をトラッククレーン等の移動クレーンにより橋脚間に架設し、その後、橋軸方向に架設された前記プレキャスト桁下方構成部材同士を連結し、前記連結工程終了後、主桁の上方部分を構築するための鉄筋の配筋及び型枠を設置し、その後コンクリートを打設して主桁を構築することを特徴とする高架橋等の主桁の構築方法である。
【0007】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、プレキャスト桁下方構成部材が、その下端部で両側に略水平方向に張り出す下フランジ部を有し、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端部の両側に更に略横方向乃至上方向に延長し、テンションを負荷するためのPC鋼材用シースが橋軸方向に設けられた定着突起部を有し、更に、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端面には桁接続用の継手鉄筋を設け、前記下フランジ部の上方のウェブ両側面には型枠留め具用の複数の孔部を設けたものであることを特徴とする高架橋等の主桁の構築方法である。
【0008】
ここで、上記「略横方向乃至上方向に延長し」とあるのは、前記定着突起部が下フランジ部の端部の両側で、略水平方向から略上方向までの間の全ての方向に延長することを意味し、中間の斜めの方向に延長する場合をも含む意味である(以下同じである。)。
即ち、この定着突起部は、下フランジ部の端部両側で、この下フランジ部の側縁部から横方向、斜め方向或いは上方向に延長して設けることができ、その延長方向は、略水平方向から略直角の上方方向まで自由にその方向を設定することができるものである。
【0009】
本発明の第3のものは、上記第1の発明において、プレキャスト桁下方構成部材が、その下端部で両側に略水平方向に張り出す下フランジ部を有し、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端部の底面部分に更に下方に延長し、テンションを負荷するためのPC鋼材用シースが橋軸方向に設けられた定着突起部を有し、更に、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端面には桁接続用の継手鉄筋を設け、前記下フランジ部の上方のウェブ両側面には型枠留め具用の複数の孔部を設けたものであることを特徴とする高架橋等の主桁の構築方法である。
【0010】
本発明の第4のものは、上記第1の発明に係る高架橋等の主桁の構築方法に使用されるプレキャスト桁下方構成部材であって、このプレキャスト桁下方構成部材が、その下端部で両側に略水平方向に張り出す下フランジ部を有し、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端部の両側に更に略横方向乃至上方向に延長し、テンションを負荷するためのPC鋼材用シースが橋軸方向に設けられた定着突起部を有し、更に、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端面には桁接続用の継手鉄筋を設け、前記下フランジ部の上方のウェブ両側面には型枠留め具用の複数の孔部を設けたことを特徴とする高架橋等の主桁の構築方法に用いるプレキャスト桁下方構成部材である。
【0011】
本発明の第5のものは、請求項1に記載した高架橋等の主桁の構築方法に使用されるプレキャスト桁下方構成部材であって、このプレキャスト桁下方構成部材が、その下端部で両側に略水平方向に張り出す下フランジ部を有し、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端部の底面部分に更に下方に延長し、テンションを負荷するためのPC鋼材用シースが橋軸方向に設けられた定着突起部を有し、更に、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端面には桁接続用の継手鉄筋を設け、前記下フランジ部の上方のウェブ両側面には型枠留め具用の複数の孔部を設けたことを特徴とする高架橋等の主桁の構築方法に用いるプレキャスト桁下方構成部材である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1のものにおいては、プレキャスト主桁として予め完成されたものを使用するのではなく、その主桁を構成する例えば下方略1/2乃至略1/3程度の下方部分のみからなる桁下方構成部材を予め製作して使用することにより、その全体の重量を半減又はそれ以上減少させることができる。このために、トラッククレーンによる桁架設を可能とし、支保工規模を従来工法と比較すれば大幅に縮小することができる。
これにより、従来のような門型クレーン等の大型施設の設置及び使用をすることなく、また、大掛かりな支保工設備を構築する必要もなくなり、施工に関わる資材・労力・期間・コスト等の削減に大いに寄与することとなる。
【0013】
本発明の第2のものにおいては、前記第1の発明における構築方法において使用するプレキャスト桁下方構成部材の構成をより具体的に限定したものである。
この桁下方構成部材の構成により、例えば主桁の完成形態として横断面I型のものを構築することができる。
即ち、この予め製作されたプレキャスト桁下方構成部材をトラッククレーン等により橋脚及び橋脚間の支保工に架設し、その橋軸方向に配置された桁下方構成部材同士を連結し、その後ウェブ上方部及び上フランジ部を現場打ちすることにより、I型主桁を構築することができる。
【0014】
より具体的には、前記桁下方構成部材を架設後に吊り足場を設置し、桁下方構成部材の端面に設けられている継手鉄筋を相互に組み付け且つ型枠を設置し、定着突起部に設けられたシースにPC鋼材を配設して、連結箇所のコンクリート打設を行う。
この際にコンクリートの打設量が少ないことからバケット方式による打設で十分となる。
そして、コンクリートの所定強度発現後に、前記PC鋼材にテンションを負荷し、PC鋼材緊張によってストレスが負荷され、桁下方構成部材同士の連結が完成する。
【0015】
このように、桁下方構成部材の連結は、例えばプレグラウトPC鋼材により行うため、下フランジ部の連結固定により、その後施工するウェブ及び上フランジのコンクリート重量を受け持つことが可能となる。
従って、桁連結により支保工に掛かる荷重が無くなり、この時点で支保工解体も可能となる。
勿論、ここで使用している桁下方構成部材自体にも予めテンションが負荷されたプレストレスト桁を用いている。
更に、本発明においては、高強度コンクリートや高流動コンクリートの技術により発展が可能となる工法でもある。例えば、超高強度コンクリートの使用により桁断面を縮小でき、さらには支保工規模の縮小も図られる。また、高流動コンクリートの使用によりウェブ及び上フランジを構築する際のコンクリート打設時におけるバイブレータによる締め固め作業を省略できる。
尚、本発明の構築方法においては、その主桁の横断面形状は、上記I型のものに限られない。
【0016】
本発明の第3のものは、上記第2の発明と同様に、プレキャスト桁下方構成部材の構成を具体化したものであり、その桁下方構成部材の端部に設ける定着突起部の位置を変更させたものである。
このように定着突起部を延設する位置は、上記第2の発明のように横方向から斜めそして上方向ばかりでなく、下フランジ部の底面部分にも形成することができるのである。
このようにすることにより、PC鋼材を下フランジ部の幅方向の全体に渡り多数設けることができることなる。
【0017】
本発明の第4のものは、上記発明に係る構築方法で用いる桁下方構成部材自体について限定したものである。
この桁下方構成部材は、完成形態の主桁の下方部分を構成するものであり、それが例えば下方略1/2以下のものであれば、その重量が略1/2以下となって、従来のものよりも格段に軽量となり、トラッククレーン等で容易に架設することが可能となる。
【0018】
この桁下方構成部材には、その端面に桁接続用の継手鉄筋を設けているために、桁下方構成部材同士を連結する際に、便利なものとなる。
また、この桁下方構成部材同士を連結する際に、その一方端部又は両端部に設けられた定着突起部にPC鋼材用シースを設けているために、コンクリート打設時に容易にテンションを負荷して定着突起部を連結固定することができる。
更にその後の桁上方部分の施工に際しても、これら桁上方部分の重量を十分に受け持つことが可能となる。
桁下方構成部材の下フランジ部の上方の両側面には、型枠の止め具用の孔部を設けているために、鉄筋組み後型枠を設置する際にも便利なものとなる。
【0019】
本発明の第5のものは、上記第4の発明と同様に、主桁の構築方法に使用する桁下方構成部材を限定したものであって、上記第4の発明とは異なって、桁下方構成部材の端部に設ける定着突起部の位置を変更させたものである。
即ち、この定着突起部は桁下方構成部材の下フランジ部の端部の底面部分に形成したものである。
これにより、前記した通り、PC鋼材を下フランジ部の幅方向の全体に渡り多数設けることができ、定着突起部に更にテンションを付加してその強度を向上させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る主桁の構築方法の一実施形態である各工程を示す説明図であり、そのステップ1からステップ3までを示している。
【図2】図1に続く工程を示す説明図であって、ステップ4からステップ6までを示す。
【図3】図2に続く工程を示す説明図であって、ステップ7からステップ8までを示す。
【図4】上記主桁の構築方法に使用する桁下方構成部材を示す全体斜視図であり、その(A)が中間に架設される中間部用のものを示し、その(B)が端部に架設される端支点用のものを示している。
【図5】図4に示す桁下方構成部材K1とK2を連結する状態を示す説明図である
【図6】図5に示した連結後の桁下方構成部材と、その上端面に設けられた多数の鉄筋にウェブ鉄筋及び上フランジ鉄筋を組み付け、鋼製型枠を設置する状態を示す説明図である。
【図7】図6に示した主桁の上方部分の打設を行って、完成した状態の主桁を示す説明図である。
【図8】図7に示す主桁に、横桁及びPC床版を構築するための説明図である。
【図9】本発明に係る桁下方構成部材の他の実施形態を図示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る構築方法の一実施形態である各工程を示す説明図であり、そのステップ1からステップ3までを示している。
図2は、同様に上記実施形態の工程を示す説明図であって、そのステップ4からステップ6までを示している。
図3は、同様に上記実施形態の工程を示す説明図であって、そのステップ7からステップ8までを示している。
【0022】
これら3図に基づき本発明に係る構築方法を説明する。
まず、ステップ1の図に示した通り、橋脚Pの構築後、例えばその中間部に支保工Sを2基設置する。
この支保工Sは、本発明で用いる主桁の一部構成部材である桁下方構成部材Kを載置し、支持するためのものであって、小規模なものでよい。
図中、Gはグランドレベルを示す。
【0023】
ステップ2の図では、前記桁下方構成部材Kを、橋脚Pと支保工S間、及び支保工S同士の間に架設した状態を示している。
本発明で使用する桁下方構成部材Kは、完成した状態の主桁の下方1/2乃至それ以下の部分から成るものであり、その重量も同様に略1/2以下となるために、トラッククレーンで容易に架設することができる。この点が従来工法と全く異なる本発明の特徴部分である。
【0024】
桁下方構成部材Kが架設されると、ステップ3の図に示したように、吊り足場Fを設置する。
この吊り足場Fは、ステップ3の図では単に太実線で図示しているが、この吊り足場Fの設置は、従来の工法と同様であり、予め桁下方構成部材Kの下面に設けられている多数の連結金具にチェーンを連結して、下方に垂下させ、このチェーンに単管パイプを連結固定し、足場板を設置するのである。
【0025】
次に、図2のステップ4に移り、桁下方構成部材K、K、K相互間の連結施工を行う。
桁下方構成部材Kの構成に関しては、後の図4以下で説明するが、この連結施工工程は以下の通りである。
桁下方構成部材Kの両端面又は一方の端面には、桁接続用の継手鉄筋が設けられており、この継手鉄筋同士を相互に組み付け、鉄筋組みを行い、型枠を設置する。この際にテンション負荷のためのプレグラウトPC鋼材を配設しておく。
その後、現場にてコンクリート打設を行い、コンクリートの所定強度が発現した後に、前記PC鋼材を緊張してテンションを負荷し、桁下方構成部材K同士の連結を行う。
【0026】
桁下方構成部材K同士の連結工程が完了した後、ステップ5の図に示した通り、ウェブ鉄筋Wの配設、更に図には示していないが、桁の上フランジの鉄筋を配設して、鉄筋組みを完成させる。
次にステップ6の図に示した通り、鋼製型枠Lを設置する。
この鋼製型枠Lは、桁下方構成部材Kの下フランジ部上方に伸びるウェブの両面に予め列設されている多数の孔部を利用して留め具によって固定される。
【0027】
尚、本発明においては、桁下方構成部材K同士の連結が完成した後は、支保工Sは、これを取り除くことができるものである。
即ち、ステップ5及びステップ6において、図には支保工Sを図示しているが、この工程で支保工Sを取り除くことができる。この点も本発明の効果といえる部分である。
【0028】
次に図3に移り、ステップ7において、ウェブ及び上フランジのコンクリートが流し込まれ、ウェブ及び上フランジのコンクリートをその現場で打設することができる。
ステップ8は、主桁の完成状態を図示しており、桁下方構成部材Kを含む完成状態の主桁Mが連結された状態を示している。
その後は、横桁の打設、PC床版の設置、床版の打設、及び壁高欄打設を行い、高架橋が完成する。これらの工法は、従来の施工方法と同様である。
【0029】
図4は、上記主桁の構築方法に使用する桁下方構成部材を示す全体斜視図であり、その(A)が中間に架設される中間部用のものを示し、その(B)が端部に架設される端支点用のものを示している。
図4(A)に図示した桁下方構成部材K1は、予め工場等で製作されるプレキャスト桁と同様に製作されるが、その形態が、従来の完成された主桁の下方1/2乃至1/3程度の構成部分からなるものである。
従って、その重量も従来のものと比較すれば1/2以下のものとなる。
またその長手方向長さは、トラック輸送を考慮して、10m乃至12m程度の桁長とし、その桁重量は、完成した主桁の全重量の1/2乃至1/3程度とする。
これにより、トラッククレーンでの架設も可能となるのである。
【0030】
本発明の実施形態に係る桁下構成部材K1は、図4から解る通り、その完成形態であるI型の主桁の下方略1/3程度のものからなる。
即ち、下端部左右両側には、略水平方向に延長する下フランジ部11、11が設けられ、この下フランジ部11から上方に下方ウェブ15が上方に延長し、この下方ウェブ15の上端面からは、鉄筋16、16、…が延長している。
鉄筋16は、その桁下方構成部材K1の現場での存置期間を考慮して、エポキシ樹脂鉄筋が最適なものとなる。
【0031】
また、前記下方ウェブ15の両側側面部には、後に鋼製型枠を固定するための留め具用の多数の孔部17、17、…が列設されている。
更に、その両端面には、桁接続用の継手鉄筋18、18、…が設けられている。
両側の下フランジ部11、11の橋軸方向の両端部には更に両側略水平方向に延長する定着突起部19、19を設けており、これら定着突起部19の橋軸方向には、PC鋼材を挿通するためのPC鋼材用シース20をそれぞれ複数設ける(図4では煩雑さを避けるために、これらシース20をそれぞれの定着突起部19に2本のみ描写している。)。
これらのシース20は、桁下方構成部材K1が他の桁下方構成部材と連結される際に、ポストテンション方式によるストレスを負荷するために設けたものである。
【0032】
図4(B)に図示した桁下方構成部材K2は、端支点用のものであって、その構成は上記桁下方構成部材K1とほぼ同様であるが、定着突起部19、19が図中右側の端部両側に設けられていない点と、同じ端部の端面に桁接続用の継手鉄筋18が設けられていない点が前記桁下方構成部材K1と異なっている。
尚、(A)図及び(B)図共に、桁下方構成部材K1、K2の図中右側端面の図面符号22は、プレテンション方式のPC鋼材の端部を示すものである。
【0033】
これら桁下方構成部材K1とK2とを連結する状態を示す説明図が図5である。
図示はしていないが、図1のステップ2及び図2のステップ4を参照すれば解るとおり、桁下方構成部材K1の両端部及び桁下方構成部材K2の左側端部は支保工に支持され、桁下方構成部材K2の図中右側端部は橋脚上に支持されている。
既に、施工工程で説明したが、これら桁下方構成部材K1とK2との連結は、これら桁下方構成部材K1とK2の端面に設けられた接続用の継手鉄筋18、18、…を相互に組合せて鉄筋組みを行い、図示はしていなが、型枠を設置して、コンクリートを流し込むのである。
【0034】
コンクリートが所定強度に達した後に、PC鋼材25を緊張させてテンションを負荷する。
これにより桁下方構成部材K1とK2の連結が完成する。
PC鋼材によるテンション負荷により、ウェブの死荷重と上フランジの死荷重を支持することができることとなる。
以上と同様の工程により、図5中桁下方構成部材K1の左側端部においても隣接する桁下方構成部材と連結し、橋脚間に桁下方構成部材を架設できる(図2ステップ4)こととなる。
【0035】
図6は、図5における桁下方構成部材K1とK2とを連結した後、桁下方構成部材K1、K2の上端面に設けられた多数の鉄筋16にウェブ鉄筋W及び上フランジ鉄筋UFを組み付け、鉄筋組みを完成させ、鋼製型枠Lを設置する状態を図示する説明図である。
この時点で支保工は不要となり、図示はしていないが、吊り足場を利用して、主桁の上方ウェブ及び上フランジを打設することができる。
このコンクリート現場打ちは、従来の工法と同様に行うことができる。勿論ポストテンション負荷もPC鋼材を用いて行うことができる。
【0036】
図7は、上記図6に示した主桁の上方部分の打設を行って、完成した状態の主桁Mを図示する説明図である。
この図にある通り、本実施形態に係る主桁Mの断面形状は、I型形状を有し、その下端部に下フランジ部11を有し、その上方に延長するウェブ12及び上端部の上フランジ13とを有するものである。
ウェブ12に設けた複数のシース26は、横桁を打設する際に、プレグラウトPC鋼材を配設するためのものである。
【0037】
図8は、主桁Mが完成した後、横桁30及びPC床版32の構築のための説明図である。
図では、横桁30は、完成されたものとして図示しているが、この横桁30は、主桁Mの完成後に鉄筋組み及び型枠を使用してコンクリート現場打ち作業を行い、またその際にPC鋼材の配設等も行ってテンションの負荷を行うのである。
横桁30の構築が完成した後には、PC床版32を従来工法に従って載置するのである。
【0038】
図9は、本発明に係る桁下方構成部材の他の実施形態を示す概念図であり、この実施形態においては、その定着突起部の延設位置が上記実施形態と異なっている。
この図9に図示した桁下方構成部材K1、K2では、これらを相互に連結する定着突起部19が、桁下方構成部材K1、K2の端部の底面部分から、その幅方向の全体に渡り下方に延長するように設けられているのである。
この実施形態においても、定着突起部19の橋軸方向の長さ、及び定着突起部19に設けるPC鋼材用シース20の個数も自由に設計することができる。
【0039】
図では、煩雑さを避けるために、これらシース20を4つ図示しているが、実際にはこの個数はこれよりも更に多く設けている。強度を向上させるためである。
この定着突起部19は、図示した形態では、下フランジ部11と同一幅でその全体に渡り設けているが、その幅方向の全体でなく、その下フランジ部11の両側の下方に2つそれぞれ延設しても良く、更には、下フランジ部11の横幅よりも大きく、横方向に張り出すように延設してもよいものである。図中25は、PC鋼材を示している。
【0040】
以上、本発明の主桁の構築方法において使用する桁下方構成部材の詳細を、その構築方法と共に説明したが、本発明においては、その完成形態としての主桁の断面形状としてI型のものを採用したが、その主桁の形態はどのようなものであってもよく、例えば、T型、箱型等々各種の形態のものであってもよいのである。
本発明の中心概念は、主桁の完成形態において、その下方構成部材を予めプレキャスト桁下方構成部材として、所定重量以内のものを工場或いは製作ヤードにて製作し、この桁下方構成部材をトラッククレーンで架設できるようにした点にある。
従って、桁自体の構成や形態は自由に設計することができるものである。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通りその形態を種々変更することができる。
本発明におていは、1本の主桁の構築方法として限定しており、その主桁は、通常高速道路等の高架橋の橋軸直交方向に配列される本数に関しては、道路の幅員に応じて適宜自由に設定することができ、それに応じてそれぞれの主桁を順次或いは並列的に施工構築することができる。
【0042】
支保工の除去の時期及び、吊り足場の除去の時期も適宜自由に計画することができる。
桁下方構成部材の断面形状も、上記した通り、その完成形態の形状に応じてその完成形態の下方構成部材として設計することができる。
桁下方構成部材の桁長も、その形態と全重量等を考慮して、決定することができる。
その全重量は、トラック運搬が可能なもの、トラッククレーンで架設可能な程度のものとして実施することができる。
桁下方構成部材の端部に設けた定着突起部の橋軸方向の長さ、及び定着突起部に設けるPC鋼材用シースの本数も適宜必要に応じて設計することができる。
【0043】
更に、この定着突起部は、下フランジ部の端部両側に形成されるのであるが、請求項2乃至5において限定したとおり、これを延設する方向は、上記実施形態では、下フランジ部の両側から略水平方向に延長しているが、この延設方向は、下フランジ部から垂直上方であってもよく、またその中間の斜め上方向であってもよいものである。
更には、図9に示した通り、この締着突起部は、下フランジ部の端部底面部分に設けて、実施することもできるのである。
桁下方構成部材同士が連結された後に、ウェブ上方部及び上フランジ部を現場打ちして構築するのであるが、この際に使用する型枠としては、上記実施形態において鋼製型枠を使用したが、この型枠は、勿論、木製型枠を使用することもできる。
【0044】
以上、本発明においては、桁下方構成部材を予め製作して利用する限りで、その他の施工方法に関しては種々の従来工法を利用することができ、非常に応用範囲の広いものとなる。
このように、本発明においては、主桁の一部構成部材を用いることにより、その効果は著大なものであり、大型クレーン等を利用する必要もなく、また大規模な支保工をも必要とせずに、トラッククレーンと小規模支保工により極めて簡易に高架橋或いは橋梁等を構築することができる画期的な工法及びそれに用いるPC桁構成部材を提供することができたものである。
【符号の説明】
【0045】
11 下フランジ部
12 ウェブ
13 上フランジ
15 下方ウェブ
16 鉄筋
17 孔部
18 継手鉄筋
19 定着突起部
20 PC鋼材用シース
25 PC鋼材
K、K1、K2 桁下方構成部材
P 橋脚
S 支保工
F 吊り足場
W ウェブ鉄筋
L 鋼製型枠
M 主桁(完成形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架橋や橋梁の主桁の構築方法であって、
架設する主桁の一部を構成する桁下方構成部材を予め打設して製作し、
この予め製作されたプレキャスト桁下方構成部材をトラッククレーン等の移動クレーンにより橋脚間に架設し、
その後、橋軸方向に架設された前記プレキャスト桁下方構成部材同士を連結し、
前記連結工程終了後、主桁の上方部分を構築するための鉄筋の配筋及び型枠を設置し、
その後コンクリートを打設して主桁を構築することを特徴とする高架橋等の主桁の構築方法。
【請求項2】
プレキャスト桁下方構成部材が、その下端部で両側に略水平方向に張り出す下フランジ部(11)を有し、
前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端部の両側に更に略横方向乃至上方向に延長し、テンションを負荷するためのPC鋼材用シース(20)が橋軸方向に設けられた定着突起部(19, 19)を有し、
更に、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端面には桁接続用の継手鉄筋(18)を設け、
前記下フランジ部(11)の上方のウェブ(15)両側面には型枠留め具用の複数の孔部(17, 17, …)を設けたものであることを特徴とする請求項1に記載の高架橋等の主桁の構築方法。
【請求項3】
プレキャスト桁下方構成部材が、その下端部で両側に略水平方向に張り出す下フランジ部(11)を有し、
前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端部の底面部分に更に下方に延長し、テンションを負荷するためのPC鋼材用シース(20)が橋軸方向に設けられた定着突起部(19)を有し、
更に、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端面には桁接続用の継手鉄筋(18)を設け、
前記下フランジ部(11)の上方のウェブ両側面には型枠留め具用の複数の孔部(17, 17, …)を設けたものであることを特徴とする請求項1に記載の高架橋等の主桁の構築方法。
【請求項4】
請求項1に記載した高架橋等の主桁の構築方法に使用されるプレキャスト桁下方構成部材であって、
このプレキャスト桁下方構成部材が、その下端部で両側に略水平方向に張り出す下フランジ部(11)を有し、
前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端部の両側に更に略横方向乃至上方向に延長し、テンションを負荷するためのPC鋼材用シース(20)が橋軸方向に設けられた定着突起部(19, 19)を有し、
更に、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端面には桁接続用の継手鉄筋(18)を設け、
前記下フランジ部(11)の上方のウェブ両側面には型枠留め具用の複数の孔部(17, 17, …)を設けたことを特徴とする高架橋等の主桁の構築方法に用いるプレキャスト桁下方構成部材。
【請求項5】
請求項1に記載した高架橋等の主桁の構築方法に使用されるプレキャスト桁下方構成部材であって、
このプレキャスト桁下方構成部材が、その下端部で両側に略水平方向に張り出す下フランジ部(11)を有し、
前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端部の底面部分に更に下方に延長し、テンションを負荷するためのPC鋼材用シース(20)が橋軸方向に設けられた定着突起部(19)を有し、
更に、前記プレキャスト桁下方構成部材の一方又は両方の端面には桁接続用の継手鉄筋(18)を設け、
前記下フランジ部(11)の上方のウェブ両側面には型枠留め具用の複数の孔部(17, 17, …)を設けたことを特徴とする高架橋等の主桁の構築方法に用いるプレキャスト桁下方構成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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