説明

高清浄度鋼の製造方法

【課題】鋼材の成分の規格範囲を出来る限り外すことなく酸化物系介在物の低減を行うことができるようにする。
【解決手段】鋼材5を電子ビーム2によって溶解することにより高清浄度鋼を製造する製造方法において、鋼材5を電子ビーム2により溶解するに際し、鋼材5の[C]を0.03質量%以上とし、電子ビーム2に供給する電力を電力原単位で4〜10kWh/kgとし、溶解真空度を1×10-3Torr以下とし、電力原単位/溶鋼表面積の値を0.015kWh/kg・cm2以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高清浄度鋼の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、軸受用鋼やばね用鋼に用いられる高清浄度鋼は、鋼中に含まれる介在物、主に、酸化物系介在物(例えば、Al23)が極力少ないことが望ましい。そのため、二次精錬において溶鋼に含まれる酸化物系介在物に対して還元分解したり、浮上分離を行うことによって、鋼中に含まれる酸化物系介在物の低減を行っている。
このように、二次精錬において酸化物系介在物の低減を行うことでユーザから要求される高清浄度鋼を製造しているが、近年では、従来よりも増してより酸化物系介在物の少ない高清浄度鋼が求められてきている。そのため、このようなユーザの要望に対応して、酸化物系介在物の極めて少ない高清浄度鋼の製造方法が様々開発されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
特許文献1は、二次精錬後に行われる鋳造処理にて鋳造した鋼材を電子ビームにて溶解することによって酸化物系介在物を減少させる方法であって、電子ビーム出力と溶解速度より求められる溶解エネルギーを1.0×103kcal/kg以上とし、溶解真空度を1×10-3Torr以下とし、溶解プール表面積を200cm2以上とし、かつ、電子ビーム溶解に供する溶解用素材の組成を[C]≧0.03%、[Al]≦0.005%、[S]≦0.01%としている。
特許文献2は、長方形の皿状銅製水冷精錬容器の後部の上方に、後部から水平に進出してくる棒状の溶解母材に上方から電子ビームを照射して連続的に溶解し、該精錬容器で受け、該精錬容器の前方に設けたトンネル型せきを通過させて該精錬容器の前端部の流出孔から、その下方に設けた垂直型水冷銅鋳型に流出させて、鋳塊を得るタイプの電子ビーム溶解法において、母材としてMnを0.20%を超えて含まない軸受用鋼を用い、且つ該精錬容器の寸法、せきの位置、および溶解速度の関係が所定の条件を満たすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−233254号公報
【特許文献2】特開2003−171714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2の技術を用いた場合、酸化物系介在物を低減させることができるものの、殆どの鋼材において、例えば、Mnが求められる規格値から外れてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、鋼材の成分の規格範囲を出来る限り外すことなく、酸化物系介在物の低減を行うことができる高清浄度鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、本発明は、鋼材を電子ビームによって溶解することにより高清浄度鋼を製造する製造方法において、[C]が0.03質量%以上となる鋼材を電子ビームにより溶解するに際し、前記電子ビームに供給する電力を電力原単位で4〜10kWh/kgとし、溶解真空度を1×10-3Torr以下とし、前記電力原単位と溶解後の溶鋼メニスカスにおける溶鋼表面積との関係を式(1)を満たすようにする点にある。
【0007】
【数1】

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鋼材の成分の規格範囲を出来る限り外すことなく酸化物系介在物の低減を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電子ビーム溶解装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の高清浄度鋼の製造方法について説明する。
本発明の高清浄度鋼の製造方法では、まず、転炉にて溶鋼の脱炭精錬(一次精錬)を行った後、LF装置、CAS装置、RH装置等の二次精錬装置にて溶鋼の酸化物系介在物の除去や成分調整(二次精錬)を行う。そして、高清浄度鋼の製造方法では、二次精錬後の溶鋼を連続鋳造装置にて鋳造(連続鋳造)を行い、鋳造した鋼材を電子ビーム溶解装置にて溶解して、鋼材中の酸化物系介在物の除去を行うようにしている。
図1は、電子ビーム溶解装置の概略図を示したものである。
【0011】
図1に示すように、電子ビーム溶解装置1は、電子ビーム2を照射するカソード室3と、このカソード室3に接続されて照射された電子ビーム2が通過する中間室4と、この中間室4を経て照射された電子ビーム2が入射して鋼材5を溶融する溶解室6とを備えている。図示していないが、カソード室3には電子ビーム2を溶解室6に向けて照射する照射装置が設置している。なお、カソード室3と中間室4とを一体化したものであってもよい。
中間室4及び溶解室6には、排気等を行うための排気口7が形成されていて、この排気口7により真空引きすることにより、中間室4、溶解室6及び中間室4に連通するカソード室3も所定の真空度になるようになっている。
【0012】
溶解室6には、溶解する鋼材(溶解用母材ということがある)5aを供給するための供給装置8が設けられ、供給装置8から溶解室6内へ供給された溶解用母材5aに対して電子ビーム2を照射することにより、溶解用母材5aが溶解するようになっている。
また、溶解室6には、溶解用母材5aを溶解したときの溶鋼11を再び冷却することで酸化物系介在物を除去した鋼材5bにする水冷銅製の鋳型9が設けられており、鋳型9によって冷却された鋼材(インゴット)5bは、引き抜き装置10により所定の速度にて引き抜かれるようになっている。
【0013】
電子ビーム溶解装置1にて溶解用母材5aを溶解して、鋼材5中の酸化物系介在物を除去するためには、まず、カソード室3、中間室4及び溶解室6を真空引きすることにより、所定の真空度にする。また、供給装置8にて溶解用母材5aを溶解室6に供給し、その溶解用母材5aに対して電子ビーム2を照射する。
そして、溶解した溶液(溶鋼11)を鋳型9にて受けて冷却することによりインゴット5bにする。このとき、鋳型9内に入っている溶液(溶鋼11)に対しても、溶解用母材5aとは別に電子ビーム2を照射し、鋳型9の上面側の溶鋼11を溶融状態にする。即ち、この電子ビーム溶解装置1は、電子ビーム溶解法におけるドリップメルト法が行えるようになっていて、当該装置により、鋼材5を溶解して凝固させることにより、鋼材5中の酸化物系介在物を除去することができる。なお、本発明においては、図1に示す電子ビーム溶解装置1に限定されない。
【0014】
以下、本発明の高清浄度鋼を製造する製造方法について、詳しく説明する。
本発明の高清浄度鋼の製造方法における対象鋼は、軸受用鋼やばね用鋼などである。
具体的には、C:0.03〜1.1質量%、Si:0.15〜0.70質量%、Mn:1.2質量%以下(0%を含まない)、Cr:0.9〜1.6質量%、N:0.002〜0.02質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物を含有する鋼材5を対象としている。
ここで、電子ビームにより溶解用母材5aを溶解することにより、鋼材5の酸化物系介在物を除去する機構を考えると、酸化物系介在物(Al23、SiO2、MnO、MgOなどの酸化物、又は、Al23、SiO2、MnO、MgOなどからなる複合酸化物)が還元されることにより発生する[O]が溶鋼11中の[C]と結合し、COガスとして系外に除去するという還元分解反応がある。
【0015】
この還元分解反応は、式(a)のように表され、反応平衡定数は式(b)により表される。
【0016】
【数2】

【0017】
式(a)及び式(b)示すように、溶解前の鋼材(溶解用母材)5aの[C]が高いほど、還元分解反応を促進し、溶解後の溶鋼11中の[O]を低減することができることから、溶解前の鋼材(溶解用母材)5aの[C]の濃度は、ある程度高くする必要がある。
そのため、本発明によれば、溶解用母材5aを電子ビーム2により溶解するに際し、溶解用母材5aの[C]を0.03質量%以上としている。
様々な実験の結果、溶解用母材5aの[C]が0.03質量%以上であれば、還元分解反応を促進することができ、十分に酸化物系介在物を除去することができる。一方で、溶解用母材5aの[C]が0.03質量%未満であると、還元分解反応が十分に進まず、溶解後の鋼材5b中に多くの酸化物系介在物が残存することになる。
【0018】
また、本発明では、様々な実験の結果、電子ビーム2に供給する電力(供給電力)を電力原単位で4〜10kWh/kgとしている。この電力原単位とは溶解する鋼材(溶解用母材)5aの1kgに換算した1時間当りの供給電力(投入電力)であり、式(c)により算出される。
【0019】
【数3】

【0020】
式(c)において、Eは電力原単位(kWh/kg)、Pは供給電力(kw)、Vは鋼材(溶解用母材)5aの溶解速度(kg/h)を示している。供給電力は、電子ビーム2照射装置に供給する電力である。言い換えれば、供給電力は、溶解用母材5aを溶解するために照射する第1電子ビーム2の電力と、鋳型9にドロップした溶鋼11に照射する第2ビームの電力とを合わせたものである。
電子ビーム2に供給する供給電力が電力原単位で4kWh/kg未満であると、電力が弱すぎるために、鋳型9内の溶鋼11の溶鋼温度が低い状態となる。このように溶鋼温度が低いと、酸化物系介在物が安定的に存在するため、還元分解反応が十分に促進されず、溶解後の鋼材5b中に多くの酸化物系介在物が残存することになる。
【0021】
一方で、電子ビーム2に供給する供給電力が電力原単位で4kWh/kg以上であると、電力が強く溶鋼温度は高い。そのため、酸化物系介在物の分解反応が促進され、酸化物系介在物を十分に除去することができる。
しかしながら、電子ビーム2に供給する供給電力が電力原単位で10kWh/kgを超えてしまうと、溶鋼11に含まれるMnやCr、N等の成分の蒸発量が大き過ぎて蒸発量が飽和し、供給電力と蒸発量との関係が所定の関係から外れてしまう。
また、供給電力が電力原単位で10kWh/kgを超えると、溶鋼11に供給されるエネルギーが局在して鋳型9内部での濃度偏析が大きくなり、供給電力と蒸発量との正比例の関係が外れてしまう。その結果、酸化物系介在物を除去した後、溶解後の鋼材5bに含まれる成分値が大幅に変化し、成分の的中率が下がることになる。
【0022】
したがって、溶解後の鋼材5b中の成分を規格成分値の範囲内としつつ、還元分解反応を促進して酸化物系介在物を十分に除去するためには、電子ビーム2に供給する供給電力を電力原単位で4〜10kWh/kgにする必要がある。
また、本発明では、様々な実験の結果、溶解真空度を1×10-3Torr以下としている。溶解真空度は、カソード室3、中間室4及び溶解室6の真空度のことである。
溶解真空度が、1×10-3Torrよりも大きく真空度が小さいと、式(b)に示すように、COの分圧が高くなり、還元分解反応し難くなり、酸化物系介在物が残存することになる。
【0023】
一方で、溶解真空度が、1×10-3Torr以下であると、COの分圧が非常に低くなり、還元分解反応が進みやすく、十分に酸化物系介在物を除去することができる。
さらに、本発明では、電子ビーム2に供給する供給電力を上述した範囲にしたうえで、電力原単位と溶解した鋼材5における溶鋼メニスカスにおける溶鋼表面積との関係を式(1)を満たすようにしている。つまり、溶鋼表面積とは、鋳型9の上面側における湯面での表面積である。
【0024】
【数4】

【0025】
さて、電子ビーム2による鋼材5中の酸化物系介在物の除去は、上述した還元分解反応の他に、溶解した溶鋼11中の酸化物系介在物を浮上させて除去するという浮上除去(浮上分離)もある。この酸化物系介在物の浮上分離は、鋳型9内の溶鋼11に対して電子ビーム2を照射し、鋳型9内の溶鋼11に対してその凝固を遅らせ、溶融池(溶鋼プール)を形成することによって行っている。
電力原単位と溶鋼表面積との関係が式(1)を満たさず、電力原単位を溶鋼表面積で除した値(単位面積当たりの電力原単位)が0.015kWh/kg・cm2よりも小さい場合、鋳型9内の溶鋼プールの深さが浅い状態となる。言い換えれば、電力原単位と溶鋼表面積との関係が式(1)を満たさない場合、鋼材5を溶解して鋳型9内にドリップしたときに、鋳型9内にドリップした溶鋼11が直ぐに凝固し、溶鋼プールによる酸化物系介在物の浮上時間が十分に得られない状態となる。
【0026】
ゆえに、電力原単位と溶鋼表面積との関係が式(1)を満たさない場合は、溶鋼11中の酸化物系介在物が鋳型9内にて浮上する前に、溶鋼11を凝固してしまうことになり、酸化物系介在物が残存することになる。
一方で、電力原単位と溶鋼表面積との関係が式(1)を満たす場合は、鋳型9内へドリップした溶鋼11の凝固を遅らせて、酸化物系介在物の浮上時間を確保することができるため、溶鋼11内の酸化物系介在物を十分に上昇させることができる。
以上のように、本発明によれば、鋼材5を電子ビーム2により溶解するに際し、鋼材5の[C]を0.03質量%以上とし、電子ビーム2に供給する電力を電力原単位で4〜10kWh/kgとし、溶解真空度を1×10-3Torr以下とし、電力原単位と溶解した鋼材5の溶鋼表面積との関係を式(1)を満たすようにして、鋼材5中の酸化物系介在物を十分に除去するようにしている。
【0027】
表1は、本発明の高清浄度鋼を製造する製造方法により製造を行った実施例と、本発明とは異なる方法により製造を行った比較例とをまとめたものである。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例及1〜4および比較例5〜8において、電子ビーム溶解に供した溶解用母材5aは、C:1.0質量%、Si:0.26質量%、Mn:0.35質量%、Cr:1.4質量%、N:0.006質量%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる同一の溶解用母材を用いた。比較例9において,電子ビーム溶解に供した溶解用母材5aは、C:0.02質量%、Si:0.26質量%、Mn:0.35質量%、Cr:1.4質量%、N:0.006質量%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる溶解用母材を用いた。
【0030】
実施例及び比較例を実施する前に、各種成分の蒸発状況を知るために、各成分での蒸発速度係数KXの評価を行った。この蒸発速度係数KXを求めるにあたっては、表2に示す条件にて行った。
【0031】
【表2】

【0032】
ここで、蒸発速度係数KXを求めるにあたっての溶解用母材5aは、C:1.0質量%、Si:0.26質量%、Mn:0.35質量%、Cr:1.4質量%、N:0.006質量%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物を含むものとした。溶解前の溶解用母材5aと、電子ビーム溶解後の鋼材5bとの成分分析においては、C量は、「燃焼赤外線吸収法」によって、Si量、Mn量、Cr量は「ICP発光分光分析法」によって、N量は「不活性ガス融解熱伝導度法」によって測定した。
各種成分の蒸発速度係数KXを求めるに際しては、溶解前の溶解用母材5aの成分X(X=C,Si,Mn,Cr,N)の濃度をCXb0とし、溶解後の鋼材5bの成分X(X=C,Si,Mn,Cr,N)の濃度をCXa0とした場合、式(2)により求めた。
【0033】
【数5】

【0034】
蒸発速度係数KXを求めると、表3に示すものとなった。
【0035】
【表3】

【0036】
実施例及び比較例においては、この各種成分における蒸発速度係数Kxを用いて、成分の的中率を求めた。具体的には、実施例及び比較例において、溶解前の溶解用母材5aの成分X(X=C,Si,Mn,Cr,N)の濃度をCXbとし、溶解後の鋼材5bの成分X(X=C,Si,Mn,Cr,N)の濃度をCXaとして、各種成分の的中率を式(3)により求めた。
【0037】
【数6】

【0038】
そして、実施例及び比較例において、上述した方法にて求めた各種成分の的中率が90%以上のものを、良好「○」とし、90%未満であるものを不良「×」として評価を行った。なお、表1に示した実施例及び比較例においては、各種成分のうち最も成分の的中率が低いものを示している。また、各種成分の的中率の評価において、その的中率を90%であると一般的に産業上利用可能であることから、その値を基準値とした。
実施例及び比較例においては、日本電子(株)製「JXA−8500F」を用い、溶解後の鋼材5bの任意の測定領域(100mm2)に含まれるすべての酸化物を、EPMA(Electron Probe Micro-Analysis)による元素分析を行って測定した。そして、実施例及び比較例においては、測定領域(100mm2)中において、15μm以上の酸化物系介在物が存在しない場合を良好「○」とし、1個以上ある場合を不良「×」として評価した。ここで、酸化物系介在物の評価において、一般的に産業上利用可能を考慮して、酸化物系介在物の大きさを15μmとした。
【0039】
実施例1〜実施例4に示すように、鋼材(溶解用母材)5aを電子ビーム2により溶解するに際し、鋼材(溶解用母材)5aの[C]を0.03質量%以上とし、電子ビーム2に供給する電力を電力原単位で4〜10kWh/kgとし、溶解真空度を1×10-3Torr以下とし、電力原単位と溶解した鋼材5の溶鋼表面積との関係を式(1)を満たすようにすれば、溶解後の鋼材5bにおいて、15μm以上の大きさの酸化物系介在物は無く、成分的中率も90%以上確保することができた。即ち、実施例1〜実施例4では、鋼材5の成分の規格範囲を出来る限り外すことなく酸化物系介在物の低減を行うことができる。
【0040】
一方で、比較例5では、電子ビーム2に供給する供給電力が電力原単位で10kWh/kgを超えていたため、溶解後の鋼材5bにおいて15μm以上の大きさの酸化物系介在物を無くすことができたものの、成分的中率を90%以上とすることができなかった。
比較例6では、電子ビーム2に供給する供給電力が電力原単位で4kWh/kg未満であったため、成分的中率を90%以上にすることができたものの、15μm以上の大きさの酸化物系介在物を無くすことができなかった。
比較例7では、溶解真空度が1×10-3Torrよりも高かったために、成分的中率を90%以上にすることができたものの、15μm以上の大きさの酸化物系介在物を無くすことができなかった。
【0041】
比較例8では、電力原単位/溶鋼表面積の値が0.015kWh/kg・cm2よりも小さく、式(1)を満たさなかったため、成分的中率を90%以上にすることができたものの、15μm以上の大きさの酸化物系介在物を無くすことができなかった。
比較例9では、鋼材(溶解用母材)5aの[C]が0.03質量%未満であったため、成分的中率を90%以上にすることができたものの、15μm以上の大きさの酸化物系介在物を無くすことができなかった。
比較例10は、JIS規格にて示されているSUJ2(量産鋼)における酸化物系介在物の個数を示したものである。このSUJ2の鋼材5は、JIS規格においては、酸化物系介在物が最も少ないものと言われており、この鋼材5と比べたとしても、本発明により製造した鋼材5は、酸化物系介在物の個数が非常に少ないことが分かる。
【0042】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 電子ビーム溶解装置
2 電子ビーム
3 カソード室
4 中間室
5 鋼材
5a 溶解前の鋼材(溶解用母材)
5b 溶解後の鋼材
6 溶解室
7 排気口
8 供給装置
9 鋳型
10 引き抜き装置
11 溶鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を電子ビームによって溶解することにより高清浄度鋼を製造する製造方法において、
[C]が0.03質量%以上となる鋼材を電子ビームにより溶解するに際し、前記電子ビームに供給する電力を電力原単位で4〜10kWh/kgとし、溶解真空度を1×10-3Torr以下とし、前記電力原単位と溶解後の溶鋼メニスカスにおける溶鋼表面積との関係を式(1)を満たすようにすることを特徴とする高清浄度鋼の製造方法。
【数7】


【図1】
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【公開番号】特開2010−222683(P2010−222683A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73809(P2009−73809)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】